説明

薬物検出方法およびその装置

【課題】呈色試薬が必ずしも標的とする反応に特異的ではなく、妨害反応の影響を受ける場合にも、比較的簡易な検出系にて高感度、迅速、自動連続的に汚染薬物混入を検出する。
【解決手段】 a.試料を薬物特異酵素に曝露した酵素の活性の程度と、b.酵素に薬物特異酵素に曝露していない試料による呈色試薬の呈色の程度と、c.試料より薬物を除いた後、薬物特異酵素に曝露した酵素の活性の程度とを指標にして薬物の有無、濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境水に混入した薬物、または食品等に残留した薬物を検出する薬物検出方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境水中への異物・薬物混入への監視は、従来、特に浄水場や取水場等の上水分野において、水槽内で魚を飼育し、魚の行動・生死を監視することで行われてきた。
【0003】
しかし昨今テロ等の不安が高まり、より高感度な検出技術が求められていることから、微生物の呼吸活性を指標としたセンサが開発された(たとえば特許文献1参照)。すなわち、微生物を固定した膜を酸素電極上に固定し、毒物による微生物の酸素消費量の変化をモニタリングするものである。これにより、生物に対し悪影響を及ぼす化学物質の総合的な検出・監視が行われるようになった。
【0004】
しかし、微生物の呼吸活性を指標としたセンサは、主に工場の事故等による、シアンや水銀等の重金属の流出といった、急性毒性物質の混入を監視するのが目的とされている。例えば農薬や、一般に環境ホルモンと呼ばれる内分泌かく乱物質といった、断続的もしくは連続的に混入する、非常に稀薄な汚染物質に関しては、必ずしも感度を有しているとは言い難い。これらの極稀薄で慢性的な汚染物質の検出技術においては、ガスクロマトグラフィー(以下GC)や液相クロマトグラフィー(以下LC)の検出器にマススペクトル(以下MS)を搭載した装置による、分析技術が代表的である。特に上水分野に関しては、農薬はH.16年4月より、水質管理目標設定項目と定められ、分析の公定法はGC/MSおよびLC/MSを使用する。
【0005】
GCやLCといった分析装置以外の農薬や環境ホルモン等の検出技術としては、酵素や抗体を用いた技術があげられる。標的とする農薬に特異的に作用する酵素を抽出し、反応生成物を比色法で検出するもの(主として食品残留農薬の検出に関するものとして、例えば特許文献2参照)や、蛍光物質などで標識をした標的農薬特異的抗体を用いるもの(一般にイムノアッセイと呼ばれる簡易キットとして発売されている他、ELISA法とマイクロプレートリーダー等の組み合わせによる検出が行われている)がある。
【特許文献1】特開平11−37969号公報
【特許文献2】特許第3473022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
環境水への異物や薬物の検出技術は、上記のようにいくつかの形態で存在していたが、魚類の監視技術は、魚の種類や体重などの個体差により応答感度が変化する難点があった。また、全体として応答感度はそれほど高くなく、十分な感度があるとは言い難い。
【0007】
微生物の呼吸活性を指標とするものに関しては、シアンの流出事故など、突発的な急性毒性に関する総体的な毒性評価は得意であるが、上記の通り、急性毒性物質の混入を監視するのが目的とされている。例えば農薬や、一般に環境ホルモンと呼ばれる内分泌かく乱物質といった、断続的もしくは連続的に混入する、非常に稀薄な汚染物質に関しては、必ずしも感度を有しているとは言い難い。
【0008】
GC/MSやLC/MSは高価であること、及び連続的な運用が難しいことが障害となる。更に、高感度・高性能な分析装置である反面、運用には相当の技術が必要であり、どの浄水場でも容易に導入できるものではない。
【0009】
また、酵素や抗体を使用した、農薬や環境ホルモンの検出系に関しては、キットや分析装置による検出が主流である。キットは手軽ではあるものの、人手がかかり、さらに連続的もしくは半連続的な検出には適用が難しい。酵素利用のキットは、複数の薬物を一括して総体的に検出できるものもあるが、抗体を使用すると、特異性が高く高感度である反面、複数の不明な農薬が混入している可能性が高い環境水などへの適用は、事前に農薬種がわかっていない限り困難である。また、抗体に関しては、大量生産が難しいことから、非常に高価であるという難点がある。
【0010】
