説明

薬物送達デバイス

薬物送達デバイス(1)は、ハウジング(15)、薬物容器(9)の栓(20)を駆動するためのはめ込み式のピストンロッドアセンブリ(12)、及びはめ込み式のピストンロッドアセンブリ用の駆動機構(17)を含む。はめ込み式のピストンロッドアセンブリ(12)は、中間連結部を介して栓(20)を駆動するために、プランジャ(55)に対してはめ込み式で連結される入力駆動部(23)を有する。中間連結部は、互いにはめ込み式で連結される第一の及び第二のシリンダ(45、49)を含む。プランジャ(55)は 、第一の及び第二のシリンダ(45、49)の1つにはめ込み式に連結され、そして入力駆動部(23)は、他方のシリンダにはめ込み式で連結される。キー(14)が、ハウジング(15)に対するプランジャ(55)の回転を拘束するために備え付けられて、駆動機構(17)が入力駆動部を駆動するとき、プランジャ、第一の及び第二の部材、及び入力駆動部が、互いに、はめ込み式で拡張し又は縮退する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の体に医薬を送達するための薬物送達デバイス、特に、しかしこれに限られないが交換可能な薬物カートリッジを有するデバイスに関する。そのようなデバイスは、通常、インスリン投与のために糖尿病患者によって使用される。
【0002】
薬物送達デバイスは、正規の医学的訓練を受けていない人々、即ち自分の病態の自己管理がますます一般的となっている患者によって日常的に使用されている。これらの状況によって、この種の薬物送達デバイスに対する多くの要求が設定される。注射器は、構造上堅牢で、しかも使用者による操作及び部品の取り扱いの観点から、使用するのに容易であるべきである。糖尿病患者の場合、多くの使用者は、視覚障害者になったり、また肉体的に虚弱であるかもしれない。従って、煩わしさが大きすぎるデバイスは、使用するのに困難であることが分かり、特に、機敏さが低下した人にはそうである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、軸方向に移動可能なリードスクリューを備えた薬物注入デバイスを記載している。このデバイスにおいて、リードスクリューは、ギア及び電気モータを含む駆動機構と係合するねじ山付きピストン内にある。モータの回転駆動は、ギア及びねじ山付きピストンによって軸力に変換され、軸力は、薬物カートリッジの栓、又は弾性ピストンにかけられている。この駆動作用は、カートリッジから薬物の量を放出する働きがある。カートリッジを完全に空にするため、リードスクリューの長さは、少なくともカートリッジの長さに等しくしなければならず、デバイスの全長は少なくとも、カートリッジの長さの2倍にする必要がある。このタイプの注入デバイスでの問題は、全長が長すぎてジャケットポケット又はハンドバック内に目立たないように収まらないことである。
【0004】
カートリッジの2倍の長さより短いデバイスを製造するために、はめ込み式のピストンロッドが開発されている。そのようなはめ込み式のピストンロッドは、特許文献2に、注入デバイスに有用であるとして示されている。この特許明細書には、ねじ山を嵌め合わせることによって互いに連結された複数の部分又は部材を含むピストンロッドを有する線形伝達(linear transmission)シリンジプランジャが記載されている。はめ込み式のピストンロッドの遠位部分は、注射器の弾性的なピストンに連結され、そして、はめ込み式のピストンロッドの周囲にある多数のブッシュ(bushing)によって回転が阻止されている。そのはめ込み式のピストンが、相当なサイズの注射器に適しているに過ぎないという結果より、最大直径のブッシュが、注射器の直径内に収まる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO第03/061736号
【特許文献2】WO第97/00091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、よりコンパクトなはめ込み式の(telescopic)ピストンロッドアセンブリを有する薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ハウジング;薬物容器の栓を駆動するためのはめ込み式のピストンロッドアセンブリ;及びはめ込み式のピストンロッドアセンブリ用の駆動機構を含み、ここで、はめ込み式のピストンロッドアセンブリは、中間連結部を介して栓を駆動させるためのプランジャにはめ込み式で連結される入力駆動部を有する薬物送達デバイスであって、
