説明

血圧情報測定装置および該装置での動脈硬化度の指標の算出方法

【課題】脈波伝播距離を補正することにより、脈波伝播距離を用いて得られる動脈硬化度の判定に有効な指標を精度よく算出することのできる血圧情報測定装置を提供する。
【解決手段】血圧計1のCPU40は、測定用の空気袋13Bの内圧変化から血圧を算出する。また、脈波波形からAIやTrを算出する。CPU40の経路差算出部405は予め記憶されている脈波伝播距離を補正するための補正式を記憶しておき、算出された血圧値やAIなどを当該補正式に代入することで、予め記憶されている脈波伝播距離を補正して、実際の脈波伝播距離に近づける。PWV算出部406はその距離を用いてPWVを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧情報測定装置および該装置での動脈硬化度の指標の算出方法に関し、特に、動脈硬化度の判定に有効な血圧情報を測定する血圧情報測定装置および該装置での動脈硬化度の指標の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈硬化度を判定する装置として、たとえば特開2000−316821号公報(以下、特許文献1)は、心臓から駆出された脈波の伝播する速度(以下、PWV:Pulse Wave Velocity)を調べる装置を開示している。
【0003】
PWVは、上腕および下肢などの少なくとも2箇所以上に脈波を測定するカフ等を装着し、同時に脈波を測定することで、それぞれの脈波の出現時間差と、脈波を測定するカフ等を装着した2点間の動脈の長さとから算出される。このため、少なくとも2箇所にカフ等を装着する必要があり、家庭で簡便にPWVを測定することは難しいという問題点があった。
【0004】
そこで、上腕の1箇所で測定した脈波から動脈硬化度を判定する装置として、たとえば特開2004−113593号公報(以下、特許文献2)は、脈波測定用カフと末梢側を圧迫する圧迫用カフとを備えた装置を開示している。上腕で測定される圧脈波だけでなく、頚動脈やとう骨動脈でトノメトリ法により測定される脈波を使用しても駆出波と反射波との出現時間差を検出できる。
【0005】
特許文献2の装置では、末梢側を圧迫しながら心臓側の脈波を測定することによって、心臓から駆出された駆出波と、大動脈における主要な反射部位からの反射波とを分離して、駆出波と反射波との出現時間差(Δt、PTT、Tr等と呼ばれる)を検出することにより動脈硬化度を判定するための指標である脈波伝播速度を算出する。具体的には、駆出波と反射波それぞれの、測定部位までの伝播経路差を、測定部位における駆出波と反射波との出現時間差で除して動脈硬化度を判定するための指標である脈波伝播速度(PWV)に換算する。
【0006】
このような装置において、脈波伝播速度を精度よく算出するためには、脈波伝播時間に加えて脈波伝播距離の情報が必要になる。伝播時間が同じであれば、伝播距離が長いほど伝播速度が速く、動脈硬化度が高いということになる。
【0007】
従来より、大動脈における脈波の主要な反射部位は、腸骨動脈分岐部であると言われている。そこで、大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)を2倍したもの(2L_da)を駆出波と反射波それぞれの、測定部位までの伝播経路差と仮定し、これをTr(Traveling time to reflected wave)で除した値(2L_da/Tr)が大動脈のPWVに等しいとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−316821号公報
【特許文献2】特開2004−113593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、実際には、主要な反射部位は一定ではなく、年齢、身長など被測定者の属性や、動脈硬化の進行度等の病態により異なる。そのため、すべての被測定者について反射部位を同じと仮定すると、算出されるPWVに誤差を生じるという問題点がある。
【0010】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、脈波伝播距離を補正することにより脈波伝播距離を用いて得られる動脈硬化度の判定に有効な指標を精度よく算出することのできる血圧情報測定装置および該装置での動脈硬化度の指標の算出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、血圧情報測定装置は血圧情報として被験者の動脈硬化度の指標である脈波伝播速度を算出する血圧情報測定装置であって、被験者の測定部位に装着するための空気袋と、空気袋の内圧を調整するための調整手段と、空気袋の内圧変化に基づいて被験者の脈波伝播速度を算出する処理を行なうための演算装置とを備える。演算装置は、内圧変化から被験者の血圧値を得る演算と、内圧変化から一拍分の脈波波形を得る演算と、一拍分の脈波波形における駆出波と反射波との出現時間差を得る演算と、血圧値と、予め記憶される大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに基づいて、駆出波と反射波それぞれの、心臓から測定部位までの伝播経路差を決定する演算と、伝播経路差と出現時間差とに基づいて被験者の脈波伝播速度を得る演算とを実行する。
