説明

藻場用ブロック

【課題】 従来の藻場用ブロックは、一般的にはポルトランドセメントであるため、その周囲のpHは、12〜13まで上がる。通常の海のpHは8.2〜8.4程度であるため動植物にとってはpHが高すぎる。即ち、アルカリ性が強すぎるのである。また、通常のセメントでは鉄分が少なく、ポルトランドセメントの場合では、酸化第二鉄で2〜5%である。一般に藻の成長には鉄分が必須であり、これが多いと成長が速いといわれている。
【解決手段】 少なくとも製鋼スラグと高炉スラグ微粉末を含む混合物を空隙率10〜30%になるよう水で硬化させたポーラスコンクリートであり、種々の形状に成型したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 藻場用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
藻場用ブロックとは、藻が根付いてそこで成長するためのブロックをいう。このような藻場は、従来から種々の材質のもので製造されているが、成型が容易で安価なためコンクリートブロックのものが多い。しかし、単なるコンクリートブロックでは、藻の根等の固着力が弱く、潮や波によってさらわれるため着床率が小さい。
【0003】
そこで、空隙の多いいわゆるポーラスコンクリートが使用されてきている。これは、特許文献1に記載されているようにブロック全体の一部にポーラスコンクリートの板を固定するものである。
【特許文献1】特開2000−350533
【0004】
このようなポーラスコンクリートのものは確かに物理形状的には根の固着が優れており着床率が大きく向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、使用するものが通常のポルトランドセメントであるため、水中では種々の成分が溶出し、そのブロックの周囲の水の成分やpHが変化する。例えば、ポルトランドセメントでは、その周囲のpHは、12〜13まで上がる。勿論、海が広いため少し離れると薄くなり問題はないが、そのブロックの周囲では10以上にはなる。
【0006】
通常の海のpHは8.2〜8.4程度であるため動植物にとってはpHが高すぎる。即ち、アルカリ性が強すぎるのである。
また、通常のセメントでは鉄分が少なく、ポルトランドセメントの場合では、酸化第二鉄で2〜5%である。一般に藻の成長には鉄分が必須であり、これが多いと成長が速いといわれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明藻場用ブロックを完成したものである、その特徴とするところは、少なくとも製鋼スラグと高炉スラグ微粉末を含む混合物を空隙率10〜30%になるよう水で硬化させたポーラスコンクリートであり、種々の形状に成型した点にある。
【0008】
本発明のポイントは、本体をポーラスにしたことと、製鋼スラグを用いたことである。この2つを組み合わせることを想起して本発明を完成したのである。
【0009】
製鋼スラグとは、鉄鋼生産の製鋼過程で生成するスラグであり、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミ、酸化マンガン等が含まれたものである。これは比較的大きなものであり、骨材としての役目も果たすものである。サイズは特に限定はしないが、大きいものから小さいものを混合したものがよい。通常は数mm〜20mm程度のものの混合物である。
【0010】
この製鋼スラグを用いた理由は次の通りである。
まず第一に、これらは水に入れた場合pHが8.3〜8.4で通常の海水とほとんど変わらない。これによって、pHによる海中生物への影響がない。また通常のセメントでは2〜3%である鉄分が、製鋼スラグは非常に多い(20%以上のものが多い)ため、海中植物の生育に良好である。
逆にカルシウム分は通常のものは60%以上であり多すぎるが、製鋼スラグでは少ない。その他マグネシウム分やアルミニウム分についても、ポルトランドセメントと比較すると動植物に適した量である。
【0011】
高炉スラグ微粉末は、鉄鋼生産の製銑過程で生成するスラグを水により急冷微粒子化した後、乾燥・微粉砕して得られるものである。
これが水硬反応し全体を固化させるのである。
【0012】
この2成分と水を混合して、ブロック状に固化させるのであるが、この時空隙率を10〜30%にするのがポイントである。これは、全体の強度と、藻の固着強度との兼ね合いから実験的に見出したものである。
【0013】
この製鋼スラグ、高炉スラグ微粉末、水の混合割合は、特に限定はしないが、製鋼スラグ100重量部に対して、高炉スラグ微粉末は10〜50重量部、水が10〜50重量部程度が好適である。
【0014】
更に、上記必須成分に適宜、高炉水砕スラグ(鉄鋼生産の製銑過程で発生するスラグを水により急冷微粉化したスラグ)、フライアッシュ(微粉炭燃焼ボイラーで発生する微粉灰)や消石灰などのアルカリ刺激材を追加してもよい。
【0015】
このブロックの形状は限定しないが、矩形の塊であるブロック状、足の付いたデスクブロック状、中に空隙のある枠状その他どのようなものでもよい。サイズも自由であり、10cm程度のものから数m以上のものまで可能である。
【0016】
本発明ブロックは、そのまま海中の沈めるだけでよい。そこに自然と海藻が固着し藻場となる。また、その藻又はブロック自体にも魚が集まり漁礁ともなるのである。更に、より積極的に海藻や貝等の養殖場としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明藻場用ブロックには次のような効果がある。
(1) 本発明ブロックは、その原料として通常のポルトランドセメントではなく、製鋼スラグを用いているため動植物に悪影響を及ぼすものを溶出しない。
(2) 製鋼スラグを用いているため藻が生物的に固着しやすい。
(3) 空隙率が10〜30%あるため、藻の物理的固着が良好になる。
(4) pHが海水に近いため周囲海水のpHを変化させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
表1に示す混合割合でそれぞれのブロックを製造した。ここで数値は、出来上がったブロック1m3に対する重量(Kg)である。また、スラグ寸法は、スラグの90%が含まれるサイズである。微粉末とは、高炉スラグ微粉末である。また、これらに通常のコンクリートブロックに混合されるものを混合した。例えば、減水剤等である。
【表1】

【0020】
製造したブロック1は、図1に示すようなデスクブロック型であり、サイズは50×50×30cm程度のものである。
更に、実施例として通常のポルトランドセメントを用いて同じ形状のブロックを製造し比較例1とした。
【0021】
表2は、この各ブロックを実際に岡山県水島港の海中に沈めた結果を示す。
表2の付着生物質量は、比較例1のブロックに10ヶ月後に付着した量を100重量部とし、それとの相対評価で数値化したものである。これを見る限り、海中植物の固着量は非常に多く、また経時的に増加している。しかし比較例1では一定以上になならない。これは、落下(水の流れによる脱離等)しているためと考えられる。
【表2】

【0022】
また、付着生物種類数も比較例1と比べると多くなっている。これも、多くの種類の植物や固着動物に受け入れられるためと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明藻場用ブロックの1例を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも製鋼スラグと高炉スラグ微粉末を含む混合物を空隙率10〜30%になるよう水で硬化させたポーラスコンクリートであり、種々の形状に成型したことを特徴とする藻場用ブロック。
【請求項2】
更に、高炉水砕スラグ、フライアッシュ又は消石灰のうち少なくとも1種を混合したものである請求項1記載の藻場用ブロック。
【請求項3】
デスクブロック型である請求項1又は2記載の藻場用ブロック。

【図1】
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【公開番号】特開2006−25629(P2006−25629A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205410(P2004−205410)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(502375736)佐藤建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】