説明

蛇行状スリット曲線を備えた編み機の針

【課題】耐磨耗性及び作動速度を考慮した編み機の針を提供する。
【解決手段】編み機の針1は、少なくとも1つのフット3、及び上側狭幅面と下側狭幅面を有し一端にフックを担持するシャンク4を有する針本体を備え、これによりシャンク4がフックとフット3との間に少なくとも1つの蛇行状湾曲部12を有し、この蛇行状湾曲部が少なくとも1つの蛇行状湾曲スリット18を有し、蛇行状湾曲スリット18が上側狭幅面及び/又は下側狭幅面を通って延出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編み機の針に関する。
【背景技術】
【0002】
耐磨耗性及び作動速度を考慮した編み機の針の需要はますます大きくなっている。作動速度の高速化とともに、それぞれの針がそれらの長手方向においてより強く加速及び減速される。このことが、編み機の針に対する欠陥のリスク、特にフック破損のリスクを高める。実際に、編み機の作動速度は上昇すべきであるが、このことにより、それぞれの編み機の針の有効寿命の損失が発生してはならない。
【0003】
特許文献1は、前述した問題を軽減又は排除するために、ラッチ型針が針の蛇行状湾曲部内を横切るように延出するスリットを有することを示唆する。このスリットは蛇行状湾曲部を上下それぞれの枝状部に分割し、針に更なる弾力性を備える。この解決法は立証されているが、加速した作動速度で編み機の有効寿命を高めるための他のオプションが求められている。
【0004】
蛇行状針に関し、特許文献2は、このような針には、側面に潤滑油用の空間を設けるために、また針チャネル壁部に沿った針の磨耗を軽減するために、側面平坦凹部が部分的に設けられることを示唆する。
【0005】
特許文献3は、平坦な連続する長手方向溝が、断面I字形状の針を付与するように蛇行状針の側面に設けられることを示唆する。
【0006】
編み機の針に関する形状的特徴と長期疲労抵抗に関するそれらの効果との関係、及びフック破損と潜在的な作動速度との関係は極めて複雑であり予測できないことが見出されている。さらに、製造の安全性及び製造の簡潔性の面もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE10333172A1
【特許文献2】DE19740985C2
【特許文献3】DE3612316(Document 36 12 316)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した要求を満たす編み機の針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の編み機の針で達成される。
【0010】
編み機の針は、フックとフットとの間に少なくとも1つの蛇行状湾曲部を設けた針本体を有する。スリットは蛇行状湾曲部に設けられ、前記スリットは少なくとも上側狭幅面及び下側狭幅面を通って延出する。
【0011】
蛇行状湾曲スリットは、編み機の針の2つの平坦面即ち側面に平行にシャンク内へあるいはシャンク内を通って延出する。蛇行状湾曲スリットは空であってもよく、あるいは必要な場合にその材料とは異なる材料若しくは針本体の残りで充てんされてもよい。針本体が鋼鉄で構成される場合、蛇行状湾曲スリットは異なる金属又はプラスチック材料で充てんされてもよい。上記スリットは空のままで、たとえば作動中にオイル若しくは磨耗された繊維材料で充てんされてもよい。この効果は、蛇行状湾曲部のスリット区域における減衰効果を達成するために意図的に使用され得る。編み機の針の送り条件において、蛇行状湾曲スリットが明確な開通性(patency)を発揮することが好ましい。
【0012】
本発明による編み機の針は増加した有効寿命を示す。蛇行状湾曲スリットは、特に高い作業速度であっても針の破損を軽減する効果を有する。他方で、針のシャンクは、編み動作中のフックの位置決めもまた高い作業速度で正確であるような十分に高い安定性を示す。
【0013】
蛇行状湾曲部は、長手方向に対し横向きに延出する少なくとも1つの部分と、この部分に隣接する2つの部分とを有し、これら2つの部分は針の長手方向に延出する。蛇行状湾曲スリットはこれらの部分の少なくとも1つと交差する。好ましくは、前記蛇行状湾曲スリットはこれら部分の2つ若しくはこれら3つの部分すべてと交差し、これにより、編み機の針の一方の狭幅面から他方の狭幅面へと連続的であり得る。前記部分の1つだけ又は2つを完全に分割するか、または前記部分の1つだけ又は2つを単に切断するが、完全には分割しないように蛇行状湾曲スリットを構成することは実用的であることが確かめられ得る。
【0014】
