説明

蛍光検出用較正装置、蛍光検出用較正方法、および蛍光検出装置

【課題】レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光を検出するとき、正確な蛍光検出を行うことができるように蛍光検出装置を較正する。
【解決手段】蛍光検出の較正をするとき、まず、変調信号を用いて強度変調した測定用レーザ光から光電変換されて生成された電気信号の伝送を遅延させる。伝送が遅延した電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を受光素子が受光して較正用受光信号を出力する。さらに、較正用受光信号を変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む較正用受光データを生成する。この後、較正用受光信号の、変調信号に対する較正用位相遅れを算出し、この算出した較正用位相遅れから、上記電気信号の伝送の遅延時間に由来する位相遅れを減算することにより、システム位相遅れを算出する。蛍光検出を行うとき、このシステム位相遅れを用いて、測定された位相遅れを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出装置に用いる蛍光検出用較正装置、及び蛍光検出用較正方法、さらに、この較正方法を実施する蛍光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、生物分野では、フローサイトメータが広く用いられている。このフローサイトメータは、レーザ光を照射することにより測定対象物が発する蛍光を光電子増倍管やアバランシェフォトダイオード等の光電変換器を用いて受光して、細胞や遺伝子等の生体物質の種類や頻度、さらには、測定対象物の特性を分析する。
【0003】
具体的には、フローサイトメータは、細胞、DNA、RNA、酵素、蛋白等の生体物質等の分析対象物を蛍光試薬でラベル化して作った測定対象物を、圧力を与えて毎秒略10m以内の速度で管路内を流れるシース液に流してラミナーシースフローを形成する。このフロー中の測定対象物にフローサイトメータがレーザ光を照射することにより、フローサイトメータは、分析対象物に付着した蛍光色素が発する蛍光を受光し、この蛍光を分析対象物のラベルとして識別することで分析対象物を特定する。
【0004】
このフローサイトメータは、例えば、細胞内のDNA、RNA、酵素、蛋白質等の細胞内相対量を計測し、またこれらの働きを短時間で解析することができる。また、フローサイトメータは、所定のタイプの細胞や染色体を蛍光によって判別し、判別した細胞や染色体のみを、セル・ソータ等を用いて、生きた状態で短時間で選別収集する。
これのフローサイトメータの使用においては、より多くの測定対象物を、短時間に正確に蛍光の情報から特定することが要求されている。
【0005】
例えば、測定対象物である試料にレーザ光を照射することにより試料からの蛍光を受信して信号処理を行う際、信号処理により、多数の蛍光の種類を識別することができ、特に短時間で効率よく蛍光を識別する蛍光検出装置が知られている(特許文献1)。
例えば、蛍光検出装置は、測定対象の試料に照射するレーザ光を出射するレーザ光源部と、レーザ光の照射された試料から発する蛍光を受光し、その蛍光信号を出力する受光部と、レーザ光源部から出射するレーザ光の強度を時間変調させるために所定の周波数の変調信号を生成する制御・処理部と、受光部で出力された蛍光信号から、変調信号を用いて測定対象物の蛍光の蛍光緩和時間を算出する分析装置と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−226698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記蛍光検出装置は、蛍光信号の、レーザ光の変調に対する位相遅れを求め、この位相遅れに基づいて蛍光緩和時間を算出する。しかし、蛍光緩和時間を算出するための基となる位相遅れは、蛍光検出装置の構造自体に起因する蛍光信号の位相遅れを含むため、算出した位相遅れを補正する必要がある。
蛍光検出装置の構造自体に起因する位相遅れは、例えば、レーザ光の光路を伝送する伝送時間や伝送線を伝送する蛍光信号の伝送時間に起因する位相ずれや、レーザ光の出射に用いる変調信号と蛍光信号の検波に用いる変調信号との間の位相ずれ等を含む。このため、蛍光検出装置は、これらの位相ずれを除去する補正をする。
【0008】
上記補正のためには、例えば、蛍光緩和時間が既知の蛍光色素を用いて蛍光検出装置で計測したとき、計測により得られる蛍光緩和時間が、既知の蛍光緩和時間に一致するように、較正のために用いる参照位相遅れを求める方法が考えられる。具体的には、蛍光検出装置において求めた蛍光データから参照位相遅れを減算し、この減算結果の位相遅れを用いて算出する蛍光緩和時間が、既知の蛍光緩和時間になるように、参照位相遅れを求める。
【0009】
しかし、蛍光色素が固有に持つ蛍光緩和時間は、経年変化し、また、蛍光色素の保管条件によって、蛍光緩和時間が変化する。さらに、蛍光緩和時間の計測の際の温度条件によって蛍光緩和時間も変化する。このために、参照位相遅れを蛍光色素を用いて求めるのは必ずしも信頼性の点で好ましくない。また、蛍光検出装置において複数の蛍光検出のために複数の受光チャンネルを用いる場合、受光チャンネル毎に蛍光色素を変えて参照位相遅れを求める必要があり、補正の処理が煩雑になる。また、蛍光色素の蛍光緩和時間は計測方法によって微妙に値が異なるため、既知の蛍光緩和時間の値を用いることは必ずしも適切でない場合もある。
