蛍光反応検出装置
【課題】試料中における微生物又はウィルスを、高い検出精度で、安定して検出することができる蛍光反応検出装置を提供する。
【解決手段】蛍光反応検出装置1は、光源2、励起フィルタ、ミラー43、カメラ4、コンピュータ5を備えている。励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光Xを、光源2からミラー43へと同時に透過させる。カメラ4は、励起光Xを照射した試料8の表面をデジタル画像として撮影する。コンピュータ5は、デジタル画像を解析する画像解析部52を構築してなる。画像解析部52は、複数種類の励起光Xを同時に照射したときに、試料8中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応を検出する。
【解決手段】蛍光反応検出装置1は、光源2、励起フィルタ、ミラー43、カメラ4、コンピュータ5を備えている。励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光Xを、光源2からミラー43へと同時に透過させる。カメラ4は、励起光Xを照射した試料8の表面をデジタル画像として撮影する。コンピュータ5は、デジタル画像を解析する画像解析部52を構築してなる。画像解析部52は、複数種類の励起光Xを同時に照射したときに、試料8中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中における特定の微生物の有無を検出する蛍光反応検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小学校等で実施されるぎょう虫検査においては、被験者が粘着テープを肛門に当てて採取した試料を、検査機関、医療機関等において検査している。この場合、ぎょう虫卵の有無を顕微鏡で確認することになり、検査員に熟練を要し、検査精度及び検査効率ともにあまり優れない。例えば、特許文献1には、ぎょう虫検査紙を顕微鏡によって観察する、ぎょう虫卵自動検査設備について開示されている。
【0003】
一方、例えば、特許文献2の異物の検出方法においては、寄生虫に可視光を照射して励起したときには、寄生虫が蛍光することが開示されている。そして、この性質を利用して、肉類に寄生する寄生虫の有無を検出している。また、特許文献2においては、デジタルカメラ、CCDカメラ等により、被写体が発する蛍光の画像を得て、二値化等の画像処理を行って、コンピュータによって異物の有無を判断させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3090492号公報
【特許文献2】特開2007−286041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2等の従来のぎょう虫卵等の検査においては、ぎょう虫卵を励起させる際に用いる励起光は、UV励起、B励起、G励起等の1種類のみである。
従って、コンピュータによる画像処理を利用してぎょう虫卵の有無を検出しようとした場合、検出精度が低く、安定した検出結果を得ることができていない。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、試料中における微生物又はウィルスを、高い検出精度で、安定して検出することができる蛍光反応検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料中における微生物又はウィルスの特定蛍光反応を検出する蛍光反応検出装置であって、
紫外線及び可視光線の波長を含む光を発する光源と、
該光源から発せられた光のうち励起光に相当する波長成分のみ透過させる励起フィルタと、
該励起フィルタを透過した励起光を反射させて、上記試料に対して斜めに照射させるミラーと、
上記試料の表面をデジタル画像として撮影するカメラと、
上記デジタル画像を解析する画像解析部を構築したコンピュータと、を備えており、
上記励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光を、上記光源から上記ミラーへと同時に通過させるよう構成してあり、
上記画像解析部は、上記複数種類の励起光を同時に照射したときに、上記試料中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応を検出することを特徴とする蛍光反応検出装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蛍光反応検出装置は、光源、励起フィルタ、ミラー、カメラ及びコンピュータを用いて、特定の微生物の有無を検出するものである。
本発明の励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる2種類の励起光を、光源からミラーへと同時に通過させる。そして、画像解析部によって、2種類の励起光を同時に照射したときに試料中に含まれる特定の微生物が蛍光する光の色相、輝度等を解析して、特定の微生物の有無を検出する。
これにより、1種類の励起光を特定の微生物に照射するだけでは得られなかった微生物の蛍光反応を得ることができ、特定の微生物の検出精度を格段に向上させることができる。
【0009】
それ故、本発明の蛍光反応検出装置によれば、試料中における微生物又はウィルスを、高い検出精度で、安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例にかかる、蛍光反応検出装置の構成を示す説明図。
【図2】実施例にかかる、蛍光反応検出装置を、上方から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例にかかる、第1励起フィルタを、図2におけるA−A線から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例にかかる、第2励起フィルタを、図2におけるB−B線から見た状態で示す説明図。
【図5】実施例にかかる、試料に対して斜めから励起光を照射する状態を模式的に示す説明図。
【図6】実施例にかかる、第1励起時デジタル画像を概略的に示す説明図。
【図7】実施例にかかる、第2励起時デジタル画像を概略的に示す説明図。
【図8】実施例にかかる、第1励起時デジタル画像と第2励起時デジタル画像とに対して照合演算を行った結果を可視化して、照合画像として概略的に示す説明図。
【図9】実施例にかかる、第1色空間データと第2色空間データとを、1ドットごとの画素単位において照合する状態を可視化して示す説明図。
【図10】実施例にかかる、第1色空間データと第2色空間データとを、1ドットごとの画素単位において照合して得た演算処理データが、規定範囲内にあるか否かの2値化処理を行った結果を可視化して示す説明図。
【図11】実施例にかかる、ヒット画素を囲んでなるヒット領域を示す説明図。
【図12】実施例にかかる、素デジタル画像について、ヒット領域に相当する画素領域をモニタに拡大表示した状態を概略的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の蛍光反応検出装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記微生物は、種々の寄生虫、寄生虫卵、細菌等とすることができる。寄生虫としては、ぎょう虫、回虫、鞭虫、吸虫、鉤虫、縮小条虫、広節裂頭条虫、東洋毛様線虫、無鉤条虫等がある。寄生虫卵は、それらの卵とすることができる。
また、細菌としては、球菌、桿菌、らせん菌等がある。
上記ウィルスとしては、核酸とタンパクとからなる種々のウィルスとすることができる。
【0012】
また、上記試料は、大便、血液等とすることができる。上記微生物等は、大便、血液等の中に存在するものとすることができる。血液中に潜む寄生虫としては、例えば、ウエステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫、住血胞子虫、マラリア病原虫、日本住血吸虫、糸状虫、フィラリア、広東住血線虫等がある。
【0013】
本発明において、上記励起フィルタは、回転可能な切換フィルタを互いに近接して並列に2つ配置してなり、該切換フィルタは、光を透過させない回転盤の周方向において、互いに異なる波長の光を透過させる複数種類のフィルタ部を並設してなり、上記2つの切替フィルタはいずれも、上記回転盤の回転中心の回りに回転することにより、上記複数種類のフィルタ部のうち、上記光源から発せられた光が通過する光通過位置に配置するフィルタ部を選択可能であり、上記励起フィルタによって、互いに異なる波長の励起光を、上記2つの切替フィルタにおいて上記光通過位置に配置したフィルタ部から上記ミラーへ同時に透過させることが好ましい(請求項2)。
この場合には、2つの切替フィルタを用いた簡単な構造の透過フィルタによって、2種類の波長の励起光を、ミラーを介して試料に照射することができる。
【0014】
また、上記複数種類のフィルタ部には、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、が含まれていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
この場合には、UV励起、B励起、G励起のうちのいずれか2つの励起光を、試料に対して同時に照射することができる。
複数種類のフィルタ部の中には、紫外線を吸収して可視光線を透過させるもの等を含めることもできる。
また、回転盤の周方向においてフィルタ部を形成する位置には、切欠又は穴のみを形成して、光源から発せられた光をそのまま透過させる部位を形成することもできる。
【0016】
