説明

血液浄化装置、血液浄化装置の制御方法、及びプログラム

【課題】血液浄化装置の表示手段における測定圧力値と圧力警報値との関係を示す表示部の視認性を向上する。
【解決手段】血液浄化装置1は、血液浄化処理を行う血液回路10と、血液回路10の所定の圧力を測定する圧力測定手段11と、圧力測定手段11によって測定される測定圧力に対する圧力警報値が設定される設定手段12と、圧力測定手段11によって測定された測定圧力値と設定手段12に設定された圧力警報値との関係を表示部70に表示する表示手段13と、設定手段12に設定された圧力警報値に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値または当該最大値に所定の数値を加算した値になり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値または当該最小値から所定の数値を減算した値になるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置、血液浄化装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者の体内から血液を取り出しこの血液から病因物質や特定の白血球等を除去して体内に戻す血液浄化治療が実施されている。このような血液浄化治療においては、体内から取り出した血液を体外で循環させて体内に戻すための血液回路と、血液回路上に設けられ、血液を送液する血液ポンプと、血液回路の所定の圧力を測定する圧力測定手段等を有する血液浄化装置が使用されている。
【0003】
血液浄化治療が安全に施行されるために、血液回路の圧力が常時モニタリングされている。モニタリングされた測定圧力が、予め設定されている圧力警報値の上限値と下限値の間の範囲(正常範囲)であれば、正常状態と判断される。当該正常範囲を超えると異常状態と判断され、警報を発生し、原因が取り除かれるまで治療は中断される。
【0004】
ところで、血液回路の圧力は患者の個体差、血液浄化装置の運転条件、周囲環境などによって変化するため、圧力警報値も状況に応じて使用者が自由に設定できることが望ましい。また、モニタリングされた測定圧力と圧力警報値との関係はグラフなどによって視覚化され、装置のディスプレイに表示されることが望ましい。
【0005】
従来のディスプレイには、圧力警報値を設定できる設定手段や、測定圧力値と圧力警報値との関係を表示するグラフなどの表示部が設けられている。図11に示すように表示部100は、圧力値の目盛方向に一定の長さを有し、表示部100の一端の上限値は、ディスプレイに設定可能な最大値(例えば400mmHg)に予め固定され、表示部100の他端の下限値は、ディスプレイに設定可能な最小値(例えば−400mmHg)に予め固定されている。これにより、表示部100に表示される圧力値の範囲は、設定可能な最小値から設定可能な最大値まで(例えば−400mmHg〜400mmHg)となる。なお、圧力を表示するディスプレイに関する技術が開示された文献として、特許文献1、2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−248793号公報
【特許文献2】特開2004−313370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ディスプレイにおいて、図11に示すように個々の患者に適合する圧力警報値Pmax,Pminを設定し、表示部100に表示した場合に、表示部100の表示範囲に対し正常範囲A(圧力警報値の上限値Pmaxと下限値Pminの間の範囲)が狭くなることがある。この場合、血液浄化処理中、現在の圧力を示す測定圧力値Ptと圧力警報値Pmax,Pminとの関係が視認し難しくなる。特に、血液浄化処理のためのディスプレイには、安全確保等のため血液浄化処理の状態を示す複数種類の圧力情報、血流情報等の多数の情報を表示する必要があるため、それぞれの表示部100の寸法が比較的小さく正常範囲Aが狭くなり、測定圧力値と圧力警報値の関係が視認し難い。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ディスプレイなどの表示手段における測定圧力値と圧力警報値との関係を示す表示部の視認性を向上できる血液浄化装置、血液浄化装置の制御方法及びプログラムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、血液浄化処理を行う血液回路と、前記血液回路の所定の圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段によって測定される圧力に対する圧力警報値が設定される設定手段と、前記圧力測定手段によって測定された測定圧力値と前記設定手段に設定された圧力警報値との関係を表示部に表示する表示手段と、前記設定手段に設定された圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が前記圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が前記圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段と、を有する、血液浄化装置である。
【0010】
本発明によれば、設定手段に設定された圧力警報値に連動して、表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値、前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、表示部の圧力値の範囲が変動されるので、表示部の長さを有効に利用し、圧力警報値の上限値から下限値までの範囲をより広く表示できる。これにより、測定圧力値と圧力警報値との関係を示す表示部の視認性を向上できる。
【0011】
