説明

蛍光体および当該蛍光体を用いたプラズマディスプレイパネル

【課題】優れた発光輝度を有するユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなる蛍光体を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光体は、ユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなり、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合が90%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなる蛍光体、および当該蛍光体を蛍光体層に利用してなるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
Y(P,V)O4:Eu3+(ユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウム)(以下、「YPV」とも記載する)、および(Y,Gd)BO3:Eu3+(以下、「YGB」とも記載する)は赤色蛍光体として知られている。YPVとYGBとを比較すると、YPVの方がプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」とも記載する)における励起光の波長である147nm付近の励起光に対して高い色純度を有し、YGBの方が高い発光輝度を有する(非特許文献1参照)という特性がある。したがって、YPVをPDPなどのディスプレイ装置に用いた場合、高い色純度が得られるが、十分な発光輝度が得られないという問題がある。
【0003】
従来より、蛍光体の発光輝度を向上させる種々の方法が提案されている。例えば、第1A族元素を添加する方法(特許文献1参照)、イットリウムをガドリウムで置換する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【非特許文献1】蛍光体同学会、「蛍光体ハンドブック」(第209、332頁)、オーム社、昭和62年10月25日
【特許文献1】特開平2−158685
【特許文献2】特開1999―073138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法により得られる発光輝度を向上させた蛍光体は、YPVそのものとは異なる。
【0005】
本発明は、高い色純度を有するYPVの特性を生かし、優れた発光輝度を有するYPVからなる蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来のYPVを詳細に分析し、高い発光輝度が得られない原因を検討したところ、まず第1に蛍光体の表面およびその近傍領域における3価のユーロピウムの割合が関係しているであろうとの考えの下、3価のユーロピウムの割合の最適化を行うことにより、発光輝度の高いYPVを見出した。すなわち、本発明は、ユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなる蛍光体であって、前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合が90%以上である蛍光体に関する。
【0007】
第2に、蛍光体の発光輝度は、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるリンの原子数に関連するパラメーターとさらに何らかの関係があるという考えの下、かかるパラメーターを見出し、最適範囲を決定した。すなわち、上述の蛍光体において、好ましくは、前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比が、前記蛍光体の全体におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比の1.1倍以上である。
【0008】
第3に、蛍光体の発光輝度は、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるバナジウムの原子数に関連するパラメーターとさらに何らかの関係があるという考えの下、かかるパラメーターを見出し、最適範囲を決定した。すなわち、上述の蛍光体において、好ましくは、前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比が、前記蛍光体全体のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比の0.89倍以上0.99倍以下である。
【0009】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域は、例えば、前記蛍光体の表面から中心方向に距離4nm以内の領域とすることができる。
【0010】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合は、例えば、照射X線としてAlKα線を用いるX線光電子分光法により測定される値に基づき決定することができる。
【0011】
また、前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、および前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、例えば、照射X線としてAlKα線を用いるX線光電子分光法により測定される値に基づき決定することができる。