また、上記2つの切替フィルタからなる上記励起フィルタは、上記光通過位置に直列に2つ配置し、一方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、を含むものとし、他方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光の強度を、複数段階に分けて減少させる複数種類の減光フィルタ部を含むものとすることもできる(請求項4)。
【0017】
この場合には、UV励起、B励起、G励起のうちのいずれか2つの励起光の強度を、減光フィルタ部によって調整して、試料に対して同時に照射することができる。
また、UV励起、B励起、G励起のうちのいずれか1つを、互いに強度が異なる2種類の励起光として、試料に対して同時に照射することもできる。
一方の励起フィルタを構成する2つの切替フィルタにおいて、複数種類のフィルタ部の中には、紫外線を吸収して可視光線を透過させるもの等を含めることもできる。また、一方の励起フィルタ及び他方の励起フィルタのいずれを構成する2つの切替フィルタにおいても、回転盤の周方向においてフィルタ部を形成する位置には、切欠又は穴のみを形成して、光源から発せられた光をそのまま透過させる部位を形成することもできる。
【0018】
上記カメラは、CMOSカメラと光学レンズとを組み合わせて、撮影する上記デジタル画像の1画素に対し、被写体としての上記試料における1(μm2)以下の表面を撮影可能であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、カメラを用いた蛍光反応検出装置において、顕微鏡で観察する場合と同様に、試料の表面を拡大して観察することができる。
【0019】
上記ミラーから上記試料に照射する励起光は、上記試料を保持する保持体の平面方向に対して、27〜33°の入射角度で照射させることが好ましい(請求項6)。
この場合には、励起光を照射したときの試料の表面をカメラによって撮影する際に、試料に含まれる微生物等が蛍光する状態に、影の部分を形成することができる。この影の部分は、微生物等が立体形状を有することにより、斜めから光が照射されることにより、微生物等に光が当たる一方側の幅が小さく、他方側の幅が大きく形成される。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明の蛍光反応検出装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の蛍光反応検出装置1は、図1に示すごとく、試料8中における微生物又はウィルスの特定蛍光反応81の有無を検出する。蛍光反応検出装置1は、以下の光源2、励起フィルタ3、ミラー43、カメラ4、コンピュータ5を備えている。
光源2は、紫外線及び可視光線の波長を含む光を発するよう構成してある。励起フィルタ3は、光源2から発せられた光のうち励起光Xに相当する波長成分のみ透過させるものである。ミラー43は、励起フィルタ3を透過した励起光Xを反射させて、試料8に対して斜めに照射させるよう配置してある。カメラ4は、試料8の表面をデジタル画像として撮影するよう構成してある。
【0021】
励起フィルタ3は、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光Xを、光源2からミラー43へと同時に透過させるよう構成してある。コンピュータ5は、デジタル画像を解析する画像解析部52を構築してなる。画像解析部52は、複数種類の励起光Xを同時に照射したときに、試料8中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応81を検出するよう構成してある。図1においては、試料8から発される蛍光を矢印X1で示す。
【0022】
以下に、本例の蛍光反応検出装置1につき、図1〜図12を参照して詳説する。
蛍光反応検出装置1は、試料8中における微生物又はウィルスに励起光Xを照射したときに発する特定の蛍光反応を検出するものである。
図1は、蛍光反応検出装置1の構成を概略的に示す図である。同図に示すごとく、本例の光源2は、紫外線及び可視光の波長の光を発する紫外線ランプ2によって構成されている。
【0023】
本例の励起フィルタ3は、透過する光の波長を切り替えるための第1励起フィルタ3Aと、透過する光の強度を切り替えるための第2励起フィルタ3Bとからなる。第1励起フィルタ3Aと第2励起フィルタ3Bとは、光源2から発せられた光が通過する光通過位置Eにおいて直列に配置してある。
第1励起フィルタ3Aと第2励起フィルタ3Bとは、いずれも回転可能な切替フィルタ3を互いに近接して並列に2つ配置してなる。
ここで、図2は、蛍光反応検出装置1を上方(カメラ4によって撮影を行う方向)から見た状態で示す図である。図3は、第1励起フィルタ3Aを正面(図2におけるA−A線矢視方向)から見た状態で示す図であり、図4は、第2励起フィルタ3Bを正面(図2におけるB−B線矢視方向)から見た状態で示す図である。
【0024】
図3に示すごとく、第1励起フィルタ3Aにおける2つの切替フィルタ3は、光を透過させない回転盤32の周方向において、互いに異なる波長の光を透過させる複数種類のフィルタ部33を並設してなる。
複数種類のフィルタ部33は、回転盤32の外周部において周方向に所定の間隔を空けて設けてある。本例の切替フィルタ3は、回転盤32に対して90°間隔でフィルタ部33を3箇所に形成してある。3つのフィルタ部33は、回転盤32に形成した切欠き321に対して、所定の波長の光のみ透過させるフィルタ部材を配設してなる。回転盤32の周方向においてフィルタ部33を形成する位置には、フィルタ部33と90°周方向に間隔を空けて切欠き321のみを形成し、光源2から発せられた光をそのまま通過させる通過部33Dが形成してある。
【0025】
図2に示すごとく、2つの切替フィルタ31はいずれも、回転盤32の回転中心Oの回りに回転することにより、複数種類のフィルタ部33のうち、光源2から発せられた光が通過する光通過位置Eに配置するフィルタ部33を選択可能である。また、切替フィルタ31を回転させることにより、光通過位置Eに通過部33Dを配置することもできる。
【0026】
第1励起フィルタ3Aにおいて、2つの切替フィルタ31の3つのフィルタ部33は、光源2から発せられた光からUV励起(320〜380nm)の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部33Aと、光源2から発せられた光からB励起(380〜495nm)の波長の光を透過させるB励起フィルタ部33Bと、光源2から発せられた光からG励起(495〜570nm)の波長の光を透過させるG励起フィルタ部33Cとからなる。2つの切替フィルタ31はいずれも、回転盤32に対して、UV励起フィルタ部33A、B励起フィルタ部33B、G励起フィルタ部33C、通過部33Dを形成してなる。
【0027】
こうして、2つの切替フィルタ31によって構成した第1励起フィルタ3Aによって、互いに異なる波長の励起光Xを同時にミラー43へ透過させることができる。なお、検査する者が目視によって試料8の特定部位を確認する際に、通過部33Dを光通過位置Eに配置して、光源2から発せられた光をミラー43へ通過させる。
【0028】
図4に示すごとく、第2励起フィルタ3Bにおける2つの切替フィルタ31は、光を透過させない回転盤32の周方向において、透過させる光の強度が互いに異なる(減光量を互いに異ならせた)複数種類の減光フィルタ部34を並設してなる。第2励起フィルタ3Bも、第1励起フィルタ3Aの場合と同様に、回転盤32に対して周方向に90°の間隔を空けて3箇所に減光フィルタ部34を設けてなる。3種類の減光フィルタ部34は、回転盤32に形成した切欠き321に対して、所定量の減光を行うフィルタ部材を配設してなる。回転盤32の周方向において減光フィルタ部34を形成する位置には、減光フィルタ部34と90°周方向に間隔を空けて切欠き321のみを形成し、光源2から発せられた光をそのまま通過させる通過部33Dが形成してある。
【0029】
本例の3種類の減光フィルタ部34は、光の減光量が75%のものと、光の減光量が50%のものと、光の減光量が25%のものとがある。また、第2励起フィルタ3Bにおける各切替フィルタ31には、減光フィルタ部34と90°間隔を空けて減光量が0%である通過部33Dが形成してある。
第2励起フィルタ3Bを用いることによって、光源2からミラー43へ照射する光の強度を、100%、75%、50%、25%と変化させることができる。
【0030】
例えば、波長が異なる2種類の励起光Xを同時に試料8に照射する際には、第1励起フィルタ3Aにおいて、光通過位置Eに配置するフィルタ部33を、一方の切替フィルタ31と他方の切替フィルタ31とで互いに異なるものにする。また、例えば、強度が異なる2種類の励起光Xを同時に試料8に照射する際には、第2励起フィルタ3Bにおいて、光通過位置Eに配置するフィルタ部34を、一方の切替フィルタ31と他方の切替フィルタ31とで互いに異なるものにする。
【0031】
図2〜図4に示すごとく、第1励起フィルタ3Aと第2励起フィルタ3Bとには、各切替フィルタ31において光通過位置Eに配置した各フィルタ部33及び各減光フィルタ部34の周辺から漏れる光を遮断する遮断部材35が配設してある。遮断部材35には、光を透過させる透過穴351が形成してあり、光源2から発せられた光は、第1励起フィルタ3A及び第2励起フィルタ3Bと透過穴351を透過して、ミラー43に照射される。
【0032】
