蛍光ランプ
【課題】保護膜への水銀吸着、不純ガスと電子放射物質および水銀の反応を抑制することができる蛍光ランプを提供する。
【解決手段】ガラスバルブと、金属酸化物により形成され、前記ガラスバルブの内面に形成された保護層と、前記保護層の上面に形成された蛍光体層と、前記ガラスバルブに封入された水銀と希ガスと、前記ガラスバルブの端部に設けられ、電子放射性物質が塗布された電極とを備えた蛍光ランプにおいて、前記保護層を形成する金属酸化物は、二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bとからなり、前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜20%未満である。
【解決手段】ガラスバルブと、金属酸化物により形成され、前記ガラスバルブの内面に形成された保護層と、前記保護層の上面に形成された蛍光体層と、前記ガラスバルブに封入された水銀と希ガスと、前記ガラスバルブの端部に設けられ、電子放射性物質が塗布された電極とを備えた蛍光ランプにおいて、前記保護層を形成する金属酸化物は、二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bとからなり、前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜20%未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保護膜を有する蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプ(低圧水銀蒸気放電ランプ)は一般照明用、OA機器用照明、巨大画面用の画素光源など広範囲に使用されている。蛍光ランプは内壁面に蛍光膜が設けられたガラスバルブ内に水銀と希ガスを含む混合ガスを充填し、この混合ガス中で陽光柱放電を生じるように構成したものである。
【0003】
このような蛍光ランプにおいて、従来から水銀とガラスから溶出するアルカリ金属との反応によるガラス内面及び蛍光体層の変色を妨ぐため、ガラスバルブ内壁面と蛍光膜との間に金属酸化物からなる保護膜を設けることが行われている。
【0004】
上記の変色を低減させる方法の一つとして、保護膜を厚くし、水銀とアルカリ金属との反応をより効果的に妨げることが考えられる。特に、環形蛍光ランプのように屈曲したガラスバルブを備える蛍光ランプに有効である。屈曲したガラスバルブは、曲げ加工の際に加熱されるためガラスからアルカリ金属が溶出しやすく、水銀とより反応しやすい状態になっているからである。しかし、保護膜を厚くすると蛍光体層とガラスバルブとの密着性(以下、蛍光体被着強度)が弱くなり、蛍光体がガラスバルブから剥がれ、外観が悪化する恐れがある。
【0005】
ランプ光束を低下させることなく水銀の消費を抑制できる保護膜を備えることにより、水銀封入量を減らすことのできる蛍光ランプが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、ひび割れや剥がれが生じにくい以下のような保護膜を有する蛍光ランプが提案されている。ひび割れや剥がれが生じにくい保護膜は、シリカ粒子およびシリカ粒子よりも平均粒径が径大の大粒子が混合した状態で、膜厚0.5〜3.0μmに形成されている。大粒子は、平均粒径が0.2〜0.7μmであるαアルミナ(αAl2O3)からなり、例えば平均粒径0.3μmのαアルミナ粒子が用いられている。また、シリカ(SiO2)粒子は、平均粒径が20〜100nmであり、例えば平均粒径40nmのシリカ粒子が用いられている。また、保護膜は、αアルミナからなる大粒子が10〜50容量%、シリカ粒子が90〜50容量%の割合で混合されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−049280号公報
【特許文献2】特開2009−259529号公報(0033)
【特許文献3】特開2001−283776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、保護膜が改良されることにより保護膜のひび割れや剥がれが生じにくく、水銀の消費を抑制するとともにランプ寿命を低下させることのない蛍光ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蛍光ランプは、ガラスバルブと、金属酸化物により形成された保護層であって、前記ガラスバルブの内面に形成された保護層と、前記保護層の上面に形成された蛍光体層と、前記ガラスバルブに封入された水銀と希ガスと、前記ガラスバルブの端部に設けられ、電子放射性物質が塗布された電極とを備えた蛍光ランプにおいて、前記保護層を形成する金属酸化物は、二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bとからなり、前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜20%未満であることを特徴とする。
【0009】
前記微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が250nmであり、前記超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径が50nmであり、前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の3%であることを特徴とする。
【0010】
前記保護層の厚さは、0.3〜0.8μmであることを特徴とする。
【0011】
前記保護層の厚さは、0.5μmであることを特徴とする。
【0012】
前記微粒子金属酸化物Aと前記超微粒子金属酸化物Bとは、シリカであることを特徴とする。
【0013】
前記蛍光ランプは、前記ガラスバルブが環形に屈曲された環形蛍光ランプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る蛍光ランプは、大粒子のみで形成した保護膜に比べ、より膜が緻密で薄くなり、保護膜への水銀吸着や不純ガスと電子放射性物質および水銀の反応を抑制することができる。更には、電子放射性物質の消耗量を減らすことで電子放射性物質の揮散物質と水銀の反応が減り、水銀が完全に消耗するまでの時間が長くなることで、より少ない水銀量でより長寿命のランプを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1の蛍光ランプ100を示す図。
【図2】1種類の二次粒子の平均粒子径の金属酸化物の保護膜の模式図。
【図3】実施の形態1の蛍光ランプ100の保護膜の模式図。
【図4】比較例1〜7のデータ図。
【図5】実施例1〜3のデータ図。
【図6】実施例4〜5と比較例8のデータ図。
【図7】比較例1〜7の膜厚と不点寿命との関係を示すグラフ図。
【図8】実施例1の超微粒子金属酸化物Bの混合率と不点寿命のグラフ図。
【図9】実施例2の超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径と不点寿命のグラフ図。
【図10】実施例3の膜厚と不点寿命のグラフ図。
【図11】実施例4の電子放射性物質量と不点寿命のグラフ図。
【図12】実施例5の水銀量と不点寿命のグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る蛍光ランプ100を示す一部破断図である。
図1は、ガラスバルブ20の内面に金属酸化物の保護膜50が形成され、保護膜50の上面(内面)に蛍光体層40が形成された蛍光ランプ100を示している。
【0017】
本実施の形態に係るガラスバルブ20は、保護膜50及び蛍光体層40が形成された後に屈曲されたガラスバルブ20である。ガラスバルブ20には水銀、希ガスが封入される。水銀は液状またはアマルガム粒であり、このアマルガム粒は亜鉛、錫、及び水銀を含む。本実施の形態に係る蛍光ランプ100は、環形の蛍光ランプである。
【0018】
ガラスバルブ20の端部には、電子放射性物質(電子放射物質ともいう)が塗布された電極60が設けられる。図1に示すように、環形の蛍光ランプ100は環状のガラスバルブ20を備え、ガラスバルブ20の両端部にはそれぞれ電極60が配置されているとともに、それら両端部を跨いで覆うようにして口金30が取り付けられている。また、ガラスバルブ20の内面には保護膜50、蛍光体層40が順次積層されている。電極60には、電子放射性物質が塗布されている。
【0019】
