説明

血液適合性、及び/又は治癒促進性を有する上塗りを備えた、薬物溶出性の埋込型医療デバイス

本発明は、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分を付加されて有するポリマーでコーティングされた埋込型医療デバイス、及び血管疾患の治療における当該デバイスの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、有機化学、高分子科学、材料科学、及び医療デバイスの分野に関する。特に、本発明は、血管疾患を治療するための血液適合性、及び/又は治癒促進性(prohealing)の部分を備えた生体吸収性のコーティングを有する医療デバイスに関する。
【0002】
[背景技術]
経皮経管冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty)(PTCA)は、心臓疾患を治療するための一般的な手技である。PTCAに関連する問題として、バルーンが収縮した後に導管(conduit)を破綻させ、また閉塞させるおそれのある、内膜フラップ又は破れた動脈上皮の形成が挙げられる。更に、血栓症及び動脈の再狭窄は、手術後数ヶ月において発生するおそれがあり、これは別の血管形成術又は外科的バイパス手術を必要とする場合がある。動脈上皮の崩壊による動脈の部分的又は全面的な閉塞を低減させ、また血栓症及び再狭窄の発症を低減させるために、血管の開通性を維持するようにステントを血管内に埋め込むことができる。
【0003】
ステントは、機械的介入に留まらず、生物学的治療を行うための媒体としても使用される。機械的介入の場合、ステントは足場(scaffolding)としての役割を果たし、物理的に開通した状態に保ち、希望する場合には流路の壁を広げるように機能する。ステントに薬物を施すことにより、特に薬物溶出性ステント、DESを用いることにより、生物学的治療を実現することができる。DESは、患者身体の特定部位に対する治療用物質の局所的投与を可能にする。これにより、重篤な副作用の減少及び軽減、並びにより好ましい全体的な結果がもたらされうる。
【0004】
しかし、血管形成術後の長期動脈開通性を改善するための冠動脈ステントの初期の使用では、合併症として、亜急性血栓症(SAT)の発生率が高かった(R.A.Schatzら、Circulation 1991、83:148〜161頁)。SATの薬理学的なコントロールが改善されたにもかかわらず、ステントの閉塞の可能性はまだ重大な問題である。更に、DESの出現と共に新たな問題が浮上した。すなわち、ステントを配置した後に、長時間経過してから凝血塊が形成される遅発性ステント血栓症である。この凝血塊の形成は、治癒遅延に起因する可能性が最も高いと推定されたが、この治癒遅延は、細胞増殖抑制剤の使用の副作用によるものと仮定された。
【0005】
また、治癒の遅延及びポリマーの分解も、ステントの不完全密着及び超過敏反応と関連付けられてきた。
【0006】
必要なものとして、亜急性血栓症、遅発性ステント血栓症、及び治癒遅延に関連するその他の問題を除去できない場合には、これらを改善するための血液適合性及び/又は治癒促進性が改善された埋込型医療デバイスが挙げられる。本発明はそのような埋込型医療デバイスを提供する。
【0007】
[発明の概要]
したがって、1つの態様において、本発明は埋込型医療デバイスに関連するが、この埋込型医療デバイスは、
デバイス本体と、
前記デバイス本体上に配置された任意選択のプライマー層と、
前記デバイス本体、又は選択された場合には前記プライマー層上に配置された薬物貯蔵層を備え、
前記薬物貯蔵層は、
少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;又は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー、並びに、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーのブレンド;又は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはその誘導体との高分子量コポリマー;及び、
1種又は複数の治療薬剤と、
を含み、
前記薬物貯蔵層が、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド又はメソラクチドと、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマーのみを含む場合には、前記埋込型医療デバイスは更に、一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド又はメソラクチドと、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーを含んだ上塗り層を備える。
【0008】
本発明の1つの態様において、埋込型医療デバイスはステント である。
【0009】
本発明の1つの態様において、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分はポリヒドロキシアルキルを含む。
【0010】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層又は上塗り層は、下記式
【化1】


を有するポリヒドロキシルアルキル部分を含み、
式中、Lはリンカーを含み、m及びnは0〜1の値を有し、m+n=1である。また、pは1〜200の整数である。
【0011】
本発明の1つの態様において、ポリヒドロキシルアルキルは、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、グリコール、ポリアルキルグリコール、及びポリグリコールからなる群より選択される。
【0012】
本発明の1つの態様において、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分はペプチドを含む。
【0013】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層又は上塗り層は、下記式
【化2】


を有するペプチド部分を含み、
式中、Lはリンカーを含み、m及びnは0〜1の値を有し、m+n=1である。
【0014】
本発明の1つの態様において、ペプチドは、RGD、環状RGD(cRGD)、及びRDG模倣体からなる群より選択される。
【0015】
本発明の1つの態様において、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分はホスホリルコリンを含む。
【0016】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層又は上塗り層は、下記式:
【化3】


を有するホスホリルコリン部分を含み、
式中、Lはリンカーを含み、m及びnは、m+n=1となるように0〜1の値を有する。
【0017】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層ポリマーは約50,000〜約500,000ダルトンの分子量を有する。
【0018】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層は、約1μm〜約10μmのコーティング厚を有する。
【0019】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層内の、ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は約1.0:0.5〜約1.0:10.0である。
【0020】
本発明の1つの態様において、薬物の用量は約5〜200μg/cm〜約20〜100μg/cmである。
【0021】
本発明の1つの態様は、
埋込型医療デバイスを、必要とする患者の血管内に配置するステップを含む、血管疾患を治療する方法であって、
前記デバイスが、
デバイス本体と、
前記デバイス本体上に配置された任意選択のプライマー層と、
前記デバイス本体上、又は選択された場合には前記プライマー層上に配置された薬物貯蔵層と、を備え、
前記薬物貯蔵層は、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;又は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー、並びに、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーの混合物;又は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;及び、1種又は複数の治療薬剤を含み、
前記薬物貯蔵層は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド又はメソラクチドと、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマーのみを含む場合に、前記埋込型医療デバイスは、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド又はメソラクチドと、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーを含んだ上塗り層をさらに有する。
【0022】
本発明の1つの態様において、埋込型医療デバイスはステントである。
【0023】
本発明の1つの態様において、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分はポリヒドロキシアルキルを含む。
【0024】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層又は上塗り層は、
【化4】


を有するポリヒドロキシルアルキル部分を含み、
式中、Lはリンカーを含み、m及びnは、m=n=1となるように0〜1の値を有し、また、pは1〜約200の整数である。
【0025】
本発明の1つの態様において、ポリヒドロキシルアルキルは、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、グリコール、ポリアルキルグリコール、及びポリグリコールからなる群より選択される。
【0026】
本発明の1つの態様において、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分はペプチドを含む。
【0027】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層又は上塗り層は、下記式:
