説明

蛍光試薬

【課題】蛍光試薬を提供する。
【解決手段】2つの異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出するための蛍光試薬であって、DAABD−Cl又はDAABSeD−Fの誘導体、及び上記誘導体が、DAPABD−Cl、DEAEABD−Cl、DEAPABD−Cl、DAPABSeD−F、DEAEABSeD−F、又はDEAPABSeD−Fである誘導体。
【効果】本発明により、プロテオーム解析において、異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出することが可能な新規蛍光試薬を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出することを可能とする新規蛍光試薬に関するものであり、更に詳しくは、DAABD−Cl又はDAABSeD−Fの新規誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより検出する蛍光試薬として、本発明者は、先に、SBD−F、SBSeD−F、DAABD−Cl、DAABSeD−Fを開発している(非特許文献1−2)。
【0003】
【非特許文献1】Analytical Chemistry 2003,75,3725−3730
【非特許文献2】Journal of Materials Chemistry 2005,15,2865−2872
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでに本発明者らは、チオール基選択的水溶性ベンゾフラザン蛍光誘導体化試薬である7−Fluoro−2,1,3−benzoxadiazole−4−sulfonate(SBD−F)及び4−(Dimethylaminoethylaminosulfonyl)−7−chloro−2,1,3−benzoxadiazole(DAABD−Cl)を開発し、これを用いてタンパク質を誘導体化し、HPLC−蛍光検出法及びLC−MS/MSデータベース検索により同定するプロテオーム解析法(FD−LC−MS/MS法)を開発した。一方、異なる試料の同時分析を可能とするためDAABD−Clと異なる蛍光特性を持ちベンゾセレナジアゾール骨格をする7−Fluoro−N−[2−(dimethylamino)ethyl]−2,1,3−benzoselenadiazole−4−sulfonamide(DAABSeD−F)の開発を行い、それぞれの誘導体の二波長同時検出法の開発を試みたが、誘導体の保持時間は大きく異なっていた。本発明では、6種の化合物を新規に合成し、それらを組み合わせた二波長同時検出法の構築に成功した。
本発明は、プロテオーム解析において、異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出することが可能な新規蛍光試薬を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)2つの異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出するための蛍光試薬であって、DAABD−Cl又はDAABSeD−Fの誘導体。
(2)上記誘導体が、DAPABD−Cl、DEAEABD−Cl、DEAPABD−Cl、DAPABSeD−F、DEAEABSeD−F、又はDEAPABSeD−Fである前記(1)記載の誘導体。
【0006】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
1.新規蛍光試薬の合成
本発明では、4−chloro−7−chlorosulfonyl−2,1,3−benzoxadiazole(CBD−Cl)をトリエチルアミン存在下でN,N−dimethyl−1,3−propanediamine、N,N−diethylethylenediamine、N,N−diethyl−1,3−propanediamineと室温又は0℃でそれぞれ反応させて、
7−Chloro−N−[3−(dimethylamino)propyl]−2,1,3−benzoxadiazole−4−sulfonamide(DAPABD−Cl,2)
7−Chloro−N−[2−(diethylamino)ethyl]−2,1,3−benzoxadiazole−4−sulfonamide(DEAEABD−Cl,3)
