説明

血清アミロイドP誘導体並びに同誘導体の製造及び使用

本発明の一態様は、ヒトSAPポリペプチド上のグリカン構造を改変することにより、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルと比べて、前記SAPポリペプチドの生物学的活性を増加させることができるという驚異的な発見に関するものである。前記開示内容は、変異型ヒトSAPポリペプチドと同ペプチドの製造方法の両方を提供するものである。特に、本発明は、糖残基の付加、削除、改変をインビトロ及びインビボで行って、所望のグリコシル化パターンを有するSAPポリペプチド(例えば、ヒトSAPポリペプチド)を生成するための方法及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、米国仮特許出願61/217,931(出願日2009年6月4日)の利益を主張するものである。前記関連出願で教示した内容については、全て本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
血清アミロイドP(SAP)は、ペントラキシンファミリー蛋白質のメンバーである。SAPは肝臓によって分泌され、安定ペンタマーとして血液中を循環する。これまでの研究によると、SAPは、免疫反応の開始及び収束(resolution)の両段階において重要な役割を果たすことが示されている。SAPは細菌の表面にある糖残基に結合し、それによって抗原提示細胞によるオプソニン化及び取り込みを促進することができる。また、SAPは、免疫反応の収束時のアポトーシス細胞で発生した遊離DNA及びクロマチンにも結合し、従ってこれらの抗原に対する二次炎症性反応を防ぐ。全三つの典型的なFcγ受容体(FcγR)に結合するというSAPの能力によって、SAPが結合した分子は細胞外領域から除去される。該受容体は、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に対して特に親和性を有する。受容体に結合した後、SAP及び任意の結合複合体は、一般的に細胞によって取り込まれ、そして処理される。
【0003】
近年、様々な病気を治療するための治療用薬剤としてSAPを用いることが提案されて来ており、該病気としては、線維症関連の病気、過敏症、自己免疫疾患、粘膜炎及び微生物感染等による炎症性疾患が含まれる。例えば、米国特許出願11/707,333、12/217,617、12/720,845及び12/720,847を参照されたい。ヒトの病気を治療するための蛋白質治療薬は、ヘルスケア産業に革命をもたらしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第11/707,333号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/217,617号明細書
【特許文献3】米国特許出願第12/720,845号明細書
【特許文献4】米国特許出願第12/720,847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、治療用薬剤として有用であるための必要な効能及び/又は充分な量を有する蛋白質治療剤を生成することについては多くの困難が存在する。可能性を有する多くの治療用薬剤は、天然由来の蛋白質と比べて、その生物学的活性(例えば、プラズマ半減期)を増強するべく改変される。通常、組換え発現技術は、充分な量のポリペプチドを生成するために実施される。残念ながら、多くの組換えシステムは、天然由来の形態とは異なった生物学的特性を有するポリペプチドを生成し、そのことにより薬物速度論、安全性、及び治療用製品の効果に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
従って、ヒトの治療に適したSAPポリペプチドの開発及び製造方法に関するニーズが依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の概要
一側面において、本開示内容は、変異体血清アミロイドP(SAP)ポリペプチド及びそれらを製造するための方法を提供するものである。本発明は、糖残基の付加、削除、又は改変(修飾)をインビトロ及びインビボで行って、所望のグリコシル化パターンを有する変異体SAPポリペプチドを生成するための方法及び組成物を含む。
【0008】
ある態様において、本開示内容は、グリコシル化ヒトSAPポリペプチドを提供するものであり、該ポリペプチドは、少なくとも1つの側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分を有するN結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を含む。
【0009】
ある態様において、本開示内容は、グリコシル化ヒトSAPポリペプチドを提供するものであり、該ポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を含み、該オリゴ糖鎖において、ヒト血清から単離した野生型SAPと比べてα2,6結合シアル酸部分が少なくとも50%少ない
【0010】
ある態様において、本開示内容は、グリコシル化ヒトSAPポリペプチドを製造する方法を提供するものであり、該方法は、以下のステップを含む:i)SAPポリペプチドを細胞内で発現させるステップ;及びii)前記細胞から前記SAPポリペプチドを単離するステップ。好ましい実施形態において、前記細胞はCHO細胞である。ある態様において、前記細胞は、CHO−S細胞である。
【0011】
ある態様において、本開示内容は、ヒトSAPポリペプチドを製造する方法を提供するものであり、該方法は、以下のステップを含む:i)ヒトSAPポリペプチドをCHO細胞内で発現させるステップ;及びii)前記細胞から前記ヒトSAPポリペプチドを単離するステップ。
【0012】
ある態様において、本開示内容は、ヒトSAPポリペプチドを製造する方法を提供するものであり、該方法は、以下のステップを含む:i)N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を有するグリコシル化ヒトSAPポリペプチドを提供するステップ;及びii)前記SAPポリペプチドのN結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を酵素的又は化学的に変更して、改変グリコシル化SAPポリペプチドを生成するステップ。
【0013】
ある態様において、本開示内容は、ヒトSAPポリペプチドを製造する方法を提供するものであり、該方法は、以下のステップを含む:i)ヒトSAPポリペプチドを提供するステップ;及びii)前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更して、N結合型オリゴ糖又はO結合型オリゴ糖を有するグリコシル化SAPポリペプチドを生成するステップ。
【0014】
ある態様において、本開示内容は、以下のステップを含む方法によって製造されるヒトSAPポリペプチドを提供するものである:i)SAPポリペプチドをCHO細胞内で発現させるステップ;及びii)前記細胞から前記SAPポリペプチドを単離するステップ。
【0015】
ある態様において、本開示内容はCHO細胞を提供するものであり、該細胞は、N結合型オリゴ糖鎖を有するヒトSAPポリペプチドを含み、該オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端はα2,3結合シアル酸部分である。
【0016】
ある態様において、本開示内容はCHO細胞を提供するものであり、該細胞は、ヒトSAPポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列を含有する。
【0017】
ある態様において、本開示内容は、ヒトSAPポリペプチドを提供するものであり、該ポリペプチドは、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するためのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分、3分の1、4分の1、10分の1、又は100分の1よりも少ない。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明のヒトSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖を有する。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端は、α2,3結合シアル酸部分である。幾つかの実施形態において、 前記N結合型オリゴ糖鎖は、ヒト血清から単離した野生型SAPと比べて、α2,6結合シアル酸部分が少なくとも50%少ない。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖の全側鎖の末端は、α2,3結合シアル酸部分である。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖は、α2,6結合シアル酸部分を実質的に有さない。本発明のグリコバリアント(糖変異体)SAPポリペプチドは、1以上の側鎖を含むことができる。例えば、前記N結合型オリゴ糖鎖は、その特徴として、バイ・アンテナリー構造(二分岐構造)、トリ・アンテナリー構造(三分岐構造)、テトラ・アンテナリー構造(四分岐構造)、又はペンタ・アンテナリー構造(五分岐構造)を有することができる。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖は、5糖コアであるMan[(α1,6−)−(Man(α1,3)]−Man(β1,4)−GlcNAc(β1,4)−GlcNAc(β1,N)−Asnを有することができる。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖は、構造NeuNAc2α3Galβ4GlcNAcβ2Manα6を有する少なくとも1つの側鎖を含む。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖は、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖の全側鎖は、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖は、1以上のマンノース残基を含む。幾つかの実施形態において、前記N結合型オリゴ糖鎖は、少なくとも1つのフコース残基を含む。本発明における任意のグリコバリアントSAPポリペプチドは、少なくとも1つの改変グリコシル残基を含むことができる。改変グリコシル残基は、水-可溶性ポリマー、及び水-不溶性ポリマー、治療用成分、診断用薬剤並びに生体分子から選択される1以上の改変基と結合することができる。
【0019】
ある態様において、本発明のSAPポリペプチドは、組み換え型ポリペプチドであってもよい。本発明のSAPポリペプチドは、SEQ ID No.1、2、3、又は4と、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。前記SAPポリペプチドは、ヒトSAP蛋白質であることが好ましい。本発明のヒトSAPポリペプチドは、SEQ ID NO:1と、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。
【0020】
ある態様において、本発明のヒトSAPポリペプチドは、SAPドメイン及び1以上の非相同ドメインを含む融合蛋白質である。前記非相同ドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化若しくは分散(分布)、蛋白質複合体の形成、及び/又は純度のうち1以上を強化することができる。
【0021】
ある態様において、本発明のヒトSAPポリペプチドは1以上の改変アミノ酸残基を含み、例えば、PEG化アミノ酸、グリコシル化(例えば、O結合型グリコシル化)アミノ酸、プレニル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、及び/又は有機誘導体化剤と結合したアミノ酸が挙げられる。前記改変アミノ酸残基は、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化若しくは分散、蛋白質複合体の形成、及び/又は純度のうち1以上を強化することができる。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明のヒトSAPポリペプチドは、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルと比べて、生物学的活性が増強されている。ある態様において、本発明のSAPポリペプチドは、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するためのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分、3分の1、4分の1、10分の1、又は100分の1よりも少ない。
【0023】
ある態様において、本発明における任意のヒトSAPポリペプチドを製造する方法は、更なるステップを含み、該ステップは、前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更し、前記SAPポリペプチドにN結合型オリゴ糖鎖若しくはO結合型オリゴ糖鎖を結合させ、又は前記SAPポリペプチドの既存のN結合型オリゴ糖鎖若しくはO結合型オリゴ糖鎖を改変するステップである。幾つかの実施形態において、前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更するステップが、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ及びフォスファターゼから選択される1以上の酵素蛋白質を用いて前記SAPポリペプチドを処理することを含む。幾つかの実施形態において、前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、1種以上の糖前駆体の存在下で行われる。適切な糖前駆体としては、UDP−N−アセチルグルコサミン、CMP−N−グリコリルノイラミン酸、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UDP−ガラクトース及びGDP−フコースが含まれるがこれらに限定されない。幾つかの実施形態において、前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法は、前記N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖から1以上の末端α2,6結合シアル酸部分を除去することを含む。幾つかの実施形態において、前記単離されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法は、前記オリゴ糖鎖上の1以上の末端α2,6結合シアル酸部分を1以上のα2,3結合シアル酸部分に置換することを含む。
【0024】
更に、本開示内容は、哺乳類での使用に適した本発明のヒトSAPポリペプチド医薬製剤を提供するものである。本発明の医薬製剤は、本明細書で開示した少なくとも1種のSAPポリペプチド及び医薬的に許容可能なキャリアを含む。幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、更に追加有効成分を含む。幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、持続放出性配合物として製造される。幾つかの実施形態において、本開示の医薬製剤は、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射(continuous depot)、又はポンプにより局所的に患者に投与するのに適している。
【0025】
更に、本開示内容は、SAP応答性の異常又は症状を治療又は予防するための方法を提供するものであり、該方法は、前記治療や予防を必要とする患者に1種以上の本発明のSAPポリペプチドを治療上有効量で投与することによる。SAP応答性の異常又は症状としては、線維性(fibrotic)又は線維増殖性(fibroproliferative)の異常又は症状、過敏性(hypersensitivity)の異常又は症状、自己免疫の異常又は症状、炎症性の異常又は症状、及び粘膜炎が含まれるがこれらに限定されない。本発明のSAPポリペプチドは、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射、若しくはポンプ又はこれらの組合せにより局所的に患者に投与することができる。幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、1種以上の追加有効成分と共に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】線維芽細胞分化アッセイ。単球をSAPポリペプチドとともにインキュベーションした後、ELISAに基づくアッセイを使用して、MDCの産生を測定した。Y軸は、CHO−S細胞から単離された組み換え型ヒトSAP(rhSAP)と比べた、ヒト血清由来SAP(hSAP)平均効能(すなわち、7つの独立した実験の平均)を表す。hSAPの相対活性は1.0に設定されている。
【図2A】変異体SAPポリペプチドのグリカン構造分析。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(A)、及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(B)を用いて、CHO−S細胞から単離したグリコ改変組み換え型ヒトSAP上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(C)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(D)を使用して、グリコ(糖)改変hSAP(ヒト血清由来SAP)上でのシアル酸結合を測定した。 液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(E)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(F)を使用して、rhSAP上でのシアル酸結合を測定した(ここで、該rhSAPは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼで処理し、SAPグリカン上での2,3結合シアル酸末端の数を増加させた)。LCMS図に関して、X軸は質量(ダルトン)を表し、及びY軸は相対強度を表す。HPLCトレースに関して、X軸は時間(分)を表し、Y軸は吸光度単位(mAU)を表す。
【図2B】変異体SAPポリペプチドのグリカン構造分析。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(A)、及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(B)を用いて、CHO−S細胞から単離したグリコ改変組み換え型ヒトSAP上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(C)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(D)を使用して、グリコ(糖)改変hSAP(ヒト血清由来SAP)上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(E)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(F)を使用して、rhSAP上でのシアル酸結合を測定した(ここで、該rhSAPは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼで処理し、SAPグリカン上での2,3結合シアル酸末端の数を増加させた)。LCMS図に関して、X軸は質量(ダルトン)を表し、及びY軸は相対強度を表す。HPLCトレースに関して、X軸は時間(分)を表し、Y軸は吸光度単位(mAU)を表す。
