説明

蛍光顕微鏡検査を利用する競合的微粒子イムノアッセイ法

本発明は、蛍光顕微鏡検査を利用する競合イムノアッセイによってサンプル中の分析物を測定する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、鳥卵由来の胚液(例、尿膜腔液または血液)のサンプル中のエストロゲン様ステロイド化合物の存在を決定するステップによって、インオボの鳥類胚の性別を決定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願に関する情報>
本出願は、その開示が本明細書に全体として組み込まれる2005年5月11日に提出された米国特許仮出願第60/679,717号の利益を主張する。
【0002】
<発明の分野>
本発明は、一般に、サンプル中の分析物を測定する方法、より詳細には、競合的微粒子イムノアッセイを用いて分析物を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一部の観察可能な性質に基づく家禽卵の識別は、養鶏業において周知で長年にわたり実施されている。「キャンドリング」は、最初にキャンドルからの光を用いて卵を検査した実践を基礎とする用語である、そのような技術の一般名である。卵に詳しい当業者には知られているように、卵殻はほとんどの照明条件下では不透明に見えるが、実際にはいくらか透光性であり、直接光線の正面に置かれると、卵の内容物を観察できる。
【0004】
孵化場の管理では、性別、疾患、遺伝形質などの様々な特性に基づいて鳥類を分類するのが望ましいことがある。例えば、雄鳥には特定ワクチンを接種し、雌鳥には相違するワクチンを接種するのが望ましいことがある。孵化時の鳥の性選別は、同様に他の理由から重要なことがある。例えば、シチメンチョウは、慣習的には雄および雌のシチメンチョウの発育速度および栄養要件の相違のために性で分けられる。産卵鶏もしくは食用卵産業では、雌だけを飼育するのが望ましい。ブロイラー産業では、給餌効率を増加し、処理一様性を改善し、そして生産コストを低下させるために性に基づいて鳥を分離することが望ましい。
【0005】
残念なことに、鳥を雌雄鑑別する従来法は費用がかかり、大きな労力を必要とし、時間を消費し、そして典型的には特殊技術を備える訓練を積んだ人材を必要とすることがある。鳥を雌雄鑑別する従来法には、羽毛鑑別法、肛門鑑別法、およびDNAもしくは血液鑑別法が含まれる。約3,000羽の幼鳥を羽毛鑑別するには1時間で1羽当たり約0.7〜2.5セントの費用がかかる。約1,500羽の幼鳥を肛門鑑別するには1時間で1羽当たり約3.6〜4.8セントの費用がかかる。DNAもしくは血液鑑別法は、鳥から採取された少量の血液サンプルを分析することによって実施する。
【0006】
鳥の性別、ならびに鳥の他の特性を孵化前に同定できれば望ましい。孵化前の性別同定は、養鶏業の様々な構成員にとって費用を大きく減らすことができる。従来型のキャンドリング技術は生きている卵と生きていない卵とをある程度は効果的に識別できるが、これらの従来型キャンドリング技術は、まだ孵化していない鳥の性別および他の特性を確実に決定することはできない。
【発明の開示】
【0007】
1つの態様として、本発明は、サンプル中の分析物の存在を検出する方法であって、
サンプルと、競合分子を結合された複数の微粒子と、分析物へ特異的に結合する蛍光標識された結合タンパク質とを一緒に混合するステップと、
前記微粒子を沈殿させるために十分な時間にわたり容器内に前記混合物を配置するステップと、
蛍光顕微鏡検査を用いて1つまたは複数の領域内で蛍光標識された沈殿した微粒子の数を検出し、前記蛍光標識された微粒子の数を所定値と比較することによって、前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップとを含み、微粒子の数が所定値を下回ることにより、前記分析物が前記サンプル中に閾値レベルを越えて存在することが示される方法を提供する。
【0008】
本発明は、卵内の鳥類胚の性別を決定する方法であって、
競合分子を結合された複数の微粒子と、鳥卵由来の尿膜腔液のサンプルと、エストロゲン様ステロイド化合物へ特異的に結合する蛍光標識された結合タンパク質とを一緒に混合するステップと、
前記微粒子を沈殿させるために十分な時間にわたり容器内に前記混合物を配置するステップと、
蛍光顕微鏡検査を用いて蛍光標識されている沈殿した微粒子を検出することによって前記サンプル中の前記エストロゲン様ステロイド化合物の存在を決定するステップと
を含み、前記サンプル中の前記エストロゲン様ステロイド化合物の閾値量を上回る存在により鳥類胚が雌であることが示される方法もまた提供する。
【0009】
また別の態様として、本発明は、サンプル中の分析物の存在を検出する方法であって、
液体サンプルと、競合分子を結合された複数の浮揚性微粒子と、分析物へ特異的に結合する蛍光標識された結合タンパク質とを一緒に混合するステップと、
前記浮揚性微粒子を前記液体混合物の表面近くに浮揚させるために十分な時間にわたり容器内に前記液体混合物を配置するステップと、
蛍光顕微鏡検査を用いて蛍光標識されている微粒子の数を検出し、前記蛍光標識されている微粒子の数を所定値と比較することによって、前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップとを含み、このとき前記所定値を下回ることにより、前記分析物が液体サンプル中に閾値レベルを越えて存在することが示される方法を提供する。
【0010】
以下の本発明の説明では、本発明の上記やその他の態様についてより詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下では、本発明の好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照しながら本発明をより十分に説明する。しかし本発明は、多数の相違する形態で具体化することができ、本明細書に記載した実施形態に限定されると見なすべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全であるように、そして当業者へ本発明の範囲を完全に伝えるように提供されている。
【0012】
同様の番号は、本明細書を通して同様の要素を意味する。図面においては、所定の線、層、構成成分、要素もしくは機能の厚さは明確さのために強調されていることがある。破線は、他に規定しない限り、任意の機能もしくは作業を示している。
