説明

虹彩認証装置

【課題】予め使用者が目の画像を撮影してデータ登録する際に、登録画像の位置ずれ等を防ぎ、より良好な目画像を自動的に登録可能とする。
【解決手段】使用者は、虹彩データを登録するために、カメラ42aを自身の一方の目の前に近づけて目の位置づけを行い、撮影を開始する。使用者の登録動作中に画像キャプチャ部44でキャプチャされた目画像から、虹彩円・瞳孔円抽出部47により虹彩円及び瞳孔円が逐次抽出され、制御部45の制御により、虹彩円及び瞳孔円が目画像に重ねて表示画面46aに逐次表示される。これにより、使用者が適切な撮影位置に誘導される。誘導完了後、虹彩円及び瞳孔円が安定しているか否かが静止判定部48により自動的に検出され、制御部45で制御される表示画面46aやスピーカ32により、撮影する旨が使用者に通知される。その後、制御部45の制御によってシャッタが自動的に切られ、登録に適した虹彩画像の撮影が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や動物等の個体の生体的特徴である目の虹彩を利用して個体を認証する虹彩認証装置であって、特に、予め使用者が目の画像を撮影してデータ登録する際に、登録画像の位置ずれ等を防ぎ、より良好な目の画像(即ち、目画像)を自動的に登録可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人の目の虹彩部分の画像を用いた固定型虹彩認証装置が下記の特許文献1等に開示され、更に、携帯型虹彩認証装置が下記の特許文献2〜4等に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3307936号公報
【特許文献2】特開2005−292542号公報
【特許文献3】特開2005−327161号公報
【特許文献4】特開2008−15884号公報
【0004】
これらの特許文献1〜4等に記載されているように、従来の虹彩認証装置は、使用者の生体における目画像をカメラで取得し、取得した目画像の中から虹彩部分を切り出して虹彩データを抽出し、予め登録された使用者の虹彩データと照合して一致した場合に、該使用者を本人であると認証する。
【0005】
図7(a)、(b)は、特許文献2〜4等に記載された従来の携帯型虹彩認証装置を示す概略の構成図であり、同図(a)は携帯型虹彩認証装置の外観図、及び、同図(b)は同図(a)中の虹彩認証装置本体の構成図である。
【0006】
携帯型虹彩認証装置10は、携帯端末装置である携帯電話機に搭載された装置であり、筐体部11を有し、この筐体部11の内部に、虹彩認証装置本体20が設けられている。筐体部11の外部の背面には、撮影部22のカメラ22aと、照明部23の照明用光源23aと、表示部25の表示画面25a等とが設けられている。照明用光源23aは、カメラ22aにより目を撮影し、この目の画像を取得する際、発光させて光を目に照射するものであり、その発光に同期してカメラ22aのレンズ、シャッタ等を動作させ目を撮影するようになっている。
【0007】
筐体部11内の虹彩認証装置本体20は、撮影開始キー等を有する入力部21、カメラ22aを有する撮影部22、照明用光源23aを有する照明部23、撮影部22で取得された目画像をキャプチャ(捕獲)する画像キャプチャ部24、表示画面25aを有する表示部25、虹彩認識部26、及び虹彩認識辞書27等により構成されている。
【0008】
この携帯型虹彩認証装置10において、認証処理は以下のように行われる。
撮影部22により、カメラ22aのレンズ、シャッタ等を動作させて、カメラ22aの前方に位置する被写体である使用者の目を撮影する。照明部23は、撮影部22により目を撮影するタイミングに同期して、照明用光源23aを発光させて使用者の顔を照射する。
【0009】
撮影部22で撮影された目画像は、画像キャプチャ部24においてキャプチャされ、その画像データが、表示部25の表示画面25aで表示されると共に、虹彩認識部26へも送られる。虹彩認識部26では、画像キャプチャ部24でキャプチャされた目画像から虹彩データを抽出し、虹彩認識辞書26に予め格納され登録されている虹彩データと比較することで、使用者が本人かどうかを認識する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の虹彩認証装置10では、上記の認証の処理において、使用者自身が目の撮影を行い、認証するようになっている。しかし、虹彩データの登録に当たっては、登録データの管理及び撮影画像の良し悪しの判断の必要性等の観点から、熟練したオペレータが虹彩認証装置10又は専用の端末装置により登録を行うことが一般的であり、使用者自身が登録作業を行うことはなかった。