【0012】
X線電子分光法においては、例えば、イットリウムの原子数に対するリンの原子数の比は、イットリウム原子中の3d軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるイットリウムの相対原子数と、リン原子中の2s軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるリンの相対原子数との比により決定することができる。
【0013】
また、X線電子分光法においては、イットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、イットリウム原子中の3d軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるイットリウムの相対原子数と、バナジウム原子中の2p3軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるバナジウムの相対原子数との比により決定することができる。
【0014】
本発明は、上記蛍光体を赤色蛍光体として備える、プラズマディスプレイパネルに関する。
【0015】
本発明は、(a)イットリウム化合物、リン化合物、バナジウム化合物、および平均粒子径が1nm以上90nm以下の範囲内にある酸化ユーロピウム(Eu23)を混合し混合粉体を調製する工程、(b)前記混合粉体を焼成し焼成粉体とする工程、および(c)前記焼成粉体を洗浄する工程、を有するユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなる蛍光体の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い発光輝度のYPVよりなる蛍光体を実現できる。また、高い発光輝度のプラズマディスプレイを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の蛍光体は、主としてYPV(化学式;Y(P,V)O4:Eu3+)よりなり、主たる構成原子はイットリウム(Y)、リン(P)、バナジウム(V)、酸素(O)、3価のユーロピウム(Eu3+)である。従来のYPVよりなる蛍光体を分析した結果、他に2価のユーロピウム(Eu2+)を含むことがわかった。従来の蛍光体をさらに詳細に分析した結果、蛍光体の表面から中心方向に距離約4nm以内の領域で、2価のユーロピウムと3価のユーロピウムの原子数の総数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合が90%未満であることがわかった。
【0018】
以下、本発明の実施の形態における蛍光体について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の蛍光体の断面を模式的に示す図である。
【0019】
蛍光体1Rは、YPVよりなり、略球形である。蛍光体1Rの粒径r1は特に限定されないが、例えば500nm〜3000nmの範囲内の値をとりうる。蛍光体1Rにおいて、表面およびその近傍領域2aにおけるユーロピウムの原子数(以下、「Eus」とも略す)に占める3価のユーロピウムの原子数(以下、「Eu3+s」とも略す)の割合(以下、「REu」とも略す)は90%以上である。すなわち、下記の式1が成り立つ。
【0020】
[数1]
Eu=(Eu3+s/Eus)×100%≧90% (1)
蛍光体1Rの表面およびその近傍領域2aとは、蛍光体1Rの表面から蛍光体1Rの中心1a方向に距離r2以内の領域をいう。距離2rは、例えば、粒径1rの0.1%〜2%の範囲内の値で設定する。Eus、Eu3+sをX線電子分光法(XPS)により測定する場合、距離r2を、例えば、約4nmとすることができる。
【0021】
また、好ましくは、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域2aにおけるイットリウムの原子数(以下、「Ys」とも略す)に対するリンの原子数(以下、「Ps」とも略す)の比が、蛍光体1R全体におけるイットリウムの原子数(以下、「Yb」とも略す)に対するリンの原子数(以下、「Pb」とも略す)の比の1.1倍以上である。すなわち、好ましくは、下記の式2が成り立つ。
【0022】
[数2]
(Ps/Ys)/(Pb/Yb)≧1.1 (2)
以下では、(Ps/Ys)/(Pb/Yb)を「RP」とも略す。
【0023】
また、好ましくは、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域2aにおけるイットリウムの原子数(Ys)に対するバナジウムの原子数(以下、「Vs」とも略す)の比が、蛍光体1R全体におけるイットリウムの原子数(Yb)に対するバナジウムの原子数(以下、「Vb」とも略す)の比に対して0.89倍以上0.99倍以下である。すなわち、好ましくは、下記の式3が成り立つ。
【0024】
[数3]
0.99≧(Vs/Ys)/(Vb/Yb)≧0.89 (3)
以下では、(Vs/Ys)/(Vb/Yb)を「RV」とも略す。
【0025】
蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの割合、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、例えば、AlKα線によるX線光電子分光法(XPS)により測定することができ、蛍光体1R全体のイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比と蛍光体1R全体のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)により測定することができる。
