説明

蛍光パターン形成物、記録媒体、セキュリティー媒体、及び記録方法

【課題】 セキュリティー性が高く、簡便に検出することができる情報媒体を実現すること。
【解決手段】 金属イオンを含む第1の層2と、第1の層2と対向して設けられ第1の層2の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を増加させる配位子を含む第2の層3とを具備することを特徴とする蛍光パターン形成物。蛍光のコントラスト比を向上させることができ、セキュリティー性が高く、簡便に検出することができる情報媒体を実現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光パターン形成物、記録媒体、セキュリティー媒体、及び記録方法に係り、特に金属イオンとこれに対する配位子とを用いた蛍光パターン形成物、記録媒体、セキュリティー媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティー技術の重要性が急速に高まる傾向にあり、盛んに技術開発が行われている。秘密保持などを目的として偽造や複写を防止したり、機密情報を記録する必要性が高まっているからである。蛍光性化合物を用いるセキュリティー方式としては、例えば可視光では視認できないが、ブラックライトを照射することによって視認できる方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる技術は有用であるが、より高い機密性が要求される用途に対しては、より高度なセキュリティー性を実現する必要がある。
【0003】
セキュリティー性向上の方法として、多色化する方式が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、多色化は検出器側の複雑化を伴い、また人間が検出する場合には、自動処理ができないなどの問題点が生じる。
【0004】
また、単色でセキュリティー性を向上させる手段の一つとして、蛍光のコントラスト比を高める方法が考えられる。しかし、例えば、蛍光体濃度を調整する方法では濃度に応じたインクを用意する必要があるために困難であり、また、インクの量で調整しようとすると、印刷面にインク形状が反映してしまいセキュリティー性が落ちてしまう、などの問題点が考えられる。
【0005】
なお、製造業者や商品名などの情報をバ―コ―ド等のマークにより記録、表示し、そのパターンを光学的に読み取ることにより、商品の売上や流通の状況を分析することが行われており、かかる分野においても、視認性の向上やインク組成物の調整の利便性等を目的として、記録、表示用の材料として蛍光性化合物が用いられている(例えば、特許文献3参照)。このように蛍光性化合物を用いて記録や表示等を一般に行う場合にも、記録、表示される情報が機密情報を含む場合は、セキュリティー性を向上させて記録を行うことが必要となり、上述したセキュリティー性の劣化は大きな問題点となる。
【特許文献1】特開2002−173622公報
【特許文献2】特開2003−340954公報
【特許文献3】特開2000−144029公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、セキュリティー性向上の手段として多色化の手法を用いる場合は、検出器側が複雑化してしまったり自動処理ができないなどの問題点が生じる。また、単色でセキュリティー性を向上させる手段の一つとして蛍光のコントラスト比を高める手法を用いる場合は、インクの調整が困難であったり、インク形状の反映によりセキュリティー性が劣化するという問題がある。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、セキュリティー性が高く、簡便に検出することができる情報媒体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の蛍光パターン形成物は、金属イオンを含む第1の層と、この第1の層と対向して設けられ当該第1の層の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を変化させる配位子を含む第2の層とを具備することを特徴とする。
【0009】
前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第2の蛍光パターン形成物は、金属イオンを含む第1の層と、この第1の層と対向して設けられ当該第1の層の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を増加させる配位子を含む第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に所定パターンで形成され前記金属イオンと当該金属イオンに配位した前記配位子とを有する蛍光性化合物を含む蛍光層とを具備することを特徴とする。
【0011】
かかる本発明の第2の蛍光パターン形成物において、前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、この分離層の中に前記蛍光性化合物が含まれ、前記分離層の少なくとも一部が前記蛍光層を兼ねることが好ましい。
【0012】
また、前記第1の層に含まれる金属イオンと前記第2の層に含まれる前記配位子のうち少なくとも一方は拡散可能であり、前記第1の層と前記第2の層との間でかつ前記蛍光層の前記所定パターン以外の領域に拡散することにより、前記金属イオンに基づく蛍光強度が所定時間経過後に全面で一様化されるように調整されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第3の蛍光パターン形成物は、蛍光性の第1の錯体を含む蛍光層としての第1の層と、この第1の層と対向して設けられ当該第1の層の前記第1の錯体における金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を減少させる配位子を含む第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に所定パターンで形成され前記第1の錯体における前記金属イオンに前記配位子が配位した第2の錯体を有する層とを具備することを特徴とする。
【0014】
かかる本発明の第3の蛍光パターン形成物において、前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、この分離層の中に前記第1の錯体及び前記配位子が含まれていることが好ましい。
【0015】
また、前記第1の層に含まれる第1の錯体と前記第2の層に含まれる前記配位子のうち少なくとも一方は拡散可能であり、前記第1の層と前記第2の層との間でかつ前記第2の錯体を有する層の前記所定パターン以外の領域に拡散することにより、前記金属イオンに基づく蛍光強度が所定時間経過後に全面で一様化されるように調整されていることが好ましい。
【0016】
上述した本発明の第1から第3の蛍光パターン形成物において、以下の構成を備えることが好ましい。
【0017】
(1)前記第1の層と前記第2の層のうち少なくとも一方は所定のパターン形状で形成されていること。
【0018】
(2)前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、当該分離層は前記第1の層、前記第2の層、又はその両方の層の前記所定のパターン形状に対応したパターン形状で形成されていること。
【0019】
(3)所定のパターン形状で形成されている前記第1の層、前記第2の層、又はその両方の層を覆う保護膜を備えること。
【0020】
(4)前記蛍光パターン形成物の前記第1の層側の面と前記第2の層側の面のうち少なくとも一つの面に支持基体を備えること。
