説明

蝶番

【課題】 扉の回動を制限し得るとともに、製造が容易で変形や損傷を生じにくい蝶番の提供。
【解決手段】 軸体2に下側筒部10が外嵌固定されるとともに扉用開口13の縁部の取付け部14に下側羽根板11が取付けられる下側羽根部材3と、軸体2に上側筒部17が回動自在に外嵌されるとともに扉21に上側羽根板18が取付けられる上側羽根部材4と、軸体2の軸方向途中に設けられて下側羽根部材3に対する上側羽根部材4の回動角度を制限するストッパ25とを備え、ストッパ25に、軸体2の途中から径方向外方に突出して上側羽根部材4の上側筒部17を周方向に案内する案内面27を備えた案内部28と、軸体2の外周面に沿うよう案内面27の周縁部から上方に突出して周方向で対向する係合面33,34を有する円弧状の回動制限部32とを設け、上側羽根部材4に該上側羽根部材4が軸体2回りに回動した際に係合面33,34に周方向から当接して係合する被係合面18aを設けた蝶番1の構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の開閉に用いられる蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、框等の扉取付け部材と扉との間に設けられて扉取付け部材に対して扉を開閉自在に支持する蝶番として、扉の回動範囲を制限する構成を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。この蝶番は、扉取付け部材に固定されるとともに軸体の下部に筒部が圧入された下側羽根部材と、扉に取付けられるとともに軸体の上部に筒部が遊嵌された上側羽根部材と、軸体に外嵌挿通するとともに下側羽根部材の筒部と上側羽根部材の筒部との間に介装される短筒とを有する。下側羽根部材の筒部の上端部に下方へ凹となる溝が形成され、短筒の下端部に溝に嵌合する突部が形成されている。また、短筒の外周側部に柱状のストッパが一体に形成されている。
【0003】
上記構成の蝶番では、下側羽根部材の筒部の溝に短筒の突部を嵌合させることで下側羽根部材に対して短筒を回動不可能としており、扉とともに上側羽根部材が軸体回りに回動して上側羽根部材がストッパに当接することで扉がそれ以上回動しないように制限される。
【特許文献1】特開平11−50726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蝶番のように、短筒の外周側部に上方に突出する柱状のストッパを設けることは製造上難しい。さらに、ストッパは短筒の外周側部に上側羽根部材に至るよう柱状に形成されているから、ストッパに上側羽根部材が当った際に上側羽根部材からモーメントが負荷され、このモーメントはストッパが長くなればその分だけ大きくなって塑性変形し易く、また損傷し易い。
【0005】
そこで本発明は、扉の回動を制限し得るとともに、製造が容易で変形や損傷を生じにくい蝶番の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蝶番は、軸体の下部に筒部が外嵌固定されるとともに扉用開口の縁部の取付け部に羽根板が取付けられる下側羽根部材と、前記軸体の上部に筒部が回動自在に外嵌されるとともに扉に羽根板が取付けられる上側羽根部材と、前記軸体の軸方向途中に設けられて下側羽根部材に対する上側羽根部材の回動角度を制限するストッパとを備え、該ストッパに、軸体の軸方向途中外周部から径方向外方に突出して上側羽根部材の筒部の下端面を周方向に案内する案内面を備えた案内部と、軸体の外周面に沿うよう前記案内面の周縁部から上方に突出して設けられるとともに周方向で対向する係合面を有する円弧状の回動制限部とが設けられ、前記上側羽根部材に該上側羽根部材が軸体回りに回動した際に前記回動制限部の係合面に周方向から当接して係合する被係合面が設けられたことを特徴としている。
【0007】
上記構成において、扉を開くと上側羽根部材の筒部の下端面がストッパの案内面に周方向に案内されて上側羽根部材が軸体回りに回動し、ストッパの回動制限部の係合面に上側羽根部材の被係合面が周方向から当接することで上側羽根部材の軸体回りの回動が阻止され、扉はそれ以上開かなくなる。
【0008】
回動制限部は円弧状に形成されているから剛性が高く、したがってストッパの回動制限部の係合面に上側羽根部材の被係合面が周方向から当接した際の負荷や衝撃に充分に耐え、変形しにくい。
【0009】
