説明

蛍光体ペースト、およびそれを用いたプラズマディスプレイパネル装置とプラズマディスプレイ装置の製造方法

【課題】本発明のプラズマディスプレイパネルによれば画像表示装置全体の狭額縁化と画像表示品位およびその信頼性を両立させるプラズマディスプレイパネルを提供することが可能となる。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイ装置の製造方法は、絶縁体層の厚み0〜50%における空隙率の平均値が0.1〜1%の範囲であり、蛍光体層は蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤とを含む蛍光体ペーストが背面基板に塗布され、乾燥焼成を経て作製され、蛍光体ペーストに占める有機バインダー樹脂の重量含有率(wt%)に対する蛍光体粉末の重量含有率(wt%)が4.7以上6.0以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば、テレビなどの画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネルに関し、特に、紫外線により励起されて発光する蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネル用の蛍光体ペーストの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられているカラー表示デバイスにおいて、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという。)は、大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。
【0003】
PDPは、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極と金属バス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。前面板と背面板とはその電極形成面側を、放電空間にネオン(Ne)−キセノン(Xe)の放電ガスが封入された放電空間を介して対向配置されている。PDPは、表示電極に電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
【0004】
さらに、元来PDPは自発光型であるため各セルは非常に高い視野角を有するが、高精細化・大画面化に伴い全領域で均一なパネル特性が求められるため、材料物性・構造形成プロセスに対して対策が様々に施される。例えば、放電空間並びに蛍光体形状を定義して、同箇所に2回の塗布プロセスを用いてその構造を実現する方法を見出し、視野角の変化に対して蛍光体からの均一な発光を得る方法等が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
PDPなどを用いる家庭用画像表示装置としては図1に示すように表示部2と額縁部3に大別され、表示部2と額縁部3を合わせたものが表示装置の大きさとなる。表示装置は大きな表示画面で番組を視聴することにより臨場感が得られるため、昨今では画像表示装置の大型化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−208057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし画像表示装置の設置スペースの問題などで、画像表示装置を大型化することなく表示部2のみを大きくすることが求められている。このため額縁部2を狭くする、いわゆる狭額縁化が必要となる。
【0008】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、狭額縁化と高品質を両立させるPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明のPDPは、複数の表示電極を配置した前面基板と、表示電極に交差するようにデータ電極を配置し前記データ電極上に絶縁体層を配置し、絶縁体層上に蛍光体層を備えた背面基板とを、対向配置し前面基板および背面基板の周囲を封着部材にて封着したプラズマディスプレイパネルを備えるプラズマディスプレイ装置の製造方法において、絶縁体層の厚み0〜50%における空隙率の平均値が0.1〜1%の範囲であり、蛍光体層は蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤とを含む蛍光体ペーストが背面基板に塗布され、乾燥焼成を経て作製され、蛍光体ペーストに占める有機バインダー樹脂の重量含有率(wt%)に対する蛍光体粉末の重量含有率(wt%)が4.7以上6.0以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、狭額縁化を可能とするPDPでありながら、発光効率の高い高品質なPDPを提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像表示装置の構成を示す正面図
【図2】PDPの額縁部における断面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるPDPの概略構成を示す断面斜視図
【図4】本発明の一実施の形態におけるPDPの背面板の構成を示す斜視図
【図5】本発明の実施例におけるP/E比と絶縁破壊電圧の関係
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて、図面を用いて説明する。
