説明

血小板への雑菌混入検出を目的とするペプチドグリカンに基づく迅速アッセイ法

本発明は、サンプル中のペプチドグリカンもしくは(1−3)−β−D−グルカンを検出することにより、細菌または菌類病原体を検出するための比色法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中に存在する細菌もしくは菌性病原体を迅速かつ簡便に検出するための比色アッセイおよびその方法に関する。
【0002】
政府の援助
本発明は、国立心臓・肺および血液研究所(National Heart,Lung and Blood Institute)から授与された補助金番号HL65877に基づいて行われた。政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
関連出願
本発明は、2003年10月31日に受理された米国仮特許出願第60/516,576号に対して優先権を主張し、その内容を全て参照として本明細書中に取り入れておく。
【背景技術】
【0004】
2004年3月1日、AABB基準により、アメリカ合衆国の血液センターは、細菌の混入に関し、全ての血小板ユニットについて試験を開始するようにと通達を受けた。この新規基準は、細菌が混入した血小板ユニットによって輸注患者が受ける大きな危険を憂慮したものであった。アメリカ合衆国では、毎年約400万ユニットの血小板が輸注されており、そのうちの4000ユニットは細菌混入の可能性がある。細菌が混入した血小板ユニットは、敗血症関連の症状および死亡の原因として確認されてきた。血小板は室温保存する必要がり、このことは、生存能力および機能に必須であると共に、細菌の増殖も促す。定められた採取後最大5日の保存期間の初期時点においても、微生物の増殖はかなりのレベルに達していると考えられる。さらに、細菌の混入に加え、菌類の混入に関して血小板ユニットをモニターすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、細菌および菌類の混入検出の必要性は、血小板に限らない。多くの臨床製品、農業製品または環境製品への細菌および菌類の混入は、対象がそれらに接触した、またはそれらを投与された場合には、重篤な疾病を引き起こし、死に至る場合もある。病院または診療所において、血液、血漿、血小板およびその他の体液への細菌および/もしくは菌類の混入をモニターすることに加え、離れた位置もしくは領域内の位置における外傷用医薬材料への雑菌混入をモニターすることが強く所望されている。また、安全上、食料品および上水道への細菌および菌類の混入をモニターすることへの関心が高まっている。このような関心は、細菌もしくは菌類による汚染が進んでいると考えられる水泳用プールおよび湖などのレクリエーション施設にも応用することができる。従って、人によって消費される、または使用される膨大な数の製品において、細菌もしくは菌類の混入検出に関する火急のおよび未対処の要求が存在する。
【0006】
細菌特異的抗原の検出に基づき、多様な細菌種を広いスペクトルにわたって高感度検出するための多数の試験法が存在する。これらの方法のひとつの限界は、細菌性病原体のスペクトルが未知であるサンプルの試験に対して直接適用できないことである。存在する全ての細菌を検出できる試験法を開発する必要がある。
【0007】
細菌および/もしくは菌類の混入に関する現行の試験は、特定の反応条件を要する複雑な手順を含み、試験完了まで日数を要することが多い。細菌もしくは菌類の混入に関する多様な試験が広く受け入れられるまでに存在するもうひとつの障壁は、感度が低く、特異性が低く、費用がかかることである。例えば、従来から行われている培養法では、ペトリ皿上で細菌を培養もしくは増殖させた後、グラム染色によって細菌のタイプを決定する必要がある。この過程は最長72時間を要する。細菌もしくは菌類の混入を検出するための迅速かつ簡便なアッセイが求められており、そのようなアッセイを行うことにより、細菌および菌類が混入しておらず、ヒトへの使用が安全な臨床製品、農業製品および環境製品が即座に供給できる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
輸注用血小板の安全性を保証するという特別な用途を伴ったこの要求に取り組むことを目的として、発明者らは、血小板ユニット内の細菌を検出するための迅速、高感度かつ特異的アッセイを開発した。このアッセイは、全ての細菌の細胞壁構成要素であるペプチドグリカンの検出に基づいている。グラム陰性およびグラム陽性の両方の細菌に存在するペプチドグリカンを用いることにより、血小板ユニットへの混入頻度が高いことが既知である細菌種、ならびに、混入頻度が低いもしくは増殖が遅い細菌性病原体を検出することができる。さらに、ペプチドグリカンは細胞壁の主要構成要素であることから、細菌集団内で容易かつ迅速に検出することができる。本アッセイを用いることにより、酵母菌またはカビなどの真菌類の細胞壁構成要素であるβ−グルカンも検出することができる。
【0009】
ひとつの側面から見ると、本発明は、ペプチドグリカン(PG)存在下において赤色反応生成物を形成するプロフェノールオキシダーゼカスケード系(prophenoloxidase cascade system:POC)を利用し、サンプル中のPGを検出するための迅速、簡便かつ高感度法を特徴とする。赤色反応生成物の存在は、短時間内(1時間以内など)に、かつ容易に(目視または分光光度計を利用するなど)検出できる。ある実施態様においては、赤色反応生成物は、フェノールオキシダーゼ(PO)によって酸化された基質から生成されたキノン類が3−メチル−2−ベンゾチアゾリノン(MBTH)と反応することによって生成する。さらなる実施態様においては、血小板中のPGの検出は、温度を高温でアルカリ抽出し、続いて中和することによって増強することができる。さらなる実施態様においては、アルカリ抽出は、血小板調製物の血漿または血漿画分中に存在する多様な阻害因子を不活化するための有効な手段として使用する。またさらなる実施態様においては、血小板細胞の可溶化にアルカリ抽出を使用し、これによってサンプル中の大量の血小板を試験することができ、従ってアッセイ感度が高まる。
【0010】
さらに、PGは、細菌の混入濃度に応じたレベルで検出できる。例えば、PGは、125pg/ml以下の濃度で検出可能である。ある実施態様においては、PGは、サンプル中の細菌に由来する。PGは、細菌細胞から崩落したもの、または、無傷の細胞壁に存在しているものである。別の方法としては、本明細書に記載されている検出アッセイを用い、菌類の細胞壁構成要素であるβ−1,3−グルカンを検出する。さらに、本明細書に記載している検出アッセイにおいては、POCは、昆虫の幼虫の血漿、血リンパまたは体壁のクチクラから得ることができ、そのような昆虫としては、チョウ目(Lepidoptera order)(Manduca sexta(タバコガ)、Manduca quinquemaculata(トマトガ)、Gelleria melonella、Hyalphoma ceropia、Bombyx mori(カイコガ)など)、ハエ目(Diptera order)(Sarcophaga peregrina(ニクバエ)、Sarcophaga mucosa、Mucsa domestica(イエバエ)など)、バッタ目(Orthoptera order)(Locusta migratoria(トノサマバッタ)、Teleogryllus(エンマコオロギなど)など)、コウチュウ目(Coleopter order)(甲虫類)(Cerambyx(カミキリ)およびAcalolepa luxuriosaなど)などが挙げられる。
【0011】
特定の実施態様においては、本発明は、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカンを検出するための方法に関し、そのような方法は、(a)プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし;さらに、(b)着色したプロフェノールオキシダーゼ反応生成物を検出するが、このとき、反応生成物が生成したことにより、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−1,3−グルカンの存在が示唆される。ある実施態様においては、反応生成物が生成したことにより、サンプル中の細菌または菌類の存在が示唆される。
【0012】
さらなる実施態様においては、サンプルは、臨床サンプル、環境サンプル、農業サンプル、医療用品または工業サンプルである。臨床サンプルは、水和液、栄養液、血液、血液製剤、組織抽出物、ワクチン、麻酔剤、薬理学的活性物質または造影剤などである。臨床サンプルには血小板が含まれる。比色アッセイ法を用い、医療用デバイス(カテーテル、ステント、IVなど)、農業試料(食物および水など)、環境試料(湖またはプールなど)および工業サンプル(機械類または加工サンプルなど)中に存在する細菌もしくは菌類を検出することもできる。特定の実施態様においては、サンプルは懸濁液または液体である。さらなる実施態様においては、サンプルを遠心分離によって処理し、サンプル中に存在する細菌もしくは菌類は遠心分離中にペレットになる。細菌もしくは菌類を濃縮するためのその他の手段(ろ過など)も用いることができる。
【0013】
さらなる実施態様においては、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカンを検出するための方法には、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードを含むプロフェノールオキシダーゼカスケード系が含まれる。プロフェノールオキシダーゼ系は、昆虫の血漿または血リンパから得ることができ、例えば、カイコガの幼虫の血漿から得ることができる。カイコガの幼虫から得たプロフェノールオキシダーゼカスケード系は、多数の構成要素を含む完全な系である。プロフェノールオキシダーゼカスケード系の構成要素としては多数のものが知られているが、さらなる構成要素が確認される可能性もある。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、ペプチドグリカン結合タンパク質をさらに含む。別の場合には、プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、β−グルカン結合タンパク質をさらに含む。特定の実施態様においては、プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、ペプチドグリカン結合タンパク質およびβ−グルカン結合タンパク質をさらに含む。さらに別の実施態様においては、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカンを検出するための方法には、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質が含まれる。キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質としては、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、ドーパミン、または別のジヒドロキシフェノール類もしくはモノフェノール類などを用いることができる。
【0014】
さらにまた別の実施態様において、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカンを検出する方法は、プロフェノールオキシダーゼカスケード系、および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと反応することができるキノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質と共にサンプルをインキュベートする前に、好ましくは高温で、抽出液にサンプルを接触させる工程をさらに含んでいてよい。抽出液はアルカリ抽出液である。サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカンを検出するための方法は、プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートする前に、中和緩衝液にサンプルを接触させる工程をさらに含んでいてよい。別の方法としては、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンを中和緩衝液に溶解させる。本明細書に記載している方法には、さらに、停止試薬にサンプルを接触させる工程が含まれていてよく、このとき、停止試薬は酸性反応試薬またはフェノールオキシダーゼ特異的阻害剤(例えば、フェニルチオ尿素など)であってよい。
【0015】