【0011】
しかしながら、今後、例えば、携帯端末装置等の利用方法の多様化に伴って、携帯端末装置に搭載された虹彩認証装置10を用いて、使用者自身が目画像の取得及び虹彩データの登録作業を行うことが想定される。この場合、登録作業において以下の2つの課題(1)、(2)が発生すると思われる。
【0012】
(1) 適切な撮影位置への誘導
従来、熟練したオペレータが虹彩を登録する場合、撮影された目画像を見るだけで撮影位置が適切であるか否かを判定できるが、熟練していない使用者には、目画像を見てもそのことが判断できない。そのため、登録に適さない撮影位置で撮影された虹彩を登録してしまうことがある。
【0013】
(2) 撮影時の目の状態
登録される虹彩画像はなるべく目を大きく見開き、虹彩の大部分が目画像に映っていることが望ましいが、熟練していない使用者は登録画像撮影時にそのことを忘れることがよくあり、その結果、登録に適さない画像を登録してしまうことがある。
【0014】
以上のような理由から、登録に適さない目画像を登録してしまうと、認識時に誤認識や認識不能等を多発してしまうことなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の虹彩認証装置は、個人の目に光を照射する照明手段と、前記目の虹彩データの登録時には第1の制御信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第1の目画像を取得し、前記目の虹彩データの認証時には撮影開始信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第2の目画像を取得する撮影手段と、前記撮影手段で取得された複数の前記第1の目画像から虹彩円及び瞳孔円を逐次抽出する抽出手段と、第2の制御信号に基づき、前記逐次抽出された虹彩円及び瞳孔円を、前記取得された複数の第1の目画像にそれぞれ重ねて表示画面にそれぞれ表示する表示手段と、前記虹彩データを登録する登録手段と、前記取得された複数の第1の目画像に対応する前記虹彩円及び前記瞳孔円の位置及び大きさの変動を監視し、前記変動が所定の量よりも小さいか否かを判定する判定手段と、前記登録時には前記第2の制御信号を出力して前記表示手段を制御すると共に、前記判定結果が「所定の量よりも小さい」場合には前記第1の制御信号を出力して前記撮影手段を制御する制御手段と、認識手段とを有している。
【0016】
前記認識手段は、前記判定結果に対応する前記取得された第1の目画像から前記虹彩データを抽出して前記登録手段により登録し、前記認証時に前記撮影手段で取得された前記第2の目画像から虹彩データを抽出し、この抽出された虹彩データと前記登録手段によって登録された虹彩データとを照合して前記第2の目画像を認識するものである。
【0017】
本発明の他の虹彩認証装置は、個人の目に光を照射する照明手段と、前記目の虹彩データの登録時には第1の制御信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第1の目画像を取得し、前記目の虹彩データの認証時には撮影開始信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第2の目画像を取得する撮影手段と、前記取得された第1及び第2の目画像をキャプチャするキャプチャ手段と、前記キャプチャされた複数の前記第1の目画像から虹彩円及び瞳孔円を逐次抽出する抽出手段と、第2の制御信号に基づき、前記逐次抽出された虹彩円及び瞳孔円を、前記取得された複数の第1の目画像にそれぞれ重ねて表示画面にそれぞれ表示する表示手段と、前記虹彩データを登録する登録手段と、前記キャプチャされた複数の第1の目画像に対応する前記虹彩円及び前記瞳孔円の位置及び大きさの変動を監視し、前記変動が所定の量よりも小さいか否かを判定する判定手段と、前記登録時には前記第2の制御信号を出力して前記表示手段を制御すると共に、前記判定結果が「所定の量よりも小さい」場合には前記第1の制御信号を出力して前記撮影手段を制御する制御手段と、認識手段とを有している。
