説明

蛍光体分散部材およびその製造方法

【課題】樹脂に蛍光体を混合した構成の蛍光体分散部材であっても、耐候性を発揮する構成とされる蛍光体分散部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】透光性を有する樹脂2に蛍光体3を分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体に、所定膜厚の耐候性を発揮するガラス膜4で被覆した蛍光体分散部材1とし、蛍光体を樹脂に分散し硬化させる蛍光体含有樹脂体作成工程と、所定のゾルゲルガラス材を含む浸漬用ガラスゾルを作成するゾル作成工程と、前記蛍光体含有樹脂体を前記浸漬用ガラスゾルに浸漬し所定の速度で引き上げて所定膜厚のゲル状のガラス膜を付着させるガラス膜作成工程と、ゲル状のガラス膜で被覆された蛍光体含有樹脂体を焼結して蛍光体分散部材を作成する焼結工程と、を備える蛍光体分散部材の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED発光素子の光を他色の光に変換する際に用いる蛍光体分散部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の色で発光するLED発光素子と、LED発光素子から発光される色を所望の色合いの光に変換する蛍光体を分散したガラスを備えた発光ダイオード光源が知られている。
【0003】
例えば、青色で発光するLED発光素子と、この青色を黄色に変換する蛍光体を用いて、この青色と黄色を混色して白色の光で発光する発光ダイオード光源を作成することができる。
【0004】
この際に、色調が一様な白色発光を得るためには、透明樹脂(ガラス)中に蛍光体を均一に分散させた蛍光体分散部材を用いて、このガラス体中でLED発光素子から発光される青色と蛍光体が発する黄色とを均一に混色してガラス体の外に混色光である白色光を一様に放出することが肝要である。
【0005】
また、所定の粒子径のガラス粉末と蛍光体粉末とを混合し焼結して、青色光源が発光する青色と蛍光体が変換する黄色とを合成して白色光を得ると共に、エネルギーが強い青色光に対して変色せず温度上昇も少ない安定したガラスを用いて信頼性を向上させるとした発光色変換部材が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
発光色変換部材(蛍光体分散部材)は、ガラス粉末と蛍光体粉末とを混合し、樹脂バインダーを添加して所定形状に加圧成型して焼成することで作成できる。また、ゾルゲル法を用いて、蛍光体を混合した蛍光体分散部材を製造することもできる。
【0007】
ゾルゲル法は、例えば、金属アルコキシドを用いて、加水分解と重合反応を利用してガラスを作成する方法であり、比較的低温でガラス合成が可能である。また、各種の蛍光体粉末や希土類イオンを混合して各色の蛍光体分散部材を得ることができる。例えば、発光効率3%以上の半導体超微粒子を、ガラス中に粒子濃度10-9モル/cm3以上分散させた超微粒子分散ガラスが既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、蛍光体を含み、金属アルコキシドと樹脂の複合体を加水分解重合して、耐候性に優れたゲル層(例えば、メタロキサンゲル層)を形成した発光装置が既に提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4158012号公報
【特許文献2】特開2002−211935号公報
【特許文献3】特開2002−134790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に樹脂は水分を透過させるので、樹脂に蛍光体を混合した蛍光体分散部材を用いた構成では、時間の経過と共に内部に水分が浸透して光学特性が劣化する問題を生じる。また、耐候性に優れたゲル層を形成する金属アルコキシドを用いた構成であっても、蛍光体を分散させた樹脂との複合体を加水分解重合しているので、外部に露出した樹脂を介して、徐々に水分が浸透する虞があり、耐水性(耐候性)は十分とはいえない。
【0011】
さらに、蛍光体を混合する樹脂を、耐水性や耐光性などの耐候性に優れた樹脂に限定することは好ましくなく、多様な発光ダイオード光源を得るためには、求められる仕様や用途に応じて種々の樹脂が使用可能であることが好ましい。
【0012】
そこで本発明は、樹脂に蛍光体を混合した構成の蛍光体分散部材であっても、耐候性を発揮する構成とされる蛍光体分散部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、所定の蛍光体が分散された蛍光体分散部材であって、透光性を有する樹脂に蛍光体を分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体を、所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜で被覆したことを特徴としている。
