蛍光体およびその製造方法、並びに該蛍光体を用いた発光装置
【課題】近紫外・紫外LEDや青色LED等と組み合わせてワンチップ型白色LED照明等を作製するための蛍光体であって、輝度を始めとする発光効率に優れた蛍光体を提供する。
【解決手段】一般式MmAaBbOoNn:Z(M元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は1種類以上の付活剤である。)で表記される蛍光体であって、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1で表され、波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから620nmの範囲にあることを特徴とするものである。
【解決手段】一般式MmAaBbOoNn:Z(M元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は1種類以上の付活剤である。)で表記される蛍光体であって、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1で表され、波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから620nmの範囲にあることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラウン管(CRT)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイ(PDP)などのディスプレイや、蛍光灯、蛍光表示管などの照明装置や、液晶用バックライト等の発光器具に使用される、窒素を含有する蛍光体およびその製造方法、並びに半導体発光素子(LED)と該蛍光体とを組み合わせた白色LED照明を始めとする発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、照明装置として用いられている放電式蛍光灯や白熱電球などは、水銀などの有害な物質が含まれている、寿命が短いといった諸問題を抱えている。ところが、近年になって近紫外・紫外〜青色に発光する高輝度LEDが次々と開発され、そのLEDから発生する近紫外・紫外〜青色の光と、その波長域に励起帯を持つ蛍光体から発生する光とを混ぜ合わせて白色光を作り出し、その白色光を次世代の照明として利用できないかといった研究、開発が盛んに行われている。
この白色LED照明が実用化されれば、電気エネルギーを光へ変換する効率が高く熱の発生が少ないこと、LEDと蛍光体から構成されているため、従来の白熱電球のように切れることがなく長寿命であること、水銀などの有害な物質を含んでいないこと、また照明装置を小型化できるといった利点があり、理想的な照明装置が得られる。
【0003】
LED照明の方式としては2つ提案されており、一つは高輝度の赤色LED、緑色LED、青色LEDの3原色LEDを使用し白色を作り出すマルチチップ型方式と、他の一つは近紫外・紫外〜青色に発光する高輝度LEDと、そのLEDから発生する近紫外・紫外〜青色の光で励起される蛍光体とを組み合わせて白色を作り出すワンチップ型方式である。
特にワンチップ型方式においては、青色LEDにガーネット構造を持つY3Al5O12:Ce黄色蛍光体を組み合わせた方式が一般的であり、この黄色蛍光体Y3Al5O12:CeのYサイトをLa、Tb、Gdなど、Yと同様な原子半径の大きい希土類元素に置換または添加したり、AlサイトをB、Ga等のAlと同様な原子半径の小さな3価の元素に置換または添加することによって、ガーネット構造を保ちつつ、緑色から赤みがかった黄色まで様々な発光色を得ることが出来る。そのため、青色LEDから放出される光と組み合わせ、色温度の異なる様々な白色光を得ることが出来る。
しかしながら、YAG:Ce蛍光体は種々の元素を置換または添加することによって、発光波長または発光色を変化させることが出来るが、元素の置換による発光効率の低下や100℃以上の温度の発光強度が極端に低下してしまう。そのため、発光素子と蛍光体の発光色とのバランスが崩れ、白色光の色調が変化するという問題があった。一方、紫外または近紫外LEDを利用した発光方式であって、蛍光体としてZnS:Cu,Alや(Sr,Ca)GaS:Euなど発光特性が良好な硫化物系蛍光体を用いた場合においても、同様に、100℃以上の温度では発光強度が極端に低下する問題があった。
【0004】
このような温度による劣化問題を解決するため、近紫外・紫外から青色の範囲の光に対して平坦で高効率な励起帯を有し、周囲の温度に対する発光特性の安定性に優れた、新規蛍光体への要求が高まり、例えば、Ca−サイアロン系蛍光体(特許文献1に記載)などの酸窒化物蛍光体の研究が盛んに行われてきた。しかしながらCa−サイアロン系蛍光体では、YAG:Ce蛍光体に比べると蛍光体の発光効率が十分でなく、半値幅が狭いため、特定の色温度でしか十分な輝度や演色性を得ることが出来ないことや、演色性に優れた発光装置を得るためには複数の蛍光体との混合が必須であり、そのため発光装置としての全体的な発光特性が下がるという問題があった。
【0005】
さらに、特許文献1に記載された蛍光体と同系統の窒化物蛍光体である、(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体(特許文献6参照)が提案されている。当該(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体は、発光特性が低く、さらに熱により安定性が低下するという問題があるが、この問題の解決方法として、蛍光体母体中へLiやNaをわずかに添加することによって、発光特性が改善することが非特許文献1に示されている。
【0006】
また、特許文献2において、Ca−サイアロン系蛍光体とは異なるSr−Al−Si−O−N系蛍光体、つまりSrSiAl2O3N2:Ce、SrSiAl2O3N2:Eu、Sr2Si4AlON7:Euが開示されている。しかし、これらはいずれも発光効率が低く、また発光波長が450nmから500nmの青色蛍光体、または630nmから640nmの赤色蛍光体であり、発光波長が500−620nmの緑から橙色に掛けて発光色を持つ発光効率の良い蛍光体は得られていない。
これらの問題を解決するため本発明者らは、特許文献3に記載のように、Sr−Al−Si−O−N系において新規の構造を有した蛍光体を開発し、青色または近紫外・紫外の範囲の励起光からでも良好な緑色から黄色に発光する蛍光体を提案し、さらに特許文献4により、Alの添加量を調整することにより、高温でも温度特性や発光効率の良いSr−Al−Si−O−N系の蛍光体を提案している。また、特許文献5により、上記蛍光体、赤色蛍光体、青色蛍光体などの複数の蛍光体と、励起光となる紫外から青色に発光するLEDとを組み合わせた、演色性の良好な発光装置も提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】特開2003−206481号公報
【特許文献3】特願2005−061627号
【特許文献4】特願2005−192691号
【特許文献5】特願2005−075854号
【特許文献6】特開2002−322474号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Luminescence, 116(2006) 107−116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3から4で本発明者らが提案した窒素を含有する蛍光体は、特許文献1等に記載の窒素を含有する蛍光体と比較して、熱や水に対する耐久性に優れ、近紫外・紫外から青色の範囲に平坦な励起帯を持ち、発光スペクトルの半値幅が広く、ブロードな発光スペクトルを有するなど優れた特性を有している。しかし、当該蛍光体をもってしても、近紫外・紫外LEDや青色LED等と組み合わせてワンチップ型白色LED照明を作製した場合、その発光において、照明として最も重要である輝度が満足すべき水準になく、さらなる発光効率の向上が望まれる。
【0010】
また、上述の青色や紫外に発光する発光素子と、当該発光素子から発生する紫外〜青色の波長域に対して励起帯を持つ蛍光体との組み合わせることにより可視光、白色光を発するLEDを始めとした発光装置において、可視光または白色光の発光特性向上には、発光素子および蛍光体の発光効率の向上が求められるとともに、蛍光体の発光色(色度、発光波長)も重要である。加えて、今後は、LEDや光源等の使用用途により、発光色が各々適性化された蛍光体への要望が高くなると考えられる。
ここで、本発明者らは、上述のYAG:Ce蛍光体の様に、本発明者らが提案したSr−Al−Si−O−N系蛍光体(特許文献3から5)においても、他の蛍光体と組み合わせることなく、組成中に含まれる元素を変化させることによって、同一組成の蛍光体から放出される発光色を様々に変化させることができ、更に、温度による発光特性の低下がない場合には、青色LEDまたは近紫外・紫外LEDから放出される光と組み合わせることで、色温度の異なる様々な白色光を容易に得ることができるのではないかと考えた。
【0011】
本発明の第1の目的は、上述の課題を考慮してなされたものであり、近紫外・紫外から青緑色の範囲に平坦な励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから620nm付近に発光のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持ち、目的の用途に合わせて所望の発光色を発光させることの可能な蛍光体およびその製造方法、並びに該蛍光体を用いた発光装置を始めとする発光装置を提供することである。
【0012】
さらに、上述したように、YAG:Ce蛍光体は、当該蛍光体中の、Yサイト若しくはAlサイトを他の元素へ置換、または、当該両サイトへの元素添加によって、発光波長または発光色を変化させることが出来る。しかしながら、本発明者らの検討によれば、このYAG:Ce蛍光体は、元素の置換・添加により発光効率の低下してしまう問題点や、100℃以上の温度に置かれた際の発光強度が極端に低下してしまう問題点がある。そして、これらの問題点のため、当該蛍光体を用いた発光装置において、発光素子と蛍光体の発光色とのバランスが崩れ、結果として白色光の色調が変化するという問題があった。
【0013】
また、本発明者らの検討によれば、ZnS:Cu、Alや(Sr,Ca)GaS:Eu等の硫化物系蛍光体も、当該硫化物系蛍光体が100℃以上の温度に置かれた際に発光強度が極端に低下する問題があった。
【0014】
さらに、本発明者らの検討によれば、Ca−サイアロン系蛍光体は、YAG:Ce蛍光体に比べると蛍光体の発光効率が十分でなく、且つ、発光の半値幅が狭いため、特定の色温度でないと十分な輝度や演色性を得ることが出来ないという問題がある。この発光の半値幅が狭い蛍光体であるという問題を補い、演色性に優れた発光装置を得るためには、複数の蛍光体との混合が求められる。すると、今度は当該混合のため、発光装置としての全体的な発光特性が下がるという、新たな問題が発生した。
【0015】
(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体は、熱により安定性が低下するという問題がある。この問題の解決方法として、非特許文献1が示すように、LiやNaを母体中にわずかに添加することによって発光特性を改善させることが出来る旨記載されてしている。しかし、本発明者らの検討によれば、(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体へ、LiやNaを添加しても、依然として、発光特性は十分ではなく、熱に対する安定性についても解決されていない。
【0016】
最後に、本発明者らが提案した、Sr−Al−Si−O−N系であって新規構造を有した蛍光体は、発光の半値幅が広く、熱に対する安定性は優れてはいるものの、発光強度および発光輝度には改善の余地があった。
【0017】
本発明は、上述の状況の下に成されたものであり、その第2の課題とするところは、近紫外・紫外から青色の範囲に励起帯を持ち、発光強度および輝度に優れ、発光の半値幅が広く、熱に対する耐久性に優れた、蛍光体およびその製造方法、並びに該蛍光体を用いた発光装置を始めとする発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題を解決するため、まず本発明者らは、Sr−Al−Si−O−N系の蛍光体
と近紫外・紫外LEDや青色LED等とを組み合わせたワンチップ型白色LED照明の発光において、蛍光体より放出される発光色の変化について研究したところ、付活剤の濃度および他種の付活元素の付活により発光色が変化する点に注目し、付活剤元素の種類および濃度についても発光スペクトルや発光効率の検討を行った。また輝度を始めとする発光効率が満足すべき水準にない原因についても研究を行い、蛍光体の結晶性を向上させるのに伴って、発光効率が向上する点について注目し、添加物による結晶性の促進効果、およびその添加効果にともなう発光スペクトルや発光効率の向上について検討を行った。
【0019】
次に、当該蛍光体の有する広い発光の半値幅や、優れた熱に対する耐久性を維持したまま、当該蛍光体より放出される発光色の発光強度や輝度を満足すべき水準に引き上げることについて研究を行った。
【0020】
また、本発明者らは、多数の窒素を含有した蛍光体組成に関する研究を進めた結果、その結晶構造はおそらく、[SiN4]の四面体構造のSiの一部がAlに、Nの一部がOに置換されたものであって、該四面体構造で組まれたネットワーク中にSrが入り込んだ構造を有する蛍光体であると考え、該蛍光体において生成相の結晶構造を最適化し、また、SiのAl置換量、NのO置換量を最適化することにより、発光効率の向上が可能であることに想到した。
また、付活剤として用いるEuおよび/またはCeの添加量を最適化することによって、他組成の蛍光体を混合することなく、単一組成としては幅広い範囲において発光色を変化させることが可能であることにも想到した。
また、蛍光体の生成に使用する原料は融点が高く、固相反応が進行し難いために、反応が不均一になっているのではないかという考えに至った。そのため、本発明者らは、固相反応の進行が促進されて、均一な反応となる方法について更に研究をおこなったところ、当該蛍光体の焼成時に微量な酸化物、フッ化物、塩化物、窒化物を添加することにより結晶性が促進されることに想到した。
【0021】
さらに、本発明者らは、Sr−Al−Si−O−N系であって新規構造を有した蛍光体の結晶構造に関する研究を進めた結果、その結晶構造は、[SiN4]の四面体構造においてSiの一部がAlに、Nの一部がOに置換したものであって、該四面体構造で組まれたネットワーク中にII価の価数をとる元素(以下、M(2)と記載する場合がある。)(今回のモデルであれば、アルカリ土類金属であるSrである。)と、付活剤であるZ元素とが入り込んだ構造を有する蛍光体であると考えられた。
【0022】
そして、当該推論より、当該蛍光体において、このM(2)、Z元素のサイトの一部を、I価の価数をとる元素(以下、M(1)と記載する場合がある。)で置換することにより、当該結晶構造内の電気的・構造的安定性を高めることができ、発光効率の向上が可能であることに想到した。
【0023】
他方、当該蛍光体の生成過程に関する研究を進めた結果、当該蛍光体の生成に用いられる原料は融点が高く、加熱しても、固相反応が進行し難く反応が不均一になっていると伴に、生成する蛍光体の結晶性が向上しない為、発光効率が低下しているのではないかという機構に想到した。そして、当該推論より、本発明者らは、固相反応の進行を円滑にする手段について研究をおこなった。そして、当該手段においても、上述した、当該蛍光体においてM(2)、Z元素のサイトの一部を、M(1)で置換することで、固相反応を均一化させることが出来、蛍光体の結晶性が高まることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
即ち、上述の課題を解決するための第1の構成は、
一般式MmAaBbOoNn:Zで表記される蛍光体であって(M元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり
、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は1種類以上の付活剤である。)、
a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1で表され、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから620nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体である。
【0025】
第2の構成は、第1の構成に記載の蛍光体であって、
M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素はAl、Ga、In、Sc、La、Yから選択される1種類以上の元素であり、
B元素はSiおよび/またはGeであり、
Z元素はEu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体である。
【0026】
第3の構成は、第1または第2の構成に記載の蛍光体であって、
M元素がSrまたはBa、A元素がAlまたはGa、B元素がSi、Z元素がCeおよび/またはEuであることを特徴とする蛍光体である。
【0027】
第4の構成は、第1から第3の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
一般式をMmAaBbOoNn:Zzと表記したとき、M元素とZ元素とのモル比であるz/(m+z)の値が、0.0001以上、0.5以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0028】
第5の構成は、第1から第4の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
更に塩素または/及びフッ素を含有することを特徴とする蛍光体。
【0029】
第6の構成は、第5の構成に記載の蛍光体であって、
上記塩素または/及びフッ素の含有量が0.0001重量%以上、1.0重量%以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0030】
第7の構成は、第1から第6の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
25℃において、波長300nmから500nmの範囲にある所定の単色光が励起光として照射された際の発光スペクトル中における最大ピークの相対強度の値をP25とし、
100℃において、前記所定の単色光が励起光として照射された際の、前記最大ピークの相対強度の値をP100としたとき、
(P25−P100)/P25×100≦20であることを特徴とする蛍光体である。
【0031】
第8の構成は、第1から第7の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の1次粒子と、該1次粒子が凝集した凝集体とを含み、該1次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0032】
第9の構成は、
一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnで表記される蛍光体であって(M(1)元素はI価の価数をとる1種類以上の元素であり、M(2)元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。)、
0.5≦a≦2.0、3.0≦b≦7.0、m(1)>0、m(2)>0、z>0、4.0≦(a+b)≦7.0、m(1)+m(2)+z=1、0<o≦4.0、n=1/3m(1)+2/
3m(2)+z+a+4/3b−2/3oであり、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから600nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体である。
【0033】
第10の構成は、第9の構成に記載の蛍光体であって、
0<m(1)≦0.05であることを特徴とする蛍光体である。
【0034】
第11の構成は、第9または第10の構成に記載の蛍光体であって、
0.0001≦z≦0.5であることを特徴とする蛍光体である。
【0035】
第12の構成は、第9から第11の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
0.8≦a≦2.0、3.0≦b≦6.0、0<o≦1.0であることを特徴とする蛍光体である。
【0036】
第13の構成は、第9から第12の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
0<o≦1.0、a=1+o、b=4−o、n=7−oであることを特徴とする蛍光体である。
【0037】
第14の構成は、第9から第13の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(1)元素は、Li、Na、K、Rbから選択される1種類以上の元素であり、
M(2)元素は、Mg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素は、Al、Ga、Inから選択される1種類以上の元素であり、
B元素は、Siおよび/またはGeであり、
Z元素は、Eu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体である。
【0038】
第15の構成は、第9から第14の構成に記載の蛍光体であって、
M(2)元素が、Srおよび/またはBa、A元素がAl、B元素がSi、Z元素がCeであることを特徴とする蛍光体である。
【0039】
第16の構成は、第9から第15の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、M(1)元素が、Kであることを特徴とする蛍光体である。
【0040】
第17の構成は、第9から第16の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
蛍光体を構成する元素として、21.0重量%以上、27.0重量%以下のSrと、8.0重量%以上、14.0重量%以下のAlと、0.5重量%以上、6.5重量%以下のOと、26.0重量%以上、32.0重量%以下のNと、0を超え4.0重量%以下のCeと、0を超えて1.0重量%未満のLi、Na、Kから選択される1種類以上の元素と、を含むことを特徴とする蛍光体である。
【0041】
第18の構成は、第9から第17の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造であって、
0を超えて2.0重量%未満のBaを含むことを特徴とする蛍光体である。
【0042】
第19の構成は、第9から第18の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の一次粒子と、該一次粒子が凝集した凝集体とを含み、該一次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0043】
第20の構成は、第1から第8の構成のいずれかに記載の蛍光体を製造する蛍光体の製造方法であって、
当該蛍光体の原料粉体を秤量、混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程と、
前記焼成物を解砕して蛍光体を得る工程とを有し、
前記混合物を焼成して焼成物を得る工程において、当該焼成時の雰囲気ガスとして、窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスのいずれかを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0044】
第21の構成は、第20の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
前記該焼成炉内の雰囲気ガスとして、窒素ガスを80%以上含むガスを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0045】
第22の構成は、第20または第21の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.1ml/min以上流通させながら焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0046】
第23の構成は、第20から第22の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.001MPa以上、1.0MPa以下の加圧状態とすることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0047】
第24の構成は、第20から第23の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、塩化物または/及びフッ化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0048】
第25の構成は、第24の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記塩素または/及びフッ素化合物がSrF2、BaF2、AlF3、SrCl2、BaCl2、AlCl3であることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0049】
第26の構成は、第20から第25の構成のいずれかに記載の蛍光体を製造する蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、酸化物または/及び窒化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0050】
第27の構成は、第26の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記酸化物または/及び窒化物がAl2O3、Ga2O3、In2O3、GaN、Sr3N2、Ba3N2、Ca3N2であることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0051】
第28の構成は、第20から第27の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
上記蛍光体の原料の平均粒径が0.1μmから10.0μmであることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0052】
第29の構成は、第9から第19の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
該蛍光体の原料を、るつぼに入れ炉内にて焼成する際、
るつぼとしてBNるつぼを使用し、窒素ガス、希ガス、およびアンモニアガスから選択
される1種類以上を含むガスを、炉内に0.1ml/min以上流し、且つ、炉内圧を0.0001MPa以上、1.0MPa以下とし、1400℃以上、2000℃以下の温度で30分間以上焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0053】
第30の構成は、第29の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
当該焼成工程と焼成により得られた焼成物を粉砕および混合する工程からなる一連の工程を、少なくとも二回以上繰り返すことを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0054】
第31の構成は、第29または30の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、原料にバリウムの塩化物、フッ化物、酸化物、炭酸塩を少なくとも一種類以上使用することを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0055】
第32の構成は、第1から第19に記載の蛍光体と、第1の波長の光を発する発光部とを有し、前記第1の波長の光の一部または全部を励起光とし、前記蛍光体から前記第1の波長と異なる波長を発光させることを特徴とする発光装置である。
【0056】
第33の構成は、第32の構成に記載の発光装置であって、
第1の波長とは、300nmから500nmの波長であることを特徴とする発光装置である。
【0057】
第34の構成は、第32または第33の構成に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、60以上であることを特徴とする発光装置である。
【0058】
第35の構成は、第32から第33の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、80以上であることを特徴とする発光装置である。
【0059】
第36の構成は、第32から第35の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R15が、80以上であることを特徴とする発光装置である。
【0060】
第37の構成は、第32から第36の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R9が、60以上であることを特徴とする発光装置である。
【0061】
第38の構成は、第32から第37のいずれかの構成に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、2000Kから10000Kの範囲にあることを特徴とする発光装置である。
【0062】
第39の構成は、第32から第37の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、7000Kから2500Kの範囲にあることを特徴とする発光装置である。
【0063】
第40の構成は、第32から第39の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
前記第1の波長を発する発光部がLEDであることを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0064】
第1から第8の構成のいずれかに記載の蛍光体は、近紫外・紫外から青緑色の範囲に平坦な励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから620nm付近に発光
のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持つという優れた発光特性を有し、且つ、目的の用途に合わせて所望の発光色を容易に発光させることの可能な蛍光体である。
【0065】
第9から第19の構成に記載の蛍光体は、波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、高効率で発光し、その発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから600nmとなる緑〜黄色の発光を得ることができる。
【0066】
第20から第28の構成に記載の蛍光体の製造方法によれば、近紫外・紫外から青緑色の範囲に平坦な励起帯を持ち、ブロードな発光スペクトルのピークを持つことに加え、発光特性に優れ、且つ、耐熱性に優れ、高温度環境下でも室温(25℃)下と比べ発光特性がほとんど劣化しない蛍光体を、大気中で不安定な原料を用いることなく、安価な製造コストで容易に製造することができる。
【0067】
第29から第31の構成に記載の蛍光体の製造方法によれば、近紫外・紫外から青緑色の範囲に励起帯を持ち、ブロードな発光スペクトルのピークを持つことに加え、発光強度・輝度に優れた蛍光体を、大気中で不安定な原料を用いることなく、安価な製造コストで容易に製造することができる。
【0068】
第32から第40の構成に記載の発光装置によれば、高い輝度を始めとして、高い演色性も有する、優れた特性を有する光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1から5、比較例1における蛍光体の発光強度とxとの関係を示すグラフである。
【図2】実施例2、6、比較例1における蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例2、6における蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例32から41における蛍光体の色度座標を示すグラフである。
【図5】実施例42から44における白色LED照明(発光装置)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】(A)〜(C)は、砲弾型LED発光装置の模式的な断面図である。
【図7】(A)〜(E)は、反射型LED発光装置の模式的な断面図である。
【図8】本第2の実施形態に係る蛍光体において、M(1)元素とM(2)元素との置換率と、相対発光強度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例51および比較例4に係る蛍光体の発光スペクトルである。
【図10】実施例51および比較例4に係る蛍光体の励起スペクトルである。
【図11】第2の実施形態に係る発光装置の発光スペクトル例である。
【図12】第2の実施形態に係る発光装置の発光スペクトル例である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(第1の実施形態に係る蛍光体)
本実施形態に係る第1の蛍光体は、一般式MmAaBbOoNn:Zで表記される母体構造を有する蛍光体である。ここでM元素は、前記蛍光体中においてII価の価数をとる元素から選択される1種類以上の元素である。A元素は、前記蛍光体中においてIII価の価数をとる1種類以上の元素である。B元素は、前記蛍光体中においてIV価の価数をとる1種類以上の元素である。Oは酸素である。Nは窒素である。Z元素は、前記蛍光体中において付活剤として作用する元素であって、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。
そして、該蛍光体において、(a+b)/mが4.0<(a+b)/m<7.0であり、n>oであり、a/mが0.5<a/m≦2.0であり、b/mが3.0≦b/m≦6.0の範囲にあり、o/mが0≦o/m≦1.5の範囲にあり、窒素はn=2/3m+a+4/3b−2/3oである。
【0071】
本実施形態に係る第1の上述の構成を有する蛍光体は、近紫外・紫外から青緑色の範囲(波長300nm〜500nm)に平坦な励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから620nm付近に発光のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持つという優れた初期発光特性を有し、且つ、耐熱性や耐水性に優れ、高温度環境下でも室温(25℃)下と比べ発光特性がほとんど劣化しない蛍光体である。尚、該蛍光体において、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1の範囲であると、発光強度および上記諸特性がさらに高くなることから、より好ましい構成である。
【0072】
この結果、当該蛍光体単独、もしくは該蛍光体と適宜な他色の蛍光体とを混合して蛍光体混合物とし、該蛍光体混合物と、近紫外・紫外LEDや青色LED等の発光部とを組み合わせることで、発光強度および輝度が高く、点灯時間の累積に拘わらず発光色の安定した高効率な発光を得ることができる。また、本実施形態の蛍光体組成式中のxを最適化し、または付活剤の種類および添加量を変化させることにより、高い発光効率を保持したまま発光色の変化が可能であり、当該蛍光体と青色LED等の発光部とを組み合わせることによって、様々な色温度において演色性の良い発光色を得ることが可能である。
【0073】
ここで、演色性について簡単に説明する。演色性とは、光源からの光が照射された物の色の見え方が、該光源の種類によって変わって見えることを指す。そして、光源の種類によるが、照明された物の色の再現性を示す演色性は、一般的に平均演色評価数(Ra)によって数値的に表すことができる。ここで、基準光で見た場合と全く同じ色が再現できれば最良の平均演色評価数(Ra=100)となり、再現される色の差異が大きくなるほどRa値が低下する(Ra<100)こととなる。
【0074】
勿論、照明用光源としては、色の見え方が、基準光を用いた場合と同じであるほど好ましいわけである。しかし、基準光が、可視光全域にわたり均一な光を持った白色光源であるのに対し、既存の白色LED照明は、可視光領域のある波長では光の強度が高く、ある波長では低いといったように光の強度にムラがあるため、光の強度が不足している波長域では色再現性が悪く演色性が低下してしまう。
【0075】
