説明

蛍光体及びその製造方法

本発明は、優れた耐熱性及び真空紫外線や紫外線等に対する耐久性を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びその製造方法を提供する。 2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)を含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、蛍光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
近年、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)等において、種々の蛍光体が使用されている。このような蛍光体のうち、青色蛍光体として(Ba、Sr)MgAl1017:Eu2+等の2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体等が用いられている。
このような2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、高温下にさらされたり、蛍光体を励起する為の真空紫外線、紫外線等にさらされたりすると劣化して輝度が低下する。この理由として、加熱により蛍光体表面が酸化作用を受けるため、特に青色蛍光体の発光中心である2価のEuが酸化されて3価となり、2価の青色発光が失われて輝度が低下するというメカニズムが提唱されている。
蛍光体は、用途によっては成形時に高温での加熱を経ることがある。例えば、PDPの製造工程においては、背面ガラス板上にリブと呼ばれる隔壁を形成し、各蛍光体はバインダー及び溶剤でペースト化された後に隔壁間にそれぞれ混色することなく塗布される。その後バインダーを焼き飛ばし、前面ガラス板を融着させる目的で、400〜500℃で加熱される。このような焼成工程では酸化作用だけではなく、蛍光体以外の誘電体や電極等の材料に元々含まれる水が蒸発するため、結果的に高湿度中での焼成となり、蛍光体に悪影響を及ぼす可能性も示唆されている。そのため、青色蛍光体では加熱焼成工程での輝度低下と発光色シフトを抑制することが大きな課題となっている。
劣化抑制のために、蛍光体表面への化学的処理によって劣化を抑制する試みがなされている(例えば、特開平10−195428号公報、特開平10−298548号公報、特開平10−204429号公報等)。しかし、これらの方法はいずれもホウ素やアンチモン、シリカ等の元素の化合物を表面に被覆することであり、酸化劣化を完全に防ぐことが困難であるだけでなく、蛍光体表面を他物質で覆うために輝度が低下するという問題を生じる。
また、着色して粉体白色度が低下した蛍光体は、発生した蛍光を吸収してしまうため機能が低下してしまうという問題がある。このため、蛍光体は、高い粉体白色度を有することが好ましい。蛍光体の輝度低下を防ぐ方法としては、還元雰囲気下で焼成した後に、酸化雰囲気下で焼成する蛍光体の製造方法が開示されている(例えば、特開2002−348570号公報)。しかしながら、このような方法は、アルカリ土類金属ケイアルミン酸塩蛍光体を製造するための方法であり、蛍光体の粉体白色度を高めるためのものではなかった。
発明の要約
本発明は、上記に鑑み、優れた耐熱性及び真空紫外線や紫外線等に対する耐久性を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)を含有することを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体である。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、ユーロピウム(d)、並びに、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)のそれぞれの前駆体化合物の混合物を、還元性雰囲気下で焼成する工程(1−1)、及び、上記工程(1−1)により得られた焼成物を、更に、酸化性雰囲気下で焼成する工程(1−2)により得られるものであってもよい。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)と、インジウム化合物、タングステン化合物、ニオブ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、タンタル化合物、タリウム化合物及び鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(B)とを混合する工程(2−1)、及び、上記工程(2−1)によって得られた混合物又は上記工程(2−1)によって得られた混合物の焼成物を酸化性雰囲気下で焼成する工程(2−2)により得られるものであり、上記工程(2−2)前に還元性雰囲気下での焼成を少なくとも一回行うものであってもよい。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)をアルミニウム元素1モルに対して、0.0001〜0.01モルの範囲で含有することが好ましい。
上記2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、下記一般式(1);
(Ba1−XSr1−YEuMgAl1017 (1)
(式中、0≦X≦0.3、0<Y≦0.2)
で表されることが好ましい。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、粉体白色度がW値で85以上であることが好ましい。
本発明は、上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法であって、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、ユーロピウム(d)、並びに、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)のそれぞれの前駆体化合物の混合物又は上記混合物の焼成物を、還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)からなることを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法でもある。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法は、還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)により得られた焼成物を、酸化雰囲気下で焼成する工程(1−2)を有することが好ましい。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法は、還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)の前に、酸化雰囲気下で焼成する工程(1−3)を有することが好ましい。
本発明とは、上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法であって、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)と、インジウム化合物、タングステン化合物、ニオブ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、タンタル化合物、タリウム化合物及び鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(B)とを混合する工程(2−1)、及び、上記工程(2−1)によって得られた混合物又は上記工程(2−1)によって得られた混合物の焼成物を酸化雰囲気下で焼成する工程(2−2)からなり、上記工程(2−2)前に還元雰囲気下での焼成を少なくとも一回行うことを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法でもある。
上記焼成物(A)は、更に、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(e)を含有するものであることが好ましい。
上記還元雰囲気下での焼成は、上記工程(2−1)によって得られた混合物に対して行ってもよい。
上記還元雰囲気下での焼成は、上記バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)の製造における焼成において行ってもよい。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳述する。