7−Chloro−N−[3−(diethylamino)propyl]−2,1,3−benzoxadiazole−4−sulfonamide(DEAPABD−Cl,4)
を合成した。また、2−Fluoro−6−nitroanilineを出発材料とし、パラジウム−活性炭触媒で接触還元を行い、3−fluoro−o−phenylendiamineを得た。これをSeOと反応させ、4−fluoro−2,1,3−benzoselenadiazoleを得た。これをクロロスルホン酸と反応させ、4−chlrosulfonyl−7−fluoro−2,1,3−benzoselenadiazole(CBSeD−F)を得た。CBSeD−FをCBD−Clと同様に反応させ、
7−Fluoro−N−[3−(dimethylamino)propyl]−2,1,3−benzoselenadiazole−4−sulfonamide(DAPABSeD−F,6)
7−Fluoro−N−[2−(diethylamino)ethyl]−2,1,3−benzoselenadiazole−4−sulfonamide(DEAEABSeD−F,7)
7−Fluoro−N−[3−(diethylamino)propyl]−2,1,3−benzoselenadiazole−4−sulfonamide(DEAPABSeD−F,8)
をそれぞれ合成した。
【0007】
2.誘導体の蛍光特性の検討
ペプチド及びタンパク質との反応性
2.5μMオキシトシンと0.3μM BSAの混合液10μLを120μLの50mM CHAPS・5mM TCEP・10mM EDTA混合液、60μLの8M塩酸グアニジン溶液(pH8.5)、10μLの140mM化合物1−8各溶液をそれぞれ混合し、40℃・10−80分間反応させた。化合物1−8はそれぞれアセトニトリルに、オキシトシンは純水に、それ以外の物質は8M塩酸グアニジン溶液(pH8.5)にそれぞれ溶解させた。反応液の10μLを蛍光検出器を接続したHPLCに注入し、蛍光強度を測定した。
【0008】
各誘導体の蛍光スペクトル測定
100μMオキシトシンと10μM BSAの混合液10μLを60μLの50mM CHAPS・5mM TCEP・10mM EDTA混合液、25μLの8M塩酸グアニジン溶液(pH8.5)、5μLの140mM化合物1−8各溶液をそれぞれ混合し、40℃・40分間反応させた。化合物1−8はそれぞれアセトニトリルに、オキシトシンは純水に、それ以外の物質は8M塩酸グアニジンを含むビシン緩衝溶液(pH8.5)にそれぞれ溶解させた。3μLの10%トリフルオロ酢酸を加えて反応を停止させた後、反応液の10μLを蛍光検出器を接続したHPLCに注入し、オキシトシンとBSAに相当する部分を分取した。各分画について蛍光光度計で励起・蛍光波長を測定した。
【0009】
各誘導体の保持時間の測定
2.5μMオキシトシン・5.0μMソマトスタチン・2.5μMカルシトニン・2.5μMトリプシンインヒビター及び0.5μM BSAの混合液10μLを[各誘導体の蛍光スペクトル測定]と同様の方法で蛍光誘導体化反応を行った。反応液の20μLを蛍光検出器を接続したHPLCに注入し、各誘導体の保持時間を測定した。(表2)
【0010】
HPLC条件:
Column:Imtakt WP−RP(250x4.6mmI.D.)
Solvent:(a)10% CHCN with 0.1% TFA (b)70% CHCN with 0.1% TFA
Gradient:time:0→36(min),(b):0→60%
Flow rate:0.70ml/min
Temperature:60℃
Fluorescence detection:
395nm(Em),505nm(Ex)for compounds 1−4
422nm(Em),542nm(Ex)for compounds 5−8
【0011】
3.二波長同時測定法の検討
5.0μMオキシトシン及び0.5μM BSAの混合液10μL[各誘導体の蛍光スペクトル測定]と同様の方法でDAABD−Cl(1)又はDEAEABSeD−F(7)とそれぞれ蛍光標識化反応を行った。反応液を当量ずつ混合しその20μLを蛍光検出器2台を直列に接続したHPLCに注入し二波長同時測定を行った。
【0012】
HPLC条件:
Column:Imtakt WP−RP(250x4.6mmI.D.)