【0018】
前記認識手段は、前記判定結果に対応する前記キャプチャされた第1の目画像から前記虹彩データを抽出して前記登録手段により登録し、前記認証時に前記キャプチャされた前記第2の目画像から前記虹彩データを抽出し、この抽出された虹彩データと前記登録手段によって登録された虹彩データとを照合して前記第2の目画像を認識するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御手段の制御により、表示画面に表示されている虹彩円及び瞳孔円の位置が実際の目画像上に常に重ねて表示されるので、使用者は、目の位置が正しく位置付けられているかを直感的に把握することができる。加えて、判定手段により、虹彩位置が安定していることを検出して撮影手段に対して登録画像の撮影の指示が行われた後、登録用の目画像の撮影を行うので、理想的な虹彩が撮影される。結果として、登録に熟練していない使用者でも、理想的な目画像から虹彩データが登録されることとなり、その結果、虹彩認識処理の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0021】
(実施例1の構成)
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1を示す携帯型虹彩認証装置の概略の構成図であり、同図(a)は携帯型虹彩認証装置の外観図、及び、同図(b)は同図(a)中の虹彩認証装置本体の構成図である。
【0022】
本実施例1の携帯型虹彩認証装置30は、従来の課題(1)、(2)を解決するためのものであって、図1(a)に示すように、携帯端末装置(例えば、携帯電話機)に搭載され、人の虹彩を認証する装置であり、筐体部31を有している。筐体部31の内部には、図1(b)に示すような虹彩認証装置本体40が設けられている。筐体部31の正面側(即ち、表面側)には、音声発生手段(例えば、スピーカ)32と、レンズ、シャッタ等からなるカメラ42aと、光を発生する照明用光源43aと、液晶等の表示画面46aと、図示しない撮影開始キー等を有する入力部41等とが設けられている。
【0023】
筐体部31内に設けられた虹彩認証装置本体40は、入力部41に接続された撮影手段(例えば、撮影部)42を有し、この撮影部42に、照明手段(例えば、照明部)43とキャプチャ手段(例えば、画像キャプチャ部)44とが接続されている。撮影部42は、カメラ42aを有し、このカメラ42aのレンズ、シャッタ等を動作させて、カメラ42aの前方に位置する被写体である目を撮影して目画像(登録時には第1の目画像、認証時には第2の目画像)を取得する機能を有している。照明部43は、照明用光源43aを有し、撮影部42により目を撮影するタイミングに同期して、光源43aを発光させて光を目に照射する機能を有している。画像キャプチャ部44は、メモリ等の記憶手段を有し、撮影部42で取得された目画像をキャプチャするものであり、これには制御手段(例えば、制御部)45を介してスピーカ32及び表示手段(例えば、表示部)46が接続されると共に、抽出手段(例えば、虹彩円・瞳孔円抽出部)47が接続されている。
【0024】
スピーカ32は、制御部45の制御によって音声を発生するものである。表示部46は、表示画面46aを有し、目画像等を表示画面46aに表示するものである。虹彩円・瞳孔円抽出部47は、画像キャプチャ部44にキャプチャされた目画像から虹彩円・瞳孔円を逐次抽出する機能を有している。これらのスピーカ32、表示部46及び虹彩円・瞳孔円抽出部47に、制御部45が接続されている。制御部45は、使用者の虹彩の登録時には、第2の制御信号を出力して表示部46を制御し、虹彩円・瞳孔円抽出部47による虹彩円・瞳孔円の抽出結果を表示画面46aに表示させると共に、撮影部42に対し第1の制御信号を出力して登録画像の撮影タイミングを制御し、カメラ42aにより目を撮影させて第1の目画像を取得させ、更に、スピーカ32から合図のカウント等の音声を発生させる機能を有している。
【0025】
虹彩円・瞳孔円抽出部47には、判定手段(例えば、静止判定部)48が接続され、更に、この静止判定部48に、メモリ等の記憶手段49が接続されている。静止判定部48は、虹彩円・瞳孔円抽出部47で抽出された虹彩円及び瞳孔円の位置(例えば、中心座標)及び大きさ(例えば、半径又は直径の何れかの径)の変動が安定しているか否か(即ち、その変動が記憶手段49に記憶された変動幅W1,W2よりも小さいか否か)を監視して判定する機能を有し、この判定結果が制御部45に与えられる。前記変動が安定しているとの判定結果の場合、制御部45では第2の制御信号により撮影部42に対して登録画面の撮影タイミングを制御する。