【0021】
(5)前記蛍光パターン形成物の前記第1の層側の面と前記第2の層側の面のうち少なくとも一つの面に反射膜を介して支持基体を備えること。
【0022】
(6)前記蛍光パターン形成物の前記第1の層側の面と前記第2の層側の面のうち少なくとも一つの面に透明基体を備え、前記蛍光パターン形成物の前記透明基体とは反対側の面に反射膜を備えること。
【0023】
(7)前記蛍光層は、紫外線照射により蛍光を発光するとともに可視光に対しては実質的に透明である層であること。
【0024】
(8)前記第1の層と前記第2の層の少なくとも一方は、可視光に対して実質的に透明である層であること。
【0025】
(9)前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、当該分離層は可視光に対して実質的に透明である層であること。
【0026】
(10)前記金属イオンは、希土類金属、イリジウム、ガリウム、パラジウム、白金、ルテニウム、銅、亜鉛、アルミニウムのうちから選ばれる少なくとも一種の金属イオンであること。
【0027】
(11)前記金属イオンは、金属イオン錯体として前記第1の層に含まれること。
【0028】
(12)前記配位子は、前記第1の層の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を増加させるものであり、ホスフィンオキシド化合物、スルホキシ化合物、カルボキシ化合物、カルボニル化合物、フェナントロリン、ビピリジン、アセチルアセトナト化合物のうちから選ばれる少なくとも一種の配位子であること。
【0029】
(13)前記配位子は、前記第1の層の前記第1の錯体における前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を減少させるものであり、ヒドロキシ化合物、水のうちから選ばれる少なくとも一種の配位子であること。
【0030】
また、上述した各本発明の蛍光パターン形成物に情報を蛍光強度の分布として記録することを特徴とする記録媒体を提供する。
【0031】
さらにまた、上述した各本発明の蛍光パターン形成物にセキュリティ情報を蛍光強度の分布として記録することを特徴とするセキュリティー媒体を提供する。
【0032】
また、上述した各本発明の蛍光パターン形成物に対して、外部から熱、応力、及び光から選ばれる少なくとも一つのエネルギーを与えることにより、前記第1の層の前記金属イオンに前記第2の層の前記配位子を配位させ、蛍光強度の変化により情報の記録を行うことを特徴とする記録方法を提供する。
【発明の効果】
【0033】
セキュリティー性が高く、簡便に検出することができる情報媒体を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
本実施形態は、外部から熱や応力のエネルギーを与えることにより蛍光パターン形成物に蛍光強度の分布を生じさせるものである。本実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図を図1(a)、(b)に示す。
【0036】
図1(a)に示すように、基体としての紙やPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルミ箔、ガラス等からなる基板1の上に、第1の層として透明樹脂中に金属イオン(金属錯体を含む。)を含む金属イオン含有樹脂層2が形成されている。この金属イオン含有樹脂層2には、金属イオンとして3価のEuイオンが含まれるが、このEuイオンは、下記式(1)のようにアセチルアセトナト誘導体(β−ジケトン誘導体)がEuイオンに配位したEu錯体の形で含まれている。
【化1】

【0037】
(式中、Lnは希土類元素(Eu。その他、後述するようにTbやErでも良い。)、R及びRは、直鎖または分枝構造を有するアルキル基又はアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ヘテロ環基、及びこれらの置換体からなる群から選ばれた同一又は異なるものであり(例えば、n−C基やt−C基等のアルキル基等。)、Rは、ハロゲン原子、重水素原子、炭素数が1〜22の直鎖又は分枝構造を有する脂肪族基である。)
金属イオン含有樹脂層2に用いられる透明樹脂は可視光に対して実質的に透明であり、例えばフッ素系透明ポリマー等を用いることができる。例えば、透明樹脂としてセフラル(セントラル硝子社製)を用いた場合、金属イオン含有樹脂層2における上記Eu錯体の割合は、20重量%とすることができる。
【0038】
金属イオン含有樹脂層2の上には、第2の層として、下記式(2)に示す配位子(ホスフィンオキシド化合物の一つ)を透明樹脂中に含む配位子含有樹脂層3が所定のパターン形状で形成されている。この配位子含有樹脂層3の配位子は、金属イオン含有樹脂層2に含まれる上記式(1)のEu錯体におけるEuイオンに配位することにより、下記式(3)に示すEu錯体(蛍光性化合物)が形成され、Euイオンに基づく蛍光強度が増加する。特に、一つの希土類原子に、下記式(2)に示す中で構造が異なる複数種類(特に2種類)のリン化合物が配位すると、配位子場がより非対称となり、分子吸光係数の向上に基づき、発光強度が顕著に増加する。
【化2】

【0039】
(式中、X及びYはO、S、及びSeからなる群から選ばれた同一又は異なる原子(特にO。)であり、R〜Rは、同一又は異なる、炭素数が20以下の直鎖または分枝構造を有するアルキル基又はアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ヘテロ環基、及びこれらの置換体からなる群から選ばれる。R〜Rの組み合わせと、R〜Rの組み合わせは同一であっても良いが、異なる方が発光強度の点で好ましい(例えば、R〜Rのそれぞれはn−Oc(オクチル)基、R〜Rのそれぞれはフェニル基等。)。)
【化3】

【0040】
配位子含有樹脂層3に用いられる透明樹脂も可視光に対して実質的に透明であり、例えばフッ素系透明ポリマー等を用いることができる。例えば、透明樹脂としてセフラル(セントラル硝子社製)を用いた場合、配位子含有樹脂層3における上記配位子の割合は、20重量%とすることができる。なお、金属イオン含有樹脂層2及び配位子含有樹脂層3を覆うように、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス等からなる保護膜4が設けられている。この保護膜4も可視光に対しては実質的に透明である。
【0041】
次に、図1(a)に示される蛍光パターン形成物に蛍光パターンを形成して情報の記録等を行う方法について説明する。本実施形態の蛍光パターン形成物に対しては、外部から熱や応力のエネルギーを与えることにより当該蛍光パターン形成物に蛍光強度の分布を生じさせる。即ち、加熱や押圧等により金属イオン含有樹脂層2の金属イオンに配位子含有樹脂層3の配位子を配位させて蛍光強度の大きな錯体を形成し、蛍光強度の増加により情報の記録を行うものである。
【0042】
より具体的には、以下の通りである。まず、図1(a)の蛍光パターン形成物を支持台に載置し、この蛍光パターン形成物の保護膜4の表面に加熱板を押し当てる。加熱板の構成は図5に示す通りである。図5(a)は接触面が平面である加熱板の構成を示す断面図であり、図5(b)は接触面が凹凸形状の加熱板の構成を示す断面図である。図5(a)に示すように、接触面が平面となっている加熱板51の内部にはヒーター52が埋め込まれ、このヒーター52は電源53に接続されて電圧印加により加熱する構造となっている。また、図5(b)では加熱板54の接触面に凹凸形状が施されている。図5(a)の加熱板51を用いる場合は、保護膜4の表面にそのまま押し当てれば良い。図5(b)の加熱板を用いる場合は、加熱板54の接触面の凸部のパターン形状を配位子含有樹脂層3のパターン形状(そのすべて若しくは一部のパターン)に対応した形状とすることが望ましく、加熱板54の当該凸部が配位子含有樹脂層3のパターン部分に対応するように位置合わせを行い、保護膜4の表面に押し当てれば良い。なお、蛍光パターン形成物の保護膜4側からではなく基板1側から加熱板51、54を押し当てることも可能である。