【0012】
好ましくは、演算装置は、伝播経路差を決定する演算において、血圧値と大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに加えて、脈波波形の形状の特徴を表わす値を用いて伝播経路差を決定する。
【0013】
好ましくは、血圧情報測定装置は被験者の血圧情報に関わる属性を表わす値の入力を受け付けるための入力手段をさらに備え、演算装置は、伝播経路差を決定する演算において、血圧値と大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに加えて、属性を表わす値を用いて伝播経路差を決定する。
【0014】
好ましくは、血圧情報測定装置は被験者の血圧情報に関わる属性を表わす値の入力を受け付けるための入力手段をさらに備え、演算装置は、伝播経路差を決定する演算において、血圧値と大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに加えて、脈波波形の形状の特徴を表わす値と属性を表わす値とを用いて伝播経路差を決定する。
【0015】
好ましくは、演算装置は、脈波波形の形状から駆出波の振幅と反射波の振幅との比率であるAI(Augmentation Index)値を得る演算をさらに実行し、伝播経路差を決定する演算において、脈波波形の形状の特徴を表わす値としてAI値を用いる。
【0016】
好ましくは、被験者の血圧情報に関わる属性を表わす値は、被験者の年齢と、被験者の身長とのうちの少なくとも一つである。
【0017】
好ましくは、伝播経路差を決定する演算では、血圧値から得られる値を予め記憶される大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値に乗じることで伝播経路差を算出する。
【0018】
好ましくは、被験者の測定部位に装着するための空気袋は、装着時に中枢側に位置する第1の空気袋と末梢側に位置する第2の空気袋とを含み、脈波波形を得る演算では第2の空気袋で測定部位の末梢側を駆血した状態における第1の空気袋の内圧変化から脈波波形を得る。
【0019】
本発明の他の局面に従うと、血圧情報測定装置における動脈硬化度の指標の算出方法は、血圧情報測定装置において動脈硬化度の指標として脈波伝播速度を算出するための方法であって、血圧情報測定装置は、被験者の測定部位に装着するための空気袋と被験者の脈波伝播速度を算出する処理を行なうための演算装置とを含み、演算装置の実行する、被験者の測定部位に装着された空気袋の内圧変化から被験者の血圧値を算出するステップと、内圧変化から一拍分の脈波波形を得るステップと、一拍分の脈波波形における駆出波と反射波との出現時間差を特定するステップと、血圧値と、予め記憶される大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに基づいて、駆出波と反射波それぞれの、心臓から測定部位までの伝播経路差を決定するステップと、伝播経路差と出現時間差とに基づいて被験者の脈波伝播速度を算出するステップとを備える。
【発明の効果】
【0020】
この発明によると、脈波伝播距離を用いて得られる動脈硬化度の判定に有効な指標を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】同じ被測定者についてのPWVの実測値と推定値との関係を示す図である。
【図2】図2(A)は、複数の被測定者についての「相対距離」と最高血圧との関係、図2(B)は、複数の被測定者についての「相対距離」とAI値との関係を示す図である。
【図3】大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)と、実測された心臓大腿動脈間PWVおよびTrから算出された大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)と、脈波の測定部位である心臓と大腿動脈との2点間の血管経路の距離(L_hf)とを表わした概略図である。
【図4】実施の形態にかかる血圧情報測定装置(以下、測定装置と略する)の外観の具体例を示す図である。
【図5】測定姿勢および腕帯の構成の具体例を示す図である。
【図6】測定装置の構成の具体例を示すブロック図である。
【図7】測定装置での動作を表わすフローチャートである。
【図8】図7のステップS17での処理を表わすフローチャートである。
【図9】測定装置での動作中の、圧迫用空気袋および測定用空気袋内の圧力変化を説明する図である。
【図10】被測定者の血圧値を用いて距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)を用いて算出したPWVの推定値と、PWVの実測値との関係を示している。
【図11】被測定者の血圧値と血圧波形の形状の特徴を表わす値としてのAI値とを用いて距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)を用いて算出したPWVの推定値と、PWVの実測値との関係を示している。
