説明

薬物送達デバイス

薬物送達デバイスは、ハウジング(2)及びハウジング内に配置されたピストンロッド(13)を含む。ピストンロッド(13)は、軸方向に沿って移動して流体を投与するように適合される。ハウジング(2)に配置された駆動部材(5)は、ピストンロッド(13)に機能的に連結され、そして第一の動きに応答して投与するための流体の用量を設定するよう適合される。駆動部材(5)は、また、第二の動きに応答して、ピストンロッド(13)を移動させて用量を投与するように適合される。薬物送達デバイスは、また、駆動部材(5)及びハウジング(2)に機能的に連結され、そしてその第一及び第二の動きの間、事前投与の距離だけ少なくとも駆動部材(5)を動かすように適合される事前投与駆動部材(18)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達デバイス、特に、ペン形注射器に関し、ここで、医薬品の事前設定された多くの用量が投与できる。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスは、正規の医学的訓練を受けていない人が、ヘパリン又はインスリンなどの医薬品の正確で、事前に定義された用量を投与する必要がある分野に応用される。更に、医薬品は、短期間又は長期間に亘る不規則なベースで投与し得る。
【0003】
使用者が操作する薬物送達デバイスは、医療分野ではよく知られている。
【0004】
特許文献1は、医薬品の事前設定された量を薬物送達デバイスから正確に投与するための機構を示し、ここで、回転可能なプランジャは、容量が設定されたとき、ピストンロッドが回転するように、第一の歯車と係合するその内面上に多くの平行ラックを有する。デバイスは、第一の歯車と一緒に回転する第二の歯車を有し、それにより、選択された用量が投与されるとき、スラストロッドを薬物送達デバイス内に駆動させる。
【0005】
使用者が、例えば、患者が、事前設定された用量を選択することによりその体内へ流体を注射してもよい。その目的のために、使用者は、投与すべき用量を事前設定するために、第一の動きにより薬物送達デバイスのボタンを動かす。用量ボタンの第二の動きにより、流体は投与され、そして患者の体内へ注射し得る。患者の裁量により、手法は繰り返して行うことができる。
【0006】
投与すべき医薬品によっては、単回用量は非常に正確で、流体の量は異なった用量の間で、異なってはならない。薬物送達デバイスの機械部品はその間で幾つかの許容誤差を含むので、デバイスは第一の使用の前に、プライミングされる。プライミング手法の間、薬物送達デバイスの駆動機構の全ての機械部品は、初期化され、そして異なった機械部品間のいかなるバックラッシュ並びに許容誤差も減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO第96/26754号A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、バックラッシュは発生するかもしれず、そして駆動機構の異なった部品間の許容誤差も、数回の用量を投与する間、増大するかもしれない。それ故、投与すべき用量の精度は、再び、低下するであろう。要するに、尚、使用中改良された用量精度を有する薬物送達デバイスの必要性は存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、薬物送達デバイスは、ハウジング及びハウジング内に配置されたピストンロッドを含んでもよい。ピストンロッドは、軸方向に沿って移動して流体を投与するように適合される。また、ハウジング内に配置された駆動部材は、ピストンロッドに機能的に(operatively)連結する。駆動部材は、第一の動きに応答して投与するための流体の用量を設定するよう適合され、そして、更に、第二の動きに応答して軸方向に沿ってピストンロッドを移動させて用量を投与するように適合される。薬物送達デバイスは、更に、駆動部材に機能的に連結された事前投与スプリング部材及びハウジングを含む。スプリング部材は、少なくとも、駆動部材を第一及び第二の動きの間の事前投与された距離だけ動かすように適合される。
【0010】