【0014】
上記の構成であれば、蛍光体を分散させた樹脂を、所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜で被覆しているので、所定の耐水性や耐光性を発揮して、樹脂が外光や水分などによって劣化されず、耐候性の向上した蛍光体分散部材を得ることができる。
【0015】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材において、前記ガラス膜が、ゾルゲル法を用いて形成されると共に、形成される膜厚が、所定の耐候性を発揮すると共にクラックや剥がれが生じない所定厚みとされていることを特徴としている。この構成によると、所定の耐候性を発揮する程度に厚く、また、クラックや剥がれを生じない程度に薄いガラス膜をゾルゲル法で容易に形成することができ、予定の耐候性を発揮すると共に品質の安定した蛍光体分散部材を容易に得ることができる。
【0016】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材において、前記ガラス膜の膜厚が10〜300nmであることを特徴としている。この構成によると、膜厚が薄くなると生じ易くなる耐候性の劣化と、膜厚が厚くなると生じ易くなるガラス膜のクラックと剥離を共に防止可能となって、所定の耐候性に優れ、さらに破損し難い蛍光体分散部材を得ることができる。
【0017】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材において、前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、またはこれらのハイブリッド樹脂からなる耐熱性を有する樹脂であることを特徴としている。この構成によると、所定の耐候性に加えて、さらに耐熱性を備える蛍光体分散部材となる。
【0018】
また本発明は、所定の蛍光体が分散された蛍光体分散部材の製造方法であって、蛍光体を樹脂に分散し硬化させる蛍光体含有樹脂体作成工程と、所定のゾルゲルガラス材を含む浸漬用ガラスゾルを作成するゾル作成工程と、前記蛍光体含有樹脂体を前記浸漬用ガラスゾルに浸漬し所定の速度で引き上げて所定膜厚のゲル状のガラス膜を付着させるガラス膜作成工程と、ゲル状のガラス膜で被覆された蛍光体含有樹脂体を焼結して蛍光体分散部材を作成する焼結工程と、を備えることを特徴としている。
【0019】
上記の構成であれば、任意の蛍光体を均一に分散した蛍光体含有樹脂体を製造可能であると共に、この樹脂体を所定のゾルゲルガラス材を用いたゾルゲル法で、所定厚みのガラス膜で被覆するので、所定の耐候性に優れた蛍光体分散部材を容易に製造可能な製造方法となる。
【0020】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材の製造方法において、前記膜厚が、耐候性を発揮すると共にクラックや剥がれが生じない所定厚みであり、前記焼結温度が樹脂に変色や変形などの悪影響を与えない所定範囲の温度であることを特徴としている。この構成によると、焼結工程において樹脂を劣化させずに、所定の耐候性の機能を発揮するガラス膜を形成するので、高品質で高寿命な蛍光体分散部材を製造することができる。
【0021】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材の製造方法において、前記膜厚が10〜300nmであることを特徴としている。この構成によると、膜厚が薄くなると生じ易くなる耐候性の劣化と、膜厚が厚くなると生じ易くなるガラス膜のクラックと剥離を共に防止して、耐候性と強度に優れた蛍光体分散部材を製造することができる。
【0022】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材の製造方法において、前記ゾルゲル法における焼結温度が130〜250℃であることを特徴としている。この構成によると、低温で生じ易いガラス膜の焼結不良と、高温で生じ易い樹脂の変色や変形を共に防止して、耐候性に優れた蛍光体分散部材を良好に製造することができる。
【0023】