【図2C】変異体SAPポリペプチドのグリカン構造分析。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(A)、及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(B)を用いて、CHO−S細胞から単離したグリコ改変組み換え型ヒトSAP上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(C)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(D)を使用して、グリコ(糖)改変hSAP(ヒト血清由来SAP)上でのシアル酸結合を測定した。 液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(E)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(F)を使用して、rhSAP上でのシアル酸結合を測定した(ここで、該rhSAPは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼで処理し、SAPグリカン上での2,3結合シアル酸末端の数を増加させた)。LCMS図に関して、X軸は質量(ダルトン)を表し、及びY軸は相対強度を表す。HPLCトレースに関して、X軸は時間(分)を表し、Y軸は吸光度単位(mAU)を表す。
【図2D】変異体SAPポリペプチドのグリカン構造分析。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(A)、及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(B)を用いて、CHO−S細胞から単離したグリコ改変組み換え型ヒトSAP上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(C)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(D)を使用して、グリコ(糖)改変hSAP(ヒト血清由来SAP)上でのシアル酸結合を測定した。 液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(E)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(F)を使用して、rhSAP上でのシアル酸結合を測定した(ここで、該rhSAPは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼで処理し、SAPグリカン上での2,3結合シアル酸末端の数を増加させた)。LCMS図に関して、X軸は質量(ダルトン)を表し、及びY軸は相対強度を表す。HPLCトレースに関して、X軸は時間(分)を表し、Y軸は吸光度単位(mAU)を表す。
【図2E】変異体SAPポリペプチドのグリカン構造分析。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(A)、及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(B)を用いて、CHO−S細胞から単離したグリコ改変組み換え型ヒトSAP上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(C)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(D)を使用して、グリコ(糖)改変hSAP(ヒト血清由来SAP)上でのシアル酸結合を測定した。 液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(E)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(F)を使用して、rhSAP上でのシアル酸結合を測定した(ここで、該rhSAPは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼで処理し、SAPグリカン上での2,3結合シアル酸末端の数を増加させた)。LCMS図に関して、X軸は質量(ダルトン)を表し、及びY軸は相対強度を表す。HPLCトレースに関して、X軸は時間(分)を表し、Y軸は吸光度単位(mAU)を表す。
【図2F】変異体SAPポリペプチドのグリカン構造分析。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(A)、及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(B)を用いて、CHO−S細胞から単離したグリコ改変組み換え型ヒトSAP上でのシアル酸結合を測定した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(C)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(D)を使用して、グリコ(糖)改変hSAP(ヒト血清由来SAP)上でのシアル酸結合を測定した。 液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)分析(E)及び陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)分析(F)を使用して、rhSAP上でのシアル酸結合を測定した(ここで、該rhSAPは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼで処理し、SAPグリカン上での2,3結合シアル酸末端の数を増加させた)。LCMS図に関して、X軸は質量(ダルトン)を表し、及びY軸は相対強度を表す。HPLCトレースに関して、X軸は時間(分)を表し、Y軸は吸光度単位(mAU)を表す。
【図3】線維芽細胞分化アッセイ。SAP変異体ポリペプチドと共に単球をインキュベーションした後、ELISAに基づくアッセイを使用して、MDCの産生を測定した。Y軸は、参考スタンダードであるhSAPと比較した各SAP変異体の平均相対活性を表す。前記参考スタンダードの活性については1.0に設定した(一番左のバーを参照)。
【図4】線維芽細胞分化アッセイ。単球をhMCSFで処理し、その後続いて線維芽細胞分化について定量した。X軸は、ドナー単球と共にインキュベートされたhMCSFの濃度を表す。Y軸は、5.0 × 104細胞あたりの線維芽細胞を計数することによって測定された5日目の線維芽細胞増殖量を表す。
【図5】線維芽細胞分化アッセイ。単球をhSAPで処理し、その後続いて線維芽細胞分化について定量した。X軸は、ドナー単球と共にインキュベートされたhSAPの濃度を表す。Y軸は、5.0 × 104細胞あたりの線維芽細胞を計数することによって測定された5日目の線維芽細胞増殖量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の詳細な説明
概観
最も自然な形で生じるペプチドは炭化水素部分(即ち、グリカン)を有しており、該炭化水素部分は、ペプチド主鎖の長さ方向にそって特定のアミノ酸に特定の結合を行うことを介してペプチドに結合しており、従って「グリコペプチド」を形成する。任意の所与のペプチド上でのグリコシル化パターンは、該ペプチドの機能を密接な関係を持ち得る。例えば、ペプチド上のN結合型グリカンの構造は、ペプチドの様々な特性に影響を及ぼすことができ、前記特性としては、プロテアーゼ感受性、細胞内輸送、分泌、組織ターゲティング、生物学的半減期、及び抗原性等が含まれる。こうした1以上の特性を変更すると、天然条件下でのペプチドの効力に大きく影響を及ぼす。
【0028】
天然で生じるグリコペプチド内で見出されるグリカン構造は、典型的には2つに分類され、N結合型グリカン及びO結合型グリカンがある。真核細胞で発現するペプチドについては、アスパラギン−X−セリン/スレオニンの配列を含有するペプチド一次構造における複数の箇所でのアスパラギン残基上で、Nグリコシル化が典型的に行われる。ここで、前記Xは、プロリン及びアスパラギン酸以外の任意のアミノ酸であってよい。前記ペプチドの炭化水素部分は、N結合型グリカン又はN結合型オリゴ糖鎖として知られている。N−グリコシル化の初期イベントは、小胞体(ER)内で起こり、該イベントは、哺乳類、植物、昆虫及び他の高等真核生物で保存されている。まず、14の糖残基を有するオリゴ糖鎖が、脂質キャリア分子(lipid carrier molecule)上で構築される。新生ペプチドが翻訳されER内に輸送されると、膜結合グリコシルトランスフェラーゼ酵素による触媒反応で、前記オリゴ糖鎖全体が、アスパラギン残基のアミド基に転移される。更に、N結合型グリカンは、ERとゴルジ体の両方で処理される。更に、前記処理は、除去及び付加される糖残基に特異的なグリコシラーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼによる触媒反応において、幾つかの糖残基除去や別の糖残基付加を一般的に伴う。
【0029】
典型的には、N結合型グリカンの最終構造は、ペプチドが生成される生物体に依存する。例えば、細菌で生成されるペプチドは、一般的にグリコシル化されていない。昆虫細胞で発現するペプチドは、高マンノース又はパウチ・マンノースのN結合型オリゴ糖鎖を典型的に含む。哺乳動物細胞培養で生成されるペプチドは、種や細胞培養条件によって異なったグリコシル化が行われるのが通常である。しかし、同一の種及び同一の条件下であったとしても、グリコシル鎖については一定量の不均一性が時として見られる。また、植物細胞で産生されるペプチドは、動物細胞で産生される物とは著しく異なったグリカン構造を一般的に含む。
【0030】
当分野においては、ペプチドのグリコシル化パターンをカスタマイズするための様々な方法が提案されてきており、該方法としては、国際公開WO99/22764、WO98/58964及びWO99/54342並びに米国特許第5,047,335に記載された方法が含まれる。基本的には、インビトロでのペプチドグリコシル化に必要となる多くの酵素がクローニングされ、そして配列決定されている。ある例では、これらの酵素を、ペプチド上のグリカンに特定の糖を付加するためにインビトロで用いてきた。またある例では、所望の糖部分の発現ペプチドへの付加が細胞内で生じるようにするために、酵素及び所望のペプチドの組合せを発現する細胞を遺伝学的にデザインしてきた。
【0031】
前記炭化水素の合成では、2つの主要なクラスの酵素が使用される:即ち、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼである。前記グリコシルトランスフェラーゼは、ペプチドに既存のオリゴ糖構造を付加又は改変する。また、前記グリコシルトランスフェラーゼは、立体化学的及び位置化学的に良好な制御で特定の生成物を生成するのに効果的である。そして、前記グリコシルトランスフェラーゼは、オリゴ糖を生成し、末端のN及びO結合型炭化水素構造、特に哺乳動物細胞内で生成されるペプチド上の該構造を改変する目的で使用されてきた。例えば、グリコペプチドの末端オリゴ糖は、グリコシルトランスフェラーゼを用いて、完全にシアル酸化及び/又はフコシル化して、より一貫性のある糖構造を提供することができる。このことにより、グリコペプチドの薬力学や他の種々の生物学的特性を向上させることができる。
【0032】
前記グリコシダーゼは、更に、エキソグリコシダーゼ(例えば、β−マンノシダーゼ、β−グルコシダーゼ)及びエンドグリコシダーゼ(例えば、Endo−A、Endo−M)に分類される。通常、グリコシダーゼはグリコシド結合の加水分解を触媒する。しかし,適切な条件の下では、こうした結合を形成するために用いることができる。炭化水素の合成に用いられるほとんどのグリコシダーゼは、エキソグリコシダーゼである;グリコシル転移は、基質の非還元末端で起こる。水によって開裂して加水分解産物を生成するか又はアクセプターによって開裂するかのいずれかのグリコシル−酵素中間体において、前記グリコシダーゼは、グリコシルドナーと結合し、新たなグリコシド又はオリゴ糖を生成する。エキソグリコシダーゼを用いた経路の例としては、β−マンノシダーゼ(Singh et al., Chem. Commun. 993−994 (1996))の作用によって形成されるβマンノシド結合を含めた全てのN結合型グリコペプチドのコア三糖の合成がある。前記エキソグリコシダーゼの使用と比べると一般的ではないが、エンドグリコシダーゼも炭化水素の合成に用いられる。エンドグリコシダーゼは、単糖ではなくオリゴ糖鎖全体をポリペプチド上に転移させるために使用することができる。オリゴ糖断片は、Endo−FやEndo−M等のエンド‐β‐N‐アセチルグルコサミダーゼ(endo−β−N−acetylglucosamines)を用いて基質に添加される(Wang et al., Tetrahedron Lett. 37: 1975−1978; and Haneda et al., Carbohydr. Res. 292: 61−70 (1996)。こうしたの各クラスの酵素を用いることによって、グリコシル化したペプチドの合成することについて成功を収めてきた。概要について参照したい場合には、Crout et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 2: 98−111 (1998)を参照されたい。
【0033】
血清アミロイドP (SAP)は、哺乳動物における天然由来の血清蛋白質であり、5つの同じサブユニット又は「プロモーター」から構成され、ディスク状複合体中で非共有結合している。SAPは、ペントラキシン・スーパーファミリー蛋白質に属しており、環状ペンタマー構造によって特徴づけられる。伝統的なショート・ペントラキシンとしては、SAPやC反応性タンパクが含まれる(Osmand, A.P., et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 74: 739−743, 1997)。通常SAPは肝臓で合成され、その生理学的半減期は24時間である。ヒトSAPのサブユニットの配列は以下の通りであり、Gene bank Accession NO. NP_001630に記載の配列のアミノ酸20−223に対応する(ただし、シグナル配列については記載していない)。

HTDLSGKVFVFPRESVTDHVNLITPLEKPLQNFTLCFRAYSDLSRAYSLFSYNTQGRDNELLVYKERVGEYSLYIGRHKVTSKVIEKFPAPVHICVSWESSSGIAEFWINGTPLVKKGLRQGYFVEAQPKIVLGQEQDSYGGKFDRSQSFVGEIGDLYMWDSVLPPENILSAYQGTPLPANILDWQALNYEIRGYVIIKPLVWV (SEQ ID NO: 1)
【0034】
Gallus gallusのSAPサブユニットの配列については以下の通りである。
QEDLYRKVFVFREDPSDAYVLLQVQLERPLLNFTVCLRSYTDLTRPHSLFSYATKAQDNEILLFKPKPGEYRFYVGGKYVTFRVPENRGEWEHVCASWESGSGIAEFWLNGRPWPRKGLQKGYEVGNEAVVMLGQEQDAYGGGFDVYNSFTGEMADVHLWDAGLSPDKMRSAYLALRLPPAPLAWGRLRYEAKGDVVVKPRLREALGA (SEQ ID NO: 2)
【0035】
Bos taurusのSAPサブユニットの配列については以下の通りである。
QTDLRGKVFVFPRESSTDHVTLITKLEKPLKNLTLCLRAYSDLSRGYSLFSYNIHSKDNELLVFKNGIGEYSLYIGKTKVTVRATEKFPSPVHICTSWESSTGIAEFWINGKPLVKRGLKQGYAVGAHPKIVLGQEQDSYGGGFDKNQSFMGEIGDLYMWDSVLSPEEILLVYQGSSSISPTILDWQALKYEIKGYVIVKPMVWG (SEQ ID NO: 3)
【0036】
Cricetulus migratoriusのSAPサブユニットの配列については以下の通りである。
QTDLTGKVFVFPRESESDYVKLIPRLEKPLENFTLCFRTYTDLSRPHSLFSYNTKNKDNELLIYKERMGEYGLYIENVGAIVRGVEEFASPVHFCTSWESSSGIADFWVNGIPWVKKGLKKGYTVKTQPSIILGQEQDNYGGGFDKSQSFVGEMGDLNMWDSVLTPEEIKSVYEGSWLEPNILDWRALNYEMSGYAVIRPRVWH (SEQ ID NO: 4)
【0037】
本発明の一態様は、ヒトSAPポリペプチドのグリカン構造を改変することにより、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルと比べて、SAPポリペプチドの生物学的活性が増強されるという驚くべき発見に関連するものである。本開示内容中の実施例に示されるように、ヒト血清から単離されたSAPは、α2,6結合シアル酸残基のみを含んでいる。それに対して、CHO細胞で生成される組み換え型ヒトSAPは、α2,3結合シアル酸残基のみを含んでいる。インビトロ細胞ベースのバイオアッセイを用いた結果、ヒト血清から単離された野生型SAP(即ち、α2,6結合シアル酸部分を含むSAP)と比べて、α2,3結合シアル酸SAPポリペプチドは、一貫して高い活性を有することが示された。本発明の変異体SAPポリペプチドは、その増強された生物学的効能を有するため、治療用薬剤として一層効果的であろう。例えば、ヒト血清から単離した野生型SAPと比べて、より効能の高いSAP変異体は、薬剤投与(dose)の量及び/又は頻度を抑えることができる。本開示内容は、ヒトSAPポリペプチド変異体及びその製造方法の両方を提供するものである。特に、本開示内容は、インビトロ及びインビボで、糖残基の付加、削除、改変を行い、所望のグリコシル化パターンを有するヒトSAPポリペプチドを生成するための方法及び組成物を含む。
【0038】
定義
別途規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語については、当業者が通常理解する意味と同じ意味である。概して言うと、本明細書中で使用される命名法、並びに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、並びに核酸化学及びハイブリダイゼーションにおける研究手法については、当分野で周知・慣用である。核酸合成及びペプチド合成については、標準的な技術を用いる。技術及び手法については、概して、当分野での従来の方法や種々の一般的な参考文献に従って実践した(例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。これらについては本明細書中で後述する。
【0039】
本明細書中で使用される冠詞「a」及び「an」は、文法的な冠詞の対象について1つ又は複数の物(即ち、1以上)を意味する(即ち、本明細書において、特に規定しない限りは単数又は複数を意味する)。例えば、「an element」は1つの元素又は複数の元素を意味する。
【0040】
本明細書中で使用される用語「治療」(“treatment”及び“treating”)は、所望の薬理学的又は生理学的な効果を得ることを意味する。前記効果については、病気(異常)若しくは症状を完全若しくは部分的に予防するという意味で予防的なものであってもよく、並びに/又は、病気及び/若しくは該病気による悪影響を完全若しくは部分的に治すという意味で治療的なものであってもよい。本明細書中で使用される「治療」は、哺乳類、特にヒトでの病気に対する任意の治療を含み、例えば以下のものが含まれる:(a)生存期間の延長;(b)病気による死亡リスクの低減;(c)病気の阻害、即ち病気の進行の停止又は病気の進行速度の低減;及び(d)病気の緩和、即ち、病気の退行の誘発。
【0041】
本明細書中で使用される用語であって、異常又は症状を「阻害」又は「予防」する治療剤については、統計学的サンプルにおいて以下のような機能を有する化合物を意味する:(1)非治療コントロール・サンプルと比べて、治療サンプルにおいて異常又は症状の発生を抑制;又は、(2)非治療コントロール・サンプルと比べて、治療サンプルにおいて、異常又は症状の1以上の症状の発症を遅延又は発病度合いの低減。
【0042】
本明細書中で使用される用語「被験者」及び「患者」(“subject”及び“patient”)は、哺乳類を含めた動物を意味し、例えばヒト等が挙げられる。用語「哺乳類」については、霊長類、飼いならされた動物(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ギニア・ピッグ、動物園などの檻にいる動物)及び野生動物が含まれる。
【0043】
本明細書中で使用される用語「組織」 は、器官、又は専門化された細胞群(例えば、皮膚組織、肺組織、腎臓組織、及び他のタイプの細胞群)を意味する。
【0044】
用語「治療効果」は、当分野で理解される用語であり、動物(具体的には哺乳類、より具体的にはヒト)において、薬理学的に活性のある物質で引き起こされる局所的又は全身的な効果を意味する。語句「治療上有効量」とは、任意の治療に適用できる合理的な利点/リスクの割合において、ある所望の局所的又は全身的な効果をもたらす物質等の量を意味する。こうした物質の治療上有効量は、治療する患者及び病状、該患者の体重及び年齢、病状の度合い、投与形態等に依存して変動するであろう。そして、当業者は容易に治療上有効量を決定することができる。例えば、本明細書で記述する特定の組成物は、前述の治療に適用できる合理的な利点/リスクの割合において、所望の効果を生み出すのに充分な量で、投与することができる。
【0045】