【0043】
蛍光パターン形成物の保護膜4の表面に加熱板を押し当てるときの加熱温度は、例えば80℃〜150℃とし、押圧の圧力は、例えば1Pa〜1メガPaとすることができる。加熱及び押圧のうちいずれかを必要に応じて省略することも可能である。例えば、金属イオン含有樹脂層2と配位子含有樹脂層3の少なくとも一層がゲル状物質(例えば、ゼラチンやアクリルアミド化合物等)から構成される場合には加熱を省略することができ、ガラス転移点が低い樹脂を金属イオン含有樹脂層2や配位子含有樹脂層3に用いる場合には押圧を省略することができる。
【0044】
以上のように加熱や押圧を行うことにより、配位子含有樹脂層3に含まれる上記式(2)の配位子が拡散するとともに、金属イオン含有樹脂層2に含まれる上記式(1)のEu錯体も拡散して両者は互いに接近する。その結果、当該配位子は当該Eu錯体におけるEuイオンに配位して、上記式(3)のEu錯体が金属イオン含有樹脂層2と配位子含有樹脂層3との界面若しくはその隣接領域に形成される。この隣接領域は金属イオン含有樹脂層2や配位子含有樹脂層3の全膜厚範囲にわたっている場合もあり、例えば界面から100μmの距離の領域となる場合もある。また、上記式(2)の配位子の拡散速度が上記式(1)の錯体の拡散速度よりも速い場合には、上記式(3)のEu錯体は金属イオン含有樹脂層2側に偏って形成され、拡散速度の関係が逆の場合には、上記式(3)のEu錯体は配位子含有樹脂層3側に偏って形成される。上記式(3)のEu錯体は蛍光強度が大きく、蛍光強度の増加により情報の記録を行うことができる。
【0045】
本実施形態の蛍光パターン形成物に記録された情報を読み取るには以下の方法を用いる。まず、蛍光パターン形成物は可視光に対しては実質的に透明であり、このままでは蛍光パターン形成物を読み取ることはできない。そこで、蛍光パターン形成物に対して波長が250nm〜410nmの紫外線を照射することにより、式(3)のEu錯体が形成された部分(パターン)から発せられる蛍光を読み取る。読み取りは目視で行っても良いし、必要に応じて蛍光を読み取る機器、例えばフォトダイオードを用いて行っても良い。
【0046】
本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、配位子含有樹脂層3を形成した部分の蛍光強度が、形成していない部分の蛍光強度と比べて一桁以上強いことが認められた。即ち、可視光に対しては透明で紫外線照射により蛍光発光するコントラスト比の高い印刷を行えることが分かった。したがって、蛍光のコントラスト比を高めるために蛍光体濃度やインク量を調整する必要はなく、インク調整の困難さを回避したり印刷面の形状変化によるセキュリティー性の劣化を抑制したりすることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、以下の効果を得ることもできる。まず、金属イオン含有樹脂層2を形成した後に配位子含有樹脂層3を印刷形成することにより、必要に応じて情報を追記することができる。また、読み取りを目視でも行うことができ、複雑な検出機器を用いなくても読み取りを行うことも可能である。
【0048】
さらにまた、金属イオン含有樹脂層12に含まれる金属イオン(金属錯体を含む。)の配位子含有樹脂層13中における拡散係数と配位子含有樹脂層13に含まれる配位子の金属イオン含有樹脂層12中における拡散係数とを比べたとき、前者が後者よりも大きい場合に、当該金属イオンの過剰拡散により蛍光性化合物のパターン(記録情報)の輪郭がにじむことを抑制し、高精度な記録パターンを形成することが可能である。
【0049】
次に、図1(a)に示される蛍光パターン形成物を作製する方法について説明する。まず、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス等からなる基板1の上に金属イオン含有樹脂層2を形成する。金属イオン含有樹脂層2を形成するためには、溶媒をキシレンとしてEu錯体5重量%、セフラル(セントラル硝子社製)25重量%をこの溶媒に溶かして蛍光体インクを調整し、この蛍光体インクを基板1上に塗布し乾燥させる。乾燥のために、例えば130℃の加熱を用いてもよい。塗布する蛍光体インクの厚みは、乾燥後の金属イオン含有樹脂層2の厚みが1μm〜100μmとなるように、適宜調整する。
【0050】
次に、金属イオン含有樹脂層2上に配位子含有樹脂層3を所定のパターン形状で形成する。配位子含有樹脂層3を所定のパターン形状とするためには、例えば金属イオン含有樹脂層2の表面にネガ型のパターン形状を有するテフロン(登録商標)や金属等からなるマスクパターンを設け、このマスクパターンの開口部分に配位子含有樹脂層3の原料溶液を塗布し乾燥させる。原料溶液が乾燥してできた膜がマスクパターンの上にも残存する場合があるが、当該マスクパターンを除去するときに当該残存膜も一緒に除去することができる。
【0051】
配位子含有樹脂層3の原料溶液としては、例えば溶媒をキシレンとして上記ホスフィンオキシド配位子5重量%、セフラル(セントラル硝子社製)25重量%をこの溶媒に溶かして配位子インクを調整し、この配位子インクを上記の如く塗布し乾燥させる。乾燥のために、例えば130℃の加熱を用いてもよい。塗布する蛍光体インクの厚みは、乾燥後の配位子含有樹脂層3の厚みが1μm〜100μmとなるように、適宜調整する。なお、配位子含有樹脂層3のパターン形状としては、例えば幅が100μm〜1mmの間で変化し間隔が100μm〜1mmの間で変化する複数のストライプ状パターンを採用することができるが、勿論これに限られることはない。
【0052】
なお、配位子含有樹脂層3を所定のパターン形状で形成する方法としてマスクパターンを用いたエッチングが挙げられる。例えば、テフロン(登録商標)や金属等からなるマスクパターンを配位子含有樹脂層3上に形成し、このマスクパターンを用いて配位子含有樹脂層3をエッチングしてパターン化する。ここではウエットエッチングやドライエッチングを採用することが可能である。
【0053】
次に、金属イオン含有樹脂層2及び配位子含有樹脂層3を覆うように、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス等からなる保護膜を形成する。この保護膜の形成方法としては、スピンコート法を用いることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、蛍光性化合物である金属錯体の中心金属イオンとしてユーロピウム(Eu)イオンを用いたが、他の希土類金属イオンを用いることもでき、例えばテルビウム(Tb)イオン、エルビウム(Er)イオン等を用いることが可能である。
【0055】
