説明

蛍光観察装置および蛍光観察方法

【課題】実験小動物を蛍光観察する際の画像において、観察したい目的部位が微少な蛍光であっても鮮明に観察する。
【解決手段】励起光を発する光源9と、該光源9からの励起光を実験小動物Aの撮像部位に照射する光学系10と、実験小動物Aの所定領域または当該所定領域像を遮光する遮光手段11と、実験小動物Aからの蛍光像を撮像する撮像手段15と、該撮像手段15により取得された実験小動物Aの蛍光画像における所定の蛍光量以上の高蛍光領域を認識し、認識された高蛍光領域を遮光するように遮光手段11を制御する制御手段5とを備える蛍光観察装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を観察するための蛍光観察装置および蛍光観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マウス等の実験小動物に励起光を照射して、癌組織等の病変部から発生する蛍光を観察する蛍光観察装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
蛍光観察は発光観察と比較して、比較的高い輝度の蛍光を観察するので、観察画像が鮮明となり、観察しやすいという利点がある。
【0003】
癌組織等の病変部を蛍光観察するために、腫瘍組織に高度に蓄積される性質のある蛍光造影剤や血管内において長時間の滞留性を有する蛍光造影剤を実験小動物に投与する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。蛍光造影剤は、血管(静脈、動脈)内、経口内、腹腔内、皮下、皮内、膀胱内、気管支内等へ注入、噴霧もしくは塗布等により、生体内に投与することで、容易に目的部位を標識することができる。蛍光造影剤を用いた蛍光観察においては、X線造影、MRI、超音波造影などによる画像診断に比べ、非常に簡便に病変部を検出することができるようになる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5650135号明細書
【特許文献2】特開2003−261464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蛍光造影剤を実験小動物へ投与する方法として多く用いられている、血管内に投与して目的部位を蛍光造影剤で標識して蛍光観察する方法の場合には、最終的に、腎臓の糸球体でろ過され、再吸収を受けなかった蛍光造影剤は、一時的に膀胱に蓄積されるため、膀胱から蛍光が検出されることがある。また、肝臓でも蛍光造影剤が蓄積されるため、肝臓からも蛍光が検出されることもある。
【0006】
つまり、蛍光造影剤の性質上、観察したい対象の部位ではない膀胱や肝臓等から蛍光が検出されてしまうという問題がある。
さらに、実験小動物への蛍光造影剤の投与後の経過時間によっては、膀胱等に蓄積される量が多くなり、観察目的の部位である腫瘍組織や血管から検出される蛍光の方よりも、強い蛍光量の場合がある。
【0007】
このような状態のときに蛍光画像を取得した場合、観察目的の部位ではない膀胱等が非常に強い蛍光を発しているために、腫瘍組織や血管の蛍光量に応じた露光時間で画像を取得することで、取得画像における膀胱等の部分がサチュレーションを起こしてしまい、膀胱付近の微小な血管などの蛍光は埋もれてしまうことがある。また、目的部位ではない膀胱等の蛍光の強い部分に合わせて画像取得時の露光時間を設定してしまうと、目的部位の微少な蛍光を鮮明に検出できないという問題がある。
【0008】
また、蛍光造影剤の投与に限らず、小動物が食べた食物が胃や腸の中にある場合、その食物が持つ自家蛍光により胃や腸などが強く光ってしまうこともあり、この場合も同様の問題がある。さらには、小動物を固定するなどの目的で使用している器具の自家蛍光や反射光などでも同様の問題が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、実験小動物を蛍光観察する際の画像において、観察したい目的部位が微少な蛍光であっても鮮明に観察ができる蛍光観察装置および蛍光観察方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、励起光を発する光源と、該光源からの励起光を実験小動物の撮像部位に照射する光学系と、前記実験小動物の所定領域または当該所定領域像を遮光する遮光手段と、前記実験小動物からの蛍光像を撮像する撮像手段と、該撮像手段により取得された前記実験小動物の蛍光画像における所定の蛍光量以上の高蛍光領域を認識し、認識された高蛍光領域を遮光するように前記遮光手段を制御する制御手段とを備える蛍光観察装置を提供する。
【0011】
上記発明においては、前記撮像手段により取得された前記実験小動物の蛍光画像を表示する表示手段と、該表示手段により表示された蛍光画像の前記高蛍光領域を指示する指示手段とを備えていてもよい。
また、前記遮光手段が、前記実験小動物の撮像部位と略共役な位置に配置されている液晶フィルタまたはデジタル・マイクロミラー・デバイスであってもよい。
