説明

蛍光プローブ

式(I)(R及びRはそれぞれフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示し、該アミノ基のいずれか1つはアルキル基を1個有していてもよく;R及びRは水素原子、C1−6アルキル基、又はC1−6アルコキシ基を示し、R及びRはそれぞれ独立にC1−6アルキル基を示し、R及びRはカルボキシ置換C1−6アルキル基、アルコキシカルボニル置換C1−6アルキル基、スルホン酸置換C1−6アルキル基、又はアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基を示し、R及びR10はC1−6アルキル基、アリール基、C1−6アルコキシカルボニル基、ビニル基、チエニル基、又はピロリル基を示す)で表される化合物、及び該化合物を含む一酸化窒素測定用試薬。 広範囲なpH領域において蛍光強度変化のない蛍光性物質を与えることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は蛍光プローブに関する。より具体的には一酸化窒素を捕捉して蛍光を発する蛍光プローブに関する。
【背景技術】
最近、それ自体はほとんど蛍光性を有しない特定のフルオレセイン誘導体が、中性条件下で一酸化窒素と容易に反応して高い蛍光強度を有するトリアゾール化合物を与え、該トリアゾール誘導体が495nm程度の長波長の励起光により515nm程度の強い蛍光を発することができることが報告された(米国特許第5,874,590号明細書)。このフルオレセイン誘導体を一酸化窒素測定試薬として用いると、汎用の蛍光顕微鏡に備えられた蛍光フィルターで励起光を容易に分光することができ、個々の細胞内の蛍光を測定することにより簡便に細胞内の一酸化窒素濃度を測定できる。
また、中性条件下において一酸化窒素と効率よく反応でき、蛍光強度に優れたトリアゾール誘導体を与えるジアミノローダミン誘導体が提案されている(米国特許第6,201,134号明細書)。このジアミノローダミン誘導体は上記フルオレセイン誘導体に比べて長波長側にシフトしており、細胞の自家蛍光領域とほとんどオーバーラップしないこと、並びに酸性領域においても蛍光の減弱がないことから、生体組織や細胞に対してダメージを与えず、細胞の自家蛍光領域よりも長波長の蛍光領域で一酸化窒素を測定することができる。
一方、アルカリ金属イオン又はカチオン測定のために有用なイオン取り込み部を有するインダセン誘導体が知られている(特開平10−338695号公報及び特開平11−5796号公報)。しかしながら、このインダセン誘導体の蛍光発色団を用いて一酸化窒素測定を測定する試みについては全く報告がない。
【発明の開示】
本発明者らは、一酸化窒素を特異的かつ効率的に捕捉して蛍光を発する蛍光プローブを提供すべく鋭意研究を行った結果、インダセン誘導体の蛍光発色団を用いることにより、中性条件下において一酸化窒素と効率よく反応でき、蛍光強度に優れた蛍光性物質を与える一酸化窒素測定試薬を提供することに成功した(特願2002−80230号明細書)。
本発明者らはさらに研究を進めた結果、インダセン誘導体の蛍光発色団にカルボキシ置換アルキル基などの置換基を導入することにより、さらに水溶性に優れた一酸化窒素測定用試薬を提供できること、及び該試薬が一酸化窒素をトラップして生成する蛍光性トリアゾール誘導体の蛍光強度がpH変動によりほとんど影響を受けないことを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):

(式中、R及びRはそれぞれフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示し、該アミノ基のいずれか1つは置換基を有していてもよいアルキル基を1個有していてもよく;R及びRはそれぞれ独立に水素原子、C1−6アルキル基、又はC1−6アルコキシ基を示し、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立にカルボキシ置換C1−6アルキル基、アルコキシカルボニル置換C1−6アルキル基、スルホン酸置換C1−6アルキル基、又はアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基を示し、R及びR10はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示す)で表される化合物又はその塩を提供するものである。
この発明の好ましい態様によれば、R及びRが2−カルボキシ−1−エチル基であり、R、R、R、及びR10がメチル基である上記化合物又はその塩が提供される。また、本発明により、上記の化合物又はその塩を含む一酸化窒素測定用試薬が提供される。
別の観点からは、本発明により、下記の一般式(II):

[式中、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−(式中、R30は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す)で表される基を示すか、又はR11及びR12はフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基(置換基を有していてもよいアルキル基又はアミノ基の保護基を有していてもよい)及びニトロ基の組み合わせを示し;R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、C1−6アルキル基、又はC1−6アルコキシ基を示し、R15及びR18はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基を示し、R16及びR19はそれぞれ独立にカルボキシ置換C1−6アルキル基、アルコキシカルボニル置換C1−6アルキル基、スルホン酸置換C1−6アルキル基、又はアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基を示し、R17及びR20はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示す]で表される化合物又はその塩が提供される。この発明の好ましい態様によれば、R16及びR19が2−カルボキシ−1−エチル基であり、R15、R17、R18、及びR20がメチル基である上記化合物又はその塩が提供される。