図1に示すごとく、本例のカメラ4は、コンピュータ5によってデジタル処理可能なCMOSカメラ(デジタルカメラ)41に対して、所定の倍率の光学レンズ42を組み合わせて構成されている。カメラ4は、微生物又はウィルスの各検出対象に合わせて、適宜画素数のものを選択し、光学レンズ42の倍率とCMOSカメラ41のデジタルズームによる倍率とによって、1000〜10000倍にデジタル画像を拡大することができる。CMOSカメラ41には、2000万画素以上の分解能を有するものを用いることができる。カメラ4は、CMOSカメラ41と光学レンズ42とを組み合わせて、撮影するデジタル画像の1画素に対し、被写体としての試料8における1(μm2)以下の表面を撮影可能である。
【0033】
カメラ4は、CMOSカメラ41のレンズ部を下方に向けて、試料8の表面を上方から撮影する状態で配設してある。光源(紫外線ランプ)2は、カメラ4に対して垂直な水平方向に配設してあり、ミラー43は、カメラ4に対して垂直な方向であって光源2と対向する位置に配設してある。また、カメラ4のレンズ部の前(本例では光学レンズ42の前)には、紫外線を遮断してカメラ4を保護するためのフィルタ44が配置してある。
CMOSカメラ41は、倍率の異なる複数種類の光学レンズ42を取り替え可能であるとともに、上下にスライド可能である。
【0034】
ミラー43は、その反射面を試料8に向けて斜めに配置してなり、光源2から水平方向に発された光を、試料8に向けて斜めに反射する。ミラー43から試料8に照射する励起光Xは、試料8を保持する保持体7の平面方向に対して、27〜33°の入射角度θで照射させる。
図5は、試料8に対して斜めから励起光Xを照射する状態を模式的に示す図である。同図に示すごとく、励起光Xを保持体7の平面方向に対して、27〜33°の入射角度θで励起光Xを照射させることにより、試料8中に含まれ得る微生物等が発する特定蛍光反応81に、影Kの部分が適切に生じるようにすることができる。これにより、画像解析部52において、特定蛍光反応81の形状を検知し易くすることができる。同図においては、試料8中の微生物等を符号80で示す。
なお、影Kの部分は、微生物等が立体形状を有することにより、斜めから光が照射されることにより、微生物等に光が当たる一方側の幅が小さく、他方側の幅が大きく形成される。
【0035】
本例の蛍光反応検出装置1においては、2つの励起フィルタ3A,3Bを透過させて、波長を互いに異ならせた励起光Xを試料8に照射したときの2種類の励起時デジタル画像D1,D2をカメラ4によって撮影する。この2種類の励起時デジタル画像D1,D2は、励起光Xの波長を異ならせるとともに、励起光Xの強度又は照射時間(撮影時期)も互いに異ならせて撮影することができる。また、2種類の励起時デジタル画像D1,D2は、励起光Xの強度又は照射時間(撮影時期)のみ互いに異ならせて撮影することもできる。
そして、2種類の励起時デジタル画像D1,D2のうちの少なくとも一方は、波長と強度との少なくとも一方が互いにが異なる励起光Xを、2つの励起フィルタ3から試料8に対して同時に照射したときのデジタル画像とする。
【0036】
本例の画像解析部52は、2種類の励起時デジタル画像D1,D2について、それぞれ1つの画素単位ごとの色空間データを求め、第1励起時デジタル画像D1における各画素単位ごとの色空間データと、第2励起時デジタル画像D2における各画素単位ごとの色空間データとに対し、それぞれ同じ位置にある画素単位同士で照合演算して、各画素単位ごとに演算処理データを求める。そして、画像解析部52は、各画素単位ごとの演算処理データを、予め特定蛍光反応81について求めた演算処理データの規定範囲と照合して、試料8中における特定蛍光反応81の有無を検出する。
【0037】
図6には、第1励起時デジタル画像D1を概略的に示し、図7には、第2励起時デジタル画像D2を概略的に示す。また、図8には、第1励起時デジタル画像D1と第2励起時デジタル画像D2とに対して照合演算を行った結果を可視化して、照合画像D3として概略的に示す。
【0038】
励起光Xの波長は、UV励起、B励起又はG励起のいずれかの波長として、2種類の励起時デジタル画像D1,D2において互いに異ならせることができる。この場合、例えば、図6、図7に示すごとく、2種類の励起時デジタル画像D1,D2のいずれにもゴミ(検出対象以外の異物)による蛍光反応82が現れる一方、図7に示すごとく、第2励起時デジタル画像D2には微生物等による特定蛍光反応81が明確に現れた場合を想定する。このとき、図8に示すごとく、2種類の励起時デジタル画像D1,D2についての各画素単位ごとの色空間データを求めて照合演算を行ったときには、ゴミによる蛍光反応82の影響が打ち消されて、微生物等による特定蛍光反応81を明確に検出することができる。この場合は、微生物等が特に強く蛍光反応を示す励起光Xの波長がある場合に有効である。
【0039】
また、UV励起、B励起又はG励起のいずれかの波長の励起光Xを用いた場合には、励起光Xの強度を異ならせて撮影した2種類の励起時デジタル画像D1,D2を用いることもできる。この場合、例えば、図6、図7に示すごとく、ゴミ(検出対象以外の異物)は、弱い強度の励起光Xの照射又は短い時間の励起光Xの照射によっても蛍光反応82を明確に示す一方、図7に示すごとく、微生物等は、強い強度の励起光Xの照射又は長い時間の励起光Xの照射によってはじめて明確に特定蛍光反応81を示す場合を想定する。このとき、図8に示すごとく、2種類の励起時デジタル画像D1,D2についての各画素単位ごとの色空間データを求めて照合演算を行ったときには、ゴミによる蛍光反応82の影響が打ち消されて、微生物等による特定蛍光反応81を明確に検出することができる。この場合は、ゴミに比べて微生物等が蛍光反応を示す時期が遅い場合に有効である。
【0040】
本例の画像解析部52において求める色空間データは、色の三原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色相データを、所定数の階調における数値で示すものである。本例の色空間データは、カメラ4によって検出した特定の波長の光を、赤色、緑色、青色の各データに分解したものである。赤色、緑色、青色の各データには、それぞれ256階調が割り当てられ、各データ(各原色)は、0〜255の数値によって示される。
また、色空間データには、色の三原色を用いて表す輝度(明るさ)を含めることができる。この輝度Yは、a1〜a3を係数とし、Rを赤色、Gを緑色、Bを青色の各数値としたとき、Y=a1×R+a2×G+a3×Bから求めることができる。係数a1〜a3は、複数の波長の光をカメラ4によって撮影したときの複数のデジタル画像について、赤色、緑色、青色の各数値をY=(a1×X1+a2×X2+a3×X3)/3のX1〜X3にそれぞれ代入して求めることができる。
なお、微生物又はウィルスの検出対象によっては、色空間データは、輝度のデータのみとすることもできる。
【0041】
画像解析部52において、多数の画素によって示されるデジタル画像における同じ位置にある画素単位同士で行う照合演算は、以下の誤差演算とすることができる。
図9には、第1色空間データd1と第2色空間データd2とを、1ドットごとの画素単位において照合する状態を可視化して示す。同図に示すごとく、第1励起時デジタル画像D1についての第1色空間データd1における赤色、緑色、青色の0〜255で示される各数値をR1,G1,B1とし、第2励起時デジタル画像D2についての第2色空間データd2における赤色、緑色、青色の0〜255で示される各数値をR2,G2,B2とする。
誤差演算としては、|R1−R2|(R1−R2の絶対値),|G1−G2|(G1−G2の絶対値),|B1−B2|(B1−B2の絶対値)の少なくとも1つとして行うことができる。
【0042】
また、誤差演算は、第1励起時デジタル画像D1についての第1色空間データd1における輝度の数値をY1とし、第2励起時デジタル画像D2についての第2色空間データd2における輝度の数値をY2として、|Y1−Y2|として行うこともできる。また、算術演算は、Y1+Y2,Y1−Y2,Y1×Y2,Y1/Y2,Y2−Y1,Y2/Y1のいずれかとして行うこともできる。
【0043】
なお、これらの演算において、R1〜R3,G1〜G3,B1〜B3の各数値が、0未満となる場合は0とし、255超過となる場合には、255とする。また、割算で分母となる数値が0である場合は255とし、割算で分子となる数値が0である場合は0とする。
こうして、画像解析部52において照合演算を行って得られる演算処理データは、0〜255の範囲の数値によって表される。
【0044】
画像解析部52における判定基準である演算処理データの規定範囲は、検出対象とする特定の微生物等に対して、波長と強度との少なくともいずれかが互いに異なる励起光Xを照射したときの複数(2つ)の励起時デジタル画像を撮影し、この励起時デジタル画像中において特定蛍光反応81を映した画素について照合演算を行った結果として求めておく。
また、画像解析部52における判定基準である演算処理データの規定範囲は、検出対象とする特定の微生物等に対して励起光Xの照射を開始した時点からカメラ4によって撮影する時点までの時間を異ならせて撮影したときの複数(2つ)の励起時デジタル画像において、この励起時デジタル画像中において特定蛍光反応81を映した画素について照合演算を行った結果として求めておくこともできる。
【0045】
演算処理データの規定範囲は、特定の微生物等について特定蛍光反応81を実際に撮影したときの色相、輝度の色空間データに対して、適度の余裕を設けて設定することができる。この際、特定蛍光反応81の撮影を複数回行って、規定範囲の幅を決定することができる。
そして、実際に試料8に対して特定蛍光反応81の検査を行う際には、判定基準である演算処理データの規定範囲を決定する際に使用した励起光Xと同じ条件の励起光Xを試料8に照射する。また、励起光Xの波長又は強度を異ならせた場合には、設定基準時と検出時とで用いる励起光Xの種類を同じにする。