【0026】
以下、蛍光体1Rの構成を実際に確認する具体的な手法の一例について説明する。
【0027】
蛍光体1Rの表面およびその近傍領域のイットリウムに対するリンの原子数比、蛍光体1Rの表面及びその近傍のバナジウムの原子数比は、X線光電子分光法(XPS)により測定することができる。XPSでは試料表面に波長既知のX線(AlKα線、エネルギー値1.487kev)を照射し、試料から飛び出す光電子のエネルギーを測定する。これにより試料表面から中心方向に距離約4nm以内の領域の情報が選択的に得られる。ここで、各元素それぞれに相対感度因子が明らかになっており、このXPSにより蛍光体1Rの表面およびその近傍領域のイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、表面およびその近傍領域のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数比を測定できる。なお、本確認では、イットリウムの原子中の3d軌道、リン原子中の2s軌道、バナジウム原子中の2p3軌道、ユーロピウム原子中の3d5軌道の相対感度因子を、それぞれ2.343、0.380、1.456、7.343とし、これらの値で、それぞれ各光電子ピーク面積を除することにより、相対原子数の比を算出した。
【0028】
バックグラウンドはShirley法により除去した。本実施形態において「蛍光体の表面およびその近傍領域」とは、このXPSによって実際に測定される範囲を指し、蛍光体1Rの中心方向に表面から距離約4nm以内の領域である。
【0029】
また、本実施形態の蛍光体1Rでは、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域のイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比のみではなく、蛍光体1R全体のイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、前記蛍光体1R全体のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比をも規定している。その測定方法としては、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)を用いることができる。試料を酸やアルカリなどで溶解した後にプラズマ中に噴霧する場合には、溶液中に存在していた元素が原子化されると共に励起され、より低いエネルギー準位に遷移する際に各元素固有の光を放出する。この誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)は、各元素固有の光の波長および強度を測定することで、試料中の組成比を決定できる。
【0030】
例えば石英容器に試料と塩酸を入れて密閉し、マイクロウェーブを照射して試料を分解する。分解後、超純水で定容し、ICP-AES法によるイットリウム、リン、バナジウム、ユーロピウムの定量分析を行う。
【0031】
さらにXPSでは、本実施形態の蛍光体1R表面およびその近傍領域におけるユーロピウムに占める3価のユーロピウムの割合を測定することができる。
【0032】
XPSでは、元素の化学状態によりピークの光電子エネルギーがシフトするケミカルシフトを確認できる。本実施形態のYPVよりなる蛍光体1Rでは、ユーロピウムの3d5軌道に起因するピークに関して、2価のユーロピウムに起因する結合エネルギー1104eV付近のピークと、3価のユーロピウムに起因する1132eV付近のピークとが区別できる。Shirley法により、バックグラウンドを除去し、ピークのフィッティングにはガウス関数を用いた。3価のユーロピウムに起因するピークと2価のユーロピウムに起因するピークの強度比(すなわち図中のピークの面積比)から、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるユーロピウムに占める3価のユーロピウムの割合が算出できる。
ここでユーロピウムは3価以外には、通常2価を取るので、3価のユーロピウムに起因するピークと2価のユーロピウムに起因するピークの強度の和が蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるユーロピウム全体に起因するピークの強度とする。
【0033】
したがって、XPSにより蛍光体表面およびその近傍領域におけるユーロピウムに占める3価のユーロピウムの割合が測定できる。
【0034】
次に、以上のように構成された本実施の形態1の蛍光体1Rの製造方法について説明する。
【0035】
図2は蛍光体1Rの製造方法の一例を示す工程図である。図3は蛍光体の製造過程における焼成ステップS3での温度の推移の一例を示す温度スケジュール図である。
【0036】
