説明

薬物投与ならびに医療品および医療用キットの品質および安全性を確実にするための方法およびデバイス

【課題】医療用供給品、医療用部品および医療用キットの品質および安全性を確実にするためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】薬物投与デバイスおよび他の医療システムの部品、供給品およびキットを品質保証情報(16、18)でマーキングするためのデバイスおよび方法を提供する。使用時間を探索するため、ならびに汚染されているか、不良品回収されたか、あるいは認められていない部品、供給品およびキットの利用あるいは再利用を防ぐための種々のデバイスおよび方法も提供する。使い捨ての部品、供給品およびキットのIDおよび製造業者に関する情報を格納する品質保証マーカ(QAM)が記載される。1次元および2次元バーコード、1次元および2次元記号表示法、ホログラム、書かれた文字、無線周波数識別デバイス(RFID)、集積チップスマートカード、EEPROMのようないくつかのQAM形式を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には、医療用供給品、医療用部品および医療用キットに関連する情報を符号化し、とりわけ、それらの商品の品質および安全性を確実にするためにその商品の利用および再利用を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
本特許出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2001年9月24日に出願され、その全体を参照して本明細書に援用される米国特許出願第60/324,043号に対して優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
薬物(たとえば、鎮静剤および鎮痛剤)の投与のような数多くの医療処置は、当の患者の健康についての、安全性を重視した作業である。そのような薬物の投与の許容誤差は、正確な投与量と過量の投与量との間の範囲が狭いことに起因して小さいかもしれない。このように許容誤差が小さい結果として、患者に害を及ぼし、さらには患者が死亡する可能性もある。それゆえ、医療用部品、医療用供給品、医療用キットなどの供給元および製造業者を特定し、確認すること(certification)、および患者に投与されることになる薬物を特定することが重要である。この特定および確認は、医薬品の品質を確実にすることにより患者の安全性を高め、無菌であること(sterility)、較正済みであること(calibration)および製造上の許容誤差範囲内であること(manufacturing tolerance)などの基準を確実にすることにより、患者毎に使い捨ての製品の品質を高める。
【0004】
ある患者に薬物を投与するために既に使用され、汚された医療用部品、医薬用供給品および医療用キットが次に別の患者で再利用されるのを防ぐための手段も重要である。ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)ならびにB型およびC型肝炎のような血液−骨組織の病原体によって、また多剤耐性結核のような呼吸器の病原体によって引き起こされる感染症に起因する、患者間の相互汚染が憂慮される。これらの病原体のうちの任意の病原体による感染は致命的であり、汚染された医療用供給品、部品およびキットが種々の患者間で再利用されることは、結果としてそのような感染をもたらす危険性がある。さらに、ある特定の医薬品の汚染は、それらの成分が細菌の増殖を促すので、敗血症の致命的な症例を引き起こしてきた。
【0005】
相互汚染を防ぐための試みとして、汚染された医療デバイス、部品および供給品は、異なる患者で再利用する前に殺菌される場合が多い。しかしながら、最近の調査は、数多くの医療品、特にたとえばバルブを備えるもの、複雑な機構、あるいは細長い内腔(たとえば、腹腔鏡検査の外套針、内視鏡検査の生検用鉗子およびファイバースコープ)を備えるデバイスの滅菌が完全には有効でない可能性があることを示している。
【0006】
相互汚染を避けるための別の方法は、患者毎に利用する(使い捨ての)医療用部品および供給品による。使い捨ての医療用部品および供給品は、それらが再利用される場合には、相互汚染を避けられないであろう。それゆえ、汚染された使い捨ての医療用部品および供給品を故意に再利用すること、および誤って再利用することが依然として憂慮される。また、殺菌されるように、あるいは長い耐用年数あるいは製品寿命を有するように設計されていない、すなわちその有効性が認められていない使い捨ての医療用部品および供給品を許可なく殺菌および/または再利用することに関しては、患者の相互汚染よりも大きな懸念がある。
【0007】
外見上、かつ表面的には、ある医療デバイスまたはシステムで用いられるのに適した形状、適合性および機能を有する、その医療デバイスまたはシステムの部品あるいは供給品のように見える物品が、実際には認定されていない製品である可能性があり、その製品は、認定を受ける場合には元の設計仕様に従っては製造されなかった。品質および動作の信頼性が不可欠である多くの状況において、顧客あるいは他の利用者が、認定されていない部品と本物の部品との間の差を見分けることができない場合もある。たとえば、薬物投与または注入デバイスあるいはシステムを適切に利用するためには、薬物濃度、薬物送出管と薬物ポンプカセットのデッドスペースすなわち内容積、ならびに管および圧縮表面が較正されていることについて知る必要がある(薬剤送出のレートの正確な容積制御を生成するために)。この情報は、薬物送出デバイスまたはシステムの部品、供給品およびキットの認定されていないものについてはわからないか、あるいは仕様の範囲外である可能性がある。
【0008】
医療用部品、供給品およびキットが「コンピュータ化されて」いるなら、認定された医療用部品、供給品およびキットの存否、およびその使用状態の検出を自動化することができる。自動化により、臨床医は製品を確認することについての雑用および記憶にしまうことから解放され、医療処置を開始する前に、全ての必要な医療用部品、供給品およびキットが揃っており、適切な場合には未使用であることを確実にすることにより、患者の安全性が高められることができる。
【0009】
さらに、製造業者が品質保証に関して最善の努力をしているにもかかわらず、汚染された製品あるいは欠陥のある製品が市場に出まわる場合もある。欠陥のある製品に対処するためになされる製品の回収または他の方策を確実にすることは、製造業者にとって非常にコストのかかる困難な作業である。個々の回収される可能性のある製品の場所を特定し、除去するのを容易にするタギング(tagging)識別システムがあれば有利であろう。さらに安全性を高める方策として、回収される不良品のバッチ番号および固有の識別番号が、鎮静および鎮痛機器などの関連する送出デバイスまたはシステム内に、または薬局、貯蔵室または供給室、あるいは中央管理されたデータベースなどの分配場所において、プログラムされることができ、それによって、回収から漏れた、汚染された薬剤のバイアル(vial)のような任意の製品が特定され、拒否されることができるようになれば有益であろう。
【0010】