【化5】


を有するペプチド部分を含み、
式中、Lはリンカーを含み、そしてm及びnは、m+n=1となるように0〜1の値を有する。
【0028】
本発明の1つの態様において、ペプチドは、RGD、環状RGD(cRGD)、及びRDG模倣体からなる群より選択される。
【0029】
本発明の1つの態様において、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分はホスホリルコリンを含む。
【0030】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層又は上塗り層は、
【化6】


を有するホスホリルコリン部分を含み、
式中、Lはリンカーを含み、そしてm及びnは、m+n=1となるように0〜1の値を有する。
【0031】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層ポリマーは約50,000〜約500,000ダルトンの分子量を有する。
【0032】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層ポリマーは、約1μm〜約10μmのコーティング厚を有する。
【0033】
本発明の1つの態様において、薬物貯蔵層内の、ポリマーに対する薬物の重量比は約1.0:0.5〜約1.0:10.0である。
【0034】
本発明の1つの態様において、薬物の用量は約5〜200μg/cm〜約20〜100μg/cmである。
【0035】
本発明の1つの態様において、血管疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0036】
本発明の1つの態様において、血管疾患は再狭窄である。
【0037】
本発明の1つの態様において、血管疾患は不安定プラークである。
【0038】
本発明の1つの態様において、血管疾患は末梢血管障害である。
【0039】
本発明の1つの態様において、血管疾患は遅発性ステント血栓症である。
【0040】
[発明の詳細な説明]
本明細書で用いる単数形には、別途明記しない限りその複数形が含まれ、その逆も成り立つ。すなわち、「1つの(a)」及び「その(the)」は、この単語が修飾する1つ又は複数のあらゆるものを指す。例えば、「a therapeutic agent」には、1つのこのような薬物、2つのこのような薬物等が含まれる。同様に、「the layer」は、1つ、2つ、又はこれよりも多い層を指し、また「the polymer」は、1つのポリマー又は複数のポリマーを意味しうる。同様に、「layers」及び「polymers」等の単語は、1つの層又はポリマーの他、複数の層又はポリマーを、そのようなことは意図していないと明記していない、又は文脈から明白でない限り指し、但し、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で用いる、「埋込型医療デバイス」とは、外科的若しくは内科的に患者体内に、又は医学的介入により体腔内に全体的又は部分的に導入される、あらゆる種類のデバイスであって、手術後にその場に配置することが意図されたデバイスを指す。埋込の期間は本質的に永久でありえ、すなわち、患者の余命期間、デバイスが生分解されるまで、又は物理的に除去されるまで、その場に留めることが意図されうる。埋込型医療デバイスの例として、埋込型心臓ペースメーカー及び徐細動器、前者に用いるリード及び電極、神経、膀胱、括約筋及び横隔膜用刺激装置等の埋込型臓器刺激装置、蝸牛インプラント、プロテーゼ、血管グラフト、自己拡張型ステント、バルーン型拡張ステント、ステントグラフト、グラフト、人工心臓弁、及び脳脊髄液シャントが、これらに限定されずに挙げられる。
【0042】
治療薬剤の局所送達専用に特別に設計され、意図された埋込型医療デバイスは、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
本明細書で用いる「デバイス本体」とは、デバイスそれ自身の製造に用いられた材料とは異なるコーティング又は材料の層が施されていない外部表面を有する、完全に組み立て済みの埋込型医療デバイスを指す。但し、「外部表面」とは、身体組織又は体液と接触するように空間的に配置したあらゆる表面を意味する。「デバイス本体」の一般的な例は、BMS、すなわちベアメタルステントである。これは、名称が示唆するように、身体組織又は体液と接触するあらゆる表面上を、このステントの作製に用いられた金属とは異なるいかなる材料の層でも被覆されていない完全組立て済みの使用可能なステントである。もちろん、デバイス本体は、BMSのみに留まらず、デバイス本体の製造に用いられた材料の如何を問わずあらゆる非被覆デバイスを指す。
【0044】
本質的に任意の材料、すなわち、埋込型医療デバイスの製造に有用であることが現在知られている材料、及び将来同様に有用であることが判明する可能性のある材料を用いて作製された埋込型医療デバイスは、本発明のコーティングと共に用いることができる。例えば、本発明で有用な埋込型医療デバイスは、1種又は複数の生体適合性を有する金属又はその合金から、これらに限定されることなく作製することができ、これには、コバルト−クロム合金(ELGILOY、L−605)、コバルト−ニッケル合金(MP−35N)、316Lステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR108、ニッケル−チタン合金(NITINOL)、タンタル、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、金、及びこれらの複合物が、これらに限定されずに含まれる。
【0045】
埋込型医療デバイスは、生体適合性及び生物学的安定性を有し、又は生分解性のあるポリマーからも作製することができ、後者の用語には生体吸収性及び/又は生体侵食性が含まれる。
【0046】
本明細書で用いる「生体適合性を有する」とは、合成された状態のままでこれがまったく処理されていない状態、及びその分解状態、すなわちその分解生成物の両方の状態において、生体組織にまったく有害ではない、又は少なくとも最低限度で有害である;生体組成をまったく損傷しない、又は少なくとも最低限度で且つ回復可能に損傷する;及び、生体組織に免疫反応をまったく引き起こさない、又は少なくとも最低限度で、及び/又は制御可能に引き起こすポリマーを意味する。
【0047】
生体適合性を有し、比較的生体安定性のある有用なポリマーとして、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリウレタン、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリビニル、ハロゲン化ポリビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル、ポリアクリロニトリル、アルキド樹脂、ポリシロキサン、及びエポキシ樹脂が、これらに限定されずに挙げられる。
【0048】
生体適合性、生分解性を有するポリマーには、天然のポリマー、例えばコラーゲン、キトサン、アルギン酸、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース誘導体、スターチ、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、グリコサミノグリカン、多糖類、及びエラスチン等が、これらに限定されずに含まれる。
【0049】
生体適合性、生分解性を有する1種又は複数の合成又は半合成ポリマーも、本発明で有用な埋込型医療デバイスを製造するのに用いることができる。本明細書で用いる合成ポリマーとは、実験室ですべて作製されるポリマーを指し、一方、半合成ポリマーは、実験室で科学的に修飾された天然のポリマーを指す。合成ポリマーの例として、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアンヒドリド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリオキシメチレン、ポリ(エステル−アミド)、及びポリイミドが、これらに限定されずに挙げられる。
【0050】
上記ポリマーのブレンド及びコポリマーも使用することができ、それらも本発明の範囲に含まれる。本明細書の開示に基づき、当業者は、これら埋込型医療デバイス、及び本発明のコーティングと併用して有用と考えられる材料であって、前記医療デバイスの製造を可能にする材料を識別するであろう。
【0051】
現時点において、本発明のコーティングで用いるための好ましい埋込型医療デバイスはステントである。
【0052】
ステントとは、一般的に、患者の体内においてその場で組織を保持するために用いられるあらゆるデバイスを指す。但し、特に有用なステントは、疾患又は障害により血管が狭窄又は閉塞したときに、患者体内の血管の開通性を維持するために用いられるものであり、前記疾患又は障害には、腫瘍(例えば、胆管、食道、気管/気管支等の)、良性膵臓疾患、冠動脈疾患、頚動脈疾患、及び末梢動脈疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症等、再狭窄、及び不安定プラークが、これらに限定されずに含まれる。不安定プラーク(VP)は、炎症によって引き起こされたと考えられる動脈壁への脂肪の蓄積を指す。VPは、破裂して凝血塊の形成を引き起こすおそれのある薄い線維性被膜で覆われている。ステントは、VP近傍の血管壁を強化するのに用いることができ、そのような破裂に対する防御物としての役割を果たすことができる。ステントは、神経、頚動脈、冠動脈、肺、大動脈、腎、胆管、腸骨、大腿骨、及び膝窩、並びにその他の末梢血管の脈管構造において、これらに限定されずに使用可能である。ステントは、血栓症、再狭窄、出血、血管の剥離又は穿孔、動脈瘤、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖(anastomotic proliferation)、胆管閉塞、及び尿管閉塞の治療又は予防において、これらに限定されずに使用可能である。
【0053】
上記使用に加えて、治療薬剤を患者体内の特定の治療部位に局所送達するためにも、ステントを用いることができる。実際、治療薬剤の送達をステントの唯一の目的とすることができ、又はステントは、付随的な利益をもたらす薬物送達について上記で議論したもの等、別の用途を主目的とすることができる。
【0054】
開通性を維持するために用いられるステントは、通常、圧縮された状態で標的部位に送達され、次いでステントが挿入された血管に合わせて拡張される。標的位置に到達したら、ステントは自己拡張し、又はバルーンにより拡張することができる。どのような場合においても、ステントの拡張に起因して、その上のコーティング物はいずれも柔軟で、伸張することができなければならない。