本発明の蛍光体は、2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、このような蛍光体としては、通常知られているものを使用することができ、例えば、バリウム及び/又はストロンチウム、ユーロピウム、マグネシウム、アルミニウム、酸素からなるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を挙げることができる。このようなアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体としては、下記一般式(1);
(Ba1−XSr1−YEuMgAl1017 (1)
(式中、0≦X≦0.3、0<Y≦0.2)
で表されるものであることが好ましい。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸蛍光体は、2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)を含有するものである。上記元素(e)は、上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体中に存在するものであっても、上記元素化合物による表面処理のように表面に局在化して存在するものであってもよいが、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体中に存在するものであることが、より好ましい。上記元素(e)としては、2種類以上を同時に含有するものであってもよいし、一種類のみを含有するものであってもよい。上記元素のなかでも、優れた耐熱性及び真空紫外線や紫外線等に対する耐久性を有する蛍光体が得られるため、タングステン、ニオブ、ビスマスがより好ましく、タングステンが最も好ましい。
上記インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)は、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸蛍光体中にアルミニウム元素1モルに対して、0.0001〜0.01モルの範囲で含有することが好ましい。0.0001モルより少ないと添加効果が小さく、0.01モルより多いと、輝度が低くなりすぎるため好ましくない。上記範囲は、使用する元素の種類によって相違するが、例えば、タングステン及び/又はニオブを使用した場合には、上記範囲の下限は、0.0003モル、上限は0.007モルであることが好ましい。更には、上記範囲の下限は0.0005モル、上限は0.003モルであることが最も好ましい。上記元素(e)の含有量は、原料として使用する前駆体化合物において、アルミニウム前駆体化合物と上記元素の前駆体化合物との混合比率によって、特定の範囲内のものとすることができる。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸蛍光体は、物性に影響を与えない範囲内で、上記元素(e)以外の元素を含有するものであってもよい。但し、不純物が存在すると、輝度や耐熱性、真空紫外線に対する耐久性等に影響を与えるおそれがあるため、必須成分以外の元素は、1%未満であることが好ましい。
更に、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、粉体白色度がW値で85以上であることが好ましい。上記粉体白色度がW値として85以上であるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、発生した蛍光を吸収することがなく、効率よく蛍光を得ることができる点で好ましい。上記W値は、下記の式(2)に従い、ハンター表色系L(明度)、a(彩度)、b(色相)の各値より算出される。
W=100−{(100−L)+(a+b)}1/2 (2)
上記W値が85未満であると、発生した蛍光の吸収が高まり、良好な蛍光体性能が得られないおそれがある。上記W値は、90以上であることがより好ましい。以下、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を製造方法の一例に沿って説明する。なお、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されるものではない。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の主構成成分である各元素(バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、ユーロピウム(d)、並びに、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e))のそれぞれの前駆体化合物の混合物又は上記混合物の焼成物を、還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)によって得ることができる。
上記前駆体化合物としては特に限定されず、酸化物又は焼成すると酸化物になる化合物であればどのようなものでも用いることができる。
バリウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、硫化バリウム、塩化バリウム、水酸化バリウム等を挙げることができる。ストロンチウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム等を挙げることができる。マグネシウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。アルミニウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を挙げることができる。ユーロピウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化ユーロピウム、炭酸ユーロピウム、塩化ユーロピウム、酢酸ユーロピウム等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。
インジウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化インジウム、三塩化インジウム、硝酸インジウム、水酸化インジウム、硫酸インジウム等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。タングステンの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。ニオブの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化ニオブ、五酸化ニオブ等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。ビスマスの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化ビスマス、硝酸ビスマス等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。モリブデンの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、塩化モリブデン等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。
タンタルの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化タンタル、塩化タンタル、弗化タンタル等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。タリウムの前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化タリウム、炭酸タリウム、硝酸タリウム等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。鉛の前駆体化合物としては特に限定されず、例えば、酸化鉛、炭酸鉛、硝酸鉛等を挙げることができる。また、その金属元素の酸化数についても特に限定されない。
上記前駆体化合物として使用される化合物は、できるだけ高純度であることが好ましく、特に揮発成分以外の不純物を含まないか、含有していても極めて少量であることが好ましい。原料中に不純物が存在していると、得られるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の物性が変化するおそれがあるため、好ましくない。原料としては、すべて純度99%以上のものを使用することが好ましい。上記それぞれの前駆体化合物は、目的とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体における各元素の割合に応じた比となるような割合で配合して、混合物とする。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造においては、更に融剤を使用しても良い。融剤としては特に限定されるものではないが、該蛍光体粒子の成長促進剤として機能し、尚且つ組成に影響することなく揮発するものが好ましく、例えば、弗化マグネシウム、弗化アルミニウム等を挙げることができる。