また、配位子含有樹脂層3に含まれる配位子として以下の化合物を挙げることができる。即ち、金属イオン含有樹脂層2中の希土類金属イオンに配位する配位子としては、上述したホスフィンオキシド化合物に限らず、スルホキシ化合物、カルボキシ化合物、カルボニル化合物、フェナントロリン、ビピリジン、アセチルアセトナト化合物等のルイス塩基性置換基を有する化合物が使用可能である。例えば、スルホキシ化合物としてはアルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドやジエチルスルホキシド等)を、カルボキシ化合物としてはカルボン酸(酢酸や酪酸等)、カルボニル化合物としてはアセトン等を用いることができる。また、下記式(4)に示す化合物(ジホスフィンオキシド化合物の一つ)の配位子を用いることも可能である。この場合、それぞれ下記式(5)に示す希土類金属錯体(蛍光性化合物)が形成され、希土類金属イオンに基づく蛍光強度が増加する。特に、一つの希土類原子に、下記式(4)に示す中で構造が非対称のリン化合物が配位すると、配位子場がより非対称となり、分子吸光係数の向上に基づき、発光強度が顕著に増加する。
【化4】

【0056】
(式中、X´及びY´は、O、S、及びSeからなる群から選ばれた同一又は異なる原子(特にO。)であり、R´〜R´は、炭素数が20以下の直鎖または分枝構造を有するアルキル基又はアルコキシ基(例えば、フェニル基やn−C基、t−C基、n−Oc(オクチル)基等のアルキル基等。)、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ヘテロ環基、及びこれらの置換体からなる群から選ばれ、R´〜R´は同一又は異なるが、すべて同一でない(構造が非対称である)方が発光強度の点で好ましい。nは2以上、20以下の整数(例えば、3。)であり、m及びpは1以上、5以下の整数であり、Z及びWは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、及びアルキル基からなる群から選ばれた同一又は異なるものである。)
【化5】

【0057】
また、金属イオン含有樹脂層2及び配位子含有樹脂層3における透明樹脂としてフッ素系透明ポリマーを一般的に用いるが、セフラル(セントラル硝子社製)以外のフッ素系透明ポリマーとして、テフロン(登録商標)AF(DuPont社製)、ルミフロン(旭硝子社製)、フッ素系アクリル樹脂等を用いることも可能である。さらに、フッ素系透明ポリマーに限定されることなく、他の透明樹脂を使用可能であり、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、シクロオレフィン等が用いることもできる。
【0058】
これらの希土類金属イオン、配位子、透明樹脂の選択は適宜組み合わせて行えばよく、この点は後述する実施形態においても同様である。
【0059】
本実施形態において、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層の積層順序を逆にした構造も可能である。図1(b)はその構造を示す断面図であり、基板1の上に配位子含有樹脂層13が形成され、配位子含有樹脂層13の上に金属イオン含有樹脂層12が所定のパターン形状で形成され、さらに配位子含有樹脂層13及び金属イオン含有樹脂層12を覆うように保護膜4が形成されている。この構造も上述した方法を用いることにより作製することができ、図1(a)の構造と同様の効果を得ることができる。また、その他、金属イオン含有樹脂層12に含まれる金属イオン(金属錯体を含む。)の配位子含有樹脂層13中における拡散係数と配位子含有樹脂層13に含まれる配位子の金属イオン含有樹脂層12中における拡散係数とを比べたとき、後者が前者よりも大きい場合に、当該配位子の過剰拡散により蛍光性化合物のパターン(記録情報)の輪郭がにじむことを抑制し、高精度な記録パターンを形成することが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
本実施形態は、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層との間に分離層(セパレータ層)を設けるものである。図2(a)、(b)は、本実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図である。図1における部分に対応する部分には同一符号を付して示す。
【0061】
図2(a)に示すように、金属イオン含有樹脂層2と配位子含有樹脂層3との間に両者を分離する分離層(セパレータ層)21が設けられている。この分離層21は金属イオン含有樹脂層2と配位子含有樹脂層3との間及び金属イオン含有樹脂層2と保護膜4との間に設けられている。分離層21は、配位子含有樹脂層3中の配位子が金属イオン含有樹脂層2中に拡散することを防止する役割を果たすか、又は金属イオン含有樹脂層2中の金属イオン(金属錯体を含む。)が配位子含有樹脂層3中に拡散することを防止する役割を果たす。勿論、両方の役割を兼ね備えることも可能である。分離層21の材料としては、第1の実施形態における式(1)のEu錯体及び式(2)の配位子を用いる場合には、例えばシリコーンオイル、セフラル(セントラル硝子社製)、ゲル状物質(例えば、ゼラチンやアクリルアミド化合物等)等を用いることができる。分離層21は塗布や熱圧着等により形成することが可能である。上記した分離層21の材料は、第1の実施形態に示した種々の金属イオン(金属錯体を含む。)と配位子との組み合わせに対しても適用可能である。
【0062】
本実施形態の蛍光パターン形成物に蛍光パターンを形成して情報の記録等を行う方法においても、第1の実施形態と同様に蛍光パターン形成物に対して外部から熱や応力のエネルギーを与えることにより、当該蛍光パターン形成物に蛍光強度の分布を生じさせる。即ち、加熱や押圧等により金属イオン含有樹脂層2の金属イオン(金属錯体イオンも含む。)に配位子含有樹脂層3の配位子を配位させて蛍光強度の大きな錯体を形成し、蛍光強度の増加により情報の記録を行う。この場合、金属イオン含有樹脂層2の金属イオンや配位子含有樹脂層3の配位子がともに分離層21中に拡散し、主にこの分離層21中で当該金属イオンに当該配位子が配位する。なお、上記式(2)の配位子の拡散速度が上記式(1)の錯体の拡散速度よりも速い場合には、上記式(3)のEu錯体は金属イオン含有樹脂層2側に偏って形成され、拡散速度の関係が逆の場合には、上記式(3)のEu錯体は配位子含有樹脂層3側に偏って形成される。上記式(3)のEu錯体は蛍光強度が大きく、蛍光強度の増加により情報の記録を行うことができる。
【0063】
本実施形態において、蛍光パターン形成物の保護膜4の表面に加熱板を押し当てるときの加熱温度は、例えば80℃〜150℃とし、押圧の圧力は、例えば1Pa〜1メガPaとすることができる。第1の実施形態と同様に加熱及び押圧のうちいずれかを必要に応じて省略することも可能である。
【0064】
本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、分離層21が金属イオン含有樹脂層2中の金属イオン(金属錯体を含む。)や配位子含有樹脂層3中の配位子の拡散を防止することができる。第1の実施形態では外部温度等の外部環境が変わることにより配位子が金属イオンに容易に拡散、配位して、当初記録されていた情報が容易に変わったり消えたりする場合もあるが、本実施形態によれば、上述したごとく金属イオンや配位子の拡散を防止することができるので、記録されていた情報の変化や消失を防止したり、変化や消失の時間を制御することが可能である。
【0065】
本実施形態において、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層の積層順序を逆にした構造も可能である。図2(b)はその構造を示す断面図であり、基板1の上に配位子含有樹脂層13が形成され、配位子含有樹脂層13の上に分離層21を介して金属イオン含有樹脂層12が所定のパターン形状で形成され、さらに分離層21及び金属イオン含有樹脂層12を覆うように保護膜4が形成されている。この構造も上述した方法を用いることにより作製することができ、図2(a)や図1(b)の構造と同様の効果を得ることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