スマートカードあるいはチップカードは、プラスチック片に収容されることができる少なくとも1つの集積回路チップ(メモリおよび/またはマイクロプロセッサ)を備えることができる。そのプラスチックには、クレジットカードと同じような形式のものを用いることができる。集積回路チップからリーダへのデータ転送は、金メッキされたコンタクトを介して、あるいは非接触(たとえば、RFIDチップにおいて用いられる無線周波数など)でなされることができる。いくつかのスマートカードは、任意選択の機構として、磁気ストリップおよび/またはバーコードも組み込むことができる。スマートカードは、メモリのみのカード、ストアドバリューカード、デビットカードあるいはマイクロプロセッサ系カードとして分類されることができる。多機能スマートカードは、健康データの特定および記憶のような付加機能を実施するために、スマートカード上の予備処理および/または記憶容量を利用する。スマートカードの機能は主に、そのIC、ならびにそのICに格納されるデータおよびファームウエアから得られる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、たとえば、薬物投与デバイスおよびシステムの使い捨ての部品、供給品およびキットを品質保証情報でマーキングするための種々のデバイスおよび方法、風媒性の微生物に曝露された可能性のある時点からの時間を記録するためのデバイスおよび方法、汚染されているか、回収されるか、あるいは承認されていない部品、供給品およびキットの利用あるいは再利用を防ぐための種々のデバイスおよび方法を提供することにより、上記の品質および安全性への懸念に対する解決策を提供する。
【0012】
本発明は、患者健康モニターおよび他のサブシステムと一体化されることができる、スタンドアローンの薬物送出デバイス、とりわけスタンドアローンあるいは自律式の薬物注入ポンプおよび薬物送出システムなどに適用することができる。また本発明は、使い捨ての、およびある特定の再利用可能な医療用部品、供給品およびキットを利用する医療デバイスおよびシステムにも幅広く適用することができる。
【0013】
使い捨ての部品、供給品およびキット、ならびに投与されることになる薬物のアイデンティティおよび製造業者に関する情報が、部品、供給品およびキットに装着される品質保証モジュールあるいはマーカ(QAM)内に符号化されることができる。とりわけ1次元および2次元バーコード、1次元および2次元記号表示法、ホログラム、書かれた文字、無線周波数識別デバイス(RFID)、集積チップスマートカード、EEPROMタイプマーカなどの種々のマーカモダリティを用いることができる。QAM上に符号化される情報は安全保護のために暗号化されることができ、その情報は、個々にタグ付けされる医療用部品、供給品あるいは製品に固有の識別手段を含むことができる。全てのそのような情報は、リーダデバイス(とりわけ、リーダ、スキャナあるいはイメージングエンジンを用いることができる)によって検出され、メモリに格納されるか、あるいは電子コントローラによってアクセスされることができる製品データおよび安全性データに対して評価および/または比較を行うために、薬物投与デバイスまたはシステムの電子コントローラに提供される。マーカ内に符号化されるデータの解釈すなわち翻訳は、リーダにおいて、薬物投与デバイスまたはシステムのコントローラにおいて、あるいは薬物投与デバイスまたはシステムのコントローラに動作可能に接続されるリモートサイトにおいて実行されることができる。製品のQAM内に符号化される情報がコントローラに対して有効であると指示されたときにのみ、その製品はそのデバイスまたはシステムで用いられるのを認められるであろう。
【0014】
薬物投与デバイスまたはシステムの汚染された使い捨ての部品、供給品およびキットの安全でない再利用を防ぐために、本発明は、利用される部品、供給品およびキットを検出し、拒否するためのシステムを提供する。未使用の部品、供給品およびキットは、薬物投与デバイスまたはシステムで最初に用いられる際に変更される。そのような変更があるか否かを検知する検出器が提供される。そのデバイスまたはシステムの電子コントローラは、再利用検出器からの信号が、利用変更がないことを指示する場合にのみ、部品あるいは供給品を容認し、そのデバイスまたはシステムに取り付けられた部品あるいは供給品で投与を実施できるようにするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の特定の実施形態の概略図である。
【図2】QAMが共通の読取りフィールド内に配置される本発明の一実施形態の立面図である。
【図3】QAMが共通、かつ垂直の読取りフィールド内に配置される本発明の一実施形態の立面図である。
【図4】ある製品が1DバーコードQAMを有し、他の製品が2DバーコードQAMを有し、それらのQAMがいずれも共通の読取りフィールド内に配置される本発明の一実施形態の立面図である。
【図5】バイアルQAMが無線周波数識別タグであり、カセットQAMがバーコードである本発明の一実施形態の立面図である。
【図6】バイアルQAMおよびカセットQAMがいずれもホログラムである本発明の一実施形態の立面図である。
【図7】本発明によるカセット再利用指示デバイスの一実施形態の立面図である。
【図8】本発明によるカセット再利用指示手段の別の実施形態の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、品質保証を高め、誤用を防ぎ、さらに医療品に対してなされる不良品の回収、探索または類似の方策を容易にするデバイスおよび方法を含む。本発明に関するこの説明は薬物投与に適用することができるデバイス、デバイスおよび方法に焦点を当てているが、それらは、とりわけ、透析用カートリッジおよびキット、ならびに診断用キットなどの他の医療分野の他の医療品およびキットに対しても幅広く適用することができる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の種々の要素間のデータの流れを示す。品質保証モジュールまたはマーカ(QAM)が、薬物投与デバイスまたはシステム10の部品または供給品からなる使い捨ての部品、供給品およびキットに与えられる。QAMは、部品、供給品あるいはキットの供給元および識別情報を、あるいは薬物容器の場合には、薬物そのものに関する情報を符号化する。
【0018】
薬物投与デバイスまたはシステム10の一例が、1999年6月3日に出願され、参照して本明細書に援用される米国特許出願第09/324,759号に記載される。特許出願第09/324,759号の鎮静および鎮痛システムは、患者に取り付けられ、患者の少なくとも1つの生理学的な状態を反映する信号を生成するように構成される患者健康モニターデバイスと、患者に1つあるいは複数の薬物を供給する薬物送出コントローラと、少なくとも1つのモニターされる患者の生理学的な状態の安全なパラメータおよび望ましくないパラメータを反映する安全性データセットを格納するメモリーデバイスと、患者健康モニターと、薬物送出コントローラと、安全性データセットを格納するメモリーデバイスとの間に相互に接続される電子コントローラとを備え、上記電子コントローラは、患者の少なくとも1つの生理学的な状態を反映する信号を受信し、それに応答して、安全性データセットを踏まえて薬物の適用を管理する。電子コントローラによって参照されるような安全性データセットはさらに、薬物、供給品、部品あるいはキットの識別情報および/または供給元のために適した値に関する情報も含むことができる。
【0019】