前記最大値に加算される所定の数値は1〜50mmHgの何れかの値であり、前記最小値から減算される所定の数値は1〜50mmHgの何れかの値であってもよい。また、前記最大値に加算される所定の数値は、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力単位の50の整数倍になる値であり、前記最小値から減算される所定の数値は、前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力単位の50の整数倍になる値であってもよい。
【0012】
前記圧力警報値は、複数段階の圧力警報値を有し、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が前記複数段階の圧力警報値のうちの最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、前記表示部に表示できる圧力値の下限値が前記複数段階の圧力警報値のうちの最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるようにしてもよい。血液浄化処理の安全性を向上するため、圧力警報値を複数段階に設定する場合があるが、かかる場合においても、表示部の長さが有効に用いられるため、測定圧力値と圧力警報値との関係の視認性を確保できる。
【0013】
別の観点による本発明は、血液浄化処理を行う血液回路と、前記血液回路上に位置し、血液を送液する血液ポンプと、前記血液回路の所定の圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段によって測定される圧力に対する限界値を示す第1の圧力警報値と、前記血液ポンプによって前記血液回路内に血液を送液中に前記圧力測定手段により測定された基準圧力値を基準に決定される第2の圧力警報値と、前記第1の圧力警報値又は前記第2の圧力警報値の少なくともいずれかを基準にして決定される第3の圧力警報値と、が設定される設定手段と、前記圧力測定手段によって測定された測定圧力値とともに、当該測定圧力値と前記第1、第2および第3の圧力警報値との関係を表示部に表示する表示手段と、前記設定手段に設定された第1の圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が第1の圧力警報値の上限値または当該上限値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が第1の圧力警報値の下限値または当該下限値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段と、前記圧力測定手段によって測定される測定圧力値をモニタリングして、前記第1の圧力警報値、前記第2の圧力警報値、又は前記第3の圧力警報値のいずれかに達したときに警報を発する警報発生手段と、を有する、血液浄化装置である。
【0014】
本発明によれば、設定手段に設定された、圧力限界値を示す第1の圧力警報値に連動して、表示部に表示できる圧力値の上限値が第1の圧力警報値の上限値または当該上限値に所定の数値を加算した値、表示部に表示できる圧力値の下限値が第1の圧力警報値の下限値または当該下限値から所定の数値を減算した値になるように、表示部の圧力値の範囲が変動されるので、表示部の長さを有効に利用し、第1の圧力警報値の上限値から下限値までの範囲をより広く表示できる。これにより、測定圧力値と、第1〜第3の圧力警報値との関係を示す表示部の視認性を向上できる。特に、第1の圧力警報値よりも狭い領域に表示される第2の圧力警報値や第3の圧力警報値について大きく表示されるので、これらの圧力警報値の視認性が飛躍的に向上する。
【0015】
前記第2の圧力警報値は、前記設定手段に前記基準圧力値からの上限幅又は下限幅の少なくとも一方の値が設定されることにより設定されるようにしてもよい。
【0016】
前記第3の圧力警報値は、前記設定手段に前記第1の圧力警報値又は前記第2の圧力警報値の少なくとも一方からの上限幅又は下限幅の少なくとも一方の値が設定されることにより設定されるようにしてもよい。
【0017】
別の観点による本発明は、圧力測定手段によって測定された血液回路の所定の圧力値と、設定手段に設定された圧力警報値との関係を表示手段の表示部に表示するステップと、前記設定手段に設定された圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動するステップと、を有する、血液浄化装置の制御方法である。
【0018】
別の観点による本発明は、圧力測定手段によって測定された血液回路の所定の圧力値と、設定手段に設定された圧力警報値との関係を表示手段の表示部に表示するステップと、前記設定手段に設定された圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、血液浄化装置の表示手段における測定圧力値と圧力警報値との関係を示す表示部の視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】血液浄化装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】設定画面の一例を示す説明図である。
【図3】表示画面の一例を示す説明図である。
【図4】血液浄化装置の制御方法のフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態における設定画面の一例を示す説明図である。
【図6】第2の実施の形態における表示画面の一例を示す説明図である。
【図7】血液浄化処理開始時の表示画面の一例を示す説明図である。
【図8】表示部が扇型の場合の表示画面の一例を示す説明図である。
【図9】表示部の他の例を示す説明図である。
【図10】表示部の他の例を示す説明図である。
【図11】改良前の表示部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血液浄化装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0022】