図2に示すように、まずステップ1(S1)で、イットリウム化合物、リン化合物、バナジウム化合物、およびユーロピウム化合物を少なくとも含む、原料を準備する。イットリウム化合物は本実施形態にかかる蛍光体1Rの構成原子の一つであるイットリウムの原料であって、例えば、酸化イットリウム(Y2O3)を用いることができる。リン化合物は本実施形態にかかる蛍光体1Rの構成原子の一つであるリンの原料であって、例えば、リン酸水素ニアンモニウム( (NH4)2HPO4)を用いることができる。バナジウム化合物は本実施形態にかかる蛍光体1Rの構成原子の一つであるバナジウムの原料であって、例えば、五酸化バナジウム(V2O5)、メタバナジン酸アンモニウム等を用いることができる。ユーロピウム化合物は本実施形態にかかる蛍光体1Rの構成原子の一つであるユーロピウムの原料であって、例えば、酸化ユーロピウム(Eu2O3)を用いることができる。Eu2O3は、上述の式1を満たす所望の蛍光体を得るために、好ましく平均粒子径が1nm〜90nmの範囲内であるものを用い、さらに好ましくは平均粒子径が5nm〜40nmの範囲内であるものを用いる。
【0037】
次に、ステップ2(S2)で、S1にて準備した原料を混合し混合粉体を得る。混合には、通常用いられるV型混合機、攪拌機や、粉砕機能を有するボールミルや振動ミル、ジェットミル等を用いることもできる。
【0038】
次に、ステップ3(S3)で、S2にて調製した混合粉体を焼成する。以下説明する焼成のフローは一例であり、この焼成フローに限定されない。焼成フローにおける焼成対象物は、焼成開始時点では、混合粉体であり焼成後は焼成粉体となる。本実施形態においては、焼成のS3は、大気中で昇温させるサブステップ31(S31)、大気中で最高温度を維持させるサブステップ32(S32)、および大気中で降温させるサブステップ33(S33)に分けられる。各サブステップについて、図3を用いて説明する。
【0039】
図3に示すように、昇温させるサブステップ31(S31)では、大気中で焼成対象物を加熱し、焼成対象物の温度が、室温(約25℃)であるポイントT1から約1300℃となるポイントT2までの約260分かけて昇温させる。このとき、温度勾配を約294(℃/hr)として昇温させる。
【0040】
次に、最高温度を維持させるサブステップ32(S32)では、焼成対象物の温度が約1300℃である状態を約3時間維持するように加熱を継続し、ポイントT3に至る。その後、降温させるサブステップ33(S33)では、大気中で、室温であるポイントT4までの温度勾配を約294(℃/hr)として降温させる。
【0041】
図2に戻り、その後、ステップS4において、得られた焼成粉を12NのHCl中で1分間〜30分間攪拌洗浄し、その後純水で洗浄して、温度が約80℃の大気中で3時間〜20時間乾燥させる。
【0042】
以上の方法により、蛍光体が得られる。
【0043】
なお、上記実施の形態のステップS3における各所要時間、温度の設定については、各原料の粒子径、形状、および混合量により適正値が異なるので、適宜調整が必要である。また、図3では、図示を省略しているが、焼成ステップS3の後に破砕ステップを介挿させることとしてもよい。焼成粉体の洗浄に用いる溶液もHClの代わりに、NaOH、NH3などを用いても良い。
【0044】
以下、本実施の形態にかかる蛍光体1Rを製造する実施例、比較例、および試験例を示す。
【0045】
下記の実施例、比較例において、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの割合、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、蛍光体1Rの表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、すべて、AlKα線によるX線光電子分光法(XPS)により測定された値であり、蛍光体全体のイットリウム原子数に対するリンの原子数比と蛍光体全体のイットリウム原子数に対するバナジウムの原子数比はすべて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)により測定された値である。実施例1〜5、比較例1,2で使用したY2O3、V2O5は、(株)高純度科学研究所製であり、(NH4)2HPO4は、関東化学株式会社製である。
(実施例1)
各原料を、以下に示す量準備した。
Y2O3(純度99%以上) :0.060mol
V2O5(純度99%以上) :0.019mol
(NH4)2HPO4(純度99%以上) :0.088mol
Eu2O3(純度99%以上) :0.004mol
Eu2O3は、日本電工(株)製で平均粒子径が8.7nm(BET法による)のものを用いた。各原料を、図2に示す方法にしたがって、混合、焼成、および洗浄し、実施例1の蛍光体を得た。
(実施例2)
準備した原料は実施例1と同様であり、蛍光体の製造工程は、蛍光体の製造工程のステップ4(S4)で、実施例1では、焼成粉を12NのHCl中で90分間撹拌洗浄したのに対し、本実施例では焼成粉を12NのHCl中で30分間攪拌した点のみ異なる。
【0046】
このようにして、実施例2の蛍光体を得た。
(実施例3)
各原料を、以下に示す量準備した。Eu2O3は実施例1と同様のものを用いた。
Y2O3(純度99%以上) :0.056mol
V2O5(純度99%以上) :0.019mol
(NH4)2HPO4(純度99%以上) :0.087mol
Eu2O3(純度99%以上) :0.007mol
実施例2と同様の製造工程により、実施例3の蛍光体を得た。
(実施例4)
各原料を、以下に示す量準備した。Eu2O3は実施例1と同様のものを用いた。
Y2O3(純度99%以上) :0.062mol
V2O5(純度99%以上) :0.019mol
(NH4)2HPO4(純度99%以上) :0.088mol