保護膜50は、例えば水または水とポリエチレンオキサイドとの混合液にシリカ等の金属酸化物を分散させて懸濁液を作製し、懸濁液をガラスバルブ20内に流し込んでガラスバルブ20内面に懸濁液を塗布し、温風エアーで懸濁液を乾燥させて形成される。
【0020】
シリカ等の金属酸化物は、一次粒子径が例えば数nm〜数十nmのものを用いても懸濁液を作製すると粒子が凝集するため、凝集粒子(二次粒子)ができる。このように、一次粒子径が小さくても、作製された懸濁液の二次粒子の平均粒子径は大きくなる。
【0021】
図2は、1種類の二次粒子の平均粒子径の金属酸化物により形成された保護膜の模式図である。
1種類の二次粒子の平均粒子径が大径の金属酸化物のみで形成した保護膜は、保護膜への水銀(Hg)吸着を抑制できない。したがって、ガラスバルブ20由来のナトリウム(Na)と水銀とが反応して、ナトリウム(Na)の水銀(Hg)アマルガムが形成される。水銀がアマルガム化することにより、ガラスバルブ20に封入されている水銀が消耗されてしまう。
【0022】
また、1種類の二次粒子の平均粒子径が大径の金属酸化物のみで形成した保護膜は、保護膜内の不純ガスの吸着が多い。ガラスバルブ20内の不純ガスが多くなるため、点灯によって電子放射性物質が消耗するまでの時間が短くなり、蛍光ランプが短寿命になる。
【0023】
また、1種類の二次粒子の平均粒子径が大径の金属酸化物のみで形成した保護膜は、不純ガスと電子放射性物質との反応、および不純ガスと水銀との反応が生じる。更には電子放射性物質が消耗するので、電子放射性物質の揮散物質と水銀の反応が増え、水銀が消耗するまでの時間が短くなり蛍光ランプが短寿命になる。
【0024】
図3は、実施の形態1の蛍光ランプ100の保護膜50の模式図である。
図3の金属酸化物は、二次粒子の平均粒子径が2種類の金属酸化物から構成されている。2種類の金属酸化物とは、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bである。
微粒子金属酸化物Aは、たとえば一次粒子の平均粒子径が40〜60nmの微粒子シリカである。
超微粒子金属酸化物Bは、たとえば一次粒子の平均粒子径が20〜30nmの超微粒子高分散シリカである。
【0025】
微粒子金属酸化物Aは、二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである。
超微粒子金属酸化物Bは、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%前後あるいは20%以下である。具体的には、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径は20〜60nm、望ましくは30〜50nmがよい。あるいは、60nm以下、望ましくは50nm以下がよく、50nmが最もよい。
【0026】
保護膜に占める超微粒子金属酸化物Bの総体積は、保護膜を形成する金属酸化物の体積(微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積の合計)の1%以上〜20%未満の割合で存在する。望ましくは3%〜10%の割合がよく、3%の割合が最もよい。
【0027】
つまり、微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積との体積比は、99:1、97:3、95:5(19:1)、90:10(9:1)、85:15(17:3)、81:19等がよい。望ましくは97:3、95:5(19:1)、90:10(9:1)がよく、97:3の体積比が最もよい。
【0028】
保護膜50の厚さは0.3〜0.8μmである。望ましくは0.3〜0.5μmがよく、0.5μmが最もよい。
【0029】
図4は、比較例1〜7のデータ図である。図7は図4の比較例1〜7の膜厚と不点寿命との関係を示すグラフ図である。以下に、図4及び図7を用いて比較例1〜7について説明する。
【0030】
図4に示すように、比較例1〜7は1種類の二次粒子の平均粒子径の金属酸化物により形成された保護膜のデータである。比較例1〜7で用いる金属酸化物を微粒子金属酸化物Aとする。比較例1の微粒子金属酸化物Aは微粒子アルミナである。比較例2〜7の微粒子金属酸化物Aは微粒子シリカである。比較例1は従来品である。
【0031】
図4の比較例1〜7は、電子放射性物質量と水銀量とを一定にして二次粒子の平均粒子径の大きさを変化させ、かつ、微粒子金属酸化物Aによる保護膜の厚さを変化させた場合の微粒子金属酸化物Aによる保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとを測定した結果である。
【0032】
図7に示すように、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさがそれぞれ、100,250,300nmである比較例4,5,6は不点寿命が10000時間以上が多く良好である。比較例4,5は不点寿命が全て10000時間以上であり良好である。比較例5は特に不点寿命が長く、比較例5が最も好ましい。
【0033】
図4では「ひび割れ」の項目において「○」はひび割れが発生しないことを示し、「×」はひび割れが発生したことを示し、「△」はひび割れてはいないがひび割れが発生しそうな状態を示す。図4に示すように微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が100nm未満(比較例2,3)では保護膜のひび割れが起きやすく、500nm以上(比較例7)では保護膜のひび割れが起きにくい。
【0034】
微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が100nm未満(比較例2,3)では蛍光体の被着強度が良好であるが、500nm以上(比較例7)では蛍光体の被着強度が弱くなる。
【0035】
図4では「不純ガス」の項目において「○」は不純ガスが増加していないことを示し、「×」は不純ガスが顕著に増加したことを示し、「△」は不純ガスがやや増加したことを示す。図4に示すように、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が300nm以上では不純ガスが増え、500nm以上では不純ガスがさらに増える。
【0036】
微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nm以上300nm以下の場合には、保護膜50の膜厚が0.5μm以上1.5μm未満の場合であれば、不純ガスが顕著に増加することはなく、ひび割れも発生せず不点寿命が長い。また、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさが250nmの場合には、保護膜50の膜厚が1.5μmであっても不純ガスが顕著に増加することはなく、ひび割れも発生せず不点寿命が長い。したがって、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nm以上300nm以下が望ましく、250nmが最適である。
【0037】
また、保護膜の膜厚が同じ場合、比較例4は比較例1に比べて、保護膜のひび割れがなく、不点寿命が2倍弱長く、保護膜への不純ガスの吸着が少ない。このことから、微粒子金属酸化物Aとして、比較例1の微粒子アルミナよりも比較例4の微粒子シリカのほうが望ましい。
【0038】
図5は、実施例1〜3のデータ図である。図6は、実施例4〜5と比較例8のデータ図である。図8は、実施例1の超微粒子金属酸化物Bの混合率と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図9は、実施例2の超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図10は、実施例3の膜厚と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図11は、実施例4の電子放射性物質量と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図12は、実施例5の水銀量と不点寿命との関係を示すグラフ図である。
【0039】
図5は、比較例5で用いた金属酸化物(二次粒子の平均粒子径が250nmの微粒子シリカ)を微粒子金属酸化物Aとし、微粒子金属酸化物Aよりも二次粒子の平均粒子径の大きさが小さい超微粒子金属酸化物Bを配合した場合のデータである。以下に、図5〜図12を用いて、実施例1〜実施例5、比較例8について説明する。
【0040】
実施例1.
