説明

血漿又は血清分離装置

【課題】フィルタを用いずに血液中から血漿成分又は血清成分を分離する手段を提供する。
【解決手段】血漿分離装置10は、血液111が流通しうる第1血液流路22と、第1血液流路22より下流側に設けられて、第1血液流路21を流通した血液111が流通しうる第2血液流路21と、第1血液流路21と第2血液流路22との間に設けられて、第2血液流路22において血液111の噴流112を生じさせうるノズル27と、第2血液流路22において、ノズル27による血液111の噴流112のうち血球流113より拡散方向110の外側となる位置に開口31,32を有して、第2血液流路22と連続する回収流路28,29とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液から血漿成分又は血清成分を分離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に血液検査と称される臨床検査において、ヒトから採取された血液から、血漿成分又は血清成分と、血球成分とを分離することが行われている。この分離方法の一つとして、遠心分離が知られている。この遠心分離により、血液中の血球成分が沈下されるので、上清である血漿成分又は血清成分を採取することができる。しかし、遠心分離は、遠心分離装置が必要であるという問題や、通常、遠心分離だけで10分間以上を要し、血液を凝固させる時間や上清を分離する時間などを加えると、数十分間以上の作業時間を要するという問題があった。
【0003】
これに対し、特許文献1には、入口と出口を有する容器内に、高分子極細繊維集合体又は多孔質ポリマーで構成されるろ過材を装着した血漿又は血清分離フィルタが開示されている。これにより、遠心分離によらずに、血液から血漿成分又は血清成分が分離できるとされている。
【0004】
特許文献2には、血液が流れる流路に複数の血液分離フィルタが設けられた血液分離フィルタ装置が開示されている。流路の上流側に赤血球のような比較的大きな径の血液成分を捕捉する第1フィルタが配置され、流路の下流側に血小板のような比較的小さな径の血液成分を捕捉する第2フィルタが配置される。さらに、第1フィルタ及び第2フィルタの下流側には、血漿又は血清により膨潤して流路を閉塞する水膨潤性ポリマーが配置されている。第1フィルタ及び第2フィルタにより、血液から血漿又は血清が分離され、水膨潤性ポリマーにより、溶血によって赤血球から漏洩した成分が血漿又は血清に混入することが防止されるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−267463号公報
【特許文献2】特開2007−40985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2のようにフィルタを用いて血液から血漿成分又は血清成分を分離する場合に、血球成分によりフィルタが目詰まりするという問題がある。フィルタが目詰まりする度合いは、ろ過する血液の量に比例して増加するので、特許文献1,2に示されるように、同種又は異種のフィルタを血液の流路方向に対して積層することにより、目詰まりの頻度を低減させることが考案されている。しかし、フィルタを積層すると、フィルタ内に残留する血漿成分又は血清成分の量が増加するという問題がある。特に、微量の採血によって血液検査を行う場合には、血液中の血漿成分又は血清成分の大半を分離して回収することが望まれるが、フィルタ内に血漿成分又は血清成分が残留すると回収率が低下するという問題がある。一方、フィルタの厚みを薄くすると、目詰まりが生じやすくなり、さらにろ過を行うために高い圧力を付与すると、溶血が生じたり血球成分がフィルタを通過したりするという別の問題が生じる。
【0007】
また、血液を予め緩衝液などで希釈してからフィルタでろ過する手法もあるが、分離された血漿成分又は血清成分も緩衝液で希釈されるので、血漿成分又は血清成分中の微量物質が検査試薬の最低検出感度未満の濃度又は単位となる問題が生じる。
【0008】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタを用いずに血液中から血漿成分又は血清成分を分離する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明にかかる血漿又は血清分離装置は、血液が流通しうる第1流路と、上記第1流路より下流側に設けられて、上記第1流路を流通した血液が流通しうる第2流路と、上記第1流路と上記第2流路との間に設けられて、第2流路において血液の噴流を生じさせうるノズルと、上記第2流路において、上記ノズルによる血液の噴流のうち血球成分を含む流れより噴流の拡散方向の外側となる位置に開口して、上記第2流路と連続する第3流路と、を具備する。