本実施形態は、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層との間の分離層を金属イオン含有樹脂層や配位子含有樹脂層のパターン形状に合わせてパターニングしたものである。図3(a)、(b)は、本実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図である。図1における部分に対応する部分には同一符号を付して示す。
【0067】
図3(a)に示すように、金属イオン含有樹脂層2と配位子含有樹脂層3との間に両者を分離する分離層(セパレータ層)31が設けられている。この分離層31は配位子含有樹脂層3の設けられる位置に対応して選択的に形成されている。分離層31を選択的に形成する方法としては、例えば金属イオン含有樹脂層2を形成した後、金属イオン含有樹脂層2上に所定のパターン形状のマスクパターンを設け、その上に分離層31となる膜、配位子含有樹脂層3を順に積層し、第1の実施形態のように当該マスクパターンを除去する方法を採用することができる。その他、例えば金属イオン含有樹脂層2、分離層31となる膜、配位子含有樹脂層3を順に積層した後、配位子含有樹脂層3上に所定のパターン形状のマスクパターンを設け、このマスクパターンを用いて配位子含有樹脂層3及び分離層31となる膜を順にエッチングする方法も可能である。配位子含有樹脂層3のエッチングは第1の実施形態と同様であり、第2の実施形態で挙げた材料からなる分離層31のエッチングは、ウエットエッチングやドライエッチングを採用可能である。
【0068】
本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、第2の実施形態のように金属イオンや配位子の拡散を防止することができるので、記録されていた情報の変化や消失を防止したり、変化や消失の時間を制御することが可能である。また、その他、分離層31が配位子含有樹脂層3と金属イオン含有樹脂層2との間にのみ設けられているので、配位子含有樹脂層3中の配位子が分離層31を介して金属イオン含有樹脂層2中に拡散する範囲を配位子含有樹脂層3の直下の領域に限定することができ、当該配位子の過剰拡散により蛍光性化合物のパターン(記録情報)の輪郭がにじむことを抑制し、高精度な記録パターンを形成することが可能である。
【0069】
本実施形態において、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層の積層順序を逆にした構造も可能である。図3(b)はその構造を示す断面図であり、基板1の上に配位子含有樹脂層13が形成され、配位子含有樹脂層13の上に分離層31を介して金属イオン含有樹脂層12が所定のパターン形状で形成され、さらに分離層31及び金属イオン含有樹脂層12を覆うように保護膜4が形成されている。この構造も上述した方法を用いることにより作製することができ、図3(a)の構造と同様の効果を得ることができる。また、その他、分離層31が金属イオン含有樹脂層12と配位子含有樹脂層13との間にのみ設けられているので、金属イオン含有樹脂層12中の金属イオンが分離層31を介して配位子含有樹脂層13中に拡散する範囲を金属イオン含有樹脂層12の直下の領域に限定することができ、当該金属イオンの過剰拡散により蛍光性化合物のパターン(記録情報)の輪郭がにじむことを抑制し、高精度な記録パターンを形成することが可能である。
【0070】
(第4の実施形態)
本実施形態は、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層のそれぞれを連続膜で形成しパターニングを行わないものである。図4(a)、(b)は、本実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図である。
【0071】
図4(a)に示すように、第1の基体としての基板41aの上に、透明樹脂中に金属イオンを含む金属イオン含有樹脂層42が第1の層として形成されている。この金属イオン含有樹脂層42の材料及び製法は第1の実施形態における金属イオン含有樹脂層2と同様である。金属イオン含有樹脂層42の上には配位子を透明樹脂中に含む配位子含有樹脂層43が第2の層として形成されている。この金属イオン含有樹脂層43の材料及び製法も第1の実施形態における配位子含有樹脂層13と同様である。配位子含有樹脂層43の上には第2の基体としての基板41bが接着等により設けられている。基板41a、基板41bの材料は第1の実施形態の基板1の材料と同様である。ただし、基板41a、基板41bのうち少なくとも一方は可視光に対して実質的に透明である。
【0072】
次に、図4(a)に示される蛍光パターン形成物に蛍光パターンを形成して情報の記録等を行う方法について説明する。本実施形態の蛍光パターン形成物に対しても、第1の実施形態と同様に外部から熱や応力のエネルギーを与えることにより当該蛍光パターン形成物に蛍光強度の分布を生じさせる。即ち、加熱や押圧等により金属イオン含有樹脂層42の金属イオンに配位子含有樹脂層43の配位子を配位させて蛍光強度の大きな錯体を形成し、蛍光強度の増加により情報の記録を行うものである。
【0073】
より具体的には、以下の通りである。まず、図4(a)の蛍光パターン形成物を支持台に載置し、この蛍光パターン形成物の基板41a若しくは基板41bの表面に加熱板を押し当てる。両基板41a、41bの表面に加熱板を押し当てても良い。加熱板として図5(b)に示すものを用いる。加熱板54の当該凸部が基板41a又は基板41bの少なくともいずれかの表面に位置するように位置合わせを行い両者を接触させる。加熱及び押圧のうちいずれかを必要に応じて省略することが可能であり、第1の実施形態と同様の条件にて加熱或いは押圧が行われた箇所に情報の記録を行うことができる。
【0074】
本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる他、金属イオン含有樹脂層や配位子含有樹脂層を所定のパターン形状で形成する必要が無いので、製造歩留まりの向上や製造コストの低減という効果を得ることができる。その他、蛍光パターン形成物の任意の位置に情報を記録することも可能である。
【0075】
本実施形態において、金属イオン含有樹脂層42と配位子含有樹脂層43との間に両者を分離する分離層(セパレータ層)44を設ける構造も可能である。図4(b)はその構造を示す断面図であり、金属イオン含有樹脂層42と配位子含有樹脂層43との間に分離層44が形成されている。この構造も上述した実施形態の方法を用いることにより作製することができ、図4(a)の構造や、第2、第3の実施形態の構造と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第5の実施形態)
本実施形態は、蛍光パターン形成物とその片側の支持基板との間に反射膜を設け光により情報の記録を行うものである。図6(a)、(b)は、本実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図である。
【0077】