結局のところ、白色LED照明において演色性の高い発光を得るためには、使用される蛍光体の発光スペクトルのピークがブロードであることが求められる。そして、本実施形態の蛍光体における発光スペクトルの半値幅は80nm以上であり、発光スペクトルがブロードなピークを持つ蛍光体であることから、近紫外・紫外LEDや青色LED等の発光部とを組み合わせて白色LED照明を作製した場合に、平均演色評価数が高く演色性に優れたものを得ることができる。
更に、本実施形態の蛍光体は、視感度(輝度)が高い波長500nmから620nmの範囲で発光スペクトルのピーク位置をシフトさせることが可能であるため、他の蛍光体を混合することなく、目的の発光色の白色LED照明を作製することが可能である。特に、青色LEDとの組み合わせによる白色LED照明においては、本実施形態の蛍光体を使用することにより、相関色温度が10000Kから2500Kの範囲において、平均演色評価数Raが60以上を有する発光装置を得ることが出来る。さらに、CaAlSiN3:Eu等、他種赤色蛍光体を加えることによって、平均演色評価数Raが80以上の演色性に非常に優れた発光装置を得ることが出来る。
【0076】
本実施形態に係る第1の蛍光体は、波長300nmから500nmの範囲、中でも波長400nmから480nmの範囲に励起帯のピークを有するといった特徴がある。本実施形態の蛍光体が、波長300nmから500nmという広い範囲に渡って励起帯を有しているため、YAG:Ce蛍光体では困難な近紫外・紫外LEDとの組み合わせによっても、白色LED照明を作製することが可能である。更に、本実施形態の蛍光体の有する励起帯は平坦であるため、発光効率の良い励起帯が狭いYAG:Ce蛍光体のように、発光素子のバラツキなどにより励起光が最適な励起帯の範囲から外れてしまって、青色と黄色の発光強度のバランスが崩れ、白色光の色調が変化するという問題を回避することができる。
【0077】
また、一般的な発光素子のスペクトルの半値幅は20nm程度であるが、波長460nmの青色の発光素子を用いた場合、発光強度はわずかであるが420nm程度の波長の光も一部放出している。この一部の短波長の光が素子を被覆する樹脂の劣化や人体に影響を与えてしまう可能性がある。
本実施形態の蛍光体は、青色発光素子の発光波長(460nm)よりも短波長側に励起ピークを有しているため、青色素子から放出される発光スペクトルのうち、発光ピークよりも短波長側の発光波長に対して効率よく吸収する。蛍光体が発光ピークよりも短波長側の発光波長の光を効率よく吸収すれば、いわゆる蛍光体自身が紫外線吸収剤の役割を果たし、人体への影響や樹脂の劣化を防ぐ事が可能である。好ましくは発光装置の励起光となる発光素子のピーク波長から40nm短波長側の範囲に励起ピークを持ち、かつ励起ピークを100%として80%以上の励起帯を保持していれば有害な紫外線を吸収でき、人体や樹脂への影響を避けることが可能となる。
【0078】
本実施形態に係る第1の蛍光体は、近紫外・紫外から青緑色(波長300nm〜500nm)という広範囲に渡って平坦な励起帯を持ち、緑色から橙色の範囲にブロードで高効率な発光スペクトルが得られるうえ、熱や水に対する耐久性に優れ、特に高温下での発光特性が優れている。この理由としては概ね次のように考えられる。まず、本実施形態の蛍光体の一般式MmAaBbOoNn:Zにおいて、M元素がSrまたはBa、A元素がAlまたはGa、B元素がSi、Z元素がCeおよび/またはEuであり、a、b、o、nの値が、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1の範囲であることで、該蛍光体は、従来の窒化物、酸窒化物蛍光体とは構造が異なる、高温に対して耐久性のある結晶構造となったと考えられるからである。
【0079】
本実施形態に係る第1の蛍光体は、上述の組成式よりSrAl1+xSi4-xOxN7-x:Z
(Zは付活剤)と示される。従来の同様な窒化物蛍光体は、特開2003−206481号公報(特許文献2)で示されるSrLuSi4N7:Eu2+や、非特許文献J.Solid State Chem.,177,(2004),4687−4694で示されるSrYSi4N7:Eu2+、SrYSi4N7:Ce3+、SrYSi4N7:Eu2+や非特許文献Z.Anorg.Allg.Chem.,623,(1997),212−217で示されるSrYbSi4N7、BaYbSi4N7などが報告されている。これら従来の窒化物蛍光体をMASi4N7と表した場合、M元素はCa、Sr、Baなどのアルカリ土類元素であり、本実施形態の蛍光体と同様である。
しかし、Aサイトについては、従来の窒化物蛍光体がY、La、Yb、Lu、Gdなどの希土類元素であるのに対し、本実施形態の蛍光体が、希土類元素よりもイオン半径の小さいAl、GaまたはInなどのIIIA族元素を主体としている点で異なる。また、発光特性においては、本実施形態の蛍光体のSrAlSi4N7:Ceは黄緑色に発光するのに対し、上記従来の窒化物蛍光体であるSrYSi4N7にCeを付活したSrYSi4N7:Ceは青色に発光するなどの点でも異なる。ただし、本実施形態の蛍光体は、上記従来の窒化物蛍光体と組成は異なるものの、結晶構造は近い構造をもつと考えられる。
【0080】
また、本実施形態の蛍光体を製造するにあたり、製造上わずかに構造中に混入した酸素原子を電荷的に中性に保つため、結晶構造中のSiの一部をAlに置き換え、Alが置換した量と同量のNをOに置換させることによって安定した結晶構造が得られる。該結晶構造をとることで、各原子が該結晶構造中に規則的に存在でき、発光に使用される励起エネルギーの伝達が効率よく行われるため、発光効率が向上するのではないかと考えられる。また、該蛍光体が近紫外・紫外から青緑色(波長300nm〜500nm)という可視光領域までの広範囲に渡って平坦な励起帯を持っているのは、酸化物蛍光体に比べ共有結合性が強いためと考えられる。
【0081】
本実施形態に係る第1の蛍光体はわずかに酸素原子を含む組成であるが、酸素原子量は少ない方が好ましい。特に0≦x≦1.0の範囲、さらに好ましくは0<x<0.5の範囲を採ることで、化学的に安定な組成となるため、発光強度がさらに高くなると考えられる。詳細な理由は不明であるが、酸素原子が少ないことにより、該蛍光体中に発光に寄与しない不純物相が生じにくくなり、発光強度の低下が抑制されるのではないかと考えられる。つまり、不純物相が多く生じた場合には、単位面積当たりの蛍光体量が減少し、さらに、生成した不純物相が、励起光や蛍光体から発生した光を吸収することで蛍光体の発光効率が低下し、高い発光強度が得られなくなると考えられるからである。
【0082】
該推論は、焼成後の本実施形態の蛍光体に対するX線回折測定において、xの値が上述の0≦x≦1.0の範囲内にあると、AlN、Si3N4などの未反応原料の不純物相ピーク、および発光に寄与する相とは異なる不純物相のピークが確認されない、または確認される場合でもきわめて低い回折強度であるのに対して、xの値がx>1.0であると、AlN、Si3N4、および発光に寄与する相とは異なる相の顕著なピークが確認されることからも裏付けられると考えられる。そして、焼成後の蛍光体に対するX線回折パターン中に、上記不純物相のピークが見られないという特徴は、測定対象である蛍光体が、高い発光強度を有していることを示していると考えられる。
【0083】
酸素の適正範囲
本実施形態に係る第1の蛍光体の酸素含有量は、5.0重量%以下であることが好ましい。該酸素含有量を最適化することにより、蛍光体の初期発光特性(25℃)が向上するだけでなく、温度が高い環境下でも発光特性が室温(25℃)と比べほとんど劣化しない蛍光体を得ることができる。これは、SiサイトをAlによって置換しただけでは、AlはSiに比べイオン半径が大きいため、結晶構造が発光に適した構造からズレてしまう。さらに、SiがIV価であるのに対し、AlはIII価であるため、結晶中における価数が不安定になってしまうといった問題がおこる。しかし、Siサイトを置換するAl量に応じて、Nサイトの一部をOで置換すると、発光に最適な結晶構造とすることができ、さらに、母体結晶全体の価数も安定なゼロにすることができるため、優れた発光特性を示すものと考えられる。ただし、酸素の置換量が多すぎても発光特性の劣化を招くため、焼成後の蛍光体の酸素含有量は、蛍光体の全重量に対し5.0重量%以下の含有量であれば、発光特性が良好で十分に実用が可能な蛍光体となる。
【0084】
塩素、フッ素の適正範囲
本実施形態に係る第1の蛍光体の塩素または/及びフッ素の含有量は、0.0001重量%以上、1.0重量%以下であることが好ましい。蛍光体作製時に原料元素のフッ素および塩素の化合物を添加することにより、焼成時において添加した化合物が融解し周辺の原料を取り込み、蛍光体の結晶成長反応がより促進されることによって、発光効率の高い蛍光体を得ることが出来る。蛍光体中に添加された塩素または/及びフッ素は、おそらく酸素および窒素原子とわずかに置換されて生成後の蛍光体に残留する。塩素または/及びフッ素以外においても、融点が1000℃以上2000℃以下である組成構成元素(原料元素)の酸化物、窒化物を同時に用いることにより、フラックス効果が発揮され反応が促
進される。
【0085】
Mの適正範囲
一方、前記M元素は、Srを必須とし、Mg、Ca、Ba、Zn、II価の原子価をとる希土類元素、の中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Sr、Baから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい、最も好ましくは、Sr単独またはM元素として含まれるSr元素が50at%以上とすることである。
【0086】
Aの適正範囲
前記A元素は、Al、Ga、In、Tl、Y、Sc、La、P、As、Sb、Biの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Al、Ga、InのIIIA族元素から選択される1種類以上の元素であることがより好ましく、最も好ましくはAlである。A元素は、具体的には、Al単独、または、Alと、Ga、Inから適宜選択される一種以上の元素との併用である。Alは、窒化物であるAlNが一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0087】
Bの適正範囲
前記B元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Hf、Mo、W、Cr、Pb、Zrの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Siおよび/またはGeであることが好ましく、最も好ましくはSiである。B元素は、具体的には、Si単独、または、SiとGeとの併用である。Siは、窒化物であるSi3N4が一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0088】
Zの適正範囲
前記Z元素は、蛍光体の母体構造におけるM元素の一部を置換した形で配合される、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。従って本実施形態において、M元素のモル数を示すmは、Z元素のモル数zを含んだ数値である。
【0089】
本実施形態に係る第1の蛍光体を用いた白色LED照明を始めとする各種の光源に十分な演色性を発揮させる観点からは、該蛍光体の発光スペクトルにおけるピークの半値幅は広いことが好ましい。そして、該観点からZ元素は、Eu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることが好ましい。中でもZ元素として最も好ましくはCe、Euである。Z元素は、具体的には、Ce単独、または、Eu単独、またはCeとEuの2種の元素を併用することで、本実施形態の蛍光体の発光スペクトルが緑色から橙色にかけてブロードで、その発光強度が高くなるため、白色LED照明を始めとする各種光源の付活剤として好ましい。
【0090】
また、Z元素の添加量は、本実施形態の蛍光体を一般式MmAaBbOoNn:Zz(但し、0<m+z≦1)と表記した際、M元素と付活剤Z元素とのモル比z/(m+z)において、0.0001以上、0.50以下の範囲にあることが好ましい。M元素とZ元素とのモル比z/(m+z)が該範囲にあれば、付活剤(Z元素)の含有量が過剰であることに起因して濃度消光が生じ、これにより発光効率が低下することを回避でき、他方、付活剤(Z元素)の含有量が過少であることに起因して発光寄与原子が不足し、これにより発光効率が低下することも回避できる。さらに、該z/(m+z)の値が、0.001以上、0.30以下の範囲内であればより好ましく、前記範囲内であれば付活剤(Z元素)の添加量制御によって、該蛍光体の発光のピーク波長をシフトして設定することができ、得られた光源において色温度、輝度、演色性の調整の際に有効である。但し、該z/(m+z)の値の範囲の最適値は、付活剤(Z元素)の種類およびM元素の種類により若干
変動する。
【0091】
本実施形態に係る第1の蛍光体(一般式MmAaBbOoNn:Z)において、M元素としてSr、A元素としてAl、B元素としてSi、Z元素としてCeおよび/またはEuを選択し、m、a、b、o、nの値が、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1の範囲であるとき、生成後の蛍光体の組成分析により、当該蛍光体を構成する元素の重量比を求めたところ、Srは、22.0重量%以上、28.0重量%以下、Alは、5.0重量%以上、18.0重量%以下、Oは、5.0重量%以下、Nは、27.0重量%以上、Ceおよび/またはEuは、0を超え5.0重量%以下となった。前記組成以外はSiまたはその他微量に添加した元素である。該蛍光体へ、励起光として波長300nmから500nmの範囲にある単色光、または、これら単色光の混合光を照射した際、該蛍光体の発光スペクトルのピーク波長は波長500〜620nmの範囲となった。このとき、該蛍光体は十分な発光強度を示し、発光スペクトルの色度(x,y)の色度xが0.38〜0.55、色度yが0.40〜0.60の範囲にあるという、好ましい発光特性を示した。
【0092】
次に、本実施形態に係る第1の蛍光体の温度特性について説明する。
該蛍光体は、白色LED照明のみならず高温環境下で使用される場合がある。従って、温度の上昇とともに発光強度が低下するものや、熱劣化によって発光特性が劣化するものは好ましくない。例えば、硫化物蛍光体は、発光特性に優れるが温度の上昇とともに発光強度が低下するものや、熱による組成変化によって発光特性が劣化するものが多い。これに対し、本実施形態の蛍光体は優れた温度特性と耐熱性とを示し、励起光として、近紫外・紫外から青緑色の範囲(波長域300〜500nm)にある単色光、または、これら単色光の混合光が照射された際の、25℃における発光スペクトル中の最大ピークの相対強度の値を発光強度P25とし、上記励起光が照射された上記蛍光体の100℃における前記最大ピークの相対強度の値をP100としたときに、(P25-P100)/P25×100≦20.0となり、高温環境下でも優れた発光特性を示す。
本発明者らがLEDの発熱温度について調査を行なったところ、小型の小電流タイプのチップでは50℃程度であるが、より強い発光を得るために、大型の大電流タイプを使用した場合には80℃から150℃程度まで発熱することが解った。更に、白色LED照明とした場合は、樹脂によるチップの封止やリードフレームの構造によって発生した熱が蓄積され、樹脂または蛍光体混合物部分の温度が100℃程度になる場合があることが判明した。即ち、(P25-P100)/P25×100≦20.0、さらに好ましくは(P25-P100)/P25×100≦10.0であれば、発光源であるLED等の長時間点灯に伴う発熱が蓄積された場合であっても、当該発熱による発光強度の低下を、白色LED照明等として問題のない水準に収めることが出来る。
【0093】
本実施形態に係る第1の蛍光体は粉末状とされることで、白色LED照明を始めとする多様な発光装置に容易に適用可能となる。ここで該蛍光体は、粉体の形で用いられる場合には、50.0μm以下の1次粒子および該1次粒子の凝集体を含み、該1次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉末の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0μm以上、10.0μm以下である。これは、平均粒径が50.0μm以下であれば、その後の粉砕工程が容易に行えることと、蛍光体粉体においては発光が主に粒子表面で起こると考えられるため、粉体単位重量あたりの表面積を確保でき輝度の低下を回避できるからである。さらに、平均粒径が50.0μm以下であれば、該粉体をペースト状とし、発光体素子等に塗布した場合にも該粉体の密度を高めることができ、この観点からも輝度の低下を回避できるからである。また、本発明者らの検討によると、詳細な理由は不明であるが、蛍光体粉末の発光効率の観点から、平均粒径が1.0μmより大きいことが好ましいことも判明した。
以上のことより、本実施形態の蛍光体における粉体の平均粒径は、1.0μm以上50
.0μm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径(D50)は、ベックマン・コールター社製LS230(レーザー回折散乱法)により測定された値である。また、比表面積(BET)の値としては、0.05m2/g以上、5.00m2/g以下であることが、上記観点からして好ましい。
【0094】
さらに、粉体を塗布する際の塗布むらを抑制する観点からは、粒度分布の分布幅がシャープであることが好ましい。ここで粒度分布の分布幅に関する指標として、変動係数CVが用いられる。そして変動係数CVは次式により算出されるが、白色LEDで使用する蛍光体においては、当該変動係数CVの値が100%以下であることが好ましい。
変動係数CV(%)=標準偏差/算術平均粒径×100・・・(式)
【0095】
(第1の実施形態に係る蛍光体の製造方法)
次に、本実施形態に係る第1の蛍光体の製造方法について、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ceと表記したときx=0.25、Ce/(Sr+Ce)=0.030である。)の製造を、一例として説明する。
【0096】
一般的に蛍光体は固相反応により製造されるものが多く、本実施形態の蛍光体も固相反応によって製造することができる。しかし、製造方法はこれらに限定されるものではない。M元素、A元素、B元素の各原料は窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩などの市販されている原料でよいが、純度は高い方が好ましいことから2N以上、好ましくは3N以上のものを準備する。各原料粒子の粒径は、一般的には、反応を促進させる観点から微粒子の方が好ましいが、原料の粒径、形状により、得られる蛍光体の粒径、形状も変化する。このため、最終的に得られる蛍光体に求められる粒径や形状に合わせて、近似の粒径を有する窒化物等の原料を準備すればよいが、好ましくは50μm以下の粒子径、さらに好ましくは0.1μm以上10.0μm以下の粒子径の原料を用いると良い。
Z元素も原料は市販の窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩もしくは単体金属が好ましい。勿論、Z元素についても純度は高い方が好ましく、2N以上、さらに好ましくは3N以上のものを準備する。
【0097】
SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)の製造であれば、例えばM元素、A元素、B元素の原料として、それぞれSrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)を準備し、Z元素としては、CeO2(3N)を準備するとよい。原料の仕込み組成と、焼成後の組成との間にはズレを生じることを考慮して、何点かの検討を行い、焼成後において狙いの組成が得られる仕込み組成を求める。焼成後において、各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030の試料となるように、焼成前の仕込みの段階において、各原料の混合比を、それぞれ、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol、CeO2を0.030mol秤量し混合する。
ここで、Si3N4に関して目的の組成よりも0.50/3mol多めに秤量している。これは、1700℃以上の焼成および長時間の焼成においては、Si3N4が高温長時間の焼成によって次第に昇華していくため、通常のモル比より多めに仕込んでおいた方が好ましいからである。ただし、焼成時の条件により変化するため、各々の焼成条件によって調整する必要がある。
また、生成後の試料の酸素量については、M元素(ここではSr)の原料として炭酸塩を用いた場合、炭酸塩が高温焼成によって分解・窒化するため、焼成条件の調整により必要量の酸素を残存させる形で作成した。ただし、炭酸塩を用いずに、M元素、A元素、B元素の窒化物とAl2O3やSiO2などの酸化物と組み合わせて酸素量を調整しても良い。
【0098】
さらに、本実施形態に係る第1の蛍光体の結晶性を向上させるために、M元素または/及びA元素の、塩化物または/及びフッ化物、を添加すると、反応が促進され、焼結温度・時間が低減されて好ましい。同様に、M元素または/及びA元素の、酸化物または/及び窒化物を添加しても、同様の効果を得ることが出来好ましい。
炭酸塩など低融点の原料を使用した際には、原料自体がフラックスとして働き、反応が促進される場合もあるが、M元素または/及びA元素の化合物、特に融点が1000℃以上2000℃以下であるM元素または/及びA元素のフッ化物、塩化物、酸化物、窒化物を、原料粉体の混合物へ0.01wt%から5.0wt%添加することにより、さらにフラックス効果が発揮される。
特に、フッ化物としてはSrF2、BaF2、AlF3が好ましく、塩化物としてはSrCl2、BaCl2、AlCl3、酸化物としてはAl2O3、Ga2O3、In2O3、SiO2、GeO2、窒化物としてはCa3N2、Sr3N2、Ba3N2、GaN、InN、BNが好ましく、特に好ましくはSrF2、BaF2、Al2O3、Ga2O3が好ましい。フラックスとして前記以外の別の物質を添加してもよいが、該フラックスが不純物となり、蛍光体の特性を悪化させる可能性があるので、M元素または/及びA元素の、塩素または/及びフッ素化合物、M元素または/及びA元素の酸化物または/及び窒化物が好ましい。
【0099】
該試料の秤量・混合については、大気中で行っても良いが、各原料元素の窒化物が水分の影響を受けやすいため、水分を十分取り除いた不活性雰囲気下のグローブボックス内での操作が便宜である。混合方式は湿式、乾式どちらでも構わないが、湿式混合の溶媒として純水を用いると原料が分解するため、適当な有機溶媒または液体窒素を選定する必要がある。装置としては、ボールミルや乳鉢等を用いる公知の方法でよい。
【0100】
混合が完了した原料をるつぼに入れ、焼成炉において窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気中で1400℃以上、より好ましくは1600℃以上2000℃以下で30分以上保持して焼成する。ここで、焼成炉内の雰囲気ガスは、窒素ガスが80%以上含まれていることが好ましい。
また、焼成温度が1400℃以上であれば、固相反応が良好に進行して発光特性に優れた蛍光体を得ることが可能となる。2000℃以下で焼成すれば、過剰な焼結や、融解が起こることを防止できる。尚、焼成温度が高いほど固相反応が迅速に進むため、保持時間を短縮出来る。一方、焼成温度が低い場合でも、該温度を長時間保持することにより目的の発光特性を得ることが出来る。しかし、焼成時間が長いほど粒子成長が進み、粒子形状が大きくなるため、目的とする粒子サイズに応じて焼成時間を設定すればよい。
【0101】
該焼成中の炉内圧力は0.001Mpa以上、1.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは0.01MPaを超え、0.5MPa以下である。(本実施形態において、炉内圧力とは大気圧からの加圧分の意味である。)これは、1.0MPa以下の圧力下で焼成することにより、粒子間の焼結が進み過ぎることを回避でき、焼成後の粉砕を容易化でき、また、0.001Mpa以上の圧力下で焼成することにより、焼成時に大気中から炉内への酸素の侵入を抑えることが可能となるためである。
尚、るつぼとしてはAl2O3るつぼ、Si3N4るつぼ、AlNるつぼ、サイアロンるつぼ、C(カーボン)るつぼ、BN(窒化ホウ素)るつぼなどの、上述したガス雰囲気中で使用可能なものを用いれば良いが、BNるつぼを用いると、るつぼからの不純物混入を回避することができ好ましい。
【0102】
また、焼成中は、上述したガス雰囲気を、例えば0.1ml/min以上の流量で流した状態で焼成することが好ましい。これは、焼成中には原料からガスが発生するが、上述の窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気を流動(フロー)
させることにより、原料から発生したガスが炉内に充満して反応に影響を与えることを防止でき、この結果、蛍光体の発光特性の低下を防止できるからである。特に、原料に炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩など、高温で分解する原料を使用した際にはガスの発生量が多いため、焼成炉内にガスをフローさせ、発生したガスを排気させることが好ましい。
【0103】
本実施の形態では、原料を粉末のまま焼成することが好ましい。一般的な固相反応では、原料同士の接点における原子の拡散による反応の進行を考慮し、原料全体で均一な反応を促進させるために、原料をペレット状にして焼成することもある。しかし、該蛍光体原料の場合には、粉末のまま焼成することで焼成後の解砕が容易であり、1次粒子の形状が理想的な球状となることから、原料を粉末として扱うことが好ましい。更に、原料として、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩を使用した場合には、焼成時の原料の分解によりCO2ガスなどが発生するが、原料が粉体であれば十分に抜けきってしまうので発光特性に悪影響を及ぼさないという観点からも、原料が粉体であることが好ましい。
【0104】
焼成が完了した後、焼成物をるつぼから取り出し、乳鉢、ボールミル等の粉砕構成を用いて、所定の平均粒径となるように粉砕し、組成式SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)で示される蛍光体を製造することができる。得られた蛍光体はこの後必要に応じて、硫酸・塩酸・硝酸・フッ酸または水による洗浄、分級、焼鈍、SiO2または導電性物質を表面に付着させる表面処理を行う。
【0105】
M元素、A元素、B元素、Z元素として、他の元素を用いた場合、および付活剤であるZ元素の付活量を変更した場合にも、各原料の仕込み時の配合量を所定の組成比に合わせることで、上述したものと同様な製造方法により蛍光体を製造することができる。
【0106】
(第2の実施形態に係る蛍光体)
本実施形態に係る第2の蛍光体は、一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnで表記される母体構造を有する蛍光体である。ここでM(1)元素は、前記蛍光体中において、I価の価数をとる元素から選択される1種類以上の元素であり、M(2)元素は、前記蛍光体中において、II価の価数をとる元素から選択される1種類以上の元素である。A元素は、前記蛍光体中においてIII価の価数をとる1種類以上の元素である。B元素は、前記蛍光体中においてIV価の価数をとる1種類以上の元素である。Oは酸素である。Nは窒素である。Z元素は、前記蛍光体中において付活剤として作用する元素であって、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。
【0107】
該蛍光体の結晶構造において、M(1)元素,M(2)元素,Z元素は同一の原子サイトに配置される。したがって、該蛍光体の結晶構造は、この同一サイトを占める元素に対する他のA元素、B元素、O(酸素)元素、およびN(窒素)元素の比によって規定される。ここで、上記組成式において、m(1)+m(2)+z=1となるように規格化することにより、それぞれの構成比率は、a、b、o、nの値と一致して扱えるようになり、簡便な表記とすることができる。そこで、本発明においては、この表記方法により結晶構造中の元素の構成比率を表現することとする。
本発明者による各元素比の検討結果より、この(M(1),M(2),Z)元素、A元素、B元素の構成比が、(m(1)+m(2)+z=1となるよう規格化したとき、)0.5≦a≦2.0、3.0≦b≦7.0、m(1)>0、m(2)>0、z>0、4.0≦(a+b)≦7.0の関係を満たすとき、近紫外・紫外から青緑色の範囲(波長300nm〜500nm)に励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから600nm付近に発光のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持つという好ましい発光特性を有する蛍光体を得ることが可能となった。
【0108】
これは、各元素の構成比がこの範囲にあることで、該蛍光体とは別の結晶構造を有する不純物相の発生が抑制され、発光特性が維持される為であると考えられる。同様に、酸素元素の比率は、0<o≦4.0の範囲にあるとき、高い発光特性を有する蛍光体を得ることができるが、これも、酸素量がこの範囲にあることで、不純物の発生が起こらず、発光特性が維持される為である。
また窒素元素に関しては、それぞれの構成元素の電荷を考えると、n=1/3m(1)+2/3m(2)+z+a+4/3b−2/3oを満たすとき、結晶構造内の電荷の和がゼロとなり最も安定な結晶構造となる為であると考えられる。従って、窒素量がこの範囲にあることにより、高い発光特性を得ることができるのであると考えられる。
【0109】
上記の組成範囲中において(m(1)+m(2)+z=1となるように規格化したときに、)、0.8≦a≦2.0、3.0≦b≦6.0、0<o≦1.0を満たすとき、前述の不純物の発生を、さらに大きく抑えることができ、該蛍光体物質をほぼ単相で得ることができる。このため、発光強度・輝度に優れた蛍光体を得ることができるため好ましい。
【0110】
上記組成範囲中において、特に、0<o≦1.0としたとき、a=1+o、b=4−o、n=7−oを満たす場合においては、発光特性に優れた蛍光体を得ることが出来た。これは、該蛍光体の結晶構造が発光に最も適した構造となる為であると考えられる。そして、より一層発光強度や輝度が向上するため、最も好ましい構成比である。
【0111】
上記従来の蛍光体における発光機構は、Mサイトが、付活剤元素とよばれるZ元素により一部置換されることにより発光特性を示すものである。ここでZ元素は、本来Mサイトを占める元素とはイオン半径やイオンの価数が異なっている。このため、発光を得ることを目的として、母相となる物質のMサイトをZ元素で置換した場合、M元素とZ元素とのイオン半径の違いにより結晶構造に歪みを生じたり、M元素とZ元素とのイオン価数の違いにより電荷の釣り合いが崩れたりすることにより、結晶構造が不安定なものになってしまう。このような結晶構造の不安定性が存在すると、当該結晶内に侵入した励起光のエネルギーが散逸により失われ、効率的に発光中心に到達できない状況をもたらす。さらに、より高い発光特性を得るため、発光に寄与するZ元素の置換量を増加させた場合には、この不安定性がますます顕著になる。そして、この結晶構造の不安定性ため、高い発光強度・輝度をもつ蛍光体の作製が困難だったのであると考えられる。これに対し、本実施形態に係る蛍光体は、Mサイトの元素を、II価の元素M(2)と、I価の元素M(1)との混合とすることにより、Z元素によるMサイトの置換に伴う電荷の不均衡や結晶構造の歪みを緩和し、結晶構造の安定性を高めているものと考えられる。
【0112】
例えば、II価であるM(2)元素が占めるM(2)サイトへ、よりイオン半径が小さいIII価の付活剤元素を導入した場合には、局所的に結晶格子が縮み、且つ、正の電荷が付活剤の分だけ過剰となるため結晶構造が構造的・電気的に不安定になる。ここへ、I価のM(1)元素の原子を、Z元素の原子と同数程度導入することにより、まず電荷の釣り合いを回復することができる。さらに、M(1)元素が、Z元素よりもイオン半径が大きいものであれば、結晶構造の歪みも緩和することができる。
【0113】
以上のことから、M(1)元素の原子によるM(2)元素サイトの置換量は、Z元素の原子の数と同数程度が好ましい。具体的には、m(1)の値が、0<m(1)≦0.05であることが好ましい。ここで、m(1)=1−m(2)−zより、当該m(1)の値は、M(1)元素、M(2)元素、およびZ元素で構成されるサイトにおいてM(1)元素が占めている割合(すなわちM(1)元素のサイト置換率)を示している。
当該M(1)元素によるM(2)サイトの置換により、蛍光体の結晶構造を安定化させることで、より発光強度や輝度の高い蛍光体の作製が可能となった。
【0114】
ここで、M(1)元素についてさらに説明する。
M(1)元素はI価の価数を持つ元素であり、主にLi、Na、K、Rbなどのアルカリ金属である。このM(1)元素は後述のM(2)元素を一部置換する形で蛍光体を構成する。M(1)元素の種類・置換量は、M(2)元素、付活剤元素Zのイオン半径・電荷の違いを考慮して選択すればよい。
【0115】
例えば、本発明の好ましい実施形態の一例として、M(2)元素にSr、Z元素にCeが選択された場合、Sr2+のサイトが一部Ce3+に置き換えられる為、結晶格子が局所的に縮み、さらに結晶格子中の正の電荷が過剰となる。この場合、電荷の釣り合いを保つためには、Z元素と同程度の量のM(1)元素を導入すればよいが、同時に結晶格子の歪みを緩和するためには、イオン半径がCe3+より大きなKやRbを導入することが好ましい。特にKは入手が容易であり、製造コストの面からも好ましい。
【0116】
次に、M(2)元素についてさらに説明する。
M(2)元素は、まずSrを選択し、さらに、Mg、Ca、Ba、Zn、II価の原子価をとる希土類元素の中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましい。さらには、Sr単独または、SrとBaの併用であることがより好ましい、最も好ましくはSrとBaの併用であり、そのSrの割合を95at%以上100at%未満とすることである。このような構成にすることにより、高い発光特性をもった蛍光体となる。
【0117】
次に、A元素についてさらに説明する。
A元素は、Al、Ga、In、Tl、Y、Sc、La、P、As、Sb、Biの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Al、Ga、InのIIIA族元素から選択される1種類以上の元素であることがより好ましく、最も好ましくはAlである。Alは、窒化物であるAlNが一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0118】
次に、B元素についてさらに説明する。
B元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Hf、Mo、W、Cr、Pb、Zrの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Siおよび/またはGeであることが好ましく、最も好ましくはSiである。Siは、窒化物であるSi3N4が一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0119】
次に、Z元素についてさらに説明する。
Z元素は、蛍光体の母体構造におけるM(1)元素またはM(2)元素の一部を置換した形で配合される、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。
本実施形態の蛍光体を用いた白色LED照明を始めとする各種の光源に十分な演色性を発揮させる観点からは、該蛍光体の発光スペクトルにおけるピークの半値幅を広げるものであることが好ましい。そして、当該観点からZ元素は、Eu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることが好ましく、中でも最も好ましくはCeである。
【0120】
また、Z元素の添加量は、本実施形態の蛍光体を一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnと表記した際、付活剤Z元素による、M(1)、M(2)元素サイトの置換率であるz(但し、z/(m(1)+m(2)+z)=zである。)の値は、0.0001以上、0.50以下の範囲にあることが好ましい。付活剤Z元素によるサイト置換率zが当該範囲にあれば、付活剤(Z元素)の含有量が過剰であることに起因する濃度消光により発光効率低下することを回避でき、他方、付活剤(Z元素)の含有量が過少となって発光寄与原子が不足し、これにより発光効率が低下することも回避できる。さらに、当該zの値が、0.