中間連結部が、互いにはめ込み式で連結される第一の及び第二の部材、第一の及び第二の部材の一方にはめ込み式で連結されるプランジャ、及び第一の及び第二の部材のもう一方にはめ込み式で連結される入力駆動部;及びハウジングに対してプランジャの回転を拘束するためのキーを含み、
ここで、入力駆動部、第一の及び第二の部材、及びプランジャは、互いに協力して入力駆動部が駆動機構によって駆動されるとき、伸長又は縮退する。
【0008】
キーは、はめ込み式で(telescopically)連結される第一の及び第二のスリーブを含むことができ、ハウジングに対して軸方向に移動可能であるが、回転して移動できないようにプランジャ、及びハウジングと互いに固定される(keyed to one another)。換言すれば、プランジャ及び中間連結部は、ハウジングに対して回転できない。キーは、プランジャ、第一の及び第二のスリーブに備えたスプライン及び対応する溝又はくぼみを手段として達成してもよい。第一の及び第二の部材は、第一の及び第二のシリンダを形成するように略円筒状であってよい。第一の及び第二のスリーブは、好ましくは、第一の及び第二のシリンダのそれぞれの長さに実質的に対応する長さを有する。プランジャ及び入力駆動部は、好ましくは、また、縮退状態にある場合、はめ込み式ピストンロッドアセンブリの長さを最小化するように、第一の及び第二のシリンダの長さに対応する長さを有する。プランジャ、第一の及び第二のシリンダ、及び入力駆動部の間のはめ込み式の関係は、それぞれの直径がプランジャから入力駆動部へ次第に減少していく。逆に、プランジャ、第一の及び第二のスリーブの間のはめ込み式の関係は、それぞれの直径が、プランジャから入力駆動部へ次第に増大していく。
【0009】
プランジャは、第二のシリンダの雄ねじと協力する雌ねじを有してもよい。第二のシリンダは、プランジャから離れたその末端に、第一のシリンダの雄ねじと協力する雌ねじを備える。同様に、第一のシリンダは、第二のシリンダから離れたその末端に、入力駆動部上に備える雄ねじと協力する雌ねじを備える。入力ギアは、駆動機構の歯車列(gear train)と係合するための、第一のシリンダから離れた入力駆動部の端部に固定される。これは、駆動機構のバッテリ電源のモータから、歯車列を介してはめ込み式のピストンロッドアセンブリへの駆動の伝達のために備わっている。
【0010】
本発明の実施態様は、どのような特定の段階的な(phased)又は段階的な(stage)方式でも伸長及び収縮するはめ込み式のピストンロッドアセンブリに限定されない。プランジャ、第一の及び第二のシリンダ、及びスリーブが互いにその中で位置する縮退状態からの/縮退状態への、はめ込み式のピストンロッドアセンブリの伸長/収縮は、幾つかの実施態様においては、進行的に行ない得る。これは、三階層で若しくは三段階であってよく、又は他の実施態様においては、はめ込み式のピストンロッドの部材の伸長/収縮は、連続的であっても良い。尚更なる実施態様においては、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ部材の伸長又は収縮は、明確に予測可能な順序になくてもよい。プランジャ、第一の及び第二の部材、及び入力駆動部の伸長又は収縮における順序は、雌ねじ及び雄ねじの設計、及び、これらの部材の境界面での相対的直径及び摩擦特性に従って相違し得る。
【0011】
段階1において、入力駆動部は、入力ギアと係合する駆動機構の歯車列によって回転するが、ハウジングによって軸方向には拘束される。従って、入力駆動部は軸力をハウジングに伝達する一方、駆動機構からのトルク入力を第一のシリンダに伝達する。段階1の間、第一のシリンダ、第二のシリンダ、第一の及び第二のスリーブ、及びプランジャは、入力駆動部の長さに沿って、まるごと(bodily)、軸方向に動く(しかし、回転なしで)。これは、以下の理由で起る:第一のシリンダが入力駆動部からのトルク入力を伝達し、そして軸力を第二のシリンダに与える;第二のシリンダが、第一のシリンダからの軸方向の入力を伝達し、そして軸方向の入力をプランジャに伝達する;第一のスリーブが第二のスリーブからのトルクに反応し、そしてそれをハウジングに伝達する;第二のスリーブがプランジャからのトルクに反応し、そしてそれを第一のスリーブに伝達する;そしてプランジャが軸力を、薬物を投与するために薬物カートリッジの栓に伝達する。
【0012】