すなわち本分野においては、比較的簡易な検出系にて高感度、迅速、自動連続的に汚染薬物混入を検出可能な方法や装置が求められているといえる。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑み、呈色試薬が必ずしも標的とする反応に特異的ではなく、妨害反応の影響を受ける場合にも、比較的簡易な検出系にて高感度、迅速、自動連続的に汚染薬物混入を検出することができる薬物検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明は、請求項1では、酵素活性が試料に含まれる薬物により阻害されることを利用し、呈色試薬を用いた比色法によって試料中の薬物を検出する薬物検出方法において、a.試料を薬物特異酵素に曝露した酵素の活性の程度と、b.酵素に薬物特異酵素に曝露していない試料による呈色試薬の呈色の程度と、c.試料より薬物を除いた後、薬物特異酵素に曝露した酵素の活性の程度とを指標とすることを特徴としている。
【0013】
また、酵素がコリンエステル加水分解酵素であることを特徴としている。
【0014】
さらに、酵素の基質にコリンのチオエステルを用い、呈色試薬に5,5’一ジチオビス(2一ニトロ安息香酸)(以下DTNBと記す)を用いることを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項4の装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬物検出方法を使用して自動的に試料中の薬物を検出する薬物検出装置であって、少なくとも試料中の濁質を除去するろ過機構と、試料中の薬物を除去するろ過機構とからなる試料の前処理機構と、ろ過機構で濁質を濾過した試料および前処理機構で薬物を除去した試料に酵素を曝露するために所定温度に保持された反応槽と、反応槽またはその前段にて緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をろ過機構で濁質を濾過した試料および前処理機構で薬物を除去した試料に各々、添加する機構と、ろ過機構で濁質を濾過した試料および前処理機構で薬物を除去した試料の呈色の程度を知るために吸光度を測定する機構を持つ検出セルとを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項4に記載した薬物検出装置において、緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をそれぞれ長期保存可能な低温に維持する機構を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、請求項4または5に記載した薬物検出装置において、緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をそれぞれ反応槽に注入する際に、注入直前の配管内で、緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液を予め適切な温度に調整する機構を備えたこと特徴としている。
【0018】
また、請求項4乃至6のいずれかに記載した薬物検出装置において、薬物が検出された場合、もしくは、検出された薬物量あるいは薬物濃度が、予め設定した閾値を越えた場合に、特定の信号を発することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、呈色試薬が必ずしも標的とする反応に特異的ではなく、妨害反応の影響を受ける場合にも、比較的簡易な検出系にて高感度、迅速、自動連続的に汚染薬物混入を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係わる薬物検出方法および装置の実施例について、図面を参照して説明する。
【0021】
《第1実施形態》(請求項1〜3対応)
まず、図1、2を用いて第1実施形態を説明する。第1実施形態は、薬物検出方法に関するものである。
【0022】
図1、2においては、三種類の比色測定試料を酵素にコリンエステル加水分解酵素および酵素の基質にコリンのチオエステルを用い、呈色試薬に5,5’一ジチオビス(2一ニトロ安息香酸)(以下DTNBと記す)を用いて作成した場合に関し、経時的な吸光度変化モデルの一例を示した。三種類の試料に関し、以下に説明する。
【0023】
本発明は、薬物の検出を行うにおいて、薬物含有の有無を検出したい試料を該薬物により特異的に活性が阻害される酵素に曝露し、該酵素の活性が阻害された程度を該酵素の活性を比色法により知る方法に係わるものである。
【0024】
比色測定試料aは、該薬物特異的酵素に、薬物含有の有無を検出する試料を曝露し、呈色させたものである。比色測定試料bは、薬物含有の有無を検出する試料そのものの、呈色試薬との反応の程度を知るためのものである。比色測定試料cは、薬物含有の有無を検出する試料より該薬物を除いた後に、該薬物特異的酵素に曝露したものであり、該薬物による阻害なしに、酵素活性を測定する試料である。以上三種の試料は、酵素にコリンエステル加水分解酵素および酵素の基質にコリンのチオエステルを用い、呈色試薬に5,5’一ジチオビス(2一ニトロ安息香酸)(以下DTNBと記す)を用いた場合、通常は呈色の薄い順に、試料b,試料a,試料cとなる。
【0025】