別の側面から見ると、本発明は、サンプル中のペプチドグリカンを検出するための方法に関し、(a)アルカリ抽出液中でサンプルを抽出し、(b)カイコガの幼虫の血漿、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンおよび3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし、(c)フェニルチオ尿素を用いて反応を停止し、(d)着色したプロフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出するが、このとき、反応生成物の生成により、サンプル中のペプチドグリカンの存在が示唆される。必要に応じて、工程(b)において、他の反応構成成分を加える前に中和緩衝液にMBTHを溶解して加える。
【0016】
別の側面から見ると、本発明は、サンプル中のβ−グルカンを検出するための方法に関し、(a)アルカリ抽出液中でサンプルを抽出し、(b)カイコガの幼虫の血漿、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンおよび3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし、(c)フェニルチオ尿素を用いて反応を停止し、(d)着色したプロフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出するが、このとき、反応生成物の生成により、サンプル中のβ−グルカンの存在が示唆される。必要に応じて、工程(b)において、他の反応構成成分を加える前に、中和緩衝液にMBTHを溶解して加える。
【0017】
別の側面から見ると、本発明は、サンプル中のペプチドグリカンを迅速、簡便かつ高感度で検出するためのキットに関する。サンプル中のペプチドグリカン検出用のキットは、プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンを含む。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の血漿または血リンパから得ることができ、例えば、カイコガの幼虫の血漿から得ることができる。キットにおいて使用されるプロフェノールオキシダーゼカスケード系には、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードが含まれる。キットには、ペプチドグリカン結合タンパク質をさらに含む。キットにおいて使用され、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質としては、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ドーパミンまたは、別のモノ−もしくはジヒドロキシ−フェノール化合物などである。キットはペプチドグリカン標準物質をさらに含むが、ペプチドグリカン標準物質とは、細菌から単離されたペプチドグリカン、細菌全抽出物または不活化細菌全体である。さらに、キットは、アルカリ抽出液などの抽出液をさらに含む。キットは、MBTH含有または不含の中和緩衝液をも含む。キットは停止試薬をさらに含むが、ここで、停止試薬は、酸性反応試薬(例えば、トリクロロ酢酸、過塩素酸またはタングステンケイ酸(tungstosilicic acid)など)またはフェノールオキシダーゼ阻害剤(例えば、フェニルチオ尿素など)である。さらにまた、キットは、分光光度計による検出のための指示書もしくは目視評価用の色彩コード表、ならびに反応を行うための滅菌サンプル管をさらに含む。
【0018】
別の側面から見ると、本発明は、サンプル中のβ−グルカンを迅速、簡便かつ高感度で検出するためのキットに関する。サンプル中のβ−グルカン検出用のキットは、プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンを含む。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の血漿または血リンパから得ることができ、例えば、カイコガの幼虫の血漿から得ることができる。キットにおいて使用されるプロフェノールオキシダーゼカスケード系には、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードが含まれる。キットには、β−グルカン結合タンパク質をさらに含む。キットにおいて使用され、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質としては、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ドーパミンまたは、別のモノ−もしくはジヒドロキシ−フェノール化合物などである。キットはβ−グルカン標準物質をさらに含むが、β−グルカン標準物質とは、菌類から単離されたβ−グルカン、菌全抽出物または不活化菌全体である。さらに、キットは、アルカリ抽出液などの抽出液をさらに含む。キットは、MBTH含有または不含の中和緩衝液をも含む。キットは停止試薬をさらに含むが、ここで、停止試薬は、酸性反応試薬(例えば、トリクロロ酢酸、過塩素酸またはタングステンケイ酸(tungstosilicic acid)など)またはフェノールオキシダーゼ阻害剤(例えば、フェニルチオ尿素など)である。さらにまた、キットは、分光光度計による検出のための指示書もしくは目視評価用の色彩コード表、ならびに反応を行うための滅菌サンプル管をさらに含む。
【0019】
本発明にはその他多数の用途があるが、それらは当業者には自明であり、本発明の開示の範ちゅうに包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
1.一般論
細菌混入に関して血小板ユニットをスクリーニングするというAABBの要求を実行するためには、このような用途に適した試験法の開発および確認が必要である。理想的には、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両者に対する高感度検出を短い所要時間で組み合わせ、それによって血小板ユニットの利用率を最大限にする。細菌検出に関しては、培養に基づく方法が最上の基準であったが、高感度を得るためには、これらの方法は所要時間を犠牲にしており、測定に数時間から数日を要する。
【0021】
本明細書においては、細菌混入に関して血小板ユニットをスクリーニングするための新規なアッセイを提供するが、該アッセイは、グラム陽性およびグラム陰性菌の構成要素であるペプチドグリカンを直接検出することに基づく。本明細書に記載しているアッセイは、現在利用可能なアッセイよりも格段に優れている。第一に、本アッセイは、血小板への一般的な混入菌として知られているグラム陽性およびグラム陰性菌を100CFU/ml以下の細胞密度で検出できることが示されている。さらに、本アッセイは、実際の雑菌混入現象をシミュレートして血小板ユニット内に非常に低密度で接種した増殖が遅い細菌類(表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)など)を接種後7時間以内に検出することができるが、これは、現在の自動培養法に関して報告されている19時間以上の培養を行った場合に相当する(ブレッチャー(Brecher)ら、Transfusion,41:477-482(2001))。さらに、本アッセイは、専用の、または複雑な用具を要せず、基本的な実験用具を用いて行うことができる。本アッセイは、単一ユニットまたはバッチ試験に適用できる。従って、結果は、迅速かつ平易な方法として、目視で読み取ることができ、あるいは、同等の感度においては、定量用にプレートリーダーを用いることができる。本アッセイは、約1時間の所要時間で、譲渡および貯蔵前に血小板ユニットの試験を行うことができる。また、本アッセイは、現行の最長保存期間である5日目まで保存した血小板の安全性のモニターに有用であり、さらには、貯蔵した血小板ユニットの生存能力を延長できる可能性がある。
【0022】
さらに、本アッセイの結果は、ペプチドグリカンの濃度に比例した発色によって定性的または定量的に判断される。以下に記載しているように、血小板ユニットへの混入頻度が高いことが知られているグラム陰性菌である霊菌(S.marcescens)、大腸菌(E . coli)および緑膿菌(P.aeruginosa)、ならびにグラム陽性菌である表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)を含む数種の細菌種を用いて感度を調べた。これらの細菌は一般的ではあるが、増殖が比較的遅い病原菌である。最初の実験では、水で希釈した血小板調製物から遠心分離によって回収した血小板中の細菌性ペプチドグリカンを測定することにより、サンプル処理の原理の信頼性を確立した。しかしながら、これらの実験においては、490nmにおいて吸収を起こすヘモグロビンに由来するかなりの干渉が観察された。アッセイの感度における、ヘモグロビン干渉の大きな負の影響、および血漿中に存在すると思われるその他の阻害因子を克服することを目的として、本明細書に記載しているアッセイに抽出過程を加えてさらに改良したが、そのような操作によって血小板懸濁液が清澄化され、読取り結果における干渉が排除された。本明細書に記載しているアッセイでは、アルカリ抽出過程を行い、阻害因子の活性が効率的に排除された。さらに、アルカリ抽出を行ったことにより、試験用の濃縮型の大量の血小板の使用が可能になり、従って、アッセイ感度が高められた。また、抽出によって細菌からのペプチドグリカンの放出が増し、そのことによって検出感度がさらに10倍高められた。本明細書に記載しているアッセイは、血漿および多様な細胞を大量に含有しているわけではないその他の体液中の細菌混入の検出よりも、血小板中の細菌混入の検出を困難にしている多数の因子を克服した。
【0023】
2.定義
本明細書において使用している「β−グルカン」とは、酵母およびカビなどの真菌類の細胞壁構成要素であり、ならびに、多くの担子菌綱の子実体の主要多糖類構成要素であるβ−1,3−グルカンをさす。
【0024】
本明細書において使用している「血リンパ」とは、昆虫の体腔から得た体液または血漿をさす。
【0025】
本明細書において使用している「ペプチドグリカン」とは、グラム陽性およびグラム陰性菌を含む細菌の細胞壁の構成要素であるグリコペプチドポリマーをさす。一般的に、ペプチドグリカンは、N−アセチルまたはN−グリコリルムラミン酸およびD−アミノ酸を含むことを特徴とする。
【0026】
本明細書において使用している「プロフェノールオキシダーゼカスケード系」または「プロ−POC系」とは、昆虫の血リンパおよび体壁のクチクラに存在するセリンプロテイナーゼカスケード系を指す。プロフェノールオキシダーゼカスケード系には、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードを含む。プロ−POC系は、ペプチドグリカン結合タンパク質(PGBP)および/またはβ−グルカン結合タンパク質(BGBP)をさらに含む。フェノールオキシダーゼカスケード系には、未確認の構成要素が含まれている可能性がある。しかしながら、カイコガの幼虫の血漿由来のプロフェノールオキシダーゼカスケード系は完全なプロフェノールオキシダーゼカスケード系である。本来、プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の免疫機構のひとつであり、傷を負うこと、または、微量のペプチドグリカンもしくはβ−グルカンが引き金になる。カスケードの活性化は、PGBPまたはGBPBが対応するPGまたはβ−グルカンを特異的に認識することによって開始する。これらの特異的コンプレックスは、セリンプロテイナーゼカスケードを始動させ、それによって特異的プロテイナーゼであるプロフェノールオキシダーゼ活性化酵素が活性化され、次に、この酵素のN−末端が解裂することによってプロフェノールオキシダーゼが活性化され、活性型のフェノールオキシダーゼが生成する。活性なフェノールオキシダーゼは2つの反応を触媒する:1)モノフェノール類を酸化してo−ジフェノール類にする、および2)o−ジフェノール類を酸化してキノン類にする。L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)にフェノールオキシダーゼが作用して生成したキノン類は、非酵素的にポリマー化し、黒色メラニンポリマーを形成する。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、アシダら(Insect Biochem.,11,57-65(1981))により、または米国特許第4,970,152号に記載されているように、カイコガの幼虫の血漿から得ることができる。
【0027】
本明細書において使用している「発色性のフェノールオキシダーゼ基質」または「発色性基質」とは、着色した反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質をさす。発色性のフェノールオキシダーゼ基質の例としては、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(ドーパミン)、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはカテコールなどが挙げられる。
【0028】