第一のシリンダが、十分に伸長したとき、即ち入力駆動部と第一のシリンダ間の相対的回転運動が伸長停止部によって阻止されるまで入力駆動部の長さを下方に移動したとき、段階2が始まる。この時点において、第一のシリンダは、もはや、軸方向には動かず、入力駆動部と共に回転する。第一のシリンダは、その後、入力駆動部からの入力トルクを第二のシリンダへ伝達し、その結果、第二のシリンダを、第一のシリンダに沿って、回転なしで軸方向に前進させる。第二のシリンダは、第一のシリンダからのトルク入力を伝達し、そして軸力をプランジャに与える。プランジャは、回転なしで軸方向に動く。プランジャは、第二のシリンダからのトルク入力を伝達し、そして薬物を投与するために、軸力を薬物カートリッジの栓に与える。段階2の間、第一のスリーブは移動しないが、第二のスリーブからのトルクに反応し、そしてそれを駆動機構ハウジングに伝達する。第二のスリーブは移動せず、そしてプランジャからのトルクに反応し、そして第一のスリーブが回転しないようにそれに伝達する。スリーブのキー固定(keying)は、軸方向に走行する(running)スプラインと対応する溝間の軽いはめ合いで支援され得る。スリーブの動きの順序は重要ではないか、又は予測不能である。それは、スリーブとプランジャ間での相対的摩擦に依存することになる。溝はスリーブ及びプランジャ間の分離を防ぐために一端でブラインド(blind)になる(図示せず)。
【0013】
第二のシリンダが、十分に伸長したとき、即ち相対的回転運動が第二の伸長停止部によって阻止されるまで、第一のシリンダの長さを下方に移動したとき、段階3が始まり、それは、もはや、軸方向には動かないが、入力駆動部及び第一のシリンダと共に回転する。第二のシリンダは、その後、プランジャが回転することなく第二のシリンダの長さに沿って軸方向に移動するように、トルクを第一のシリンダからプランジャに伝達する。プランジャは、第二のスリーブが入力駆動部と共に回転するのを妨げるように第二のスリーブに固定され、それによって、第二のシリンダとの相対的回転を達成する。第三の伸長停止部は、第二のシリンダに対してプランジャが十分に伸長するとき、プランジャと第二のシリンダ間の相対的回転を阻止するために備わっている。閉端ねじ山(closed end thread)によって備えつけ得る第一、第二、第三の伸長停止部は、また、はめ込み式ピストンロッドアセンブリの分離を防ぐ働きをする。クリップオン式の停止リングは、スクリュー部材の分離を防ぐために供され得る。クリップオン式の停止リングは、ボンドプロセス(bonding process)を必要とすることなく、又はねじ部材の材料選択を制約することなく、十分な停止力を与えるために特に開発されている。
【0014】
第一の及び第二のスリーブの操作順序は駆動ねじの摩擦効率(frictional efficiency)で左右される。第一のシリンダは、始めに、はめ込み式のピストンロッドアセンブリの連続的伸長の第一段階中、入力駆動部と第一のシリンダの間の最小直径のねじ界面間の相対的に低い摩擦の故に、第二のシリンダ及びプランジャに優先して動く傾向にある。換言すれば、第一のシリンダ、その後の第二のシリンダ、及び最終的にプランジャの連続的な伸長は、それぞれのねじ界面として発生する、増大する摩擦によって可能となる。
【0015】
本発明に記載の、用語「薬物送達デバイス」は、使用者に、医薬品の選択可能な、又は事前決定された用量を投与するために設計された、単回用量の、又は多回用量の、又は事前設定用量の、又は事前決定された、使い捨て又は再使用可能なデバイス、好ましくは例えばインスリン、成長ホルモン、低分子量ヘパリン、及びそれらの同族体及び/又は誘導体などの多回用量デバイスを意味する。前記デバイスは、いかなる形状であってもよく、例えばコンパクト型又はペン型であってもよい。用量の送達は、機械的(場合により手動)、又は電気的駆動機構、又はスプリングなどの貯蔵エネルギ駆動機構を通して提供し得る。用量の選択は、手動機構又は電子機構を通して提供し得る。また、該デバイスは、血糖レベルなどの生理学的特性を監視するために設計された部材を含んでもよい。更にその上、上記デバイスは、針を含んでもよく、又は針なしであってもよい。特に、用語「薬物送達デバイス」は、電気駆動機構を有する多回用量を提供する針を基礎とするデバイスをいうことがき、それは患者などの正規の医学的訓練を受けていない人々による使用のために設計されている。好ましくは、薬物送達デバイスは自動タイプ、即ち自己注射器である。
【0016】
本発明に記載の用語「ハウジング」は、好ましくは、特定部品の近位移動を防ぐための一方向性の軸方向の連結を有する、いかなる外部ハウジング(「主ハウジング」、「本体」、「殻」)又は内部ハウジング(「挿入体」、「内部本体」をも意味する。ハウジングは、薬物送達デバイス、又はその機構のいずれかの、安全な、正確な、及び快適な取り扱いを可能とするよう設計し得る。通常は、それは、収納し、固定し、保護し、導き、及び/又は、液体、ゴミ、チリなどの汚染物への曝露を限定することによって、薬物送達デバイスの内部部品(例えば、駆動機構、カートリッジ、プランジャ、ピストンロッド)のいずれかと係合するように設計されている。一般的に、ハウジングは、管状又は非管状形体の単体、又は多部品からなってもよい。通常は、外部ハウジングは、多用量の医薬品が投与されるカートリッジを収納するために提供される。