【0055】
本明細書で用いる、「任意選択で」とは、この用語により修飾された要素が存在しても存在しなくてもよいことを意味する。例えば、以下に限定することなく、「任意選択の」プライマー層(pl)、薬物貯蔵層(dr)、及び「任意選択の」上塗り層(tc)をその上にコーティングしたデバイス本体(db)とは、以下に限定することなく、db+dr、db+pl+dr、db+dr+tc、及びdb+pl+dr+tcを指す。
【0056】
本明細書で用いる、「プライマー層」とは、デバイス本体の製造に用いられた材料に関して良好な接着特性を示し、このデバイス本体上にコーティングされることとなるあらゆる材料に関して良好な接着特性を示すポリマー又はポリマーブレンドからなるコーティングを意味する。したがって、プライマー層は、デバイス本体とデバイス本体に貼付される材料との間に位置する中間層としての役目を果たし、したがって、デバイス本体に直接施される。プライマーの例には、アクリレートポリマー及びメタクリレートポリマーが、これらに限定されることなく挙げられ、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)が現時点で好ましいプライマーである。プライマーのいくつかの追加例として、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル−co−ビニルアルコール)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレンアミン、ポリアリルアミン、キトサン、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、及びパリレンCが、これらに限定されることなく挙げられる。
【0057】
本明細書で用いる場合、指示した基材、例えば以下に限らず、デバイス本体又は別の層「の上に配置された」層として記述される材料とは、現時点において好ましくは、実質的に適用された基材の露出表面全体に直接施された材料の比較的薄いコーティングを意味する。「露出表面」とは、使用時に身体組織又は体液に接触すると考えられる基材表面を意味する。但し、「〜の上に配置された」とは、材料の薄い層が、基材に施された介在層に、介在層が存在しなかったとすれば、前記材料が実質的に基材の露出表面全体を被覆するように施されることを意味する。
【0058】
本明細書で用いる場合、「薬物貯蔵層」とは、1種若しくは複数の治療薬剤が平滑に施された層、又は、層の3次元構造中に1種若しくは複数の治療薬剤を分散したポリマー若しくはポリマー混合物の層のいずれかを指す。ポリマー薬物貯蔵層は、1つの機構又は別の機構によって、例えば、以下に限らず溶出によって又はポリマーが生分解した結果、治療物質が前記層から周囲を取り巻く環境に放出されるように設計される。また、本発明の目的に照らせば、薬物貯蔵層は速度制御層としての役目も果たす。本明細書で用いる、「速度制御層」とは、環境への治療薬剤又は薬物の放出を制御するポリマー層を指す。任意のポリマーを、本発明の薬物貯蔵層を形成するために用いることができるが、特に、血液適合性及び/又は治癒促進性部分を含む上塗り層を使用する場合には、本発明の現時点で好ましい実施態様において、薬物貯蔵層は、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはその誘導体との高分子量コポリマー;又は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー、並びに、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、若しくはメソラクチドと、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーとのブレンド;又は、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、若しくはメソラクチドとε−カプロラクトン若しくはその誘導体と、の高分子量コポリマーとを含む。
【0059】
血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で修飾されうる、その他の多くの生体適合性、疎水性のポリマーは、本発明の薬物貯蔵層及び/又は上塗り層として用いることができると理解される。すべてのこのようなポリマーは本発明の範囲に含まれるが、このポリマーの際立った特徴は、薬物貯蔵層、分離した速度制御層、又は上塗り層であるかを問わず、埋込型医療デバイス上に施されたコーティングの最外層に、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が実際に含まれていることである。
【0060】
本明細書で用いる、「疎水的」とは、水への親和性を欠いたポリマーを指す。すなわち、水を排斥する、水に溶解しない、水と混ざり合わない、又は水に濡れない、又はごく限られた程度にしかそのようにはならない傾向があり、水を吸収しない、又は、やはりごく限られた程度にしかそのようにはならない傾向がある。ポリマーについては、一般的に疎水性は、ポリマー骨格内のアルキル基の含量が増加すると、すなわち、ポリマーの構成単位の1つ又は複数においてアルキル基の含量が増加すると、増大する。ポリマーの疎水性は、ポリマー表面上に蒸留水の液滴を置いたときの静的接触角を求めることにより明らかにすることができる。接触角が大きいほど、ポリマーは高い疎水性を有する。一般的には、接触角が90℃より大きければ、疎水的なポリマーであることを表している。当業者によく知られているので、本明細書では詳細内容又はそのような測定法は示されない。
【0061】
本明細書で用いる、「接触角」とは、周囲条件下の固体表面上で平衡形をとる液相状態にある液滴の接線の角度として定義される。
【0062】
本明細書で用いる、「疎水性」は、ヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメーターδを用いて評価することができる。用語「ヒルデブランド溶解度パラメーター」とは、物質の凝集エネルギー密度を表すパラメーターを指す。δパラメーターは次式より求められる。
δ=(ΔE/V)1/2
ここで、δは溶解度パラメーター、(cal/cm1/2であり、
ΔEは、蒸発エネルギー、cal/moleであり、
また、Vはモル体積、cm/moleである。
【0063】
したがって、本発明を実践する場合には、材料が疎水性か又は親水性かは相対的である。異なる材料間において、他方のδ値に比較してより低いヒルデブランド値(δ)値を有するものはいずれも疎水性とみなされ、より高いヒルデブランド値(δ)値を有する材料は親水性とみなされる。1つの実施態様では、疎水的と親水的との境界を規定するδ値は、約9.9と10.1(cal/cm1/2の間でありうる。この実施態様によれば、疎水的とは、約9.9(cal/cm1/2以下のδ値を有するものとして定義され、また親水的とは約10.1(cal/cm1/2以上のδ値を有するものとして定義される。約9.9と10.1(cal/cm1/2との間のδ値を有する材料は、親水性材料及び疎水性材料の両方により特徴付けられる振る舞いを示すことができる。このような材料を「両親媒性」と定義する。疎水性を決めるためのヒルデブランド値以外の測定値は、当業者に知られており、同じ結果が得られるようにヒルデブランド値と同様の方法で用いることができる。
【0064】
適する疎水性ポリマーとして、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアセタール)、例えば、ポリ(ビニルブチラール)(例えば、BUTVAR)等、ポリ(メタ)アクリレート、例えばポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸n−プロピル)、ポリ(メタクリル酸イソ−プロピル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、非極性モノマーとn−メタクリル酸ブチルとのコポリマー(例えば、ポリ(メタクリル酸エチル−co−メタクリル酸n−ブチル)等)、ポリ(メタクリル酸イソ−ブチル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ(アクリル酸n−プロピル)、ポリ(アクリル酸イソ−プロピル)、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸イソ−ブチル)、スチレン−ブタジエン−スチレン トリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリ ブロックコポリマー(例えば、テキサス州ヒューストンのShell Oil Co.から入手可能なKRATON)、スチレン−イソブチレン−スチレン トリブロックコポリマー、パリレンC、有機シリコンポリマー(例えば、ELASTEON)、及び、ハロゲン化(例えば、フッ素化又は塩素化)ポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)(例えば、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのAtofina Chemicals,Inc.から入手可能なKYNAR)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、ベルギー国、ブリュッセルのSolvay S.A.より入手可能なSOLEF)、ポリ(エチレン−co−ヘキサフルオロプロペン)、及びポリテトラフルオロエチレン(デラウェア州、ウィルミントンのE.I.Du Pont de Nemours&Co.より入手可能)を含む様々なグレードのアモルファスTEFLON、BUTVARはポリ(ビニルブチラール)(ミズーリ州、セントルイスのSolutia,Inc.より入手可能)の商標名であり、ELASTEONは、メチレンジフェニルジイソシアネート、1,4−ブタンジオール、ポリヘキサメチレングリコールと及び、末端がカルビノールであるポリジメチルシロキサン(オーストラリア、チャッツウッドのAorTech Biomaterials Co.製造)のブロックコポリマーの商標名であり、ポリ[トリメリチリミド−L−チロシン−co−セバシン酸−co−1,3−ビス(パラ−カルボキシフェノキシ)プロパン]p(TMIT−SBA−PCPP)、ポリ[1,6−ビス(パラ−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン−co−ジ−オルソ−カルボキシフェノキシセバシン酸無水物]p(PCPX−OCPSA)、ポリ[1,3−ビス(パラ−カルボキシフェノキシ)プロパン−co−サリチル酸−co−セバシン酸]p(PCPP−SBA−SA)、ポリ(マレイン酸−co−セバシン酸)、p(MA−SBA)、ポリ(L−乳酸−co−L−アスパラギン酸)、p(LLA−LAspA)、ポリ(DL−乳酸−co−L−アスパラギン酸)、p(DLLA−LAspA)、ポリ(L−乳酸)pLLA、ポリ(DL−乳酸)pDLLA、ポリ(L−乳酸−co−エチレングリコール)p(LLA−EG)、ポリ(DL−乳酸−co−エチレングリコール)p(DLLA−EG)、ポリ(エチレングリコール−co−テレフタル酸ブチレン)p(EG−BT)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)p(HOXPE)、ポリ(1,10−デカンジオール−co−L−乳酸)p(DCD−LLA)、ポリ(1,10−デカンジオール−co−D,L−乳酸)p(DCD−DLLA)、ポリ(1,2,6−ヘキサントリオール−co−トリメチルオルソ酢酸)p(HTOL−TMAC)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)(PHV)、ポリ(ヒドロキシ−酪酸−吉草酸)(PHBV)、ポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)及びポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)など、これらに限定されずに挙げられる。