デバイスまたはシステム10で用いることができ、QAMでマーキングされる部品あるいは供給品の例には、薬物容器12および薬物カセット8(図2に示される)が含まれる。薬物容器12は、デバイスまたはシステム10の利用者に関連する特定の情報を提供することによってその内容物を特定する、とりわけ、タグあるいはラベルのような薬物容器QAM16でマーキングされることができる。薬物カセット8は、カセットQAM18でマーキングされることができる。薬物カセット8の一例が、2002年7月31日に出願され、その全体を参照して本明細書に援用される米国特許出願第10/208,184号に記載される。デバイスまたはシステム10の使い捨てのキット、供給品あるいは他の部品も、この説明においてカセット8および容器12がマーキングされるとの同じようにしてマーキングされることができる。
【0020】
図1をさらに参照すると、薬物容器QAM16内に符号化される情報は、とりわけ、薬物容器サイズと、容積あるいは断面積78と、薬物濃度79と、薬物成分(drug mix)80(たとえば、局部麻酔薬およびプロポフォール、あるいはオピオイドおよびプロポフォール)、固有かつ/または独占的な(proprietary)シリアル番号71と、製造業者ID73と、容器がいっぱいであるときの名目上の(nominal)薬物容積81と、URI(Uniform Resource Identifier)としても知られているURL(Uniform Resource Locator)のようなアドレス83とを含むことができ、とりわけ、回収情報、標識の推奨、処方の推奨、配合禁忌、薬物相互作用の可能性および薬物の副作用のような最新の情報は電子ネットワークを介してアクセスされることができる。
【0021】
カセットQAM18内に符号化される情報は、とりわけ、製品ID74と、製造業者ID75と、ロット番号76と、固有シリアル番号72と、有効期限77とを含むことができる。カセットQAM18は、符号化される情報の高データバージョンおよび低データバージョンの両方を含むことができる。カセットQAM18の高データバージョンは、製造業者識別情報75と、製品識別情報74と、ロット番号76と、それを用いて最新の情報が電子ネットワークを介してアクセスされることができる、URI(Uniform Resource Identifier)としても知られているURL(Uniform Resource Locator)のようなアドレス82と、有効期限77とを符号化することができる。投与デバイスまたはシステム10の電子コントローラは、薬物カセットのための製品識別情報を用いて、製品ID74と、特定のカセットの、デッドスペースボリュームあるいは内容積および流動抵抗のような既知の特性とを一致させることにより、プライミングおよびパージングボリュームを適当に制御し、閉鎖検出閾値を設定する。カセットQAM18の低データバージョンも考慮され、それにより、格納されるデータとして、高データバージョン内に符号化されるパラメータの一部を用いることができる。
【0022】
図1をさらに参照すると、QAM16および18内に符号化されるデータはリーダ20によって読み取られる。リーダ20は、そのデータを、薬物投与デバイスまたは投与システム10に設けられる電子コントローラあるいはCPUに伝達する。デバイスまたはシステム10はそのデータを格納し、内在するメモリ2(実線の双方向の矢印)あるいは遠隔にあるメモリ2(ブレークマークが入った破線の双方向の矢印)からの、認定された製造業者識別リストのような予めプログラムされたデータを参照する。デバイスまたはシステム10は、リーダ20から受信されたデータを、ユーザインタフェース4を介して利用者に伝えることもできる。
【0023】
QAMがカセットQAM18上に有効期限77のような有効期限を格納し、リーダ20が、QAMを有する部品、供給品あるいは薬物が有効期限を過ぎていることを、送出デバイスまたはシステム10のコントローラに伝えるとき、コントローラは、期限を過ぎた部品、供給品あるいは薬物が利用されるのを防ぐことができる。
【0024】
QAMが、固有のシリアル番号71、72あるいはいくつかの他の使い捨ての部品に割り当てられるシリアル番号を格納するとき、そのシリアル番号はリーダ20によって検出され、その後、メモリ2に保管されることができる。その後、デバイスまたはシステム10に設けられる電子コントローラあるいはCPUが、薬物容器またはカセットあるいは他の部品または供給品の利用を開始する前に、格納されたシリアル番号にアクセスする。リーダ20によって読み取られる、格納されたシリアル番号が、メモリ2に既に保管されているシリアル番号と一致する場合には、電子コントローラは、その部品あるいは供給品が以前に使用され、汚染されているものとして利用されるのを拒否するであろう。以前に使用され、かつ/または汚染された薬物投与部品、供給品およびキットをそのように拒否することは、汚染された使い捨ての部品、供給品およびキットが結果として再利用されることに伴う相互汚染の危険性を防ぐことにより、本発明の品質保証の態様を具現する。
【0025】
本発明の別の実施形態では、QAM内に符号化されるデータ、および固有のシリアル番号を含む薬物投与に関連するデータが、病院情報システム(HIS)コンピュータまたはデータバンク、あるいは集中管理される地方、国内または国際データバンクのような遠隔にある場所にあるメモリに格納されることができる。薬物投与デバイスまたはシステム10のコントローラが、そのような遠隔にあるメモリに動作可能に接続される。
【0026】
固有のシリアル番号で符号化されたQAMを有する部品、供給品あるいはキットが、製造業者および利用者の両方によって容易にログに記録され、在庫管理されることができることが考えられる。回収される不良品が個々に特定され、回収されない製品から高速に区分けされることができるため、本発明に従って固有のシリアル番号でマーキングされた特定の部品、供給品およびキットの不良品回収(あるいは製品を探索することを伴うようになる任意の他の過程)は、それらの番号に結び付けられたログおよび在庫リストによって円滑に進められるであろう。また、回収される不良品情報がプログラムされ、入力あるいはダウンロードされ、薬物投与デバイスまたはシステム10の、内在するか、あるいは遠隔にあるメモリ2内に格納されることができることも考えられる。その後、デバイスまたはシステム10で用いるために利用者によって提供される部品、供給品およびキットのQAM内に符号化される、固有のシリアル番号、およびバッチ番号のような他の製品情報が、電子コントローラによって、格納された不良品回収データと比較されることができる。その製品のQAMデータがその個々の不良品回収データと一致する場合には、コントローラは、その特定の部品あるいは供給品を拒否するか、あるいは薬物投与を実施する際に用いられるのを防ぐことができる。固有のシリアル番号を含むデータベースを用いる場合、用いられている各品目、および不良品回収のために利用できない各品目を探索することもできる。さらに、通知あるいは経過観察が必要とされる場合には、回収される不良品を受け入れたか、回収される不良品で処置されたか、あるいは回収される不良品と接触した各患者を探索することができる。
【0027】