「L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン」または「DOPA」とは、フェノールオキシダーゼ基質をさす。DOPAまたはその他の基質にフェノールオキシダーゼが作用することによって生成したキノン類は、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)との着色コンプレックスとして検出できる。DOPAは、発色性反応試薬でもあり、それが着色したメラニン反応生成物に転換される。黒色のメラニン反応生成物は、目視により、または、分光光度計を用い、広い波長範囲における吸収によって検出することができる。一般的に、メラニンポリマーの検出には、650nmにおける吸収を使用する。
【0029】
「3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン」または「MBTH」とは、キノン類と安定な着色付加生成物を生成する発色性反応試薬である。この反応生成物は、目視または分光光度計で検出できる。キノン−MBTHコンプレックスは、可溶性であり、キノンを生成している基質に応じて450〜510nmの範囲に吸収極大を有する。キノン−MBTHは、視覚的には赤色である。MBTHを用いたフェノールオキシダーゼおよびチロシナーゼの活性測定に分光光度計を用いた方法については、ロディクェッツ−ロペス(Rodiquez-Lopez)ら(Anal.Biochem.,216:205-212(1994))、およびウィンダー(Winder,A.J.)(J.Biochem.Biophys,Methods,28:173-183(1994))に記載されている。
【0030】
3.検出アッセイ
発明者らは、グラム陽性およびグラム陰性菌を含む全ての細菌細胞に共通の構成要素であるペプチドグリカンの測定を通して、血小板ユニット中の細菌を検出するための高感度かつ特異的アッセイについて記述する。従って、ペプチドグリカンは、サンプル中の病原菌などの微生物の存在に関する有用な広域スペクトルマーカーである。本明細書に記載しているアッセイにより、血小板などの他のサンプル構成要素の存在下または不在下において、ペプチドグリカンを定量または定性的に測定できる。特定の実施態様においては、非脊椎動物の血漿または血リンパを用いてペプチドグリカンを検出できる。ある実施態様においては、ペプチドグリカンは、昆虫由来の血漿または血リンパを用いて検出した。血リンパは、アシダ(Ashida)らによって記載された方法(Insect Biochem.,11,57-65(1981))、および米国特許第4,970,152号、第5,585,248号もしくは第5,747,277号を用いて単離することができる。血リンパは、次のような目を含む昆虫から単離することができるが、これらに限定されるわけではない:チョウ目(Lepidoptera order)(Manduca sexta(タバコガ)、Manduca quinquemaculata(トマトガ)、Gelleria melonella、Hyalphoma ceropia、Bombyx mori(カイコガ)など)、ハエ目(Diptera order)(Sarcophaga peregrina(ニクバエ)、Sarcophaga mucosa、Mucsa domestica(イエバエ)など)、バッタ目(Orthoptera order)(Locusta migratoria(トノサマバッタ)、Teleogryllus(エンマコオロギなど)など)、コウチュウ目(Coleopter order)(甲虫類)(Cerambyx(カミキリ)およびAcalolepa luxuriosaなど)など。
【0031】
カイコガの幼虫の血漿(SLP)は、ワコー・ケミカルズ(Wako Chemicals)社(バージニア州リッチモンド)から市販されている。SLPを用いたアッセイにおいてペプチドグリカンまたはβ−グルカンを測定する技術は、日本のアシダ(Ashida)らに付与された米国特許第4,970,152号、第5,585,248号、第5,747,277号、第6,034,217号および第6,413,729号に包含されており、コバヤシ(Kobayashi)らによって記載されている(FEMS Immunol.Med.Microbio.,28:49-53(2000))。これらの特許に開示されている技術は、昆虫(カイコガなど)の血漿由来のフラクションを含む反応試薬であって、ペプチドグリカンもしくはβ−グルカンと特異的に反応することができるもの、および精製組換えペプチドグリカン結合タンパク質の産生に関する記述を包含する。
【0032】
対照的に、本明細書に記載している技術は新規であると考えられ、血小板ユニットなどのサンプルへの細菌混入を検出する目的でペプチドグリカンもしくはβ−グルカンの測定を応用することについては、これまで開示されていない。さらに、血小板中の細菌の存在を検出する場合には、血小板懸濁液の粒子の性質から、阻害および散乱を含む複雑さを伴う。故に、アシダ(Ashida)らおよびコバヤシ(Kobayashi)らによって記載された方法は、本明細書に記載している新規な変形を行わなければ血小板に応用することはできない。血小板ユニット中の細菌に対する迅速、高感度かつ特異的試験を必要としている血液バンク産業における要求が大きいことから、この技術革新は非常に有意義である。そのような試験は今だ認められておらず、現時点では商業化されていない。培養などの現行のその他の検出方法と比較して、本明細書に記載している試験はより速く、感度はほぼ同等であり、血液供給の万全性および滅菌血小板を頼りにしている年間何千人もの受注者を保護するための重要なツールになるはずである。さらに、本明細書に記載している試験により、現在5日が限度とされている血小板ユニットの保存期間を延長することができると考えられる。FDAは、血小板ユニット中の細菌混入のリスクが保存期間に応じて高まることを鑑みてこのような制限を設定している。
【0033】
本明細書に記載しているアッセイはペプチドグリカンを検出するものであり、故に、現在可能な2種類のFDA推奨自動血小板培養系とは異なる。現行のひとつの系であるPall BDSは、細菌増殖の結果としての酸素濃度の変化を利用したものであり、実用的かつ信頼性のある試験である。細菌は酸素を消費するので、血小板サンプル中の酸素レベルの異常な低下によって細菌の存在が示唆される。少量の血小板濃縮物をろ過してサンプル袋に入れ、サンプルの他の細胞性構成要素から細菌を分離する。次に、このサンプルに、広範な細菌種の増殖を促進する物質を加えてインキュベートする。酸素レベルを測定し、単一通過値(simple pass)もしくは不能読取り値(fail reading)を得る(ヨムトヴィアン(Yomtovian),R.ら、AABB団体イブニングシンポジウム(AABB Corporate evening symposium)、2001年10月15日)。現行の第二の系であるBioMerieux BacT/ALERTは、細菌が産生したCO2を追跡することによって細菌の存在を自動的に検出する。試料を入れた培養瓶の底に取り付けたセンサーが、灰色から黄色への色の変化によってCO2の存在を示す(ブレッチャー(Brecher)ら、Transfusion 42:774-779(2002))。これらの系は、両者ともサンプル分析用の二次機器を必要とし、細菌の培養に最長30時間を要する。これらの方法の比較データを表1に示す。
【表1】

【0034】
対照的に、本発明はペプチドグリカンもしくはβ−グルカンを直接検出する。ひとつの実施態様においては、ペプチドグリカンは混入細菌上で検出される。混入細菌としては、グラム陽性および/またはグラム陰性のいずれも可能である。細菌が混入している血小板ユニット中で検出される細菌の種類に制限はなく、例えば次のようなものが挙げられる:尋常変形菌(Proteus vulgaricus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocollitica)、霊菌(Serratia marcescens)、エンテロバクター・クロアシー(Enterobacter cloacae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、セレウス菌(Bacillus cereus)、大腸菌(Escherichia coli)、奇怪変形菌(Proteus mirabilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびサルモネラ・コレラ(Salmonella cholerae)など。上掲したように、細菌は通常の皮膚叢(skin flora)ならびに正常および病原性の腸叢(gut flora)に現れる。病原性の腸細菌の例としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、エルシニア属(Yersinia)、ビブリオ属(Vibrio)、クロストリジウム・デフィシレ(Clostridium difficile)および大腸菌(Escherichia coli)など。その他、本明細書に記載しているアッセイを用いて検出することができる細菌の例としては、次のような属に含まれるものが挙げられる:エシェリキア属(Escherichia)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ボルデテラ属(Bordetella)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミコバクテリウム属(Mycobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、放線菌科(Actinomycetes)、ストレプトミセス属(Streptomycetes)、ノカルジア属(Nocardia)、エンンテロバクター属(Enterobacter)、エルシニア属(Yersinia)、ファンシセラ属(Fancisella)、パスツレラ属(Pasturella)、モラキセラ属(Moraxella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ブランハメラ属(Branhamella)、アクチノバチルス属(Acrinobacillus)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、リステリア属(Listeria)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、ブルセラ属(Brucella)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、トレポネーマ属(Treponema)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ビブリオ属(Vibrio)、プロテウス属(Proteus)、エルウィニア属(Erwinia)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、スピリルム属(Spirillum)、カンピロバクター属(Campylobacter)、シゲラ属(Shigella)、レジオネラ属(Legionella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アエロモナス属(Aeromonas)、リケッチア属(Rickettsia)、クラミジア属(Clamydia)およびマイコプラズマ属(Mycoplasma)など。
【0035】
細菌は、コロニー形成ユニット(CFU/ml)として約100CFU/mlの低レベルでアッセイプロトコール中で検出でき、例えば、約100〜200CFU/ml、約200〜300CFU/ml、約300〜600CFU/ml、約600〜1000CFU/ml、約1000〜2500CFU/ml、約2500〜5000CFU/ml、または5000〜10000CFU/mlで検出できる。血小板中で検出された細菌のCFU/mlは、細菌の独自性および細菌混入期間の長さによって異なる。ある実施態様においては、グラム陽性およびグラム陰性菌を含む細菌種が約100CFU/mlの濃度で検出でき、これは、より長期間を要し、従来から行われている培養手法によって検出される範囲と同等である。
【0036】
別の実施態様においては、本明細書に記載している検出アッセイを用い、酵母およびカビなどの菌類の細胞壁構成成分であるβ−グルカンを検出することができる。酵母およびその他の菌類細胞としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:アクレモニウム属(Acremonium)、アルテルナリア属(Alternaria)、アミロミセス属(Amylomyces)、アルトデルマ属(Arthoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、オーレオバシジウム属(Aureobasidium)、ブラストシゾミセス属(Blastochizomyces)、ボトリチス属(Botrytis)、カンジダ属(Candida)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、クリトコッカス属(Crytococcus)、ジクチオステリウム属(Dictyostelium)、エモンシア属(Emmonsia)、フサリウム属(Fusarium)、ジオミセス属(Geomyces)、ジオトリクム属(Geotrichum)、イサチェンキア属(Issatchenkia)、ミクロスポルム属(Microsporum)、ニューロスポラ属(Neurospora)、オイドデンドロ属(Oidodendro)、ピーシロミセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ピライラ属(Pilaira)、ピチロスポルム属(Pityrosporum)、リゾプス属(Rhizopus)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スタキボトリス属(Stachybotrys)、トリコフィトン属(Trichophyton)、トリコポロン属(Tricoporon)およびヤロウィア属(Yarrowia)など。
