説明

薬物送達デバイス

使用関連情報を表示する薬物送達デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達デバイスに関する。更に、本発明は、薬物送達デバイスの操作中の投与量情報を表すための、ピストンロッド上の複数の記号を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスは、医薬品、例えば、インスリン、成長ホルモン又は他の薬物、特に、患者によって、つまり、正式な医療訓練を受けていない人による自己投与に適する医薬品の投与のために一般的に知られている。
【0003】
幾つかの薬物送達デバイスは複数の用量を送達するように構成される。そのような薬物送達デバイスの一つの特別な例が、特許文献1及び特許文献2において述べられている。
【0004】
そこには、使用者が薬物送達デバイスを作動し得る薬物送達デバイスが示されている。薬物送達デバイスはペン型注射器における使用に適する駆動機構を含み、ここで医薬品の多数の事前に設定された用量を投与することができる。ニードルユニットは、患者の皮膚内に医薬品を投与するために薬物送達デバイスに取り付けることができる。薬物送達デバイスの使用後、デバイスの遠位端はキャップによってカバーすることができる。
【0005】
加えるに、幾つかの薬物送達デバイスは、送達されるべき異なる用量サイズの設定が可能になるよう構成される。
【0006】
特許文献3において、医療デバイスが示される。医療デバイスは包装されたとき、使用環境条件に暴露される際に見えるようになる、見ることができない潜在的なマーキングを持つ。このマーキングは、光、大気及び/又は温度等の条件に応じて見えるようになる。このマーキングは、恒久的に取り付けられたラベルによって保持され得て、又はデバイスの表面にエッチングされ得る。本デバイスは、示された通りの皮下注射針、又はカヌーレ、カテーテル、検鏡、スパチュラ、顔マスク又は保護手袋のためのガイドであり得る。見ることが可能なマーキングが存在すると、デバイスが使用され、そして配列されるべきであることが示される。
【0007】
特許文献4において、患者への薬物の注射投与における使用に適するシリンジ用の自己注射器が示される。自己注射器は、液体薬物製剤を含有するシリンジを受けるために配置されたハウジング、該液体製剤を患者に送達するために該シリンジを作動するための作動機構、及び転移温度未満での第一の色状態及び該転移温度を超えた温度での第二の色状態を定義する変色材料を含む視覚表示器を含む。視覚表示器は、「使用するには冷たすぎる」状態(つまり、転移温度未満)と「使用するのに十分暖かい」状態の間を使用者が区別することを可能にするように配置される。
【0008】
使用者が、薬物送達デバイスの前回の使用に気付いていること、又は薬物を投与する現在の工程中の薬物送達デバイスの使用を通してガイドされることが一般的に賢明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP1、923、083A1号公報
【特許文献2】EP1、923、084A1号明細書
【特許文献3】GB2402919A号公報
【特許文献4】WO2008/146021A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改良された薬物送達デバイスを供することである。特に、デバイスの前回の又は実際の使用に関する情報を使用者に示すことを可能にする薬物送達デバイスが供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、薬物送達デバイスは、カートリッジ及びピストンロッドを保持するように適合されたハウジングを含み、ここでピストンロッドは、操作ボタンを操作するのに対応してピストンをカートリッジ内に係合するように、ピストンに適合される。本デバイスは更に、薬物送達デバイスの使用関連情報を明らかにすることができる表示手段(indicator means)を含み、ここで表示手段はハウジングに対して可動である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、薬物送達デバイスの概略状態、及び表示手段によって示される通りのその個人的投与履歴についての短期情報又は長期情報の何れかを使用者に供する。本発明は、薬物送達デバイスを初めて使用する人、又は要求される投与スケジュールに不慣れな人、従って何時、どれだけ投与されたかについての更なる概略フィードバックが必要な人に対して特別な便益があるものである。
【0013】