部品、供給品およびキットの識別情報も、デバイスまたはシステム10の、内在するか、あるいは遠隔にあるメモリ2に格納される、事前にプログラムされた製造業者データと比較されることができる。製品のQAMに格納される製造業者情報が、認定された製造業者識別に関する、事前にプログラムされた情報と一致しない場合には、電子コントローラは、認定されていない実体によって製造されているものとして、その製品を拒否するか、あるいは利用されるのを防ぐことができる。認定された製造業者識別情報を持たない、薬物投与デバイスまたはシステムの部品、供給品およびキットをそのように拒否することは、承認されていないか、または認定されていない実体によって製造される使い捨ての部品、供給品およびキットを利用することに伴う製品の不適合あるいは劣悪な製品の性能に起因して患者の安全性が脅かされるのを防ぐことにより、本発明の品質保証の態様を具現する。
【0028】
上記の拒否のうちの任意のものの通知が、ユーザインタフェース4を介して、投与デバイスまたはシステム10の利用者に伝えられることができる。さらに別の実施形態では、製品のQAM内に符号化される情報のうちの任意のものあるいは全ての部分が、可聴あるいは視認デバイスを含む種々の手段のうちの任意の手段によって、利用者に伝えられることができる。たとえば、製品のQAM内に符号化される製品の製造業者のアイデンティティが、特に固有のサイン音、サウンドまたは一連のサウンドによって利用者に聴取可能に提示されるか、あるいはユーザインタフェースデバイスの画面上に表示される固有の画像、ロゴ、名称あるいは頭字語によって視認可能に提示されることができる。
【0029】
好ましい実施形態では、製品のQAM内に符号化される固有のシリアル番号あるいはその番号の一部が暗号化される。単なる例示にすぎないが、シリアル番号は、たとえば、とりわけ、シリアル番号の端に付加的な数字を追加することにより暗号化されることができ、その付加的な数字にはたとえば、シリアル番号を、たとえば7で割った商の2番目の整数が用いられる。たとえば、シリアル番号が16735894である(それゆえ、その番号を7で割った商が2390842である)場合には、付加的な数字は3であり、暗号化されたシリアル番号は167358943になるであろう。QAMが検出されると、デバイスまたはシステムのマーカリーダあるいは電子コントローラ、またはデバイスまたはシステムの電子コントローラに動作可能に接続されるリモートサイトが、固有のシリアル番号−付加的な数字の組み合わせを登録し、最後の数字を分離し、事前にプログラムされた計算を実行して、その数字が暗号方式と一致したか否かを調べるであろう。一致しなかった場合には、リーダまたはコントローラ、あるいはコントローラに動作可能に接続されるリモートサイトが、そのシリアル番号を認定されていないものとして拒否するであろう。上記の例を用いるとき、暗号化されたシリアル番号167358947は拒否されるであろう。種々の他の暗号化方式が利用可能であり、用いられることができる。たとえば、QAMから読み取られる暗号化コードが、文字A〜Z、あるいは別法では「a」〜「z」に直に位置付けられるシリアル番号(0〜25)のモジュロ26(シリアル番号を26で割った後の剰余)演算の結果に等しくない場合には、そのシリアル番号は拒否されることができる。マーカ内に暗号化されるデータの解読は、リーダにおいて、薬物投与デバイスまたはシステムのコントローラにおいて、あるいは薬物投与デバイスまたはシステムのコントローラに動作可能に接続されるリモートサイトにおいて実行されることができる。
【0030】
各部品、供給品あるいはキットにシリアル番号を割り当て、シリアル番号を割り当てられたQAMを部品、供給品あるいはキット上に配置する機構が、用いられる各シリアル番号を見失わないように、シリアル番号には識別可能な独自性を有する数字、文字あるいは他の記号からなる文字列を用いることができる。たとえば、シリアル番号のために8桁の数字を用いることができ、この機構は、それぞれマーキングされる部品あるいは供給品に、00,000,000から99,999,999までの固有の数字を割り当てることができ、1億通りの固有のシリアル番号が生成される。上記のように、暗号化方式に応じて、シリアル番号を形成する数字の列の中に、付加的な9番目の文字が任意の場所において追加されることができる。さらに、利用可能な固有のシリアル番号の数は、たとえば、製品の需要が伸び、元の固有のシリアル番号が枯渇し始めるのに応じて、固有のシリアル番号に割り当てられる数字の数を8から10に、12に、および14に増やして、さらに多くの数字および/または英数字(小文字および大文字を含む)をシリアル番号に割り当てることにより、格上げされることができる。
【0031】
再び図1を参照すると、薬物容器サイズ78は、容器サイズあるいは薬物容器に格納される薬物の名目上の量を指すことができ、それを用いて、薬物投与中の所与の薬物容器内の薬物が今にも使い尽くされようとしていることを予測することができる。薬物の最初の量はQAM16内に格納されるデータから知ることができる。所与の薬物容器が薬物投与デバイスまたはシステム10上に配置される時刻は、リーダ20を用いて求めることができる。それは、QAM16が最初に検出された時刻である。薬物が最初に流動し始める時刻は、所与の薬物容器の場合に、とりわけ、薬物注入ポンプのような薬物送出デバイスの中の流量が0以外の値になる最初の時刻として求めることができる。送出デバイスまたはシステム10によって送出される薬物の量(プライミングおよびパージングのための薬物の量を含む)を時間とともに積分することにより、所与の薬物容器から抽出される容積、および残りの薬物の量を推測することができる。積分時間のための開始時刻には、とりわけ、新たな薬物容器を最初に検出した時刻、あるいは薬物送出デバイスまたはシステムの中の流量が最初に0以外の値になった時刻のうちの任意の時刻を用いることができる。利用者は、ユーザインタフェース4を介して、薬物が今にも使い尽くされようとしていることを通知されることができる。薬物が今にも使い尽くされようとしていることが指示される場合には、コントローラは、送出デバイスまたはシステム10をシャットダウンすることができるか、あるいは送出デバイスまたはシステム10を、シャットダウンを準備する高度の警戒状態にすることができる。
【0032】
時刻(新たな薬物容器を最初に検出した時刻、急変(spiking)の時刻および所与の薬物容器の場合に薬物の流量が最初に0以外の値になった時刻)のうちの任意のもの、あるいはそれらの時刻の組み合わせがデバイスまたはシステム10の電子コントローラによって用いられ、所与の薬物容器内の薬物が最初に風媒性の微生物に曝露された可能性がある時刻を推測することができる。デバイスまたはシステム10に配設されるタイマが、風媒性の微生物に曝露された可能性がある最初の時点からの経過時間をカウントし、ある特定の時間閾値、たとえばプロポフォールの場合には6時間が経過した時点でコントローラに通知することができる。そのような通知があったとき、コントローラは薬物容器からの投与を中止し、新たな薬物容器およびカセットの挿入を要求することができる。所与のバイアルの場合に注入が開始されてから6時間が経過したとき、ソフトウエアが、「バイアル期限切れ」システム助言アラームを生成することができる。所与のカセットの場合に注入が開始されてから6時間が経過したとき、ソフトウエアが、「カセット期限切れ」システム助言アラームを表示することができる。薬物容器またはカセットのいずれかの場合に6時間が経過したとき、ソフトウエアは、「カセットおよびバイアル交換」メッセージを表示することができる。
【0033】