酵素にコリンエステル加水分解酵素(ブチリルコリンエステラーゼもしくはアセチルコリンエステラーゼ)を用い、また、酵素の基質にチオコリン(ブチリルコリンエステラーゼの基質にはよう化Sブチリルチオコリンを用いることができ、アセチルコリンエステラーゼの基質には臭化Sアセチルチオコリンを用いることができる)、呈色試薬にDTNBを用いた場合は、酵素活性の測定は、以下の二段階の反応により行われる。
【0026】
まず、コリンエステラーゼによりチオコリンのエステル部が加水分解され、コリンとアルキルチオールが生成する。続いて、アルキルチオールがDTNBのジスルフィド結合に作用し、ジスルフィド交換反応により、5−チオ−2−ニトロ安息香酸(以下TNBと記す)が生成する。TNBは412nmに吸収極大を持ち、吸光度測定により定量可能である。
【0027】
以上のようにして比色法にて化学定量を行うに際しては、対照試料を取得することが一般に行われる。酵素活性の阻害の程度を測定することが目的である場合、酵素活性を阻害されない試料を対照試料とする。酵素にコリンエステル加水分解酵素を用いた方法においては、試料cが対照試料にあたる。
【0028】
試料cにおいては原試料より薬物を除去しており、酵素活性の薬物による阻害がないと考えられることから、酵素の本来の活性が測定され、対照試料となり得る。
【0029】
そこで、試料aと試料cの酵素活性を比較することにより、酵素活性の阻害の程度を判断することができる。ここで、毎回試料cを取得せずに、予め設定した条件において、模擬的な試料cを作成し、測定した活性値を装置に記憶させておく方法も考えられるが、特に環境水を測定の対象とする場合においては、環境水の水質が、時間の経過と共にばらつくため、望ましくない。また、装置を作成し、数週間から数ヶ月間の長期にわたり連続的な運用をした場合には、装置内で混合する試薬の経時的な劣化を考慮する必要もあり、予め得たデータを対照試料の代替とした場合に、高精度な測定が難しくなる。
【0030】
酵素反応の阻害の程度を判断するにおいては、一般にミカエリス・メンテンの式を用いることができ、検出対象薬物の阻害形式(拮抗阻害、非拮抗阻害等)に応じた阻害定数の算出により阻害の程度が判断できる。阻害の程度が判断できれば、混入した薬物種に応じた薬物濃度の判定が可能となる。
【0031】
本発明の特徴は、試料aへの対照試料として、試料cに加えて試料bを取得する点である。試料bには酵素を添加せず、原試料の呈色試薬への作用の程度を取得する。試料bの取得は、呈色試薬が必ずしも標的とする反応に特異的ではなく、妨害反応の影響を受ける場合に特に有効である。
【0032】
酵素の基質にチオコリン、呈色試薬にDTNBを用いた場合は、DTNBがチオールだけではなく、S0や、S2−によっても呈色を示すものであり、更にCNに関しては呈色を妨害する作用がある。このような妨害物質が混入する可能性のある試料に関しては、まず呈色試薬を加えない試料bにより吸光度測定のベースラインを補正した後に試料bを測定する。これにより、妨害物質による呈色の程度を知ることができ、試料aおよび試料cの測定結果から妨害物質の影響を除くことができる。これにより、酵素活性の測定をより正確に行うことができ、薬物検出の精度を向上することができる。
【0033】
特に原試料に環境水等の成分が不明なものを用い、溶媒抽出等の濃縮・精製操作を行わず、直接混入薬物の測定を行う場合や、自動化装置等を用いて連続的に測定を行い時間と共に原試料へ混入した妨害物質濃度が変化する可能性がある場合には、試料bの取得は測定精度の向上や測定そのものの妥当性を判断する上で、非常に重要である。
【0034】
酵素にコリン加水分解酵素を用いることにより、有機リン系の農薬およびカルバメート系の農薬を高精度に検出することができる。
【0035】
酵素の基質にチオコリン、呈色試薬にDTNBを用いた場合は、コリン加水分解酵素によるチオエステルの加水分解反応の生成物であるチオールと、DTNBとの反応生成物を比色法により検出することで、コリン加水分解酵素の活性を阻害する有機リン系およびカルバメート系の農薬を高精度に検出することができる。
【0036】
《第2実施形態》(請求項4〜6対応)
続いて、図3を用いて第2実施形態を説明する。本実施例は請求項4〜6の発明に関するものであり、主に薬物検出装置の構成に関するものである。
【0037】
図3においては、まず試料1を前処理区画2へ導入する。前処理区画2に導入された試料1は、まずフィルタ(濁質除去)3により濁質を除去される。濁質を除去することで、後段の配管・セルの汚染や閉塞を防止し、更には光学的手段を用いた検出に関して高感度化を図ることができる。ここで用いるフィルタ3には、金属フィルタ、セラミックフィルタ、中空糸膜、サイクロンフィルタ、ディスクフィルタなどの、粒子を孔径や比重などで物理的に除去するものが使用できる。また、必要に応じてフィルタを多段構成としてもよい。ただし、検出対象薬物と親和性の高いフィルタは、薬物がフィルタに吸着する恐れがあり、避けるべきである。