従って、実施態様において、少なくとも駆動部材は、用量を設定した後、及び事前に設定された用量を実際に投与する前に、事前投与距離を動かされる。事前投与距離だけのそのような追加の運動は、流体の数回の用量を投与する間、発生するかもしれないいかなるバックラッシュ又は許容誤差も減少するであろう。従って、それぞれの第二の動きの間、投与される流体の量は、実質的に一定であり、異なった投与手法の間でも変化することはない。
【0011】
駆動部材の第一及び第二の動きは、可動用量ボタンにより起動でき、前記用量ボタンは、駆動部材と機能的に連結され得る。
【0012】
この点において、駆動部材の第一の動き、又は用量ボタンの第一の動きは、投与すべき用量を選択するための運動を表示する。従って、駆動部材及び用量ボタンのそれぞれの第二の動きは、流体の事前に設定された用量の投与をもたらす駆動部材の運動を表示する。
【0013】
使用者が特定方向に用量ボタンを動かす場合、用量ボタンは駆動部材に機能的に作動し、投与すべき流体の用量を設定するために第一の動きをもたらす。使用者が、その後、ボタンを第二の方向に動かす場合、ボタンは駆動部材に作動し、それにより、用量を投与する駆動部材の第二の動きをもたらす。好ましくは、用量ボタンが動く少なくとも一つの方向が、第一又は第二の方向に対応していてもよい。例えば、用量ボタンは、用量を設定するために第一の方向に、及び/又は、流体を投与するために駆動部材に作用するために第二の方向に動く。
【0014】
実施態様において、駆動部材は、用量ボタンの第一の動きに応答して投与するための流体の用量を設定するために、及び用量ボタンの第二の動きに応答して設定した用量を投与するために遠位方向に沿ってピストンロッドを動かすために、ピストンロッド及び用量ボタンと機能的に連結する。用量ボタンの第一及び第二の動きの間、事前投与スプリング部材は、少なくとも駆動部材を事前投与距離動かせる。
【0015】
実施態様において、事前投与スプリング部材は、駆動部材又は用量ボタンの第一の動きの間、事前に荷重をかけられてもよく、又は事前に張力をかけられてもよい。第一の動きの後、事前投与スプリング部材は、少なくとも駆動部材及びピストンロッドを、事前投与距離だけ動かすために、少なくとも部分的に、開放され、及び無負荷になる。少なくとも駆動部材の事前投与距離の運動により、投与中に導入されるかもしれない、いかなる許容誤差又はバックラッシュも減少する。特に、事前投与距離の運動中、ピストンロッドは、薬物送達デバイスのカートリッジ内に配置された栓又はピストンと直接接触することになる。
【0016】
別の実施態様において、事前投与スプリング部材は、駆動部材に力を及ぼす。該力は、事前投与距離だけの運動をおこさせる。どのような場合においても、力は、駆動部材の異なった部品間、並びに、駆動部材とピストン間の許容誤差及びバックラッシュを低下させる。
【0017】
本発明の実施態様において、事前投与スプリング部材は、第一のストリップ部分及び第二のストリップ部分を含んでもよく、ここで、第二のストリップ部分は、第一のストリップ部分に若干曲げて連結される。それ故、事前投与スプリング部材は、V字形の形状を含み得る。あるいは、事前投与スプリング部材は、曲げられたストリップを含んでもよい。
【0018】
本発明の別の実施態様において、事前投与スプリング部材は、少なくとも、用量ボタンの第一の動きの後、ねじり応力又は歪みを含んでもよい。この実施態様において、スプリン部材は、ねじりながら応力を負荷され得る。
【0019】
実施態様において、事前投与スプリング部材は、第一の動きの後で、駆動部材に力を逆方向にかけるように適合され得る。換言すれば、スプリング部材は、第一の動き中、駆動部材が動く方向とは反対方向に向いた力をかけ得る。従って、個々の用量を選択するための駆動部材の第一の動きの間で、事前投与スプリング部材は、駆動部材の第一の動きと平行で、反対方向を指示する力を発生できるかもしれない。使用者が個々の用量を選択した後、用量ボタンを解放したとき、事前投与スプリング部材による力が駆動部材を事前投与距離だけ反対方向に、例えば、第二の動きの方向に動かすために駆動部材に作用する。そのような事前投与距離だけの運動は、駆動部材の異なった部品間のバックラッシュ又は許容誤差、並びに、ピストンとピストンロッド、又はピストンロッドと駆動部材の間のいかなる許容誤差も阻止するであろう。
【0020】