【0013】
<第1の実施の形態>
1、PDPの全般的な構成
図3から図4により、本実施の形態におけるPDPの構成および特徴について説明する。まず、図3から図4により本発明のPDPの主要構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態におけるPDPの概略構成を示す断面斜視図、図4は同PDPの背面板の構成を示す斜視図である。
【0014】
図3において、PDP1は、前面板20と背面板30とから構成され、前面板20と背面板30とは放電空間40を形成するように対向配置されている。前面板20は、フロート法により形成された硼珪素ナトリウム系ガラスなどの前面ガラス基板21上に、走査電極22と維持電極23とで対をなすストライプ状の複数の表示電極24が形成されている。また、隣接する表示電極24の間には、光遮蔽部となるブラックストライプ25が形成されている。また、表示電極24とブラックストライプ25とを覆って誘電体層26が形成され、さらに誘電体層26を覆って酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層27が形成されている。
【0015】
一方、背面板30は、背面ガラス基板31上に、前面板20の表示電極24と直交する方向にデータ電極32が形成され、データ電極32を覆って絶縁体層33が設けられている。また、絶縁体層33上には、例えばストライプ状、井桁状の隔壁34が設けられ、隔壁34の側面と絶縁体層33の表面には蛍光体層35が設けられている。蛍光体層35は隣接する隔壁34によって仕切られた放電空間40に、それぞれ赤色に発光する赤色蛍光体層35R、緑色に発光する緑色蛍光体層35G、青色に発光する青色蛍光体層35Bが順に形成されている。
【0016】
図4は本発明の実施形態における同PDPの背面板の構成を示す斜視図である。図4に示すように、PDPの隔壁34は、表示電極24と平行な横隔壁34bと横隔壁34bに直交する縦隔壁34aとにより井桁状に形成されており、縦隔壁34aは横隔壁34bの高さよりも若干高くなるように形成される。本発明ではこの他に面一の井桁形状にも適応できるものである。また横隔壁34aを除いたストライプ状の隔壁にも適応できるものである。
【0017】
前面板20に設けられた表示電極24を構成する走査電極22および維持電極23は、それぞれ透明電極およびバス電極により構成されている。バス電極はCr/Cu/CrまたはAgなどの材料からなり、それぞれ透明電極に電気的に接続されている。
【0018】
以上の前面板20と背面板30とを、表示電極24とデータ電極32とが直交し内部に微小な放電空間40を形成するように隔壁34を挟んで対向配置して、周囲を封着部材により封止する。その後、放電空間40に、NeおよびXeなどを混合した放電ガスを66500Pa(500Torr)程度の圧力で封入してPDPを完成させ、表示電極24に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、それによって発生した紫外線が各色の蛍光体層35を励起して、赤色、緑色、青色の各色を発光させることによりカラー画像を表示する。
【0019】
ここで本発明の実施形態の額縁部3について説明する。PDPなどを用いる家庭用画像表示装置としては図1に示すように表示部2と額縁部3に大別され、表示部2と額縁部3を合わせたものが表示装置の大きさとなる。
【0020】
表示装置は大きな表示画面で番組を視聴することにより臨場感が得られるため、昨今では画像表示装置の大型化が進んでいる。しかし画像表示装置の設置スペースの問題などで、画像表示装置を大型化することなく表示部2のみを大きくすることが求められている。このため額縁部3を狭くする、いわゆる狭額縁化が必要となる。
【0021】
ここで、図2にPDPの額縁部3の断面図を示す。額縁部3は同図のような構造になっており、この部分を狭幅化することが課題となる。ところで封着部材38と背面基板の絶縁体層33の位置関係は、図2(a)〜(c)に示すような形態が考えられる。
(1)絶縁体層33が封着部材38の外側まで形成されている(図2(a))。
(2)絶縁体層33が封着部材38の内側に形成されている(図2(b))。
(3)絶縁体層33が封着部材38の中間程度まで形成されている(図2(c))。
【0022】
このうち、図2(b)のように絶縁体層33が封着部材38の内側に形成されている場合、PDP内部でデータ電極32が剥き出しとなってしまい、そこで異常放電が発生するため採用できない。
【0023】
PDPの額縁部3を狭幅化するための1つの方策として、封着部材38の幅を狭くすることが挙げられる。封着部材38を狭幅化すると、その封着部材38の塗布位置や塗布幅の製造バラツキが起こりやすく、図2(c)のように絶縁体層33を封着部材38の中間程度まで形成することが困難となる。よって封着部材38の幅を狭くするためには図2(a)のように絶縁体層33を封着フリットの外側まで形成する設計が最良となる。
【0024】
しかしながら、図2(a)の構造では、PDP内部の放電ガスが絶縁体層33を通して外部に漏れ出す危険がある。放電ガスが外部に漏れ出すと、PDPの放電を著しく損ね、ついにはPDPが点灯しなくなる。
また、蛍光体層の絶縁破壊に対する耐圧を十分にしなければ、放電セル内に電荷が貯まりすぎて前面基板と背面基板の間に小さな異常放電が生じる。この異常放電による衝撃で蛍光体粉末が前面基板まで飛散して付着し、前面基板の正常放電を阻害し点灯不良とする“蛍光体の絶縁破壊”が発生する。
【0025】