また、前記遮光手段が、前記光学系の瞳位置と略共役な位置に配置されているガルバノミラーであってもよい。
【0012】
また、本発明は、励起光を実験小動物の撮像部位に照射する照射工程と、前記実験小動物からの蛍光像を撮像する第1の撮像工程と、該第1の撮像工程において取得された蛍光画像における所定の蛍光量以上の高蛍光領域を抽出する抽出工程と、該抽出工程において抽出された前記高蛍光領域に対応する実験小動物の高蛍光部位または当該高蛍光部位の像を遮光する遮光工程と、該遮光工程において前記高蛍光領域に対応する実験小動物の高蛍光部位または当該高蛍光部位の像を遮光した状態で当該実験小動物からの蛍光像を撮像する第2の撮像工程とを含む蛍光観察方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実験小動物を蛍光観察する際の画像において、観察したい目的部位が微少な蛍光であっても鮮明な観察を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る蛍光観察装置1について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1は、図1に示されるように、観察装置本体2と、画像記憶部3と、表示部4と、これらを制御する制御部5とを備えている。
観察装置本体2は、実験小動物、例えば、マウスAを搭載するステージ6と、観察光学系7と、該観察光学系7を収容して外部からの光を遮断するケース8とを備えている。
【0015】
観察光学系7は、照明光を供給する照明装置9と、照明光を観察光学系7の光軸a上へ反射させるダイクロイックミラー14と、照明光をリレーするリレー光学系10と、マウスAの観察部位と略共役位置に設けられ指定領域を遮光する遮光ユニット11と、照明光をステージ6上のマウスAに照射する一方、マウスAから戻る反射光およびマウスAからの蛍光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光され、遮光ユニット11、リレー光学系10を通ってきた反射光を撮像手段15に結像させる撮像光学系12と、その像を撮影して蛍光画像を取得する撮像手段15とを備えている。
【0016】
照明装置9には、図示しない照明光を照射するための光源となるランプと特定の波長域のみを透過する特性を持つ励起フィルタおよび照明光を遮断するためのシャッタが備えられている。なお、励起フィルタは複数配置されており、光軸上に任意の一つを配置可能となっている。
撮像手段15には、図示しない特定の波長域のみを透過する特性を持つ吸収フィルタが備えられている。
【0017】
前記ケース8には、ステージ6近傍に開閉可能な扉16が設けられている。扉16には、該扉16が閉じられたことを検出するセンサ17が設けられている。符号18は、センサ17により検出する検出片である。
【0018】
画像記憶部3は、照明装置9から出射された励起光をマウスAに照射することにより、マウスAの表面から発せられる蛍光を撮像手段15によって撮影して得られたマウスAの蛍光画像G1を記憶できるようになっている。
表示部4は、制御部5によって制御され、画像記憶部3で記憶された蛍光画像G1を表示するようになっている。
【0019】
制御部5は、観察装置本体2を駆動し、蛍光量に応じて露光時間を調整し、マウスAの蛍光画像G1を画像記憶部3において取得させるようになっている。図2に示されるように蛍光画像G1は、表示部4上に表示される。さらに、制御部5は、表示部4に表示された蛍光画像G1について、制御部5内の図示しない指示部より遮光したい領域Cを指定することができるようになっている。
【0020】
また、図3に示されるように、制御部5は、遮光ユニット11を駆動して、指定された遮光領域Cに対応する遮光位置Dについて遮光することができるようになっている。
遮光ユニット11は、液晶の性質を利用して光の透過と遮光をコントロールすることのできる液晶フィルタ(以下、液晶フィルタ11とも言う。)であり、制御部5によって、遮光したい領域Cに指定された位置に対応する領域D部分の液晶を駆動し、遮光することができるようになっている。
画像記憶部3、表示部4、制御部5は、一般のパーソナルコンピュータ等の装置でもよい。
【0021】
このように構成された本実施形態に係る蛍光観察装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1を用いてマウスAの蛍光観察を行うには、観察者は、蛍光造影剤を投与したマウスAを睡眠させた状態で観察装置本体2のケース8内のステージ6上にテープ等の固定手段で固定し、ケース8の扉16を閉じる。
ケース8の扉16にはセンサ17が設けられているので、扉16が閉じられたことを示す信号がセンサ17から制御部5に送られる。扉が閉じられたことで、ケース8は、外部からの光を遮断され、暗箱になるので、蛍光をより鮮明に検出することができる。
【0022】
制御部5においては、観察装置本体2および画像記憶部3に起動信号が送られ、観察装置本体2により蛍光画像G1の取得が行われる。