さらに別の観点からは、一酸化窒素の測定方法であって、(a)上記の一般式(I)で示される化合物を一酸化窒素と反応させる工程;及び、(b)上記工程(a)において生成する一般式(II)の化合物[ただし、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−(式中、R30は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す)で表される基を示す]を検出する工程を含む方法が本発明により提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、化合物(7)にNOC13を添加して励起及び蛍光スペクトルの変化を測定した結果を示した図である。図中、(A)は励起スペクトル(Em:535nm)、(B)は蛍光スペクトル(Ex:520nm)を示す。蛍光強度の高い曲線から順にNOC13濃度が5.0μM、2.0μM、1.0μM、0.5μM、及び0μMの場合の結果を示す。
第2図は、化合物(7)にNOC13を添加して反応生成物をHPLCで測定した結果を示した図である。
第3図は、種々のpHにおける化合物(7)及び(8)の蛍光強度を測定した結果を示した図である。
第4図は、化合物(9)のクロロホルム溶液にNOのクロロホルム溶液を添加した時の蛍光強度の変化を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書において、特に言及しない場合にはアルキル基は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシ基)のアルキル部分についても同様である。また、ある官能基について「置換基を有していてもよい」と言う場合には、置換基の種類、個数、置換位置は特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでもよい)、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アルキルスルホネート基などを置換基として有していてもよい。また、本明細書においてアリール基という場合には、単環性又は多環性のアリール基のいずれであってもよいが、好ましくはフェニル基を用いることができる。アリール環についても同様である。
一般式(I)において、R及び/又はRがC1−6アルキル基又はC1−6アルコキシ基を示す場合には、それらの基はベンゼン環上の2−位及び6−位に結合することが好ましい。これらの基が存在すると量子収率や反応速度が向上し検出感度を高めることができる場合がある。R及びRが示すアルキル基としてはメチル基が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基が好ましい。R及びRがともに水素原子であることも好ましい。一般式(II)におけるR13及びR14についても同様である。
及びRが示すカルボキシ置換C1−6アルキル基はモノカルボキシ置換C1−6アルキル基であることが好ましい。カルボキシ置換C1−6アルキル基のC1−6アルキル部分の炭素数は1ないし4であることが好ましく、さらに好ましくは2又は3であり、特に好ましいのは炭素数2である。R及びRが2−カルボキシ−1−エチル基であることが最も好ましい。R及びRが示すアルコキシカルボニル置換C1−6アルキル基としては、上記のカルボキシ置換C1−6アルキル基のC1−6アルキルエステルを例示することができる。好ましくはエトキシカルボニル置換C1−6アルキル基などである。R及びRが示すスルホン酸置換C1−6アルキル基としては、モノスルホン酸置換C1−6アルキル基が好ましい。R及びRが示すアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基としては、モノアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基が好ましい。アルキルスルホネート置換C1−6アルキル基におけるアルキルスルホネート基としてはC1−6アルキルスルホネート(C1−6アルキル−O−SO−)が好ましい。R及びRがモノカルボキシ置換C1−6アルキル基である場合、特にR及びRが2−カルボキシ−1−エチル基である場合には、化合物の水溶性が著しく高まり、かつ一酸化窒素との反応により生じる一般式(II)で表される化合物の蛍光強度がpH変動により影響を受けないという優れた効果が得られる。
及びR10が示すアリール基としてはフェニル基が好ましい。フェニル基が置換基を有する場合、該置換基としてはスルホン酸基又はスルホネート基などが好ましく、特に好ましいのはスルホン酸基である。R及びR10が示すC1−6アルコキシカルボニル基としてはエトキシカルボニル基が好ましい。R及びR10が示すビニル基に存在する置換基としてはフェニル基、モノアミノフェニル基、又はジアミノフェニル基(例えば3,4−ジアミノフェニル基)などを挙げることができる。R及びR10が示すチエニル基又はピロリル基としては、それぞれ2−チエニル基又は2−ピロリル基が好ましい。R及びR10がアルキル基以外の基である場合には、化合物の蛍光波長が長波長側にシフトする場合がある。
