説明

血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置

【課題】被測定部位に対して装着する際、同じ装着状態を繰り返し容易に再現できる血圧情報測定装置用カフ、およびこれを備えた血圧情報測定装置を提供する。
【解決手段】血圧情報測定装置用カフ20Aは、流体袋34と、外装カバー30と、流体袋34が設けられている位置よりも外装カバー30の一端部30a側に設けられ、外装カバー30の他端部30bが挿通して折り返されるための挿通孔36aを有する第1環状リング36と、外装カバー30の表面31上に設けられ、第1環状リング36を挿通した外装カバー30の他端部30bが挿通するための挿通孔38aを有する第2環状リング38と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧値等の血圧情報を測定する際に被測定部位に装着されて使用される血圧情報測定装置用カフ、およびこれを備えた血圧情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧情報測定装置は、被験者の血圧情報を取得する。血圧情報測定装置が取得する血圧情報には、収縮期血圧値(最高血圧値)、拡張期血圧値(最低血圧値)、平均血圧値、被験者の脈波、脈拍、AI(Augmentation Index)値等、循環器系の種々の情報などが含まれる。これらの血圧情報に基づき、心臓の負荷、または動脈硬さの変化などを把握することができる。血圧情報測定装置は、循環器系の疾患の早期発見、予防または治療などのために使用されている。
【0003】
一般に、血圧情報の測定には、血圧情報測定装置用カフ(以下、単にカフとも称する)が使用される。カフは、生体(動脈)を圧迫するための流体袋を内包している。カフは、内腔を有する帯状の部材であって、上腕などの生体の一部に巻き付けられることができる。
【0004】
収縮期血圧値または拡張期血圧値などの血圧値を測定するための血圧情報測定装置(以下、単に血圧計とも称する)においては、カフが生体の一部の体表面に巻き付けられる。カフに内包される流体袋に、気体や液体等の流体が注入または排出される。流体袋に流体が注入されることにより、流体袋は膨張する。流体袋から流体が排出されることにより、流体袋は収縮する。流体袋が膨張または収縮するときに発生する流体袋の内圧の変化が、動脈圧脈波または血圧値として取得される。
【0005】
一般的なカフは、流体袋としての空気袋と、帯状の外装カバーとを有している。外装カバーは、空気袋を内包している。外装カバーの表面には、面ファスナーが設けられている。外装カバーの長手方向の一端部には、環状のリングが取り付けられている。環状のリングに、外装カバーの長手方向の他端部が挿通されて折り返されることで、カフは環状に形成される。
【0006】
外装カバーが環状に形成された部分に、被測定部位を挿入する。カフが、被測定部位に巻き付けられる。被測定部位に対して外装カバーが締め付けられ、締結状態は面ファスナーにより保持される。当該締結状態により、空気袋は被測定部位に対して固定される。カフおよびこれを備えた血圧計は、血圧情報の測定が可能となる。
【0007】
ところで、一般的なカフにおいては、外装カバーを被測定部位に対して締め付けるときに、外装カバーが周方向に回転しやすい。外装カバーが周方向に回転すると、カフとしての所望の締め付け状態を得るためには、外装カバーを、回転した方向とは反対の方向に回転させ、再び締め付けることが必要となる。一般的には、上記の周方向の回転と、この回転とは反対方向の回転とが複数回繰り返される。
【0008】
周方向の回転および周方向とは反対方向の回転が複数回繰り返されるため、血圧値をたとえば日常的に測定する場合、カフとしての所定の締め付け状態を再現することが困難となる。結果として、日々の測定により得られる測定値にばらつきが生じ、精度よく安定的に血圧情報を測定することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平5−39504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、被測定部位に対して装着する際、同じ装着状態を繰り返し容易に再現できる血圧情報測定装置用カフ、およびこれを備えた血圧情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく血圧情報測定装置用カフは、流体袋、外装カバー、第1ガイド部材、および第2ガイド部材を備える。上記流体袋は、生体を圧迫する。上記外装カバーは、帯状である。上記外装カバーは、上記流体袋を一端部側に内包する。上記外装カバーは、第1主面と、第2主面とを有する。上記第2主面は、上記生体に対して環状に巻き付けられることにより上記生体と対向する。上記第1ガイド部材は、上記流体袋が設けられている位置よりも上記外装カバーの上記一端部側に設けられる。上記第1ガイド部材は、上記外装カバーの他端部が挿通して折り返されるために環状に形成された部分を有する。上記第2ガイド部材は、上記外装カバーの上記第1主面上に設けられる。上記第2ガイド部材は、上記第1ガイド部材を挿通した上記外装カバーの上記他端部を挿通するために環状に形成された部分を有する。
【0012】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフにおいては、上記外装カバーは、上記生体内部の動脈との距離が最も短くなる上記生体の表面の部分と、上記流体袋とが対向するように配置された状態で、上記生体に対して固定される。
【0013】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフにおいては、上記生体は上腕であり、上記第2ガイド部材は、当該血圧情報測定装置用カフが上記上腕に固定された状態で上腕三頭筋側に位置する上記第1主面上に設けられる。
【0014】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフにおいては、上記生体は一方の上腕であり、上記第2ガイド部材は、当該血圧情報測定装置用カフが上記上腕に固定された状態で他方の上腕側に位置する上記第1主面上に設けられる。
【0015】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフは、係止部材をさらに備える。上記係止部材は、上記第1主面上に設けられる。上記係止部材は、上記外装カバーを展開した状態における長手方向において、上記第2ガイド部材と上記第1ガイド部材との間の、上記第2ガイド部材寄りに位置する。
【0016】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフは、第3ガイド部材をさらに備える。上記第3ガイド部材は、上記第1主面上に設けられる。上記第3ガイド部材は、上記外装カバーを展開した状態における長手方向において上記第1ガイド部材と上記第2ガイド部材との間に位置する。上記第2ガイド部材に挿通した上記他端部は、上記第3ガイド部材に挿通される。
【0017】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフにおいては、上記第3ガイド部材に挿通された上記他端部は、上記第3ガイド部材において折り返された後、上記第2ガイド部材に再び挿通される。
【0018】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフは、第3ガイド部材をさらに備える。上記第3ガイド部材は、上記第1主面上に設けられる。上記第3ガイド部材は、上記外装カバーを展開した状態における長手方向において上記第2ガイド部材と上記他端部との間に位置する。上記第1ガイド部材に挿通して折り返された上記他端部は、上記第3ガイド部材に挿通された後、上記第2ガイド部材に挿通される。
【0019】
上記発明の他の形態に基づく血圧情報測定装置用カフは、第3ガイド部材をさらに備える。上記第3ガイド部材は、上記第2主面上に設けられる。上記第3ガイド部材は、上記外装カバーを展開した状態における長手方向において上記第2ガイド部材と上記他端部との間に位置する。上記第2ガイド部材に挿通した上記他端部は、上記第2ガイド部材において折り返された後、上記第3ガイド部材に挿通される。
【0020】
本発明に基づく血圧情報測定装置は、上記のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフと、上記流体袋を膨縮させる膨縮機構と、血圧情報を取得する血圧情報取得部と、を備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被測定部位に対して装着する際、同じ装着状態を繰り返し容易に再現できる血圧情報測定装置用カフ、およびこれを備えた血圧情報測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1における血圧計の全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態1におけるカフを示す断面図である。
【図3】実施の形態1におけるカフを上腕(左腕)に装着した様子を示す図である。
【図4】実施の形態1における血圧計の機能ブロックを示す図である。
【図5】実施の形態1における血圧計の処理の流れを示す図である。
【図6】実施の形態1におけるカフを上腕に対して装着する様子を経時的に示す第1断面図である。