【0065】
本明細書で用いる、「血液適合性」とは、血液又は血液成分にほとんど、好ましくはまったく危害をもたらさない、デバイス表面の特性を指す。一般的に、本発明の特定のデバイスに関する血液適合性のレベルを確認するために、ISO(国際標準化機構)10993に記載されている試験を用いることができる。
【0066】
本明細書で用いる、「治癒促進性」とは、本発明の医療デバイスを移植した部位における治癒プロセスを促進する部分を指す。有用な治癒促進性部分として、上皮前駆細胞、一酸化窒素、血管内皮増殖、及び17−b−エストラジオールが、これらに限定されることなく挙げられる。
【0067】
本明細書で用いる、「約(about)」、「本質的に(essentially)」、「実質的に(substantially)」等の、近似を表すあらゆる単語は、これらに限定されず、そのように修飾された要素が、この用語によって修飾された要素がその通りである必要がなく、普通の当業者の一人によって、やはりそのような要素として認識されるはずであると想定される要素であることを意味する。一般的に、本発明の目的に照らせば、これは、そのように修飾された要素が、本発明の範囲から逸脱せずに、記載内容から少なくとも±15%変化しうることを意味する。
【0068】
本明細書で用いる、用語「構成単位」とは、ポリマーを構成する反復単位を指す。例えば、本発明のポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)において、構成単位は、L−ラクチドに由来する−OCH(CH)C(=O)−、及びε−カプロラクトンに由来する−OCH(CHC(=O)−である。本発明の目的に照らせば、現時点で好ましいポリマーに関する構成単位の重量比は、約70:30〜約50:50である。
【0069】
本明細書で用いる「リンカー」とは、血液適合性の基及び/又は治癒促進性の基をポリマー骨格に結びつける、又は「リンク」させるように、少なくとも1つの官能基が、本明細書のポリマー骨格上の官能基と反応することができ、異なる官能基が、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分にある官能基と反応することができる多官能性の部分を指す。
【0070】
本明細書で用いる、「血液適合性及び/又は治癒促進性」のフレーズ中の「及び/又は」とは、両方の特性を有する化学的部分、又は1つ若しくはもう一方の特性を示す個別の部分のいずれかを指す。本発明の血液適合性及び/又は治癒促進性を有するポリマーの場合、このポリマーはその骨格に付加された両方の特性を有する化学的部分を有することができ、これはその骨格に付加された特性のうちの1つを示す個別の部分を有することができ、これはその骨格に両方付加された2つの異なる部分、すなわち両特性のうちの1つを有する部分ともう一方の特性を有する第2の部分、を有することができ、又はこれら前者の任意の組合せでありうる。
【0071】
本明細書で用いる、[[−Y−]/[−Z−]は、ランダムコポリマー、規則的に変化するコポリマー、又はブロックコポリマー、現時点で好ましくはランダムコポリマーを指す。本明細書で用いる文字「n」及び「m」は、構成単位Y及びZのモル分率を表しており、すなわち、m及びnのそれぞれは、m+n=1となるように0〜1の値を有し、mは約0.01〜約0.99、及びnは約0.99〜約0.01である。mが約0.5〜約0.8であるのが現時点で好ましい。mが約0.65〜約0.75であるのが現時点で最も好ましい。文字「x」は、ポリマー内の配列の多重度、すなわち外側カッコ内部分の反復数を表している。
【0072】
本明細書で用いる、「上塗り層」とは、最外層、すなわち外部環境と接触する層であり、及び他の層全体を被覆する層を指す。上塗り層は薬物貯蔵層とは異なる別の層でありえ、又は、薬物貯蔵層が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分を含む場合には、薬物貯蔵層そのものが最外層でありえ、したがって、コーティングの上塗り層を構成することができる。デバイスにより優れた親水性をもたらし、デバイスにより優れた潤滑性を付与するために、又は単に下層の物理的保護材として、分離した上塗り層を施すことができる。薬物貯蔵層が乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、又はメソラクチドと、ε−カプロラクトン又はその誘導体との高分子量コポリマーを含む場合には、埋込型医療デバイスは、更に、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、又はメソラクチドと、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーを含む上塗り層を有する。本発明の目的に照らせば、最外層は、薬物貯蔵層であろうと上塗り層であろうと、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分を含まなければならない。現時点で好ましい実施態様では、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分は、ポリヒドロキシアルキル、ホスホリルコリン、及び/又はペプチドを含む。また、その他の天然ポリマー又はリコンビナントポリマーも、治癒促進性の特性をもたらすことができ、これにはエラスチン、コラーゲン、ラミニン、及び多糖類が、これらに限定されることなく含まれる。
【0073】
本発明の薬物貯蔵層又は上塗り層のいずれかを形成するために用いられる、現時点で好ましいポリマーには、親水性の血液適合性及び/又は治癒促進性のペンダント基を備えた疎水性ポリマー骨格を有するポリマーが、これに限定されずに含まれる。本発明の疎水性ポリマー骨格を形成するために用いられる、現時点で好ましいポリマーは、少なくとも2つのモノマーを含むコポリマーであり、そのうちの1つはL−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、及びメソラクチドからなる群より選択される。第2のモノマーは、ラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4,6−トリオキサスピロ[4,4]ノナン及びトリメチルカーボネートからなる群より選択される。現時点で好ましい、本発明の疎水性ポリマー骨格は、ポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)及びポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)である。
【0074】
ポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)がもたらす、生体適合性及び生分解性と物理的強度との組合せは、医療デバイスの用途として有用である。しかし、主にポリマーの疎水的な性質に起因して、ポリマーが単純であるということは、機能性及び物理的特性において限界を呈する。疎水性ポリマーを分岐させ、及び疎水性ポリマーのペンダント基を機能化すると、ポリマー骨格に沿って機能性が付与されることにより、物理特性及び化学特性を変化させる特有の機会がもたらされる。機能化したラクトンの重合、又は重合後の修飾、又はこれら2法を組み合わせることにより、ポリマーにペンダントを付加して機能化を図ることができる。分岐及び/又はペンダントにより機能化することは、粘度、溶解度、親水性、接着性、及び血液適合性を含め、物理特性及び化学特性を調節するのに有用となりうる。疎水性ポリマーを、親水性ペンダント基を有するように修飾することができる。このような親水基は血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分となる。適する親水性、血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分としては、ポリヒドロキシアルキル、ホスホリルコリン、及びペプチドが、これらに限定されることなく挙げられる。
【0075】
ポリヒドロキシアルキルの好適例として、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、グリコール、ポリアルキルグリコール、及びポリグリコールが、これらに限定されることなく挙げられる。
【0076】
血液適合性及び治癒促進性の部分としてホスホリルコリン(PC)を有することの優位性は、その表面化学に基づく。すなわち、PCは、血液の血球にある脂質二重層構造の外側の血液接触面に類似する両性イオン的な機能を有する。PCは、血液適合性及び/又は治癒促進性の特性、非血栓誘発性、動脈組織許容性、及び長期インビボ安定性等の数々の有利な特性を有する。PC含有ポリマーは、PCの頭部基の両性イオンの性質に起因して極めて親水性で、非常に多くの水分子を引き付けている。更に、最外層にあるPC含有ポリマーを含むコーティングは、有害な炎症反応を誘発させにくい傾向を有する。
【0077】