上記前駆体化合物及び必要に応じて使用する上記融剤の混合物は、上記各成分を公知の方法によって混合することによって得ることができる。
上記混合の方法は、各成分が単独で凝集することなく均一に混合されるような方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には例えば、ボールミルやブレンダー等を使用した乾式混合、溶媒存在下ホモジナイザー等の攪拌機やボールミル、ビーズミル等のメディア粉砕機で湿式混合した後に乾燥する方法、前駆体化合物の水溶性塩類の水溶液を調製して、pH調整剤によりpH調整して所定の組成になるように前駆体化合物の不溶性塩を沈殿させた後、洗浄し乾燥する方法、前駆体化合物の水溶性塩類の水溶液を調製した後に油剤と分散剤でW/O型エマルジョンを調製し、そのエマルジョン液を加熱脱水して得られる前駆体混合物の油性分散液を分別して得る方法等を挙げることができる。
上記混合物を還元雰囲気で焼成することによって、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体が得られる。上記焼成は、1000〜1700℃の範囲で行うことが好ましい。上記焼成温度が1000℃より低いと、完全にアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の結晶とならなかったり、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の結晶となっても結晶性が著しく悪くなったりするおそれがあり、1700℃より高いと粒子が大きくなりすぎて性能が著しく悪くなるおそれがあり、強い粒子間融着のため分散が困難となり均一な蛍光膜形成を著しく阻害するため好ましくない。上記還元雰囲気下での焼成においては、発光中心であるユーロピウムを還元するために、還元雰囲気で焼成することが必要とされるものである。上記焼成は、還元雰囲気下で行うものである。上記還元雰囲気の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、窒素と水素との混合ガス雰囲気下での焼成等を挙げることができる。上記窒素と水素との混合ガス雰囲気下での焼成においては、窒素と水素の混合割合は、99.9/0.1〜80/20(体積比)であることが好ましい。
上記還元雰囲気下での焼成は、反応温度によって反応時間が異なるものであるが、反応を充分に進行させるためには、例えば、反応時間を0.5〜10時間とすることによって、目的とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を効率良く得ることができる。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法においては、上記還元雰囲気下での焼成の前に、必要に応じて、任意の雰囲気下での焼成を任意の回数行うものであっても良い。このような還元雰囲気下での焼成の前の焼成としては、例えば、酸化雰囲気下での焼成等を挙げることができる。
上記任意の酸化雰囲気下での焼成としては特に限定されず、例えば、大気雰囲気下、窒素と酸素との混合ガス雰囲気下での焼成などを挙げることができる。上記任意の酸化雰囲気下での焼成は、1000〜1700℃の温度で行うことが好ましい。上記任意の酸化雰囲気下での焼成は、反応温度によって反応時間が異なるものであるが、反応を充分に進行させるためには、例えば、反応時間を0.5〜10時間とすることによって、効率良く目的を達成することができる。上記任意の雰囲気下での焼成を行った後で還元雰囲気下での焼成を行う場合、焼成物を適時粉砕してから還元雰囲気下での焼成を行うことが好ましい。
上述した方法によって得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、解砕することによって粒径を整えることが好ましい。上記解砕において用いる粉砕機は、ハンマーミル、流体エネルギーミル、ミックスマラー等の乾式粉砕機やボールミル、ビーズミル等の湿式粉砕機を用いることができる。上記解砕においては、強粉砕すると蛍光体の特性が著しく悪くなるため、焼成物の状態により、適した粉砕機の選定と最適な条件の設定が必要である。液体サイクロン等の分級操作も適宜利用することができる。このようなアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法も、本発明の一部である。
上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法は、更に、上記工程(1−1)により得られた焼成物を、酸化雰囲気下で焼成する工程(1−2)を有することが好ましい。上記酸化雰囲気下で焼成する工程(1−2)を行うことにより、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の粉体白色度を高めることができる。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)を添加することにより、輝度維持性能を高めたものである。しかし、このような元素を添加して還元雰囲気下で焼成すると、上記元素(e)は、還元されることによって着色するか、着色が強くなる。すなわち、還元雰囲気下で上記元素(e)は着色性の強い低価数物質に変化するため、得られる蛍光体の粉体白色度が低下し、ひいては発光を吸収して輝度が低下する。このため、上記工程(1−2)により、粉体白色度を更に高めることが好ましい。
つまり、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、上記元素(e)を含有し、なおかつ、最終工程として酸化雰囲気下で焼成を行って調製することにより、粉体白色度が高く、製造時の加熱、紫外線、真空紫外線の照射等に対する耐久性に優れた蛍光体となるものである。
上記最終工程としての酸化雰囲気下での焼成としては特に限定されず、例えば、大気雰囲気下、窒素と酸素との混合ガス雰囲気下での焼成等を挙げることができる。なかでも、付活剤であるユーロピウムの酸化を極力抑えるため、窒素と酸素との混合ガス雰囲気下での焼成が好ましい。上記混合ガスにおける窒素と酸素との割合としては特に限定されないが、ユーロピウムの酸化を抑制するため、窒素/酸素=99.9/0.1〜95/5(体積比)であることが好ましい。
上記窒素と酸素との混合ガスは、焼成初期から終了時まで同じ割合を保持することもできるが、添加元素の着色を取り除くことができるならば、焼成の過程で酸素を注入するものであってもよい。この際、酸素を注入する温度、時間及び時期としては、任意に選ぶことができ、特に限定されない。上記酸化雰囲気下での焼成は、ユーロピウムの酸化を極力抑えるため、下限500℃、上限1000℃の範囲内で行われることが好ましく、最高到達温度の保持時間は0〜20時間で行うことが好ましい。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)と、インジウム化合物、タングステン化合物、ニオブ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、タンタル化合物、タリウム化合物及び鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(B)とを混合する工程(2−1)、及び、上記工程(2−1)によって得られた混合物又は上記工程(2−1)によって得られた混合物の焼成物を酸化雰囲気下で焼成する工程(2−2)からなり、上記工程(2−2)前に還元雰囲気下での焼成を少なくとも一回行う方法により得ることもできる。
上記焼成物(A)は、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物であり、例えば、バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)のそれぞれの前駆体化合物からなる混合物を焼成することによって得ることができる。
上記前駆体化合物としては特に限定されず、酸化物又は焼成すると酸化物になる化合物であればどのようなものでも用いることができ、それぞれの前駆体化合物としては上述のものを使用することができる。
上記焼成物(A)は、更に、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(e)を含有するものであってもよい。