Eu2O3(純度99%以上) :0.003mol
実施例2と同様の製造工程により、実施例4の蛍光体を得た。
(実施例5)
各原料を、以下に示す量準備した。Eu2O3は実施例1と同様のものを用いた。
Y2O3(純度99%以上) :0.059mol
V2O5(純度99%以上) :0.019mol
(NH4)2HPO4(純度99%以上) :0.087mol
Eu2O3(純度99%以上) :0.005mol
実施例2と同様の製造工程により、実施例4の蛍光体を得た。
(比較例1)
各原料を、以下に示す量準備した。
Y2O3(純度99%以上) :0.060mol
V2O5(純度99%以上) :0.019mol
(NH4)2HPO4(純度99%以上) :0.088mol
Eu2O3(純度99%以上) :0.004mol
Eu2O3は、信越化学工業(株)製で平均粒子径1.46μmのものを用いた。実施例2と同様の製造工程により、比較例1の蛍光体を得た。
(比較例2)
各原料を、以下に示す量準備した。Eu2O3は実施例1と同様のものを用いた。
Y2O3(純度99%以上) :0.055mol
V2O5(純度99%以上) :0.012mol
(NH4)2HPO4(純度99%以上) :0.097mol
Eu2O3 (純度99%以上) :0.007mol
実施例2と同様の製造工程により、比較例2の蛍光体を得た。
【0047】
実施例1〜5、および比較例1、2の各蛍光体について、XPS、およびICPの測定結果に基づきREu、RP、RVを算出した。算出した値を、以下の表1に示す。また、各蛍光体について、発光輝度を測定した。発光輝度は、波長146nmの真空紫外光(VUV)を実施例1〜5、および比較例1、2の各蛍光体に対して照射して励起し、このとき測定した発光輝度値である。表1には、各蛍光体の発光輝度を比較例1の蛍光体の発光輝度を100とした場合の相対輝度で示す。そして、図4〜図6には、表1に示す各パラメーター、すなわち、REu(3価ユーロピウムの割合)、RP、RVに対する各蛍光体の相対輝度をグラフに示す。図4は、REuに対する各蛍光体の相対輝度を示した図である。図5は、RPに対する各蛍光体の相対輝度を示した図である。図6は、RVに対する各蛍光体の相対輝度を示した図である。なお、図4〜図6では、各パラメーターと相対輝度との間における関係を見出すために有用な特定の蛍光体を選択し、図示した。
【0048】
【表1】

【0049】
図4に示すように、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合(REu)が90%以上である本発明の実施例1、2では、REuが90%より小さい比較例1よりも高い発光輝度を有する。
【0050】
本発明の蛍光体の製造工程においては、実施例に示すように発光中心となるユーロピウムの原料に微粒子のEu2O3を用いている。微粒子であることにより、反応性が高くなり、焼成工程において、3価のユーロピウムの状態のまま反応がすばやく進行し、2価のユーロピウムが形成されづらく、REuが90%以上の蛍光体を製造できると考えられる。
【0051】
図5に示すように、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比が前記蛍光体全体のイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比に対して1.1倍以上である実施例2〜5は、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比が前記蛍光体全体のイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比に対して1.1倍より小さい比較例2よりも、高い発光輝度を有する。なお、実施例2〜5および、比較例2はいずれも蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムに占める3価のユーロピウムの割合が95%であり、この割合が発光輝度の差に影響を及ぼしているものではない。
【0052】
また、図6に示すように、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比が前記蛍光体全体のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比に対して0.89倍以上0.99倍以下である実施例2〜5は、蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数比が蛍光体全体のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比に対して0.89倍より小さい比較例2よりも高い発光輝度を有する。なお、実施例2から5および、比較例2はいずれも蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムに占める3価のユーロピウムの割合が95%であり、この割合が発光輝度の差に影響を及ぼしているものではない。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2におけるPDPについて、図面を参照しながら説明する。
【0053】
図7は、実施の形態2に係るPDP2の一部構造を抜き出して示す要部斜視図(一部断面図)である。PDP2は実施の形態1の蛍光体を、赤色蛍光体として用いている。
【0054】