図2は、薬物容器12および薬物カセット8がそれぞれQAM16および18でマーキングされた本発明の一実施形態によるマーカシステムを示す。容器QAM16は既存の製造業者のラベル14の端に、あるいは容器12そのものの上に配置される。QAM16は、既存のラベル14上に印刷された情報を隠さないように位置決めされ、かつ/またはデザインされることができる。QAM16は、ラベル製造業者の設備か、薬物を供給する製薬設備かのいずれかにおいて、ラベル14上に配置されることができる。別の例として、QAMあるいは繰り返される一連のQAMが、ラベル上に印刷される既存の情報を妨げないように、たとえば20mlAstra−Zeneca Diprivan(商標)プロポフォールバイアル上にある、製造業者の自社バーコードおよび他の情報を含むことができる既存のラベルの端に沿って配置されることができる。
【0034】
容器QAM16は、既存のラベル14の周囲あるいは周辺に、あるいは容器12そのものの上に規則的あるいは不規則な間隔で繰り返されることができる。たとえば、ある特定のタイプのQAMの同一のコピーが、容器の周囲にわたって2分の1インチ毎に、概ね円筒形の薬物容器の表面上に配置されることができる。この実施形態によれば、リーダ20が適所に固定されたままであっても、容器QAM16を読み取ることができ、デバイスまたはシステム10の利用者が、容器12を、読取りが行われるのに最も適した位置にくるように位置付ける必要はない。
【0035】
図2は、容器QAM16と同じように、QAMリーダ20の同一走査フィールド22内にあるカセット8の延長部8aの平坦な表面上にあるカセットQAM18を示す。カセットQAM18は、容器12がカセット8上にスパイクされる(spike)ときに、薬物容器QAM16と共通の走査フィールド内に存在するように構成される、フィンあるいは延長部8aを含む、カセット8の種々の表面上に配置されることができる。
【0036】
カセット8および薬物容器12がいずれも本発明に従ってデータを符号化するQAMを有するとき、各製品のQAMが読取り可能でなければならない。単一のリーダ20が、固定された位置からQAM16および18(ならびに関連する製品上にある任意の他のQAM)を検出できるように配置されることが好ましい。これを果たすために、カセットQAM18および容器QAM16は、それらの個々の製品上に、それらの製品が投与デバイスまたはシステム10の適所に挿入されるときに走査線22の共通のゾーンあるいはフィールド内に入るように配置されることができる。それゆえ、リーダ20のハウジングは、1つのQAMを読み取った後に、別の関連するQAMを読み取るために配置され直す必要はない。
【0037】
別法では、QAMは、単一の固定されたリーダによって読取り可能な共通のゾーンあるいはフィールド内に入らないように配置されることができ、結果として、2つ以上のリーダが用いられることになるか、あるいは単一のリーダの走査フィールドの向きを変更し、そのリーダが不連続の、あるいは整列していないQAMを読み取ることができるようにするために複雑な仕組みが用いられるようになる。
【0038】
図3は、容器QAM16およびカセットQAM36が薬物容器12に対して垂直に配置される、本発明の別の実施形態によるマーカシステムを示す。この実施形態では、薬物容器QAM16は依然として、既存のラベル14の周囲あるいは周辺に、あるいは容器12そのものの上に連続して環状に繰り返されることができるが、QAM16の実際の記号はリーダ20の垂直な走査フィールド22内で読み取られる。
【0039】
本発明で用いるために種々のタイプのマーカが考えられる。たとえば、とりわけ、バーコード、ホログラム、書かれた文字、無線周波数識別デバイス(RFID)、およびEEPROMタイプマーカなどのマーカタイプのうちの任意のものあるいはその任意の組み合わせを用いることができる。上記のリストは他のものを排除することを意図するわけではなく、薬物投与デバイスおよびシステムの使い捨ての部品、供給品およびキット上に上記の情報をマーキングする他の手段を本発明とともに用いることもできる。
【0040】
リーダ20はソフトウエアあるいは他のファームウエアを実行することができ、本発明で設けられる、少なくとも1つであるが、好ましくは2つ以上のタイプのマーカを読み取ることができる。たとえば、バーコードリーダが、バーコードQAMを読み取るために配設され、光学式文字認識(OCR)デバイスが、書かれたQAMを読み取るために配設され、レーザがホログラムQAMを読み取るために配設され、RFIDアンテナおよびリーダ回路がRFID QAMを読み取るために配設される。最初の利用時に特徴部が変更されたか否かを検出する検出器を用いて、最初に利用される前に未変更の特徴部を検出することにより、認定された品質の製造業者からの薬物バイアルならびに使い捨ての部品、供給品およびキットの存在を特定することもできる。
【0041】
2つ以上の部品あるいは供給品がそれぞれ読み取られることになるQAMを備えるときに、それらが単一のQAMリーダによって一緒に読み取られることが考えられる。種々のタイプのQAM形式(バーコード、ホログラム、書かれた文字、RFIDおよびEEPROMタイプ素子など)を読み取ることができるスキャナが存在し、本発明とともに用いられることが考えられる。たとえば、米国特許第6,264,106号は、RFID素子およびバーコードの両方に符号化される情報を読み取り、解釈することができる組合せRFID−バーコードスキャナを記載する。それゆえ、薬物投与デバイスまたはシステム10の種々の使い捨て部品、供給品およびキットはそれぞれ、異なるQAM形式を用いてマーキングされることができる。1つの部品あるいは供給品が、2つ以上のQAMあるいは2つ以上のタイプのQAM形式を有する場合もあり、それぞれを読み取ることができるリーダが用いられる場合もある。
【0042】
再び図3を参照すると、薬物容器QAMがたとえばバーコードである本発明の実施形態では、垂直方向に(たとえば、バイアルの中心線に沿って)走査される低密度のコードの場合に入射角を概ね0°に保持することは、低密度のコードが容器12の周囲あるいは周辺に配置され、水平方向に走査される場合ほどの問題ではないかもしれない。これは、リーダ20の垂直な走査フィールド22に対して、薬物容器12の表面が、それゆえQAM16が、見通し線を必要とするリーダのための走査フィールド22の平面から外れて曲がらないためである。垂直なカセットQAM36は、リーダ20の垂直な走査フィールド22内に入るように、カセット延長部8b上に配置される。
【0043】
一実施形態では、QAMはバーコードのような記号を含む。種々のバーコード用の記号表示法が存在し、本発明によれば、2つ以上の記号表示法のうちの任意のものあるいはその組み合わせを用いて、薬物投与デバイスおよびシステムの使い捨ての部品、供給品およびキットをマーキングできることが考えられる。その記号表示法に応じて、使い捨ての部品、供給品およびキットをマーキングするために用いられるバーコードのサイズを変更することができる。また、バイアルの表面のような曲面上で用いられるとき、バーコード記号は、リーダビームが概ね0°の入射角でバーコード上に衝当するように大きさが決められるか、(小さなサイズの高密度記号表示法など)選択されることも好ましい。入射角は、入射するリーダビームと、バーコードに対する法線(バーコードの表面に対して垂直な仮想的な線)との間の角度と定義される。概ね0°の入射角は、バーコード上に衝当する際にリーダビームが厳密に合焦したスポットを保持し、それにより低密度および高密度の両方のバーコードが正確に読み取られることができるようにする。極端な例として、入射角が概ね90°(入射リーダビームが概ねバーコードと平行)であったなら、バーコードに衝当する際にリーダビームは不鮮明な大きな楕円形になり、反射されるビームの大部分がリーダから外れる方向に向けられ、バーコードを読み取ることが不可能ではないが、非常に難しくなる。バイアルの表面のような曲面上に配置されるとき、バーコードの幅が広くなり、リーダの走査面からさらに離れて曲がるので、リーダビームの入射角が大きくなり、リーダがバーコードを読み取ることができなくなる可能性が高くなるであろう。この問題は、レーザおよび光ビームのような電磁ビームによって読み取られる必要がある、曲面上にあるバーコードおよびホログラムのような全ての記号に当てはまる可能性があり、幅が広くなる傾向がある低密度のバーコードの場合にはさらに顕著になるかもしれない。低密度のバーコードが、薬物カセットの表面上に配設される場合のように、平坦な表面上に配置されるときには、ひずみの問題を引き起こすことはほとんどないかもしれない。