以上の理由から、既知の蛍光色素を用いて求めた参照位相遅れを求めて、補正に用いることは、正確な蛍光緩和時間を算出する上で好ましくない場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光を検出するとき、正確な蛍光検出を行うことができるように蛍光検出装置を較正するための蛍光検出用較正方法、蛍光検出用較正装置、及びこの較正装置を用いた蛍光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光の蛍光信号を処理する、蛍光検出装置である。
当該蛍光検出装置は、
測定用レーザ光を、所定の周波数の変調信号で強度変調して出射する発光素子と、
測定位置に位置する測定対象物が前記測定用レーザ光の照射を受けることにより発する蛍光を受光して、蛍光信号を出力する受光素子と、
前記蛍光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む蛍光データを生成する第1の処理部と、
前記蛍光データを、予め取得した参照位相遅れを用いて較正することにより、前記蛍光の、前記変調信号に対する位相遅れを算出し、算出した前記位相遅れを用いて前記蛍光の蛍光緩和時間を算出する第2の処理部と、
前記参照位相遅れを取得するために測定対象物に代えて前記測定位置に配置される較正ユニットであって、前記測定用レーザ光の伝送、あるいは前記測定用レーザ光から光電変換された電気信号の伝送を遅延させる遅延調整部を備え、前記測定用レーザ光、あるいは前記電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を前記受光素子に導く蛍光検出用較正ユニットと、を有する。
【0012】
前記蛍光検出装置において、前記受光素子は、前記較正用レーザ光を受光して較正用受光信号を出力し、前記第1の処理部は、前記較正用受光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相の情報を含む較正用受光データを生成し、前記第2の処理部は、前記較正用受光データから、前記較正用受光信号の、前記変調信号に対する較正用位相遅れを算出し、算出した前記較正用位相遅れから、前記遅延調整部で設定された伝送の遅延時間に由来する位相遅れを含む蛍光検出用較正ユニットに由来する位相遅れを減算することにより、前記参照位相遅れを算出する、ことが好ましい。
【0013】
また、前記蛍光検出用較正ユニットの前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送を遅延させる遅延回路を備え、前記蛍光検出用較正ユニットは、前記測定用レーザ光を受信し光電変換することにより、前記電気信号を生成する較正用受光素子と、前記遅延調整部により遅延した電気信号に基づいて前記較正用レーザ光を出射する較正用発光素子と、を有する、ことが好ましい。
【0014】
あるいは、前記蛍光検出用較正ユニットの前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送線路長を可変に調整するラインストレッチャを備える、ことも同様に好ましい。
【0015】
また、本発明の別の一態様は、測定用レーザ光の照射を受光素子で受けることにより測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出装置に用いる蛍光検出用較正装置である。
当該蛍光検出用較正装置は、前記測定用レーザ光を取り込んで、前記測定用レーザ光の伝送、あるいは前記測定用レーザ光から光電変換された電気信号の伝送を遅延させる遅延調整部を備え、前記測定用レーザ光、あるいは前記電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を、前記蛍光検出装置の蛍光を受光する受光素子に導く。
【0016】
前記蛍光検出用較正装置において、前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送を遅延させる遅延回路を備え、さらに、前記測定用レーザ光を受信し光電変換することにより、前記電気信号を生成する較正用受光素子と、前記遅延調整部により遅延した電気信号に基づいて較正用レーザ光を出射する較正用発光素子と、を備えることが好ましい。
【0017】
あるいは、前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送線路長を可変に調整するラインストレッチャを備える、ことも同様に好ましい。
【0018】
さらに、本発明の別の一態様は、レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光の蛍光信号を処理する、蛍光検出装置に用いる較正方法である。その際、前記蛍光検出装置は、
測定用レーザ光を、所定の周波数の変調信号で強度変調して出射する発光素子と、
前記測定位置に位置する測定対象物が前記測定用レーザ光の照射を受けることにより発する蛍光を受光して、蛍光信号を出力する受光素子と、