図5に示すように、実施例1は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nmとし、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとし、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)を変化させた場合の金属酸化物の保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとを測定した結果である。
【0041】
図5に示すように、保護膜に占める超微粒子金属酸化物Bの総体積を保護膜を形成する金属酸化物の体積(微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積の合計)の1%以上〜20%未満とすれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。20%の場合は保護膜のひび割れが発生していることから、望ましくは保護膜に占める超微粒子金属酸化物Bの総体積を保護膜を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜15%以下とすれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られる。
【0042】
超微粒子金属酸化物Bの割合(超微粒子金属酸化物Bの総体積が、保護膜を形成する金属酸化物の体積(微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積の合計)に占める割合)が20%の場合は保護膜のひび割れが発生した。超微粒子金属酸化物Bの割合が15%の場合は保護膜のひび割れの恐れがある。したがって、超微粒子金属酸化物Bの割合が15%未満が望ましい。
【0043】
図8に示すように、不点寿命に関しては超微粒子金属酸化物Bの割合が1%以上10%以下が望ましく、2%以上5%以下がより望ましい。特に超微粒子金属酸化物Bの割合が3%の場合は不点寿命が16000時間であり、3%が最適である。超微粒子金属酸化物Bの割合が3%の場合、微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積との体積比は、97:3である。
【0044】
実施例2.
図5に示すように、実施例2は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nmとし、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)を97:3にし、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを変化させた場合の測定結果である。
【0045】
図5に示すように、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが微粒子金属酸化物Aに対して20%以下(超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが50nm以下)であれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。
【0046】
超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nmあるいは150nmの場合は不純ガスが多い。したがって、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nm未満が望ましい。
【0047】
図9に示すように、不点寿命に関しては超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが10nm以上100nm以下が望ましく、30nm以上70nm以下がより望ましい。特に超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが50nmの場合は、不点寿命が16000時間であり、50nmが最適である。
【0048】
実施例3.
図5に示すように、実施例3は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nmとし、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとし、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)を97:3にし、保護膜の膜厚を変化させた場合の測定結果である。
【0049】
図5に示すように、保護膜の膜厚が0.3〜0.8μmであれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。特に0.3〜0.5μmであれば保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。1.0μm以上の場合は保護膜のひび割れが発生した。したがって、1.0μm未満が望ましい。
【0050】
図10に示すように、不点寿命に関しては保護膜の膜厚が0.3μm以上0.7μm以下が望ましく、特に0.3μm以上0.5μm以下が望ましい。保護膜の膜厚が0.5μmの場合は不点寿命が16000時間であり、0.5μmが最適である。あるいは、0.3μm以上0.5μm未満の間が望ましく、0.4μm前後が最適である。
【0051】
実施例4.
図6に示すように、実施例4は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μm、水銀量を10.0μg/cm3とし、電子放射性物質の量を変化させた場合の測定結果である。微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)は97:3である。
【0052】
図11に示すように、電子放射性物質の量が多いほど不点寿命が増加する。電子放射性物質の量が比較例1と同じ8μg/cm3の場合、不点寿命は比較例1の1.5倍〜2.6倍強の16000時間になる。電子放射性物質の量が、比較例1の半分の4μg/cm3の場合、不点寿命は比較例1の1.53倍〜1.02倍の9200時間になる。したがって電子放射性物質の量を比較例1の半分にしても、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μmとすることにより、比較例1の不点寿命(9000時間)以上の不点寿命を提供できる。
【0053】
実施例5.
図6に示すように、実施例5は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μm、電子放射性物質の量を4μg/cm3とし、水銀の量を変化させた場合の測定結果である。微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)は97:3である。
【0054】
図12に示すように、水銀の量が5μg/cm3までは不点寿命が増加する。5μg/cm3以上では不点寿命が変わらない。水銀は有害物質であるから少ないほうがよく、5μg/cm3以下が望ましい。
【0055】
比較例8.