【図12】被測定者の血圧値と血圧波形の形状の特徴を表わす値としてのAI値と被測定者の血管経路に関わる属性としての年齢および身長とを用いて距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)を用いて算出したPWVの推定値と、PWVの実測値との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0023】
<原理の説明>
動脈硬化度を判定するための指標の一つとして脈波伝播速度(以下、PWV:Pulse Wave Velocity)が挙げられる。PWVは、駆出波と反射波それぞれの測定部位までの伝播経路差を、測定部位における駆出波と反射波との出現時間差で除して換算される。
【0024】
従来のPWVの算出方法では、大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)を2倍したもの(2L_da)を駆出波と反射波それぞれの、心臓から測定部位までの伝播経路差と仮定し、これをTrで除した値(2L_da/Tr)で得ていた。
【0025】
しかしながら、実際には、主要な反射部位は一定ではなく、年齢や身長など被測定者の実際の血管経路の長さの違いや、年齢や病態などの被測定者の動脈の硬化度合いにより異なる。たとえば、Mitchellらによる論文「Changes in arterial stiffness and wave reflection with advancing age in healthy men and women. The Framingham Heart Study」(Hypertension. 2004;43:1239-1245)では、高齢になるほど反射部位は心臓から遠くなることが示されている。一方、たとえばSegersらによる論文「Assessment of pressure wave reflection: getting the timing right!」(Physiol. Meas. 28(2007) 1045-1056)などには、高齢になるほど反射部位は心臓に近くなることを示す結果も開示されている。このため、すべての被測定者に対して同じ反射部位を仮定すると、算出されるPWVに誤差を生じることとなる。
【0026】
図1は、同じ被測定者についてのPWVの実測値と推定値との関係を示す図である。ここでPWVとしては、心臓と大腿動脈との2点で測定された脈波から算出されたhfPWVを用いる。「実測値」は心臓と大腿動脈との2点で測定された脈波から算出されたPWVである。「推定値」は頚動脈の1点でトノメトリ法により測定された脈波から算出された脈波伝播時間と大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)とを用いて算出した値である。図1において、横軸が実測値を表わし、縦軸が推定値を表わしている。
【0027】
図1より、実測値と推定値との間の差が大きい被測定者が存在することがわかる。これは、推定値に誤差が含まれているためと考えられる。推定値の誤差の原因の一つとして、仮定した反射波経路差の誤差が考えられる。
【0028】
ここで、発明者らは、腸骨動脈分岐部を反射部位と想定した場合の大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)に対する、実測された心臓大腿動脈間PWVおよびTrから算出された大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)の比率(L_Tr/L_da)を「相対距離」として、被測定者ごとに「相対距離」と、最高血圧と、駆出波の振幅に対する反射波の振幅の比率であるAI(Augmentation Index)値とを算出した。相対距離=1は、想定した反射位置と実際の反射位置とが等しいことを表わしている。
【0029】
なお、距離(L_Tr)は以下の式(1)により算出される、
L_Tr=hfPWV×Tr/2 …式(1)。
【0030】
図2(A)は、複数の被測定者についての「相対距離」と最高血圧との関係、図2(B)は、複数の被測定者についての「相対距離」とAI値との関係を示す図である。図2(A)、図2(B)より、算出された相対距離は被測定者ごとに異なり、実際には必ずしも相対距離=1となっていないことがわかる。さらに、図2(A)、図2(B)に示された関係より、発明者らは、特に、血圧が高いほど相対距離が大きくなり、AI値が大きいほど相対距離は小さくなることを見出した。すなわち、発明者らは、被測定者の身長や年齢などの血管経路に関わる属性に加えて、血圧値や、血圧波形の形状の特徴によっても、実際の反射位置が想定した反射位置からずれることを見出した。
【0031】
図3は、大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)と、実測された心臓大腿動脈間PWVおよびTrから算出された大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)と、脈波の測定部位である心臓と大腿動脈との2点間の血管経路の距離(L_hf)とを表わした概略図である。
【0032】
図3より、「相対距離」が大きくなることは距離(L_da)に対して距離(L_Tr)が大きくなることと同義であるため、実際の反射位置が想定された反射位置よりも心臓から遠い側であることを意味している。逆に、「相対距離」が小さくなることは距離(L_da)に対して距離(L_Tr)が小さくなることと同義であるため、実際の反射位置が想定された反射位置よりも心臓に近い側であることを意味している。