【0044】
バーコードのような記号の大きさを調節して、曲面に貼付されるシンボル上で概ね0°のリーダビームの入射角を確実にすることができる好ましい方法は、高密度の記号表示法を選択することであり、その場合、同じ量の符号化された情報を表現するために、低密度の記号よりも、それらが配設されるのに必要とされる面積が小さくて済む。それゆえ、本発明のある特定の実施形態では、カセット、薬物容器および関連する薬物投与製品上のQAMの場合に高密度のバーコードを使用すること、薬物容器QAMの場合にのみ高密度の記号を使用し、カセットQAMの場合には低密度の記号を使用すること、あるいは曲面を有する薬物容器上の低密度の記号が、リーダビームの概ね0°の入射角を確保できるような大きさにされることができるなら、カセットおよび薬物容器の両方の上にあるQAMの場合に低密度の記号を用いることが考えられる。例示的な実施形態では、MaxiCodeおよび/またはMicro PDF417のような2次元バーコード記号が薬物容器上の高密度のQAMとして用いられ、一方、1次元バーコードが、薬物カセット上の低密度のQAMとして用いられる。
【0045】
上記のように、バーコード記号表示法の組み合わせ、たとえば高密度および低密度が一緒に、本発明に従って使い捨ての部品、供給品およびキットをマーキングするために用いられることができる。さらに、1つの使い捨ての部品あるいは供給品上にある1つのマーカ内に2つ以上のバーコード記号表示法が一緒に用いられることができることも考えられる。2つ以上のバーコード記号表示法を一緒に読み取ることができるリーダ、スキャナおよびイメージングエンジンが存在し、本発明とともに用いることが考えられる。そのようなスキャナの一例は、Symbol Technologies 2223バーコードスキャナである。
【0046】
バーコードがマーカとして用いられる本発明の実施形態では、コードの記号は、必ずしもそうである必要はないが、視認可能なインクでラベル上に、あるいは専用のエリアに印刷されることができる。ラベルあるいは専用エリアの美観を保護するために、バーコードあるいは記号は、赤外線あるいは紫外線インクのような視認できないインクで印刷されることもできる。視認できないバーコードは、それが容易に検出されることができない、それゆえ許可なく容易に再現あるいは変更されることができないという点で、本発明のマーキング技術に対して付加的なセキュリティの仕組みも提供する。
【0047】
図4は、薬物容器QAM42が高密度2Dバーコードであり、一方、カセットQAM34が低密度1Dバーコードである、本発明のさらに別の実施形態によるマーカシステムを示す。この実施形態では、2Dバーコード薬物容器QAM42はこれまでどおりに、既存のラベル14の周囲あるいは周辺に、あるいは容器12上に、連続して環状に繰り返すコードとして配置されることができる。リーダ20が、同じ走査フィールド22で、高密度薬物容器QAM42および低密度カセットQAM34の両方を読み取ることができる。
【0048】
図5は、薬物容器QAM54が薬物容器ラベル52内に埋め込まれる受動的で、安価で、使い捨てで、非接触で、不揮発性の読出し/書込み無線周波数識別(「RFID」)タグである、本発明のさらに別の実施形態によるマーカシステムを示す。カセットQAM82は一般的なバーコードとして示される。RFIDタグおよびバーコードの両方の中に符号化された情報を検出することができる一体型のRFID−バーコードリーダおよびスキャナ50も示される。RFIDマーカは必ずしもラベル内に埋め込まれるわけではなく、容器、ラベル、部品あるいは供給品に視認可能に貼付されることができる。RFID素子は特別な製品ラベル内に埋め込まれることもでき、その場合、そのラベルはこれまでどおりに、その表面上に、通常のやり方で製造業者に割り当てられる情報を表示することができる。埋め込まれるときに、RFID素子はラベルの表面下に見えないように隠されることができる。またRFID素子は、薬物投与デバイスまたはシステムとともに用いるための製品、あるいは使い捨て製品上の既存の製造業者のラベルに貼付されることもできる。この実施形態では、RFIDリーダを用いて、RFID QAM内に符号化された情報が読み取られる。
【0049】
リーダ50は、数ある技法の中でも、誘導性結合を介して(たとえば、アンテナを用いることにより)あるいは容量性結合を介して(たとえば、リーダからの静電荷を収集する導電性カーボンインクを用いることにより)、RFID QAMとのインタフェースを形成することができる。TI、Motorola、Philips、Mitsubishi、Intermec、MicronおよびSCSのような製造業者からのRFIDタグが、本発明によるQAMとして用いられることができる。本発明の特定の実施形態では、RFID QAM54は、4フィートの読取り距離および13.56MHzで、256ユーザプログラマブルデータビットを扱うテキサス・インスツルメント社から市販される誘導性結合式Tag−itRFIDラベルのような、小さく(たとえば、1.8インチ×1.8インチ)、薄い(たとえば、最大0.015インチ/最小0.003インチ)粘着テープである。そのようなタグは、バイアル(たとえば、プロポフォールまたは他の薬物あるいは任意の他の医療用液体のバイアル)、あるいは他の使い捨て、または再利用可能な医療用供給品あるいは部品上の通常のラベルの代わりに用いられることができる。256ビットは1.2×1077(すなわち2256)の固有のID番号を生成することができることは、当業者には理解されよう。
【0050】
RFID QAMはオートクレーブ可能(autoclavable)であり、ほこり、油脂、掻き傷、摩滅に耐える。同時に2つ以上のRFID QAMを読み取ることができる。RFIDリーダは、見通しで読み取る必要はなく、タグに対して直に接触したり、動かしたりする必要もない。RFIDリーダは、アンテナのサイズおよび電力によっては、4フィートより長い距離において読み取ることができる。QAM54を不正開封することは、製造中にRFIDタグをラベル52内に、あるいは容器12そのものの中に埋め込み、直に接触できないようにすることにより阻止されるか、あるいは、埋め込まれたタグに物理的に接触することは、たとえば物理的な接触がなければ気密であるシステム内に漏れを生じさせることにより、医療用供給品を無効にするであろう。
【0051】
電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)集積回路(「IC」)のような電子タグ(たとえば、Microchip24C00)も、本発明によるQAMとして用いることができる。RFID QAMおよびEEPROM QAMのさらに別の例が、2001年5月21日に出願され、参照して本明細書に援用される米国特許出願第10/151,255号に開示される。