【0046】
図10には、第1色空間データd1と第2色空間データd2とを、1ドットごとの画素単位において照合して得た演算処理データが、規定範囲内にあるか否かの2値化処理を行った結果を可視化して示す。
本例の画像解析部52は、各画素単位ごとの演算処理データのうち、予め特定蛍光反応81について求めた演算処理データの規定範囲内にある画素単位を、ヒット画素Hとして求める。そして、ヒット画素Hが並んで形成される形状及び面積が、予め特定蛍光反応81について求めた形状及び面積の規定範囲内にある場合に、試料8中に微生物又はウィルスが存在すると検出する。ヒット画素Hは、各画素単位の演算処理データが、演算処理データの規定範囲内にある場合を1、演算処理データの規定範囲内にない場合を0として、2値化処理を行ったときの1である画素とする。
特定蛍光反応81についての形状及び面積の規定範囲は、検出対象とする特定の微生物等の形状及び面積を実測した値に、適度の余裕を設けて設定することができる。
【0047】
また、画像解析部52における各画素は、例えば誤差演算として、|R1−R2|,|G1−G2|,|B1−B2|を行った場合には、これらの値の全てが規定範囲内になったときに、ヒット画素Hとすることができる。また、これらの値の1つ又は2つが規定範囲内になったときに、ヒット画素Hとすることもできる。
【0048】
画像解析部52は、特定蛍光反応81が存在すると検出したヒット画素Hが並んで形成される形状を囲む大きさの画素領域を、ヒット領域Aとして特定する。
図8、図11には、ヒット画素Hを囲んでなるヒット領域Aを示す。
本例の画像解析部52においては、ヒット画素Hを抽出した2値化された演算処理データに対して、ヒット画素Hが並んで形成されたヒット画素形状の最大輪郭に合わせて、デジタル画像のX軸及びY軸に平行な辺を持つ矩形状によって囲む。そして、この矩形状によって囲まれた画素領域がヒット領域Aとして特定され、ヒット領域Aについて、ヒット画素形状が検出対象とする微生物等の特定蛍光反応81の形状と近似するか否かを判定する。
【0049】
画像解析部52においては、矩形状によって囲んだヒット画素形状の面積(ヒット画素Hの数)、重心位置等を検出することができる。また、ヒット画素形状が、微生物等についての特定蛍光反応81の形状及び面積の規定範囲内にある場合には、励起時デジタル画像中の全体におけるヒット画素形状の位置、数等を特定する。特定蛍光反応81の面積の規定範囲は、所定の面積以上であって所定の面積以下の所定の大きさの範囲を有している。ヒット画素形状が大き過ぎても小さ過ぎても、特定蛍光反応81の面積の規定範囲内には入らないことになる。
【0050】
また、画像解析部52は、上記ヒット画素形状を検出する以外にも、励起時デジタル画像を構成する全体の面積(画素数)のうち、ヒット画素Hが占める面積(画素数)の割合が所定の割合以上である場合に、試料8中に特定蛍光反応81があると判定することもできる。
本例の制御部51は、励起光Xを照射していないときの素デジタル画像D4をカメラ4によって撮影し、素デジタル画像D4においてヒット領域Aに相当する画素領域を、コンピュータ5に接続したモニタ6に拡大表示するよう構成してある。
図12には、素デジタル画像D4について、ヒット領域Aに相当する画素領域Bをモニタ6に拡大表示した状態を概略的に示す。本例においては、検査する者が、素デジタル画像D4において微生物等が存在すると検出した部分を実際に目視して確認することができる。
【0051】
また、画像解析部52においては、特定蛍光反応81についての形状及び面積の規定範囲を、複数種類の微生物等について予め設定しておくことができる。そして、画像解析部52は、ヒット画素形状が並んで形成される形状及び面積が、予め複数種類の微生物等についてそれぞれ求めた形状及び面積の規定範囲のうちのいずれに含まれるかを判定し、試料8中に存在する微生物等の種類を推定することができる。この場合には、微生物等の有無だけでなく、種類も検出することができる。
また、画像解析部52は、矩形状のヒット領域Aの面積(画素数)に対し、ヒット領域A内において所定の形状を有するヒット画素Hの面積(画素数)の割合によって、微生物等の種類を推定することもできる。
【0052】
本例の蛍光反応検出装置1において、励起フィルタ3は、波長及び強度の少なくとも一方が異なる2種類の励起光Xを、光源2からミラー43へと同時に通過させる。そして、画像解析部52によって、2種類の励起光Xを同時に照射したときに試料8中に含まれる特定の微生物が蛍光する光の色相、輝度等を解析して、特定の微生物の有無を検出する。
これにより、1種類の励起光Xを特定の微生物に照射するだけでは得られなかった微生物の蛍光反応81を得ることができ、特定の微生物の検出精度を格段に向上させることができる。
【0053】
また、図6、図7に示すごとく、試料8中には、特定蛍光反応81以外の蛍光反応82を示すゴミ(検出対象外の異物)も含まれており、このゴミも所定の蛍光反応82を発することになる。ただし、特定蛍光反応81と、ゴミによる蛍光反応82とは、励起光Xの波長、強度等の条件によって、蛍光の性質が異なる。そこで、2種類の励起時デジタル画像D1,D2を撮影した際に、例えば、ゴミによる蛍光反応82は、2種類の励起時デジタル画像D1,D2に撮影される一方、特定蛍光反応81は、第2励起時デジタル画像D2に明確に撮影される場合が想定される。この場合には、図8に示すごとく、上記照合演算をすることにより、ゴミによる蛍光反応82による影響を取り除くことができ、特定蛍光反応81を際立たせて検出することができる。そして、微生物等による特定蛍光反応81を、他のゴミ(検出対象外の異物)による蛍光反応82と明確に区別することができる。
それ故、本例の蛍光反応検出装置1によれば、試料8中における特定の微生物等を、高い検出精度で、安定して検出することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 蛍光反応検出装置
2 光源
3 フィルタ
3A,3B 励起フィルタ
31 切替フィルタ
32 回転盤
33A,33B,33C フィルタ部
34A,34B,34C 減光フィルタ部
4 カメラ
43 ミラー
5 コンピュータ
51 制御部
52 画像解析部
6 モニタ
8 試料
81 特定蛍光反応
X 励起光
D1,D2 励起時デジタル画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中における特定の微生物の有無を検出する蛍光反応検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小学校等で実施されるぎょう虫検査においては、被験者が粘着テープを肛門に当てて採取した試料を、検査機関、医療機関等において検査している。この場合、ぎょう虫卵の有無を顕微鏡で確認することになり、検査員に熟練を要し、検査精度及び検査効率ともにあまり優れない。例えば、特許文献1には、ぎょう虫検査紙を顕微鏡によって観察する、ぎょう虫卵自動検査設備について開示されている。
【0003】
一方、例えば、特許文献2の異物の検出方法においては、寄生虫に可視光を照射して励起したときには、寄生虫が蛍光することが開示されている。そして、この性質を利用して、肉類に寄生する寄生虫の有無を検出している。また、特許文献2においては、デジタルカメラ、CCDカメラ等により、被写体が発する蛍光の画像を得て、二値化等の画像処理を行って、コンピュータによって異物の有無を判断させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3090492号公報
【特許文献2】特開2007−286041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2等の従来のぎょう虫卵等の検査においては、ぎょう虫卵を励起させる際に用いる励起光は、UV励起、B励起、G励起等の1種類のみである。
従って、コンピュータによる画像処理を利用してぎょう虫卵の有無を検出しようとした場合、検出精度が低く、安定した検出結果を得ることができていない。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、試料中における微生物又はウィルスを、高い検出精度で、安定して検出することができる蛍光反応検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料中における微生物又はウィルスの特定蛍光反応を検出する蛍光反応検出装置であって、
紫外線及び可視光線の波長を含む光を発する光源と、
該光源から発せられた光のうち励起光に相当する波長成分のみ透過させる励起フィルタと、
該励起フィルタを透過した励起光を反射させて、上記試料に対して斜めに照射させるミラーと、
上記試料の表面をデジタル画像として撮影するカメラと、
上記デジタル画像を解析する画像解析部を構築したコンピュータと、を備えており、
上記励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光を、上記光源から上記ミラーへと同時に通過させるよう構成してあり、
上記画像解析部は、上記複数種類の励起光を同時に照射したときに、上記試料中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応を検出することを特徴とする蛍光反応検出装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蛍光反応検出装置は、光源、励起フィルタ、ミラー、カメラ及びコンピュータを用いて、特定の微生物の有無を検出するものである。
