説明

血液を処理するための装置及び方法

【課題】実施が簡単で、人手の介入に対する必要の少ない血液を処理するための装置、特に赤血球を収集するための装置を提供する。
【解決手段】装置が、入口ポート、RBC容器、可変の総容積を有する遠心分離機ローター及びWBCフィルター、並びにこれらを接続するチューブを有する使い捨てセットを含む。フィルターは、入口ポートとローターとの間に位置し、血液がローター中に入る前に白血球を血液から濾別する。全血は、流れ制御配置物によって入口からフィルターを通ってローターへ送られる。制御ユニットの流れ制御配置物も設けられており、それはローターの弾性のダイヤフラムに正の及び負の圧力をかけるポンプ等を含む。血漿は、ローターが回転している間にローターから初めに送り出され、献血者に戻される。血漿がローターから除去された後、RBCはローターからRBC容器へ送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に、血液及びその他の生物学的流体を処理するための装置及び方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、使用が簡単で、人の手の介入に対する必要性を低減させる、血液成分を収集するための装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、白血球(WBC)を含まない分離された血液成分を収集するための装置と方法に関し、そして、より詳細には、使用が簡単で、人の手の介入に対する必要性を低減させる装置と方法に関する。(i)全血を献血者から使い捨てセットへ流れさせるためのポート(例えば、献血者の血管に挿入されるカニューレ)、(ii)WBCフィルター、(iii)全血が複数の成分に分離される分離容器(例えば、遠心分離機ローター又はその他の分離手段)、(iv)分離された血液成分を貯蔵するための血液成分容器、及び(v)ポート、フィルター、分離容器及び血液成分容器を接続するチューブ、を有する使い捨てセットが用意される。ポートは、全血を使い捨てセットに流れ込ませる入口として作用する。WBCフィルターは、ポート(即ち、入口)と分離容器との間に位置し、そして白血球を全血から濾別することができる。入口ポートは献血者に接続され、そして全血が献血者からポートを通して抜かれる。全血は、ポートからWBCフィルターを通して分離容器に送られ、そのため、分離容器に入る前に全血から白血球が濾別される。全血が第1の成分と第2の成分とに分離された後、第1の成分と第2の成分の一方が分離容器から血液成分容器に送られる。
【0004】
本発明の好ましい態様は、血漿を献血者に戻しながら、献血者から赤血球を収集するための装置及び方法に関する。全血を献血者から取り出し、その間、白血球(WBC)は全血から濾別され、そして濾過された血液は遠心分離機ローターに送られ、そこで血液は赤血球(RBCs)と血漿とに分離される。全血が献血者から抜かれる同じ手順の間に、血漿を献血者に戻すことができる。収集プロセス中に1回以上、ローター全体から血漿が取り出されたとき、赤血球はローターから強く出され、そして1つ以上のRBC容器中に収集される。
【0005】
好ましい態様において、赤血球を収集するための装置は、上述の、そして分離容器のための遠心分離機ローター及び血液成分容器のためのRBC容器を有する、使い捨てセットを含む。好ましい態様において、ポートは、分離された血液成分を献血者に戻すことを可能にするために出口としても作用し、或いは別個の出口ポートが設けられる。WBCフィルターは、ポートと遠心分離機ローターとの間に位置する。RBC容器は、ローターから繋がっているチューブの枝に接続される。
【0006】
好ましくは、遠心分離機ローターは可変の総容積を有する。ローターは、好ましくは、固定された部分、回転可能な部分、及び固定された部分と回転可能な部分との間に密閉性(シール)を提供する回転シールを含み、ここで、チューブはローターの固定された部分に接続される。可変の総容積を作るために、遠心分離機ローターは、その回転可能な部分中に弾性のダイヤフラム(隔板)を含むことができ、このダイヤフラムは伸びてローターの総容積を増加させる。そのような態様においては、ダイヤフラムをローターの固定された部分から分離するために、好ましくは内部壁が含まれる。