【0052】
別法では、クレジットカードの裏面にあるような磁気ストリップを、医療用供給品、部品およびキットのためのQAMとして用いることができる。磁気ストリップが用いられる場合、そのストリップを動かして読取りヘッドを通過するときに、磁気ストリップと接触するように読取りヘッドが実装されることができる。この動きは一定である必要はないが、動きを止めることはできない。この動きは、医療用供給品、部品あるいはキットを物理的に取り付けている最中に、磁気ストリップQAMが読取りヘッドと接触し、読取りヘッドに対して動くように、読取りヘッドが投与システムあるいはデバイス10上に配置されるときに得られる。同様に、使用後に医療用供給品、部品あるいはキットをシステムあるいはデバイス10から取り外す際にも、磁気ストリップが読取り/書込みヘッドに接触し、その符号化されたデータが変更されるか、あるいはそのシリアル番号のログが記録され、特定の供給品、部品あるいはキッドが使用済みであることを指示するようにすることができる。
【0053】
さらに、スマートカードを医療用供給品、部品およびキットのためのQAMとして用いることができる。スマートカードあるいは集積回路(IC)チップQAMは、その部品に組み込まれることができるか、その部品に繋ぎとめられるができるか、あるいはその部品から物理的に切り離すことができる。非接触のスマートカードQAMは、RFIDと同じようにして医療品内に組み込まれることができ、接触型のスマートカードQAMは、EEPROM QAMと同じようにして医療品に組み込まれることができる。この組み込みは、ICチップを医療品の材料内に埋め込むことにより達成されることができる。
【0054】
またスマートカードQAMは、本発明にしたがってタグ付けされる医療用供給品、部品およびキット、あるいはそれらの製品のグループに繋ぎとめられることもできる。繋ぎとめる手段には、プラスチックの輪あるいは任意の他のそのような仕組みを用いることができる。繋ぎとめる手段は、偶然に、あるいは故意に切断されるか、あるいは不正開封されるのを防ぐのに適したデザインおよび材料から形成されることもできる。非接触のスマートカードQAMは、リーダ20と手作業で位置合わせする必要がないので、接触型のQAMと比べて、繋ぎとめるのにさらに適しているかもしれない。別法では、スマートカードQAMは、そのQAMがデータを符号化する医療品から切り離すことができる。個別のスマートカードQAMが、医療品とともにパッケージングされることができる。また、個別のスマートカードQAMは2つ以上の医療品のためのデータを符号化することもでき、そのスマートカードQAMがデータを符号化するそれらの製品のグループ全体とともに、あるいはその一部とともにパッケージングされることができる。
【0055】
本発明によれば、加熱時に色が変化する熱変色性インク、あるいはある特定の状況において、タグ付けされることになるある特定の商品上で用いることができるスクラッチ・アンド・スニフコーティングのような物理的な指示子を含む、他のQAMの実施態様を用いることもできる。さらに、たとえばブルートゥースなどの別の電子データ転送機構をQAMとして用いることもできる。
【0056】
図6は、薬物容器QAM58およびカセットQAM60がいずれもホログラムである、本発明のさらに別の実施形態によるマーカシステムを示す。両方の製品QAM上に符号化される情報を読み取ることができるホログラムリーダ56が示される。本発明によるQAMとして用いることができるホログラムのタイプは様々であり、限定はしないが、エンボス加工、フォトポリマー、重クロム酸ゼラチン、ハロゲン化銀および/または光学的変化可能素子(OVD)を含む。ホログラムの圧痕が、プラスチックフィルム、金属化紙および/または透明フィルムのような基板材料内にエンボス加工されることができる。QAMがフォトポリマーホログラムである実施形態では、ホログラムは、好ましくはポリエステルフィルム基板上に堆積される感光性の媒体を用いて生成されることができる。ホログラムQAMが重クロム酸ゼラチンから生成される実施形態では、用いられる基板はガラスであることが好ましい。ガラス基板は特に、ある特定の薬物容器のガラスウエルに適用することができる。ホログラムQAMがハロゲン化銀工程によって生成される実施形態では、感光性の媒体がポリエステルあるいはアセテートフィルム基板上に堆積される。ホログラムQAMがOVDである実施形態では、OVDは回折性の光学的変化可能イメージ素子(DOVID:diffractive optically variable image device)あるいは光学的なフォイルあるいはフィルム製品であることが好ましいが、インク製品を用いることもできる。OVDは、認定されていない部品、供給品およびキットの見せ掛けの提供者を阻むことができるという点で、本発明のQAMに対してさらに大きな品質保証を提供することができる。ホログラムQAMのイメージには、3次元、2次元、2次元・3次元、一様に繰り返されるパターン、回折格子、ドットマトリクス、隠された画像、立体画像、マルチチャネル画像、白色光透過および白色光反射を含む、種々の異なる様式のうちの任意のものあるいはその組み合わせを用いることができる。この実施形態では、QAMとして用いられる特定のタイプのホログラム内に符号化される情報を読み取るために、ホログラムリーダを用いることができる。しかしながら、同じ、あるいは異なる部品、供給品およびキット上にある種々のホログラムQAMが同じリーダによって読み取られることができるように、汎用のホログラムリーダが用いられることが好ましい。
【0057】
図7は、投与デバイスまたはシステム10の再利用検出器28によって読み取られるカセット8上の再利用指示子あるいはフィン26を示す。カセット8がデバイスまたはシステム20の適所に挿入されると、そのカセットを壊すか、穴をあけるか、あるいは別の方法で変更するために、デバイスまたはシステム10の利用指示機構30が指示子26に向かって動かされることができる。カセット8がデバイスまたはシステム10から取り出される際に指示子26を壊すか、穴をあけるか、あるいは別の方法で変更するように、機構30はある固定された場所から動かないこともできる。カセット8が投与デバイスまたはシステム10の適所に挿入され、再利用検出器28が無傷あるいは未変更の指示子26を読み取る場合には、検出器28は、デバイスまたはシステム10の薬物流動コントローラに、そのように指示子が未変更であるという信号を送信するであろう。薬物流動コントローラは、指示子26が無傷であることを信号が指示しない場合には、薬物を投与できないようにすることができる。
【0058】
指示子26が変更された、使用済みで、汚染されたカセット8が、投与デバイスまたはシステム10の所定の場所に再び配置される場合には、デバイスまたはシステム10の再利用検出器28はその変化を読み取り、指示子が無傷である、すなわちカセットが一度も使用されていないことを指示する信号を薬物流動コントローラに送信しないであろう。本発明のこの実施形態は、使用済みで、汚染されたカセットが検出され、それ以上使用されることが拒否される手段を提供することにより、患者に薬物を自動的に投与することに関する安全性および品質を確実にする。別法では、図1を参照して先に記載されたように、薬物容器のための固有のシリアル番号に類似の固有のシリアル番号が薬物カセットQAM内にも符号化され、汚染されたカセットが再利用され、それに付随して交互汚染の危険性が生じるのを防ぐことができる。