【0026】
画像キャプチャ部44には、認識手段(例えば、虹彩認識部)48が接続され、更に、この虹彩認識部48に登録手段(例えば、虹彩認識辞書)49が接続されている。虹彩認識部48は、画像キャプチャ部44にキャプチャされた第1の目画像から虹彩データを抽出して虹彩認識辞書49に登録する機能と、認証時に画像キャプチャ部44にキャプチャされた第2の目画像から虹彩データを抽出し、この抽出された虹彩データと虹彩認識辞書49に登録された虹彩データとを照合して利用者が本人かどうかを認識する機能とを有している。
【0027】
このような虹彩認証機能に必要な各構成は、虹彩認証装置本体40に組み込むソフトウェア、あるいは個別回路で構成されている。
【0028】
(実施例1の動作)
図2(a)、(b)は、図1の携帯型虹彩認証装置30における使用状態を示す図であり、同図(a)は使用者60が目61の虹彩61aの登録や認証を行う際に目61を携帯型虹彩認証装置30の撮影範囲内に位置付ける方法を示す側面図、及び、同図(b)は同図(a)の一部分を拡大した平面図である。この図2において、符号Dはカメラ42aのレンズの焦点距離付近に位置する目61とレンズとの間の距離、符号Mはカメラ42aの光軸に対する目61の移動角度である。目61は、黒目である虹彩61aの中心に瞳孔61bがある。
【0029】
図3(a)、(b)は、図2の表示画面46aにおける画面表示の例を示す図である。表示画面46aには、目画像の表示可能な表示領域46bが設けられ、虹彩円・瞳孔円抽出部47により虹彩61a及び瞳孔61bから抽出された虹彩円I及び瞳孔円Pが、表示領域46b内に描画されている。
【0030】
本実施例1の携帯型虹彩認証装置30の動作として、以下、(A)虹彩データの登録動作と、(B)虹彩の認証動作とに分けて説明する。
【0031】
(A) 虹彩データの登録動作
携帯型虹彩認証装置30の使用に際し、図2に示すように、使用者60は手62で筐体部31を把持し、虹彩61aの登録処理を行うために、撮影部42のカメラ42aを自身の一方の目61の前に近づけ、入力部41に設けられた図示しない撮影開始キーを押下して撮影を開始する。そして、従来の2つの課題を解決するために、以下の2つの手順、(A1)使用者を適切な撮影位置に誘導する手順と、(A2)最適な目開閉状態の目画像撮影手順(即ち、使用者を最適な目の開閉状態へ誘導する手順)とにより、虹彩データの登録処理が行われる。
【0032】
(A1) 使用者を適切な撮影位置に誘導する手順
この手順では、使用者60の登録動作中に画像キャプチャ部44でキャプチャされた目画像から、虹彩円・瞳孔円抽出部47により虹彩円I及び瞳孔円Pを逐次抽出し、制御部45の制御により、その虹彩円I及び瞳孔円Pを目画像に重ねて表示部46の表示画面46aに逐次表示して、虹彩61a及び瞳孔61bが正しく取得されているかを使用者60が視認しやすくすることで、使用者60を適切な撮影位置に誘導するようになっている。以下、その手順を詳細に説明する。
【0033】
先ず、入力部41の図示しない撮影開始キーの押下による撮影開始によって、カメラ42aに対する目61の位置付けの動作の開始時点から、照明部43の光源43aが発光して目61の付近が照射されると共に、撮影部42のカメラ42aが起動し、目61の付近が撮影されて画像が取得され、画像キャプチャ部44においてその画像のキャプチャが開始される。又、表示部46の表示画面46aには、制御部45の制御により、位置合わせ中の目画像が逐次表示される。
【0034】
虹彩円・瞳孔円抽出部47は、画像キャプチャ部44にキャプチャされたキャプチャ画像の1枚毎に、当該画像内に、虹彩61a及び瞳孔61bの円形状の部分である虹彩円I及び瞳孔円Pが存在するか否かを抽出処理により検出する。虹彩61a・瞳孔61bの円形状を検出する方法は、例えば、エッジ検出、ハフ変換等の画像処理分野で一般的なアルゴリズムを用いればよい。この時、虹彩円・瞳孔円抽出部47は、検出した虹彩円I・瞳孔円Pの中心座標、及び径のデータを1フレーム分記憶しておく。
【0035】