本発明の励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる2種類の励起光を、光源からミラーへと同時に通過させる。そして、画像解析部によって、2種類の励起光を同時に照射したときに試料中に含まれる特定の微生物が蛍光する光の色相、輝度等を解析して、特定の微生物の有無を検出する。
これにより、1種類の励起光を特定の微生物に照射するだけでは得られなかった微生物の蛍光反応を得ることができ、特定の微生物の検出精度を格段に向上させることができる。
【0009】
それ故、本発明の蛍光反応検出装置によれば、試料中における微生物又はウィルスを、高い検出精度で、安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例にかかる、蛍光反応検出装置の構成を示す説明図。
【図2】実施例にかかる、蛍光反応検出装置を、上方から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例にかかる、第1励起フィルタを、図2におけるA−A線から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例にかかる、第2励起フィルタを、図2におけるB−B線から見た状態で示す説明図。
【図5】実施例にかかる、試料に対して斜めから励起光を照射する状態を模式的に示す説明図。
【図6】実施例にかかる、第1励起時デジタル画像を概略的に示す説明図。
【図7】実施例にかかる、第2励起時デジタル画像を概略的に示す説明図。
【図8】実施例にかかる、第1励起時デジタル画像と第2励起時デジタル画像とに対して照合演算を行った結果を可視化して、照合画像として概略的に示す説明図。
【図9】実施例にかかる、第1色空間データと第2色空間データとを、1ドットごとの画素単位において照合する状態を可視化して示す説明図。
【図10】実施例にかかる、第1色空間データと第2色空間データとを、1ドットごとの画素単位において照合して得た演算処理データが、規定範囲内にあるか否かの2値化処理を行った結果を可視化して示す説明図。
【図11】実施例にかかる、ヒット画素を囲んでなるヒット領域を示す説明図。
【図12】実施例にかかる、素デジタル画像について、ヒット領域に相当する画素領域をモニタに拡大表示した状態を概略的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の蛍光反応検出装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記微生物は、種々の寄生虫、寄生虫卵、細菌等とすることができる。寄生虫としては、ぎょう虫、回虫、鞭虫、吸虫、鉤虫、縮小条虫、広節裂頭条虫、東洋毛様線虫、無鉤条虫等がある。寄生虫卵は、それらの卵とすることができる。
また、細菌としては、球菌、桿菌、らせん菌等がある。
上記ウィルスとしては、核酸とタンパクとからなる種々のウィルスとすることができる。
【0012】
また、上記試料は、大便、血液等とすることができる。上記微生物等は、大便、血液等の中に存在するものとすることができる。血液中に潜む寄生虫としては、例えば、ウエステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫、住血胞子虫、マラリア病原虫、日本住血吸虫、糸状虫、フィラリア、広東住血線虫等がある。
【0013】
本発明において、上記励起フィルタは、回転可能な切換フィルタを互いに近接して並列に2つ配置してなり、該切換フィルタは、光を透過させない回転盤の周方向において、互いに異なる波長の光を透過させる複数種類のフィルタ部を並設してなり、上記2つの切替フィルタはいずれも、上記回転盤の回転中心の回りに回転することにより、上記複数種類のフィルタ部のうち、上記光源から発せられた光が通過する光通過位置に配置するフィルタ部を選択可能であり、上記励起フィルタによって、互いに異なる波長の励起光を、上記2つの切替フィルタにおいて上記光通過位置に配置したフィルタ部から上記ミラーへ同時に透過させることが好ましい(請求項2)。
この場合には、2つの切替フィルタを用いた簡単な構造の透過フィルタによって、2種類の波長の励起光を、ミラーを介して試料に照射することができる。
【0014】
また、上記複数種類のフィルタ部には、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、が含まれていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
この場合には、UV励起、B励起、G励起のうちのいずれか2つの励起光を、試料に対して同時に照射することができる。
複数種類のフィルタ部の中には、紫外線を吸収して可視光線を透過させるもの等を含めることもできる。
また、回転盤の周方向においてフィルタ部を形成する位置には、切欠又は穴のみを形成して、光源から発せられた光をそのまま透過させる部位を形成することもできる。
【0016】
また、上記2つの切替フィルタからなる上記励起フィルタは、上記光通過位置に直列に2つ配置し、一方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、を含むものとし、他方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光の強度を、複数段階に分けて減少させる複数種類の減光フィルタ部を含むものとすることもできる(請求項4)。
【0017】
この場合には、UV励起、B励起、G励起のうちのいずれか2つの励起光の強度を、減光フィルタ部によって調整して、試料に対して同時に照射することができる。
また、UV励起、B励起、G励起のうちのいずれか1つを、互いに強度が異なる2種類の励起光として、試料に対して同時に照射することもできる。
一方の励起フィルタを構成する2つの切替フィルタにおいて、複数種類のフィルタ部の中には、紫外線を吸収して可視光線を透過させるもの等を含めることもできる。また、一方の励起フィルタ及び他方の励起フィルタのいずれを構成する2つの切替フィルタにおいても、回転盤の周方向においてフィルタ部を形成する位置には、切欠又は穴のみを形成して、光源から発せられた光をそのまま透過させる部位を形成することもできる。
【0018】
上記カメラは、CMOSカメラと光学レンズとを組み合わせて、撮影する上記デジタル画像の1画素に対し、被写体としての上記試料における1(μm2)以下の表面を撮影可能であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、カメラを用いた蛍光反応検出装置において、顕微鏡で観察する場合と同様に、試料の表面を拡大して観察することができる。
【0019】
上記ミラーから上記試料に照射する励起光は、上記試料を保持する保持体の平面方向に対して、27〜33°の入射角度で照射させることが好ましい(請求項6)。
この場合には、励起光を照射したときの試料の表面をカメラによって撮影する際に、試料に含まれる微生物等が蛍光する状態に、影の部分を形成することができる。この影の部分は、微生物等が立体形状を有することにより、斜めから光が照射されることにより、微生物等に光が当たる一方側の幅が小さく、他方側の幅が大きく形成される。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明の蛍光反応検出装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の蛍光反応検出装置1は、図1に示すごとく、試料8中における微生物又はウィルスの特定蛍光反応81の有無を検出する。蛍光反応検出装置1は、以下の光源2、励起フィルタ3、ミラー43、カメラ4、コンピュータ5を備えている。
光源2は、紫外線及び可視光線の波長を含む光を発するよう構成してある。励起フィルタ3は、光源2から発せられた光のうち励起光Xに相当する波長成分のみ透過させるものである。ミラー43は、励起フィルタ3を透過した励起光Xを反射させて、試料8に対して斜めに照射させるよう配置してある。カメラ4は、試料8の表面をデジタル画像として撮影するよう構成してある。
【0021】
励起フィルタ3は、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光Xを、光源2からミラー43へと同時に透過させるよう構成してある。コンピュータ5は、デジタル画像を解析する画像解析部52を構築してなる。画像解析部52は、複数種類の励起光Xを同時に照射したときに、試料8中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応81を検出するよう構成してある。図1においては、試料8から発される蛍光を矢印X1で示す。
【0022】
以下に、本例の蛍光反応検出装置1につき、図1〜図12を参照して詳説する。
蛍光反応検出装置1は、試料8中における微生物又はウィルスに励起光Xを照射したときに発する特定の蛍光反応を検出するものである。
図1は、蛍光反応検出装置1の構成を概略的に示す図である。同図に示すごとく、本例の光源2は、紫外線及び可視光の波長の光を発する紫外線ランプ2によって構成されている。
【0023】
本例の励起フィルタ3は、透過する光の波長を切り替えるための第1励起フィルタ3Aと、透過する光の強度を切り替えるための第2励起フィルタ3Bとからなる。第1励起フィルタ3Aと第2励起フィルタ3Bとは、光源2から発せられた光が通過する光通過位置Eにおいて直列に配置してある。
第1励起フィルタ3Aと第2励起フィルタ3Bとは、いずれも回転可能な切替フィルタ3を互いに近接して並列に2つ配置してなる。