ポリペプチドArg−Gly−Asp(RGD)は、ヒト上皮細胞の接着に関する生物活性因子であることが明らかとなり、したがって、治癒促進特性を示すと期待される。RGDそれ自身に加え、環状RGD(cRGD)及びRGD模倣体、並びに上皮細胞において差次的に発現しているその他の接着受容体に対してRGDと同様に結合することができる小分子は、本発明の範囲に含まれる。RGD模倣体は、RGD又はcRGDの修飾により調整可能であるが、これらに限定されない。ペプチド模倣体の合成を含め、ペプチド合成は十分に成文化されており、例えばコンビナトリアルケミストリーを用いてすぐにでも実現可能である。cRGD又はRGD模倣体のいくつかの例として、IIb/IIIbアンタゴニスト等のVアンタゴニスト(B.S. Coller、Thromb. Haemost. 2001、86:427〜443頁(レビュー))が挙げられ、その一例は、アブシキシマックス(Abciximax)(R.Blindt、J.Mol.Cell.Cardiol.2000、32:2195〜2206頁)、XJ735(S.S.Srivastvaら、Cardiovasc.Res.1997、36:408〜428頁)、抗−3−インテグリン抗体F11、cRGD(M. Sajidら、Am. J. Physiol. Cell Physiol., 2003、285:C1330〜1338頁)、及びラミニンから誘導されたSIKVAV(M. H. Fittkauら、Biomaterials、2005、26:167〜174頁)、ラミニンから誘導されたYIGSR(S. Kouvroukoglouら、Biomaterials、2000、21:1725〜1733頁)、KQAGDV、及びVAPG(B. K. Mann、B.K.、J. Biomed. Mater. Res. 2002、60:86〜93頁)等のその他の配列である。
【0078】
血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分を付加することができる、本発明の現時点での好ましいポリマーは、ポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)及びポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)である。本発明で用いられる、現時点で好ましい親水性、血液適合性及び/又は治癒促進性のある部分は、ポリヒドロキシアルキル、ホスホリルコリン、及びペプチドである。
【0079】
血液適合性及び/又は治癒促進性の特性を有するポリマーを含めることに加え、本発明の埋込型医療デバイスにコーティングすることにより、1種又は複数の治療薬剤を、薬物貯蔵層及び可能性として上塗り層にも含めることができる。
【0080】
本明細書で用いる、「治療薬剤」とは、疾患に罹患した患者に治療上有効な量を投与したときに、患者の健康及び福祉に対して有益な治療効果を有するあらゆる物質を指す。患者の健康及び福祉に対する有益な治療効果には、(1)疾患の治癒、(2)疾患の進行遅延、(3)疾患の退行促進、又は(4)疾患の1つ又は複数の症状の緩和が、これらに限定されずに含まれる。また、本明細書で用いる治療薬剤には、ある疾患に特に罹患しやすいことが知られている、又は疑われている患者に、予防上有効な量を投与したときに、患者の健康及び福祉に対して有益な予防効果を有するあらゆる物質も含まれる。患者の健康及び福祉に対する有益な予防効果には、(1)最初に、疾患の発現の予防又は遅延、(2)予防上有効な量として用いられる物質と同じ、又は異なる可能性のある物質の治療上有効な量により退行したレベルが実現されたら、そのようなレベルに疾患を維持すること、(3)予防上有効な量として用いられる物質と同じ、又は異なる可能性のある物質の治療上有効な量で一連の治療が完了した後の疾患の再発防止又は遅延が、これらに限定されずに含まれる。
【0081】
本明細書で用いる、用語「薬物」及び「治療薬剤」は交換可能に使用される。
【0082】
本明細書で用いる、「治療」とは、血管疾患に罹患していることが知られている、又は疑われている患者に、治療薬剤の治療上有効な量を投与することを指す。「治療上有効な量」とは、患者が罹患していることが知られている、又は疑われている血管疾患に関して、治癒的又は緩和的でありうる有益な効果を患者の健康及び福祉に対して有することとなる治療薬剤の量を指す。治療上有効な量は、単回ボーラスとして、間欠的なボーラスチャージとして、短期、中期、若しくは長期的な持続放出製剤として、又はこれらの任意の組合せとして投与されうる。本明細書で用いる、短期持続放出とは、治療薬剤の治療上有効な量を約数時間〜約3日にわたり投与することを指す。中期持続放出とは、治療薬剤の治療上有効な量を約3日〜約14日にわたり投与することを指し、長期とは、治療上有効な量を、約14日を超える任意の期間にわたり送達することを指す。
【0083】
本明細書で用いる、「血管疾患」とは、心臓、脳、及び腕、脚、並びに腎臓及び肝臓等の、但し、これらに限定されない末梢器官に向けて及びこれらから血液を輸送する血管、主に動脈及び静脈の疾患を指す。特に、「血管疾患」は、冠動脈系、頚動脈系、及び末梢動脈系を指す。治療可能な疾患とは、単独の治療プロトコールとしての、又は外科的介入等のその他の手法に対する付加物としての、いずれか一方の治療薬剤を用いた治療に反応しやすいあらゆるものである。この疾患は、以下に限定せず、アテローム性動脈硬化症、不安定プラーク、再狭窄、又は末梢動脈疾患でありうる。
【0084】
「アテローム性動脈硬化症」とは、脂肪性物質、コレステロール、細胞排出物、カルシウム、及びフィブリンが動脈の内層又は内膜上に堆積することを指す。平滑筋増殖及び脂質の集積の後に、堆積プロセスが続く。更に、動脈のアテローム硬化部位に移動する傾向のある炎症性物質が、この条件を助長すると考えられている。内膜上に物質が蓄積すると、その結果、狭窄と呼ばれるプロセスである、大動脈内腔を閉塞させる線維性(アテローム性)のプラーク形成が生じる。狭窄がかなり重篤になると、特定の動脈により器官に供給される血液供給が枯渇し、その結果、罹患動脈が頚動脈の場合には脳卒中、その動脈が冠動脈の場合には心臓発作、その動脈が末梢動脈である場合には臓器機能の喪失を引き起こす。
【0085】
「再狭窄(Restenosis)」とは、狭窄を取り除くために血管形成術又は他の外科手術が以前実施された部位で、又はその近傍で生じた動脈の再狭窄(re−narrowing)又は閉塞を指す。平滑筋増殖に起因するのが一般的であるが、時に血栓症を伴う。血管形成術により開通された血管の開通性を維持するための埋込型ステントが出現する前は、再狭窄は、手術後3〜6ヶ月以内に患者の40〜50%で生じた。ステント以前の血管形成術後の再狭窄は、主に平滑筋増殖に起因した。手術部位の血管痙攣、解離、及び血栓症に起因する急性再閉塞の問題もあった。ステントは血管痙攣に起因した急性閉塞をなくし、解離に起因した合併症を大幅に低減させた。一方、抗血栓性のアブシキシマブ(abciximab)及びエピファバチド(epifabatide)等のIIb〜IIIaの抗血小板薬を使用したことにより、(ステント配置それ自体が、血栓症を引き起こす可能性があるものの)手術後凝固の発生が低減した。また、ステント配置部位は、移植部位における異常な組織増殖に起因して再狭窄も起こしやすい。更に、この再狭窄形成は、ステント配置後3〜6ヶ月に生じる傾向もあるが、抗凝固薬の使用によって影響を受けない。したがって、この種類の再狭窄を緩和し、好ましくは除去するための代替療法が継続して求められてきた。ステント配置部位において様々な治療薬剤を放出する、薬物溶出性ステント(DES)が、しばらく用いられてきた。今日まで、このようなステントは、長さ40mm未満の送達界面(全長部)を含み、またいずれの場合においても、罹患部位周辺の非罹患部位の血管の管腔表面に接触しないことが意図され、またほとんどの場合、接触しない送達界面を有する。
【0086】
「不安定プラーク」とは、血栓イベントを引き起こす可能性があり、通常、動脈内腔から分離した非常に薄い壁として特徴付けられるアテローム性のプラークを指す。壁が薄いが故に、プラークを破裂しやすくしている。プラークが破裂すると、通常、脂肪リッチなプラークからなる内核が血液に曝露され、曝露されたプラーク成分に対して血小板及び血漿タンパク質が接着し、活性化されることにより、致命的となりうる血栓イベントを引き起こす可能性がある。
【0087】
「不安定プラーク」の現象は、近年心臓疾患の治療に関する新たな挑戦を生み出した。血流を阻害する閉塞性のプラークとは異なり、不安定プラークは動脈壁内部に発生するが、症状を生み出す動脈内腔を本質的に狭めてしまう特徴を有することなく発生することが多い。したがって、血管造影等の心臓疾患を検出する従来の方法では、動脈壁内部への不安定プラークの成長を検出することはできない。
【0088】
不安定プラークを特徴付けうる固有の組織学的特徴として、脂質含量の増加、マクロファージ、泡沫細胞、及びTリンパ球含量の増加、並びにコラーゲン及び平滑筋細胞(SMC)含量の低下が挙げられる。この線維性アテローム型の不安定プラークは、線維性被膜に覆われたリポタンパク質の大きな脂質プールを有する「柔らかいもの(soft)」として呼ばれることが多い。線維性被膜は主にコラーゲンを含むが、コラーゲン濃度の低下とマクロファージ由来酵素による分解が組み合わされて、予期しえぬ状況下でそのような病変の線維性被膜の破裂を引き起こす可能性がある。破裂すると、組織因子を含むと考えられる脂質コア内容物が動脈の血流と接触し、動脈を完全に塞いで急性冠症候群(ACS)イベントを引き起こすおそれのある凝血塊形成を引き起こす。この種類のアテローム性動脈硬化症は、プラーク破裂の予測不能な傾向から、「不安定(vulnerable)」という用語を生み出した。周方向応力、せん断応力、及び屈曲応力をもたらす血流力学及び心臓の力は、線維性アテローム型の不安定プラークの崩壊を引き起こす可能性がある。このような力は、血流や心臓の鼓動に関連したインビボの力の他、朝ベッドから起き上がる等の単純な動作の結果として増大する可能性がある。線維性アテローム型におけるプラークの不安定性は、主として次の因子により求められる:(1)脂質コアの大きさと均一性;(2)脂質コアを覆う線維性被膜の厚さ;及び(3)線維性被膜内の炎症及び修復。
【0089】
「血栓症」とは、血管又は心室内に生じた凝血塊(血栓)の形成又は存在を指す。破断し、身体の別の部分に移動する凝血塊を塞栓(embolus)と呼ぶ。凝血塊が心臓に血液を送る血管を塞ぐ場合、心臓発作を引き起こし、凝血塊が脳に血液を送る血管を塞ぐ場合には、脳卒中を引き起こす。
【0090】
末梢血管疾患は、一般的に、炎症及び組織損傷等の状態によって引き起こされた血管の構造変化により引き起こされる。末梢血管疾患のサブセットは末梢動脈疾患(PAD)である。PADは、それが動脈壁の内層又は内膜上への脂肪の蓄積に起因するということにおいて、頚動脈や冠動脈疾患と同様な状態である。ちょうど、頚動脈の閉塞が脳への血流を制限し、冠状動脈の閉塞が心臓への血流を制限するように、末梢動脈の閉塞は、腎臓、胃、上肢、下肢及び足への血流制限を引き起こす可能性がある。