本明細書中で使用される用語「核酸」は、ポリヌクレオチドを意味し、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、及び、適すれば、リボ核酸(RNA)がある。また、該用語は以下のものを含むものとして理解されたい:均等物としては、ヌクレオチド類似体から製造されたRNA又はDNAのいずれかの類似体;及び記述された実施形態に適用可能な物として、1本鎖ポリヌクレオチド(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)及び2本鎖ポリヌクレオチド。
【0046】
用語「ペプチド」、「蛋白質」、及び「ポリペプチド」は、本明細書中では、相互に変換可能に使用される。用語「精製蛋白質」は、1種類の蛋白質又は複数種類の蛋白質が調製された物を意味し、好ましくは、細胞又は細胞溶解産物中の蛋白質(複数可)に通常関連している他の蛋白質から単離された物、又は該他の蛋白質を実質的に有さない物を意味する。用語「他の細胞蛋白質を実質的に有さない」又は「他の混入蛋白質を実質的に有さない」は、混入蛋白質が(乾燥重量で)20%未満しか含まれない各蛋白質の個々の調製物、好ましくは5%未満しか含まれない調製物を含むものとして定義される。各蛋白質の機能的な形態については、当分野で公知のクローニングされた遺伝子を用いた精製調製物として調整することができる。「精製された」とは、他の蛋白質等(特には、対象となる再構築された混合物において、精製された調整物としての構成蛋白質の特性、又はその機能においての構成蛋白質の特性のいずれかを実質的にマスキングしたり、消失させたり、混乱させたり、又は変化させたりすることができる他の蛋白質)の他の生物学的巨大分子が実質的に存在していない状態で記載の分子が存在することを意味する。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも乾燥重量で80%、より好ましくは85重量%の範囲、さらに好ましくは95−99重量%、そして、最も好ましくは少なくとも99.8重量%で同タイプの生物学的巨大分子が存在することを意味する(ただし、水、バッファー、又は他の小分子(特に分子量が5000未満の分子)については存在しても良い)。本明細書中で使用される「純粋な」とは、好ましくは前述の用語「精製された」と同一の数値限界を有する。
【0047】
「N結合型」オリゴ糖は、アスパラギン-N−アセチルグルコサミン結合を意味する、アスパラギンを介してペプチド主鎖に結合したオリゴ糖である。また、N結合型オリゴ糖は、「N−グリカン」とも呼ばれる。天然由来のN結合型オリゴ糖は、共通の5糖コアであるMan[(α1,6−)−(Man(α1,3)]−Man(β1,4)−GlcNAc(β1,4)−GlcNAc(β1,N)を有している。前記オリゴ糖については、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、フコース及びシアル酸等の末端糖の存在の有無、そして該糖の側鎖(アンテナとも言う)の数において異なっている。また、任意で、こうした構造は、コア・フコース分子及び/又はキシロース分子を含むことができる。
【0048】
用語「シアル酸」は、カルボキシル化された9炭糖ファミリーの任意のメンバーを意味する。シアル酸ファミリーのメンバーで最もありふれているのは、N−アセチル−ノイラミン酸(よく用いられる略語として、Neu5Ac、NeuAc、又はNANA)である。 前記ファミリーの第二のメンバーとして、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5Gc又はNeuGc)があり、NeuAcのNアセチル基がヒドロキシル化されている。シアル酸ファミリーの第三のメンバーとして、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソン酸(nonulosonic acid)(KDN)(Nadano et al. (1986) J. Biol. Chem. 261: 11550−11557; Kanamori et al., J. Biol. Chem. 265: 21811−21819 (1990))がある。また、9置換シアル酸も含まれ、例えば、9−O−ラクチル−Neu5Ac若しくは9−O−アセチル−Neu5Acのような9−O−C16−アシル−Neu5Ac、又は9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Ac及び9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acが挙げられる。シアル酸ファミリーについて参照したいのであれば、例えば、Varki, Glycobiology 2: 25−40 (1992); Sialic Acids: Chemistry, Metabolism and Function, R. Schauer, Ed. (Springer−Verlag, New York (1992))を参照されたい。
【0049】
「遺伝的にデザインされた」又は「組み換え型」細胞は、前記細胞の遺伝的な物質についての1種以上の改変を有する細胞である。前記改変としては、遺伝学的な材料が安定に維持されるか否かに関わらす、遺伝学的な物質の挿入、遺伝学的な物質の削除、染色体外である遺伝学的な物質を挿入することなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0050】
本明細書中で使用される用語「改変された糖」は、本発明のプロセスにおいて、ペプチドのアミノ酸又はグリコシル残基に酵素的に付加された天然由来又は非天然由来の炭化水素を意味する。前記改変された糖は、糖ヌクレオチド(一リン酸、二リン酸、及び三リン酸)、活性化された糖(例えば、グリコシルハロゲン化物、グリコシルメシレート)、及び活性化された糖又はヌクレオチドの何れでもない糖などを含む複数の酵素基質から選択されるが、これらに限定されない。「改変された糖」は、「改変基」を用いて、共有結合的に機能化することができる。有用な改変基としては、水-可溶性ポリマー、及び水-不溶性ポリマー、治療用成分、診断用薬剤並びに生体分子などが含まれるがこれらに限定されない。改変基による機能化部位については、ペプチド又は該ペプチドのグリコシル残基に「改変された糖」が酵素的に結合するのを妨げないように選択することができる。
【0051】
変異体SAPポリペプチド
本開示内容の一部として、変異体血清アミロイドP(SAP)のポリペプチドを提供する。特に、本発明のSAP変異体は、グリコシル化ヒトSAPポリペプチドを含み、該ポリペプチドは、1以上のN結合型又はO結合型オリゴ糖鎖を含み、該オリゴ糖鎖は、末端がα2,3結合シアル酸部分である1、2、3、4、5、又はそれ以上の側鎖をそれぞれ独立して有する。幾つかの実施形態において、前記N結合型又はO結合型オリゴ糖鎖の全ての側鎖の末端は、α2,3結合部分である。本発明における他のSAP変異体は、N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を含むグリコシル化ヒトSAPポリペプチドを含み、α2,6結合シアル酸部分が、ヒト血清由来の野生型SAPポリペプチドと比べて、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、又は少なくとも95%少ない。幾つかの実施形態において、前記N結合型又はO結合型オリゴ糖鎖は、実質的にα2,6結合シアル酸部分を有さず、例えば、その量は、ヒト血清由来の野生型SAPポリペプチドに対して、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%よりも少ない。本発明のグリコバリアントSAPポリペプチドは、1以上の側鎖を有するN結合型オリゴ糖鎖又はO結合型鎖(例えば、バイ・アンテナリー構造、トリ・アンテナリー構造、テトラ・アンテナリー構造、ペンタ・アンテナリー構造等)を含むことができる。ある実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を有しており、前記オリゴ糖鎖のうち1、2、3、4、又は5つの側鎖は、ガラクトースやN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない(例えば、ヒト血清由来の野生型SAPポリペプチドと比べて、N−アセチルグルコサミンの量が80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%よりも少ない)。本発明の特定のSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を有しており、該オリゴ糖鎖は、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない(例えば、ヒト血清由来の野生型SAPポリペプチドと比べて、ガラクトース及び/又はN−アセチルグルコサミンが80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%よりも少ない)。幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖又はO結合型オリゴ糖鎖を含み、前記オリゴ糖鎖のうち1、2、3、4、又は5つの側鎖は、1以上のマンノース残基を有する。ある実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖を含み、該オリゴ糖鎖は、5糖コアであるMan[(α1,6−)−(Man(α1,3)]−Man(β1,4)−GlcNAc(β1,4)−GlcNAc(β1,N)−Asnを有する。また、前記5糖コアは、1以上のフコース残基又はキシロース残基を有することができる。ある実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖を含み、前記オリゴ糖鎖のうち1、2、3、4、又は5つの側鎖は、NeuNAc2α3Galβ4GlcNAcβ2Manα6という構造を有する。また、本発明のSAPポリペプチドは、N結合型オリゴ糖鎖を有することができ、全ての側鎖はNeuNAc2α3Galβ4GlcNAcβ2Manα6という構造を有することができる。
【0052】
本発明のSAPポリペプチド変異体は、1種以上の「改変された」糖残基を含むことができる。改変された糖は、前記改変部分又は基の付加を許容する任意の位置で置換が行われる。好ましい態様において、改変された糖は、改変された糖をSAPペプチドに結合させるために用いられる酵素のための基質として、該糖が機能することを可能にする位置で置換が行われても良い。改変基は酵素的手法、化学的手法、又はそれらの組合せによって糖部分に結合することができ、それによって改変された糖(例えば、改変されたガラクトース、フコース、又はシアル酸)が生成される。本発明での使用並びに糖残基にこれらの改変基を結合させるための方法に適した改変基については、次項で述べる。
【0053】
好ましい態様において、本発明のSAPポリペプチド変異体は、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するためIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない。幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチド変異体は、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するためIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の3分の1、4分の1、10分の1、又は100分の1よりも少ない。
【0054】
本発明のSAPポリペプチド変異体は、Brutlagらのアルゴリズム(Comp. App. Biosci., 6:237−245 (1990))に基づくFASTDBコンピュータプログラムを用いて決定したときに、アミノ酸配列SEQ ID NO:1と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であってもよい。特定の実施形態において、アミノ酸アライメントの同一性及び類似性のパーセンテージを計算するために用いられるパラメータとして以下のものが含まれる:Matrix=PAM 150, k−tuple=2, Mismatch Penalty=1, Joining Penalty=20, Randomization Group Length=0, Cutoff Score=1, Gap Penalty=5 and Gap Size Penalty=0.05。
【0055】
用語「SAPポリペプチド」は、上述した任意のペプチドを含む機能的断片や融合蛋白質を包含する。一般的に、SAPポリペプチドは、生物学的に関連した温度、pHレベル、及び浸透圧での水性溶液で可溶性になるようにデザインされるであろう。非共有結合的に互いに結合してペンタマーであるSAP複合体を形成するSAPプロモーターは、同一のアミノ酸配列及び/又は翻訳後の改変物を有してもよい。或いは、単一の複合体内にある個々のSAPプロモーターは、異なる配列及び/又は改変物を有してもよい。用語SAPポリペプチドは、任意の天然由来のSAPポリペプチド並びにそれらの任意の変異体(突然変異体、断片、及び融合物を含む)を含むポリペプチドを包含する。本発明のSAPポリペプチドは、組み換え型ポリペプチドであってもよい。好ましい実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、ヒトSAPポリペプチドである。
【0056】
幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチド変異体、又はそれらの機能的断片を含む医薬組成物が提供される。幾つかの態様において、SAP変異体アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に対して、1以上の保存的又は非保存的置換物によって異なっても良い。本明細書中で使用される「保存的置換物」とは、対応する関連残基と物理的に又は機能的に類似した残基を意味する。即ち、保存的置換及びその関連残基は、類似のサイズ、形、帯電性及び/又は化学的性質(例えば、共有結合又は水素結合を形成する能力)を有する 。保存的置換物については、DayhoffらのAtlas of Protein Sequence and Structure 5:345−352 (1978 & Supp.)で許容されたポイントミューテーションとして定義された基準を満たすものが好ましい。 保存的置換物の例としては、以下のグループ内での置換物が挙げられる:(a) バリン、グリシン; (b) グリシン、アラニン; (c) バリン、イソロイシン、ロイシン; (d) アスパラギン酸、グルタミン酸; (e) アスパラギン、グルタミン; (f) セリン、スレオニン; (g) リシン、アルギニン、メチオニン; 及び(h) フェニルアラニン、チロシン。どのようなアミノ酸の変更であれば表現型上変化しない可能性が高いかに関する更なるガイダンスとしては、Bowie et al.、Science 247:1306−1310 (1990)を参照されたい。
【0057】
生物学的機能を維持した変異体SAPポリペプチド及びそれらの断片は、本明細書中で記載した医薬組成物や方法で有用である。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチド変異体又はそれらの断片は、FcγRI、FcγRIIA、及び/又はFcγRIIIBと結合する。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチド変異体又はそれらの断片は、線維芽細胞、線維芽細胞前駆体, 筋線維芽細胞前駆体、及び/又は造血単球前駆体のうち1以上の分化を阻害する。SAP変異体は、治療用効果又は安定性を強化する等の目的で(例えば、エキソ・ビボでの貯蔵期限及びインビボでの蛋白質分解に対する耐性)、SAPポリペプチドの構造を改変することによって生成することができる。
【0058】
ある態様において、本開示内容のSAPポリペプチド変異体は、SAPポリペプチド内に通常存在する任意の改変に加えて、更なる翻訳後の改変を含むことができる。そのような改変として、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化(例えば、O結合型オリゴ糖、N結合型 オリゴ糖等)、リン酸化、及び脂質付加等が含まれるがこれらに限定されない。その結果、前記改変SAPポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類又は単糖類、及びリン酸等の非アミノ酸部分を含むことができる。
【0059】
ある態様において、本明細書中に記載したSAPポリペプチドに対する1種以上の改変によって、SAPポリペプチドの安定性を強化することができる。例えば、前記改変によってSAPポリペプチドのインビボ半減期を強化したり、又はSAPポリペプチドの蛋白質分解を減少させたりすることができる。
【0060】
ある態様において、本発明のSAPポリペプチド変異体は、融合蛋白質を含み、該融合蛋白質は、少なくともヒトSAPポリペプチドの一部、及び1以上の融合ドメイン又は非相同部分を有する。前記融合ドメインのうち良く知られた例としては、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合蛋白質(MBP)、又はヒト血清アルブミンが含まれるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望の特性を付与すべく選択することができる。例えば、幾つかの融合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーによる融合蛋白質の単離に特に有用である。前記アフィニティ精製目的で、アフィニティクロマトグラフィー用関連マトリクスが用いられ、例えば、グルタチオン−、アミラーゼ−、及び ニッケル−、又はコバルト−結合樹脂が挙げられる。別の例として、SAPポリペプチドの検出を促進する目的で、融合ドメインを選択することができる。前記検出ドメインの例としては、様々な蛍光蛋白質(例えばGFP)並びに「エピトープタグ」が挙げられる。通常、該タグは特定の抗体を用いることができる短いペプチド配列である。特定のモノクローナル抗体が容易に利用可能であるよく知られたエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウィルス赤血球凝集素(HA)及びc−mycタグが挙げられる。幾つかの場合において、前記融合ドメインは、プロテアーゼ切断サイトを有しており、該切断サイトにより、関連プロテアーゼが融合蛋白質を部分的に分解することが可能となる。こうしたことにより、そこから組み換え型蛋白質が遊離する。そして、前記遊離蛋白質は、続いて行われるクロマトグラフィー分離によって、融合ドメインから単離することができる。幾つかの場合において、前記SAPポリペプチドは、SAPポリペプチドをインビボで安定化させる非相同ドメインと融合させることができる。ここで、「安定化させる」とは、分解の減少、腎臓によるクリアランスの減少、又は他の薬物動力学的効果を原因とするか否かに関係なく、血清半減期を上昇させる任意の事を意味する。免疫グロブリンのFc部位や血清アルブミンと融合させることにより、上昇した安定性が付与されることが知られている。
【0061】
融合タンパクの異なる部分は、所望の機能に合致する態様で配置することができる点を理解されたい。例えば、SAPポリペプチドは、非相同ドメインのC−末端に配置してもよいし、或いは、非相同ドメインは、SAPポリペプチドのC−末端に配置してもよい。SAPポリペプチド及び非相同ドメインは、融合蛋白質内において隣り合う必要はない。更なるドメイン又はアミノ酸配列(例えば、リンカー配列)が、ドメイン又はドメイン間いずれかのC末端側又はN末端側に含まれても良い。
【0062】
変更されたN−グリコシル化分子を生成する方法
本項ではヒトSAPポリペプチド変異体を製造する方法を述べる。該方法は、一般的には、SAPポリペプチドのグリコシル化構造を生成又は改変するための1種以上の化学的薬剤又は酵素的薬剤を前記SAPポリペプチドに接触させるステップを伴う。前記方法は、細胞ベースであってもよく、又は非細胞ベースであっても良い。
【0063】
グリカン構造を生成又は改変するために有用な酵素は当分野で周知である。本開示内容の方法において有用なほとんどの酵素/蛋白質は、2つの機能的なクラスのうちの1つにカテゴリー化することができる:即ち、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼである。本明細書中で使用されるグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、N− アセチルグルコサミニル−トランスフェラーゼ、ガラクトシル−トランスフェラーゼ、フコシル−トランスフェラーゼ、シアニル−トランスフェラーゼ、グルコシル−トランスフェラーゼ、マンノシル−トランスフェラーゼなど)とは、ドナーである糖をアクセプター部分に転移する能力を有する任意の酵素/蛋白質を意味する。本明細書中で使用されるグリコシダーゼ(例えば、グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、シアリダーゼ、フコシダーゼ等.)とは、糖部分間のグリコシド結合の加水分解を触媒する能力を有する任意の酵素/蛋白質を意味する。