ここで、図2は、蛍光反応検出装置1を上方(カメラ4によって撮影を行う方向)から見た状態で示す図である。図3は、第1励起フィルタ3Aを正面(図2におけるA−A線矢視方向)から見た状態で示す図であり、図4は、第2励起フィルタ3Bを正面(図2におけるB−B線矢視方向)から見た状態で示す図である。
【0024】
図3に示すごとく、第1励起フィルタ3Aにおける2つの切替フィルタ3は、光を透過させない回転盤32の周方向において、互いに異なる波長の光を透過させる複数種類のフィルタ部33を並設してなる。
複数種類のフィルタ部33は、回転盤32の外周部において周方向に所定の間隔を空けて設けてある。本例の切替フィルタ3は、回転盤32に対して90°間隔でフィルタ部33を3箇所に形成してある。3つのフィルタ部33は、回転盤32に形成した切欠き321に対して、所定の波長の光のみ透過させるフィルタ部材を配設してなる。回転盤32の周方向においてフィルタ部33を形成する位置には、フィルタ部33と90°周方向に間隔を空けて切欠き321のみを形成し、光源2から発せられた光をそのまま通過させる通過部33Dが形成してある。
【0025】
図2に示すごとく、2つの切替フィルタ31はいずれも、回転盤32の回転中心Oの回りに回転することにより、複数種類のフィルタ部33のうち、光源2から発せられた光が通過する光通過位置Eに配置するフィルタ部33を選択可能である。また、切替フィルタ31を回転させることにより、光通過位置Eに通過部33Dを配置することもできる。
【0026】
第1励起フィルタ3Aにおいて、2つの切替フィルタ31の3つのフィルタ部33は、光源2から発せられた光からUV励起(320〜380nm)の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部33Aと、光源2から発せられた光からB励起(380〜495nm)の波長の光を透過させるB励起フィルタ部33Bと、光源2から発せられた光からG励起(495〜570nm)の波長の光を透過させるG励起フィルタ部33Cとからなる。2つの切替フィルタ31はいずれも、回転盤32に対して、UV励起フィルタ部33A、B励起フィルタ部33B、G励起フィルタ部33C、通過部33Dを形成してなる。
【0027】
こうして、2つの切替フィルタ31によって構成した第1励起フィルタ3Aによって、互いに異なる波長の励起光Xを同時にミラー43へ透過させることができる。なお、検査する者が目視によって試料8の特定部位を確認する際に、通過部33Dを光通過位置Eに配置して、光源2から発せられた光をミラー43へ通過させる。
【0028】
図4に示すごとく、第2励起フィルタ3Bにおける2つの切替フィルタ31は、光を透過させない回転盤32の周方向において、透過させる光の強度が互いに異なる(減光量を互いに異ならせた)複数種類の減光フィルタ部34を並設してなる。第2励起フィルタ3Bも、第1励起フィルタ3Aの場合と同様に、回転盤32に対して周方向に90°の間隔を空けて3箇所に減光フィルタ部34を設けてなる。3種類の減光フィルタ部34は、回転盤32に形成した切欠き321に対して、所定量の減光を行うフィルタ部材を配設してなる。回転盤32の周方向において減光フィルタ部34を形成する位置には、減光フィルタ部34と90°周方向に間隔を空けて切欠き321のみを形成し、光源2から発せられた光をそのまま通過させる通過部33Dが形成してある。
【0029】
本例の3種類の減光フィルタ部34は、光の減光量が75%のものと、光の減光量が50%のものと、光の減光量が25%のものとがある。また、第2励起フィルタ3Bにおける各切替フィルタ31には、減光フィルタ部34と90°間隔を空けて減光量が0%である通過部33Dが形成してある。
第2励起フィルタ3Bを用いることによって、光源2からミラー43へ照射する光の強度を、100%、75%、50%、25%と変化させることができる。
【0030】
例えば、波長が異なる2種類の励起光Xを同時に試料8に照射する際には、第1励起フィルタ3Aにおいて、光通過位置Eに配置するフィルタ部33を、一方の切替フィルタ31と他方の切替フィルタ31とで互いに異なるものにする。また、例えば、強度が異なる2種類の励起光Xを同時に試料8に照射する際には、第2励起フィルタ3Bにおいて、光通過位置Eに配置するフィルタ部34を、一方の切替フィルタ31と他方の切替フィルタ31とで互いに異なるものにする。
【0031】
図2〜図4に示すごとく、第1励起フィルタ3Aと第2励起フィルタ3Bとには、各切替フィルタ31において光通過位置Eに配置した各フィルタ部33及び各減光フィルタ部34の周辺から漏れる光を遮断する遮断部材35が配設してある。遮断部材35には、光を透過させる透過穴351が形成してあり、光源2から発せられた光は、第1励起フィルタ3A及び第2励起フィルタ3Bと透過穴351を透過して、ミラー43に照射される。
【0032】
図1に示すごとく、本例のカメラ4は、コンピュータ5によってデジタル処理可能なCMOSカメラ(デジタルカメラ)41に対して、所定の倍率の光学レンズ42を組み合わせて構成されている。カメラ4は、微生物又はウィルスの各検出対象に合わせて、適宜画素数のものを選択し、光学レンズ42の倍率とCMOSカメラ41のデジタルズームによる倍率とによって、1000〜10000倍にデジタル画像を拡大することができる。CMOSカメラ41には、2000万画素以上の分解能を有するものを用いることができる。カメラ4は、CMOSカメラ41と光学レンズ42とを組み合わせて、撮影するデジタル画像の1画素に対し、被写体としての試料8における1(μm2)以下の表面を撮影可能である。
【0033】
カメラ4は、CMOSカメラ41のレンズ部を下方に向けて、試料8の表面を上方から撮影する状態で配設してある。光源(紫外線ランプ)2は、カメラ4に対して垂直な水平方向に配設してあり、ミラー43は、カメラ4に対して垂直な方向であって光源2と対向する位置に配設してある。また、カメラ4のレンズ部の前(本例では光学レンズ42の前)には、紫外線を遮断してカメラ4を保護するためのフィルタ44が配置してある。
CMOSカメラ41は、倍率の異なる複数種類の光学レンズ42を取り替え可能であるとともに、上下にスライド可能である。
【0034】
ミラー43は、その反射面を試料8に向けて斜めに配置してなり、光源2から水平方向に発された光を、試料8に向けて斜めに反射する。ミラー43から試料8に照射する励起光Xは、試料8を保持する保持体7の平面方向に対して、27〜33°の入射角度θで照射させる。
図5は、試料8に対して斜めから励起光Xを照射する状態を模式的に示す図である。同図に示すごとく、励起光Xを保持体7の平面方向に対して、27〜33°の入射角度θで励起光Xを照射させることにより、試料8中に含まれ得る微生物等が発する特定蛍光反応81に、影Kの部分が適切に生じるようにすることができる。これにより、画像解析部52において、特定蛍光反応81の形状を検知し易くすることができる。同図においては、試料8中の微生物等を符号80で示す。
なお、影Kの部分は、微生物等が立体形状を有することにより、斜めから光が照射されることにより、微生物等に光が当たる一方側の幅が小さく、他方側の幅が大きく形成される。
【0035】
本例の蛍光反応検出装置1においては、2つの励起フィルタ3A,3Bを透過させて、波長を互いに異ならせた励起光Xを試料8に照射したときの2種類の励起時デジタル画像D1,D2をカメラ4によって撮影する。この2種類の励起時デジタル画像D1,D2は、励起光Xの波長を異ならせるとともに、励起光Xの強度又は照射時間(撮影時期)も互いに異ならせて撮影することができる。また、2種類の励起時デジタル画像D1,D2は、励起光Xの強度又は照射時間(撮影時期)のみ互いに異ならせて撮影することもできる。
そして、2種類の励起時デジタル画像D1,D2のうちの少なくとも一方は、波長と強度との少なくとも一方が互いにが異なる励起光Xを、2つの励起フィルタ3から試料8に対して同時に照射したときのデジタル画像とする。
【0036】
本例の画像解析部52は、2種類の励起時デジタル画像D1,D2について、それぞれ1つの画素単位ごとの色空間データを求め、第1励起時デジタル画像D1における各画素単位ごとの色空間データと、第2励起時デジタル画像D2における各画素単位ごとの色空間データとに対し、それぞれ同じ位置にある画素単位同士で照合演算して、各画素単位ごとに演算処理データを求める。そして、画像解析部52は、各画素単位ごとの演算処理データを、予め特定蛍光反応81について求めた演算処理データの規定範囲と照合して、試料8中における特定蛍光反応81の有無を検出する。
【0037】
図6には、第1励起時デジタル画像D1を概略的に示し、図7には、第2励起時デジタル画像D2を概略的に示す。また、図8には、第1励起時デジタル画像D1と第2励起時デジタル画像D2とに対して照合演算を行った結果を可視化して、照合画像D3として概略的に示す。
【0038】
励起光Xの波長は、UV励起、B励起又はG励起のいずれかの波長として、2種類の励起時デジタル画像D1,D2において互いに異ならせることができる。この場合、例えば、図6、図7に示すごとく、2種類の励起時デジタル画像D1,D2のいずれにもゴミ(検出対象以外の異物)による蛍光反応82が現れる一方、図7に示すごとく、第2励起時デジタル画像D2には微生物等による特定蛍光反応81が明確に現れた場合を想定する。このとき、図8に示すごとく、2種類の励起時デジタル画像D1,D2についての各画素単位ごとの色空間データを求めて照合演算を行ったときには、ゴミによる蛍光反応82の影響が打ち消されて、微生物等による特定蛍光反応81を明確に検出することができる。この場合は、微生物等が特に強く蛍光反応を示す励起光Xの波長がある場合に有効である。
