説明

藻場造成用ブロック

【課題】海底の砂に埋まった場合にも、脚部を伸ばすことにより常に砂から露出した状態に保持することができると共に、海底の深い場所にも設置でき、魚礁としても有効な藻場造成用ブロックを提供するものである。
【解決手段】コンクリートブロック7の表面に、凹凸部10を形成し、前記コンクリートブロック7の上面から底面に向かって貫通する貫通孔11を開孔すると共に、4本の鞘パイプ8を、その上部がブロック上面から突出するように貫通させ、この鞘パイプ8の内側にパイプで形成された脚部14を上下動自在に貫通させ、前記鞘パイプ8の上部側に脚14を固定ピン17で固定して、脚部14をブロック底面から所定の長さに突出させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸近くの海中に設置して、海藻の繁殖を促進する藻場造成用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚の繁殖に必要な海藻を人工的に繁殖させるために、図8に示すようにコンクリートで形成された藻場造成用ブロック1を海底の地盤2に沈めて設置し、この表面に海藻4を発生させることが行なわれている。しかしながら従来の藻場造成用ブロック1は海底2に沈めて設置してあるため、砂3の移動によりその表面が覆われて海藻4が消滅してしまう問題があった。また従来の藻場造成用ブロック1は太陽光線が届く海面から4〜5mの海底の地盤2に平面的に並べて設置されているので、その設置場所が限定される問題があった。
【0003】
またブロック表面に海藻の着生を促進するために鉄を主材とする金属により基質面を形成し、これを型枠として、ここにコンクリートを流し込んで一体化した藻場造成用ブロック(例えば特許文献1)や、貝殻を主成分としてセメントで固めて表面に凹凸を形成した藻場造成用ブロック(例えば特許文献2)も開発されているが、何れも海底の地盤2に沈めて設置されているので、その表面が次第に砂3で覆われて海藻4が消滅してしまう問題があった。
【特許文献1】特開2004−222530
【特許文献2】特開2004−305091
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題を改善し、海底の砂に埋まった場合にも、脚部を伸ばすことにより常に砂から露出した状態に保持することができると共に、海底の深い場所にも設置できる、魚礁としても有効な藻場造成用ブロックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の藻場造成用ブロックは、コンクリートブロックの表面に、凹凸部を形成し、前記コンクリートブロックの上面から底面に向かって貫通する3本以上の鞘パイプを、その上部がブロック上面から突出するように貫通させ、この鞘パイプの内側にパイプで形成された脚部を上下動自在に貫通させ、前記鞘パイプの上部側に脚固定部を設けて、ここにブロック底面から所定の長さに突出した状態で脚部を固定するように形成したことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2記載の藻場造成用ブロックは、コンクリートブロックに、その上面から底面に向かって貫通する複数個の貫通孔を開孔してブロック表面積を拡大すると共に、貫通孔に海水が流入するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3記載の藻場造成用ブロックは、請求項1記載の藻場造成用ブロックを、1本の脚部に複数個取付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る請求項1記載の藻場造成用ブロックによれば、海底の地盤に設置した藻場造成用ブロックの側面が砂に埋まり始めた時に、藻場造成用ブロックの脚部を下方に伸ばして砂層より高く調整して、藻場造成用ブロックを砂の上に露出させておけるので海藻の繁殖を維持することができる。また脚部の伸出作業も、藻場造成用ブロックをクレーンで海面に引き上げてできるので、作業も短時間で完了することができる。また脚部を長く伸ばせば水深の深い場所にも、藻場造成用ブロックを海面から4〜5m程度に位置させることができるので、従来設置が不可能であった水深の深い場所にも設置して、栽培面積を拡大することができる。
【0009】