001以上、0.10以下の範囲内であればより好ましい。但し、当該zの値の範囲の最適値は、付活剤(Z元素)の種類およびM(1)、M(2)元素の種類により若干変動する。
【0121】
本実施形態に係る第2の蛍光体(一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNn)において、M(1)元素としてK、M(2)元素としてSr、A元素としてAl、B元素としてSi、Z元素としてCeとしたとき、作成後の蛍光体の組成分析により、当該蛍光体を構成する元素の重量比を求めたところ、Srは、21.0重量%以上、27.0重量%以下、Alは、8.0重量%以上、14.0重量%以下、Oは、0.5重量%以上、6.5重量%以下、Nは、26.0重量%以上、32.0重量%以下、Ceは、0を超え4.0重量%以下となった。またKの重量比は0を超えて1.0重量%未満であった。前記組成以外はSiまたは原料中に混入した不純物である。該蛍光体へ、励起光として波長300nmから500nmの範囲にある単色光、または、これら単色光の混合光を照射した際、該蛍光体の発光スペクトルのピーク波長は波長500〜600nmの範囲となった。このとき、該蛍光体は十分な発光強度を示し、発光スペクトルの色度(x,y)の色度xが0.380〜0.550、色度yが0.400〜0.600の範囲にあるという、好ましい発光特性を示した。
【0122】
前述の通り、本実施形態において、M(2)元素をSrおよびBaとし、そのSrの割合を95at%以上100at%未満とすることにより、高い発光効率を得ることができる。この場合、蛍光体に対するBa元素の重量比を測定したところ0を超えて2.0重量%未満であった。
【0123】
本実施形態に係る第2の蛍光体は粉末状とされることで、白色LED照明を始めとする多様な発光装置に容易に適用可能となる。ここで該蛍光体は、粉体の形で用いられる場合には、50.0μm以下の一次粒子および該一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉末の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0μm以上、20.0μm以下である。これは、平均粒径が50.0μm以下であれば、その後の粉砕工程が容易に行えることと、蛍光体粉体においては発光が主に粒子表面で起こると考えられるため、粉体単位重量あたりの表面積を確保でき輝度の低下を回避できるからである。さらに、平均粒径が50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下であれば、該粉体をペースト状とし、発光体素子等に塗布した場合にも該粉体の密度を高めることができ、この観点からも輝度の低下を回避できるからである。また、本発明者らの検討によると、詳細な理由は不明であるが、蛍光体粉末の発光効率の観点から、平均粒径が1.0μmより大きいことが好ましいことも判明した。
以上のことより、本実施形態の蛍光体における粉体の平均粒径は、1.0μm以上50.0μm以下であることが好ましい。尚、ここでいう平均粒子径(D50)は、ベックマン・コールター社製 LS230(レーザー回折散乱法)により測定された値である。また、比表面積(BET)の値としては、0.05m2/g以上、5.00m2/g以下であることが、上記観点からして好ましい。
【0124】
(第2の実施形態に係る蛍光体の製造方法)
本実施形態に係る第2の蛍光体の製造方法について、(K0.04Sr0.93Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7の製造(前述の組成式においてM(1)元素をK、M(2)元素をSrとし、o=0.30、m(1)=0.04とした場合)を、例として説明する。
【0125】
一般的に蛍光体は固相反応により製造されるものが多く、本実施形態の蛍光体も固相反応によって製造することができる。しかし、製造方法はこれらに限定されるものではない。M(1)元素、M(2)元素、A元素、B元素の各原料は窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩などの市販されている原料でよいが、純度は高い方が好ましいこ
とから2N以上、好ましくは3N以上のものを準備する。各原料粒子の粒径は、一般的には、反応を促進させる観点から微粒子の方が好ましいが、原料の粒径、形状により、得られる蛍光体の粒径、形状も変化する。このため、最終的に得られる蛍光体に求められる粒径や形状に合わせて、近似の粒径を有する窒化物等の原料を準備すればよいが、好ましくは50μm以下の粒子径、さらに好ましくは0.1μm以上10.0μm以下の粒子径を有する原料を用いると良い。
【0126】
Z元素も原料は市販の窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩または単体金属が好ましい。勿論、Z元素についても純度は高い方が好ましく、2N以上、さらに好ましくは3N以上のものを準備する。
【0127】
(K0.04Sr0.93Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7の製造であれば、例えばM(1)元素、M(2)元素、A元素、B元素の原料として、それぞれK2CO3(3N)、SrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)を準備し、Z元素としては、CeO2(3N)を準備するとよい。原料の仕込み組成と、焼成後の組成との間にはずれが生じることを考慮して、事前に何点かの検討を行い、焼成後において狙いの組成が得られる仕込み組成を求める。本実施形態では、例えば焼成後において、各元素のモル比がK:Sr:Al:Si:O:Ce=0.04:0.93:1.3:3.7:0.30:0.030の試料となるようにするために、焼成前の仕込みの段階において、各原料の混合比を、それぞれ、K2CO3を0.04/2mol、SrCO3を0.92mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.5/3mol、CeO2を0.050mol秤量し混合する。
ここで、最終的な目標とする組成式とは異なった重量比で秤量している。これは、1700℃以上の焼成および長時間の焼成においては、原料が次第に分解・昇華していくため、この分のずれを考慮しているためである。ただし、それぞれの原料が分解・昇華する割合は焼成時の条件により変化するため、各々の焼成条件によって調整する。
【0128】
また、生成後の試料の酸素量については、M(1)(ここではK)、M(2)元素(ここではSr)の原料として炭酸塩を用いた場合、炭酸塩が高温焼成によって分解・窒化するため混合比から算出される重量比から大きく低下するが、必要量の酸素が残存するように後述の焼成条件を調整した。ただし、炭酸塩を用いずに、M(1)、M(2)元素、A元素、B元素の窒化物とAl2O3やSiO2などの酸化物と組み合わせて、酸素量を調整しても良い。尚、還元性を増すために微量のC(カーボン)粉末を原料に添加しても良い。ただし、この場合には焼成後に残留するカーボン成分に注意しなければならない。
【0129】
該試料の秤量・混合については、大気中で行っても良いが、各原料元素の窒化物が水分の影響を受けやすいため、水分を十分取り除いた不活性雰囲気下のグローブボックス内での操作が便宜である。混合方式は湿式、乾式どちらでも構わないが、湿式混合の溶媒として純水を用いると原料が分解しやすいため、適当な有機溶媒または液体窒素を選定しても良い。装置としては、ボールミルや乳鉢等を用いる公知の方法でよい。
【0130】
混合が完了した原料をるつぼに入れ、焼成炉において窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気中で1400℃以上、より好ましくは1600℃以上2000℃以下で30分間以上保持して焼成する。ここで、焼成炉内の雰囲気ガスは、窒素ガスが80%以上含まれていることが好ましい。
また、焼成温度が1400℃以上であれば、固相反応が良好に進行して発光特性に優れた蛍光体を得ることが可能となる。2000℃以下で焼成すれば、過剰な焼結や、融解が起こることを防止できる。尚、焼成温度が高いほど固相反応が迅速に進むため、保持時間を短縮できる。一方、焼成温度が低い場合でも、当該温度を長時間保持することにより目的の発光特性を得ることが出来る。しかし、焼成時間が長いほど粒子成長が進み、粒子形
状が大きくなるため、目的とする粒子サイズに応じて焼成時間を設定すればよい。
【0131】
該焼成中の炉内圧力は0.0001MPa以上、1.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは0.01MPaを超え、0.5MPa以下である。(本実施形態において、炉内圧力とは大気圧からの加圧分の意味である。)これは、1.0MPa以下の圧力下で焼成することにより、粒子間の焼結が進み過ぎることを回避でき、焼成後の粉砕を容易にできるからである。一方で、0.0001Mpa以上の圧力下で焼成することにより、焼成時に大気中から炉内への酸素の侵入を抑えることが可能となる。尚、るつぼとしてはAl2O3るつぼ、Si3N4るつぼ、AlNるつぼ、サイアロンるつぼ、C(カーボン)るつぼ、BN(窒化ホウ素)るつぼなどの、上述したガス雰囲気中で使用可能なものを用いれば良いが、特に、窒化物からなるるつぼを用いると良い。中でもBNるつぼを用いると、るつぼからの不純物混入を回避することができ好ましい。得られる蛍光体粉末の発光特性を損なわないためには、るつぼから混入する不純物の量は0.1wt%以下に抑えることが好ましい。とくに不純物としてのB(ボロン)および/またはC(カーボン)は0.1wt%以下とすることが好ましい。
【0132】
また、焼成中は、上述したガス雰囲気を、例えば0.1ml/min以上の流量で流した状態で焼成することが好ましい。これは、焼成中に原料からガスが発生するが、上述の窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気を流動(フロー)させることにより、原料から発生したガスが炉内に充満して反応に影響を与えることを防止でき、この結果、蛍光体の発光特性の低下を防止できるからである。特に、原料に炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩など、高温で分解する原料を使用した際にはガスの発生量が多いため、焼成炉内にガスをフローさせ、発生したガスを排気させることが好ましい。
【0133】
本実施の形態では、原料を粉末のまま焼成することが好ましい。一般的な固相反応では、原料同士の接点における原子の拡散による反応の進行を考慮し、原料全体で均一な反応を促進させるために、原料をペレット状にして焼成することもある。しかし、該蛍光体原料の場合には、粉末のまま焼成することで焼成後の解砕が容易であり、1次粒子の形状が理想的な球状となることから、原料を粉末として扱うことが好ましい。更に、原料として、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩を使用した場合には、焼成時の原料の分解によりCO2ガスなどが発生するが、原料が粉体であれば、これらのガスが十分に抜けきってしまうので発光特性に悪影響を及ぼさないという観点からも、原料が粉体であることが好ましい。
【0134】
本実施の形態では、上記に示した条件での焼成工程を少なくとも二回以上繰り返し、更に各焼成工程間で一旦試料を焼成炉から取り出し、粉砕・混合操作を加えることが好ましい。焼成を繰り返すことにより焼成物の均一性が向上し、蛍光体の発光効率が向上する。粉砕・混合操作においては、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の公知の方法でよい。
【0135】
焼成が完了した後、焼成物をるつぼから取り出し、乳鉢、ボールミル等を用いて、所定の平均粒径となるように粉砕し、組成式(K0.04Sr0.93Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7で示される蛍光体を製造することができる。得られた蛍光体はこの後、必要に応じて、酸または水による洗浄、分級、焼鈍、表面処理を行う。
【0136】
M(1)元素、M(2)元素、A元素、B元素、Z元素として、他の元素を用いた場合、および付活剤であるZ元素の付活量を変更した場合にも、各原料の仕込み時の配合量を所定の組成比に合わせることで、上述したものと同様な製造方法により蛍光体を製造することが
できる。
特に本実施形態においては、M(2)元素をSrとBaの混合とすることで高い発光特性をもつ蛍光体を作製可能である。この場合、所望の比率となるようSr、Baそれぞれの窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩、等を秤量・混合すれば良い。尚、Ba化合物に関しては塩化バリウム、フッ化バリウム、酸化バリウム、炭酸バリウムを用いると、発光効率の高い蛍光体となるため好ましく、中でも酸化バリウムが好ましい。
【0137】
本実施形態に係る第2の蛍光体は幅広い波長範囲の光を吸収し、波長500nm〜600nmの緑色〜黄色の発光を生じるため、第一の波長を発生する発光部と本実施形態の蛍光体を組み合わせることにより、前記第一の波長と異なる波長の光を発生させることができ、様々な光源を作製することが可能である。
【0138】
(第1の実施形態に係る蛍光体を用いた発光装置)
本実施形態に係る第1の蛍光体と、第1の波長の光を発する発光部とを有し、前記第1の波長の光の一部または全部を励起光とし、前記蛍光体から前記第1の波長と異なる波長を発光させる発光装置について説明する。ここで、上記第1の波長は、300nmから500nmの波長である。
第1の波長の光を発する発光部として、例えば、近紫外・紫外から青緑色のいずれかの範囲で発光するLED発光素子、紫外光を発生する放電灯を用いることができる。そして、本実施形態の蛍光体を含んだ蛍光体混合物を該LED発光素子と組み合わせた場合には、各種の照明ユニットや、ディスプレイ装置用バックライト等を製造することができ、本実施形態の蛍光体混合物を該放電灯と組み合わせた場合にも、各種蛍光灯や照明ユニット、ディスプレイ装置用バックライト等を製造することができる。さらに、本実施形態の蛍光体を、電子線を発生する装置と組み合わすことによってもディスプレイ装置を製造することができる。
【0139】
特に、本実施形態の蛍光体は温度特性に優れているため、長時間の点灯使用により、発光装置の温度が上昇した際にも、発光特性の低下がほとんど起こらないものを作製することが可能となる。また、該蛍光体は、発光スペクトルが緑色から橙色の範囲にピークを持ち、ピーク形状がブロードであるため、演色性の観点から白色LED照明用蛍光体としてふさわしい。さらに、該蛍光体は、励起帯が近紫外・紫外〜青緑色(波長域300〜500nm)の広範囲に平坦な励起帯を有するため、例えば、白色LED照明として提案されている高輝度青色LED(波長460nm付近)の青色発光と、蛍光体の黄色発光の補色関係とを利用して白色を得る方式の白色LED照明の場合、或いは近紫外・紫外発光(波長380〜410nm付近)するLEDと、該LEDから発生する近紫外・紫外光により励起されて赤色(R)発光する蛍光体、緑色(G)発光する蛍光体、青色(B)発光する蛍光体とを組み合わせ、該R・G・B他の蛍光体から得られる光の混色を利用して白色を得る方式の白色LED照明の場合にも、いずれも最高の発光強度に近い状態を発揮させながら使用することが可能である。
即ち、近紫外・紫外〜青緑色の光を発する発光部と本実施形態の蛍光体を組み合わせることにより、高出力、演色性の良い白色光源および白色LED照明、さらにはこれらを使用した照明ユニットを得ることができる。
【0140】
以上説明した発光装置を高演色性照明用光源として使用する場合には、演色性に優れる発光スペクトルを有することが必要であるので、JIS Z 8726の評価方法を用いて、本実施形態の蛍光体を含む蛍光体混合物を組み込んだ発光装置の演色性を評価した。JIS Z 8726の評価において、該光源の平均演色評価数Raが60以上であれば、一般用照明として用いることができ、さらにRaが80以上であれば優れた発光装置といえる。そして、さらに好ましくは、日本人女性の肌色の成分を示す指標である特殊演色
評価数R15が80以上、更に特殊演色評価数R9が60以上であれば、非常に優れた発光装置といえる。ただし、演色性を求めない用途や異なる目的によっては上記指標を満たさなくても良い。
【0141】
本発明者らは波長300nmから500nmの範囲のいずれかの発光をおこなう発光部からの光が、本実施形態の蛍光体を含む蛍光体混合物へ照射され、該蛍光体混合物が発光をおこなう発光装置を作製した。尚、発光部としては波長460nmの発光をおこなう発光素子を用いた。そして、該発光装置の発光スペクトルの演色性を評価した。その結果、本実施形態の蛍光体を組み込んだ発光装置の演色性は、相関色温度10000Kから2500Kの範囲において、Raは60以上であった。さらに、本実施形態の蛍光体に赤色蛍光体を加えた蛍光体混合物を組み込んだ発光装置は、R15が80以上、R9が60以上の高い演色性を示し、高輝度で、演色性に非常に優れた光源であることが判明した。
また、本実施形態の発光装置における発光スペクトルの相関色温度は、上述のように10000Kから2500Kの範囲にあることが好ましいが、少なくとも7000Kから2500Kの範囲にあることが最も好ましい。
【0142】
(第2の実施形態に係る蛍光体を用いた発光装置)
本実施形態に係る第2の蛍光体は、とくに波長300nm〜500nmの励起光により高効率で発光するため、前記発光部の発光波長はこの範囲にあることが好ましい。
【0143】
特に、本実施形態に係る第2の蛍光体は、波長500nm〜600nmの緑色〜黄色の波長範囲において非常にブロードで強度の大きな発光スペクトルを示すため、例えば波長460nmの青色光を発生する光源と組み合わせることで演色性が高く、高輝度の発光装置を製造することができる。
【0144】
ここで、演色性について簡単に説明する。演色性とは、光源からの光が照射された物の色の見え方が、該光源の種類によって変わって見えることを指す。そして、光源の種類によるが、照明された物の色の再現性を示す演色性は、一般的に平均演色評価数(Ra)によって数値的に表すことができる。ここで、基準光で見た場合と全く同じ色が再現できれば最良の平均演色評価数(Ra=100)となり、再現される色の差異が大きくなるほどRa値が低下する(Ra<100)こととなる。
JIS Z 8726の評価において、該光源の平均演色評価数Raが60以上であれば、一般用照明として用いることができ、さらにRaが80以上であれば優れた発光装置といえる。そして、さらに好ましくは、日本人女性の肌色の成分を示す指標である特殊演色評価数R15が80以上、更に特殊演色評価数R9が60以上であれば、非常に優れた発光装置といえる。ただし、演色性を求めない用途や異なる目的によっては上記指標を満たさなくても良い。
また、光源の相関色温度は、10000Kから2000Kの範囲にあることが好ましいが、7000Kから2500Kの範囲にあることが、さらに好ましい。
【0145】
本発明者らは波長460nmの発光をおこなう発光部からの光が、本実施形態の蛍光体を含む蛍光体混合物へ照射され、該蛍光体混合物が発光をおこなう発光装置を作製した。そして、該発光装置の発光スペクトルの演色性を評価した。その結果、本実施形態の蛍光体を組み込んだ発光装置の演色性は、相関色温度10000Kから2500Kの範囲において、Raは60以上であった。さらに、本実施形態の蛍光体に赤色蛍光体を加えた蛍光体混合物を組み込んだ発光装置は、Raが80以上、R15が80以上、R9が60以上の高い演色性を示し、高輝度で、演色性に非常に優れた光源であることが判明した。
【0146】
(第1および第2の実施形態に係る蛍光体と発光部との組み合わせ)
第1および第2の実施形態に係る蛍光体の混合物と発光部との組み合わせの方法は、公
知の方法で行っても良いが、発光部にLEDを用いた発光装置の場合は、下記のようにして発光装置を作製することが出来る。以下、図面を参照しながら、発光部にLEDを用いた発光装置について説明する。
図6(A)〜(C)は、砲弾型LED発光装置の模式的な断面図であり、図7(A)〜(E)は、反射型LED発光装置の模式的な断面図である。尚、各図面において、相当する部分については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
まず、図6(A)を用いて、発光部にLEDを用い、前記蛍光体混合物と組み合わせた発光装置の1例について説明する。砲弾型LED発光装置は、リードフレーム3の先端に設けられたカップ状の容器5内に、LED発光素子2が設置され、これらが透光性の樹脂4にてモールドされている。該実施の形態では、前記蛍光体混合物または前記蛍光体混合物をシリコンやエポキシ等の透光性のある樹脂に分散させた混合物(以下、混合物1と記載する。)を、カップ状の容器5内の全てに埋め込むものである。ただし、樹脂中に分散材としてSiO2やAl2O3を混合させても良い。
次に、図6(B)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態では、混合物1をカップ状の容器5上およびLED発光素子2上面に塗布したものである。
次に、図6(C)を用いて、さらに異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態では、蛍光体混合物1をLED発光素子2の上部に設置したものである。
以上、図6(A)〜(C)を用いて説明した砲弾型LED発光装置は、LED発光素子2からの光の放出方向は上方向であるが、光の放出方向が下方向でも同様の方法で発光装置の作製は可能である。例えば、該LED発光素子2の光の放出方向に反射面、反射板を設け、同発光素子2から放出される光を反射面に反射させて外部に発光させるものが反射型LED発光装置である。そこで、図7(A)〜(E)を用い、反射型LED発光装置と本実施形態の蛍光体混合物とを、組み合わせた発光装置の例について説明する。
まず、図7(A)を用いて、発光部に反射型LED発光装置を用い、本実施形態の蛍光体混合物と組み合わせた発光装置の一例について説明する。この反射型LED発光装置では、片方のリードフレーム3の先端にLED発光素子2が設置され、このLED発光素子2からの発光は、下方に向かい反射面8により反射されて上方より放出される。該実施の形態は、混合物1を反射面8上に塗布するものである。尚、反射面8が形成する凹部内には、LED発光素子2を保護するため透明モールド材9が充填される場合もある。
【0147】
次に、図7(B)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1をLED発光素子2の下部に設置したものである。
次に、図7(C)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1を、反射面8が形成する凹部内に充填したものである。
次に、図7(D)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1を、LED発光素子2を保護するための前記透明モールド材9の上部に塗布したものである。
次に、図7(E)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1を、LED発光素子2の表面に塗布したものである。
【0148】
砲弾型LED発光装置と反射型LED発光装置は用途に応じて使い分ければよいが、反射型LED発光装置には、薄くできる、反射鏡により光を集光するため発光面積を制御できる、光の利用効率を高められる等のメリットがある。
【実施例】
【0149】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
尚、実施例1〜44および比較例1は、第1の実施形態に係る蛍光体に関するものであり、実施例45〜65および比較例2〜4は、第2の実施形態に係る蛍光体に関するものである。
【0150】
(実施例1から5)
実施例1から5では、SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)にて、xを0から1まで変化させて蛍光体を製造した。製造方法としては焼成後において、各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:1+x:4−x:x:7−x:0.030の試料となるように各元素の原料を秤量した。x=0(実施例1)の場合、原料としてSrCO3を使用すると、原料中に含まれる酸素が影響するため全て原料は窒化物を用いた。出発原料としてSr3N2(2N)を0.970/3mol、AlN(3N)を1.00mol、Si3N4(3N)を4.0/3mol、CeO2(3N)を0.030mol秤量した。すべて窒化物原料で出発原料を構成した場合には原料中に含まれる酸素量が少なくSi3N4の昇華が抑えられるため、Si3N4原料は定量秤量した。また、付活剤として使用したCeO2の酸素に関しては、添加量がごく微量であるためここでは無視した。
x=0.25(実施例2)の場合であると、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol(0.50/3mol多めに秤量)、CeO2を0.030mol秤量した。実施例3から実施例5、後述する実施例6の製造においては、それぞれ各原料を所定のxをとるように混合比を調整した以外は、実施例2と同様にして蛍光体試料を作製した。但し、調整したxの値は、x=0.5(実施例3)、x=0.75(実施例4)、x=1.00(実施例5)とした。
焼成時間や焼成温度によって焼成後のSi量や酸素量が変化するため、焼成後の生成物が目的の組成に合うように、焼成条件に合わせた量を原料として使用すれば良く、M元素の原料として窒化物を用いた場合は、Al2O3やSiO2などの酸化物と組み合わせて酸素量を調整すれば良い。
【0151】
混合した原料をBNるつぼに入れ、炉内を一度真空引きした後、窒素雰囲気中(フロー状態、4.0L/min)、炉内圧は0.05MPaとし、1750℃まで15℃/minで昇温し、1750℃で6時間保持・焼成した後、1750℃から50℃まで1時間30分で冷却した。その後、焼成試料を大気中にて適当な粒径になるまで乳鉢を用いて解砕し、組成式SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ce(0≦x≦1.0)で示される蛍光体を得た。
【0152】
(比較例1)
比較例1では、実施例1から6と同様に、SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)にてxを1.5とした蛍光体を製造した。SrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Al2O3(3N)、CeO2(3N)を準備し、焼成後の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:2.50:2.50:1.50:0.030となるように各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを2.50−(2×0.50/3)mol、Si3N4を3.0/3mol(0.5/3mol過剰に混合)、Al2O3を0.50/3mol、CeO2を0.030mol秤量した。上記混合原料のまま実施例1から5と同様にして混合し、焼成を行った。
【0153】
波長460nmの単色光での励起
表1は、実施例1から5、比較例1、及び後述する実施例6の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果を示している。発光強度および輝度は、実施例2にて作成した蛍光体を100として示した。実施例2で得た蛍光体の半値幅を求めたところ116.2nmであり、該発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ、色度x=0.402、色度y=0.550であった。尚、実施例1から5の蛍光体の粉末はすべて黄色の蛍光色をしており、目視でも黄緑色の発光色が確認できた。
図1は、縦軸に蛍光体の発光強度を相対強度としてとり、横軸にはxの値をとったものである。さらに図2に、実施例2と比較例1、及び後述する実施例6の発光スペクトルを
示した。図2の縦軸は相対発光強度、横軸は発光波長であり、ここに実施例2は実線、実施例6は一点鎖線、そして比較例1は破線で発光スペクトルを示した。ここで、発光スペクトルとは、ある波長の光またはエネルギーを蛍光体に照射した際、蛍光体より放出される光のスペクトルである。実施例2の蛍光体について、励起光として波長460nmの単色光を照射すると、該蛍光体の発光スペクトルは、波長470nmから720nmの広い波長域においてブロードなピークを持ち、ピーク波長が556.6nmであった。
【0154】
図1に示すように、実施例1から5、比較例1の測定結果によると、xの値が0.5を越えると発光効率の低下が起こり、xの値が1を超えたx=1.5である比較例1では、発光効率が最も高い実施例2の50%以下の発光効率しか得られていない。比較例1の試料のように酸素の濃度が高すぎると、目的の生成相とは異なる生成相が発生し易くなり、不純物相が発光効率を低下させるため、xの値としては0≦x≦1が好ましい。逆にxの値を限りなく0にしすぎても発光効率の低下が起こるため、xの値としては0<x<0.5付近が最も好ましい(ただしSrmAlaSibOoNn:Ce、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×mである。
【0155】
一方で、わずかな酸素を含むことによって、目的の生成相の結晶成長が促進されるフラックスの効果が現れるため、均質な組成を短時間で生成出来ると考えられる。ただし、x=0の場合においても、焼成時間を長くする、焼成雰囲気の加圧により焼成時における窒素分圧濃度を上げる、窒化を促進し易いアンモニアで焼成する、などの焼成方法をおこなえば、酸素を増やすことなく発光効率を向上させることができる。
【0156】
【表1】
【0157】
波長405nmの単色光での励起
また、実施例1から5、比較例1の蛍光体について、励起光として波長405nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度を測定した。該測定結果を表2に示す。実施例2にて作成した蛍光体の発光強度を100とした場合、比較例1にて作成した蛍光体の発光強度は42.4であった。また、実施例2で得た蛍光体の半値幅を求めたところ112.1nmであり、該発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ色度x=0.351、色度y=0.535であった。本実施例1から5の蛍光体は、紫外または近紫外を励起源とする発光装置を製造した場合においても、効率の良い発光装置とすることができる。
【0158】
上述したように、本実施例1から5の蛍光体は、高い発光効率および輝度を持つため、照明などの発光装置に用いた場合、発光効率および輝度の高い発光装置を得ることが可能である。また、本実施例1から5の蛍光体は、広い波長域において半値幅が80nm以上の非常に広いピークを持つため、白色LED照明用蛍光体として使用した場合に、半値幅の狭いピークを持つ蛍光体を使用したものに比べ、輝度、演色性に優れた白色LED照明
を作製することが可能となる。また、半値幅の狭いピークを持つ蛍光体の場合、演色性の向上のためには数種類の蛍光体を混合する必要があるが、本蛍光体はブロードなピークを有しているため、混合する蛍光体の種類の数や使用量を少なくすることができ、安価に白色LED照明を作製することが可能となる。
【0159】
次に、図3を用いて、実施例2の蛍光体の励起スペクトルについて説明する。図3は縦軸に蛍光体の発光強度をとり、横軸には励起光の波長をとったグラフである。同様に後述する実施例6の測定結果も示しており、実施例2は実線、実施例6は一点鎖線で発光スペクトルを示した。ここで、励起スペクトルとは、種々の波長の単色光を励起光として用いて被測定対象の蛍光体を励起したとき、該蛍光体が発光する一定波長の発光強度を測定し、その発光強度の励起波長依存性を測定したものである。本測定においては、波長が300nmから550nmまでの単色光を実施例2の蛍光体に照射し、該蛍光体が発光する波長556.6nmの発光強度の励起波長依存性を測定したものである。
【0160】
図3から明らかなように、実施例2の蛍光体は、波長300nm付近から500nm付近までの広い範囲の励起光で、高強度の黄緑色の発光を示すことがわかった。該蛍光体は、特に、波長400nmから480nmの励起光で最も高い発光効率を示し、現在、ワンチップ型白色LED照明用の励起光として使用されている発光波長が460nmの青色LEDや405nmの近紫外・紫外LEDと組み合わせることで、輝度の高い発光装置を製造することが可能である。
【0161】
【表2】
【0162】
得られた蛍光体粉末の組成分析結果、平均粒子径(D50)、比表面積(BET)を表3に示す。尚、Siは重量法、酸素、窒素はLECO社製の酸素―窒素同時分析装置(TC−436)を使用し、その他の元素はICPによる測定、平均粒子径(D50)はレーザー回折散乱法、比表面積はBET法によって測定した。各元素の組成分析の値は目的の組成とほぼ一致しているが、±2.0w%の分析誤差を含んでおり完全には一致していない。得られた蛍光体粉末の平均粒子径(D50)は12.2μmから21.2μmであり、比表面積(BET)は0.19m2/gから0.65m2/gであり、蛍光体粉末として好ましい粒径および比表面積をもつことが解った。また組成分析の結果より、実施例1から6の蛍光体は比較例1よりも酸素含有量が低い。このことから発光効率の良好な蛍光体を得るためには酸素が5.0wt%以下であることが好ましいことが判明した。また、実施例1から6の蛍光体における粒度分布の変動係数は100%以下を示し、非常に粒度分布の優れた蛍光体であることが分かった。
【0163】
【表3】
【0164】
次に、実施例1から3で得られた蛍光体について、励起光として波長460nmの単色光を照射した際の発光強度の温度特性を測定した。該測定結果を表4に示す。
各蛍光体を、25℃、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃と昇温し、測定温度に達してから、各試料全体の温度を均一にするため5分間はその温度を保持し、その後、発光強度の測定を行なった。また、温度を上昇させる前の室温(25℃)での発光強度の値を100%として、各測定温度における発光強度を相対強度として測定した。尚、発光強度の測定を昇温時に行った後、冷却を行い、再び25℃で発光強度の測定を行った。
表4の結果から、実施例1から3の蛍光体の発光強度は、励起光として波長460nmの単色光を照射した際、測定温度を上昇させる前の室温(25℃)での発光強度の値を100としたとき、測定温度100℃では80以上、200℃では70以上となった。特に実施例2、3の発光強度は、100℃で90以上、200℃で80以上となった。よって、本実施例1から3の蛍光体は、発光素子と組み合わせた際、周囲の温度による低下が少ないため、色ズレの少ない発光装置を得ることが出来る。また、実施例1から3の蛍光体は、その温度依存性を比較すると、xが大きい方が温度特性が良くなっており、Alまたは酸素が組成中にわずかに入ることにより、温度特性も向上するということが判明した。
【0165】
【表4】
【0166】
(実施例6)
実施例6では、実施例2の組成の付活剤をCeからEuに変え、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Eu(但し、Eu/(Sr+Eu)=0.030)である蛍光体を製造した。
原料としては実施例2と同様にして、市販のSrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、焼成後の試料の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Eu=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030となるように各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol(0.50/3mol多めに秤量)、Eu2O3を0.030/2mol
秤量し、大気中にて乳鉢を用いて混合した。混合後の試料は実施例2と同様の条件で焼成を行い、蛍光体を得た。
【0167】
次に、実施例6に係る蛍光体へ励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度を測定した。実施例2にて作成した蛍光体を100とし、発光強度及び輝度の測定結果を表1に示している、さらに、図2に波長460nmの単色光を照射した際に、蛍光体から発光した光の発光スペクトルを一点鎖線で示している。
【0168】
図2から示すように、該蛍光体の発光スペクトルは、波長550nmから760nm付近の広い波長域においてブロードなピークを持っており、そのピーク波長は597.1nmであった。当該蛍光体の半値幅を求めたところ112nmであり、該発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ色度x=0.526、色度y=0.463であった。尚、試料は橙色の蛍光色をしており、目視でも橙色の発光色が確認できた。
【0169】
上記比較で示すように、付活剤をCeからEuに変化させた場合、発光スペクトルが長波長側に変化するが、発光効率の高い結果が得られており、付活剤の元素に影響することなく高い発光効率が確認された。従って、本実施例6の蛍光体を照明などの発光装置に用いた場合にも、高効率、高輝度の発光装置を得ることが可能であることが判明した。
【0170】
(実施例7から31)
実施例7から31は、実施例2で作製したSrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)である蛍光体の製造時において、フラックスとして種々の化合物を添加し焼成して得た各蛍光体を示し、これらの各蛍光体の発光強度について調査を行った。各蛍光体の試料の作製方法は、製造後の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030となるように各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol(0.50/3mol多めに秤量)、CeO2を0.030mol秤量し、さらにフラックスとして前記秤量後の全重量に対して0.5wt%のフラックス剤を添加し混合した。焼成においても実施例2と同様、窒素中にて1750℃で6時間焼成を行い、実施例7から31の蛍光体を得た。
【0171】
次に、実施例7から31の蛍光体の発光スペクトルを測定し、発光強度の相対強度、色度および輝度を測定した。得られた蛍光体粉末の発光特性を表5に示す。発光強度の相対強度は、実施例2の蛍光体の相対強度を100とした場合の相対強度である。実施例7から31の蛍光体について、励起光として波長460nmの単色光を照射すると、該蛍光体の発光スペクトルは、実施例2の蛍光体と同じく、波長470nmから720nmの広い波長域においてブロードなピークを持ち、ピーク波長は555nmから560nm付近であった。尚、蛍光体の粉末はすべて黄色の蛍光色をしており、目視でも黄緑色の発光色が確認できた。また、蛍光体の比表面積は0.05m2/g以上5.0m2/g以下であり、平均粒子径(D50)は、蛍光体粉末として好ましい1.0μm以上、50.0μm以下の粒径である。また、実施例7から31の蛍光体における粒度分布の変動係数CVの値は100%以下を示し、非常に粒度分布の優れた蛍光体であることが分かった。
【0172】
次に、波長が250nmから550nmまでの単色光を実施例7から31の蛍光体へ照射し、該蛍光体が発光する発光ピーク波長の発光強度の励起依存性を測定したところ、該蛍光体の励起スペクトルも、実施例2の蛍光体と同様に、波長300nm付近から500nmまでの広い範囲の励起光で、高強度の黄緑色の発光を示した。
【0173】
表5に示される試験結果より、Sr、Baのフッ化物、塩化物、窒化物、Al、Ga、
Mnの酸化物、窒化物が、発光特性の向上にとって特に好ましいことが判明した。これら化合物を添加することにより発光特性が向上した理由は、上記添加物の融点が1000℃から2000℃であるため、焼成時の昇温において添加物が溶融し、原料同士の反応性を向上させる働きがあると考えられるからである。また、原料を構成するSrやAlに、置換され易いBa、Ga、Mnから構成される化合物を用いたことにより、不純物元素による発光特性の低下が抑えられたと考えられるからでもある。
一方、酸素、窒素、塩素、フッ素に関しても、少量であれば蛍光体の発光特性に対し影響を及ぼさないと考えられる。添加する化合物としては、上述したように窒化物でも効果があるが、窒化物の場合には空気中の酸素や水分と反応して酸化物となるため、秤量・混合に際し注意が必要であり、製造上は酸化物、塩化物、フッ化物など大気中で扱いやすい物質が好ましい。ただし、添加する化合物によっては、適度な量を越えると過剰な焼結が起こり、発光特性を低下させる不純物として働く可能性がある。このため、特に塩素やフッ素を含む化合物であれば、生成後の蛍光体中に0.0001重量%以上、1.0重量%以下の範囲内で塩素またはフッ素を含むことにより、発光特性を低下させずに発光効率の良い蛍光体が得られる。
【0174】
【表5】
【0175】
(実施例32から41)
実施例32から41では、組成式SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75における付活剤にEuとCeを同時に用い、CeおよびEuの濃度を0.03molと固定し、EuとCeの比を変化させて、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、Euで示される蛍光体を製造した。