図7に示すように、前面パネル10は、前面基板11における背面パネル20と対向する側の面(図7では下面)に、スキャン電極(以下では、「Scn電極」と記載する)12aとサスティン電極(以下では、「Sus電極」と記載する)12bからなる表示電極対12が、互いに平行に複数配設され、この表示電極対12を覆うように、誘電体層13および保護層14が順に被覆形成されている。
【0055】
前面基板11は、例えば、高歪点ガラスあるいはソーダライムガラスから構成されている。また、Scn電極12aおよびSus電極12bの各々は、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、SnO2(酸化錫)、ZnO(酸化亜鉛)などからなる幅広の透明電極12a1、12b1と、電気抵抗を下げるためのCr(クロム)−Cu(銅)−Cr(クロム)やAg(銀)などから形成されたバス電極12a2、12b2とをそれぞれ積層して構成されている。電極12a、12bを構成する各部のサイズは、例えば、透明電極12a1、12b1が厚み0.1μm、幅150μmであり、バス電極12a2、12b2が厚み7μm、幅95μmである。また、Scn電極12aとSus電極12bとの間隔は、例えば、約80μmである。
【0056】
また、誘電体層13は、Pb−B系などの低融点ガラス材料から形成され、保護層14については、MgO(酸化マグネシウム)あるいはMgF2(弗化マグネシウム)などを主材料として構成されている。誘電体層13は、例えば、厚み約30μmで形成され、保護層14は、例えば、厚み約1μmで形成されている。
【0057】
図7に示すように、背面パネル20は、背面基板21における前面パネル10と対向する側の面(図7では上面)に、表示電極対12と略直交する方向(X方向)において、データ電極(以下では、「Dat電極」と記載する)22がストライプ状に複数配置されており、このDat電極22を覆うように、誘電体層23が形成されている。また、誘電体層23上には、隣り合うDat電極22間に主隔壁24aが立設され、さらに、この主隔壁24aと略直交する方向に補助隔壁24bが形成されており、これら主隔壁24aと補助隔壁24bを以って背面パネル20における隔壁24を構成している。なお、図面上では詳細に示していないが、Z方向において、補助隔壁24bの上端は、主隔壁24aの上端よりも若干低く設定されている。ここで、背面基板21についても、高歪点ガラスあるいはソーダライムガラスなどからなる。
【0058】
Dat電極22は、Agの他に、金(Au)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等の金属材料や、例えば、これらを積層するなどの方法で組み合わせたものも用いることもできる。そして、Dat電極22のサイズは、例えば、厚み5μm、幅60μmのサイズに設定されている。また、隣り合うDat電極22間の間隔は、例えば、約150μmに設定されている。誘電体層23は、Pb−B系などの低融点ガラス材料から形成されているが、酸化アルミニウム(Al23)や酸化チタン(TiO2)が含まれたものでもよい。また、隔壁24は、例えば、鉛ガラス材料を用い形成されている。そして、誘電体層23の厚みは、例えば、約30μmに形成されている。
【0059】
隔壁24の各設計寸法は、例えば本実施の形態に係るPDP2が42インチクラスのVGA仕様を想定する場合、X方向のピッチ(隣り合う補助隔壁24b間のピッチ)が約1080μm、Y方向のピッチ(隣り合う主隔壁24a間のピッチ)が約360μmであり、高さが約150μm、幅が約40μmに設定されている。
【0060】
誘電体層23と隔壁24とで形成される窪み部分の各内壁面には、蛍光体層25が設けられている。蛍光体層25は、励起光としての紫外線の入射による発光の波長毎に、赤色(R)蛍光体層25R、緑色(G)蛍光体層25G、青色(B)蛍光体層25Bの各々に分けられ、窪み部分毎に色分けされて形成されている。例えば、図7の拡大部分に示すように、R蛍光体層25Rは、複数の蛍光体1Rから構成されている。
【0061】
G、Bの各色蛍光体層25G、25Bの各々を構成する蛍光体には、一般的な組成からなる蛍光体、例えば、次のような組成を有する蛍光体を用いる。
青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu
緑色蛍光体;Zn1.9Mn0.1SiO4
なお、蛍光体1Rを構成する蛍光体は、選択された特定の蛍光体YPVであって、その蛍光体表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数が90%以上である蛍光体で、本実施の形態での特徴部分である。
【0062】
図7に示すように、PDP2は、前面パネル10と背面パネル20とが、背面パネル20に形成された隔壁24をギャップ材として間に挟み、且つ、表示電極対12とDat電極22とが略直交する方向に配され、この状態で各々のパネル10、20の外周部どうしが封止された構成を有している。この構成を以って、前面パネル10と背面パネル20との間には、各隔壁24によって仕切られた放電空間30が形成され、両パネル10、20が密閉容器を形成することになる。PDP2における放電空間30には、Ne、Xe、He等が混合されてなる放電ガスが充填され構成されている。放電ガスの封入圧力は、例えば、6.7×104〜1.0×105Pa程度である。
【0063】
なお、放電ガス中におけるXe分圧については、通常、7%未満に設定されるものであるが、パネルの発光輝度向上を目的として7%以上、さらには10%以上とすることもできる。