【0013】
本明細書で使用した用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的としており、本発明を限定することは意図されていない。本発明で使用する単数形の「1つの(a、an)」および「その(the)」は、状況が他のことを明確に意味しない限り、複数形も同様に含むことが意図されている。さらに、用語「含む(comprise、comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」などは、本明細書で使用する場合は、上記の機能、物、ステップ、作業、要素、および/または構成成分の存在を規定しているが、1つまたは複数の他の機能、物、ステップ、作業、要素、構成成分、および/または群の存在もしくは添加を排除しないことも理解される。本明細書で使用する用語「および/または」は、関連する列挙した項目の1つまたは複数の任意および全部の組み合わせを含む。本明細書で使用する「X〜Yの間」および「約X〜Yの間」などの言い回しは、XおよびYを含むと解釈されたい。本明細書で使用するような「約X〜Yの間」などの言い回しは、「約X〜約Yの間」を意味する。本明細書で使用する「約X〜Y」などの言い回しは、「約X〜約Y」を意味する。
【0014】
特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。さらに、一般に使用される辞書に規定されている用語などの用語は、本明細書および関連分野の状況におけるそれらの意味に一致する意味を有すると解釈すべきであり、本明細書に明示的にそのように規定されていない限り理想的もしくは過度に形式的意味で解釈されるべきではないと理解されたい。周知の機能もしくは構造は、簡潔さおよび/または明確さのために詳述されないことがある。
【0015】
1つの要素がまた別の要素の「上に」、「取り付けられて」、「接続されて」、「結合されて」、「接触して」などと言及される場合は、1つの要素は他の要素の直接上に、取り付けられて、接続されて、結合されて、接触していてよい、または介在要素もまた存在していてよいと理解される。これとは対照的に、1つの要素が、例えばまた別の要素の「直接上に」、「直接取り付けられて」、「直接接続されて」、「直接結合されて」、または「直接接触して」いると言われる場合は、介在要素は存在しない。当業者には、他の機能に「隣接して」配置されている構造もしくは機能についての言及は、隣接機能に重複する、もしくはその下にある部分を有する可能性があることもまた理解される。
【0016】
「下方」、「より下」、「低い」、「上方」、「上部」などの空間的相対語は、本明細書では図面に例示した1つの要素もしくは機能のまた別の要素もしくは機能との関係を記載するための説明を容易にするために使用することができる。空間的相対語は、図面に描出した方向に加えて使用もしくは操作における器具の相違する方向を含むことが意図されている。例えば、図面の中の器具が逆転すると、他の要素もしくは機能の「下方」もしくは「下の」として記載された要素は、他の要素もしくは機能の「上方」に方向付けられる。そこで、典型的用語「下方」は、「上方」および「下方」の両方の方向を含むことができる。本器具は、別な方向(90度回転させて、または他の方向)に方向付けることができ、本明細書で使用した空間的相対記述子はそれに合わせて解釈できる。同様に、用語「上向きに」、「下向きに」、「垂直」、「水平」などは、詳細に他のことを指示していない限り、本明細書では説明することを目的に使用されている。
【0017】
用語「第1」、「第2」などは本明細書では様々な要素、構成成分、領域、層、および/または区域を記載するために使用できるが、これらの要素、構成成分、領域、層、および/または区域はこれらの用語によって限定されてはならない。これらの用語は、1つの要素、構成成分、領域、層もしくは区域を他の要素、構成成分、領域、層もしくは区域から識別するためにのみ使用される。そこで、以下で考察する「第1」要素、構成成分、領域、層、もしくは区域は、本発明の教示から逸脱せずに「第2」要素、構成成分、領域、層、もしくは区域と呼ぶこともできる。作動(もしくはステップ)の順序は、他に特別に記載しない限り、特許請求項もしくは図面に提示した順序に限定されない。
【0018】
本発明の実施形態は、分析物を検出するための高速かつ安価な方法を提供する。本発明の実施形態は、最小限のサンプル処理および操作を含むハイスループット自動化と適合する。
【0019】
図1を参照すると、本発明の一部実施形態によるサンプル中の分析物の存在を検出する方法が示されている。物質のサンプルが入手され(ブロック10)、次に競合分子を結合された微粒子、および分析物へ特異的に結合する蛍光標識されている結合タンパク質と一緒に混合される(ブロック20)。
【0020】
サンプルは、有機および無機物質を含む実質的に任意の起源から入手することができ、そして特定の実施形態では、生物学的サンプル(例、被験体もしくは鳥卵由来)であってもよい。典型的な生物学的サンプルは、尿、便、血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液、乳汁、尿膜腔液、卵黄、羊水、胚芽下腔液、組織、組織ホモジネートおよびそれらの混合物を含むがそれらに限定されない生体液および組織を含む。鳥卵の場合は、具体的なサンプル物質は、尿膜腔液、血液、羊水、組織、組織ホモジネートなどから入手できる、または上記のいずれかの抽出物であってもよい。
【0021】
他の実施形態では、サンプルは、土壌サンプル、水サンプル、廃水サンプルなど、または上記のいずれかの抽出物であってもよい。
【0022】
本発明の実施形態は、胚発生期中の特定日(例、第11日)の鳥卵に限定されない。本発明の特定の実施形態によると、サンプルはインオボ(卵内)孵卵(すなわち胚発生)の後半、第3四半期もしくは第4四半期における卵由来である。例えば、鶏卵については、孵卵の後半は孵卵のほぼ第10〜12日であり、インオボ孵卵の第3四半期は孵卵のほぼ第10〜14日であり、そしてインオボ孵卵の第4四半期は孵卵の第15〜20日である。特定の実施形態では、サンプルはインオボ孵卵のほぼ第18もしくは19日にある鶏卵由来である。他の実施形態では、サンプルは孵卵のほぼ第14〜27日、孵卵のほぼ第14〜20日、孵卵の第21〜27日、または孵卵の第25もしくは26日のシチメンチョウの卵から採取される。