蛇行状湾曲部はフック側端部及びフット側端部を有する。これら端部はともに、直線状又は丸くされ得る狭幅表面である。その際、前記狭幅表面(affected surface)は、編み機の針の長手方向軸線に対して傾斜して配置されることが好ましい。その際に、針の安定特性及び減衰特性に影響が及ぼされ、内在的共振が抑制されあるいは吸収され得る。さらに、結果として製造が簡単になる(a single manufacturing option is the effect.)。
【0015】
ラッチスリットと同一平面上又は該ラッチスリットと一直線上に蛇行状湾曲スリットを提供することは有利であることが見出されている。その際、蛇行状湾曲スリットはラッチスリットと同一幅を有することが有利である。蛇行状湾曲スリットは一致した単一の均一幅を示し得る。しかしながら、異なる幅のスリットを設けることも可能である。この特徴は、同時に編み機の針を高い安定性を維持しながら高い作業速度に適合させるために用いられることもある。
【0016】
他の実施の形態は本発明の枠組み内にある。それらの幾つかは図面及び説明に示されている。その際、説明は本発明の本質的な態様及びその他の状況に限定される。図面は更なる細部を示し、補足的な参照のために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、縮尺に従わない編み機の針の概略側面図である。
【図2】図2は、図1による編み機の針の平面視の詳細図である。
【図3】図3は、図2による編み機の針の線IIIに沿った断面図である。
【図4】図4は、図1による編み機の針の部分縦断面における側面視の詳細図である。
【図5】図5は、本発明による編み機の針の変形例の部分縦断面における側面図である。
【図6】図6は、本発明による編み機の針の変形例の部分縦断面における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、ラッチ型針として構成される編み機の針1を示す。この針は、フット(基部)3を有する針本体2を備える。フットは、例えば編みシリンダ若しくは編み機ダイアルなどの針床の溝に支持される編み機の針1を駆動するために配置される。針本体2は、その端部にフック5を有する長手方向に延出するシャンク4を備える。フック5は、該フック5を開閉可能であるように回転支持されるラッチ6と対応付けられる。ラッチスリット7は、図2から明白であるように、ラッチ6を収容するために配置される。図2は、ラッチ型針1の上側狭幅面8の平面図である。さらに、シャンク4は下側狭幅面9を有し、好ましくは平坦形状を有し、さらに互いに平行に配置される2つの外側面11、10によって画成される。
【0019】
針本体2及び/又はシャンク4は、少なくとも1つの、但し好ましくは複数の蛇行状湾曲部12、13、14が設けられる。しかし、特に少なくとも1つの蛇行状湾曲部12は脚部3とフック5との間に設けられる。
【0020】
それぞれの蛇行状湾曲部は、針の長手方向に延出する少なくとも2つの直線バー形状部15、16、及びそれらに対し横向き方向、即ちフット3にほぼ平行な方向に延出する第3挿入部17から構成される。その結果、各々の蛇行曲線部12、13、14は垂直方向に延出する段部をそれぞれ形成し、その段部で部分15、16が互いにオフセットで置かれる。その際、部分15、16はそれぞれ、好ましくは矩形断面(任意で角が丸くされた)及び高さHを有する。好ましくは、図1における垂直方向の、即ち、フット3に平行なこれらの測定高さは、上側狭幅面8の最も高くなった位置から下側狭幅面9の最も低くなった位置まで測定される全体高さNHの半分よりも小さい。
【0021】
本発明による編み機の針1の特色は、針の長手方向に延出し蛇行状湾曲部12上、及び任意で他の蛇行状湾曲部13、14上に配置される蛇行状湾曲スリット18である。図2によると、蛇行状湾曲スリット18はラッチスリット7と同一平面E上に配置され、狭幅面8、9の少なくとも一方を通って延出する。しかしながら、このスリットは2つの外側面10、11に向けて閉じられる。その結果、前記スリットは、平行な側壁19、20によって画成され、それらの間に蛇行状湾曲スリット18が形成される空きスペースがある。特に図2及び図3から明白であるように、壁部19、20は、好ましくは、針の長手方向から見たときと、それらと直角を成す垂直方向から見たときとで変化する均一で同一な厚さを有するとともに、1つの例示的な実施の形態において蛇行状湾曲スリット18の幅に対応する厚さを有する。
【0022】
好ましくは、蛇行状湾曲スリット18がラッチスリット7と同一幅を有し、これによりこの幅は蛇行状湾曲スリット18のそれぞれの側壁19、20、又はラッチスリット7の側壁間の距離であり、針の長手方向に対し横向き方向に測定される。
【0023】
図4から明白であるように、蛇行状湾曲スリット18は3つの部分15、16、17すべてを通って延出してもよい。蛇行状湾曲スリット18は、フットに面する側において、フックに面する側と同等に、平坦な、若しくは図4に示されるように角が丸くされてもよい端面21、22で終端する。平面状又は丸くなった端面21、22は好ましくはシャンク4の長手方向に対し斜めに配向される。図4に記号によって示されるように、これらの端面は、針の長手方向Lと、鋭角w1、w2を挟んで相対向する。