【0037】
細菌および/もしくは菌類の混入に関して試験を行う臨床サンプルとしては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:血液、血液製剤、血小板ユニット/回収物、血小板濃縮物、血清、血漿、その他の血液画分、組織、組織抽出物、尿、リンパ液、水和液(すなわち、IV用水和液)、栄養液、ワクチン、麻酔剤、薬理学的活性物質、または造影剤など。外傷用医薬材料も細菌および/もしくは菌類の混入に関して試験することができる。さらなる実施態様においては、サンプルは懸濁液または液体である。サンプル中に存在する細菌または菌類を回収し、場合によっては遠心分離もしくはろ過によって濃縮する。別の方法としては、サンプルを乾燥もしくは水分蒸発させる。
【0038】
さらに、本明細書に記載しているアッセイを利用し、医療器具、農業製品、環境製品および加工サンプルを含む工業製品についても、細菌および/もしくは菌類の混入に関して試験を行うことができる。試験対象となる医療器具の例としては、カテーテル、ステントおよびIVなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。試験対象となる農業製品の例としては、食品および上水道などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上水道の試験については、ヒトはその他の動物に消費される水から、水泳用プールおよび湖を含むレクリエーション施設で使用される水に至るまで範囲を拡げることができる。環境製品の例としては、ヒトに消費ならびに使用される大量のサンプルおよび製品の加工に使用される機械などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。工業サンプルの例としては、滅菌製品、ならびに医療用に製造されたそれらの構成要素および原材料などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
本明細書に記載している検出アッセイは、精巧な装置を必要とせず、細菌および菌類の混入に関して血小板ユニットをスクリーニングするための迅速かつ経済的な方法を提供する。ひとつの実施態様においては、着色した反応生成物を目視で読み取ることができる。別の実施態様においては、分光光度計またはERISAリーダーを用いて着色した反応生成物を読み取ることができる。本明細書に記載している検出アッセイは、細菌もしくは菌類の混入に関して陽性読取り値または陰性読取り値を提供する。
【0040】
本アッセイの特徴および長所としては、一般的な病原体を約100CFU/ml以下の感度で検出する、特異性は約100%である、アッセイ時間が短い、および、視覚評価によって即時読み取りも可能である、などが挙げられる。フォーマットが自由に変更可能であり、アッセイが単純であることから、血液バンクでのバッチ試験のための自動化または使用場所(病院、診療所、工業プラントまたは屋外における試験など、評価を行うサンプルの経過に応じて)に容易に適用させることができる。故に、細菌検出アッセイのフォーマットは単純明快である。
【0041】
さらなる実施態様においては、本明細書に記載しているアッセイは最終アッセイである、このことは、サンプル中の細菌混入の測定が可能な現行のその他のアッセイプロトコールとは対照的である。例えば、ひとつの現行アッセイは、反応中の光の透過の微量変化を測定するという動的アッセイに基づくものである。この動的アッセイでは、Toxinometer(試験管リーダー)などのような特殊な装置を使用して光の透過の変化を動的に測定することが必要である。これらのプロトコールにおいて分析物の濃度を測定するための活性化時間は、20〜120分であり、この過程は、複数サンプルを試験する場合でも修正できない。本明細書に記載しているアッセイ法は、約1、5、10、100、500またはそれ以上のサンプルの試験に合わせて修正することができる。特定の実施態様においては、サンプルを平行して試験し、フェノールオキシダーゼの阻害剤を用いる、もしくは沈殿を生じる酸性反応試薬を添加することによって反応を同時に停止させ、反応を停止した反応混合物を短時間遠心分離した後、上清中の安定かつ可溶性のMBTHコンプレックスを測定する。反応を停止した反応生成物は数時間安定であり、サンプルはまとめて分光光度計で読み取ることができる。停止反応を含まない他のアッセイプロトコールとは異なり、本明細書に記載しているアッセイにおいて生じた反応生成物は、反応生成物測定用の非滅菌デバイス内に移すことができる。非滅菌装置を使用することによってコスト効率が上がり、非臨床環境への移行性がより促進される。
【0042】
特定の実施態様においては、本明細書に記載しているアッセイは、1時間以内、約1〜2時間、約2〜3時間、約3〜4時間、約4〜5時間、約5〜6時間、または約6〜7時間で行うことができる。ある実施態様においては、アッセイは約1時間で行う。表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)などのような増殖が遅い細菌では、1時間以上のアッセイ時間を要する。
【0043】
ある実施態様においては、サンプル中のペプチドグリカンもしくはβ−グルカンの検出には、プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし;さらに、着色したフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出することを含むが、このとき、反応生成物の生成により、サンプル中のペプチドグリカンもしくはβ−グルカンの存在が示唆される。さらに、着色した反応生成物の生成により、さらに、サンプル中の細菌もしくは菌類の存在が示唆された。
【0044】
特定の実施態様においては、プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、フェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードを含む。さらなる実施態様においては、プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、ペプチドグリカン結合タンパク質もしくはβ−グルカン結合タンパク質を含む。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の血リンパまたは血漿から入手できる。ある実施態様においては、プロフェノールオキシダーゼカスケード系はカイコガの幼虫の血漿から入手した。
【0045】
特定の実施態様においては、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質としては、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、L−3,4−ジヒドロキシフェノールアミン(ドーパミン)、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはカテコールなどを用いる。ある実施態様においては、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質は、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、L−3,4−ジヒドロキシフェノールアミン(ドーパミン)である。
【0046】
ある実施態様においては、滅菌血小板ユニットから1mlの血小板を無菌的に採取し、標準的な実験室用微量遠心分離機を用い、14,000rpmで5分間遠心分離した。本明細書においては、本アッセイ法をアッセイ法1と称する。上清を除去し、血小板および混入細菌(天然型またはスパイク型)を含むペレットを約100μlの抽出液(0.1NのNaOH)に再懸濁した。血小板および混入細菌を約80℃で約6分間インキュベートした後、約100μlの中和緩衝液(80mMのMES/10mMのMBTH)を加えた。抽出、中和した全サンプル(約200μl)は、反応管毎にアッセイしたが、該反応管は、メーカー(ワコー(Wako)社)から購入し、カイコガの幼虫の血漿(SLP)および基質を含む。別の実施態様においては、再構成されたプロフェノールオキシダーゼカスケード系およびMBTHを含む反応管に抽出、中和された血小板を加えた。37℃で1時間インキュベートした後、10mMの1−フェニル−2−チオ尿素を100μl加えて反応を停止した。視覚的な色彩変化に関してサンプルを測定した。橙色または赤色の管では細菌の存在が示唆された。無色または黄色の管では、サンプル中に細菌が存在していないことが示唆された。特定の実施態様においては、反応管の内容物を標準的な96ウェルプレートに移し、標準的なマイクロプレートリーダーを用いて約490nmにおける各ウェルの吸光度を読み取り、約650nmにおけるバックグラウンド読取り値を差し引いて補正した。約650nmにおけるバックグラウンドの読み取り値を差し引いて補正した約490nmにおける吸光度は、サンプル中のペプチドグリカン濃度に比例している。
【0047】
別の実施態様においては、SLP反応は、10%のトリクロロ酢酸(TCA)を等量加えて停止し、卓上型遠心分離機を用いてサンプルを2〜3分遠心分離した。MBTH/キノンコンプレックスを含む透明な上清を450nmにおいて分光光度計で読み取ったが、これは、酸性条件下においては、MBTH/キノンコンプレックスの極大吸収値が低波長側に少しずれるからである。
【0048】
特定の実施態様においては、標準物質として、精製、部分切断したペプチドグリカンを使用した。さらに、抽出、中和された血小板中で、精製ペプチドグリカンを約10ng〜約150pg/mlまで段階希釈することにより、ペプチドグリカンの標準曲線を作成した。抽出、中和した血小板中の各希釈液約200μlにSLPまたは再構成PCSを加えてインキュベートし、37℃で1時間インキュベートした。
【0049】
血小板/細菌サンプル中または標準物質としてのペプチドグリカンは、約0.156ng/mlの低濃度までアッセイによって検出でき、検出濃度範囲は約0.100〜0.200ng/ml、0.200〜0.500ng/ml、0.500〜1ng/ml、1〜2.5ng/ml、2.5〜5ng/ml、5〜10ng/ml、および10〜100ng/mlであった。ペプチドグリカンの濃度は、約650nmにおけるバックグラウンド読取り値を差し引いて補正した、約490nmにおける吸光度に比例している。
【0050】
ある実施態様においては、比色反応は、酵素反応中にフェノールオキシダーゼo−ジフェノリック基質から生成したo−キノン類と3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)とのカップリング反応に基づいている。MBTH/キノンコンプレックスは発色性であり、目視もしくは分光光度計で測定可能な鮮赤色反応生成物が得られる。反応生成物は、約470〜510nmに吸収極大を有し、27,500〜32,500M-1cm-1の範囲で高いモル吸光係数を有する。さらに、MBTHとo−キノン類との間の比色反応で生成した反応生成物は、酸性条件下で可溶性かつ安定である。故に、反応は酸で停止し、遠心分離により、上清中の吸収材料をほとんど消失することなく凝集塊を除去できる。清澄化した上清について、分光光度計およびELISAリーダーなどの光学読み取り機を用いて、あるいは単純な目視検査により、簡便に測定することができる。酸性条件下においては、MBTH付加物は、モル吸光度が若干高い。比色反応において、メラニン形成の測定に基づく検出方法をMBTH付加法に置き換えると、フェノールオキシダーゼ活性の検出に対する分析感度は7〜10倍高くなった。さらに、450〜510nmの分析フィルターと組み合わせて650nmの比較フィルターを用いることにより、残留している低レベルの光散乱をさらに補正することができた。
【0051】