【0059】
また図8は、本発明のカセット再利用品質制御機構46の別の実施形態を示す。利用指示機構46によって穴をあけられており、それにより機構46に配設されるセンサ84によって検出可能な穴44が残されるものとして、再利用指示子48が破断された図において示される。カセット8が薬物投与デバイスまたはシステム10上に配置されると、機構46上のセンサ84が、指示子48が穴あけされていない、すなわち未使用の状態であるか、穴44が存在するかを検出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型薬物送出システムであって、
患者に接続され、該患者の少なくとも1つの生理学的状態を反映する信号を生成するようになっている患者健康モニターデバイスと、
前記患者に1つあるいは複数の薬物を供給する薬物送出コントローラと、
前記システムに取外し可能に接続される少なくとも1つの医療品であって、該医療品は、該医療品に関する情報を格納するための品質保証モジュールを有し、該品質保証モジュールは前記医療品および/または前記医療品の供給元に固有の識別子を含む、少なくとも1つの医療品と、
前記医療品の前記品質保証モジュール上に格納される情報を読み取るためのリーダデバイスと、
パラメータにアクセスし、かつ前記患者健康モニター、前記薬物送出コントローラ及び前記リーダデバイスの間に相互に接続される電子コントローラであって、該電子コントローラは、前記患者健康モニターデバイスからの前記信号と前記リーダデバイスからの前記品質保証モジュール上に格納された情報とを受け取り、前記パラメータと前記情報とを比較して前記薬物の適用を管理する、電子コントローラとを備える一体型薬物送出システム。
【請求項2】
前記情報は前記医療品を識別する情報を含み、前記電子コントローラによって管理される前記薬物の適用は、前記識別する情報を前記安全性データセットに格納される前記情報と比較することに基づいて、前記医療品の使用を承諾するか、あるいは防止することを含む請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項3】
前記システムはさらに、前記医療品が前記システムに接続されるときに、ある特定の態様で前記医療品を変更するための機構と、前記医療品が前記システムに接続されるときの前記医療品内の前記特定の変更の存否に基づいて信号を生成する再利用検出器とを備え、前記電子コントローラはさらに、前記再利用検出器と相互に接続され、前記検出器によって生成される前記信号を受信し、前記電子コントローラによって管理される前記薬物の適用は、前記検出器によって生成される前記信号に基づいて前記医療品の使用を承諾するか、あるいは防止することを含む請求項2に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項4】
第2の医療品が、前記システムに取外し可能に接続され、前記第2の医療品は、前記第2の医療品に関する情報を格納するための第2の品質保証モジュールを有する請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項5】
前記リーダは、前記両方の品質保証モジュール上に格納される情報を読み取ることができる請求項4に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項6】
前記医療品は、静脈内薬物注入デバイスに取外し可能に取り付けることができ、
前記医療品は、前記薬物注入デバイスに取り付けられる際に、あるいは前記薬物注入デバイスから取り出される際に変更を受ける機械的利用指示子を含み、
前記利用指示子の前記変更は、前記薬物注入デバイスに設けられる利用検出器によって検出される請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項7】
前記薬物送出システムは、鎮静および鎮痛、深い鎮静、または全身麻酔のために用いられる請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項8】
前記医療品の前記識別子は、一旦、前記医療品が前記システムで用いられたなら、記録される請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項9】
前記医療品は、薬物投与キットである請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項10】
前記医療品は薬物容器であり、前記情報はさらに、前記薬物容器の特性、およびその中に提供される薬物に関する情報を含む請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項11】
前記情報はさらに、前記容器内に提供される前記薬物の濃度、薬物成分、前記薬物および/または前記容器の製造業者の識別情報、前記薬物および/または前記容器の有効期限、前記容器の寸法、前記容器が前記薬物で満たされたときの名目上の薬物容積、ネットワークアドレスからなるグループから選択される情報を含む請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項12】
前記医療品は薬物カセットであり、前記情報はさらに、前記薬物カセットの特性に関する情報を含む請求項1に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項13】
前記情報はさらに、前記薬物カセットの製造業者の識別情報、前記薬物カセットのための製品ID、前記薬物カセットのロット番号、前記薬物カセットの有効期限、前記薬物カセットに関連する薬物流路の内容積あるいはデッドスペースボリューム、および前記薬物カセットに関連する薬物流路の流動抵抗を反映する値からなるグループから選択される情報を含む請求項12に記載の一体型薬物送出システム。
【請求項14】
薬物容器に関する情報を格納する品質保証モジュールを有する薬物容器が前記薬物カセットに接続され、
前記薬物カセットの前記品質保証モジュールは、前記薬物容器および前記薬物カセットの両方の前記品質保証モジュールが前記品質保証モジュール上に格納される前記情報を読み取るリーダデバイスの共通の走査フィールド内に入るように、配置される請求項12に記載の一体型薬物送出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−246955(P2010−246955A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−143020(P2010−143020)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【分割の表示】特願2003−530197(P2003−530197)の分割
【原出願日】平成14年9月24日(2002.9.24)
【出願人】(502451904)スコット・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】SCOTT LABORATORIES, INC.
【住所又は居所原語表記】2804 N. Loop 289, Lubbock, Texas 79415, United States of America
【Fターム(参考)】