別の実施態様において、ハウジングは、用量ボタンの運動中、駆動部材の、更なる、運動を阻止するための停止エレメントを含んでもよい。事前投与スプリング部材は前記停止エレメントに取り付けてもよい。結果として、事前投与スプリング部材は、駆動部材の第一の動きの間、応力を受け、そして少なくとも、部分的に、第一の動きが終了した後、及び第二の動きが始まる前に、解放される。第二の動きの間、事前投与スプリング部材は、完全に開放されるであろう。
【0021】
別の実施態様において、ハウジングは、運動の間、駆動部材の更なる運動を阻止するために停止エレメントを含み、ここで事前投与スプリング部材は、駆動部材に取り付けられる。いかなる場合においても、駆動部材の第一の動きの間、事前投与スプリング部材は応力を受け、そして、第一の動きが完結し、そして第二の動きの前に、少なくとも部分的に解放される。
【0022】
別の実施態様において、事前投与スプリング部材は、ハウジング及び用量ボタンに取り付けられる。用量ボタンの第一の動きに応答して、用量ボタンに逆向きの力を及ぼすように適合される。
【0023】
別の態様において、薬物送達デバイスは、更に、流体、及びピストンロッドとカートリッジ間に配置されるピストンを有するカートリッジを保持するためのカートリッジホルダを含む。ピストンとカートリッジホルダ間、又はピストンとハウジング間の粘着力は、駆動部材の第一及び第二の動きの間に応力を受けた事前投与スプリング部材により及ぼされる力より大きくなるかもしれない。換言すれば、ピストンとカートリッジホルダ間、又はピストンとハウジング間の粘着力は、事前投与スプリング部材により引き起こされる力より大きい。これは、投与すべき用量が選択された後、及び選択された用量を実際に投与する前に、駆動部材の運動中、ピストンを動かすことを阻止するであろう。
【0024】
投与すべき用量を選択するために、用量ボタンは、軸の遠位方向に動くように適合され得る。あるいは、用量ボタンは、投与すべき流体の用量を選択するために回転するように適合され得る。
【0025】
別の実施態様において、事前投与スプリング部材は、流体の投与又は第二の動きの間、10%、好ましくは5%より少ない駆動部材の移動距離の範囲内でのリフト(lift)を含む。それ故、事前投与スプリング部材により引き起こされるいかなる事前投与の距離も、流体の選択された用量を投与するためにその第二の動き中、駆動部材の運動の10%より少ない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
他の特徴は、貼付の図面と共に次に詳細に記述される説明から明白になるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に記載の薬物送達デバイスの実施態様を示す。
【図2】本発明に記載の薬物送達デバイスの部分を示す。
【図3】本発明の実施態様をより詳細に図示する。
【図4】用量の選択中の図3の実施態様を示す。
【図5】選択された用量を実際に投与する前の図3の実施態様を示す。
【図6】本発明の別の実施態様を示す。
【図7】図6に記載の実施態様の駆動部材を図示する。
【0028】
なお、以下の図で示す薬物送達デバイスの説明は、単に図示するだけである。薬物送達デバイスの部分又は部品は、他の部品に対比して大きく図示されている。しかし、薬物送達デバイスの部分又は部品の寸法は、図示目的のみであり、実際の寸法又は比率を表すものではない。同様の部品は同様の参照を含んでいるかもしれない。
【0029】
図1に記載の薬物送達デバイスは、薬物の複数の固定用量を送達するように構成される。薬物送達デバイ1は、ペン形デバイス、好ましくはペン形注射器である。それは、ハウジング2及びカートリッジホルダ27を固定するためにハウジングに連結するキャップ9を含む。カートリッジ3はカートリッジホルダ27内に配置される。キャップ9は、また、カートリッジ3の出口25に接近して配置される係合手段10を含む。
【0030】
キャップ9及びカートリッジホルダ24は、薬物送達デバイス1の遠位端11で配置され、一方、用量ボタン8、グリップ表面26及び用量部材7は、薬物送達デバイスの近位端12に配置される。用量ボタン8は、ハウジング2内に配置される駆動部材5(本明細書には図示されていないが)と機能的に連結され、それは薬物送達デバイスの遠位端11に向かってガイドスリーブ21上にピストンロッド13を駆動させる。ピストンロッド13は、カートリッジ内の薬物流体4を投与するためカートリッジ3内に配置されるピストン6に連結される。