前記蛍光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む蛍光データを生成する第1の処理部と、
前記蛍光データを、予め取得したシステム位相遅れを用いて較正することにより、前記蛍光の、前記変調信号に対する位相遅れを算出し、算出した前記位相遅れを用いて前記蛍光の蛍光緩和時間を算出する第2の処理部と、を有する。
蛍光検出の較正をするとき、
前記発光素子から測定用レーザ光を出射する第1ステップと、
前記測定用レーザ光の伝送、あるいは前記測定用レーザ光から光電変換された電気信号の伝送を遅延させる第2ステップと、
伝送が遅延した前記測定用レーザ光、あるいは前記電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を前記受光素子が受光して較正用受光信号を出力する第3ステップと、
前記第1の処理部が、前記較正用受光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む較正用受光データを生成する第4ステップと、
前記第2の処理部が、前記較正用受光データから、前記較正用受光信号の、前記変調信号に対する較正用位相遅れを算出し、この算出した前記較正用位相遅れから、前記遅延調整部で設定された伝送の遅延時間に由来する位相遅れを含む前記第2ステップおよび前記第3ステップにおける位相遅れを減算することにより、前記システム位相遅れを算出する第5ステップと、前記第2の処理部で、前記システム位相遅れを用いて、前記蛍光データを較正する第6ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
上記態様の蛍光検出用較正方法および蛍光検出用較正装置では、正確な参照位相遅れを算出することができる。したがって、上記態様の蛍光検出装置は、正確な蛍光検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の蛍光検出装置を用いたフローサイトメータの概略構成図である。
【図2】図1に示すフローサイトメータに用いるレーザ光源部の構成の一例を示す図である。
【図3】図1に示すフローサイトメータに用いる受光部の一例の概略の構成を示す概略構成図である。
【図4】図1に示すフローサイトメータに用いる制御・処理部の概略の構成を示す図である。
【図5】図1に示すフローサイトメータに用いる分析装置の概略の構成を示す図である。
【図6】図5に示す分析装置で行う補正を説明する図である。
【図7】(a),(b)は、本実施形態の蛍光検出用較正装置の概略の構成を示す図である。
【図8】図5に示す分析装置で用いる較正用データの算出の一例を説明する図である。
【図9】図7(b)に示す遅延回路の代わりに用いる同軸ラインストレッチャを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の蛍光検出用較正装置、蛍光検出用較正方法、および蛍光検出装置を詳細に説明する。
【0022】
(蛍光検出装置)
図1は、本実施形態の蛍光検出の較正に用いるフローサイトメータ10の概略構成図である。
以下説明する実施形態では、バッファー液に懸濁した、蛍光色素を有する生体物質Mを、測定対象物として説明するが、生体物質Mの他に所定の蛍光色素を備え、生体物質Mと生体結合をするマイクロビーズを生体物質Mとともにバッファー液に含ませ、生体物質M及びマイクロビーズを測定対象物とすることもできる。
【0023】
フローサイトメータ10は、信号処理装置20と、分析装置(コンピュータ)80とを有する。信号処理装置20は、レーザ光の照射を受けることにより蛍光を発する生体物質Mをバッファー液に懸濁して構成された試料12にレーザ光を照射し、試料12中の生体物質Mが備える蛍光色素の発する蛍光の蛍光信号を検出して信号処理をする。分析装置(コンピュータ)80は、信号処理装置20で得られた処理結果から検出した蛍光の蛍光強度及び蛍光緩和時間を算出し、この算出結果を用いて試料12中の測定対象物の分析を行なう。
【0024】
信号処理装置20は、レーザ光源部22と、受光部24,26と、制御・処理部28と、管路30と、を有する。
制御・処理部28は、レーザ光源部22からのレーザ光を所定の変調周波数で強度変調させる変調信号を生成するために制御する制御部、及び試料12からの蛍光信号を識別する信号処理部を含む。管路30は、高速流を形成するシース液に、生体物質Mを含んだバッファー液からなる試料12を流してフローセルを形成する。管路30の出口には、回収容器32が設けられている。フローサイトメータ10には、レーザ光の照射により短時間内に試料12中の生体物質Mを識別し分離するためのセル・ソータを配置して別々の回収容器に分離するように構成することもできる。
【0025】
レーザ光源部22は、所定の波長のレーザ光、例えばλ=405nm等のレーザ光を出射する部分である。レーザ光は、管路30中の所定の位置に集束するようにレンズ系23が設けられている。この集束位置は試料12の測定位置を形成する。
【0026】
図2は、レーザ光源部22の構成の一例を示す図である。
レーザ光源部22は、強度変調したレーザ光を出射する。レーザ光源部22は、例えば、青色のレーザ光BをCW(連続波)レーザ光として出射し、このCWレーザ光の強度を所定の周波数で変調する光源22aを有する。