(第1の実施形態)
血液浄化装置1は、例えば血液浄化処理を行う血液回路10と、血液回路10の所定の圧力を測定する圧力測定手段11と、圧力測定手段11によって測定される測定圧力に対する圧力警報値が設定される設定手段12と、圧力測定手段11によって測定された測定圧力値と設定手段12に設定された圧力警報値との関係を、一定の長さを有する後述する表示部70に表示する表示手段13と、設定手段12に設定された圧力警報値に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値(表示部70の一端の値)が圧力警報値の最大値、表示部70に表示できる圧力値の下限値(表示部70の他端の値)が圧力警報値の最小値になるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段14と、を有している。
【0023】
血液回路10上には、例えば血液を送液する血液ポンプ20と、血液を浄化する血液浄化器21が設けられている。
【0024】
圧力測定手段11は、例えば血液回路10の血液浄化器21より下流側に設けられた、血液回路10内の圧力を検出する圧力センサ30等を有している。これにより、血液浄化器21の出口圧を測定できる。なお、圧力測定手段11は、血液ポンプ20の上流側の脱血圧、血液浄化器21の入口圧等を測定してもよい。
【0025】
設定手段12、表示手段13、圧力範囲変動手段14及び警報発生手段15は、例えば一つの制御装置40として構成されている。
【0026】
図2に示すように制御装置40の設定画面50は、タッチパネルであり、設定手段12を構成している。設定画面50には、圧力測定手段11によって測定される血液回路10内の測定圧力に対する圧力警報値を入力し設定する設定部51がある。この圧力警報値は、圧力測定手段11によって測定される測定圧力値に依存しない。設定画面50には、設定された圧力警報値(圧力上限値Pmaxと圧力下限値Pmin)と、測定圧力値Ptとの関係を表示する設定表示部52がある。設定表示部52は、例えば圧力値を一次元表示し、目盛方向(図2の左右方向)の一端に圧力上限値Pmaxが表示され、目盛方向の他端に圧力下限値Pminが表示され、その間に測定圧力値Ptが表示されている。
【0027】
図3に示すように制御装置40の表示画面60は、表示手段13を構成している。表示画面60には、圧力測定手段11によって測定された測定圧力値Ptと設定手段12に設定された圧力警報値Pmax、Pminとの関係を表示する表示部70がある。表示部70は、細長の長方形状を有し、圧力値を一次元表示したグラフであり、目盛方向(図3の左右方向)に一定の長さを有している。
【0028】
圧力範囲変動手段14は、設定手段12に設定された圧力警報値Pmax、Pminに連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値である圧力上限値Pmaxになり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値である圧力下限値Pminになるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動する。警報発生手段15は、圧力測定手段11によって測定される測定圧力値Ptをモニタリングして、測定圧力値Ptが圧力警報値Pmax、Pminに達したときに警報を発する。なお、これらの設定手段12、表示手段13、圧力範囲変動手段14及び警報発生手段15の動作は、制御装置40のメモリなどの記憶部に記憶されたプログラムをCPUなどの演算部において実行することによって実現される。
【0029】
次に、血液浄化装置1の制御方法について説明する。図4は、当該血液浄化装置1の制御方法のフローチャートである。先ず、設定手段12に設定された圧力警報値に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の圧力上限値Pmaxになり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の圧力下限値Pminになるように、表示部70に表示される圧力値の範囲が変動される(ステップS1)。次に、図3に示すように圧力測定手段11によって測定された血液回路10の測定圧力値Ptと、設定手段12に設定された圧力警報値Pmax、Pminとの関係が表示部70に表示される(ステップS2)。その後、血液浄化処理が開始され、圧力測定手段11によって測定される測定圧力値Ptがモニタリングされ、測定圧力値Ptが、圧力警報値の圧力上限値Pmax、圧力下限値Pminのいずれかに達したときに警報が発せられる(ステップS3)。
【0030】
本実施の形態によれば、設定手段12に入力された圧力警報値に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力上限値Pmaxになり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力下限値Pminになるので、表示部70の寸法を最大限有効に利用し、圧力警報値の上限値から下限値までの範囲をより広く表示できる。これにより、測定圧力値Ptと圧力警報値との関係を示す表示部70の視認性を向上できる。また、表示手段13に例えば血液浄化処理の状態を示す多数の圧力情報等が表示され、各々の表示部70の長さが限られる場合であっても、表示部70の視認性を最大限確保できる。
【0031】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態にかかる血液浄化装置1は、次に示す部分以外、第1の実施の形態と同様の構成を有している。なお、装置の各構成部分の符号は、第1の実施の形態と同じものを用い、同じ構成部分の説明は省略する。
【0032】
血液浄化装置1は、複数段階の圧力警報値を有し、表示部70に表示できる圧力値の上限値が複数段階の圧力警報値のうちの最大値になり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が複数段階の圧力警報値のうちの最小値になる。