比較例8は、比較例1の電子放射性物質の量を4μg/cm3とし、水銀の量を5μg/cm3とした場合の測定結果である。
実施例5で水銀の量を5μg/cm3とした場合の結果と比べて、不点寿命が短くなっていることから、実施例5のように、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μmとしたことが、不点寿命の長期化に寄与していることが分かる。
【0056】
言い換えれば、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μmとした場合、電子放射性物質の量と水銀の量とを比較例1の半分にしても比較例1以上の不点寿命を提供できることになる。
【0057】
この実施の形態の蛍光ランプは、電子放射性物質の量と水銀の量とを比較例1と同じか半分以上にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命以上の不点寿命を達成できる。
【0058】
市販されている通常の蛍光ランプの電子放射性物質の量は8μg/cm3〜27μg/cm3であるが、この実施の形態の蛍光ランプは電子放射性物質の量を約半分にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命と変わらない不点寿命を達成できる。たとえば、FCL40又はFCL30の場合、電極60に塗布された電子放射性物質の量は4μg/cm3〜13.5μg/cm3でよい。FCL40の場合4μg/cm3でよい。FCL30の場合13.5μg/cm3でよい。
【0059】
市販されているFCL40又はFCL30等の環形蛍光ランプの水銀の封入量は4μg/cm3〜15μg/cm3であるが、この実施の形態の蛍光ランプは水銀の封入量を約半分にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命と変わらない不点寿命を達成できる。たとえば、FCL40又はFCL30の場合、ガラスバルブ20に封入する水銀の封入量は4μg/cm3〜7.5μg/cm3でよい。FCL40の場合4μg/cm3でよい。FCL30の場合7.5μg/cm3でよい。
【0060】
市販されているFL40又はFHT16等の直管形やコンパクト形蛍光ランプの水銀の封入量は4μg/cm3〜106μg/cm3であるが、この実施の形態の蛍光ランプは水銀の封入量を約半分にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命と変わらない不点寿命を達成できる。FL40又はFHT16の場合、ガラスバルブ20に封入する水銀の封入量は20μg/cm3〜55μg/cm3でよい。FL40の場合20μg/cm3でよい。FHT16の場合55μg/cm3でよい。
【0061】
実施例3の膜厚0.5μmの場合は不点寿命が16000時間であり、比較例3の膜厚0.5μmの場合は不点寿命が10000時間であり、不点寿命が1.6倍に増加している。すなわち、比較例3の二次粒子の平均粒子径の大きさが50nmである1種類の微粒子金属酸化物Aの場合よりも、実施例3の微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとした場合のほうが不点寿命が1.6倍に増加している。
したがって、1種類の微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとした場合よりも、二次粒子の平均粒子径の大きさが250nmと50nmとの2種類(微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物B)を混合したほうがよいことが分かる。
【0062】
以上のように、この実施の形態ではガラスバルブ内面に金属酸化物の保護膜が形成され、前記保護膜の上面に蛍光体層が形成され、前記ガラスバルブは、前記保護膜及び蛍光体層が形成された後に屈曲されたガラスバルブであり、前記ガラスバルブには水銀、希ガスが封入され、前記ガラスバルブ端部には電子放射性物質が塗布された電極が設けられた蛍光ランプを説明した。
【0063】
この実施の形態では、金属酸化物による保護膜は二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bからなり、前記保護膜に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護膜を形成する金属酸化物の体積の3%以上〜20%未満である。
【0064】
また、前記保護膜の厚さは0.3〜0.8μmである。また、前記電極に塗布された電子放射性物質の量は8μg/cm3〜27μg/cm3である。さらに、前記ガラスバルブに封入する水銀の封入量は4μg/cm3〜15μg/cm3である。あるいは、前記ガラスバルブに封入する水銀の封入量は20μg/cm3〜110μg/cm3である。
【0065】
前記水銀は液状またはアマルガム粒であり、前記アマルガム粒は水銀と鉄、亜鉛、錫の中からいずれか1種類以上を含む。また、前記金属酸化物はシリカを含有する。前記蛍光ランプはガラスバルブが環形に屈曲された環形蛍光ランプである。
【0066】
この実施の形態によれば、保護膜をより緻密にすることにより、膜厚が0.5μmの薄い保護膜でも、1.0μm以上の厚い保護膜と同等以上にアマルガム化(ガラス由来のナトリウムと水銀との反応)を抑えることができる。
【0067】
保護膜をより薄くすることにより、膜のひび割れや脱落が無くなるとともに保護膜内の不純ガスの吸着が少なくなり、管内の不純ガスが減少することで点灯によって完全に電子放射性物質が消耗するまでの時間が長くなり、少ない電子放射性物質の量でも長寿命のランプを実現できる。
【0068】
さらに、この実施の形態の保護膜は小粒子のみで形成した保護膜のようにひび割れがなく、大粒子のみで形成した保護膜のように膜厚が厚くなってガラスへの被着強度が弱くならない。そして大粒子のみで形成した保護膜に比べより膜が緻密で薄くなり、保護膜への水銀吸着が減少する。その結果、環形蛍光ランプやコンパクト形蛍光ランプのようにランプ製造時にガラス管を曲げることにより発生するガラス由来のナトリウムと水銀の反応(アマルガム化)が発生しても、点灯中に電子放射性物質が完全に消耗するまでの時間に比べ、水銀が完全に消耗するまでの時間が長くなり、より長寿命のランプを実現できる。
【0069】
この実施の形態の保護膜は、保護膜への水銀吸着や不純ガスと電子放射性物質および水銀の反応を抑制することができる。更には電子放射性物質の消耗量を減らすことで、電子放射性物質の揮散物質と水銀の反応が減り、水銀が完全に消耗するまでの時間が長くなることで、より少ない水銀量でより長寿命のランプを実現できる。
【0070】
また、金属酸化物はシリカを含有することにより、他の金属酸化物に比べ保護膜への不純ガスの吸着が少なくなり、電極に付着させる電子放射性物質の量を更に減少させることができる。
【符号の説明】
【0071】
20 ガラスバルブ、30 口金、40 蛍光体層、50 保護膜、60 電極、100 蛍光ランプ、A 微粒子金属酸化物、B 超微粒子金属酸化物。
【技術分野】
【0001】
この発明は、保護膜を有する蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプ(低圧水銀蒸気放電ランプ)は一般照明用、OA機器用照明、巨大画面用の画素光源など広範囲に使用されている。蛍光ランプは内壁面に蛍光膜が設けられたガラスバルブ内に水銀と希ガスを含む混合ガスを充填し、この混合ガス中で陽光柱放電を生じるように構成したものである。