Solvent:(a)10% CHCN with 0.1% TFA (b)70% CHCN with 0.1% TFA
Gradient:Gradient:time:0→36(min),(b):0→60%
Flow rate:0.70ml/min
Temperature:60℃
Fluorescence detection:
450nm(Em),570nm(Ex)for 1st detector
375nm(Em),480nm(Ex)for 2nd detector
【0013】
本発明でベンゾキサジアゾール骨格及びベンゾセレナジアゾール骨格を持つ蛍光試薬6種を新たに合成した。各試薬の反応性を検討したところ、いずれも反応時間40分で最大の蛍光強度を与えた。また、各試薬誘導体の励起・蛍光波長は骨格に依存し、側鎖部分の変化は蛍光特性に大きな影響は与えなかった。
ペプチド及びタンパク質で各試薬誘導体の保持時間を測定したところ、DAABD−Cl(1)とDEAEABSeD−F(7)及びDAPABD−Cl(2)とDEAPABSeD−F(8)の組合せでそれぞれの誘導体が異なる蛍光特性とほぼ同じ保持時間を示し、二波長同時測定法への適用が可能であることが示唆された。
DAABD−Cl(1)とDEAEABSeD−F(7)の組合せでペプチドとタンパク質を用いて二波長同時検出法の検討を行った。その結果、それぞれの試薬に対して特異的なクロマトグラムが類似した形で得ることができた。この試薬の組合せは、DAABSeD−F(5)を用いた場合よりもピークの比較同定が容易であることから、二波長同時測定法を用いた変異タンパク質の発見など、プロテオーム解析への様々な応用が期待できる。
【0014】
誘導体の蛍光特性
誘導体のフルオレッセンススペクトルを測定し、新しく合成された試薬(2−4,6−8)は同時検出実験に利用可能であることが確認された。本発明では、誘導体はHPLCで分離され、スペクトルを直接測定した。ベンゾキサジアゾール試薬(1−4)誘導体は、最大励起波長がペプチド(oxytocin)で386から389nm及びプロテイン(BSA)で389から392nmの範囲であり、また、最大発光波長は、503から505nm及び502から503nmであった。
一方、ベンゾキサジアゾール試薬(5−8)誘導体は、最大励起波長は410から412nm及び418から423nmの範囲であり、また、最大発光波長は、531から535nm及び535から537nmの範囲であった(表1)。
【0015】
【表1】

【0016】
ペプチド及びプロテインの蛍光誘導体の分離
各誘導体のリテンションタイムは、表2に示される。
DAABSeD−oxytocinは、DAABD−oxytocinの約2分前に溶出された。一方、DAABSeD−F(5)のN,N−ジメチルエチレンジアミン部分をN,N−ジメチルプロピレンジアミンで置換した、DAPABSeD−Fで誘導体化されたDAPABSeD−oxytocinは、DAABSeD−oxytocinの0.7分後に溶出された。
DAABSeD−FのN,N−ジメチルエチレンジアミン部分をN,N−ジエチルエチレンジアミンで置換した、DEAEABSeD−F(7)で誘導体化されたDEAEABSeD−oxytocinは、DAABSeD−oxytocinの約2.9分後に溶出した。
DAABSeD−FのN,N−ジメチルエチレンジアミン部分をN,N−ジエチルプロピレンジアミンで置換した、DEAPABSeD−F(8)で誘導体化されたDEAPABSeD−oxytocinは、DAPABSeD−及びDEAEBSeD−oxytocinの約2.6分後に溶出された。
【0017】
【表2】

【発明の効果】
【0018】
本発明により、プロテオーム解析において、異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出することが可能な新規蛍光試薬を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
試薬
DAABD−Cl,1及びN−DAABSeD−F,5は、文献(非特許文献1−2)に記載の方法に従って合成した。4−クロロ−7−クロロスルホニル−2,1,3−ベンゾキサジアゾールは市販品(東京化成工業)を購入し、それ以上精製しないで使用した。トリプシン阻害剤(soybean:MW24049)、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン及びN,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミンは市販品(和光純薬工業)を購入し、それ以上精製しないで使用した。
トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン ハイドロクロライド(TCEP)、8Mグアニジン ハイドロクロライド(bicine、pH8.5)及び子牛血清アルブミン(BSA,MW66385)は市販品(Sigma−Aldrich社)を購入した。
【0020】
オキシトシン(MW1007)及びカルシトニン(ヒト;MW3418)は市販品(ペプチド工業)を購入した。
ソマトスタチン(MW1638)は市販品(MP Biomedicals社)を購入した。3−[(3−コルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)及びエチレンジアミンテトラアセチック アシド ジソジウム塩(NaEDTA)は市販品(Dojindo研究所)を購入した。HPLC実験のために、アセトニトリル(HPLCグレード)及びトリフルオロアセチック アシド(アミノ酸配列グレード)は市販品(和光純薬工業)を購入した。Quik Start Protein Assay Kitは市販品(Bio−Rad Laboratories社)を購入した。その他の全ての試薬は、分析用又は保障付試薬を使用した。
【実施例1】
【0021】
7−クロロ−N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−2,1,3−ベンゾキサジアゾール−4−スルホンアミド(DAPABD−Cl,2)
4−クロロ−7−クロロスルホニル−2,1,3−ベンゾキサジアゾールのアセトニトリル(8ml)溶液に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(0.18ml,1.43モル)及びトリエチルアミン(0.20ml,1.43モル)を室温で加えた。反応混合物を30分撹拌し、真空下で濃縮した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、飽和アンモニウムクロライド溶液及び塩水で洗浄し、有機相をNaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)で精製し、DAPABD−Cl(2)を黄色結晶として得た。
【0022】
(87.5mg,28%;mp136.8−138.4℃). H−NMR(CDCl,500MHz)δ7.95(d,J=7.4Hz,1H),7.51(d,J=7.4Hz,1H),3.16(t,J=5.7Hz,2H),2.43(t,J=5.7Hz,2H),2.27(s,6H),1.68(q,J=5.7Hz,2H);13C−NMR(CDCl,125MHz)δ148.85,145.10,133.34,129.18,128.23,127.18,59.10,45.04,44.19,24.63;IR(KBr,cm−1)3446,2951,2806,1527,1340,1151;HRMS(EI)calculated for C1115ClNS (M)318.0553,found 318.0564.