図6(a)に示すように、第1の基体としてのPET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる基板61aの上に、アルミ蒸着膜等からなる反射膜64が形成されており、この反射膜64の上には透明樹脂中に金属イオンを含む金属イオン含有樹脂層62が第1の層として形成されている。この金属イオン含有樹脂層62の材料及び製法は第4の実施形態における金属イオン含有樹脂層42と同様である。金属イオン含有樹脂層62の上には配位子を透明樹脂中に含む配位子含有樹脂層63が第2の層として形成されている。この金属イオン含有樹脂層63の材料及び製法も第4の実施形態における配位子含有樹脂層43と同様である。配位子含有樹脂層63の上には第2の基体としてのPET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる基板61bが接着等により設けられている。基板61a、基板61bのうち少なくとも一方は、可視光に対して実質的に透明であり、かつ後述する記録のための光に対しても実質的に透明である。
【0078】
次に、図6(a)に示される蛍光パターン形成物に蛍光パターンを形成して情報の記録等を行う方法について説明する。本実施形態の蛍光パターン形成物に対して基板61b側(配位子含有樹脂層63側)から光を照射することにより当該蛍光パターン形成物の光の照射部分を加熱し、この加熱により第1の実施形態と同様に当該蛍光パターン形成物に蛍光強度の分布を生じさせる。即ち、蛍光パターン形成物の照射部分は、直接照射される光及び反射膜64からの反射光を吸収することにより加熱され、この加熱により金属イオン含有樹脂層62の金属イオンに配位子含有樹脂層63の配位子を配位させて蛍光強度の大きな錯体を形成し、蛍光強度の増加により情報の記録を行うことができる。
【0079】
より具体的には、以下の通りである。まず、図6(a)の蛍光パターン形成物を支持台に載置し、所定のパターン形状を有する露光マスクを用いて当該蛍光パターン形成物の所定部分に光を照射する。第1の実施形態の図1(a)、(b)で説明した材料を用いる場合には、照射光の波長を例えば250nm〜410nmとし、照射強度を例えば100μW/cm〜10000μW/cmとすることができる。
【0080】
本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる他、光の照射により情報の記録を行うことができるので、光の照射が行われた任意の位置に情報の記録を行うことができる。特に、金属イオン含有樹脂層や配位子含有樹脂層を所定のパターン形状で形成する必要が無いので、製造歩留まりの向上や製造コストの低減という効果を得ることができる。
【0081】
本実施形態において、金属イオン含有樹脂層62側から光を照射することにより情報の記録を行うことも可能である。図6(b)はその構造を示す断面図であり、第1の基体としての基板61cの上に金属イオン含有樹脂層62、金属イオン含有樹脂層63、反射膜64が順に形成されており、反射膜64の上には第2の基体としての基板61dが接着等により設けられている。基板61c、基板61dの材料は基板61aや基板61bの材料と同様である。この構造では、基板61c側(金属イオン含有樹脂層62側)から光を照射することにより情報の記録が行われる。
【0082】
この構造も上述した実施形態の方法を用いることにより作製することができ、図6(a)の構造と同様の効果を得ることができる。また、その他、金属イオン含有樹脂層62と反射膜64とが直接接することが無いので、これらが直接接することにより生ずることがある経時劣化を防止することも可能である。
【0083】
(第6の実施形態)
本実施形態は、金属イオン含有樹脂層や配位子含有樹脂層を所定パターン形状で形成するとともに反射膜を設け、光により記録を行うものである。図7(a)、(b)は、本実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図である。
【0084】
図7(a)に示すように、第1の基体としての基板71aの上に反射膜75が形成されており、この反射膜75の上には透明樹脂中に金属イオンを含む金属イオン含有樹脂層72が第1の層として形成されている。この金属イオン含有樹脂層72の材料及び製法は第1の実施形態における金属イオン含有樹脂層2と同様である。金属イオン含有樹脂層72の上には配位子を透明樹脂中に含む配位子含有樹脂層73が第2の層として所定のパターン形状で形成されている。この配位子含有樹脂層73の材料及び製法も第1の実施形態における配位子含有樹脂層3と同様である。金属イオン含有樹脂層72及び配位子含有樹脂層73を覆うように、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる保護膜74が設けられている。この保護膜74も可視光に対しては実質的に透明であり、かつ記録のための光に対しても実質的に透明である。本実施形態の蛍光パターン形成物に対して保護膜74側(配位子含有樹脂層73側)から光を照射することにより、配位子含有樹脂層73と金属イオン含有樹脂層72との界面でかつ光の照射部分において情報の記録が行われる。
【0085】
本実施形態の蛍光パターン形成物によれば、第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。その他、配位子含有樹脂層73のパターン形状と光照射のパターン形状とを種々組み合わせることにより、両パターンの重なる領域に様々なパターン形状で蛍光性化合物パターン(記録情報)を形成することができ、記録態様の多様化を図ることが可能である。
【0086】
本実施形態において、金属イオン含有樹脂層72側から光を照射することにより情報の記録を行うことも可能である。図7(b)はその構造を示す断面図であり、第1の基体としての基板71bの上に金属イオン含有樹脂層72、金属イオン含有樹脂層73、第1の保護膜74、反射膜75が順に形成されており、反射膜75の上には第2の保護膜76が設けられている。基板71bは可視光に対しては実質的に透明であり、かつ記録のための光に対しても実質的に透明である。この構造では、基板71b側(金属イオン含有樹脂層72側)から光を照射することにより情報の記録が行われる。
【0087】
この構造も上述した実施形態の方法を用いることにより作製することができ、図7(a)や図6(b)の構造と同様の効果を得ることができる。
【0088】
(第7の実施形態)
本実施形態は、金属イオンや配位子の拡散を利用することにより蛍光強度が所定時間経過後に全面で一様化され、記録された情報が消去されるように調整を行うものである。
【0089】
上記各実施形態、例えば図1(a)に示す蛍光パターン形成物を1週間放置させたところ、蛍光パターン形成物全面が蛍光強度の増強した領域となり、予め熱等により蛍光強度が増強していた領域と、それ以外の蛍光強度の増強してない領域との判別がつかなくなった。これは、金属イオンや配位子の拡散が進んだことにより、蛍光パターン形成物全面に蛍光強度の大きな金属錯体が形成されたからと思われる。このことから、上記蛍光パターン形成物は、一定時間が経つと記録情報が自動的に消去されるセキュリティー媒体や記録媒体として活用することが可能である。
【0090】
消去されるまでの時間は、第1の実施形態で示したように金属イオン含有樹脂層2や配位子含有樹脂層3の形成に用いるポリマーマトリクスの材料選択、金属イオン(金属錯体を含む。)や配位子の材料選択やこれらの濃度、或いは第2の実施形態等の分離層の材料選択や厚みなどにより制御可能である。勿論、上記条件の選択により、経時的に情報が消去されない蛍光パターン形成物を作製することも可能である。例えば、金属イオン(金属錯体を含む。)や配位子が拡散しにくい材料を分離層の材料として用いたり、分離層の厚みを十分厚くしたりする場合に、経時的に情報が消去されない蛍光パターン形成物を作製することができる。
【0091】
また、強制的に記録情報を消去することも可能である。例えば、記録が行われた蛍光パターン形成物に対して熱処理を行うことにより金属イオンや配位子の拡散を促進させ、強制的に記録情報を消去することができる。熱処理温度は、例えば80℃〜200℃とする。