【図7】実施の形態1におけるカフを上腕に対して装着する様子を経時的に示す第2断面図である。
【図8】実施の形態1の第1変形例におけるカフを示す断面図である。
【図9】実施の形態1の第2変形例におけるカフを部分的に示す斜視図である。
【図10】実施の形態1の第3変形例におけるカフを部分的に示す斜視図である。
【図11】実施の形態2におけるカフを示す断面図である。
【図12】実施の形態2におけるカフを展開した様子を示す平面図である。
【図13】実施の形態2の変形例におけるカフを示す断面図である。
【図14】実施の形態2の変形例におけるカフを展開した様子を示す平面図である。
【図15】実施の形態3におけるカフを示す断面図である。
【図16】実施の形態3におけるカフを展開した様子を示す平面図である。
【図17】実施の形態4におけるカフを示す断面図である。
【図18】実施の形態4におけるカフを展開した様子を示す平面図である。
【図19】比較例におけるカフを上腕に対して装着する様子を経時的に示す第1断面図である。
【図20】比較例におけるカフを上腕に対して装着する様子を経時的に示す第2断面図である。
【図21】比較例におけるカフを上腕に対して装着する様子を経時的に示す第3断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に基づいた各実施の形態における血圧情報測定装置用カフおよびこれを備えた血圧情報測定装置について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0024】
以下の各実施の形態においては、血圧情報測定装置用カフの一例として、上腕に巻き付けられて使用される血圧計用カフについて説明する。血圧情報測定装置用カフを備えた血圧情報測定装置の一例として、上記血圧計用カフを用いて収縮期血圧値および拡張期血圧値等の血圧値を測定可能とした血圧計について説明する。
【0025】
以下の各実施の形態においては、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。以下に説明する各実施の形態において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0026】
[実施の形態1]
図1〜図7を参照して、本実施の形態における血圧計1について説明する。
【0027】
(血圧計1の構成)
図1を参照して、血圧計1は、本体10と、カフ20Aと、エア管80とを備えている。本体10は箱状の筐体である。本体10の上面には、表示部12および操作部15が設けられている。本体10は、測定時においてテーブル等に載置されて使用される。
【0028】
カフ20Aは、外装カバー30と、外装カバー30に流体袋として内包される空気袋34(図2参照)と、面ファスナー41(係止部材)と、面ファスナー42と、第1環状リング36(第1ガイド部材)と、第2環状リング38(第2ガイド部材)とを有している。
【0029】
外装カバー30は、表面31(第1主面)、裏面32(第2主面)、一端部30a、および他端部30bを有している。
【0030】
外装カバー30は、表面31を構成する部材と、裏面32を構成する部材とを重ね合わせて、その周縁を接合(たとえば縫合や溶着等)することによって袋状の部材として構成されている。カフ20Aは、外装カバー30の裏面32と、たとえば上腕などの生体とが対向するように配置される。
【0031】
外装カバー30の裏面32側を構成する部材としては、好適には空気袋34の膨張によって上腕に加えられる圧迫力が阻害されないように、十分に伸縮性に富んだ部材が使用される。
【0032】
外装カバー30の表面31側を構成する部材としては、外装カバー30の裏面32側を構成する部材に比して伸縮性に乏しい部材が使用される。外装カバー30の表面31側を構成する部材としては、伸縮性の大小を比較的容易に調整することができるポリアミド(PA)、ポリエステル等の合成繊維からなる布地等が使用される。
【0033】
図2を参照して、空気袋34は、エア管80に接続されている。空気袋34は、エア管80に接続された状態で、外装カバー30に内包されている。空気袋34は、袋状の部材から構成され、内部に膨縮空間を有している。空気袋34は、好適には樹脂シートを用いて構成される。空気袋34は、たとえば2枚の樹脂シートを重ね合わせ、その周縁を溶着することによって袋状に構成される。
【0034】
空気袋34を構成する樹脂シートの材質には、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間からの漏気がないものであればどのようなものでも使用可能である。好適には、空気袋34を構成する樹脂シートの材質は、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、天然ゴム(NR)等である。
【0035】
上腕70内部には、動脈71が流れている。上腕70の表面においては、上腕70の表面と動脈71との間の距離L71が最も短くなる部分70aが規定されている。外装カバー30は、上記部分70aと、空気袋34とが対向するように配置された状態で、上腕70に対して固定されるとよい。より好適には、外装カバー30は、上記部分70aと、空気袋34の略中心の位置34cとが対向するように配置された状態で、上腕70に対して固定されるとよい。
【0036】
図1を再び参照して、エア管80は、分離して構成された本体10とカフ20Aに内包される空気袋34とを接続している。空気袋34は、本体10からエア管80を通じて流体が注入されることにより膨張する。空気袋34は、エア管80を通じて流体が排出されることにより収縮する。空気袋34が膨張および収縮することにより、上腕(不図示)などの生態を圧迫することができる。エア管80は、外装カバー30(カフ20A)が上腕70に固定されたとき、上腕二頭筋側(紙面上方側)に配置されるような位置に設けられるとよい。
【0037】
面ファスナー41は、外装カバー30の表面31上において略矩形状に設けられている。面ファスナー41は、外装カバー30の長手方向における一端部30aと他端部30bとの間の所定の位置に設けられる。
【0038】
図2を再び参照して、好適には、面ファスナー41は、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第2環状リング38(詳細は後述する)と第1環状リング36との間の、第2環状リング38寄りに配置されているとよい。面ファスナー41は、より好適には、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第2環状リング38と第1環状リング36との間の、第2環状リング38を取り付けるための取付カバー33aに隣接する位置に配設されているとよい。
【0039】
面ファスナー42は、面ファスナー41と同様に外装カバー30の表面31上に設けられている。面ファスナー42は、外装カバー30の他端部30b側に設けられている。面ファスナー41と面ファスナー42とは、相互に係止することが可能となっている。
【0040】
図1に示すように、面ファスナー42が外装カバー30の表面31上において部分的に設けられている。換言すると、面ファスナー42と、外装カバー30の表面31側を構成する部材とは別部材により構成されている。面ファスナー42を表面31上に別部材として設ける代わりに、外装カバー30の表面31側を構成する部材の全体を、面ファスナー41と係止可能な部材としてもよい。より好適には、外装カバー30の表面31側のうち特に他端部30b側を構成する部材のみを、面ファスナー41と係止可能な部材とするとよい。
【0041】
第1環状リング36は、外装カバー30の一端部30a付近に取付けられている。第1環状リング36は、外装カバー30の他端部30b側の部分を挿通可能な挿通孔36aを有している。第1環状リング36は、外装カバー30との間に摩擦が生じ難いたとえば金属製の部材にて構成されているとよい。
【0042】
第1環状リング36は、外装カバー30の一端部30a側の部分を第1環状リング36の挿通孔36aに挿通させた後、外装カバー30の一端部30a側の部分を折り返して縫合することにより外装カバー30に取付けられている。
【0043】
外装カバー30は、外装カバー30の他端部30bが第1環状リング36の挿通孔36aに挿通されることにより、環状に形成される。外装カバー30の他端部30b側の部分は、挿通孔36aに挿通された後、外装カバー30の挿通孔36aの周方向に沿って第1環状リング36を基点に折り返される。
【0044】
第2環状リング38は、外装カバー30の表面31上に取付けられている。第2環状リング38は、外装カバー30の他端部30b側の部分と、取付カバー33aとを挿通可能な挿通孔38aを有している。第2環状リング38は、第1環状リング36と同様に、外装カバー30との間に摩擦が生じ難いたとえば金属製の部材にて構成されているとよい。
【0045】
取付カバー33aは、第2環状リング38の挿通孔38aに挿通された状態で外装カバー30の表面31上に縫合されている。第2環状リング38は、取付カバー33aと外装カバー30との間に挟み込まれることにより、外装カバー30の表面31上に取付けられている。
【0046】
図2を参照して、好適には、第2環状リング38は、カフ20Aが左腕上腕70に固定されたとき、右腕上腕側(紙面右側)に位置する表面31上に設けられているとよい。より好適には、第2環状リング38は、カフ20Aが左腕上腕70に固定されたとき、最も右腕上腕側に位置する表面31上に設けられているとよい。