【0024】
蛇行状湾曲スリットの長さはその幅よりも明らかに大きい。端面の傾斜及び/又は曲率により、上側狭幅面8上の蛇行状湾曲スリット18の長さL1は、下側狭幅面9上の蛇行状湾曲スリット18の長さL2とは異なる。所与の例示的な実施の形態においてL1はL2よりも大きい。さらに、この例示的な実施の形態において、蛇行状湾曲スリット18は連続的に開口され、即ち、蛇行状湾曲スリット18は端面21、22間は空いており、側壁19、20間の接続はない。しかしながら、必要があれば、例えばフィリングの形態で、あるいはまた、例えば部分15、16、17の1点又は複数点で側壁19、20間に一体型シームレス材料の形態で接続部を設けてもよい。
【0025】
好ましくは、側壁19、20は内側面と同様に、外側面10、11は平坦形状とされている。しかしながら、これら側壁は、互いの隔壁に向けて湾曲されていてもよく、このため蛇行状湾曲スリット18は1つ以上の位置で狭められている。側壁19、20は隣接していてもよく、あるいは、例えばスポット溶接によって互いに接続されていてもよい。
【0026】
ここまで記載された編み機の針1は以下の通り作動する。
作動中、編み機の針1は針床の針溝に配置される。フット3は、長手方向Lの前後に針を移動させる、即ち針を送り出し又は針を引き込ませるタペットと接続状態にある。その際、フック5は、糸を取り上げそれらを既存のループ内に引き込むように急速な往復運動を実行する。その際、ラッチ6が前後に連続して振動する。フット3に伝達される針の動作中に発生する衝撃は、フック5の方向及びフック5に向かう方向にシャンク4内を移動する。一方で、蛇行状湾曲スリット18は、フット3の駆動動作が適切に且つ正確にフック5に伝達されることを確実にする。その際、フック5は正確に位置決めされる。他方では、蛇行状湾曲スリット18は、フック5に破損をもたらす可能性がある衝撃が前記フックから離され、又は吸収されることを確実にする。
【0027】
図5は本発明による編み機の針1の変更された実施の形態を示す。蛇行状湾曲スリット18の形状を除いて、この針は上記編み機の針1に対応する。図5による実施の形態を参照すると、蛇行状湾曲スリット18は、蛇行状湾曲部12の部分15、17全体を通って延出し、部分16の一部のみを通って延出する。さらに、長さL2はこの場合、長さL1よりも明らかに大きい。蛇行状湾曲スリット18は、細長上部8よりも細長下部9における長さ寸法のほうがより大きい。しかしながら、蛇行状湾曲スリットはさらに、ラッチスリット7に平行に配向される。さらに、好ましくはラッチスリットの幅に対応する均一幅を有する。しかしながら、この幅は異なるように定めてもよい。
【0028】
図6は、別の実行できる変更例を示す。この場合、蛇行状湾曲スリット18は分割された端面21a、22b、22a、22bを有する。端面部分21a、21bは互いの方へ鋭角で延出する。同様に、端面部分22a、22bは、互いの方へ鋭角で延出する。それら端面部分のそれぞれは、蛇行状湾曲スリット18内側の点で出会い、蛇行状湾曲スリット18の最も狭幅の内側地点を画成するとともに距離L3を規定する。この距離は、距離L1、L2の少なくとも一方よりも小さい。蛇行状湾曲スリット18は一致した均一幅を有し、又は図6に示されるように段部23が設けられることもある。この段部では、蛇行状湾曲スリット18の幅は小さい値から大きい値まで変化することがある。好ましくは、この段部は端面21bと円滑に隣接し、あるいはまた、下側狭幅面9または上側狭幅面8と境を成す端面部分21a、22aと円滑に隣接する。
【0029】
ほとんどどの方法でも互いに組み合わせ可能な前述した特徴を使用することで、シャンク4の可撓性、安定性、衝撃吸収能力、減衰効果及び疲労強度は、広範囲内で特定の目的に対し調節され得る。
【0030】
本発明による蛇行状針として設計される編み機の針1は、舌状スリットと平行な垂直スリットの形状を有する蛇行状湾曲スリット18を備えた少なくとも1つの蛇行状湾曲部12を有する。これは、好ましくは互いに平行に配列され空いた中間空間と外接させる2つの側壁19、20によって範囲設定される。
【符号の説明】
【0031】
1 編み機の針
2 針本体
3 フット
4 シャンク
5 フック
6 ラッチ
7 ラッチスリット
8 上側狭幅面
9 下側狭幅面
10、11 外側面
12−14 蛇行状湾曲部
NH 全体高さ
15 第1の部分
16 第2の部分
17 第3の部分
18 蛇行状湾曲スリット
19、20 側壁
21、22 端面
L 針の長手方向
L1 針上側の長さ
L2 針下側の長さ
L3 蛇行状湾曲スリットの長さ
21a、21b 端面部分
22a、22b 端面部分
w1、w2 鋭角