本発明の蝶番では、ストッパと軸体とを別体に設け、前記ストッパを前記軸体に圧入することで該軸体とストッパとを一体化していることが好ましい。この場合、軸体にストッパを容易に固定して一体とすることが可能となる。
【0010】
本発明の蝶番では、被係合面が上側羽根板の羽根板の一部であることが好ましい。この構成によれば、被係合面を特別に設けたり、加工したりする必要がない。
【0011】
本発明の蝶番は、軸体の下部に筒部が外嵌挿通されるとともに扉用開口の縁部の取付け部に羽根板が取付けられる下側羽根部材と、前記軸体の上部に筒部が回動自在に外嵌されるとともに扉に羽根板が取付けられる上側羽根部材と、前記軸体の軸方向途中に設けられて下側羽根部材に対する上側羽根部材の回動角度を制限するストッパとを備え、該ストッパは軸体とは別体でその軸方向途中に外嵌されるとともに合成樹脂から形成され、該ストッパに、軸体の軸方向途中外周部から径方向外方に突出して上側羽根部材の筒部の下端面を周方向に案内する案内面を備えた案内部と、軸体の外周面に沿うよう前記案内面の周縁部から上方に突出して設けられるとともに周方向で対向する係合面を有する回動制限部とが設けられ、前記上側羽根部材の筒部に該上側羽根部材の筒部が軸体回りに回動した際に前記回動制限部の係合面に周方向から当接して係合する被係合面が形成されたことを特徴としている。
【0012】
上記構成において、扉を開くと上側羽根部材の筒部の下端面がストッパの案内面に周方向に案内されて上側羽根部材が軸体回りに回動し、ストッパの回動制限部の係合面に上側羽根部材の被係合面が周方向から当接することで上側羽根部材の軸体回りの回動が阻止され、扉はそれ以上開かなくなる。
【0013】
この蝶番のストッパは合成樹脂から形成されているから、ストッパの回動制限部の係合面に上側羽根部材の被係合面が周方向から当接した際の衝撃が緩衝され、また、扉を開けた際の音の発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蝶番によれば、ストッパの回動制限部を案内面の周縁部から上方に突出させている構成であり、案内部の外周面から径方向に突出する部分がないからストッパの構造が簡単になり、したがって製造を容易に行うことができる。また、回動制限部を円弧状に形成している分だけ回動制限部の剛性を高くすることができ、回動制限部の係合面に上側羽根部材の被係合面が周方向から係合する際の負荷に充分に耐え、回動制限部の変形を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る蝶番を、図面に基づいて説明する。この蝶番は、例えば家屋に敷設されたガスメータ室に設けられた扉を開閉するのに用いられる。先ず、図1〜図11に基づいて本発明の第一の実施形態に係る蝶番を説明する。
【0016】
図1は本発明の第一の実施形態に係る蝶番を用いて扉を閉じた状態の使用状態を示す斜視図、図2は扉を開いた状態の使用状態を示す斜視図、図3は蝶番の軸体の単体正面図、図4は軸体の単体側面図、図5は軸体の単体背面図、図6は軸体の単体斜視図、図7は軸体の単体平面図、図8は軸体の単体底面図、図9は軸体の使用状態を示す縦断面図であり図7におけるA−A線断面図、図10は蝶番の分解斜視図、図11は下側羽根部材に対する上側羽根部材の回動範囲を示す斜視図である。
【0017】
図1および図2に示すように、蝶番1は、軸体2と、下側羽根部材3と、上側羽根部材4と、上下の蓋部材5,6との組品である。軸体2は上部に比べて下部がわずかに大径に形成された円柱状の軸本体7と、軸本体7の一方端面に形成された凹部に転動自在に嵌合する玉8とを備える。
【0018】
下側羽根部材3は、下側筒部10と、この下側筒部10の外周部から径方向外方に向けて一体に突出形成された下側板部11と、前記下側筒部10の下方から圧入された前記下側の蓋部材5とを有する。下側筒部10は軸本体7の下側から下側の蓋部材5の図示しない胴部の上端面が軸本体7の下端面に当接する位置まで圧入されることで軸本体7に外嵌固定される。下側板部11の板面には、千鳥型に下側止め孔12が複数形成されている。このような下側羽根部材3は、家屋に敷設されたガスメータ室等の扉開口13の縁部の取付け部14に取付けられるもので、この場合、下側板部11を取付け部14の取付け枠面15に当てた状態で、下側止め孔12に止めねじ16を螺合することで下側羽根部材3を取付け部14に固定する。
【0019】