すなわち、制御部5からの起動信号に応じて、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射されると、ダイクロイックミラー14で反射され、リレー光学系10、液晶フィルタ11、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。このとき、液晶フィルタ11は、OFF状態になっており、励起光およびマウスAからの反射光は、すべて透過する。
【0023】
励起光を照射することで、マウスAに投与した蛍光造影剤が励起されて蛍光を発し、発せられた蛍光が対物レンズ13により集光され、液晶フィルタ11、リレー光学系10、ダイクロイックミラー14を透過し、撮像光学系12を通ってきた蛍光が撮像手段15により撮影されて蛍光画像G1が取得される。撮像手段15により取得された蛍光画像G1は、画像記憶部3に記憶され、表示部4において表示される。
【0024】
蛍光画像G1は、腫瘍組織に集積している蛍光造影剤により、蛍光を発している病変部Bと、例えば、膀胱や肝臓などの目的部位ではないが蛍光造影剤が高度に集積して蛍光を発している部位Cを有している。
つまり、表示部4には、蛍光画像G1から目的部位Bと不必要な蛍光を発する目的部位以外の遮光したい領域Cとが表示される。
【0025】
観察者は、保有知識や経験上、対象の実験小動物の臓器の位置を把握しており、腫瘍組織等の目的部位Bと、位置Cについて、識別することができる。
そこで、観察者が表示部4上の蛍光画像G1を見ながら、識別したCを図示しない指示部より指定すると、制御部5は、図3に示される液晶フィルタ11の領域Dの位置や面積等を計算し、領域DがON状態になるように制御する。
【0026】
指示された遮光領域Dは、制御部5から観察装置本体2に通信され、液晶フィルタ11が駆動される。液晶フィルタ11の遮光領域Dに対応する位置における画素をON状態にし、光を透過しないようにする。
そして、液晶フィルタ11の領域DをONにした状態で、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射されると、ダイクロイックミラー14で反射され、リレー光学系10を通り、液晶フィルタ11の遮光領域D以外の部分を透過した励起光が対物レンズ13を通り、ステージ6上のマウスAに照射される。このときマウスAの目的部位ではない領域C部分には、励起光は、照射されていない。
【0027】
マウスAからの蛍光は、対物レンズ13により集光され、液晶フィルタ11、リレー光学系10、ダイクロイックミラー14を透過し、撮像光学系12を通り、撮像手段15により領域Cが遮光されている蛍光画像G2が撮影される。画像取得時には、目的部位Bに適した露光時間を設定し、蛍光画像G2を取得する。
【0028】
撮像手段15により取得された蛍光画像G2は、画像記憶部3に記憶され、表示部4において表示される。取得された蛍光画像G2の目的部位ではない領域C部分の蛍光は遮光されているので、目的部位Bの蛍光のみを有している。
【0029】
このように本実施形態に係る蛍光観察装置1によれば、膀胱や腎臓などの、不必要に強い蛍光を発生させないように遮光することにより、画像取得時のサチュレーションを起こすことがなく、観察したい必要な蛍光が埋もれてしまうことなく、蛍光画像を取得することができる。
また、画像取得時に、観察したい部分に適した露光時間を設定することで、細かい血管などを見落とすことなく、鮮明な蛍光画像を取得することができる。
【0030】
また、実験小動物飼育用の餌に含まれる材料に自家蛍光成分を持つものが使用されている場合があり、この餌を食べることで、腸管に蓄積され、蛍光観察装置1で実験小動物を観察すると腸管から強い蛍光を検出することがある。このようなときも、同様な方法で、目的部位のみ観察することができる。
さらに、その他の自家蛍光成分をもつものに対しても同様に観察することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、液晶フィルタ11の遮光のための制御をON、OFF状態の切り替えのみで行ったが、電圧の制御により中間の遮光状態を設けることにしても良い。
中間の状態を設けることで、目的部位ではない臓器などの蛍光を完全に遮光をせず減少させた状態で、取得することができる。目的部位ではない臓器の位置を観察位置の基準として、目的部位の蛍光と併せて取得しておくことで、蛍光画像において観察時の位置の把握をすることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、遮光ユニット11を液晶フィルタとしたが、これに限定されるものではなく、これに加えて、指示部より指示された遮光領域に応じて形状が変形可能な遮光部材など他の任意の形態の遮光ユニットに適用してもよい。
【0033】