【0064】
グリコ形態が変更されたSAPポリペプチドを生成するための細胞ベースの方法では、野生型(例えば、CHO細胞)、又はヒト細胞と比べて改変された少なくとも1種のグリコシル化活性を有する遺伝的にデザインされた細胞のいずれかを用いる。本開示内容の方法に適切な細胞としては、以下の物が挙げられる:例えば、真菌細胞、原核細胞(即ち、細菌、Archaea)、植物細胞、又は動物細胞(例えば、線虫, 昆虫, 植物, 鳥類, 爬虫類, 又はほ乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、アレチネズミ、イヌ、ネコ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、クジラ、サル、又はヒト))。 前記細胞は、初代細胞、不死化細胞、又は形質転換された細胞であってもよい。こうした細胞については、様々な市販の販売元や研究所施設等(例えば、American Type Culture Collection(ロックビル,メリーランド州.))から入手することができる。ある態様において、SAPポリペプチド変異体を生成するために使用される細胞は、CHO細胞である。
【0065】
用語「グリコシル化活性」は、以下の能力を有する任意の活性を意味する:(i)N結合型グリカン又はO結合型グリカンをターゲット分子に付加する能力(即ち、オリゴ糖−トランスフェラーゼ活性);(ii)N結合型グリカン又はO結合型グリカンをターゲット分子から除去する能力;(iii)ターゲット分子上の1以上のN結合型グリカン又はO結合型グリカンを改変する能力;(iv)ドリコール結合オリゴ糖を改変する能力;(v)前記活性(i)−(iv)のうち1以上の活性を補助する能力。従って、グリコシル化活性には、例えば、グリコシダーゼ活性、グリコシルトランスフェラーゼ活性、糖ヌクレオチド合成、改変、又はトランスポーター活性が含まれる。ターゲット分子上の1以上のN結合型グリカン又はO結合型グリカンの改変としては、マンノシルホスホリル-トランスフェラーゼ活性, キナーゼ活性、又はホスファターゼ活性(例えば、ターゲット分子上のグリカンのリン酸化状態を変更するマンノシルホスホリル-トランスフェラーゼ、キナーゼ、又はホスファターゼ活性)の作用が含まれる。
【0066】
本開示内容の方法において有用なデザインされた細胞は、1種以上の遺伝的改変を有することができ、該改変としては以下のものが含まれるがこれらに限定されない:(i)グリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする内因性遺伝子の削除;(ii)グリコシル化活性を有する蛋白質(例えば、内因性又は外因性蛋白質)の突然変異体形態エンコードする組み換え型核酸の導入;(iii)グリコシル化活性を有する蛋白質の機能的発現を干渉するRNA分子の導入又は発現;(iv)グリコシル化活性を有する野生型(例えば、内因性又は外因性)蛋白質をエンコードする組み換え型核酸の導入;、又は(v)グリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする1種以上の内因性遺伝子のプロモーターエレメント又はエンハンサーエレメントを変更することによるエンコードされた蛋白質の発現の変更。上述のRNA分子としては、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA (shRNA)、アンチセンスRNA、又はマイクロRNA (miRNA)が含まれる。上記項目(ii)には、例えば、置換対象の内因性遺伝子と比べて、大きなグリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする遺伝子に、内因性の遺伝子を置換することを含む(例えば非相同組換え)ことを理解されたい。
【0067】
本明細書で記載された遺伝的にデザインされた細胞は、以下に述べる1以上の変更されたグリコシル化活性を有する:(i)遺伝的に改変された細胞中において、増強された1種以上のグリコシル化活性;(ii)遺伝的に改変された細胞中において、減少された1種以上のグリコシル化活性;(iii)遺伝的に改変された細胞中において、局在化や細胞内の分散が変更された1種以上のグリコシル化活性;、又は(iv)遺伝的に改変された細胞中において、起源を同じくする非改変細胞と比べて、活性割合が変更された1種以上のグリコシル化活性。グリコシル化活性量の増加については以下のものが原因となりうる点を理解されたい:(i)グリコシル化活性を有する1種以上の蛋白質の過剰発現;(ii)内因性遺伝子のコピー数の増加(例えば、遺伝子の二重化);又は、遺伝子によってエンコードされる蛋白質の発現の増加を刺激する内因性遺伝子のプロモーター、エンハンサー、又はサプレッサーの改変。1種以上のグリコシル化活性量の減少については以下のものが原因となりうる:(i)グリコシル化改変活性を有する1種以上の蛋白質の突然変異形態の過剰発現(例えば、ドミナント・ネガティブ形態);(ii)グリコシル化活性を有する1種以上の蛋白質の発現を減少させる1種以上の干渉性RNA分子の導入又は発現;(iii)、又はグリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする1種以上の内因性遺伝子の削除。
【0068】
本開示内容の方法のために使用される遺伝的にデザインされた細胞は、グリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする野生型遺伝子又は突然変異体遺伝子を発現(例えば、過剰発現)することができる。前記遺伝子として、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:ALG7、ALG13、ALG14、ALG1、ALG2、ALG11、RFT1、ALG3、ALG9、ALG12、ALG6、ALG8、ANL1、ALG10、ALG5、OST3、OST4、OST6、STT3、OST1、OST5、WBP1、SWP1、OST2、DPM1、SEC59、OCH1、MNN9、VAN1、MNN8、MNN10、MNN11、HOC1、MNN2、MNN5、MNN6、KTR1、YUR1、MNN4、KRE2、KTR2、KTR3、MNN1、MNS1、MNN4、PNO1、MNN9、グルコシダーゼ I、グルコシダーゼ II、又はエンドマンノシダーゼ。グリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする遺伝子は任意の種に由来するものであっても良い(例えば、下等真核生物 (例えば、真菌類 (酵母を含む)又はトリパノソーマ)、原核生物 (即ち、 細菌又はArchaea)、植物,又は動物(例えば、昆虫、鳥類、爬虫類、又はほ乳類(例えば、マウス又はラット、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ウシ、ブタ、非ヒト霊長類、又は ヒト))。
【0069】
本開示内容の方法によって使用される遺伝的にデザインされた細胞は、任意の数の遺伝子(例えば、グリコシル化活性を有する蛋白質をエンコードする遺伝子)を発現することができ、及び/又は本明細書で記載した遺伝子のうちのいずれか1以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、若しくは20又はそれ以上)の任意の組合せを発現することができる点を理解されたい。更に、本開示内容の方法によって使用される遺伝的にデザインされた任意の細胞は、1種以上のグリコシル化活性を変更又は無効にする任意の数の突然変異を含むことができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、用語「遺伝子発現」又は「発現」は、生物学的に活性のあるポリペプチドがDNA配列から生成されて、細胞内で生物学的な活性を示す細胞でのプロセスを意味する。このように、遺伝子発現は、転写及び翻訳のプロセスを伴うが、しかし、遺伝子の生物学的活性又は遺伝子産物に影響を及ぼすことができる、転写後及び翻訳後のプロセスも伴う。こうしたプロセスに含まれるものとして、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:RNA合成、プロセッシング、輸送、並びにポリペプチド合成、輸送、及び翻訳後のポリペプチド改変。
【0071】
例えば、本開示内容は、細胞中でSAP遺伝子を発現させることによる本発明のSAPポリペプチドの製造方法を提供する。幾つかの実施形態において、細胞は、内因性SAP遺伝子又はこれらの断片を含むことができる。他の実施形態では、外因性SAPポリペプチド又はそれらの断片をコードするポリヌクレオチドを細胞内に導入することもできる(例えば、形質転換、トランスフェクト等)。細胞内に導入することができる適切なSAPプリヌクレオチドは、核酸断片、並びに核酸構築物又は発現ベクターを含む。好ましい実施形態において、前記内因性又は外因性遺伝子は、ヒトSAPポリペプチドをエンコードする。
【0072】
幾つかの実施形態において、宿主細胞を形質添加するために使用される核酸断片(例えば、ヒトSAPポリペプチドをエンコードする核酸断片)は、シャイン・ダルガノ・サイト(例えば、リボソーム結合サイト)及び開始サイト(例えば、コドンATG)を含んで、酵素を生成するために転写されたメッセージの翻訳を開始することができる。また、核酸断片は、翻訳を終了させるための終了配列を含むこともできる。終了配列は、典型的には、対応するアミノアセチル−tRNAが存在しせず、従って、ポリペプチド合成を終了させるコドンである。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチドをエンコードする核酸構築物は、例えば、発現プラスミドとして送達され、該プラスミドは、細胞内で転写されたときに、SAPポリペプチドとして発現する。
【0073】
幾つかの実施形態において、適切な発現ベクターは、本発明のSAPポリペプチドエンコードするヌクレオチド配列であって、且つ少なくとも1種の制御配列が機能的に結合したヌクレオチド配列を含む。制御配列は、当分野で認識されたものであり、本開示内容の任意のポリペプチドの発現に向かわせるように選択される。従って、用語「制御配列」は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現コントロール・エレメントを含む。例示的な制御配列についてはGoeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。例えば、機能的に結合されたときにDNA配列の発現を制御する任意の発現制御配列をこうしたベクター内で使用して、本開示内容の任意のポリペプチドを発現させることができる。前記有用な発現制御配列として、例えば、以下のものが含まれる:SV40の初期プロモーター及び後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウィルス又はサイトメガロウイルスの最初期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TACシステム又はTRCシステム、T7 RNA ポリメラーゼによって発現が誘導されるT7プロモーター、ラムダ・ファージの主要なオペレータ領域及びプロモーター領域、fd外被蛋白質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の解糖系酵素のためのプロモーター、酸性ホスファターゼ(例えばPho5)のプロモーター、酵母α接合因子のプロモーター、バキュロウイルス・システムの多面体プロモーター、及び原核細胞又は真核細胞又はこれらに対するウイルスの遺伝子の発現を制御するものとして知られる他の配列、並びに様々なこれらの組合せ。発現ベクターのデザインは、形質転換しようとする宿主細胞の選択及び/又は発現させようとする蛋白質の種類等の因子に依存する可能性がある点を理解されたい。また、別途考慮すべきものとして、以下のものがある:ベクターのコピー数、前記コピー数を制御する能力、及びベクターによってエンコードされる他の任意の蛋白質(例えば、抗生物質マーカー等)の発現を制御する能力。
【0074】
幾つかの実施形態において、宿主細胞を形質転換するために使用される核酸断片又は発現システムは、任意で、1種以上のマーカー配列を含むことができる。一般的に言えば、適切なマーカー配列は、典型的には遺伝子産物をエンコードし、通常は、不活化させる酵素、又は検出する酵素、又は培地中の化合物によって検出される酵素である。例えば、マーカー配列を含むことによって、形質転換細胞を抗生物質耐性にすることができ、又は形質転換細胞上で化合物特有の代謝作用を付与することが出来る。耐性を付与する適切なマーカー配列の例としては、カナマイシン、アンピシリン、クロラムフェニコール及びテトラサイクリンが挙げられる。或いは、選択圧力以外にも、遺伝子を含有する特定のコロニーを検出することを可能にするマーカー遺伝子を使用することができ、例えば、β−ガラクトシダーゼがあり、該酵素の基質は色がついた産物を提供する。
【0075】
核酸断片、又は発現ベクターを用いて本発明の細胞を形質転換するのに適した様々な方法がある。ありふれた形質転換の方法として、エレクトロポレーション、リポソームを介した形質転換、カルシウムを介した形質転換、ウイルスを介したトランスフェクションが含まれる。
【0076】
ある態様において、本発明の核酸断片又は発現システムを用いて宿主細胞が形質転換されるときに、前記システム内の遺伝子(例えば、ヒトSAP)は、いわゆる相同組換えによって、宿主細胞の染色体DNAに組み込むことができ、そして、発現システムは宿主内に安定して運ばれる。
【0077】
ベクター内の発現システムを、宿主細胞の染色体DNAへ組み込む目的で、適切な選択マーカー遺伝子を用いることができ、ここで前記マーカー遺伝子は、特定の宿主細胞の染色体DNA上の遺伝子と相同の配列を有する。こうした目的での選択マーカーは、当業者が容易に選択することができる。例えば、好ましいマーカーは、染色体に存在し、かつ宿主細胞の代謝に関連する遺伝子である。即ち、染色体上にある上述の遺伝子が、突然変異等の適切な手段によって不活化されるという態様等によって改変された宿主を用いることが好ましい。そして、宿主は、対応する無傷の遺伝子を含有する発現ベクターを用いた相同組換えを受けることができ、ここで正常な代謝遺伝子を含有する形質転換体のみが増殖して選択される。従って、前記マーカー遺伝子が発現ベクターに組み込まれた場合、前記発現ベクター内のマーカー遺伝子と、染色体DNAの対応部位との間で相同組換えが起こるであろう。そして、これによって、非相同遺伝子の発現カセットも染色体DNAに同時に組み込まれるであろう。
【0078】
幾つかの実施形態において、細胞内で蛋白質を「発現する」という用語は、細胞内に蛋白質自体を導入する方法も包含する。従って、ある態様において、本開示内容は、SAPポリペプチドを細胞内に導入することによる本発明のSAPポリペプチドの製造方法を提供する。細胞内にポリペプチドを直接導入する技術は当分野で公知であり、一般的には細胞膜を透過するプロセスを伴う。前記技術としては、以下の技術が含まれるがこれらに限定されない:SAPポリペプチドのマイクロインジェクション;膜小胞内にSAPポリペプチドをカプセル化(例えば、リポソーム、カプセル体、赤血球ゴースト、プロトプラスト等)し、これらを細胞膜と接触させ、それにより、融合させてSAPポリペプチドを細胞内に導入させる技術;物理的(例えば、機械的、化学的、電気的等)方法を用いる技術であって、細胞膜内に一時的に導入される穴を介した拡散によって細胞内に入る巨大分子に依存した方法(例えば、scrape−loading、bead−loading等);及び細胞の食作用を利用した天然のエンドサイトーシスを介した取り込み。細胞内に取り込む方法は、受容体を介した経路を利用することができる。ここで、細胞表面で発現する様々な受容体の1つをターゲットとして設定し、キャリア部分として作用する同種のリガンドにSAPポリペプチドを(共有結合的に、又は非共有結合的に)結合させる。静電気的な吸着を用いた方法であって、生存細胞内への蛋白質導入の関する幾つかの方法が記載されており、ここで、蛋白質はカチオン化されて、その後負に帯電した細胞表面に接触させる(特開2004ー049214を参照されたい)。
【0079】
ある態様において、本開示内容は、SAPポリペプチドを発現するCHO細胞を提供する。幾つかの実施形態において、CHO細胞は、外因性のSAPポリペプチドを発現する。好ましい実施形態において、CHO細胞は、ヒトSAPポリペプチドを発現する。幾つかの実施形態において、本開示内容は、SAPポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列を含むCHO細胞を提供する。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、ヒトSAPポリペプチドをエンコードする。前述した任意の技術は、本発明のSAPポリペプチドをCHO細胞内、又は本明細書中に開示した他の適切な任意の細胞内で「発現させる」為に使用することができる。
【0080】
野生型細胞又は遺伝的にデザインされた細胞の任意のグリコシル化活性は、誘導性のキュー(例えば、化学的キュー又は物理的キュー)の存在下で誘導可能であり、又は条件制御できる。この場合に、任意で、野生型細胞又は遺伝的にデザインされた細胞は、SAPポリペプチドをエンコードする核酸、又はSAPポリペプチドを導入する前、最中、又はその後に続いて、誘導剤の存在下で培養することができる。例えば、SAPポリペプチドを細胞内に導入するステップに続いて、化学的誘導剤にさらすことができ、該誘導剤は、野生型の、又は改変されたN−グリコシル化活性を有する1種以上の蛋白質の発現を促すことができる。多数の誘導キューが、野生型の及び/又は改変されたN−グリコシル化活性を有する1種以上の蛋白質の条件付発現を促す場合には、細胞は多数の誘導剤に接触させることができる。幾つかの実施形態において、培養培地は、SAPポリペプチドの所望のグリカン構造を生成するために改変することができる。例えば、血清、グルコース、及び/又は脂質(例えば、ドリコール)の培養培地中の濃度は、所望のSAPグリコバリアントを最適に製造するために改変することができる。幾つかの実施形態において、培養培地の温度、pH及び/又は浸透圧は、所望のSAPグリコバリアントを最適に製造するために変更することができる。
【0081】
本発明のSAPポリペプチド変異体は、細胞又は細胞の培地から単離する前又は後に、インビボ又はインビトロで更に処理することができる。更なる処理としては、SAPポリペプチドの1以上のグリカン残基の改変、又は該ペプチドのグリカン構造(複数可)以外のSAPポリペプチドに対する改変を含むことができる。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチドの更なる処理として、1種以上の非相同性部分の付加(共有結合又は非共有結合)を含めることができる。幾つかの実施形態において、更なる処理は、SAPポリペプチドの酵素的又は化学的な処理を伴う。前記酵素的な処理については、1種以上のグリコシダーゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、又はプロテアーゼにSAPポリペプチドを接触させ、且つSAPポリペプチド上のグリカン残基(例えば、ガラクトース、マンノース、フコース、シアル酸、キシロース、N−アセチルグルコサミン等)の改変、付加、又は削除を誘導するのに充分な時間で接触させることを伴うことができる。N結合型オリゴ糖鎖のカスタマイズについては、周知技術を用いた所望の糖部分の改変、付加、又は削除を続いて行うことによって達成できる。ペプチド変異体上の炭化水素部分の酵素的切断については、Thotakura(Thotakura et al., 1987, Meth. Enzymol. 138: 350)らが開示しているように、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼを使用することによって達成できる。糖部分を付加する例示的方法については、米国特許第5,876,980, 6,030,815, 5,728,554, 及び5,922,577に記載されている。
【0082】