【0033】
図1に示すように血液浄化装置1は、例えば3段階の第1の圧力警報値P1、第2の圧力警報値P2及び第3の圧力警報値P3を設定する設定手段12と、圧力測定手段11によって測定された測定圧力値Ptとともに、測定圧力値Ptと第1、第2および第3の圧力警報値P1〜P3との関係を表示部70に表示する表示手段13と、設定手段12に設定された第1の圧力警報値P1に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が第1の圧力警報値P1の上限値になり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が第1の圧力警報値P1の下限値になるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段14と、圧力測定手段11によって測定される測定圧力値Ptをモニタリングして、第1の圧力警報値P1、第2の圧力警報値P2、又は第3の圧力警報値P3のいずれかに達したときに警報を発する警報発生手段15と、を有している。
【0034】
第1の圧力警報値P1は、圧力測定手段11によって測定される所定の測定圧力に対して予め設定される限界値を示す。第1の圧力警報値P1は、測定圧力値Ptに依存せず予め定められる絶対警報値である。第2の圧力警報値P2は、血液ポンプ20によって血液回路10内に血液を送液中に圧力測定手段11により測定された基準圧力値Psを基準に決定される相対警報値である。基準圧力値Psは、例えば血液浄化処理開始してから所定時間経過後の圧力変動が小さくなった時点での測定圧力Ptが採用される。第3の圧力警報値P3は、第1の圧力警報値P1又は第2の圧力警報値P2の少なくともいずれかを基準にして決定され、例えば測定圧力Ptがいずれかの圧力警報値に近づいたことを知らせるためのものである。
【0035】
例えば図5に示すように設定手段12を構成する設定画面50には、圧力測定手段11によって測定される血液回路10内の圧力に対する第1の圧力警報値P1を設定するための圧力上限値P1max、圧力下限値P1minと、第2の圧力警報値P2を設定するための上限幅H1、下限幅H2と、第3の圧力警報値P3を設定するためのプレ警報上限幅H3、プレ警報下限幅H4を入力し設定する設定部51がある。また、設定画面50には、例えば設定された第1の圧力警報値P1〜第3の圧力警報値P3と、測定圧力値Ptとの関係を表示する設定表示部52がある。設定表示部52は、例えば圧力値を一次元表示し、目盛方向(図5の左右方向)の一端に第1の圧力警報値P1の圧力上限値P1maxが表示され、目盛方向の他端に圧力下限値P1minが表示され、その間に基準圧力値Ps、第2の圧力警報値P2の第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2min、第3の圧力警報値P3の上限プレ警報値P3max、下限プレ警報値P3minが表示されている。
【0036】
図6に示すように表示手段13の表示画面60には、圧力測定手段11によって測定された測定圧力値Ptと、基準圧力値Ps、第1の圧力警報値の圧力上限値P1max及び圧力下限値P1min、第2の圧力警報値の第2圧力上限値P2max及び第2圧力下限値P2min、第3の圧力警報値の上限プレ警報値P3max及び下限プレ警報値P3minとの関係が表示される表示部70がある。
【0037】
圧力範囲変動手段14は、設定手段12に設定された第1の圧力警報値P1に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が第1の圧力警報値P1の圧力上限値P1maxになり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が第1の圧力警報値P1の圧力下限値P1minになるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動する。表示部70には、基準圧力値Psを基準とした上限幅H1、H2によって第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2minが表示される。また、表示部70には、第2圧力下限値P2minを基準としたプレ警報上限幅H3によってプレ警報上限値P3maxが表示され、第2圧力上限値P2maxを基準としたプレ警報下限幅H4によってプレ警報下限値P3minが表示される。警報発生手段15は、圧力測定手段11によって測定される測定圧力値Ptをモニタリングして、測定圧力値Ptが圧力上限値P1max、圧力下限値P1min、第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2min、プレ警報上限値P3max、プレ警報下限値P3minのいずれかに達したときに警報を発する。
【0038】
なお、例えばこれらの設定手段12、表示手段13、圧力範囲変動手段14及び警報発生手段15の動作は、制御装置40のメモリなどの記憶部に記憶されたプログラムをCPUなどの演算部において実行することによって実現される。
【0039】