上側羽根部材4は、上側筒部17と、この上側筒部17の外周部から径方向外方に向けて一体に突出形成された上側板部18と、前記上側筒部17の上方から圧入された前記上側の蓋部材6とを有する。上側筒部17は軸本体7の上側から上側蓋部材6の図示しない胴部の下端面が前記玉8に当接する位置まで挿入されて軸本体7に回転自在に外嵌(遊嵌)される。上側板部18の板面には、千鳥型に上側止め孔20が複数形成されている。このような上側羽根部材4は、ガスメータ室等の扉開口13を開閉する扉21に取付けられるもので、この場合、上側板部18を扉21の端面21aに当てた状態で、上側止め孔20に止めねじ16を螺合することで上側羽根部材4を扉21の端面21aに固定する。
【0020】
図3〜図5に示すように、蝶番1は、下側羽根部材3の下側筒部10と上側羽根部材4の上側筒部17との間に配置されるよう軸体2の軸方向途中に設けられて下側羽根部材3に対する上側羽根部材4の回動角度を制限するストッパ25を備えている。次に、このストッパ25について説明する。
【0021】
ストッパ25は、軸体2に一体に形成されるもので、軸体2の外周部に一体に径方向外方に突出するよう軸体2に形成されて上側羽根部材4の下端面26を案内する平面状の上側案内面27を備えた案内部28と、軸体2の外周面36に沿うよう上側案内面27の外周縁部領域30から上方に向けて一体に突出された回動制限部32とを有している。
【0022】
図6および図7に示すように、回動制限部32は平面視して半円弧状に形成されている。回動制限部32は360°の外周縁部領域30のうち、略180°の領域を占めるよう設定されており、回動制限部32の周方向に対向する矩形の段付き面が後述のような平面状の係合面33,34として用いられる。よって係合面33,34は、周方向に角度θ、すなわち略180°だけ離間して周方向に対向配置されている。換言すると、回動制限部32は、案内部28の上側案内面27の外周縁部領域30から上方に向けて一体に突出された筒状部35(図6の仮想線で示す)の所定領域、この場合、筒状部35をほぼ半割にした領域を切欠いた形状を有する。また、軸体2の外周面36と回動制限部32の内周面37との間に、上側羽根部材4の上側筒部17の下部が挿入される隙間40が設けられている。
【0023】
図8および図9に示すように、ストッパ25の案内部28は、下側羽根部材3の下側筒部10の上端面42が当接する平面状の下側当接面43を有する。案内部28は、軸体2の外周面に沿うよう下側案内面43の外周縁部領域31から下方に向けて一体に突出した環状の下側羽根部材3の筒状の保持部44を有する。この保持部44の周方向途中である係合面33,34間の中心に対応する位置に上方に向かう切欠溝45が形成されている。軸体2の外周面36と保持部44の内周面38との間に、下側羽根部材3の下側筒部10の上部が挿入される隙間41が設けられている。前記切欠溝45の周方向の対向面46,47に下側羽根部材3の下側板部11の上部基端部11aが挿入されている。このような蝶番1は、例えばステンレス等の金属によって形成されている。
【0024】
上記構成を有する蝶番1は、軸体2の下部を、ストッパ25の切欠溝45が下側板部11の上部基端部11aに嵌合するまで下側羽根部材3の下側筒部10に圧入することで軸体2と下側羽根部材3とを一体とする。軸体2と下側羽根部材3とを一体とした組品を、その下側板部11の下側止め孔12に止めねじ16を挿通して取付け部14の板面に螺合することで下側羽根部材3を取付け部14に固定する。なお、軸体2と下側羽根部材3とを一体とした組品は、上下一対となるように取付け部14の所定位置に取付けられる。
【0025】
一方で、上側羽根部材4の上側筒部17に蓋部材6を固定して組品としておき、この組品における上側羽根部材4の上側板部18の上側止め孔20に止めねじ16を挿通して扉21の端面21aに上側羽根部材4と蓋部材6の組品を固定する。このような組品も扉21の端面21aの上下所定位置に取付けられる。
【0026】
そして扉21を持上げるようにして軸体2に上側羽根部材4の上側筒部17を位置合せするようにして扉21を下降させる。そうすると、上側羽根部材4の上側筒部17の軸体2に挿通し、軸体2に上側筒部17が回動自在に嵌合することから、扉21が扉開口13を開閉可能とする。
【0027】