ある実施形態において、SAPグリカン構造の改変は、1種以上の糖ヌクレオチドの存在を必要とする。本発明で使用される例示的な糖ヌクレオチドとしては、ヌクレオチド1リン酸、ヌクレオチド2リン酸、ヌクレオチド3リン酸、又はそれらの類似体が含まれる。好ましい実施形態において、改変された糖ヌクレオチドは、UDP−グリコシド、CMP−グリコシド、又はGDP−グリコシドから選択される。更に好ましくは、糖ヌクレオチドは、UDP−ガラクトース、UDP−ガラクトサミン、UDP−グルコース、UDP−グルコサミン、GDP−マンノース、GDP−フコース、CMP−シアル酸、CMP−N−グリコリルノイラミン酸、又はCMP−NeuAcから選択される。ある実施形態において、改変された糖ヌクレオチドは、改変された糖残基をSAPポリペプチドに付加するために利用される。また、糖ヌクレオチドのN−アセチルアミン誘導体も、本発明の方法において有用である。
【0083】
グリコシル部分の化学的な付加又は除去は、適切な任意の方法によって行うことができる。例えば、化学的な脱グリコシル化は、SAPポリペプチドを、トリフルオロメタンスルホン酸又は別の強酸にさらすことを含むことができる。こうした処理によって、結果として、ペプチド自体は無傷のままである一方で、結合した糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんど又は全ての糖が切断される。化学的な脱グリコシル化の方法については、以下の文献に記載されている:Haldmuddin et al., 1987, Arch. Biochem. Biophys. 259: 52;及びEdge et al., 1981, Anal. Biochem. 118: 131。例えば、化学処理としては、SAPポリペプチドの改変を誘導するのに充分な時間で、フッ化水素酸等の酸に改変SAPポリペプチドを接触させることを伴う。特定の条件下で、フッ化水素酸は、リン酸をグリカン上に維持する一方で、グリカンにホスホジエステル結合したマンノース残基を特異的に除去する。改変SAPポリペプチドは、更に、リン酸基を付加したり、又は1種以上のN−グリカンから除去する処理を行うことができる。例えば、改変されたSAPポリペプチドは、マンノシルキナーゼ又はマンノシルホスファターゼに接触させることができる。
【0084】
ある態様において、SAPポリペプチドグリカン構造(N結合型オリゴ糖又はO結合型オリゴ糖)上の、末端の糖部分のみを改変することが望ましい。幾つかの実施形態において、SAPグリカン構造の1以上の側鎖については、少なくとも1種の末端シアル酸残基を付加、除去、置換、又は改変することによって改変される。本明細書中で述べるグリカン改変のための適切な方法は、SAPグリカン構造上の末端糖部分のみを改変するために使用することができる。幾つかの実施形態において、α2,6結合、α2,8結合、又はα2,9結合を有する末端シアル酸残基は、1以上の末端α2,3結合シアル酸残基に置換される。特定の態様において、末端にα2,6結合シアル酸残基を有するヒトSAPは、1以上の末端α2,6結合シアル酸残基を、1以上のα2,3結合シアル酸残基に置換するため、本開示内容方法の1つに従って改変される。 幾つかの実施形態において、末端α2,3結合シアル酸残基は、改変されて、1以上のα2,6結合の、α2,8結合の、及び/又はα2,9結合のシアル酸残基が付加される。
【0085】
ある態様において、本発明のSAPポリペプチドを製造するプロセスは、SAPポリペプチドを脱グリコシル化する第一ステップを伴う。SAPポリペプチドは、部分的に又は完全に脱グリコシル化することができる。幾つかの実施形態において、脱グリコシル化する第一ステップは、SAPポリペプチド上のグリカン構造のうち少なくとも1つの側鎖から末端糖部分のみを除去することを伴う。幾つかの実施形態において、脱グリコシル化する第一ステップは、少なくとも1つのα2,6結合のシアル酸残基を除去する。幾つかの実施形態において、脱グリコシル化する第一ステップは、少なくとも1種のO結合型グリカンを除去する。幾つかの実施形態において、脱グリコシル化する第一ステップは、少なくとも1種のN結合型 グリカンを除去する。幾つかの実施形態において、脱グリコシル化する第一ステップは、O結合型グリカン及びN結合型グリカンの全てを除去する。幾つかの実施形態において、(部分的に又は完全に)脱グリコシル化されたSAPポリペプチドは、本開示内容の方法に従って更に処理され、該方法には、(部分的に又は完全に)脱グリコシル化されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に改変することや、若しくは部分的に又は完全に脱グリコシル化されたSAPポリペプチドを細胞に導入することや、又はそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。ここで、該方法(複数可)により、本発明のSAPポリペプチド変異体が生成される。幾つかの実施形態において、部分的に又は完全に脱グリコシル化されたSAPポリペプチドを細胞内に導入した後、本開示内容の方法に従って更にインビボ又はインビトロで該ペプチドを改変して、本発明のSAPポリペプチド変異体を生成することができる。同様に、本明細書中に記載の酵素的又は化学的方法を用いてインビトロで改変されたSAPポリペプチドであって、且つ部分的に又は完全に脱グリコシル化されたSAPポリペプチドを細胞内に導入して、本発明のSAPポリペプチド変異体を生成することができる。
【0086】
本発明のSAPポリペプチドは細胞内で処理することができるが、必ずしも細胞内で処理する必要がない点を理解されたい。例えば、本開示内容は、本発明のSAPポリペプチド変異体を生成する細胞フリーな方法も提供する。幾つかの態様において、細胞フリーな方法としては、野生型細胞(例えば、真菌細胞、植物細胞、又は動物細胞)、又は少なくとも1つ種の改変グリコシル化活性を有する遺伝的にデザインされた細胞から調製された細胞溶解産物にSAPポリペプチドをグリコシル化条件の下で接触させるステップを含む。ここで、前記細胞溶解産物に前記SAPポリペプチドを接触させることにより、前記SAPポリペプチドにN結合型オリゴ糖又はO結合型オリゴ糖を結合させたり、又は前記SAPポリペプチド上の既存のN結合型オリゴ糖又はO結合型オリゴ糖が改変されたりする。「N−グリコシル化条件」とは、所望の改変N−グリコシル化を可能にする条件の下で、混合物(例えば、SAPポリペプチドと細胞溶解産物の混合物)をインキュベートすることを意味する。
【0087】
細胞溶解産物中の活性又は1種以上のグリコシル化活性の完全性を保存する細胞溶解産物を得るための適切な方法としては、適切なバッファ及び/又は阻害剤を使用することが含まれ、該阻害剤としてはヌクレアーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤が含まれ、該阻害剤は、細胞溶解産物中のNグリコシル化活性を保存又はその変化を最小限にする。前記阻害剤としては、例えば、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P−アミノエチルエーテル)N,N,N1,N1四酢酸(EGTA))、プロテアーゼ阻害剤としては、例えば、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパイン、及びホスファターゼ阻害剤としては、例えば、リン酸、フッ化ナトリウム、及びバナジウム酸が挙げられる。阻害剤は、対象となるN−グリコシル化活性(複数可)と干渉しない、又は最小限にしか逆効果を及ぼさないように選択することができる。酵素活性を含有する溶解物を得るための適切なバッファ及び条件については、例えば以下の文献に記載されている:Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York (1999); Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988); Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1999); Tietz Textbook of Clinical Chemistry, 3rd ed. Burtis and Ashwood, eds. W.B. Saunders, Philadelphia, (1999)。
【0088】
細胞溶解産物については、干渉する物質の存在を適宜排除又は最小限にするために更なる処理を行うことができる。必要ならば、当業者にとって公知である種々の任意の方法を用いることにより、細胞溶解物を画分化することができる。該方法としては、例えば、亜細胞画分化、クロマトグラフィー技術(例えば、イオン交換、疎水性及び逆相、サイズ排除、アフィニティ、及び疎水性電荷誘導クロマトグラフィー)(例えば、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, third edition, Springer−Verlag, New York (1993); Burton and Harding, J. Chromatogr. A 814:71−81 (1998)を参照)又は他の適切な任意の精製技術が挙げられる。
【0089】
細胞溶解産物は、細胞全体のオルガネラを無傷状態に維持及び/又は機能性を維持した状態で調製することができる。例えば、溶解産物は、無傷の粗面小胞体、無傷の滑面小胞体、又は無傷のゴルジ体のうち1以上を含む。無傷の細胞オルガネラを含有する溶解物を調製し、及び該オルガネラの機能を試験するための適切な方法については、例えば、以下の文献に記載されている:Moreau et al. (1991) J. Biol. Chem. 266(7):4329−4333; Moreau et al. (1991) J. Biol. Chem. 266(7):4322−4328; Rexach et al. (1991) J. Cell Biol. 114(2):219−229; and Paulik et al. (1999) Arch. Biochem. Biophys. 367(2):265−273。これら各文献の開示内容全体も本明細書に組み込まれる。
【0090】
SAPポリペプチドは、グリコシル化活性を有するただ1種類の精製蛋白質に接触させることができる。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチドは、グリコシル化活性を有する複数種の精製蛋白質に接触させることができる。グリコシル化活性を有する1種以上の蛋白質は、標準的な蛋白質単離技術を用いて精製することができる。上述したように、SAPポリペプチドは、該SAPポリペプチドの改変を誘導するのに充分な時間で、適切なバッファ中の1種以上の蛋白質に接触させることができる。SAPポリペプチドは、複数種の蛋白質と同時に又は連続して接触させることができる。SAPポリペプチドが、グリコシル化活性を有する複数種の蛋白質と連続して接触している場合には、前記SAPポリペプチドは、必ずしも必要ではないが、1以上のステップ後に精製することができる。即ち、SAPポリペプチドは、蛋白質活性「A」と接触させ、その後、該分子を蛋白質活性「B」に接触させる前に精製することができる。このようにペプチドを改変する方法については、例えば、以下の公知文献がある:Lee and Park (2002) 30(6):716−720 and Fujita and Takegawa (2001) Biochem. Biophys. Res. Commun. 282(3):678−682。そして、該文献の開示内容全体も本明細書に組み込まれる。
【0091】
ある態様において、本開示内容方法は、SAPポリペプチドを単離するステップを含み、例えば、細胞や細胞溶解産物の成分から単離する方法がある。蛋白質単離のための多くの標準的な技術が公知となっている。例えば、ポリペプチドを単離する方法として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC)、アフィニティクロマトグラフィー(例えば、金属キレート又はイムノアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性-相互作用クロマトグラフィー、沈降、分別可溶化(differential solubilization)、免疫沈降、遠心分離(例えば、超遠心、スクロース勾配遠心等)、又はこれらの任意の組合せ。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチドは、ポリペプチドの精製を促進するためにアフィニティタグと結合することができる。SAP精製のための適切なアフィニティタグとして以下の物が含まれるが、これらに限定されない:キチン結合蛋白質(CBP)、マルトース結合蛋白質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ストレプトアビジン、ビオチン、及びポリ(His)タグ。アフィニティタグは、組み換え型蛋白質の一部として(即ち、非相同性親和性タグドメイン及びSAPポリペプチドドメインを含む融合蛋白質として)生成することができ、又はインビボ又はインビトロでSAPポリペプチドに(共有結合的に又は非共有結合的に)結合させることができる。幾つかの実施形態において、多数の精製ステップを用いて、SAPポリペプチドを単離することができる。例えば、精製タグを含むSAPポリペプチドは、アフィニティ精製を用いて、細胞溶解産物又は複数成分混合物から、アフィニティー精製することができる。アフィニティー精製されたSAPポリペプチドは、更なる精製ステップ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、又はRP−HPLC)によって、更なる精製を行い、望ましくない任意の少量混入物を除去することができる。本発明ポリペプチドが細胞内で生成される場合、SAPポリペプチドは、細胞自体又は細胞を培養した培地から単離することができる。幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは生成されて、細胞から培養培地へ分泌される。これらの実施形態において、単離ステップは、(例えば遠心分離によって)可溶性のSAP含有画分から、細胞画分を分離することを含むことができる。
【0092】
幾つかの態様において、SAPポリペプチドは、該ターゲット分子を1種以上のN−グリコシル化活性と接触させる前に、固相担体に結合させることが有利となり得る。こうした結合により、N−グリコシル化改変の後の精製を容易にすることができる。適切な固相担体としては、マルチ・ウェル・アッセイ・プレート、粒子(例えば、磁気粒子又はエンコード粒子)、クロマトグラフィーカラム、又はメンブレンが含まれるがこれらに限定されない。
【0093】
幾つかの実施形態において、本明細書中に記載の任意の改変SAPポリペプチドは、酵素的又は化学的手段を用いて、非相同部分と結合させることができる。「非相同部分」とは、前記改変されたターゲット分子に(例えば、共有結合的又は非共有結合的に)結合させた任意の置換部分を意味し、ここで、置換部分は、SAPポリペプチド上に元来存在している置換部分とは異なる。非相同部分としては、例えば、水-可溶性ポリマー、及び水-不溶性ポリマー、ターゲティング部分、治療用部分、診断用部分並びに生体分子が含まれる。
【0094】
本発明のSAPポリペプチドは、1以上の「改変された」糖残基を含むことができる。改変基は、酵素的手段、化学的手段、又はこれらの組合せによって、糖部分に結合させることができ、これにより、改変された糖、例えば改変ガラクトース、フコース、又はシアル酸が生成される。改変シアル酸を使用する場合には、シアニル−トランスフェラーゼ、又はトランス−シアリダーゼのいずれかを、該方法において使用することができる。糖は、改変部分に結合することができる任意の位置において置換を行うことができ、該置換によってもなお、改変された糖をペプチドに結合させるために使用される酵素の基質として糖が機能することが可能となっている。
【0095】
一般的に、糖部分及び改変基は、反応基の使用を介して互いに結合しており、該反応基は、典型的には結合プロセスによって、新たな有機的官能基又は非反応種に転換される。糖反応性官能基(複数可)は、糖部分上の任意の部位に位置することができる。本発明を実施する際に有用となる反応基及び反応の種類は、生物結合化学(bioconjugate chemistry)においてよく知られた一般的なものである。反応性糖部分を用いた利用可能な現時点で好まれる反応の種類は、比較的マイルドな条件下で進行する反応である。これらに含まれるものとして、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:求核置換(例えば、アシルハロゲン化物を持ちいたアミン及びアルコールの反応、活性エステル)、求電子置換(例えば、エナミン反応)、並びに炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル付加反応、ディールス・アルダー付加反応)。これらの反応及び他の有用な反応については、例えば以下の文献で議論されている:Smith and March, Advanced Organic Chemistry, 5th Ed., John Wiley & Sons, New York, 2001; Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, 1996; and Feeney et al., Modification of Proteins; Advances in Chemistry Series, Vol. 198, American Chemical Society, Washington, D.C., 1982。
【0096】
糖核(sugar nucleus)からの有用な反応性官能基ペンダント、又は改変基としては、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:(a)カルボキシル基又は様々なそれらの誘導体(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド エステル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトリフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族エステル);(b)ヒドロキシル基(ここで、例えば、エステル、エーテル、アルデヒド等に変換可能である);(c)ハロアルキル基(ここで、ハロゲン化物は、後に求核基に置換することができ、例えば、アミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カロボアニオン、又はアルコキシドイオンが挙げられ、該置換によって、ハロゲン原子の官能基部位で新たな基の共有結合が結果的に生じる);(d)ジエノフィル基(Diels−Alder反応に関与する能力があり、例えばマレイミド基がある);(e)アルデヒド又はケトン基(続いて、誘導体化することが可能であり、該誘導体化は、カルボニル誘導体の形成(例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン、又はオキシム)を介するか、又はグリニャール付加若しくはアルキルリチウム付加(alkyllithium addition)等の機構を介する);(f)スルホニルハロゲン基(続いてアミンと反応し、 例えば、スルホンアミドを形成することを目的とする);(e)チオール基(例えば、ジスルフィドに変換したり、又はアルキル及びアシルハロゲン化物と反応させたりすることが可能である);(h)アミン又はメルカプト基(例えば、アセチル化したり、アルキル化したり、又は酸化したりすることができる);(i)アルケン(例えば、環状付加、アシル化、マイケル付加、メタセシス、ヘック反応等が可能である)(j)エポキシド(例えば、アミンやヒドロキシル化合物と反応可能である)。
【0097】
反応性官能基は、反応性糖核又は改変基を組み立てるのに必要な反応に関与しないように又は干渉しないように選択することができる。或いは、反応性官能基は、保護基の存在によって、反応に関与することから保護することができる。選択した反応条件の設定に干渉しないように、特定の官能基を保護する方法については当業者に理解されている。有用な保護基の例については、例えば以下の文献を参照されたい:Greene et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1991。
【0098】