ある実施態様においては、本明細書に記載しているアッセイにおいて遠心分離工程およびそれに続いて抽出工程を実施することにより、SLP試験において干渉を起こす可能性がある阻害構成成分を含む血漿から血小板および混入細菌を分離した。抽出過程により、血漿中の阻害成分の活性が破壊され、同時に、血小板および細菌細胞が可溶化され、故に、溶液の濁度が低下した。溶液の濁度が低下することにより、サンプルの読み取り精度が高まる。このことは、現行の他のアッセイプロトコールよりも格段に改良された点である。そのようなプロトコールにおいては、撹拌を行わなければ、サンプル中の粒子もしくは阻害因子がすぐに沈殿を起こし、濁度が上昇することによって測定値が変化し、擬陽性の結果が得られる。他の研究者らによってこれまでに行われてきた阻害因子排除のための試みは、希釈倍率を大きくする(例えば、8〜20倍など)ことであり、これは、細菌検出の感度低下を招いた。
【0052】
好ましい実施態様においては、抽出工程はアルカリ抽出である。特定の実施態様においては、アルカリ抽出は高温で行う。本明細書に記載しているように、血小板/細菌ペレットは、元の血小板調製物の溶液1mlから調製され、100μlの水酸化ナトリウム溶液で効率的に抽出できることから、アルカリ抽出により、混入細菌の濃度は約10倍になった。さらに、所望するならば、さらに高倍率または低倍率の濃縮も可能である。またさらに、アルカリ抽出によって細菌細胞壁由来のペプチドグリカンの利用性が著しく高められ、また、ペプチドグリカンポリマーが部分加水分解されてフラグメントが生じるが、これらは、プロフェノールオキシダーゼカスケード系において、より利用しやすい基質である。結果として、抽出工程を介し、血小板サンプル中の混入細菌の検出感度の増強が達成された。
【0053】
さらに、アルカリ抽出により、血小板調製物中に混入因子として存在する可能性があるヘモグロビンの吸収スペクトルが変化した。アルカリ抽出工程により、ヘモグロビンの吸収がシフトし、MBTH反応生成物の吸収との重複が最小限になった。
【0054】
ある実施態様においては、アルカリ抽出した血小板を酸性緩衝液で中和してからSLP試薬による試験を行った。好ましい実施態様においては、酸性緩衝物質は、抽出に用いた水酸化ナトリウム溶液と等容量のMBTH試薬含有MESである。試験実施日に水で再構成することができるMES/MBTHの安定な凍結乾燥品が開発されている。抽出した血小板を中和することにより、SLP検出工程のpHおよびMBTH濃度を最適化することができる。中和は、濃縮された血小板抽出物をわずかに2倍希釈することによって行える。抽出、中和されたサンプル中の血小板の最終濃度は、元の血小板サンプル調製物の5倍である。例えば、一般的なアッセイにおいては、凍結乾燥SLP試薬および基質(DOPAまたはDOPA/ドーパミン混合物)が入った管に、抽出、中和された血小板のアリコート(約100〜200μl)を加える。反応は、37℃で色の変化が観察されるまでの十分な時間(例えば、60分またはそれ以下)、進行させ、次に、酸性反応試薬(例えば、トリクロロ酢酸(TCA)、過塩素酸またはタングステンケイ酸(tungstocilicic acid)など)を用いて停止し、続いて、卓上遠心分離機で2〜3分間遠心分離を行う、または、フェノールオキシダーゼに特異な強力阻害剤(例えば、フェニルチオ尿素(PTU)など)を加えてから吸光度を測定する。酸で反応停止した反応混合物を遠心分離した後の上清またはPTUで反応停止した反応混合物は、490nmで吸光度読み取りを行うために、通常の免疫学用プレートまたは管/キュベットに移した。別の方法としては、上述したように、490nmおよび650nmの2つのフィルターを用いてサンプルを読み取ることができる。さらに、色の相異を利用して陽性または陰性の結果を判断することから、単純な目視測定を行うこともできる。酸による停止法およびPTU停止法のいずれにおいても、基質としてDOPAを使用した場合には、サンプルの色は少なくとも数時間は安定であった。
【0055】
別の実施態様においては、別の方法によって血小板および混入細菌を抽出した。別の抽出方法としては酵素抽出などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0056】
また別の実施態様においては、ペプチドグリカン結合タンパク質のペプチドグリカンへの結合は酵素法を介して行ったが、この結合により、フェノールオキシダーゼ基質としてL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を使用するアッセイ系において、プロフェノールオキシダーゼカスケードが開始し、それらが次に、着色したメラニン最終生成物として測定される。着色したメラニン生成物は発色性であり、目視により、または光学読み取り機を介して測定することができる。
【0057】
特定の実施態様においては、ペレット状の血小板および混入細菌(天然型またはスパイク型)は、水による希釈および遠心分離によって集めた。ペレット状の血小板は、カイコガの幼虫の血漿(SLP)を用いた反応試験に際して、水で再懸濁した。本明細書においては、本アッセイ法をアッセイ法2と称する。100μlのスパイク型細菌の存在下または不在下において、基質を含む200μlのSLP再構成液が入った反応管(Wako SLPキットとして市販)1本につき、再懸濁した血小板の100μlのアリコートをアッセイした。37℃で1時間インキュベートした後、サンプルを2つの100μlのアリコートに分け、それらを標準的な96ウェルELISAプレートに移し、標準的なマイクロプレートリーダーを用いて450nmまたは490nmにおける各ウェルの吸光度を読み取った。ペプチドグリカンの標準曲線は、精製ペプチドグリカンを500〜15pg/mlまで段階希釈し、各希釈を上述のサンプルとして処理する(すなわち、各希釈の100μlを200μlのSLP再構成液とインキュベートし、37℃で1時間インキュベートした)ことによって作成した。サンプルの応答は、ペプチドグリカン用量応答曲線から内挿することができるが、このとき、490nmにおける吸光度は、サンプル中のペプチドグリカン濃度に直接比例している(図1)。
【0058】
以下の実施例は、菌類の検出に関して、通常の実験の範囲内で適用することができる。特定の実施態様においては、β−グルカンは、菌類の細胞壁上で検出される。血小板サンプル中でβ−グルカンが検出されることにより、サンプルへの菌類の混入が示唆される。特定の実施態様においては、本明細書に記載しているSLP試験において、精製もしくは部分精製したβ−グルカンを対照として使用した。
【0059】
4.キット
本発明は、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカン検出用のキットをも提供する。サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカン検出用のキットは、プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンを含む。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の血漿または血リンパから入手するが、ある実施態様においては、カイコガの幼虫の血漿から入手した。キットに使用したプロフェノールオキシダーゼカスケード系は、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼ、およびセリンプロテイナーゼカスケードを含む。プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、ペプチドグリカン結合タンパク質またはβ−グルカン結合タンパク質をさらに含む。さらに、キットは、キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質をさらに含む。キノン反応生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質としては、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ドーパミンまたはその他のモノ−もしくはジ−フェノール化合物を用いる。
【0060】
特定の実施態様においては、サンプル中のペプチドグリカン検出用のキットはペプチドグリカン標準物質をさらに含むが、ここで、ペプチドグリカン標準物質とは、単離された細菌のペプチドグリカン、細菌全抽出物または不活化細菌全体である。
【0061】
別の実施態様においては、サンプル中のβ−グルカン検出用のキットはβ−グルカン標準物質をさらに含むが、ここで、β−グルカン標準物質とは、単離された菌類のペプチドグリカン、菌類の全抽出物または不活化菌類全体である。
【0062】
さらなる実施態様においては、サンプル中のペプチドグリカン濃度またはβ−グルカン検出用キットは、抽出液を含む。抽出液はアルカリ抽出液を用いる。キットは中和緩衝液も含む。あるいは、キットは、中和緩衝液に溶解した3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンを含む。キットは、停止試薬をさらに含むが、ここで、停止試薬は酸性反応試薬またはフェノールオキシダーゼ阻害剤(例えば、フェニルチオ尿素など)である。
【0063】
さらなる実施態様においては、サンプル中のペプチドグリカンまたはβ−グルカン検出用のキットは、分光光度計による検出のための指示書もしくは目視評価用の色彩コード表、ならびに反応実施用の滅菌サンプル管もさらに含む。
【0064】
キットに含まれる反応試薬は、別異の容器で、または2種類もしくはそれ以上の反応試薬の混合物をひとつの容器に入れて提供する。反応試薬は、液体または乾燥粉末(例えば、凍結乾燥など)の状態で提供することができる。
【実施例】
【0065】
等価性
一般的な記載をしてきた本発明は、以下の実施例を参照にすることにより、より容易に理解できるはずである。これらの実施例は特定の側面および本発明の実施態様について具体的に説明するためのものであり、如何なる意味においても、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【0066】
以下に示す実施例においては、アッセイに使用した血小板は、標準的な手法に従い、血液バンクにおいて、1人のドナーからの500ml献血またはアフェレーシスし、白血球を除去した。アッセイの開発には、期限切れ血小板(5日以上経過したもの)および回収当日の新鮮な血小板を用いた。
【0067】
実施例1:細菌が入り込んだ血小板(Bacteria spiked platelets)
アッセイ感度の評価を目的として、次の細菌種を用いてスパイク試験を行った:尋常変形菌(Proteus vulgaricus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocollitica)、霊菌(Serratia marcescens)、エンテロバクター・クロアシー(Enterobacter cloacae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、セレウス菌(Bacillus cereus)、大腸菌(Escherichia coli)、奇怪変形菌(Proteus mirabilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびサルモネラ・コレラ(Salmonella cholerae)など。これらの細菌は全て、通常の皮膚叢を現す。細菌種は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手した。
【0068】
販売側の指示に従って細菌を再構成することによって培養、定量し、Trypticase Soy Broth(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)社)中、37℃で一晩増殖させた。細菌は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で2回遠心分離することによって洗浄し、5mlの滅菌PBSに再懸濁した。900μlのPBSに100μlの細菌懸濁液を加える操作を6回順次繰り返すことにより、段階的10倍希釈液を調製した。複数のTrypticase Soy Agar(TSA;ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)社)プレートに、10μlの接種用白金耳を用いて4〜6段階目の希釈液を接種したが、この希釈は、1:10,000〜1:1,000,000に相当する。プレートは37℃で一晩インキュベートし、翌日、目に見えるコロニーを手作業で計数した。コロニー形成ユニットは、計数された平均コロニー数に接種白金耳の容量およびサンプルに使用した細菌懸濁液の希釈因子をかけることによって計算した。
【0069】
アッセイ法1を用いたひとつの一連の実験においては、標準的な実験室用微量遠心分離器を用い、スパイク血小板懸濁液の1mlのアリコートを14,000rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、血小板および混入細菌を含むペレットを100μlの抽出液(0.1NのNaOH)に再懸濁した。血小板および混入細菌を80℃で6分間インキュベートし、次に、100μlの中和緩衝液(80mMのMES/10mMのMBTH)を加えた。カイコガの幼虫の血漿(SLP)および基質を含む反応管(メーカーから購入)に全サンプル(200μl)を移した。37℃で1時間インキュベートした後、10mMの1−フェニル−2−チオ尿素100μlを加えて反応を停止し、色の変化を目視および分光光度計を用いてモニターした。