これによって、使用者への薬物送達デバイス使用情報のフィードバックが増加する。通常、デバイスは、薬物送達デバイスの状態についてのある程度の使用者フィードバックを有する。このフィードバックは、一般に、デバイスに残された用量の投与可能な容量又は回数であり、そして多くの可変デバイスの場合、使用者に自らが設定中の用量も知らせる。しかしながら、一旦、用量が投与されると、用量の前後の目盛の間の違いを覚えていること以外、又はどれだけの量が投与されたかを覚えていること以外に、使用者は、最近、用量を取ったことを自らに知らしめる他の情報を殆ど有しない。
【0014】
本発明によると、使用に関わる情報がハウジングに対して可動な薬物送達デバイスの部品上に供される。薬物が薬物送達デバイスから投与されるとき、少なくともピストンロッド及びピストンは、操作ボタンの操作に応じて、カートリッジの遠位端に向かって前方へ漸次(progressively)動く。
【0015】
表示手段が、薬物送達デバイスの前回の又は実際の操作に関する使用情報を表すので、薬物送達デバイスの使用者は、表示手段がハウジングによってもはや隠されず、そして使用者の視野中に動いているので、この情報を容易に収集することができる。これによって使用者は薬物送達デバイスに関わる情報を迅速に得ることができる。
【0016】
第一の実施態様において、表示手段は周囲変化に鋭敏である。
【0017】
用量を投与するとき、使用者は表示手段を直接邪魔しかねない。代替法として、又は追加的に、薬物送達デバイスの可動部分上に置かれる表示手段が、周囲の影響を受けるように開放される。結果として、用量を投与することが環境に鋭敏な表示手段を、例えば、第一の色状態から第二の色状態にその状態を変えることによって作動させるであろう。従って、使用者は、デバイスの使用に関する情報を受け取るように、用量が最近投与されたことを知らされる。
【0018】
一つの実施態様において、表示手段は感圧性である。
【0019】
この例において、使用者は表示手段に触れることによって用量を投与しているとき、感圧性コーティングを作動させるであろう。一旦、開放されると、感圧性表示手段は、例えば、非常にゆっくりと時間をかけてその元の状態に戻り得るであろう。この時間中に、使用者は、用量が最近投与されたことを知らされる。
【0020】
更に、これは、用量を投与するとき、正しい期間、デバイスを確実に掴むために使用され得るであろう。この状態は変化するのに一定の時間がかかり、そして一旦、変化すれば、使用者はデバイスが必要な時間掴まれていたことを知るであろう。従って、これは用量の不正確さ又は針での意図しない滲出(weeping)を最小化するために役立つ。
【0021】
一つの実施態様において、表示手段は温度感受性である。
【0022】
もし投与中にデバイスの特別な領域が掴まれたならば、使用者は、表示手段に触れることによって用量を投与しているとき、温度感受性コーティングを作動するであろう。一旦、開放されると、例えば、温度感受性コーティングとして供されている表示手段は、例えば、非常にゆっくりと時間をかけてその元の状態に戻り得るであろう。この時間中に、使用者は、用量が最近投与されたという使用に関係する情報を提供される。
【0023】
既に上述の通り、これは、使用者が、用量を投与しているとき正しい期間、デバイスを確実に掴むためにも使用され得るであろう。従って、これは用量の不正確さ又は針での意図しない滲出を最小化するのに役立つ。
【0024】
一つの実施態様において、表示手段は光感受性である。
【0025】
この例において、使用者にデバイスの状態又はデバイスの履歴を伝える情報を提供する、薬物送達デバイス内の高性能材料として光感受性コーティングを適用することができる。表示手段は、入ってくる(impinging)周囲光の影響下にあるように、薬物送達デバイスの可動部品上に置くことができる。例えば、表示手段は、光感受性インク等を用いて薬物送達デバイス上に印刷することができる。要約すると、本発明の実施態様によって、例えば、用量が最近投与されたか否かを、使用者が確認することが可能になる。
【0026】
一つの実施態様において、表示手段は色変化を行う(perform)ことができる。
【0027】
光の変化は、通常、注意を惹き、そしてその結果、使用者によって容易に認識できる。色変化のためにかかる時間は、例えば、デバイスを注射部位から除去する前の待ち時間の長さに関して使用者をガイドするために使用され得るであろう。
【0028】
一つの実施態様において、表示手段は、操作ボタン上に配置される。
【0029】