次に、本実施の形態における血液浄化装置1の制御方法について説明する。先ず、設定手段12に設定された第1の圧力警報値P1に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が第1の圧力警報値P1の圧力上限値P1maxになり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の圧力下限値P1minになるように、表示部70に表示される圧力値の範囲が変動される(図4に示すステップS1)。次に、圧力測定手段11によって測定された血液回路10の測定圧力値Ptと、設定手段12によって設定された圧力上限値P1max、圧力下限値P1min、第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2min、プレ警報上限値P3max、プレ警報下限値P3minとの関係が表示部70に表示される(図4に示すステップS2)。なお、圧力上限値P1max、圧力下限値P1minは、設定手段12において設定部51に直接入力されて設定され、第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2min、プレ警報上限値P3max及びプレ警報下限値P3minは、設定部51に上限幅或いは上限幅を入力することにより基準圧力値Psに基づいて設定されている。その後、血液浄化処理が開始され、圧力測定手段11によって測定される測定圧力値Ptがモニタリングされ、測定圧力値Ptが、圧力上限値P1max、圧力下限値P1min、第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2min、又はプレ警報上限値P3max、プレ圧力警報下限値P3minのいずれかに達したときに警報が発せられる(図4に示すステップS3)。
【0040】
本実施の形態によれば、設定手段12に設定された第1の圧力警報値P1に連動して、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力上限値Pmaxになり、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力下限値Pminになるので、表示部70の長さを最大限有効に利用し、第1の圧力警報値P1の上限値から下限値までの間の範囲がより広く表示される。これにより、測定圧力値Ptと、第1〜第3の圧力警報値P1〜P3との関係を示す表示部70の視認性を向上できる。特に、第1の圧力警報値P1よりも狭い領域に表示される第2の圧力警報値P2や第3の圧力警報値P3についてより広いスペースに表示されるので、これらの圧力警報値の視認性が飛躍的に向上する。
【0041】
なお、本実施の形態において、表示部70に第1の圧力警報値P1、第2の圧力警報値P2、第3の圧力警報値P3が表示されていたが、それ以外の圧力警報値が表示されてもよい。また、第3の圧力警報値P3は、第2の圧力警報値P2を基準に定められていたが、第1の圧力警報値P1を基準に定められていてもよいし、両者を基準に定められていてもよい。また、第2の圧力警報値P2と第3の圧力警報値P3は、上限値又は下限値のいずれかであってもよい。
【0042】
血液浄化処理の開始時の圧力変動が比較的大きい時に、第2の圧力警報値P2を表示せずに、図7に示すように表示部70に、第1の圧力警報値P1(圧力上限値P1max、圧力下限値P1min)と、当該第1の圧力警報値P1を基準として決定される第3の圧力警報値P3(プレ警報上限値P3max、プレ警報下限値P3min)が表示され、血液浄化処理の開始から所定時間経過後の圧力が比較的安定している時に、図6に示したように表示部70に、第1の圧力警報値P1と、第2の圧力警報値P2(第2圧力上限値P2max、第2圧力下限値P2min)と、当該第2の圧力警報値P2を基準として決定される第3の圧力警報値P3(プレ警報上限値P3max、プレ警報下限値P3min)が表示されてもよい。
【0043】
以上の実施の形態では、表示部70が一定方向に直線状に延びるグラフであったが、例えば図8に示すような扇型のグラフであってもよい。このとき、測定圧力値Ptを示す境界線の両側を異なる色や模様にしてもよい。その他、表示部70は、円グラフ、波型グラフ等他の形状のグラフであってもよい。
【0044】
また、以上の実施の形態では、圧力範囲変動手段14が、設定手段12に設定された圧力警報値に連動して、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値になり、かつ表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値になるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動していたが、例えば図9に示すように圧力範囲変動手段14は、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値Pmaxに所定の数値α1を加算した値になり、かつ表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値Pminから所定の数値α2を減算した値になるように、表示部70に表示される圧力値の範囲を変動してもよい。
【0045】
例えば圧力警報値の最大値Pmaxに加算される所定の数値α1は、1〜50mmHg(圧力単位がPaであれば、例えば133.3〜6666.1Pa)の何れかの値であり、圧力警報値の最小値Pminから減算される所定の数値α2は、1〜50mmHg(圧力単位がPaであれば、例えば133.3〜6666.1Pa)の何れかの値である。
【0046】
かかる場合、測定圧力値Ptと圧力警報値との関係を示す表示部70の視認性を向上できる。また、例えば測定圧力値Ptが圧力警報値を超えた場合に、どの程度超えたかを認識することが可能になる。なお、かかる例において、所定の数値α1とα2は、同じ数値であってもよいし、異なる数値であってもよい。また、所定の数値α1とα2を設定手段12により設定できるようにしてもよい。
【0047】
また、図10に示すように圧力警報値の最大値Pmaxに加算される所定の数値α1は、表示部70に表示できる圧力値の上限値が圧力単位の50の整数倍、例えば50×n(nは整数)mmHgになる値であり、圧力警報値の最小値Pminから減算される所定の数値α2は、表示部70に表示できる圧力値の下限値が圧力単位の50の整数数、例えば50×k(kは整数)mmHgになる値であってもよい。かかる場合、表示部70の両端の数値が50の整数倍(mmHg)となるので、表示部70の視認性を向上できる。なお、図9及び図10は、かかる所定の数値α1とα2を設定する例を上記第1の実施の形態にかかる血液透析装置1に適用したものであったが、第2の実施の形態にかかる血液透析装置1に適用してもよい。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1 血液浄化装置
