説明

蛍光体層形成用塗料及びそれを用いた蛍光体層並びに蛍光ランプ

【課題】膜の均一性及び緻密性に優れ、膜厚が薄く、点灯時間とともに光束がより低下し難い蛍光体層を形成することが可能な蛍光体層形成用塗料及びそれを用いた蛍光体層並びに蛍光ランプを提供する。
【解決手段】本発明の蛍光体層形成用塗料は、赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質のうち1種または2種以上からなる蛍光体を含有し、この蛍光体の一次粒子の平均粒子径は0.5μm以上かつ10μm以下であり、その二次粒子の平均粒子径は1.0μm以上かつ15μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体層形成用塗料及びそれを用いた蛍光体層並びに蛍光ランプに関し、更に詳しくは、膜の均一性及び緻密性に優れ、膜厚が薄く、点灯時間とともに光束がより低下し難い蛍光体層を形成することが可能な蛍光体層形成用塗料、この蛍光体層形成用塗料を用いて形成した蛍光体層、この蛍光体層を透光性封止管の内部に形成した蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(LCD)用バックライトとしては、液晶表示部の端縁部に設けられた蛍光ランプからの光を導光板により多重反射させて液晶表示部全体に照射させる方式と、液晶表示部の背面側の反射板上に複数の蛍光ランプを配列し、これらの蛍光ランプからの光を前面側の拡散板を介して液晶表示部全体に照射させる方式とがあり、いずれの方式においても、蛍光ランプとして、細管形状を有する冷陰極蛍光ランプが主に用いられている。
この冷陰極蛍光ランプは、ガラス管の両端が封止された透光性封止管の内面に蛍光体からなる発光層を形成し、この透光性封止管内の両端部側にそれぞれ電極を設け、この透光性封止管内に水銀蒸気、あるいはアルゴン、キセノン等の希ガスを封入したものが知られている。
【0003】
ところで、従来の冷陰極蛍光ランプでは、点灯時間の経過とともに光束が次第に低下することが知られている。その原因の1つとして蛍光ランプ内の水銀蒸気とガラス管に含まれるナトリウムが化学反応を起こし、透光性を有しないアマルガムを形成することが挙げられる。
そこで、この問題点を解消するために、例えば、透光性封止管の内面に蛍光体粉末からなる保護膜を形成し、この保護膜の上に、紫外線を可視光線に変換する蛍光体被膜を形成したもの(特許文献1)、透光性封止管の内面にアルミナ、イットリアの少なくとも1種からなる酸化物粒子を主体としてなる保護膜を形成し、この保護膜の上に蛍光体粒子からなる蛍光体層を形成したもの(特許文献2)等が提案されている。
【特許文献1】特開平9−153345号公報
【特許文献2】特開2000−223075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の冷陰極蛍光ランプでは、蛍光体層を構成する蛍光体粒子の平均粒径が小さいと、蛍光体粒子の発光効率が低下するので、適切な粒子径の蛍光体を用いることが好ましい。しかしながら、特に蛍光体粒子を含む塗料を湿式塗布法により塗布して蛍光体層を形成する場合、適切な粒径の蛍光体粒子を使用したとしても蛍光体粒子を分散した塗料の二次粒子径(凝集体)が大きい場合には、蛍光体層の膜厚のばらつきが大きく、厚みの均一な膜を作製するのが難しいという問題点があった。さらに、得られた蛍光体層に空孔やマイクロクラックが生じ易く、その結果、蛍光体層が不均一になり、輝度の低下や輝度ムラが生じ易くなるという問題点があった。
【0005】
特に、蛍光体層が反射層の機能を兼ね備えたランプの場合には、一定の光束を得るために蛍光体層の膜厚を厚くする必要が生じ、厚みの均一な膜を作製するのが難しく、結果的に必要以上の蛍光体を使用することとなり、製造コストの上昇を招くという新たな問題も生じる。
さらに、赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質を混合してなる発光層を備えた三波長蛍光ランプ等の場合には、凝集した各粒子が単独で、あるいは相互的に二次凝集体を形成した塗料を用いて蛍光体層を形成すると、色ムラが生じる原因となり、ランプの発色性に問題を生じてしまうこととなる。