【0039】
また、UV励起、B励起又はG励起のいずれかの波長の励起光Xを用いた場合には、励起光Xの強度を異ならせて撮影した2種類の励起時デジタル画像D1,D2を用いることもできる。この場合、例えば、図6、図7に示すごとく、ゴミ(検出対象以外の異物)は、弱い強度の励起光Xの照射又は短い時間の励起光Xの照射によっても蛍光反応82を明確に示す一方、図7に示すごとく、微生物等は、強い強度の励起光Xの照射又は長い時間の励起光Xの照射によってはじめて明確に特定蛍光反応81を示す場合を想定する。このとき、図8に示すごとく、2種類の励起時デジタル画像D1,D2についての各画素単位ごとの色空間データを求めて照合演算を行ったときには、ゴミによる蛍光反応82の影響が打ち消されて、微生物等による特定蛍光反応81を明確に検出することができる。この場合は、ゴミに比べて微生物等が蛍光反応を示す時期が遅い場合に有効である。
【0040】
本例の画像解析部52において求める色空間データは、色の三原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色相データを、所定数の階調における数値で示すものである。本例の色空間データは、カメラ4によって検出した特定の波長の光を、赤色、緑色、青色の各データに分解したものである。赤色、緑色、青色の各データには、それぞれ256階調が割り当てられ、各データ(各原色)は、0〜255の数値によって示される。
また、色空間データには、色の三原色を用いて表す輝度(明るさ)を含めることができる。この輝度Yは、a1〜a3を係数とし、Rを赤色、Gを緑色、Bを青色の各数値としたとき、Y=a1×R+a2×G+a3×Bから求めることができる。係数a1〜a3は、複数の波長の光をカメラ4によって撮影したときの複数のデジタル画像について、赤色、緑色、青色の各数値をY=(a1×X1+a2×X2+a3×X3)/3のX1〜X3にそれぞれ代入して求めることができる。
なお、微生物又はウィルスの検出対象によっては、色空間データは、輝度のデータのみとすることもできる。
【0041】
画像解析部52において、多数の画素によって示されるデジタル画像における同じ位置にある画素単位同士で行う照合演算は、以下の誤差演算とすることができる。
図9には、第1色空間データd1と第2色空間データd2とを、1ドットごとの画素単位において照合する状態を可視化して示す。同図に示すごとく、第1励起時デジタル画像D1についての第1色空間データd1における赤色、緑色、青色の0〜255で示される各数値をR1,G1,B1とし、第2励起時デジタル画像D2についての第2色空間データd2における赤色、緑色、青色の0〜255で示される各数値をR2,G2,B2とする。
誤差演算としては、|R1−R2|(R1−R2の絶対値),|G1−G2|(G1−G2の絶対値),|B1−B2|(B1−B2の絶対値)の少なくとも1つとして行うことができる。
【0042】
また、誤差演算は、第1励起時デジタル画像D1についての第1色空間データd1における輝度の数値をY1とし、第2励起時デジタル画像D2についての第2色空間データd2における輝度の数値をY2として、|Y1−Y2|として行うこともできる。また、算術演算は、Y1+Y2,Y1−Y2,Y1×Y2,Y1/Y2,Y2−Y1,Y2/Y1のいずれかとして行うこともできる。
【0043】
なお、これらの演算において、R1〜R3,G1〜G3,B1〜B3の各数値が、0未満となる場合は0とし、255超過となる場合には、255とする。また、割算で分母となる数値が0である場合は255とし、割算で分子となる数値が0である場合は0とする。
こうして、画像解析部52において照合演算を行って得られる演算処理データは、0〜255の範囲の数値によって表される。
【0044】
画像解析部52における判定基準である演算処理データの規定範囲は、検出対象とする特定の微生物等に対して、波長と強度との少なくともいずれかが互いに異なる励起光Xを照射したときの複数(2つ)の励起時デジタル画像を撮影し、この励起時デジタル画像中において特定蛍光反応81を映した画素について照合演算を行った結果として求めておく。
また、画像解析部52における判定基準である演算処理データの規定範囲は、検出対象とする特定の微生物等に対して励起光Xの照射を開始した時点からカメラ4によって撮影する時点までの時間を異ならせて撮影したときの複数(2つ)の励起時デジタル画像において、この励起時デジタル画像中において特定蛍光反応81を映した画素について照合演算を行った結果として求めておくこともできる。
【0045】
演算処理データの規定範囲は、特定の微生物等について特定蛍光反応81を実際に撮影したときの色相、輝度の色空間データに対して、適度の余裕を設けて設定することができる。この際、特定蛍光反応81の撮影を複数回行って、規定範囲の幅を決定することができる。
そして、実際に試料8に対して特定蛍光反応81の検査を行う際には、判定基準である演算処理データの規定範囲を決定する際に使用した励起光Xと同じ条件の励起光Xを試料8に照射する。また、励起光Xの波長又は強度を異ならせた場合には、設定基準時と検出時とで用いる励起光Xの種類を同じにする。
【0046】
図10には、第1色空間データd1と第2色空間データd2とを、1ドットごとの画素単位において照合して得た演算処理データが、規定範囲内にあるか否かの2値化処理を行った結果を可視化して示す。
本例の画像解析部52は、各画素単位ごとの演算処理データのうち、予め特定蛍光反応81について求めた演算処理データの規定範囲内にある画素単位を、ヒット画素Hとして求める。そして、ヒット画素Hが並んで形成される形状及び面積が、予め特定蛍光反応81について求めた形状及び面積の規定範囲内にある場合に、試料8中に微生物又はウィルスが存在すると検出する。ヒット画素Hは、各画素単位の演算処理データが、演算処理データの規定範囲内にある場合を1、演算処理データの規定範囲内にない場合を0として、2値化処理を行ったときの1である画素とする。
特定蛍光反応81についての形状及び面積の規定範囲は、検出対象とする特定の微生物等の形状及び面積を実測した値に、適度の余裕を設けて設定することができる。
【0047】
また、画像解析部52における各画素は、例えば誤差演算として、|R1−R2|,|G1−G2|,|B1−B2|を行った場合には、これらの値の全てが規定範囲内になったときに、ヒット画素Hとすることができる。また、これらの値の1つ又は2つが規定範囲内になったときに、ヒット画素Hとすることもできる。
【0048】
画像解析部52は、特定蛍光反応81が存在すると検出したヒット画素Hが並んで形成される形状を囲む大きさの画素領域を、ヒット領域Aとして特定する。
図8、図11には、ヒット画素Hを囲んでなるヒット領域Aを示す。
本例の画像解析部52においては、ヒット画素Hを抽出した2値化された演算処理データに対して、ヒット画素Hが並んで形成されたヒット画素形状の最大輪郭に合わせて、デジタル画像のX軸及びY軸に平行な辺を持つ矩形状によって囲む。そして、この矩形状によって囲まれた画素領域がヒット領域Aとして特定され、ヒット領域Aについて、ヒット画素形状が検出対象とする微生物等の特定蛍光反応81の形状と近似するか否かを判定する。
【0049】
画像解析部52においては、矩形状によって囲んだヒット画素形状の面積(ヒット画素Hの数)、重心位置等を検出することができる。また、ヒット画素形状が、微生物等についての特定蛍光反応81の形状及び面積の規定範囲内にある場合には、励起時デジタル画像中の全体におけるヒット画素形状の位置、数等を特定する。特定蛍光反応81の面積の規定範囲は、所定の面積以上であって所定の面積以下の所定の大きさの範囲を有している。ヒット画素形状が大き過ぎても小さ過ぎても、特定蛍光反応81の面積の規定範囲内には入らないことになる。
【0050】
また、画像解析部52は、上記ヒット画素形状を検出する以外にも、励起時デジタル画像を構成する全体の面積(画素数)のうち、ヒット画素Hが占める面積(画素数)の割合が所定の割合以上である場合に、試料8中に特定蛍光反応81があると判定することもできる。
本例の制御部51は、励起光Xを照射していないときの素デジタル画像D4をカメラ4によって撮影し、素デジタル画像D4においてヒット領域Aに相当する画素領域を、コンピュータ5に接続したモニタ6に拡大表示するよう構成してある。
図12には、素デジタル画像D4について、ヒット領域Aに相当する画素領域Bをモニタ6に拡大表示した状態を概略的に示す。本例においては、検査する者が、素デジタル画像D4において微生物等が存在すると検出した部分を実際に目視して確認することができる。
【0051】
また、画像解析部52においては、特定蛍光反応81についての形状及び面積の規定範囲を、複数種類の微生物等について予め設定しておくことができる。そして、画像解析部52は、ヒット画素形状が並んで形成される形状及び面積が、予め複数種類の微生物等についてそれぞれ求めた形状及び面積の規定範囲のうちのいずれに含まれるかを判定し、試料8中に存在する微生物等の種類を推定することができる。この場合には、微生物等の有無だけでなく、種類も検出することができる。
また、画像解析部52は、矩形状のヒット領域Aの面積(画素数)に対し、ヒット領域A内において所定の形状を有するヒット画素Hの面積(画素数)の割合によって、微生物等の種類を推定することもできる。
【0052】
本例の蛍光反応検出装置1において、励起フィルタ3は、波長及び強度の少なくとも一方が異なる2種類の励起光Xを、光源2からミラー43へと同時に通過させる。そして、画像解析部52によって、2種類の励起光Xを同時に照射したときに試料8中に含まれる特定の微生物が蛍光する光の色相、輝度等を解析して、特定の微生物の有無を検出する。