【0003】
このような蛍光ランプにおいて、従来から水銀とガラスから溶出するアルカリ金属との反応によるガラス内面及び蛍光体層の変色を妨ぐため、ガラスバルブ内壁面と蛍光膜との間に金属酸化物からなる保護膜を設けることが行われている。
【0004】
上記の変色を低減させる方法の一つとして、保護膜を厚くし、水銀とアルカリ金属との反応をより効果的に妨げることが考えられる。特に、環形蛍光ランプのように屈曲したガラスバルブを備える蛍光ランプに有効である。屈曲したガラスバルブは、曲げ加工の際に加熱されるためガラスからアルカリ金属が溶出しやすく、水銀とより反応しやすい状態になっているからである。しかし、保護膜を厚くすると蛍光体層とガラスバルブとの密着性(以下、蛍光体被着強度)が弱くなり、蛍光体がガラスバルブから剥がれ、外観が悪化する恐れがある。
【0005】
ランプ光束を低下させることなく水銀の消費を抑制できる保護膜を備えることにより、水銀封入量を減らすことのできる蛍光ランプが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、ひび割れや剥がれが生じにくい以下のような保護膜を有する蛍光ランプが提案されている。ひび割れや剥がれが生じにくい保護膜は、シリカ粒子およびシリカ粒子よりも平均粒径が径大の大粒子が混合した状態で、膜厚0.5〜3.0μmに形成されている。大粒子は、平均粒径が0.2〜0.7μmであるαアルミナ(αAl2O3)からなり、例えば平均粒径0.3μmのαアルミナ粒子が用いられている。また、シリカ(SiO2)粒子は、平均粒径が20〜100nmであり、例えば平均粒径40nmのシリカ粒子が用いられている。また、保護膜は、αアルミナからなる大粒子が10〜50容量%、シリカ粒子が90〜50容量%の割合で混合されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−049280号公報
【特許文献2】特開2009−259529号公報(0033)
【特許文献3】特開2001−283776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、保護膜が改良されることにより保護膜のひび割れや剥がれが生じにくく、水銀の消費を抑制するとともにランプ寿命を低下させることのない蛍光ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蛍光ランプは、ガラスバルブと、金属酸化物により形成された保護層であって、前記ガラスバルブの内面に形成された保護層と、前記保護層の上面に形成された蛍光体層と、前記ガラスバルブに封入された水銀と希ガスと、前記ガラスバルブの端部に設けられ、電子放射性物質が塗布された電極とを備えた蛍光ランプにおいて、前記保護層を形成する金属酸化物は、二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bとからなり、前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜20%未満であることを特徴とする。
【0009】
前記微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が250nmであり、前記超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径が50nmであり、前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の3%であることを特徴とする。
【0010】
前記保護層の厚さは、0.3〜0.8μmであることを特徴とする。
【0011】
前記保護層の厚さは、0.5μmであることを特徴とする。
【0012】
前記微粒子金属酸化物Aと前記超微粒子金属酸化物Bとは、シリカであることを特徴とする。
【0013】
前記蛍光ランプは、前記ガラスバルブが環形に屈曲された環形蛍光ランプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る蛍光ランプは、大粒子のみで形成した保護膜に比べ、より膜が緻密で薄くなり、保護膜への水銀吸着や不純ガスと電子放射性物質および水銀の反応を抑制することができる。更には、電子放射性物質の消耗量を減らすことで電子放射性物質の揮散物質と水銀の反応が減り、水銀が完全に消耗するまでの時間が長くなることで、より少ない水銀量でより長寿命のランプを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1の蛍光ランプ100を示す図。
【図2】1種類の二次粒子の平均粒子径の金属酸化物の保護膜の模式図。
【図3】実施の形態1の蛍光ランプ100の保護膜の模式図。
【図4】比較例1〜7のデータ図。
【図5】実施例1〜3のデータ図。
【図6】実施例4〜5と比較例8のデータ図。
【図7】比較例1〜7の膜厚と不点寿命との関係を示すグラフ図。
【図8】実施例1の超微粒子金属酸化物Bの混合率と不点寿命のグラフ図。
【図9】実施例2の超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径と不点寿命のグラフ図。
【図10】実施例3の膜厚と不点寿命のグラフ図。
【図11】実施例4の電子放射性物質量と不点寿命のグラフ図。
【図12】実施例5の水銀量と不点寿命のグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る蛍光ランプ100を示す一部破断図である。
図1は、ガラスバルブ20の内面に金属酸化物の保護膜50が形成され、保護膜50の上面(内面)に蛍光体層40が形成された蛍光ランプ100を示している。
【0017】
本実施の形態に係るガラスバルブ20は、保護膜50及び蛍光体層40が形成された後に屈曲されたガラスバルブ20である。ガラスバルブ20には水銀、希ガスが封入される。水銀は液状またはアマルガム粒であり、このアマルガム粒は亜鉛、錫、及び水銀を含む。本実施の形態に係る蛍光ランプ100は、環形の蛍光ランプである。
【0018】
ガラスバルブ20の端部には、電子放射性物質(電子放射物質ともいう)が塗布された電極60が設けられる。図1に示すように、環形の蛍光ランプ100は環状のガラスバルブ20を備え、ガラスバルブ20の両端部にはそれぞれ電極60が配置されているとともに、それら両端部を跨いで覆うようにして口金30が取り付けられている。また、ガラスバルブ20の内面には保護膜50、蛍光体層40が順次積層されている。電極60には、電子放射性物質が塗布されている。
【0019】
保護膜50は、例えば水または水とポリエチレンオキサイドとの混合液にシリカ等の金属酸化物を分散させて懸濁液を作製し、懸濁液をガラスバルブ20内に流し込んでガラスバルブ20内面に懸濁液を塗布し、温風エアーで懸濁液を乾燥させて形成される。
【0020】
シリカ等の金属酸化物は、一次粒子径が例えば数nm〜数十nmのものを用いても懸濁液を作製すると粒子が凝集するため、凝集粒子(二次粒子)ができる。このように、一次粒子径が小さくても、作製された懸濁液の二次粒子の平均粒子径は大きくなる。
【0021】
図2は、1種類の二次粒子の平均粒子径の金属酸化物により形成された保護膜の模式図である。
1種類の二次粒子の平均粒子径が大径の金属酸化物のみで形成した保護膜は、保護膜への水銀(Hg)吸着を抑制できない。したがって、ガラスバルブ20由来のナトリウム(Na)と水銀とが反応して、ナトリウム(Na)の水銀(Hg)アマルガムが形成される。水銀がアマルガム化することにより、ガラスバルブ20に封入されている水銀が消耗されてしまう。