【0023】
さらに、本発明の実施形態による方法は、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、ツル、インコ、オウムの卵などを含むがそれらに限定されない任意のタイプの鳥卵と一緒に使用できる。
【0024】
サンプル、微粒子および結合タンパク質の混合は、様々なステップにおいて実施できる。例えば、サンプルおよび結合タンパク質を最初に一緒に混合することができ、次に微粒子がサンプルと結合タンパク質の混合物に添加される。しかし、本発明の実施形態は、構成成分を一緒に混合する任意の特定順序には限定されない。
【0025】
混合物は、ある期間にわたり保存できるが(ブロック30)、このステップは全実施形態において必ずしも必要とされない。一部の実施形態によると、混合物は、約1分間〜約45分間にわたり保存できる。他の実施形態によると、混合物は60分間より長い時間(例えば、約2〜6時間または約3〜4時間)にわたり保存できる。
【0026】
次に混合物は、微粒子を混合物の底部に沈殿させるために十分な時間にわたり容器内に配置される(ブロック40)。本明細書で使用する用語「沈殿する」、「沈殿している」などは、微粒子が実質的に容器の底面上に沈着することを意味する。微粒子が沈殿するために必要とされる時間は、当業者には理解されるように、微粒子およびサンプルによる関数である。例えば、高粘度を備える混合物は、微粒子を沈殿させるために低粘度を有する混合物よりも長い時間を必要とする可能性がある。
【0027】
容器内に配置される混合物の量は、実質的に任意の量であってもよい。典型的な量は、約1〜25、50、100もしくは250μLであってもよい。
【0028】
容器は、混合物を保持できる実質的に任意のタイプの装置であってもよい。典型的な容器には、顕微鏡スライド、サンプルウェルなどが含まれるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、容器は、マルチウェルプレート、例えば4ウェル、12ウェル、24ウェル、96ウェル、384ウェルまたは1,536ウェルプレートのウェルである。本方法は、一度に1つの容器内の、または複数の容器(例、マルチウェルプレート)内の分析物の存在を検出するために実施できる。
【0029】
混合物は、以下で記載するように、蛍光顕微鏡検査によって観察されるので、容器の1つまたは複数の部分は一般に光学的に透明である。例えば、容器がウェルである場合は、ウェルの底面部分は、典型的には光学的に透明であるので、混合物はウェルの底部を通して観察および/またはイメージングできる。観察/イメージングがウェルの上部を通して行なわれる状況では、ウェルの上部が光学的に透明でなければならない。
【0030】
本発明の長所の1つは、従来型蛍光顕微鏡を用いて実施できることであり、それによって例えば共焦点顕微鏡などの、他の技術に結び付いたより高価な装置に対する必要性が回避される。そこで、特定の実施形態では、本発明の方法は共焦点顕微鏡を使用しない。
【0031】
また別の長所として、本発明の方法によると、上述したように微粒子を沈殿させることによる分離作業を行うだけでよく、それ以外に微粒子から結合していない標識された結合タンパク質を分離する必要がない。
【0032】
微粒子が沈殿すると、サンプル中の分析物の存在は、沈殿した微粒子に結合した蛍光標識されている結合タンパク質を検出することによって、蛍光顕微鏡検査によって決定される(ブロック50)。
【0033】
分析物の決定は、本発明の実施形態によると、本質的に定量的よりむしろ定性的である。例えば、特定の実施形態では、サンプル中のエストロゲン様ステロイド化合物の定性的決定を使用すると、サンプル中のエストロゲン様ステロイド化合物の量を定量するためのより高価な顕微鏡技術を利用せずとも、鳥類胚が雄または雌のいずれであるかを決定することができる。
【0034】
さらに、本発明によると、結合していない蛍光(すなわち、バックグラウンド)を定量する、および/または結合した蛍光を定量する、および/またはこれら2つの数値間の比または差を決定するステップを必要としない。さらに、特定の実施形態では、本発明の方法は、結合していない蛍光(すなわち、バックグラウンド)を定量しない、および/または結合した蛍光を定量しない、および/またはこれら2つの数値間の比または差を決定しない。
【0035】
本明細書で使用する「定量する」、「定量的」などの用語は、例えば指示された物質の量(例、重量および/または濃度)の決定に関連する当分野において一般に理解されている意味を有する。
【0036】
特定の実施形態では、分析物の存在は、カットオフ値との比較によって決定される。カットオフ値を上回る蛍光は、分析物が存在しない、または低濃度で存在することを示し、カットオフ値を下回る蛍光は、分析物が閾値を上回って存在することを示す。例えば、胚液(例、血液もしくは尿膜腔液)中のエストロゲン様ステロイド化合物を検出することによって卵内の鳥類胚の性別を決定するための本発明を実施する方法では、カットオフ値を上回る蛍光は、雄胚(すなわち、胚液中の低レベルのエストロゲン様ステロイド化合物)を示し、カットオフ値を下回る蛍光は、雌胚(すなわち、胚液中の相対的に高いレベルのエストロゲン様ステロイド化合物)を示す。本発明の方法は、例えばサンプル中の閾値を超える汚染、病原体もしくは規制物質の存在などの他の定性的決定を行なうために使用できる。
【0037】
他の代表的な実施形態では、本発明は、抗原(例えば表面抗原)または病原体へ特異的に結合する抗体を検出することによって、サンプル中の病原体の存在を決定するために実施される。具体的に例示すると、本方法は、病原体の存在または個別被験体、産卵鶏(すなわち移行抗体の場合)などの母親および/または鳥類もしくは動物被験体の一団もしくは一群各々による病原体への以前の曝露を決定できるように、血液、血清もしくは血漿または卵由来の胚液(例、卵黄、血液、尿膜腔液、羊水)中の抗原または抗体を検出するために実施できる。
【0038】
例えば、鳥インフルエンザの存在、および/または被験体、産卵鶏(すなわち移行抗体の場合)および/または群からの鳥インフルエンザへの事前の曝露を決定するために、鳥卵由来の卵黄中または孵化後の鳥類被験体由来の血液、血漿もしくは血清中に鳥インフルエンザに対する抗体(すなわち移行抗体)の存在を検出できる。