原料としては実施例2と同様、市販のSrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、CeO2(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、製造後の試料の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Eu+Ce=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030となるように、各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol秤量(0.50/3mol多めに秤量)し、付活
剤としてEu+Ceが0.03molになるようにEu2O3またはCeO2を調整秤量し、大気中にて乳鉢を用いて混合した。ここで、実施例32から41において付活剤の効果をより正確に判断するため、フラックス剤は添加しないで、実施例2と同様の条件で焼成を行って各蛍光体を得た。
【0176】
次に、実施例2と同様にして、実施例32から41の蛍光体の発光スペクトルを測定した。表6に、発光スペクトルの発光強度、輝度、色度(x,y)を測定した結果を示す。表6に示すように、CeとEuの両付活剤の比を変化させたところ、発光スペクトルの変化が確認され、ピーク波長が550nmから600nmまで変化し、同じく色度x、yも変化している。図4は、色度図上に各実施例32から41の蛍光体における色度x、色度yの数値をプロットした図を示す。この図4では、縦軸を色度y、横軸を色度xとしている。この色度図上の囲まれた部分は、JIS Z9112で示された相関色温度7100Kから2600Kの範囲における蛍光ランプの光源色5種の色度範囲を示しており、昼光色の区分をD、中白色の区分をN、白色の区分をW、温白色の区分をWW、電球色の区分をLとして示している。
波長430から480nmの光を発光する発光素子と、本実施例32から41の蛍光体とを組み合わせ発光装置を作製した場合、本実施例32から41の蛍光体の付活剤CeとEuの比率を変えることによって、発光素子から発する発光色と当該蛍光体の発光色で結んだ点線で囲まれる部分の色が発光装置として表色可能であり、前記JIS Z9112で示された蛍光ランプの光源色の色度範囲のすべての表色が可能である。よって、本実施例32から41の蛍光体を使用することによって、様々な光源色を作製することが可能となる。
【0177】
(実施例42、43)
実施例42、43は、波長460nmで発光する発光素子(LED)と、実施例35、39の蛍光体とをそれぞれ組み合わせて構成した発光装置である。これらの実施例42、43では、波長460nmで発光する発光素子(LED)を用いて、実施例35または39のSrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、Euの蛍光体を励起させた場合における、該発光装置の発光特性、演色性を評価した。尤も、発光素子の発光波長は本蛍光体の効率の良い励起帯域(300nmから500nm)であれば良く、波長460nmに限られるものではない。実施例42は、実施例35の蛍光体を用いた相関色温度5000Kの発光装置であり、実施例43は、実施例39の蛍光体を用いた相関色温度2700Kの発光装置である。
【0178】
まず、窒化物半導体を用いた青色光のLED素子(発光波長460nm)を発光部として準備した。実施例35、39にて作製した蛍光体と、樹脂、分散剤とを混ぜて混合物とした。尚、該樹脂は可視光の透過率、屈折率が高い方が好ましく、前記条件を満たせばシリコン系に限らずエポキシ系の樹脂でもよい。該分散剤へは、SiO2、Al2O3等の微粒子をわずかに混合して使用しても良い。そして該混合物を十分に攪拌し、公知の方法で該LED素子上に塗布して白色LED照明(発光装置)を作製した。前記混合物の蛍光体と樹脂比率、塗布厚みにより発光色および発光効率が変化するため、目的の色温度に合わせて前記条件を調整すればよい。
【0179】
作製された白色LED照明に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図5に示す。図5は、縦軸に相対発光強度をとり、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。そして、実施例42における白色LED照明の発光スペクトルを実線、実施例43における白色LED照明の発光スペクトルを破線で示す。
該蛍光体は、発光部が発する青色光により励起して発光し、波長400nmから700nmの範囲に連続的にブロードなピークを有する発光スペクトルの白色光を発光する白色LED照明を得ることが出来た。該発光装置の相関色温度、色度および演色性を測定した
ところ、表7に示すように、実施例42における発光装置の相関色温度は4962K、色度は、色度x=0.3461、色度y=0.3520であり、平均演色評価数(Ra)は73であった。実施例43における発光装置の相関色温度は2774K、色度は、色度x=0.4531、色度y=0.4077であり、平均演色評価数(Ra)は65であった。
【0180】
【表6】
【0181】
(実施例44)
実施例44は、実施例33の蛍光体に赤色蛍光体を加えて蛍光体混合物を作成し、波長460nmで発光する発光素子と組み合わせて、演色性を向上させた発光装置を作成した。波長460nmに発光する発光素子(LED)で励起させた場合に、相関色温度5000Kの発光を行う発光装置を製造し、該発光装置の発光特性、演色性を評価した。尚、本実施例44では、該赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Euを用いた。赤色蛍光体として、他にSr4AlSi11O2N17:Eu、(Ca,Sr)Si5N8:Euなどの窒素を有する赤色蛍光体、またはSrS:Eu、CaS:Euなどの硫化物系の赤色蛍光体を用いることも可能であるが、温度特性や安定性の面からしてもCaAlSiN3:Euが最も好ましい。
【0182】
1)蛍光体試料の準備
実施例33の蛍光体SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、Euを製造した。一方、赤色蛍光体CaSiAlN3:Euを、以下の方法により製造した。 市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、製造後の各元素のモル比がCa:Al:Si:Eu=0.970:1.00:1.00:0.030となるように各原料を秤量し、窒素雰囲気中において乳鉢を用いて混合した。混合した原料を、粉末の状態で窒素雰囲気中1500℃まで15℃/minの昇温速度で昇温し、1500℃で12時間保持・焼成した後、1500℃から200℃まで1時間で冷却し、組成式CaAlSiN3:Euの蛍光体を得た。得られた試料を粉砕し、分級して赤色蛍光体試料として準備した。
【0183】
2)蛍光体混合物の調製
前記SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、EuおよびCaAlSiN3:Euの2種類の蛍光体試料について、各々、波長460nmの励起光で励起させた場合の発光ス
ペクトルを測定し、該発光スペクトルから、両蛍光体混合物の相関色温度が、5000Kとなる相対混合比をシミュレーションより求めた。該シミュレーションの結果は、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce:CaAlSiN3:Eu=95.0:5.0(重量比)であった。該結果に基づき、各蛍光体を秤量して混合し蛍光体混合物を得た。
【0184】
但し、発光部の発光波長(蛍光体混合物の励起波長)や、該励起光に対する蛍光体の発光効率により、好ましい混合比が該シミュレーション結果よりずれる場合がある。このような場合には、蛍光体の配合比を適宜調整して、実際の発光スペクトル形状を整えればよい。
【0185】
3)発光素子での評価
実施例42と同様に、窒化物半導体を有する青色光のLED(発光波長460nm)を発光部として準備し、該LED上に、前記蛍光体混合物と樹脂との混合物を設置した。該蛍光体混合物と樹脂との混合比は前記シミュレーション結果を基に相関色温度5000K相当の昼白色が得られるように、蛍光体の配合比を適宜調整した。そして、公知の方法により該LEDの発光部と組み合わせて、白色LED照明(発光装置)を作製した。
【0186】
該両蛍光体混合物は、発光部が発する青色光により励起して発光し、波長400nmから700nmの範囲にブロードなピークを有する発光スペクトルの白色光を放つ白色LED照明を得ることが出来た。ここで、作製された白色LED照明の発光素子に20mAを通電させた際の発光スペクトルを同じく図5に示す。この図5において、相関色温度5000K相当に設定した白色LED照明の昼白色の発光スペクトルを一点鎖線で示す。
【0187】
ここで、実施例44に係る白色LED照明の輝度、色度、演色評価数、相関色温度等の測定データの一覧表を表7に記載する。
該発光の相関色温度、色度および演色性を測定したところ、相関色温度4973K、色度x=0.3457、色度y=0.3502であり、平均演色評価数(Ra)は88、特殊演色評価数のR9は66、R13は90、R15は88であった。さらに、これら白色LED照明において、混合する蛍光体の配合量と樹脂配合量とを適宜変更することにより、異なる相関色温度の発光色を得ることができた。
【0188】
【表7】
【0189】
(実施例45から48)
実施例45から48では、組成式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnにおいてM(1)元素をカリウムとし、M(2)元素としてSr、A元素としてAl、B元素としてSi、Z元素としてCeとし、M(1)元素の比率であるm(1)の値を、0<m(1)≦0.05の範囲で変更し、組成式(Km(1)Sr0.97-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7で表される蛍光体を作製した。蛍光体の作成方法は、原料の混合比を、K2CO3がm(1)/2mol、SrCO3が(0.970−m(1))mol、AlNが1.25mol、Si3N4が
4.5/3mol、CeO2が0.030molとなるよう秤量した。尚、焼成時における原料の分解等による変化を考慮し、焼成後の試料が狙いの組成となるよう各原料のモル比を決定している。
秤量した原料を、大気中で乳鉢を用いて十分に混合した。混合した原料をBNるつぼに入れ、炉内を一度真空引きした後、窒素雰囲気中(フロー状態、4.0L/min)、炉内圧は0.05MPaとし、1600℃まで15℃/minで昇温し、1600℃で3時間・保持焼成した後、1600℃から50℃まで冷却した。その後、大気中にて焼成後の試料を解砕した後、再度、窒素雰囲気中にて、1750℃で9時間保持焼成した。
焼成試料は冷却後、大気中にて再度、適当な粒径になるまで乳鉢を用いて解砕し、m(1)=0.013(実施例45)、m(1)=0.025(実施例46)、m(1)=0.038(実施例47)、m(1)=0.050(実施例48)に相当する蛍光体を作製した。
【0190】
(比較例2)
次に、本発明の特徴であるM(1)で表記される元素を含まない、(M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnを比較例として挙げる。ここでは、以下のようにして組成式(Sr0.97Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7であらわされる蛍光体を作製した。
出発原料としてSrCO3(3N)を0.970mol、AlN(3N)を1.25mol、Si3N4(3N)を4.5/3mol、CeO2(3N)を0.030mol秤量した。秤量した原料を、大気中で乳鉢を用いて十分に混合した。混合後の工程は、実施例45から48と同様に実施し、比較例2に係る蛍光体を得た。従って、当該比較例2は前述の実施例においてm(1)=0に相当するものである。
【0191】
(比較例3)
比較例3では、実施例45から48より更にM(1)元素の比率m(1)を増加させ、0.05<m(1)となる蛍光体を作製した。原料の混合比を、K2CO3が(0.10/2)mol、SrCO3が0.870mol、AlNが1.25mol、Si3N4が4.5/3mol、CeO2が0.030molとなるよう秤量し、その後の工程は実施例45から48と同様に実施し、比較例3に係る蛍光体を得た。従って、当該比較例3は前述の実施例においてm(1)=0.10に相当するものである。
【0192】
実施例45から48および比較例2、3に係る蛍光体の組成分析結果、平均粒子径、比表面積を表8に示す。さらに当該組成分析結果から算出される蛍光体の組成式も表記する。尚、当該組成分析において、Siは重量法を、Kは原子吸光法を、酸素、窒素はLECO社製の酸素―窒素同時分析装置(TC−436)を用いて測定し、その他の元素はICPによる測定を行った。平均粒子径(D50)はレーザー回折散乱法、比表面積はBET法によって測定した。各測定結果は±5%程度の分析誤差を含んでいるものの、いずれの試料も各元素の構成比が、ほぼ(Km(1)Sr0.97-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7となり、目的とする組成が生成していることが確かめられた。また、K元素の比率であるm(1)の値は、m(1)=0.00(比較例2)、m(1)=0.01(実施例45)、m(1)=0.02(実施例46)、m(1)=0.04(実施例47)、m(1)=0.05(実施例48)、m(1)=0.09(比較例3)となり、m(1)の値も狙いの組成比と一致することが確かめられた。得られた蛍光体粉末の平均粒子径(D50)は23.9μmから36.3μmであり、比表面積(BET)は0.19m2/gから0.28m2/gであり、蛍光体粉末として好ましい1.0μm〜50μmの粒径および0.05m2/g〜5.00m2/g比表面積をもつことが確かめられた。また、実施例45から48の蛍光体における粒度分布の変動係数CVの値は100%以下を示し、非常に粒度分布の優れた蛍光体であることが分かった。
【0193】
表8より、K元素の比率のm(1)が上昇することにより、蛍光体の粒径D50が増加することが確かめられ、焼成中での粒子成長が促進されていることが確かめられた。その原
因は明確ではないが、おそらく元素置換により結晶構造がより安定なものとなり、結晶成長し易い状態になった為ではないかと考えられる。結晶成長が円滑に進行することにより、得られる粒子の結晶性が向上したことが、下記に示す発光特性に影響していると考えられる。
【0194】
【表8】
【0195】
表9は、比較例2、実施例45から48および比較例3の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果を示している。なお、発光スペクトル、輝度、色度の測定には日本分光(株)社製分光蛍光光度FP−6500を用いて測定した。発光強度および輝度は、比較例2を100とした相対値で表す。0<m(1)≦0.05において、発光強度および輝度は100を超え、m(1)=0、即ち、カリウム元素が添加されていない比較例2の蛍光体よりも発光効率が向上していることが確かめられた。この発光強度・輝度の向上は、Srサイトの一部がKに置換されることにより、上述のように蛍光体の結晶構造の安定性が向上し、発光効率が向上しているためであると考えられる。
【0196】
また、置換率m(1)の値の変化によって比較例2、実施例45から48、比較例3の蛍光体における発光ピークの波長や色度に大きな変化はみられていない。このことから、蛍光体を構成するストロンチウムの一部をカリウムで置換することにより、発光色を変化させることなく、発光強度・輝度のみを向上させることが可能であることも確かめられた。最も高い発光強度を示した実施例47の発光強度は107、輝度は106、発光スペクトルの色度(x,y)は、x=0.422、y=0.545であった。
【0197】
【表9】
【0198】
図8は縦軸に蛍光体の発光強度をとり、横軸にm(1)の値をとったグラフである。m(1)が小さい領域では、m(1)の増加とともに発光強度が向上し、m(1)=0.038で発光強度が最大となっている。m(1)の値が0.038を超えると発光効率の低下がおこり、m(1)の値が0.10まで増加した比較例3では、発光強度の最も高い実施例47の80%以下の発光強度となる。これは、カリウムの置換量が過剰になると、蛍光体の結晶構造が変化するとともに結晶内の電荷のバランスが崩れ発光特性の低下を招くが、置換率m(1)は、0<m(1)≦0.05であれば発光特性の低下を抑制することができると考えられる。
【0199】
また、比較例2、実施例45から48、比較例3の蛍光体に励起光として波長405nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度を測定した。該測定結果を表10に示す。比較例2にて作成した蛍光体の発光強度を100とした場合、実施例46にて作成した蛍光体の発光強度は104、輝度は104であった。実施例46で得た蛍光体の発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ色度x=0.386、色度y=0.545であった。
この結果から実施例45から48の蛍光体は、青色光だけでなく紫外または近紫外光を励起源とする発光装置を製造した場合においても、効率の良い発光装置とすることができることが判明した。
【0200】
【表10】
【0201】
(実施例49から52)
次に、組成式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnにおいて、M(2)をSrとBaの混合とした場合の実施例について説明する。
出発原料にBa化合物を添加した実施例49から52について説明する。実施例49か
ら52の蛍光体は、それぞれ実施例45から48において出発原料に対して0.2wt.%に相当するBaOを加えて混合した以外は同様にして作製し、(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7で表される蛍光体を作製した。ここで、加えたBa元素の比率は僅かであるので、BaOの添加による各元素の組成比は殆んど変化しないものとした。
尚、置換率m(1)は、それぞれm(1)=0.013(実施例49)、m(1)=0.025(実施例50)、m(1)=0.038(実施例51)、m(1)=0.050(実施例52)とした。作成後の試料のX線解析により生成相の評価を行ったが、BaOの残留および不純物相の発生は確認されなかった。
【0202】
(比較例4)
比較例4として、実施例49から52においてK元素を添加しない場合について説明する。上記実施例49から52において、m(1)=0とし、K2CO3を原料に加えなかった以外はすべて実施例49から52と同様にして実施し、(Sr0.96Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7となる、比較例4に係る蛍光体を得た。
【0203】
組成分析結果
表11に実施例49から52および比較例4の組成分析結果、平均粒子径、比表面積を表11に示す。さらに分析結果から算出される蛍光体の組成式も表記する。組成分析結果より、いずれの蛍光体も組成式(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7であらわすことができることが確かめられた。
また、実施例45から48と同様、実施例49から52でも、置換率m(1)の上昇に伴い蛍光体の粒径が増加する傾向にあり、Srを僅かにBaに置換した場合でも、Kの添加により蛍光体の結晶性が向上することが確かめられた。
【0204】
【表11】
【0205】
実施例49から53の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果を表12に示す。発光強度および輝度は比較例4を100とした相対値で表す。表12の結果より、実施例45から48と同様、実施例49から52に係る蛍光体である(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7も同様に、Kを含まない比較例4と比較して高い発光特性を示すことが確かめられた。また、これらの蛍光体は、波長405nmの紫外光での励起によっても、高い発光特性・輝度を示した。最も高い発光特性を示す実施例51における波長460nm励起での発光強度は110、輝度は106、発光スペクトルの色度(x,y)は、x=0.423、y=0.545であった。実施例51の蛍光体は、Baを構成元素に含まない実施例48と比較して更に高い発光強度・輝度を示す。このことから、
組成式(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7であらわされる蛍光体が高い発光特性を示すことが確かめられた。
【0206】
【表12】
【0207】
実施例51の蛍光体に波長460nmの単色光を照射した際の発光スペクトルを図9に、また励起スペクトルを図10に、それぞれ実線で表す。一方、比較のため、比較例4の蛍光体に波長460nmの単色光を照射した際の発光スペクトルを図9に、また励起スペクトルを図10に、それぞれ破線で表す。
図9より、実施例51は比較例4と比較して、高い発光強度をもつことが確かめられた。発光スペクトルは550nmの黄色の波長領域にピークをもち、さらにスペクトルの形状がブロードであるため、高輝度・光演色性をもつ発光装置の製造に適している。
また図10より、実施例51は、比較例4とほぼ同様な励起スペクトルを持っているが、すべての励起波長波長範囲において比較例4よりも優れた励起特性を持っていることが確かめられた。
【0208】
(実施例53から60)
つぎに、本発明におけるM(1)元素をLi、Naとした場合の実施例について説明する。
実施例53から56では、M(1)元素をLi、実施例57から60ではM(1)元素をNaとした。試料の作製方法は、原料であるK2CO3の代わりに実施例53から56ではLi2CO3、実施例57から60ではNa2CO3とする以外は、実施例50から54と同様にして作製した。ただし、置換率m(1)は、それぞれm(1)=0.013(実施例53、57)、m(1)=0.025(実施例54、58)、m(1)=0.038(実施例55、59)、m(1)=0.050(実施例56、60)とした。
【0209】
実施例53から56、57から60の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果をそれぞれ表13、表14に示す。いずれの実施例においても、M(1)元素を含まない比較例4と比較して、より高い発光強度と輝度が得られた。このことからM(1)元素としてはKだけでなくLi、Naのいずれを用いても、発光特性の高い蛍光体を作製可能であることが確かめられた。
また、これらの蛍光体は実施例45から48と同様、波長460nmの青色光だけでなく波長405nmの紫外光による励起においても、優れた発光特性を示した。
【0210】
【表13】
【表14】
【0211】
実施例45から60の結果より、組成式(M(1)m(1)Sr0.97-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7および(M(1)m(1)Ba0.005Sr0.96-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7において、M(1)元素としてLi、Na、Kを用いることにより発光強度・輝度の優れた蛍光体を製造することが可能であることが示された。
さらに、本発明に関わる蛍光体は、Al、Si、Ce元素の比率を変化させることにより発光波長が変化するため、これらの元素の組成比を変化させることにより、様々な発光色をもち、輝度に優れた蛍光体を作成可能である。
【0212】
以下実施例61から65では、上記蛍光体を用いた発光装置について評価を行った。
(実施例61)
実施例61では、波長460nmで発光する発光素子(LED)を用いて、本発明の実施例51に係る蛍光体試料(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7を励起させた場合における、該発光装置の発光特性、演色性を評価した。尤も、発光素子の発光波長は本蛍光体の効率の良い励起帯域(300nmから500nm)であれば良く、波長460nmに限られるものではない。
【0213】
まず、窒化物半導体を用いた青色光のLED素子(発光波長460nm)を発光部として準備した。さらに実施例51にて作製した蛍光体と、シリコン樹脂、分散剤として僅かなSiO2を混ぜ、混合物とした。尚、該樹脂は可視光の透過率、屈折率が高い方が好ましく、前記条件を満たせばシリコン系に限らずエポキシ系の樹脂でもよい。該分散剤へは、SiO2の他にAl2O3の微粒子などをわずかに混合して使用しても良い。そして該混合物を十分に攪拌し、図6、7を用いて第1の実施形態に係る蛍光体を用いた発光装置のところで説明したものと同様に、白色LED照明(発光装置)を作製した。前記混合物の蛍光体と樹脂比率、塗布厚みにより発光色および発光効率が変化するため、目的の色温度に合わせて前記条件を調整すればよい。
【0214】
作製された発光装置に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図11に示す。図1
1は、縦軸に相対発光強度をとり、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。そして、実施例61に係る発光装置の発光スペクトルを実線で示す。
該蛍光体は、発光部が発する青色光により励起・発光し、波長400nmから750nmの範囲に連続的にブロ−ドなピ−クを有する発光スペクトルの白色光を発光する発光装置を得ることが出来た。該発光の色温度、色度および演色性を測定したところ、色温度6561K、色度(x,y)は、x=0.311、y=0.337であった。また、当該発光装置の平均演色係数(Ra)は74であった。さらに、蛍光体と樹脂との配合量を適宜変更することにより、異なる色温度の発光色を得ることもできた。ここで、実施例61に係る発光装置の色度、演色評価数、色温度等の測定デ−タの一覧表を表15に記載する。
【0215】
(実施例62、63)
実施例62、63においては、実施例51に係る蛍光体へ、さらに赤色蛍光体を加え、波長460nmに発光する発光素子(LED)で励起させた場合に、相関色温度5200K(実施例62)または3000K(実施例63)の発光を行う蛍光体混合物を製造し、当該蛍光体混合物の発光特性、演色性を評価した。尚、本実施例では、該赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Euを用いたが、Sr4AlSi11O2N17:Eu、(Ca,Sr)Si5N8:Euなどの窒素を有する赤色蛍光体、またはSrS:Eu、CaS:Euなどの硫化物系の赤色蛍光体を用いることも可能である。
【0216】
1)蛍光体試料の準備
緑色蛍光体として実施例7に係る蛍光体を用意した。
一方、赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを、以下の方法により製造した。
市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、各元素のモル比がCa:Al:Si:Eu=0.970:1.00:1.00:0.030となるように各原料を秤量し、窒素雰囲気中において乳鉢を用いて混合した。混合した原料を、粉末の状態で窒素雰囲気中1500℃まで15℃/minの昇温速度で昇温し、1500℃で12時間保持・焼成した後、1500℃から200℃まで1時間で冷却し、組成式CaAlSiN3:Euの蛍光体を得た。得られた試料を粉砕し、分級して赤色蛍光体試料として準備した。
【0217】
2)蛍光体混合物の調製
前記(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7およびCaAlSiN3:Euの2種類の蛍光体試料について、各々、波長460nmの励起光で励起させた場合の発光スペクトルを測定し、該発光スペクトルから、両蛍光体混合物の相関色温度が、5200K(実施例62)または3000K(実施例63)となる相対混合比をシミュレ−ションより求めた。該シミュレ−ションの結果は、相関色温度が5200Kの場合(実施例62)は(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=98.0:2.0(重量比)であり、相関色温度3000Kの場合(実施例63)は(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=91.0:9.0(重量比)であった。当該結果に基づき、各蛍光体秤量し混合して蛍光体混合物を得た。
【0218】
但し、発光部の発光波長(蛍光体混合物の励起波長)や、該励起光に対する蛍光体の発光効率により、好ましい混合比が、当該シミュレ−ション結果よりずれる場合がある。このような場合には、適宜、蛍光体の配合比を調整して、実際の発光スペクトル形状を整えればよい。
【0219】
3)発光素子での評価
実施例61と同様に、窒化物半導体を有する青色光のLED(発光波長460nm)を発光部として準備し、該LED上に、前記蛍光体混合物と樹脂との混合物を設置した。該
蛍光体混合物と樹脂との混合比は前記シミュレ−ション結果を基に色温度5200K相当の昼白色または3000K相当の電球色が得られるように、前記適宜な蛍光体の配合比の調整をおこなった。そして、公知の方法により該LEDの発光部と組み合わせて発光装置を作製した。
【0220】
該両蛍光体混合物は、発光部が発する青色光により励起・発光し、波長420nmから750nmの範囲にブロ−ドなピ−クを有する発光スペクトルの白色光を放つ発光装置を得ることが出来た。ここで、作製された発光装置の発光素子に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図11に示す。図11において、色温度5200K相当に設定した発光装置(実施例62)の昼白色の発光スペクトルを一点鎖線で示し、色温度3000K相当に設定した発光装置(実施例63)の電球色の発光スペクトルを二点鎖線で示した。
【0221】
ここで、実施例62または実施例63に係る発光装置の色度、演色評価数、色温度等の測定デ−タの一覧表を表15に記載する。
該発光の色温度、色度および演色性を測定したところ、実施例に係わる色温度5200K相当に設定した発光装置については、色温度5175K、色度(x,y)は、x=0.340、y=0.345であり、平均演色評価数(Ra)は86、特殊演色評価数のR9は61、R15は88であった。実施例63に係わる色温度3000K相当に設定した発光装置については、色温度3007K、色度(x,y)は、x=0.436、y=0.403であり、平均演色評価数(Ra)は88、特殊演色評価数のR9は70、R15は88であった。さらに、これら発光装置において、混合する蛍光体の配合量と樹脂配合量とを適宜変更することにより、異なる色温度の発光色を得ることもできた。
【0222】
【表15】
【0223】
(実施例64、65)
実施例64または実施例65においては、実施例51に係る蛍光体へ、さらに青色蛍光体と赤色蛍光体を加え、波長405nmに発光する発光素子(LED)で励起させた場合に相関色温度5200K(実施例64)または3000K(実施例65)の発光を行う蛍光体混合物を製造し、該蛍光体混合物の発光特性、演色性を評価した。
ここで、青色蛍光体としてSr5(PO4)3Cl:Euを用いているがこの限りではなく、BAM:Eu(BaMgAl10O17:Eu)および、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、SrAlxSi6-xO1+xN8-x:Eu(0≦x≦2)、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Euで示される蛍光体を組み合わせても良い。
【0224】
1)蛍光体の準備
緑色蛍光体は実施例51の方法で製造、準備した。
赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを、実施例62、63で説明した方法により製造し
た。
青色蛍光体Sr5(PO4)3Cl:Euは市販品を準備した。
【0225】
2)蛍光体混合物の調製
前記(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7、CaAlSiN3:Eu、およびSr5(PO4)3Cl:Euの3種類の蛍光体を、波長405nmの励起光で励起させた場合の発光スペクトルを測定し、当該発光スペクトルから蛍光体混合物の相関色温度が5200K(実施例64)または3000K(実施例65)となる相対混合比をシミュレ−ションより求めた。該シミュレ−ションの結果は、相関色温度が5200Kの場合(実施例64)はSr5(PO4)3Cl:Eu:(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=36:60:4であり、相関色温度3000Kの場合(実施例65)はSr5(PO4)3Cl:Eu:(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=20:68:12であったので、当該結果に基づき、各蛍光体を秤量し混合して蛍光体混合物を得た。
但し、発光部の発光波長(蛍光体混合物の励起波長)、当該発光波長による蛍光体の発光効率により、好ましい混合比が、シミュレ−ションの結果よりずれる場合がある。このような場合は、適宜、蛍光体の配合比を調整して、実際の発光スペクトル形状を整えればよい。
【0226】
該両蛍光体混合物は、発光部が発する紫外光により励起・発光し、波長420nmから750nmの範囲にブロ−ドなピ−クを有する発光スペクトルの白色光を放つ発光装置を得ることが出来た。ここで、作製された発光装置の発光素子に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図12に示す。図12において、色温度5200K相当に設定した発光装置(実施例64)の昼白色の発光スペクトルを実線で示し、色温度3000K相当に設定した発光装置(実施例65)の電球色の発光スペクトルを一点鎖線で示す。
【0227】
ここで、実施例64または実施例65に係る発光装置の色度、演色評価数、色温度等の測定デ−タの一覧表を表15に記載する。
該発光の色温度、色度および演色性を測定したところ、実施例64に係わる色温度5200K相当に設定した発光装置については、色温度5197K、色度(x,y)は、x=0.339、y=0.327であり、平均演色評価数(Ra)は94、特殊演色評価数のR9は96、R15は97であった。実施例65に係わる色温度3000K相当に設定した発光装置については、色温度3010K、色度(x,y)は、x=0.436、y=0.403であり、平均演色評価数(Ra)は93、特殊演色評価数のR9は81、R15は93であった。さらに、これら発光装置照明において、混合する蛍光体の配合量と樹脂配合量とを適宜変更することにより、異なる色温度の発光色を得ることもできた。
【符号の説明】
【0228】
1 混合物
2 発光素子
3 リードフレーム
4 樹脂
5 容器
8 反射面
9 透明モールド材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラウン管(CRT)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイ(PDP)などのディスプレイや、蛍光灯、蛍光表示管などの照明装置や、液晶用バックライト等の発光器具に使用される、窒素を含有する蛍光体およびその製造方法、並びに半導体発光素子(LED)と該蛍光体とを組み合わせた白色LED照明を始めとする発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、照明装置として用いられている放電式蛍光灯や白熱電球などは、水銀などの有害な物質が含まれている、寿命が短いといった諸問題を抱えている。ところが、近年になって近紫外・紫外〜青色に発光する高輝度LEDが次々と開発され、そのLEDから発生する近紫外・紫外〜青色の光と、その波長域に励起帯を持つ蛍光体から発生する光とを混ぜ合わせて白色光を作り出し、その白色光を次世代の照明として利用できないかといった研究、開発が盛んに行われている。
この白色LED照明が実用化されれば、電気エネルギーを光へ変換する効率が高く熱の発生が少ないこと、LEDと蛍光体から構成されているため、従来の白熱電球のように切れることがなく長寿命であること、水銀などの有害な物質を含んでいないこと、また照明装置を小型化できるといった利点があり、理想的な照明装置が得られる。
【0003】
LED照明の方式としては2つ提案されており、一つは高輝度の赤色LED、緑色LED、青色LEDの3原色LEDを使用し白色を作り出すマルチチップ型方式と、他の一つは近紫外・紫外〜青色に発光する高輝度LEDと、そのLEDから発生する近紫外・紫外〜青色の光で励起される蛍光体とを組み合わせて白色を作り出すワンチップ型方式である。
特にワンチップ型方式においては、青色LEDにガーネット構造を持つY3Al5O12:Ce黄色蛍光体を組み合わせた方式が一般的であり、この黄色蛍光体Y3Al5O12:CeのYサイトをLa、Tb、Gdなど、Yと同様な原子半径の大きい希土類元素に置換または添加したり、AlサイトをB、Ga等のAlと同様な原子半径の小さな3価の元素に置換または添加することによって、ガーネット構造を保ちつつ、緑色から赤みがかった黄色まで様々な発光色を得ることが出来る。そのため、青色LEDから放出される光と組み合わせ、色温度の異なる様々な白色光を得ることが出来る。
しかしながら、YAG:Ce蛍光体は種々の元素を置換または添加することによって、発光波長または発光色を変化させることが出来るが、元素の置換による発光効率の低下や100℃以上の温度の発光強度が極端に低下してしまう。そのため、発光素子と蛍光体の発光色とのバランスが崩れ、白色光の色調が変化するという問題があった。一方、紫外または近紫外LEDを利用した発光方式であって、蛍光体としてZnS:Cu,Alや(Sr,Ca)GaS:Euなど発光特性が良好な硫化物系蛍光体を用いた場合においても、同様に、100℃以上の温度では発光強度が極端に低下する問題があった。
【0004】
このような温度による劣化問題を解決するため、近紫外・紫外から青色の範囲の光に対して平坦で高効率な励起帯を有し、周囲の温度に対する発光特性の安定性に優れた、新規蛍光体への要求が高まり、例えば、Ca−サイアロン系蛍光体(特許文献1に記載)などの酸窒化物蛍光体の研究が盛んに行われてきた。しかしながらCa−サイアロン系蛍光体では、YAG:Ce蛍光体に比べると蛍光体の発光効率が十分でなく、半値幅が狭いため、特定の色温度でしか十分な輝度や演色性を得ることが出来ないことや、演色性に優れた発光装置を得るためには複数の蛍光体との混合が必須であり、そのため発光装置としての全体的な発光特性が下がるという問題があった。
【0005】
さらに、特許文献1に記載された蛍光体と同系統の窒化物蛍光体である、(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体(特許文献6参照)が提案されている。当該(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体は、発光特性が低く、さらに熱により安定性が低下するという問題があるが、この問題の解決方法として、蛍光体母体中へLiやNaをわずかに添加することによって、発光特性が改善することが非特許文献1に示されている。
【0006】
また、特許文献2において、Ca−サイアロン系蛍光体とは異なるSr−Al−Si−O−N系蛍光体、つまりSrSiAl2O3N2:Ce、SrSiAl2O3N2:Eu、Sr2Si4AlON7:Euが開示されている。しかし、これらはいずれも発光効率が低く、また発光波長が450nmから500nmの青色蛍光体、または630nmから640nmの赤色蛍光体であり、発光波長が500−620nmの緑から橙色に掛けて発光色を持つ発光効率の良い蛍光体は得られていない。
これらの問題を解決するため本発明者らは、特許文献3に記載のように、Sr−Al−Si−O−N系において新規の構造を有した蛍光体を開発し、青色または近紫外・紫外の範囲の励起光からでも良好な緑色から黄色に発光する蛍光体を提案し、さらに特許文献4により、Alの添加量を調整することにより、高温でも温度特性や発光効率の良いSr−Al−Si−O−N系の蛍光体を提案している。また、特許文献5により、上記蛍光体、赤色蛍光体、青色蛍光体などの複数の蛍光体と、励起光となる紫外から青色に発光するLEDとを組み合わせた、演色性の良好な発光装置も提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】特開2003−206481号公報
【特許文献3】特願2005−061627号
【特許文献4】特願2005−192691号
【特許文献5】特願2005−075854号
【特許文献6】特開2002−322474号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Luminescence, 116(2006) 107−116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3から4で本発明者らが提案した窒素を含有する蛍光体は、特許文献1等に記載の窒素を含有する蛍光体と比較して、熱や水に対する耐久性に優れ、近紫外・紫外から青色の範囲に平坦な励起帯を持ち、発光スペクトルの半値幅が広く、ブロードな発光スペクトルを有するなど優れた特性を有している。しかし、当該蛍光体をもってしても、近紫外・紫外LEDや青色LED等と組み合わせてワンチップ型白色LED照明を作製した場合、その発光において、照明として最も重要である輝度が満足すべき水準になく、さらなる発光効率の向上が望まれる。
【0010】
また、上述の青色や紫外に発光する発光素子と、当該発光素子から発生する紫外〜青色の波長域に対して励起帯を持つ蛍光体との組み合わせることにより可視光、白色光を発するLEDを始めとした発光装置において、可視光または白色光の発光特性向上には、発光素子および蛍光体の発光効率の向上が求められるとともに、蛍光体の発光色(色度、発光波長)も重要である。加えて、今後は、LEDや光源等の使用用途により、発光色が各々適性化された蛍光体への要望が高くなると考えられる。