一般式(I)において、R及びRが2−カルボキシ−1−エチル基であることがより好ましい。また、一般式(I)において、R、R、R、及びR10が置換基を有していてもよいC1−6アルキル基であることが好ましく、例えば、R、R、R、及びR10がいずれもメチル基である化合物は本発明の好適な態様である。一般式(II)におけるR15、R16、R17、R18、R19、及びR20についても上記のR、R、R、R、R、及びR10と同様である。
上記一般式(I)において、R及びRはそれぞれフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示す。R及びRが共に無置換のアミノ基であってもよいが、R及びRのうちのいずれかは1個のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基は1個又は2個以上の置換基を有していてもよい。アミノ基上に置換するアルキル基としては、例えば、直鎖又は分枝鎖のC1−18アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基)を挙げることができ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを用いることができる。アルキル基が置換基を有する場合の例としては、例えば、置換若しくは無置換のアリール基が置換したC1−6アルキル基(アラルキル基)などを挙げることができる。アリール置換アルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、パラメトキシベンジル基、パラエトキシカルボニルベンジル基、パラカルボキシベンジル基などを用いることができる。
上記の一般式(II)において、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−基を示す。ここで、R30は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。該アルキル基としては、直鎖又は分枝鎖のC1−18アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基)を挙げることができ、該アルキル基が置換基を有する場合の例として、例えば、置換若しくは無置換のアラルキル基を挙げることができる。該アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、パラメトキシベンジル基、パラエトキシカルボニルベンジル基、パラカルボキシベンジル基などを用いることができる。
また、R11及びR12はフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基(1個の置換基を有していてもよい)及びニトロ基の組み合わせを示すが、R11及びR12のいずれか一方はアミノ基を示し、他方はニトロ基を示す。R11及びR12のいずれか一方が示すアミノ基は無置換であってもよいが、アルキル基、例えばC1−18アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基を1個有していてもよい。該アルキル基は置換基を有していてもよく、例えば、置換若しくは無置換のアラルキル基などがアミノ基に置換していてもよい。また、該アミノ基はアミノ基の保護基、例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基などのアシル基;トリメチルシリル基などのアルキルシリル基などを有していてもよい。ベンジル基などのアラルキル基を保護基として利用してもよい。
上記一般式(I)又は一般式(II)で表される本発明の化合物は塩を形成する場合もある。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、又はメタンスルホン酸塩、クエン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はメチルアミン塩、トリエチルアミン塩などの有機アミン塩を挙げることができる。さらに、グリシンなどのアミノ酸の塩を形成する場合もある。もっとも、本発明の化合物の塩はこれらの具体例に限定されることはない。
上記一般式(I)又は一般式(II)で表される本発明の化合物は1個または2個以上の不斉炭素を有している場合がある。従って、1個または2個以上の不斉炭素に基づく光学的に純粋な形態の任意の光学異性体、光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、純粋な形態のジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物などはいずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物は水和物や溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。
上記の一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物(ただし、R11及びR12がフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基及びニトロ基の組み合わせを示す化合物)のうち、代表的化合物としてR及びRが水素原子であり、R及びRが2−カルボキシ−1−エチル基であり、R、R、R、及びR10がいずれもメチル基である化合物、並びにR13及びR14が水素原子であり、R16及びR19が2−カルボキシ−1−エチル基であり、R15、R17、R18、及びR20がいずれもメチル基である化合物の製造例が本明細書の実施例に具体的に示されている。従って、上記の一般式(II)で表される化合物が一般式(I)で表される化合物の製造中間体として有用であることが理解されよう。また、一般式(II)で示される化合物のうち、R11及びR12が互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−基を示す化合物については、上記一般式(I)で表される化合物と一酸化窒素とを反応させることにより製造可能である。この化合物は、後述のように強い蛍光性を有しており、一酸化窒素の測定に有用である。
本明細書の実施例の具体的説明を参照することにより、一般式(I)及び一般式(II)に包含される化合物を容易に製造できることが当業者には理解されよう。また、インダセン骨格については、例えば、特開平10−338695号公報及び特開平11−5796号公報のほか、New J.Chem.,25,pp.289−292,2001;Tetrahedron Letters,42,pp.6711−6713,2001;Angew.Chem.Int.Ed.,40,pp.385−387,2001;及び特願2002−80230号明細書などに合成方法が示されているので、これらの刊行物を参照することにより当業者は本発明の化合物をさらに容易に製造可能である。
本発明の一般式(I)で表される化合物は、中性条件下において一酸化窒素と効率的に反応して、収率よく一般式(II)の化合物(ただし、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−基を示す化合物)を生成する性質を有している。一般式(I)で表される化合物自体は、中性条件下において485nm程度の励起光を照射した場合にはほとんど蛍光を発しないが、上記一般式(II)の化合物は同じ条件下において極めて強い蛍光を発する性質を有している。従って、一般式(I)で表される化合物を生体組織中や細胞内に取り込ませて一酸化窒素と反応させ、蛍光性の上記一般式(II)の化合物を生成させてこの化合物の蛍光を測定することにより、生体組織中や細胞内の一酸化窒素を測定することができる。特に、本発明の一般式(I)の化合物は一酸化窒素との反応性に優れており、高感度かつ正確に一酸化窒素の測定を行なえるという優れた特徴を有している。
従って、本発明により提供される一酸化窒素の測定方法は、一般式(I)で表される化合物と一酸化窒素とを反応させて一般式(II)の化合物を生成させ、一般式(II)の化合物(ただし、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−基を示す化合物)の蛍光を測定する工程を含んでいる。本明細書において「測定」という用語は、検出、定量、定性など種々の目的の測定を含めて最も広義に解釈されるべきである。上記反応は好ましくは中性条件下に行うことができ、例えば、pH6.0〜8.0の範囲、好ましくはpH6.5〜7.8の範囲、より好ましくはpH6.8〜7.6の範囲で行うことができる。もっとも、本発明の化合物を用いた一酸化窒素の測定は中性領域ないし弱酸性領域に限定されることはなく、例えば、胃の粘膜細胞など強酸性の条件においても測定が可能である。特に、本発明の一般式(II)で表される化合物は広範囲なpHにおいて蛍光強度が変化しないという極めて優れた性質を有しており、pH変動の影響を受けずに正確な測定が可能である。
蛍光の測定は、従来公知の蛍光測定方法に準じて行うことができる(例えば、Wiersma,J.H.,Anal.Lett.,3,pp.123−132,1970;Sawicki,C.R.,Anal.Lett.,4,pp.761−775,1971;Damiani,P.and Burini,G.,Talanta,8,pp.649−652,1986;Damiani,P.and Burini,G.,Talanta,8,pp.649−652,1986;Misko,T.P.,Anal.Biochem.214,pp.11−16,1993などの刊行物を参照)。本発明の一酸化窒素測定においては、例えば、励起光として520nm程度の光を照射し、535nm程度の蛍光を測定することが好ましい。本発明の一般式(II)で表される化合物は、長波長の励起光によっても充分な蛍光強度を与えるという優れた性質があり、生体や組織、細胞などへの障害を軽減することが可能である。また、このような波長の光を用いると、汎用の蛍光顕微鏡に備えられた蛍光フィルターでも効率的に分光することができ、特殊なフィルターを用いずに高感度な測定が可能になる。
特に高感度な測定が必要な場合には、上記の一酸化窒素の測定を酸素源の存在下に行ってもよい。酸素源としては、例えば、酸素、オゾン、又はオキシド化合物などを用いることが可能である。酸素としては、一般的には溶存酸素を用いることができるが、必要に応じて、反応系内に酸素ガスを導入するか、酸素発生用試薬(例えば、過酸化水素など)を添加してもよい。オキシド化合物としてはN−O,S−O,P−Oなど容易に酸素原子が開裂されるオキシド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、PTIO(2−フェニル−4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキシル−3−オキシド:Maeda,H.,et al.,J.Leuk.Biol.,56,pp.588−592,1994;Akaike,T.,et al.,Biochemistry,32,pp.827−832,1993)またはその誘導体(PTIOのフェニル基のp−位にカルボキシル基が導入されたカルボキシPTIOなど)、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリエチルアミンオキサイドなどを用いることができる。
上記のオキシド化合物のうち、PTIO及びその誘導体(例えばカルボキシPTIOなど)は特に好ましい化合物であり、当業者に容易に入手可能な化合物である(東京化成株式会社、Organic Chemicals Catalog,32,1994などに記載されている)。なお、オキシド化合物はそれ自体を反応試薬として用いてもよいが、リポソーム等に封入したものを用いることもできる。酸素源の量は特に限定されないが、少なくとも測定すべき一酸化窒素に対して1μM以上、好ましくは10〜30μM、より好ましくは10〜20μM程度の量であることが好ましい。生体試料などの測定では、試料中に10〜20μM程度の量を添加することが好ましいが、一般的には、溶存酸素により必要量の酸素源が供給される。酸素源の量が極端に少ないと測定感度が低下する場合があり、酸素源の量が極端に多いと蛍光による発光に不都合を生じる場合がある。従って、測定すべき一酸化窒素の量を予試験若しくは公知の方法で予測して適宜の濃度範囲の酸素源を添加することが好ましい。反応は10〜25℃の温度範囲で行うことが可能である。なお、蛍光プローブを用いた一酸化窒素の測定方法に関しては長野哲雄ら、化学と教育、47、pp.665−669、1999などに詳細に記載されているので、当業者は上記刊行物を参照しつつ、本発明の化合物を用いて高感度に一酸化窒素を測定することができる。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
(1)4−アセトアミド−3−ニトロベンズアルデヒド
氷冷下、濃硫酸6mLに発煙硝酸1mLを3回に分けて加えて混酸を調製し、4−アセトアミドゼンズアルデヒド(1.91g,11.7mmol)を少量ずつ加えた。添加後、直ちに反応液を氷に注ぎ、固形物を濾取した。冷水でよく洗浄して乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;CHCl)で精製した後、水から再結晶して目的化合物を淡黄色の針状固体として得た(1.57g,y.64%)。
H−NMR(300MHz,CDCl
2.36(3H,s),8.16(1H,dd,J=8.79,1.65Hz),8.74(1H,d,J=1.65Hz),9.04(1H,d,J=8.79Hz),9.99(1H,s),10.63(1H,s)
MS(El)208(M
m.p.156℃
(2)4−アミノ−3−ニトロベンズアルデヒド
4−アセトアミド−3−ニトロベンズアルデヒド(2.08g,10mmol)をメタノール200mLに溶解した。その溶液に2N HCl水溶液50mLを加え、アルゴン気流下で80℃で8時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮してメタノールを除き、残渣を2N NaOH水溶液で塩基性にしてジクロルメタンで5回抽出した。有機相を合わせて無水NaSOで乾燥して減圧濃縮し、目的化合物を黄色固体として得た(1.62g,y.98%)。
H−NMR(300MHz,CDCl
6.91(1H,d,J=8.58Hz),7.92(1H,dd,J=8.58,2.01Hz),8.63(1H,d,J=2.01Hz),9.82(1H,s)
MS(El)166(M
(3)3−(2−メトキシカルボニルエチル)−2,4−ジメチルピロール
メチル5−(ベンジルオキシカルボニル)−2,4−ジメチル−3−ピロールプロピオネート(3.1g,9.8mmol)をアセトン100mLに溶解した。この溶液に10%Pd−Cを加えて水素ガス下で室温にて攪拌した。原料が消失したところで反応液をろ過し、母液を減圧蒸留した。残渣にトリフルオロ酢酸10mLを加え、アルゴン気流下で40℃にて10分間加熱した。反応混合物にクロロホルムを加えて水で1回洗浄し、水層をクロロホルムで2回抽出した。有機相を合わせてNaCO水溶液で1回、水で1回洗浄し、無水NaSOで乾燥して減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;CHCl)で精製して目的化合物を褐色液体として得た(1.6g,y.90%)。
H−NMR(300MHz,CDCl
2.03(3H,d,J=0.90Hz),2.18(3H,s),2.45(2H,m),2.72(2H,m),3.67(3H,s),6.38(1H,d,J=0.90Hz),7.53(1H,s)
MS(El)181(M
(4)6−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−4,4’−ビス−(2−メトキシカルボニルエチル)−3,3’,5,5’−テトラメチルピロメテン
4−アミノ−3−ニトロベンズアルデヒド(760mg,4.58mmol)と3−(2−メトキシカルボニルエチル)−2,4−ジメチルピロール(1.6g,9.16mmol)を250mLのジクロルメタンに溶解した。アルゴン気流下でこの溶液に数滴のトリフルオロ酢酸を加え、室温で一晩遮光して攪拌した。薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロルメタン,シリカゲル)で原料消失を確認してジクロロジシアノパラベンゾキノン(DDQ,1.07g,4.58mmol)のジクロルメタン溶液120mLを加えた。反応混合物を15分攪拌した後に水で1回洗い、無水MgSOで乾燥して減圧濃縮した。残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;メタノール/ジクロルメタン=1/20)で精製して目的化合物を得た(y.76%)。