また、本実施形態においては、遮光領域の指定は、観察者による操作での指示であったが、ほぼ一定の結果(蛍光量)を得られることが事前に分かっている蛍光観察を複数回繰り返し行うような観察の場合は、任意に設定した蛍光量以上の領域を制御部5から自動的に指定し、必要に応じて遮光するとしてもよい。さらに、露光時間の設定も観察したい領域の蛍光量によって、自動で設定可能としても良い。
これにより、観察効率が上がり、画像取得にかかる時間が短縮されるという利点もある。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る蛍光観察装置1について、図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1の特徴は、第1の実施形態における遮光ユニット11の代わりに、光反射部19を設けているところにある。
蛍光観察装置1の基本構成は、第1の実施形態に係る蛍光観察装置1(図1)と同様である。本実施形態において、上述した第1の実施形態と同じ構成のものには同符号を付けて表示し、説明を省略する。
【0035】
光反射部19は、一般的に知られているデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)19であり、マウスAの観察部位と略共役な位置に配置されている。DMD19は、図示しない微小なミラーの集合体で構成されている。それぞれのミラーの角度を調節することで、照明装置9から照射された照明光を投影したい位置にだけ反射させることができるようになっている。
【0036】
図4に示されるように、制御部5からの起動信号に応じて、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射され、リレー光学系20を通った励起光は、DMD19に当たり、それぞれのミラーの角度を調整することで、励起光を反射させる。このとき、DMD19のミラーは、すべて駆動しており、全領域において励起光を反射させる。ミラーにおいて反射された励起光は、ダイクロイックミラー14で反射され、観察光学系7の光軸a方向へ導入され、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。
【0037】
マウスAから発せられた蛍光は、対物レンズ13により集光され、ダイクロイックミラー14を透過し、撮像光学系12を通り、撮像手段15により撮像され、蛍光画像G1が取得される。図4に示されるように、撮像手段15により取得された蛍光画像G1は、画像記憶部3に記憶され、表示部4に表示される。表示された蛍光画像G1から膀胱等の目的部位以外の遮光したい領域Dを指定することができる。指定された領域Dは、制御部5から観察装置本体2に通信され、DMD19が駆動される。
【0038】
そして、同様に、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射される。励起光は、リレー光学系20を通り、DMD19の指定された遮光領域D以外の位置におけるミラー19aによって反射され、さらにダイクロイックミラー14で反射され、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。このときマウスAの目的部位ではない領域C部分には、励起光は、照射されていない。
【0039】
マウスAからの蛍光は、対物レンズ13により集光され、ダイクロイックミラー14を透過し、撮像光学系12を通り、撮像手段15により領域Cが遮光されている蛍光画像G2が撮影される。画像取得時には、目的部位Bに適した露光時間を設定し、蛍光画像G2を取得する。
【0040】
撮像手段15により取得された蛍光画像G2は、画像記憶部3に記憶され、表示部4に表示される。取得された蛍光画像G2の目的部位ではない領域C部分の蛍光は遮光されているので、目的部位Bの蛍光のみを有している。
【0041】
このように構成された本実施形態に係る蛍光観察装置1は、第1の実施形態の効果に加えて、DMDを用いているので、励起光の損失がより少ないという効果がある。
なお、本実施形態においては、光反射部をDMD19としたが、これに限定されるものではなく、他の任意の形態の光反射部材を適用してもよい。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る蛍光観察装置1について、図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1の特徴は、第2の実施形態における光反射部の代わりに、光走査部21および高速シャッタ22を設けているところにある。
蛍光観察装置1の基本構成は、第1の実施形態(図1)と同様である。第3の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成のものには同符号を付けて表示しているので説明は省略する。
【0043】