【0047】
第2環状リング38は、第2環状リング38と空気袋34とが平面視において重なる位置に(長手方向にずれた状態で)配設されていても、平面視において重ならない位置に配設されていてもよい。
【0048】
第1環状リング36を挿通し折り返された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第2環状リング38の挿通孔38aに挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0049】
図3を参照して、上記構成を有する血圧計1を使用して血圧値を測定するときには、外装カバー30の環状に形成されている部分に被験者のたとえば左腕の上腕70が挿入される。外装カバー30の他端部30bは、被験者の右手(不図示)により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。外装カバー30は上腕70に対して締結される。
【0050】
面ファスナー41と面ファスナー42とは、重ね合わされることによって相互に係止し、外装カバー30の上腕70に対する締結状態を保持する。外装カバー30に内包される空気袋が上腕70に対して固定され、血圧情報の測定が可能となる。
【0051】
(血圧計1の機能ブロック)
図4を参照して、血圧計1の機能ブロックについて説明する。血圧計1の本体10は、上述した表示部12および操作部15に加え、制御部11と、メモリ部13と、電源部14と、加圧ポンプ16aと、排気弁16bと、圧力センサ16cと、加圧ポンプ駆動回路17aと、排気弁駆動回路17bと、発振回路17cとを備えている。
【0052】
加圧ポンプ16a、排気弁16bおよび圧力センサ16cは、血圧計1におけるエア系コンポーネント16に相当する。加圧ポンプ16aおよび排気弁16bは、空気袋34を膨張および収縮させるための血圧計1における膨縮機構に相当する。
【0053】
空気袋34は、上述のとおりその内部に内腔としての膨縮空間を有している。空気袋34は、エア管80を介して加圧ポンプ16a、排気弁16bおよび圧力センサ16cのそれぞれに接続されている。
【0054】
制御部11は、たとえばCPU(Central Processing Unit)から構成される。制御部11は、血圧計1の全体を制御する。表示部12は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成される。表示部12は、測定結果等を表示する。
【0055】
メモリ部13は、処理用メモリ13aとデータ用メモリ13bとから構成される。メモリ部13は、処理用メモリ13aおよびデータ用メモリ13bにより、血圧値測定のための処理手順を制御部11等に実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果等を記憶したりする。
【0056】
電源部14は、制御部11に電源としての電力を供給する。操作部15は、電源スイッチ15aと、測定スイッチ15bと、停止スイッチ15cと、記録呼出スイッチ15dとから構成される。操作部15は、被験者等により各スイッチ15a〜15dの操作を受けて、外部からの命令を制御部11または電源部14に入力する。
【0057】
制御部11は、加圧ポンプ16aおよび排気弁16bを駆動するための制御信号を加圧ポンプ駆動回路17aおよび排気弁駆動回路17bにそれぞれ入力する。制御部11は、測定結果としての血圧値をメモリ部13または表示部12に入力する。
【0058】
制御部11は、圧力センサ16cによって検出された圧力値に基づいて被験者の血圧値を取得する血圧情報取得部(不図示)を含んでいる。血圧情報取得部によって取得された血圧値が、測定結果として上述したメモリ部13または表示部12に入力される。
【0059】
血圧計1は、測定結果としての血圧値を外部の機器(たとえばPC(Personal Computer)やプリンタ等)に出力する出力部を別途有していてもよい。出力部としては、たとえばシリアル通信回線または各種の記録媒体への書き込み装置等が使用可能である。
【0060】
加圧ポンプ16aの膨縮動作は、制御部11から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ駆動回路17aにより制御される。加圧ポンプ16aは、空気袋34の内腔に空気などの流体を供給することにより、空気袋34の内部の圧力(以下、「カフ圧」とも称する)を加圧する。
【0061】
排気弁16bの開閉動作は、制御部11から入力された制御信号に基づいて排気弁駆動回路17bにより制御される。排気弁16bは、カフ圧を維持したり、空気袋34の内腔を外部に開放してカフ圧を減圧したりする。
【0062】
圧力センサ16cは、空気袋34の内部の圧力に応じた出力信号を発振回路17cに入力する。発振回路17cは、圧力センサ16cから入力された信号に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部11に入力する。
【0063】
(血圧計1の処理の流れ)
図4および図5を参照して、血圧計1の処理の流れについて説明する。血圧計1の処理の流れに従うプログラムは、メモリ部13に予め記憶されている。制御部11がメモリ部13からこのプログラムを読み出して実行することにより、血圧計1の処理が実行される。
【0064】
血圧値を測定する際には、被験者は予めカフ20Aを上腕に装着する。この状態において、被験者は本体10に設けられた操作部15(電源スイッチ15a)を操作して、血圧計1の電源をONにする(ステップST1)。
【0065】
電源部14から制御部11に対して電源としての電力が供給されて制御部11が駆動する。制御部11はメモリ部13の初期化を行なう(ステップST2)。次いで、制御部11は圧力センサ16cの初期化を行なう(ステップST3)。
【0066】
制御部11は被験者の測定開始の指示を待つ。被験者が測定開始の指示として、操作部15(測定スイッチ15b)を操作する(ステップST4)。制御部11は、排気弁16bを閉塞させるとともに加圧ポンプ16aを駆動させる。空気袋34の加圧が開始される(ステップST5)。
【0067】
空気袋34のカフ圧は上昇する。空気袋34のカフ圧は、血圧値測定のために必要な所定のカフ圧以上にまで達する(ステップST6)。制御部11は加圧ポンプ16aを停止させ、閉じていた排気弁16bを開放する。空気袋34内の空気が排気され、空気袋34の減圧が徐々に開始される(ステップST7)。
【0068】
血圧計1においては、カフ圧が徐々に減圧される過程において血圧値を測定する。血圧計1は、制御部11により収縮期血圧値および拡張期血圧値等の血圧値を算出する(ステップST8)。
【0069】
制御部11は、空気袋34のカフ圧が徐々に減圧する過程において発振回路17cから得られる発振周波数に基づき、脈波情報を抽出する。制御部11は、抽出された脈波情報に基づいて血圧値を決定する(ステップST9)。
【0070】
血圧値が決定されると、制御部11は、空気袋34を開放して空気袋34内の空気を完全に排気する(ステップST10)。制御部11は、測定結果としての血圧値を表示部12に表示する(ステップST11)。制御部11は、当該血圧値をメモリ部13に格納し、データとして記録する(ステップST12)。
【0071】
被験者は、本体に設けられた操作部15(電源スイッチ15a)を操作して、血圧計1の電源をOFFにする。電源OFFにより、血圧計1の動作は終了する(ステップST13)。
【0072】
以上において説明した測定方式は、空気袋34の減圧時に脈波を検出するいわゆる減圧測定方式である。血圧計1の測定方式は減圧測定方式に限られず、空気袋34の加圧時に脈波を検出するいわゆる加圧測定方式を採用することも可能である。
【0073】
(作用・効果)
図6および図7を参照して、本実施の形態における作用および効果について説明する。図6および図7は、本実施の形態における血圧計用のカフ20Aを、上腕70に締結するときの様子(動作)を経時的に示した断面図である。図6に示す状態は、図7に示す状態に至る。図6および図7においては、空気袋34を記載していない。空気袋34は、実際には、図2に示すように配置されている。
【0074】
図6を参照して、カフ20Aにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。上腕70が挿入された後、外装カバー30の他端部30bは右手によって把持される。把持された他端部30bは、矢印AR1に示す方向に引っ張られる。第2環状リング38が右腕上腕側(紙面右側)に位置する表面31上に設けられていることにより、被験者の右手によって他端部30bを容易に引っ張ることが可能となる。
【0075】
他端部30bが矢印AR1に示す方向に引っ張られることに伴い、第2環状リング38も、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。上腕70と外装カバー30の環状に形成された部分との間には、第2環状リング38が設けられている側において隙間Hが生じる。
【0076】
カフ20Aとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR1に示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成された部分の径は次第に小さくなる。隙間Hも次第に小さくなる。
【0077】
外装カバー30の環状に形成された部分の径が次第に小さくなるとき、外装カバー30のうち第1環状リング36に挿通されようとしている側(紙面下方側)の部分は、上腕70と接触した状態で、上腕70の表面に対して(紙面左方側に向かって)摺り動く。
【0078】
これに伴い、外装カバー30のうち第2環状リング38が設けられている側(外装カバー30の紙面略右半分側)の部分は、第1環状リング36側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転しようとする。第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力が作用する。
【0079】
ここで上述のとおり、第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印AR1に示す方向に移動させようとする力も作用している。この力は、第2環状リング38を常に上腕70の最も右手側に位置するように作用する。この力は、第2環状リング38を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力に対して、反作用的に矢印A2に示す方向(反時計回り方向)に働く。
【0080】
つまり、第2環状リング38には、第2環状リング38を時計回り方向に回転させようとする力と、この力に対して反作用的に反時計回り方向に働く力とが作用している。これらの力は相互に相殺され、第2環状リング38の上腕70に対する周方向の位置はほとんど変わらない。したがって、第2環状リング38の上腕70に対する周方向の位置がほとんど変わることなく、外装カバー30の環状に形成された部分の径を小さくすることが可能となる。
【0081】
図7を参照して、外装カバー30と上腕70とが密着することにより、隙間Hはほぼ無くなる。カフ20Aの上腕70に対する締結は完了する。
【0082】
ここで、第2環状リング38は、外装カバー30の表面31上に設けられている。第2環状リング38の挿通孔38aには、第1環状リング36を挿通し、第1環状リング36において折り返された外装カバー30の他端部30bが挿通している。外装カバー30のうち取付カバー33aが設けられている部分と、外装カバー30のうち空気袋34を内包している部分とは連続している。当該連続により、第2環状リング38と空気袋34との周方向の動きは関連(連動)している。
【0083】
上記のとおり、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、第2環状リング38の上腕70に対する位置はほとんど変化することがない。したがって、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、空気袋34の上腕70に対する位置もほとんど変化することがない。
【0084】
血圧計用のカフ20Aの締結の前後において、冒頭で説明したような周方向の回転と、この回転とは反対方向の回転とは繰り返されない。カフ20Aを日常的に上腕70に対して締結したとしても、第2環状リング38は、上腕70の最も右手側付近における略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。空気袋34も、略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。カフ20Aとしての所定の締め付け状態を、繰り返し再現することが可能となる。
【0085】
カフ20Aおよびこれを備えた血圧計1によれば、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0086】
図2を参照して、上述のとおり、面ファスナー41は、第2環状リング38と第1環状リング36との間の、第2環状リング38寄りに位置しているとよい。当該構成により、面ファスナー41は、第2環状リング38よりも外装カバー30の一端部30a側に位置する。面ファスナー41と面ファスナー42とを容易に係止させることが可能となる。
【0087】
[実施の形態1の第1変形例]
図8を参照して、実施の形態1の第1変形例に係るカフ20Aaについて説明する。カフ20Aaが上腕に固定されたとき、第2環状リング38は上腕三頭筋72側(紙面下方)に位置する表面31上に設けられていてもよい。
【0088】
カフ20Aaにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。上腕70が挿入された後、外装カバー30の他端部30bは右手によって把持される。把持された他端部30bは、矢印AR1aに示す方向に引っ張られる。
【0089】
他端部30bが矢印AR1aに示す方向に引っ張られることに伴い、第2環状リング38も、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1aに示す方向に引っ張られる。
【0090】
外装カバー30の環状に形成された部分の径が次第に小さくなるとき、外装カバー30のうち第1環状リング36に挿通されようとしている側(紙面左方側)の部分は、上腕70と接触した状態で、上腕70の表面に対して(紙面上方側に向かって)摺り動く。
【0091】
これに伴い、外装カバー30のうち第2環状リング38が設けられている側(外装カバー30の紙面略下半分側)の部分は、第1環状リング36側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転しようとする。第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力が作用する。
【0092】
ここで上述のとおり、第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印AR1aに示す方向に移動させようとする力も作用している。この力は、第2環状リング38を常に上腕70の最も上腕三頭筋72側に位置するように作用する。この力は、第2環状リング38を矢印A1aに示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力に対して、反作用的に矢印A2に示す方向(反時計回り方向)に働く。
【0093】
つまり、第2環状リング38には、第2環状リング38を時計回り方向に回転させようとする力と、この力に対して反作用的に反時計回り方向に働く力とが作用している。これらの力は相互に相殺され、第2環状リング38の上腕70に対する周方向の位置はほとんど変わらない。したがって、第2環状リング38の上腕70に対する周方向の位置がほとんど変わることなく、外装カバー30の環状に形成された部分の径を小さくすることが可能となる。
【0094】
上述の実施の形態1と同様に、外装カバー30のうち取付カバー33aが設けられている部分と、外装カバー30のうち空気袋34を内包している部分とは連続している。外装カバー30が上腕70に締結される前後において、空気袋34の上腕70に対する位置もほとんど変化することがない。
【0095】
血圧計用のカフ20Aaの締結の前後において、冒頭で説明したような周方向の回転と、この回転とは反対方向の回転とは繰り返されない。カフ20Aaとしての所定の締め付け状態を、繰り返し再現することが可能となる。
【0096】
カフ20Aaおよびこれを備えた血圧計1によれば、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0097】
[実施の形態1の第2変形例]
図1を参照して、実施の形態1においては、カフ20Aは、外装カバー30と、空気袋34(図2参照)と、面ファスナー41と、面ファスナー42と、第1環状リング36(第1ガイド部材)と、第2環状リング38(第2ガイド部材)とを有している。
【0098】
図9を参照して、実施の形態1の第2変形例におけるカフ20Abは、実施の形態1におけるカフ20Aと異なり、面ファスナー41,42を有していない。カフ20Abは、第2ガイド部材として固定部材50を有している。外装カバー30の締結状態は固定部材50により保持される。
【0099】
固定部材50は、支持枠52と、第1ローラ54と、第2ローラ56と、所定の係止手段(詳細は後述する)とを有している。固定部材50は、外装カバー30の表面31上に取付けられている。具体的には、固定部材50の支持枠52が、外装カバー30の表面31に取付けられている。
【0100】
支持枠52は、たとえば金属製の平板部材の両端をプレス加工することによって形成されている。支持枠52は、その長手方向(カフ20Abの幅方向に沿う方向)の両端に側壁部52a,52aを有している。各側壁部52aには、長円状の軸支穴52a1がそれぞれ設けられている。各側壁部52aには、さらに、正円状の軸支穴52b1もそれぞれ設けられている。
【0101】
第1ローラ54は、カフ20Abの幅方向に沿って延びて設けられている。第1ローラ54の両端は、各軸支穴52a1に挿通されている。第1ローラ54は、支持枠52の各側壁部52a(各軸支穴52a1)によって回転可能に支持されている。
【0102】
第2ローラ56は、第1ローラ54と同様に、カフ20Abの幅方向に沿って延びて設けられている。第2ローラ56の両端は、各軸支穴52b1に挿通されている。第2ローラ56は、各側壁部52a(各軸支穴52b1)によって回転可能に支持されている。