【0007】
この装置は、また、ローターを保持することができるスピナーを有する制御ユニットを含む。制御ユニットは、弾性のダイヤフラムに隣接する気体の圧力を変えることによって遠心分離機ローターの容積を変えるための手段を含むことができる。好ましくは、血液をローター中に引き入れるために、制御ユニットによって弾性のダイヤフラムに真空がかけられ得る。
【0008】
本発明を実施する好ましい方法においては、ローターがスピナー中に設置され、そしてポートが献血者に接続される。ローターがスピナー中に設置された後、献血者から全血をポートを通して抜くことができる。全血は、ポートからWBCフィルターを通してローターへ送られ、そのため白血球は全血から濾別される。献血者が依然としてポートに繋がれている間に、全血を血漿と赤血球とに分離するために、スピナーがローターを回転させる。血漿は、ローターが依然として回転している間に、献血者に戻すためにローターから初めに強く送り出される。第2の成分は、ローターからRBC容器へ送られる。
【0009】
1つの態様においては、入口ポートを全血を抜くために使用し、そして別個の出口ポートを血漿成分を戻すために使用することができる。好ましい態様においては、1つのポートが全血を抜くため及び血漿成分を戻すために使用されるが、この態様においては、全血が収集されている間に一時貯蔵容器が血漿を保持するために使用され、そして赤血球がローターによって処理されそしてローターから強く出されるときに血漿が戻される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従う装置を示す。
【図2】本発明の装置中において使用することができるローターの断面図を示す。
【図3】図1に示されている装置中において使用することができる使い捨てセットを示す。
【図4】別の使い捨てセットを示す。
【図5】図4の使い捨てセットを使用する赤血球の収集方法の1サイクル中の工程の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に従う装置の1つの態様を示す。この装置は、Headley及びPowersの1998年3月31日に発行された米国特許第5,733,253号、及びKingsley、Headley及びHalpernの1997年7月29日に発行された米国特許第5,651,766号に記載された部品と特徴の多くを使用する。これら両方の特許は参照によって本明細書中に組み入れられる。
【0012】
この装置は、使い捨てセット(図3に示されているもののようなもの)及び使い捨てセットを制御する制御ユニットを含む。使い捨てセットは、入口ポート10、例えば、カニューレを含み、これは全血が献血者から使い捨てセットに入るようにするための、側路(シャント)又はその他の配置物への接続用のコネクターとして作用することができる。チューブは使い捨てセットの様々な部品を接続する。全血はチューブの幾つかを通過し、そして制御ユニット20の上に取り付けられた遠心分離機ローター21に流れ込む。WBCフィルター12は、入口ポート10とローター21との間のチューブ中に位置する。このフィルター12は、白血球を全血から濾別する。全血の密度はより低いので、分離前の全血の濾過は、分離後の赤血球の濾過よりも簡単である。分離前の全血の濾過によって、白血球が血漿並びに赤血球から除去される。
【0013】
濾過された血液は、血液を血漿と赤血球とに分離させるのに十分に高い速度でローター中で回転させられる。血漿は、血液が献血者から抜かれている間に、出口ポート35(例えば、カニューレ)を通して献血者に戻される。赤血球は1つ以上のRBC容器28、29中に収集される。
【0014】