虹彩円・瞳孔円抽出部47は、キャプチャされたキャプチャ画像(=表示画面46aに表示された画像)内に虹彩円I・瞳孔円Pが存在すると判定した場合は、その中心座標、及び径のデータを制御部45へ送る。これを受けて制御部45は、図3(a)の表示画面46aに示すように、虹彩円I・瞳孔円Pを目61のキャプチャ画像と重ねて表示領域46b内に表示する。
【0036】
なお、図3(a)では、検出された虹彩円I・瞳孔円Pが実際の目画像の虹彩61a・瞳孔61bの位置に完全に一致した状態が示されている。このような表示になるときの目画像は、登録に適しているものとなる。虹彩円I・瞳孔円Pの表示は、明らかに目画像と区別される色調の線で描画するのが好ましい。
【0037】
又、キャプチャされ、表示画面46aに表示された画像内の目61の位置(即ち、カメラ42aの光軸に対する目61の移動角度M)によっては、虹彩円I・瞳孔円Pの検出が正しく行われずに、図3(b)に示すように、虹彩円I・瞳孔円Pの位置が、画像中の目61及び虹彩61a・瞳孔61bと一致しないことがある。本実施例1では、このような場合も積極的に虹彩円I・瞳孔円Pを表示画面46aに表示する。これにより、使用者60は、虹彩61aが正しく検出されていないことが直感的に把握できるようになる。
【0038】
使用者60は、図3(b)の表示を見た場合には、実際の目画像中の虹彩61a・瞳孔61bと、検出された虹彩円I、瞳孔円Pの表示が一致していないのが明らかに理解できるので、虹彩61aが正しく検出されていないものと判断し、これらの表示が図3(a)のように一致するまで、自身の目61の移動角度Mである向き等を変えつつ、位置付けの動作を継続する。以上の処理によって、使用者60は登録に適した撮影位置に誘導されることとなる。
【0039】
(A2) 最適な目開閉状態の目画像撮影手順
この手順は、使用者60を最適な目の開閉状態へ誘導する手順であり、前記(A1)の誘導完了後、虹彩円I及び瞳孔円Pが安定しているか否かを静止判定部48により自動的に検出し、当該検出をトリガにして、制御部45で制御される表示部46の表示画面46a(又は表示画面46a及びスピーカ32)により、撮影する旨を使用者60に通知することで、より登録に適した虹彩画像の撮影を行うようになっている。以下、その手順を図4(a)、(b)、図5、及び図6(a)、(b)を参照しつつ詳細に説明する。
【0040】
図4(a)、(b)は、図2において虹彩円Iの中心座標と径の変動量の推移を示す図である。図5は、図2において登録時の使用者60に合図する表示例を示す図である。更に、図6(a)、(b)は、図2において細めの使用者60に合図する表示例を示す図であり、同図(a)は瞼で黒目部分の虹彩61aが一部隠れた状態に対する指示の表示例を示す図、及び、同図(b)は瞼を開いて黒目部分の虹彩61aが全部露出した状態で撮影するときの表示例を示す図である。
【0041】
使用者60が適切な撮影位置に誘導されると、静止判定部48は、虹彩円・瞳孔円抽出部47に記憶された前フレームの虹彩円I・瞳孔円Pの中心座標及び径(半径又は直径)情報と、現フレームの虹彩円I・瞳孔円Pの中心座標及び径情報とから、虹彩円I・瞳孔円Pが前フレームからどれだけ変動したかの変動量(前フレーム情報と現フレーム情報との差分)を求める。
【0042】
図4(a)、(b)には、静止判定部48により各画像フレームから検出された虹彩円Iの中心座標及び径の変動量の推移が示されている。これらの中心座標及び径の各変動量の推移のデータを用いて、静止判定部48が以下のような判定処理を行う。
【0043】
図4(a)では、前フレームと現フレームの虹彩円Iの中心座標の変動量が、許容される変動限界V1以下の変動幅W1に収まっていく状態が示されている。これは、使用者60が前記の虹彩円・瞳孔円抽出部47による虹彩円I・瞳孔円Pの抽出結果を見た結果、虹彩円I・瞳孔円Pが装置によって正しい位置に抽出されていることを確認することで、目61の向きを変えつつ適切な位置に虹彩61aを合わせて静止するので、変動量が徐々に小さくなることを表している。なお、前記では、中心座標変動量の許容される変動幅W1については、経験的に知られている数値(例えば、数ピクセル)であり、記憶手段49に予め記憶されているものである。
【0044】