ここで、本発明者らは、上述のYAG:Ce蛍光体の様に、本発明者らが提案したSr−Al−Si−O−N系蛍光体(特許文献3から5)においても、他の蛍光体と組み合わせることなく、組成中に含まれる元素を変化させることによって、同一組成の蛍光体から放出される発光色を様々に変化させることができ、更に、温度による発光特性の低下がない場合には、青色LEDまたは近紫外・紫外LEDから放出される光と組み合わせることで、色温度の異なる様々な白色光を容易に得ることができるのではないかと考えた。
【0011】
本発明の第1の目的は、上述の課題を考慮してなされたものであり、近紫外・紫外から青緑色の範囲に平坦な励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから620nm付近に発光のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持ち、目的の用途に合わせて所望の発光色を発光させることの可能な蛍光体およびその製造方法、並びに該蛍光体を用いた発光装置を始めとする発光装置を提供することである。
【0012】
さらに、上述したように、YAG:Ce蛍光体は、当該蛍光体中の、Yサイト若しくはAlサイトを他の元素へ置換、または、当該両サイトへの元素添加によって、発光波長または発光色を変化させることが出来る。しかしながら、本発明者らの検討によれば、このYAG:Ce蛍光体は、元素の置換・添加により発光効率の低下してしまう問題点や、100℃以上の温度に置かれた際の発光強度が極端に低下してしまう問題点がある。そして、これらの問題点のため、当該蛍光体を用いた発光装置において、発光素子と蛍光体の発光色とのバランスが崩れ、結果として白色光の色調が変化するという問題があった。
【0013】
また、本発明者らの検討によれば、ZnS:Cu、Alや(Sr,Ca)GaS:Eu等の硫化物系蛍光体も、当該硫化物系蛍光体が100℃以上の温度に置かれた際に発光強度が極端に低下する問題があった。
【0014】
さらに、本発明者らの検討によれば、Ca−サイアロン系蛍光体は、YAG:Ce蛍光体に比べると蛍光体の発光効率が十分でなく、且つ、発光の半値幅が狭いため、特定の色温度でないと十分な輝度や演色性を得ることが出来ないという問題がある。この発光の半値幅が狭い蛍光体であるという問題を補い、演色性に優れた発光装置を得るためには、複数の蛍光体との混合が求められる。すると、今度は当該混合のため、発光装置としての全体的な発光特性が下がるという、新たな問題が発生した。
【0015】
(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体は、熱により安定性が低下するという問題がある。この問題の解決方法として、非特許文献1が示すように、LiやNaを母体中にわずかに添加することによって発光特性を改善させることが出来る旨記載されてしている。しかし、本発明者らの検討によれば、(Ca,Sr)2Si5N8:Ce黄緑色蛍光体へ、LiやNaを添加しても、依然として、発光特性は十分ではなく、熱に対する安定性についても解決されていない。
【0016】
最後に、本発明者らが提案した、Sr−Al−Si−O−N系であって新規構造を有した蛍光体は、発光の半値幅が広く、熱に対する安定性は優れてはいるものの、発光強度および発光輝度には改善の余地があった。
【0017】
本発明は、上述の状況の下に成されたものであり、その第2の課題とするところは、近紫外・紫外から青色の範囲に励起帯を持ち、発光強度および輝度に優れ、発光の半値幅が広く、熱に対する耐久性に優れた、蛍光体およびその製造方法、並びに該蛍光体を用いた発光装置を始めとする発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題を解決するため、まず本発明者らは、Sr−Al−Si−O−N系の蛍光体
と近紫外・紫外LEDや青色LED等とを組み合わせたワンチップ型白色LED照明の発光において、蛍光体より放出される発光色の変化について研究したところ、付活剤の濃度および他種の付活元素の付活により発光色が変化する点に注目し、付活剤元素の種類および濃度についても発光スペクトルや発光効率の検討を行った。また輝度を始めとする発光効率が満足すべき水準にない原因についても研究を行い、蛍光体の結晶性を向上させるのに伴って、発光効率が向上する点について注目し、添加物による結晶性の促進効果、およびその添加効果にともなう発光スペクトルや発光効率の向上について検討を行った。
【0019】
次に、当該蛍光体の有する広い発光の半値幅や、優れた熱に対する耐久性を維持したまま、当該蛍光体より放出される発光色の発光強度や輝度を満足すべき水準に引き上げることについて研究を行った。
【0020】
また、本発明者らは、多数の窒素を含有した蛍光体組成に関する研究を進めた結果、その結晶構造はおそらく、[SiN4]の四面体構造のSiの一部がAlに、Nの一部がOに置換されたものであって、該四面体構造で組まれたネットワーク中にSrが入り込んだ構造を有する蛍光体であると考え、該蛍光体において生成相の結晶構造を最適化し、また、SiのAl置換量、NのO置換量を最適化することにより、発光効率の向上が可能であることに想到した。
また、付活剤として用いるEuおよび/またはCeの添加量を最適化することによって、他組成の蛍光体を混合することなく、単一組成としては幅広い範囲において発光色を変化させることが可能であることにも想到した。
また、蛍光体の生成に使用する原料は融点が高く、固相反応が進行し難いために、反応が不均一になっているのではないかという考えに至った。そのため、本発明者らは、固相反応の進行が促進されて、均一な反応となる方法について更に研究をおこなったところ、当該蛍光体の焼成時に微量な酸化物、フッ化物、塩化物、窒化物を添加することにより結晶性が促進されることに想到した。
【0021】
さらに、本発明者らは、Sr−Al−Si−O−N系であって新規構造を有した蛍光体の結晶構造に関する研究を進めた結果、その結晶構造は、[SiN4]の四面体構造においてSiの一部がAlに、Nの一部がOに置換したものであって、該四面体構造で組まれたネットワーク中にII価の価数をとる元素(以下、M(2)と記載する場合がある。)(今回のモデルであれば、アルカリ土類金属であるSrである。)と、付活剤であるZ元素とが入り込んだ構造を有する蛍光体であると考えられた。
【0022】
そして、当該推論より、当該蛍光体において、このM(2)、Z元素のサイトの一部を、I価の価数をとる元素(以下、M(1)と記載する場合がある。)で置換することにより、当該結晶構造内の電気的・構造的安定性を高めることができ、発光効率の向上が可能であることに想到した。
【0023】
他方、当該蛍光体の生成過程に関する研究を進めた結果、当該蛍光体の生成に用いられる原料は融点が高く、加熱しても、固相反応が進行し難く反応が不均一になっていると伴に、生成する蛍光体の結晶性が向上しない為、発光効率が低下しているのではないかという機構に想到した。そして、当該推論より、本発明者らは、固相反応の進行を円滑にする手段について研究をおこなった。そして、当該手段においても、上述した、当該蛍光体においてM(2)、Z元素のサイトの一部を、M(1)で置換することで、固相反応を均一化させることが出来、蛍光体の結晶性が高まることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
即ち、上述の課題を解決するための第1の構成は、
一般式MmAaBbOoNn:Zで表記される蛍光体であって(M元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり
、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は1種類以上の付活剤である。)、
a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1で表され、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから620nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体である。
【0025】
第2の構成は、第1の構成に記載の蛍光体であって、
M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素はAl、Ga、In、Sc、La、Yから選択される1種類以上の元素であり、
B元素はSiおよび/またはGeであり、
Z元素はEu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体である。
【0026】
第3の構成は、第1または第2の構成に記載の蛍光体であって、
M元素がSrまたはBa、A元素がAlまたはGa、B元素がSi、Z元素がCeおよび/またはEuであることを特徴とする蛍光体である。
【0027】
第4の構成は、第1から第3の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
一般式をMmAaBbOoNn:Zzと表記したとき、M元素とZ元素とのモル比であるz/(m+z)の値が、0.0001以上、0.5以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0028】
第5の構成は、第1から第4の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
更に塩素または/及びフッ素を含有することを特徴とする蛍光体。
【0029】
第6の構成は、第5の構成に記載の蛍光体であって、
上記塩素または/及びフッ素の含有量が0.0001重量%以上、1.0重量%以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0030】
第7の構成は、第1から第6の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
25℃において、波長300nmから500nmの範囲にある所定の単色光が励起光として照射された際の発光スペクトル中における最大ピークの相対強度の値をP25とし、
100℃において、前記所定の単色光が励起光として照射された際の、前記最大ピークの相対強度の値をP100としたとき、
(P25−P100)/P25×100≦20であることを特徴とする蛍光体である。
【0031】
第8の構成は、第1から第7の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の1次粒子と、該1次粒子が凝集した凝集体とを含み、該1次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0032】
第9の構成は、
一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnで表記される蛍光体であって(M(1)元素はI価の価数をとる1種類以上の元素であり、M(2)元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。)、
0.5≦a≦2.0、3.0≦b≦7.0、m(1)>0、m(2)>0、z>0、4.0≦(a+b)≦7.0、m(1)+m(2)+z=1、0<o≦4.0、n=1/3m(1)+2/
3m(2)+z+a+4/3b−2/3oであり、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから600nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体である。
【0033】
第10の構成は、第9の構成に記載の蛍光体であって、
0<m(1)≦0.05であることを特徴とする蛍光体である。
【0034】
第11の構成は、第9または第10の構成に記載の蛍光体であって、
0.0001≦z≦0.5であることを特徴とする蛍光体である。
【0035】
第12の構成は、第9から第11の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
0.8≦a≦2.0、3.0≦b≦6.0、0<o≦1.0であることを特徴とする蛍光体である。
【0036】
第13の構成は、第9から第12の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
0<o≦1.0、a=1+o、b=4−o、n=7−oであることを特徴とする蛍光体である。
【0037】
第14の構成は、第9から第13の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(1)元素は、Li、Na、K、Rbから選択される1種類以上の元素であり、
M(2)元素は、Mg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素は、Al、Ga、Inから選択される1種類以上の元素であり、
B元素は、Siおよび/またはGeであり、
Z元素は、Eu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体である。
【0038】
第15の構成は、第9から第14の構成に記載の蛍光体であって、
M(2)元素が、Srおよび/またはBa、A元素がAl、B元素がSi、Z元素がCeであることを特徴とする蛍光体である。
【0039】
第16の構成は、第9から第15の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、M(1)元素が、Kであることを特徴とする蛍光体である。
【0040】
第17の構成は、第9から第16の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
蛍光体を構成する元素として、21.0重量%以上、27.0重量%以下のSrと、8.0重量%以上、14.0重量%以下のAlと、0.5重量%以上、6.5重量%以下のOと、26.0重量%以上、32.0重量%以下のNと、0を超え4.0重量%以下のCeと、0を超えて1.0重量%未満のLi、Na、Kから選択される1種類以上の元素と、を含むことを特徴とする蛍光体である。
【0041】
第18の構成は、第9から第17の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造であって、
0を超えて2.0重量%未満のBaを含むことを特徴とする蛍光体である。
【0042】
第19の構成は、第9から第18の構成のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の一次粒子と、該一次粒子が凝集した凝集体とを含み、該一次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体である。
【0043】
第20の構成は、第1から第8の構成のいずれかに記載の蛍光体を製造する蛍光体の製造方法であって、
当該蛍光体の原料粉体を秤量、混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程と、
前記焼成物を解砕して蛍光体を得る工程とを有し、
前記混合物を焼成して焼成物を得る工程において、当該焼成時の雰囲気ガスとして、窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスのいずれかを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0044】
第21の構成は、第20の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
前記該焼成炉内の雰囲気ガスとして、窒素ガスを80%以上含むガスを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0045】
第22の構成は、第20または第21の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.1ml/min以上流通させながら焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0046】
第23の構成は、第20から第22の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.001MPa以上、1.0MPa以下の加圧状態とすることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0047】
第24の構成は、第20から第23の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、塩化物または/及びフッ化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0048】
第25の構成は、第24の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記塩素または/及びフッ素化合物がSrF2、BaF2、AlF3、SrCl2、BaCl2、AlCl3であることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0049】
第26の構成は、第20から第25の構成のいずれかに記載の蛍光体を製造する蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、酸化物または/及び窒化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0050】
第27の構成は、第26の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記酸化物または/及び窒化物がAl2O3、Ga2O3、In2O3、GaN、Sr3N2、Ba3N2、Ca3N2であることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0051】
第28の構成は、第20から第27の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
上記蛍光体の原料の平均粒径が0.1μmから10.0μmであることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0052】
第29の構成は、第9から第19の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
該蛍光体の原料を、るつぼに入れ炉内にて焼成する際、
るつぼとしてBNるつぼを使用し、窒素ガス、希ガス、およびアンモニアガスから選択
される1種類以上を含むガスを、炉内に0.1ml/min以上流し、且つ、炉内圧を0.0001MPa以上、1.0MPa以下とし、1400℃以上、2000℃以下の温度で30分間以上焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0053】
第30の構成は、第29の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、
当該焼成工程と焼成により得られた焼成物を粉砕および混合する工程からなる一連の工程を、少なくとも二回以上繰り返すことを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0054】
第31の構成は、第29または30の構成に記載の蛍光体の製造方法であって、原料にバリウムの塩化物、フッ化物、酸化物、炭酸塩を少なくとも一種類以上使用することを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0055】
第32の構成は、第1から第19に記載の蛍光体と、第1の波長の光を発する発光部とを有し、前記第1の波長の光の一部または全部を励起光とし、前記蛍光体から前記第1の波長と異なる波長を発光させることを特徴とする発光装置である。
【0056】
第33の構成は、第32の構成に記載の発光装置であって、
第1の波長とは、300nmから500nmの波長であることを特徴とする発光装置である。
【0057】
第34の構成は、第32または第33の構成に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、60以上であることを特徴とする発光装置である。
【0058】
第35の構成は、第32から第33の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、80以上であることを特徴とする発光装置である。
【0059】
第36の構成は、第32から第35の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R15が、80以上であることを特徴とする発光装置である。
【0060】
第37の構成は、第32から第36の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R9が、60以上であることを特徴とする発光装置である。
【0061】
第38の構成は、第32から第37のいずれかの構成に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、2000Kから10000Kの範囲にあることを特徴とする発光装置である。
【0062】
第39の構成は、第32から第37の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、7000Kから2500Kの範囲にあることを特徴とする発光装置である。
【0063】
第40の構成は、第32から第39の構成のいずれかに記載の発光装置であって、
前記第1の波長を発する発光部がLEDであることを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0064】
第1から第8の構成のいずれかに記載の蛍光体は、近紫外・紫外から青緑色の範囲に平坦な励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから620nm付近に発光
のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持つという優れた発光特性を有し、且つ、目的の用途に合わせて所望の発光色を容易に発光させることの可能な蛍光体である。
【0065】
第9から第19の構成に記載の蛍光体は、波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、高効率で発光し、その発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから600nmとなる緑〜黄色の発光を得ることができる。
【0066】
第20から第28の構成に記載の蛍光体の製造方法によれば、近紫外・紫外から青緑色の範囲に平坦な励起帯を持ち、ブロードな発光スペクトルのピークを持つことに加え、発光特性に優れ、且つ、耐熱性に優れ、高温度環境下でも室温(25℃)下と比べ発光特性がほとんど劣化しない蛍光体を、大気中で不安定な原料を用いることなく、安価な製造コストで容易に製造することができる。
【0067】
第29から第31の構成に記載の蛍光体の製造方法によれば、近紫外・紫外から青緑色の範囲に励起帯を持ち、ブロードな発光スペクトルのピークを持つことに加え、発光強度・輝度に優れた蛍光体を、大気中で不安定な原料を用いることなく、安価な製造コストで容易に製造することができる。
【0068】
第32から第40の構成に記載の発光装置によれば、高い輝度を始めとして、高い演色性も有する、優れた特性を有する光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1から5、比較例1における蛍光体の発光強度とxとの関係を示すグラフである。
【図2】実施例2、6、比較例1における蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例2、6における蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例32から41における蛍光体の色度座標を示すグラフである。
【図5】実施例42から44における白色LED照明(発光装置)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】(A)〜(C)は、砲弾型LED発光装置の模式的な断面図である。
【図7】(A)〜(E)は、反射型LED発光装置の模式的な断面図である。
【図8】本第2の実施形態に係る蛍光体において、M(1)元素とM(2)元素との置換率と、相対発光強度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例51および比較例4に係る蛍光体の発光スペクトルである。
【図10】実施例51および比較例4に係る蛍光体の励起スペクトルである。
【図11】第2の実施形態に係る発光装置の発光スペクトル例である。
【図12】第2の実施形態に係る発光装置の発光スペクトル例である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(第1の実施形態に係る蛍光体)
本実施形態に係る第1の蛍光体は、一般式MmAaBbOoNn:Zで表記される母体構造を有する蛍光体である。ここでM元素は、前記蛍光体中においてII価の価数をとる元素から選択される1種類以上の元素である。A元素は、前記蛍光体中においてIII価の価数をとる1種類以上の元素である。B元素は、前記蛍光体中においてIV価の価数をとる1種類以上の元素である。Oは酸素である。Nは窒素である。Z元素は、前記蛍光体中において付活剤として作用する元素であって、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。
そして、該蛍光体において、(a+b)/mが4.0<(a+b)/m<7.0であり、n>oであり、a/mが0.5<a/m≦2.0であり、b/mが3.0≦b/m≦6.0の範囲にあり、o/mが0≦o/m≦1.5の範囲にあり、窒素はn=2/3m+a+4/3b−2/3oである。
【0071】
本実施形態に係る第1の上述の構成を有する蛍光体は、近紫外・紫外から青緑色の範囲(波長300nm〜500nm)に平坦な励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから620nm付近に発光のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持つという優れた初期発光特性を有し、且つ、耐熱性や耐水性に優れ、高温度環境下でも室温(25℃)下と比べ発光特性がほとんど劣化しない蛍光体である。尚、該蛍光体において、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1の範囲であると、発光強度および上記諸特性がさらに高くなることから、より好ましい構成である。
【0072】
この結果、当該蛍光体単独、もしくは該蛍光体と適宜な他色の蛍光体とを混合して蛍光体混合物とし、該蛍光体混合物と、近紫外・紫外LEDや青色LED等の発光部とを組み合わせることで、発光強度および輝度が高く、点灯時間の累積に拘わらず発光色の安定した高効率な発光を得ることができる。また、本実施形態の蛍光体組成式中のxを最適化し、または付活剤の種類および添加量を変化させることにより、高い発光効率を保持したまま発光色の変化が可能であり、当該蛍光体と青色LED等の発光部とを組み合わせることによって、様々な色温度において演色性の良い発光色を得ることが可能である。
【0073】
ここで、演色性について簡単に説明する。演色性とは、光源からの光が照射された物の色の見え方が、該光源の種類によって変わって見えることを指す。そして、光源の種類によるが、照明された物の色の再現性を示す演色性は、一般的に平均演色評価数(Ra)によって数値的に表すことができる。ここで、基準光で見た場合と全く同じ色が再現できれば最良の平均演色評価数(Ra=100)となり、再現される色の差異が大きくなるほどRa値が低下する(Ra<100)こととなる。
【0074】
勿論、照明用光源としては、色の見え方が、基準光を用いた場合と同じであるほど好ましいわけである。しかし、基準光が、可視光全域にわたり均一な光を持った白色光源であるのに対し、既存の白色LED照明は、可視光領域のある波長では光の強度が高く、ある波長では低いといったように光の強度にムラがあるため、光の強度が不足している波長域では色再現性が悪く演色性が低下してしまう。
【0075】
結局のところ、白色LED照明において演色性の高い発光を得るためには、使用される蛍光体の発光スペクトルのピークがブロードであることが求められる。そして、本実施形態の蛍光体における発光スペクトルの半値幅は80nm以上であり、発光スペクトルがブロードなピークを持つ蛍光体であることから、近紫外・紫外LEDや青色LED等の発光部とを組み合わせて白色LED照明を作製した場合に、平均演色評価数が高く演色性に優れたものを得ることができる。
更に、本実施形態の蛍光体は、視感度(輝度)が高い波長500nmから620nmの範囲で発光スペクトルのピーク位置をシフトさせることが可能であるため、他の蛍光体を混合することなく、目的の発光色の白色LED照明を作製することが可能である。特に、青色LEDとの組み合わせによる白色LED照明においては、本実施形態の蛍光体を使用することにより、相関色温度が10000Kから2500Kの範囲において、平均演色評価数Raが60以上を有する発光装置を得ることが出来る。さらに、CaAlSiN3:Eu等、他種赤色蛍光体を加えることによって、平均演色評価数Raが80以上の演色性に非常に優れた発光装置を得ることが出来る。
【0076】
本実施形態に係る第1の蛍光体は、波長300nmから500nmの範囲、中でも波長400nmから480nmの範囲に励起帯のピークを有するといった特徴がある。本実施形態の蛍光体が、波長300nmから500nmという広い範囲に渡って励起帯を有しているため、YAG:Ce蛍光体では困難な近紫外・紫外LEDとの組み合わせによっても、白色LED照明を作製することが可能である。更に、本実施形態の蛍光体の有する励起帯は平坦であるため、発光効率の良い励起帯が狭いYAG:Ce蛍光体のように、発光素子のバラツキなどにより励起光が最適な励起帯の範囲から外れてしまって、青色と黄色の発光強度のバランスが崩れ、白色光の色調が変化するという問題を回避することができる。
【0077】
また、一般的な発光素子のスペクトルの半値幅は20nm程度であるが、波長460nmの青色の発光素子を用いた場合、発光強度はわずかであるが420nm程度の波長の光も一部放出している。この一部の短波長の光が素子を被覆する樹脂の劣化や人体に影響を与えてしまう可能性がある。
本実施形態の蛍光体は、青色発光素子の発光波長(460nm)よりも短波長側に励起ピークを有しているため、青色素子から放出される発光スペクトルのうち、発光ピークよりも短波長側の発光波長に対して効率よく吸収する。蛍光体が発光ピークよりも短波長側の発光波長の光を効率よく吸収すれば、いわゆる蛍光体自身が紫外線吸収剤の役割を果たし、人体への影響や樹脂の劣化を防ぐ事が可能である。好ましくは発光装置の励起光となる発光素子のピーク波長から40nm短波長側の範囲に励起ピークを持ち、かつ励起ピークを100%として80%以上の励起帯を保持していれば有害な紫外線を吸収でき、人体や樹脂への影響を避けることが可能となる。
【0078】
本実施形態に係る第1の蛍光体は、近紫外・紫外から青緑色(波長300nm〜500nm)という広範囲に渡って平坦な励起帯を持ち、緑色から橙色の範囲にブロードで高効率な発光スペクトルが得られるうえ、熱や水に対する耐久性に優れ、特に高温下での発光特性が優れている。この理由としては概ね次のように考えられる。まず、本実施形態の蛍光体の一般式MmAaBbOoNn:Zにおいて、M元素がSrまたはBa、A元素がAlまたはGa、B元素がSi、Z元素がCeおよび/またはEuであり、a、b、o、nの値が、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1の範囲であることで、該蛍光体は、従来の窒化物、酸窒化物蛍光体とは構造が異なる、高温に対して耐久性のある結晶構造となったと考えられるからである。
【0079】
本実施形態に係る第1の蛍光体は、上述の組成式よりSrAl1+xSi4-xOxN7-x:Z
(Zは付活剤)と示される。従来の同様な窒化物蛍光体は、特開2003−206481号公報(特許文献2)で示されるSrLuSi4N7:Eu2+や、非特許文献J.Solid State Chem.,177,(2004),4687−4694で示されるSrYSi4N7:Eu2+、SrYSi4N7:Ce3+、SrYSi4N7:Eu2+や非特許文献Z.Anorg.Allg.Chem.,623,(1997),212−217で示されるSrYbSi4N7、BaYbSi4N7などが報告されている。これら従来の窒化物蛍光体をMASi4N7と表した場合、M元素はCa、Sr、Baなどのアルカリ土類元素であり、本実施形態の蛍光体と同様である。
しかし、Aサイトについては、従来の窒化物蛍光体がY、La、Yb、Lu、Gdなどの希土類元素であるのに対し、本実施形態の蛍光体が、希土類元素よりもイオン半径の小さいAl、GaまたはInなどのIIIA族元素を主体としている点で異なる。また、発光特性においては、本実施形態の蛍光体のSrAlSi4N7:Ceは黄緑色に発光するのに対し、上記従来の窒化物蛍光体であるSrYSi4N7にCeを付活したSrYSi4N7:Ceは青色に発光するなどの点でも異なる。ただし、本実施形態の蛍光体は、上記従来の窒化物蛍光体と組成は異なるものの、結晶構造は近い構造をもつと考えられる。
【0080】
また、本実施形態の蛍光体を製造するにあたり、製造上わずかに構造中に混入した酸素原子を電荷的に中性に保つため、結晶構造中のSiの一部をAlに置き換え、Alが置換した量と同量のNをOに置換させることによって安定した結晶構造が得られる。該結晶構造をとることで、各原子が該結晶構造中に規則的に存在でき、発光に使用される励起エネルギーの伝達が効率よく行われるため、発光効率が向上するのではないかと考えられる。また、該蛍光体が近紫外・紫外から青緑色(波長300nm〜500nm)という可視光領域までの広範囲に渡って平坦な励起帯を持っているのは、酸化物蛍光体に比べ共有結合性が強いためと考えられる。
【0081】
本実施形態に係る第1の蛍光体はわずかに酸素原子を含む組成であるが、酸素原子量は少ない方が好ましい。特に0≦x≦1.0の範囲、さらに好ましくは0<x<0.5の範囲を採ることで、化学的に安定な組成となるため、発光強度がさらに高くなると考えられる。詳細な理由は不明であるが、酸素原子が少ないことにより、該蛍光体中に発光に寄与しない不純物相が生じにくくなり、発光強度の低下が抑制されるのではないかと考えられる。つまり、不純物相が多く生じた場合には、単位面積当たりの蛍光体量が減少し、さらに、生成した不純物相が、励起光や蛍光体から発生した光を吸収することで蛍光体の発光効率が低下し、高い発光強度が得られなくなると考えられるからである。
【0082】
該推論は、焼成後の本実施形態の蛍光体に対するX線回折測定において、xの値が上述の0≦x≦1.0の範囲内にあると、AlN、Si3N4などの未反応原料の不純物相ピーク、および発光に寄与する相とは異なる不純物相のピークが確認されない、または確認される場合でもきわめて低い回折強度であるのに対して、xの値がx>1.0であると、AlN、Si3N4、および発光に寄与する相とは異なる相の顕著なピークが確認されることからも裏付けられると考えられる。そして、焼成後の蛍光体に対するX線回折パターン中に、上記不純物相のピークが見られないという特徴は、測定対象である蛍光体が、高い発光強度を有していることを示していると考えられる。
【0083】
酸素の適正範囲
本実施形態に係る第1の蛍光体の酸素含有量は、5.0重量%以下であることが好ましい。該酸素含有量を最適化することにより、蛍光体の初期発光特性(25℃)が向上するだけでなく、温度が高い環境下でも発光特性が室温(25℃)と比べほとんど劣化しない蛍光体を得ることができる。これは、SiサイトをAlによって置換しただけでは、AlはSiに比べイオン半径が大きいため、結晶構造が発光に適した構造からズレてしまう。さらに、SiがIV価であるのに対し、AlはIII価であるため、結晶中における価数が不安定になってしまうといった問題がおこる。しかし、Siサイトを置換するAl量に応じて、Nサイトの一部をOで置換すると、発光に最適な結晶構造とすることができ、さらに、母体結晶全体の価数も安定なゼロにすることができるため、優れた発光特性を示すものと考えられる。ただし、酸素の置換量が多すぎても発光特性の劣化を招くため、焼成後の蛍光体の酸素含有量は、蛍光体の全重量に対し5.0重量%以下の含有量であれば、発光特性が良好で十分に実用が可能な蛍光体となる。
【0084】
塩素、フッ素の適正範囲
本実施形態に係る第1の蛍光体の塩素または/及びフッ素の含有量は、0.0001重量%以上、1.0重量%以下であることが好ましい。蛍光体作製時に原料元素のフッ素および塩素の化合物を添加することにより、焼成時において添加した化合物が融解し周辺の原料を取り込み、蛍光体の結晶成長反応がより促進されることによって、発光効率の高い蛍光体を得ることが出来る。蛍光体中に添加された塩素または/及びフッ素は、おそらく酸素および窒素原子とわずかに置換されて生成後の蛍光体に残留する。塩素または/及びフッ素以外においても、融点が1000℃以上2000℃以下である組成構成元素(原料元素)の酸化物、窒化物を同時に用いることにより、フラックス効果が発揮され反応が促
進される。
【0085】
Mの適正範囲
一方、前記M元素は、Srを必須とし、Mg、Ca、Ba、Zn、II価の原子価をとる希土類元素、の中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Sr、Baから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい、最も好ましくは、Sr単独またはM元素として含まれるSr元素が50at%以上とすることである。
【0086】
Aの適正範囲
前記A元素は、Al、Ga、In、Tl、Y、Sc、La、P、As、Sb、Biの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Al、Ga、InのIIIA族元素から選択される1種類以上の元素であることがより好ましく、最も好ましくはAlである。A元素は、具体的には、Al単独、または、Alと、Ga、Inから適宜選択される一種以上の元素との併用である。Alは、窒化物であるAlNが一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0087】
Bの適正範囲
前記B元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Hf、Mo、W、Cr、Pb、Zrの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Siおよび/またはGeであることが好ましく、最も好ましくはSiである。B元素は、具体的には、Si単独、または、SiとGeとの併用である。Siは、窒化物であるSi3N4が一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0088】
Zの適正範囲
前記Z元素は、蛍光体の母体構造におけるM元素の一部を置換した形で配合される、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。従って本実施形態において、M元素のモル数を示すmは、Z元素のモル数zを含んだ数値である。
【0089】
本実施形態に係る第1の蛍光体を用いた白色LED照明を始めとする各種の光源に十分な演色性を発揮させる観点からは、該蛍光体の発光スペクトルにおけるピークの半値幅は広いことが好ましい。そして、該観点からZ元素は、Eu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることが好ましい。中でもZ元素として最も好ましくはCe、Euである。Z元素は、具体的には、Ce単独、または、Eu単独、またはCeとEuの2種の元素を併用することで、本実施形態の蛍光体の発光スペクトルが緑色から橙色にかけてブロードで、その発光強度が高くなるため、白色LED照明を始めとする各種光源の付活剤として好ましい。
【0090】
また、Z元素の添加量は、本実施形態の蛍光体を一般式MmAaBbOoNn:Zz(但し、0<m+z≦1)と表記した際、M元素と付活剤Z元素とのモル比z/(m+z)において、0.0001以上、0.50以下の範囲にあることが好ましい。M元素とZ元素とのモル比z/(m+z)が該範囲にあれば、付活剤(Z元素)の含有量が過剰であることに起因して濃度消光が生じ、これにより発光効率が低下することを回避でき、他方、付活剤(Z元素)の含有量が過少であることに起因して発光寄与原子が不足し、これにより発光効率が低下することも回避できる。さらに、該z/(m+z)の値が、0.001以上、0.30以下の範囲内であればより好ましく、前記範囲内であれば付活剤(Z元素)の添加量制御によって、該蛍光体の発光のピーク波長をシフトして設定することができ、得られた光源において色温度、輝度、演色性の調整の際に有効である。但し、該z/(m+z)の値の範囲の最適値は、付活剤(Z元素)の種類およびM元素の種類により若干
変動する。
【0091】
本実施形態に係る第1の蛍光体(一般式MmAaBbOoNn:Z)において、M元素としてSr、A元素としてAl、B元素としてSi、Z元素としてCeおよび/またはEuを選択し、m、a、b、o、nの値が、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1の範囲であるとき、生成後の蛍光体の組成分析により、当該蛍光体を構成する元素の重量比を求めたところ、Srは、22.0重量%以上、28.0重量%以下、Alは、5.0重量%以上、18.0重量%以下、Oは、5.0重量%以下、Nは、27.0重量%以上、Ceおよび/またはEuは、0を超え5.0重量%以下となった。前記組成以外はSiまたはその他微量に添加した元素である。該蛍光体へ、励起光として波長300nmから500nmの範囲にある単色光、または、これら単色光の混合光を照射した際、該蛍光体の発光スペクトルのピーク波長は波長500〜620nmの範囲となった。このとき、該蛍光体は十分な発光強度を示し、発光スペクトルの色度(x,y)の色度xが0.38〜0.55、色度yが0.40〜0.60の範囲にあるという、好ましい発光特性を示した。