ところで、扉21を扉開口13を閉じた姿勢から扉開口13を開放するよう開くと、上側羽根部材4(下側筒部17)の下端面26が案内部28の上側案内面27に摺動するよう案内されつつ扉21が開かれる。ところで、扉21の開放量(回動角度)は、ストッパ25によって制限される。すなわち、上記のように上側羽根部材4の下端面26が案内部28の上側案内面27に摺動するよう案内されつつ扉21が所定角度、この場合略90°まで開くと、上側板部18の下部基端部18aの板面を被係合面として、これが回動制限部32の段付き面である係合面33に当接することになり、これによって下側羽根部材3に対して上側羽根部材4がそれ以上回動できなくなり、したがって扉21もそれ以上開かなくなる。
【0028】
扉21の回動角度が略90°であるのは、係合面33,34が周方向に略180°だけ離間していたとしても、係合面33,34間の中心に対応する位置に切欠溝45が形成されており、切欠溝45に下側羽根部材3の下側板部11の上部基端部11aが挿入されているからである。
【0029】
なお、係合面33,34が周方向に略180°離間させているから、図9に示すように、上側羽根部材4は下側羽根部材3に対して180°の範囲で回動可能であり、このように、係合面33,34を周方向に略180°離間させることで、蝶番1の取付け勝手によっても扉21をその閉状態から90°だけ開くことができるように対応させることができるようにしている。
【0030】
そして、この実施形態における蝶番1では、ストッパ25は、上側案内面27の外周縁部領域30から上方に向けて一体に突出された円弧状の回動制限部32を有して、この回動制限部32の係合面33(34)に、上側板部18の下部基端部18aの板面を当接させるよう構成されている。このように回動制限部32を円弧状に形成しているから、柱状に形成して回動制限をする形状に比べて剛性が高いから、回動制限部32が同じ大きさの周方向の力を受けた場合に柱状に形成したものに比べてその変形を効果的に抑制することができる。
【0031】
さらに、回動制限部32は案内部28の上側案内面27の外周縁部領域30から上方に向けて一体に突出するものであって、案内部28の外周面に突出させて設けるものでないから、回動制限部32を含めるストッパ25の製造が簡単になる。
【0032】
また、ストッパ25の隙間40,41にはそれぞれ上側羽根部材4の上側筒部17の下部、下側羽根部材3の下側筒部10の上部が挿入されるから、ストッパ25を設けていても隙間40,41に上側羽根部材4の上側筒部17の下部、下側羽根部材3の下側筒部10の上部が挿入されることで、蝶番1全体の高さが高くなるのを抑えることができる。あるいは、案内部28の高さ方向の厚みを変更することで、蝶番1全体の高さを変更することも可能である。
【0033】
この第一の実施形態では、ストッパ25(案内部28)は軸体2の外周面36に一体形成した。しかし、ストッパ25を軸体2と別体に設け、ストッパ25の案内部28を軸体2に圧入するようにして軸体2と一体となるよう組立てることも可能である。このようにすることで、ストッパ25を軸体2に一体に形成する場合に比べて製造が容易になる。このように構成した場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0034】
上記第一実施形態では、係合面33,34を周方向に略180°離間させる構成とすることで扉21を閉状態から略90°の回動範囲で開閉可能な構成とした。しかし、回動制限部32の周方向長さを変更することで係合面33,34の周方向の離間角度を変更して扉21の必要な回動範囲に対向することが可能である。
【0035】
次に、本発明の第二の実施形態を図12〜図17に基づいて説明する。図12は本発明の第二実施形態を示す蝶番を用いて扉を閉じた状態の使用状態斜視図、図13は扉を開いた状態の使用状態斜視図、図14は蝶番の分解斜視図、図15は上側羽根部材の単体斜視図、図16はストッパの単体斜視図、図17はストッパの縦断面図であり、図16におけるB−B線断面図である。
【0036】
図12〜図14に示すように、この実施形態に係る蝶番49は、軸体50と、下側羽根部材51と、上側羽根部材52と、上下の蓋部材53,54と、ストッパ55との組品である。軸体50は上部に比べて下部がわずかに大径に形成された円柱状の軸本体56と、軸本体56の上方端面に形成された凹部7aに転動自在に嵌合する玉8とを備える。
【0037】
下側羽根部材51は、下側筒部57と、下側羽根板58と、前記蓋部材53とから構成されている。下側筒部57の上端部はほぼ半割にした領域を切欠いた円弧形状を有して、周方向に略180°離間して対向する下側当接面60,61を有する。下側当接面60,61の下縁どうしは、下側筒部57の上端面である下側円弧状面62によって連続されている。すなわち、下側筒部57は、下側円弧状面62から上方へ向けて突出した円弧状の突出部59を有し、この突出部59にその周方向に対向する端面が形成されて前記下側当接面60,61とされている。
