説明

藻礁・漁礁と藻礁・漁礁を海底に設置する方法

【課題】海底で楽に移動できるようにする。多数の藻礁・漁礁ブロックを縦横に並べて移動しないように海底に設置する。
【解決手段】 藻礁・漁礁は、複数の藻礁・漁礁ブロック1と複数の藻礁・漁礁ブロック1を連結する連結体3を備える。藻礁・漁礁ブロック1は、ポーラスコンクリートでブロック状に成形して、周囲に固定リング2を固定している。連結体3は、藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結される連結リング4を両端に設けている。両端の連結リング4を藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結して、隣接する藻礁・漁礁ブロック1を相対的に上下に移動できる状態としながら所定の間隔で連結する。藻礁・漁礁は、外周に沿って配置している藻礁・漁礁ブロック1を連結体3で閉鎖される環状に連結すると共に、内側に配置している藻礁・漁礁ブロック1を連結体3で所定の間隔に連結し、さらに、外周の藻礁・漁礁ブロック1にも連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻礁・漁礁と藻礁・漁礁を海底に設置する方法に関し、とくに多数の藻礁・漁礁ブロックを連結して海底に設置する藻礁・漁礁とこれを海底に設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを大きな塊状に成形している数トンもの大型漁礁は、大型のクレーン船で吊り下げて海底に設置する必要がある。このため、設置コストが高くなる。また、陸上でも簡単に運搬できないために、船で運搬できるように沿岸で製造している。このため、製造場所にも制約を受けて、工場で能率よく安価に製造できない欠点がある。この欠点を解消するために、多数の天然石を連結してひとつの漁礁とする構造のものが開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−330662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載される漁礁は、貫通孔を設けた複数の自然石と、これらの自然石の貫通孔に挿通されて複数の自然石を連結する連結部材と、この連結部材の両端に結合された鉤状部材とを有する。さらに、この文献には、各自然石の間に管状部材を配置して、自然石の間隔を一定にする技術も記載されている。
【0004】
この構造の漁礁は、人工魚礁として用いる場合には、藻等が付着し易く、集魚効果が高く、経年変化も少なく、なおかつ運搬や設置等を容易にできる。沈床として用いる場合は、長期間交換することなく使用することができ、魚道として用いる場合には、短期間の工事で安価に魚道を設けることができ、護岸部材として使用する場合には、工事の手間が少なく、短期間で安価に護岸を設けることができる。
【0005】
しかしながら、この構造の漁礁は、ステンレス棒等の連結部材に多数の自然石を挿通して連結しているので、自然石を大きくすると全体の重量が重くなる。多数の自然石を1本の連結部材でひとつに連結しているからである。このため、この漁礁は、海底の潜水夫が設置するために、これを持ち上げて所定の位置に移動できるようにするには、1個の自然石を小さく軽くする必要がある。小さい自然石の漁礁は、海底の砂の上には設置できない。短期間に砂に埋設されるからである。したがって、この構造の漁礁は、海底に設置するときには、特許文献1にも記載されるように、大型漁礁の上に載せて設置する必要がある。ただ、この状態で設置すると、大型漁礁を一緒に設置するので、全ての漁礁を簡単に設置できなくなる。
【0006】
さらに、この構造の漁礁は、自然石を連結しているので、表面を海藻、海草の胞子が付着しやすい状態とするのが難しい。自然石は、表面が平滑なものが多い。また、凹凸のあるものもあるが、凹凸が大きく、海中を浮遊する海藻、海草の胞子が付着しやすい状態ではない。このため、海藻、海草が繁茂するのに時間がかかる。
【0007】