【0033】
以上の考察の結果、発明者らは、被測定者の身長や年齢などの血管経路に関わる属性や、血圧値や、血圧波形の形状の特徴を用いて大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)を補正して大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を得、反射波経路差を決定することとした。
【0034】
第1の例として、被測定者の血圧値と、血圧波形の形状の特徴とを用いて距離(L_da)を補正して、大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を得る。具体例として、被測定者の血圧値として最高血圧を用い、血圧波形の形状の特徴を表わす値としてAI値を用いて、次の式(2)によって距離(L_Tr)を算出する、
L_Tr=(A×最高血圧+B×AI+C)×L_da …式(2)。
【0035】
また、第2の例として、被測定者の血圧値を用いて距離(L_da)を補正する。具体例として、被測定者の血圧値として最高血圧を用いて、次の式(3)によって距離(L_Tr)を算出する、
L_Tr=(A’×最高血圧+C’)×L_da …式(3)。
【0036】
なお、係数A,A’,B,C,C’は、実際の被測定者群に対する測定結果から実験的に得られる係数を用いることができる。また、大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)は、大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離の実測値、または、予め求められた身長と実測値との間の近似式により求めた値を用いることができる。
【0037】
また、第3の例として、被測定者の血管経路に関わる属性と、被測定者の血圧値と、血圧波形の形状の特徴とを用いて距離(L_da)を補正する。具体例として、被測定者の血管経路に関わる属性として年齢および身長を用い、被測定者の血圧値として最高血圧を用い、血圧波形の形状の特徴を表わす値としてAI値を用いて、次の式(4)によって距離(L_Tr)を算出する、
L_Tr=(D×年齢+E×最高血圧+F×AI+G×身長+H)×L_da …式(4)。
【0038】
また、第4の例として、被測定者の血管経路に関わる属性と、被測定者の血圧値とを用いて距離(L_da)を補正する。具体例として、被測定者の血管経路に関わる属性として年齢および身長を用い、被測定者の血圧値として最高血圧を用いて、次の式(5)によって距離(L_Tr)を算出する、
L_Tr=(D’×年齢+E’×最高血圧+G’×身長+H’)×L_da …式(5)。
【0039】
なお、係数D,D’,E,E’,F,G,G’,H,H’もまた、実際の被測定者群に対する測定結果から実験的に得られる係数を用いることができる。
【0040】
なお、以上の説明では、被測定者の血圧値として最高血圧を用いているが、最低血圧であってもよいし、最高血圧と最低血圧との中間値であってもよい。また、被測定者の血圧波形の形状の特徴を表わす値としてAI値を用いているが、Tr等の他の指標であってもよい。また、被測定者の血管経路に関わる属性として年齢および身長を用いているが、年齢および身長のうちの一方であってもよいし、その他の属性であってもよい。
【0041】
<装置構成>
図4は、実施の形態にかかる血圧情報測定装置(以下、測定装置と略する)1の外観の具体例を示す図である。
【0042】
図4を参照して、測定装置1は、エアチューブ10で接続された基体2と測定部位である上腕に装着される腕帯9とを含む。基体2の正面には、測定結果を含む各種の情報を表示する表示部4および測定装置1に対して各種の指示を与えるために操作される操作部3が配される。操作部3は電源をON/OFFするために操作されるスイッチ31、および測定の開始を指示するために操作されるスイッチ32を含む。
【0043】
図5(A),図5(B)を参照して、腕帯9は、生体を圧迫するための流体袋としての空気袋を備える。上記空気袋は、血圧情報としての血圧を測定するために用いられる流体袋である空気袋13A、および血圧情報としての脈波を測定するために用いられる流体袋である空気袋13Bとを含む。空気袋13Bのサイズは一例として20mm×200mm程度である。また、好ましくは、空気袋13Bの空気容量は空気袋13Aの空気容量に比べ1/5以下である。
【0044】
測定装置1を用いた脈波の測定に際しては、図5(A)に示すように、腕帯9を測定部位である上腕100に巻き回す。その状態でスイッチ32が押下されることで、血圧情報が測定され、血圧情報に基づいて動脈硬化度を判定するための指標が算出される。ここで「血圧情報」とは、生体から測定して得られる、血圧に関連する情報を指し、具体的には、血圧値、血圧波形(脈波波形)、心拍数、などが該当する。
【0045】
図6は、測定装置1の構成の具体例を示すブロック図である。