幾つかの実施形態において、改変された糖は、活性化された糖である。本発明において有用である活性化された改変糖は、典型的にはグリコシドであり、化学合成的に変更されて、活性化された脱離基を含む。本明細書中で使用される用語「活性化された脱離基」とは、酵素制御求核置換反応において、容易に置換される部分のことを意味する。多くの活性化された糖が当分野で公知となっており、例えば、以下の文献を参照されたい:Vocadlo et al., In Carbohydrate Chemistry and Biology,, Vol. 2, Ernst et al. Ed., Wiley−VCH Verlag: Weinheim, Germany, 2000; Kodama et al., Tetrahedron Lett. 34: 6419 (1993); Lougheed, et al., J. Biol. Chem. 274: 37717 (1999))。こうした脱離基の例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、トシル、メシレート、トリフラート等が含まれる。本発明の使用目的においては、活性化された脱離基は、グリコシドをアクセプターに酵素的に転移することを有意にそして立体的に妨げない基であることが好ましい。従って、活性化されたグリコシド誘導体の好ましい実施形態として、グリコシル・フッ化物及びグリコシル・メシレートが含まれるが、グリコシル・フッ化物が特に好ましい:前記グリコシル・フッ化物の中で、以下のものが最も好ましい:α−ガラクトシルフッ化物、α−マンノシルフッ化物、α−グルコシルフッ化物、α−フコシルフッ化物、α−キシロシルフッ化物、α−シアニルフッ化物、α−N−アセチルグルコサミニルフッ化物、α−N−アセチルグルコサミニルフッ化物、β−ガラクトシルフッ化物、β−マンノシルフッ化物,beta−グルコシルフッ化物、β−フコシルフッ化物、β−キシロシルフッ化物、β−シアニルフッ化物、β−N−アセチルグルコサミニルフッ化物及びβ−N−アセチルガラクトサミニルフッ化物。
【0099】
ある態様において、改変された糖残基は、1種以上の水−可溶性ポリマーと結合している。多くの水−可溶性ポリマーが当業者に知られており、本発明を実施するに当たって有用である。用語「水−可溶性ポリマー」とは、以下のような化学種を含む:糖類(例えば、デキストラン、アミロース、ヒアルロン酸、ポリ(シアル酸)、ヘパラン、ヘパリン等);ポリ(アミノ酸);核酸;合成的ポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エーテル)、例えば、ポリ(エチレングリコール));ペプチド、蛋白質等。本発明は、共役部分の残りが結合できる部位をポリマーが含まなくてはならないという唯一の制限のもとで、任意の水−可用性ポリマーを用いて実施することができる。
【0100】
水−可溶性ポリマー及び糖類の活性化のための方法及び化学、並びに糖類及びポリマーを様々な化学種に結合させるための方法が文献に記載されている。ポリマーを活性化させるために用いられるありふれた方法として、官能基を以下の物によって活性化させることが含まれる:臭化シアン、過ヨウ素酸、グルタルアルデヒド、バイ−エポキシド、エピクロロヒドリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、スルホニルハロゲン化物、トリクロロトリアジン等(以下の文献を参照されたい:R. F. Taylor, (1991), Protein Immobilization, Fundamentals and Applications, Marcel Dekker, N.Y.; S. S. Wong, (1992), Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking, CRC Press, Boca Raton; G. T. Hermanson et al., (1993), Immobilized Affinity Ligand Techniques, Academic Press, N.Y.; Dunn, R. L., et al., Eds. Polymeric Drugs and Drug Delivery Systems, ACS Symposium Series Vol. 469, American Chemical Society, Washington, D.C. 1991)。
【0101】
ある態様において、改変された糖残基は、1種以上の水−不溶性ポリマーと結合されている。幾つかの実施形態において、水−不溶性ポリマーへの結合を使用して、治療用ペプチドを制御された態様で送達することができる。ポリマー性薬剤送達システムは当分野で公知であり、例えば、以下の文献を参照されたい:Dunn et al., Eds. Polymeric drugs and Drug Delivery Systems, ACS Symposium Series Vol. 469, American Chemical Society, Washington, D.C. 1991。実質的にあらゆる既知の薬剤送達システムが本発明の結合物に提供できることを当業者は理解するであろう。
【0102】
代表的な水−不溶性ポリマーとして、以下の物が含まれるがこれらに限定されない:ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリグリコール酸、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニル酢酸)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、プルロニック、及びポリビニルフェノール、並びにこれらのコポリマー。
【0103】
本明細書中で議論したこれら及び他のポリマーについては、市販の販売元から容易に手に入れることができ、例えば、Sigma Chemical Co. (セントルイス, ミズーリ州.)、Polysciences (ワレントン, ペンシルバニア州.)、Aldrich (ミルウォーキー, ウィスコンシン.)、Fluka (ロンコンコマ,ニューヨーク州.)、及びBioRad (リッチモンド、カルフォルニア州)が挙げられる。または、標準的な技術をもちいて、上記販売元から入手したモノマーから合成される。本発明の結合物において有用な生分解性ポリマーの代表的な物として以下の物が含まれるがこれらに限定されない:ポリラクチド、ポリグリコール酸及びこれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水和物、ポリオルトエステル、これらのブレンド、並びにこれらのコポリマー。特に有用な組成物としては、ゲル(例えばコラーゲンやプルロニックを含むゲル)を形成する組成物がある。
【0104】
好ましい実施形態において、1以上の改変された糖残基は、1種以上のPEG分子と結合される。
【0105】
ある態様において、前記改変された糖は、生体分子と結合される。本発明の生体分子として以下の物が含まれるがこれらに限定されない:機能的蛋白質、酵素、抗原、抗体、ペプチド、核酸(例えば、単一のヌクレオチド、又はヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び、一本鎖及び多本鎖核酸)、レクチン、受容体又はこれらの組合せ。幾つかの好ましい生体分子 は、本質的に非蛍光であるか、又はアッセイ中に蛍光マーカーとして使用するのに不適切である最小量の蛍光しか放出しない。他の生体分子は、蛍光性であってもよい。
【0106】
幾つかの実施形態において、前記生体分子は、ターゲット部分となっている。本明細書中で使用される「ターゲット部分」及び「ターゲット薬剤」は、特定の組織又は生体領域中に選択的に局在化させる化学種を意味する。幾つかの実施形態において、生体分子は、特定の細胞内区画に本発明のSAPポリペプチドを向かわせるために選択される。それによって、組織に送達される誘導体化されていないペプチドの送達量と比べて、細胞内区画への前記ペプチドの送達を強化している。局在化については、分子決定因子、ターゲット薬剤又は結合物の分子サイズ、イオン相互作用、疎水性相互作用等の特定の認識を介して行われる。薬剤を特定の組織又は領域に向かわせる他の機構は、当業者に知られている。
【0107】
幾つかの実施形態において、改変された糖は、治療用成分を含む。治療用成分及び生体分子のカテゴリー間で重複があり、即ち、多くの生体分子は、治療用の特性及び潜在能力を有していることを当業者は理解するであろう。
【0108】
有用な治療用成分の分類として、例えば、以下のものが含まれる:非ステロイド性抗炎症薬;ステロイド性抗炎症薬;アジュバンド;抗ヒスタミン性薬剤;鎮咳性薬;かゆみ止め薬;抗コリン作用性薬;抗嘔吐薬及び制吐薬;食欲低下薬;中枢興奮剤;抗不整脈薬;β−アドレナリンブロッカー剤;強心剤;血圧降下薬;血管拡張剤;血管収縮剤;抗潰瘍剤;麻酔薬;抗欝剤;トランキライザー及び鎮静剤;抗精神病薬;並びに抗菌剤。
【0109】
本発明を実施する際に有用な他の薬剤成分として、以下の物が含まれる:抗新生物薬、殺菌薬、抗エストロゲン、及び代謝拮抗薬。また、該分類に含まれるものとして、診断(例えば、イメージング)及び治療法の両方の目的となる放射性同位体ベースの薬剤、及び結合毒素がある。
【0110】
また、前記治療用成分は、以下の物であっても良い:ホルモン、筋弛緩剤、抗けいれん薬、骨活性薬(bone activating agent)、内分泌調整薬、糖尿病調整薬、アンドロゲン、抗利尿薬、カルシトニン製剤。
【0111】
他の有用な改変群としては、免疫操作薬、免疫抑制剤等が含まれる。また、抗炎症性活性を有する群(例えば、スリンダク、エトドラク、ケトプロフェン 及びケトロラク)も有用である。本発明に関連した他の有用な薬剤は、当業者にとって明らかであろう。
【0112】
本開示内容の方法によって生成された改変N−グリコシル化SAPポリペプチドは、均一(即ち、SAPポリペプチドサンプルが、特定のN−グリカン構造に統一されている)又は実質的に均一となることができる。「実質的に均一」とは、以下の割合のSAPポリペプチドが同一かつ特定のN−グリカン構造を含むことを意味する:少なくとも約25%(例えば、少なくとも約27%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%)。
【0113】
幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチド変異体は、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するためのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の2分の1、3分の1、4分の1、10分の1、又は100分の1よりも少ない。線維芽細胞分化に関する応答であって、SAPに対する末梢血単核球(PBMC)又は単球細胞の応答を決定するために特徴付けられた方法が数多く存在する。こうした方法を用いることにより、ヒト血清由来SAP、任意の他のSAP変異体ポリペプチド、又は他の線維芽細胞抑制剤若しくは活性剤のサンプルと比較して、本発明に係る任意のSAPポリペプチド変異体の相対的な効能を決定することができる。これらの方法の使用に適したPBMC又は単球は、様々な組織の培養株から得ることができる。或いは、線維芽細胞分化アッセイ用の適切な細胞は、PBMC又は単球細胞を含む任意の生物学的サンプルから得ることができる。生物学的サンプルは、血清、プラズマ、健康な組織、又は線維組織から得ることができる。一般的に、線維芽細胞分化アッセイは、様々な濃度のSAPポリペプチドを有する培地中にPBMC又は単球細胞をインキュベートして、線維芽細胞分化の度合いを決定することによって行われる。SAPの濃度は0.0001μg/mL〜1mg/mlの範囲にわたってもよく、幾つかの実施形態において、以下の濃度であってもよい:0.001μg/mL、1.0μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、又は500μg/mL。幾つかのアッセイにおいて、培地には、1−100ng/mlのhMCSFを添加することができる;好ましいhMCSF濃度は、25ng/mLである。PBMC及び単球が線維芽細胞に分化したことは、当業者によって決定することができる。一般的に、線維芽細胞は、長く伸びた紡錘形と卵型の核の存在とを有する粘着性の細胞として形態学的に定義されている。 幾つかのアッセイにおいて、例えば、倒立顕微鏡を用いて直接カウントすることによって線維芽細胞を数える前に、細胞は固定されて、Hema 3で染色される。線維芽細胞分化の量は、SAPに対する細胞応答を表すものとして当業者に解釈される。本開示内容の実施例に表されるように、線維芽細胞分化の抑制度合いが大きい場合には、SAP応答の度合いが大きいことを表す。線維芽細胞分化を測定する別の方法では、線維芽細胞に特異的な細胞表面マーカーや分泌因子の発現を検出することを伴う(例えば、サイトカイン(例えば、IL−1ra、ENA−78/CXCL−5、PAI−1)、フィブロネクチン, コラーゲン−1)。細胞表面マーカー又は分泌因子を検出及び/又は定量する方法は当分野で公知であり、1種以上の線維芽細胞特異的マーカーに対する免疫反応性の抗体を用いた様々なELISA及びFACSベースの技術が含まれるがこれらに限定されない。本開示内容の実施例に記載されているが、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)の発現を測定することは、線維芽細胞分化を測定する効果的な方法である。
【0114】
SAPポリペプチドのN−グリコシル化(例えば、改変されたN−グリコシル化)を検出及び/又は特徴づける方法として、DNAシーケンサー補助(DNA sequencer−assisted (DSA))、蛍光ラベル糖鎖電気泳動 (FACE)、又は表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(SELDI−TOF MS)が含まれる。例えば、分析としては、DSA−FACEを用いることができ、ここで、例えば、固定化(例えば膜上に)される前に糖蛋白質は変性させる。その後、糖蛋白質は、ジチオトレイトール(DATA)又はβ−メルカプトエタノール等の適切な還元剤を用いて還元することができる。蛋白質のメルカプト基は、ヨード酢酸等の酸を用いてカルボキシル化することができる。次にN−グリコシダーゼF等の酵素を用いて、N−グリカンを蛋白質から遊離させることができる。任意で、N−グリカンは、還元的アミノ化することによって、再構築及び誘導体化することができる。その後、前記誘導体化N−グリカンは、濃縮することができる。N−グリカン分析に適切な機器としては、例えば、ABI PRISM(登録商標) 377 DNA sequencer (Applied Biosystems)が含まれる。データ分析については、例えば、GENESCAN(登録商標).3.1ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて行うことができる。任意で、単離されたマンノプロテインは、更に1種以上の酵素で処理して、該N−グリカンの状態を確認することができる。例示的な酵素としては、例えば、α−マンノシダーゼ又はα−1,2 マンノシダーゼが含まれる。N−グリカン分析の更なる方法としては、以下のものが含まれる:例えば、質量分析法(例えば、MALDI−TOF−MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(順相又は逆相)、及びイオン交換クロマトグラフィー(例えば、グリカンがラベルされていない場合には、パルス電流を用い、グリカンが適切にラベルされている場合には、UV吸収や蛍光を用いる)。また、以下の文献も参照されたい: Callewaert et al. (2001) Glycobiology 11(4):275−281 and Freire et al. (2006) Bioconjug. Chem. 17(2):559−564。前記文献の開示内容全体は、本明細書に組み込まれる。
【0115】
処理方法
1つの態様において、本開示内容は、患者においてSAP応答異常を治療するための方法を提供し、該方法は、治療を必要とする患者に本発明のSAPポリペプチド変異体を治療上有効量で投与することによる。治療における投与量及び頻度は、当業者が決定することができ、患者の症状、年齢、及び体重、並びに治療又は予防すべき異常の性質や発病度合いによって変動するであろう。幾つかの実施形態において、SAPポリペプチド変異体は、患者に対して、1日に1回若しくは2回、1週間に1回若しくは2回、ひと月に1回若しくは2回、又は症状の発症直前若しくは発症時に投与される。
【0116】
投与量については、当業者に知られた技術又は本明細書中の教示によって容易に決定することができる。SAPの毒性及び治療用効率は、実験動物での標準的な医薬的手続によって決定することができ、例えば、LD50及びED50を決定することができる。前記ED50(Effective Dose 50)は、50%の動物群において特定の効果を生み出すのに必要な薬剤量である。LD50(Lethal Dose 50)は、50%のサンプル群を殺す薬剤量である。
【0117】
幾つかの実施形態において、SAP応答異常は線維症である。線維症のための治療としてSAPを使用することについては、米国特許出願2007/0243163号に記載されており、本明細書中に組み込まれる。対象の方法を用いた治療を受けることができる線維症関連の異常として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:コラーゲン病、間質性肺疾患、ヒト線維性肺疾患(例えば、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症、既知の病因からの肺線維症、肺疾患における腫瘍ストロマ、肺に影響を及ぼす全身性強皮症、Hermansky−Pudlak症候群、石炭労働者の塵肺症、石綿症、珪肺、慢性肺高血圧症、AIDS関連肺高血圧症、サルコイドーシス、中度から深刻なものまでの喘息等)、繊維性の血管病、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、冠梗塞、脳梗塞、心筋線維症、筋骨格線維症、術後癒着、ヒト腎臓病(例えば、腎炎症候群、アルポート症候群、HIV関連ネフロパシー、腎嚢胞、ファブリー病、糖尿病性ネフロパシー、慢性糸球体腎炎、全身性狼瘡に関連した腎炎等)、全身性進行性硬化症(PSS)、初期スカロッピング胆管炎(primary scalloping cholangitis (PSC))、肝臓線維症、肝硬変、腎臓線維症、肺線維症、嚢胞性繊維症、慢性移植片対宿主病、強皮症(局所性及び全身性)、グレーブス眼症、糖尿病性網膜症、緑内障、ペーロニー病、ペニス線維症、膀胱鏡検査後の尿道狭窄症、外科手術後の内側癒着、瘢痕化、骨髄線維症、突発性腹膜後線維症、既知の病因からの腹膜性線維症、薬剤誘導麦角中毒、良性又は悪性癌に付随する線維症発生、微生物感染付随する線維症発生(例えば、ウィルス性、細菌性、寄生虫性、真菌性等)、アルツハイマー病、炎症性腸疾患に付随する線維症(クローン病及び顕微鏡的大腸炎における狭窄形成を含む)、ストローマ細胞腫瘍、粘膜炎、化学的又は環境的な損傷によって誘発される線維症(例えば、癌化学療法、殺虫剤、又は放射線(例えば、癌放射線治療))。
【0118】
幾つかの実施形態において、線維症関連の異常は、以下のものから選択される:全身性又は局所性強皮症、ケロイド、肥大性傷跡、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺炎、及び線維症、突発性肺線維症、肝硬変、慢性B型又はC型肝炎感染の結果生じる線維症、腎臓病、損傷組織の結果から生じる心臓病、黄斑改質、並びに網膜症及びガラス体網膜症。幾つかの実施形態において、線維症関連異常は、化学療法の薬剤、放射線誘発線維症、並びに傷及び火傷から生じる。幾つかの実施形態において、線維症関連異常又は症状は、術後の傷跡、例えば、続いて行われる線維柱帯切除術、又は他の眼のろ過手術、から生じる。
【0119】
幾つかの実施形態において、SAP応答性異常は、過敏性異常であり、例えば、Th1又はTh2応答を介したものが挙げられる。また、過敏症治療用としてのSAPの使用については、米国仮特許出願番号61/209,795に記載されており、本明細書に組み込まれる。SAPを用いた治療を受けることができる過敏性関連異常としては、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性気管支収縮、アレルギー性呼吸困難、アレルギー性である肺粘液生成の増加、アトピー性湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、肺炎及びアレルギー性−喘息。
【0120】
幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチド変異体は、アナフィラキシー等の様々な抗原に対するアレルゲン特異的免疫応答を治療するために使用することができ、以下の抗原が含まれるがこれらに限定されない:抗菌剤(例えば、セファロスポリン、スルホンアミド、ペニシリン及び他のβ−ラクタム)、抗痙攣薬(例えば、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、ダプソン、アロプリノール、及びミノサイクリン)、化学療法剤(例えば、タキサン、白金化合物、アスパラギナーゼ、及びエピポドフィロトキシン)、ヘパリン、インシュリン、プロタミン、アスピリン、及び他の非ステロイド性抗炎症性薬剤、筋弛緩剤(例えば、サクシニルコリン、アトラクリウム、ベクロニウム、及びパンクロニウム)、誘導剤(induction agents)(例えば、バルビツレート、エトミデート、プロポフォール)、麻酔薬(例えば、フェンタニル、メペリジン、モルヒネ)、血管内容量拡張のためのコロイド、造影剤、血液製剤、ラテックス、動物産物、動物鱗屑、イエダニ、昆虫(例えば、牙、針、毒液)、化粧品、金属(例えば、ニッケル、コバルト、及びクロム酸)、植物、胞子、花粉、食物(例えば、ミルク、卵、小麦、大豆、ピーナッツ、及び木の実、シーフード)、ワクチン接種、及び真菌性の抗原(例えば、Aspergillus, Curvularia, Exserohilum,及びAlternaria species)。