そこで、蛍光体粒子の平均粒径を小さくすることにより蛍光体層の膜厚のばらつきを小さくすることも考えられるが、蛍光体粒子の平均粒径が小さくなればなるほど発光効率が低下するという新たな問題点が生じる。
【0006】
また、光束の低下という問題点を解消するために提案された蛍光ランプにおいても、蛍光体自体が、水銀蒸気あるいはキセノンに代表される希ガスの低電圧蒸気によって放射する紫外線により発光するものであるから、蛍光体が点灯時間とともに封入ガスより放射する紫外線でダメージを受けることは避けられず、やはり時間とともに光束が低下してしまうという問題点が生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、膜の均一性及び緻密性に優れ、膜厚が薄く、点灯時間とともに光束がより低下し難い蛍光体層を形成することが可能な蛍光体層形成用塗料及びそれを用いた蛍光体層並びに蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質のうち1種または2種以上からなる蛍光体の一次粒子の平均粒子径を0.5μm以上かつ10μm以下とし、さらに、その二次粒子の平均粒子径を1.0μm以上かつ15μm以下とすれば、膜の均一性及び緻密性の向上、及び膜厚の薄厚化が可能であり、しかも、長時間点灯しても光束の低下が極めて小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の蛍光体層形成用塗料は、赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質のうち1種または2種以上からなる蛍光体を含有し、前記蛍光体の一次粒子の平均粒子径は0.5μm以上かつ10μm以下であり、その二次粒子の平均粒子径は1.0μm以上かつ15μm以下であることを特徴とする。
【0010】
前記蛍光体は、表面処理物質により表面処理されてなることが好ましい。
前記表面処理物質は、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、亜鉛、ハフニウム、ニオブ、ケイ素、バナジウムの群から選択される1種または2種以上を含む無機化合物であることが好ましい。
前記表面処理物質を蛍光体微粒子としてもよい。
前記表面処理物質の一次粒子の平均粒子径は0.01μm以上かつ1.0μm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の蛍光体層は、本発明の蛍光体層形成用塗料を用いて形成してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の蛍光ランプは、本発明の蛍光体層を透光性封止管の内部に形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蛍光体層形成用塗料によれば、赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質のうち1種または2種以上からなる蛍光体を含有し、前記蛍光体の一次粒子の平均粒子径を0.5μm以上かつ10μm以下とし、その二次粒子の平均粒子径を1.0μm以上かつ15μm以下としたので、この蛍光体層形成用塗料を用いて得られた蛍光体層の均一性及び緻密性を向上させることができ、膜厚をさらに薄くすることができる。その結果、輝度ムラが小さくなり、さらに表面処理物質にて蛍光体表面を処理することにより長時間点灯した場合においても光束の低下を抑制することができ、蛍光ランプの寿命を向上させることができる。
【0014】
本発明の蛍光ランプによれば、本発明の蛍光体層を透光性封止管の内部に形成したので、蛍光体層の均一性及び緻密性を向上させることができ、膜厚をさらに薄くすることができ、また、表面処理物質にて蛍光体表面を処理することにより長時間点灯した場合においても光束の低下を抑制することができる。
また、この蛍光体層は、塗布法により容易に形成可能であるから、製造コストの低減を図ることができる。
したがって、寿命特性に優れ、製造コストの低減を図ることができる蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の蛍光体層形成用塗料及びそれを用いた蛍光体層並びに蛍光ランプを実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
「蛍光体層形成用塗料」