【0031】
カートリッジ内の流体4の用量を投与するために、使用者はボタン8を、用量を選択するために近位方向12に向かって動かす。選択は次の実施態様において図でより詳細に示すであろう。
【0032】
流体の事前に選択された用量を投与するために、使用者は遠位端11に向かってボタン8を押し、それにより、用量ボタン8は、遠位端11に向かって事前に指定した距離だけピストンロッド13を動かすために、駆動部材及びピストンロッド13に作用する。そのような運動は、流体を投与することになるであろう。
【0033】
図2は、薬物送達デバイス1のハウジング2内に配置された駆動部材5をより詳細に示す。駆動部材は、ボタン8に機能的に連結された移動ラック5を含み、該移動ラックは変位部材17を有する。変位部材17は、ピストンロッド13上に配置された歯の部分14にそれぞれ係合するように適合される。変位部材17をピストンロッド13の歯14aと係合することにより、ピストンロッドは、ボタンをそれぞれ遠位方向に押すとき、遠位方向に向かって動かすことができる。それが示す通り、歯14aは、固定され、選択された流体用量に対応して、等距離でピストンロッド上に配置される。あるいは、歯14aは、互いの間の異なった距離を含んでもよい。
【0034】
また、ガイディングスリーブ21は、ガイド停止部材23を含み、それはピストンロッド13上に配置された個々のピストンロッド停止凹部22と係合する。ガイディング停止部材は、ボタン8及び駆動部材5を近位方向に沿って動かすことにより、用量の選択中、近位端12に向かうピストンロッドの動きを阻止するであろう。
【0035】
流体の用量の選択と事前選択された用量の投与の間の許容誤差及びバックラッシュを低下させるために、駆動部材5は、駆動事前投与部材の停止エレメント16を含み、それは、ハウジング2に連結された停止エレメント15と機能連結下にある。停止エレメント15と駆動部材5の停止エレメント16の間で、事前投与スプリングエレメント18が配置される。
【0036】
近位方向12に沿ったボタン8及び駆動部材5の第一の動きの間、スプリング部材18は、事前負荷される。使用者がボタン8を離すとき、事前投与の部材18は、力を停止エレメント16及び駆動部材5にかけ、それにより駆動部材5を事前投与距離だけ動かす。事前投与距離のこの運動は、ロッドが他のピストンと直接接触するまで、変位部材17をピストンロッド13の歯14aの歯の部分14内へ直接接触を行い、並びに、ピストンロッド13を動かすであろう。それ故、スプリング部材18の応力の解放は、全ての部品及び部分が直接接触するように、駆動部材5、ピストンロッド13の異なった機械部品とピストン間のいかなる許容誤差も低下させるであろう。結果として、使用者がボタン8を遠位方向へ押すことが、変動、許容誤差及びバックラッシュに起因する不正確性を伴わずに、流体の正確な量を、今、直接投与することになるであろう。
【0037】
図3は、本発明に記載の実施態様のより詳細な図面を示す。
【0038】
この実施態様において、薬物送達デバイスは、用量を選択する前の操作状態にある。薬物送達デバイスは、ハウジングの内壁上に配置され、駆動部材5に面する停止部材15を備えたハウジング2を含む。駆動部材5は、ハウジングの内部側壁に面し、そして薬物送達デバイス1の停止端15と遠位端11の間に配置された停止エレメント16を含む。
【0039】
駆動部材5は、また、ピストンロッド13上に配置される歯14aと係合するように適合される変位部材17を含む。点線で表示する通り、ピストンロッド13上に配置された歯の部分14は、流体の固定の事前選択された用量に対応して、互いに等しい距離を含む。更に、ピストンロッド13は、個々のガイド停止部材23を機能的に係合するピストンロッドの停止部材22を含み、該ガイド停止部材23はガイディングスリーブ21の部分である。流体を投与するために、ピストンロッド13は、薬物送達デバイス1の遠位端に向かって動き、それにより栓6を同一方向に押す。そのような運動は、歯14aの歯の部分14と係合する変位部材17を用いて実施される。駆動部材4が遠位端11に向かって動くとき、係合された変位部材17は、ピストンロッド13を同一方向に向かって押す。