【0064】
PDP2では、表示電極対12とDat電極22とが立体交差する各箇所に放電セル(不図示)が形成される。そして、PDP2には、複数の放電セルがマトリックス配列された状態となっており、R、G、Bの3つの放電セルにより1画素が構成される。PDP2における画素サイズは、一例として、1080μm×1080μmである。
【0065】
次に、PDP2の駆動方法について説明する。なお、本実施の形態に係るPDP2の駆動方法に関しては、従来のPDPにおける駆動方法と同一であるので、図示を省略する。
【0066】
本実施の形態に係るPDP2の各電極12a、12b、22には、各ドライバを含む駆動部が接続されることで表示装置であるPDP装置が形成されている(図示を省略)。
【0067】
PDP2を表示パネルとして備えるPDP装置の駆動においては、例えば、1フィールドを8つのサブフィールドSF1〜SF8に分割し、各サブフィールドの輝度相対比率が1:2:4:8:16:32:128となるように維持パルス数が設定されている。そして、各サブフィールドSF1〜SF8の点灯/非点灯を表示輝度のデータに従って制御することにより、8つのサブフィールドSF1〜SF8の組み合わせをもって256階調が表示可能となっている。なお、本実施の形態においては、一例として256階調で表示駆動するものであるが、本発明はこれに限定を受けるものではない。
【0068】
各サブフィールドSF1〜SF8は、互いに共通な一定の時間を割り当てられた初期化期間および書き込み期間と、輝度の相対比に応じた長さの時間で設定された維持期間とから構成される。例えば、PDP2の表示駆動を行う際には、先ず、初期化期間において、全ての放電セルで初期化放電を発生させ、これによって当該サブフィールドよりも前のサブフィールドに行われた放電による影響の除去や放電特性のバラツキを吸収する(放電セルの初期化)。
【0069】
次に、書き込み期間において、サブフィールドデータに基づいて複数のScn電極12aを1ライン毎に順にスキャンして行き、Scn電極12aとDat電極22の間で微少放電(書き込み放電)を発生させる。このようにScn電極12aとDat電極122との間で微小放電である書き込み放電を生じた放電セルでは、前面パネル10の保護層14の表面に所要の壁電荷が蓄積される。
【0070】
その後、維持期間において、Scn電極12aおよびSus電極12bに対し、所定の電圧、所定の周期で矩形波の維持パルスを印加する。Scn電極12aに印加する維持パルスとSus電極12bに印加する維持パルスとは、互いに同一の周期を有し、且つ、その位相が半周期ずれた状態となっており、PDP2における全ての放電セルに対して印加される。
【0071】
これらの維持パルスの印加によって、維持期間では、Scn電極12aとSus電極12bとの間に電位差を生じさせ、この電位差と上記書き込み期間に書き込みが行われた放電セルに蓄積された壁電荷との合算での電位差が放電開始電圧を超えるようになり、書き込みの行われた放電セルでの維持放電が発生する。
【0072】
この維持放電により発生した真空紫外線(波長が147nm)が、各蛍光体層25R、25G、25Bを励起発光させ、これによって前面パネル10側より可視光が出射される。そして、このような操作をサブフィールドSF1〜SF8間で繰り返すことにより、表示データに対応して規則的に並んだ放電セルが選択的に放電発光されてPDP2の表示領域に映像が映し出される。
【0073】
なお、維持期間において、Dat電極22に対して細線矩形パルスを印加して輝度の向上を図ることとしてもよい。
【0074】
次に、本実施の形態において、PDP2の特徴となる蛍光体1Rより構成されるR蛍光体層25Rについて、説明する。
【0075】
本実施の形態に係るPDP2では、R蛍光体層25Rを構成する蛍光体1Rを用いている。この蛍光体を用いた蛍光体インクによって、次の方法例で蛍光体層が形成される。
【0076】
蛍光体インクは、例えば、上記実施例1及び2に係るR蛍光体(平均粒子径2μm)を30wt%と、エチルセルロース(分子量約20万)4.5wt%と、溶剤としてのブチルカルビトールアセテート65.5wt%とを、三本ロールミルによって混錬することにより調製され、粘度2.0〜6.0Pa・s(2000〜6000cps)の物性を有する蛍光体インクを得た。この蛍光体インクをメニスカス法により、隔壁24間に塗布して乾燥させた後、500℃で10分熱処理することでR蛍光体層25Rとした。
【0077】
なお、蛍光体インクの成分は、上記のものに限定を受けるものではなく、塗布方法についても他の方法(例えば、スクリーン印刷法やラインジェット法)を用いても構わない。
(実施例6〜10、および比較例3、4)
上記方法で実施例6から10に係るPDPのR蛍光体層25Rを、それぞれ上記実施の形態1の実施例1から5の蛍光体を用いて構成し、他の部分は従来の方法を用いて、実施例に係るPDPを得た。一方、比較例3、4に係るPDPのR蛍光体層には、それぞれ上記実施の形態1の比較例1、2の蛍光体を用いた。
【0078】
以上のように構成・製造それたPDPについて、以下にその特性等を説明する。
【0079】
各実施例および比較例のREu、RP、RV、および発光輝度特性を表2に示す。ここで発光輝度特性は、PDPの赤色一色の固定表示を実施し、PDPの点灯開始時の初期輝度を比較例3に係るPDPの輝度値を100とした際の相対輝度値で記載した。
【0080】
【表2】

【0081】