【0103】
支持枠52の側壁部52a,52aと、第1ローラ54と、第2ローラ56との間に規定される挿通孔には、外装カバー30の他端部30b側を挿通することができる。
【0104】
第1環状リング36(図1参照)を挿通した外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第1ローラ54および第2ローラ56の間に挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0105】
外装カバー30の他端部30bが固定部材50から離れる方向に引っ張られることにより、外装カバー30が生体に対して締結される。
【0106】
外装カバー30の生体に対する締結状態を保持するための係止手段として、たとえば第1ローラ54が第2ローラ56側に付勢されるように構成されているとよい。他の係止手段として、第1ローラ54が矢印AR54に示す方向にのみ回転可能に構成され、且つ第2ローラ56が矢印AR56に示す方向にのみ回転可能なように構成されていてもよい。
【0107】
係止手段として固定部材50を採用することにより、固定部材50が外装カバー30の生体に対する締結状態を保持する。カフ20Abによれば、面ファスナーを設ける必要がない。
【0108】
血圧計用のカフ20Abの締結の前後において、冒頭で説明したような周方向の回転と、この回転とは反対方向の回転とは繰り返されない。カフ20Abを日常的に上腕に対して締結したとしても、固定部材50は、上腕の最も右手側付近における略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。空気袋34も、略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。カフ20Abとしての所定の締め付け状態を、繰り返し再現することが可能となる。
【0109】
カフ20Abおよびこれを備えた血圧計によれば、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0110】
[実施の形態1の第3変形例]
図10を参照して、実施の形態1の第3変形例におけるカフ20Acについて説明する。ここでは、カフ20Acと、実施の形態1の第2変形例におけるカフ20Abとの相違点について説明する。
【0111】
カフ20Acは、第2ガイド部材として固定部材50aを有している。固定部材50aは、第2ローラ56を有している。固定部材50aは、第1ローラ54(図9参照)を有していない。
【0112】
第1環状リング36(図1参照)を挿通した外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第2ローラ56および支持枠52の間に挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0113】
外装カバー30の他端部30bが固定部材50aから離れる方向に引っ張られることにより、外装カバー30が生体に対して締結される。
【0114】
外装カバー30の生体に対する締結状態を保持するために、第2ローラ56が矢印AR56に示す方向にのみ回転可能なように構成されているとよい。カフ20Acは、係止手段として、上述の実施の形態1と同様な面ファスナー(不図示)を備えていてもよい。
【0115】
カフ20Acおよびこれを備えた血圧計によっても、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0116】
[実施の形態2]
図11および図12を参照して、実施の形態2における血圧計について説明する。ここでは、実施の形態1との相違点についてのみ説明する。実施の形態1と本実施の形態との相違点は、カフ20Bが第3環状リング39をさらに備えていることである。図12においては、空気袋34を記載していない。空気袋34は、実際には図11に示すように外装カバー30に内包されている。後述する図14,図16および図18においても同様である。
【0117】
第3環状リング39は、外装カバー30の表面31上に取付けられている。第3環状リング39は、第2環状リング38と略同様に構成されている。具体的には、第3環状リング39は、外装カバー30の他端部30b側の部分と、取付カバー33bとを挿通可能な挿通孔を有している。第3環状リング39は、外装カバー30との間に摩擦が生じ難いたとえば金属製の部材にて構成されているとよい。
【0118】
取付カバー33bは、第3環状リング39の挿通孔に挿通された状態で外装カバー30の表面31上に縫合されている。第3環状リング39は、取付カバー33bと外装カバー30との間に挟みこまれることにより、外装カバー30の表面31上に取付けられている。
【0119】
図12を参照して、第3環状リング39は、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第1環状リング36と第2環状リング38との間に位置している。
【0120】
図11を再び参照して、第1環状リング36を挿通し折り返された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第2環状リング38の挿通孔38aに挿通される。
【0121】
第2環状リング38の挿通孔38aに挿通された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第3環状リング39の挿通孔に挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0122】
(作用・効果)
カフ20Bにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。上腕70が挿入された後、外装カバー30の他端部30bは右手(不図示)によって把持される。把持された他端部30bは、矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0123】
他端部30bが矢印AR1に示す方向に引っ張られることに伴い、第3環状リング39も、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0124】
カフ20Bとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR1に示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成された部分の径は次第に小さくなる。
【0125】
外装カバー30のうち、第2環状リング38および第3環状リング39が設けられている側(外装カバー30の紙面略右半分側)の部分は、第1環状リング36側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転しようとする。第3環状リング39には、第3環状リング39を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力が作用する。
【0126】
ここで上述のとおり、第3環状リング39には、第3環状リング39を矢印AR1に示す方向に移動させようとする力も作用している。この力は、第3環状リング39を常に上腕70の最も右手側に位置するように作用する。この力は、第3環状リング39を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力に対して、反作用的に矢印A2に示す方向(反時計回り方向)に働く。
【0127】
つまり、第3環状リング39には、第3環状リング39を時計回り方向に回転させようとする力と、この力に対して反作用的に反時計回り方向に働く力とが作用している。これらの力は相互に相殺され、第3環状リング39の上腕70に対する周方向の位置はほとんど変わらない。したがって、第3環状リング39の上腕70に対する周方向の位置がほとんど変わることなく、外装カバー30の環状に形成された部分の径を小さくすることが可能となる。
【0128】
外装カバー30と上腕70とが密着することにより、カフ20Bの上腕70に対する締結は完了する。
【0129】
ここで、第3環状リング39は、長手方向における第1環状リング36と第2環状リング38との間に位置している。外装カバー30のうち取付カバー33bが設けられている部分と、外装カバー30のうち空気袋34を内包している部分とは連続している。当該連続により、第3環状リング39と空気袋34との周方向の動きは関連(連動)している。
【0130】
上記のとおり、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、第3環状リング39の上腕70に対する位置はほとんど変化することがない。したがって、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、空気袋34の上腕70に対する位置もほとんど変化することがない。
【0131】
血圧計用のカフ20Bの締結の前後において、冒頭で説明したような周方向の回転と、この回転とは反対方向の回転とは繰り返されない。カフ20Bを日常的に上腕70に対して締結したとしても、第3環状リング39は、上腕70の最も右手側付近における略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。空気袋34も、略同一の位置に繰り返し配置されることが企図され、カフ20Bとしての所定の締め付け状態を繰り返し再現することが可能となる。
