説明

蛍光ランプとその製造方法

【課題】平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子を含む蛍光体層を形成できる蛍光ランプの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光ランプの製造方法は、バルブと、電極と、バルブの内部に配置された放電媒体と、バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプの製造方法であって、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する蛍光体と、増粘剤を含有する溶媒Aとを、硬練りして、蛍光体ペーストを形成する工程(I)と、蛍光体ペーストと、増粘剤及び結着剤を含有する溶媒Bとを、攪拌して、蛍光体溶液を調製する工程(II)と、蛍光体溶液を、バルブの内側面に塗布して、乾燥させて、蛍光体層を形成する工程(III)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプには、照明として用いられる直管状蛍光ランプや環状蛍光ランプ、液晶ディスプレイ等のバックライト光源として用いられる冷陰極蛍光ランプ等の種類がある。一般に、蛍光ランプは、ガラス管等のバルブの内側面に、蛍光体を含む蛍光体層が形成されている。このバルブ内には、放電媒体として、例えば水銀と希ガスとを含む可電離性のガスが充填されている。また、バルブの両端近傍には、電極が配置されている。この電極は、例えば冷陰極蛍光ランプの場合には、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属からなる板状、棒状又は筒状の構造である。
【0003】
蛍光ランプの発光の仕組みの一例は、まず、電極間に高電圧を印加すると、バルブ内の電子が陽極に引かれて高速で移動する間に希ガスと衝突して陽イオンができ、γ作用によって電子が放出される。この電子が衝突して水銀を励起させ、光を発生させる。この光が蛍光体を励起させるので、蛍光体層から可視光が放たれることとなる。すなわち、バルブの内側面に蛍光体層がむらなく形成されているか否かは、蛍光ランプの発光に大きな影響を及ぼす。
【0004】
上記バルブの内側面に蛍光体層を形成する方法としては、まず、蛍光体を溶媒に分散させた蛍光体溶液を調製し、次に、これを垂下姿勢にしたバルブの上端から流し込んだり、垂下姿勢にあるバルブの下端から吸い上げたりして、バルブの内側面に塗布した後、乾燥させて溶媒を取り除く方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特に、上記冷陰極蛍光ランプの場合には、主に蛍光体溶液を吸い上げる方法が採用されている。これは、冷陰極蛍光ランプのバルブの内径が約1〜7mmと細いために、バルブの上端からノズルにより蛍光体溶液を流し込む方法では、ノズル外周面に蛍光体が固まり、ガラス管内に挿着しにくく、生産性が悪いからである。
【0005】
具体的に、上記バルブの下端から吸い上げて蛍光体層を形成する方法を説明すると、まず、バルブを垂下姿勢にして、蛍光体溶液を真空吸引により吸い上げる。次に、大気中に開放して、余分な蛍光体溶液を排出させる。最後に、バルブの上端から乾燥エアを吹き込んで、さらに余分な蛍光体溶液を排出させるとともに、バルブの内側面に残った蛍光体溶液を乾燥させて、蛍光体層を形成する。また、蛍光体層のむらを改善する方法として、乾燥させるときの温度や、上記乾燥エアの流量を調整することが知られている。
【特許文献1】特開平4−280031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、蛍光体は、粒径が小さいほど、ファンデルワールス力によって凝集塊を形成しやすくなる。
【0007】
通常、蛍光ランプには、平均粒径4〜10μm程度の蛍光体が用いられている。しかし、蛍光体溶液に粒径の小さな蛍光体を多量に含有する場合、上述した従来の蛍光体層の形成方法では、蛍光体の凝集塊が形成されて塗布することが困難になる傾向がある。例えば、蛍光体が、平均粒径4μmのユーロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体(BaMgAlO:Eu(例えばBaMgAl1017:Eu2+等。)、以下BAM蛍光体という。)1種類である蛍光体溶液の場合には、むらなく塗布することが難しい。しかし、実際の蛍光ランプには、複数種類の蛍光体を混合して用い、BAM蛍光体のみ用いることはないので、従来の蛍光体層の形成方法によって支障をきたすことはなかった。
【0008】
ところが、近年、製造が容易で、輝度が高い蛍光体となるという理由から、平均粒径4μm未満、特に平均粒径1〜3μmの小さな蛍光体が開発されている。例えば、マンガンユーロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体(BaMgAlO:Eu,Mn、以下BAM−Mn蛍光体という。)等がこれに該当する。このような粒径の小さな蛍光体は、さらに凝集しやすいので、従来の蛍光体層の形成方法で、形成すると、表面に凹凸ができ、層の厚さにむらができる。特に、内径が1.4mm程度の細いバルブには塗布することができない。
【0009】
上述のような事情によって、粒径の小さな蛍光体を含む蛍光体層を形成する新たな方法が要請されている。
【0010】