本発明の実施形態は、封着部材38を図2(a)の形態としつつ、上記課題を解決するための技術である。
【0026】
2、PDPの製造方法について
次に、PDP1の背面板30の製造方法について説明する。まず背面ガラス基板31上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりデータ電極32用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりデータ電極32を形成する。次に、データ電極32が形成された背面ガラス基板31上にダイコート法などによりデータ電極32を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより絶縁体層33を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダーおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0027】
具体的には、本発明の実施の形態において絶縁体ペーストは、ガラス成分20−50%、絶縁性フィラー10−50%、導電性フィラー0−5%、バインダー10−20%、溶剤20−30%の配合比のものを数種類用いた。
【0028】
絶縁性フィラーとは、シリカやチタニアのような絶縁性をもった物質で構成されたフィラーであり、導電性フィラーは酸化スズやマンガンといった導電性をもった物質で構成されたフィラーである。
【0029】
また絶縁性フィラーとガラス成分の比率を変更することで、絶縁体層33の空隙率を変更できる。後述する実験結果においてはこれらの配合比を変更して試料を作成し検討した。特に、ガラス成分45−50%、絶縁性フィラー10−15%とすることで良好な結果が得られた。
【0030】
次に、絶縁体層33上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、焼成することにより隔壁34を形成する。ここで、絶縁体層33上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁34間の絶縁体層33上および隔壁34の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層35が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板31上に所定の構成部材を有する背面板30が完成する。
【0031】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板20と背面板30とを走査電極22とデータ電極32とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間40にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDP1が完成する。
【0032】
3、本発明の絶縁体層について
先に述べたように、従来技術のPDPにおいては、図2(a)のような狭額縁対応構造にするとPDP内部の放電ガスが絶縁体層33を通して外部に漏れ出すという課題があった。これに対し発明者等は、絶縁体層33の背面ガラス基板31側から厚み0〜50%の深さの空隙率の平均値を0.1〜1%の範囲とすることで、上記課題を解決することを見出した。
【0033】
ここで空隙率とは、絶縁体層33の中で絶縁体層のガラス成分が存在していない部分の体積の割合であって、以下の方法で測定される。
(1)背面板30を割断し、絶縁体層33の断面が露出したサンプルを切り出す。
(2)絶縁体層33を二次電子走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。
(3)撮像された誘電体断面の画像から、空隙率を算出する。
【0034】
また誘電体の断面は、SEM撮像時のコントラストを上げ、かつ割断時の割れ具合による測定ばらつきを防止するため、空隙部や周辺を樹脂でコートすることが望ましい。本測定は、日立製作所製走査型電子顕微鏡S−3000を用いて行った。算出に用いた撮像は反射電子計測モードで、加速電圧15kV、ワークディスタンス15mmにて行った。この評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、絶縁体層33の厚み0〜50%における空隙率の平均値が1%を越えると、放電ガスが外部に漏れ出し、PDPの品質を損ねる。また、表1に示すように、絶縁体層33の厚み0〜50%における空隙率の平均値が0.1%より小さいと、絶縁体層33の反射率が著しく小さくなるためPDPの発光輝度が下がることになる。これは、空隙率が小さくなったことによって絶縁体層33の空隙の界面において反射する光が少なくなり、前面基板から取り出される光の量が少なくなることに起因する。ここで反射率は、波長550nmに対する全反射率としてJIS−R−3106に準拠して計測した。また、測定はMINOLTA「Spectrophotometer:CM−3600d」を用いた。
4、本発明の蛍光体層について
次に本発明の蛍光体について説明する。以下の実施例は例示の目的で提供され、本発明を限定するものではない。
蛍光体層は、蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤を含む材料を混合してできた蛍光体ペーストを背面基板に塗布し、乾燥、焼成を経て作製される。本発明の蛍光体ペーストは少なくとも蛍光体粉末と、有機バインダー樹脂と、有機溶剤とを含有し、バインダー樹脂はアクリル系樹脂であり、蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率が、4.7以上6.0以下となるように合成を行う。