【0132】
カフ20Bおよびこれを備えた血圧計によれば、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0133】
[実施の形態2の変形例]
図13および図14を参照して、実施の形態2の変形例における血圧計について説明する。ここでは、実施の形態2との相違点について説明する。
【0134】
図13を参照して、実施の形態2と本変形例との相違点は、第3環状リング39に挿通された他端部30bは、第3環状リング39において折り返された後、第2環状リング38に再び挿通されることである。他端部30bは、第2環状リング38の挿通孔に挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0135】
図14を参照して、第3環状リング39は、上述の実施の形態2におけるカフ20Bと同様に、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第1環状リング36と第2環状リング38との間に位置している。
【0136】
(作用・効果)
本変形例のカフ20Baにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。上腕が挿入された後、外装カバー30の他端部30bは右手(不図示)によって把持される。把持された他端部30bは、矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0137】
他端部30bが矢印AR1に示す方向に引っ張られることに伴い、第2環状リング38も、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0138】
カフ20Baとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR1に示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成された部分の径は次第に小さくなる。
【0139】
外装カバー30のうち、第2環状リング38および第3環状リング39が設けられている側(外装カバー30の紙面略右半分側)の部分は、第1環状リング36側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転しようとする。
【0140】
ここで上述のとおり、第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印AR1に示す方向に移動させようとする力も作用している。この力は、第2環状リング38を常に上腕70の最も右手側に位置するように作用する。この力は、第2環状リング38および第3環状リング39を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力に対し、反作用的に働く。
【0141】
つまり、第2環状リング38および第3環状リング39には、時計回り方向に回転させようとする力と、この力に対して反作用的に反時計回り方向に働く力とが作用している。これらの力は相互に相殺され、第2環状リング38および第3環状リング39の上腕70に対する周方向の位置はほとんど変わらない。
【0142】
したがって、第1環状リング36が、矢印A2に示す方向に徐々に引き寄せられる。外装カバー30の環状に形成された部分の径は次第に小さくなる。第2環状リング38および第3環状リング39の上腕70に対する周方向の位置がほとんど変わることなく、外装カバー30の環状に形成された部分の径を小さくすることが可能となる。
【0143】
第3環状リング39に挿通した他端部30bが第3環状リング39において折り返された後、第2環状リング38に再び挿通されている。外装カバー30は、第2環状リング38に対して2重に挿通され、且つ第3環状リング39において折り返されている。当該構成により、面ファスナーなどの係止手段を用いなくても、外装カバー30の上腕70に対する締結状態を保持することが可能となる。
【0144】
なお、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第2環状リング38と第3環状リング39との間に、いわゆるカーラ状の剛性部材40を備えていてもよい。剛性部材40は、第2環状リング38と第3環状リング39との間に位置する外装カバー30に固定される。剛性部材40は、固定カバー(不図示)等により覆われていてもよい。剛性部材40は、第2環状リング38と第3環状リング39との間隔を一定に保持する。剛性部材40を備えていることにより、外装カバー30を上腕70に対してより容易に締結することが可能となる。
【0145】
[実施の形態3]
図15および図16を参照して、実施の形態3における血圧計について説明する。ここでは、実施の形態2との相違点についてのみ説明する。実施の形態2と本実施の形態との相違点は、第3環状リング39が取付けられている位置である。
【0146】
図16を参照して、第3環状リング39は、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第2環状リング38と外装カバー30の他端部30bとの間に位置している。
【0147】
図15を参照して、第1環状リング36を挿通し折り返された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第3環状リング39の挿通孔に挿通される。
【0148】
第3環状リング39の挿通孔に挿通された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第2環状リング38の挿通孔38aに挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0149】
(作用・効果)
カフ20Cにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。上腕70が挿入された後、外装カバー30の他端部30bは右手(不図示)によって把持される。把持された他端部30bは、矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0150】
他端部30bが矢印AR1に示す方向に引っ張られることに伴い、第2環状リング38も、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0151】
カフ20Cとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR1に示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成された部分の径は次第に小さくなる。
【0152】
外装カバー30のうち、第2環状リング38および第3環状リング39が設けられている側(外装カバー30の紙面略右半分側)の部分は、第1環状リング36側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転しようとする。第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力が作用する。
【0153】
ここで上述のとおり、第2環状リング38には、第2環状リング38を矢印AR1に示す方向に移動させようとする力も作用している。この力は、第2環状リング38を常に上腕70の最も右手側に位置するように作用する。この力は、第2環状リング38を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力に対して、反作用的に矢印A2に示す方向(反時計回り方向)に働く。
【0154】
つまり、第2環状リング38には、第2環状リング38を時計回り方向に回転させようとする力と、この力に対して反作用的に働く力とが作用している。これらの力は相互に相殺され、第2環状リング38の上腕70に対する周方向の位置はほとんど変わらない。したがって、第2環状リング38の上腕70に対する周方向の位置がほとんど変わることなく、外装カバー30の環状に形成された部分の径を小さくすることが可能となる。
【0155】
外装カバー30と上腕70とが密着することにより、カフ20Cの上腕70に対する締結は完了する。
【0156】
ここで、第3環状リング39は、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第2環状リング38と外装カバー30の他端部30bとの間に位置している。外装カバー30のうち取付カバー33aが設けられている部分と、外装カバー30のうち空気袋34を内包している部分とは連続している。当該連続により、第2環状リング38と空気袋34との周方向の動きは関連(連動)している。
【0157】
上記のとおり、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、第2環状リング38の上腕70に対する位置はほとんど変化することがない。したがって、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、空気袋34の上腕70に対する位置もほとんど変化することがない。
【0158】