【0091】
適する治療薬剤として、抗増殖薬、抗炎症薬、抗新生物薬及び/又は抗分裂薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗フィブリン薬、及び抗トロンビン薬、細胞増殖抑制剤又は抗増殖薬、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化薬、及び当業者に既知のその他の生物活性物質が、これらに限定されずに挙げられる。
【0092】
適する抗増殖薬には、アクチノマイシンD、又はその誘導体若しくは類似体が、これらに限定されずに含まれ、すなわち、アクチノマイシンDは、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCとしても知られている。抗増殖薬は、天然タンパク質系薬剤、例えば細胞毒素又は合成分子等であってもよく、すべてのタキソイド類、例えばタキソール、ドセタキセル、及びパクリタキセル、パクリタキセル誘導体等、すべてのオリムス薬、例えばマクロライド系抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造的誘導体及び機能的類似体、エベロリムスの構造的誘導体及び機能的類似体、FKBP−12媒介mTOR阻害剤、バイオリムス、パーフェニドン等、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ(co−drug)、及びこれらの組合せであってもよい。代表的なラパマイシン誘導体及び類似体としては、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(EVEROLIMUS(エベロリムス)(登録商標))、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、又は40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0093】
適する抗炎症薬として、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、又はこれらの組合せが、これらに限定されずに挙げられる。いくつかのの実施態様では、抗炎症薬としては、クロベタゾール、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、α−アミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリゾン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサル、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルキアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダプ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、二酪酸メクロリゾン、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、パーフェニドン、ピロキシカム、桂皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラクナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス、ピメクロリムス(pimecorlimus)、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組合せが、これらに限定されずに挙げられる。また、抗炎症薬は、生物学的炎症シグナル分子等に対する抗体を含め、炎症促進性シグナル分子の生物学的阻害剤ともなりうる。
【0094】
適する抗新生物薬及び/又は抗分裂薬として、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン、及びマイトマイシンが、これらに限定されずに挙げられる。
【0095】
適する抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン薬、及び抗トロンビン薬として、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリンデキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖蛋白IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン及びトロンビン、Angiomax a(マサチューセッツ州、CambridgeのBiogen,Inc.)などのトロンビン阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、コルヒチン、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、ニュージャージー州、Whitehouse StationのMerck&Co.,Inc.からの商標名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、窒素酸化物又は窒素酸化物供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、様々なビタミン類などの栄養補助食品、及びこれらの組み合わせが、これらに限定されずに挙げられる。細胞増殖抑制物質などの例としては、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えばカプトプリル(例えば、コネチカット州、StamfordのBristol−Myers Squibb Co.からのCapoten(登録商標)及びCapozide(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(例えば、ニュージャージー州、Whitehouse StationのMerck&Co.,Inc.からのPrinivil(登録商標)及びPrinzide(登録商標))などが挙げられる。抗アレルギー薬の一例は、ペルミロラストカリウムである。適切でありうるその他の生物活性物質又は薬剤としては、α−インターフェロン、及び遺伝子操作された上皮細胞が挙げられる。
【0096】
適する細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤としては、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えばカプトプリル、シラザプリル又はリシノプリルなど、カルシウムチャネル遮断薬、例えばニフェジピンなど;コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω3−脂肪酸);ヒスタミンアンタゴニスト;ロバスタチン、モノクローナル抗体、例えばこれに限定せず、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なもの;ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、及び窒素酸化物が、これらに限定されずに挙げられる。
【0097】
適する抗アレルギー剤としては、ペルミロラストカリウムが、これに限定されずに挙げられる。その他の適する生物活性剤として、α−インターフェロン、遺伝子操作された上皮細胞、デキサメタゾン及びその誘導体、ラパマイシン誘導体及び類似体、例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(EVEROLIMUS(登録商標))、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾリルラパマイシンなど、合成無機及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖類及びその他の糖類、脂質、並びに治療活性、予防活性又は診断活性を有するDNA及びRNAの核酸配列が、これらに限定されずに挙げられるが、核酸配列には、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。適する生物活性剤のその他のいくつかの例としては、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、阻害剤、又は血栓溶解薬、例えばストレプトキナーゼと組織プラスミノゲン活性化因子など、予防接種用の抗体、ホルモンと成長因子、オリゴヌクレオチド、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、及びリボザイム、及び遺伝子療法で用いられるレトロウィルスベクター;抗ウィルス剤;鎮痛剤及び鎮痛剤複合物;食欲減退薬;駆虫薬;抗関節炎薬;抗喘息剤;抗痙攣剤;抗うつ剤;抗利尿薬;下痢止め薬;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛製剤;抗嘔吐薬;抗パーキンソン薬;かゆみ止め;抗精神病薬;解熱薬;鎮痙薬;抗コリン作用薬;交感神経興奮剤;キサンチン誘導体;カルシウムチャネル遮断薬、及びβ遮断薬、例えばピンドロール及び抗不整脈薬など、を含む循環器官用薬;抗高血圧薬;利尿薬;冠動脈を含めた血管拡張薬;末梢及び脊椎;中枢神経系刺激剤;充血除去剤を含む鎮咳薬及び感冒薬:睡眠薬;免疫抑制剤;筋肉弛緩剤;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静薬;精神安定剤;天然由来の、又は遺伝子工学で作製されたリポタンパク;及び再狭窄低減薬が挙げられる。
【0098】
好ましい治療薬剤としては、コルチコステロイド、エベロリムス、ゾタロリムス、シロリムス、シロリムス誘導体、パクリタキセル、ビスホスホネート、ApoA1、突然変異ApoA1、ApoA1ミラノ、ApoA1模倣ペプチド、ABC A1アゴニスト、抗炎症剤、抗増殖剤、血管新生阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、及びメタロプロテイナーゼの組織阻害剤が挙げられる。
【実施例】
【0099】
本発明の実施態様は、次に記載する実施例により更に説明されうる。下記の実施例は説明目的に限り提示され、また、いかなる態様においても本発明の範囲を制限することを意図するものでもなく、またそのようにみなされるべきでもない。