さらにまた、この漁礁は、自然石に貫通孔を設けて、ここに金属棒等の連結部材を挿通して連結するので、製造に著しく手間がかかる。それは、硬い自然石は簡単に貫通孔を設けことができないからである。また、貫通孔を設けた自然石は、この部分から割れやすく、台風等の大きな波浪エネルギーで破壊されやい欠点もある。
【0008】
また、この漁礁は、金属棒等の連結部材に複数の自然石を挿通して、連結部材の両端を連結するので、これを所定の面積に均一に配設する場合、図1に示すように、連結部材12と連結部材12を連結する必要がある。連結部材12と連結部材12とを連結すると、連結部分や自然石11が動きやすく、全ての自然石11を一定の位置に停止させるのが難しい。また、連結部材12が外れやすくなる等の欠点もある。
【0009】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、全体を軽くして潜水夫が海底で楽に移動できるようにしながら、ひとつの藻礁・漁礁ブロックを大きくでき、しかも表面に海藻、海草の胞子を付着しやすい凹凸や空隙を設けて、海藻、海草を短期間に効率よく繁殖でき、また、製造を簡単にしながら多数の藻礁・漁礁ブロックを縦横に並べて移動しないように海底に設置できる藻礁・漁礁と藻礁・漁礁を海底に設置する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の藻礁・漁礁は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
藻礁・漁礁は、複数個の藻礁・漁礁ブロック1と、複数個の藻礁・漁礁ブロック1を縦横に連結している連結体3とを備える。
藻礁・漁礁ブロック1は、大きくして軽くし、かつ表面に微細な凹凸や空隙を設けるために、ポーラスコンクリートで成形している。さらに、この藻礁・漁礁ブロック1は、海底に設置するときに、潜水夫が移動できるように、重量を10kg以上であって300kg以下とするブロック状に成形している。さらに、藻礁・漁礁ブロック1は、隣接するものを連結して、全体でひとつの藻礁・漁礁となるように、周囲に所定の間隔で複数の固定リング2を固定している。
連結体3は、藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結される連結リング4を両端に設けている。両端の連結リング4を藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結して、隣接する藻礁・漁礁ブロック1を所定の間隔で連結する。連結体3は藻礁・漁礁ブロック1が相対的に上下に移動できる状態で連結する。
以上の藻礁・漁礁は、複数の藻礁・漁礁ブロック1を縦横に並べて配置されている。そして、外周に沿って環状に配置している藻礁・漁礁ブロック1は、連結体3で閉鎖される環状に連結されており、外周の藻礁・漁礁ブロック1の内側に配置している藻礁・漁礁ブロック1は、隣の藻礁・漁礁ブロック1を連結体3で所定の間隔に連結され、さらに、外周の藻礁・漁礁ブロック1にも連結されている。
【0011】
本発明の請求項2の藻礁・漁礁は、複数の藻礁・漁礁ブロック1を、碁盤格子の交点に位置して、複数の藻礁・漁礁ブロック1を、複数列と複数行に配置している。隣接する藻礁・漁礁ブロック1は、縦方向と横方向の姿勢となる連結体3で互いに連結されている。この構造の藻礁・漁礁は、連結体3を碁盤格子に沿う縦横に伸びる方向として、格子の交点に藻礁・漁礁ブロック1を配置するが、本発明の藻礁・漁礁は、藻礁・漁礁ブロック1の配置をこの状態には特定しない。本発明は、藻礁・漁礁ブロック1を線状に配置するのではなくて、所定の幅と長さを有する配列、すなわち縦方向と横方向に複数の藻礁・漁礁ブロック1を配置して、所定の面積を占める領域に、複数の藻礁・漁礁ブロック1を配置する全ての配列とすることができる。
【0012】
本発明の請求項3の藻礁・漁礁は、藻礁・漁礁ブロック1を直方体として、周囲の4面に固定リング2を固定している。直方体の藻礁・漁礁ブロック1は、互いに対向面を平行面とする姿勢で、縦方向と横方向に配置されて、複数行、複数列に配置されている。連結体3は、これ等の藻礁・漁礁ブロック1縦を方向と横方向に連結している。
【0013】