血圧計用のカフ20Cの締結の前後において、冒頭で説明したような周方向の回転と、この回転とは反対方向の回転とは繰り返されない。カフ20Cを日常的に上腕70に対して締結したとしても、第2環状リング38は、上腕70の最も右手側付近における略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。空気袋34も、略同一の位置に繰り返し配置されることが企図され、カフ20Cとしての所定の締め付け状態を繰り返し再現することが可能となる。
【0159】
カフ20Cおよびこれを備えた血圧計によれば、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0160】
[実施の形態4]
図17および図18を参照して、実施の形態4における血圧計について説明する。ここでは、実施の形態2との相違点についてのみ説明する。実施の形態2と本実施の形態との相違点は、第3環状リング39が取付けられている位置である。
【0161】
図18を参照して、第3環状リング39は、外装カバー30の裏面32上に設けられている。第3環状リング39は、外装カバー30を展開した状態における長手方向において、第2環状リング38と外装カバー30の他端部30bとの間に位置している。
【0162】
図17を参照して、第1環状リング36を挿通し折り返された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分の外側(表面31側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第2環状リング38の挿通孔38aに挿通し折り返される。
【0163】
第2環状リング38を挿通し折り返された外装カバー30の他端部30bは、外装カバー30の環状に形成されている部分のさらに外側(裏面32側)に沿って重ね合わせられる。他端部30bは、第3環状リング39の挿通孔に挿通され、外装カバー30の環状に形成されている部分から外側に向かって引き出される。
【0164】
(作用・効果)
カフ20Dにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。上腕70が挿入された後、外装カバー30の他端部30bは右手(不図示)によって把持される。把持された他端部30bは、矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0165】
他端部30bが矢印AR1に示す方向に引っ張られることに伴い、第3環状リング39も、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0166】
外装カバー30のうち、第3環状リング39が設けられている部分は、第2環状リング38側に引っ張られ、矢印A2に示す方向(反時計回り方向)に回転する。外装カバー30のうち、第2環状リング38が設けられている部分は、第3環状リング39側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)回転する。
【0167】
カフ20Dとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR1に示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成されている部分の径は次第に小さくなる。
【0168】
第2環状リング38および第3環状リング39は接近する。第2環状リング38と第3環状リング39とは周方向において隣接し、略一体となる。
【0169】
他端部30bが矢印AR1に示す方向にさらに引っ張られることに伴い、第2環状リング38および第3環状リング39は、略一体となった状態で、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR1に示す方向に引っ張られる。
【0170】
これと同時に、外装カバー30のうち第2環状リング38および第3環状リング39が設けられている側(外装カバー30の紙面略右半分側)の部分は、第1環状リング36側に引っ張られ、矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転しようとする。第2環状リング38および第3環状リング39には、第2環状リング38および第3環状リング39を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力が作用する。
【0171】
ここで上述のとおり、第2環状リング38および第3環状リング39には、第2環状リング38および第3環状リング39を矢印AR1に示す方向に移動させようとする力も作用している。この力は、第2環状リング38および第3環状リング39を常に上腕70の最も右手側に位置するように作用する。この力は、第2環状リング38および第3環状リング39を矢印A1に示す方向(時計回り方向)に回転させようとする力に対して、反作用的に矢印A2に示す方向(反時計回り方向)に働く。
【0172】
つまり、第2環状リング38および第3環状リング39には、第2環状リング38および第3環状リング39を時計回り方向に回転させようとする力と、この力に対して反作用的に働く力とが作用している。これらの力は相互に相殺され、第2環状リング38および第3環状リング39の上腕70に対する周方向の位置はほとんど変わらない。
【0173】
したがって、第2環状リング38および第3環状リング39とが隣接した後は、第2環状リング38および第3環状リング39の上腕70に対する周方向の位置がほとんど変わることなく、外装カバー30の環状に形成された部分の径を小さくすることが可能となる。
【0174】
ここで、第2環状リング38は、外装カバー30の表面31上に設けられている。外装カバー30のうち取付カバー33aが設けられている部分と、外装カバー30のうち空気袋34を内包している部分とは連続している。当該連続により、第2環状リング38と空気袋34との周方向の動きは関連(連動)している。
【0175】
上記のとおり、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、第2環状リング38は、第3環状リング39に隣接するまで所定の距離だけ時計回り方向(矢印A1に示す方向)に移動する。これに伴って、外装カバー30が上腕70に締結される前後において、空気袋34の上腕70に対する位置も所定の距離だけ時計回り方向(矢印A1に示す方向)に移動する。
【0176】
本実施の形態における血圧計用のカフ20Dによれば、空気袋34は所定の距離だけ時計回り方向に移動するものの、締結の過程において冒頭で説明したような周方向の回転と、この回転とは反対の方向の回転とは繰り返されない。カフ20Dを日常的に上腕70に対して締結したとしても、第3環状リング39は上腕70の最も右手側の略同一の位置に繰り返し配置されることが企図される。
【0177】
その結果、空気袋34は所定の距離だけ時計回り方向に移動するものの、空気袋34の位置も、略同一の位置に繰り返し配置されることが企図され、カフ20Dとしての所定の締め付け状態を繰り返し再現されることができる。
【0178】
カフ20Dおよびこれを備えた血圧計によれば、装着位置ずれによる測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0179】
[比較例]
図19〜図21を参照して、比較例におけるカフ100Aを上腕70に締結するときの様子について説明する。比較例におけるカフ100Aは、上述の実施の形態1〜実施の形態4とは異なり、ガイド部材としては第1環状リング36のみを有している。図19〜図21においては、空気袋34を記載していない。
【0180】
図19〜図21は、比較例におけるカフ100Aを、上腕70に締結するときの様子(動作)を経時的に示した断面図である。図19に示す状態は、図20に示す状態を経て、図21に示す状態に至る。本比較例におけるカフ100Aの構成は、上記の特許文献1(実開平5−39504号公報)に開示されている構成と略同様である。
【0181】
図19を参照して、カフ100Aにおいては、外装カバー30の環状に形成された部分にたとえば被験者の左腕の上腕70が挿入される。
【0182】
外装カバー30の環状に形成された部分に上腕70が挿入された後、外装カバー30の他端部30bが右手によって把持される。外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR2aに示す方向に引っ張られる。
【0183】
第1環状リング36は、他端部30b側の外装カバー30により矢印AR2aに示す方向に引っ張られる。第1環状リング36が設けられている側において、上腕70と外装カバー30との間には隙間Hが生じる。
【0184】
カフ100Aとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR2aに示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成されている部分の径は次第に小さくなり、隙間Hも合わせて小さくなる。
【0185】
隙間Hが小さくなるとき、外装カバー30と上腕70とが接触している部分において、第1環状リング36に挿通されようとしている側の外装カバー30は、上腕70と接触した状態で、上腕70の表面に対して摺り動こうとする。
【0186】
しかしながら、外装カバー30と上腕70との間の摩擦力が大きく、外装カバー30は、上腕70の表面に対してほとんど摺り動くことができない。上記摩擦力により、外装カバー30の他端部30bが右手によって引っ張られる方向は、矢印A3に示す方向に回転する。
