説明

藻類の培養方法及び藻類培養装置

【課題】藻類の成分生成量を促進する藻類の培養方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素を含有する気体の微細気泡を生成するステップと、生成した微細気泡を藻類が存在する水槽30内の液中に供給するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は藻類の成分生成を促進させる藻類の培養方法及び藻類培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
藻類は、光合成により様々な成分を生成する。藻類が生成する成分には有用成分も多く、有用成分は回収して利用されることもある。藻類から有用成分を回収するためには、まず、これらの成分を含む藻類を成長させる必要がある。このとき、藻類の成分生成量を増やすことができれば、より多くの成分を回収することができる。藻類の成分生成量を増加させる方法として、光操作、温度操作又は超音波照射等を利用して藻類にストレスを与えることが検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
これとは別に、藻類を利用した二酸化炭素固定化による二酸化炭素の削減が検討されている。藻類の二酸化炭素固定化のためには藻類を含む培養液中に二酸化炭素を供給する必要があるが、例えば、二酸化炭素を溶解した培養液で藻類を培養する方法がある。また、藻類の培養の過程で効率的に二酸化炭素を供給することができれば、藻類の生成成分量も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/029627号公報
【特許文献2】特開平8−193986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように光操作、温度操作又は超音波照射等で藻類にストレスを与える場合、ストレス供給手段が必要になる。
【0006】
また、二酸化炭素削減の対象となるのは工場や発電所等の排ガス等であるが、一般的な排ガスの二酸化炭素含有量は10%程度である。一方、二酸化炭素濃度が10%程度の排ガスを藻類の培養液中に溶解した場合、二酸化炭素の削減及び藻類の成分生成量の増加に十分な量の二酸化炭素を培養液中に供給することは困難である。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、藻類の成分生成を促進させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、藻類が存在する水槽に二酸化炭素を供給して藻類を培養する藻類の培養方法であって、二酸化炭素を含有する気体の微細気泡を生成するステップと、生成した微細気泡を前記水槽内の液中に供給するステップとを有する。
【0009】
請求項2記載の発明は、微細気泡を生成するステップでは、二酸化炭素を含有する排ガスを用いて生成する。
【0010】
請求項3記載の発明は、微細気泡を供給するステップでは、水槽の底面付近から供給する。
【0011】
請求項4記載の発明は、微細気泡を供給するステップでは、微細気泡を水流とともに前記水槽内の液中に供給する。
【0012】
請求項5記載の発明は、培養液とこの培養液中で培養する藻類が内部に存在する水槽と、前記水槽内に配置され、二酸化炭素を含有する気体の微細気泡を生成し、生成した微細気泡を培養液中に供給する気泡生成手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、藻類の成分生成を促進させる藻類の培養方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る藻類の培養方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る藻類の培養方法では、図1に示すような藻類培養装置1において、水槽30内の培養液20中で成長された藻類10を培養する。この藻類培養装置1の水槽30は、微細気泡21を生成して水槽30内の培養液20に生成した微細気泡21を供給する気泡供給装置31とを備えている。
【0016】
具体的には、気泡供給装置31によって二酸化炭素を含有する気体の微細気泡21を生成し、生成した微細気泡21を藻類10が存在する水槽30内の培養液20中に供給する。培養液20中では、微細気泡21を藻類10に衝突させることで、藻類10にストレスを与えて藻類10の生成成分量を促進させる。例えば、藻類として微細藻類であるヘマトコッカス属の藻類を用いた場合、生成される成分はカロテノイドである。
【0017】
ここで、気泡供給装置31には、従来から藻類の育成に空気等の気体を水槽の培養液中に供給していた設備を利用する。本発明に係る藻類の培養方法では、従来から利用していた気泡供給装置に対し、供給する気泡のサイズが微細になるように加工すれば、新たな構成を追加する必要はない。