本発明は、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体を含む蛍光体層を形成できる蛍光ランプの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記蛍光体を含む蛍光体層を形成できる蛍光体溶液と、上記蛍光体溶液で形成した蛍光体層を含む蛍光ランプとを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、バルブと、電極と、上記バルブの内部に配置された放電媒体と、上記バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプの製造方法であって、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する蛍光体と、増粘剤を含有する溶媒Aとを、硬練りして、蛍光体ペーストを形成する工程と、上記蛍光体ペーストと、増粘剤及び結着剤を含有する溶媒Bとを、攪拌して、蛍光体溶液を調製する工程と、上記蛍光体溶液を、上記バルブの内側面に塗布して、乾燥させて、蛍光体層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の蛍光ランプは、バルブと、電極と、上記バルブの内部に配置された放電媒体と、上記バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプであって、上記バルブは、内径が1.2mm以上7.0mm以下であり、上記蛍光体層は、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する蛍光体を含み、上記蛍光体は、上記蛍光体粒子Aの含有率が15重量%以上35重量%以下であり、上記バルブの内側面と上記蛍光体との接点は、230個/mm以上350個/mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蛍光ランプの製造方法によれば、バルブの内側面に、平均粒径が1μm以上3μm以下の蛍光体を含む蛍光体層が形成された蛍光ランプを製造できる。
【0015】
また、本発明の蛍光ランプによれば、上記蛍光体を発光源とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、バルブと、電極と、上記バルブの内部に配置された放電媒体と、上記バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプの製造方法であって、蛍光体と溶媒Aとを硬練りして、蛍光体ペーストを形成する工程と、上記蛍光体ペーストと溶媒Bとを攪拌して、蛍光体溶液を調製する工程と、上記蛍光体溶液を、上記バルブの内側面に塗布して、乾燥させて、蛍光体層を形成する工程とを含む。
【0017】
上記蛍光体は、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する。なお、本明細書において、平均粒径とは、FSSS(Fisher Sub Sieve Sizer)法で測定した値であり、具体的には、カラムに蛍光体粒子をつめて、空気抵抗を利用して測定したものである。
【0018】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、蛍光ランプの種類に特に限定されるものではなく、例えば、冷陰極蛍光ランプ、熱陰極蛍光ランプ、外部電極型蛍光ランプ(EEFL:External Electrodes Fluorescent Lamp)等の蛍光ランプを製造できる。
【0019】
上記蛍光体ペーストを形成する工程においては、例えば、プラネタリーミキサー等の装置を用いて、蛍光体と溶媒Aとを混ぜ合わせながら練ることによって、硬練りすればよい。硬練りすることによって、凝集塊となっている上記蛍光体粒子Aが、十分に解きほぐされる。さらに、ばらばらになった粒子と粒子の間に、上記増粘剤が入り込むので、蛍光体粒子を分散させることができる。
【0020】
なお、本明細書において、硬練りとは、蛍光体を、その蛍光体量に対して最小限度の量の溶媒で、硬く捏ねることをいい、蛍光体の表面積1m2に対して、溶媒を0.15〜0.30g、好ましくは0.20〜0.25g添加して捏ねることをいう。
【0021】
上記蛍光体溶液を調製する工程においては、上記蛍光体ペーストと溶媒Bとを均一に混ぜ合わせることができれば、その攪拌方法は特に限定されない。例えば、ディスパー等の装置を用いて、蛍光体ペーストと溶媒Bとを十分に攪拌すればよい。攪拌することによって、蛍光体ペーストを溶媒Bで希釈して、バルブに塗布しやすい粘度に調製するとともに、蛍光体を蛍光体溶液中に均一に分散させることができる。蛍光体ペーストは、蛍光体の凝集塊が解きほぐされているので、溶媒Bに効率よく分散させることができる。さらに、蛍光体ペーストの蛍光体粒子間には、増粘剤が配置されているので、蛍光体溶液中においても蛍光体が再凝集するのを防ぐことができる。
【0022】
上記蛍光体層を形成する工程においては、蛍光体溶液を用いてバルブの内側面にほぼ均一の厚さの蛍光体層を形成できれば、その塗布方法及び乾燥方法は特に限定されない。例えば、蛍光体ペーストを、垂下姿勢にしたバルブの上端から流し込んだり、下端から吸い上げたりして、バルブの内側面に塗布すればよい。また、バルブ内に乾燥エアを吹き込んだり、雰囲気温度や気圧を調節したりして、これを乾燥させればよい。
【0023】