【0038】
濁質を除去した試料1は、ポンプ4と電磁弁5を経由し試料水槽(濁質除去)6へ送られるが、一部をフィルタ(薬物除去)7へ送り、再度ろ過し、試料1中の検出対象薬物を除去する。ここで用いるフィルタには、検出対象薬物と親和性が高いフィルタを用いるとよい。例えば酵素にコリンエステル加水分解酵素を用い、または、酵素の基質にチオコリン、呈色試薬にDTNBを用いて農薬を検出する場合には、活性炭フィルタや、有機性の材質のフィルタを用いるのが望ましい。ろ過されたろ液は、試料水槽(薬物除去)8へ送られる。
【0039】
試料a、試料bは、試料水槽(濁質除去)6を使用する。試料cは、試料水槽(薬物除去)8を使用する。試料水槽6、8の後段は反応槽16であり、電磁弁9およびポンプ10を反応槽16内もしくはその前段の流路にて、緩衝液11、酵素液12、呈色試薬13、基質液14をそれぞれ試料に混合させる。
【0040】
緩衝液11は試料のpHを一定に保つものであり、酵素反応を該酵素に適した良好な環境で行わせると同時に、測定の再現性を向上させる働きがある。環境水を連続的もしくは一定時間ごとに半連続的に検定する場合、場所によってはpHの日変動は“1”を超えることもあり、降水量の変化がある季節変動も含めればなおさらである。酵素反応の活性は、一般にpHに依存し、適正なpH以下でなければ、高い活性は得られない。よってpHの安定化は重要な要素である。緩衝液11を添加後、試料aと試料cには酵素液12を添加し、酵素に試料を曝露する。酵素液12は該酵素を緩衝液に溶解したものがよい。これは、pH変動を抑制し、酵素の失活を防止するためである。
【0041】
曝露後に呈色試薬13および基質液14をそれぞれ添加する。これらの反応試薬類を添加する際には定量性が重要であり、送液用のポンプ15には定量性や再現性に優れるとされるプランジャーポンプやシリンジポンプ、ダイヤフラムポンプなどを用いるとよい。また、これら反応試薬類は、予め混合しても沈殿・変質や反応手順等の問題が生じない場合は、適宜濃度を調整し混合しておき、まとめて添加しても良い。
【0042】
反応試薬類を順に混合し、各段階にて適宜インキュベートした後に、反応液をポンプ17を用いて検出セル18に送水し、光源19より呈色試薬に応じた波長の光を照射し、検出器20で吸光度を測定する。検出後の試料は排液口21より排出される。反応槽16から検出セル18までの工程は、酵素反応および呈色試薬の反応に適した一定温度に調整される。通常、特に問題がなければ、酵素反応の至適温度にするとよい。温度調節機構は、断熱性のよい温調室(酵素反応温度)23で反応槽16から検出セル18までの機器を囲い、ヒーター、ペルチェ素子、サーモスタット、撹拌用ファン等を用いて構成することができる。
【0043】
測定結果の評価は、試料a,cの時間あたりの吸光度変化より酵素反応速度と酵素活性とが求められ、試料bの吸光度より検定の妥当性と妨害物質の濃度とを知ることができる。
【0044】
試料a,b,cそれぞれの測定に関しては、同一の反応槽16および検出セル18、検出器20を用いることができ、流路に設置された電磁弁の開閉によりそれぞれの測定を切り替えることができる。測定試料の切り替え時には、試料の残留によるコンタミネーションを避けるために、酸や塩基等を含む洗浄液24や純水等により、自動的に洗浄することができる。測定試料の切り替えにはPLC(プログラマブルコントローラ)やコンピュータなどを用いることができる。
【0045】
以上のように、本発明によれば、比色法を用いた自動連続的な薬物検出が可能であり、GC/MSやLC/MS等に比して簡易的な構成である。
【0046】
また、緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をそれぞれ長期保存可能な低温に維持することにより、本装置が連続運用に耐えることが可能となる。低温に維持することで、反応試薬類の変質を防ぎ、繰り返し再現性を向上させることができる。低温に維持するためには、反応試薬類を断熱性のよい温調室22で囲い、例えばペルチェ素子、サーモスタットおよび空気撹拌用のファンを用いるなどして一定の低温に維持することができる。
【0047】
緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をそれぞれ反応槽に注入する際に、注入直前の配管内で、緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液を予め適切な温度に調整することにより試薬混合による反応槽の温度変化を防止することができ、安定した再現性のよい検出結果を得ることができる。温度調節機構25は、配管の外側にヒーターとサーミスタを装着し、断熱材で被覆したものが開発・市販されているほか、ウォータージャケット等を用いてもよい。
【0048】