【0121】
幾つかの実施形態において、SAP応答性異常は、自己免疫疾患であり、例えば、Th1又はTh2応答を介するものが挙げられる。また、自己免疫疾患のための治療剤としてSAPを使用することについては、米国仮特許出願61/209,845に記載されており、本明細書中に組み込まれる。SAPを用いた治療を受けることができる自己免疫関連の異常として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:I型糖尿病、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性Lyme関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性突発性関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患、及び移植片対宿主病。
【0122】
幾つかの実施形態において、SAP応答性異常は粘膜炎である。また、粘膜炎のための治療材としてSAPを使用することについては、米国仮特許出願12/217,614に記載されており、本明細書中に組み込まれる。本発明の方法は、口内、食道、及び胃腸の粘膜炎、並びに胃潰瘍、十二指腸潰瘍、又は胃及び食道のびらんの治療に有用である可能性がある。
【0123】
幾つかの実施形態において、本発明のSAPポリペプチド変異体は、炎症性の病気又は症状を治療するために使用することができる。幾つかの実施形態において、炎症性疾患は、ウィルス性、細菌性、真菌性、又は寄生虫性の感染であってもよい。また、ウィルス性感染のための治療剤としてSAPを使用することについては、米国特許6,406,698及び国際公開WO1997/026906に記載されており、本明細書中に組み込まれる。
【0124】
医薬的調製物及び配合物
ある実施形態において,本明細書中に記載の方法は、少なくとも1種の本発明のSAPポリペプチド変異体を、治療用薬剤として被験者に投与することを伴う。本発明の治療用薬剤は、1種以上の生理学的に許容可能なキャリア又は賦形剤を用いた従来の態様で配合することができる。例えば、治療用薬剤並びにそれらの生理学的許容可能な塩及び溶媒和物は、以下の方法で投与するために配合することができる:例えば、注入(例えば、SubQ、IM,IP)、吸入若しくは吹送(口又は鼻のいずれかを介して)、又は経口、口腔内、舌下、経皮的、鼻腔、非経口(腸管外)、若しくは直腸の投与。ある実施形態において、治療用薬剤は、ターゲット細胞が存在する部位(即ち、特定の組織、器官、又は液体(例えば、血液、脳脊髄液、腫瘍量等))に局所的に投与することができる。
【0125】
また、本発明は、本発明に係る任意のSAPポリペプチド変異体の利用を更に提供し、該利用とは、本明細書中に記載した異常又は症状を患者において治療又は予防するための薬品を製造する際の利用であり、例えば、本明細書中に記載した異常又は症状の治療のための薬品を製造する際にSAPポリペプチド変異体を利用することである。幾つかの態様において、本発明に係る任意のSAPポリペプチド変異体は、本明細書中に記載した病気又は症状の治療又は予防を行う際に使用するための医薬製剤を製造するために使用することができる
【0126】
治療用薬剤は、種々の投与モードのために配合することができ、該投与モードとしては、全身性及び局在性又は局所性の投与が含まれる。技術及び配合については、一般的に、以下の文献に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PA。非経口(腸管外)投与に関しては、注射が好ましく、筋肉内、静脈内、腹腔内及び皮下の注入が含まれる。注射に関しては、化合物は液体溶液中に配合することができ、好ましくは、生理学的適合可能なバッファ(例えば、ハンクス溶液、又はリンガー溶液)中に配合する。更に、前記化合物は、固体形態で配合して、使用直前に溶解又は懸濁することもできる。また、凍結乾燥形態も含まれる。幾つかの実施形態において、治療用薬剤は、当業者に知られた種々の方法で細胞に投与することができ、該方法として以下の方法が含まれるがこれらに限定されない:リポソーム中でカプセル化、イオン浸透療法、他のベシクル内への取り込み(例えば、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生付着性ミクロスフェア)。
【0127】
経口投与に関しては、医薬的組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、又はカプセルといった形態をとることができ、該形態は、従来の手段で、医薬的に許容可能な賦形剤と共に調製される。該賦形剤としては、例えば以下のものが含まれる:結合剤(例えば、予めゼラチン状にしたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、、ラクトース、微結晶性セルロース、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ);錠剤分解物質(例えば、ポテトデンプン、又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)。錠剤は、周知の方法でコーティングすることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、又は懸濁液等の形態をとることができ、また、該調製物は、水や他の適切な媒体を使用前に用いて構築するための乾燥生成物として提供されてもよい。前記液体調製物は、従来の手段を用いて医薬的に許容可能な添加剤と共に調製することができる。該添加剤として、例えば以下の物が含まれる:沈殿防止剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化された食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は画分化した植物性油);、及び保存剤(例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、又はソルビン酸)。また、調製物は、バッファ塩、矯味剤、着色剤、及び甘味料を適宜含むことができる。経口投与のための調製物は、活性化合物を制御しながら放出するために適切に配合することができる。
【0128】
吸入による投与(例えば、肺への送達)に関して言うと、治療用薬剤は、便宜上、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガス)を使用して、加圧パック又は噴霧器からエアロゾル・スプレー投与する形態で投与することができる。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された分量だけ送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。吸入器又は吹き入れ器において使用することを目的とする、例えば、ゼラチン等のカプセル及びカートリッジは、前記化合物と適切な粉末ベース(ラクトース又はデンプン等)との混合粉末を含有して配合することができる。
【0129】
また、本発明の方法において、医薬的化合物は、吹送、粉末、及びエアロゾル配合物を含む鼻腔内又は気管支内の経路で投与することができる(例えば、ステロイド吸入剤については、以下の文献を参照されたい:Rohatagi (1995) J. Clin. Pharmacology. 35:1187−1193; Tjwa (1995) Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107−111)。例えば、エアロゾル配合物は、許容可能な加圧推進薬(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等)内に設置することができる。また、前記配合物は、例えば、噴霧器(nebulizer又はatomizer)中など、非加圧調製物のための医薬品として配合することもできる。典型的には、前記投与は、医薬的に許容可能な水性バッファ中での形態となる。
【0130】
SAPポリペプチド変異体の呼吸系送達(例えば、鼻腔、吸入等)に適切な医薬組成物は、固体又は液体のいずれかの形態で調製することができる。
【0131】
本発明のSAPポリペプチドは、注入(例えば、大量注入又は連続注入)による非経口(腸管外)投与の為に配合することができる。注入のための配合物は、添加保存薬と共に、単位投与形態(例えば、アンプル、又はマルチ投与容器)で投与することができる。組成物は、例えば、油性又は水性の媒体中で懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態をとることができる。そして、該組成物は、製剤化剤(例えば、沈殿防止剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含むことができる。或いは、前記活性成分は、使用前に適切な媒体(例えば、滅菌済発熱性物質除去水)を用いて構築するための粉末形態であってもよい。
【0132】
また、本発明のSAPポリペプチドは、デポ製剤(蓄積性製剤)として配合することもできる。こうした長期間作用する配合物は、移植(例えば、皮下、又は筋肉内、)、又は筋肉内注入によって投与することができる。従って、例えば、治療用薬剤は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂、又は難可溶性誘導体(例えば、難可溶性可溶性塩)を用いて配合することができる。また、制御放出配合物として、パッチも含まれる。
【0133】
ある実施形態において、本明細書中に記載の化合物は、中枢神経システム(CNS)への送達目的で配合することができる(下記の文献を参照されたい:in Begley, Pharmacology & Therapeutics 104: 29−45 (2004))。CNSへの薬物送達のための従来のアプローチは、以下のものがふくまれる:神経外科手術的方法(例えば、脳内注入、又は脳室内注入);薬剤の分子的な操作(例えば、内因性輸送経路の1つである脳血流関門を利用しようとする試みにおいて、それ自体脳血流関門を通過することができない薬剤と組み合せて、内皮細胞表面分子と親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラの融合蛋白質を製造すること);薬剤の脂質溶解度を増加させるようにデザインする薬理学的方法(例えば、脂質又はコレステロールキャリアに水可溶性薬剤を結合させること);及び、高浸透圧破壊によるBBB(脳血流関門)の完全性の一時的な破壊(頚動脈にマンニトール溶液を注射すること、又はアンギオテンシンペプチド等の生物学的活性剤の使用することから生じる)。
【0134】
ある実施形態において、本発明のSAPポリペプチドは、局所性配合物に組み込まれ、該配合物は、局所的薬物投与に一般的に適した局所性キャリアを含有し、及び任意の前述した公知物質を含む。前記局所性キャリアは、所望の形態で組成物を提供するように選択することができ、例えば、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、オイル、溶液等が挙げられる。また、前記局所性キャリアは、天然由来又は人工合成由来のいずれかの材料で構成することができる。選択されたキャリアは、局所性配合物の活性剤又は他の構成成分に逆効果を及ぼさないことが好ましい。本明細書中の使用のための適切な局所性キャリアの例としては、水、アルコール及び他の非毒性有機的溶媒、グリセリン、鉱物油、シリコーン、ワセリン、ゼリー、ラノリン、脂肪酸、植物性油、パラベン、ワックス等が含まれる。
【0135】
医薬的組成物(化粧用調整物も含む)は、約0.00001〜100%の割合(例えば、0.001〜10重量%、又は0.1重量%〜5重量%)で本明細書中に記載の1種以上のSAPポリペプチド変異体を含むことができる。ある局所的配合物において、活性剤は、以下に述べる量で存在する:約0.25重量%〜75重量%の配合物、好ましくは約0.25重量%〜30重量%の配合物、より好ましくは約0.5重量%〜15重量%の配合物、そして、最も好ましくは約1.0重量%〜10重量%の配合物。
【0136】
眼の症状については、例えば、治療用薬剤の全身の、局所的な、眼内の注入を行うことにより、又は治療用薬剤を放出する持続放出デバイスを挿入することにより、治療又は予防を行うことができる。本発明のSAPポリペプチドは、眼の角膜及び内部領域(例えば、前眼房、結膜、後眼房、硝子体、眼房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜、及び強膜)へ化合物が浸透するのに充分な時間、化合物の眼表面への接触を維持させるように医薬的に許容可能な眼の媒体中に送達することができる。前記医薬的に許容可能な眼の媒体は、例えば、軟膏、植物性油、又はカプセル材料であってもよい。或いは、前記化合物は、直接硝子体及び眼房水に注入することができる。更に別の方法として、前記化合物は、眼の治療目的で、静脈内への注射又は注入等により、全身へ投与することもできる。
【0137】
本明細書中に記載の治療用薬剤は、当分野での方法に従った酸素の無い環境で保存することができる。
【0138】
例示的な組成物は、1種以上の医薬的に許容可能なキャリア、及び、任意で、他の治療用成分とともに、SAPポリペプチドを含むことができる。キャリア(複数可)は、組成物の他の成分と適合可能で、患者において許容できない有害な効果を誘引しないという意味において、「医薬的に許容可能」でなければならない。こうしたキャリアについては、本明細書中に記載されているか、又は薬理学分野の当業者に周知である。幾つかの実施形態において、医薬的組成物は、発熱性物質を含まず、ヒト患者への投与に適している。幾つかの実施形態において、医薬的組成物は、無刺激であり、ヒト患者への投与に適している。幾つかの実施形態において、医薬的組成物は、アレルゲンを含まず、ヒト患者への投与に適している。組成物は、調剤分野で周知である任意の調剤方法によって製造することができる。
【0139】
幾つかの実施形態において、SAPポリペプチドは、時間放出配合物中で投与され、例えば、除放ポリマーを含む組成物中で投与される。SAPポリペプチドは、急激な放出から保護するキャリアと共に製造することができる。例としては、制御放出媒体(例えば、ポリマー)、マイクロカプセル化した送達システム、又は生体付着生ゲルが含まれる。或いは、SAPポリペプチドの延長送達は、吸収を送らせる組成物薬剤中に含ませることによって達成することができる(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ヒドロゲル、及びゼラチン)。
【0140】
核酸化合物を送達する方法については当分野で公知である(例えば、以下の文献を参照されたい:Akhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139; 及び Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics, ed. Akhtar, 1995; Sullivan et al., 国際公開WO 94/02595)。こうしたプロトコルを、実質的にすべての核酸化合物を送達するために使用することができる。核酸化合物は、当業者に知られた様々な方法により細胞へ投与することができる。該方法として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:リポソーム内のカプセル化、イオン浸透療法、又は、他の媒体内(例えば、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生付着性マイクロスフフィア)への取り込み。或いは、前記核酸/媒体の組合せは、直接注入又は注入ポンプによって、局所的に送達される。送達のための他のルートとしては、経口送達(錠剤又はピルの形態)、及び/又は鞘内送達(Gold, 1997, Neuroscience, 76, 1153−1158)が含まれるがこれらに限定されない。他のアプローチとしては、様々な輸送及びキャリアシステムの使用が含まれ、例えば、結合物及び生分解性ポリマーの使用が挙げられる。薬物送達方法についての包括的なレビューについては、以下の文献を参照されたい: Ho et al., 1999, Curr. Opin. Mol. Ther., 1, 336−343 及び Jain, Drug Delivery Systems: Technologies and Commercial Opportunities, Decision Resources, 1998 及び Groothuis et al., 1997, J. NeuroVirol., 3, 387−400。核酸の送達及び投与に関する更なる詳細については、以下の文献に記載されている:Sullivan et al., supra, Draper et al., PCT WO93/23569, Beigelman et al., 国際公開WO99/05094,及び Klimuk et al.,国際公開WO99/04819。
【実施例】
【0141】
下記の実施例は、上述の発明を用いた態様をより完全に記述し、並びに本発明の様々な態様を実施することを企図したベスト・モードを明らかにすべく提供される。こうした実施例は、本発明の真の範囲を決して制限する意味で提供されるものではなく、むしろ、例示目的で提示されることを理解されたい。
【0142】
実施例
実施例1: 組み換え型SAPは、ヒト血清由来SAPよりも効能が高い
CHO−S細胞(rhSAP)から単離した組み換え型ヒトSAP、及びヒト血清由来SAP(hSAP)を、インビトロバイオアッセイを用いて生物学的活性についてアッセイした。該アッセイにおいて、単球が豊富な末梢血単核球(PBMC)を、rhSAP又はhSAPのいずれかの濃度を変化させて96時間インキュベートした。該インキュベーションに続いて、結果となる培養上澄みを除去し、ELISAによりアッセイして、生成されたマクロファージ由来ケモカイン(MDC)の量を定量した。MDCは、線維芽細胞によって生成されるので、単球が線維芽細胞へ分化したことを示す。サンプルの50%阻害濃度(IC50)をhSAP参考スタンダードと比較することにより、SAPグリコバリアントの相対効能を決定することができる。結果は、サンプル対hSAP参考スタンダードのIC50比率として表される。
【0143】
全てのSAPサンプル及びスタンダードは、最初に、Supplemented FibroLife Media中で、1.0 mg/mLの濃度に希釈された。SAPスタンダードは、連続して希釈され、以下の実用スタンダードが生成された。60、30、20、13.4、8.8、6.0、3.0、1.5、及び0.75μg/mL(最終スタンダード濃度30、15、10、6.7、4.4、3.0、1.5、0.75、及び0.375μg/mL)。 以下の表1を参照されたい。
【0144】
【表1】

【0145】
ELISAアッセイの準備として、キャプチャ抗体(即ち、マウス抗ヒトMDC)を、キャリア蛋白質が無い状態でPBS中で実用濃度に希釈した。希釈した前記キャプチャ抗体を、96−ウェルプレートにコーティングするために使用した。その後、各プレートを、シールして、室温で一晩インキュベートした。コーティングされたプレートを使用する前に、各ウェルを吸引して、洗浄バッファーで洗浄し、前記プロセスを2回繰り返した(全体で三回の洗浄を行った)。その後、プレートは、300μLの試薬希釈液を各ウェルに加えて、1時間室温でインキュベートすることによって、ブロックした。インキュベーション後、吸引及びウェル洗浄手順を繰り返した。
【0146】
ELISAアッセイのために、単球/線維芽細胞培養、又はSAPスタンダードのいずれかからの上澄みのサンプル100μLを各ウェルに添加した。その後、ウェルの吸引及び洗浄を行う前に、プレートを2時間室温でインキュベートした。そして、ストレプトアビジン−HRPの実用希釈液を100μL、各ウェルに追加した。プレートは、ストップ溶液50μLを各ウェルに追加する前に、20分間室温でインキュベートした。すぐに、各ウェルの吸光度を、450nmに設定したマイクロプレートリーダーを用いて測定した。もし、波長の補正が可能である場合には、前記マイクロプレートリーダーは、540nm又は570nmに設定した。もし、波長の補正ができない場合には、540nm又は570nmの読取結果は、450nmでの読み取り結果から差し引いた。こうした差し引きにより、プレートにおける光学的不完全性を是正する。
【0147】
RHSAP及びhSAPの両方について、こうしたアッセイを用いて、生物学的活性のアッセイが行われた(図1)。平均して、RHSAPは、hSAPと比べて、3.4倍活性が高い(独立した7回の実験の平均).