上記元素(e)を含有する上記焼成物(A)は、(a)〜(d)のそれぞれの前駆体化合物の混合物に、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(e)の前駆体化合物を所望量添加することによって得ることができる。上記元素(e)の前駆体化合物としては特に限定されず、上述のものを使用することができる。
上記焼成物(A)の製造においては、更に、融剤を使用してもよい。上記融剤としては特に限定されず、上述のものを使用することができる。
上記前駆体化合物及び必要に応じて使用する上記融剤の混合物は、上記各成分を公知の方法によって混合することによって得ることができる。
上記混合の方法は、各成分が単独で凝集することなく均一に混合されるような方法であれば特に限定されず、上述の方法を用いることができる。
上記焼成物(A)は、例えば、大気雰囲気下、窒素と酸素との混合ガス雰囲気下等の酸化雰囲気下での焼成を、任意の回数行うことによって得ることができる。上記酸化雰囲気下での焼成における温度、反応時間は、上記任意の酸化雰囲気下での焼成の条件が好ましい。
上記焼成物(A)は、上記混合物の還元雰囲気下での焼成によっても得ることができる。上記還元雰囲気下での焼成における温度、反応時間は、上述の範囲が好ましい。また、還元雰囲気の条件も上述と同様の条件が好ましい。
上記焼成物(A)は、上記任意の酸化雰囲気下での焼成を行った後で、還元雰囲気下での焼成を行うことによって得られたものであってもよい。また、上記酸化雰囲気下での焼成と還元雰囲気下での焼成を複数回行うことによって得られたものであってもよい。
上記工程(2−1)は、上述のようにして得られた焼成物(A)と、インジウム化合物、タングステン化合物、ニオブ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、タンタル化合物、タリウム化合物及び鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(B)とを混合する工程である。
上記化合物(B)としては特に限定されず、上記前駆体化合物と同様に、酸化物又は焼成すると酸化物になる化合物であればどのようなものでも用いることができる。それぞれの化合物としては、上述の前駆体化合物を挙げることができる。上記工程(2−1)における上記焼成物(A)と上記化合物(B)の混合方法としては特に限定されず、例えば、ボールミルやブレンダー等を使用した乾式混合、溶媒存在下ホモジナイザー等の攪拌機やボールミル、ビーズミル等のメディア粉砕機で湿式混合した後に乾燥する方法等を挙げることができる。このような方法を用いて、上記工程(2−1)を行うことにより、上記焼成物(A)の解砕と化合物(B)の混合が同時にできることから好ましい。
上記工程(2−1)によって得られた混合物を更に焼成してから上記工程(2−2)に供するものであってもよい。上記工程(2−1)の後の焼成は、酸化雰囲気下での焼成であっても、還元雰囲気下での焼成であってもよい。
本発明の蛍光体は、上記工程(2−2)の前に還元雰囲気下での焼成を少なくとも一回行うものである。少なくとも一回の還元雰囲気下での焼成を行うことによって、ユーロピウムが還元されて、充分な輝度を有する蛍光体が得られる。上記還元雰囲気下での焼成は、上述した工程(2−1)で得られた混合物に対して行うものであるか、上記焼成物(A)を得るための焼成工程において行うことが好ましい。上記焼成物(A)を得るための焼成工程において、還元雰囲気下での焼成を行う場合、酸化雰囲気下での焼成後に、還元雰囲気下での焼成を行うことが好ましい。
上記工程(2−2)は、上記工程(2−1)で得られた混合物を酸化雰囲気下で焼成する工程である。上記酸化雰囲気下での焼成を行うことによって、蛍光体の粉体白色度を維持したままで、輝度の低下、発光色シフトの抑制等の目的を達成することができるものである。
上記工程(2−2)における酸化雰囲気下での焼成としては特に限定されないが、上記最終工程としての酸化雰囲気下での焼成と同様の条件で行われることが好ましい。
上記窒素と酸素との混合ガスは、焼成初期から終了時まで同じ割合を保持することもできるが、焼成の過程で酸素を注入するものであってもよい。この際、酸素を注入する温度、時間及び時期としては、任意に選ぶことができ、特に限定されない。上記酸化雰囲気下での焼成は、ユーロピウムの酸化を極力抑えるため、下限500℃、上限1000℃の範囲内で行われることが好ましく、最高到達温度の保持時間は0〜20時間で行うことが好ましい。
上述した方法によって得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、解砕することによって粒径を整えることが好ましい。上記解砕において用いる粉砕機は、上述のものを挙げることができる。このようなアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法も、本発明の一部である。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、発光色シフトが抑えられているという点でも優れた性質を有する。ここでいう発光色シフトは、上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の発光の色度変化であって、発光の色度変化が小さいほど、発光色の変化が小さく発光色シフトが抑えられていることを示す。上記発光の色度変化は、輝度計(例えば、大塚電子株式会社社製MCPD−3000)を用いて測定した蛍光体の発光の色度(y)を用いて算定すると、下記一般式(3)に従って求めることができる。
Δy=焼成、紫外線照射等を行った後の発光の色度(y2)−蛍光体粉体の発光の色度(y1) (3)
例えば、調製直後と大気中1時間で150℃の割合で昇温し、500℃で1時間保持した後、1時間で150℃の割合で降温する加熱工程後との発光の色度変化(Δy)が0.01以下であるような蛍光体は、発光色シフトが抑えられたものであるとみなすことができる。0.01を超えると、発光色の変化が大きく、発光色シフトを抑制する性能が不充分である。上記色度変化は、0.007以下であることがより好ましい。
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、耐熱性及び真空紫外線や紫外線に対する耐久性に優れ、輝度の低下や発光色のシフトが生じず、PDP等の用途に好適に使用することができる。更に、上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、高い粉体白色度を有するため蛍光放射に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
炭酸バリウム(分析純度99.39質量%)を24.11g、炭酸ストロンチウム(分析純度99.5質量%)を2.1g、水酸化マグネシウム(分析純度99.5質量%)を8.33g、酸化アルミニウム(分析純度99.27質量%)を73.32g、酸化ユーロピウム(III)(99.6質量%)を1.26g、酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g、弗化アルミニウム(試薬特級)を1.19gを電子天秤で秤量し、自動乳鉢(日陶科学社製、ANM−150)にて60min間混合した。その後、混合物をアルミナ製のルツボにいれて、大気雰囲気下、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて10分間解砕した。次いで、水素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて還元雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して還元焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて10分間解砕した。
以上のようにしてタングステンをアルミニウム1モルに対してW元素として0.0005モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例2】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.331g加えること以外は実施例1と同様にして、タングステンをアルミニウム1モルに対してW元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(比較例1)
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えないこと以外は実施例1と同様にして、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(耐熱性試験方法)
実施例1、2及び比較例1で調製した蛍光体を磁製ルツボに2g測り取り、電気炉にて大気中1時間で200℃の割合で昇温し、500℃で1時間保持した後、1時間で200℃の割合で降温し、焼成した。また、保持温度を600℃、700℃、800℃、900℃として同様の焼成を行った。大塚電子(株)製MCPD−3000型蛍光スペクトル測定装置を用いて、実施例1〜2及び比較例1の酸化焼成前後での輝度を測定した。(焼成後の輝度)/(焼成前の輝度)×100を輝度維持率として算出し、輝度維持率により焼成前後の各試料の劣化耐性を比較した。結果を表1に示す。

表1より、タングステンを含有しない比較例1のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体に比べ、タングステンを添加した実施例1及び2で得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体はいずれも焼成後の輝度維持率が高く、酸化による劣化耐性が向上していることが明らかである。
【実施例3】
炭酸バリウム(分析純度99.39質量%)を22.69g加え、炭酸ストロンチウム(分析純度99.5質量%)を2.14g、水酸化マグネシウム(分析純度99.5質量%)を8.33g、酸化アルミニウム(分析純度99.27質量%)を72.96g、酸化ユーロピウム(III)(99.6質量%)を2.52g、酸化インジウム(III)を0.197g、弗化アルミニウム(試薬特級)を1.20gを電子天秤で秤量し、自動乳鉢にて60min間混合した。その後、混合物をアルミナ製のルツボにいれて、大気雰囲気下、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて10分間解砕した。次いで、水素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて還元雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して還元焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて10分間解砕した。
以上のようにしてインジウムをアルミニウム1モルに対してIn元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例4】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.329g加える以外は実施例3と同様にして、タングステンをアルミニウム1モルに対してW元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例5】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.658g加える以外は実施例3と同様にして、タングステンをアルミニウム1モルに対してW元素として0.002モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例6】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化タングステン(VI)(試薬特級)を1.66g加える以外は実施例3と同様にして、タングステンをアルミニウム1モルに対してW元素として0.005モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例7】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、五酸化ニオブ(V)を0.189gにする以外は実施例3と同様にして、ニオブをアルミニウム1モルに対してNb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例8】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、五酸化ニオブ(V)を0.378gにする以外は実施例3と同様にして、ニオブをアルミニウム1モルに対してNb元素として0.002モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例9】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化ビスマス(III)を0.331gにする以外は実施例3と同様にして、ビスマスをアルミニウム1モルに対してBi元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例10】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化モリブデン(VI)を0.205gにする以外は実施例3と同様にして、モリブデンをアルミニウム1モルに対してMo元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例11】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化タンタル(V)を0.314gにする以外は実施例3と同様にして、タンタルをアルミニウム1モルに対してTa元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例12】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化タリウム(III)を0.324gにする以外は実施例3と同様にして、タリウムをアルミニウム1モルに対してTl元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例13】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化鉛(II)を0.317gにする以外は実施例3と同様にして、鉛をアルミニウム1モルに対してPb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(比較例2)
酸化インジウム(III)を0.197g加えないこと以外は実施例3と同様にして、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(耐熱性試験方法)
実施例3〜13及び比較例2で調製した蛍光体を用いて、上記実施例1、2及び比較例1において行った耐熱性試験方法と同様の手法で、最高到達温度が900℃の場合の劣化耐性評価を行い、輝度維持率により焼成前後の各試料の劣化耐性を比較した。結果を表2に示す。

表2の結果から、比較例2のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体に比べて実施例3〜13で得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、いずれも焼成後の輝度維持率が向上し、劣化耐性が向上したことが明らかである。
【実施例14】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加える以外は実施例3と同様にして、タングステンをアルミニウム1モルに対してW元素として0.0005モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例15】
酸化インジウム(III)を0.197g加えるかわりに、五酸化ニオブ(V)を0.095gにする以外は実施例3と同様にして、ニオブをアルミニウム1モルに対してNb元素として0.0005モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(真空紫外線照射による劣化試験)
実施例4、14、15及び比較例2で得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を用いて、真空紫外線照射による経時劣化試験を行った。試験に際して、まず真空紫外線を照射するための試験膜を調製した。上記実施例及び比較例によって得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体とエチルセルロース(ダウケミカル社製、STD−10)及びターピネオール(試薬特級)を、質量換算比でそれぞれ17.5:1:9の割合で混合し、フーバー式マラーにて分散したものを蛍光体ペーストとした。蛍光体ペーストを用いてスライドガラスに乾燥膜厚が20μmになるように2×2cmの正方形に成膜した後、大気中500℃にて20分間焼成してバインダーや溶剤成分を除去した。