光走査部21は、一般に知られているガルバノミラーであり、例えば、1軸回りに揺動させられる2台のガルバノミラーを対物レンズ13の瞳位置と略共役な面に近接させ、2軸を直交させて配置した、いわゆる近接ガルバノミラーである。ガルバノミラー(以下、ガルバノミラー21とも言う。)は、制御部5からの制御信号により、直交する2軸回りに高速で揺動させられるようになっている。これにより、2台のガルバノミラー21に入射された照明光をそれぞれ所定の角度範囲にわたって振ることで、マウスA上の観察したい領域にわたって照明光を走査させることができる。
【0044】
高速シャッタ22は、例えば、一般に知られている音響光学素子である。高速シャッタ22の開閉を制御することで、照明装置9から照射された照明光を光走査部21の任意の位置にのみ照射することができる。
照明光学系27は、光走査部21からの照明光をダイクロイックミラー14、対物レンズ13を通って、マウスAに照射するための光学系である。
【0045】
本実施形態に係る蛍光観察装置1は、例えば、レーザ走査型顕微鏡1であって、照明装置9は、例えば、レーザーダイオードなどを用いたレーザ光源装置9であり、撮像手段15は、例えば、高感度CCDカメラを用いる光電子増倍管を用いた光検出器である。
【0046】
制御部5からの起動信号に応じて、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射され、高速シャッタ22を通過し、光走査部21に入射される。ガルバノミラー21を揺動させ、入射された励起光を所定の角度範囲内で偏向する。このとき、高速シャッタ22は、開いた状態であり、ガルバノミラー21は、全領域において励起光を走査させる。そして、励起光は、照明光学系27を通り、ダイクロイックミラー14で反射され、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。
【0047】
マウスAから発せられた蛍光は、対物レンズ13により集光され、ダイクロイックミラー14を透過し、撮像光学系12を通り、撮像手段15により撮像され、蛍光画像G1が取得される。撮像手段15により取得された蛍光画像G1は、画像記憶部3に記憶され、表示部4に表示される。
【0048】
表示された蛍光画像G1から膀胱等の目的部位以外の遮光したい領域Dを指定することができる。指定された領域Dは、制御部5から観察装置本体2に通信され、高速シャッタ22とガルバノミラー21を駆動し、指定領域にのみ励起光を照射する。
【0049】
そして、同様に、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射される。高速シャッタ22を通過した励起光は、ガルバノミラー21の指定された遮光領域D以外の位置のみガルバノミラー21によって反射され、照明光学系27を通り、ダイクロイックミラー14で反射され、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。このときマウスAの目的部位ではない領域C部分には、励起光は、照射されていない。
【0050】
マウスAからの蛍光は、対物レンズ13により集光され、ダイクロイックミラー14を透過し、撮像光学系12を通って、撮像手段15により領域Cが遮光されている蛍光画像G2が撮影される。画像取得時には、目的部位Bに適した露光時間を設定し、蛍光画像G2を取得する。
【0051】
撮像手段15により取得された蛍光画像G2は、画像記憶部3に記憶され、表示部4に表示される。取得された蛍光画像G2の目的部位ではない領域C部分の蛍光は遮光されているので、目的部位Bの蛍光のみを有している。
【0052】
このように構成された本実施形態に係る蛍光観察装置1は、ガルバノミラー21を用いているので、第1、第2の実施形態の効果に加えて、Z方向に走査することができるという効果がある。
なお、本実施形態においては、高速シャッタ22を音響光学素子としたが、これに限定されるものではなく、他の任意の形態の高速で制御可能な部材を適用してもよい。
【0053】
次に、本発明の第4の実施形態に係る蛍光観察装置1について、図6を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1の特徴は、第1の実施形態における照明装置および観察光学系を斜照明による配置にしたところにある。
【0054】
蛍光観察装置1の基本構成は、第1の実施形態に係る蛍光観察装置1(図1)と同様である。第4の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成のものには同符号を付けて表示しているので説明は省略する。
【0055】
遮光ユニット11は、例えば、第1の実施形態と同様な液晶フィルタ11であり、ON、OFF状態の切り替えにより、光の透過する範囲を制御させることができ、マウスAの観察部位と略共役な位置に配置されている。
照明光学系23は、マウスAに励起光を照射するための光学系である。
【0056】
リレー光学系24は、遮光ユニット11を含み、対物レンズ13によって集光されたマウスAからの蛍光を撮像光学系12へ導入するための光学系である。
図6に示されるように、制御部5からの起動信号に応じて、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射され、照明光学系23へ導入される。導入された励起光は、ステージ6上のマウスAに照射される。