上記蛍光体溶液には、蛍光体がほぼ均一に分散しているので、形成された蛍光体層の厚さや、その蛍光体層における蛍光体の分布もほぼ均一となる。また、上記蛍光体溶液は、蛍光体の分散性がよいので、蛍光体層における蛍光体の配列は緻密であり、バルブとの接点も多くなる。
【0024】
上記蛍光体溶液は、蛍光体の含有率が、好ましくは15重量%以上70重量%以下、より好ましくは40重量%以上65重量%以下であれば、より高輝度の蛍光ランプを製造できる。
【0025】
上記蛍光体粒子Aは、その形状が略球状であることが好ましい。略球状の蛍光体は、他の形状、例えば六角柱形状、六角板形状、平板形状等の蛍光体に比べて、蛍光体溶液の粘度を小さくできるので、蛍光体層を形成したときに、蛍光体粒子が密に配列され、むらになりにくいからである。なお、「略球状」である形状としては、蛍光体粒子の長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)が1.0以上1.3以下の範囲であることが好ましい。長径/短径が1.3超える歪な形状の蛍光体粒子となると、蛍光体粒子どうしの配列が密になるという効果が得られにくくなる。なお、必ずしも蛍光体の全粒子が、上記長径/短径の範囲に収まっていなくとも、蛍光体粒子の80%以上が上記範囲内であれば、上記効果が得られる。
【0026】
上記蛍光体は、平均粒径3μmを超え10μm以下、特に5μmを超え10μm以下である蛍光体粒子Bをさらに含有することが好ましい。粒径の比較的大きな蛍光体を含有すれば、蛍光体の凝集塊が形成し難くからである。また、蛍光体粒子Aとは発光波長の異なる蛍光体を組み合わせることによって、蛍光ランプの発光色を変えられるからである。
【0027】
上記蛍光体は、上記蛍光体粒子Aの含有率が、好ましくは15重量%以上35重量%以下である。蛍光体粒子Aの含有率がこの範囲未満であると、蛍光体粒子Aの発光特性を十分に発揮できないことがあり、この範囲を超えると、蛍光体溶液の粘度が高くなりすぎて、蛍光体層をむらなく形成できないことがあるからである。
【0028】
上記蛍光体粒子A又は上記蛍光体粒子Bの表面が、被膜でコーティングされていることが好ましく、例えばY23、La23等の酸化物からなる被膜でコーティングされていることがより好ましい。上記被膜によって、水銀が付着しにくくなるので、蛍光ランプの光束を向上させることできるからである。また、この蛍光体粒子を含有しても、蛍光体溶液の粘度が大きくなることがない。
【0029】
上記溶媒Aは、増粘剤を含有し、好ましくは増粘剤と有機溶媒とを含有する。増粘剤を含有することによって、上記硬練りしたときに、蛍光体の表面を増粘剤で被覆することができるので、蛍光体の再凝集を防ぐことができる。また、上記溶媒Aは、上記増粘剤の含有率が、好ましくは1重量%以上4重量%以下、より好ましくは2重量%以上3.5重量%以下である。上記増粘剤の含有率がこの範囲未満であると、蛍光体に増粘剤が十分被覆できないことがあり、この範囲を超えると、蛍光体溶液の粘度が高くなりすぎるからである。
【0030】
また、上記溶媒Bは、増粘剤と結着剤とを含有し、好ましくは増粘剤と結着剤と有機溶媒とを含有する。増粘剤を含有することによって、蛍光体溶液の粘性が高くなるので、蛍光体溶液をバルブに塗布するときの付着性を向上させることができる。また、結着剤を含有することによって、蛍光体層を形成したときに蛍光体粒子相互間を結合して、蛍光体層の強度を向上させることができる。上記溶媒Bは、上記増粘剤の含有率が、好ましくは0.01重量%以上4重量%以下、より好ましくは0.2重量%以上3.5重量%以下である。増粘剤の含有率がこの範囲であると、蛍光体溶液に蛍光体を均一に分散させることができるので、蛍光体層の均質性を高くすることができる。また、上記溶媒Bは、上記結着剤の含有量が、蛍光体1kgに対して、好ましくは1g以上30g以下、より好ましくは10g以上20g以下である。結着剤の含有量がこの範囲内であると、十分な結着力を発揮できるからである。
【0031】
上記増粘剤は、好ましくはニトロセルロース及びエチルセルロースから選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくはニトロセルロースである。ニトロセルロースは、粘性が高く、燃焼温度も低いからである。また、上記結着剤は、好ましくはバリウム、カルシウム及びホウ素から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物であり、より好ましくは酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、リン酸カルシウム、カルシウムを含む複酸化物、ホウ素を含む複酸化物である。蛍光体の燃焼温度である600〜700℃で溶融し、結着効果が高くなるからである。
【0032】
上記溶媒A及び溶媒Bは、好ましくは酢酸ブチル、酢酸プロピル及び酢酸エチルから選ばれる液体、より好ましくは酢酸ブチルを主成分とする。酢酸ブチルは、蒸気圧が低いので、作業上の安全性を確保し作業環境を改善できるからである。なお、本明細書において、上記主成分とするとは、溶媒A又はB全体に対して、上記液体の含有率が70重量%以上、好ましくは90重量%以上であることを意味している。
【0033】
上記バルブの内径は特に限定されないが、好ましくは内径1.2mm以上7.0以下、より好ましくは内径1.4mm以上2.0mm以下のガラス管である。本発明の製造方法をより効果的に発揮できるからである。
【0034】