【0092】
次に、本実施形態に係る第1の蛍光体の温度特性について説明する。
該蛍光体は、白色LED照明のみならず高温環境下で使用される場合がある。従って、温度の上昇とともに発光強度が低下するものや、熱劣化によって発光特性が劣化するものは好ましくない。例えば、硫化物蛍光体は、発光特性に優れるが温度の上昇とともに発光強度が低下するものや、熱による組成変化によって発光特性が劣化するものが多い。これに対し、本実施形態の蛍光体は優れた温度特性と耐熱性とを示し、励起光として、近紫外・紫外から青緑色の範囲(波長域300〜500nm)にある単色光、または、これら単色光の混合光が照射された際の、25℃における発光スペクトル中の最大ピークの相対強度の値を発光強度P25とし、上記励起光が照射された上記蛍光体の100℃における前記最大ピークの相対強度の値をP100としたときに、(P25-P100)/P25×100≦20.0となり、高温環境下でも優れた発光特性を示す。
本発明者らがLEDの発熱温度について調査を行なったところ、小型の小電流タイプのチップでは50℃程度であるが、より強い発光を得るために、大型の大電流タイプを使用した場合には80℃から150℃程度まで発熱することが解った。更に、白色LED照明とした場合は、樹脂によるチップの封止やリードフレームの構造によって発生した熱が蓄積され、樹脂または蛍光体混合物部分の温度が100℃程度になる場合があることが判明した。即ち、(P25-P100)/P25×100≦20.0、さらに好ましくは(P25-P100)/P25×100≦10.0であれば、発光源であるLED等の長時間点灯に伴う発熱が蓄積された場合であっても、当該発熱による発光強度の低下を、白色LED照明等として問題のない水準に収めることが出来る。
【0093】
本実施形態に係る第1の蛍光体は粉末状とされることで、白色LED照明を始めとする多様な発光装置に容易に適用可能となる。ここで該蛍光体は、粉体の形で用いられる場合には、50.0μm以下の1次粒子および該1次粒子の凝集体を含み、該1次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉末の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0μm以上、10.0μm以下である。これは、平均粒径が50.0μm以下であれば、その後の粉砕工程が容易に行えることと、蛍光体粉体においては発光が主に粒子表面で起こると考えられるため、粉体単位重量あたりの表面積を確保でき輝度の低下を回避できるからである。さらに、平均粒径が50.0μm以下であれば、該粉体をペースト状とし、発光体素子等に塗布した場合にも該粉体の密度を高めることができ、この観点からも輝度の低下を回避できるからである。また、本発明者らの検討によると、詳細な理由は不明であるが、蛍光体粉末の発光効率の観点から、平均粒径が1.0μmより大きいことが好ましいことも判明した。
以上のことより、本実施形態の蛍光体における粉体の平均粒径は、1.0μm以上50
.0μm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径(D50)は、ベックマン・コールター社製LS230(レーザー回折散乱法)により測定された値である。また、比表面積(BET)の値としては、0.05m2/g以上、5.00m2/g以下であることが、上記観点からして好ましい。
【0094】
さらに、粉体を塗布する際の塗布むらを抑制する観点からは、粒度分布の分布幅がシャープであることが好ましい。ここで粒度分布の分布幅に関する指標として、変動係数CVが用いられる。そして変動係数CVは次式により算出されるが、白色LEDで使用する蛍光体においては、当該変動係数CVの値が100%以下であることが好ましい。
変動係数CV(%)=標準偏差/算術平均粒径×100・・・(式)
【0095】
(第1の実施形態に係る蛍光体の製造方法)
次に、本実施形態に係る第1の蛍光体の製造方法について、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ceと表記したときx=0.25、Ce/(Sr+Ce)=0.030である。)の製造を、一例として説明する。
【0096】
一般的に蛍光体は固相反応により製造されるものが多く、本実施形態の蛍光体も固相反応によって製造することができる。しかし、製造方法はこれらに限定されるものではない。M元素、A元素、B元素の各原料は窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩などの市販されている原料でよいが、純度は高い方が好ましいことから2N以上、好ましくは3N以上のものを準備する。各原料粒子の粒径は、一般的には、反応を促進させる観点から微粒子の方が好ましいが、原料の粒径、形状により、得られる蛍光体の粒径、形状も変化する。このため、最終的に得られる蛍光体に求められる粒径や形状に合わせて、近似の粒径を有する窒化物等の原料を準備すればよいが、好ましくは50μm以下の粒子径、さらに好ましくは0.1μm以上10.0μm以下の粒子径の原料を用いると良い。
Z元素も原料は市販の窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩もしくは単体金属が好ましい。勿論、Z元素についても純度は高い方が好ましく、2N以上、さらに好ましくは3N以上のものを準備する。
【0097】
SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)の製造であれば、例えばM元素、A元素、B元素の原料として、それぞれSrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)を準備し、Z元素としては、CeO2(3N)を準備するとよい。原料の仕込み組成と、焼成後の組成との間にはズレを生じることを考慮して、何点かの検討を行い、焼成後において狙いの組成が得られる仕込み組成を求める。焼成後において、各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030の試料となるように、焼成前の仕込みの段階において、各原料の混合比を、それぞれ、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol、CeO2を0.030mol秤量し混合する。
ここで、Si3N4に関して目的の組成よりも0.50/3mol多めに秤量している。これは、1700℃以上の焼成および長時間の焼成においては、Si3N4が高温長時間の焼成によって次第に昇華していくため、通常のモル比より多めに仕込んでおいた方が好ましいからである。ただし、焼成時の条件により変化するため、各々の焼成条件によって調整する必要がある。
また、生成後の試料の酸素量については、M元素(ここではSr)の原料として炭酸塩を用いた場合、炭酸塩が高温焼成によって分解・窒化するため、焼成条件の調整により必要量の酸素を残存させる形で作成した。ただし、炭酸塩を用いずに、M元素、A元素、B元素の窒化物とAl2O3やSiO2などの酸化物と組み合わせて酸素量を調整しても良い。
【0098】
さらに、本実施形態に係る第1の蛍光体の結晶性を向上させるために、M元素または/及びA元素の、塩化物または/及びフッ化物、を添加すると、反応が促進され、焼結温度・時間が低減されて好ましい。同様に、M元素または/及びA元素の、酸化物または/及び窒化物を添加しても、同様の効果を得ることが出来好ましい。
炭酸塩など低融点の原料を使用した際には、原料自体がフラックスとして働き、反応が促進される場合もあるが、M元素または/及びA元素の化合物、特に融点が1000℃以上2000℃以下であるM元素または/及びA元素のフッ化物、塩化物、酸化物、窒化物を、原料粉体の混合物へ0.01wt%から5.0wt%添加することにより、さらにフラックス効果が発揮される。
特に、フッ化物としてはSrF2、BaF2、AlF3が好ましく、塩化物としてはSrCl2、BaCl2、AlCl3、酸化物としてはAl2O3、Ga2O3、In2O3、SiO2、GeO2、窒化物としてはCa3N2、Sr3N2、Ba3N2、GaN、InN、BNが好ましく、特に好ましくはSrF2、BaF2、Al2O3、Ga2O3が好ましい。フラックスとして前記以外の別の物質を添加してもよいが、該フラックスが不純物となり、蛍光体の特性を悪化させる可能性があるので、M元素または/及びA元素の、塩素または/及びフッ素化合物、M元素または/及びA元素の酸化物または/及び窒化物が好ましい。
【0099】
該試料の秤量・混合については、大気中で行っても良いが、各原料元素の窒化物が水分の影響を受けやすいため、水分を十分取り除いた不活性雰囲気下のグローブボックス内での操作が便宜である。混合方式は湿式、乾式どちらでも構わないが、湿式混合の溶媒として純水を用いると原料が分解するため、適当な有機溶媒または液体窒素を選定する必要がある。装置としては、ボールミルや乳鉢等を用いる公知の方法でよい。
【0100】
混合が完了した原料をるつぼに入れ、焼成炉において窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気中で1400℃以上、より好ましくは1600℃以上2000℃以下で30分以上保持して焼成する。ここで、焼成炉内の雰囲気ガスは、窒素ガスが80%以上含まれていることが好ましい。
また、焼成温度が1400℃以上であれば、固相反応が良好に進行して発光特性に優れた蛍光体を得ることが可能となる。2000℃以下で焼成すれば、過剰な焼結や、融解が起こることを防止できる。尚、焼成温度が高いほど固相反応が迅速に進むため、保持時間を短縮出来る。一方、焼成温度が低い場合でも、該温度を長時間保持することにより目的の発光特性を得ることが出来る。しかし、焼成時間が長いほど粒子成長が進み、粒子形状が大きくなるため、目的とする粒子サイズに応じて焼成時間を設定すればよい。
【0101】
該焼成中の炉内圧力は0.001Mpa以上、1.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは0.01MPaを超え、0.5MPa以下である。(本実施形態において、炉内圧力とは大気圧からの加圧分の意味である。)これは、1.0MPa以下の圧力下で焼成することにより、粒子間の焼結が進み過ぎることを回避でき、焼成後の粉砕を容易化でき、また、0.001Mpa以上の圧力下で焼成することにより、焼成時に大気中から炉内への酸素の侵入を抑えることが可能となるためである。
尚、るつぼとしてはAl2O3るつぼ、Si3N4るつぼ、AlNるつぼ、サイアロンるつぼ、C(カーボン)るつぼ、BN(窒化ホウ素)るつぼなどの、上述したガス雰囲気中で使用可能なものを用いれば良いが、BNるつぼを用いると、るつぼからの不純物混入を回避することができ好ましい。
【0102】
また、焼成中は、上述したガス雰囲気を、例えば0.1ml/min以上の流量で流した状態で焼成することが好ましい。これは、焼成中には原料からガスが発生するが、上述の窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気を流動(フロー)
させることにより、原料から発生したガスが炉内に充満して反応に影響を与えることを防止でき、この結果、蛍光体の発光特性の低下を防止できるからである。特に、原料に炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩など、高温で分解する原料を使用した際にはガスの発生量が多いため、焼成炉内にガスをフローさせ、発生したガスを排気させることが好ましい。
【0103】
本実施の形態では、原料を粉末のまま焼成することが好ましい。一般的な固相反応では、原料同士の接点における原子の拡散による反応の進行を考慮し、原料全体で均一な反応を促進させるために、原料をペレット状にして焼成することもある。しかし、該蛍光体原料の場合には、粉末のまま焼成することで焼成後の解砕が容易であり、1次粒子の形状が理想的な球状となることから、原料を粉末として扱うことが好ましい。更に、原料として、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩を使用した場合には、焼成時の原料の分解によりCO2ガスなどが発生するが、原料が粉体であれば十分に抜けきってしまうので発光特性に悪影響を及ぼさないという観点からも、原料が粉体であることが好ましい。
【0104】
焼成が完了した後、焼成物をるつぼから取り出し、乳鉢、ボールミル等の粉砕構成を用いて、所定の平均粒径となるように粉砕し、組成式SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)で示される蛍光体を製造することができる。得られた蛍光体はこの後必要に応じて、硫酸・塩酸・硝酸・フッ酸または水による洗浄、分級、焼鈍、SiO2または導電性物質を表面に付着させる表面処理を行う。
【0105】
M元素、A元素、B元素、Z元素として、他の元素を用いた場合、および付活剤であるZ元素の付活量を変更した場合にも、各原料の仕込み時の配合量を所定の組成比に合わせることで、上述したものと同様な製造方法により蛍光体を製造することができる。
【0106】
(第2の実施形態に係る蛍光体)
本実施形態に係る第2の蛍光体は、一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnで表記される母体構造を有する蛍光体である。ここでM(1)元素は、前記蛍光体中において、I価の価数をとる元素から選択される1種類以上の元素であり、M(2)元素は、前記蛍光体中において、II価の価数をとる元素から選択される1種類以上の元素である。A元素は、前記蛍光体中においてIII価の価数をとる1種類以上の元素である。B元素は、前記蛍光体中においてIV価の価数をとる1種類以上の元素である。Oは酸素である。Nは窒素である。Z元素は、前記蛍光体中において付活剤として作用する元素であって、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。
【0107】
該蛍光体の結晶構造において、M(1)元素,M(2)元素,Z元素は同一の原子サイトに配置される。したがって、該蛍光体の結晶構造は、この同一サイトを占める元素に対する他のA元素、B元素、O(酸素)元素、およびN(窒素)元素の比によって規定される。ここで、上記組成式において、m(1)+m(2)+z=1となるように規格化することにより、それぞれの構成比率は、a、b、o、nの値と一致して扱えるようになり、簡便な表記とすることができる。そこで、本発明においては、この表記方法により結晶構造中の元素の構成比率を表現することとする。
本発明者による各元素比の検討結果より、この(M(1),M(2),Z)元素、A元素、B元素の構成比が、(m(1)+m(2)+z=1となるよう規格化したとき、)0.5≦a≦2.0、3.0≦b≦7.0、m(1)>0、m(2)>0、z>0、4.0≦(a+b)≦7.0の関係を満たすとき、近紫外・紫外から青緑色の範囲(波長300nm〜500nm)に励起帯を持ち、輝度を高めることのできる波長500nmから600nm付近に発光のピークを有しながらブロードな発光スペクトルを持つという好ましい発光特性を有する蛍光体を得ることが可能となった。
【0108】
これは、各元素の構成比がこの範囲にあることで、該蛍光体とは別の結晶構造を有する不純物相の発生が抑制され、発光特性が維持される為であると考えられる。同様に、酸素元素の比率は、0<o≦4.0の範囲にあるとき、高い発光特性を有する蛍光体を得ることができるが、これも、酸素量がこの範囲にあることで、不純物の発生が起こらず、発光特性が維持される為である。
また窒素元素に関しては、それぞれの構成元素の電荷を考えると、n=1/3m(1)+2/3m(2)+z+a+4/3b−2/3oを満たすとき、結晶構造内の電荷の和がゼロとなり最も安定な結晶構造となる為であると考えられる。従って、窒素量がこの範囲にあることにより、高い発光特性を得ることができるのであると考えられる。
【0109】
上記の組成範囲中において(m(1)+m(2)+z=1となるように規格化したときに、)、0.8≦a≦2.0、3.0≦b≦6.0、0<o≦1.0を満たすとき、前述の不純物の発生を、さらに大きく抑えることができ、該蛍光体物質をほぼ単相で得ることができる。このため、発光強度・輝度に優れた蛍光体を得ることができるため好ましい。
【0110】
上記組成範囲中において、特に、0<o≦1.0としたとき、a=1+o、b=4−o、n=7−oを満たす場合においては、発光特性に優れた蛍光体を得ることが出来た。これは、該蛍光体の結晶構造が発光に最も適した構造となる為であると考えられる。そして、より一層発光強度や輝度が向上するため、最も好ましい構成比である。
【0111】
上記従来の蛍光体における発光機構は、Mサイトが、付活剤元素とよばれるZ元素により一部置換されることにより発光特性を示すものである。ここでZ元素は、本来Mサイトを占める元素とはイオン半径やイオンの価数が異なっている。このため、発光を得ることを目的として、母相となる物質のMサイトをZ元素で置換した場合、M元素とZ元素とのイオン半径の違いにより結晶構造に歪みを生じたり、M元素とZ元素とのイオン価数の違いにより電荷の釣り合いが崩れたりすることにより、結晶構造が不安定なものになってしまう。このような結晶構造の不安定性が存在すると、当該結晶内に侵入した励起光のエネルギーが散逸により失われ、効率的に発光中心に到達できない状況をもたらす。さらに、より高い発光特性を得るため、発光に寄与するZ元素の置換量を増加させた場合には、この不安定性がますます顕著になる。そして、この結晶構造の不安定性ため、高い発光強度・輝度をもつ蛍光体の作製が困難だったのであると考えられる。これに対し、本実施形態に係る蛍光体は、Mサイトの元素を、II価の元素M(2)と、I価の元素M(1)との混合とすることにより、Z元素によるMサイトの置換に伴う電荷の不均衡や結晶構造の歪みを緩和し、結晶構造の安定性を高めているものと考えられる。
【0112】
例えば、II価であるM(2)元素が占めるM(2)サイトへ、よりイオン半径が小さいIII価の付活剤元素を導入した場合には、局所的に結晶格子が縮み、且つ、正の電荷が付活剤の分だけ過剰となるため結晶構造が構造的・電気的に不安定になる。ここへ、I価のM(1)元素の原子を、Z元素の原子と同数程度導入することにより、まず電荷の釣り合いを回復することができる。さらに、M(1)元素が、Z元素よりもイオン半径が大きいものであれば、結晶構造の歪みも緩和することができる。
【0113】
以上のことから、M(1)元素の原子によるM(2)元素サイトの置換量は、Z元素の原子の数と同数程度が好ましい。具体的には、m(1)の値が、0<m(1)≦0.05であることが好ましい。ここで、m(1)=1−m(2)−zより、当該m(1)の値は、M(1)元素、M(2)元素、およびZ元素で構成されるサイトにおいてM(1)元素が占めている割合(すなわちM(1)元素のサイト置換率)を示している。
当該M(1)元素によるM(2)サイトの置換により、蛍光体の結晶構造を安定化させることで、より発光強度や輝度の高い蛍光体の作製が可能となった。
【0114】
ここで、M(1)元素についてさらに説明する。
M(1)元素はI価の価数を持つ元素であり、主にLi、Na、K、Rbなどのアルカリ金属である。このM(1)元素は後述のM(2)元素を一部置換する形で蛍光体を構成する。M(1)元素の種類・置換量は、M(2)元素、付活剤元素Zのイオン半径・電荷の違いを考慮して選択すればよい。
【0115】
例えば、本発明の好ましい実施形態の一例として、M(2)元素にSr、Z元素にCeが選択された場合、Sr2+のサイトが一部Ce3+に置き換えられる為、結晶格子が局所的に縮み、さらに結晶格子中の正の電荷が過剰となる。この場合、電荷の釣り合いを保つためには、Z元素と同程度の量のM(1)元素を導入すればよいが、同時に結晶格子の歪みを緩和するためには、イオン半径がCe3+より大きなKやRbを導入することが好ましい。特にKは入手が容易であり、製造コストの面からも好ましい。
【0116】
次に、M(2)元素についてさらに説明する。
M(2)元素は、まずSrを選択し、さらに、Mg、Ca、Ba、Zn、II価の原子価をとる希土類元素の中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましい。さらには、Sr単独または、SrとBaの併用であることがより好ましい、最も好ましくはSrとBaの併用であり、そのSrの割合を95at%以上100at%未満とすることである。このような構成にすることにより、高い発光特性をもった蛍光体となる。
【0117】
次に、A元素についてさらに説明する。
A元素は、Al、Ga、In、Tl、Y、Sc、La、P、As、Sb、Biの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Al、Ga、InのIIIA族元素から選択される1種類以上の元素であることがより好ましく、最も好ましくはAlである。Alは、窒化物であるAlNが一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0118】
次に、B元素についてさらに説明する。
B元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Hf、Mo、W、Cr、Pb、Zrの中から選ばれる1種類以上の元素であることが好ましく、さらには、Siおよび/またはGeであることが好ましく、最も好ましくはSiである。Siは、窒化物であるSi3N4が一般的な熱伝材料や構造材料として用いられており、入手容易且つ安価であり、加えて環境負荷も小さく好ましい。
【0119】
次に、Z元素についてさらに説明する。
Z元素は、蛍光体の母体構造におけるM(1)元素またはM(2)元素の一部を置換した形で配合される、希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。
本実施形態の蛍光体を用いた白色LED照明を始めとする各種の光源に十分な演色性を発揮させる観点からは、該蛍光体の発光スペクトルにおけるピークの半値幅を広げるものであることが好ましい。そして、当該観点からZ元素は、Eu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることが好ましく、中でも最も好ましくはCeである。
【0120】
また、Z元素の添加量は、本実施形態の蛍光体を一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnと表記した際、付活剤Z元素による、M(1)、M(2)元素サイトの置換率であるz(但し、z/(m(1)+m(2)+z)=zである。)の値は、0.0001以上、0.50以下の範囲にあることが好ましい。付活剤Z元素によるサイト置換率zが当該範囲にあれば、付活剤(Z元素)の含有量が過剰であることに起因する濃度消光により発光効率低下することを回避でき、他方、付活剤(Z元素)の含有量が過少となって発光寄与原子が不足し、これにより発光効率が低下することも回避できる。さらに、当該zの値が、0.
001以上、0.10以下の範囲内であればより好ましい。但し、当該zの値の範囲の最適値は、付活剤(Z元素)の種類およびM(1)、M(2)元素の種類により若干変動する。
【0121】
本実施形態に係る第2の蛍光体(一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNn)において、M(1)元素としてK、M(2)元素としてSr、A元素としてAl、B元素としてSi、Z元素としてCeとしたとき、作成後の蛍光体の組成分析により、当該蛍光体を構成する元素の重量比を求めたところ、Srは、21.0重量%以上、27.0重量%以下、Alは、8.0重量%以上、14.0重量%以下、Oは、0.5重量%以上、6.5重量%以下、Nは、26.0重量%以上、32.0重量%以下、Ceは、0を超え4.0重量%以下となった。またKの重量比は0を超えて1.0重量%未満であった。前記組成以外はSiまたは原料中に混入した不純物である。該蛍光体へ、励起光として波長300nmから500nmの範囲にある単色光、または、これら単色光の混合光を照射した際、該蛍光体の発光スペクトルのピーク波長は波長500〜600nmの範囲となった。このとき、該蛍光体は十分な発光強度を示し、発光スペクトルの色度(x,y)の色度xが0.380〜0.550、色度yが0.400〜0.600の範囲にあるという、好ましい発光特性を示した。
【0122】
前述の通り、本実施形態において、M(2)元素をSrおよびBaとし、そのSrの割合を95at%以上100at%未満とすることにより、高い発光効率を得ることができる。この場合、蛍光体に対するBa元素の重量比を測定したところ0を超えて2.0重量%未満であった。
【0123】
本実施形態に係る第2の蛍光体は粉末状とされることで、白色LED照明を始めとする多様な発光装置に容易に適用可能となる。ここで該蛍光体は、粉体の形で用いられる場合には、50.0μm以下の一次粒子および該一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉末の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0μm以上、20.0μm以下である。これは、平均粒径が50.0μm以下であれば、その後の粉砕工程が容易に行えることと、蛍光体粉体においては発光が主に粒子表面で起こると考えられるため、粉体単位重量あたりの表面積を確保でき輝度の低下を回避できるからである。さらに、平均粒径が50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下であれば、該粉体をペースト状とし、発光体素子等に塗布した場合にも該粉体の密度を高めることができ、この観点からも輝度の低下を回避できるからである。また、本発明者らの検討によると、詳細な理由は不明であるが、蛍光体粉末の発光効率の観点から、平均粒径が1.0μmより大きいことが好ましいことも判明した。
以上のことより、本実施形態の蛍光体における粉体の平均粒径は、1.0μm以上50.0μm以下であることが好ましい。尚、ここでいう平均粒子径(D50)は、ベックマン・コールター社製 LS230(レーザー回折散乱法)により測定された値である。また、比表面積(BET)の値としては、0.05m2/g以上、5.00m2/g以下であることが、上記観点からして好ましい。
【0124】
(第2の実施形態に係る蛍光体の製造方法)
本実施形態に係る第2の蛍光体の製造方法について、(K0.04Sr0.93Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7の製造(前述の組成式においてM(1)元素をK、M(2)元素をSrとし、o=0.30、m(1)=0.04とした場合)を、例として説明する。
【0125】
一般的に蛍光体は固相反応により製造されるものが多く、本実施形態の蛍光体も固相反応によって製造することができる。しかし、製造方法はこれらに限定されるものではない。M(1)元素、M(2)元素、A元素、B元素の各原料は窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩などの市販されている原料でよいが、純度は高い方が好ましいこ
とから2N以上、好ましくは3N以上のものを準備する。各原料粒子の粒径は、一般的には、反応を促進させる観点から微粒子の方が好ましいが、原料の粒径、形状により、得られる蛍光体の粒径、形状も変化する。このため、最終的に得られる蛍光体に求められる粒径や形状に合わせて、近似の粒径を有する窒化物等の原料を準備すればよいが、好ましくは50μm以下の粒子径、さらに好ましくは0.1μm以上10.0μm以下の粒子径を有する原料を用いると良い。
【0126】
Z元素も原料は市販の窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩または単体金属が好ましい。勿論、Z元素についても純度は高い方が好ましく、2N以上、さらに好ましくは3N以上のものを準備する。
【0127】
(K0.04Sr0.93Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7の製造であれば、例えばM(1)元素、M(2)元素、A元素、B元素の原料として、それぞれK2CO3(3N)、SrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)を準備し、Z元素としては、CeO2(3N)を準備するとよい。原料の仕込み組成と、焼成後の組成との間にはずれが生じることを考慮して、事前に何点かの検討を行い、焼成後において狙いの組成が得られる仕込み組成を求める。本実施形態では、例えば焼成後において、各元素のモル比がK:Sr:Al:Si:O:Ce=0.04:0.93:1.3:3.7:0.30:0.030の試料となるようにするために、焼成前の仕込みの段階において、各原料の混合比を、それぞれ、K2CO3を0.04/2mol、SrCO3を0.92mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.5/3mol、CeO2を0.050mol秤量し混合する。
ここで、最終的な目標とする組成式とは異なった重量比で秤量している。これは、1700℃以上の焼成および長時間の焼成においては、原料が次第に分解・昇華していくため、この分のずれを考慮しているためである。ただし、それぞれの原料が分解・昇華する割合は焼成時の条件により変化するため、各々の焼成条件によって調整する。
【0128】
また、生成後の試料の酸素量については、M(1)(ここではK)、M(2)元素(ここではSr)の原料として炭酸塩を用いた場合、炭酸塩が高温焼成によって分解・窒化するため混合比から算出される重量比から大きく低下するが、必要量の酸素が残存するように後述の焼成条件を調整した。ただし、炭酸塩を用いずに、M(1)、M(2)元素、A元素、B元素の窒化物とAl2O3やSiO2などの酸化物と組み合わせて、酸素量を調整しても良い。尚、還元性を増すために微量のC(カーボン)粉末を原料に添加しても良い。ただし、この場合には焼成後に残留するカーボン成分に注意しなければならない。
【0129】
該試料の秤量・混合については、大気中で行っても良いが、各原料元素の窒化物が水分の影響を受けやすいため、水分を十分取り除いた不活性雰囲気下のグローブボックス内での操作が便宜である。混合方式は湿式、乾式どちらでも構わないが、湿式混合の溶媒として純水を用いると原料が分解しやすいため、適当な有機溶媒または液体窒素を選定しても良い。装置としては、ボールミルや乳鉢等を用いる公知の方法でよい。
【0130】
混合が完了した原料をるつぼに入れ、焼成炉において窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気中で1400℃以上、より好ましくは1600℃以上2000℃以下で30分間以上保持して焼成する。ここで、焼成炉内の雰囲気ガスは、窒素ガスが80%以上含まれていることが好ましい。
また、焼成温度が1400℃以上であれば、固相反応が良好に進行して発光特性に優れた蛍光体を得ることが可能となる。2000℃以下で焼成すれば、過剰な焼結や、融解が起こることを防止できる。尚、焼成温度が高いほど固相反応が迅速に進むため、保持時間を短縮できる。一方、焼成温度が低い場合でも、当該温度を長時間保持することにより目的の発光特性を得ることが出来る。しかし、焼成時間が長いほど粒子成長が進み、粒子形
状が大きくなるため、目的とする粒子サイズに応じて焼成時間を設定すればよい。
【0131】
該焼成中の炉内圧力は0.0001MPa以上、1.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは0.01MPaを超え、0.5MPa以下である。(本実施形態において、炉内圧力とは大気圧からの加圧分の意味である。)これは、1.0MPa以下の圧力下で焼成することにより、粒子間の焼結が進み過ぎることを回避でき、焼成後の粉砕を容易にできるからである。一方で、0.0001Mpa以上の圧力下で焼成することにより、焼成時に大気中から炉内への酸素の侵入を抑えることが可能となる。尚、るつぼとしてはAl2O3るつぼ、Si3N4るつぼ、AlNるつぼ、サイアロンるつぼ、C(カーボン)るつぼ、BN(窒化ホウ素)るつぼなどの、上述したガス雰囲気中で使用可能なものを用いれば良いが、特に、窒化物からなるるつぼを用いると良い。中でもBNるつぼを用いると、るつぼからの不純物混入を回避することができ好ましい。得られる蛍光体粉末の発光特性を損なわないためには、るつぼから混入する不純物の量は0.1wt%以下に抑えることが好ましい。とくに不純物としてのB(ボロン)および/またはC(カーボン)は0.1wt%以下とすることが好ましい。
【0132】
また、焼成中は、上述したガス雰囲気を、例えば0.1ml/min以上の流量で流した状態で焼成することが好ましい。これは、焼成中に原料からガスが発生するが、上述の窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスから選択される1種類以上のガスを含んだ雰囲気を流動(フロー)させることにより、原料から発生したガスが炉内に充満して反応に影響を与えることを防止でき、この結果、蛍光体の発光特性の低下を防止できるからである。特に、原料に炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩など、高温で分解する原料を使用した際にはガスの発生量が多いため、焼成炉内にガスをフローさせ、発生したガスを排気させることが好ましい。
【0133】
本実施の形態では、原料を粉末のまま焼成することが好ましい。一般的な固相反応では、原料同士の接点における原子の拡散による反応の進行を考慮し、原料全体で均一な反応を促進させるために、原料をペレット状にして焼成することもある。しかし、該蛍光体原料の場合には、粉末のまま焼成することで焼成後の解砕が容易であり、1次粒子の形状が理想的な球状となることから、原料を粉末として扱うことが好ましい。更に、原料として、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩を使用した場合には、焼成時の原料の分解によりCO2ガスなどが発生するが、原料が粉体であれば、これらのガスが十分に抜けきってしまうので発光特性に悪影響を及ぼさないという観点からも、原料が粉体であることが好ましい。
【0134】
本実施の形態では、上記に示した条件での焼成工程を少なくとも二回以上繰り返し、更に各焼成工程間で一旦試料を焼成炉から取り出し、粉砕・混合操作を加えることが好ましい。焼成を繰り返すことにより焼成物の均一性が向上し、蛍光体の発光効率が向上する。粉砕・混合操作においては、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の公知の方法でよい。
【0135】
焼成が完了した後、焼成物をるつぼから取り出し、乳鉢、ボールミル等を用いて、所定の平均粒径となるように粉砕し、組成式(K0.04Sr0.93Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7で示される蛍光体を製造することができる。得られた蛍光体はこの後、必要に応じて、酸または水による洗浄、分級、焼鈍、表面処理を行う。
【0136】
M(1)元素、M(2)元素、A元素、B元素、Z元素として、他の元素を用いた場合、および付活剤であるZ元素の付活量を変更した場合にも、各原料の仕込み時の配合量を所定の組成比に合わせることで、上述したものと同様な製造方法により蛍光体を製造することが
できる。
特に本実施形態においては、M(2)元素をSrとBaの混合とすることで高い発光特性をもつ蛍光体を作製可能である。この場合、所望の比率となるようSr、Baそれぞれの窒化物、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性炭酸塩、蓚酸塩、等を秤量・混合すれば良い。尚、Ba化合物に関しては塩化バリウム、フッ化バリウム、酸化バリウム、炭酸バリウムを用いると、発光効率の高い蛍光体となるため好ましく、中でも酸化バリウムが好ましい。
【0137】
本実施形態に係る第2の蛍光体は幅広い波長範囲の光を吸収し、波長500nm〜600nmの緑色〜黄色の発光を生じるため、第一の波長を発生する発光部と本実施形態の蛍光体を組み合わせることにより、前記第一の波長と異なる波長の光を発生させることができ、様々な光源を作製することが可能である。
【0138】
(第1の実施形態に係る蛍光体を用いた発光装置)
本実施形態に係る第1の蛍光体と、第1の波長の光を発する発光部とを有し、前記第1の波長の光の一部または全部を励起光とし、前記蛍光体から前記第1の波長と異なる波長を発光させる発光装置について説明する。ここで、上記第1の波長は、300nmから500nmの波長である。
第1の波長の光を発する発光部として、例えば、近紫外・紫外から青緑色のいずれかの範囲で発光するLED発光素子、紫外光を発生する放電灯を用いることができる。そして、本実施形態の蛍光体を含んだ蛍光体混合物を該LED発光素子と組み合わせた場合には、各種の照明ユニットや、ディスプレイ装置用バックライト等を製造することができ、本実施形態の蛍光体混合物を該放電灯と組み合わせた場合にも、各種蛍光灯や照明ユニット、ディスプレイ装置用バックライト等を製造することができる。さらに、本実施形態の蛍光体を、電子線を発生する装置と組み合わすことによってもディスプレイ装置を製造することができる。
【0139】
特に、本実施形態の蛍光体は温度特性に優れているため、長時間の点灯使用により、発光装置の温度が上昇した際にも、発光特性の低下がほとんど起こらないものを作製することが可能となる。また、該蛍光体は、発光スペクトルが緑色から橙色の範囲にピークを持ち、ピーク形状がブロードであるため、演色性の観点から白色LED照明用蛍光体としてふさわしい。さらに、該蛍光体は、励起帯が近紫外・紫外〜青緑色(波長域300〜500nm)の広範囲に平坦な励起帯を有するため、例えば、白色LED照明として提案されている高輝度青色LED(波長460nm付近)の青色発光と、蛍光体の黄色発光の補色関係とを利用して白色を得る方式の白色LED照明の場合、或いは近紫外・紫外発光(波長380〜410nm付近)するLEDと、該LEDから発生する近紫外・紫外光により励起されて赤色(R)発光する蛍光体、緑色(G)発光する蛍光体、青色(B)発光する蛍光体とを組み合わせ、該R・G・B他の蛍光体から得られる光の混色を利用して白色を得る方式の白色LED照明の場合にも、いずれも最高の発光強度に近い状態を発揮させながら使用することが可能である。
即ち、近紫外・紫外〜青緑色の光を発する発光部と本実施形態の蛍光体を組み合わせることにより、高出力、演色性の良い白色光源および白色LED照明、さらにはこれらを使用した照明ユニットを得ることができる。
【0140】
以上説明した発光装置を高演色性照明用光源として使用する場合には、演色性に優れる発光スペクトルを有することが必要であるので、JIS Z 8726の評価方法を用いて、本実施形態の蛍光体を含む蛍光体混合物を組み込んだ発光装置の演色性を評価した。JIS Z 8726の評価において、該光源の平均演色評価数Raが60以上であれば、一般用照明として用いることができ、さらにRaが80以上であれば優れた発光装置といえる。そして、さらに好ましくは、日本人女性の肌色の成分を示す指標である特殊演色
評価数R15が80以上、更に特殊演色評価数R9が60以上であれば、非常に優れた発光装置といえる。ただし、演色性を求めない用途や異なる目的によっては上記指標を満たさなくても良い。
【0141】
本発明者らは波長300nmから500nmの範囲のいずれかの発光をおこなう発光部からの光が、本実施形態の蛍光体を含む蛍光体混合物へ照射され、該蛍光体混合物が発光をおこなう発光装置を作製した。尚、発光部としては波長460nmの発光をおこなう発光素子を用いた。そして、該発光装置の発光スペクトルの演色性を評価した。その結果、本実施形態の蛍光体を組み込んだ発光装置の演色性は、相関色温度10000Kから2500Kの範囲において、Raは60以上であった。さらに、本実施形態の蛍光体に赤色蛍光体を加えた蛍光体混合物を組み込んだ発光装置は、R15が80以上、R9が60以上の高い演色性を示し、高輝度で、演色性に非常に優れた光源であることが判明した。
また、本実施形態の発光装置における発光スペクトルの相関色温度は、上述のように10000Kから2500Kの範囲にあることが好ましいが、少なくとも7000Kから2500Kの範囲にあることが最も好ましい。
【0142】
(第2の実施形態に係る蛍光体を用いた発光装置)
本実施形態に係る第2の蛍光体は、とくに波長300nm〜500nmの励起光により高効率で発光するため、前記発光部の発光波長はこの範囲にあることが好ましい。
【0143】
特に、本実施形態に係る第2の蛍光体は、波長500nm〜600nmの緑色〜黄色の波長範囲において非常にブロードで強度の大きな発光スペクトルを示すため、例えば波長460nmの青色光を発生する光源と組み合わせることで演色性が高く、高輝度の発光装置を製造することができる。
【0144】
ここで、演色性について簡単に説明する。演色性とは、光源からの光が照射された物の色の見え方が、該光源の種類によって変わって見えることを指す。そして、光源の種類によるが、照明された物の色の再現性を示す演色性は、一般的に平均演色評価数(Ra)によって数値的に表すことができる。ここで、基準光で見た場合と全く同じ色が再現できれば最良の平均演色評価数(Ra=100)となり、再現される色の差異が大きくなるほどRa値が低下する(Ra<100)こととなる。
JIS Z 8726の評価において、該光源の平均演色評価数Raが60以上であれば、一般用照明として用いることができ、さらにRaが80以上であれば優れた発光装置といえる。そして、さらに好ましくは、日本人女性の肌色の成分を示す指標である特殊演色評価数R15が80以上、更に特殊演色評価数R9が60以上であれば、非常に優れた発光装置といえる。ただし、演色性を求めない用途や異なる目的によっては上記指標を満たさなくても良い。
また、光源の相関色温度は、10000Kから2000Kの範囲にあることが好ましいが、7000Kから2500Kの範囲にあることが、さらに好ましい。
【0145】