抜かれている全血に抗凝血剤を供給するために、抗凝血剤バッグ34が、好ましくは、入口ポート10とフィルター12との間のチューブに接続される。制御ユニット上のそして制御ユニットによって制御される計量弁23を、抗凝血剤容器34から、入口ポート10から抜かれている全血に抗凝血剤を計量して入れるために使用することができる。弁23の代わりに又は弁23に加えて、蠕動ポンプ(peristaltic pump)又はその他の流れ誘導配置物を、全血に抗凝血剤を添加するため、及び/又は血液を献血者から抜くのを助けるために使用することができる。好ましい態様においては、抗凝血剤が入口ポート10にずっと近いチューブ中の位置において献血者から来る全血中に添加されるように、チューブを修飾することができる。(抗凝血剤に加えて又は抗凝血剤の代わりに、生理的食塩水のような代替流体を、抜かれた全血中に添加することができる。全血が遠心分離された後、血漿を代替流体と共に献血者へ戻すことができる。代替流体は、献血者に、収集される赤血球の体積に置き換わる流体の体積を提供する。全血への代替流体の添加は、抗凝血効果を有する。より大きい抗凝血作用を提供するために、抗凝血剤を代替流体に添加することができる)。
【0015】
ローター21は、好ましくは、可変の総容積及び血液成分が除去されているその同じ時に血液をローターへ導入するのを可能にするための2つのポートを有する。好ましい態様においては、ローターは、上で参照した米国特許第5,733,253号中の図10〜15又は図23〜27中に示されているタイプのものである。
【0016】
図2は、図1に示されている装置中において使用することができるローターの断面図であり、そしてこれは米国特許第5,733,253号の図10〜15中に示されているローターに基づく1つの変種である。このローターは、固定された部分51(これは、回転せず、そしてこれは(図1に示されているように)制御ユニット20上の適切な場所に締め金19によって保持される);回転可能な部分52(これは、制御ユニット中において、つかみ(チャック、chuck)によって保持されそして回転させられる);及び回転シール53(これは、固定された部分と回転可能な部分との間に密閉性を維持する)を含む。回転シールは、好ましくは、米国特許第5,733,253号の図38及び39中に示されている回転シールと同じ方法で作用する。回転シール53によって加えられたシール力は、ローター内部の空気圧の変化によって実質的に影響されない。回転シールは、ベース上に取り付けられ、このベースは、ローターの固定された部分51の一部であり得る。回転シール53は、第1及び第2の堅いシール部材を含み、これらは回転軸の周りを取り囲み、そしてお互いに回転する。米国特許第5,733,253号中に記載されているように、第1の堅いシール部材及びベースは、それらの間に環状の通路を形成し、そして第1の堅いシール部材は、環状の通路を越えて放射状に伸びる段部分を有する。スプリング部材は、回転シールの回転軸の周りを取り囲み、そしてベース及び第1の堅いシール部材に接続され、その結果、スプリング部材は第1の堅いシール部材を第2の堅いシール部材に対して押す力を加える。可撓性のシール部材が回転軸を取り囲み、そして第1の堅いシール部材とベースとの間に流体が流れることを防ぐ。可撓性のシール部材は、環状通路からの圧力が可撓性シール部材及び段部分に力(これらはお互いに釣り合う)を及ぼすように、環状の通路を越えて伸び、そのため、スプリング部材が第1の堅いシール部材を第2の堅いシール部材に対して押す力は、環状通路内の圧力によって実質的に影響されない。
【0017】
ローターの固定された部分は、ローター入口54及びローター出口55を含み、これらはチューブによって使い捨てセットの残りと接続されている。使い捨てセットのチューブは、全血をローター21の入口54へ供給する部分、及び血液成分をローターの出口55から出口ポート35へそしてRBC収集容器28、29へ供給するもう1つの部分を有する。ローター入口54は、一対の流路56へ向かう固定部分51の下の流体の通路に通じ、当該一対の流路56は、ローターの回転可能部分52中にある。流路56は、献血者から来てWBCフィルターを通された血液がローターの内部容積の外周に向かって流れることを可能にする。ローターの内部容積は、部分的に、可撓性の、好ましくは弾性の、ダイヤフラムによって定められているので、ローターは可変の総容積を有する。
【0018】