本発明の蛍光体層形成用塗料は、赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質のうち1種または2種以上からなる蛍光体を含有し、この蛍光体の一次粒子の平均粒子径を1.0μm以上かつ20μm以下とし、その二次粒子の平均粒子径を2.0μm以上かつ15μm以下とした塗料である。
【0017】
この赤色系蛍光体物質としては、例えば、Y:Eu、Y(PV)O:Eu、YVO:Eu、YS:Eu、(Y,Gd)BO:Eu等が挙げられる。
また、緑色系蛍光体物質としては、例えば、(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017、LaPO:Ce,Tb、ZnSiO:Mn、ZnS:Cu,Al、CeMgAi1119:Tb、GdMgB10:Ce,Tb等が挙げられる。
また、青色系蛍光体物質としては、例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg)(POCl:Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al10、Sr10(POCl:Eu、ZnS:Ag,Al、BaMgAl1017:Eu等が挙げられる。
これら赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質それぞれの含有率は、目的とする蛍光ランプの発光特性に合わせて、適宜設定すればよい。
【0018】
この蛍光体の一次粒子の平均粒子径は0.5μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは1.0μm以上かつ10μm以下である。
また、この蛍光体を用いて作製された塗料の二次粒子の平均粒子径は1.0μm以上かつ15μm以下が好ましく、より好ましくは1.0μm以上かつ10μm以下である。
【0019】
ここで、蛍光体の一次粒子及び二次粒子それぞれの平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、一次粒子及び二次粒子の平均粒子径が上記の範囲をそれぞれ越えると、この塗料を用いて形成された蛍光体層自体に空孔やマイクロクラック等が生じ易くなり、この蛍光体層を紫外線が透過してしまい、発光効率が低下してしまうからである。また、この蛍光体層の表面の凹凸も大きくなることから、膜厚にムラが生じ易くなり、その結果、輝度ムラが生じる虞がある。さらに、蛍光体の粒子自体が大きくなり過ぎると、塗料中に含まれる蛍光体粒子の沈降が起こり易くなり、その結果、発光色にバラツキが生じ、色ムラの原因となる。
一方、一次粒子及び二次粒子の平均粒子径が上記の範囲を下回ると、この塗料を用いて形成された蛍光体層の発光効率が低くなってしまい、所定の輝度が得られ難くなるからである。
【0020】
この蛍光体は、紫外線に起因するダメージを低減するために、表面処理物質により表面処理されていることが好ましい。
この表面処理物質は、紫外線を程良く吸収または反射することにより、この紫外線に起因する蛍光体のダメージを低減し、しかも蛍光体の発光に著しい影響を与えないものである必要があり、例えば、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、亜鉛、ハフニウム、ニオブ、ケイ素、バナジウムの群から選択される1種または2種以上を含む無機化合物、あるいは蛍光体微粒子が好適である。
【0021】
例えば、無機化合物としては、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、二酸化ケイ素、酸化バナジウム等が挙げられる。
また、蛍光体微粒子としては、ハロリン酸カルシウム等が挙げられる。
この表面処理物質の中でも、特に、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化セリウム等は、蛍光体の紫外線によるダメージが小さく、蛍光体の発光に著しい影響を与えない点で優れている。
【0022】
この表面処理物質の一次粒子の平均粒子径は、0.01μm以上かつ1.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.05μm以上かつ0.5μm以下である。