【0022】
また、1種類の二次粒子の平均粒子径が大径の金属酸化物のみで形成した保護膜は、保護膜内の不純ガスの吸着が多い。ガラスバルブ20内の不純ガスが多くなるため、点灯によって電子放射性物質が消耗するまでの時間が短くなり、蛍光ランプが短寿命になる。
【0023】
また、1種類の二次粒子の平均粒子径が大径の金属酸化物のみで形成した保護膜は、不純ガスと電子放射性物質との反応、および不純ガスと水銀との反応が生じる。更には電子放射性物質が消耗するので、電子放射性物質の揮散物質と水銀の反応が増え、水銀が消耗するまでの時間が短くなり蛍光ランプが短寿命になる。
【0024】
図3は、実施の形態1の蛍光ランプ100の保護膜50の模式図である。
図3の金属酸化物は、二次粒子の平均粒子径が2種類の金属酸化物から構成されている。2種類の金属酸化物とは、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bである。
微粒子金属酸化物Aは、たとえば一次粒子の平均粒子径が40〜60nmの微粒子シリカである。
超微粒子金属酸化物Bは、たとえば一次粒子の平均粒子径が20〜30nmの超微粒子高分散シリカである。
【0025】
微粒子金属酸化物Aは、二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである。
超微粒子金属酸化物Bは、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%前後あるいは20%以下である。具体的には、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径は20〜60nm、望ましくは30〜50nmがよい。あるいは、60nm以下、望ましくは50nm以下がよく、50nmが最もよい。
【0026】
保護膜に占める超微粒子金属酸化物Bの総体積は、保護膜を形成する金属酸化物の体積(微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積の合計)の1%以上〜20%未満の割合で存在する。望ましくは3%〜10%の割合がよく、3%の割合が最もよい。
【0027】
つまり、微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積との体積比は、99:1、97:3、95:5(19:1)、90:10(9:1)、85:15(17:3)、81:19等がよい。望ましくは97:3、95:5(19:1)、90:10(9:1)がよく、97:3の体積比が最もよい。
【0028】
保護膜50の厚さは0.3〜0.8μmである。望ましくは0.3〜0.5μmがよく、0.5μmが最もよい。
【0029】
図4は、比較例1〜7のデータ図である。図7は図4の比較例1〜7の膜厚と不点寿命との関係を示すグラフ図である。以下に、図4及び図7を用いて比較例1〜7について説明する。
【0030】
図4に示すように、比較例1〜7は1種類の二次粒子の平均粒子径の金属酸化物により形成された保護膜のデータである。比較例1〜7で用いる金属酸化物を微粒子金属酸化物Aとする。比較例1の微粒子金属酸化物Aは微粒子アルミナである。比較例2〜7の微粒子金属酸化物Aは微粒子シリカである。比較例1は従来品である。
【0031】
図4の比較例1〜7は、電子放射性物質量と水銀量とを一定にして二次粒子の平均粒子径の大きさを変化させ、かつ、微粒子金属酸化物Aによる保護膜の厚さを変化させた場合の微粒子金属酸化物Aによる保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとを測定した結果である。
【0032】
図7に示すように、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさがそれぞれ、100,250,300nmである比較例4,5,6は不点寿命が10000時間以上が多く良好である。比較例4,5は不点寿命が全て10000時間以上であり良好である。比較例5は特に不点寿命が長く、比較例5が最も好ましい。
【0033】
図4では「ひび割れ」の項目において「○」はひび割れが発生しないことを示し、「×」はひび割れが発生したことを示し、「△」はひび割れてはいないがひび割れが発生しそうな状態を示す。図4に示すように微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が100nm未満(比較例2,3)では保護膜のひび割れが起きやすく、500nm以上(比較例7)では保護膜のひび割れが起きにくい。
【0034】
微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が100nm未満(比較例2,3)では蛍光体の被着強度が良好であるが、500nm以上(比較例7)では蛍光体の被着強度が弱くなる。
【0035】
図4では「不純ガス」の項目において「○」は不純ガスが増加していないことを示し、「×」は不純ガスが顕著に増加したことを示し、「△」は不純ガスがやや増加したことを示す。図4に示すように、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が300nm以上では不純ガスが増え、500nm以上では不純ガスがさらに増える。
【0036】
微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nm以上300nm以下の場合には、保護膜50の膜厚が0.5μm以上1.5μm未満の場合であれば、不純ガスが顕著に増加することはなく、ひび割れも発生せず不点寿命が長い。また、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさが250nmの場合には、保護膜50の膜厚が1.5μmであっても不純ガスが顕著に増加することはなく、ひび割れも発生せず不点寿命が長い。したがって、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nm以上300nm以下が望ましく、250nmが最適である。
【0037】
また、保護膜の膜厚が同じ場合、比較例4は比較例1に比べて、保護膜のひび割れがなく、不点寿命が2倍弱長く、保護膜への不純ガスの吸着が少ない。このことから、微粒子金属酸化物Aとして、比較例1の微粒子アルミナよりも比較例4の微粒子シリカのほうが望ましい。
【0038】
図5は、実施例1〜3のデータ図である。図6は、実施例4〜5と比較例8のデータ図である。図8は、実施例1の超微粒子金属酸化物Bの混合率と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図9は、実施例2の超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図10は、実施例3の膜厚と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図11は、実施例4の電子放射性物質量と不点寿命との関係を示すグラフ図である。図12は、実施例5の水銀量と不点寿命との関係を示すグラフ図である。
【0039】
図5は、比較例5で用いた金属酸化物(二次粒子の平均粒子径が250nmの微粒子シリカ)を微粒子金属酸化物Aとし、微粒子金属酸化物Aよりも二次粒子の平均粒子径の大きさが小さい超微粒子金属酸化物Bを配合した場合のデータである。以下に、図5〜図12を用いて、実施例1〜実施例5、比較例8について説明する。
【0040】
実施例1.