そのプロセスが終了したときローター中に捕捉されている血液の量を最小化するために、ローター入口53からの流体の連絡を提供するそのような流入流路56は2つだけしか使用されないのが好ましく、そしてローター中のバランスを維持するために、これら2つの流路はお互いに180°の位置で配置されるのが好ましい。別の態様においては、1つの又は2より多くの流入流路56を使用することができる。ローターは内部壁58を含み、この内部壁は、可撓性のダイヤフラム57と共にローターの処理チャンバーを十分に限定する。内部壁58は、その底部表面上に複数の溝を有し(示されていない)、それらの溝は、血液成分がローターの処理チャンバーから流れ出ることを可能にする。好ましい態様においては、内部壁58は、お互いに180°に配置され、そして流入流路56に対して90°のこれらの流出溝の2つを含む。これらの流出溝は、内部壁58を通ってコレクター59に隣接する領域まで上る複数の穴に通じる。これらの穴(示されていない)は、流出溝とコレクター59との間に流体の連絡を提供し、コレクター59は、ローターの固定された部分51の一部である。コレクター59は、処理チャンバーから流れ出る血液成分を収集し、そして血液成分を垂直の通路を通してローター出口55まで上向きに送る。
【0019】
ローター21を保持しているつかみ(チャック)中に真空を生じさせることによって、血液をローター21中に引き入れることができる。或いは、全血をポート10からローター21へ引き入れるために、弁23の代わりに又は弁23に加えて、蠕動ポンプ又はその他の流れ誘導配置物を使用することができる。
【0020】
十分量の全血がローター21に入ったら、ローターは、血液を血漿成分と赤血球成分とに分離するように十分に速く回転させられる。血液が血漿と赤血球とに分離されたら、弁36が開けられ、そして血漿(及び代替流体)がローター21から強く送り出され、そして出口ポート35を通して献血者に戻される。血漿は、濾過された血液がローターへ導入され続けている間に、ローターから除去されることができる。
【0021】
血液の血漿成分は献血者へ戻されることとなっているので、献血者から普通は2単位の赤血球を収集することができる。本産業分野のプラクティスに従って、2単位の赤血球は、2つの別々の容器28及び29中に貯蔵することができる。別の態様においては、2つの容器の代わりに、単一の容器を使用することができる。
【0022】
十分な赤血球が収集されたことが確認されたとき、或いはローターが赤血球で実質的に満たされたとき、ローター中に残っている血漿は全てローター21から追い出される。実質的に全ての血漿がローターから除去されたら、弁36は閉じられ、そして弁27及び25が開けられ、赤血球はローターから強く送り出され、そして弁27及び25を通してRBC貯蔵容器28中へ送られる。白血球はWBCフィルター12によって全血から既に濾別されているので、本発明の装置においては、ローター21とRBC貯蔵容器28及び29との間にWBCフィルターを含める必要がない。
【0023】
RBC貯蔵容器28及び29は、好ましくはバッグであり、そして好ましくはRBC保存料(又は貯蔵溶液)を含む。RBC貯蔵バッグ28及び29は、好ましくは各々1単位の赤血球を保持する。1単位の赤血球がRBC貯蔵容器28に届けられたら、弁25は閉じられ、そして弁26が開けられ、それによって赤血球はRBC貯蔵バッグ29中に流れ込むことができる。弁25、26、27、及び36は、弁23と共に、制御ユニット20によって制御される。(この方法と装置は、代理人の登録番号1611/117を有し、Thomas D. Headleyが発明者として挙げられている“System and Method for Collecting Platelets and Other Blood Components”に関して同時に出願された出願に記載された方法で、血小板が別個に収集されるように修飾されることができる。この同時に出願された出願は、参照によって本明細書中に組み入れられている。)