この例において、投与のために使用者が押し続ける操作ボタンの最上部は、用量が投与されたことを使用者に思い出させるために使用され得るであろう。用量を投与しているとき、使用者は、その色又は状態を変える感圧性コーティングを作動するであろう。一旦、開放されると、周囲に鋭敏なコーティングは、例えば、非常にゆっくりと時間をかけてその元の状態に戻り得るであろう。この時間中に、使用者は、用量が最近投与されたことを知るであろう。感熱性材料を使用することによって、同じ原理を達成することができる。もしデバイスの特定の領域又は操作ボタンが投与中に掴まれていたならば、その領域は状態又は色を変えたであろうし、そのことにより使用者にデバイスが最近使用されたことを指示するであろう。
【0030】
一つの実施態様において、表示手段は、ハウジングの少なくとも部分的に透明な側壁の下方に置かれる。
【0031】
この実施態様において、表示手段はハウジング内に配置することができる。操作手段は、もし、用量が投与されたならば、そのときにのみ(only)見るができるであろう。操作手段が、可動であるという事実故に、操作手段は、少なくとも部分的に透明な側壁の下方に動かすことによって見ることができるようになるであろう。例えば、少なくとも部分的に透明な側壁は、窓又はカートリッジホルダーの近くの透明部分であってよい。そのように、操作手段は、例えば、投与機構に接続されて使用される如何なる部分にも取り付けることができる。
【0032】
一つの実施態様において、表示手段はピストンロッドの上に置かれる。
【0033】
ピストンロッド上に表示手段を供しても、薬物送達デバイスに如何なる追加の部品も加わらないため、それは使用に関わる情報を得るためのそして表示するためのコスト効率的でかつ実行可能な方法である。実質的に全てのペン型薬物送達デバイスは何らかの特定の形態のピストンロッドを含むので、本発明の概念はピストンロッドの正確な形態に関わりなく、如何なる薬物送達デバイスにも適用することができる。
【0034】
一つの実施態様において、表示手段は、ハウジング内に内側に向かって伸びている操作ボタンの一部の上に置かれる。
【0035】
この実施態様によって、操作手段が光に暴露されるときにはある色であり、それがハウジングによって隠されるときは別の色であることが可能になるであろう。色変化に対してかかる時間は、デバイスを注射部位から除く前の待ち時間の長さに関して使用者をガイドするために使用することができるであろう。この例は、ハウジング内に内側に向かって伸びている操作ボタンの部分の下方に窓を供するときに、特に有用である。操作ボタンが用量の注射の前後で動いているので、表示手段は、例えば、薬物を通して使用者をガイドする。
【0036】
一つの実施態様において、表示手段は複数の記号を含む。
【0037】
この例において、複数の記号を形成するように、幾つかの環境に鋭敏なコーティングを適用することができる。その結果、異なる記号によって、例えば、薬物を通して使用者をガイドすることができる。
【0038】
一つの実施態様において、複数の記号は漸次前進する目盛として配置される。
【0039】
ピストンロッド上若しくはピストンロッドの一つの側上の表示手段に対して使用される光感受性インク又は材料によって、例えば、デバイスの履歴又は用量のタイミングが使用者に伝えられ得るであろう。
【0040】
一つの実施態様において、色変化が、薬物投与期間に見合って、又は薬物投与の二つの連続する工程間の時間間隔に見合って生じる。
【0041】
この実施態様は、用量を思い出させるデバイスとしても使用され得るであろうし、ここで部品の暴露された区域は、二つの引き続く用量の間の期間に亘って、1つの色から別の色に変化するであろう。一旦、完全に変化すると、それは次の用量のための時間になるであろう。この特別な実施態様は、例えば、用量が最近投与されたか否かを示す、固定された用量又は固定されたスケジュールのデバイスに適している。
【0042】
一つの実施態様において、色変化は、光への暴露期間に依存した段階的な階調度として生じる。
【0043】
もし、色変化が、光への暴露期間に依存した段階的な階調度であるならば、ピストンロッドがハウジングから外に前進するにつれて、増分の光感受性材料が、時間をかけて次第に暴露されるであろう。より多くの部品が暴露されるにつれ、それはサイズ及び/又は最後の用量以来の概略時間に対応してゆっくりした色変化を生みだすであろう。これは、概略の用量履歴を使用者に伝えるために、包装内のカラースケールと比較され得るであろう。
【0044】
上述の目的のために、薬物送達デバイス上の表示手段が使用され、ここで表示手段は、薬物送達デバイスの使用関連情報を示し、そしてここで表示手段は薬物送達デバイスのハウジングに対して可動である。
【0045】