【0057】
マウスAから発せられた蛍光は、対物レンズ13により集光され、リレー光学系24、液晶フィルタ11、撮像光学系12を通り、蛍光を撮像手段15により撮像され、蛍光画像G1が取得される。このとき、液晶フィルタ11は、OFF状態になっており、励起光およびマウスAからの反射光は、すべて透過する。
【0058】
撮像手段15により取得された蛍光画像G1は、画像記憶部3に記憶され、表示部4に表示される。表示された蛍光画像G1から膀胱等の目的部位以外の遮光したい領域Dを指定することができる。指定された領域Dは、制御部5から観察装置本体2に通信され、液晶フィルタ11が駆動される。液晶フィルタ11の遮光領域Cに対応する位置における画素をON状態にし、光を透過しないようにする。
【0059】
そして、同様に、液晶フィルタ11の領域DをON状態で、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射され、照明光学系23を通り、ステージ6上のマウスAに照射される。
マウスAからの蛍光は、対物レンズ13により集光され、リレー光学系24を通り、液晶フィルタ11の遮光領域D以外の部分を透過した励起光は、撮像光学系12を通過し、撮像手段15により領域Cが遮光されている蛍光画像G2が取得される。画像取得時には、目的部位Bに適した露光時間を設定し、蛍光画像G2を取得する。
【0060】
撮像手段15により取得された蛍光画像G2は、画像記憶部3に記憶され、表示部4に表示される。取得された蛍光画像G2の目的部位ではない領域C部分の蛍光は遮光されているので、目的部位Bの蛍光のみを有している。
【0061】
このように構成された本実施形態に係る蛍光観察装置1は、第1〜第3の実施形態の効果に加えて、斜照明を用いているので、広い照野を設けることができるという効果がある。
なお、本実施形態においては、照明光をある一方向から照射したが、これに限定されるものではなく、これに加えて、任意の方向、角度から照明光を照射しても良い。
【0062】
また、本実施形態においては、照明装置と照明光学系を1組みとしたが、これに限定されるものではなく、さらに明るい照明光を照射するために複数組み設けても良い。
また、本実施形態においては、遮光するために、第1の実施形態と同様に遮光ユニットとして、液晶フィルタを用いたが、第2の実施形態のような光反射部や、第3の実施形態のような光走査部を用いたシステムを本実施形態の斜照明を併用させても同様の効果を得ることができる。
【0063】
次に、本発明の第5の実施形態に係る蛍光観察装置1について、図7を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置の特徴は、第1の実施形態における遮光ユニット11を照明光の光路上ではなく、蛍光の光路上の撮像手段15の前に配置したところにある。
【0064】
本実施形態に係る蛍光観察装置1の基本構成は、第1の実施形態に係る蛍光観察装置1(図1)と同様である。第5の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成のものには同符号を付けて表示しているので説明は省略する。
【0065】
遮光ユニット11は、例えば、第1の実施形態と同様な液晶フィルタ11であり、ON、OFF状態の切り替えにより、光の透過する範囲を制御させることができ、マウスAの観察部位と略共役な位置に配置されている。
リレー光学系25は、対物レンズ13によって集光されたマウスAからの蛍光をダイクロイックミラー14、液晶フィルタ11、撮像光学系26へ導入するための光学系である。撮像光学系26は、遮光ユニット11を透過した蛍光を撮像手段15に結像させる位置に配置されている。
【0066】
図7に示されるように、制御部5からの起動信号に応じて、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射され、ダイクロイックミラー14で反射され、観察光学系7の光軸a方向へ導入され、リレー光学系25を通り、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。
【0067】
マウスAから発せられた蛍光は、対物レンズ13により集光され、リレー光学系25を通り、ダイクロイックミラー14を透過し、液晶フィルタ11、撮像光学系26を通ってきた蛍光を撮像手段15により撮像され、蛍光画像G1が取得される。このとき、液晶フィルタ24は、OFF状態になっており、マウスAからの蛍光は、すべて透過する。
【0068】
撮像手段15により取得された蛍光画像G1は、画像記憶部3において、記憶され、表示部4において表示される。表示された蛍光画像G1から膀胱等の目的部位以外の遮光したい領域Dを指定することができる。指定された領域Dは、制御部5から観察装置本体2に通信され、液晶フィルタ11を駆動する。液晶フィルタ11の遮光領域Cに対応する位置における画素をON状態にし、光を透過しないようにする。