また、本発明の蛍光ランプは、バルブと、電極と、上記バルブの内部に配置された放電媒体と、上記バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプであって、上記バルブは、内径が1.2mm以上7.0mm以下であり、上記蛍光体層は、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する蛍光体を含む。また、上記蛍光体は、上記蛍光体粒子Aの含有率が15重量%以上35重量%以下であり、上記バルブの内側面と上記蛍光体との接点が230個/mm以上350個/mm以下である。この蛍光ランプによれば、上記蛍光体粒子Aを発光源とすることできる。
【0035】
なお、本明細書において、バルブの内側面と蛍光体との接点の個数は、蛍光体粒子Aを含む全ての蛍光体の粒子とバルブとが接触している箇所(接点)の個数である。また、上記接点の個数は、バルブを周方向に切断した断面のSEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子顕微鏡)画像から、この切断面を周方向に1mm切り取った範囲に含まれる上記接点の個数を数えたものである。バルブの内側面に保護膜が塗布されている場合には、この保護膜と上記蛍光体の粒子とが接触している箇所を接点とすればよい。
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0037】
(実施形態1)
図1は、本発明における蛍光ランプの製造方法の一部工程の一例を示す概要図である。また、図2は、この製造方法に用いた装置の一例である混練装置を示す断面図である。
【0038】
図1に示すように、最初に、図2に示すプラネタリーミキサー20を用いて、平均粒径が1〜3μmである蛍光体粒子Aを含有する蛍光体と、増粘剤を含有する溶媒Aとを、硬練りして、蛍光体ペーストを形成する(工程(I))。次に、上記蛍光体ペーストに、増粘剤及び結着剤を含有する溶媒Bとを加えて、プラネタリーミキサー20を用いて攪拌して、蛍光体溶液23を調製する(工程(II))。
【0039】
図2に示すように、プラネタリーミキサー20は、容器21と、羽根22とを備えている。また、羽根22は、遊星運動可能な混練羽根22a、22bと、高速回転可能な小型の攪拌羽根22c、22dとを備えている。
【0040】
上記工程(I)では、蛍光体の表面積1m2に対して、溶媒Aを0.15〜0.3g添加して捏ねればよい。また、混練羽根22a、22bの回転数を、例えば自転で10〜100rpm、公転で5〜50rpmとすればよい。また、混練羽根22a、22bの回転数を、自転で80rpm、公転で40rpmとするならば、硬練りする時間を10〜30分間とすればよい。
【0041】
上記工程(I)においては、混練羽根22a、22bを遊星運動させて、蛍光体と溶媒Aとを混ぜ合わせながら練るので、蛍光体及び溶媒Aには混練羽根22a、22bによるせん断力が加わる。この力によって、始めの半固形の状態で含まれる蛍光体の凝集塊を解きほぐすことができ、上記蛍光体を1次粒子にできる。また、それと同時に、個々の1次粒子の粒子表面に増粘剤を被覆させることができる。
【0042】
また、上記工程(II)では、攪拌羽根22c、22dの回転数を、例えば1000〜2000rpmとすればよい。また、工程(II)では、上記攪拌する時間を、例えば上記回転数が2000rpmならば、10〜20分間とすればよい。
【0043】
上記工程(II)においては、攪拌羽根22c、22dを高速で自転させて、蛍光体溶液23を攪拌するので、蛍光体を溶媒中に均一に分散させることができる。このとき、上記蛍光体は増粘剤によって被覆されているので再凝集し難い。
【0044】
次に、上記蛍光体溶液23を、ガラス管の内側面に塗布して、乾燥させて、蛍光体層を形成する(工程(III))。上記工程(III)により、ガラス管の内側面に、蛍光体層がむらなく形成された発光管を得ることができる。
【0045】
上記工程(III)において、蛍光体溶液23をガラス管の内側面に塗布する方法は、ほぼ均一の厚さの蛍光体層を形成できれば、特に限定されるものではないが、蛍光体溶液23を、垂下姿勢にしたガラス管の下端から吸い上げて塗布すればよい。また、ガラス管内に乾燥エアを吹き込んだり、温度や気圧を調節したりして、これを乾燥させればよい。例えば、温度20〜30℃の乾燥エアを、供給量50〜200ml/分として、蛍光体が乾燥するまで供給すればよい。さらに、塗布された蛍光体溶液23を乾燥させた後、温度600〜700℃で5〜10分間焼成して、溶媒A及び溶媒Bを気化させればよい。
【0046】
最後に、上記発光管の両端部には1対の電極を配置して、上記発光管の内部には放電媒体を封入する。これにより、上記蛍光体層が内側面に形成されたガラス管からなる発光管と、上記ガラス管の端部にそれぞれ配置された1対の電極と、上記発光管の内部に配置された放電媒体とを備えた、本実施形態の蛍光ランプを得ることができる。
【0047】
本実施形態の蛍光ランプの製造方法によれば、平均粒径が1〜3μmの蛍光体粒子Aを含む蛍光体層を含む蛍光ランプを製造できる。特に、高色再現蛍光体として知られる粒径が小さく広範囲の色度を再現できる蛍光体を含む冷陰極蛍光ランプを製造できる。
【0048】