【0018】
気泡供給装置31が供給する微細気泡のサイズは、水槽30の大きさや培養液20中に存在する藻類10の種類や量に応じて定められる。このとき、微細気泡21のサイズが藻類10と比較してあまりに大きいと、微細気泡21が藻類10に効果的にストレスを与えることができない。したがって、微細気泡21は、マイクロバブルやナノバブル等の藻類よりもある程度小さなの気泡であることが好ましい。
【0019】
また、気泡供給装置31が供給する微細気泡の量も、水槽30の大きさや培養液20中に存在する藻類の種類や量に応じて定められる。例えば、気泡供給装置31は、0.1〜1.5vvm程度の通気量になるように0.1nm〜60μm程度のサイズの微細気泡を供給する。
【0020】
また、気泡供給装置31は、微細気泡21を生成する際、工場や発電所の排ガスを利用することで、藻類10の培養とともに、二酸化炭素の削減に貢献することができる。排ガスの二酸化炭素含有量が10%程度であっても、本発明の実施形態に係る藻類の培養方法で利用する気泡供給装置31では、この排ガスをマイクロ単位のマイクロバブルやナノ単位のナノバブルのような微細な気泡とする。
【0021】
気泡のサイズが大きいよりも小さい方が浮上スピードが遅いために液体にも長時間存在するとともに、液体に溶解しやすい。したがって、ミリ単位の気泡を培養液20に供給するよりも、マイクロ単位やナノ単位の微細気泡21を培養液20に供給にすることで、排ガス中の二酸化炭素が培養液20中に溶解しやすくなり、効率的に二酸化炭素を固定化するとともに、藻類10の成分生成量を促進させることができる。
【0022】
なお、気泡供給装置31は、水槽30の底面又は底面付近で水槽30の下側から微細気泡21を供給するほうが、微細気泡21が水槽30中の広い範囲を移動するため、培養液20中の藻類10に衝突しやすく好ましい。
【0023】
またこのとき、気泡供給装置31は、単に微細気泡21を供給するのではなく、水流とともに微細気泡21を供給することが好ましい。このように水流とともに微細気泡21を供給することで、藻類10に微細気泡21を勢いよく接触させることが可能となり、藻類10に効果的にストレスを与えることができる。
【0024】
上述した本発明に係る藻類の培養方法及び藻類培養装置によれば、従来から藻類を培養するために供給していた気泡を微細気泡とすることで、藻類にストレスを与えることができる。したがって、気泡供給装置31の他には光操作、温度操作等のストレス供給手段を設けることなく、藻類の成分生成を促進することができる結果、成分の回収量を増加させることができる。
【0025】
また、排ガスを微細気泡として藻類の培養液に供給することで、二酸化炭素が培養液中に溶解しやすくなり、藻類による二酸化炭素の消費量が増加して、成分生成を促進させることができるとともに、二酸化炭素の削減に役立てることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…藻類培養装置
10…藻類
20…培養液
21…微細気泡
30…水槽
31…気泡供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類が存在する水槽に二酸化炭素を供給して藻類を培養する藻類の培養方法であって、
二酸化炭素を含有する気体の微細気泡を生成するステップと、
生成した微細気泡を前記水槽内の液中に供給するステップと、
を有することを特徴とする藻類の培養方法。
【請求項2】
微細気泡を生成するステップでは、二酸化炭素を含有する排ガスを用いて生成することを特徴とする請求項1に記載の藻類の培養方法。
【請求項3】
微細気泡を供給するステップでは、水槽の底面付近から供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の藻類の培養方法。
【請求項4】
微細気泡を供給するステップでは、微細気泡を水流とともに前記水槽内の液中に供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の藻類の培養方法。
【請求項5】
培養液とこの培養液中で培養する藻類が内部に存在する水槽と、
前記水槽内に配置され、二酸化炭素を含有する気体の微細気泡を生成し、生成した微細気泡を培養液中に供給する気泡生成手段と、
を備えることを特徴とする藻類培養装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−10605(P2012−10605A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147610(P2010−147610)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】