【0100】
[実施例1]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)(0.12g)、クロロホルム(4.6848g)及びトリクロロエタン(1.17g)を入れて、250rpmで2時間攪拌することにより調製した。次に、エベロリムス(0.0245g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を、500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0101】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、6μmである。
【0102】
[実施例2]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)(0.12g)、クロロホルム(4.67g)及びトリクロロエタン(1.17g)を入れて、250rpmで2時間攪拌することにより調製した。次に、エベロリムス(0.0408g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:3である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、4μmである。
【0103】
[実施例3]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)(0.06g)及びトリクロロエタン(2.928g)を入れて、250rpmで2時間攪拌することにより調製した。次に、エベロリムス(0.01224g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0104】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、6μmである。
【0105】
[実施例4]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)(0.06g)及びトリクロロエタン(2.928g)を入れて、250rpmで2時間攪拌することにより調製した。次に、エベロリムス(0.01224g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0106】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約50μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、6μmである。
【0107】
[実施例5]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)(0.12g)、クロロホルム(4.6848g)及びトリクロロエタン(1.17g)を入れて、250rpmで2時間攪拌することにより調製した。メタノール(2.44g)及びジメチルアセトアミド(2.44g)内のホスホリルコリン(0.2g)を、この反応混合物に添加し、混合物を更に2時間攪拌した。次に、エベロリムス(0.0444g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0108】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、6μmである。
【0109】
[実施例6]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)(0.12g)、クロロホルム(4.6848g)及びトリクロロエタン(1.17g)を入れて、250rpmで2時間攪拌することにより調製した。メタノール(2.44g)及びジメチルアセトアミド(2.44g)内のホスホリルコリン(0.2g)を、この反応混合物に添加し、混合物を更に2時間攪拌した。次に、エベロリムス(0.0444g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0110】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、6μmである。
【0111】
[実施例7]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)(0.2g)、アセトン(8g)及びメチルイソブチルケトン(2g)を入れて、560rpmで2時間攪拌することにより調製した。cRGD(0.4g)をこの反応混合物に添加し、混合物を更に2時間攪拌した。次に、エベロリムス(0.06g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0112】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、56μmである。
【0113】
[実施例8]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−ε−カプロラクトン)(0.2g)、アセトン(8g)及びメチルイソブチルケトン(2g)を入れて、560rpmで2時間攪拌することにより調製した。RGD(0.4g)をこの反応混合物に添加し、混合物を更に2時間攪拌した。次に、エベロリムス(0.06g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0114】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、56μmである。
【0115】
[実施例9]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)(0.2g)、アセトン(8g)及びメチルイソブチルケトン(2g)を入れて、560rpmで2時間攪拌することにより調製した。cRGD(0.4g)をこの反応混合物に添加し、混合物を更に2時間攪拌した。次に、エベロリムス(0.06g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0116】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、56μmである。
【0117】
[実施例10]
組成物は、密閉ガラス瓶内にポリ(L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)(0.2g)、アセトン(8g)及びメチルイソブチルケトン(2g)を入れて、560rpmで2時間攪拌することにより調製した。RGD(0.4g)をこの反応混合物に添加し、混合物を更に2時間攪拌した。次に、エベロリムス(0.06g)を、この反応混合物に添加し、この反応混合物を500rpmで更に2分間攪拌した。第1の組成物を、ステント上に施し、薬物−ポリマー層を形成するように乾燥させた。
【0118】
この組成物を、任意の従来の方法、例えば、噴霧又は浸漬によりステント上に施した。プライマー層(例えば、治療活性物質を含まない上記処方)を、薬物−ポリマー層を施す前に、任意選択でベアステント表面上に施すことができる。ポリマーに対する薬物の重量比(wt/wt)は、1:5である。薬物の用量は、約100μg/cmである。薬物貯蔵層のコーティングの厚みは、56μmである。
【0119】
本発明の具体的な実施態様が示され及び記載されてきたが、本発明から逸脱することなく、本発明のより広い態様において、諸変更及び諸修正を加えることができることは、当業者には明白であろう。したがって、添付の請求項は、その範囲内に本発明の精神と範囲に収まるようなすべての諸変更及び諸修正を包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス本体と、
前記デバイス本体上に配置された任意選択のプライマー層と、
前記デバイス本体上、又は選択された場合には前記プライマー層上に配置された薬物貯蔵層と、
を備えた埋込型医療デバイスであって、
前記薬物貯蔵層は、
少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;
又は、
乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー、並びに、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド、若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーのブレンド;
又は、
乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;
及び、
1種又は複数の治療薬剤を含み、
前記薬物貯蔵層が、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド又はグリコール酸と、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマーを含む場合は、前記埋込型医療デバイスは、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド又はグリコール酸と、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーを含む上塗り層を更に含む、埋込型医療デバイス。
【請求項2】
前記デバイスがステントである、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項3】
前記血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が、ポリヒドロキシアルキルを含む、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項4】
前記薬物貯蔵層又は前記上塗り層が、下記式:
【化1】


(式中、
Lはリンカーを含み、
mは約0.01〜約0.99であり、
nは約0.99〜約0.01であり、
n+m=1であり、
pは0〜200の整数である)
を有するポリヒドロキシアルキル部分を含む、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項5】
前記mが、約0.5〜約0.8である、請求項4に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項6】
前記mが、約0.65〜約0.75である、請求項5に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項7】