【0038】
下側羽根板58の高さは下側筒部57の最も高い高さと同等であり、図14に示すように、一方の下側当接面60は下側羽根板58の一方の板面58aと面一にある。下側羽根板58の板面には、止めねじ63を挿通させるための下側止め孔64が複数形成されている。
【0039】
上側羽根部材52は、上側筒部65と、上側羽根板90と、前記蓋部材54とから構成されている。上側筒部65の下端部は、ほぼ周方向に90°だけ残してそれ以外の領域を切欠いた円弧形状を有して、周方向に略90°離間して対向する被係合面としての上側当接面66,67を有する。上側当接面66,67の上縁どうしは、上側円弧状面68によって連続されている。すなわち、上側筒部65は、上側円弧状面68から下方へ向けて突出した円弧状の被規制部69を有し、この被規制部69の周方向に対向する端面が前記上側当接面66,67である。また、被規制部69は、周方向に所定長さLを有する。
【0040】
上側羽根板66の高さは上側筒部65の最も高い高さと同等であり、一方の上側当接面67は上側羽根板90の一方の板面90aと面一にある。上側羽根板66の板面には、止めねじ63を挿通させるための上側止め孔70が複数形成されている。
【0041】
下側羽根部材51および上側羽根部材52は、前記ストッパ55を介して軸体50に取付けられる。ここでストッパ55の構成を説明する。図16および図17に示すように、ストッパ55は環状に形成されて軸体50の途中に挿通もしくは圧入されされるものである。ストッパ55は、軸体50の途中に挿通もしくは圧入されされる環状の嵌合部71を有し、この嵌合部71の下面が円弧状の下側取付け面72とされ、この下側取付け面72に、下方に向けて円弧状の案内部73が一体に延長して形成されている。この案内部73に前記下側羽根部材51の下側当接面60,61に対向接触する保持端面74,75が周方向に対向して形成されている。すなわちこの保持端面74,75は周方向に略180°だけ離間して配置されている。
【0042】
嵌合部71の上面が円弧状の上側案内面76とされ、この上側案内面76に、上方に向けて円弧状の回動制限部77が一体に延長して形成されている。この回動制限部77に、前記上側当接面66,67にそれぞれ周方向で対向する平面状の係合面80,81が形成されている。換言すると、回動制限部77は、嵌合部71の上側案内面76から上方に向けて一体に突出された仮想の筒状部82(図16の仮想線で示す)の所定領域、この場合、筒状部82をほぼ半割にした領域を切欠いた形状を有する。
【0043】
前記案内部73の両保持端面74,75を含む仮想平面と、回動制限部77の両係合面80,81を含む仮想平面とは、ほぼ直交する平面の関係にある。係合面80,81の周方向離間角度を所定角度θ1(この場合、180°に設定)とした際、この所定角度θ1に対して被規制部69の周方向の所定長さLの設定値によって、下側羽根部材51に対する上側羽根部材52の回動範囲が決定される。このようなストッパ55は合成樹脂によって形成されている。蝶番49を構成する他の部材はステンレス等の金属によって形成される。なお、ストッパ55の保持端面74,75の高さと下側羽根部材51の下側当接面60,61の高さ、ストッパ55の係合面80,81と上側羽根部材52の上側当接面66,67の高さはそれぞれ実質的に等しく設定されている。
【0044】
上記構成の蝶番49では、ストッパ55を軸体50の途中まで圧入する。このとき、ストッパ55と軸体50とは別体でありストッパ55を圧入するだけでよいから両者の組立て作業は容易である。次に、下側羽根部材51の下側筒部57に軸体50を圧入することで、下側羽根部材51と軸体50とを固定する。このとき、ストッパ55の案内部73の下端面73aと下側筒部57の上端面である下側円弧状面62とを当接させるとともに、ストッパ55の嵌合部71の下側取付け面72と下側筒部57の突出部59の上端面59aとが当接するようにして軸体50、ストッパ55および下側羽根部材51の組品とする。
【0045】
そして、下側羽根部材51の下側羽根板59の下側止め孔64に止めねじ63を挿通させ、止めねじ63を取付け部14の取付け枠面15に当てた状態で、これに止めねじ63を螺合することで下側羽根部材51を取付け部14に固定する。軸体50と下側羽根部材51とを一体とした組品は、上下一対となるように取付け部14の所定位置に取付けられる。