【0017】
本発明に記載の用語「モータ」は、好ましくは、ギアシステム及び最終的に入力駆動部手段を駆動するためのモータ化されたいかなる手段をも意味する。本発明において、ギアシステム、又は機械的若しくは手動作動手段を含む駆動手段は、また、デバイスに組み込み得るが、好ましくは、ステッパモータが活用される。
【0018】
デバイス又はデバイスの部品の「近位端」は、デバイスの投与末端から最も遠く離れた末端を意味する。
【0019】
デバイス又はデバイス部品の「遠位端」は、デバイスの投与末端から最も接近した末端を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施態様は、デバイスの軸方向の長さ並びに薬物容器の直径の両方の観点から、よりコンパクトな薬物送達デバイス用の4段階のはめ込み式のピストンロッドアセンブリを提供する。本発明の実施態様である(embodying)はめ込み式のピストンロッドアセンブリは、高機能の工業用プラスチック材料を用いて、極端に薄い壁を有する部品が装着された注射器から作られ得る。具体的には、入力駆動部は、周囲の部品に対して空間を提供するために、縮小した直径を有する。結果として、本発明の実施態様のデバイスは、交換可能な薬物カートリッジを含む再使用可能な薬物送達デバイスに有用に展開でき、そして、また、自己注射器デバイス内で展開し得る。
【0021】
本発明は更に、添付図を参照した実施例によって記載され、ここで、参照数字は、エレメントのように指定する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施態様を含む薬物送達デバイスの正面図である。
【図2】薬物カートリッジを受けるための開位置において示された薬物カートリッジドアを備えた図1の薬物送達デバイスの正面図である。
【図3】本発明の実施態様のはめ込み式のピストンロッドアセンブリの透視図であり、モータ、ギア、及び駆動機構ハウジングを示している。
【図4】図3のモータ、歯車列、及び駆動機構の透視断面図である。
【図5】薬物カートリッジ内の伸長位置におけるはめ込み式のピストンロッドアセンブリの断面図である。
【図6】伸長位置におけるドアロック部材及びはめ込み式のピストンロッドアセンブリの改良実施態様の断面図である。
【図7】縮退状態における図3のはめ込み式のピストンロッドアセンブリ、及び前進位置におけるドアコック部材の改良実施態様の断面図である。
【図8】後方位置においてドアロック部材を備えた図7の改良実施態様の断面図である。
【0023】
図1において、薬物送達デバイス1は、設定用量、薬物カートリッジに残留する用量数を含む薬物送達デバイスの操作に関する機能情報を提示するためのディスプレー3を有するケース2を含む。使用者インタフェースボタン4、5及び6は、プライミング、用量の設定、薬物カートリッジホルダー及びドア7の開放、そして、設定用量の投与のための活性化を含む注射器の操作を使用者に可能にするように供される。針が用量送達のため装着され、そしてその後、除去され、捨てることができるねじ山が装着した針の取り付け具8が供される。カバー(図示されていないが)は、粒子及び流体の進入からデバイスを保護するのを助けるために、ケース2の下部にフィットするように供される。図2は、交換用薬物カートリッジ9を受け入れるために、解放位置においてカートリッジホルダー及びドア7を備えた薬物送達デバイス1を示す。
【0024】
図3は、モータ13、及びはめ込み式のピストンロッドアセンブリ12への駆動を伝達するための駆動機構を収納するハウジング15と共に、図5〜8を参照して以下によって詳細に記載したはめ込み式のピストンロッドアセンブリ12の透視図である。はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12は、図5を参照して、以下に記載するキー14を備えている。このアセンブリは、薬物送達デバイス1のシャーシ16内に収納し得る。薬物送達デバイス1のシャーシは、バッテリ(図示されていないが)用のスペース及び薬物カートリッジホルダー及びドア7用のスペースを含む。
【0025】