ここで、表面処理物質の一次粒子の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、一次粒子の平均粒子径が1.0μmを越えると、この表面処理物質が蛍光体から発せられた可視光を遮断してしまい、蛍光体自体の輝度が低下してしまうからである。また、蛍光体層中に占める(発光に寄与しない)表面処理物質の体積比率が高くなり、輝度ムラや輝度劣化が生じる虞がある。
【0023】
一方、一次粒子の平均粒子径が0.01μmを下回ると、紫外線を吸収または反射する効果が小さく、蛍光体に対するダメージ低減効果が低下してしまうからである。そこで、このダメージ低減効果を一定以上のレベルに保持しようとすると、この表面処理物質を多量に用いる必要が生じ、その結果、蛍光体自体の発色性に影響を与えてしまう可能性が生じる。
【0024】
この表面処理物質は、蛍光体に対して0.1重量%以上かつ30重量%以下添加することが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上かつ20重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上かつ10重量%以下である。
添加量が少なすぎると、蛍光体へのダメージ低減効果が低下してしまい、また、添加量が多すぎると、表面処理物質により蛍光体が被覆されてしまい、蛍光体自体の発光効率が低下するからである。
【0025】
この蛍光体層形成用塗料に用いられる溶媒は、基本的には、水および/または有機溶媒であるが、その他、高分子モノマーやオリゴマーの単体、もしくはこれらの混合物等の有機高分子も好適に用いられる。
この塗料には、用途や仕様に応じて上記の他、樹脂等の有機高分子、硼珪酸亜鉛ガラス等の低融点ガラス、分散剤等を含有していてもよい。
【0026】
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の1種または2種以上を用いることができ、例えば、水、アルコール類、エステル類等が挙げられ、特に、水、2−プロパノール、酢酸−n−ブチル等が好適である。
【0027】
「蛍光体層」
本発明の蛍光体層は、本発明の蛍光体層形成用塗料を用いて形成されたもので、透光性封止管の内部の所定位置に、本発明の蛍光体層形成用塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理することにより得ることができる。
透光性封止管としては、冷陰極蛍光ランプの仕様に適合可能なガラス管が好適である。
【0028】
塗布方法としては、平面バックライトでも使用できることから、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、メニスカスコート法、吸上げ塗工法、フローコート法等、通常のウエットコート法を用いることができる。特に、蛍光ランプのようにガラス管の内面に塗膜を形成する場合、吸上げ塗工法、フローコート法等が好適に用いられる。
なお、塗布に際しては、形成された後の塗布膜の膜厚が5μm〜30μm、特に好ましくは10μm〜20μmとなるような塗布量とすることが好ましい。
【0029】
次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理する。
乾燥温度は、塗料に含まれる溶媒が充分に散逸する温度であればよく、例えば、常温〜150℃である。
この乾燥工程では、塗布膜が充分乾燥すればよく、加熱だけの乾燥でもよく、空気を吹き付けてもよい。具体的には、常温のエアブローでも、熱風を吹き付けてもよい。
熱処理は、300℃〜1000℃の範囲の温度にて、蛍光ランプに不具合が生じない範囲で所定時間行う。
このようにして本発明の蛍光体層を得ることができる。
【0030】
「蛍光ランプ」
本発明の蛍光体層を透光性封止管の内部に形成することで、蛍光体層の均一性及び緻密性が向上し、膜厚がさらに薄くなり、長時間点灯した場合においても光束の低下が極めて小さい冷陰極型の蛍光ランプを得ることが可能である。
図1は、本発明の一実施形態の冷陰極型の蛍光ランプを示す縦断面図、図2は同横断面図であり、図において、1は両端が封止されたガラス管からなる透光性封止管、2は透光性封止管1の内壁全体(内面)に形成された電子放射機能を有する保護膜、3は本発明の蛍光体層、4は透光性封止管1内の両端部側にそれぞれ設けられた電極、5は電極4に電気的に接続されたリード線である。