表示手段を使用すると、使用者への薬物送達デバイス情報のフィードバックが増加する。個々に又は組合せて、表示手段は、使用者が概略の用量の時間計画を確認すること、又は単に使用者に用量が最近投与されたか否かを知らせることを可能にする。これには、暴露された継続時間に依存してゆっくりと色を変えることができる光感受性ピストンロッドと組合せた感圧性又は温度感受性の操作ボタン表面を含むことができる。
【0046】
更に、これによって、使用者に、用量が投与されたか否かに関する即座の短期的フィードバック、及びそれに加えて、色の階調度及び時間目盛と比較する場合、用量履歴に関する長期的フィードバックを提供することができる。可変用量の場合、色変化のサイズ及び階調度も、おおよそのタイミングと同様、新しい用量体積に近似することになる。
【0047】
他の特長は、添付図面と関連して考慮されたとき、以下の詳細な記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの簡略化された側面図を模式的に示す。
【図2A】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図2B】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図2C】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図3A】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図3B】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図3C】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図4】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図5】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【図6】一つの実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の簡略化された側面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1において、液体薬剤のための注射器である薬物送達デバイス5の一つの実施態様が示されている。なお、図1において示されるような薬物送達デバイス5の記述は単に例示的である。
【0050】
薬物送達デバイス5は、複数の固定された又は使用者が設定できる薬物の用量を送達するように構成され得る。薬物送達デバイス5はペン型のデバイスであり得る。薬物送達デバイス5は、一つの又は複数の部品から形成することができるハウジング10を含む。
【0051】
図1に示された実施態様において、ハウジング10はカートリッジホルダー14に取り付けられ、ここに医薬品又は薬物を含有するカートリッジ16が置くことができる。カートリッジホルダー14はハウジング10に対して動きに抗して固定され得る。カートリッジホルダー14及びハウジング10が一つの部品として加工されることも考えられる。
【0052】
ニードルユニット24は、投薬中に患者皮膚に面する薬物送達デバイス5の遠位端12に置かれる。ニードルユニット24は針22を含む。ニードルユニット24の針22を通して医薬品は患者内に注射することができる。ニードルユニット24はねじ係合によってニードルホルダー20に固定することができる。ニードルホルダー20は、例えば、カートリッジホルダー14の一部を形成する。
【0053】
医薬品の送達は、カートリッジ16に対して遠位端12に向かって遠位方向に動かすことができるピストンロッド26を用いて行うことができる。ピストン28は、カートリッジ16中に保持されそして近位端30に面する側上のカートリッジをシールする。ピストン28はピストンロッド24によってカートリッジに対して遠位端12に動かすことができる。カートリッジホルダー14は、使用者がカートリッジ16内でピストン28の位置を見ることができるように、透明な、部分的に透明な又は半透明な材料で加工される。
【0054】
ピストンロッド26は、便宜上、駆動機構(明示されていない)、例えば、機械的な又は電気的な駆動機構、及び用量設定機構(明示されていない)に接続することができる。駆動機構及び用量設定機構は、薬物送達デバイス5の操作ボタン30が押されるとき、設定された用量がカートリッジ16から投与されるよう遠位方向に、医薬品の用量を設定するために、そしてピストン28を動かすように構成される。
【0055】