本発明者らは波長460nmの発光をおこなう発光部からの光が、本実施形態の蛍光体を含む蛍光体混合物へ照射され、該蛍光体混合物が発光をおこなう発光装置を作製した。そして、該発光装置の発光スペクトルの演色性を評価した。その結果、本実施形態の蛍光体を組み込んだ発光装置の演色性は、相関色温度10000Kから2500Kの範囲において、Raは60以上であった。さらに、本実施形態の蛍光体に赤色蛍光体を加えた蛍光体混合物を組み込んだ発光装置は、Raが80以上、R15が80以上、R9が60以上の高い演色性を示し、高輝度で、演色性に非常に優れた光源であることが判明した。
【0146】
(第1および第2の実施形態に係る蛍光体と発光部との組み合わせ)
第1および第2の実施形態に係る蛍光体の混合物と発光部との組み合わせの方法は、公
知の方法で行っても良いが、発光部にLEDを用いた発光装置の場合は、下記のようにして発光装置を作製することが出来る。以下、図面を参照しながら、発光部にLEDを用いた発光装置について説明する。
図6(A)〜(C)は、砲弾型LED発光装置の模式的な断面図であり、図7(A)〜(E)は、反射型LED発光装置の模式的な断面図である。尚、各図面において、相当する部分については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
まず、図6(A)を用いて、発光部にLEDを用い、前記蛍光体混合物と組み合わせた発光装置の1例について説明する。砲弾型LED発光装置は、リードフレーム3の先端に設けられたカップ状の容器5内に、LED発光素子2が設置され、これらが透光性の樹脂4にてモールドされている。該実施の形態では、前記蛍光体混合物または前記蛍光体混合物をシリコンやエポキシ等の透光性のある樹脂に分散させた混合物(以下、混合物1と記載する。)を、カップ状の容器5内の全てに埋め込むものである。ただし、樹脂中に分散材としてSiO2やAl2O3を混合させても良い。
次に、図6(B)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態では、混合物1をカップ状の容器5上およびLED発光素子2上面に塗布したものである。
次に、図6(C)を用いて、さらに異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態では、蛍光体混合物1をLED発光素子2の上部に設置したものである。
以上、図6(A)〜(C)を用いて説明した砲弾型LED発光装置は、LED発光素子2からの光の放出方向は上方向であるが、光の放出方向が下方向でも同様の方法で発光装置の作製は可能である。例えば、該LED発光素子2の光の放出方向に反射面、反射板を設け、同発光素子2から放出される光を反射面に反射させて外部に発光させるものが反射型LED発光装置である。そこで、図7(A)〜(E)を用い、反射型LED発光装置と本実施形態の蛍光体混合物とを、組み合わせた発光装置の例について説明する。
まず、図7(A)を用いて、発光部に反射型LED発光装置を用い、本実施形態の蛍光体混合物と組み合わせた発光装置の一例について説明する。この反射型LED発光装置では、片方のリードフレーム3の先端にLED発光素子2が設置され、このLED発光素子2からの発光は、下方に向かい反射面8により反射されて上方より放出される。該実施の形態は、混合物1を反射面8上に塗布するものである。尚、反射面8が形成する凹部内には、LED発光素子2を保護するため透明モールド材9が充填される場合もある。
【0147】
次に、図7(B)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1をLED発光素子2の下部に設置したものである。
次に、図7(C)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1を、反射面8が形成する凹部内に充填したものである。
次に、図7(D)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1を、LED発光素子2を保護するための前記透明モールド材9の上部に塗布したものである。
次に、図7(E)を用いて、異なる発光装置の一例について説明する。該実施の形態は、混合物1を、LED発光素子2の表面に塗布したものである。
【0148】
砲弾型LED発光装置と反射型LED発光装置は用途に応じて使い分ければよいが、反射型LED発光装置には、薄くできる、反射鏡により光を集光するため発光面積を制御できる、光の利用効率を高められる等のメリットがある。
【実施例】
【0149】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
尚、実施例1〜44および比較例1は、第1の実施形態に係る蛍光体に関するものであり、実施例45〜65および比較例2〜4は、第2の実施形態に係る蛍光体に関するものである。
【0150】
(実施例1から5)
実施例1から5では、SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)にて、xを0から1まで変化させて蛍光体を製造した。製造方法としては焼成後において、各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:1+x:4−x:x:7−x:0.030の試料となるように各元素の原料を秤量した。x=0(実施例1)の場合、原料としてSrCO3を使用すると、原料中に含まれる酸素が影響するため全て原料は窒化物を用いた。出発原料としてSr3N2(2N)を0.970/3mol、AlN(3N)を1.00mol、Si3N4(3N)を4.0/3mol、CeO2(3N)を0.030mol秤量した。すべて窒化物原料で出発原料を構成した場合には原料中に含まれる酸素量が少なくSi3N4の昇華が抑えられるため、Si3N4原料は定量秤量した。また、付活剤として使用したCeO2の酸素に関しては、添加量がごく微量であるためここでは無視した。
x=0.25(実施例2)の場合であると、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol(0.50/3mol多めに秤量)、CeO2を0.030mol秤量した。実施例3から実施例5、後述する実施例6の製造においては、それぞれ各原料を所定のxをとるように混合比を調整した以外は、実施例2と同様にして蛍光体試料を作製した。但し、調整したxの値は、x=0.5(実施例3)、x=0.75(実施例4)、x=1.00(実施例5)とした。
焼成時間や焼成温度によって焼成後のSi量や酸素量が変化するため、焼成後の生成物が目的の組成に合うように、焼成条件に合わせた量を原料として使用すれば良く、M元素の原料として窒化物を用いた場合は、Al2O3やSiO2などの酸化物と組み合わせて酸素量を調整すれば良い。
【0151】
混合した原料をBNるつぼに入れ、炉内を一度真空引きした後、窒素雰囲気中(フロー状態、4.0L/min)、炉内圧は0.05MPaとし、1750℃まで15℃/minで昇温し、1750℃で6時間保持・焼成した後、1750℃から50℃まで1時間30分で冷却した。その後、焼成試料を大気中にて適当な粒径になるまで乳鉢を用いて解砕し、組成式SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ce(0≦x≦1.0)で示される蛍光体を得た。
【0152】
(比較例1)
比較例1では、実施例1から6と同様に、SrAl1+xSi4-xOxN7-x:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)にてxを1.5とした蛍光体を製造した。SrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Al2O3(3N)、CeO2(3N)を準備し、焼成後の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:2.50:2.50:1.50:0.030となるように各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを2.50−(2×0.50/3)mol、Si3N4を3.0/3mol(0.5/3mol過剰に混合)、Al2O3を0.50/3mol、CeO2を0.030mol秤量した。上記混合原料のまま実施例1から5と同様にして混合し、焼成を行った。
【0153】
波長460nmの単色光での励起
表1は、実施例1から5、比較例1、及び後述する実施例6の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果を示している。発光強度および輝度は、実施例2にて作成した蛍光体を100として示した。実施例2で得た蛍光体の半値幅を求めたところ116.2nmであり、該発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ、色度x=0.402、色度y=0.550であった。尚、実施例1から5の蛍光体の粉末はすべて黄色の蛍光色をしており、目視でも黄緑色の発光色が確認できた。
図1は、縦軸に蛍光体の発光強度を相対強度としてとり、横軸にはxの値をとったものである。さらに図2に、実施例2と比較例1、及び後述する実施例6の発光スペクトルを
示した。図2の縦軸は相対発光強度、横軸は発光波長であり、ここに実施例2は実線、実施例6は一点鎖線、そして比較例1は破線で発光スペクトルを示した。ここで、発光スペクトルとは、ある波長の光またはエネルギーを蛍光体に照射した際、蛍光体より放出される光のスペクトルである。実施例2の蛍光体について、励起光として波長460nmの単色光を照射すると、該蛍光体の発光スペクトルは、波長470nmから720nmの広い波長域においてブロードなピークを持ち、ピーク波長が556.6nmであった。
【0154】
図1に示すように、実施例1から5、比較例1の測定結果によると、xの値が0.5を越えると発光効率の低下が起こり、xの値が1を超えたx=1.5である比較例1では、発光効率が最も高い実施例2の50%以下の発光効率しか得られていない。比較例1の試料のように酸素の濃度が高すぎると、目的の生成相とは異なる生成相が発生し易くなり、不純物相が発光効率を低下させるため、xの値としては0≦x≦1が好ましい。逆にxの値を限りなく0にしすぎても発光効率の低下が起こるため、xの値としては0<x<0.5付近が最も好ましい(ただしSrmAlaSibOoNn:Ce、a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×mである。
【0155】
一方で、わずかな酸素を含むことによって、目的の生成相の結晶成長が促進されるフラックスの効果が現れるため、均質な組成を短時間で生成出来ると考えられる。ただし、x=0の場合においても、焼成時間を長くする、焼成雰囲気の加圧により焼成時における窒素分圧濃度を上げる、窒化を促進し易いアンモニアで焼成する、などの焼成方法をおこなえば、酸素を増やすことなく発光効率を向上させることができる。
【0156】
【表1】
【0157】
波長405nmの単色光での励起
また、実施例1から5、比較例1の蛍光体について、励起光として波長405nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度を測定した。該測定結果を表2に示す。実施例2にて作成した蛍光体の発光強度を100とした場合、比較例1にて作成した蛍光体の発光強度は42.4であった。また、実施例2で得た蛍光体の半値幅を求めたところ112.1nmであり、該発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ色度x=0.351、色度y=0.535であった。本実施例1から5の蛍光体は、紫外または近紫外を励起源とする発光装置を製造した場合においても、効率の良い発光装置とすることができる。
【0158】
上述したように、本実施例1から5の蛍光体は、高い発光効率および輝度を持つため、照明などの発光装置に用いた場合、発光効率および輝度の高い発光装置を得ることが可能である。また、本実施例1から5の蛍光体は、広い波長域において半値幅が80nm以上の非常に広いピークを持つため、白色LED照明用蛍光体として使用した場合に、半値幅の狭いピークを持つ蛍光体を使用したものに比べ、輝度、演色性に優れた白色LED照明
を作製することが可能となる。また、半値幅の狭いピークを持つ蛍光体の場合、演色性の向上のためには数種類の蛍光体を混合する必要があるが、本蛍光体はブロードなピークを有しているため、混合する蛍光体の種類の数や使用量を少なくすることができ、安価に白色LED照明を作製することが可能となる。
【0159】
次に、図3を用いて、実施例2の蛍光体の励起スペクトルについて説明する。図3は縦軸に蛍光体の発光強度をとり、横軸には励起光の波長をとったグラフである。同様に後述する実施例6の測定結果も示しており、実施例2は実線、実施例6は一点鎖線で発光スペクトルを示した。ここで、励起スペクトルとは、種々の波長の単色光を励起光として用いて被測定対象の蛍光体を励起したとき、該蛍光体が発光する一定波長の発光強度を測定し、その発光強度の励起波長依存性を測定したものである。本測定においては、波長が300nmから550nmまでの単色光を実施例2の蛍光体に照射し、該蛍光体が発光する波長556.6nmの発光強度の励起波長依存性を測定したものである。
【0160】
図3から明らかなように、実施例2の蛍光体は、波長300nm付近から500nm付近までの広い範囲の励起光で、高強度の黄緑色の発光を示すことがわかった。該蛍光体は、特に、波長400nmから480nmの励起光で最も高い発光効率を示し、現在、ワンチップ型白色LED照明用の励起光として使用されている発光波長が460nmの青色LEDや405nmの近紫外・紫外LEDと組み合わせることで、輝度の高い発光装置を製造することが可能である。
【0161】
【表2】
【0162】
得られた蛍光体粉末の組成分析結果、平均粒子径(D50)、比表面積(BET)を表3に示す。尚、Siは重量法、酸素、窒素はLECO社製の酸素―窒素同時分析装置(TC−436)を使用し、その他の元素はICPによる測定、平均粒子径(D50)はレーザー回折散乱法、比表面積はBET法によって測定した。各元素の組成分析の値は目的の組成とほぼ一致しているが、±2.0w%の分析誤差を含んでおり完全には一致していない。得られた蛍光体粉末の平均粒子径(D50)は12.2μmから21.2μmであり、比表面積(BET)は0.19m2/gから0.65m2/gであり、蛍光体粉末として好ましい粒径および比表面積をもつことが解った。また組成分析の結果より、実施例1から6の蛍光体は比較例1よりも酸素含有量が低い。このことから発光効率の良好な蛍光体を得るためには酸素が5.0wt%以下であることが好ましいことが判明した。また、実施例1から6の蛍光体における粒度分布の変動係数は100%以下を示し、非常に粒度分布の優れた蛍光体であることが分かった。
【0163】
【表3】
【0164】
次に、実施例1から3で得られた蛍光体について、励起光として波長460nmの単色光を照射した際の発光強度の温度特性を測定した。該測定結果を表4に示す。
各蛍光体を、25℃、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃と昇温し、測定温度に達してから、各試料全体の温度を均一にするため5分間はその温度を保持し、その後、発光強度の測定を行なった。また、温度を上昇させる前の室温(25℃)での発光強度の値を100%として、各測定温度における発光強度を相対強度として測定した。尚、発光強度の測定を昇温時に行った後、冷却を行い、再び25℃で発光強度の測定を行った。
表4の結果から、実施例1から3の蛍光体の発光強度は、励起光として波長460nmの単色光を照射した際、測定温度を上昇させる前の室温(25℃)での発光強度の値を100としたとき、測定温度100℃では80以上、200℃では70以上となった。特に実施例2、3の発光強度は、100℃で90以上、200℃で80以上となった。よって、本実施例1から3の蛍光体は、発光素子と組み合わせた際、周囲の温度による低下が少ないため、色ズレの少ない発光装置を得ることが出来る。また、実施例1から3の蛍光体は、その温度依存性を比較すると、xが大きい方が温度特性が良くなっており、Alまたは酸素が組成中にわずかに入ることにより、温度特性も向上するということが判明した。
【0165】
【表4】
【0166】
(実施例6)
実施例6では、実施例2の組成の付活剤をCeからEuに変え、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Eu(但し、Eu/(Sr+Eu)=0.030)である蛍光体を製造した。
原料としては実施例2と同様にして、市販のSrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、焼成後の試料の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Eu=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030となるように各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol(0.50/3mol多めに秤量)、Eu2O3を0.030/2mol
秤量し、大気中にて乳鉢を用いて混合した。混合後の試料は実施例2と同様の条件で焼成を行い、蛍光体を得た。
【0167】
次に、実施例6に係る蛍光体へ励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度を測定した。実施例2にて作成した蛍光体を100とし、発光強度及び輝度の測定結果を表1に示している、さらに、図2に波長460nmの単色光を照射した際に、蛍光体から発光した光の発光スペクトルを一点鎖線で示している。
【0168】
図2から示すように、該蛍光体の発光スペクトルは、波長550nmから760nm付近の広い波長域においてブロードなピークを持っており、そのピーク波長は597.1nmであった。当該蛍光体の半値幅を求めたところ112nmであり、該発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ色度x=0.526、色度y=0.463であった。尚、試料は橙色の蛍光色をしており、目視でも橙色の発光色が確認できた。
【0169】
上記比較で示すように、付活剤をCeからEuに変化させた場合、発光スペクトルが長波長側に変化するが、発光効率の高い結果が得られており、付活剤の元素に影響することなく高い発光効率が確認された。従って、本実施例6の蛍光体を照明などの発光装置に用いた場合にも、高効率、高輝度の発光装置を得ることが可能であることが判明した。
【0170】
(実施例7から31)
実施例7から31は、実施例2で作製したSrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce(但し、Ce/(Sr+Ce)=0.030)である蛍光体の製造時において、フラックスとして種々の化合物を添加し焼成して得た各蛍光体を示し、これらの各蛍光体の発光強度について調査を行った。各蛍光体の試料の作製方法は、製造後の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Ce=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030となるように各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol(0.50/3mol多めに秤量)、CeO2を0.030mol秤量し、さらにフラックスとして前記秤量後の全重量に対して0.5wt%のフラックス剤を添加し混合した。焼成においても実施例2と同様、窒素中にて1750℃で6時間焼成を行い、実施例7から31の蛍光体を得た。
【0171】
次に、実施例7から31の蛍光体の発光スペクトルを測定し、発光強度の相対強度、色度および輝度を測定した。得られた蛍光体粉末の発光特性を表5に示す。発光強度の相対強度は、実施例2の蛍光体の相対強度を100とした場合の相対強度である。実施例7から31の蛍光体について、励起光として波長460nmの単色光を照射すると、該蛍光体の発光スペクトルは、実施例2の蛍光体と同じく、波長470nmから720nmの広い波長域においてブロードなピークを持ち、ピーク波長は555nmから560nm付近であった。尚、蛍光体の粉末はすべて黄色の蛍光色をしており、目視でも黄緑色の発光色が確認できた。また、蛍光体の比表面積は0.05m2/g以上5.0m2/g以下であり、平均粒子径(D50)は、蛍光体粉末として好ましい1.0μm以上、50.0μm以下の粒径である。また、実施例7から31の蛍光体における粒度分布の変動係数CVの値は100%以下を示し、非常に粒度分布の優れた蛍光体であることが分かった。
【0172】
次に、波長が250nmから550nmまでの単色光を実施例7から31の蛍光体へ照射し、該蛍光体が発光する発光ピーク波長の発光強度の励起依存性を測定したところ、該蛍光体の励起スペクトルも、実施例2の蛍光体と同様に、波長300nm付近から500nmまでの広い範囲の励起光で、高強度の黄緑色の発光を示した。
【0173】
表5に示される試験結果より、Sr、Baのフッ化物、塩化物、窒化物、Al、Ga、
Mnの酸化物、窒化物が、発光特性の向上にとって特に好ましいことが判明した。これら化合物を添加することにより発光特性が向上した理由は、上記添加物の融点が1000℃から2000℃であるため、焼成時の昇温において添加物が溶融し、原料同士の反応性を向上させる働きがあると考えられるからである。また、原料を構成するSrやAlに、置換され易いBa、Ga、Mnから構成される化合物を用いたことにより、不純物元素による発光特性の低下が抑えられたと考えられるからでもある。
一方、酸素、窒素、塩素、フッ素に関しても、少量であれば蛍光体の発光特性に対し影響を及ぼさないと考えられる。添加する化合物としては、上述したように窒化物でも効果があるが、窒化物の場合には空気中の酸素や水分と反応して酸化物となるため、秤量・混合に際し注意が必要であり、製造上は酸化物、塩化物、フッ化物など大気中で扱いやすい物質が好ましい。ただし、添加する化合物によっては、適度な量を越えると過剰な焼結が起こり、発光特性を低下させる不純物として働く可能性がある。このため、特に塩素やフッ素を含む化合物であれば、生成後の蛍光体中に0.0001重量%以上、1.0重量%以下の範囲内で塩素またはフッ素を含むことにより、発光特性を低下させずに発光効率の良い蛍光体が得られる。
【0174】
【表5】
【0175】
(実施例32から41)
実施例32から41では、組成式SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75における付活剤にEuとCeを同時に用い、CeおよびEuの濃度を0.03molと固定し、EuとCeの比を変化させて、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、Euで示される蛍光体を製造した。
原料としては実施例2と同様、市販のSrCO3(3N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、CeO2(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、製造後の試料の各元素のモル比がSr:Al:Si:O:Eu+Ce=0.970:1.25:3.75:0.25:0.030となるように、各原料を、SrCO3を0.970mol、AlNを1.25mol、Si3N4を4.25/3mol秤量(0.50/3mol多めに秤量)し、付活
剤としてEu+Ceが0.03molになるようにEu2O3またはCeO2を調整秤量し、大気中にて乳鉢を用いて混合した。ここで、実施例32から41において付活剤の効果をより正確に判断するため、フラックス剤は添加しないで、実施例2と同様の条件で焼成を行って各蛍光体を得た。
【0176】
次に、実施例2と同様にして、実施例32から41の蛍光体の発光スペクトルを測定した。表6に、発光スペクトルの発光強度、輝度、色度(x,y)を測定した結果を示す。表6に示すように、CeとEuの両付活剤の比を変化させたところ、発光スペクトルの変化が確認され、ピーク波長が550nmから600nmまで変化し、同じく色度x、yも変化している。図4は、色度図上に各実施例32から41の蛍光体における色度x、色度yの数値をプロットした図を示す。この図4では、縦軸を色度y、横軸を色度xとしている。この色度図上の囲まれた部分は、JIS Z9112で示された相関色温度7100Kから2600Kの範囲における蛍光ランプの光源色5種の色度範囲を示しており、昼光色の区分をD、中白色の区分をN、白色の区分をW、温白色の区分をWW、電球色の区分をLとして示している。
波長430から480nmの光を発光する発光素子と、本実施例32から41の蛍光体とを組み合わせ発光装置を作製した場合、本実施例32から41の蛍光体の付活剤CeとEuの比率を変えることによって、発光素子から発する発光色と当該蛍光体の発光色で結んだ点線で囲まれる部分の色が発光装置として表色可能であり、前記JIS Z9112で示された蛍光ランプの光源色の色度範囲のすべての表色が可能である。よって、本実施例32から41の蛍光体を使用することによって、様々な光源色を作製することが可能となる。
【0177】
(実施例42、43)
実施例42、43は、波長460nmで発光する発光素子(LED)と、実施例35、39の蛍光体とをそれぞれ組み合わせて構成した発光装置である。これらの実施例42、43では、波長460nmで発光する発光素子(LED)を用いて、実施例35または39のSrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、Euの蛍光体を励起させた場合における、該発光装置の発光特性、演色性を評価した。尤も、発光素子の発光波長は本蛍光体の効率の良い励起帯域(300nmから500nm)であれば良く、波長460nmに限られるものではない。実施例42は、実施例35の蛍光体を用いた相関色温度5000Kの発光装置であり、実施例43は、実施例39の蛍光体を用いた相関色温度2700Kの発光装置である。
【0178】
まず、窒化物半導体を用いた青色光のLED素子(発光波長460nm)を発光部として準備した。実施例35、39にて作製した蛍光体と、樹脂、分散剤とを混ぜて混合物とした。尚、該樹脂は可視光の透過率、屈折率が高い方が好ましく、前記条件を満たせばシリコン系に限らずエポキシ系の樹脂でもよい。該分散剤へは、SiO2、Al2O3等の微粒子をわずかに混合して使用しても良い。そして該混合物を十分に攪拌し、公知の方法で該LED素子上に塗布して白色LED照明(発光装置)を作製した。前記混合物の蛍光体と樹脂比率、塗布厚みにより発光色および発光効率が変化するため、目的の色温度に合わせて前記条件を調整すればよい。
【0179】
作製された白色LED照明に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図5に示す。図5は、縦軸に相対発光強度をとり、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。そして、実施例42における白色LED照明の発光スペクトルを実線、実施例43における白色LED照明の発光スペクトルを破線で示す。
該蛍光体は、発光部が発する青色光により励起して発光し、波長400nmから700nmの範囲に連続的にブロードなピークを有する発光スペクトルの白色光を発光する白色LED照明を得ることが出来た。該発光装置の相関色温度、色度および演色性を測定した
ところ、表7に示すように、実施例42における発光装置の相関色温度は4962K、色度は、色度x=0.3461、色度y=0.3520であり、平均演色評価数(Ra)は73であった。実施例43における発光装置の相関色温度は2774K、色度は、色度x=0.4531、色度y=0.4077であり、平均演色評価数(Ra)は65であった。
【0180】
【表6】
【0181】
(実施例44)
実施例44は、実施例33の蛍光体に赤色蛍光体を加えて蛍光体混合物を作成し、波長460nmで発光する発光素子と組み合わせて、演色性を向上させた発光装置を作成した。波長460nmに発光する発光素子(LED)で励起させた場合に、相関色温度5000Kの発光を行う発光装置を製造し、該発光装置の発光特性、演色性を評価した。尚、本実施例44では、該赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Euを用いた。赤色蛍光体として、他にSr4AlSi11O2N17:Eu、(Ca,Sr)Si5N8:Euなどの窒素を有する赤色蛍光体、またはSrS:Eu、CaS:Euなどの硫化物系の赤色蛍光体を用いることも可能であるが、温度特性や安定性の面からしてもCaAlSiN3:Euが最も好ましい。
【0182】
1)蛍光体試料の準備
実施例33の蛍光体SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、Euを製造した。一方、赤色蛍光体CaSiAlN3:Euを、以下の方法により製造した。 市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、製造後の各元素のモル比がCa:Al:Si:Eu=0.970:1.00:1.00:0.030となるように各原料を秤量し、窒素雰囲気中において乳鉢を用いて混合した。混合した原料を、粉末の状態で窒素雰囲気中1500℃まで15℃/minの昇温速度で昇温し、1500℃で12時間保持・焼成した後、1500℃から200℃まで1時間で冷却し、組成式CaAlSiN3:Euの蛍光体を得た。得られた試料を粉砕し、分級して赤色蛍光体試料として準備した。
【0183】
2)蛍光体混合物の調製
前記SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce、EuおよびCaAlSiN3:Euの2種類の蛍光体試料について、各々、波長460nmの励起光で励起させた場合の発光ス
ペクトルを測定し、該発光スペクトルから、両蛍光体混合物の相関色温度が、5000Kとなる相対混合比をシミュレーションより求めた。該シミュレーションの結果は、SrAl1.25Si3.75O0.25N6.75:Ce:CaAlSiN3:Eu=95.0:5.0(重量比)であった。該結果に基づき、各蛍光体を秤量して混合し蛍光体混合物を得た。
【0184】
但し、発光部の発光波長(蛍光体混合物の励起波長)や、該励起光に対する蛍光体の発光効率により、好ましい混合比が該シミュレーション結果よりずれる場合がある。このような場合には、蛍光体の配合比を適宜調整して、実際の発光スペクトル形状を整えればよい。
【0185】
3)発光素子での評価
実施例42と同様に、窒化物半導体を有する青色光のLED(発光波長460nm)を発光部として準備し、該LED上に、前記蛍光体混合物と樹脂との混合物を設置した。該蛍光体混合物と樹脂との混合比は前記シミュレーション結果を基に相関色温度5000K相当の昼白色が得られるように、蛍光体の配合比を適宜調整した。そして、公知の方法により該LEDの発光部と組み合わせて、白色LED照明(発光装置)を作製した。
【0186】
該両蛍光体混合物は、発光部が発する青色光により励起して発光し、波長400nmから700nmの範囲にブロードなピークを有する発光スペクトルの白色光を放つ白色LED照明を得ることが出来た。ここで、作製された白色LED照明の発光素子に20mAを通電させた際の発光スペクトルを同じく図5に示す。この図5において、相関色温度5000K相当に設定した白色LED照明の昼白色の発光スペクトルを一点鎖線で示す。
【0187】
ここで、実施例44に係る白色LED照明の輝度、色度、演色評価数、相関色温度等の測定データの一覧表を表7に記載する。
該発光の相関色温度、色度および演色性を測定したところ、相関色温度4973K、色度x=0.3457、色度y=0.3502であり、平均演色評価数(Ra)は88、特殊演色評価数のR9は66、R13は90、R15は88であった。さらに、これら白色LED照明において、混合する蛍光体の配合量と樹脂配合量とを適宜変更することにより、異なる相関色温度の発光色を得ることができた。
【0188】
【表7】
【0189】
(実施例45から48)
実施例45から48では、組成式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnにおいてM(1)元素をカリウムとし、M(2)元素としてSr、A元素としてAl、B元素としてSi、Z元素としてCeとし、M(1)元素の比率であるm(1)の値を、0<m(1)≦0.05の範囲で変更し、組成式(Km(1)Sr0.97-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7で表される蛍光体を作製した。蛍光体の作成方法は、原料の混合比を、K2CO3がm(1)/2mol、SrCO3が(0.970−m(1))mol、AlNが1.25mol、Si3N4が
4.5/3mol、CeO2が0.030molとなるよう秤量した。尚、焼成時における原料の分解等による変化を考慮し、焼成後の試料が狙いの組成となるよう各原料のモル比を決定している。
秤量した原料を、大気中で乳鉢を用いて十分に混合した。混合した原料をBNるつぼに入れ、炉内を一度真空引きした後、窒素雰囲気中(フロー状態、4.0L/min)、炉内圧は0.05MPaとし、1600℃まで15℃/minで昇温し、1600℃で3時間・保持焼成した後、1600℃から50℃まで冷却した。その後、大気中にて焼成後の試料を解砕した後、再度、窒素雰囲気中にて、1750℃で9時間保持焼成した。
焼成試料は冷却後、大気中にて再度、適当な粒径になるまで乳鉢を用いて解砕し、m(1)=0.013(実施例45)、m(1)=0.025(実施例46)、m(1)=0.038(実施例47)、m(1)=0.050(実施例48)に相当する蛍光体を作製した。
【0190】
(比較例2)
次に、本発明の特徴であるM(1)で表記される元素を含まない、(M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnを比較例として挙げる。ここでは、以下のようにして組成式(Sr0.97Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7であらわされる蛍光体を作製した。
出発原料としてSrCO3(3N)を0.970mol、AlN(3N)を1.25mol、Si3N4(3N)を4.5/3mol、CeO2(3N)を0.030mol秤量した。秤量した原料を、大気中で乳鉢を用いて十分に混合した。混合後の工程は、実施例45から48と同様に実施し、比較例2に係る蛍光体を得た。従って、当該比較例2は前述の実施例においてm(1)=0に相当するものである。
【0191】
(比較例3)
比較例3では、実施例45から48より更にM(1)元素の比率m(1)を増加させ、0.05<m(1)となる蛍光体を作製した。原料の混合比を、K2CO3が(0.10/2)mol、SrCO3が0.870mol、AlNが1.25mol、Si3N4が4.5/3mol、CeO2が0.030molとなるよう秤量し、その後の工程は実施例45から48と同様に実施し、比較例3に係る蛍光体を得た。従って、当該比較例3は前述の実施例においてm(1)=0.10に相当するものである。
【0192】
実施例45から48および比較例2、3に係る蛍光体の組成分析結果、平均粒子径、比表面積を表8に示す。さらに当該組成分析結果から算出される蛍光体の組成式も表記する。尚、当該組成分析において、Siは重量法を、Kは原子吸光法を、酸素、窒素はLECO社製の酸素―窒素同時分析装置(TC−436)を用いて測定し、その他の元素はICPによる測定を行った。平均粒子径(D50)はレーザー回折散乱法、比表面積はBET法によって測定した。各測定結果は±5%程度の分析誤差を含んでいるものの、いずれの試料も各元素の構成比が、ほぼ(Km(1)Sr0.97-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7となり、目的とする組成が生成していることが確かめられた。また、K元素の比率であるm(1)の値は、m(1)=0.00(比較例2)、m(1)=0.01(実施例45)、m(1)=0.02(実施例46)、m(1)=0.04(実施例47)、m(1)=0.05(実施例48)、m(1)=0.09(比較例3)となり、m(1)の値も狙いの組成比と一致することが確かめられた。得られた蛍光体粉末の平均粒子径(D50)は23.9μmから36.3μmであり、比表面積(BET)は0.19m2/gから0.28m2/gであり、蛍光体粉末として好ましい1.0μm〜50μmの粒径および0.05m2/g〜5.00m2/g比表面積をもつことが確かめられた。また、実施例45から48の蛍光体における粒度分布の変動係数CVの値は100%以下を示し、非常に粒度分布の優れた蛍光体であることが分かった。
【0193】
表8より、K元素の比率のm(1)が上昇することにより、蛍光体の粒径D50が増加することが確かめられ、焼成中での粒子成長が促進されていることが確かめられた。その原
因は明確ではないが、おそらく元素置換により結晶構造がより安定なものとなり、結晶成長し易い状態になった為ではないかと考えられる。結晶成長が円滑に進行することにより、得られる粒子の結晶性が向上したことが、下記に示す発光特性に影響していると考えられる。
【0194】
【表8】
【0195】
表9は、比較例2、実施例45から48および比較例3の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果を示している。なお、発光スペクトル、輝度、色度の測定には日本分光(株)社製分光蛍光光度FP−6500を用いて測定した。発光強度および輝度は、比較例2を100とした相対値で表す。0<m(1)≦0.05において、発光強度および輝度は100を超え、m(1)=0、即ち、カリウム元素が添加されていない比較例2の蛍光体よりも発光効率が向上していることが確かめられた。この発光強度・輝度の向上は、Srサイトの一部がKに置換されることにより、上述のように蛍光体の結晶構造の安定性が向上し、発光効率が向上しているためであると考えられる。
【0196】
また、置換率m(1)の値の変化によって比較例2、実施例45から48、比較例3の蛍光体における発光ピークの波長や色度に大きな変化はみられていない。このことから、蛍光体を構成するストロンチウムの一部をカリウムで置換することにより、発光色を変化させることなく、発光強度・輝度のみを向上させることが可能であることも確かめられた。最も高い発光強度を示した実施例47の発光強度は107、輝度は106、発光スペクトルの色度(x,y)は、x=0.422、y=0.545であった。
【0197】
【表9】
【0198】
図8は縦軸に蛍光体の発光強度をとり、横軸にm(1)の値をとったグラフである。m(1)が小さい領域では、m(1)の増加とともに発光強度が向上し、m(1)=0.038で発光強度が最大となっている。m(1)の値が0.038を超えると発光効率の低下がおこり、m(1)の値が0.10まで増加した比較例3では、発光強度の最も高い実施例47の80%以下の発光強度となる。これは、カリウムの置換量が過剰になると、蛍光体の結晶構造が変化するとともに結晶内の電荷のバランスが崩れ発光特性の低下を招くが、置換率m(1)は、0<m(1)≦0.05であれば発光特性の低下を抑制することができると考えられる。
【0199】
また、比較例2、実施例45から48、比較例3の蛍光体に励起光として波長405nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度を測定した。該測定結果を表10に示す。比較例2にて作成した蛍光体の発光強度を100とした場合、実施例46にて作成した蛍光体の発光強度は104、輝度は104であった。実施例46で得た蛍光体の発光スペクトルの色度(x,y)を求めたところ色度x=0.386、色度y=0.545であった。
この結果から実施例45から48の蛍光体は、青色光だけでなく紫外または近紫外光を励起源とする発光装置を製造した場合においても、効率の良い発光装置とすることができることが判明した。
【0200】
【表10】
【0201】
(実施例49から52)
次に、組成式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnにおいて、M(2)をSrとBaの混合とした場合の実施例について説明する。
出発原料にBa化合物を添加した実施例49から52について説明する。実施例49か
ら52の蛍光体は、それぞれ実施例45から48において出発原料に対して0.2wt.%に相当するBaOを加えて混合した以外は同様にして作製し、(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7で表される蛍光体を作製した。ここで、加えたBa元素の比率は僅かであるので、BaOの添加による各元素の組成比は殆んど変化しないものとした。
尚、置換率m(1)は、それぞれm(1)=0.013(実施例49)、m(1)=0.025(実施例50)、m(1)=0.038(実施例51)、m(1)=0.050(実施例52)とした。作成後の試料のX線解析により生成相の評価を行ったが、BaOの残留および不純物相の発生は確認されなかった。
【0202】
(比較例4)
比較例4として、実施例49から52においてK元素を添加しない場合について説明する。上記実施例49から52において、m(1)=0とし、K2CO3を原料に加えなかった以外はすべて実施例49から52と同様にして実施し、(Sr0.96Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7となる、比較例4に係る蛍光体を得た。
【0203】
組成分析結果
表11に実施例49から52および比較例4の組成分析結果、平均粒子径、比表面積を表11に示す。さらに分析結果から算出される蛍光体の組成式も表記する。組成分析結果より、いずれの蛍光体も組成式(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7であらわすことができることが確かめられた。
また、実施例45から48と同様、実施例49から52でも、置換率m(1)の上昇に伴い蛍光体の粒径が増加する傾向にあり、Srを僅かにBaに置換した場合でも、Kの添加により蛍光体の結晶性が向上することが確かめられた。