図5に示すように、実施例1は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nmとし、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとし、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)を変化させた場合の金属酸化物の保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとを測定した結果である。
【0041】
図5に示すように、保護膜に占める超微粒子金属酸化物Bの総体積を保護膜を形成する金属酸化物の体積(微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積の合計)の1%以上〜20%未満とすれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。20%の場合は保護膜のひび割れが発生していることから、望ましくは保護膜に占める超微粒子金属酸化物Bの総体積を保護膜を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜15%以下とすれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られる。
【0042】
超微粒子金属酸化物Bの割合(超微粒子金属酸化物Bの総体積が、保護膜を形成する金属酸化物の体積(微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積の合計)に占める割合)が20%の場合は保護膜のひび割れが発生した。超微粒子金属酸化物Bの割合が15%の場合は保護膜のひび割れの恐れがある。したがって、超微粒子金属酸化物Bの割合が15%未満が望ましい。
【0043】
図8に示すように、不点寿命に関しては超微粒子金属酸化物Bの割合が1%以上10%以下が望ましく、2%以上5%以下がより望ましい。特に超微粒子金属酸化物Bの割合が3%の場合は不点寿命が16000時間であり、3%が最適である。超微粒子金属酸化物Bの割合が3%の場合、微粒子金属酸化物Aの体積と超微粒子金属酸化物Bの体積との体積比は、97:3である。
【0044】
実施例2.
図5に示すように、実施例2は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nmとし、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)を97:3にし、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを変化させた場合の測定結果である。
【0045】
図5に示すように、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが微粒子金属酸化物Aに対して20%以下(超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが50nm以下)であれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。
【0046】
超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nmあるいは150nmの場合は不純ガスが多い。したがって、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが100nm未満が望ましい。
【0047】
図9に示すように、不点寿命に関しては超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが10nm以上100nm以下が望ましく、30nm以上70nm以下がより望ましい。特に超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさが50nmの場合は、不点寿命が16000時間であり、50nmが最適である。
【0048】
実施例3.
図5に示すように、実施例3は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nmとし、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとし、微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)を97:3にし、保護膜の膜厚を変化させた場合の測定結果である。
【0049】
図5に示すように、保護膜の膜厚が0.3〜0.8μmであれば、保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。特に0.3〜0.5μmであれば保護膜のひび割れと、蛍光体の被着強度と、不点寿命と、不純ガスとのいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる。1.0μm以上の場合は保護膜のひび割れが発生した。したがって、1.0μm未満が望ましい。
【0050】
図10に示すように、不点寿命に関しては保護膜の膜厚が0.3μm以上0.7μm以下が望ましく、特に0.3μm以上0.5μm以下が望ましい。保護膜の膜厚が0.5μmの場合は不点寿命が16000時間であり、0.5μmが最適である。あるいは、0.3μm以上0.5μm未満の間が望ましく、0.4μm前後が最適である。
【0051】
実施例4.
図6に示すように、実施例4は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μm、水銀量を10.0μg/cm3とし、電子放射性物質の量を変化させた場合の測定結果である。微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)は97:3である。
【0052】
図11に示すように、電子放射性物質の量が多いほど不点寿命が増加する。電子放射性物質の量が比較例1と同じ8μg/cm3の場合、不点寿命は比較例1の1.5倍〜2.6倍強の16000時間になる。電子放射性物質の量が、比較例1の半分の4μg/cm3の場合、不点寿命は比較例1の1.53倍〜1.02倍の9200時間になる。したがって電子放射性物質の量を比較例1の半分にしても、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μmとすることにより、比較例1の不点寿命(9000時間)以上の不点寿命を提供できる。
【0053】
実施例5.
図6に示すように、実施例5は微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μm、電子放射性物質の量を4μg/cm3とし、水銀の量を変化させた場合の測定結果である。微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物Bとの体積比(配合比)は97:3である。
【0054】
図12に示すように、水銀の量が5μg/cm3までは不点寿命が増加する。5μg/cm3以上では不点寿命が変わらない。水銀は有害物質であるから少ないほうがよく、5μg/cm3以下が望ましい。
【0055】
比較例8.
比較例8は、比較例1の電子放射性物質の量を4μg/cm3とし、水銀の量を5μg/cm3とした場合の測定結果である。
実施例5で水銀の量を5μg/cm3とした場合の結果と比べて、不点寿命が短くなっていることから、実施例5のように、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μmとしたことが、不点寿命の長期化に寄与していることが分かる。
【0056】
言い換えれば、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nm、保護膜の膜厚を0.5μmとした場合、電子放射性物質の量と水銀の量とを比較例1の半分にしても比較例1以上の不点寿命を提供できることになる。
【0057】
この実施の形態の蛍光ランプは、電子放射性物質の量と水銀の量とを比較例1と同じか半分以上にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命以上の不点寿命を達成できる。
【0058】
市販されている通常の蛍光ランプの電子放射性物質の量は8μg/cm3〜27μg/cm3であるが、この実施の形態の蛍光ランプは電子放射性物質の量を約半分にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命と変わらない不点寿命を達成できる。たとえば、FCL40又はFCL30の場合、電極60に塗布された電子放射性物質の量は4μg/cm3〜13.5μg/cm3でよい。FCL40の場合4μg/cm3でよい。FCL30の場合13.5μg/cm3でよい。
【0059】
市販されているFCL40又はFCL30等の環形蛍光ランプの水銀の封入量は4μg/cm3〜15μg/cm3であるが、この実施の形態の蛍光ランプは水銀の封入量を約半分にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命と変わらない不点寿命を達成できる。たとえば、FCL40又はFCL30の場合、ガラスバルブ20に封入する水銀の封入量は4μg/cm3〜7.5μg/cm3でよい。FCL40の場合4μg/cm3でよい。FCL30の場合7.5μg/cm3でよい。