図6を参照して、測定装置1は、空気袋13Aにエアチューブ10を介して接続されるエア系20A、および空気袋13Bにエアチューブ10を介して接続されるエア系20Bと、CPU(Central Processing Unit)40とを含む。エア系20Aは、エアポンプ21Aと、エアバルブ22Aと、圧力センサ23Aとを含む。エア系20Bは、エアバルブ22Bと、圧力センサ23Bとを含む。
【0046】
エアポンプ21Aは駆動回路26Aに接続され、駆動回路26AはさらにCPU40に接続される。エアポンプ21Aは、CPU40からの指令を受けた駆動回路26Aによって駆動されて、空気袋13Aに圧縮気体を送り込むことで空気袋13Aを加圧する。
【0047】
エアバルブ22Aは駆動回路27Aに接続され、駆動回路27AはさらにCPU40に接続される。エアバルブ22Bは駆動回路27Bに接続され、駆動回路27BはさらにCPU40に接続される。エアバルブ22A,22Bは、それぞれ、CPU40からの指令を受けた駆動回路27A,27Bによってその開閉状態が制御される。開閉状態が制御されることでエアバルブ22A,22Bは、それぞれ、空気袋13A,13B内の圧力を維持したり減圧したりする。これにより、空気袋13A,13B内の圧力が制御される。
【0048】
圧力センサ23Aは増幅器28Aに接続され、増幅器28AはさらにA/D変換器29Aに接続され、A/D変換器29AはさらにCPU40に接続される。圧力センサ23Bは増幅器28Bに接続され、増幅器28BはさらにA/D変換器29Bに接続され、A/D変換器29BはさらにCPU40に接続される。圧力センサ23A,23Bは、それぞれ、空気袋13A,13B内の圧力を検出し、その検出値に応じた信号を増幅器28A,28Bに対して出力する。出力された信号は増幅器28A,28Bで増幅され、A/D変換器29A,29Bでデジタル化された後にCPU40に入力される。
【0049】
空気袋13Aからのエアチューブと空気袋13Bからのエアチューブとは2ポート弁51で接続されている。2ポート弁51は駆動回路53に接続され、駆動回路53はさらにCPU40に接続される。2ポート弁51は空気袋13A側の弁と空気袋13B側の弁とを有し、CPU40からの指令を受けた駆動回路53によって駆動されることでそれら弁が開閉する。
【0050】
メモリ41にはCPU40で実行されるプログラムが記憶される。CPU40は、測定装置の基体2に設けられた操作部3に入力された指令に基づいてメモリ41からプログラムを読み出して実行し、その実行に従って制御信号を出力する。またCPU40は測定結果を表示部4やメモリ41に出力する。メモリ41には測定結果も記憶される他、必要に応じて、被測定者の身長や年齢などの血管経路に関わる属性が記憶される。被測定者の血管経路に関わる属性は、予め操作部3での操作によって入力される。そしてCPU40は、必要に応じてプログラムの実行に伴って上記被測定者の血管経路に関わる属性を読み出して演算に用いる。
【0051】
<機能構成>
さらに図6を参照して、CPU40は、上述の原理に従って動脈硬化度を判定するための指標としてのPWVを算出するための機能として、圧力センサ23Bからの圧力信号の入力を受け付けて一拍分の血圧波形を得るための入力部401と、圧力センサ23Bからの圧力信号の入力を受け付けて血圧値(たとえば最高血圧値)を算出するための血圧算出部402と、血圧波形からAI値を算出するためのAI算出部403と、血圧波形からTrを算出するためのTr算出部404と、上記式(2)または式(3)に従って最高血圧値または最高血圧値およびAI値を用いて大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)を補正して距離(L_Tr)を得、反射波経路差を決定するための経路差算出部405と、反射波経路差をTrで除してPWVを算出するためのPWV算出部406とを含む。これらはCPU40が操作部3からの操作信号に従ってメモリ41に記憶されるプログラムを読み出して実行することで主にCPU40に形成される機能であるが、少なくともこれら機能のうちの一部がハードウェア構成で形成されてもよい。
【0052】
<測定および指標算出動作>
図7は、測定装置1での動作を表わすフローチャートである。図7に示される動作は測定者がスイッチ32を押下することにより開始される。この動作はCPU40がメモリ41に記憶されるプログラムを読み出して図6に示される各部を制御することによって実現されるものである。また、図9を用いて測定装置1での動作中の空気袋13A,13B内の圧力変化を説明する。図9の(A)は空気袋13B内の圧力P1の時間変化を示し、図9の(B)は空気袋13A内の圧力P2の時間変化を示している。図9の(A),(B)で時間軸に付してあるS3〜S17は、後述する測定装置1での測定動作の各動作と一致している。
【0053】
図7を参照して、動作が開始すると、ステップS1でCPU40において各部が初期化される。ステップS3でCPU40はエア系20Aに対して制御信号を出力して空気袋13Aの加圧を開始し、加圧過程において血圧を測定する。ステップS3での血圧の測定は、通常の血圧計で行なわれているオシロメトリック法による測定が行なわれる。ステップS3でCPU40は圧力センサ23Bからの圧力信号に基づいて血圧値を算出し、メモリ41の所定領域に記憶させる。
【0054】