この表2に示すように、比較例3および4のPDPに比べて、本実施例のPDPである実施例6から10は発光強度が高い。
【0082】
以上のように、本実施の形態2によれば、本発明の高い発光輝度を有する赤色蛍光体を備えることにより、PDPの発光に重要な、PDPの蛍光体層の発光を高くすることができるため、高い発光強度の優れた表示性能を持つPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかる蛍光体は、プラズマディスプレイ等の表示装置の蛍光体として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態1の蛍光体の断面を模式的に示す図。
【図2】蛍光体1Rの製造方法の一例を示す工程図。
【図3】蛍光体の製造過程における焼成ステップS2での温度の推移の一例を示す温度スケジュール図。
【図4】REuに対する各蛍光体の相対輝度を示した図。
【図5】RPに対する各蛍光体の相対輝度を示した図。
【図6】RVに対する各蛍光体の相対輝度を示した図。
【図7】実施の形態2に係るPDP2の一部構造を抜き出して示す要部斜視図(一部断面図)。
【符号の説明】
【0085】
1R 蛍光体
1Rs 蛍光体の表面およびその近傍領域
2 PDP
10 前面パネル
11 前面基板
12a スキャン電極
12b サスティン電極
13 誘電体層
14 保護層
20 背面パネル
21 背面基板
22 データ電極
23 誘電体層
24 隔壁
25 蛍光体層
25R R蛍光体層
30 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなる蛍光体であって、
前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合が90%以上である蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比が、前記蛍光体の全体におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比の1.1倍以上である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比が、前記蛍光体全体のイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比の0.89倍以上0.99倍以下である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域は、前記蛍光体の表面から中心方向に距離4nm以内の領域である、請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるユーロピウムの原子数に占める3価のユーロピウムの原子数の割合は、照射X線としてAlKα線を用いるX線光電子分光法により測定される値に基づき決定される、請求項1乃至4のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するリンの原子数の比、および前記蛍光体の表面およびその近傍領域におけるイットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、照射X線としてAlKα線を用いるX線光電子分光法により測定される値に基づき決定される、請求項2乃至5のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項7】
イットリウムの原子数に対するリンの原子数の比は、イットリウム原子中の3d軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるイットリウムの相対原子数と、リン原子中の2s軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるリンの相対原子数との比により決定される、請求項6に記載の蛍光体。
【請求項8】
イットリウムの原子数に対するバナジウムの原子数の比は、イットリウム原子中の3d軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるイットリウムの相対原子数と、バナジウム原子中の2p3軌道に起因する光電子ピーク面積から換算されるバナジウムの相対原子数との比により決定される、請求項6に記載の蛍光体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の蛍光体を赤色蛍光体として備える、プラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
(a)イットリウム化合物、リン化合物、バナジウム化合物、および平均粒子径が1nm以上90nm以下の範囲内にある酸化ユーロピウム(Eu23)を混合し混合粉体を調製する工程、
(b)前記混合粉体を焼成し焼成粉体とする工程、および
(c)前記焼成粉体を洗浄する工程、
を有するユーロピウム付活リン酸バナジン酸イットリウムからなる蛍光体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−231097(P2007−231097A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53163(P2006−53163)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】