10 血液回路
11 圧力測定手段
12 設定手段
13 表示手段
14 圧力範囲変更手段
15 警報発生手段
20 血液ポンプ
21 血液浄化器
30 圧力センサ
40 制御装置
50 設定画面
51 設定部
52 設定表示部
60 表示画面
70 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化処理を行う血液回路と、
前記血液回路の所定の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段によって測定される圧力に対する圧力警報値が設定される設定手段と、
前記圧力測定手段によって測定された測定圧力値と前記設定手段に設定された圧力警報値との関係を表示部に表示する表示手段と、
前記設定手段に設定された圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が前記圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が前記圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段と、を有する、血液浄化装置。
【請求項2】
前記最大値に加算される所定の数値は1〜50mmHgの何れかの値であり、前記最小値から減算される所定の数値は1〜50mmHgの何れかの値である、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記最大値に加算される所定の数値は、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力単位の50の整数倍になる値であり、前記最小値から減算される所定の数値は、前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力単位の50の整数倍になる値である、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記圧力警報値は、複数段階の圧力警報値を有し、
前記表示部に表示できる圧力値の上限値が前記複数段階の圧力警報値のうちの最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、前記表示部に表示できる圧力値の下限値が前記複数段階の圧力警報値のうちの最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になる、請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
血液浄化処理を行う血液回路と、
前記血液回路上に位置し、血液を送液する血液ポンプと、
前記血液回路の所定の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段によって測定される圧力に対する限界値を示す第1の圧力警報値と、前記血液ポンプによって前記血液回路内に血液を送液中に前記圧力測定手段により測定された基準圧力値を基準に決定される第2の圧力警報値と、前記第1の圧力警報値又は前記第2の圧力警報値の少なくともいずれかを基準にして決定される第3の圧力警報値と、が設定される設定手段と、
前記圧力測定手段によって測定された測定圧力値とともに、当該測定圧力値と前記第1、第2および第3の圧力警報値との関係を表示部に表示する表示手段と、
前記設定手段に設定された第1の圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が第1の圧力警報値の上限値または当該上限値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が第1の圧力警報値の下限値または当該下限値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動する圧力範囲変動手段と、
前記圧力測定手段によって測定される測定圧力値をモニタリングして、前記第1の圧力警報値、前記第2の圧力警報値、又は前記第3の圧力警報値のいずれかに達したときに警報を発する警報発生手段と、を有する、血液浄化装置。
【請求項6】
前記第2の圧力警報値は、前記設定手段に前記基準圧力値からの上限幅又は下限幅の少なくとも一方の値が設定されることにより設定される、請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記第3の圧力警報値は、前記設定手段に前記第1の圧力警報値又は前記第2の圧力警報値の少なくとも一方からの上限幅又は下限幅の少なくとも一方の値が設定されることにより設定される、請求項5または6に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
圧力測定手段によって測定された血液回路の所定の測定圧力値と、設定手段に設定された圧力警報値との関係を表示手段の表示部に表示するステップと、
前記設定手段に設定された圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動するステップと、を有する、血液浄化装置の制御方法。
【請求項9】
圧力測定手段によって測定された血液回路の所定の測定圧力値と、設定手段に設定された圧力警報値との関係を表示手段の表示部に表示するステップと、
前記設定手段に設定された圧力警報値に連動して、前記表示部に表示できる圧力値の上限値が圧力警報値の最大値または前記最大値に所定の数値を加算した値になり、かつ前記表示部に表示できる圧力値の下限値が圧力警報値の最小値または前記最小値から所定の数値を減算した値になるように、前記表示部に表示される圧力値の範囲を変動するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate