説明

蟻溝用シール材

【課題】 本発明は、捩れが発生し難い形状で且つ蟻溝の開口部の両縁内面と蟻溝用シール材との間で擦れが生じ難く塵埃が発生し難い蟻溝用シール材を提供することを目的としている。
【解決手段】 部材同士の接合箇所で一方の部材2の表面2aに設けられた開口部3aの口径よりも底部3bが拡開された蟻溝3内に収容されて該一方の部材2の表面2aから一部が突出し、他方の部材の表面と弾性的に当接して両部材同士間をシールする蟻溝用シール材1であって、蟻溝3の底面3b1と内周側側面3c1とに連続する角隅円弧面3b2に先端部1a1が圧接係止されて該蟻溝3の底面3b1に対向する面1a2が上に突に反り返るシール材鋭角部1aと、該シール材鋭角部1aの他の面1a3に連続すると共に、蟻溝3の開口部3aからその一部が突出し、該開口部3aの両縁内面3a1,3a2に圧接される第1のシール材円弧部1bとを有する構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士の接合箇所で一方の部材の表面に設けられた開口部の口径よりも底部が拡開された蟻溝内に収容されて該一方の部材の表面から一部が突出し、他方の部材の表面と弾性的に当接して両部材同士間をシールする蟻溝用シール材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蟻溝用シール材の一例としては、蟻溝への装着が行い易いように、蟻溝から突出して他方の部材に当接する弧状凸辺と、蟻溝内で外側に張り出す張出辺との間に凹入部が形成されたもの(例えば、特許文献1参照。)や、蟻溝内で外側に張り出す2箇所の弧状部分の曲率半径及び曲率中心位置をそれぞれ変えて構成したものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−316724号公報
【特許文献2】特表平09−510286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の特許文献1の技術では、蟻溝内のシール材が遊動可能に挿入されているため蟻溝内の壁面とシール材との間で擦れて塵埃が発生し、例えば、半導体・液晶の製造プロセスで使用される処理チャンバーのチャンバー本体と開閉蓋との接合箇所や半導体製造装置のゲートバルブの封止部材となるシールプレート等に使用する場合には問題が残る。
【0005】
また、特許文献2の技術では、シール材の蟻溝から突出して他方の部材に当接する1つの弧状部分と、蟻溝内で外側に張り出す2つの弧状部分の計3つの弧状部分を有して構成されているものの、形状的に捩れが発生し易く、シール材の膨張方向の弾性力のみによって蟻溝の開口部の両縁内面に圧接される構成であるため振動等により蟻溝の開口部の両辺とシール材との間で擦れて塵埃が発生し易いという問題があった。
【0006】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、捩れが発生し難い形状で且つ蟻溝の開口部の両縁内面と蟻溝用シール材との間で擦れが生じ難く塵埃が発生し難い蟻溝用シール材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係る蟻溝用シール材の第1の構成は、部材同士の接合箇所で一方の部材の表面に設けられた開口部の口径よりも底部が拡開された蟻溝内に収容されて該一方の部材の表面から一部が突出し、他方の部材の表面と弾性的に当接して両部材同士間をシールする蟻溝用シール材であって、前記蟻溝の底面と側面とに連続する角隅円弧面に先端部が圧接係止されて該蟻溝の底面に対向する面が上に突に反り返るか若しくは該蟻溝の側面に対向する面が内部側に突に反り返るシール材鋭角部と、前記シール材鋭角部の一辺に連続すると共に、前記蟻溝の開口部からその一部が突出し、該開口部の両縁内面に圧接される第1のシール材円弧部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る蟻溝用シール材の第2の構成は、前記第1の構成において、前記シール材鋭角部の他辺に連続する第2のシール材円弧部と、前記第1、第2のシール材円弧部に連続する鈍角からなるシール材多角部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る蟻溝用シール材の第3の構成は、前記第1、第2の構成において、環状に形成された前記蟻溝内に、環状に形成された前記蟻溝用シール材が収容され、前記シール材鋭角部が前記蟻溝の内周側に挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蟻溝用シール材の第1の構成によれば、蟻溝の底面と側面とに連続する角隅円弧面にシール材鋭角部の先端部が圧接係止されて該蟻溝の底面に対向する面が上に突に反り返るか若しくは該蟻溝の側面に対向する面が内部側に突に反り返ることにより、その反力により蟻溝の開口部の両縁内面に第1のシール材円弧部が圧接されるため蟻溝の開口部の両縁内面と蟻溝用シール材との間で擦れが生じ難く塵埃が発生し難い、また、蟻溝用シール材の一部にシール材鋭角部が形成されたことで捩れが発生し難い蟻溝用シール材とすることが出来る。
【0011】
また、本発明に係る蟻溝用シール材の第2の構成によれば、シール材鋭角部の他辺に連続する第2のシール材円弧部と、第1、第2のシール材円弧部に連続する鈍角からなるシール材多角部とを有することにより、先ず蟻溝内にシール材鋭角部を挿入して該蟻溝の底面と側面とに連続する一方の角隅円弧面に該シール材鋭角部の先端部を当接させると共に、第2のシール材円弧部、シール材多角部の順に蟻溝の開口部から弾性変形させて順次挿入することが容易に出来、それによりシール材鋭角部の先端部が該角隅円弧面に圧接係止されて蟻溝の底面に対向する面が上に突に反り返るか若しくは該蟻溝の側面に対向する面が内部側に突に反り返り、その反力により蟻溝の開口部の両縁内面に第1のシール材円弧部が圧接されて固定される。
【0012】
また、本発明に係る蟻溝用シール材の第3の構成によれば、環状に形成された蟻溝内に、環状に形成された蟻溝用シール材を収容した際に、シール材鋭角部を蟻溝の内周側に挿入することで、環状に形成された蟻溝用シール材の内周方向への弾性引っ張り力により蟻溝の底面と側面とに連続する角隅円弧面にシール材鋭角部の先端部が圧接係止されて該蟻溝の底面に対向する面が上に突に反り返るか若しくは該蟻溝の側面に対向する面が内部側に突に反り返ることによる反力を更に大きくすることが出来、蟻溝の開口部の両縁内面に第1のシール材円弧部が更に強く圧接されるため蟻溝の開口部の両縁内面と蟻溝用シール材との間で擦れが生じ難く塵埃が発生し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図により本発明に係る蟻溝用シール材の一実施形態を具体的に説明する。図1(a)は本発明に係る蟻溝用シール材の構成を示す三面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図2(a)は本発明に係る蟻溝用シール材を蟻溝内に収容した部材表面の平面説明図、図2(b)は図2(a)のB−B断面図である。
【0014】
図1及び図2において、1は部材同士の接合箇所で一方の部材2の表面2aに設けられた開口部3aの口径よりも底部3bが拡開された蟻溝3内に収容されて該一方の部材2の表面2aから一部が突出し、図示しない他方の部材の表面と弾性的に当接して両部材同士間をシールする蟻溝用シール材である。
【0015】
本実施形態の蟻溝用シール材1は、パーフロエラストマ、フッ素ゴム等の弾性及び気液シール性を有する材質で構成され、図2に示すように、蟻溝3の底面3b1と内周側側面3c1及び外周側側面3c2とに連続する角隅円弧面3b2が形成され、内周側の角隅円弧面3b2にシール材鋭角部1aの先端部1a1が圧接係止されて該蟻溝3の底面3b1に対向する面1a2が上に突に反り返るか若しくは該蟻溝3の内周側側面3c1に対向する面1a3が内部側に突に反り返るシール材鋭角部1aと、該シール材鋭角部1aの面1a3に連続すると共に、蟻溝3の開口部3aからその一部が突出し、該開口部3aの両縁内面3a1,3a2に圧接される第1のシール材円弧部1bと、シール材鋭角部1aの他の面1a2に連続する第2のシール材円弧部1cと、該第1、第2のシール材円弧部1b,1cに連続する鈍角からなるシール材多角部1dとを有して環状に形成されている。
【0016】
一方、蟻溝3も環状に形成されており、該蟻溝3内に環状に形成された蟻溝用シール材1が収容され、図2に示すように、シール材鋭角部1aが蟻溝3の内周側に挿入される。
【0017】
本実施形態の蟻溝3は、深さ、開口部3aの幅、内周側の寸法がそれぞれ所定の寸法で設定され、4隅の曲率半径が例えば12mmとされ、蟻溝用シール材1は、例えば第1のシール材円弧部1bの曲率半径が2.22mm、第2のシール材円弧部1cの曲率半径が1.33mm、シール材鋭角部1aの角度が70°、第2のシール材円弧部1cに最初に連続されたシール材多角部1dの辺1d1がシール材鋭角部1aの第1のシール材円弧部1bに連続された面1a3と平行でその離間間隔wが4.75mmで構成され、シール材鋭角部1aの第2のシール材円弧部1cに連続された面1a2から第1のシール材円弧部1bの頂部までの高さhが5.06mm、シール材多角部1dの3辺により形成される各内角θが160°にそれぞれ設定されている。
【0018】
図2(b)は蟻溝3の底面3b1に対向する蟻溝用シール材1の面1a2が上に突に反り返る場合の一例を示し、図2(b)に示すように、蟻溝3の底面3b1と内周側側面3c1とに連続する内周側の角隅円弧面3b2にシール材鋭角部1aの先端部1a1が圧接係止されて該蟻溝3の底面3b1に対向する面1a2が上に突に反り返ることにより、その反力により蟻溝3の開口部3aの両縁内面3a1,3a2に第1のシール材円弧部1bが圧接されるため蟻溝3の開口部3aの両縁内面3a1,3a2と蟻溝用シール材1との間で擦れが生じ難く塵埃が発生し難い、また、蟻溝用シール材1の一部にシール材鋭角部1aが形成されたことで捩れが発生し難い。
【0019】
シール材鋭角部1aの面1a2に連続する第2のシール材円弧部1cと、第1、第2のシール材円弧部1b,1cに連続する鈍角からなるシール材多角部1dとを有することにより、先ず蟻溝3内の内周側にシール材鋭角部1aを挿入して該蟻溝3の底面3b1と内周側側面3c1とに連続する内周側の角隅円弧面3b2に該シール材鋭角部1aの先端部1a1を当接させると共に、第2のシール材円弧部1c、シール材多角部1dの順に蟻溝3の開口部3aから蟻溝用シール材1を弾性変形させて順次挿入することが容易に出来、それによりシール材鋭角部1aの先端部1a1が該角隅円弧面3b2に圧接係止されて蟻溝3の底面3b1に対向する面1a2が上に突に反り返り、その反力により蟻溝3の開口部3aの両縁内面3a1,3a2に第1のシール材円弧部1bが圧接されて固定される。
【0020】
環状に形成された蟻溝3内に、環状に形成された蟻溝用シール材1を収容した際に、シール材鋭角部1aを蟻溝3の内周側に挿入することで、環状に形成された蟻溝用シール材1の内周方向への弾性引っ張り力により蟻溝3の底面3b1と内周側側面3c1とに連続する内周側の角隅円弧面3b2にシール材鋭角部1aの先端部1a1が圧接係止されて該蟻溝3の底面3b1に対向する面1a2が上に突に反り返ることによる反力を更に大きくすることが出来、蟻溝3の開口部3aの両縁内面3a1,3a2に第1のシール材円弧部1bが更に強く圧接されるため蟻溝3の開口部3aの両縁内面3a1,3a2と蟻溝用シール材1との間で擦れが生じ難く塵埃が発生し難い。
【0021】
尚、図2(b)では蟻溝3の底面3b1に対向する蟻溝用シール材1の面1a2が上に突に反り返る場合の一例を示したが、図示しない他の一例として、蟻溝3の内周側側面3c1に対向する蟻溝用シール材1の面1a3が該蟻溝用シール材1の内部側方向(図2の左側方向)に突に反り返ることによっても上記と同様な効果を得ることが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の活用例として、部材同士の接合箇所で一方の部材の表面に設けられた開口部の口径よりも底部が拡開された蟻溝内に収容されて該一方の部材の表面から一部が突出し、他方の部材の表面と弾性的に当接して両部材同士間をシールする蟻溝用シール材に適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明に係る蟻溝用シール材の構成を示す三面図、(b)は図1(a)のA−A断面図である。
【図2】(a)は本発明に係る蟻溝用シール材を蟻溝内に収容した部材表面の平面説明図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…蟻溝用シール材
1a…シール材鋭角部
1a1…先端部
1a2…面
1a3…面
1b…第1のシール材円弧部
1c…第2のシール材円弧部
1d…シール材多角部
1d1…辺
2…部材
2a…表面
3…蟻溝
3a…開口部
3a1,3a2…両縁内面
3b…底部
3b1…底面
3b2…角隅円弧面
3c1…内周側側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材同士の接合箇所で一方の部材の表面に設けられた開口部の口径よりも底部が拡開された蟻溝内に収容されて該一方の部材の表面から一部が突出し、他方の部材の表面と弾性的に当接して両部材同士間をシールする蟻溝用シール材であって、
前記蟻溝の底面と側面とに連続する角隅円弧面に先端部が圧接係止されて該蟻溝の底面に対向する面が上に突に反り返るか若しくは該蟻溝の側面に対向する面が内部側に突に反り返るシール材鋭角部と、
前記シール材鋭角部の一辺に連続すると共に、前記蟻溝の開口部からその一部が突出し、該開口部の両縁内面に圧接される第1のシール材円弧部と、
を有することを特徴とする蟻溝用シール材。
【請求項2】
前記シール材鋭角部の他辺に連続する第2のシール材円弧部と、
前記第1、第2のシール材円弧部に連続する鈍角からなるシール材多角部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の蟻溝用シール材。
【請求項3】
環状に形成された前記蟻溝内に、環状に形成された前記蟻溝用シール材が収容され、前記シール材鋭角部が前記蟻溝の内周側に挿入されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蟻溝用シール材。

【図1】
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【図2】
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