【0040】
図4は、用量の選択中の薬物送達デバイスの状態を図示する。その目的のために、駆動部材5に機能的に連結された用量ボタン(本明細書に示されていないが)は、近位方向に沿って動き、それにより駆動部材5の近位方向に向いた運動を発生させる。駆動部材5の停止エレメント16は、近位方向19内への運動中、事前投与スプリング部材18と接触することになる。それにより、事前投与スプリング部材18は、変位部材17がピストンロッド13の一つの歯14aに嵌め込むまで負荷をかけられる。事前投与スプリング部材18は、使用者がボタン8(本明細書に示されていないが)を解放し、それにより、また、ボタン8と機能的に連結する駆動部材5を解放するまで負荷をかけられたままになるであろう。事前投与のススプリング部材18の応力は、駆動部材5の近位運動の反対方向に向かう力を発生させる。換言すれば、事前投与のススプリング部材18の応力は、遠位端11の方向に向いている。
【0041】
隣接した一対の歯の歯14aの間の距離がピストンロッド13(明確に示されていないが)に沿って変化する場合、駆動部材5の事前投与の運動が、ボタン/駆動部材の特定の作動を調整するか、又は制限してもよい。例えば、二つの歯がスプリング部材18を事前負荷するために駆動部材5が近位に動く必要がある距離より短い距離に空間を置いて配置される場合、用量の選択が駆動部材のそれら二つの歯の一つから後続の歯への伝達を必要とするので、対応する用量が投与される前に、スプリング駆動による事前投与の運動が無くなるであろう。二つの歯の間の距離が、スプリング部材18に事前負荷するために駆動部材が動く必要のある最短の距離より長いか、又は同等である場合、駆動部材及びピストンロッドのスプリング駆動による事前投与の運動が起こる。特に、第一の歯とその後の歯からのピストンロッド13の最遠位の歯との間の距離は、隣接した歯のその後の対の歯の間の距離より大きいかも知れず、好ましくは、隣接した歯の全てのその後の対の歯の間の距離より大きいかもしれない。それ故、駆動部材の事前投与の運動は、流体の第一の用量を送達する前のみ発生するかもしれない。それ故、ピストンロッドは、その結果、歯14a間の距離を調整することによる駆動部材5のある種の作動に対して、事前投与又はピストンロッド13のプライミング移動を制限するように構成し得る。
【0042】
図5は、事前投与部材18の部分解放後の結果を示す。事前投与部材18により発生する力は、駆動部材5を薬物送達デバイス1の遠位端に向かって事前投与の距離だけ動かす。そのような事前投与の運動の故に、変位部材17は、ピストンロッド13の歯14aの歯の部分14と直接接触するようになる。それ故、駆動部材5は、また、事前投与部材18により発生した力を、可能ならば、また、遠位端に向かって動かし得るピストンロッド13にかける。いかなる事前投与距離の運動も、ピストンロッド13が、薬物送達デバイスのカートリッジ内に配置されたピストンと直接接触する場合、停止し、又は少なくとも、速度を低下させる。
【0043】
結果として、駆動部材5、ピストンロッド13及びピストンを含む全ての機械部品は直接接触し、そして許容誤差又はバックラッシュもそのまま残らないであろう。流体を投与するためにボタンを押す使用者は、今、薬物送達デバイス1の遠位端に向かって力をかけ、駆動部材5の遠位運動20をもたらす。駆動部材5の各々の遠位運動は直接的であり、そして変位部材17によりピストンロッド13へ伝達されるいかなる遅れもない。栓は前方に押され、そして流体の正しい量が投与される。
【0044】
図7は、本発明の別の実施態様を示す。この実施態様において、駆動部材は、移動ラック5aに機能的に連結する第一の固定ラック2aを含む。固定ラック2aは、可動エレメント5aの部分が摺動する停止エレメント15を含む。移動ラック5aは、また、固定ラック2aの停止エレメント15がその間に配置されるようにエレメント15を取り囲む二つの停止エレメント16を含む。従って、移動ラック5aは、二つの停止エレメント16の間のみで、遠位及び近位方向に沿って動くことができる。
【0045】