【0060】
市販されているFL40又はFHT16等の直管形やコンパクト形蛍光ランプの水銀の封入量は4μg/cm3〜106μg/cm3であるが、この実施の形態の蛍光ランプは水銀の封入量を約半分にしても、市販されている通常の蛍光ランプの不点寿命と変わらない不点寿命を達成できる。FL40又はFHT16の場合、ガラスバルブ20に封入する水銀の封入量は20μg/cm3〜55μg/cm3でよい。FL40の場合20μg/cm3でよい。FHT16の場合55μg/cm3でよい。
【0061】
実施例3の膜厚0.5μmの場合は不点寿命が16000時間であり、比較例3の膜厚0.5μmの場合は不点寿命が10000時間であり、不点寿命が1.6倍に増加している。すなわち、比較例3の二次粒子の平均粒子径の大きさが50nmである1種類の微粒子金属酸化物Aの場合よりも、実施例3の微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを250nm、超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとした場合のほうが不点寿命が1.6倍に増加している。
したがって、1種類の微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径の大きさを50nmとした場合よりも、二次粒子の平均粒子径の大きさが250nmと50nmとの2種類(微粒子金属酸化物Aと超微粒子金属酸化物B)を混合したほうがよいことが分かる。
【0062】
以上のように、この実施の形態ではガラスバルブ内面に金属酸化物の保護膜が形成され、前記保護膜の上面に蛍光体層が形成され、前記ガラスバルブは、前記保護膜及び蛍光体層が形成された後に屈曲されたガラスバルブであり、前記ガラスバルブには水銀、希ガスが封入され、前記ガラスバルブ端部には電子放射性物質が塗布された電極が設けられた蛍光ランプを説明した。
【0063】
この実施の形態では、金属酸化物による保護膜は二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bからなり、前記保護膜に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護膜を形成する金属酸化物の体積の3%以上〜20%未満である。
【0064】
また、前記保護膜の厚さは0.3〜0.8μmである。また、前記電極に塗布された電子放射性物質の量は8μg/cm3〜27μg/cm3である。さらに、前記ガラスバルブに封入する水銀の封入量は4μg/cm3〜15μg/cm3である。あるいは、前記ガラスバルブに封入する水銀の封入量は20μg/cm3〜110μg/cm3である。
【0065】
前記水銀は液状またはアマルガム粒であり、前記アマルガム粒は水銀と鉄、亜鉛、錫の中からいずれか1種類以上を含む。また、前記金属酸化物はシリカを含有する。前記蛍光ランプはガラスバルブが環形に屈曲された環形蛍光ランプである。
【0066】
この実施の形態によれば、保護膜をより緻密にすることにより、膜厚が0.5μmの薄い保護膜でも、1.0μm以上の厚い保護膜と同等以上にアマルガム化(ガラス由来のナトリウムと水銀との反応)を抑えることができる。
【0067】
保護膜をより薄くすることにより、膜のひび割れや脱落が無くなるとともに保護膜内の不純ガスの吸着が少なくなり、管内の不純ガスが減少することで点灯によって完全に電子放射性物質が消耗するまでの時間が長くなり、少ない電子放射性物質の量でも長寿命のランプを実現できる。
【0068】
さらに、この実施の形態の保護膜は小粒子のみで形成した保護膜のようにひび割れがなく、大粒子のみで形成した保護膜のように膜厚が厚くなってガラスへの被着強度が弱くならない。そして大粒子のみで形成した保護膜に比べより膜が緻密で薄くなり、保護膜への水銀吸着が減少する。その結果、環形蛍光ランプやコンパクト形蛍光ランプのようにランプ製造時にガラス管を曲げることにより発生するガラス由来のナトリウムと水銀の反応(アマルガム化)が発生しても、点灯中に電子放射性物質が完全に消耗するまでの時間に比べ、水銀が完全に消耗するまでの時間が長くなり、より長寿命のランプを実現できる。
【0069】
この実施の形態の保護膜は、保護膜への水銀吸着や不純ガスと電子放射性物質および水銀の反応を抑制することができる。更には電子放射性物質の消耗量を減らすことで、電子放射性物質の揮散物質と水銀の反応が減り、水銀が完全に消耗するまでの時間が長くなることで、より少ない水銀量でより長寿命のランプを実現できる。
【0070】
また、金属酸化物はシリカを含有することにより、他の金属酸化物に比べ保護膜への不純ガスの吸着が少なくなり、電極に付着させる電子放射性物質の量を更に減少させることができる。
【符号の説明】
【0071】
20 ガラスバルブ、30 口金、40 蛍光体層、50 保護膜、60 電極、100 蛍光ランプ、A 微粒子金属酸化物、B 超微粒子金属酸化物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバルブと、
金属酸化物により形成された保護層であって、前記ガラスバルブの内面に形成された保護層と、
前記保護層の上面に形成された蛍光体層と、
前記ガラスバルブに封入された水銀と希ガスと、
前記ガラスバルブの端部に設けられ、電子放射性物質が塗布された電極と
を備えた蛍光ランプにおいて、
前記保護層を形成する金属酸化物は、
二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bとからなり、
前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜20%未満であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が250nmであり、前記超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径が50nmであり、
前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の3%であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記保護層の厚さは、0.3〜0.8μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記保護層の厚さは、0.5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記微粒子金属酸化物Aと前記超微粒子金属酸化物Bとは、シリカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記蛍光ランプは、前記ガラスバルブが環形に屈曲された環形蛍光ランプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項1】
ガラスバルブと、
金属酸化物により形成された保護層であって、前記ガラスバルブの内面に形成された保護層と、
前記保護層の上面に形成された蛍光体層と、
前記ガラスバルブに封入された水銀と希ガスと、
前記ガラスバルブの端部に設けられ、電子放射性物質が塗布された電極と
を備えた蛍光ランプにおいて、
前記保護層を形成する金属酸化物は、
二次粒子の平均粒子径が100〜300nmである微粒子金属酸化物Aと、微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径に対し、二次粒子の平均粒子径が20%以下である超微粒子金属酸化物Bとからなり、
前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の1%以上〜20%未満であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記微粒子金属酸化物Aの二次粒子の平均粒子径が250nmであり、前記超微粒子金属酸化物Bの二次粒子の平均粒子径が50nmであり、
前記保護層に占める前記超微粒子金属酸化物Bの総体積は、前記保護層を形成する金属酸化物の体積の3%であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記保護層の厚さは、0.3〜0.8μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記保護層の厚さは、0.5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記微粒子金属酸化物Aと前記超微粒子金属酸化物Bとは、シリカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記蛍光ランプは、前記ガラスバルブが環形に屈曲された環形蛍光ランプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−54971(P2013−54971A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193374(P2011−193374)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】
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