H−NMR(300MHz,CDCl
1.37(6H,s),2.33(6H,s),2.36(4H,dd,J=8.43,7.14Hz),2.63(4H,dd,J=8.43,7.14Hz),3.65(6H,s),6.32(2H,s),6.92(1H,d,J=8.61Hz),7.26(1H,dd,J=8.61,2.01Hz),8.06(1H,d,J=2.01Hz)
MS(El)508(M
(5)8−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−4,4−ジフルオロ−2,6−ビス−(2−メトキシカルボニルエチル)−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン
6−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−4,4’−ビス−(2−メトキシカルボニルエチル)−3,3’,5,5’−テトラメチルピロメテン(213mg,0.42mmol)を20mLのジクロルメタンに溶解した。アルゴン気流下でジイソプロピルエチルアミン(DIEA,1mL,5.7mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。さらにボロントリフルオライド・ジエチルエーテラート(1mL,7.9mmol)を加えて40分間攪拌した。添加して少しすると蛍光が出現した。反応終了後、反応混合物を水で1回、2N NaOH水溶液で2回洗浄し、水層とNaOH層を合わせてジクロルメタンで3回抽出した。有機相を合わせて無水NaSOで乾燥して減圧濃縮し、残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;メタノール/ジクロルメタン=1/20)で精製して目的化合物を橙色固体として得た(72mg,y.31%)。
H−NMR(300MHz,CDCl
1.46(6H,s),2.37(4H,dd,J=8.25,7.32Hz),2.54(6H,s),2.65(4H,dd,J=8.25,7.32Hz),3.66(6H,s),6.32(2H,s),6.99(1H,d,J=8.40Hz),7.24(1H,dd,J=8.40,1.83Hz),8.06(1H,d,J=1.83Hz)
MS(El)556(M
(6)8−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−2,6−ビス−(2−カルボキシエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン
8−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−4,4−ジフルオロ−2,6−ビス−(2−メトキシカルボニルエチル)−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(182.5mg,0.33mmol)をメタノール100mLに溶解し、この溶液に0.2N NaOH水溶液10mLを加えて80℃で1時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮してメタノールを除き、2NのHCl水溶液で酸性にして酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせて無水NaSOで乾燥して減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;メタノール/ジクロルメタン=1/10)で精製して目的化合物を得た(87.1mg,y.50%)。
H−NMR(300MHz,CDOD)
1.44(6H,s),2.26(4H,dd,J=7.86,7.32Hz),2.40(6H,s),2.57(4H,dd,J=7.86,7.32Hz),7.07(1H,d,J=8.61Hz),7.17(1H,dd,J=8.61,2.01Hz),7.88(1H,d,J=2.01Hz)
MS(FAB)528(M
(7)8−(3,4−ジアミノフェニル)−2,6−ビス−(2−カルボキシエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(p−DAMBO−P
8−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−2,6−ビス−(2−カルボキシエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(87.1mg,0.16mmol)をメタノール100mLに溶解し、この溶液に10%Pd−Cを加えて水素ガス下で室温にて攪拌した。原料消失を確認した後、反応混合物をろ過して母液を減圧蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;HO/アセトニトリル=1/10)で精製して目的化合物を茶褐色固体として得た(31.5mg,y.38%)。
H−NMR(300MHz,CDOD)
1.51(6H,s),2.28(4H,dd,J=8.40.7.14Hz),2.47(6H,s),2.64(4H,dd,J=8.40,7.14Hz),6.46(1H,dd,J=7.86,2.01Hz),6.59(1H,d,J=2.01Hz),6.83(1H,d,J=7.86Hz)
MS(FAB)498(M
(8)8−(5−ベンゾトリアゾリル)−2,6−ビス−(2−カルボキシエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(p−DAMBO−P−T)
p−DAMBO−P(17.4mg,0.035mmol)に1NのHCl水溶液を20mL加え、この溶液を氷冷下で攪拌しながらNaNO(2.5mg,0.036mmol)の水溶液を少量ずつ加えた。添加終了後に反応液を室温に戻し、15分間攪拌した。溶液を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合わせて無水NaSOで乾燥して減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;HO/アセトニトリル=1/10)で精製して目的化合物を赤褐色固体として得た(14.6mg,y.82%)。
H−NMR(300MHz,CDOD)
1.24(6H,s),2.30(4H,dd,J=8.25,7.14Hz),2.51(6H,s),2.63(4H,dd,J=8.25,7.14Hz),7.43(1H,d,J=8.43Hz),7.89(1H,s),8.08(1H,d,J=8.43Hz)
MS(FAB)509(M
(9)8−(3,4−ジアミノフェニル)−4,4−ジフルオロ−2,6−ビス−(2−メトキシカルボニルエチル)−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(p−DAMBO−PMe
8−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−4,4−ジフルオロ−2,6−ビス−(2−メトキシカルボニルエチル)−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(131mg,0.24mmol)を50mLのジクロルメタンに溶解し,さらにメタノール100mlを加えた。この溶液に10%Pd−Cを加えて水素ガス下で室温にて一晩攪拌した。アルミナTLC(展開溶媒;ジクロルメタン)で原料消失を確認した後、反応混合物をろ過して母液を減圧濃縮し、残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロルメタン)で精製した(85mg,y.68%)。ヘキサン/クロロホルムより再結晶を行った。
H−NMR(300MHz,CDCl
1.44(6H,s),2.35(4H,dd,J=8.61,7.32Hz),2.53(6H,s),2.64(4H,dd,J=8.61,7.32Hz),3.46(2H,s),3.54(2H,s),3.66(6H,s),6.55(1H,d,J=6.39Hz),6.56(s,1H),6.79(1H,d,J=6.39Hz)
MS(ESl)549([M+Na]
例2:試験例
(a)蛍光スペクトル
化合物(7)及び化合物(8)の蛍光特性を測定した。量子収率はF−4500(日立)、それ以外のスペクトルはLS50B(Perkin Elmer)で測定した。0.2%未満のジメチルスルホキシドを共溶媒として0.1Mナトリウム−リン酸バッファー(pH7.4)に溶解して20℃で測定した。量子収率は0.1M NaOH水溶液中でのフルオレセインを0.85として算出した。結果を表1に示す。対照として一般式(I)においてR及びRが水素原子である化合物(p−DAMBO)及び一般式(II)においてR16及びR19が水素原子である化合物(p−DAMBO−T)について同様に量子収率の測定を行ったところ、それぞれ0.001及び0.40であり、本発明の化合物では大きな量子収率が得られることが分かった。また、本発明の化合物ではストークスシフトが16nmであり、対照として用いたp−DAMBO及びp−DAMBO−Tよりも大きく、フルオレセインとほぼ同程度の大きなストークスシフトが得られた(p−DAMBO及びp−DAMBO−Tのストークスシフトはともに9nmである)。

(b)一酸化窒素との反応
化合物(7)に一酸化窒素発生試薬であるNOC13を添加して励起及び蛍光スペクトルの変化を測定した。0.1Mナトリウム−リン酸バッファー(pH7.4)中で化合物(7)5μM(0.1%DMSO共溶媒)とNOC13を37℃で1時間インキュベートしてから励起及び蛍光スペクトルを測定した。測定はスリット幅をEx/Em=2.5/2.5nmとし、励起波長を520nm、蛍光波長を535nmとして行った。結果を図1に示す。NOC13の添加濃度に依存して蛍光の増加が認められた。また、0.1Mナトリウム−リン酸バッファー(pH7.4)中で化合物(7)5μM(0.1%DMSO共溶媒)とNOC13(20μM)を37℃で1時間インキュベートしてから、反応物をHPLCで分析した結果を図2に示す。HPLC条件はカラム:Inertsil ODS−34.6×250mm、溶出液:0.1%HPO水溶液/アセトニトリル=55/45(v/v)、検出:UV−vis(520nm)/蛍光(520/535nm)、流速:1mL/min、試料容量:5μLとした。化合物(7)と一酸化窒素との反応が極めて速やかに起こることが確認できた。
(c)蛍光強度のpHによる変動
化合物(7)及び(8)を種々のpHに調整した0.1Mナトリウム−リン酸バッファー(0.1%DMSO共溶媒)に溶解して、上記(b)と同様にして蛍光を測定した。結果を図3に示す。化合物(8)はpH3から13に至る極めて広範囲なpHにおいて蛍光強度がほとんど変化していないことが確認できた。従って、本発明の化合物を用いた一酸化窒素の測定では、pH変動を伴う生体試料においても極めて精度の高い測定が可能である。