E 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフット(3)、及び上側狭幅面(8)と下側狭幅面(9)を有し一端にフック(5)を担持するシャンク(4)を有する針本体(2)を備え、
これによりシャンク(4)がフック(5)とフット(3)との間に少なくとも1つの蛇行状湾曲部(12)を有し、前記蛇行状湾曲部が少なくとも1つの蛇行状湾曲スリット(18)を有する編み機の針(1)であって、
前記蛇行状湾曲スリット(18)が上側狭幅面(8)及び/又は下側狭幅面(9)を通って延出することを特徴とする編み機の針(1)。
【請求項2】
前記蛇行状湾曲スリット(18)は、本体の長手方向に延出する第1の部分(15)と、さらに本体の長手方向に延出する第2の部分(16)と、それらに対して横向きに延出する第3の部分(17)と、によって画成され、これにより第3の部分(17)が第1の部分(15)と第2の部分(16)との間に配置され、前記部分に対して本質的に直角になることを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項3】
第1の部分(15)と第2の部分(16)とが同一の高さ(H)を有することを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項4】
前記蛇行状湾曲スリット(18)は、シャンク(4)の上側狭幅面(8)及び下側狭幅面(9)を通って延出することを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項5】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が均一幅を有することを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項6】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が丸くなった端面(21、22)を有することを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項7】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が少なくとも第1の部分(15)を通って延出することを特徴とする、請求項2に記載の編み機の針。
【請求項8】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が少なくとも第2の部分(16)を通って延出することを特徴とする、請求項2に記載の編み機の針。
【請求項9】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が少なくとも第3の部分(17)を通って延出することを特徴とする、請求項2に記載の編み機の針。
【請求項10】
ラッチ型針(1)として構成され、前記蛇行状湾曲スリット(18)からある距離をおいて配置されるラッチスリット(7)を有することを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項11】
前記ラッチスリット(7)及び前記蛇行状湾曲スリット(18)が互いに一直線になるように配列されることを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項12】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が上側狭幅面(8)上において長さ(L1)を有し、前記長さが下側狭幅面(9)上の長さ(L2)よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項13】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が下側狭幅面(9)上において長さ(L2)を有し、前記長さが上側狭幅面(8)上の長さ(L1)よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。
【請求項14】
前記蛇行状湾曲スリット(18)が一端に平坦な又は湾曲した端面(21)を有し、前記端面が前記上側狭幅面(8)又は下側狭幅面(9)に鋭角で隣接することを特徴とする、請求項1に記載の編み機の針。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−90527(P2010−90527A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−229699(P2009−229699)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(304012943)グローツ−ベッカート コマンディトゲゼルシャフト (46)
【Fターム(参考)】