【0046】
一方で、蓋部材54を圧入により固定した上側羽根部材52の上側羽根板90の上側止め孔70に止めねじ63を挿通させて上側羽根部材52を扉21の端面21aに当てた状態で、上側止め孔70に止めねじ63を相通して扉21の端面21aに螺合することで上側羽根部材4を扉21に固定する。
【0047】
続いて、上側羽根部材52の上側筒部65を軸体50に上方から挿入する。このとき、上側筒部65の上側円弧状面68とストッパ55の回動制限部77の上端面77aとを当接させる。また、被規制部69の下端面69aとストッパ55の上側案内面76とを当接させるよう上側羽根部材52の上側筒部65を軸体50に挿入する。これにより、被規制部69の上側当接面66とストッパ55の係合面80とが周方向で対向し、被規制部69の上側当接面67とストッパ55の係合面81とが周方向で対向することになる。なお、図12に示すように、扉21を閉じた状態では被規制部69の上側当接面66とストッパ55の係合面80とが周方向で当接しており、被規制部69の上側当接面67とストッパ55の係合面81とが周方向で離間して対向している。
【0048】
この状態から扉21を開くと、被規制部69の下端面69aがストッパ55の上側案内面76に周方向に摺動しながら案内され、扉21を所定角度(この場合、90°)だけ回動させると、被規制部69の上側当接面67がストッパ55の係合面81に当接する。これにより、扉21はそれ以上開かなくなる。
【0049】
このように、本発明の第二実施形態の蝶番49によれば、下側羽根部材51に対する上側羽根部材52の回動角度を制限することにより、扉21の回動角度を制限して、扉21が必要以上に開いてしまうのを防止することができる。
【0050】
ストッパ55は合成樹脂によって形成されているから、回動制限部77の係合面81に被規制部69の上側当接面67が当接した際、金属と金属の当接にならず、合成樹脂によって当接の際の衝撃が緩衝(吸収)される。したがって回動制限部77の係合面81に被規制部69の上側当接面67が当接した際に、当接に伴う音の発生を抑えることができるとともに、使い心地の良好な蝶番49となっている。
【0051】
そしてこの実施形態においては、ストッパ55は合成樹脂から形成しているから、ストッパ55形成のために射出成形用の金型を準備することで、容易にストッパ55を形成することが可能であり、第一実施形態と同様に回動制限部77は案内部73の上側案内面76そのものから直接上方に向けて一体に突出するものであって、案内部73の外周面に突出させて設けるものでないから、金型形状も複雑にならない。
【0052】
この実施形態における蝶番49では、ストッパ55は、上側案内面76から上方に向けて一体に突出された円弧状の回動制限部77を有して、この回動制限部77の係合面81に被規制部69の上側当接面67が当接(周方向で係合)することになる。このように回動制限部77を円弧状に形成しているから、ストッパ55(回動制限部77)が合成樹脂であってもその剛性を高くすることができる。あるいは、ストッパ55の係合面80,81、保持端面74,75の高さを変更し、下側羽根部材51の下側当接面60,61、上側羽根部材52の上側当接面66,67の高さを変更することで蝶番49の高さを変更することも可能である。
【0053】
ストッパ55は軸体50に圧入したが、これに限定されるものではく、ストッパ55を軸体50に回転自在に嵌合するようにしてもよい。この場合、下側羽根部材51の下側当接面60,61の周方向の離間角度(上記実施形態では180°)と、ストッパ55の保持端面74,75との離間角度とが同一であれば、下側当接面60,61に保持端面74,75が当接するから、ストッパ55を軸体50に回転自在に嵌合しても、ストッパ55は軸体回りには非回転となるからである。
【0054】
そして、この場合では下側羽根部材51の下側当接面60,61の周方向の離間角度は特に限定されるものではなく、180°より大きくても小さくてもよく、ストッパ55の保持端面74,75と互いに当接してストッパ55の回動を阻止できる角度であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る蝶番を用いて扉を閉じた状態の使用状態を示す斜視図。
【図2】同じく扉を開いた状態の使用状態を示す斜視図。
【図3】同じく蝶番の軸体の単体正面図。
【図4】同じく軸体の単体側面図。
【図5】同じく軸体の単体背面図。