【0039】
また別の例として、鳥インフルエンザの存在、および/または被験体、産卵鶏(すなわち移行抗体の場合)および/または群からの鳥インフルエンザへの事前の曝露を決定するために、水サンプル中、または孵化後の鳥類もしくは鳥類インオボ由来の血液、血漿もしくは血清中に鳥インフルエンザ表面抗原の存在を検出できる。
【0040】
カットオフ値は、当分野において知られている任意の手段によって決定することができ、任意の所定値である。特定の実施形態では、カットオフ値は、例えば知られている量の分析物の存在についての事前の決定および/または事前のアッセイに基づいて固定されるという意味で規定されている。または、用語「所定の」値は、特定の数値が同一分析物についてのアッセイ間で変動する場合や、各アッセイランについて決定できる場合でさえも、カットオフ値に到達する方法が規定もしくは固定されていることも指示できる。例えば、カットオフ値は、知られている陰性および/または陽性コントロールサンプルから決定できる。
【0041】
1つの特定実施形態では、分析物の存在を決定する方法は、蛍光顕微鏡検査によって1つまたは複数の顕微鏡領域内で蛍光標識された微粒子数を計数する、または「スコア付けする」ステップを含む。微粒子は、蛍光のレベルが顕微鏡の検出設定を上回る場合、および/または顕微鏡によって捕捉された画像を評価するために使用される画像処理システムによって設定された検出レベルを上回る場合は蛍光について陽性であると計数もしくはスコア付けされる。本発明の本実施形態によると、各微粒子に結合した蛍光(すなわち、標識されている結合タンパク質)の量を定量する、および/または結合していないバックグラウンド蛍光の量を定量することは必要とされない。全蛍光微粒子は、それに結合した標識された結合タンパク質の量または結合していないままである標識されたタンパク質の量とは無関係に、蛍光について陽性であるとスコア付けされる。カットオフ値を上回る蛍光微粒子の数は、分析物が存在しない、または低濃度で存在する(すなわち、閾値量を上回って存在しない)ことを示す。カットオフ値を下回る蛍光微粒子の数は、分析物がサンプル中に閾値量を上回って存在することを示している。例えば、エストロゲン様ステロイド化合物の存在を決定することによってインオボの鳥類胚の性別を決定する方法に関しては、蛍光微粒子の数がカットオフ値を上回る場合は、閾値量を下回る低レベルのエストロゲン様ステロイド化合物が存在すること、そして胚が雄であることを示している。蛍光微粒子の数がカットオフ値を下回る場合は、これは相当に高濃度の閾値量を上回るエストロゲン様ステロイド化合物が存在しており、その胚が雌であることを示している。このように、本発明の方法は、結合した蛍光の量を定量する必要を伴わずに、および/または結合していない蛍光の量を定量する必要を伴わずに、イエス/ノータイプのアウトプット(例、雄/雌または閾値を上回る分析物の存在/不在を決定するため)を提供するアッセイにおいて使用できる。
【0042】
本方法は、カットオフ値もしくはその付近の蛍光微粒子の数を、所望の最終結果に依存して、分析物が閾値量を上回って存在するか否かを示すものとしてスコア付けできるように実施できる。例えば、鳥卵を性選別する場合には、カットオフ値またはその極めて近くに含まれる数値は、一部の雌鳥を雄であると間違って分類する方がその逆より有益である場合には雄とスコア付けできる。
【0043】
1つの代表的な決定方法によると、複数のサンプルについての蛍光スコアの分布が決定され、カットオフ値は、例えば「クラスター分析」などの当分野において知られている統計的方法を使用することによって、分布内の任意のポイントに設定できる。特定の実施形態では、カットオフは、サンプルのおよそ50%がカットオフを下回り、サンプルのおよそ50%がカットオフ値を上回るポイントに設定される。この実施形態は、分析物の2相性分布が見られる場合の決定に特に適合する。サンプル値の分布は、当分野において知られている任意の方法によって決定することができ、例えば、多数のアッセイランの結果の蓄積に基づいてもよいし、または内部的に、すなわち各アッセイランに基づいて決定してもよい。
【0044】
クラスター分析は、1つのクラスター内の対象が類似であり、相違するクラスター内の対象が異なるように、データによって示唆された群に対象を分類することを目的とした様々な多変量分析技術を指す。クラスター分析は、群の数もしくは構成員が前もって知られていることを前提にしていないが、群の数を規定でき、または群の構成員の例を提供できる。クラスター分析は、変量(典型的にはピアソン相関を使用する)またはケース(典型的には二乗ユークリッド距離[二乗距離の合計]を使用する)のいずれかを分類するために使用できる。クラスターは、重複している、バラバラである、階層的である、またはファジーのいずれかであってもよい。クラスター分析は、間隔データ、計数データもしくはバイナリーデータを分析するために使用できる、そして相違する変量が使用される場合は、データは分析前に標準化することができる。一般に使用されるクラスター分析技術は、(1)K−平均値クラスタリング:各ステップでケースが最も近い中心を有するクラスターに分類され、クラスター中心が再計算され、それ以上の変化が中心で発生しない、または最大数の反復に達するまで続けられる反復プロセス;(2)階層的クラスタリング:最も近い対象対を1クラスターに結合することから始め、全データが一緒にデンドグラム(樹系図)にクラスタリングされるまで対象対、クラスターの対または1つの対象を1クラスター内に結合する集積プロセス。特定の実施形態では、カットオフ値を選択するためにウォード(Ward)の最小分散法(2つのクラスター間の距離はポイントから重心までの二乗偏差の合計である;目的はクラスター内の二乗和を最小限に抑えることである)を用いた階層的クラスタリングが使用される。
【0045】
蛍光微粒子のスコア付けは、肉眼によって、または当分野において周知のデジタルイメージングソフトウエア(例、National Instruments Image Builder、NIH Image、Cognex VisionPro)を用いて実施できる。特定の実施形態では、蛍光微粒子をイメージングするために機械視覚が使用される。機械視覚は自動目視検査を可能にし、機械視覚システムは、従来法では以下の構成要素:ビジョンプロセッサ(ホストベース型または内蔵型のいずれか)、画像を表示するためのビデオモニタ、画像を処理して分析するためのビジョンソフトウエア、ユーザーインターフェース、カメラおよび照明装置を含む。機械視覚は本発明の当業者には明確に理解されており、本明細書では詳細に説明する必要はない。