固定ラック2がハウジングに堅く取り付けられている間、移動ラック5aは、ハウジング内の遠位及び近位方向に沿って動くことができ、そしてピストンロッド(示されていないが)に機能的に連結する。移動ラック5aは、更に、第一のストリップ部分28及び第二のストリップ部分29を有する事前投与スプリング部材18を含む。両方の部分は、共にV字形の形状に連結する。第二部分29は、また、停止部材16の一つと固定ラック2aの停止エレメント15の間に配置される。近位端12に向かう移動ラック5aにより、スプリングエレメント18の第二のストリップ部分29は、固定ラック2aの停止エレメント15と接触する。第二のストリップ部分は、今、スプリング部材18の曲げられた配置に起因して応力を受ける。この応力は、順に、遠位端に向かう力をより小さくするであろう。解放後に、移動ラック5aは、遠位端11に向かう事前投与距離だけ移動するであろう。この事前投与距離は、異なった機械的部品間、特に、移動ラック5aとピストンロッド13間のいかなる許容誤差又はバックラッシュも相補するであろう。
【0046】
図7は、図6で示す駆動部材を備えた薬物送達デバイスの実施態様を示す。薬物送達デバイスは、ピストンロッド13を近位端12に向かって動くのを阻止するピストン停止部材22を含む。移動ラックは、固定ラック2aの停止エレメント15が保護される開口部を含む。移動ラック5aを近位方向に沿って動かすことにより、移動ラック5aの停止エレメント16は、停止エレメント15の一つの側面上に配置されたスプリングエレメント18に接触するようになる。スプリングエレメント18は、移動ラック5a並びに移動ラック5aと機能的に連結するピストンロッド13の事前投与の距離だけの運動を達成するために、遠位端に向かう力をかけるであろう。
【0047】
それでも、スプリングエレメント18で発生する力は、栓とカートリッジ間、又は栓とハウジング間の粘着力に打ち勝つために十分に強くはないかもしれない。従って、事前投与距離だけの運動は、いかなる流体も投与することはないであろう。
【0048】
追加のスプリングエレメントは、用量を選択した後、及び選択用量を投与する前に力を発生させ、それは異なった投与ショットの間に発生するいかなる許容誤差及びバックラッシュに対しても相補する。結果として、薬物送達デバイスの機械的部品のいかなるバックラッシュ又は許容誤差も相補されるので、選択の正確性が上昇するであろう。
【0049】
参照番号:
1:薬物送達デバイス;
2:ハウジング;
2a:固定ラック;
3:カートリッジ;
4:薬物流体;
5:駆動部材;
5a:移動ラック;
6:ピストン、栓;
7:用量部材;
8:用量ボタン;
9:キャップ;
10:係合手段;
11:遠位端;
12:近位端;
13:ピストンロッド;
14:歯の部分;
14A:歯;
15:ハウジングの事前投与部材、停止エレメント;
16:駆動事前投与部材、停止エレメント;
17:変位部材;
18:事前投与スプリングエレメント;
19:駆動部材の近位運動;
20:駆動部材の遠位運動;
21:ガイディングスリーブ;
22:ピストンロッド停止部材;
23:ガイド停止部材;
24:カートリッジホルダ;
25:出口;
26:グリップ面;
27:ベアリング部材;
28:第一のストリップ部分;
29:第二のストリップ部分;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−ハウジング(2);
−ハウジング内に配置され、そして軸方向に沿って移動して流体を投与するように適合されたピストンロッド(13);
−ハウジング(2)内に配置され、ピストンロッド(13)に機能的に連結され、そして第一の動きに応答して投与のための流体の用量を設定し、そして第二の動き(8)に応答して、軸方向に沿ってピストンロッド(13)を移動させて用量を投与するように適合された駆動部材(5);
−駆動部材(5)及びハウジング(2)に機能的に連結され、そして少なくとも駆動部材(5)を、第一と第二の動きの間の事前投与距離だけ動かすよう適合された事前投与スプリング部材(18);
を含んでなる、薬物送達デバイス。
【請求項2】
事前投与スプリング部材(18)が、第一のストリップ部分(28)、及び第一のストリップ部分(28)に若干曲がって連結される第二のストリップ部分(39)を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
事前投与スプリング部材(18)が曲げられたストリップ(28、29)を含む、請求項1又は2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