また請求項2記載の藻場造成用ブロックによれば、コンクリートブロックに、貫通孔が上下に開孔されているので、海藻が生育できる面積が拡大すると共に、強い波が押し寄せてきてもこの貫通孔内に流れ込むので、藻場造成用ブロックの移動や転倒を防止することができる。
【0010】
また請求項3記載の藻場造成用ブロックによれば、1本の脚部を共有して、複数個の藻場造成用ブロックを上下に取付けたので、海藻の生育面積を拡大することができ、また千鳥状に連結したものは安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図5を参照して詳細に説明する。図1は藻場造成用ブロック6を示すもので、平面が略正方形状に形成されたコンクリートブロック7のコーナー近傍の4ヶ所に、その上面から底面に向かって貫通する4本の金属パイプで形成された鞘パイプ8が、その上部をブロック上面よりやや突出して貫通して取付けられている。この鞘パイプ8の中間には図3に示すようにコンクリートとの密着性を高めるため、例えばアングル材で枠状に形成された連結金具9が接合されている。
【0012】
またコンクリートブロック7の上面と4側面には断面V形状の凹凸部10が形成されている。更にコンクリートブロック7の中心と前記鞘パイプ8との間には、上面から底面に向かって貫通する4個の貫通孔11が開孔されている。またこの貫通孔11と鞘パイプ8との間には逆U字形状の吊りフック12が突設されている。また14は金属パイプで形成された脚部で、前記鞘パイプ8の内側に上下動自在に貫通するように挿着されている。またこの脚部14の上部にも、下端両側が水平に突出した逆U字形状の吊りフック15が取付けられている。
【0013】
前記鞘パイプ8の上部には図3に示すように、固定ピン17が貫通するピン孔18が対向して開孔されている。更に前記脚部14にも、その長手方向に沿って所定の間隔で複数個のピン孔18が対向して開孔されている。この鞘パイプ8と脚部14はステンレスパイプや鉄パイプで形成されている。
【0014】
上記構成の藻場造成用ブロック6は、図4に示すように海面から4〜5m程度に位置するようにコンクリートブロック7の底面の脚部14の突出長さを調整して、海底の地盤2に設置する。この状態で放置しておくと海藻4の胞子がコンクリートブロック7の表面に付着して、ここで太陽から光を浴びて海藻4が生長していく。コンクリートブロック7の表面には複数の断面V形状の凹凸部10と貫通孔11が形成されているので、胞子が付着し易い上、表面積が拡大しているので繁殖面積を広く形成することができる。
【0015】
このようにして藻場造成用ブロック6を海中に沈めておくと、海藻4が繁殖し、これが魚の餌になると共に、魚の棲みかとなる魚礁となって魚の繁殖に有効である。また図3に示すようにコンクリートブロック7には貫通孔11が上下に貫通しているので、強い波が押し寄せてきてもこの貫通孔11内に流れ込むので、脚部14で支持されていても藻場造成用ブロック6の移動や転倒を防止することができる。
【0016】
このように藻場造成用ブロック6を沈めた状態で長期間経過すると、場所に依っては砂3が移動してきて、藻場造成用ブロック6が砂3に埋まって、海藻4が繁殖する場所がなくなってしまうことがある。
【0017】
このように藻場造成用ブロック6の側面が砂3に埋まり始めた時には、クレーン船で、吊りフック12にクレーンのワイヤを掛けて藻場造成用ブロック6を海面まで吊り上げる。次に藻場造成用ブロック6の上に作業員が乗って、脚部14の上部に取付けた吊りフック15をクレーンで支持する。この状態で固定ピン17を脚部14と鞘パイプ8のピン孔18から抜いて、クレーンで吊り上げていた脚部14を下げて、コンクリートブロック7の底面から長く突出させていき、所定の長さの所で、ピン孔18に固定ピン17を差し込んで脚部14を鞘パイプ8に固定する。このようにして4本の脚部14を順次下方に伸ばして固定してから、図5に示すように藻場造成用ブロック6を海中に沈めて海底の地盤2に設置する。
【0018】
従って、藻場造成用ブロック6を砂3の上に露出させておけるので海藻4の繁殖を維持することができる。また脚部14の伸出作業も、藻場造成用ブロック6を海面に引き上げて行なえるので、ダイバーが海に潜って作業する必要がなく、作業も短時間で完了することができる。
【0019】
また従来は藻場造成用ブロック6の設置場所は、太陽からの光が届く、海面から4〜5m程度に位置するように海底の地盤2に設置しているので、設置場所が限定されていたが、図4に示すように脚部14を長く伸ばせば水深の深い場所にも設置することができ、栽培面積を大幅に拡大することができる。
【0020】
また鞘パイプ8と脚部14は錆びにくいステンレスパイプを用いても良いが、鉄分は海藻4の繁殖に有効であるので、厚肉の鉄パイプで形成した方が好ましい。またコンクリートブロック7の表面に胞子を付着させたマットを取付けることにより、更に海藻4の繁殖を促進させることができる。
【0021】
図6は本発明の他の実施の形態を示すもので、1本の脚部14を上下のコンクリートブロック7、7の鞘パイプ8、8に貫通させて共有し、その上下2段に藻場造成用ブロック6を設置したものである。
【0022】
図7は本発明の他の実施の形態を示すもので、藻場造成用ブロック6を上下に位置をずらせて千鳥状に配置し、中間の藻場造成用ブロック6の脚部14と、上方の左右の藻場造成用ブロック6、6の片側の脚部14と共有したものである。この構造では隙間なく有効に太陽光線を利用できると共に、複数の藻場造成用ブロック6が平面的に連結されているので安定性に優れ、波による移動や転倒を防止することができる。
【0023】
なお上記説明ではコンクリートブロック7に4本の鞘パイプ8を貫通させて、ここに4本の脚部14を上下動自在に挿着した場合について示したが、3本または5本以上取付けた構造でも良い。また脚部14と鞘パイプ8との固定を、ピン孔18に貫通させた固定ピン17で行なった場合について示したが、両側からボルトで押える構造など、着脱できる固定方法であれば何れの構造でも良い。またコンクリートブロック7の表面に形成する凹凸部10は断面V形状に限らず、表面積が拡大できれば他の形状でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態による藻場造成用ブロックの斜視図である。
【図2】図1の藻場造成用ブロックを示す平面図である。
【図3】コンクリートブロックに貫通させた鞘パイプと、ここに挿着した脚部との連結部分を拡大して示す断面図である。
【図4】藻場造成用ブロックを海底の地盤に設置した状態を示す正面図である。
【図5】藻場造成用ブロックの脚部を伸出させた状態を示す正面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態による1本の脚部に上下2段に藻場造成用ブロックを取付けた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の異なる他の実施の形態による脚部を共有して藻場造成用ブロックを上下に千鳥状に配置して連結した状態を示す正面図である。
【図8】従来の藻場造成用ブロックを海底の地盤に設置した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 藻場造成用ブロック
2 海底の地盤
3 砂
4 海藻
6 藻場造成用ブロック
7 コンクリートブロック
8 鞘パイプ
9 連結金具
10 凹凸部
11 貫通孔
12 吊りフック
14 脚部
15 吊りフック
17 固定ピン
18 ピン孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートブロックの表面に、凹凸部を形成し、前記コンクリートブロックの上面から底面に向かって貫通する3本以上の鞘パイプを、その上部がブロック上面から突出するように貫通させ、この鞘パイプの内側にパイプで形成された脚部を上下動自在に貫通させ、前記鞘パイプの上部側に脚固定部を設けて、ここにブロック底面から所定の長さに突出した状態で脚部を固定するように形成したことを特徴とする藻場造成用ブロック。
【請求項2】
コンクリートブロックに、その上面から底面に向かって貫通する複数個の貫通孔を開孔してブロック表面積を拡大すると共に、貫通孔に海水が流入するようにしたことを特徴とする請求項1記載の藻場造成用ブロック。
【請求項3】
請求項1記載の藻場造成用ブロックを、1本の脚部に複数個取付けたことを特徴とする藻場造成用ブロック。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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