ステップS3での血圧の測定が完了すると、ステップS5でCPU40は駆動回路53に制御信号を出力して2ポート弁51の空気袋13A側の弁と空気袋13B側の弁との両方を開放させる。これにより空気袋13Aと空気袋13Bとは連通し、空気袋13A内の空気の一部が空気袋13Bに移動して空気袋13Bが加圧される。
【0055】
図9の(B)の例では、上記ステップS3で加圧を開始してから血圧の測定が完了するまで、空気袋13A内の圧力P2は最高血圧値よりも高い圧力まで増加している。その後、上記ステップS5で2ポート弁51の上記弁が開放されることで、空気袋13A内の空気の一部が空気袋13Bに移動して、圧力P2が減少する。同時に、図9の(A)に示されるように、空気袋13B内の圧力P1が急激に増加する。そして、圧力P1と圧力P2とが一致した時点で、つまりこれら空気袋13A,13Bの内圧がつりあった時点で、空気袋13Aから空気袋13Bへの空気の移動が終了する。ステップS7でCPU40は、この時点で駆動回路53に制御信号を出力して、上記ステップS5で開放した2ポート弁51の両弁を閉塞させる。図9の(A),(B)において、ステップS7の時点で圧力P1と圧力P2とが一致していることが示されている。図5(A)に表わされたように空気袋13Bの容量は空気袋13Aの容量と比較して小さいため、圧力P2のステップS5での減少は大幅ではなく、ステップS7の時点で圧力P1と圧力P2とも最高血圧値よりも高い圧力となっている。
【0056】
その後、ステップS9でCPU40は駆動回路27Bに制御信号を出力して、空気袋13B内の圧力P1を脈波を測定するのに適した圧力になるまで減圧調整する。ここでの減圧調整量は、たとえば5.5mmHg/sec程度が好適である。また、脈波を測定するのに適した圧力としては50〜150mmHg程度が好適である。このとき2ポート弁51の両弁が閉塞されているため、図9の(B)に示されるように、空気袋13A内の圧力P2は最高血圧値よりも高い圧力で測定部位の末梢側を圧迫し、駆血状態となっている。
【0057】
末梢側が駆血された状態において、ステップS11でCPU40は、圧力センサ23Bからの圧力信号に基づく一拍分の血圧波形が入力されるごとに、その血圧波形から特徴点を抽出するための動作を行なう。すなわち、ステップS11でCPU40は圧力センサ23Bからの圧力信号を受け付けて、一拍分の血圧波形を特定する。なお、ここでは、複数拍分の血圧波形の入力に基づいてその平均値から一拍分の血圧波形を特定してもよいし、所定期間(数秒間、等)に入力された圧力信号に表れた脈拍分の平均値から一拍分の血圧波形を特定してもよい。
【0058】
そして、特定された一拍分の血圧波形から、予め規定されている、血圧波形の二次微分曲線の極大点に対応した点や、血圧波形の四次微分曲線の下降ゼロクロス点に対応した点などを特徴点として抽出する。
【0059】
ステップS11の特徴点を抽出する動作は、予め規定されている動脈硬化度の指標を算出するために必要な数(たとえば10拍分)の特徴点が抽出されるまで、一拍分の血圧波形が入力されるごとに繰り返される。その間、空気袋13B内の圧力P1は図9の(A)に示されるように脈波を測定するのに適した圧力に維持され、空気袋13A内の圧力P2は図9の(B)に示されるように最高血圧値よりも高い圧力に維持されている。これにより、測定部位の末梢側の駆血状態が維持されている。
【0060】
抽出された特徴点の数が予め規定されている数(たとえば10拍分)に達すると(ステップS13でYES)、ステップS15でCPU40は、抽出された特徴点の平均値を用いて脈波伝播時間とAI値とを算出する。すなわち、血圧波形の二次微分曲線の極大点に対応した点や、血圧波形の四次微分曲線の下降ゼロクロス点に対応した点などを反射波の立ち上がり点として、駆出波の立ち上がり点との出現時の差分を算出することでTrを算出し、1拍分の血圧波形の駆出波の最大振幅と反射波の最大振幅とを特定してその比率を算出することでAI値を算出する。なお、Trに替えて、駆出波のピークの出現時間と反射波のピークの出現時間との時間差(Tpp)を用いてもよい。
【0061】
さらに、ステップS17でCPU40は、脈波伝播距離を算出する。図8はステップS17での処理を表わすフローチャートである。
【0062】
上記第1の例として示された、被測定者の血圧値と血圧波形の形状の特徴とを用いて距離(L_da)を補正する場合、すなわち、上記式(2)を用いて距離(L_Tr)を算出する場合、CPU40は、ステップS3で算出された最高血圧値を読み出し(ステップS101)、ステップS15で算出されたAI値を読み出し(ステップS103)、それらを上記式(2)に代入することで(ステップS105)、大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を算出する。
【0063】
上記第2の例として示された、被測定者の血圧値を用いて距離(L_da)を補正する場合、すなわち、上記式(3)を用いて距離(L_Tr)を算出する場合には、ステップS103の動作はスキップされ、ステップS3で算出された最高血圧値を読み出して(ステップS101)、上記式(3)に代入することで(ステップS105)、大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を算出する。
【0064】
上記第3の例として示された、被測定者の血管経路に関わる属性と被測定者の血圧値と血圧波形の形状の特徴とを用いて距離(L_da)を補正する場合、すなわち、上記式(4)を用いて距離(L_Tr)を算出する場合には、CPU40は、ステップS101,S103の動作に加えて、さらにメモリ41から年齢および身長等の被測定者の血管経路に関わる属性を読み出し、上記式(4)に代入することで(ステップS105)、大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を算出する。
【0065】
上記第4の例として示された、被測定者の血管経路に関わる属性と被測定者の血圧値とを用いて距離(L_da)を補正する場合、すなわち、上記式(5)を用いて距離(L_Tr)を算出する場合には、ステップS103の動作はスキップされる。CPU40は、ステップS101の動作に加えて、さらにメモリ41から年齢および身長等の被測定者の血管経路に関わる属性を読み出し、上記式(5)に代入することで(ステップS105)、大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を算出する。
【0066】
CPU40は、算出された大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)を2倍し、駆出波と反射波それぞれの、心臓から測定部位までの伝播経路差(2L_Tr)として算出する。
【0067】
ステップS19でCPU40は、ステップS17で算出された伝播経路差をステップS15で算出されたTrで除して、動脈硬化度の指標としてのPWVを算出する。そして、ステップS21でCPU40は駆動回路27A,27Bに制御信号を出力してエアバルブ22A,22Bを開放させ、空気袋13A,13Bの圧力を大気圧に解放する。図9の(A),(B)の例では、圧力P1,P2は、ステップS21の区間で、大気圧まで急速に減少している。
【0068】
算出された最高血圧値(SYS)、最低血圧値(DIA)、動脈硬化度の指標や、測定された脈波などの測定結果は基体2に設けられた表示部4で表示するための処理が施され、表示される。
【0069】
<実施の形態の効果>
測定装置1では、被測定者の動脈の硬化度合いとしての脈波伝播速度(PWV)を算出する際に用いられる駆出波と反射波それぞれの、心臓から測定部位までの伝播経路差が、大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)を被測定者の身長や年齢などの血管経路に関わる属性や、血圧値や、血圧波形の形状の特徴やこれらの組み合わせによって補正して得られる大動脈起始部から実際の反射位置までの距離(L_Tr)から算出される。
【0070】
図10〜図12は、同じ被測定者についてのPWVの実測値と、測定装置1において大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)と脈波伝播時間とから算出されたPWVである推定値との関係を示す図である。図10は、上記第2の例として示された、被測定者の血圧値を用いて距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)を用いて算出したPWVの推定値と、PWVの実測値との関係を示している。図11は、上記第1の例として示された、被測定者の血圧値と血圧波形の形状の特徴を表わす値としてのAI値とを用いて距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)を用いて算出したPWVの推定値と、PWVの実測値との関係を示している。図12は、上記第3の例として示された、被測定者の血圧値と血圧波形の形状の特徴を表わす値としてのAI値と被測定者の血管経路に関わる属性としての年齢および身長とを用いて距離(L_da)を補正して得られた距離(L_Tr)を用いて算出したPWVの推定値と、PWVの実測値との関係を示している。
【0071】
図10〜図12を参照して、いずれの方法によって補正した場合であっても、図1に示された、PWVの実測値と推定値との関係と比較して、実測値と推定値との間の差が格段に小さくなっていることがわかる。すなわち、上述のいずれの方法の補正も、仮定された反射位置を実際の反射位置に近づけるような補正であることがわかる。これにより、算出されたPWVの誤差を従来のPWVの算出方法よりも小さくすることができ、精度よく動脈硬化度を判定することができる。
【0072】
なお、以上の例では、図5に表わされたように、腕帯9に、血圧を測定するために用いられる流体袋である空気袋13Aと脈波を測定するために用いられる流体袋である空気袋13Bとの2つの空気袋が備えられるものとしている。しかしながら、これら空気袋は一つの空気袋で実現されてもよい。この場合、CPU40は、該一つの空気袋の内圧変化に基づいて脈波と血圧とを測定する。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 測定装置、2 基体、3 操作部、4 表示部、9 腕帯、10 エアチューブ、13A,13B 空気袋、20A,20B エア系、21A エアポンプ、22A,22B エアバルブ、23A,23B 圧力センサ、26A,27A,27B,53 駆動回路、28A,28B 増幅器、29A,29B 変換器、31,32 スイッチ、40 CPU、41 メモリ、51 2ポート弁、100 上腕、401 入力部、402 血圧算出部、403 AI算出部、404 Tr算出部、405 経路差算出部、406 PWV算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧情報として被験者の動脈硬化度の指標である脈波伝播速度を算出する血圧情報測定装置であって、