【図6】同じく軸体の単体斜視図。
【図7】同じく軸体の単体平面図。
【図8】同じく軸体の単体底面図。
【図9】同じく軸体の使用状態を示す縦断面図。
【図10】同じく蝶番の分解斜視図。
【図11】同じく下側羽根部材に対する上側羽根部材の回動範囲を示す斜視図。
【図12】本発明の第二実施形態を示す蝶番のを用いて扉を閉じた状態の使用状態斜視図。
【図13】同じく扉を開いた状態の使用状態斜視図。
【図14】同じく蝶番の分解斜視図。
【図15】同じく上側羽根部材の単体斜視図
【図16】同じくストッパの単体斜視図。
【図17】同じくストッパの縦断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…蝶番、2…軸体、3…下側羽根部材、4…上側羽根部材、7…軸本体、10…下側筒部、11…下側板部、12…下側止め孔、13…扉開口、14…取付け部、15…取付け枠面、16…止めねじ、17…上側筒部、18…上側板部、20…上側止め孔、21…扉、21a…扉の端面、25…ストッパ、27…上側案内面、28…案内部、30…外周縁部領域、32…回動制限部、33,34…係合面、35…筒状部、40…隙間、43…下側当接面、44…保持部、45…切欠溝、41…隙間、46,47…対向面、49…蝶番、50…軸体、51…下側羽根部材、52…上側羽根部材、55…ストッパ、56…軸本体、57…下側筒部、58…下側羽根板、59…突出部、60,61…下側当接面、62…下側円弧状面、65…上側筒部、66,67…上側当接面、68…上側円弧状面、69…被規制部、71…嵌合部、72…下側取付け面、73…案内部、74,75…保持端面、76…上側案内面、77…回動制限部、90…上側羽根板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の下部に筒部が外嵌固定されるとともに扉用開口の縁部の取付け部に羽根板が取付けられる下側羽根部材と、前記軸体の上部に筒部が回動自在に外嵌されるとともに扉に羽根板が取付けられる上側羽根部材と、前記軸体の軸方向途中に設けられて下側羽根部材に対する上側羽根部材の回動角度を制限するストッパとを備えた蝶番であって、
前記ストッパに、軸体の軸方向途中外周部から径方向外方に突出して上側羽根部材の筒部の下端面を周方向に案内する案内面を備えた案内部と、軸体の外周面に沿うよう前記案内面の周縁部から上方に突出して設けられるとともに周方向で対向する係合面を有する円弧状の回動制限部とが設けられ、前記上側羽根部材に該上側羽根部材が軸体回りに回動した際に前記回動制限部の係合面に周方向から当接して係合する被係合面が設けられたことを特徴とする蝶番。
【請求項2】
ストッパと軸体とを別体に設け、前記ストッパを前記軸体に圧入することで該軸体とストッパとを一体化していることを特徴とする請求項1記載の蝶番。
【請求項3】
被係合面が上側羽根板の羽根板の一部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蝶番。
【請求項4】
軸体の下部に筒部が外嵌挿通されるとともに扉用開口の縁部の取付け部に羽根板が取付けられる下側羽根部材と、前記軸体の上部に筒部が回動自在に外嵌されるとともに扉に羽根板が取付けられる上側羽根部材と、前記軸体の軸方向途中に設けられて下側羽根部材に対する上側羽根部材の回動角度を制限するストッパとを備えた蝶番であって、
前記ストッパは軸体とは別体でその軸方向途中に外嵌されるとともに合成樹脂から形成され、該ストッパに、軸体の軸方向途中外周部から径方向外方に突出して上側羽根部材の筒部の下端面を周方向に案内する案内面を備えた案内部と、軸体の外周面に沿うよう前記案内面の周縁部から上方に突出して設けられるとともに周方向で対向する係合面を有する回動制限部とが設けられ、前記上側羽根部材の筒部に該上側羽根部材の筒部が軸体回りに回動した際に前記回動制限部の係合面に周方向から当接して係合する被係合面が形成されたことを特徴とする蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−257659(P2006−257659A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73053(P2005−73053)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(503405483)株式会社キンマツ (3)
【Fターム(参考)】