【0070】
血小板をスパイクすることを目的として、血小板の1mlのアリコートに細菌の段階的2倍希釈液を直接加えて血小板サンプル中の細菌の最終濃度を156〜5000CFU/mlにし、上述のアッセイ法1に従ってすぐにアッセイを行った。陰性対照として、細菌を添加せずに血小板をアッセイし、または、陽性対照として、1ng/mlの精製ペプチドグリカンを加えて血小板をアッセイした。霊菌(Serratia marcescens)がスパイクした血小板の用量応答曲線を図2に示す。
【0071】
大腸菌(E . coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、霊菌(Serratia marcescens)を含む数種の細菌種、または血小板に入り込んだ精製ペプチドグリカンを用いてさらに用量応答試験を行った。血小板にスパイクしていた細菌の最終濃度は、156、313、625、1250、2500および5000CFU/mlであった。血小板にスパイクしていた精製ペプチドグリカンの最終濃度は、0、0.156、0.313、0.625、1.25、2.5、5および10ng/mlで血小板に入り込んでいた。アッセイ法1を使用し、反応は、ひとつの反応管について、目視および反応管の内容物をアッセイプレートに移してから分光光度計により、モニターした。490nmにおけるOD値は、650nmにおけるバックグランド読取り値で補正することにより(OD490−650)、定量的結果が得られた。全ての細菌種について、156CFU/mlで目視検出された。
【0072】
アッセイ法2に従う二番目の実験においては、血小板ユニットから2mlの血小板を無菌的に取り出し、標準的な実験室用微量遠心分離器を用いて14,000rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、血小板は2mlの滅菌脱イオン水に再懸濁した。次に、血小板を再び遠心分離し、1mlの脱イオン水に再懸濁した。100μlのスパイクした細菌(1000CFU/ml)の存在下または不在下において、反応管(メーカーから購入し、再構成された200μlのカイコガの幼虫の血漿(SLP)および基質を含む)1本につき、100μlの血小板をアッセイした。37℃で1時間インキュベートした後、サンプルを2つの100μlアリコートに分け、これらを標準的な96ウェルELISAプレートに移し、標準的なマイクロプレートリーダーを用いて490nmにおける各ウェルの吸光度を読み取った。血小板の存在下においては、1000コロニー形成ユニット(CFU)/mlで全ての細菌種が検出された(図3)。
【0073】
アッセイ法2に従う実験条件下では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および緑膿菌(P.aeruginosa)は、100CFU/mlという低濃度でも検出された(図4〜6)。100CFU/ml、1000CFU/mlおよび10,000CFU/mlの濃度において、490nmにおける吸光度は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および緑膿菌(P.aeruginosa)とも陰性対照よりも大きい値を示した。図7においては、0時間の時点で(T=0)10CFU/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を血小板ユニットにスパイクさせた。接種から20および48時間後に上述に従って100μlのアリコートをアッセイした。データ点は、4回行った読取りの平均値である。
【0074】
実施例2:血小板内における細菌増殖の時間経過実験
アッセイ感度を評価するための別異の方法として、アッセイ法2を用い、血小板内における細菌増殖の時間経過実験を行った。一連の本実験においては、血小板バッグに細菌を接種した後に時間を追いながらアッセイ結果対CFU/mlを求めた。血小板バッグから血小板を2ユニット取り出し、サンプリングが行いやすいように、50mlの滅菌コニカル管に入れた。0時間の時点で、ひとつのユニットには、10CFU/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を接種し(図8においてSAと示している)、もうひとつのユニットには、10CFU/mlの緑膿菌(P.aeruginosa)を接種した(図8においてPAと示している)。接種直後に両者から1mlのサンプルを採取した。20時間および48時間インキュベーションした後、各管から1mlのサンプルを採取した。採取後すぐにサンプルを4℃の場所に入れ、アッセイを行うまでに細菌がさらに増殖しないようにした。全てのサンプルは、並行して以下のように処理した:標準的な実験室用微量遠心分離器を用い、1mlの各サンプルを遠心分離した。上清を集めて捨て、血小板は1mlの滅菌脱イオン水に再懸濁した。遠心分離を行った後、血小板は1mlの滅菌脱イオン水に再懸濁した。採取点1点あたり、2つの100μlのアリコートをアッセイした。24時間以内では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および緑膿菌(P.aeruginosa)とも精度よく本アッセイで検出された。全体的に、時間点での変異係数は10%以下であった(図8)。
【0075】
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)を用いて同様の実験を行った。この実験においては、0時間の時点で10CFU/mlの表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)を血小板に接種した。0、7、22、48時間の時点で1mlのサンプルを採取して4℃の場所に保存し、アッセイを行うまでに細菌がさらに増殖しないようにした。最後にサンプルを採取した後、全てのサンプルを平行してアッセイした。同様に、10μlの滅菌接種用白金時を用い、TSAプレート上にサンプルを移した。全てのサンプルは、アッセイ法1に従って処理した。図9に定量的に示しているように、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の増殖は、血小板への接種後7時間以内に100CFU/mlで検出された。
【0076】
実施例3:ペプチドグリカンに対するアッセイの特異性
ペプチドグリカンに対するアッセイの特異性を明らかにすることを目的として、アッセイ法1に記載しているように、抽出、中和した血小板中に、10ng/ml〜150pg/mlの濃度に段階希釈した精製ペプチドグリカンを加えて用量応答曲線を作成した。650nmにおけるバックグラウンド読取り値で補正した490nmにおける吸光度は、ペプチドグリカン濃度に比例している(図10)。下限である156pg/mlのペプチドグリカンは目視検出できた。
【0077】
実施例4:検出アッセイのための抽出工程
アッセイ法1で行った抽出の効果を評価することを目的として、抽出工程の前および後に血小板サンプルに細菌を加えた。記述に従って全てのサンプルをアッセイした。抽出工程により、大腸菌(E . coli)に関しては約10倍、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に関しては2〜3倍に感度が上昇することがわかった(図11)。
【0078】
実施例5:期限切れの血小板ユニットを用いた検出アッセ
アッセイの特異性を評価することを目的として、アッセイ法2に従い、古くなった、または期限切れの白血球除去血小板濃縮物の17ユニットについて処理した。概説すると、各ユニットの1mlを遠心分離し、滅菌脱イオン水で洗浄し、1mlの滅菌脱イオン水で再懸濁した。アッセイでは、1mlの各アリコートについて、100μlずつを用いて2回アッセイした。続いて、各アッセイ反応は、96ウェルプレートを用いて490nmにおいて2回読み取った。図12は、17の血小板ドナーから得られた吸光度(OD)値の分布を示すヒストグラムである。17ドナーのすべてにおいてOD値は非常に低く、陰性サンプルであることを示しており、よりOD値が高い陽性サンプルとは容易に区別することができる。本アッセイにおいては、全てのユニットが陰性であり、ユニット内の吸光度のCV(変異係数)は5%以下、ユニット間の吸光度のCVは16%以下であった。ユニット内CVとは、各血小板ユニットについての2回の測定間の変異をさし、ユニット間CVとは、別異の血小板ユニット間の変異をさす。
【0079】
実施例6:フェノールオキシダーゼ活性の検出に関し、メラニン形成に基づく方法とMBTH法との比較
チロシナーゼDOPA/メラニン試験およびDOPA/MBTH試験の比較を行った。0.1MのMOPSO緩衝液(pH6.5)を含むマイクロプレートのウェルを用い、初期濃度を5μg/mlとしてマッシュルームチロシナーゼ(シグマ( Sigma )社))を段階希釈し、1mMのDOPAまたは1mMのDOPA/6mMのMBTHを加えて37℃でインキュベートした。25分後に10mMのフェニルチオ尿素を等量加えて反応を停止した。490nmにおける吸光度を測定した。図13に示すデータは、同一OD値を示すのに要したチロシナーゼの濃度は、DOPA/メラニン法に対してDOPA/MBTH法は約1/8であったことを示している。
【0080】
DOPA/メラニン試験とDOPA/MBTHSLP試験との比較も行った。DOPAを含むSLP反応試薬(ワコー(Wako)社)を100μlの希釈液(ワコー(Wako)社)で再構成し、多様な濃度のペプチドグリカンを含む100μlのサンプルを加えた。DOPA/メラニンプロトコールを用いた試験用には、全てのバイアルに0.1MのMOPSO緩衝液(pH6.5)を40μlずつ加えた。サンプルは37℃で30分間インキュベートし、10mMのPTUを50μl加えることによって反応を停止した。DOPA/MBTHプロトコールを用いた試験用には、全てのバイアルに、50mMのMBTHを含む0.1MのMOPSO緩衝液(pH6.5)を40μlずつ加え、混合物は37℃で30分間インキュベートした。10mMのPTUを50μl加えることによって反応を停止した。490nmで読取りを行うために、反応を止めた全てのサンプルをマイクロプレートに移した。
【0081】
ドーパミン/メラニン試験およびドーパミン/MBTH試験の比較も行った。DOPA不含凍結乾燥SLP反応試薬(ワコー(Wako)シングル反応試薬)を希釈剤(1.5ml/バイアル)で再構成し、滅菌管に入れた(50μl/管)。3mMのドーパミンまたは100μlのドーパミン/MBTH溶液(3mM/12mM)を各管に加え、続いて37℃で30分間インキュベートした。反応を停止し、上述に従って490nmにおける吸光度を測定した。図14Aは、基質としてDOPAを含むSLP反応試薬中のペプチドグリカンの検出に関しては、DOPA/MBTH法がDOPA/メラニン法より顕著に優れていることを示す。図14Bは、ドーパミン/MBTH法において、基質としてドーパミンを使用したSLP試験でのペプチドグリカン検出感度が顕著に向上したことを示す。
【0082】
メラニン法およびMBTH法を用い、血小板に入り込んだPGの検出感度の比較も行った。血小板は、滅菌水を用いて血小板調製物を5倍希釈し、14,000rpmで5分間遠心分離することによって試験用に調製した。血小板ペレットを水で注意深く洗浄して血漿構成成分を除去し、血小板を水で再懸濁して元の容量に戻した。血小板懸濁液にPGを加え、多様な希釈液を調製した。凍結乾燥SLP反応試薬(基質不含)を1.5mlの希釈液で再構成した。凍結乾燥DOPA基質は1.5mlの希釈液で再構成した。希釈液を用いてドーパミン基質濃度を6mMに調製した。DOPA/ドーパミン基質の混合物は、再構成DOPA溶液および6mMのドーパミン溶液を等容量混合することによって調製した。
【0083】
反応混合物は、滅菌管にPG添加血小板50μl、SLP反応試薬25μlおよび基質溶液25μlを加えて調製した。MBTH法を用いた試験用には、25%のDMFAで調製した160mMのMBTHを1.87μl加えた。管は、37℃で60分間インキュベートし、10mMのPTU溶液50μlを加えることによって反応を停止した。490nmで読取りを行うために、反応を止めた全てのサンプルをマイクロプレートに移した。
【0084】
メラニン法およびMBTH法を用い、血小板にスパイクした細菌の検出感度の比較も行った。血小板は、上述した水洗浄法によって調製した。血小板は少量の黄色ブドウ球菌(S.aureus)がスパイクしており、所望する濃度に血小板懸濁液を希釈した。DOPA基質を含むシングルSLP反応試薬を100μlの希釈液で再構成した。ワコー(Wako)希釈液を用いて1mMのドーパミン基質を調製した。DOPA/メラニン試験用の反応混合物は、100μlの希釈液で再構成したSLP反応試薬が入ったバイアルに、細菌がスパイクした血小板を100μl、またはスパイクしていない対照の血小板を100μl加えることによって調製した。DOPA/MBTH試験は、DOPA/メラニン試験と同様に行ったが、反応混合物に160mMのMBTH溶液を6.25μl加えた。DOPA/ドーパミン/MBTH試験用には、SLP反応試薬が入ったバイアルは、1mMのドーパミン100μlを用いて再構成した。ドーパミン含有SLP反応試薬に、細菌がスパイクした血小板およびMBTHを加えた。全ての反応混合物は37℃で50分間インキュベートし、10mMのPTUを50μl加えることによって反応を停止した。反応を停止した生成物をマイクロウェルに移して490nmにおける吸光度を測定した。