【0092】
(第8の実施形態)
本実施形態は、蛍光性の錯体を含む蛍光層と、当該錯体における金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を減少させる配位子を含む層を用いて記録を行うものである。第1の実施形態の図1を用いて説明を行う。
【0093】
図1に示すように、第1の実施形態と同様の材料からなる基板1の上に、同実施形態と同様の材料からなる透明樹脂中に金属イオンとして3価のEuイオン(金属錯体イオン)を含む金属イオン含有樹脂層2が第1の層として形成されている。この金属錯体イオンは、第1の実施形態の上記式(1)のようにアセチルアセトナト誘導体(β−ジケトン誘導体)がEuイオンに配位したEu錯体の形で含まれており蛍光性を示す。例えば、透明樹脂としてセフラル(セントラル硝子社製)を用いた場合、金属イオン含有樹脂層2における上記Eu錯体錯体の割合は、20重量%とすることができる。
【0094】
この金属イオン含有樹脂層2の上には、第2の層として、水を第1の実施形態と同様の材料からなる透明樹脂中に含む配位子含有樹脂層3が所定のパターン形状で形成されている。例えば、透明樹脂としてセフラル(セントラル硝子社製)を用いた場合、配位子含有樹脂層3における上記配位子の割合は、20重量%とすることができる。この配位子含有樹脂層3の配位子は、金属イオン含有樹脂層2に含まれる式(1)のEu錯体におけるEuイオンに配位することにより、下記式(6)に示す錯体(蛍光性の小さな錯体)が形成され、Euイオンに基づく蛍光強度が減少する。
【化6】

【0095】
なお、配位子含有樹脂層3中の配位子としては、水以外のヒドロキシ化合物を用いることができる。例えば、メタノールやエタノール、プロパノール等の低級アルコールを用いることが可能である。
【0096】
また、第1の実施形態の式(3)に示す金属錯体(蛍光性が非常に大きな錯体)を金属イオン含有樹脂層2に含ませて、この金属錯体に対して配位子含有樹脂層3の水を配位させても良い。この場合には、第1の実施形態の式(2)に示される配位子の代わりに水が上記式(3)の金属錯体の中心金属イオンに配位し、上記式(6)に示す錯体(蛍光性の小さな錯体)が形成され、Euイオンに基づく蛍光強度が減少する。この場合、式(2)に示される2つのホスフィンオキシド化合物(配位子)のうちの一つのみが水分子で置き換わっても良く、この場合においても上記式(6)の錯体ほどではないが蛍光強度は減少する。
【0097】
本実施形態の蛍光パターン形成物によっても、配位子含有樹脂層3を形成していない部分の蛍光強度が、形成した部分の蛍光強度と比べて一桁以上強いことが認められる。即ち、可視光に対しては透明で紫外線照射により蛍光発光するコントラスト比の高い印刷を行える等の効果を奏する。
【0098】
本実施形態で用いる金属イオン(錯体も含む。)としては、上記材料以外の材料を用いることも可能である。例えば、第1の実施形態で挙げた種々の金属イオン(錯体も含む。)を用いることができ、これに上記ヒドロキシ化合物や水を配位させ蛍光強度を減少させることも可能である。
【0099】
(第9の実施形態)
本実施形態は、上記各実施形態の蛍光パターン形成物をセキュリティーカードや記録媒体に搭載したものである。図8(a)、(b)は、本実施形態に係るセキュリティー媒体や記録媒体の構造を示す斜視図である。
【0100】
図8(a)に示すように、長方形の平面形状を有するセキュリティカード81の表面部分に上記各実施形態の蛍光パターン形成物82が設けられている。蛍光パターン形成物82は第1の実施形態等の方法によりセキュリティカード81の表面部分に形成可能である。このセキュリティカード81によれば、可視光に対しては透明で紫外線照射により蛍光発光するコントラスト比の高い蛍光パターン形成物82を設けることができるので、蛍光のコントラスト比を高めるために蛍光体濃度やインク量を調整する必要はなく、インク調整の困難さを回避したり印刷面の形状変化によるセキュリティー性の劣化を抑制したりすることが可能となる。
【0101】
図8(b)に示すように、円盤状の記録媒体83の円周方向には上記各実施形態の蛍光パターン形成物85a、85bが設けられている。85aは最内周の蛍光パターン形成物、85bは最外周の蛍光パターン形成物である。蛍光パターン形成物85a、85bは第1の実施形態等の方法により記録媒体83の円周方向に形成可能である。84は円盤状の記録媒体83の中心部分に設けられた保持穴である。この記録媒体83によっても、可視光に対しては透明で紫外線照射により蛍光発光するコントラスト比の高い蛍光パターン形成物85a、85bを設けることができるので、蛍光のコントラスト比を高めるために蛍光体濃度やインク量を調整する必要はない。したがって、インク調整の困難さを回避したり印刷面の形状変化によるセキュリティー性の劣化を抑制したりすることができ、記録媒体83に記録された情報のセキュリティー性を向上させることができる。
【0102】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることは無い。例えば、上記実施形態で述べた各種の蛍光体を組み合わせて、様々な色(白色も含む。)の蛍光を発する蛍光パターン形成物を作製することもできる。また、第6の実施形態において、金属イオン含有樹脂層を所定のパターン形状で形成するとともに配位子含有樹脂層をパターニングしない形態を採用することも可能である。さらにまた、上記各実施形態において、金属イオン含有樹脂層と配位子含有樹脂層とをそれぞれ同じ形状のパターンとしても良い。
【0103】
また、上記各実施形態において、金属イオン含有樹脂層に含まれる金属イオン(金属錯体の中心金属イオンも含む。)としてイリジウム、ガリウム、パラジウム、白金、ルテニウム、銅、亜鉛、又はアルミニウムのイオンを用いることも可能である。これらの金属イオンを中心金属イオンとして含む金属錯体の場合には、第1の実施形態で挙げたアセチルアセトナト誘導体(β−ジケトン誘導体)等の配位子を当該金属イオンに対して配位させることができる。この場合、配位子含有樹脂層に含まれる配位子として、第1の実施形態で挙げたホスフィンオキシド化合物、スルホキシ化合物、カルボキシ化合物、カルボニル化合物、フェナントロリン、ビピリジン、アセチルアセトナト化合物等のルイス塩基性置換基を有する化合物等を用いることが可能である。
【0104】
その他、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【図5】本発明の蛍光パターン形成物に対して外部から熱、応力を作用させるための機器の構造を示す概略断面図。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【図8】本発明の第9の実施形態に係る蛍光パターン形成物の構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0106】
1…基板
2…金属イオン含有樹脂層
3…配位子含有樹脂層
4…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを含む第1の層と、この第1の層と対向して設けられ当該第1の層の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を変化させる配位子を含む第2の層とを具備することを特徴とする蛍光パターン形成物。
【請求項2】
前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備えることを特徴とする請求項1に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項3】