各材料については、以下詳細に説明する。
【0037】
3−1、蛍光体粉末
本実施の形態における蛍光体ペーストの構成成分である蛍光体粉末について説明する。本実施の形態における蛍光体ペーストの構成成分である蛍光体粉末は、波長200nm以下、たとえば147nmの真空紫外線励起下で効率的に発光し得る蛍光体であることが好ましい。中でも、赤色蛍光体として赤色蛍光体として(Y,Eu)(P,V)Oまたは(Y,Gd,Eu)、緑色蛍光体として(Zn,Mn)SiOまたは(Y,Ce)(Al,Ga)12、青色蛍光体として(Ba,Eu)MgAl1017を用いた場合、発光効率、色合いともに良好であるため特に好ましい。しかし、各色において先述した蛍光体を少なくとも1種類含有していれば蛍光体ペーストとしてはよく、先述した各色における蛍光体粉末に限定されるものではない。
本発明の実施形態では、青色蛍光体粉末として青色蛍光体(Ba,Eu)MgAl1017を用いた。青色蛍光体(Ba,Eu)MgAl1017は、出発原料に炭酸バリウム(BaCO)と炭酸マグネシウム(MgCO)と酸化アルミニウム(Al)と酸化ユーロピウム(Eu)とを用いて、蛍光体組成に合うように混合する。ここで、酸化アルミニウムをフッ化アルミニウム(AlF)もしくは酸化ユーロピウムをフッ化ユーロピウム(EuF)とすることで、反応を促進させ、粒径をコントロールすることができる。混合物を窒素に数%の水素を含む混合ガス雰囲気において1400℃〜1800℃で焼成することで作製する。
【0038】
蛍光体粉末の重量比率(wt%)は、少なくとも蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤とを含む蛍光体ペースト全重量に対して40wt%以上60wt%以下が好ましい。蛍光体粉末の重量比率(wt%)が40wt%を下回る場合、蛍光体ペーストの粘度が低くなり、塗布性が悪化する。そして、60wt%を超える場合においては、蛍光体ペーストの粘度が高くなり、塗布性が悪化する。
次に、青色蛍光体(Ba,Eu)MgAl1017の蛍光体粉末の粒径について説明する。本発明の実施形態では蛍光体粒子の平均粒径D50を2.0μm以上3.0μm以下とする。蛍光体粒子は2.0μmより小さい場合では、粒子そのものの発光効率が小さくなってしまう。しかし、蛍光体層に充填された粒子同士による発光の反射界面を増やすには、3.0μm以下であることが好ましい。
さらに、蛍光体ペースト中の、蛍光体粉末の重量で表される含有率(wt%)とバインダー樹脂の重量で表される含有率(wt%)との比をある一定範囲にすることによって、蛍光体層の蛍光体粉末の体積充填率を増加させることができる。その結果、背面基板における誘電体層の材料等を検討して絶縁破壊に対する耐圧を向上させなくても、背面基板における絶縁耐圧の特性が向上する。
具体的には、本発明の実施形態では、蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率を4.7以上、6.0以下としている。蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率を4.7より小さい値にすると蛍光体ペーストにおける樹脂の占める割合が大きく、焼成後の蛍光体層に閉める蛍光体粉末充填密度が低い。そのため、蛍光体層の充分な絶縁耐圧を得ることができなくなる。また、蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率が6.0より大きな値にすると、蛍光体ペースト中における蛍光体粉末の占める割合が大きく、ノズルに詰まる等、塗布に影響が出る可能性がある。
したがって、蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率を上記の範囲にすることで、蛍光体層における蛍光体粉末の体積充填率を確保することが可能となり、蛍光体層は充分な絶縁耐圧の特性を得ることができることとなる。
【0039】
3−2、有機溶剤
さらに蛍光体ペーストの構成成分である有機溶剤は、沸点が100℃〜300℃のもので、有機バインダー及び蛍光体粉体成分と分離しないものであれば特に制限はなく、アルコール系、エーテル系、エステル系のものが好ましい。例えば、テルピネオール(沸点217℃)、ベンジルアルコール(沸点205℃)、N−メチルピロリドン(沸点202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点245℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)等は作業性に優れていて好ましい。バインダー樹脂としては、エチルセルロースを用いる。
また、有機溶剤はと単独で用いることも複数で用いることも可能である。有機溶剤の重量比率(wt%)は、少なくとも蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤とを含む蛍光体ペーストの全重量20wt%以上50wt%以下が好ましい。有機溶剤の重量比率(wt%)が20wt%を下回る場合、蛍光体ペーストの粘度が低くなり、塗布性が悪化する。そして、50wt%を超える場合においても、蛍光体ペーストの粘度が高くなり、塗布性が悪化する。
【0040】
3−3、有機バインダー樹脂