ピストンロッド26は直線的に動かされ得る。従って、ピストンロッド26は、遠位方向に駆動されるときハウジング10に対して平行移動(translate)し得る。しかしながら、ピストンロッド26が回転的に可動なように、ピストンロッド26がリードねじナット(図1に示されていない)にねじ込まれた方法で係合されることも考えられる。デバイスの操作中、リードねじナットは、リードねじナット内に係合し得るロックナットによってハウジング10に対して回転運動に抗して固定される。一般に、本発明の実施態様は、ピストンロッド、駆動機構又は用量設定機構の特定の構成に制約されない。
【0056】
図1に示された通り、ピストンロッド26は表示手段40を含む。ピストンロッド26が四角又は矩形の断面を有して加工される場合、表示手段40はピストンロッド26の一つ又はそれ以上の側上に置くことができる。しかしながら、ピストンロッド26の他の形態、例えば、丸い断面若しくは楕円断面、又は当業者に公知の如何なる他の適切な構成も同様に考えられ得る。ピストンロッド26に取り付けられる表示手段40は、カートリッジホルダー14の透明な側壁を通して使用者によって見ることができる。
【0057】
図1において描かれた実施態様によると、ピストンロッド26上の表示手段(40)は、ピストンロッド26上に印刷されている光感受性インクとして供することができる。表示手段(40)の光感受性インクは、薬物を投入する期間に匹敵する時間間隔で色変化を供する。しかしながら、時間間隔が、用量を投与する引き続く工程の間の時間間隔に匹敵することも考えられる。
【0058】
ここで図2Aを参照すれば、薬物送達デバイス5の近位端18、及びピストンロッド26がより詳細に示される。図2Aに示された実施態様において、ピストンロッド26は直線的に可動なピストンロッドとして構成される。ピストンロッド26上に、表示手段の連続列を供するように、複数の表示手段が置かれる。上述の通り、カートリッジホルダー14は、ピストンロッド26の表示手段40を少なくとも部分的に読むことができるようにする少なくとも部分的に透明な側壁を含む。
【0059】
操作中、ピストン28及びピストンロッド26はカートリッジ16の遠位端12に向かって漸次前進する。カートリッジ16中に含有される薬物が薬物送達デバイス5から投与されるとき、ピストン28はカートリッジ16の遠位端12に向かって前進する。ピストンロッド26上の複数の表示手段の最初の一つはハウジング10の透明な側壁を通して入って来る周囲の光にさらされる。入ってくる光に対応して、表示手段40は色変化を実行する。この実施態様によると、用量思い出し部が表示手段によって形成することができて、ここでピストンロッド26の暴露された区域が1つの色から別の色へと、二つの引き続く用量の間の時間に亘って変化する。一旦、色が完全に変わると、この情報は、別の用量が適用されるべきことを定めるように使用することができる。
【0060】
図2Bを参照することによって、これが更に概述され、図2Bは第二の用量が適用された後の図2Aの薬物送達デバイス5を示す。表示手段40’は、その前の適用の表示手段40を表し、そして、図2Bにおいて暗い色によって示される通り、完全な色変化を示す。カートリッジ16中に含有される薬物が二度目に薬物送達デバイス5から投与されるとき、ピストンロッド26は再びカートリッジ16の遠位端12に向かって前進する。
【0061】
ピストンロッド26上の複数の表示手段の二番目がここで、ハウジング10の透明な側壁を通して入って来る周囲の光にさらされる。図2Aの第一の投与工程中に、この表示手段40はハウジング10内に隠され、従ってピストンロッド26がカートリッジ16の遠位端12に向かって前進する前の第一の色状態にある。上述の通り、表示手段40はここで、入って来る光に応じて色変化を行っている。現在の色は図2Bにおける明るい色によって示される。
【0062】
ここで図2Cを参照すれば、図2Bの薬物送達デバイス5がもう二つの用量が適用された後に示される。表示手段40’は前回の適用の表示手段40を表し、そして図2Cにおける暗い色によって示される通り、完全な色変化を示す。カートリッジ16中に含有される薬物がもう一度薬物送達デバイス5から投与されるとき、ピストン28はカートリッジ16の遠位端12に向かって再び前進する。
【0063】
ピストンロッド26上の複数の表示手段40の更なる一つがここで、ハウジング10の透明な側壁を通して入って来る周囲の光にさらされる。表示手段40はここで、入って来る光に応じて色変化を行っている。現在の色は図2Cにおける明るい色によって示される。
【0064】
図3A〜3Cに関して、薬物送達デバイス5の更なる実施態様が示される。図2A〜2Cの実施態様と同様に、第一の、第二の及び第四の工程において薬物を投与することがそれぞれ示される。図3A〜3Cに描かれた実施態様によると、ピストン28はカートリッジ16内にある程度前進させられる。再び、カートリッジホルダー14は、カートリッジ16に係合中に見ることができるピストンロッド26を保持することができる。