以上のようにして得られた焼成膜を試験片として、ウシオ電機社製真空紫外線ランプを用いて5Pa以下の真空中で147nmの真空紫外線を各試験片につき2時間照射した。照射前後の輝度を測定し、(照射後の輝度/照射前の輝度)×100を輝度維持率として算出して、その輝度維持率により照射前後の各試料の劣化度合いを比較した。結果を表3に示す。

表3の結果から、比較例2のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体に比べて、本発明による実施例4、14、15のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は5〜10%程度輝度維持率が向上していることが明らかである。即ち、本発明では、酸化による劣化を抑制する効果だけでなく、真空紫外線の経時劣化に対しても抑制効果があることが明らかである。
【実施例16】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えること以外は実施例1と同様にして、焼成物を得た。更に、酸素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて酸化雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度800℃にて1時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して酸化焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて5分間解砕した。
以上のようにしてインジウムをアルミニウム元素1モルに対してIn元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例17】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.331g加えること以外は実施例16と同様にして、タングステンをアルミニウム元素1モルに対してW元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体Bを得た。
【実施例18】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化ニオブ(V)(試薬特級)を0.190g加えること以外は実施例16と同様にして、ニオブをアルミニウム元素1モルに対してNb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例19】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化ビスマス(III)(試薬特級)を0.333g加えること以外は実施例16と同様にして、ビスマスをアルミニウム元素1モルに対してBi元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例20】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化モリブデン(VI)(試薬特級)を0.206g加えること以外は実施例16と同様にして、モリブデンをアルミニウム元素1モルに対してMo元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例21】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化タンタル(V)(試薬特級)を0.315g加えること以外は実施例16と同様にして、タンタルをアルミニウム元素1モルに対してTa元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例22】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化タリウム(III)(試薬特級)を0.326g加えること以外は実施例16と同様にして、タリウムをアルミニウム元素1モルに対してTl元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例23】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化鉛(II)(試薬特級)を0.319g加えること以外は実施例16と同様にして、鉛をアルミニウム元素1モルに対してPb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例24】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えること以外は実施例1と同様にして、インジウムをアルミニウム元素1モルに対してIn元素として0.001モル含有する、酸化雰囲気下の焼成をしないアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例25】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに、酸化ニオブ(V)(試薬特級)を0.190g加えること以外は実施例1と同様にして、ニオブをアルミニウム元素1モルに対してNb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例26】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに、酸化ビスマス(III)(試薬特級)を0.333g加えること以外は実施例1と同様にして、ビスマスをアルミニウム元素1モルに対してBi元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミシ酸塩蛍光体を得た。
【実施例27】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに、酸化モリブデン(VI)(試薬特級)を0.206g加えること以外は実施例1と同様にして、モリブデンをアルミニウム元素1モルに対してMo元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例28】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに、酸化タンタル(V)(試薬特級)を0.315g加えること以外は実施例1と同様にして、タンタルをアルミニウム元素1モルに対してTa元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例29】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに、酸化タリウム(III)(試薬特級)を0.326g加えること以外は実施例1と同様にして、タリウムをアルミニウム元素1モルに対してTl元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例30】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.166g加えるかわりに、酸化鉛(II)(試薬特級)を0.319g加えること以外は実施例1と同様にして、鉛をアルミニウム元素1モルに対してPb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(粉体白色度測定方法)
実施例2及び16〜30で得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を用いて、直径10mm、深さ5mmの容器内に充填して表面を平滑にした後、カラーメーター(スガ試験機株式会社製、商品名:SMカラーコンピューター、SM−4)にてハンター表色系L、a、b値を測定し、W値を計算した。結果を表4に示す。

表4より、酸化雰囲気下での焼成を最終工程として行った実施例16〜23の蛍光体は、同一の添加元素を有し、酸化雰囲気下での焼成を行わなかった実施例の蛍光体より高い粉体白色度を有することが示された。
(比較例3)
酸化インジウムを0.198g加えないこと以外は実施例16と同様にしてアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(真空紫外線照射による劣化試験方法)
実施例16〜23及び比較例1、3で得られた蛍光体を用いて、粉体輝度の測定及び真空紫外線照射による劣化試験を行った。試験に際して、まず実施例16〜23及び比較例1、3で得られた蛍光体の粉体そのものの発光の輝度と発光の色度(y値)を、粉体白色度の測定と同じ方法で測定試料を作成し、大塚電子株式会社製MCPD−3000輝度計を用いて測定した。その後、紫外線を照射するための試験片を上記真空紫外線照射による劣化試験における方法と同様にして調製した。得られた焼成膜を試験片として、ウシオ電機社製真空紫外線ランプを用いて、5Pa以下の真空中で147nmの紫外線を各試験片につき2時間照射した。