【0031】
また、Gは透光性封止管1内に封入された封入ガスであり、この封入ガスGは、水銀、及びアルゴン等の希ガスや窒素等の不活性ガスにより構成されている。
また、保護膜2は、電極4、4間に高周波高電圧を印加することにより電子放射性物質から電子を放出する機能と、透光性封止管1に含まれている物質とガスGに含まれる水銀とが反応してアマルガムを生成するのを防止する機能とを兼ね備えている膜である。
【0032】
この蛍光ランプでは、透光性封止管1の内壁全体に電子放射機能を有する保護膜2を形成し、この保護膜2上に本発明の蛍光体層3を形成したものであるから、この蛍光体層3の均一性及び緻密性が向上し、膜厚も従来に比べてさらに薄くなっている。
【0033】
この蛍光ランプによれば、蛍光体層3の均一性及び緻密性を向上させることができ、膜厚をさらに薄くすることができ、その結果、長時間点灯した場合においても光束の低下を抑制することができる。
この蛍光体層3は、塗布法により容易に形成可能であるから、製造コストの低減を容易に図ることができる。
したがって、寿命特性に優れ、製造コストの低減を図ることができる蛍光ランプを提供することができる。
【0034】
なお、この蛍光ランプでは、透光性封止管1の内壁全体に電子放射機能を有する保護膜2を形成し、この電子放射機能を有する保護膜2上に蛍光体層3を形成した構成としたが、この蛍光体層3上にさらに電子放射機能を有する保護膜2を成膜した3層構造としてもよく、また、透光性封止管1の内壁全体に蛍光体層3を成膜し、この蛍光体層3上に電子放射機能を有する保護膜2を成膜した構成としてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
「実施例1」
(蛍光体層形成用塗料の調製)
赤色系蛍光体粉末、緑色系蛍光体粉末及び青色系蛍光体粉末それぞれの所定量を混合し、この混合した蛍光体30重量部を、分散剤を含む酢酸ブチル100重量部中に超音波分散機を用いて十分に分散させ、蛍光体層形成用塗料Aを作製した。この塗料A中の二次粒子の平均粒子径は8.5μmであった。
【0037】
(保護膜形成用塗料の調製)
イットリア(Y)粉末と分散剤を含む2−プロパノールとを混合し、イットリア(Y)を10重量%含む保護膜形成用塗料Bを作製した。
【0038】
(蛍光ランプの作製)
蛍光ランプ用のガラス管を用意し、このガラス管の内面にフローコート法を用いて保護膜形成用塗料Bを膜厚が約1.0μmとなるように塗布し、この塗布膜を、大気中、90℃にて10分間、エアブローしながら乾燥を行った。
次いで、この塗布膜上にフローコート法を用いて蛍光体層形成用塗料Aを膜厚が約15μmとなるように塗布し、次いで、800℃にて30分間、熱処理を行った。
その後、このガラス管に電極やリード線を取り付けて封止し、実施例1の蛍光ランプを作製した。
【0039】
「実施例2」
(表面処理用塗料の調製)
イットリア(Y)粉末を分散剤を含む酢酸ブチル中に超音波分散機を用いて十分に分散させ、イットリア(Y)を10重量%含む表面処理用塗料Cを作製した。
(表面処理蛍光体塗料の調製)
実施例1の蛍光体層形成用塗料A100重量部に対して、表面処理用塗料Cを9重量部添加し、蛍光体に対して表面処理物質が3重量部添加されているように調製した。次いで、この塗料をゆっくりと撹拌して蛍光体の表面を表面処理物質により処理し、表面処理蛍光体塗料Dを作製した。
【0040】
(蛍光ランプの作製)
蛍光ランプ用のガラス管を用意し、このガラス管の内面にフローコート法を用いて保護膜形成用塗料Bを膜厚が約1.0μmとなるように塗布し、この塗布膜を、大気中、90℃にて10分間、エアブローしながら乾燥を行った。
次いで、この塗布膜上にフローコート法を用いて表面処理蛍光体塗料Dを膜厚が約15μmとなるように塗布し、次いで、800℃にて30分間、熱処理を行った。
その後、このガラス管に電極やリード線を取り付けて封止し、実施例2の蛍光ランプを作製した。
【0041】
「比較例」
(蛍光体層形成用塗料の調整)
赤色系蛍光体粉末、緑色系蛍光体粉末及び青色系蛍光体粉末それぞれの所定量を混合し、この混合した蛍光体30重量部を、分散剤を含む酢酸ブチル溶液100重量部中に超音波分散機を用いて十分に分散させ、蛍光体層形成用塗料Eを作製した。この塗料E中の二次粒子の平均粒子径は19μmであった。