また、薬物が検出された場合、もしくは、検出された薬物量あるいは薬物濃度が、予め設定した閾値を越えた場合に、特定の信号を発することで、薬物の検出を自動的に知らせることができる。具体的には、適宜コンピュータやPLC、表示器等を用い、検出器20より得られた測定信号を酵素活性や薬物検出信号、薬物濃度等に変換し、表示させることで実現できる。本装置を自動警報発令装置として用いるのであれば、出力端子もしくは通信端子を備えれば、外部へ警報出力をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る薬物検出方法の一実施形態に係わる説明図である。
【図2】本発明に係る薬物検出方法の一実施形態に係わる説明図である。
【図3】本発明に係る薬物検出装置の一実施形態の構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1:試料
2:前処理区画
3:フィルタ(濁質除去)
4:ポンプ
5:電磁弁
6:試料水槽(濁質除去)
7:フィルタ(薬物除去)
8:試料水槽(薬物除去)
9:電磁弁
10:ポンプ
11:緩衝液
12:酵素液
13:呈色試薬
14:基質液
15:ポンプ
16:反応槽
17:ポンプ
18:検出セル
19:光源
20:検出器
21:排液
22:温調室(低温)
23:温調室(酵素反応温度)
24:洗浄液
25温度調節機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素活性が試料に含まれる薬物により阻害されることを利用し、呈色試薬を用いた比色法によって試料中の薬物を検出する薬物検出方法において、
a.試料を薬物特異酵素に曝露した酵素の活性の程度と、
b.酵素に薬物特異酵素に曝露していない試料による呈色試薬の呈色の程度と、
c.試料より薬物を除いた後、薬物特異酵素に曝露した酵素の活性の程度と、
を指標とすることを特徴とする薬物検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載した薬物検出方法において、
酵素がコリンエステル加水分解酵素である、
ことを特徴とする薬物検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した薬物検出方法において、
酵素の基質にコリンのチオエステルを用い、呈色試薬に5,5’一ジチオビス(2一ニトロ安息香酸)(以下DTNBと記す)、
を用いることを特徴とする薬物検出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬物検出方法を使用して自動的に試料中の薬物を検出する薬物検出装置であって、
少なくとも試料中の濁質を除去するろ過機構と、
試料中の薬物を除去するろ過機構とからなる試料の前処理機構と、
ろ過機構で濁質を濾過した試料および前処理機構で薬物を除去した試料に酵素を曝露するために所定温度に保持された反応槽と、
反応槽またはその前段にて緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をろ過機構で濁質を濾過した試料および前処理機構で薬物を除去した試料に各々、添加する機構と、
ろ過機構で濁質を濾過した試料および前処理機構で薬物を除去した試料の呈色の程度を知るために吸光度を測定する機構を持つ検出セルと、
を備えたことを特徴とする薬物検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載した薬物検出装置において、
緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をそれぞれ長期保存可能な低温に維持する機構、
を備えたことを特徴とする薬物検出装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の薬物検出装置において、
緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液をそれぞれ反応槽に注入する際に、注入直前の配管内で、緩衝液、酵素液、呈色試薬、基質液を予め適切な温度に調整する機構、
を備えたこと特徴とする薬物検出装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の薬物検出装置において、
薬物が検出された場合、または検出された薬物量もしくは薬物濃度が予め設定した閾値を越えた場合に特定の信号を発する、
ことを特徴とする薬物検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−54550(P2008−54550A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233647(P2006−233647)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】