上記蛍光体は、上記蛍光体粒子Aを1種類又は2種類以上含有する蛍光体を用いることができる。また、平均粒径が3μmを超える蛍光体、特に平均粒径5〜10μmの蛍光体粒子Bをさらに含有する蛍光体を用いることもできる。例えば、上記蛍光体としては、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体、セリウムテルビウム付活リン酸ランタン蛍光体、ユーロピウム付活ハロリン酸ストロンチウム蛍光体、ユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、ユーロピウムマンガン付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、アンチモン付活ハロリン酸カルシウム蛍光体、ユーロピウム付活酸化イットリウムバナジウム蛍光体等の蛍光体を1種類又は2種類以上混合して使用できる。特に、赤・青・緑の各波長領域に対応した光を放つ3種類以上の蛍光体を混合して用いれば、需要の高い白色系蛍光ランプとなるので好ましい。また、上記蛍光体は、上記蛍光体粒子Aの含有率が好ましくは15〜35重量%である。蛍光体層の形成に適した蛍光体溶液の粘度と、製造する蛍光ランプの発光特性とを両立させることができるからである。さらに、上記蛍光体は、その表面が被膜でコーティングされている蛍光体を用いることもできる。上記被膜としては、例えばY23、La23、MgO、SiO等の酸化物、好ましくはY23又はLa23を使用できる。
【0049】
上記蛍光体粒子Aは、その種類によって特に限定されないが、例えばBAM−Mn蛍光体等の高色再現蛍光体用いると、従来のRGB表色系の蛍光ランプに比べて広範囲の波長を再現できるようになるのでより好ましい。
【0050】
上記蛍光体粒子Aは、その形状によって特に限定されないが、例えば、略球状、六角柱形状、六角板形状、平板形状、略円柱状、正八面体状等の形状の蛍光体を用いることができる。特に、上記蛍光体粒子Aの形状が、略球状であれば、より凝集しにくく、得られる蛍光体溶液23の粘度をより小さくできるので好ましい。
【0051】
上記溶媒Aは、増粘剤を含めば特に限定されないが、例えば、増粘剤を含む酢酸ブチル等の有機溶媒を用いることができる。また、例えば、分散剤、高沸点溶媒等をさらに含有する溶媒Aを用いることもできる。
【0052】
上記溶媒Aは、上記増粘剤の含有率が好ましくは1〜4重量%、より好ましくは1.5〜3.5重量%である。この範囲内であれば、蛍光体表面全体を増粘剤で被覆することができるし、蛍光体ペーストの粘度が高すぎず、溶媒Bで希釈しやすいからである。また、上記増粘剤の含有量は、上記蛍光体1kg当たり好ましくは3〜25g、より好ましくは5〜20gである。この範囲内であれば、形成した蛍光体層の均質性がより高くなるからである。
【0053】
上記増粘剤としては、一般的に用いられるものであれば特に限定されなが、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等から選ばれる1種類又は2種類以上の増粘剤を用いることができる。特に、上記増粘剤がニトロセルロース又はエチルセルロースであれば、燃焼性が高いので好ましい。
【0054】
上記蛍光体ペーストは、蛍光体の表面積1m2に対して、溶媒Aを0.15〜0.3g含めばよい。
【0055】
上記溶媒Bは、増粘剤と結着剤とを含めば特に限定されないが、例えば、増粘剤と結着剤とを含む酢酸ブチル等の有機溶媒を用いることができる。また、例えば、分散剤、高沸点溶媒等をさらに含有する溶媒Bを用いることもできる。このとき、溶媒Bに含まれる増粘剤と、溶媒Aに含まれる増粘剤とは、異なる種類であっても差支えないが、同じ種類であれば、上記工程(III)において、乾燥させやすいので好ましい。
【0056】
上記溶媒Bは、上記増粘剤の含有率が好ましくは0.01〜4重量%、より好ましくは0.2〜2重量%であり、上記結着剤の含有量は、上記蛍光体1kg当たり好ましくは1〜30g、より好ましくは6〜20gである。この範囲内であれば、蛍光体層を形成したときに、蛍光体粒子間の結着力がより高くなるのでからである。
【0057】
上記増粘剤としては、上記溶媒Aと同様のものを用いることができる。上記結着剤としては、一般的に用いるものであれば特に限定されないが、例えば、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物(複酸化物を含む。)、酸化ホウ素等のホウ素系化合物、リン酸カルシウム等のリン系化合物、二酸化ケイ素等から選ばれる1種類又は2種類以上の結着剤を用いることができる。上記結着剤は、蛍光体粒子相互間を結合して蛍光体層の強度を向上させるために用いられる。上記増粘剤がニトロセルロースであり、かつ、上記結着剤が酸化バリウム、酸化カルシウム及びホウ素系化合物とリン酸カルシウムとの混合セラミックであれば、結着力が大きく、増粘剤の燃焼性がよいので好ましい。上記結着剤の平均粒径は、0.01〜2μmが好ましい。この範囲内であれば、蛍光体粒子の間に均一に分散し、蛍光体粒子間を確実に結着できるからである。
【0058】
上記蛍光体溶液23は、粘度等によって特に限定されないが、ガラス管に対する上記蛍光体溶液23の塗布量が20〜50g/m2となるように調製すればよい。
【0059】
蛍光体層の厚さは、特に限定されないが、蛍光ランプの光束を維持するために、例えば10〜30μmとなるように調節することが好ましい。
【0060】
ガラス管は、蛍光ランプに一般的に用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、管の外径1.6〜32mm、管の内径が1.2〜30mm、管の長さが200〜2400mmである。特に、管の内径が2.0〜7.0mmでかつ管の長さが600〜1500mmであるガラス管や、管の内径が1.2〜1.8mmでかつ管の長さが200〜400mmであるガラス管の場合、従来の製造方法では蛍光体溶液23をむらなく塗布できなかったが、本実施形態の製造方法によると塗布できるので、より顕著な効果があるといえる。
【0061】
上記1対の電極及び上記放電媒体は、蛍光ランプに一般的に用いられるものであれば、特に限定されない。さらに、口金等の部材が形成されていても構わない。
【0062】
なお、本実施形態の蛍光ランプの製造方法は、冷陰極蛍光ランプ等の各種蛍光ランプに適用できるものである。
【0063】
(実施形態2)
図3は、本発明における蛍光ランプの一例である冷陰極蛍光ランプの概略構成を示す断面図である。
【0064】
図3に示すように、本実施形態の蛍光ランプは、蛍光体層31がガラス管32の内側面に配置された発光管37と、ガラス管32の端部にそれぞれ配置された電極33、34と、ガラス管32の内部に配置された放電媒体38とを備えた冷陰極蛍光ランプ30である。ガラス管32は、その内径が1.2〜7.0mmであり、蛍光体層31は、平均粒径が1〜3μmの蛍光体粒子Aを含有する蛍光体を含む。また、電極33(34)には、内部リード線35a(36a)及び外部リード線35b(36b)からなるリード線35(36)が封着されている。
【0065】
蛍光体層31は、上記蛍光体粒子Aを少なくとも含む蛍光体が配列したもので、この蛍光体と上記バルブの内側面との接点は、230個/mm以上350個/mm以下とすればよい。また、蛍光体層31の厚さを10〜30μmとすればよい。このとき、蛍光体層31に上記蛍光体が1次粒子の状態で分散していれば、略同等の厚さに形成できるので好ましい。蛍光体層31の厚さにむらがなければ、冷陰極蛍光ランプ32の発光を均一にできるので好ましい。
【0066】
上記蛍光体は、上記蛍光体粒子Aの含有率が15重量%以上35重量%以下とすればよい。
【0067】
ガラス管32は、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス、好ましくは硬質のホウケイ酸ガラスからなる。上記ガラスに含まれる酸化ナトリウムを析出できるように構成すれば、暗黒始動特性を改善できる。特に、酸化ナトリウムの含有率を5重量%以上とすれば、暗黒始動時間が1秒以下となるのでより好ましい。なお、ガラスの加工性を考慮した場合、酸化ナトリウムの含有率を3重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。酸化ナトリウムの含有率が20重量%を超えると、蛍光ランプとして長時間の使用したとき、ガラス管が白色化して輝度を低下させたり、ガラス管自体の強度が低下したりする等、不都合が発生するからである。そして、環境対策を考慮した場合、ナトリウム等のアルカリ金属の含有率が3重量%以上20重量%以下であり、かつ、鉛の含有率が0.1重量%以下であるガラス(いわゆる、「鉛フリーガラス」である。)が好ましく、さらに鉛の含有率が0.01重量%であるガラスがより好ましい。
【0068】
また、ガラス管32は、内側面に保護膜が塗布されたガラス管であってもよい。保護膜は、例えば金属酸化物であるY23、La23、MgO及びSiOから選ばれる少なくとも1つを含むものであればよい。また、保護膜は、保護膜の端面と蛍光体層の端面とが略一致するように、又は、蛍光体層よりも面積が広くなるように、形成されていればよい。
【0069】
電極33、34は、冷陰極蛍光ランプ30に一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、有底筒状をした、いわゆるホロー型電極を用いればよい。また、その材料としては、ニオブを用いればよい。ホロー型電極は、ランプ点灯中の放電は筒状の内面を主体として進行する。このため、棒型電極を用いた場合に比べて、ランプ内の水銀がスパッタリングにより消耗される現象を防止できる。
【0070】
リード線35、36は、冷陰極蛍光ランプ30に一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、タングステンからなる内部リード線35a、35bと、ニッケルからなる外部リード線35b、36bとからなる継線を用いればよい。
【0071】
放電媒体38は、冷陰極蛍光ランプ30に一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、発光物質である水銀や、アルゴン、ネオン等の希ガスを用いればよい。
【0072】
本実施形態の冷陰極蛍光ランプ30の製造方法は、特に限定されるものではないが、まず、蛍光体溶液を調製し、この蛍光体溶液をガラス管32の内側面に塗布し、乾燥、焼成の工程を経て蛍光体層31を形成し、最後に、レーザ溶接等によって内部リード線35a、36aが接合された電極33、34を配置して、放電媒体38を所定の封圧で封入すればよい。上記蛍光体溶液を調製して、蛍光体層31を形成する方法には、実施形態1で説明した工程(I)〜(III)をそのまま用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
まず、酢酸ブチル97重量部と、ニトロセルロース3重量部とを混合して溶媒Aを準備した。次に、上記溶媒Aと、BAM−Mn蛍光体(BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、平均粒径2μm)30重量部と、ユーロピウム付活酸化イットリウムバナジウム蛍光体(YVO4:Eu3+、平均粒径6μm)45重量部と、ユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体(BaMgAl1017:Eu2+、平均粒径4μm)20重量部を、プラネタリーミキサー(プライミクス社製)を用いて硬練りして、蛍光体ペーストを形成した。このとき、上記プラネタリーミキサーは、その混練羽根を、自転回転数80rpm、公転回転数40rpmで回転させた。
【0075】
次に、酢酸ブチル97重量部と、ニトロセルロース3重量部と、結着剤としてCaO0.7BaO1.623とCaP27とを6対4で混合した混合セラミックとを混合して、溶媒Bを準備した。上記溶媒Bと、上記蛍光体ペーストとを、上記プラネタリーミキサーを用いて攪拌して、蛍光体溶液を調製した。このとき、上記プラネタリーミキサーは、その攪拌羽根を、回転数2000rpmで回転させた。
【0076】
次に、上記蛍光体溶液を、ガラス管(内径1.4mm、外径1.8mm、長さ350mm)の内側面に塗布した。この蛍光体溶液のガラス管への塗布方法は、真空雰囲気において、垂下姿勢にしたガラス管の下端から上記蛍光体溶液を吸い上げ、大気圧雰囲気において、上記ガラス管に塗布された余分な蛍光体溶液を排出させる方法を用いた。このとき、蛍光体溶液の塗布量は、28g/m2であった。
【0077】
次に、ガラス管内に、乾燥エアを10分間供給して、塗布された蛍光体溶液を乾燥させた後、温度650℃で5分間焼成して、上記溶媒A及び上記溶媒Bを気化させて、蛍光体層を形成した。このとき、上記乾燥エアは、温度25℃で、供給量35ml/分とした。
【0078】
上記蛍光体層は、SEM(日立製作所社製“S−2380N”)画像上で測定したところ、厚さが16μmであり、上記ガラス管の内側面と上記蛍光体との接点が313個/mmであった。
【0079】
最後に、上記ガラス管の両端部には一対の電極を配置して、ガラス管内には放電媒体としてネオン(95体積%)とアルゴン(5体積%)との混合ガス(圧力8kPa)を封入して、冷陰極蛍光ランプを得た。
【0080】
本実施例の冷陰極蛍光ランプは、ランプ電流6mAで点灯させた時、輝度が33597Cd/m2であり、100時間後の輝度維持率が97.2%であった。
【0081】
(実施例2)
実施例1に記載の蛍光体粒子を被膜(Y23)でコーティングしたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例の冷陰極蛍光ランプを作製した。
【0082】
本実施例の冷陰極蛍光ランプは、蛍光体層の厚さが16μmであり、ガラス管の内側面と蛍光体との接点が320個/mmであった。また、本実施例の冷陰極蛍光ランプは、ランプ電流6mAで点灯させた時、輝度が33396Cd/m2であり、100時間後の輝度維持率が99.1%であった。これらの測定は、実施例1と同様の方法で行った。
【0083】
(比較例1)
硬練りせずに、プラネタリーミキサーに上記蛍光体と上記溶媒Aと溶媒Bとを入れて攪拌したこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例の冷陰極蛍光ランプを作製した。
【0084】
本比較例の冷陰極蛍光ランプは、蛍光体層の厚さが18μmであり、この蛍光体層の厚さにはむらができた。ガラス管の内側面と蛍光体との接点が196個/mmであった。また、本比較例の冷陰極蛍光ランプは、ランプ電流6mAで点灯させた時、輝度が31458Cd/m2であり、100時間後の輝度維持率が95.9%であった。これらの測定は、実施例1と同様の方法で行った。
【0085】
(比較例2)
硬練りせずに、プラネタリーミキサーに上記蛍光体と上記溶媒Aと溶媒Bとを入れて攪拌したこと以外は、実施例2と同様にして、本比較例の冷陰極蛍光ランプを作製した。
【0086】
本比較例の冷陰極蛍光ランプは、蛍光体層の厚さが18μmであり、この蛍光体層の厚さにはむらができた。ガラス管の内側面と蛍光体との接点が205個/mmであった。また、本比較例の冷陰極蛍光ランプは、ランプ電流6mAで点灯させた時、輝度が31412Cd/m2であり、100時間後の輝度維持率が96.0%であった。これらの測定は、実施例1と同様の方法で行った。
【0087】
以上より、実施例1、2の蛍光ランプ製造方法は、比較例1、2の蛍光ランプ製造方法よりも、蛍光体とガラス管との接点が多く、蛍光体層の厚さが薄くて均一な蛍光ランプを作製できることがわかった。また、実施例1、2の蛍光ランプは、比較例1、2の蛍光ランプに比べ、輝度及び輝度維持率が高いことがわかった。さらに、実施例1と実施例2との比較から、被膜でコーティングした蛍光体を用いた場合、塗布特性が良好で、かつ、輝度及び輝度維持率のさらに高い蛍光ランプが得られることがわかった。
【0088】
なお、実施例1及び2で用いたガラス管のかわりに、内側面にあらかじめ保護膜を塗布したガラス管を用いた場合であっても、同様の特性をもつ蛍光ランプが得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の蛍光ランプの製造方法によれば、バルブの内側面に、平均粒径が1μm以上3μm以下の蛍光体を含む蛍光体層が形成された蛍光ランプを製造できる。この製造方法によれば、管径の小さなバルブに蛍光体層を形成できるので、特に冷陰極蛍光ランプの細管化に対応可能な製造方法である。
【0090】
上記平均粒径が1μm以上3μm以下の蛍光体としては、いわゆる高色再現蛍光体等の高性能な蛍光体が数多く知られ、これらの蛍光体を用いて蛍光ランプを製造することによって、蛍光ランプの発光性能も向上させることができる。