【0042】
(蛍光ランプの作製)
蛍光ランプ用のガラス管を用意し、このガラス管の内面にフローコート法を用いて実施例1の保護膜形成用塗料Bを膜厚が約1.0μmとなるように塗布し、この塗布膜を、大気中、90℃にて10分間、エアブローしながら乾燥を行った。
次いで、この塗布膜上にフローコート法を用いて蛍光体層形成用塗料Eを膜厚が約15μmとなるように塗布し、次いで、800℃にて30分間、熱処理を行った。
その後、このガラス管に電極やリード線を取り付けて封止し、比較例の蛍光ランプを作製した。
【0043】
「蛍光ランプの評価」
実施例1、2及び比較例それぞれの蛍光ランプについて、色度バラツキ、初期の明るさ、3000時間連続点灯後の光束維持率の評価を行った。
(1)色度バラツキ
20本の蛍光ランプについて、色度(x、y)を測定し、標準偏差σを求め、下記の2段階で評価を行った。
○:σ<0.003
×:σ≧0.003
(2)初期の明るさ
20本の蛍光ランプについて、初期の明るさ(全光束)を測定した。ここでは、初期の明るさ(全光束)の測定値の平均値を、比較例の蛍光ランプ20本の明るさ(全光束)の平均値を100としたときの数値に置き換え、この数値を下記の3段階で評価した。
○:103以上
△:97以上かつ103未満
×:97未満
【0044】
(3)光束維持率
20本の蛍光ランプについて、3000時間連続点灯した後の明るさ(全光束)を測定し、光束維持率を求めた。ここでは、3000時間連続点灯した後の明るさ(全光束)の測定値の平均値を、比較例の蛍光ランプ20本の明るさ(全光束)の平均値と比較して百分率の数値で表し、この数値を下記の3段階で評価した。
○:90%以上
△:70%以上かつ90%未満
×:70%未満
これらの評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
これらの評価結果によれば、実施例1、2では、色変化、初期の明るさ、輝度維持率共に優れていることが分かった。
一方、比較例では、色変化が生じているために白色光が得られず、輝度維持率も低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す横断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 透光性封止管
2 電子放射機能を有する保護膜
3 蛍光体層
4 電極
5 リード線
G 封入ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色系蛍光体物質、緑色系蛍光体物質及び青色系蛍光体物質のうち1種または2種以上からなる蛍光体を含有し、
前記蛍光体の一次粒子の平均粒子径は0.5μm以上かつ10μm以下であり、その二次粒子の平均粒子径は1.0μm以上かつ15μm以下であることを特徴とする蛍光体層形成用塗料。
【請求項2】
前記蛍光体は、表面処理物質により表面処理されてなることを特徴とする請求項1記載の蛍光体層形成用塗料。
【請求項3】
前記表面処理物質は、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、亜鉛、ハフニウム、ニオブ、ケイ素、バナジウムの群から選択される1種または2種以上を含む無機化合物であることを特徴とする請求項2記載の蛍光体層形成用塗料。
【請求項4】
前記表面処理物質は蛍光体微粒子であることを特徴とする請求項2記載の蛍光体層形成用塗料。
【請求項5】
前記表面処理物質の一次粒子の平均粒子径は0.01μm以上かつ1.0μm以下であることを特徴とする請求項2、3または4記載の蛍光体層形成用塗料。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の蛍光体層形成用塗料を用いて形成してなることを特徴とする蛍光体層。
【請求項7】
請求項6記載の蛍光体層を透光性封止管の内部に形成してなることを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−59943(P2008−59943A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236610(P2006−236610)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】