【0148】
実施例2: SAPグリカン構造の改変
インビトロのグリコ改変技術を用いて、組み換え型ヒトSAP(rhSAP)サンプル上のグリカン部分が改変され、末端α2,3結合シアル酸部分がα2,6結合シアル酸部分に置換された(図2A及びB)。同様に、ヒト血清由来SAP(hSAP)のサンプルも改変され、末端α2,6結合シアル酸部分が、α2,3結合シアル酸部分に置換された(図2C及びD)。さらに、CHO−S細胞から単離されたrhSAPが、部分的にのみシアル酸化されている場合には、rhSAPサンプルを処理して、α2,3結合シアル酸部分で結合グリカン構造を完全にシアル酸化した(図2E及びF)。
【0149】
rhSAP及びhSAP(Calbiochem Cat#970549)の両方は、α2,3,6,8,9−シアリダーゼ(Sigma Cat #N8271) で処理され、ポリペプチドを完全に脱シアル酸化した。17時間シアリダーゼで処理した後、脱シアル酸化された(即ちアシアロ)rhSAP及びhSAPを、ホスホエタノールアミン(PE)アフィニティ及びサイズ排除(Sephadex 200 prep grade)クロマトグラフィーを用いて精製した。その後、精製したアシアロSAPポリペプチドは、CMP−シアル酸(Calbiochem Cat #233264)の存在下で、α2,3−又はα2,6−シアリルトランスフェラーゼ(Calbiochem Cat #566223)のいずれかを用いて、17時間37℃で酵素処理を行った。以下の表に、各反応の混合物に関する詳細を記す。
【0150】
【表2−1】

【0151】
【表2−2】

【0152】
【表3−1】

【0153】
【表3−2】

【0154】
別の反応においては、以下の表に従って、最初に分子を脱シアル酸化することなく、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを用いて、37℃17時間、完全にrhSAPをシアル酸化した。
【0155】
【表4】

【0156】
シアル酸化処理の後、シアル酸化されたrhSAP及びhSAP変異体の両方は、10mM NaPi/5% ソルビトール pH 7.5 (P5S バッファ)中で透析を行う前に、PEアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製される。所望のシアル酸結合(即ち、α2,3結合hSAP及びα2,6結合RHSAP)の確認は、α2,3シアリダーゼ(Calbiochem Cat#480706)を用いて、グリコバリアントSAPポリペプチドを37℃24時間処理した後、以下の両方を用いて行った:液体クロマトグラフィー質量分析法(図2;A、C、及びE);陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(図2;B、D、及びF)。
【0157】
実施例3:単球から線維芽細胞への分化を阻害するためのSAPグリコバリアントの効能を決定するためのインビトロバイオアッセイ
グリコ改変rhSAP及びhSAPは、生物学的活性について、実施例1に記載のインビトロバイオアッセイと同じアッセイを用いてアッセイを行った。要するに、単球が豊富な末梢血単核球(PBMC)を、SAPポリペプチドの濃度を変化させて、96時間インキュベートした。該インキュベーションに続いて、該インキュベーションに続いて、結果となる培養上澄みを除去し、ELISAによりアッセイして、生成されたマクロファージ由来ケモカイン(MDC)の量を定量した。結果は、サンプル対hSAP参考スタンダードのIC50比率として表され、相対活性としてプロットした(hSAPの相対活性=1)。全てのα2,3−シアル酸結合含有試験物質は、hSAPと比べて2.4倍以上活性が高い(図3)。SAPに関してα2,3−及びα2,6結合のシアル酸誘導体を等量混合されている場合には、予想通り、100%α2,6結合の場合と、100%α2,3結合SAPとの中間レベルの活性を示す(図3中、最も右側の2本のバー)。
【0158】
線維芽細胞分化を定量する別の方法では、線維芽細胞抑制因子(例えば、SAP又はこれらの変異体)、又は活性化剤(例えば、M−CSF)を用いて単球をインキュベートした後、発生した線維芽細胞を直接数えることを伴う。ある実験では、当分野でスタンダードであるネガティブ磁気ビーズ選択(例えば、 Cat# 113−41D, Invitrogen, Carlsbad, カルフォルニア州)を用いて、血液由来の全PBMCから単球を精製した。そして、25又は50ng/mlのM−CSFを添加したFibroLife Mediaを含有する96ウェル組織培養プレートで、トリプリケートで培養した。プレートは、5%CO2インキュベーターにおいて96時間37℃でインキュベートした。その後、細胞はパラホルムアルデヒドで固定し、Hema 3染色を用いて染色した(Cat # 122−911, Hema 3 Stain, Fisher Scientific, Hampton, ニューハンプシャー州)。ウェルごとの線維芽細胞の数は、倒立顕微鏡を用いて、ウェルごとに5つの異なるフィールドのカウントを合計することによって決定した。線維芽細胞は、長く伸びた紡錘形と卵型の核の存在とを有する粘着性の細胞として形態学的に定義した。データでは、25又は50ng/mlいずれかのM−CSFは、該ドナー中において、単球から線維芽細胞への分化の数を50%まで増加させるのに充分であることが示された(図4)。続いての実験では、必要に応じて25ng/mlのM−CSFを添加したFibroLife Mediaを使用した。以下にFibroLife Mediaを記す。
【0159】
Fibrolife Media: (Cat # LM−0001, Lifeline Cell Technology, Walkersville, メリーランド州)。以下のものが添加されている:10 mM HEPES (Cat # H0887, Sigma−Aldrich)、1 x 非必須アミノ酸 (Cat # M7145, Sigma−Aldrich,)、1 mM ピルビン酸ナトリウム(Cat # S8636, Sigma−Aldrich)、2 mM グルタミン (Cat # 25030−149, Invitrogen)、100 U/ml ペニシリン、及び100 ug/ml ストレプトマイシン (Cat # P0781, Sigma−Aldrich)、並びにITS−3 (Cat # I2771、500 ug/ml ウシ血清アルブミン、10 ug/ml インシュリン、5μg/ml トランスフェリン、5ng/ml 亜セレン酸ナトリウム、5ug/ml リノール酸、並びに5 ug/ml オレイン酸; Sigma−Aldrich)。
【0160】
更なる実験においては、PBMC又は単球を全血液から精製し、種々の量のSAPを添加したFibroLife Media中で、トリプリケートで培養した(上述したように)。プレートは、5%CO2インキュベーターにおいて96時間37℃でインキュベートした。その後、細胞はパラホルムアルデヒドで固定し、Hema 3染色を用いて染色した (Cat # 122−911, Hema 3 Stain, Fisher Scientific, Hampton, ニューハンプシャー州)。ウェルごとの線維芽細胞の数は、倒立顕微鏡を用いて、ウェルごとに5つの異なるフィールドのカウントを合計することによって決定した。前記システムにおいて、線維芽細胞分化を最大限阻害するのに必要なSAPの最低濃度を測定した結果、2ug/mlであった(図5)。全てのドナーにおいて、線維芽細胞の数は、SAP濃度の上昇に伴って減少した。
【0161】
参照による組み込み
本明細書で記述した全ての刊行物及び特許文献については、個々の刊行物及び特許文献がそれぞれ特異的に又は個別に記載されているかのように、その全体の内容が本明細書中に組み込まれる。
【0162】
主題に関する特定の実施形態について議論してきたが、上述した明細書の内容は、例示的なものであって、決して限定的なものではない。本明細書及び後述の特許請求の範囲をレビューすれば、当業者にとって多くのバリエーションが明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、均等物の全範囲、及び、明細書、前記バリエーションと共に、特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N結合型オリゴ糖鎖を有するグリコシル化ヒト血清アミロイドP(SAP)ポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該ポリペプチド。
【請求項2】
N結合型オリゴ糖鎖を有するグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖において、ヒト血清から単離した野生型SAPと比べてα2,6結合シアル酸部分が少なくとも50%少ない該ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖の全側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該ポリペプチド。
【請求項4】
請求項2に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖がα2,6結合シアル酸部分を実質的に有さない該ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖がバイ・アンテナリー構造を有する該ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖がトリ・アンテナリー構造を有する該ポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖がテトラ・アンテナリー構造を有する該ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖がペンタ・アンテナリー構造を有する該ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記N結合型オリゴ糖鎖が、5糖コアであるMan[(α1,6−)−(Man(α1,3)]−Man(β1,4)−GlcNAc(β1,4)−GlcNAc(β1,N)−Asnを含む該ポリペプチド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖が、構造NeuNAc2α3Galβ4GlcNAcβ2Manα6を有する少なくとも1つの側鎖を含む該ポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖が、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない該ポリペプチド。
【請求項12】
請求項11に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖の全側鎖がガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない該ポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖が1以上のマンノース残基を含む該ポリペプチド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖が少なくとも1つのフコース残基を含む該ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記オリゴ糖鎖が、少なくとも1つの改変グリコシル残基を含む該ポリペプチド。
【請求項16】
請求項15に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記少なくとも1つの改変グリコシル残基が、水−可溶性ポリマー、及び水−不溶性ポリマー、治療用成分、診断用薬剤並びに生体分子から選択される1以上の改変基と結合している該ポリペプチド。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記SAPポリペプチドが組み換え型ポリペプチドである該ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記ポリペプチドがSEQ ID NO:1と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む該ポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記ポリペプチドがSEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む該ポリペプチド。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、SAPドメイン及び1以上の非相同ドメインを含む融合蛋白質である該ポリペプチド。
【請求項21】
請求項20に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記1以上の非相同ドメインが、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化若しくは分散、蛋白質複合体の形成、及び/又は純度のうち1以上を強化する該ポリペプチド。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記ポリペプチドが1以上の改変アミノ酸残基を含む該ポリペプチド。
【請求項23】
請求項22に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記1以上の改変アミノ酸残基が、PEG化アミノ酸、プレニル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、及び/又は有機誘導体化剤と結合したアミノ酸を含む該ポリペプチド。
【請求項24】
請求項23に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、前記1以上の改変アミノ酸残基が、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化若しくは分散、蛋白質複合体の形成、及び/又は純度のうち1以上を強化する該ポリペプチド。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のグリコシル化ヒトSAPポリペプチドであって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記SAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該ポリペプチド。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のヒトSAPポリペプチド及び医薬的に許容可能なキャリアを含み、哺乳類での使用に適した医薬製剤。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬製剤であって、更に追加有効成分を含む該医薬製剤。
【請求項28】
請求項26に記載の医薬製剤であって、前記医薬製剤が持続放出性配合物として製造される該医薬製剤。
【請求項29】
請求項26に記載の医薬製剤であって、前記医薬製剤が、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射、又はポンプにより局所的に患者に投与するのに適している該医薬製剤。
【請求項30】
患者における線維又は線維増殖の異常又は症状を治療又は予防するための方法であって、該治療や予防を必要とする患者に請求項1〜25のいずれか1項に記載のSAPポリペプチドを治療上有効量で投与することを含む該方法。
【請求項31】
患者における過敏性の異常又は症状を治療又は予防するための方法であって、該治療や予防を必要とする患者に請求項1〜25のいずれか1項に記載のSAPポリペプチドを治療上有効量で投与することを含む該方法。
【請求項32】
患者における粘膜炎を治療又は予防するための方法であって、該治療や予防を必要とする患者に請求項1〜25のいずれか1項に記載のSAPポリペプチドを治療上有効量で投与することを含む該方法。
【請求項33】
患者における自己免疫の異常又は症状を治療又は予防するための方法であって、該治療や予防を必要とする患者に請求項1〜25のいずれか1項に記載のSAPポリペプチドを治療上有効量で投与することを含む該方法。
【請求項34】
請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドを、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射、若しくはポンプ又はこれらの組合せにより局所的に投与する該方法。
【請求項35】
請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法であって、追加有効成分を前記患者に投与することを更に含む該方法。
【請求項36】
グリコシル化ヒトSAPポリペプチドを製造するための方法であって、以下のステップを含む該方法:
i)請求項1〜24のいずれか1項に記載の前記SAPポリペプチドを細胞内で発現させるステップ;及び
ii)前記細胞から前記SAPポリペプチドを単離するステップ。
【請求項37】
ヒトSAPポリペプチドを製造するための方法であって、以下のステップを含む該方法:
i)ヒトSAPポリペプチドをCHO細胞内で発現させるステップ;及び
ii)前記細胞から前記ヒトSAPポリペプチドを単離するステップ。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドがN結合型オリゴ糖鎖を含み、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドがN結合型オリゴ糖鎖を含み、前記オリゴ糖鎖において、ヒト血清から単離した野生型SAPと比べてα2,6結合シアル酸部分が少なくとも50%少ない該方法。
【請求項40】
請求項37に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドがN結合型オリゴ糖鎖を含み、前記オリゴ糖鎖の全側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該方法。
【請求項41】
請求項37に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドがN結合型オリゴ糖鎖を含み、前記オリゴ糖鎖がα2,6結合シアル酸部分を実質的に有さない該方法。
【請求項42】
請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖がバイ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項43】
請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖がトリ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項44】
請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖がテトラ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項45】
請求項38〜44のいずれか1項に記載の方法であって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記単離されたヒトSAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該方法。
【請求項46】
請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖が、5糖コアであるMan[(α1,6−)−(Man(α1,3)]−Man(β1,4)−GlcNAc(β1,4)−GlcNAc(β1,N)−Asnを含む該方法。
【請求項47】
請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖が、構造NeuNAc2α4Galβ4GlcNAcβ2Manα6を有する少なくとも1つの側鎖を含む該方法。
【請求項48】
請求項38〜47のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖が、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない該方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の全側鎖がガラクトース及びN−アセチルグルコサミンを実質的に有さない該方法。
【請求項50】
請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖が1以上のマンノース残基を含む該方法。
【請求項51】
請求項38〜50のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖が少なくとも1つのフコース残基を含む該方法。
【請求項52】
請求項38〜51のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖が、少なくとも1つの改変グリコシル残基を含む該方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法であって、前記少なくとも1つの改変グリコシル残基が、水−可溶性ポリマー、及び水−不溶性ポリマー、治療用成分、診断用薬剤並びに生体分子から選択される1以上の改変基と結合している該方法。
【請求項54】
請求項36に記載の方法であって、前記細胞がCHO細胞である該方法。
【請求項55】
請求項35又は36に記載の方法であって、前記単離されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更して、改変オリゴ糖鎖を有するSAPポリペプチドを生成することを更に含む該方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法であって、前記単離されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ及びフォスファターゼから選択される1以上の酵素蛋白質を用いて前記単離されたSAPポリペプチドを処理することを含む該方法。
【請求項57】
請求項55に記載の方法であって、前記単離されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、1種以上の糖前駆体の存在下で行われる該方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、前記1種以上の糖前駆体がUDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UPD−ガラクトース及びGDP−フコースから選択される該方法。
【請求項59】
請求項55に記載の方法であって、前記単離されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、前記オリゴ糖鎖から1以上の末端α2,6結合シアル酸部分を除去することを含む該方法。
【請求項60】
請求項55に記載の方法であって、前記単離されたSAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、前記オリゴ糖鎖上の1以上の末端α2,6結合シアル酸部分を1以上のα2,3結合シアル酸部分に置換することを含む該方法。
【請求項61】
請求項36〜60のいずれか1項に記載の方法であって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記単離されたSAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該方法。
【請求項62】
SAPポリペプチドを製造するための方法であって、以下のステップを含む該方法:
i)グリコシル化SAPポリペプチドを提供するステップであって、前記グリコシル化SAPポリペプチドはN結合型オリゴ糖鎖を含むステップ;及び
ii)前記SAPポリペプチドのN結合型オリゴ糖鎖を酵素的又は化学的に変更して、改変グリコシル化SAPポリペプチドを生成するステップ。
【請求項63】
請求項62に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドのN結合型オリゴ糖鎖を酵素的又は化学的に変更する方法が、前記オリゴ糖鎖から1以上の末端α2,6結合シアル酸部分を除去することを含む該方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドのN結合型オリゴ糖鎖を酵素的又は化学的に変更する方法が、前記オリゴ糖鎖上の1以上の末端α2,6結合シアル酸部分を1以上のα2,3結合シアル酸部分に置換することを含む該方法。
【請求項65】
請求項62〜64のいずれか1項に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドのN結合型オリゴ糖鎖を酵素的又は化学的に変更する方法が、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ及びフォスファターゼから選択される1以上の酵素蛋白質を用いて前記SAPポリペプチドを処理することを含む該方法。
【請求項66】
請求項62〜65のいずれか1項に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドのN結合型オリゴ糖鎖を酵素的又は化学的に変更する方法が、1種以上の糖前駆体の存在下で行われる該方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法であって、前記1種以上の糖前駆体がUDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UPD−ガラクトース及びGDP−フコースから選択される該方法。
【請求項68】
請求項62〜67のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖において、ヒト血清から単離した野生型ヒトSAP蛋白質と比べてα2,6結合シアル酸部分が少なくとも50%少ない該方法。
【請求項69】
請求項62〜67のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖がα2,6結合シアル酸部分を実質的に有さない該方法。
【請求項70】
請求項62〜69のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がバイ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項71】
請求項62〜69のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がトリ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項72】
請求項62〜69のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がテトラ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項73】
請求項62〜69のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がペンタ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項74】
請求項62〜73のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の全側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該方法。
【請求項76】
請求項62〜75のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖が少なくとも1つの改変グリコシル残基を有する該方法。
【請求項77】
請求項76に記載の方法であって、前記少なくとも1つの改変グリコシル残基が、水−可溶性ポリマー、及び水−不溶性ポリマー、治療用成分、診断用薬剤並びに生体分子から選択される1以上の改変基と結合している該方法。
【請求項78】
請求項62〜77のいずれか1項に記載のヒトSAPポリペプチドであって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記改変グリコシル化SAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該ポリペプチド。
【請求項79】
SAPポリペプチドを製造するための方法であって、以下のステップを含む該方法:
i)SAPポリペプチドを提供するステップ;及び
ii)前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更して、N結合型オリゴ糖を含むグリコシル化SAPポリペプチドを生成するステップ。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ及びフォスファターゼから選択される1以上の酵素蛋白質を用いて前記SAPポリペプチドを処理することを含む該方法。
【請求項81】
請求項79又は80に記載の方法であって、前記SAPポリペプチドを酵素的又は化学的に変更する方法が、1種以上の糖前駆体の存在下で行われる該方法。
【請求項82】
請求項81に記載の方法であって、前記1種以上の糖前駆体がUDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UPD−ガラクトース及びGDP−フコースから選択される該方法。
【請求項83】
請求項79〜82のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖において、ヒト血清から単離した野生型ヒトSAP蛋白質と比べてα2,6結合シアル酸部分が少なくとも50%少ない該方法。
【請求項84】
請求項79〜82のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖がα2,6結合シアル酸部分を実質的に有さない該方法。
【請求項85】
請求項79〜84のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がバイ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項86】
請求項79〜84のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がトリ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項87】
請求項79〜84のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がテトラ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項88】
請求項79〜84のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖がペンタ・アンテナリー構造を有する該方法。
【請求項89】
請求項79〜88のいずれか1項に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該方法。
【請求項90】
請求項89に記載の方法であって、前記オリゴ糖鎖の全側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該方法。
【請求項91】
請求項79〜90のいずれか1項に記載の方法であって、前記N結合型オリゴ糖鎖が少なくとも1つの改変グリコシル残基を有する該方法。
【請求項92】
請求項91に記載の方法であって、前記少なくとも1つの改変グリコシル残基が、水−可溶性ポリマー、及び水−不溶性ポリマー、治療用成分、診断用薬剤並びに生体分子から選択される1以上の改変基と結合している該方法。
【請求項93】
請求項79〜92のいずれか1項に記載の前記ヒトSAPポリペプチドであって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記グリコシル化SAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該ポリペプチド。
【請求項94】
以下のステップを含む方法によって製造されるヒトSAPポリペプチド:
i)SAPポリペプチドをCHO細胞内で発現させるステップ;及び
ii)前記細胞から前記SAPポリペプチドを単離するステップ。
【請求項95】
請求項94に記載のヒトSAPポリペプチドであって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記SAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該ポリペプチド。
【請求項96】
請求項94又は95に記載のヒトSAPポリペプチドであって、前記方法が、前記単離されたSAPポリペプチドのグリコシル化構造を変更することを更に含む該ポリペプチド。
【請求項97】
N結合型オリゴ糖鎖を有するヒトSAPポリペプチドを含むCHO細胞であって、前記オリゴ糖鎖の少なくとも1つの側鎖の末端がα2,3結合シアル酸部分である該細胞。
【請求項98】
外因性SAPポリペプチドをエンコードする核酸を含むCHO細胞。
【請求項99】
ヒトSAPポリペプチドであって、インビトロでの単球から線維芽細胞への分化を阻害するための前記ヒトSAPポリペプチドのIC50が、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルのIC50の半分よりも少ない該ポリペプチド。
【請求項100】
患者における炎症性の異常又は症状を治療又は予防するための方法であって、該治療や予防を必要とする患者に請求項1〜15のいずれか1項に記載のSAPポリペプチドを治療上有効量で投与することを含む該方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−529429(P2012−529429A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514212(P2012−514212)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/037542
【国際公開番号】WO2010/141918
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510006945)プロメディオール, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】