(d)化合物(9)(p−DAMBO−PMe)の有機溶媒中におけるNOとの反応による蛍光の変化を測定した。1μM DAMBO−PMeクロロホルム溶液に、NOのクロロホルム溶液(クロロホルムにアルゴンガスを10分バブル後、NOガスを3分バブルして作成した)を1分に5μL添加して、10分測定した。スリット幅は、Ex/Em=5.0/0nm、励起波長520nm、蛍光波長535nmで測定した。結果を図4に示す。p−DAMBO−PMeを用いることにより、有機溶媒中でのNOの測定が可能であることが図4に示されている。これより、本発明の化合物は細胞膜透過性を有し、生体膜などの脂溶性環境でもNOを効率よく検出することが可能であることが分かる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):

(式中、R及びRはそれぞれフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示し、該アミノ基のいずれか1つは置換基を有していてもよいアルキル基を1個有していてもよく;R及びRはそれぞれ独立に水素原子、C1−6アルキル基、又はC1−6アルコキシ基を示し、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立にカルボキシ置換C1−6アルキル基、アルコキシカルボニル置換C1−6アルキル基、スルホン酸置換C1−6アルキル基、又はアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基を示し、R及びR10はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示す)で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
及びRが2−カルボキシ−1−エチル基であり、R、R、R、及びR10がメチル基である請求の範囲第1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
及びRが2−メトキシカルボニル−1−エチル基であり、R、R、R、及びR10がメチル基である請求の範囲第1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
請求の範囲第1項から第3項のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含む一酸化窒素測定用試薬。
【請求項5】
下記の一般式(II):

[式中、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−(式中、R30は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す)で表される基を示すか、又はR11及びR12はフェニル環上の隣接した位置に置換するアミノ基(置換基を有していてもよいアルキル基又はアミノ基の保護基を有していてもよい)及びニトロ基の組み合わせを示し;R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、C1−6アルキル基、又はC1−6アルコキシ基を示し、R15及びR18はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基を示し、R16及びR19はそれぞれ独立にカルボキシ置換C1−6アルキル基、アルコキシカルボニル置換C1−6アルキル基、スルホン酸置換C1−6アルキル基、又はアルキルスルホネート置換C1−6アルキル基を示し、R17及びR20はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示す]で表される化合物又はその塩。
【請求項6】
16及びR19が2−カルボキシ−1−エチル基であり、R15、R17、R18、及びR20がメチル基である請求の範囲第5項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
16及びR19が2−メトキシカルボニル−1−エチル基であり、R15、R17、R18、及びR20がメチル基である請求の範囲第5項に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
一酸化窒素の測定方法であって、(a)請求の範囲第1項に記載の一般式(I)で示される化合物を一酸化窒素と反応させる工程;及び、(b)上記工程(a)において生成する請求の範囲第5項に記載の一般式(II)の化合物[ただし、R11及びR12は互いに結合してフェニル環上の隣接した位置に環を形成する−N=N−NR30−(式中、R30は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す)で表される基を示す]を検出する工程を含む方法。

【国際公開番号】WO2004/076466
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502965(P2005−502965)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002407
【国際出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(595108044)
【出願人】(390037327)第一化学薬品株式会社 (111)
【Fターム(参考)】