【0085】
図15は、血小板存在下でのPGの検出にはDOPA/MBTH法が優れていることを示す。基質としてDOPAの代わりにドーパミンまたはDOPA/ドーパミンを用いた場合には、感度の顕著な上昇が観察された。図16は、血小板にスパイクしている細菌の検出にはDOPA/MBTH法が優れていることを示し、また、DOPA単独よりもDOPA/ドーパミン基質混合物の方が感度が高いことも示す。
【0086】
実施例7:SLP反応試薬およびMBTH試験を用いたPG検出用の多様なフェノールオキシダーゼ基質の比較
基質不含の凍結乾燥SLP反応試薬を1.5mlの希釈液で再構成した。PG希釈溶液は希釈液で調製した。基質/MBTH混合物は、希釈液を用い、基質3mM、MBTH6mMの濃度で調製した。次に挙げるジフェノール類を基質として使用した:DOPA、ドーパミン、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DhyAcA)、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸(DhyPrA)およびカテコール。反応混合物は、50μlのPG溶液、25μlの基質/MBTH溶液および25μlのSLP反応試薬を用いて調製した。37℃で60分間インキュベートした。10mMのPTUを100μl加えることによって反応を停止した。図17は、MBTH試験において最も感度が高かった基質はドーパミンであったことを示す。
【0087】
実施例8:DOPA/MBTH試験における至適MBTH濃度の決定
DOPA含有SLP反応試薬は、1バイアルあたり100μlの希釈液を用いて再構成した。10ngのPGを含むPG溶液(50μl)を滅菌管に入れた。各管に50μlのSLP反応試薬を加え、続いて、2.5%のDMFAを含む10μlのMBTH溶液(100mM、75mM、50mM、30mM、20mMおよび10mM)を加えた。混合物は37℃で30分間インキュベートし、10mMのPTU溶液10μlを加えることによって反応を停止した。図18は、WAKO SLP反応試薬中でDOPAを基質として用いた場合には、MBTHの至適濃度は5mM付近であることを示す。
【0088】
実施例9:血小板調製物の血小板ペレットと血漿画分との間における阻害因子の分布に関する分析
血小板調製物のアリコートを14,000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去して試験用に保存した。血小板ペレットは、元の血小板調製物と等容量の希釈液に再懸濁し、再度遠心分離した。2回目の上清を同様にペレットから除去して保存した。ペレットは、元と等容量の希釈液に再懸濁した。非分画血小板調製物、1回目の上清、2回目の上清および再懸濁したペレットにそれぞれPG溶液を加えて最終濃度を1ng/mlにした。PGがスパイクした、およびスパイクしていない各フラクションの100μlにDOPA含有SLP反応試薬を100μl加え、さらに、各混合物に100mMのMBTH溶液を5μl加えた。管を37℃で50分間インキュベートし、10mMのPTU溶液を50μl加えることによって反応を停止した。反応を停止した混合物をマイクロウェルに移して490nmにおける吸光度を測定した。図19は、PGがスパイクした非分画血小板中および血小板調製物の血漿画分を含む1回目の上清中にはわずかなシグナルしかないことを示す。2回目の上清および洗浄血小板ペレットにおいては、スパイクしたPGは容易に検出でき、これらにはごく微量の血漿しか含まれていなかった。
【0089】
実施例10:短時間の高温処理が血小板調製物中の阻害因子の活性に及ぼす影響
血小板調製物の一つめのアリコートを80℃で5分間インキュベートした。2番目のアリコートは、水で10倍希釈して遠心分離した。血小板ペレットは、元と等容量の希釈剤で再懸濁した。非分画全血小板、熱処理血小板および血小板ペレットが入った管にPGを加え、最終濃度を1ng/mlにした。PGがスパイクしたサンプルおよび適切な対照(100μl)は、DOPA含有再構成SLP反応試薬100μlと混合した。10μlのMBTH溶液(2.5%のDMFA中100mM)を加えた。反応混合物は37℃で60分間インキュベートし、10mMのPTUを50μl加えることによって反応を停止した。図20に示すデータは、スパイクしたPGは、洗浄血小板ペレットのみで検出された。血漿を含む非分画全血小板は、短時間高温処理を行った場合も行わなかった場合も阻害活性を有しており、これによってSLPを用いたPGの反応が阻害される。
【0090】
実施例11:希釈液中の細菌検出のためのアルカリ抽出の効率に対する温度および時間の影響
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、希釈液を用いて107、106および105個/mlの濃度に希釈した。各サンプルの100μlに0.2Nの水酸化ナトリウムを100μl混合した。対照として、アルカリ抽出の効率を調べ、細菌を加えた一組の管に水酸化ナトリウム/MES緩衝液(pH6.8)を加えた。水酸化ナトリウムを加えた管は、56℃で10分間、または70℃で5分間インキュベートした。熱処理後、0.2MのMES緩衝液を含む中和溶液を加えた。中和したサンプルの最終pHは6.8〜7.2であった。100μlの中和サンプルおよび未処理対照は、DOPA含有再構成SLP反応試薬100μlが入った管に移し、37°で60分間インキュベートした。10mMのPTUを50μl加えることによって反応を停止した。図21は、アルカリ抽出を56℃で10分行った場合も70℃で5分行った場合も、希釈液中の細菌検出の感度は上昇した。より高温(70℃)において感度の顕著な上昇が観察された。
【0091】
実施例12:血小板ペレットに対するアルカリ抽出過程の最適化
黄色ブドウ球菌(S.aureus)細胞の濃度が106個/mlとなるように、血小板調製物に該細菌を加えた。未希釈の元の血小板調製物1mlから血小板ペレットを回収し、血小板がスパイクしたペレットは、14,000rpmで5分間遠心分離することによって回収した。平行して、同一濃度(106個/ml)で黄色ブドウ球菌(S.aureus)細胞を希釈液に入れた。細胞もしくは血小板を含む希釈液を入れた全ての管に100μlの水酸化ナトリウム溶液を加えた。多様な条件(すなわち、70℃で5分、70℃で20分、80℃で5分、および80℃で10分)で管をインキュベートした。48μlの0.2MのMESを加えて抽出サンプルを中和した。DOPA含有再構成SLP反応試薬50μlが入った滅菌管に50μlの中和サンプルを移した。各管に50mMのMBTH溶液を10μl加えた。混合物を37℃で45分間加熱し、10mMのPTUを10μl加えることによって反応を停止し、マイクロウェルで読み取った。図22は、より高温で(80℃)、またはより長時間抽出を行うことにより、血小板不含希釈液中の細菌細胞の抽出感度、および血小板が大量に存在する条件下での細菌の抽出感度が高まったことを示す。これらのデータは、サンプル中に濃縮血小板が存在していても、SLP試験の感度はそれほど変化しないことも示している。シグナルは、血小板にスパイクした細菌に関しては同等であり(該血小板は、元の血小板調製物よりも10倍濃縮されている)、希釈液に加えた同量の細菌細胞に由来するシグナルよりも若干弱い程度であった。
【0092】
実施例13:アルカリ抽出過程により、血小板調製物中の阻害因子による影響が排除されることの証明
血小板調製物のアリコート(200μl、400μlおよび600μl)を水で10倍希釈し、14,000rpmで5分間遠心分離した。同容量の血小板を水で希釈せずに、平行して遠心分離した。血小板ペレットは、140μlの希釈液に再懸濁した。適切な管に少量の黄色ブドウ球菌(S.aureus)を加えて濃度を106個/mlにした。抽出用には、0.2Nの水酸化ナトリウムを42μl加え、管を70℃で10分間インキュベートした。0.2MのMESを48μl加えて抽出を停止した。DOPA含有再構成SLP反応試薬50μlが入った滅菌管に50μlの中和サンプルを移した。各管に50mMのMBTH溶液を10μl加え、37℃で60分間インキュベートした。10mMのPTUを50μl加えることによって反応を停止した。図23は、アルカリ抽出過程は、元の血小板調製物の濃度よりも遥かに高い濃度において、多様な量の血小板の抽出に適していることを示す。抽出前に、希釈した血小板を遠心分離することによって血小板調製物から血漿を除去しても検出が改善されないことから、抽出過程によって血漿阻害因子の活性が効率的に除去されることが示された。
【0093】
参考文献の取込み
本明細書中に記載している全ての印刷物および特許は、各出版物または特許が特別かつ個別に参照として取り込まれることを指示されているように、それらの全体を参照として本明細書中に取り入れておく。争議の場合には、定義を含む本明細書が統制する。
【0094】
等価性
当業者であれば、通常の実験を行うことにより、本明細書に記載されている発明の特定の実施態様と等価の多数の態様を認識または確認できるはずである。そのような等価な態様は、上記の請求項に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ペプチドグリカンの用量応答曲線を表すグラフ。曲線は、y=((A-D)/1+(x/C)B))+Dという式で表され、このとき、A=0.258、B=0.958、C=47.511およびD=1.276であり、R2の値は0.993である。
【図2】血小板に入り込んでいる霊菌(S.marcescens)検出用の用量応答曲線を示すグラフ。OD490-650とは、490nmで分光光度計を読み取り、650nmにおいて読み取ったバックグラウンドを差し引いて補正した値をさす。
【図3】血小板にスパイクしていた細菌中のペプチドグリカンの450nmにおける吸光度を示すグラフ。
【図4】血小板に入り込んでいた黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)中のペプチドグリカンの490nmにおける吸光度を示すグラフ。
【図5】血小板に入り込んでいた緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)中のペプチドグリカンの490nmにおける吸光度を示すグラフ。
【図6】吸光度490nmにおいて行った、血小板にスパイクしていた細菌の検出を示すグラフ(■=陰性対照;◆=血小板にスパイクしていた緑膿菌;●=血小板にスパイクしていた黄色ブドウ球菌(S.aureus))。
【図7】接種20時間後および48時間後にアッセイを行った、血小板にスパイクしていた細菌の検出を示すグラフ(■=血小板にスパイクしていた黄色ブドウ球菌(S.aureus);◆=血小板にスパイクしていた緑膿菌;データ点は、4回行った読取り値の平均)。
【図8】吸光度490nmにおける血小板中のペプチドグリカン検出の時間経過を示すグラフ。
【図9】血小板バッグに表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)を10CFU/ml注入した場合の表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)検出の時間経過を示すグラフ。陽性対照に対して標準化したOD490ユニットとは、細菌サンプルのOD490ユニットを陽性対照のOD490ユニットで除し、100倍した値をさす。
【図10】ペプチドグリカンに関する用量応答曲線を示すグラフ。精製ペプチドグリカンを抽出・中和した血小板で段階希釈した。OD490-650とは、490nmで分光光度計を読み取り、650nmにおいて読み取ったバックグラウンドを差し引いて補正した値をさす。
【図11】細菌(大腸菌(E . coli)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)および血小板を抽出することによってアッセイ感度が増強されたことを示すグラフ(□=抽出行わず;■=抽出実施)。OD490-650とは、490nmで分光光度計を読み取り、650nmにおいて読み取ったバックグラウンドを差し引いて補正した値をさす。
【図12】吸光度490nmにおいて、使用期限の切れた血小板ユニット中の細菌検出をモニターしたグラフ。
【図13】チロシナーゼを用いたモデル実験において、DOPA/メラニンおよびDOPA/MBTHに対する感度の比較を示すグラフ(■=DOPA/MBTH;◆=DOPA/メラニン)。
【図14】SLP試験において、ペプチドグリカンの検出に関し、DOPA/メラニン、DOPA/MBTH、ドーパミン/メラニンおよびドーパミン/MBTHに対する感度の比較を示すグラフ(■=DOPA/MBTH;◆=DOPA/メラニン)。