図4(b)では、虹彩円Iの径の変動量が、許容される変動限界V2以下の変動幅W2に収まっていく状態が示されている。これは、中心座標の変動量と同様、使用者60が前記の虹彩円・瞳孔円抽出部47による虹彩円I・瞳孔円Pの抽出結果を見た結果、虹彩円I・瞳孔円Pが装置によって正しい大きさに抽出されていることを確認することで、カメラ42aのレンズと目61との間隔Dを変えつつ適切な位置に虹彩61aを合わせて静止するので、変動量が徐々に小さくなることを表している。径の変動量の許容される変動幅W2についても、経験的に知られている数値(例えば、数ピクセル)であり、記憶手段49に予め記憶されているものである。
【0045】
静止判定部48では、中心座標の変動量の値が、変動幅W1の範囲内で一定の時間推移しているのかを監視している。これにより変動量の値が、変動幅W1の範囲内で一定の時間推移していると判定されると、虹彩円I、瞳孔円Pが登録に適したレベルで安定して検出されているとして、静止判定部48は制御部45に指示して、後述する方法で、画面表示46aによる表示、又はスピーカ32から発生する音声により、使用者60に対して登録用の目画像を撮影する旨の合図を出す。
【0046】
又、径(半径又は直径)についても中心座標の場合と同様に、静止判定部48により、変動量の推移を分析し、安定して推移しているかを判定する。そして、変動量の値が、変動幅W2の範囲内で一定の時間推移していると判定されると、虹彩円I、瞳孔円Pが登録に適したレベルで安定して検出されているものとして、静止判定部48は制御部45に指示して、後述する方法で、画面表示46aによる表示、又はスピーカ32から発生する音声により、使用者60に対して登録用の目画像を撮影する旨の合図を出す。
【0047】
なお、前記判定においては、中心座標、径の双方を監視した結果、双方の変動とも安定状態であると判定することが必要である。又、ここでは虹彩円Iの変動量のみ説明したが、瞳孔円Pの変動量を利用してもよく、更に2つの変動量の両方を同時に利用して判定してもよい。
【0048】
前記の判定によって、使用者60が登録に適した位置で静止したことが確認できるので、次に、目61をより開いて登録に適した画像を撮影できるように誘導する。
【0049】
図5には、登録用画像を撮影するための合図の表示例が示されている。このとき制御部45の制御によって表示部46の表示画面46aには、登録のための撮影をする旨の文言が表示され、加えて、制御部45の制御によって撮影部42のカメラ42aのシャッタが自動的に切られるまでの残り時間のカウント表示が行われる。スピーカ32からの音声により、例えば、「3、2、1」等とカウントダウンするのに合わせ、カウント表示も減じて表示される。
【0050】
カウントダウン完了と同時に、制御部45の制御によって撮影部42のカメラ42aのシャッタが自動的に切られ、使用者60の目61が撮影される。撮影された目画像は、画像キャプチャ部44でキャプチャされて虹彩認識部50へ送られ、この虹彩認識部50により、キャプチャ画像から虹彩データが算出され、後の認証のための登録データとして虹彩認識辞書51に登録される。
【0051】
前記したような動作は、特に、瞼が虹彩部に懸かった画像となりやすい細目の人(あるいは一時的に目を細めた人)に良好な目画像を撮影するように誘導するのに適している。
【0052】
図6(a)、(b)には、細目の場合に、登録用画像を撮影するための合図の表示例が示されている。この内、図6(a)には、使用者60の目61が細目となっている状態が表示されており、目画像には、検出された虹彩円I・瞳孔円Pが重ねて描画されている。この場合の虹彩円I・瞳孔円Pは、虹彩円・瞳孔円抽出部47によって、正規の位置、及び半径を有していると判定されたものである。細目の場合には、虹彩62aの一部が瞼に覆われていることにより、描画された虹彩円I・瞳孔円Pが正規であっても、実際の虹彩部分と完全には一致しない。
【0053】
即ち、前記の細目のケースでは、細目の画像がそのまま登録処理に供されることとなり、認識精度の面から問題がある。そこで、図6(a)に示すように、使用者60に対して目61を大きく開くように促す文言を表示する。使用者60はこれに従い、実際の虹彩部分が描画された虹彩円Iに一致するように目61を大きく開く。
【0054】