【0065】
この実施態様において、表示手段40の色変化は、周囲の光への暴露期間に依存した段階的な階調度として生じる。
【0066】
図3Aに示される通り、ピストンロッド26上の複数の表示手段40の最初の一つがここで、ハウジング10の透明な側壁を通して入って来る周囲の光にさらされる。表示手段40は、入って来る光に応じて色変化を行っている。
【0067】
ここで図3Bを参照すれば、表示手段の二番目のものがハウジング10から外に前進する。図3Aの第一の投与工程中に、この表示手段40はハウジング10内に隠され、そのためピストンロッド26がカートリッジ16の遠位端12に向かって前進する前の第一の色状態にある。第一の表示手段40は入って来る光に応じて色変化を実行しており、そしてここで参照番号40’を有する図3Bに暗い色によって示される。
【0068】
ここで図3Cを参照すれば、図3Bの薬物送達デバイス5が、もう二つの用量が適用された後に示される。ピストンロッド26上の複数の表示手段40の更なる一つがここで、ハウジング10の透明な側壁を通して入って来る周囲の光にさらされる。表示手段40はここで、入って来る光に応じて色変化を行っている。現在の色は図2Cにおいて明るい色によって示される。現在の色は、図2Cにおいて明るい色によって示される。表示手段40'''は図3Aに示される通りの第一の適用の表示手段を表す。従って、表示手段40''は図3Bにおける第二の適用の表示手段40を表す。表示手段40’は第三の適用の表示手段40を表す。
【0069】
要約すれば、ピストンロッド26がハウジング10から外に前進するにつれて、増分の表示手段40が、時間をかけて次第に暴露される。より多くのピストンロッド26が周囲の光に暴露されるにつれて、表示手段40はサイズ及び/又は最後の用量以来の概略時間に対応しているゆっくりした色変化を示す。
【0070】
ここで図4を参照すれば、近位端18に向かう薬物送達デバイスの部分がより詳細に示される。
【0071】
図4の実施態様において、操作ボタン30は表示手段40としての感圧性コーティング42によって覆われる。表示手段40に触れることによって用量を投与するときに、感圧性コーティング42は、加えられた圧力によってその色を変えることができる。一旦、開放されると、感圧性表示手段は、例えば、時間をかけて非常にゆっくりとその元の色に戻る。この時間中に、使用者は、用量が最近投与されたことを知らされる。
【0072】
この実施態様において、表示手段40は温度感受性であってもよい。もし、デバイス5の特別な領域が投与中に掴まれるならば、使用者は、表示手段40に触れることによって用量を投与すときに、温度感受性コーティングを作動するであろう。これは、用量を投与しているときに、正しい期間、デバイス5を使用者が確実に掴むために使用され得るであろう。従って、これは用量の不正確さ又は針での意図しない滲出を最小化するのに役立つ。
【0073】
要約すれば、操作ボタン30上に表示手段40を配置すると、投与のために使用者が押し続ける操作ボタン30の最上部は、用量が投与されたことを使用者に思い出させるために使用されるであろう。
【0074】
ここで図4を参照すれば、近位端18に向かう薬物送達デバイス5の部分がより詳細に示される。
【0075】
この実施態様において、表示手段はハウジング10内に内側に向かって伸びている操作ボタン30の一部の上に置かれる。使用者が見ることができるように、窓開口部44がハウジング10の側壁上に供される。この実施態様によって、表示手段40が、それが窓開口部44を通して光に暴露されるとき一つの色であること、そしてそれがハウジング10によって隠されるとき別の色になることが可能になる。色変化のためにかかる時間は、デバイスを注射部位から除去する前の待ち時間の長さに関して使用者をガイドするために使用され得るであろう。
【0076】
この実施態様は、表示手段40として少なくとも二つの記号を供するときに特に有用である。図5に示された通り、第一の記号46及び第二の記号48は操作ボタン30の内側に伸びている部分50上に置くことができる。表示手段40は第一の記号46及び第二の記号48を操作ボタン上の矢印として印刷するために光感受性インクを用いて形成することができる。操作ボタン30は、用量の注射前及び注射中に使用者によって動かされる。従って、表示手段の第一の記号46及び第二の記号48は用量の注射の前後で異なる位置に置かれる。窓開口部44を通って入って来る光に暴露されるそれぞれの記号は、色変化を示し、そして使用者に薬物送達デバイス5についての情報を供する。例えば、色変化のためにかかる時間は、デバイスを注射部位から除去する前の待ち時間の長さに関して使用者をガイドするために使用され得るであろう。