使用される2つのRBC貯蔵容器28、29の総容積に関連して、使用される遠心分離機ローター21の最大容積に応じて、所望量(好ましくは2単位)の赤血球を得るためには、ローターの充満、血液のRBC成分と血漿成分への分離及びローターが赤血球で満たされるまでのローターからの血漿の強い送り出し、及びその時点でのローターから1つ以上RBC貯蔵容器への赤血球の強い送り出しというサイクルを数回繰り返すことが必要かもしれない。一旦、貯蔵バッグ28、29が赤血球で満たされたら、貯蔵バッグは、貯蔵バッグに通じるチューブを切断しヒートシールすることによって、使い捨てセットの残りの部分から取り外される。
【0024】
上述の方法は、従来技術の血液処理方法と比較して、高度に自動化されている。献血技術者は、使い捨てセットを制御ユニット20中に取り付け、そして入口ポート10及び出口ポート35を献血者の腕に挿入する。技術者は、もちろん、また、カニューレを献血者の腕から取り外し、そして貯蔵バッグに通じるチューブを切断しヒートシールする。方法の残りの工程、即ち、血液又は血液成分の流れを導くために弁(及びポンプ)を制御する工程、ローターが十分に満たされたときを決定する工程、ローターを回転させる工程、ローターから血液成分を強く送り出す工程、及びローター中の血液成分が空になったときを決定する工程、は制御ユニットによって行うことができる。
【0025】
上述したように、制御ユニットの好ましい態様においては、弁23、25、26、27及び36の各々は、ローター21が回転させられる速度と同様に、制御ユニット20によって制御される。弁23、25、26、27及び36の中の幾つかは、単一の弁機構となるように組み合わせてもよい。ローター21の好ましい態様は、ローター21の内部容積を定める延伸可能な弾性のダイヤフラム57を有する。上で参照した米国特許第5,733,253号及び同第5,651,766号中において論じられているように、弾性のダイヤフラム(図2中の項目57)は、弾性のダイヤフラムに加えられる空気圧を変えることによって、ローター21の総容積が変えられることを可能にする。この空気圧もまた、ローター21の総容積を変化させそして制御するために、好ましくは制御ユニットによって制御される。この空気圧は、また、空気圧を十分に増加させることによって流体をローター21から押出すために使用でき、或いは空気圧を十分に減少させることによって流体をローター21に引き込むために使用することができる。
【0026】
図1及び3に示されている使い捨てセット、並びに図1中に示されている制御ユニット20は、好ましい態様において、全血を献血者から抜き、そして血漿を献血者に戻すために、単一のカニューレ又はポートを使用するように修飾することができる。そのような使い捨てセットは図4に示されている。一時貯蔵容器60は、献血者に戻すための分離された血漿成分を保持する。分離された血漿成分は、制御ユニットによって、ローター21からチューブの一部62を通って一時貯蔵容器60に強く送られる。制御ユニットは、好ましくは、ローターの弾性の膜に対する気体圧力を増加させることによって、ローターから血漿を強く送り出す。一旦、血漿がローターから流れ始めると、全血のローターへの継続された導入は、分離された血漿をローターから押出し続ける傾向を有する。所望量の全血が献血者からポート10を通して収集された後(好ましくはローターが赤血球でほとんど一杯になったとき)、全血の収集は一時停止され、そして血漿を一時貯蔵容器60からチューブの別の一部64を通してポート10へそして献血者へ強く送ることができる。制御ユニットには、一時貯蔵容器60からポート10への血漿の流れを生じさせそして制御するための、チューブの部分64で作動する蠕動ポンプのような、手段を設けることができる。使い捨てセットの残りの部分は、全血が分離される前に白血球を全血から濾別することができるようにするための、ポート10からローター21に通じるチューブの別の部分中のWBCフィルター12を含めて、図3に示されている使い捨てセットと同じでよく、抗凝血剤容器34は、チューブのこの同じ部分に結合することができる。好ましい態様においては、抗凝血剤容器は、全血が献血者から抜かれた後できるだけ速く抗凝血剤を全血中に導入するために、ポート10により近いチューブの位置に接続することができる。
【0027】