【0046】
例えば、Cognex VisionProシステムを使用する場合は、一定のサイズ(ピクセル数)であるピクセルのブロブを探索するBlob発見アルゴリズムを使用できる。または、テンプレートマッチングアルゴリズムを使用できる。例えば、単一ビーズのテンプレートを入力することができ、アルゴリズムはテンプレートにマッチする領域について画像を探索できる。
【0047】
Wavefront Coding techniques(CMD Optics社、コロラド州ボールダー)を含むがそれに限定されないその他のイメージング法を利用できる。
【0048】
本発明の一部の実施形態によると、蛍光顕微鏡によりサンプル中の分析物の存在を決定するステップは、蛍光顕微鏡イメージングによって1枚または複数枚の混合物の画像を入手するステップを含む。混合物を含有する容器の一部分は、イメージングを許容するために一般に光学的に透明である。例えば、サンプルがウェル内に配置される場合は、ウェルの底部は、典型的には光学的に透明である。ウェル内の混合物の画像は、ウェルの底部での焦点面で入手される。画像内の蛍光のレベルは、上述した画像分析ソフトウエアを用いて自動方法で決定できる。カットオフ値を上回る画像内の微粒子蛍光は、サンプル中の閾値レベルを下回る低濃度の分析物を指示する。これとは逆に、カットオフ値を下回る画像内の微粒子蛍光は、サンプル中の閾値レベルを上回る濃度の分析物を指示する。
【0049】
または他の実施形態では、蛍光顕微鏡検査によってサンプル中の分析物の存在を決定するステップは、イメージング技術ではなく、沈殿した微粒子と顕微鏡の対物レンズとの距離を決定できる、および/またはその距離を顕微鏡システム(すなわち、オートフォーカスシステム)の焦点距離へ変化させることのできる任意の技術の使用を含む。そのような方法には、レーザーを使用する距離決定システム(例えば、Displacement Sensor CD4 Series(RAMCO Innovations USA社))が含まれるが、それには限定されない。
【0050】
本発明の一部の実施形態によると、微粒子は、約3μ〜約15μの径を有する概して球状のビーズである。特定の実施形態によると、微粒子は、約6μ未満の径を有する概して球状のビーズである。典型的な微粒子材料には、ポリスチレン、メラミン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリカ、金、酸化鉄およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0051】
結合タンパク質は、分析物へ特異的に結合する任意のタンパク質またはペプチドであってもよい。適切な例には、抗体、受容体、リガンド、基質、抗原、輸送タンパク質、シトクロムP450、インスリン様成長因子結合タンパク質などの結合タンパク質、および当分野において知られている分析物の任意の他の特異的結合パートナーが含まれるがそれらに限定されない。適切な結合タンパク質の選択は、一般には当該の分析物の性質に依存しており、当業者の活動範囲内に含まれる。
【0052】
本発明の一部の実施形態によると、抗体は、抗体フラグメントを含むモノクローナルまたはポリクローナル抗体であってもよい。抗体もしくは抗体フラグメントは任意の特定の形状には限定されず、二重特異性、ヒト化、キメラ化抗体もしくは抗体フラグメントであってよく、そしてさらにFabフラグメント、一本鎖抗体などであってもよい。
【0053】
代表的な受容体には、タンパク質ホルモン受容体、成長因子受容体、サイトカイン受容体、ステロイドホルモン受容体(例、エストロゲン様ステロイド化合物受容体)、抗体受容体などが含まれる。
【0054】
エストロゲン様ステロイド化合物へ特異的に結合する結合タンパク質には、抗体、エストロゲン様ステロイド化合物に対する受容体およびアロマターゼが含まれるがそれらに限定されない。エストロゲン様ステロイド化合物に対する受容体には、エストロゲン受容体(例、ERαおよび/またはERβ)が含まれる。
【0055】
競合分子は、蛍光標識された結合タンパク質への分析物の結合に競合する任意の分子であってもよい。競合アッセイは当分野において周知であり、一般にサンプル中の知られている分子(結合タンパク質への結合についての競合分子)との間の競合に基づいている。競合分子および分析物は同一である必要はないが、特定の実施形態では、競合分子が結合タンパク質へ結合し、それにより結合タンパク質への分析物の結合を減少させる、またはその逆である限り、同一である。例えば、抗体および/または受容体の場合には、分析物および競合分子は、それらがどちらも抗体もしくは受容体へ特異的に結合し(かならずではないが、同じ親和性または結合活性による)、他方の抗体もしくは受容体への結合を阻害する限り、相違していてよい。分子を微粒子へ付着もしくは結合させる方法は、当分野において周知である。
【0056】
そこで、本発明によると、蛍光標識された結合タンパク質への結合について微粒子に結合した競合分子とサンプル中の分析物との間に競合が存在する。任意の分析物が不在である場合は、標識されている結合タンパク質は微粒子に結合した競合分子に結合し、微粒子と結び付いた蛍光として検出される。サンプル中の分析物の濃度が増加するにつれて、微粒子への蛍光標識されている結合タンパク質の結合は標識されている結合タンパク質への結合についての競合のために減少する。そこで、微粒子に結び付いた蛍光の量は、一般にはサンプル中の分析物の量に反比例している。
【0057】
任意の適切な蛍光色素は、結合タンパク質を標識するために使用できる。本発明の実施形態によると、蛍光色素は、フィコビリタンパク質(例、r−フィコエリトリン、b−フィコエリトリン、アロフィコシアニンおよび/またはフィコビリソーム)、ローダミン色素もしくはその誘導体、フルオレセイン色素もしくはその誘導体、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、シアニン色素もしくはその誘導体(例、Cy−5、Cy−5.5およびCy7)、テキサスレッド、ならびに上記の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、蛍光色素分子を結合タンパク質に結合させることによってタンパク質もしくはペプチドを蛍光標識する方法は周知の技術であり、当業者であれば容易に実施できる。