図6(b)には、目61が大きく開かれ、実際の虹彩部分が描画された虹彩円Iに一致した状態が示されている。この状態において図5でも説明したように、自動的にシャッタが切られるまでの残り時間のカウント表示がされ、音声により「3、2、1」等とカウントダウンするのに合わせ、カウント表示も減じて表示される。制御部43の制御により、カウントダウン完了と同時に、撮影部42のカメラ42aのシャッタが自動的に切られ、使用者60の目が撮影される。
【0055】
なお、使用者60に対して実際の虹彩部分を、描画された虹彩円Iに一致させるように強く促す工夫として、描画された虹彩円I・瞳孔円Pを点滅させて誘導するようにしてもよい。又、細目の内部に撮影された虹彩部分に一致する虹彩円Iの円弧については、固定して描画し、瞼で隠れた部分についてのみ点滅させて、虹彩円Iが小から大と切り替わるように表示して、使用者60に位置合わせを喚起するようにしてもよい。
【0056】
(B) 虹彩の認証動作
使用者60が携帯型虹彩認証装置30を用いて目61の認証を行う場合は、撮影部42のカメラ42aを自身の一方の目61の前に近づけ、カメラ42aに対する目61の位置付けを行う。そして、使用者60が入力部41の図示しない撮影開始キーを押下すると、光源43aにより目61が照射され、カメラ42aにより目61が撮影される。撮影された目画像は、画像キャプチャ部44でキャプチャされて虹彩認識部50へ送られ、この虹彩認識部50により、キャプチャ画像から虹彩データが抽出され、虹彩認識辞書51に登録されている虹彩データと照合され、使用者60が本人かどうかが認識される。
【0057】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、制御部45の制御により、表示画面46aに表示されている虹彩円I・瞳孔円Pの位置が実際の目画像上に常に重ねて表示されるので、使用者60は、目61の位置が正しく位置付けられているかを直感的に把握することができる。加えて、静止判定部48により、虹彩位置が安定していることを検出して撮影部42に対して登録画像の撮影の指示が行われた後、登録用の目画像の撮影を行うので、理想的な虹彩61aが撮影される。結果として、登録に熟練していない使用者60でも、理想的な目画像から虹彩データが登録されることとなり、その結果、虹彩認識処理の精度が向上する。
【0058】
(変形例)
本発明は、上記実施例1に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。
例えば、実施例1では、虹彩認証装置本体40を携帯電話機に搭載した例を説明したが、PDA(Personal Digital Assistant)等の他の携帯端末装置に搭載したり、あるいは、虹彩認証装置本体40の機能をパーソナルコンピュータ等に搭載した固定型の装置構造にしてもよい。又、虹彩認証装置本体40は、画像キャプチャ部44を省略したり、あるいは、精度の向上や用途の拡大等を図るために図示以外の他の機能ブロックを追加する等してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例1を示す携帯型虹彩認証装置の概略の構成図である。
【図2】図1の携帯型虹彩認証装置30における使用状態を示す図である。
【図3】図2の表示画面46aにおける画面表示例を示す図である。
【図4】図2において虹彩円の中心座標と径の移動量の推移を示す図である。
【図5】図2において登録時の使用者60に合図する表示例を示す図である。
【図6】図2のおいて細目の使用者60に合図する表示例を示す図である。
【図7】従来の携帯型虹彩認証装置を示す概略の構成図である。
【符号の説明】
【0060】
30 虹彩認証装置
40 虹彩認証装置本体
42 撮影部
42a カメラ
43 照明部
43a 光源
44 画像キャプチャ部
45 制御部
46 表示部
46a 表示画面
47 虹彩円・瞳孔円抽出部
48 静止判定部
50 虹彩認識部
51 虹彩認識辞書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の目に光を照射する照明手段と、
前記目の虹彩データの登録時には第1の制御信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第1の目画像を取得し、前記目の虹彩データの認証時には撮影開始信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第2の目画像を取得する撮影手段と、
前記撮影手段で取得された複数の前記第1の目画像から虹彩円及び瞳孔円を逐次抽出する抽出手段と、