図4に示されている使い捨てセットを使用する赤血球の収集方法は、全血を献血者から収集し、そして分離された血漿成分を献血者に戻すサイクルを数回含むかもしれない。図5は、1回のそのようなサイクルの工程の概略を示す。各々のサイクルは以下の2つの期間に分けられる:全血が献血者から抜かれる第1の期間71、即ち、抜き出し期間(これは1つの態様において105乃至235秒間継続する)、及び血漿が献血者に戻される第2の期間72、即ち、戻し期間(これは196乃至288秒間継続する)。抜き出し期間71の間、ローター(図4中の項目21)は、献血者からの全血で充満され(工程73)、そしてローターは、血液を血漿成分とRBC成分とに分離するために、回転させられる。血漿は、ローターから一時容器60へ強く送られる(工程74−−もちろん、これらの工程のいくつかは重なっていてもよい)。1つの任意の工程(工程75)においては、代理人の登録番号1611/117を有し、Thomas D. Headleyが発明者として挙げられている“System and Method for Collecting Platelets and Other Blood Components”に関して同時に出願された出願に記載された方法で、血小板が別個に収集されることができる。(前述したように、この同時に出願された出願は、参照によって本明細書中に組み入れられている。)戻し期間72の間、遠心分離機ローターの回転速度を増加させることによって、赤血球は濃縮され(工程76)、そして残りの血漿はローター21から取り出されて一時容器60へ送られる(工程77)。RBC貯蔵溶液を赤血球に添加して、赤血球を希釈してもよい(工程78)。サイクルの最終工程(工程79)では、赤血球が、チューブの部分30を通して2つの貯蔵容器の一方(28又は29)へ送られる。
【0028】
赤血球がローターから貯蔵容器へ移動されたとき、及び一時貯蔵容器中の血漿が献血者へ戻されたとき、サイクルは、抜き出し期間71及びローター充満工程73で再び始まることができる。1つの態様においては、サイクル全体の時間は5乃至8.7分間継続する(40乃至55のヘマトクリット値範囲及び60乃至100ml/分の抜き出し速度範囲を想定して)。20乃至34.8分間の総処置時間につき、4サイクルを行うことができる。
【0029】
図3及び4に示されている使い捨てセット(貯蔵バッグ28、29、フィルター12、遠心分離機ローター21及びチューブ)は、いくつものやり方で構成されることができる。チューブは、流れを誘導し又は蠕動的方法でポンプ輸送するために、制御ユニットによって押し込められ得るチューブのみから成ることができる。或いは、チューブは、制御ユニットによって駆動され得る特殊な弁又はポンプ部品(ポンプ/弁カセット(pumping/valving cassette)のようなもの)を含むことができる。「流れ制御配置物」という用語は、本明細書中において、本発明の装置の様々な部品の間で流体の流れを制御するか又は流体の流れを生じさせるための構造又は装置を意味する。
【0030】
図1に示されている制御ユニット及び図1及び3に示されている使い捨てセットも、出口ポート35を血漿収集容器で置き換えることによって、白血球を含まない血漿の収集、並びに白血球を含まない赤血球の収集を可能にするように、修飾されることができる。
【0031】
本発明が幾つかの好ましい態様を参照しながら説明されてきたが、以下の請求の範囲に記載された本発明の精神と範囲から離れることなく様々な修飾を行い得ることは、当業者には理解されるだろう。
【0032】
以下に、本願発明の好ましい態様を示す。
1.白血球を含まない分離された血液成分を収集する方法であって、当該方法が、
(i)全血を献血者から使い捨てセットへ流れさせるためのポート、(ii)WBCフィルター、(iii)全血が複数の成分に分離される分離容器、(iv)分離された血液成分を貯蔵するための血液成分容器、及び(v)ポート、フィルター、分離容器及び血液成分容器を接続するチューブ、を有する使い捨てセットであって、フィルターが、ポートと分離容器との間に位置しそして白血球を濾別することができる、使い捨てセットを用意すること、
ポートを献血者に接続すること、 献血者から全血をポートを通して抜くこと、 全血をポートからフィルターを通して分離容器へ送り、それによって分離容器に入る前に全血から白血球を濾別すること、