【0058】
また別の長所として、本発明は、結合していない、および/または結合した蛍光の定量、および/または結合した蛍光標識結合タンパク質と結合していない蛍光標識結合タンパク質間の差の決定を必要としない。そこで、本発明の実施形態では、蛍光標識されている結合タンパク質の生産中に自由標識を分離することを必要としないので、この費用がかかり多大な労力を要する方法が回避され、安価な試薬の使用を許容する。
【0059】
サンプル中の様々な分析物は、本発明の実施形態による方法を用いて検出できる。生物学的サンプル中の典型的な分析物には、タンパク質、ペプチド、サイトカイン、ペプチド成長因子、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、病原体(例、表面抗原および/または毒素を検出することによって)、抗体などが含まれるが、それらに限定されない。
【0060】
ステロイドホルモンには、エストラジオール、エストラジオール17β、エストロン、エストリオールおよびそれらの複合誘導体を含むエストロゲン様ステロイドホルモンが含まれるがそれらに限定されない。特定の複合誘導体には、エストラジオール−3−グルクロニド、エストラジオール−17−グルクロニドおよび/またはエストロン−3−グルクロニドのような、エストラジオール、エストラジオール17βおよびエストロンのグルクロニドおよび硫酸塩誘導体が含まれるがそれらに限定されない。病原体は、ジアルジア(Giardia)、サルモネラ(Salmonella)、クロストリジウム(Clostridia)、アイメリア(Eimeria)、大腸菌(E.coli)、ニューキャッスル病ウイルス、マレク病ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、インフルエンザ(例、鳥インフルエンザ)、滑液病ウイルスなどを含むがそれらに限定されない細菌、原生動物、酵母、真菌およびウイルス病原体を含む。
【0061】
非生物学的起源(すなわち、被験体由来ではない)の典型的な分析物には、環境汚染物質(例、糞便、病原体、化学物質、タンパク質ホルモン、エストロゲン様ステロイド化合物を含むステロイドホルモン、成長因子など)、爆発物(例、TNT)、および規制物質(例、アヘン剤、THC、およびアンフェタミンなどの麻薬またはアンドロゲンおよび成長ホルモンを含むステロイド剤などのパフォーマンス増強剤)が含まれるがそれらに限定されない。
【0062】
図2を参照すると、様々なアレイ内でその中に形成された複数のサンプルウェル72を含有する典型的なサンプルトレイ70が例示されている。各サンプルウェル72は、上述したサンプル混合物を収容するように構成されている。サンプルウェルの様々な構成およびアレイを有するサンプルトレイは、本発明の実施形態によって利用できる。サンプルトレイは、様々な物質から様々な技術によって形成できる。本発明は、例示したサンプルトレイ70の使用に限定されない。
【0063】
図3に例示したように、サンプルトレイ70内のウェル72の底部の高さは変動してもよい。例示したウェル72の底部は、相互に比較して相違する高さ(E1、E2、E3)を有する。これを補償するために、各ウェルの底部の中央値の高さが決定され、次に中央値の高さより上方および下方の各高さを有する焦点面でウェル内の混合物の少なくとも2枚の画像が入手される。次に、画像は上述したように微粒子蛍光について分析される。本発明のこの態様は、ウェル底部の高さにおいてより変動性でありうる余り高価ではないサンプルトレイ(例えば、熱成形マルチウェルプレート)を用いるので特に有用である。
【0064】
本発明の他の実施形態によると、各ウェルの底部の中央値の高さが決定される。ウェル内の混合物の少なくとも2枚の画像は、中央値の高さの上方および下方である各高さを有する焦点面で入手され、ウェル内の混合物の画像は各ウェルの底部での焦点面で入手される。次に、画像は上述したように微粒子蛍光について分析される。
【0065】
代表的な実施形態では、本発明は鳥卵由来のサンプル中の当該の任意の分析物(例、病原体、抗体、ホルモン、成長因子、タンパク質、ペプチドなど)を測定するために実施できる。本発明の実施形態は、鳥卵内の胚の性別を決定する際に使用するために特に適合する。さらに、本発明の実施形態は、試薬の費用、廃棄費用、機器費用、機器の複雑性おびアッセイ速度を含むがそれらに限定されない現行の性別同定テクノロジーに結び付いた問題を軽減できる。
【0066】
図4を参照すると、本発明の一部実施形態によるインオボの鳥類胚の性別を決定する方法が示されている。次に尿膜腔液のサンプルを入手して(ブロック110)それに結合した競合分子(例、エストラジオールなどのエストロゲン様ステロイド化合物)を有する微粒子(例、5μのポリスチレンビーズ)およびエストロゲン様ステロイド化合物へ特異的に結合する蛍光標識されている(例、フィコエリトリン標識されている)結合タンパク質(例、モノクローナル抗体)と一緒に混合する(ブロック120)。混合物は、上述したようにある期間にわたり保存できる(ブロック130)。次に混合物は、微粒子を混合物の底部に沈殿させるために十分な時間にわたり容器(例、上述したようなサンプルトレイのウェル)内に配置される(ブロック140)。微粒子が沈殿すると、サンプル中のエストロゲン様ステロイド化合物の存在は、沈殿した微粒子に結合した蛍光標識されている結合タンパク質を検出することによって、蛍光顕微鏡検査によって決定される(ブロック150)。サンプル(すなわち、雌卵)中に高レベルのエストロゲン様ステロイド化合物が存在する場合は、蛍光標識されている結合タンパク質はビーズへの低結合を示す。サンプル(すなわち、雄卵)中に低レベルのエストロゲン様ステロイド化合物が存在する場合は、蛍光標識された抗体はビーズへの高結合を示す。
【0067】
本発明によるインオボでの鳥卵の性別を決定する特定の方法では、蛍光標識されている沈殿した微粒子の数が上述のように決定され、同様に上述したようにカットオフ値と比較される。カットオフ値を下回る蛍光標識された粒子の数は、サンプル中にエストロゲン様ステロイド化合物が閾値を上回って存在すること、そしてその胚が雌であることを指示する。