金属イオンを含む第1の層と、この第1の層と対向して設けられ当該第1の層の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を増加させる配位子を含む第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に所定パターンで形成され前記金属イオンと当該金属イオンに配位した前記配位子とを有する蛍光性化合物を含む蛍光層とを具備することを特徴とする蛍光パターン形成物。
【請求項4】
前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、この分離層の中に前記蛍光性化合物が含まれ、前記分離層の少なくとも一部が前記蛍光層を兼ねることを特徴とする請求項3に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項5】
前記第1の層に含まれる金属イオンと前記第2の層に含まれる前記配位子のうち少なくとも一方は拡散可能であり、前記第1の層と前記第2の層との間でかつ前記蛍光層の前記所定パターン以外の領域に拡散することにより、前記金属イオンに基づく蛍光強度が所定時間経過後に全面で一様化されるように調整されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項6】
蛍光性の第1の錯体を含む蛍光層としての第1の層と、この第1の層と対向して設けられ当該第1の層の前記第1の錯体における金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を減少させる配位子を含む第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に所定パターンで形成され前記第1の錯体における前記金属イオンに前記配位子が配位した第2の錯体を有する層とを具備することを特徴とする蛍光パターン形成物。
【請求項7】
前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、この分離層の中に前記第1の錯体及び前記配位子が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項8】
前記第1の層に含まれる第1の錯体と前記第2の層に含まれる前記配位子のうち少なくとも一方は拡散可能であり、前記第1の層と前記第2の層との間でかつ前記第2の錯体を有する層の前記所定パターン以外の領域に拡散することにより、前記金属イオンに基づく蛍光強度が所定時間経過後に全面で一様化されるように調整されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項9】
前記第1の層と前記第2の層のうち少なくとも一方は所定のパターン形状で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項10】
前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、当該分離層は前記第1の層、前記第2の層、又はその両方の層の前記所定のパターン形状に対応したパターン形状で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項11】
所定のパターン形状で形成されている前記第1の層、前記第2の層、又はその両方の層を覆う保護膜を備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の蛍光パターン形成物。
【請求項12】
前記蛍光パターン形成物の前記第1の層側の面と前記第2の層側の面のうち少なくとも一つの面に支持基体を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項13】
前記蛍光パターン形成物の前記第1の層側の面と前記第2の層側の面のうち少なくとも一つの面に反射膜を介して支持基体を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項14】
前記蛍光パターン形成物の前記第1の層側の面と前記第2の層側の面のうち少なくとも一つの面に透明基体を備え、前記蛍光パターン形成物の前記透明基体とは反対側の面に反射膜を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項15】
前記蛍光層は、紫外線照射により蛍光を発光するとともに可視光に対しては実質的に透明である層であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項16】
前記第1の層と前記第2の層の少なくとも一方は、可視光に対して実質的に透明である層であることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項17】
前記第1の層と前記第2の層との間にこれらの層を分離する分離層を備え、当該分離層は可視光に対して実質的に透明である層であることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項18】
前記金属イオンは、希土類金属、イリジウム、ガリウム、パラジウム、白金、ルテニウム、銅、亜鉛、アルミニウムのうちから選ばれる少なくとも一種の金属イオンであることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項19】
前記金属イオンは、金属イオン錯体として前記第1の層に含まれることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項20】
前記配位子は、前記第1の層の前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を増加させるものであり、ホスフィンオキシド化合物、スルホキシ化合物、カルボキシ化合物、カルボニル化合物、フェナントロリン、ビピリジン、アセチルアセトナト化合物のうちから選ばれる少なくとも一種の配位子であることを特徴とする請求項1から5、9から19のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項21】
前記配位子は、前記第1の層の前記第1の錯体における前記金属イオンに配位することにより当該金属イオンに基づく蛍光強度を減少させるものであり、ヒドロキシ化合物、水のうちから選ばれる少なくとも一種の配位子であることを特徴とする請求項1、2、6から19のいずれかに記載の蛍光パターン形成物。
【請求項22】
請求項1から21のいずれかに記載の蛍光パターン形成物に情報を蛍光強度の分布として記録することを特徴とする記録媒体。
【請求項23】
請求項1から21のいずれかに記載の蛍光パターン形成物にセキュリティ情報を蛍光強度の分布として記録することを特徴とするセキュリティー媒体。
【請求項24】
請求項1から21のいずれかに記載の蛍光パターン形成物に対して、外部から熱、応力、及び光から選ばれる少なくとも一つのエネルギーを与えることにより、前記第1の層の前記金属イオンに前記第2の層の前記配位子を配位させ、蛍光強度の変化により情報の記録を行うことを特徴とする記録方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−348180(P2006−348180A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176427(P2005−176427)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】