【0077】
他の実行態様(implementation)は本請求項の範囲内にある。異なる実行態様の要素は組み合されて本明細書に特別に述べられていない実行態様を形成し得る。
【符号の説明】
【0078】
薬物送達デバイス 5
ハウジング 10
遠位端 12
カートリッジホルダー 14
カートリッジ 16
近位端 18
ニードルホルダー 20
針 22
ニードルユニット 24
ピストンロッド 26
ピストン 28
操作ボタン 30
方向 32
表示手段 40、40’、40'',40'''
コーティング 42
窓開口部 44
第一の記号 46
第二の記号 48
内側に伸びている部分 50

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスであって、
カートリッジ(16)及びピストンロッド(26)を保持するように適合されたハウジング(10)、ここでピストンロッド(26)が、操作ボタン(30)を操作するのに応答してピストン(28)をカートリッジ(16)に係合するよう、ピストン(28)を駆動するように適合され;及び
薬物送達デバイス(5)の使用関連情報を明らかにすることができる表示手段(40)、ここで表示手段(40)がハウジング(10)に対して可動で、ここで表示手段(40)が、ハウジング(10)の少なくとも部分的に透明な側壁の下方に置かれる;
を含む薬物送達デバイス。
【請求項2】
表示手段(40)が周囲変化に鋭敏である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
表示手段(40)が感圧性である、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
表示手段(40)が温度感受性である、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
表示手段(40)が光感受性である、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
表示手段(40)が色変化を供することが可能である、請求項2〜5の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
表示手段(40)がピストンロッド(26)上に置かれる、請求項1〜6の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
表示手段(40)が、ハウジング(10)内に内側に向かって伸びている操作ボタン(30)の一部(50)の上に置かれる、請求項1〜6の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
表示手段(40)が複数の記号(46、48)を含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
複数の表示手段(40、40’、40''、40''')が漸次前進する目盛として配置される、請求項1〜8の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
色変化が、薬物の投与期間に見合って、又は薬物投与の二つの連続する工程間の時間間隔に見合って生じる、請求項6〜10の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
色変化が、光への暴露期間に依存した段階的な階調度として生じる、請求項6〜10の何れか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
表示手段(40)が薬物送達デバイス(5)の使用関連情報を明らかにし、表示手段(40)が薬物送達デバイス(5)のハウジング(10)に対して可動で、そして表示手段(40)が、ハウジング(10)の少なくとも部分的に透明な側壁の下方に置かれる、薬物送達デバイス(5)上の表示手段(40)の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−519506(P2012−519506A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552442(P2011−552442)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052729
【国際公開番号】WO2010/100213
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】