【0204】
【表11】
【0205】
実施例49から53の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果を表12に示す。発光強度および輝度は比較例4を100とした相対値で表す。表12の結果より、実施例45から48と同様、実施例49から52に係る蛍光体である(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7も同様に、Kを含まない比較例4と比較して高い発光特性を示すことが確かめられた。また、これらの蛍光体は、波長405nmの紫外光での励起によっても、高い発光特性・輝度を示した。最も高い発光特性を示す実施例51における波長460nm励起での発光強度は110、輝度は106、発光スペクトルの色度(x,y)は、x=0.423、y=0.545であった。実施例51の蛍光体は、Baを構成元素に含まない実施例48と比較して更に高い発光強度・輝度を示す。このことから、
組成式(Km(1)Sr0.96-m(1)Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7であらわされる蛍光体が高い発光特性を示すことが確かめられた。
【0206】
【表12】
【0207】
実施例51の蛍光体に波長460nmの単色光を照射した際の発光スペクトルを図9に、また励起スペクトルを図10に、それぞれ実線で表す。一方、比較のため、比較例4の蛍光体に波長460nmの単色光を照射した際の発光スペクトルを図9に、また励起スペクトルを図10に、それぞれ破線で表す。
図9より、実施例51は比較例4と比較して、高い発光強度をもつことが確かめられた。発光スペクトルは550nmの黄色の波長領域にピークをもち、さらにスペクトルの形状がブロードであるため、高輝度・光演色性をもつ発光装置の製造に適している。
また図10より、実施例51は、比較例4とほぼ同様な励起スペクトルを持っているが、すべての励起波長波長範囲において比較例4よりも優れた励起特性を持っていることが確かめられた。
【0208】
(実施例53から60)
つぎに、本発明におけるM(1)元素をLi、Naとした場合の実施例について説明する。
実施例53から56では、M(1)元素をLi、実施例57から60ではM(1)元素をNaとした。試料の作製方法は、原料であるK2CO3の代わりに実施例53から56ではLi2CO3、実施例57から60ではNa2CO3とする以外は、実施例50から54と同様にして作製した。ただし、置換率m(1)は、それぞれm(1)=0.013(実施例53、57)、m(1)=0.025(実施例54、58)、m(1)=0.038(実施例55、59)、m(1)=0.050(実施例56、60)とした。
【0209】
実施例53から56、57から60の蛍光体へ、励起光として波長460nmの単色光を照射した際(25℃)の発光強度、色度(x,y)および輝度の測定結果をそれぞれ表13、表14に示す。いずれの実施例においても、M(1)元素を含まない比較例4と比較して、より高い発光強度と輝度が得られた。このことからM(1)元素としてはKだけでなくLi、Naのいずれを用いても、発光特性の高い蛍光体を作製可能であることが確かめられた。
また、これらの蛍光体は実施例45から48と同様、波長460nmの青色光だけでなく波長405nmの紫外光による励起においても、優れた発光特性を示した。
【0210】
【表13】
【表14】
【0211】
実施例45から60の結果より、組成式(M(1)m(1)Sr0.97-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7および(M(1)m(1)Ba0.005Sr0.96-m(1)Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7において、M(1)元素としてLi、Na、Kを用いることにより発光強度・輝度の優れた蛍光体を製造することが可能であることが示された。
さらに、本発明に関わる蛍光体は、Al、Si、Ce元素の比率を変化させることにより発光波長が変化するため、これらの元素の組成比を変化させることにより、様々な発光色をもち、輝度に優れた蛍光体を作成可能である。
【0212】
以下実施例61から65では、上記蛍光体を用いた発光装置について評価を行った。
(実施例61)
実施例61では、波長460nmで発光する発光素子(LED)を用いて、本発明の実施例51に係る蛍光体試料(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7を励起させた場合における、該発光装置の発光特性、演色性を評価した。尤も、発光素子の発光波長は本蛍光体の効率の良い励起帯域(300nmから500nm)であれば良く、波長460nmに限られるものではない。
【0213】
まず、窒化物半導体を用いた青色光のLED素子(発光波長460nm)を発光部として準備した。さらに実施例51にて作製した蛍光体と、シリコン樹脂、分散剤として僅かなSiO2を混ぜ、混合物とした。尚、該樹脂は可視光の透過率、屈折率が高い方が好ましく、前記条件を満たせばシリコン系に限らずエポキシ系の樹脂でもよい。該分散剤へは、SiO2の他にAl2O3の微粒子などをわずかに混合して使用しても良い。そして該混合物を十分に攪拌し、図6、7を用いて第1の実施形態に係る蛍光体を用いた発光装置のところで説明したものと同様に、白色LED照明(発光装置)を作製した。前記混合物の蛍光体と樹脂比率、塗布厚みにより発光色および発光効率が変化するため、目的の色温度に合わせて前記条件を調整すればよい。
【0214】
作製された発光装置に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図11に示す。図1
1は、縦軸に相対発光強度をとり、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。そして、実施例61に係る発光装置の発光スペクトルを実線で示す。
該蛍光体は、発光部が発する青色光により励起・発光し、波長400nmから750nmの範囲に連続的にブロ−ドなピ−クを有する発光スペクトルの白色光を発光する発光装置を得ることが出来た。該発光の色温度、色度および演色性を測定したところ、色温度6561K、色度(x,y)は、x=0.311、y=0.337であった。また、当該発光装置の平均演色係数(Ra)は74であった。さらに、蛍光体と樹脂との配合量を適宜変更することにより、異なる色温度の発光色を得ることもできた。ここで、実施例61に係る発光装置の色度、演色評価数、色温度等の測定デ−タの一覧表を表15に記載する。
【0215】
(実施例62、63)
実施例62、63においては、実施例51に係る蛍光体へ、さらに赤色蛍光体を加え、波長460nmに発光する発光素子(LED)で励起させた場合に、相関色温度5200K(実施例62)または3000K(実施例63)の発光を行う蛍光体混合物を製造し、当該蛍光体混合物の発光特性、演色性を評価した。尚、本実施例では、該赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Euを用いたが、Sr4AlSi11O2N17:Eu、(Ca,Sr)Si5N8:Euなどの窒素を有する赤色蛍光体、またはSrS:Eu、CaS:Euなどの硫化物系の赤色蛍光体を用いることも可能である。
【0216】
1)蛍光体試料の準備
緑色蛍光体として実施例7に係る蛍光体を用意した。
一方、赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを、以下の方法により製造した。
市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、各元素のモル比がCa:Al:Si:Eu=0.970:1.00:1.00:0.030となるように各原料を秤量し、窒素雰囲気中において乳鉢を用いて混合した。混合した原料を、粉末の状態で窒素雰囲気中1500℃まで15℃/minの昇温速度で昇温し、1500℃で12時間保持・焼成した後、1500℃から200℃まで1時間で冷却し、組成式CaAlSiN3:Euの蛍光体を得た。得られた試料を粉砕し、分級して赤色蛍光体試料として準備した。
【0217】
2)蛍光体混合物の調製
前記(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7およびCaAlSiN3:Euの2種類の蛍光体試料について、各々、波長460nmの励起光で励起させた場合の発光スペクトルを測定し、該発光スペクトルから、両蛍光体混合物の相関色温度が、5200K(実施例62)または3000K(実施例63)となる相対混合比をシミュレ−ションより求めた。該シミュレ−ションの結果は、相関色温度が5200Kの場合(実施例62)は(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=98.0:2.0(重量比)であり、相関色温度3000Kの場合(実施例63)は(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=91.0:9.0(重量比)であった。当該結果に基づき、各蛍光体秤量し混合して蛍光体混合物を得た。
【0218】
但し、発光部の発光波長(蛍光体混合物の励起波長)や、該励起光に対する蛍光体の発光効率により、好ましい混合比が、当該シミュレ−ション結果よりずれる場合がある。このような場合には、適宜、蛍光体の配合比を調整して、実際の発光スペクトル形状を整えればよい。
【0219】
3)発光素子での評価
実施例61と同様に、窒化物半導体を有する青色光のLED(発光波長460nm)を発光部として準備し、該LED上に、前記蛍光体混合物と樹脂との混合物を設置した。該
蛍光体混合物と樹脂との混合比は前記シミュレ−ション結果を基に色温度5200K相当の昼白色または3000K相当の電球色が得られるように、前記適宜な蛍光体の配合比の調整をおこなった。そして、公知の方法により該LEDの発光部と組み合わせて発光装置を作製した。
【0220】
該両蛍光体混合物は、発光部が発する青色光により励起・発光し、波長420nmから750nmの範囲にブロ−ドなピ−クを有する発光スペクトルの白色光を放つ発光装置を得ることが出来た。ここで、作製された発光装置の発光素子に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図11に示す。図11において、色温度5200K相当に設定した発光装置(実施例62)の昼白色の発光スペクトルを一点鎖線で示し、色温度3000K相当に設定した発光装置(実施例63)の電球色の発光スペクトルを二点鎖線で示した。
【0221】
ここで、実施例62または実施例63に係る発光装置の色度、演色評価数、色温度等の測定デ−タの一覧表を表15に記載する。
該発光の色温度、色度および演色性を測定したところ、実施例に係わる色温度5200K相当に設定した発光装置については、色温度5175K、色度(x,y)は、x=0.340、y=0.345であり、平均演色評価数(Ra)は86、特殊演色評価数のR9は61、R15は88であった。実施例63に係わる色温度3000K相当に設定した発光装置については、色温度3007K、色度(x,y)は、x=0.436、y=0.403であり、平均演色評価数(Ra)は88、特殊演色評価数のR9は70、R15は88であった。さらに、これら発光装置において、混合する蛍光体の配合量と樹脂配合量とを適宜変更することにより、異なる色温度の発光色を得ることもできた。
【0222】
【表15】
【0223】
(実施例64、65)
実施例64または実施例65においては、実施例51に係る蛍光体へ、さらに青色蛍光体と赤色蛍光体を加え、波長405nmに発光する発光素子(LED)で励起させた場合に相関色温度5200K(実施例64)または3000K(実施例65)の発光を行う蛍光体混合物を製造し、該蛍光体混合物の発光特性、演色性を評価した。
ここで、青色蛍光体としてSr5(PO4)3Cl:Euを用いているがこの限りではなく、BAM:Eu(BaMgAl10O17:Eu)および、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、SrAlxSi6-xO1+xN8-x:Eu(0≦x≦2)、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Euで示される蛍光体を組み合わせても良い。
【0224】
1)蛍光体の準備
緑色蛍光体は実施例51の方法で製造、準備した。
赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを、実施例62、63で説明した方法により製造し
た。
青色蛍光体Sr5(PO4)3Cl:Euは市販品を準備した。
【0225】
2)蛍光体混合物の調製
前記(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7、CaAlSiN3:Eu、およびSr5(PO4)3Cl:Euの3種類の蛍光体を、波長405nmの励起光で励起させた場合の発光スペクトルを測定し、当該発光スペクトルから蛍光体混合物の相関色温度が5200K(実施例64)または3000K(実施例65)となる相対混合比をシミュレ−ションより求めた。該シミュレ−ションの結果は、相関色温度が5200Kの場合(実施例64)はSr5(PO4)3Cl:Eu:(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=36:60:4であり、相関色温度3000Kの場合(実施例65)はSr5(PO4)3Cl:Eu:(K0.04Sr0.92Ba0.005Ce0.03)Al1.3Si3.7O0.3N6.7:CaAlSiN3:Eu=20:68:12であったので、当該結果に基づき、各蛍光体を秤量し混合して蛍光体混合物を得た。
但し、発光部の発光波長(蛍光体混合物の励起波長)、当該発光波長による蛍光体の発光効率により、好ましい混合比が、シミュレ−ションの結果よりずれる場合がある。このような場合は、適宜、蛍光体の配合比を調整して、実際の発光スペクトル形状を整えればよい。
【0226】
該両蛍光体混合物は、発光部が発する紫外光により励起・発光し、波長420nmから750nmの範囲にブロ−ドなピ−クを有する発光スペクトルの白色光を放つ発光装置を得ることが出来た。ここで、作製された発光装置の発光素子に20mAを通電させた際の発光スペクトルを図12に示す。図12において、色温度5200K相当に設定した発光装置(実施例64)の昼白色の発光スペクトルを実線で示し、色温度3000K相当に設定した発光装置(実施例65)の電球色の発光スペクトルを一点鎖線で示す。
【0227】
ここで、実施例64または実施例65に係る発光装置の色度、演色評価数、色温度等の測定デ−タの一覧表を表15に記載する。
該発光の色温度、色度および演色性を測定したところ、実施例64に係わる色温度5200K相当に設定した発光装置については、色温度5197K、色度(x,y)は、x=0.339、y=0.327であり、平均演色評価数(Ra)は94、特殊演色評価数のR9は96、R15は97であった。実施例65に係わる色温度3000K相当に設定した発光装置については、色温度3010K、色度(x,y)は、x=0.436、y=0.403であり、平均演色評価数(Ra)は93、特殊演色評価数のR9は81、R15は93であった。さらに、これら発光装置照明において、混合する蛍光体の配合量と樹脂配合量とを適宜変更することにより、異なる色温度の発光色を得ることもできた。
【符号の説明】
【0228】
1 混合物
2 発光素子
3 リードフレーム
4 樹脂
5 容器
8 反射面
9 透明モールド材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式MmAaBbOoNn:Zで表記される蛍光体であって(M元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は1種類以上の付活剤である。)、
a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1で表され、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから620nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体であって、
M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素はAl、Ga、In、Sc、La、Yから選択される1種類以上の元素であり、
B元素はSiおよび/またはGeであり、
Z元素はEu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光体であって、
M元素がSrまたはBa、A元素がAlまたはGa、B元素がSi、Z元素がCeおよび/またはEuであることを特徴とする蛍光体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の蛍光体であって、
一般式をMmAaBbOoNn:Zzと表記したとき、M元素とZ元素とのモル比であるz/(m+z)の値が、0.0001以上、0.5以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の蛍光体であって、
更に塩素または/及びフッ素を含有することを特徴とする蛍光体。
【請求項6】
請求項5に記載の蛍光体であって、
上記塩素または/及びフッ素の含有量が0.0001重量%以上、1.0重量%以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の蛍光体であって、
25℃において、波長300nmから500nmの範囲にある所定の単色光が励起光として照射された際の発光スペクトル中における最大ピークの相対強度の値をP25とし、
100℃において、前記所定の単色光が励起光として照射された際の、前記最大ピークの相対強度の値をP100としたとき、
(P25−P100)/P25×100≦20であることを特徴とする蛍光体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の1次粒子と、該1次粒子が凝集した凝集体とを含み、該1次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項9】
一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnで表記される蛍光体であって(M(1)元素はI価の価数をとる1種類以上の元素であり、M(2)元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は
希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。)、
0.5≦a≦2.0、3.0≦b≦7.0、m(1)>0、m(2)>0、z>0、4.0≦(a+b)≦7.0、m(1)+m(2)+z=1、0<o≦4.0、n=1/3m(1)+2/3m(2)+z+a+4/3b−2/3oであり、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから600nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体。
【請求項10】
請求項9に記載の蛍光体であって、
0<m(1)≦0.05であることを特徴とする蛍光体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の蛍光体であって、
0.0001≦z≦0.5であることを特徴とする蛍光体。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の蛍光体であって、
0.8≦a≦2.0、3.0≦b≦6.0、0<o≦1.0であることを特徴とする蛍光体。
【請求項13】
請求項9から12のいずれかに記載の蛍光体であって、
0<o≦1.0、a=1+o、b=4−o、n=7−oであることを特徴とする蛍光体。
【請求項14】
請求項9から13のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(1)元素はLi、Na、K、Rbから選択される1種類以上の元素であり、
M(2)元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素はAl、Ga、Inから選択される1種類以上の元素であり、
B元素はSiおよび/またはGeであり、
Z元素はEu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体。
【請求項15】
請求項9から14のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(2)元素がSrおよび/またはBa、A元素がAl、B元素がSi、Z元素がCeであることを特徴とする蛍光体。
【請求項16】
請求項9から15のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(1)元素がKである蛍光体。
【請求項17】
請求項9から16のいずれかに記載の蛍光体であって、
蛍光体を構成する元素として、21.0重量%以上、27.0重量%以下のSrと、8.0重量%以上、14.0重量%以下のAlと、0.5重量%以上、6.5重量%以下のOと、26.0重量%以上、32.0重量%以下のNと、0を超え4.0重量%以下のCeと、0を超えて1.0重量%未満のLi、Na、Kから選択される1種類以上の元素と、を含むことを特徴とする蛍光体。
【請求項18】
請求項9から17のいずれかに記載の蛍光体であって、0を超えて2.0重量%未満のBaを含むことを特徴とする蛍光体。
【請求項19】
請求項9から18のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の一次粒子と、該一次粒子が凝集した凝集体とを含み、該一次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項20】
請求項1から8のいずれかに記載の蛍光体を製造する蛍光体の製造方法であって、
当該蛍光体の原料粉体を秤量、混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程と、
前記焼成物を解砕して蛍光体を得る工程とを有し、
前記混合物を焼成して焼成物を得る工程において、当該焼成時の雰囲気ガスとして、窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスのいずれかを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の蛍光体の製造方法であって、
前記該焼成炉内の雰囲気ガスとして、窒素ガスを80%以上含むガスを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項22】
請求項20または21に記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.1ml/min以上流通させながら焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項23】
請求項20から22のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.001MPa以上、1.0MPa以下の加圧状態とすることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項24】
請求項20から23のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、塩化物または/及びフッ化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記塩素または/及びフッ素化合物がSrF2、BaF2、AlF3、SrCl2、BaCl2、AlCl3であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項26】
請求項20から25のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、酸化物または/及び窒化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記酸化物または/及び窒化物がAl2O3、Ga2O3、In2O3、GaN、Sr3N2、Ba3N2、Ca3N2であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項28】
請求項20から27のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
上記蛍光体の原料の平均粒径が0.1μmから10.0μmであることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項29】
請求項9から19のいずれかに記載の蛍光体を製造するための製造方法であって、
該蛍光体の原料を、るつぼに入れ炉内にて焼成する際、
るつぼとしてBNるつぼを使用し、窒素ガス、希ガス、およびアンモニアガスから選択される1種類以上を含むガスを、炉内に0.1ml/min以上流し、且つ、炉内圧を0.0001MPa以上、1.0MPa以下とし、1400℃以上、2000℃以下の温度で30分間以上焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項30】
請求項29に記載の蛍光体の製造方法であって、当該焼成工程と焼成により得られた焼成物を粉砕および混合する工程からなる一連の工程を、少なくとも二回以上繰り返すことを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項31】
請求項29または30に記載の蛍光体の製造方法であって、原料にバリウム塩化物、フッ化物、酸化物、炭酸塩を少なくとも一種類以上使用することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項32】
請求項1から19のいずれかに記載の蛍光体と、第1の波長の光を発する発光部とを有し、
前記第1の波長の光の一部または全部を励起光とし、前記蛍光体から前記第1の波長と異なる波長を発光させることを特徴とする発光装置。
【請求項33】
請求項32に記載の発光装置であって、
第1の波長とは、300nmから500nmの波長であることを特徴とする発光装置。
【請求項34】
請求項32または33に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、60以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項35】
請求項32または33に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、80以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項36】
請求項32から35のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R15が、80以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項37】
請求項32から36のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R9が、60以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項38】
請求項32から37のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、2000Kから10000Kの範囲にあることを特徴とする発光装置。
【請求項39】
請求項32から37のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、7000Kから2500Kの範囲にあることを特徴とする発光装置。
【請求項40】
請求項32から39のいずれかに記載の発光装置であって、
前記第1の波長を発する発光部がLEDであることを特徴とする発光装置。
【請求項1】
一般式MmAaBbOoNn:Zで表記される蛍光体であって(M元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は1種類以上の付活剤である。)、
a=(1+x)×m、b=(4−x)×m、o=x×m、n=(7−x)×m、0≦x≦1で表され、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから620nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体であって、
M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素はAl、Ga、In、Sc、La、Yから選択される1種類以上の元素であり、
B元素はSiおよび/またはGeであり、
Z元素はEu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光体であって、
M元素がSrまたはBa、A元素がAlまたはGa、B元素がSi、Z元素がCeおよび/またはEuであることを特徴とする蛍光体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の蛍光体であって、
一般式をMmAaBbOoNn:Zzと表記したとき、M元素とZ元素とのモル比であるz/(m+z)の値が、0.0001以上、0.5以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の蛍光体であって、
更に塩素または/及びフッ素を含有することを特徴とする蛍光体。
【請求項6】
請求項5に記載の蛍光体であって、
上記塩素または/及びフッ素の含有量が0.0001重量%以上、1.0重量%以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の蛍光体であって、
25℃において、波長300nmから500nmの範囲にある所定の単色光が励起光として照射された際の発光スペクトル中における最大ピークの相対強度の値をP25とし、
100℃において、前記所定の単色光が励起光として照射された際の、前記最大ピークの相対強度の値をP100としたとき、
(P25−P100)/P25×100≦20であることを特徴とする蛍光体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の1次粒子と、該1次粒子が凝集した凝集体とを含み、該1次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項9】
一般式(M(1)m(1)M(2)m(2)Zz)AaBbOoNnで表記される蛍光体であって(M(1)元素はI価の価数をとる1種類以上の元素であり、M(2)元素はII価の価数をとる1種類以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種類以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種類以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は
希土類元素または遷移金属元素から選択される1種類以上の元素である。)、
0.5≦a≦2.0、3.0≦b≦7.0、m(1)>0、m(2)>0、z>0、4.0≦(a+b)≦7.0、m(1)+m(2)+z=1、0<o≦4.0、n=1/3m(1)+2/3m(2)+z+a+4/3b−2/3oであり、
波長300nmから500nmの範囲の光で励起したとき、発光スペクトルにおけるピーク波長が500nmから600nmの範囲にあることを特徴とする蛍光体。
【請求項10】
請求項9に記載の蛍光体であって、
0<m(1)≦0.05であることを特徴とする蛍光体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の蛍光体であって、
0.0001≦z≦0.5であることを特徴とする蛍光体。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の蛍光体であって、
0.8≦a≦2.0、3.0≦b≦6.0、0<o≦1.0であることを特徴とする蛍光体。
【請求項13】
請求項9から12のいずれかに記載の蛍光体であって、
0<o≦1.0、a=1+o、b=4−o、n=7−oであることを特徴とする蛍光体。
【請求項14】
請求項9から13のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(1)元素はLi、Na、K、Rbから選択される1種類以上の元素であり、
M(2)元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種類以上の元素であり、
A元素はAl、Ga、Inから選択される1種類以上の元素であり、
B元素はSiおよび/またはGeであり、
Z元素はEu、Ce、Pr、Tb、Yb、Mnから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする蛍光体。
【請求項15】
請求項9から14のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(2)元素がSrおよび/またはBa、A元素がAl、B元素がSi、Z元素がCeであることを特徴とする蛍光体。
【請求項16】
請求項9から15のいずれかに記載の蛍光体であって、
M(1)元素がKである蛍光体。
【請求項17】
請求項9から16のいずれかに記載の蛍光体であって、
蛍光体を構成する元素として、21.0重量%以上、27.0重量%以下のSrと、8.0重量%以上、14.0重量%以下のAlと、0.5重量%以上、6.5重量%以下のOと、26.0重量%以上、32.0重量%以下のNと、0を超え4.0重量%以下のCeと、0を超えて1.0重量%未満のLi、Na、Kから選択される1種類以上の元素と、を含むことを特徴とする蛍光体。
【請求項18】
請求項9から17のいずれかに記載の蛍光体であって、0を超えて2.0重量%未満のBaを含むことを特徴とする蛍光体。
【請求項19】
請求項9から18のいずれかに記載の蛍光体であって、
粒径50.0μm以下の一次粒子と、該一次粒子が凝集した凝集体とを含み、該一次粒子および凝集体を含んだ蛍光体粉体の平均粒子径(D50)が、1.0μm以上、50.0μm以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項20】
請求項1から8のいずれかに記載の蛍光体を製造する蛍光体の製造方法であって、
当該蛍光体の原料粉体を秤量、混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程と、
前記焼成物を解砕して蛍光体を得る工程とを有し、
前記混合物を焼成して焼成物を得る工程において、当該焼成時の雰囲気ガスとして、窒素、または希ガス、またはアンモニア、またはアンモニアと窒素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスのいずれかを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の蛍光体の製造方法であって、
前記該焼成炉内の雰囲気ガスとして、窒素ガスを80%以上含むガスを用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項22】
請求項20または21に記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.1ml/min以上流通させながら焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項23】
請求項20から22のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
前記混合物を焼成炉内で焼成して焼成物を得る工程において、前記焼成炉内の雰囲気ガスを0.001MPa以上、1.0MPa以下の加圧状態とすることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項24】
請求項20から23のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、塩化物または/及びフッ化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記塩素または/及びフッ素化合物がSrF2、BaF2、AlF3、SrCl2、BaCl2、AlCl3であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項26】
請求項20から25のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
原料粉体の混合物へ、M元素または/及びA元素の、酸化物または/及び窒化物を添加することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の蛍光体の製造方法であって、
上記酸化物または/及び窒化物がAl2O3、Ga2O3、In2O3、GaN、Sr3N2、Ba3N2、Ca3N2であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項28】
請求項20から27のいずれかに記載の蛍光体の製造方法であって、
上記蛍光体の原料の平均粒径が0.1μmから10.0μmであることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項29】
請求項9から19のいずれかに記載の蛍光体を製造するための製造方法であって、
該蛍光体の原料を、るつぼに入れ炉内にて焼成する際、
るつぼとしてBNるつぼを使用し、窒素ガス、希ガス、およびアンモニアガスから選択される1種類以上を含むガスを、炉内に0.1ml/min以上流し、且つ、炉内圧を0.0001MPa以上、1.0MPa以下とし、1400℃以上、2000℃以下の温度で30分間以上焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項30】
請求項29に記載の蛍光体の製造方法であって、当該焼成工程と焼成により得られた焼成物を粉砕および混合する工程からなる一連の工程を、少なくとも二回以上繰り返すことを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項31】
請求項29または30に記載の蛍光体の製造方法であって、原料にバリウム塩化物、フッ化物、酸化物、炭酸塩を少なくとも一種類以上使用することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項32】
請求項1から19のいずれかに記載の蛍光体と、第1の波長の光を発する発光部とを有し、
前記第1の波長の光の一部または全部を励起光とし、前記蛍光体から前記第1の波長と異なる波長を発光させることを特徴とする発光装置。
【請求項33】
請求項32に記載の発光装置であって、
第1の波長とは、300nmから500nmの波長であることを特徴とする発光装置。
【請求項34】
請求項32または33に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、60以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項35】
請求項32または33に記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの平均演色評価数Raが、80以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項36】
請求項32から35のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R15が、80以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項37】
請求項32から36のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの特殊演色評価数R9が、60以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項38】
請求項32から37のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、2000Kから10000Kの範囲にあることを特徴とする発光装置。
【請求項39】
請求項32から37のいずれかに記載の発光装置であって、
該発光装置の発光スペクトルの相関色温度が、7000Kから2500Kの範囲にあることを特徴とする発光装置。
【請求項40】
請求項32から39のいずれかに記載の発光装置であって、
前記第1の波長を発する発光部がLEDであることを特徴とする発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−193390(P2012−193390A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162116(P2012−162116)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2007−537545(P2007−537545)の分割
【原出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2007−537545(P2007−537545)の分割
【原出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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