全血を第1の成分と第2の成分とに分離すること、及び
第1の成分と第2の成分の一方を分離容器から血液成分容器へ送ること、
を含む方法。
2.分離容器が遠心分離機である、上項1の方法。
3.遠心分離機のローターが可変の総容積を有する、上項2の方法。
4.遠心分離機ローターに、固定された部分、回転可能な部分、及び固定された部分と回転可能な部分との間に密閉性を提供する回転シールが設けられており、そしてチューブがローターの固定された部分に接続されている、上項3の方法。
5.遠心分離機ローターが、その回転可能な部分中に、ローターの総容積を増加させるように伸びる弾性のダイヤフラム、及びダイヤフラムをローターの固定された部分から分離する内部壁を含む、上項4の方法。
6.赤血球を収集する方法であって、当該方法が、
ポート、フィルター、遠心分離機ローター、RBC容器、及びポート、フィルター、ローター及びRBC容器を接続するチューブを有する使い捨てセットであって、フィルターが、ポートと遠心分離機ローターとの間に位置しそして白血球を濾別することができる、使い捨てセットを用意すること、
ローターを回転させることができるスピナーを有する制御ユニットを用意すること、 ローターをスピナー中に設置すること、
ポートを献血者に接続すること、
ローターをスピナー中に設置した後、献血者から全血をポートを通して抜くこと、 全血をポートからフィルターを通してローターへ送り、それによってローターに入る前に全血から白血球を濾別すること、
全血を第1の成分と第2の成分とに分離するようにスピナーにローターを回転させること、但し、ここで、第1の成分は主に血漿であり、そして第2の成分は主に赤血球である、
ローターが依然として回転している間に、第1の成分をローターから強く送り出すこと、及び 第2の成分をローターからRBC容器へ送ること、
を含む方法。
7.献血者が依然としてポートに接続されている間に、ローターを回転させて血液成分を分離し、そして第1の成分を献血者に戻すことをさらに含む、上項6の方法。
8.遠心分離機ローターが可変の総容積を有する、上項6の方法。
9.遠心分離機ローターが弾性のダイヤフラムを含み、当該ダイヤフラムが伸びてローターの総容積を増加させる、上項8の方法。
10.制御ユニットが、弾性のダイヤフラムに隣接する気体の圧力を変えることによって遠心分離機ローターの容積を変える、上項9の方法。
11.血液を処理するための制御ユニット中において使用するための使い捨てセットであって、当該使い捨てセットが、
ポート、
フィルター、
分離容器、
血液成分容器、及び
ポート、フィルター、分離容器及び血液成分容器を接続するチューブ、
を含み、
フィルターが、ポートと分離容器との間に位置しそして分離の前に白血球を全血から濾別することができる、使い捨てセット。
12.分離容器が、固定された部分、回転可能な部分、及び固定された部分と回転可能な部分との間に密閉性を提供する回転シールを有する可変容積の遠心分離機ローターである、上項11の使い捨てセット。
13.赤血球を収集するための制御ユニット中において使用するための使い捨てセットであって、当該使い捨てセットが、
ポート、
フィルター、
遠心分離機ローター、
RBC容器、
一時貯蔵容器、及び
ポート、フィルター、ローター、容器及び一時貯蔵容器を接続するチューブ、を含み、
フィルターが、ポートと遠心分離機ローターとの間に位置しそして白血球を濾別することができ、遠心分離機ローターが、固定された部分、回転可能な部分、及び固定された部分と回転可能な部分との間に密閉性を提供する回転シールを有し、そして遠心分離機ローターが可変の総容積を有する、使い捨てセット。
14.RBC容器が、ローターと一時貯蔵容器との間のチューブの枝に接続される、上項13の使い捨てセット。
15.遠心分離機ローターに、ローターの容積を定める可撓性のダイヤフラムが設けられている、上項13の使い捨てセット。
16.血液を処理するための装置であって、当該装置が、
血液を献血者から使い捨てセットに導入することを可能にするポート、
全血が複数の成分に分離される分離容器、
ポートとローターとの間の流体通路中に位置し、フィルターを通過する全血から白血球を濾別するフィルターであって、ここで、当該フィルターは、ポートと分離容器との間に位置しそして白血球を濾別することができる、フィルター、及び