前記ポリヒドロキシアルキルが、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、グリコール、ポリアルキルグリコール、及びポリグリコールからなる群より選択される、請求項3に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項8】
前記血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が、ペプチドを含む、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項9】
前記薬物貯蔵層又は前記上塗り層が、下記式:
【化2】


(式中、
Lはリンカーを含み、及び
mは約0.01〜約0.99であり、
nは約0.99〜約0.01であり、及び
n+m=1である)
を有するペプチド部分を含む、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項10】
前記mが、約0.5〜約0.8である、請求項9に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項11】
前記mが、約0.65〜約0.75である、請求項10に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項12】
前記ペプチドが、RGD、環状RGD(cRGD)、及びRGD模倣体からなる群より選択される、請求項8に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項13】
前記血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が、ホスホリルコリンを含む、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項14】
前記薬物貯蔵層又は前記上塗り層が、下記式:
【化3】


(式中、
Lはリンカーを含み、
mは約0.01〜約0.99であり、
nは約0.99〜約0.01であり、及び
n+m=1である)
を有するホスホリルコリン部分を含む、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項15】
前記mが、約0.5〜約0.8である、請求項14に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項16】
前記mが、約0.65〜約0.75である、請求項15に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項17】
前記薬物貯蔵層ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの分子量を有する、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項18】
前記薬物貯蔵層が、約1μm〜約10μmのコーティング厚を有する、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項19】
前記薬物貯蔵層におけるポリマーに対する前記薬物の重量比(wt/wt)が、約1.0:0.5〜約1.0:10.0である、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項20】
前記薬物の用量が、約5〜200μg/cmから約20〜100μg/cmである、請求項1に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項21】
埋込型医療デバイスを、必要とする患者の血管内に配置するステップを含む、血管疾患を治療する方法であって、
前記デバイスが、
デバイス本体と、
前記デバイス本体上に配置された任意選択のプライマー層と、
前記デバイス本体上、又は選択された場合には前記プライマー層上に配置された薬物貯蔵層と、を備え、
前記薬物貯蔵層は、
少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;
又は、
乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー、並びに、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーのブレンド;
又は、
乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド若しくはグリコール酸と、ε−カプロラクトン若しくはトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマー;
及び、
1種又は複数の治療薬剤を含み、
前記薬物貯蔵層が、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド、又はグリコール酸と、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの高分子量コポリマーを含む場合に、前記埋込型医療デバイスは、少なくとも一部が血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分で置換された、乳酸、L−ラクチド、D,L−ラクチド、メソラクチド、又はグリコール酸と、ε−カプロラクトン又はトリメチレンカーボネートとの低分子量コポリマーを含んだ上塗り層を更に有する、
血管疾患を治療する方法。
【請求項22】
前記デバイスがステントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が、ポリヒドロキシアルキルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記薬物貯蔵層又は前記上塗り層が、下記式:
【化4】


(式中、
Lはリンカーを含み、
mは約0.01〜約0.99であり、
nは約0.99〜約0.01であり、
n+m=1であり、
pは0〜200の整数である)
を有するポリヒドロキシアルキル部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記mが、約0.5〜約0.8である、請求項24に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項26】
前記mが、約0.65〜約0.75である、請求項25に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項27】
前記ポリヒドロキシアルキルが、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、グリコール、ポリアルキルグリコール、及びポリグリコールからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が、ペプチドを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記薬物貯蔵層又は前記上塗り層が、下記式:
【化5】


(式中、
Lはリンカーを含み、及び
mは約0.01〜約0.99であり、
nは約0.99〜約0.01であり、及び
n+m=1である)
を有するペプチド部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記mが、約0.5〜約0.8である、請求項29に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項31】
前記mが、約0.65〜約0.75である、請求項30に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項32】
前記ペプチドが、RGD、環状RGD(cRGD)、及びRGD模倣体からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記血液適合性部分及び/又は治癒促進性部分が、ホスホリルコリンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記薬物貯蔵層又は前記上塗り層が、下記式:
【化6】


(式中、
Lはリンカーを含み、及び
mは約0.01〜約0.99であり、
nは約0.99〜約0.01であり、及び
n+m=1である)
を有するホスホリルコリン部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記mが、約0.5〜約0.8である、請求項34に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項36】
前記mが、約0.65〜約0.75である、請求項35に記載の埋込型医療デバイス。
【請求項37】
前記薬物貯蔵層ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの分子量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記薬物貯蔵層が、約1μm〜約10μmのコーティング厚を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記薬物貯蔵層におけるポリマーに対する前記薬物の重量比が、約1.0:0.5〜約1.0:10.0である、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記薬物の用量が、約5〜200μg/cm〜約20〜100μg/cmである、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
前記血管疾患が、アテローム性動脈硬化症である、請求項21に記載の方法。
【請求項42】
前記血管疾患が、再狭窄(restenosis)である、請求項21に記載の方法。
【請求項43】
前記血管疾患が、不安定プラークである、請求項21に記載の方法。
【請求項44】
前記血管疾患が、末梢血管障害である、請求項21に記載の方法。
【請求項45】
前記血管疾患が、遅発性ステント血栓症である、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−534513(P2010−534513A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518261(P2010−518261)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/068850
【国際公開番号】WO2009/017924
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】