【0069】
そして、同様に、観察装置本体2の照明装置9から励起光が出射され、ダイクロイックミラー14で反射され、リレー光学系25を通り、対物レンズ13によって、ステージ6上のマウスAに照射される。
マウスAからの蛍光は、対物レンズ13により集光され、リレー光学系25を通り、ダイクロイックミラー14を透過し、液晶フィルタ11の遮光領域D以外の部分を透過した励起光は、撮像光学系26を通り、撮像手段15により領域Cが遮光されている蛍光画像G2が取得される。画像取得時には、目的部位Bに適した露光時間を設定し、蛍光画像G2を取得する。
【0070】
撮像手段15により取得された蛍光画像G2は、画像記憶部3において、記憶され、表示部4において表示される。取得された蛍光画像G2の目的部位ではない領域C部分の蛍光は遮光されているので、目的部位Bの蛍光のみを有している。
このように構成された本実施形態に係る蛍光観察装置1は、第1の実施形態の効果に加えて、遮光ユニット11を撮像手段15の直前に配置しており、照明光からの励起光は、遮光ユニット11を透過しないため、蛍光の損失がより少ないという効果がある。
【0071】
なお、以上の実施形態においては、実験小動物としてマウスAを例示したが、これに限定されるものではなく、ラットやウサギなど他の任意の実験小動物の蛍光観察に適用してもよい。
また、以上の実施形態においては、生きたままの実験小動物の蛍光画像について述べたが、本発明はこれに捉われるものではなく、例えば、実験小動物のex vivo観察等にも適宜適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る蛍光観察装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の蛍光観察装置の表示部に表示された蛍光画像を示す図である。
【図3】図1の蛍光観察装置の遮光ユニットの遮光部を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る蛍光観察装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る蛍光観察装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る蛍光観察装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る蛍光観察装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
A 実験小動物
1 蛍光観察装置
4 表示部(表示手段)
5 制御部(制御手段)
9 照明装置(光源)
10 リレー光学系(光学系)
11 遮光ユニット、液晶フィルタ、DMD(遮光手段)
15 撮像手段
19 ガルバノミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を発する光源と、
該光源からの励起光を実験小動物の撮像部位に照射する光学系と、
前記実験小動物の所定領域または当該所定領域像を遮光する遮光手段と、
前記実験小動物からの蛍光像を撮像する撮像手段と、
該撮像手段により取得された前記実験小動物の蛍光画像における所定の蛍光量以上の高蛍光領域を認識し、認識された高蛍光領域を遮光するように前記遮光手段を制御する制御手段とを備える蛍光観察装置。
【請求項2】
前記撮像手段により取得された前記実験小動物の蛍光画像を表示する表示手段と、
該表示手段により表示された蛍光画像の前記高蛍光領域を指示する指示手段とを備える請求項1に記載の蛍光観察装置。
【請求項3】
前記遮光手段が、前記実験小動物の撮像部位と略共役な位置に配置されている液晶フィルタまたはデジタル・マイクロミラー・デバイスである請求項1または請求項2に記載の蛍光観察装置。
【請求項4】
前記遮光手段が、前記光学系の瞳位置と略共役な位置に配置されているガルバノミラーである請求項1または請求項2に記載の蛍光観察装置。
【請求項5】
励起光を実験小動物の撮像部位に照射する照射工程と、
前記実験小動物からの蛍光像を撮像する第1の撮像工程と、
該第1の撮像工程において取得された蛍光画像における所定の蛍光量以上の高蛍光領域を抽出する抽出工程と、
該抽出工程において抽出された前記高蛍光領域に対応する実験小動物の高蛍光部位または当該高蛍光部位の像を遮光する遮光工程と、
該遮光工程において前記高蛍光領域に対応する実験小動物の高蛍光部位または当該高蛍光部位の像を遮光した状態で当該実験小動物からの蛍光像を撮像する第2の撮像工程とを含む蛍光観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−257967(P2009−257967A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108036(P2008−108036)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】