焼成膜の発光の色度(y値)−粉体時の発光の色度(y値)を色度変化Δyと定義し、変化量を比較した。また、真空紫外線照射前後の輝度を測定し、(照射後の輝度/照射前の輝度)×100を輝度維持率と定義して算出し、輝度維持率により焼成前後の各試料の劣化度合いを比較した。結果を表5に示す。表5に示す輝度は、それぞれの試験の輝度の測定値を、比較例3の粉体の輝度の測定値を100とした相対輝度として換算した値を輝度として表した。

表5の結果から、特にタングステンを含有する実施例17の蛍光体、及び、ニオブを含有する実施例18の蛍光体は、比較例1及び3の蛍光体に比べて真空紫外線照射後の輝度が10%以上向上し、真空紫外線による劣化が極めて抑制されていることが示された。
また、比較例1は、輝度は高いが発光色シフトが大きいことに比べ、実施例16〜23の蛍光体はその発光の色度変化が非常に小さく、発光色シフトが抑制されていることが示された。
【実施例31】
炭酸バリウム(分析純度99.39質量%)を24.11g、炭酸ストロンチウム(分析純度99.5質量%)を2.1g、水酸化マグネシウム(分析純度99.5質量%)を8.33g、酸化アルミニウム(分析純度99.27質量%)を73.32g、酸化ユーロピウム(III)(分析純度99.6質量%)を1.26g、弗化アルミニウム(試薬特級)を1.19g各々電子天秤で秤量し、自動乳鉢にて60分間混合した。その後、混合物をアルミナ製のルツボにいれて、大気雰囲気下、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して焼成した。酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g電子天秤で秤量し、上記で得られた焼成物と自動乳鉢にて10分間粉砕混合し、焼成物の解砕と添加物の混合を同時に行った。次いで、水素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて還元雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して還元焼成し、得られた焼成物を自動乳鉢にて10分間解砕した。更に、酸素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて酸化雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度800℃にて1時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して酸化焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて5分間解砕した。以上のようにしてインジウムをアルミニウム元素1モルに対してIn元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例32】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.331g加えること以外は実施例31と同様にして、タングステンをアルミニウム元素1モルに対してW元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例33】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化ニオブ(V)(試薬特級)を0.190g加えること以外は実施例31と同様にして、ニオブをアルミニウム元素1モルに対してNb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例34】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化ビスマス(III)(試薬特級)を0.333g加えること以外は実施例31と同様にして、ビスマスをアルミニウム元素1モルに対してBi元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例35】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化モリブデン(VI)(試薬特級)を0.206g加えること以外は実施例31と同様にして、モリブデンをアルミニウム元素1モルに対してMo元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例36】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化タンタル(V)(試薬特級)を0.315g加えること以外は実施例31と同様にして、タンタルをアルミニウム元素1モルに対してTa元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例37】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化タリウム(III)(試薬特級)を0.326g加えること以外は実施例31と同様にして、タリウムをアルミニウム元素1モルに対してTl元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例38】
酸化インジウム(III)(試薬特級)を0.198g加えるかわりに酸化鉛(II)(試薬特級)を0.319g加えること以外は実施例31と同様にして、鉛をアルミニウム元素1モルに対してPb元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例39】
炭酸バリウム(分析純度99.39質量%)を24.11g、炭酸ストロンチウム(分析純度99.5質量%)を2.1g、水酸化マグネシウム(分析純度99.5質量%)を8.33g、酸化アルミニウム(分析純度99.27質量%)を73.32g、酸化ユーロピウム(III)(分析純度99.6質量%)を1.26g、弗化アルミニウム(試薬特級)を1.19g各々電子天秤で秤量し、自動乳鉢(日陶科学社製、ANM−150)にて60分間混合した。その後、混合物をアルミナ製のルツボにいれて、大気雰囲気下、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて10分間解砕した。次いで、水素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて還元雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度1500℃にて5時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して還元焼成した。酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.331g電子天秤で秤量し、上記で得られた焼成物と自動乳鉢にて10分間粉砕混合し、焼成物の解砕と添加物の混合を同時に行った。更に、酸素10体積%/窒素90体積%の混合ガスにて酸化雰囲気に保持した電気炉で、1時間に200℃の割合で昇温し、最高温度800℃にて1時間保持した後、1時間に200℃の割合で降温して酸化焼成した後、得られた焼成物を自動乳鉢にて5分間解砕した。以上のようにしてタングステンをアルミニウム元素1モルに対してW元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例40】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.331g加えるかわりに酸化モリブデン(VI)(試薬特級)を0.206g加えること以外は実施例39と同様にして、モリブデンをアルミニウム元素1モルに対してMo元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
【実施例41】
酸化タングステン(VI)(試薬特級)を0.331g加えるかわりに酸化ビスマス(III)(試薬特級)を0.333g加えること以外は実施例39と同様にして、ビスマスをアルミニウム元素1モルに対してBi元素として0.001モル含有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(粉体白色度測定方法)
実施例2及び24〜41で得られたアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を用いて、上述の方法でハンター表色系L、a、b値を測定し、W値を計算した。結果を表6に示す。

表6より、最終工程として酸化雰囲気下で焼成した蛍光体は、同一の添加元素を有し、最終工程として酸化雰囲気下で焼成しなかった蛍光体よりも高い粉体白色度を有することが示された。