【実施例2】
【0023】
7−クロロ−N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−2,1,3−ベンゾキサジアゾール−4−スルホンアミド(DEAEABD−Cl,3)
4−クロロスルホニル−2,1,3−ベンゾキサジアゾール(0.25g,0.99モル)のアセトニトリル(8ml)溶液に、N,N−ジメチルエチレンジアミン(0.21ml,1.49モル)及びトリエチルアミン(0.21ml,1.49モル)を室温で加えた。反応混合物を30分撹拌し、真空下で濃縮した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、アンモニウムクロライド水溶液及び塩水で洗浄し、有機相をNaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製し、黄色固体を得た。メチレンクロライド及びジイソプロピルエーテルからの再結晶化により、DEAEABD−Cl,(3)を明黄色の板状体として得た。
【0024】
(0.22g,67%;mp88.8−90.4℃). H−NMR(CDCl,500MHz)δ7.97(d,J=7.4Hz,1H),7.53(d,J=7.4Hz,1H),3.05(t,J=5.7Hz,2H),2.48(t,J=5.7Hz,2H),2.33(q,J=7.5Hz,4H),0.87(t,J=7.5Hz,6H);13C−NMR(CDCl,125MHz)δ148.77,145.00,133.40,129.15,127.88,127.47,51.14,46.09,40.45,11.36;IR(KBr,cm−1)3446,3209,3101,2976,2817,1525,1347,1164;Anal.calcd.for C1217ClNS:C,43.31;H,5.15;N,16.83.Found:C,43.45;H,5.03;N,16.93.
【実施例3】
【0025】
7−クロロ−N−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]−2,1,3−ベンゾキサジアゾール−4−スルホンアミド(DEAPABD−Cl,4)
4−クロロ−7−クロロスルホニル−2,1,3−ベンゾキサジアゾール(0.21g,0.83モル)のアセトニトリル(8ml)溶液に、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン(0.20ml,1.25モル)及びトリエチルアミン(0.17ml,1.25モル)を0℃で加えた。反応混合物を同一温度で30分撹拌し、真空下で濃縮した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、飽和アンモニウムクロライド溶液及び塩水で洗浄し、有機相をNaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製し、DEAPABD−Cl(4)を明るい黄色の結晶として得た。
【0026】
(0.10g,35%;mp99.7−101.9℃). H−NMR(CDOD,500MHz)δ8.06(d,J=7.5Hz,1H),7.77(d,J=7.5Hz,1H),3.19(m,8H),1.93(m,2H),1.32(t,J=7.5Hz,6H);13C−NMR(CDOD,125MHz)δ150.39,146.66,135.58,131.33,129.33,128.10,50.41,41.21,25.69,9.26;IR(KBr,cm−1)3501,3428,3209,2973,2733,2675,1524,1338,1160;HRMS(EI)calculated for C1319ClNS(M)346.0866,found 346.0838.