被験者の測定部位に装着するための空気袋と、
前記空気袋の内圧を調整するための調整手段と、
前記空気袋の内圧変化に基づいて前記被験者の脈波伝播速度を算出する処理を行なうための演算装置とを備え、
前記演算装置は、
前記内圧変化から前記被験者の血圧値を得る演算と、
前記内圧変化から一拍分の脈波波形を得る演算と、
前記一拍分の脈波波形における駆出波と反射波との出現時間差を得る演算と、
前記血圧値と、予め記憶される大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに基づいて、前記駆出波と前記反射波それぞれの、心臓から前記測定部位までの伝播経路差を決定する演算と、
前記伝播経路差と前記出現時間差とに基づいて前記被験者の脈波伝播速度を得る演算とを実行する、血圧情報測定装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記伝播経路差を決定する演算において、前記血圧値と前記大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに加えて、前記脈波波形の形状の特徴を表わす値を用いて前記伝播経路差を決定する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項3】
前記被験者の血圧情報に関わる属性を表わす値の入力を受け付けるための入力手段をさらに備え、
前記演算装置は、前記伝播経路差を決定する演算において、前記血圧値と前記大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに加えて、前記属性を表わす値を用いて前記伝播経路差を決定する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項4】
前記被験者の血圧情報に関わる属性を表わす値の入力を受け付けるための入力手段をさらに備え、
前記演算装置は、前記伝播経路差を決定する演算において、前記血圧値と前記大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに加えて、前記脈波波形の形状の特徴を表わす値と前記属性を表わす値とを用いて前記伝播経路差を決定する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項5】
前記演算装置は、前記脈波波形の形状から前記駆出波の振幅と前記反射波の振幅との比率であるAI(Augmentation Index)値を得る演算をさらに実行し、
前記伝播経路差を決定する演算において、前記脈波波形の形状の特徴を表わす値として前記AI値を用いる、請求項2または4に記載の血圧情報測定装置。
【請求項6】
前記被験者の血圧情報に関わる属性を表わす値は、前記被験者の年齢と、前記被験者の身長とのうちの少なくとも一つである、請求項3または4に記載の血圧情報測定装置。
【請求項7】
前記伝播経路差を決定する演算では、前記血圧値から得られる値を前記予め記憶される大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値に乗じることで前記伝播経路差を算出する、請求項1〜6のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項8】
前記被験者の測定部位に装着するための空気袋は、装着時に中枢側に位置する第1の空気袋と末梢側に位置する第2の空気袋とを含み、
前記脈波波形を得る演算では前記第2の空気袋で前記測定部位の末梢側を駆血した状態における前記第1の空気袋の内圧変化から前記脈波波形を得る、請求項1〜7のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項9】
血圧情報測定装置において動脈硬化度の指標として脈波伝播速度を算出するための方法であって、
前記血圧情報測定装置は、被験者の測定部位に装着するための空気袋と前記被験者の脈波伝播速度を算出する処理を行なうための演算装置とを含み、
前記演算装置の実行する、
被験者の測定部位に装着された空気袋の内圧変化から、前記被験者の血圧値を算出するステップと、
前記内圧変化から一拍分の脈波波形を得るステップと、
前記一拍分の脈波波形における駆出波と反射波との出現時間差を特定するステップと、
前記血圧値と、予め記憶される大動脈起始部から腸骨動脈分岐部までの距離を表わす値とに基づいて、前記駆出波と前記反射波それぞれの、心臓から前記測定部位までの伝播経路差を決定するステップと、
前記伝播経路差と前記出現時間差とに基づいて前記被験者の脈波伝播速度を算出するステップとを備える、血圧情報測定装置における動脈硬化度の指標の算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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