図4は、除去されたハウジング15を有す図3のアセンブリの透視断面図である。この図は、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12の歯車列19、入力ギア21及び入力駆動部23を含む駆動機構17を示す。歯車列19は、モータピニオン25並びに3つの複合ギアステージ27、29及び31を含む。モータピニオン25は、締まりばめを有するモータ13のシャフト上に保持され、そしてモータピニオン25の周りの約180°で配置されている1対の成形フラッグ33を有する。フラッグ33は、シャーシ内の動作検出光学センサ(図示されていないが)を遮断し、センサは、モータ13の回転スピードに対応し、それを示す表示する出力を供する働きがある。モータピニオン25、各々の複合ギアステージ27〜31及び入力ギア21は共に、いかなる適した比率でも、例えば、入力駆動部23の全ての回転に対してモータは62.8倍回転するような62.8:1の比率でもよく、モータ13と入力駆動部23間の駆動の回転スピードを低下させるために供される。複合ギア31と入力ギア21間に位置する伝達ギア35は減速せず(non-reducing)、そして機械的連結を提供する役割を果たす。複合減速ギアステージ27〜31は、2つの平行なステンレススチールピン37及び39上に取り付けられる。入力ギア21は、入力駆動部23を駆動しつつ回転させるような伝達ギア35と回転可能となるように係合するように,ハウジング15内で支持されている。入力ギア21及び入力駆動部23は、軸方向には移動できない。
【0026】
図5は、薬物カートリッジ9内の伸長位置におけるはめ込み式のピストンロッドアセンブリ12の断面図である。はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12は、非回転的に入力ギア21に固定されている近位端において入力駆動部23を含む。入力駆動部23は、中間連結部の第一のシリンダ45の内部ねじ山部分43と連携するねじ山付き外部表面41を有し、それは、また、外部ねじ山表面47を有する。第一のシリンダ45の外部ねじ山表面47は、内部ねじ山部分48と、中間連結部の第二のシリンダ49の近位端で連動し、第二のシリンダは、また、ねじ山付きの外部表面51を有する。ねじ山付きの外部表面51の遠位端63は、内部ねじ山部分53とプランジャ55の近位端で連動する。プランジャ55は、薬物カートリッジ9の栓59上にプランジャ55によってかけられた荷重を分散させるために、その遠位端で外側に伸長するフランジ57を備えている。使用中、そこから薬物を放出するために、薬物カートリッジに沿って栓55を駆動するために伸長するように、モータ13がはめ込み式のピストンロッドアセンブリ12を駆動するとき、栓59にかけられた荷重が生じる。内側に伸長する管状挿入体61は、プランジャ55の遠位端で提供され、そして、第二のシリンダ49の遠位端63を超えて縮退するプランジャを停止する働きを行う。対応する末端停止62は、第一のシリンダ45の近位端に装着され、そして、第二のシリンダ49を第一のシリンダ45の近位端を超えた縮退から停止させる働きを行う。入力駆動部23の遠位端、第一のシリンダ45及び第二のシリンダ49は、互いに連結がはずれるのを阻止するために閉鎖されたねじ山を備えている。
【0027】
プランジャ55は、第一スリーブ65及び第二スリーブ67によってハウジングに固定されている。キー14(図3参照)は、プランジャ55、並びに、第一の及び第二のスリーブ65、67を、互いに、そしてハウジングに対して非回転にするように提供される。キー14は、プランジャ55、並びに第一スリーブ及び第二スリーブ65、67の各々の外表面に沿って動く縦方向(即ち、軸方向へ伸長する)のネジ溝又は凹部によって供される。ネジ溝又は凹部は、ハウジング(図示されていないが)の内表面、並びに第一スリーブ65及び第二スリーブ67の内表面で供された対応するくい又はネジ溝69と連動する。
【0028】
図6〜8は、本発明に記載のデバイスの改良実施態様を示す。図6は、伸長位置におけるはめ込み式のピストンロッドアセンブリ12を、ハウジング15内で回転可能でそして軸方向に移動可能に座する封鎖手段71の詳細と共に示す。封鎖手段71は、図7及び図8を参照して以下によって詳細に記述するが、入力ギア21及び入力駆動部23に対してその軸方向の位置に依存して、ドアキャッチ解除機構(図示されていないが)との係合/解除の働きをする、外側に伸長するタブ73を有する。クリップオン停止環75は、更に、部品の分離を防ぐため、第一の及び第二のねじ山付きシリンダ45、49のそれぞれ1つの近位端上で供される。クリップオン停止環75は、一方では十分な停止強度を備えているが、他方、連結プロセスを必要としない。
【0029】