さらに、本発明の請求項4の藻礁・漁礁は、藻礁・漁礁ブロック1の重量を20kg〜80kgとする。請求項5の藻礁・漁礁は、連結体3をシャックルとする。
【0014】
本発明の請求項6の藻礁・漁礁は、固定リング2を、ポーラスコンクリートに埋設して藻礁・漁礁ブロック1に固定しているアンカーナット2Bと、このアンカーナット2Bにねじ込んで連結されるネジ部2aにリング2bを連結しているリングネジ2Aとで構成する。この固定リング2は、ポーラスコンクリートで藻礁・漁礁ブロック1を成形する工程で、アンカーナット2Bを埋設して固定し、ポーラスコンクリートを硬化させた後に、アンカーナット2Bにリングネジ2Aをねじ込んで固定リング2を藻礁・漁礁ブロック1に固定できる。
【0015】
さらに本発明の請求項7の藻礁・漁礁を海底に設置する方法は、陸上において、ポーラスコンクリートを型枠に充填して成形して、重量が10kg以上であって300kg以下となるブロック状に成形し、さらに周囲には所定の間隔で複数の固定リング2を固定して藻礁・漁礁ブロック1を製造する製造工程と、
製造工程で製造される複数の藻礁・漁礁ブロック1を海底に沈降させる沈降工程と、
海底に沈降された藻礁・漁礁ブロック1を、隣接する藻礁・漁礁ブロック1の間隔が所定の間隔となるように潜水夫が海底で移動し、所定の間隔に配置される藻礁・漁礁ブロック1を、藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に、連結体3の両端に設けている連結リング4を連結して、連結体3でもって、隣接する藻礁・漁礁ブロック1が相対的に上下に移動できる状態で連結する配置連結工程とでもって、海底の所定の領域に、複数個の藻礁・漁礁ブロック1を互いに連結する状態で設置する。
【0016】
本発明の請求項8の藻礁・漁礁を海底に設置する方法は、配置連結工程において、複数の藻礁・漁礁ブロック1を、碁盤格子の交点に位置するように、複数列、複数行に配置し、隣接する藻礁・漁礁ブロック1を、連結体3でもって縦方向と横方向に連結する。
【0017】
本発明の請求項9の藻礁・漁礁を海底に設置する方法は、製造工程において、ポーラスコンクリートを型枠で直方体に成形すると共に、直方体の周囲の4面に固定リング2を固定し、
配置連結工程においては、直方体の藻礁・漁礁ブロック1が互いに対向面を平行面とする姿勢であって、縦方向に複数行、横方向に複数列に配置されるように配置して、連結体3で縦方向と横方向に連結する。
【0018】
本発明の請求項10の藻礁・漁礁を海底に設置する方法は、製造工程において、1個の重量が20kg〜80kgとなる藻礁・漁礁ブロック1を製造し、請求項11の藻礁・漁礁を海底に設置する方法は、配置連結工程において、連結体3としてシャックルを使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の藻礁・漁礁と藻礁・漁礁を海底に設置する方法は、ひとつの藻礁・漁礁ブロックを大きくするにも関わらず、潜水夫が海底で楽に移動でき、さらに、製造を簡単にしながら多数の藻礁・漁礁ブロックを縦横に並べて移動しないように海底に設置できる特長がある。それは、本発明の藻礁・漁礁とその設置方法が、藻礁・漁礁ブロックをポーラスコンクリートでブロック状に成形すると共に、藻礁・漁礁ブロックの周囲には複数の固定リングを固定しており、両端に連結リングを備える連結体で、複数個の藻礁・漁礁ブロックを縦横に連結して海底に設置しているからである。本発明の藻礁・漁礁とその設置方法は、複数の藻礁・漁礁ブロックを陸上で連結して海底に沈降させるのではなく、海底に沈降された複数の藻礁・漁礁ブロックを海底で移動し、藻礁・漁礁ブロックの固定リングに連結体の連結リングを連結して、隣接する藻礁・漁礁ブロックを連結体で連結して複数個の藻礁・漁礁ブロックを互いに連結する状態で設置する。したがって、潜水夫が海底で楽に移動できるように、個々の藻礁・漁礁ブロックを大きくでき、しかも、海底に沈降された多数の藻礁・漁礁ブロックを簡単かつ容易に縦横に並べて連結して移動しないように海底に設置できる。
【0020】
とくに、本発明では、藻礁・漁礁ブロックを、ポーラスコンクリートでもって、重量を10kg以上で300kg以下とするブロック状に成形するので、ひとつの藻礁・漁礁ブロックを軽くしながら、海底に設置するときに潜水夫が楽に移動できる特長がある。しかも、ポーラスコンクリートで成形される藻礁・漁礁ブロックは、表面に海藻、海草の胞子を付着しやすい微細な凹凸や空隙が形成されるので、海藻、海草を短期間に効率よく繁殖できる特長もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための藻礁・漁礁とその設置方法を例示するものであって、本発明は藻礁・漁礁と設置方法を以下のものに特定しない。
【0022】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0023】
図2ないし図4に示す藻礁・漁礁は、複数の藻礁・漁礁ブロック1を連結体3で連結している。図4は、複数の藻礁・漁礁ブロック1を連結体3で連結して海底に設置している状態を示す断面図である。
【0024】
藻礁・漁礁ブロック1は、ポーラスコンクリートで成形して製造される。ポーラスコンクリートは、添加する水の量を少なくして、骨材の間に無数の空隙ができるようにセメントを硬化させて藻礁・漁礁ブロック1を製造する。ポーラスコンクリートからなる藻礁・漁礁ブロック1は、下記のようにして製造される。
【0025】
骨材にモルタルを混合して空隙骨材ペーストとする。骨材は、天然石、天然石を粒状に破砕した砕骨材、無機粉末を成形して焼結したもの、さらに、無機粉末を成形して焼結したものを所定の大きさに破砕したもの等である。無機粉末を焼結した骨材は、骨材自体を多孔質にして軽くできる。骨材の大きさは、空隙の大きさを決定する。骨材に大きいものを使用すると空隙は大きくなる。反対に、骨材を小さくすると、小さい空隙が多数できるようになる。空隙の大きさは、海底を浮遊する海藻、海草の胞子が付着しやすく、また付着した胞子が流出し難く、さらに海藻、海草の根茎がしっかりと付着できる大きさとする。このことを実現するには、微細な空隙を多く設けるのが良いので、使用する骨材を小さくする。また、ポーラスコンクリートの空隙は、稚魚や微小動物の生息空隙とすることもできる。このことを実現するには、比較的大きな骨材を使用して空隙を大きくする。このことを考慮して、骨材の平均粒子径は、たとえば2〜30mm、好ましくは3〜20mm、さらに好ましくは3〜15mm、最も一般的には5〜10mmのものが使用される。
【0026】
骨材に添加されるモルタルは、骨材を接点で結合して、骨材の間に空隙ができるように骨材を結合する。モルタルは、セメントに水を添加したものである。ただ、モルタルには、耐水性の合成樹脂を添加することもできる。骨材に対するモルタルの添加量は、多すぎると骨材の空隙が閉塞されて空隙率が低くなり、少なすぎると充分な強度で骨材を結合できなくなる。モルタルの添加量は、骨材の結合強度と、要求される空隙率とを考慮して最適値に調整される。モルタルの添加量は、100重量部の骨材に対して、たとえば3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部に設定される。
【0027】
空隙骨材ペーストは、型枠に充填されてポーラスコンクリートからなる藻礁・漁礁ブロックとなる。図の藻礁・漁礁ブロック1は、直方体であるから、底を閉塞して上方を開口している四角形の型枠に空隙骨材ペーストを充填し、これを硬化させて、ポーラスコンクリートの藻礁・漁礁ブロックとする。
【0028】
ポーラスコンクリートには、骨材を結合するモルタルにゼオライト粉末を添加する。ゼオライト粉末として最適なものは、下記の工程で製造する人工ゼオライトである。ただ、人工ゼオライトに代わって、あるいは人工ゼオライトに添加して、天然ゼオライトも使用できる。
【0029】
シリカとアルミナからなる無機粉体からNa型の人工ゼオライトを製造する工程において、無機粉体には、石炭火力発電所から廃棄物として多量に発生している石炭灰であるフライアッシュが使用できる。フライアッシュから、陽イオン交換力の担持体である人工ゼオライトを製造する。フライアッシュを人工ゼオライトとするには、フライアッシュを、1Nの苛性ソーダ水溶液に数時間浸漬して攪拌する。苛性ソーダ水溶液の濃度は1N〜3Nである。その後、水洗、乾燥して、粉末状の人工ゼオライトとする。苛性ソーダ水溶液に浸漬されたフライアッシュは、SiとAlとがOを介して結合されたNa型の人工ゼオライトとなる。このようにして製造される人工ゼオライトは、SiとAlに4個のOが結合される。Siはプラスの4価、Alはプラスの3価であるので、Alの部分で電子が1個余剰になってこの部分がマイナスにチャージする担持体となる。Na型の人工ゼオライトは、Alのマイナスにチャージする部分に、プラスイオンである鉄、コバルト、マグネシウム等の金属イオンが結合できる。このようにして製造された人工ゼオライトは、陽イオン交換容量が約200meq/100gとなる。
【0030】
Na型の人工ゼオライトから、金属イオンを担持した人工ゼオライトとして、これをモルタルに混合することもできる。この人工ゼオライトは、フライアッシュから得た担持体である人工ゼオライトを、金属イオンを含む水溶液に浸漬して、人工ゼオライトに金属イオンを担持させる。金属イオンを担持する人工ゼオライトは、金属イオンの種類によらずほぼ同じようにして製造できる。
【0031】
以下、鉄を担持するFe型人工ゼオライトの製造方法を述べる。人工ゼオライトを、鉄イオンを含む水溶液に浸漬する。鉄イオンを含む水溶液には、濃度を1Nとする塩化鉄の水溶液を使用する。人工ゼオライトの浸漬時間は約3時間とする。人工ゼオライトを塩化鉄の水溶液に浸漬すると、マイナスにチャージしている部分に鉄イオンが結合されて、鉄を担持するFe型の人工ゼオライトとなる。鉄イオンを担持させた後、水洗、乾燥して粉末状の鉄担持体とする。
【0032】
人工ゼオライトに、鉄に代わってコバルトやマグネシウムを担持させるには、塩化鉄の水溶液に浸漬するのに代わって、コバルトやマグネシウムの塩化物の水溶液に人工ゼオライトを浸漬する。塩化物水溶液の濃度や浸漬時間は、塩化鉄水溶液に浸漬するのと同じである。このようにして、コバルトやマグネシウムが挟着された人工ゼオライトが製造できる。
【0033】
以上の工程で製造されるナトリウム型、鉄型、コバルト型、マグネシウム型の人工ゼオライトを3:3:1:1の割合で混合して、モルタルに添加する。鉄型の人工ゼオライトを多量に添加するのは、海藻、海草に鉄分を補給して、より効果的に生育できるからである。ナトリウム型の人工ゼオライトを混合するのは、このタイプの人工ゼオライトが最も製造コストを安価にできるからである。モルタルに添加するゼオライト粉末には、鉄型の人工ゼオライトのみを使用することもできる。人工ゼオライトを添加しているモルタルは、たとえば、セメント100重量部に対して、ゼオライト粉末の添加量を、1重量部〜50重量部、好ましくは5重量部〜40重量部、さらに好ましくは、5重量部〜20重量部とする。
【0034】
ポーラスコンクリートで成形される藻礁・漁礁ブロック1は、1個の重量を約50kgとするブロック状に成形される。ポーラスコンクリートからなる藻礁・漁礁ブロック1は、見かけ比重を2〜2.5とする。藻礁・漁礁ブロック1の見かけ比重は、骨材の種類と、骨材とモルタルの混合比で調整する。骨材に軽いものを使用して見かけ比重を小さくでき、また、骨材に対するモルタルの混合量を少なくして、骨材の間の空隙率を大きくして見かけ比重を小さくできる。
【0035】
ただし、本発明は、藻礁・漁礁ブロックを、1個の重量が10kg以上であって300kg以下のブロック状とすることができる。10kgよりも軽い藻礁・漁礁ブロックは、小さくなって藻礁・漁礁としての機能が低下し、また砂に埋設されやすくなる。また、300kgよりも重い藻礁・漁礁ブロックは、潜水夫が海底で所定の位置に移動できなくなって、能率よく海底に設置できなくなる。
【0036】
藻礁・漁礁ブロック1は、見かけ比重を小さくして、重量に対して大きくできる。すなわち、軽くて大きくできる。ただ、見かけ比重が小さすぎると、海底に設置された状態で、波浪のエネルギーや潮流で移動しやすくなる。したがって、藻礁・漁礁ブロックの見かけ比重は、たとえば1.5〜3、好ましくは1.6〜2.5、さらに好ましくは1.7〜2とする。
【0037】
藻礁・漁礁ブロック1は、図5に示すように、1辺を30cmとする直方体(立方体)に成形して、全体の体積を0.027m、重量を約50kg、見かけ比重を1.85としている。直方体の藻礁・漁礁ブロック1は、海底に安定して設置できると共に、四方の4面に固定リング2を固定して、隣接する藻礁・漁礁ブロック1を安定して連結体3で連結できる特長がある。ただし、本発明は、藻礁・漁礁ブロックの形状を直方体には特定しない。藻礁・漁礁ブロックは、多角柱状、外形が不定形のブロック状、天然石を破砕した形状や球形等とすることができる。
【0038】
藻礁・漁礁ブロック1は、海底に設置されて隣接するものが互いに連結される。隣接する藻礁・漁礁ブロック1を連結するために、藻礁・漁礁ブロック1は、周囲に所定の間隔で複数の固定リング2を固定している。図5に示す藻礁・漁礁ブロック1は、周囲の4面の中央部分に固定リング2を固定している。海底に設置される複数の藻礁・漁礁ブロック1は、連結体3で縦横に連結される。したがって、藻礁・漁礁ブロック1は、平面図において、両側と上下に固定リング2を固定している。
【0039】
藻礁・漁礁ブロック1は、バラバラに分離する状態で海底に沈降される。海底の藻礁・漁礁ブロック1は、潜水夫が所定の位置に配置した後、隣接する藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結体3を連結して互いに連結される。固定リング2は、藻礁・漁礁ブロックの製造工程で藻礁・漁礁ブロック1に固定される。
【0040】
藻礁・漁礁ブロック1に固定される固定リング2を図6に示す。この図の固定リング2は、ポーラスコンクリートに埋設して藻礁・漁礁ブロック1に固定していアンカーナット2Bと、このアンカーナット2Bにねじ込んで連結されるリングネジ2Aからなる。アンカーナット2Bは、藻礁・漁礁ブロック1を成形する型枠に仮止めされて、型枠に充填して成形されるポーラスコンクリートに埋設して固定される。リングネジ2Aは、アンカーナット2Bにねじ込まれるネジ部2aにリング2bを連結している。このリングネジ2Aは、ネジ部2aとリング2bを金属で一体構造としている。この構造の固定リング2は、藻礁・漁礁ブロック1を成形する工程でアンカーナット2Bを固定できるので、固定リング2を簡単にしっかりと外れないように藻礁・漁礁ブロック1に固定できる。ただ、固定リングは、藻礁・漁礁ブロックを成形した後で、藻礁・漁礁ブロックに固定することもできる。この固定リングは、藻礁・漁礁ブロックに連結孔を設け、この連結孔にねじ込んで連結される。
【0041】
連結体3は、図7に示すように、隣接する藻礁・漁礁ブロック1を互いに連結する。連結体3は、藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結される連結リング4を両端に有する。連結体3の連結リング4は、海底で固定リング2に連結される。図の連結体3はシャックルである。シャックルは、図8に示すように、U曲金属3Aの開口部に止ネジ3Bをねじ込んでいる。U曲金属3Aは、一方の端部に止ネジ3Bを挿通する貫通孔3aを設けて、他端には止ネジ3Bをねじ込む雌ネジ孔3bを設けている。シャックルは、止ネジ3Bを貫通孔3aに挿通し、先端のネジ3cを雌ネジ孔3bにねじ込んでU曲金属3Aに連結される。シャックルは、U曲金属3Aに止ネジ3Bを連結して、開口部を閉塞して環状に連結する。シャックルは、止ネジ3Bを外して一方の端部を固定リング2に挿通し、その後、U曲金属3Aに止ネジ3Bをねじ込んで固定リング2に連結される。図の連結体3は、ふたつのシャックルを連結して、各々のシャックルを隣接する藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結している。この連結体3は、U曲金属3Aを連結リング4として固定リング2に連結している。連結体は、ひとつのシャックルとすることができ、また3個以上のシャックルを直線状に連結したものとすることもできる。また、連結体は、チェーン等の紐体の両端にシャックルを連結して、シャックルを固定リングに連結するものも使用できる。さらに、本発明の藻礁・漁礁は、連結体をシャックルに特定せず、海底で固定リングに連結できる全ての構造とすることができる。
【0042】
さらに、連結体3は、両端の連結リング4を藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に連結して、隣接する藻礁・漁礁ブロック1が相対的に上下に移動できるようにしながら所定の間隔で連結する。連結体3で上下に移動できるように連結される複数の藻礁・漁礁ブロック1は、図4に示すように、海底の隆起に沿って設置される。
【0043】
以上の図に示す藻礁・漁礁は、以下の工程で海底に設置される。
(1) 製造工程
藻礁・漁礁ブロック1が陸上において製造される。藻礁・漁礁ブロック1は、ポーラスコンクリートを型枠に充填して成形して製造される。この藻礁・漁礁ブロック1は、重量を10kg以上であって、300kg以下とするブロック状に成形される。さらに、藻礁・漁礁ブロック1は、周囲に所定の間隔で複数の固定リング2を固定している。
【0044】
(2) 沈降工程
製造工程で製造された複数の藻礁・漁礁ブロック1が海底に沈降される。この工程は、船に複数の藻礁・漁礁ブロック1を搭載して設置現場に輸送し、船から海中に投棄して海底に沈降される。この工程で藻礁・漁礁ブロック1を所定の位置に配置する必要はない。
【0045】
(3) 配置連結工程
海底に沈降された藻礁・漁礁ブロック1は、隣接する藻礁・漁礁ブロック1の間隔が所定の間隔となるように潜水夫によって海底で移動される。その後、所定の間隔に配置される藻礁・漁礁ブロック1の固定リング2に、連結体3の両端に設けている連結リング4を連結して、連結体3でもって、隣接する藻礁・漁礁ブロック1が相対的に上下に移動できる状態で連結される。この状態で、藻礁・漁礁は、海底の所定の領域に複数個の藻礁・漁礁ブロック1を互いに連結する状態で設置される。
【0046】
図2と図3の藻礁・漁礁は、複数の藻礁・漁礁ブロック1を、碁盤格子の交点に位置するように、複数列、複数行に配置している。さらに、隣接する藻礁・漁礁ブロック1は、連結体3でもって縦方向と横方向に連結されている。
【0047】
シャックルの連結体3は、止ネジ3Bを外す状態でU曲金属3Aの一端を固定リング2に挿通し、U曲金属3Aの先端に止ネジ3Bを連結して、固定リング2に連結される。藻礁・漁礁ブロック1の間隔は、連結体3の長さで調整する。図の藻礁・漁礁は、連結体3を長さを20〜30cmとして、藻礁・漁礁ブロック1を連結している。連結体3の長さは、好ましくは藻礁・漁礁ブロック1の1辺の長さよりも短く、あるいはほぼ等しく、あるいは多少長くする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来の藻礁・漁礁の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる藻礁・漁礁の平面図である。
【図3】図2に示す藻礁・漁礁の斜視図である。
【図4】図2に示す藻礁・漁礁を海底に敷設する状態を示す断面図である。
【図5】藻礁・漁礁ブロックの一例を示す斜視図である。
【図6】固定リングの一例を示す分解断面図である。
【図7】隣接する藻礁・漁礁ブロックを連結体で連結する状態を示す側面図である。
【図8】連結体の一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1…藻礁・漁礁ブロック
2…固定リング 2A…リングネジ 2B…アンカーナット
2a…ネジ部 2b…リング
3…連結体 3A…U曲金属 3B…止ネジ
3a…貫通孔 3b…雌ネジ孔
3c…ネジ
4…連結リング
11…自然石
12…連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスコンクリートでもって、重量を10kg以上で300kg以下とするブロック状に成形されており、かつ周囲に所定の間隔で複数の固定リング(2)を固定している複数の藻礁・漁礁ブロック(1)と、この藻礁・漁礁ブロック(1)の固定リング(2)に連結される連結リング(4)を両端に有し、両端の連結リング(4)を藻礁・漁礁ブロック(1)の固定リング(2)に連結して、隣接する藻礁・漁礁ブロック(1)を相対的に上下に移動できる状態としながら所定の間隔で連結している連結体(3)とを備えており、
複数の藻礁・漁礁ブロック(1)が縦横に並べて配置されると共に、外周に沿って環状に配置している藻礁・漁礁ブロック(1)は連結体(3)で閉鎖される環状に連結され、外周の藻礁・漁礁ブロック(1)の内側に配置している藻礁・漁礁ブロック(1)は、隣の藻礁・漁礁ブロック(1)を連結体(3)で所定の間隔に連結すると共に、外周の藻礁・漁礁ブロック(1)にも連結されていることを特徴とする藻礁・漁礁。
【請求項2】
複数の藻礁・漁礁ブロック(1)が、碁盤格子の交点に位置して複数列、複数行に配置されており、隣接する藻礁・漁礁ブロック(1)は縦方向と横方向に連結体(3)で互いに連結している請求項1に記載される藻礁・漁礁。
【請求項3】
藻礁・漁礁ブロック(1)が直方体で、周囲の4面に固定リング(2)を固定しており、直方体の藻礁・漁礁ブロック(1)は、互いに対向面を平行面とする姿勢で、縦方向に複数行、横方向に複数列に配置しており、連結体(3)で縦方向と横方向に連結している請求項1に記載される藻礁・漁礁。
【請求項4】
藻礁・漁礁ブロック(1)の重量が20kg〜80kgである請求項1に記載される藻礁・漁礁。
【請求項5】
連結体(3)がシャックルである請求項1に記載される藻礁・漁礁。
【請求項6】
固定リング(2)が、ポーラスコンクリートに埋設して藻礁・漁礁ブロック(1)に固定されてなるアンカーナット(2B)と、このアンカーナット(2B)にねじ込んで連結されるネジ部(2a)にリング(2b)を連結しているリングネジ(2A)とからなるる請求項1又は請求項5に記載される藻礁・漁礁。
【請求項7】
陸上において、ポーラスコンクリートを型枠に充填して成形して、重量が10kg以上であって、300kg以下とするブロック状に成形すると共に、周囲に所定の間隔で複数の固定リング(2)を固定して藻礁・漁礁ブロック(1)を製造する製造工程と、
製造工程で製造された複数の藻礁・漁礁ブロック(1)を、海底に沈降させる沈降工程と、
海底に沈降された藻礁・漁礁ブロック(1)を、隣接する藻礁・漁礁ブロック(1)の間隔が所定の間隔となるように潜水夫が海底で移動し、所定の間隔に配置される藻礁・漁礁ブロック(1)を、藻礁・漁礁ブロック(1)の固定リング(2)に、連結体(3)の両端に設けている連結リング(4)を連結して、連結体(3)でもって隣接する藻礁・漁礁ブロック(1)が相対的に上下に移動できる状態で連結する配置連結工程とでもって、
海底の所定の領域に複数の藻礁・漁礁ブロック(1)を互いに連結する状態で設置する藻礁・漁礁を海底に設置する方法。
【請求項8】
配置連結工程において、複数の藻礁・漁礁ブロック(1)を、碁盤格子の交点に位置するように、複数列、複数行に配置し、隣接する藻礁・漁礁ブロック(1)を、連結体(3)でもって縦方向と横方向に連結する請求項7に記載される藻礁・漁礁を海底に設置する方法。
【請求項9】
製造工程において、ポーラスコンクリートを直方体に成形して藻礁・漁礁ブロック(1)を製造し、さらに直方体の藻礁・漁礁ブロック(1)の周囲の4面に固定リング(2)を固定し、
配置連結工程においては、直方体の藻礁・漁礁ブロック(1)が、互いに対向面を平行面とする姿勢であって、縦方向に複数行、横方向に複数列に配置されるように配置して、連結体(3)で縦方向と横方向に連結する請求項7に記載される藻礁・漁礁を海底に設置する方法。
【請求項10】
製造工程において、1個の重量を20kg〜80kgとする藻礁・漁礁ブロック(1)を製造する請求項7に記載される藻礁・漁礁を海底に設置する方法。
【請求項11】
配置連結工程において、連結体(3)としてシャックルを使用する請求項7に記載される藻礁・漁礁を海底に設置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−67952(P2006−67952A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257592(P2004−257592)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000125107)開発コンクリート株式会社 (26)
【出願人】(594169330)
【Fターム(参考)】