(比較例4)
酸化インジウムを0.198g加えないこと以外は実施例31と同様にしてアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を得た。
(真空紫外線照射による劣化試験方法)
実施例31〜41及び比較例1、4で得られた蛍光体を用いて、粉体輝度の測定及び真空紫外線照射による劣化試験を上記真空紫外線照射による劣化試験方法と同様に比較例4の粉体の輝度の測定値を100とした相対輝度として換算した値を輝度として表した。

最終工程として酸化雰囲気下での焼成を行った蛍光体は、行わなかった蛍光体よりも真空紫外線照射後の輝度が10%以上向上し、真空紫外線による劣化が極めて抑制されていることが示された。また、比較例1は、輝度は高いが発光色シフトが大きいことに比べ、実施例31〜41の蛍光体はその発光の色度変化が非常に小さく、発光色シフトが抑制されていることが示された。
実施例31〜38の蛍光体、実施例39〜41の蛍光体はそれぞれインジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛の添加工程は異なるが、真空紫外線照射後の輝度が向上し、劣化が極めて抑制されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、加熱時及び真空紫外線照射時における経時劣化や発光色のシフトが著しく抑えられ、輝度維持性能に優れた蛍光体であるため、PDP等に応用した場合の製造工程での劣化等を抑制することができるものである。更に、本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、高い粉体白色度を有し、蛍光反射性に優れた蛍光体であるため、発生した蛍光の吸収による機能低下が生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、
インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)を含有する
ことを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項2】
バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、ユーロピウム(d)、並びに、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)のそれぞれの前駆体化合物の混合物を、還元性雰囲気下で焼成する工程(1−1)、及び、
前記工程(1−1)により得られた焼成物を、更に、酸化性雰囲気下で焼成する工程(1−2)により得られる請求項1記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項3】
バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)と、インジウム化合物、タングステン化合物、ニオブ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、タンタル化合物、タリウム化合物及び鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(B)とを混合する工程(2−1)、及び、
前記工程(2−1)によって得られた混合物又は前記工程(2−1)によって得られた混合物の焼成物を酸化性雰囲気下で焼成する工程(2−2)により得られるものであり、
前記工程(2−2)前に還元性雰囲気下での焼成を少なくとも一回行う請求項1記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項4】
インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)をアルミニウム元素1モルに対して、0.0001〜0.01モルの範囲で含有する請求項1、2又は3記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項5】
2価のユーロピウムを付活剤とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、下記一般式(1);
(Ba1−XSr1−YEuMgAl1017 (1)
(式中、0≦X≦0.3、0<Y≦0.2)
で表される請求項1、2、3又は4記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項6】
粉体白色度がW値で85以上である請求項1、2、3、4又は5記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体。
【請求項7】
請求項1、4、5又は6記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法であって、
バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、ユーロピウム(d)、並びに、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(e)のそれぞれの前駆体化合物の混合物又は前記混合物の焼成物を、還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)からなる
ことを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。
【請求項8】
還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)により得られた焼成物を、酸化雰囲気下で焼成する工程(1−2)を有する請求項7記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。
【請求項9】
還元雰囲気下で焼成する工程(1−1)の前に、酸化雰囲気下で焼成する工程(1−3)を有する請求項7又は8記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。
【請求項10】
請求項1、3、4、5又は6記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法であって、
バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)と、インジウム化合物、タングステン化合物、ニオブ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、タンタル化合物、タリウム化合物及び鉛化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(B)とを混合する工程(2−1)、及び、
前記工程(2−1)によって得られた混合物又は前記工程(2−1)によって得られた混合物の焼成物を酸化雰囲気下で焼成する工程(2−2)からなり、
前記工程(2−2)前に還元雰囲気下での焼成を少なくとも一回行う
ことを特徴とするアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。
【請求項11】
焼成物(A)は、更に、インジウム、タングステン、ニオブ、ビスマス、モリブデン、タンタル、タリウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(e)を含有するものである請求項10記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。
【請求項12】
還元雰囲気下での焼成は、前記工程(2−1)によって得られた混合物に対して行うものである請求項10又は11記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。
【請求項13】
還元雰囲気下での焼成は、前記バリウム及び/又はストロンチウム(a)、マグネシウム(b)、アルミニウム(c)、並びに、ユーロピウム(d)からなる焼成物(A)の製造における焼成において行う請求項10、11又は12記載のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/087833
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504150(P2005−504150)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003326
【国際出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】