【0091】
また、本発明の蛍光ランプによれば、平均粒径が1μm以上3μm以下の蛍光体を発光源とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の蛍光ランプの製造方法の一部工程の一例を示す概要図である。
【図2】本発明の蛍光ランプの製造に用いる混練装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の蛍光ランプの製造方法によって製造された蛍光ランプの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
20 プラネタリーミキサー
21 容器
22 羽根
22a、22b 混練羽根
22c、22d 攪拌羽根
23 蛍光体溶液
30 冷陰極蛍光ランプ
31 蛍光体層
32 ガラス管
33、34 電極
35、36 リード線
37 発光管
38 放電媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、電極と、前記バルブの内部に配置された放電媒体と、前記バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプの製造方法であって、
平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する蛍光体と、増粘剤を含有する溶媒Aとを、硬練りして、蛍光体ペーストを形成する工程と、
前記蛍光体ペーストと、増粘剤及び結着剤を含有する溶媒Bとを、攪拌して、蛍光体溶液を調製する工程と、
前記蛍光体溶液を、前記バルブの内側面に塗布して、乾燥させて、蛍光体層を形成する工程とを含むことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体溶液は、前記蛍光体の含有率が15重量%以上70重量%以下である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
前記蛍光体粒子Aの形状が、略球状である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体粒子Aの表面が、被膜でコーティングされている請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記蛍光体は、平均粒径が3μmを超え10μm以下である蛍光体粒子Bをさらに含有する請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項6】
前記蛍光体は、前記蛍光体粒子Aの含有率が15重量%以上35重量%以下である請求項5に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項7】
前記蛍光体粒子Bの表面が、被膜でコーティングされている請求項5に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項8】
前記溶媒Aは、前記増粘剤の含有率が1重量%以上4重量%以下である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項9】
前記溶媒Bは、前記増粘剤の含有率が0.01重量%以上4重量%以下である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項10】
前記溶媒Bは、前記結着剤の含有量が、蛍光体1kgに対して1g以上30g以下である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項11】
前記増粘剤は、ニトロセルロース及びエチルセルロースから選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項12】
前記結着剤は、バリウム、カルシウム及びホウ素から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項13】
前記溶媒A及び前記溶媒Bは、酢酸ブチル、酢酸プロピル及び酢酸エチルから選ばれる液体を主成分とする請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項14】
前記バルブは、内径が1.2mm以上7.0mm以下のガラス管である請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項15】
バルブと、電極と、前記バルブの内部に配置された放電媒体と、前記バルブの内側面に配置された蛍光体層とを含む蛍光ランプであって、
前記バルブは、内径が1.2mm以上7.0mm以下であり、
前記蛍光体層は、平均粒径が1μm以上3μm以下である蛍光体粒子Aを含有する蛍光体を含み、
前記蛍光体は、前記蛍光体粒子Aの含有率が15重量%以上35重量%以下であり、
前記バルブの内側面と前記蛍光体との接点が、230個/mm以上350個/mm以下であることを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−328957(P2007−328957A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157687(P2006−157687)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】