【実施例4】
【0027】
7−フルオロ−N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール−4−スルホンアミド(DAPABSeD−F,6)
7−フルオロ−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール−4−スルホニルクロライド(0.30g,0.98モル)のアセトニトリル(8ml)溶液に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(0.12ml,0.98モル)及びトリエチルアミン(0.14ml,0.98モル)を0℃で加え、反応混合物を同じ温度で15分撹拌した。飽和アンモニウムクロライド水溶液を混合物に加え、全体をメチレンクロライドで3回抽出した。有機相を合わせて、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)で精製し、DAPABSeD−F(6)をオレンジ色の結晶として得た。
【0028】
(0.32g,88%;mp100.9−102.1℃). H−NMR(CDOD,400MHz)δ8.17(dd,J=5.2,8.0Hz,1H),7.31(dd,J=8.0,9.6Hz,1H),2.94(t,J=6.8Hz,2H),2.25(t,J=7.2Hz,2H),2.13(s,6H),1.58(m,2H);13C−NMR(CDOD,100MHz)δ158.88,156.88,156.86,156.20,153.01,152.86,133.52,133.43,131.15,131.09,111.01,110.83,57.90,45.30,42.53,28.26;IR(KBr,cm−1)1531,1330,1150,1096;HRMS(EI)calculated for C1115FNSSe(M)366.0065,found 366.0054.
【実施例5】
【0029】
7−フルオロ−N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール−4−スルホンアミド(DEAEABSeD−F,7)
7−フルオロ−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール−4−スルホニルクロライド(0.31g,1.03モル)のアセトニトリル(8ml)溶液に、N,N−ジエチルエチレンジアミン(0.15ml,1.03モル)及びトリエチルアミン(0.14ml,1.03モル)を0℃で加えた。反応混合物を同じ温度で20分撹拌し、上述の方法と同様にして、DEAEABSeD−F(7)をオレンジ色の結晶として得た。
【0030】
(0.33g,84%;mp70.5−71.1℃). H−NMR(CDOD,400MHz)δ8.18(dd,J=4.8,8.4Hz,1H),7.32(dd,J=8.4,10.0Hz,1H),2.99(t,J=7.0Hz,2H),2.51(t,J=7.0Hz,6H),2.40(q,J=7.2Hz,4H),0.90(t,J=7.2Hz,6H);13C−NMR(CDOD,100MHz)δ158.91,156.83,156.22,152.95,152.81,133.50,133.41,130.87,130.82,111.02,110.84,52.97,47.79,41.54,11.37;IR(KBr,cm−1)1526,1333,1149;HRMS(EI)calculated for C1217FNSSe(M)380.0221,found 380.0240.
【実施例6】
【0031】
7−フルオロ−N−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール−4−スルホンアミド(DEAPABSeD−F,8)
7−フルオロ−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール−4−スルホニルクロライド(0.30g,0.99モル)のアセトニトリル(8ml)溶液に、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン(0.16ml,0.99モル)及びトリエチルアミン(0.14ml,0.99モル)を0℃で加えた。反応混合物を同じ温度で20分撹拌し、上述の方法と同様にして、DEAPABSeD−F(8)をオレンジ色の結晶として得た。
【0032】
(0.33g,85%;mp142.7−143.2℃). H−NMR(CDOD,400MHz)δ8.17(dd,J=5.2,8.0Hz,1H),7.32(dd,J=8.0,9.6Hz,1H),3.30(t,J=6.4Hz,2H),2.45−2.36(m,6H),1.55(m,1H),1.63(t,J=7.6Hz,6H);13C−NMR(CDOD,100MHz)δ158.87,156.90,156.88,156.18,153.02,152.87,133.47,133.39,131.25,131.20,111.03,110.84,51.23,47.59,42.79,27.28,11.17;IR(KBr,cm−1)1615,1526,1321;HRMS(EI)calculated for C1319FNSSe(M)394.0378,found 394.0333.
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上詳述したように、本発明は、蛍光試薬に係るものであり、本発明により、プロテオーム解析において、2つの異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出してペプチド又はプロテインのプロファイルを高精度に解析することを可能とする新規蛍光試薬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】蛍光試薬の化学構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの異なるサンプル中のペプチド又はプロテインをHPLCにより同時検出するための蛍光試薬であって、DAABD−Cl又はDAABSeD−Fの誘導体。
【請求項2】
上記誘導体が、DAPABD−Cl、DEAEABD−Cl、DEAPABD−Cl、DAPABSeD−F、DEAEABSeD−F、又はDEAPABSeD−Fである請求項1記載の誘導体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−309707(P2007−309707A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137106(P2006−137106)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月28日 社団法人日本薬学会主催の「日本薬学会第126年会」において文書をもって発表
【出願人】(592191793)
【Fターム(参考)】