図7及び8は、縮退状態で示される、前方の「ドア閉鎖位置」、及び後方の「ドア開放」位置それぞれにおけるドア封鎖部材を備えたはめ込み式のピストンロッドアセンブリ12の断面図である。駆動機構が、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12を縮退させるために、入力ギア21及び入力駆動部23を駆動するにつれて、プランジャ55、第一の及び第二のシリンダ47及び49は図7で示す通り、最終的に縮退位置へ移動する。この位置において、封鎖手段71の近位端と入力ギア21の間にギャップdが残る。この位置において、タブ73は、薬物カートリッジのドア開放ラッチ(図示されていないが)との係合を分離するに十分なだけ前進するか、又は縮退することはない。薬物カートリッジ9を代替したいとき、モータ調節器(図示されていないが)は、ギャップdを閉じ、その結果、タブ73の係合を解除し、そしてドア開放ラッチを解除するまで、駆動機構17が、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12を縮退させるために入力駆動部23を駆動するようにモータ13を駆動する。
【0030】
上記の薬物送達デバイス1の操作は、ここに記載されるであろう。
【0031】
プランジャ55、第一の及び第二のシリンダ45、49並びにスリーブ65、67が、互いにその中で位置する初期の縮退位置(図7及び8に示す通り)からの、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12の伸長は、3つの階層又は段階で実施される。
【0032】
段階1において、入力駆動部23は、入力ギア21と係合する駆動機構17の歯車列19によって回転する。従って、入力駆動部23は、軸力をハウジング15に伝達し、一方、駆動機構17からのトルク入力を第一のシリンダ45へ伝達する。段階1の間、第一のシリンダ45、第二のシリンダ49、第一の及び第二のスリーブ65、67並びにプランジャ55は、入力駆動部23の長さに沿って本体方向に、そして軸方向に(回転なしで)移動する。これは、以下の理由:第一のシリンダ45は入力駆動部23からトルク入力を伝達し、そして軸力を第二のシリンダ49へ提供する;第二のシリンダ49は、第一のシリンダ45からの軸方向の入力を伝達し、そして軸方向の入力をプランジャ55に伝達する;第一スリーブ65は、第二スリーブ67からのトルクに反応し、そしてそれをハウジング15内へ伝達する;第二スリーブ67は、プランジャ55からのトルクに反応し、そしてそれを第一スリーブ65内へ伝達する;及び、プランジャ55は、プランジャからの軸力を伝達し、そしてそれを薬物カートリッジ9内へ伝達する;によって発生する。
【0033】
第一のシリンダ45が十分伸長したとき、即ち、それらの間の相対的回転が伸長停止75又は閉鎖ねじ山によって阻止されるまで、入力駆動部23の長さに沿って下方に移動したとき、段階2が始まる。この時点において、第一のシリンダ45がその軸限界に到達し、そして、もはや、軸方向には移動しないが、入力駆動部23と共に回転する。その後、第一のシリンダ45は、入力トルクを入力駆動部23から第二のシリンダ49へ伝達し、その結果、第二のシリンダを、回転なしで第一のシリンダに沿って軸方向に前進させる。第二のシリンダ49はトルク入力を第一のシリンダ45から伝達し、そして、軸力をプランジャ55へ供給する。プランジャは回転なしで軸方向に移動する。プランジャ55は、トルク入力を第二のシリンダ67から伝達し、そして軸力を薬物カートリッジ9へ供給する。
【0034】
段階2の間、第一スリーブ65は移動しないが、第二スリーブ67からのトルクに反応し、そしてそれを駆動機構ハウジング15に伝達する。第二スリーブ67は移動せず、そして、プランジャ55からのトルクに反応し、それは回転しないように第一スリーブ65内へ伝達する。
【0035】
第二のシリンダ49が十分伸長したとき、即ち、相対的回転が、第二伸長停止75又は閉鎖ねじ山によって阻止されるまで、第一のシリンダ45の長さに沿って下方に移動したとき、段階3が始まるが、それはその軸方向の限界点に到達したので、もはや、軸方向には移動しないが、入力駆動部23及び第一のシリンダ45と共に回転する。第二のシリンダ49は、その後、プランジャが、回転なしで第二のシリンダの長さに沿って軸方向に移動するように、トルクを第一のシリンダ45からのプランジャ55へ伝達する。プランジャ55は、入力駆動部23との回転を阻止し、それによって第二のシリンダ49との相対的回転を実施するために第二スリーブ67に固定されている。閉鎖ねじ山の形における第三の伸長停止は、プランジャがその位置まで十分に伸長したとき、プランジャ55と第二のシリンダ67間の相対的回転運動を阻止するために供される。
【0036】