第2の制御信号に基づき、前記逐次抽出された虹彩円及び瞳孔円を、前記取得された複数の第1の目画像にそれぞれ重ねて表示画面にそれぞれ表示する表示手段と、
前記虹彩データを登録する登録手段と、
前記取得された複数の第1の目画像に対応する前記虹彩円及び前記瞳孔円の位置及び大きさの変動を監視し、前記変動が所定の量よりも小さいか否かを判定する判定手段と、
前記登録時には前記第2の制御信号を出力して前記表示手段を制御すると共に、前記判定結果が「所定の量よりも小さい」場合には前記第1の制御信号を出力して前記撮影手段を制御する制御手段と、
前記判定結果に対応する前記取得された第1の目画像から前記虹彩データを抽出して前記登録手段により登録し、前記認証時に前記撮影手段で取得された前記第2の目画像から前記虹彩データを抽出し、この抽出された虹彩データと前記登録手段によって登録された虹彩データとを照合して前記第2の目画像を認識する認識手段と、
を有することを特徴とする虹彩認証装置。
【請求項2】
個人の目に光を照射する照明手段と、
前記目の虹彩データの登録時には第1の制御信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第1の目画像を取得し、前記目の虹彩データの認証時には撮影開始信号に基づき、前記光が照射された目を撮影して第2の目画像を取得する撮影手段と、
前記取得された第1及び第2の目画像をキャプチャするキャプチャ手段と、
前記キャプチャされた複数の前記第1の目画像から虹彩円及び瞳孔円を逐次抽出する抽出手段と、
第2の制御信号に基づき、前記逐次抽出された虹彩円及び瞳孔円を、前記取得された複数の第1の目画像にそれぞれ重ねて表示画面にそれぞれ表示する表示手段と、
前記虹彩データを登録する登録手段と、
前記キャプチャされた複数の第1の目画像に対応する前記虹彩円及び前記瞳孔円の位置及び大きさの変動を監視し、前記変動が所定の量よりも小さいか否かを判定する判定手段と、
前記登録時には前記第2の制御信号を出力して前記表示手段を制御すると共に、前記判定結果が「所定の量よりも小さい」場合には前記第1の制御信号を出力して前記撮影手段を制御する制御手段と、
前記判定結果に対応する前記キャプチャされた第1の目画像から前記虹彩データを抽出して前記登録手段により登録し、前記認証時に前記キャプチャされた前記第2の目画像から前記虹彩データを抽出し、この抽出された虹彩データと前記登録手段によって登録された虹彩データとを照合して前記第2の目画像を認識する認識手段と、
を有することを特徴とする虹彩認証装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記登録時において、前記撮影手段による前記目の撮影に先立って、前記個人に合図する表示を前記表示手段に行わせる制御機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の虹彩認証装置
【請求項4】
前記制御手段は、前記登録時において、前記撮影手段による前記目の撮影に先立って、前記個人に合図のカウントを音声発生手段から発生させる制御機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の虹彩認証装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記合図に先立って、前記抽出された虹彩円を前記表示手段に表示させると共に、前記個人に対して瞼を開くように促す文言を前記表示手段に表示させる制御機能を有することを特徴とする請求項3又は4記載の虹彩認証装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記抽出された虹彩円の存在を前記個人に認識させるために、前記抽出された虹彩円を点滅させて前記表示手段に表示させる制御機能を有することを特徴とする請求項5記載の虹彩認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−211370(P2009−211370A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53250(P2008−53250)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】