さらに蛍光体ペーストの構成成分である有機バインダー樹脂は、以下のものが選択される。
アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ノルマルプロピルアクリレート、ノルマルプロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチオールアクリルアミド等の単量体から1つ以上を選択して重合させることが好ましい。より好ましくはメチルメタクリレートを単量体の1成分として乳化重合して得られるアクリル系樹脂である。有機バインダー樹脂は蛍光体ペーストの全重量中3〜20wt%含有されていることが好ましい。3wt%より少ないと、蛍光体ペースト粘度が低くなり、塗布性に適さない。また20wt%を超えると蛍光体の充填密度が低くなり、輝度等に影響が出る。
4、実施例
次に、本発明の実施形態における性能評価結果を表1に示す。なお、これは本発明の1実施形態における実施例を示すものであり、本発明すべての実施形態を示すものではない。また、図5に蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率と絶縁破壊電圧との関係を示す。
表1に本発明の第1の実施形態の実施例として、実施例3、4の青色蛍光体ペーストについて示す。また比較として比較例1、2を同表に示す。また同表には各蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率、蛍光体粒子の体積充填率(%)および蛍光体層が破壊した電圧として絶縁破壊電圧(V)を示す。
【0041】
本実施例の体積充填率(%)は次で説明する吐膜評価により算出を行う。底面積2×2cmの正方形、厚さ20μmの蛍光体ペースト吐膜をひく。この吐膜を100℃で30分乾燥、500℃で4時間の焼成で蛍光体ペースト中の有機溶剤、有機バインダー樹脂を飛ばすことで蛍光体層を形成する。この蛍光体層の体積(cm)および質量(g)から蛍光体の膜密度(g/cm)を求める。膜密度を蛍光粉末の比重で割ることで、体積充填率を出す。
【0042】
また、絶縁破壊電圧(V)は次で説明する評価により測定を行う。PDPの背面板に蛍光体ペースト塗布する。この塗布された蛍光体ペーストを100℃で30分乾燥、500℃で4時間焼成して、蛍光体ペースト中の有機溶剤および有機バインダー樹脂を飛ばすことで蛍光体層を形成する。蛍光体層が形成された平面板と前面板が張り合わされてPDPを作製する。このPDPに電圧を0Vから蛍光体層が破壊するまで上げていく。そして、蛍光体層が破壊された際の絶縁破壊電圧を示している。
なお、今回使用した青色蛍光体の平均粒径D50は全て2.5μmのものを使用した。青色蛍光体の平均粒径D50が2.0μm以下では蛍光体に対する粉砕強度が強くなりすぎるため、蛍光体粉体の発光強度が十分に得ることができなくなる。一方、青色蛍光体の平均粒径D50が3.0μm以上である場合、蛍光体層の絶縁耐圧に対して十分な密度をえることができなくなるためである。
【0043】
【表1】

【0044】
比較例1、2および実施例3、4において、蛍光体粉末は(Ba,Eu)MgAl1017、有機バインダー樹脂はエチルセルロース、有機溶剤はベンジルアルコールとテルピネオールを用いる。
<比較例1>
蛍光体粉末:40.0wt%
有機バインダー樹脂:13.3wt%
有機溶剤:
ベンジルアルコール・・・20.0wt%
テルピネオール・・・26.7wt%
上記組成より、蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率の値は3である。蛍光体層に充填された蛍光体粒子の体積充填率は39%である。また、絶縁破壊電圧(V)は、240Vである。
<比較例2>
蛍光体粉末:40.0wt%
有機バインダー樹脂:8.9wt%
有機溶剤:
ベンジルアルコール・・・20.0wt%
テルピネオール・・・31.1wt%
上記組成より、蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率の値は4.5である。蛍光体層に充填された蛍光体粒子の体積充填率は42%である。また、絶縁破壊電圧(V)は、283Vである。
<実施例3>
蛍光体粉末:40.0wt%
有機バインダー樹脂:8.5wt%
有機溶剤:
ベンジルアルコール・・・20.0wt%
テルピネオール・・・31.5wt%
上記組成より、蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率の値は4.7である。蛍光体層に充填された蛍光体粒子の体積充填率は45%である。また、絶縁破壊電圧(V)は、306Vである。
<実施例4>
蛍光体粉末:40.0wt%
有機バインダー樹脂:6.7wt%
有機溶剤:
ベンジルアルコール・・・20.0wt%
テルピネオール・・・33.3wt%
上記組成より、蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率の値は6.0である。蛍光体層に充填された蛍光体粒子の体積充填率は45%である。また、絶縁破壊電圧(V)は、306Vである。
表1および図5に示すように、蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率の値が4.7付近までは蛍光体ペーストの蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率の値が増加すると、絶縁破壊電圧(V)がより大きくなり、PDPの蛍光体層の耐圧が高くなることが分かる。さらに、蛍光体粉末の含有率/有機バインダー樹脂の含有率が所定の値以上となる場合、絶縁破壊電圧(V)は飽和する。また、体積充填率(%)に関しても同様の傾向が見られ、体積充填率が高くなることで蛍光体層の絶縁破壊電圧を上げることができる。この結果は、体積充填率が高くなるにつれて蛍光体層の蛍光体粒子が占める割合が大きくなり空隙は少なくなることで、蛍光体層の絶縁破壊を抑制していることが考えられる。本発明における実施例においては、蛍光体層に占める蛍光体粒子の体積充填率が45%以上となることで十分な耐圧をえることができる。
以上、示したように本発明の蛍光体ペーストを用いれば、蛍光体における絶縁破壊耐圧の増したスパークの発生しにくい高品質のPDPを提供することができる。
5、実施の形態のまとめ
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
(1)
本発明は複数の表示電極を配置した前面基板と、表示電極に交差するようにデータ電極(32)を配置しデータ電極(32)上に絶縁体層(33)を配置し、絶縁体層(33)上に蛍光体層(35)を備えた背面基板とを、対向配置し前面基板および背面基板の周囲を封着部材(38)にて封着したプラズマディスプレイパネル(1)を備えるプラズマディスプレイ装置の製造方法において、絶縁体層(33)の厚み0〜50%における空隙率の平均値が0.1〜1%の範囲であり、蛍光体層(35)は蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤とを含む蛍光体ペーストが背面基板に塗布され、乾燥焼成を経て作製され、蛍光体ペーストに占める有機バインダー樹脂の重量含有率(wt%)に対する蛍光体粉末の重量含有率(wt%)が4.7以上6.0以下であることを特徴とする。
【0045】
これによって、狭額縁化を可能とするPDPでありながら、発光効率の高い高品質なPDPを提供することが可能となる。
(2)
(1)のプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、蛍光体ペーストの蛍光体粉末は、青色蛍光体の蛍光体粉末として(Ba,Eu)MgAl10O17を用いることを特徴とする。
これにより、誘電体層の絶縁耐圧を上げることなく、より省電力かつ信頼性の高いPDPを提供することが可能となる。
(3)
(1)のプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、の蛍光体ペーストに用いる蛍光体粉末の平均粒径は2.0μm以上3.0μm以下であることを特徴とする。
これにより、蛍光体層に充填された粒子同士による発光の反射界面を増やすことが可能となり、発光効率がより大きくなる。
(4)
(1)のプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、蛍光体層(35)の体積を100とした場合の蛍光体層(35)にしめる蛍光体粒子の体積充填率は45%以上であることを特徴とする。
これにより、蛍光体層の空隙は少なくなることで、蛍光体層の絶縁破壊を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のPDPによれば、狭額縁化と高品質を両立させるPDPを提供することを可能とする点で有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 PDP
2 表示部
3 額縁部
30 背面板
31 背面ガラス基板
32 データ電極
33 絶縁体層
34 隔壁
35 蛍光体層
36 誘電体層
37 前面ガラス基板
38 封着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示電極を配置した前面基板と、前記表示電極に交差するようにデータ電極を配置し前記データ電極上に絶縁体層を配置し、絶縁体層上に蛍光体層を備えた背面基板とを、対向配置し前記前面基板および前記背面基板の周囲を封着部材にて封着したプラズマディスプレイパネルを備えるプラズマディスプレイ装置の製造方法において、
前記絶縁体層の厚み0〜50%における空隙率の平均値が0.1〜1%の範囲であり、前記蛍光体層は蛍光体粉末と有機バインダー樹脂と有機溶剤とを含む蛍光体ペーストが前記背面基板に塗布され、乾燥焼成を経て作製され、前記蛍光体ペーストに占める前記有機バインダー樹脂の重量含有率(wt%)に対する前記蛍光体粉末の重量含有率(wt%)が4.7以上6.0以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体ペーストの蛍光体粉末は、青色蛍光体の蛍光体粉末として(Ba,Eu)MgAl10O17を用いることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ペースト。
【請求項3】
前記蛍光体ペーストに用いる蛍光体粉末の平均粒径は2.0μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体層の体積を100とした場合の前記蛍光体層にしめる前記蛍光体粒子の体積充填率は45%以上であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−238409(P2012−238409A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104986(P2011−104986)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】