事前投与スプリング部材(18)が、少なくとも駆動部材(5)の第一の動きの後、ねじり応力を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
事前投与スプリング部材(18)が、第一の動きの後、駆動部材(5)上に力を及ぼすように適合され、該力は少なくとも部分的に、第二の動きの方向に向けられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
ハウジング(2)が、第一の動きの方向への駆動部材(5)の運動を停止するように適合された停止エレメント(15)を含み、ここで、事前投与スプリングエレメント(18)が、停止エレメント(15)に取り付けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
ハウジング(2)が、第一の動きの方向への駆動部材(5)の運動を停止するように適合された停止エレメント(15)を含み、ここで、事前投与スプリング部材(18)が、駆動部材(5)に取り付けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
−駆動部材(5)に機能的に連結され、そしてボタン(8)の第一の動きに応答して、駆動部材(5)の第一の動きを励起するように適合され、そしてボタン(8)の第二の動きに応答して、駆動部材(5)の第二の動きに適合された用量ボタン(8);
を更に含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
事前投与スプリング部材(18)が、用量ボタン(8)の第一の動きに応答して用量ボタン(8)上に力を及ぼすように、ハウジング(2)及び用量ボタン(8)に取り付けられ、該力は少なくとも部分的に用量ボタン(8)の第二の動きの方向に向けられる、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
事前投与スプリングエレメント(8)が、第一の動きの間に張力を受け、そして第二の動きの前に少なくとも部分的に弛緩し、それにより、少なくとも駆動部材(5)を事前投与距離駆動させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
−流体を有するカートリッジ(3);
−カートリッジ(3)内に可動に配置され、ピストンロッドにより駆動されるように適合されたピストン(6);
を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
ピストン(6)とカートリッジホルダ(24)の間、又はピストン(6)とハウジング(2)の間の粘着力が、第一及び第二の動きの間に、事前投与スプリング部材(18)により及ぼされ、ピストンに伝達される力より大きい、請求項11に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
用量ボタン(8)が、軸方向遠位方向に移動して流体の用量を設定するように適合された、請求項8又はそれに従属する任意の請求項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
用量ボタン(8)が、流体の用量を設定するために回転するように適合された、請求項8又はそれに従属する任意の請求項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
事前投与スプリング部材(18)が、流体の投与又は第二の動きの間の移動距離の10%、好ましくは5%より少ない範囲内のリフトを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−512707(P2013−512707A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541499(P2012−541499)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068706
【国際公開番号】WO2011/067320
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】