【0068】
卵内の鳥類胚の性別を決定する代表的な実施形態では、卵由来の尿膜腔液のサンプルがそれに結合したエストラジオールを有する微粒子(例、5μのポリスチレンビーズ)およびエストラジオールへ特異的に結合する蛍光標識されたモノクローナル抗体と一緒に混合される。または、本方法は、尿膜腔液のサンプル中のエストロゲン様ステロイド化合物の濃度を検出するために蛍光標識されたエストロゲン受容体を使用できる。
【0069】
特定の実施形態によると、本発明の方法は極めて感受性であり、サンプル中の約500、250、150、100、50pg/mL以下という少量のエストロゲン様ステロイド化合物を検出できる。
【0070】
分析物がエストロゲン様ステロイド化合物である場合は、本方法は誘導体化されていない化合物を遊離させるためにサンプルを処理するステップをさらに含むことができる。例えば、酵素処理(例、グルクロニダーゼおよび/またはスルファターゼ)を使用すると、例えばエストラジオールおよびエストラジオールからエストロン、ならびに尿膜腔液中で一般に見いだされるエストロングルクロニドおよび硫酸塩誘導体を遊離させることができる。
【0071】
図5を参照すると、本発明の一部の実施形態によるサンプル中の分析物の存在を検出する方法が示されている。物質の液体サンプルが入手され(ブロック210)、次にそれに結合した競合分子を有する浮揚性微粒子および分析物と特異的に結合する蛍光標識されている結合タンパク質とが一緒に混合される(ブロック220)。混合物は、上述したようにある期間にわたり保存できる(ブロック230)。混合物は、次に浮揚性微粒子を液体混合物の表面近くに浮揚させるために十分な時間にわたり容器(例、上述したようなサンプルトレイのウェル)内に配置される(ブロック240)。微粒子が表面近くに浮揚したら、サンプル中の分析物の存在は、微粒子に結合した蛍光標識された結合タンパク質を検出することによって、蛍光顕微鏡検査によって決定される(ブロック250)。この場合には、蛍光顕微鏡検査は容器(例、サンプルウェル)の開口端を通して実施される。
【0072】
本発明の実施形態は、試薬の添加後にサンプルの取り扱いを必要としない。アッセイ結果は、サンプル容器から直接的に読み取ることができる。また別の長所は、特定の実施形態では、機器類は比較的手間のかからない装置(ハロゲンもしくはLED照明を装備した従来型の顕微鏡システム)であってもよいことである。
【0073】
上記は本発明の例示であり、それを限定すると見なされてはならない。本発明の少数の典型的実施形態を記載してきたが、当業者であれば、本発明の新規な教示および長所から実質的に逸脱せずに典型的実施形態において多数の修飾が可能であることを容易に理解する。したがって、すべてのそのような修飾は、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、本明細書に含まれる特許請求項の同等物とともに、特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態による、サンプル中の分析物の存在を決定する方法を例示しているフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態を実施するために使用できる典型的なサンプルトレイの上面図である。
【図3】ウェル底部の高さにおける変動性を例示している典型的なサンプルトレイの側面図である。
【図4】本発明の実施形態による、鳥卵由来の尿膜腔液サンプル中のエストロゲン様ステロイド化合物の存在を決定する方法を例示しているフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態による、浮揚性微粒子を用いて液体サンプル中の分析物の存在を決定する方法を例示しているフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析物の存在を決定する方法であって、
サンプルと、競合分子を結合された複数の微粒子と、分析物へ特異的に結合する蛍光標識された結合タンパク質とを一緒に混合するステップと、
前記微粒子を沈殿させるために十分な時間にわたり容器内に前記混合物を配置するステップと、
蛍光顕微鏡検査を用いて1つまたは複数の領域内で蛍光標識された沈殿した微粒子の数を検出し、前記蛍光標識されている微粒子の数を所定値と比較することによって、前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップと
を含み、微粒子の数が所定値を下回ることにより、前記分析物が前記サンプル中に閾値レベルを越えて存在することが示される方法。
【請求項2】
前記容器は顕微鏡スライドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器はウェルを含み、前記ウェルの底面部分は光学的に透明であり、および前記微粒子は前記ウェルの底部に沈殿する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物を容器内に配置するステップに先行して前記混合物を一定の期間にわたり保存するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
保存するステップは、前記混合物を約1分間〜約45分間にわたり保存するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