さらに、レーザ光源部22は、レンズ系23と、レーザドライバ34と、を有する。レンズ系23は、レーザ光を管路30中の測定位置に集束させる。レーザドライバ34は、光源22aを駆動する。
【0027】
これらのレーザ光を出射する光源として例えば半導体レーザが用いられる。レーザ光は、例えば5〜100mW程度の出力である。一方、レーザ光の強度を変調する周波数(変調周波数)は、その周期が蛍光緩和時定数に比べてやや長い、例えば10〜50MHzである。
【0028】
光源22aは、レーザ光が蛍光色素を励起して特定の波長帯域の蛍光を発するように、予め定められた波長帯域で発振する。レーザ光によって励起される蛍光色素は測定しようとする生体物質Mに付着されており、生体物質Mが測定対象物として管路30を通過する際、測定位置でレーザ光の照射を受けて特定の波長で蛍光を発する。
【0029】
受光部24は、管路30を挟んでレーザ光源部22と対向するように配置されており、測定位置を通過する生体物質Mによってレーザ光が前方散乱することにより、生体物質Mが測定位置を通過する旨の検出信号を出力する光電変換器を備える。この受光部24から出力される信号は、制御・処理部28に供給され、制御・処理部28において生体物質Mが管路30中の測定位置を通過するタイミングを知らせるトリガ信号として用いられる。
なお、生体物質Mが測定位置を通過する時間をTとし、生体物質Mの平均直径をD、フローセルを流れる生体物質Mの速度をVとし、レーザ光の測定位置におけるスポット幅をWとしたとき、時間Tは、T=(D+W)/Vとなる。この時間Tは既知の値である。信号処理装置20は、受光部24で生成されるトリガ信号を計測開始のタイミングとして、蛍光の検出を開始し、時間Tの2倍の時間2・Tの間計測を続行する。計測とは、時間Tの期間中、試料12の発する蛍光を受光して、後述する制御・処理部28にて信号処理を行い、分析装置80に位相差情報を供給することをいう。この計測により、測定位置を生体物質Mが通過するとき、受光部26が受光する蛍光の蛍光信号を収集する。
【0030】
一方、受光部26は、レーザ光源部22から出射されるレーザ光の出射方向に対して垂直方向であって、かつ管路30中の試料12の移動方向に対して垂直方向に配置されている。受光部26は、測定位置にて照射された試料12から発する蛍光を受光する光電変換器を備える。図3は、受光部26の一例の概略の構成を示す概略構成図である。
【0031】
図3に示す受光部26は、試料12中の生体物質12からの蛍光信号を集束させるレンズ系26aと、ダイクロイックミラー26b,26bと、バンドパスフィルタ26c〜26cと、光電子増倍管等の光電変換器27a〜27cと、を有する。
レンズ系26aは、受光部26に入射した蛍光を光電変換器27a〜27cの受光面に集束させる。
ダイクロイックミラー26b,26bは、所定の範囲の波長帯域の蛍光を反射させて、それ以外は透過させるミラーである。
【0032】
バンドパスフィルタ26c〜26cは、各光電変換器27a〜27cの受光面の前面に設けられ、所定の波長帯域の蛍光のみが透過するフィルタである。透過する蛍光の波長帯域は、蛍光色素の発する蛍光の波長帯域に対応して設定されている。バンドパスフィルタ26c〜26cがフィルタリングすることにより、光電変換器27a〜27cが所定の波長帯域の蛍光を取り込めるように、ダイクロイックミラー26b,26bの反射波長帯域および透過波長帯域は設定されている。
【0033】
光電変換器27a〜27cは、例えば光電子増倍管を備えたセンサを備え、光電面で受光した光を電気信号に変換するセンサである。ここで、受光する蛍光はレーザ光の変調信号に対して位相差情報を持った光信号として受光されるので、出力される電気信号は位相差情報を持った蛍光信号となる。この蛍光信号は、増幅器で増幅されて、制御・処理部28に供給される。
【0034】
制御・処理部28は、図4に示すように、信号生成部40と、信号処理部42と、コントローラ44と、を有する。信号生成部40及びコントローラ44は、所定の周波数の変調信号を生成する光源制御部を形成する。
信号生成部40は、レーザ光の強度を所定の周波数で変調(振幅変調)するための変調信号を生成する。具体的には、信号生成部40は、発振器46、パワースプリッタ48及びアンプ50,52を有し、生成される変調信号を、レーザ光源部22のレーザドライバ34に供給するとともに、信号処理部42に供給する。信号処理部42に変調信号を供給するのは、後述するように、光電変換機27a〜27cから出力される蛍光信号を検波するための参照信号として用いるためである。なお、変調信号は、所定の周波数の正弦波信号であり、10〜50MHzの範囲の周波数に設定される。
【0035】
信号処理部42は、光電変換器27a〜27cから出力される蛍光信号を用いて、レーザ光の照射により試料12が発する蛍光の位相差情報を含む信号を処理する。信号処理部42は、アンプ54a〜54cと、パワースプリッタ56と、IQミキサ58a〜58cと、を有する。アンプ54a〜54cは、光電変換器27a〜27cから出力される蛍光信号を増幅する。パワースプリッタ56は、増幅された蛍光信号のそれぞれを信号生成部40から供給された正弦波信号である変調信号を分配する。
【0036】
IQミキサ58a〜58cは、光電変換器27a〜27cから供給される蛍光信号を、信号生成部40から供給される変調信号を参照信号としてミキシング(合成)する。具体的には、IQミキサ58a〜58cのそれぞれは、参照信号を蛍光信号(RF信号)と乗算して、蛍光信号のcos成分(参照信号と同位相の信号成分)と高周波成分を含む処理信号を算出するとともに、参照信号の位相を90度シフトさせた信号を蛍光信号と乗算して、蛍光信号のsin成分(参照信号に対して90度の位相差のある信号成分)と高周波成分を含む処理信号を算出する。このcos成分を含む処理信号及びsin成分を含む処理信号は、コントローラ44に供給される。
【0037】
コントローラ44は、信号生成部40に所定の周波数の変調信号(正弦波信号)を生成させるように制御し、さらに、信号処理部42にて求められた蛍光信号のcos成分の値及びsin成分の値を含む処理信号から、高周波成分を取り除いて蛍光信号のcos成分の値及びsin成分の値を求める部分である。
【0038】
具体的には、コントローラ44は、システム制御器60と、ローパスフィルタ62と、アンプ64と、A/D変換器66と、を有する。
システム制御器60は、信号処理装置20の各部分の動作制御のための指示を与えるとともに、フローサイトメータ10の全動作を管理する。ローパスフィルタ62は、信号処理部42で演算されたcos成分(Re成分)、sin成分(Im成分)に高周波成分が加算された処理信号から高周波成分を取り除く。アンプ64は、高周波成分の取り除かれたcos成分(Re成分)、sin成分(Im成分)の処理信号を増幅する。A/D変換器66は、増幅された処理信号をサンプリングする。
システム制御器60は、レーザ光の強度変調のために、発振器46の発振周波数を定める。
コントローラ44は、デジタル化されたcos成分(Re成分)、sin成分(Im成分)の処理信号を、分析装置80に供給する。
【0039】
分析装置80は、生体物質Mの発する蛍光の蛍光強度と蛍光緩和時間を求め、試料12中の生体物質Mの蛍光の種類を、蛍光強度および蛍光緩和時間を用いて識別する。所定の蛍光色素を付着したマイクロビーズを試料12に含ませて、生体物質Mが生体結合するか否か等の生体物質Mの特性を調べることもできる。
【0040】
図5は、分析装置80の構成を示す図である。
分析装置80は、CPU82及びメモリ84を有するコンピュータにより構成される。メモリ84に記憶されているソフトウェアを起動させることにより、分析装置80の各部分がソフトウェアモジュールとして形成される。具体的には、分析装置80は、ソフトウェアモジュールとして、蛍光強度算出部86と、位相遅れ算出部88と、蛍光緩和時間算出部90と、較正用データ算出部92と、を有する。勿論、これらの部分を専用回路で構成することもできる。
【0041】
蛍光強度算出部86は、A/D変換器66から供給された蛍光データについて、複素数(=(Re成分:cos成分の値)+j(Im成分:sin成分の))の絶対値を求めることで、蛍光強度を算出する。
位相遅れ算出部88は、A/D変換器66から供給された蛍光データの複素数の偏角(tan-1(蛍光データのIm成分/蛍光データのRe成分))を、位相遅れθmeasとして算出する。さらに、位相遅れ算出部88は、図6に示すように、算出した位相遅れθmeasから、後述する方法で予め得られたシステム位相遅れθsys(較正用データ)を減算することにより、蛍光色素が蛍光するときの位相遅れθflを算出する。システム位相遅れθsysは、較正用データ算出部92から供給される。
蛍光緩和時間算出部90は、位相遅れ算出部88で算出された位相遅れθflを用いて、蛍光緩和時間τをτ=1/(2πf)・tan(θfl)の式にしたがって算出する。ここで、fは、レーザ光の強度変調に用いた変調周波数である。蛍光緩和時間τをτ=1/(2πf)・tan(θfl)の式にしたがって算出することができるのは、蛍光現象が、1次の緩和過程に沿った変化を示すからである。
蛍光強度算出部86で算出された蛍光強度および蛍光緩和時間算出部90で算出された蛍光緩和時間は、図示されないプリンタやディスプレイ等の出力装置に出力される。また、分析対象物の分析のために用いられる。
【0042】
上述の位相遅れ算出部88において用いるシステム位相遅れθsysは、較正用データ算出部92により以降に述べる蛍光検出の較正により算出されて取得され、メモリ84に記憶保持されたデータである。
システム位相遅れθsysの取得は、管路30を、後述する蛍光検出用較正装置100に代えて管路30の測定位置にセッティングし、後述する蛍光検出用較正方法を実行することにより行われる。
【0043】
(蛍光検出用較正装置)
図7(a)は、フローサイトメータ10の管路30の代わりに、蛍光検出用較正装置100を配置した態様を示す図であり、図7(b)は、蛍光検出用較正装置100の構成を説明する図である。
蛍光検出用較正装置100は、フローサイトメータ10のレーザ光源部22から出射する強度変調したレーザ光を取り込む。さらに、蛍光検出用較正装置100は、取り込んだレーザ光の強度変調に対して位相が遅れたレーザ光を受光部26に向けて出射する。
【0044】
具体的に、蛍光検出用較正装置100は、ミラー102と、受光素子104と、遅延回路106と、増幅器108と、レーザ光源部110と、を有する。以降、レーザ光源部22から出射するレーザ光は測定用レーザ光といい、レーザ光源部110から出射するレーザ光は較正用レーザ光という。
【0045】
蛍光検出用較正装置100は、レーザ光源部22から出射する測定用レーザ光を電気信号に変換し、この電気信号の伝送を遅延させた後、この電気信号に基づいて較正用レーザ光を出射させ、この較正用レーザ光を受光部26に受光させる。レーザ光源部22から出射する測定用レーザ光は所定の周波数で強度変調しているので、光電変換により得られる電気信号は、変調信号と同じ周波数で振動する電気信号である。さらに、電気信号に基づいて出射する較正用レーザ光も、変調信号と同じ周波数で強度変調されている。勿論、電気信号の伝送は遅延されるので、電気信号に基づいて出射する較正用レーザ光も変調が遅延している。
【0046】
ミラー102は、レーザ光源部22から出射した測定用レーザ光を反射して受光素子104に向ける。
受光素子104は、受光した測定用レーザ光を光電変換により電気信号に変換する。受光素子104は、例えば、フォトダイオード等が用いられる。受光した測定用レーザ光は、変調信号と同じ周波数で強度変調されているので、変換された電気信号は、変調信号と同じ周波数の信号である。
遅延回路106は、入力された電気信号の伝送を、設定された遅延時間だけ遅延させて出力するパッシブ回路である。遅延時間は自在に調整することができる。遅延回路106は、例えば、同軸ケーブル等の伝送線の線路長を自在に変化させるもの、あるいは、同軸ラインストレッチャ等を用いることもできる。あるいは、キャパシタ及びインダクタを用いて構成された公知の回路等を用いることもできる。遅延回路106で設定された遅延時間の情報は、分析装置80の較正用データ算出部92に提供される。
増幅回路108は、遅延した電気信号を増幅する。
【0047】
レーザ光源部110は、増幅された電気信号に基づいて強度変調した較正用レーザ光を出射する。レーザ光源部110は、蛍光検出に用いる蛍光色素の蛍光波長と略同等の波長を持つレーザ光を出射する。これにより、フローサイトメータ10の受光部26、制御処理部28、および分析装置80を用いて、蛍光検出用較正装置100から出射した強度変調した較正用レーザ光の位相遅れを算出することができる。
複数の蛍光色素を用いて蛍光検出を行う場合、レーザ光源部110は、これらの蛍光色素の蛍光波長のそれぞれと略同等の波長を持つレーザ光を出射するように、複数のレーザ光源を持ってもよい。
【0048】
以下、蛍光検出用較正装置100を用いた蛍光検出用較正方法について具体的に説明する。
まず、蛍光検出用較正装置100は、レーザ光源部22から強度変調した測定用レーザ光を入射させる。受光素子104はこの測定用レーザ光を受光して光電変換した電気信号を出力する。さらに、遅延回路106は、受光素子104が出力した電気信号の伝送を設定された遅延時間だけ伝送を遅延させる。レーザ光源部110は、伝送が遅延した電気信号に基づいて強度変調した較正用レーザ光を出射する。この較正用レーザ光は受光部26で受光される。これにより、制御・処理部28は、試料12の蛍光を検出する場合と同様に、受光部26で受光して出力される較正用レーザ光の較正用受光信号を、蛍光信号と同様に処理することができる。
【0049】
制御・処理部28の信号処理部42は、較正用受光信号を、信号生成部40から提供された変調信号とともにミキシングする。コントローラ44は、蛍光信号の処理の場合と同様に、デジタル化されたcos成分(Re成分)、sin成分(Im成分)からなる較正用受光データを生成し、分析装置80に提供する。
分析装置80の位相遅れ算出部88は、コントローラ44から提供された較正用受光データから、偏角(tan-1(較正用受光データのIm成分/較正用受光データのRe成分))を、較正用位相遅れθmeasとして算出する。この較正用位相遅れθmeasは、較正用データ算出部92に提供される。
分析装置80の較正用データ算出部92は、較正用位相遅れθmeasと、蛍光検出用較正装置100の遅延回路106から提供される遅延時間の情報とを用いて、システム位相遅れθsysを算出する。
【0050】
図8は、システム位相遅れθsysの算出の一例を説明する図である。
較正用データ算出部92は、蛍光検出較正装置100に由来する位相遅れθrefを、位相遅れ算出部88から提供された較正用位相遅れθmeasから、減算することにより、フローサイトメータ10のシステムによる位相遅れθsysを求める。ここで、蛍光検出較正装置100に由来する位相遅れθrefは、遅延回路106における遅延時間に由来する位相遅れθdelの他に、光が光路を伝播することに由来する位相遅れθoptと、レーザ光源部110のレーザ発振の立ち上がり動作に由来する位相遅れθlasと、受光素子104の受光信号の出力の立ち上がりに由来する位相遅れθpd等を含む。位相遅れθdelは、偏角tan-1(2πfτ)(fは変調信号の周波数、τは遅延回路106から提供される遅延時間)により予め求めることができる。また、位相遅れθopt、θlas、θpdの合計は、遅延回路106の遅延時間が変化しても変化しない一定値である。したがって、遅延回路106の遅延時間を変化させることにより、較正用位相遅れθmeasの変化量を求め、遅延時間の変化量と較正用位相遅れθmeasの変化量とを用いて、遅延時間の変化によって値が変化しない位相遅れθopt、θlas、θpdの合計値を求めることができる。したがって、蛍光検出較正装置100に起因する位相遅れθrefは既知である。
したがって、蛍光検出用較正装置100を用いて算出される較正用位相遅れθmeasが蛍光検出較正装置100に起因する位相遅れθrefと等しくなるように、較正用データ算出部92は、位相遅れ算出部88で用いるシステム位相遅れθsysを算出する。すなわち、較正用データ算出部92は、θsys=θmeas−θrefを算出する。算出されたシステム位相遅れθsysは、メモリ84に記憶される。
蛍光検出の際、較正用データ算出部92は、メモリ84に記憶されたシステム位相遅れθsysを、メモリ64から呼び出し、上述したように、位相遅れ算出部88に供給する。位相遅れ算出部88は、図6に示すように、算出した位相遅れθmeasから、蛍光色素自体に由来する蛍光の位相遅れθflを算出する際にシステム位相遅れθsysを用いる。すなわち、システム位相遅れθsysは、θfl=θmeas−θsysを計算するために用いられる。
【0051】
以上のように、分析装置80は、蛍光検出用較正装置100を用いてシステム位相遅れθsysを算出し、さらに、システム位相遅れθsysを用いて、蛍光データを較正するので、蛍光の正確な蛍光緩和時間を求めることができ、したがって正確な蛍光検出を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、電気信号を遅延する遅延回路を用いたが、図9に示すような同軸管長を機械的に変化させる同軸ラインストレッチャ107を用いることができる。この場合、同時ラインストレッチャ107の同軸管長をμmの精度で調整することにより、ピコ秒の精度で伝送の遅延時間を調整することができる。
また、既知の蛍光緩和時間を持つ蛍光色素と異なり、蛍光検出用較正装置100は、保存条件や温度条件等の周囲の環境に影響されず、一定の遅延時間に基づいて動作するので、蛍光検出用較正装置100は、正確なシステム位相遅れθsysを得ることができる。
レーザ光源部110が出射する較正用レーザ光は、蛍光検出に用いる蛍光色素の蛍光波長と略同等の波長を持つので、蛍光検出較正装置100は、レーザ光の波長に影響されない装置となる。また、蛍光検出用較正装置100は、遅延回路106において遅延時間を自由に調整できるので、複数の蛍光色素の蛍光緩和時間に大きな差があっても、遅延時間を調整することにより、正確なシステム位相遅れθsysを得ることができる。
【0053】
さらに、本実施形態の蛍光検出用較正装置100では、測定用レーザ光を、一旦度電気信号に変換し、この電気信号の伝送を遅延させた後、遅延した電気信号に基づいて較正用レーザ光を出射する。しかし、測定用レーザ光を電気信号に変換することなく、測定用レーザ光の光路長を変化させるように、ミラー等を含む光学素子を用いて光路を調整した後、受光部26にレーザ光を導いてもよい。この場合、遅延回路106、増幅器108、レーザ光源部110は不要である。
【0054】
以上、本発明の蛍光検出用較正装置、蛍光検出用較正方法、および蛍光検出装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
10 フローサイトメータ
12 試料
20 信号処理装置
22,110 レーザ光源部
22a 光源
23,26a レンズ系
24,26 受光部
26b,26b2 ダイクロイックミラー
26c,26c2,26c3 バンドパスフィルタ
27a,27b,27c 光電変換器
28 制御・処理部
30 管路
32 回収容器
34 レーザドライバ
40 信号生成部
42 信号処理部
44 コントローラ
46 発振器
48,56 パワースプリッタ
50,52,54a,54b,54c,64 アンプ
58a,58b,58c IQミキサ
60 システム制御器
62 ローパスフィルタ
66 A/D変換器
80 分析装置
82 CPU
84 メモリ
86 蛍光強度算出部
88 位相遅れ算出部
90 蛍光緩和時間算出部
92 較正用データ算出部
100 蛍光検出用較正装置
102 ミラー
104 受光素子
106 遅延回路
108 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光の蛍光信号を処理する、蛍光検出装置であって、
測定用レーザ光を、所定の周波数の変調信号で強度変調して出射する発光素子と、
測定位置に位置する測定対象物が前記測定用レーザ光の照射を受けることにより発する蛍光を受光して、蛍光信号を出力する受光素子と、
前記蛍光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む蛍光データを生成する第1の処理部と、
前記蛍光データを、予め取得したシステム位相遅れを用いて較正することにより、前記蛍光の、前記変調信号に対する位相遅れを算出し、算出した前記位相遅れを用いて前記蛍光の蛍光緩和時間を算出する第2の処理部と、
前記システム位相遅れを取得するために測定対象物に代えて前記測定位置に配置される較正ユニットであって、前記測定用レーザ光の伝送、あるいは前記測定用レーザ光から光電変換された電気信号の伝送を遅延させる遅延調整部を備え、前記測定用レーザ光、あるいは前記電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を前記受光素子に導く蛍光検出用較正ユニットと、を有することを特徴とする蛍光検出装置。
【請求項2】
前記受光素子は、前記較正用レーザ光を受光して較正用受光信号を出力し、
前記第1の処理部は、前記較正用受光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相の情報を含む較正用受光データを生成し、
前記第2の処理部は、前記較正用受光データから、前記較正用受光信号の、前記変調信号に対する較正用位相遅れを算出し、算出した前記較正用位相遅れから、前記遅延調整部で設定された伝送の遅延時間に由来する位相遅れを含む蛍光検出用較正ユニットに由来する位相遅れを減算することにより、前記システム位相遅れを算出する、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
前記蛍光検出用較正ユニットの前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送を遅延させる遅延回路を備え、
前記蛍光検出用較正ユニットは、前記測定用レーザ光を受信し光電変換することにより、前記電気信号を生成する較正用受光素子と、前記遅延調整部により遅延した電気信号に基づいて前記較正用レーザ光を出射する較正用発光素子と、を有する、請求項1または2に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
前記蛍光検出用較正ユニットの前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送線路長を可変に調整するラインストレッチャを備える、請求項1または2に記載の蛍光検出装置。
【請求項5】
測定用レーザ光の照射を受光素子で受けることにより測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出装置に用いる蛍光検出用較正装置であって、
前記測定用レーザ光を取り込んで、前記測定用レーザ光の伝送、あるいは前記測定用レーザ光から光電変換された電気信号の伝送を遅延させる遅延調整部を備え、前記測定用レーザ光、あるいは前記電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を、前記蛍光検出装置の蛍光を受光する受光素子に導く、ことを特徴とする蛍光検出用較正装置。
【請求項6】
前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送を遅延させる遅延回路を備え、
さらに、前記測定用レーザ光を受信し光電変換することにより、前記電気信号を生成する較正用受光素子と、前記遅延調整部により遅延した電気信号に基づいて較正用レーザ光を出射する較正用発光素子と、を備える、請求項5に記載の蛍光検出用較正装置。
【請求項7】
前記遅延調整部は、前記電気信号の伝送線路長を可変に調整するラインストレッチャを備える、請求項5に記載の蛍光検出用較正装置。
【請求項8】
レーザ光の照射を受けることにより測定対象物が発する蛍光の蛍光信号を処理する、蛍光検出装置に用いる較正方法であって、
前記蛍光検出装置は、
測定用レーザ光を、所定の周波数の変調信号で強度変調して出射する発光素子と、
前記測定位置に位置する測定対象物が前記測定用レーザ光の照射を受けることにより発する蛍光を受光して、蛍光信号を出力する受光素子と、
前記蛍光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む蛍光データを生成する第1の処理部と、
前記蛍光データを、予め取得したシステム位相遅れを用いて較正することにより、前記蛍光の、前記変調信号に対する位相遅れを算出し、算出した前記位相遅れを用いて前記蛍光の蛍光緩和時間を算出する第2の処理部と、を有し、
蛍光検出の較正をするとき、
前記発光素子から測定用レーザ光を出射する第1ステップと、
前記測定用レーザ光の伝送、あるいは前記測定用レーザ光から光電変換された電気信号の伝送を遅延させる第2ステップと、
伝送が遅延した前記測定用レーザ光、あるいは前記電気信号に基づいて出力される較正用レーザ光を前記受光素子が受光して較正用受光信号を出力する第3ステップと、
前記第1の処理部が、前記較正用受光信号を前記周波数の変調信号とミキシングすることにより、位相および強度の情報を含む較正用受光データを生成する第4ステップと、
前記第2の処理部が、前記較正用受光データから、前記較正用受光信号の、前記変調信号に対する較正用位相遅れを算出し、この算出した前記較正用位相遅れから、前記遅延調整部で設定された伝送の遅延時間に由来する位相遅れを含む前記第2ステップおよび前記第3ステップにおける位相遅れを減算することにより、前記システム位相遅れを算出する第5ステップと、
前記第2の処理部で、前記システム位相遅れを用いて、前記蛍光データを較正する第6ステップと、を有することを特徴とする較正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149804(P2011−149804A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11096(P2010−11096)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】