分離された血液成分を貯蔵するための血液成分容器であって、分離容器と流路で繋がっている、血液成分容器、
を有する使い捨てセット;及び
血液が分離された後血液成分を分離容器から血液成分容器へ強く送る流れ制御配置物を有する制御ユニット;
を有する装置。
17.分離容器が可変容積の遠心分離機ローターであり、そして制御ユニットがローターを回転させるため及びローターの容積を変えるための手段をさらに含む、上項16の装置。
18.遠心分離機ローターがローターの容積を定める弾性のダイヤフラムを含み、そして制御ユニットが弾性のダイヤフラムに隣接する気体圧力を変えるための手段を含む、上項17の装置。
19.気体圧力を変えるための手段が、ローターに血液を引き込むために、弾性のダイヤフラムに真空をかけるための手段を含む、上項18の装置。
20.献血者から赤血球を収集するための装置であって、当該装置が、
血液を献血者から使い捨てセットに導入することを可能にするポート、
可変の総容積を有する遠心分離機ローター、
ポートとローターとの間の流体通路中に位置し、フィルターを通過する全血から白血球を濾別するフィルター、 血漿を献血者に戻すことを可能にする戻し手段であって、遠心分離機ローターと流路で繋がっている、戻し手段、及び
遠心分離器ローターと流路で繋がっているRBC容器、
を有する使い捨てセット;及び
ローターを保持するスピナーであって、血液を複数の血液成分に分離するようにローターを回転させることができるスピナー、及び
ローターが回転してる間に血液成分をローターから強く送り出す流れ制御配置物、
を有する制御ユニット;
を含む装置。
21.戻し手段が一時貯蔵容器を含む、上項20の装置。
22.制御ユニットがローターの容積を変えるための手段をさらに含む、上項20の装置。
23.遠心分離機ローターがローターの容積を定める弾性のダイヤフラムを含み、そして制御ユニットが弾性のダイヤフラムに隣接する気体圧力を変えるための手段を含む、上項22の装置。
24.気体圧力を変えるための手段が、ローターに血液を引き込むために、弾性のダイヤフラムに真空をかけるための手段を含む、上項23の装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球を含まない分離された血液成分を収集する方法であって、当該方法が、 (i)全血を献血者から使い捨てセットへ流れさせるためのポート、(ii)WBCフィルター、(iii)全血が複数の成分に分離される分離容器、(iv)分離された血液成分を貯蔵するための血液成分容器、及び(v)ポート、フィルター、分離容器及び血液成分容器を接続するチューブ、を有する使い捨てセットであって、フィルターが、ポートと分離容器との間に位置しそして白血球を濾別することができる、使い捨てセットを用意すること、
ポートを献血者に接続すること、
献血者から全血をポートを通して抜くこと、
全血をポートからフィルターを通して分離容器へ送り、それによって分離容器に入る前に全血から白血球を濾別すること、
全血を第1の成分と第2の成分とに分離すること、及び
第1の成分と第2の成分の一方を分離容器から血液成分容器へ送ること、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106008(P2012−106008A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15322(P2012−15322)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2000−604896(P2000−604896)の分割
【原出願日】平成12年3月16日(2000.3.16)
【出願人】(594202615)ヘモネティクス・コーポレーション (22)
【氏名又は名称原語表記】Haemonetics Corporation
【住所又は居所原語表記】400 Wood Road,Braintree,Massachusetts 02184,United Statesof America
【Fターム(参考)】