また本発明は上記構成の蛍光体分散部材の製造方法において、前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、またはこれらのハイブリッド樹脂からなる耐熱性を有する樹脂であることを特徴としている。この構成によると、所定の耐候性に加えて、さらに耐熱性を備える蛍光体分散部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、透光性を有する樹脂に蛍光体を分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体を、所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜で被覆した蛍光体分散部材としたので、耐水性や耐光性などの所定の耐候性を発揮する蛍光体分散部材を得ることができる。また、本発明によれば、蛍光体を樹脂に分散し硬化させる蛍光体含有樹脂体作成工程と、所定のゾルゲルガラス材を含む浸漬用ガラスゾルを作成するゾル作成工程と、前記蛍光体含有樹脂体を前記浸漬用ガラスゾルに浸漬し所定の速度で引き上げて所定膜厚のゲル状のガラス膜を付着させるガラス膜作成工程と、ゲル状のガラス膜で被覆された蛍光体含有樹脂体を焼結して蛍光体分散部材を作成する焼結工程と、を備える蛍光体分散部材の製造方法としたので、任意の蛍光体を均一に分散した蛍光体含有樹脂体を製造可能であると共に、この樹脂体をゾルゲル法で、所定のゾルゲルガラス材を用いて所定厚みのガラス膜で被覆することで、耐水性や耐光性などの所定の耐候性に優れた蛍光体分散部材を製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る蛍光体分散部材の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0027】
先ず、図1を用いて本実施形態に係る蛍光体分散部材について説明する。本実施形態に係る蛍光体分散部材1は、透光性を有する樹脂2に蛍光体3を分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体10に、所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜4を形成している。つまり、蛍光体含有樹脂体10を耐候性を有するガラス膜4で被覆した構成である。
【0028】
また、蛍光体分散部材1は、LED発光素子5が発光する一次光R1を、その内部に添加した蛍光体3が二次光R2に変換し、この一次光R1と二次光R2とが混色された第三光R3を生成して放出する機能を有する。
【0029】
蛍光体3を分散させた樹脂2は、その外周を所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜4で被覆されているので、所定の耐水性と所定の耐光性を発揮する。そのために、この構成の蛍光体分散部材1は、使用されている樹脂2の特性に係らず、所定の耐候性を発揮する蛍光体分散部材となる。
【0030】
また、LED発光素子5の発熱や、該LED発光素子5が発光する一次光R1が入射することで昇温するので、樹脂2は耐熱性を有する樹脂であることが好ましい。
【0031】
ここでは、耐熱性を有するエポキシ樹脂やシリコン樹脂、または、これらのハイブリッド樹脂を用いることとした。
【0032】
また、蛍光体3を分散して硬化させた蛍光体分散樹脂体10にガラス膜4を形成する方法は、所定粘度のゾル体に浸漬してゆっくり引き上げて所定厚みの被覆膜を形成し、その後で比較的低温で焼結して製造可能であるゾルゲル法が好ましい。そのために、本実施形態ではゾルゲル法を用いてガラス膜4を形成する蛍光体分散部材1の製造方法としている。
【0033】
また、通常のゾルゲル法では、その焼結工程において生じている気泡を完全に消滅させるまで焼成するが、この気泡が、適当な大きさで且つ適当な密度であれば、LED発光素子5が発光する一次光R1や、蛍光体3が発する二次光R2などを適度に散乱させて、一様な色合いの第三光を発光するので、適当な気泡を残存させる焼成温度と焼成時間に調整してもよい。
【0034】
例えば、乾燥ゲル体を所定温度まで昇温して、この状態を3時間維持すると全ての気泡を消滅させることができる場合に、この焼成時間を1時間とすることで、所定の大きさで所定の密度の気泡を残存させることができる。
【0035】
次に、実際に蛍光体分散部材1を製造した実施例について説明する。ここで採用した蛍光体分散部材の製造方法は、蛍光体を樹脂に分散し硬化させる蛍光体含有樹脂体作成工程と、所定のゾルゲルガラス材を含む浸漬用ガラスゾルを作成するゾル作成工程と、前記蛍光体含有樹脂体を前記浸漬用ガラスゾルに浸漬し所定の速度で引き上げて所定膜厚のゲル状のガラス膜を付着させるガラス膜作成工程と、ゲル状のガラス膜で被覆された蛍光体含有樹脂体を焼結して蛍光体分散部材を作成する焼結工程と、を備える。
【0036】
先ず、ゾル作成工程として、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)を25グラム、エタノール(C2H6O)を37.6グラム、水(H20)を23.5グラム、塩酸(HCl)を0.3グラム、それぞれ計量して混合し、30分間放置して、加水分解と重合反応によって粘度が0.03ポアズまで増大した浸漬用ガラスゾルを準備した。