薬物送達デバイス1は、デバイスの操作を制御するための電子制御システム(図示されていないが)を含む。制御システムは、駆動機構17を経由して入力駆動部23を駆動するためにモータ13を制御する働きをする。センサ(図示されていないが)は、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ12の状態を感知し、そして使用者に操作情報を与えるために供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング;薬物容器の栓を駆動するためのはめ込み式のピストンロッドアセンブリ;及び、はめ込み式のピストンロッドアセンブリ用の駆動機構;を含み、ここで、はめ込み式のピストンロッドアセンブリが、中間連結部を介して栓を駆動するためのプランジャにはめ込み式で連結される入力駆動部を有する、薬物送達デバイスであって、
中間連結部は、互いにはめ込み式で連結される第一の及び第二の部材、第一の及び第二の部材の一方にはめ込み式で連結されるプランジャ、及び第一の及び第二の部材のもう一方にはめ込み式で連結される入力駆動部;及びハウジングに対するプランジャの回転を拘束するためのキー;を含み、
それによって、駆動機構が入力駆動部を駆動するとき、プランジャ、第一の及び第二の部材、及び入力駆動部が、互いに、はめ込み式で拡張し、又は縮退すること;
を特徴とする、上記デバイス。
【請求項2】
キーは、ハウジングに対して軸方向には移動可能であるが、回転して移動できないように、はめ込み式で連結され、互いに固定される第一の及び第二のスリーブ、プランジャ、及びハウジングを含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
プランジャ、第一の及び第二の部材、及び入力駆動部間のはめ込み式の関係は、それぞれの直径がプランジャから入力駆動部へ次第に減少するものである請求項1又は2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
プランジャ、第一の及び第二のスリーブ間のはめ込み式の関係は、それぞれの直径が、プランジャから入力駆動部まで次第に増大するものである請求項3に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
入力ギアが、駆動機構の歯車列と係合するための第一の部材から離れた入力駆動部の端部で提供される請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
プランジャ、第一の及び第二の部材、及びスリーブが、少なくとも実質的に、互いの中に存在する初期縮退状態からのはめ込み式のピストンロッドアセンブリの拡張は、次第に行なわれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
入力駆動部が回転して軸方向に動いて、はめ込み式のピストンロッドアセンブリが、まるごと軸方向に動くが、入力駆動部の長さに沿って回転することはない、請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
第一の部材は、入力駆動部からの入力トルクを第二の部材に伝達するために、入力駆動部と共に回転するように、軸限界に到達し、その結果、第二の部材及びプランジャを、回転なしで第一の部材に沿って軸方向に前進させる、請求項7に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
第二の部材は、入力駆動部及び第一の部材と共に回転するように、軸限界に到達し、その結果、第一の部材からのトルクを、プランジャに伝達して、プランジャが回転なしで第二の部材の長さに沿って軸方向に動く、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
縮退した状態にある場合はめ込み式のピストンロッドアセンブリの長さを最小にするように、第一の及び第二のスリーブ各々が、第一の及び第二の部材の各々の長さと実質的に等しい長さを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
ハウジングが、使用者交換可能薬物カートリッジ用の容器を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬物送達デバイスを含む自己注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−516736(P2012−516736A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548669(P2011−548669)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051270
【国際公開番号】WO2010/089308
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】