【0187】
図20を参照して、矢印AR2a(図19参照)に示す方向に作用していた力は、矢印AR2b(図20参照)に示す方向に変化する。外装カバー30の他端部30bが引っ張られる方向が矢印AR2bに示す方向に変化することに伴い、外装カバー30も矢印AR2bに示す方向(反時計回り方向)に回転する。このとき被験者によっては、反時計回り方向に回転した外装カバー30を元に戻すために、外装カバー30を時計回り方向に回転させる場合もある。
【0188】
カフ100Aとしての所望の締め付け状態を得るために、外装カバー30の他端部30bは、右手によって矢印AR2bに示す方向にさらに引っ張られる。外装カバー30の環状に形成されている部分の径は次第に小さくなり、隙間Hも合わせて小さくなる。
【0189】
しかしながら、外装カバー30と上腕70との間の摩擦力が大きく、外装カバー30は、上腕70の表面に対してほとんど摺り動くことができない。上記摩擦力により、外装カバー30の他端部30bが右手によって引っ張られる方向は、矢印A4に示す方向に回転する。
【0190】
図21を参照して、矢印AR2b(図20参照)に示す方向に作用していた力は、さらに矢印AR2c(図21参照)に示す方向に変化する。外装カバー30の他端部30bが引っ張られる方向が矢印AR2cに示す方向に変化することに伴い、外装カバー30は矢印A4に示す方向(図20参照:反時計回り方向)に回転する。このとき被験者によっては、反時計回り方向に回転した外装カバー30を元に戻すために、外装カバー30をさらに時計回り方向に回転させる場合もある。
【0191】
最終的には、外装カバー30と上腕70とが密着することにより、隙間Hはほぼ無くなる。カフ100Aの上腕70に対する締結は完了する。
【0192】
本比較例におけるカフ100Aは、周方向の回転と、周方向とは反対の回転とが複数回繰り返されて被測定部位に対して装着される。カフ100Aによれば、血圧値をたとえば日常的に測定する場合、カフとしての所定の締め付け状態を再現することが困難となる。結果として、日々の測定により得られる測定値にばらつきが生じてしまい、精度よく安定的に血圧情報を測定することが困難になる。
【0193】
これに対し上述の実施の形態1〜実施の形態4におけるカフ(20A〜20D)およびこれを備えた血圧計によれば、所定の締め付け状態を繰り返し再現することができる。測定誤差の発生が減少し、測定値にばらつきが生じることも無く、精度よく安定的に血圧情報を測定することが可能となる。
【0194】
以上、本発明の発明を実施するための形態について説明したが、今回開示された形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0195】
実施の形態1〜実施の形態4においては、血圧値の測定に際して上腕にカフが装着されるいわゆる上腕式の血圧計およびこれに具備される血圧計用カフを例示して説明を行なったが、特にこれに限定されるものではない。
【0196】
実施の形態1〜実施の形態4における構成は、血圧値の測定に際して手首にカフが装着されるいわゆる手首式の血圧計およびこれに具備される血圧計用カフに適用することも可能である。
【0197】
実施の形態1〜実施の形態4における構成は、血圧値の測定に際して足首にカフが装着されるいわゆる足首式の血圧計およびこれに具備される血圧計用カフ等に適用することも可能である。
【0198】
実施の形態1〜実施の形態4における構成は、収縮期血圧値および拡張期血圧値等の血圧値が測定可能な血圧計およびこれに具備される血圧計用カフに適用した場合を例示して説明を行なったが、特にこれに限定されるものではない。
【0199】
実施の形態1〜実施の形態4における構成は、収縮期血圧値および拡張期血圧値等の血圧値以外の他の血圧情報(たとえば、平均血圧値、脈波、脈拍、AI(Augmentation Index)値等)が測定可能な血圧情報測定装置およびこれに具備される血圧情報測定装置用カフに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0200】
1 血圧計、10 本体、11 制御部、12 表示部、13 メモリ部、13a 処理用メモリ、13b データ用メモリ、14 電源部、15 操作部、15a 電源スイッチ、15b 測定スイッチ、15c 停止スイッチ、15d 記録呼出スイッチ、16 エア系コンポーネント、16a 加圧ポンプ、16b 排気弁、16c 圧力センサ、17a 加圧ポンプ駆動回路、17b 排気弁駆動回路、17c 発振回路、20,20A,20Aa,20Ab,20Ac,20B,20Ba,20C,20D,100A カフ、30 外装カバー、30a 一端部、30b 他端部、31 表面、32 裏面、33a,33b 取付カバー、34 空気袋、34c 位置、36 第1環状リング、36a,38a 挿通孔、38 第2環状リング、39 第3環状リング、40 固定部材、41,42 面ファスナー、50,50a 固定部材、52 支持枠、52a 側壁部、52a1,52b1 軸支穴、54 第1ローラ、56 第2ローラ、70 上腕、70a,R 部分、71 動脈、72 上腕三頭筋、80 エア管、A1〜A4,AR1,AR1a,AR2a,AR2b,AR2c,AR54,AR56 矢印、L71 距離、H 隙間、ST1〜ST13 ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を圧迫するための流体袋と、
第1主面と、前記生体に対して環状に巻き付けられることにより前記生体と対向する第2主面とを有し、前記流体袋を一端部側に内包する帯状の外装カバーと、
前記流体袋が設けられている位置よりも前記外装カバーの前記一端部側に設けられ、前記外装カバーの他端部が挿通して折り返されるために環状に形成された部分を有する第1ガイド部材と、
前記外装カバーの前記第1主面上に設けられ、前記第1ガイド部材を挿通した前記外装カバーの前記他端部を挿通するために環状に形成された部分を有する第2ガイド部材と、を備える、
血圧情報測定装置用カフ。
【請求項2】
前記外装カバーは、前記生体内部の動脈との距離が最も短くなる前記生体の表面の部分と、前記流体袋とが対向するように配置された状態で、前記生体に対して固定される、
請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項3】
前記生体は上腕であり、
前記第2ガイド部材は、当該血圧情報測定装置用カフが前記上腕に固定された状態で上腕三頭筋側に位置する前記第1主面上に設けられる、
請求項1または2に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項4】
前記生体は一方の上腕であり、
前記第2ガイド部材は、当該血圧情報測定装置用カフが前記上腕に固定された状態で他方の上腕側に位置する前記第1主面上に設けられる、
請求項1から3のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項5】
前記第1主面上に設けられる係止部材をさらに備え、
前記係止部材は、前記外装カバーを展開した状態における長手方向において、前記第2ガイド部材と前記第1ガイド部材との間の、前記第2ガイド部材寄りに位置する、
請求項1から4のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項6】
前記第1主面上に設けられ、前記外装カバーを展開した状態における長手方向において前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材との間に位置する第3ガイド部材をさらに備え、
前記第2ガイド部材に挿通した前記他端部は、前記第3ガイド部材に挿通される、
請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項7】
前記第3ガイド部材に挿通された前記他端部は、前記第3ガイド部材において折り返された後、前記第2ガイド部材に再び挿通される、
請求項6に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項8】
前記第1主面上に設けられ、前記外装カバーを展開した状態における長手方向において前記第2ガイド部材と前記他端部との間に位置する第3ガイド部材をさらに備え、
前記第1ガイド部材に挿通して折り返された前記他端部は、前記第3ガイド部材に挿通された後、前記第2ガイド部材に挿通される、
請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項9】
前記第2主面上に設けられ、前記外装カバーを展開した状態における長手方向において前記第2ガイド部材と前記他端部との間に位置する第3ガイド部材をさらに備え、
前記第2ガイド部材に挿通した前記他端部は、前記第2ガイド部材において折り返された後、前記第3ガイド部材に挿通される、
請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフと、
前記流体袋を膨縮させる膨縮機構と、
血圧情報を取得する血圧情報取得部と、を備えた、
血圧情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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