【0037】
次いで、蛍光体含有樹脂体作成工程として、所定の蛍光体3グラムを分散し硬化させたシリカハイブリッドエポキシ樹脂(コンポセランE103:荒川化学工業株式会社製)を作成する。
【0038】
蛍光体は、例えば、Y、Gd、Ce、Sm、Al、La及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得る。次に、この焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥して、最後に篩を通すことで所望の蛍光体を得ることができる。
【0039】
特に、青色の光に励起されて黄色の発光を示すセリウム添加YAG蛍光体を得る際には、原料として、Y23、Gd23、CeO2、Al23をそれぞれ適量用意して、これらを十分に混合した原料混合物をアルミ坩堝に充填し、これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して、水素含有窒素ガスを通気しながら還元雰囲気中において、1350〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得る。得られた焼成品を粉砕、洗浄、分離、乾燥することで所望の蛍光体を得る。また、得られた蛍光体の組成を調べ、所望の蛍光体であることを確認し、465nmの励起光における発光波長を調べたところ、おおよそ570nmにピーク波長を有していることを確認した。つまり、青色の光を照射すると黄色の発光を示す蛍光体を得ることができる。
【0040】
そこで、上記セリウム添加YAG蛍光体3グラムを用いて蛍光体含有樹脂体を作成した。それから、ガラス膜作成工程として、前述した浸漬用ゾルに前記シリカハイブリッドエポキシ樹脂からなる蛍光体含有樹脂体を浸漬して1.8mm/sのスピードで引き上げて所定膜厚のガラス膜を付着(コーティング)してゲル状とした。
【0041】
最後に焼結工程として、上記のゲル状のガラス膜で被覆された蛍光体含有樹脂体を、150℃で60分間焼結した。また、これにより、膜厚が100nmのガラス膜で被覆された蛍光体分散部材を製造した。
【0042】
次に、この膜厚が100nmのガラス膜で被覆された蛍光体分散部材を用いて恒温恒湿での耐候性試験を行った結果について説明する。
【0043】
小型環境試験機(SH−641:エスペック社製)を用いて、温度60℃、湿度90%の条件で1000時間キープした耐候性試験を行ったが、表面にくもりは発生しなかった。しかし、ガラス膜で被覆していないものは同じ条件の耐候性試験でくもりが発生した。
【0044】
蛍光体含有樹脂体を被覆するガラス膜の膜厚は、10〜300nm程度が好ましい。膜厚が10nmよりも薄くなると、耐湿性と耐候性が不十分となり、耐候性試験にて表面にくもりが発生する場合があった。また、膜厚が300nmを超えると、ガラス膜にクラックが生じたり、剥がれたりする場合があった。また、この膜厚は、浸漬用ガラスゾルの粘度と浸漬して引き上げるスピードにより調整でき、また、一旦引き上げて乾燥させた後で繰り返し浸漬することでも調整することができる。
【0045】
また、浸漬してコーティングしたガラス膜を焼結する温度は、130〜250℃程度が好ましい。130℃よりも低い焼結温度では、ガラス膜を完全に焼結することができない。また、250℃よりも高温の焼結温度では、樹脂によっては、変色や変形が発生する場合が生じる。
【0046】
上記したように、蛍光体を含有した樹脂体に耐候性を発揮するガラス膜をゾルゲル法にて形成すると共に、そのガラス膜の膜厚を所定厚みとし、その焼結温度を樹脂に悪影響を与えない所定範囲の温度とすることで、樹脂の特性に係らず耐候性に優れた高品質の蛍光体分散部材を得ることができる。
【0047】
なお、本実施例では、テトラメトキシシランより作成したシリカガラスを使用しているが、本発明は、ここで用いたシリカガラス以外のガラスに対しても有効であり、種々のガラスを用いることができる。その際には、使用するガラスに応じて、適当な焼結温度に調整することは当然である。また、蛍光体の種類も実施例に限定されず、種々の蛍光体を用いることができる。
【0048】
上記したように、本発明に係る蛍光体分散部材によれば、透光性を有する樹脂に蛍光体を分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体に、所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜を形成した蛍光体分散部材としたので、所定膜厚のガラス膜で被覆された蛍光体分散部材となって、耐水性や耐光性などの所定の耐候性を発揮し強度に優れた蛍光体分散部材を得ることができる。
【0049】
また、樹脂として耐熱性を有する樹脂を用いることで、所定の耐候性に加えて、さらに耐熱性を備える蛍光体分散部材を得ることができる。
【0050】
さらに、本発明に係る蛍光体分散部材の製造方法によれば、ゾルゲル法を用いて、蛍光体を樹脂に分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体を、ガラス膜で被覆した蛍光体分散部材の製造方法としたので、任意の蛍光体を均一に分散した蛍光体含有樹脂体を製造可能であると共に、耐候性と強度に優れた蛍光体分散部材を製造することができる。
【0051】
また、ガラス膜の膜厚を所定の耐候性を発揮すると共にクラックや剥がれが生じない所定厚み(例えば、10〜300nm)とし、焼結する温度を、樹脂に悪影響を与えない所定範囲の温度(例えば、130〜250℃)とすることで、所定の耐候性に優れ、さらに、樹脂を劣化せず安定した発光を持続可能な蛍光体分散部材を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る蛍光体分散部材およびその製造方法は、LED発光素子が発光する一次光と蛍光体が発する二次光を混色して所望の色合いの第三光を発光する発光ダイオード光源に好適に適用可能な蛍光体分散部材およびその製造方法となる。
【符号の説明】
【0053】
1 蛍光体分散部材
2 樹脂
3 蛍光体
4 ガラス膜
5 LED発光素子
10 蛍光体含有樹脂体
R1 一次光
R2 二次光
R3 第三光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の蛍光体が分散された蛍光体分散部材であって、
透光性を有する樹脂に蛍光体を分散し硬化させた蛍光体含有樹脂体を、所定の耐候性を発揮する所定膜厚のガラス膜で被覆したことを特徴とする蛍光体分散部材。
【請求項2】
前記ガラス膜が、ゾルゲル法を用いて形成されると共に、形成される膜厚が、耐候性を発揮すると共にクラックや剥がれが生じない所定厚みとされていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体分散部材。
【請求項3】
前記ガラス膜の膜厚が10〜300nmであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光体分散部材。
【請求項4】
前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、またはこれらのハイブリッド樹脂からなる耐熱性を有する樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の蛍光体分散部材。
【請求項5】
所定の蛍光体が分散された蛍光体分散部材の製造方法であって、
蛍光体を樹脂に分散し硬化させる蛍光体含有樹脂体作成工程と、所定のゾルゲルガラス材を含む浸漬用ガラスゾルを作成するゾル作成工程と、前記蛍光体含有樹脂体を前記浸漬用ガラスゾルに浸漬し所定の速度で引き上げて所定膜厚のゲル状のガラス膜を付着させるガラス膜作成工程と、ゲル状のガラス膜で被覆された蛍光体含有樹脂体を焼結して蛍光体分散部材を作成する焼結工程と、を備えることを特徴とする蛍光体分散部材の製造方法。
【請求項6】
前記膜厚が、耐候性を発揮すると共にクラックや剥がれが生じない所定厚みであり、前記焼結温度が樹脂に変色や変形などの悪影響を与えない所定範囲の温度であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光体分散部材の製造方法。
【請求項7】
前記膜厚が、10〜300nmであることを特徴とする請求項6に記載の蛍光体分散部材の製造方法。
【請求項8】
前記焼結温度が130〜250℃であることを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光体分散部材の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、またはこれらのハイブリッド樹脂からなる耐熱性を有する樹脂であることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の蛍光体分散部材の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−283045(P2010−283045A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133617(P2009−133617)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】