これにより、1種類の励起光Xを特定の微生物に照射するだけでは得られなかった微生物の蛍光反応81を得ることができ、特定の微生物の検出精度を格段に向上させることができる。
【0053】
また、図6、図7に示すごとく、試料8中には、特定蛍光反応81以外の蛍光反応82を示すゴミ(検出対象外の異物)も含まれており、このゴミも所定の蛍光反応82を発することになる。ただし、特定蛍光反応81と、ゴミによる蛍光反応82とは、励起光Xの波長、強度等の条件によって、蛍光の性質が異なる。そこで、2種類の励起時デジタル画像D1,D2を撮影した際に、例えば、ゴミによる蛍光反応82は、2種類の励起時デジタル画像D1,D2に撮影される一方、特定蛍光反応81は、第2励起時デジタル画像D2に明確に撮影される場合が想定される。この場合には、図8に示すごとく、上記照合演算をすることにより、ゴミによる蛍光反応82による影響を取り除くことができ、特定蛍光反応81を際立たせて検出することができる。そして、微生物等による特定蛍光反応81を、他のゴミ(検出対象外の異物)による蛍光反応82と明確に区別することができる。
それ故、本例の蛍光反応検出装置1によれば、試料8中における特定の微生物等を、高い検出精度で、安定して検出することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 蛍光反応検出装置
2 光源
3 フィルタ
3A,3B 励起フィルタ
31 切替フィルタ
32 回転盤
33A,33B,33C フィルタ部
34A,34B,34C 減光フィルタ部
4 カメラ
43 ミラー
5 コンピュータ
51 制御部
52 画像解析部
6 モニタ
8 試料
81 特定蛍光反応
X 励起光
D1,D2 励起時デジタル画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中における微生物又はウィルスの特定蛍光反応を検出する蛍光反応検出装置であって、
紫外線及び可視光線の波長を含む光を発する光源と、
該光源から発せられた光のうち励起光に相当する波長成分のみ透過させる励起フィルタと、
該励起フィルタを透過した励起光を反射させて、上記試料に対して斜めに照射させるミラーと、
上記試料の表面をデジタル画像として撮影するカメラと、
上記デジタル画像を解析する画像解析部を構築したコンピュータと、を備えており、
上記励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光を、上記光源から上記ミラーへと同時に通過させるよう構成してあり、
上記画像解析部は、上記複数種類の励起光を同時に照射したときに、上記試料中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応を検出することを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光反応検出装置において、上記励起フィルタは、回転可能な切換フィルタを互いに近接して並列に2つ配置してなり、
該切換フィルタは、光を透過させない回転盤の周方向において、互いに異なる波長の光を透過させる複数種類のフィルタ部を並設してなり、
上記2つの切替フィルタはいずれも、上記回転盤の回転中心の回りに回転することにより、上記複数種類のフィルタ部のうち、上記光源から発せられた光が通過する光通過位置に配置するフィルタ部を選択可能であり、
上記励起フィルタによって、互いに異なる波長の励起光を、上記2つの切替フィルタにおいて上記光通過位置に配置したフィルタ部から上記ミラーへ同時に透過させることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蛍光反応検出装置において、上記複数種類のフィルタ部には、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、が含まれていることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の蛍光反応検出装置において、上記2つの切替フィルタからなる上記励起フィルタは、上記光通過位置において直列に2つ配置してあり、
一方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、を含むものであり、
他方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光の強度を、複数段階に分けて減少させる複数種類の減光フィルタ部を含むものであることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光反応検出装置において、上記カメラは、CMOSカメラと光学レンズとを組み合わせて、撮影する上記デジタル画像の1画素に対し、被写体としての上記試料における1(μm2)以下の表面を撮影可能であることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光反応検出装置において、上記ミラーから上記試料に照射する励起光は、上記試料を保持する保持体の平面方向に対して、27〜33°の入射角度で照射させるよう構成してあることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項1】
試料中における微生物又はウィルスの特定蛍光反応を検出する蛍光反応検出装置であって、
紫外線及び可視光線の波長を含む光を発する光源と、
該光源から発せられた光のうち励起光に相当する波長成分のみ透過させる励起フィルタと、
該励起フィルタを透過した励起光を反射させて、上記試料に対して斜めに照射させるミラーと、
上記試料の表面をデジタル画像として撮影するカメラと、
上記デジタル画像を解析する画像解析部を構築したコンピュータと、を備えており、
上記励起フィルタは、波長及び強度の少なくとも一方が異なる複数種類の励起光を、上記光源から上記ミラーへと同時に通過させるよう構成してあり、
上記画像解析部は、上記複数種類の励起光を同時に照射したときに、上記試料中に含まれる微生物又はウィルスが蛍光する特定蛍光反応を検出することを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光反応検出装置において、上記励起フィルタは、回転可能な切換フィルタを互いに近接して並列に2つ配置してなり、
該切換フィルタは、光を透過させない回転盤の周方向において、互いに異なる波長の光を透過させる複数種類のフィルタ部を並設してなり、
上記2つの切替フィルタはいずれも、上記回転盤の回転中心の回りに回転することにより、上記複数種類のフィルタ部のうち、上記光源から発せられた光が通過する光通過位置に配置するフィルタ部を選択可能であり、
上記励起フィルタによって、互いに異なる波長の励起光を、上記2つの切替フィルタにおいて上記光通過位置に配置したフィルタ部から上記ミラーへ同時に透過させることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蛍光反応検出装置において、上記複数種類のフィルタ部には、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、が含まれていることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の蛍光反応検出装置において、上記2つの切替フィルタからなる上記励起フィルタは、上記光通過位置において直列に2つ配置してあり、
一方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光からUV励起の波長の光を透過させるUV励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からB励起の波長の光を透過させるB励起フィルタ部と、上記光源から発せられた光からG励起の波長の光を透過させるG励起フィルタ部と、を含むものであり、
他方の上記励起フィルタは、上記複数種類のフィルタ部に、上記光源から発せられた光の強度を、複数段階に分けて減少させる複数種類の減光フィルタ部を含むものであることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光反応検出装置において、上記カメラは、CMOSカメラと光学レンズとを組み合わせて、撮影する上記デジタル画像の1画素に対し、被写体としての上記試料における1(μm2)以下の表面を撮影可能であることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光反応検出装置において、上記ミラーから上記試料に照射する励起光は、上記試料を保持する保持体の平面方向に対して、27〜33°の入射角度で照射させるよう構成してあることを特徴とする蛍光反応検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−168088(P2012−168088A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30685(P2011−30685)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(511041640)株式会社エヌ・シー・ディ (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(511041640)株式会社エヌ・シー・ディ (7)
【Fターム(参考)】
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