保存するステップは、前記混合物を約60分間を超えて保存するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルは生物学的サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的サンプルは鳥卵由来である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合するステップに先行して前記生物学的サンプルを入手するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的サンプルは、尿膜腔液、卵黄、尿、便、血液、血漿、血清、羊水、胚下腔液、リンパ液、脳脊髄液、乳汁、組織、組織ホモジネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記微粒子は、約6μ(ミクロン)未満の径を有する概して球状のビーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微粒子は、約3μ〜約15μの径を有する概して球状のビーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記微粒子は、ポリスチレン、メラミン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリカ、金、および酸化鉄からなる群から選択される物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記結合タンパク質は抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体はポリクローナル抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結合タンパク質は受容体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光標識された結合タンパク質は、フィコビリタンパク質、ローダミン色素もしくはその誘導体、フルオレセイン色素もしくはその誘導体、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、シアニン色素もしくはその誘導体、およびテキサスレッドからなる群から選択される蛍光色素を用いて標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記分析物は、タンパク質、ペプチド、ペプチド成長因子、サイトカイン、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、抗体、病原体、環境汚染物質、爆発物、および非合法物質からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記分析物は、エストラジオール、エストロン、エストラジオールの複合誘導体、エストロンの複合誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるエストロゲン様ステロイド化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記混合するステップは、最初に前記サンプルおよび結合タンパク質を一緒に結合するステップと、引き続いて前記微粒子を前記サンプル−結合タンパク質の混合物に添加するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
蛍光顕微鏡検査によって前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップは、蛍光顕微鏡イメージングによって前記混合物の1または複数枚の画像を入手するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
蛍光顕微鏡検査によって前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップは、
前記ウェルの底部の中央値の高さを決定するステップと、
前記中央値の高さより上方および下方である各高さを有する焦点面で前記ウェル内の混合物の少なくとも2枚の画像を入手するステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項24】
蛍光顕微鏡検査によって前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップは、
前記ウェルの底部の中央値の高さを決定するステップと、
前記中央値の高さより上方および下方である各高さを有する焦点面で前記ウェル内の混合物の少なくとも2枚の画像を入手するステップと、
前記ウェル内の前記混合物の画像を前記ウェルの底部での焦点面で入手するステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
蛍光顕微鏡検査によって前記サンプル中の前記分析物の存在を決定するステップは、前記ウェルの底部での焦点面で前記ウェル内の前記混合物の画像を入手するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項26】
卵内の鳥類胚の性別を決定する方法であって、
競合分子を結合された複数の微粒子と、鳥卵由来の尿膜腔液のサンプルと、エストロゲン様ステロイド化合物へ特異的に結合する蛍光標識された結合タンパク質とを一緒に混合するステップと、
前記微粒子を沈殿させるために十分な時間にわたり容器内に前記混合物を配置するステップと、
蛍光顕微鏡検査を用いて蛍光標識された沈殿した微粒子を検出することによって前記サンプル中の前記エストロゲン様ステロイド化合物の存在を決定するステップと
を含み、前記サンプル中の前記エストロゲン様ステロイド化合物の閾値量を上回る存在により鳥類胚が雌であることが示される方法。
【請求項27】
蛍光標識されている沈殿した微粒子の数が決定されて所定値と比較され、微粒子の数が前記所定値を下回ることにより前記サンプル中に前記エストロゲン様ステロイド化合物が閾値量を上回って存在することが示される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記結合タンパク質は抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記結合タンパク質はエストロゲン様ステロイド化合物に対する受容体である、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−541090(P2008−541090A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511320(P2008−511320)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/018085
【国際公開番号】WO2006/124456
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(501161398)エンブレクス,インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】