【図15】血小板ペレットに入り込んでいるペプチドグリカンを検出するためのMBTH法において、DOPA/メラニンおよび多様なMBTH基質(DOPA、ドーパミン、DOPA/ドーパミン混合物)を比較したグラフ(■=DOPA/MBTH;◆=DOPA/メラニン;▲=DOPA/ドーパミン、MBTH;×=DOPA/MBTH)。
【図16】血小板ペレットにスパイクしている細菌細胞検出用のMBTH法において、DOPA/メラニンおよび多様な基質を比較したグラフ(■=DOPA/ドーパミン、MBTH;◆=ドーパクローム;▲=DOPA/MBTH)。
【図17】SLP試験においてPGを検出するための多様なフェノールオキシダーゼ基質に対する感度を比較したグラフ。
【図18】MBTHの至適濃度決定を示すグラフ。
【図19】血小板調製物中における阻害活性の局在を分析したグラフ。阻害活性の分布は、血小板ペレットおよび血漿含有上清の間で観察された(□=DOPA/MBTH停止試験)。
【図20】単純な熱処理では血小板調製物中の阻害活性を不活化することはできないことを示すグラフ。
【図21】SLP/MBTH試験の感度に対してアルカリ抽出が及ぼす影響を示すグラフ。黄色ブドウ球菌(S.aureus)細胞は、Wako SLPキットと共に供給された希釈液中に加えた。
【図22】SLP/MBTH試験に対し、抽出温度および時間が及ぼす影響を示すグラフ。黄色ブドウ球菌(S.aureus)細胞は血小板中にスパイクしていた。
【図23】アルカリ抽出を使用した細菌細胞の検出感度に対し、血小板の容量が及ぼす影響を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のペプチドグリカンを検出するためのキットであって、
(a)プロフェノールオキシダーゼカスケード系、
(b)キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および
(c)3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン
を含むことを特徴とするキット。
【請求項2】
サンプル中のβ−グルカンを検出するためのキットであって、
(a)プロフェノールオキシダーゼカスケード系、
(b)キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および
(c)3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン
を含むことを特徴とするキット。
【請求項3】
前記プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の血漿または血リンパから得られたものであることを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項4】
前記プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、カイコガの幼虫から得られたものであることを特徴とする請求項3記載のキット。
【請求項5】
前記プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードを含むことを特徴とする請求項4記載のキット。
【請求項6】
ペプチドグリカン結合タンパク質をさらに含むことを特徴とする請求項5記載のキット。
【請求項7】
β−グルカン結合タンパク質をさらに含むことを特徴とする請求項5記載のキット。
【請求項8】
キノン反応生成物を生成する前記フェノールオキシダーゼ基質は、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンまたはドーパミンであることを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項9】
ペプチドグリカン標準物質をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキット。
【請求項10】
前記ペプチドグリカン標準物質は、細菌から単離されたペプチドグリカン、細菌全抽出物または不活化細菌全体であることを特徴とする請求項9記載のキット。
【請求項11】
β−グルカン標準物質をさらに含むことを特徴とする請求項2記載のキット。
【請求項12】
分光光度計による検出のための指示書、または目視評価用の色彩コード表をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項13】
滅菌サンプル容器をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項14】
抽出液をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項15】
前記抽出液がアルカリ抽出液であることを特徴とする請求項14記載のキット。
【請求項16】
中和緩衝液をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項17】
構成成分(c)は中和緩衝液に溶解されることを特徴とする請求項16記載のキット。
【請求項18】
停止試薬をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項19】
前記停止試薬が酸性反応試薬であることを特徴とする請求項18記載のキット。
【請求項20】
前記停止試薬がフェノールオキシダーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項18記載のキット。
【請求項21】
サンプル中のペプチドグリカンを検出する方法であって、
(a)プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし;さらに、
(b)着色したフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出する工程を含み、
反応生成物の生成によりサンプル中のペプチドグリカンの存在が示唆されることを特徴とする方法。
【請求項22】
サンプル中のβ−グルカンを検出する方法であって、
(a)プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし;さらに、
(b)着色したフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出する工程を含み、
反応生成物の生成によりサンプル中のβ−グルカンの存在が示唆されることを特徴とする方法。
【請求項23】
反応物の生成により、サンプル中の細菌の存在が示唆されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項24】
反応物の生成により、サンプル中の菌類の存在が示唆されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルは、臨床サンプル、環境サンプル、農業サンプル、工業サンプルまたは医療用品であることを特徴とする請求項21または22記載の方法。
【請求項26】
前記臨床サンプルは、水和液、栄養液、血液、血液製剤、ワクチン、麻酔剤、薬理学的活性物質または造影剤であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記サンプルは、血液または血液製剤であることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記サンプルが血小板を含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルが懸濁液または液体であることを特徴とする請求項21または22記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルは、遠心分離によって処理され、遠心分離中にサンプル中の細菌または菌類がペレット化されることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素、プロフェノールオキシダーゼおよびセリンプロテイナーゼカスケードを含むことを特徴とする請求項21または22記載の方法。
【請求項32】
前記カスケード系は、ペプチドグリカン結合タンパク質をさらに含むことを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記カスケード系は、β−グルカン結合タンパク質をさらに含むことを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、昆虫の血漿または血リンパから得られたものであることを特徴とする請求項21または22記載の方法。
【請求項35】
前記プロフェノールオキシダーゼカスケード系は、カイコガの幼虫から得られたものであることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
キノン反応生成物を生成する前記フェノールオキシダーゼ基質は、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンまたはドーパミンであることを特徴とする請求項21または22記載のキット。
【請求項37】
プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートする前に、該サンプルを高温で抽出液に接触させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項21または22記載の方法。
【請求項38】
前記抽出液がアルカリ抽出液であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートする前に、該サンプルを中和緩衝液と接触させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項40】
プロフェノールオキシダーゼカスケード系、キノン生成物を生成するフェノールオキシダーゼ基質、および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートする前に、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノン含有中和緩衝液にサンプルを接触させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項41】
サンプルを停止試薬と接触させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項21または22記載の方法。
【請求項42】
前記停止試薬が酸性反応試薬であることを特徴とする請求項41載の方法。
【請求項43】
前記停止試薬がフェノールオキシダーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項44】
サンプル中のペプチドグリカンの検出法であって、
(a)アルカリ抽出液でサンプルを抽出し、
(b)カイコガの幼虫の血漿、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、および中和緩衝液に溶解させた3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし、
(c)フェニルチオ尿素を用いて反応を停止し、さらに
(d)着色したプロフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出する工程を含み、
反応生成物の生成により、サンプル中のペプチドグリカンの存在が示唆されることを特徴とする方法。
【請求項45】
サンプル中のβ−グルカンの検出法であって、
(a)アルカリ抽出液でサンプルを抽出し、
(b)カイコガの幼虫の血漿、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、および中和緩衝液に溶解させた3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと共にサンプルをインキュベートし、
(c)フェニルチオ尿素を用いて反応を停止し、さらに
(d)着色したプロフェノールオキシダーゼ反応生成物の生成を検出する工程を含み、
反応生成物の生成により、サンプル中にβ−グルカンの存在が示唆されることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公表番号】特表2007−509628(P2007−509628A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538135(P2006−538135)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035160
【国際公開番号】WO2005/045065
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506149678)イミューネティクス インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNETICS, INC.
【Fターム(参考)】