【0010】
第1流路及び第2流路は、血液が流通可能な空間である。第1流路及び第2流路を血液が流動するための駆動力としては、例えば、第1流路及び第2流路における下流側から付与される吸引圧があげられる。
【0011】
第1流路と第2流路との間には、ノズルが設けられている。このノズルは、第1流路における流通方向と直交する断面積より小さい断面積を有する。ノズルは、流通方向の下流側に向かって次第に断面積が小さくなるテーパ形状をなしており、その先端が第2流路に連結されている。第2流路はノズルの先端に対して十分に広く、ノズルを流通する血液に対していわば自由空間となる。このノズルに所定以上の圧力で血液を流通させると、ノズルの先端から第2流路に流出された血液は、噴流となる。ここで、噴流とは、流体がノズルから速度のより小さい周囲隆太意中に流出するときの流れをいう。ノズルにより形成される噴流は、軸対象噴流であっても二次元噴流であってもよい。軸対象噴流を生じさせるためには、ノズルの断面を円形として先端に向かってテーパ形状に狭め、円孔の先端から血液を噴出させる。二次元噴流を生じさせるためには、ノズルの幅のみをテーパ形状に狭め、幅方向と直交する方向に延びるスリット形状の先端から血液を噴出させる。噴流の拡散方向は、二次元噴流であれば、スリット形状のノズル先端から二次元方向に扇形状に拡がり、軸対称噴流であれば、円孔のノズル先端から3次元方向に漏斗形状に拡がる。
【0012】
第3流路は、第2流路に対して開口している。したがって、第2流路を流通する液体などは、その開口を通じて第3流路に進入しうる。第3流路の開口は、第2流路において、ノズルによる血液の噴流のうち血球成分を含む流れより噴流の拡散方向の外側となる位置にある。血液の噴流は、血球成分の流れと血漿成分又は血清成分の流れとに大別される。血球成分は赤血球などの血球を含む。血漿成分又は血清成分は主として液体成分である。
【0013】
血球成分に含まれる赤血球などは、血漿成分又は血清成分より慣性が大きいので、ノズルの先端から噴出されても血漿成分又は血清成分ほど拡散されず、第2流路における空気又は血液の抵抗による減速は、血漿成分又は血清成分より小さい。つまり、ノズルによる血液の噴流において、血球成分は中心側でいわば層流の如き流れとなって遠くまで噴出され、血漿成分又は血清成分は周縁側でいわば層流の如き流れとなって血球成分より大きく拡散され、かつ減速も大きい。このように噴流の中心側と周縁側とで、血球成分と血漿成分又は血清成分とがそれぞれまとまった流れをなし、その血球成分を含む流れ(噴流における中心側の流れ)より拡散方向の外側となる位置に、つまり噴流において血球成分を含む流れより拡散方向の外側に第3流路の開口が配置されている。
【0014】
したがって、ノズルから噴出された血球成分は、噴流の中心側においてまとまった流れとなって開口へ向かうことなく、第2流路を進む。一方、ノズルから噴出された血漿成分又は血清成分は、噴流の外側で流れをなして比較的早く減速して、さらに拡散する。そして、第3流路の開口を通じて第3流路へ進入する。このように、第1流路を流通してノズルから噴出された血液のうち、血球成分は第2流路を流れ、血漿成分又は血清成分の少なくとも一部は第3流路を流れるので、血球成分と血漿成分又は血清成分とが分離される。
【0015】
(2) 上記血漿又は血清分離装置は、上記第1流路、上記ノズル、上記第2流路、及び上記第3流路の一組を一段として、当該組が直列に多段に連続されたものであってもよい。
【0016】
第1流路、ノズル、第2流路、及び第3流路の一組が直接に連続されるとは、一組目の第2流路と二組目の第1流路とが血液を流通可能に連結されることをいう。また、多段とは、このような一組目と二組目との連結があること、つまり全体として二組以上あることをいう。したがって、多段は、二段であっても二段以上であってもよい。
【0017】
前述されたように、第1流路、ノズル、第2流路、及び第3流路の一組により、血液のうち血球成分と血漿成分又は血清成分とが分離される。このうち、第2流路には血球成分のほかに、第3流路に進入しなかった血漿成分又は血清成分も流れる。前述された組が直列に多段に連続されることにより、先の組で第3流路に進入しなかった血漿成分又は血清成分を、後の組において血球成分と分離することができるので、血液からの血漿成分又は血清成分の回収率が向上される。
【0018】
(3) 上記第3流路の開口は、血液中の血漿成分又は血清成分を通過させ、かつ血球成分を通過させない大きさであってもよい。
【0019】
前述された第3流路の開口の大きさとして、例えば、0.5〜5.0μmがあげられる。
【0020】
(4) 上記開口は、上記第2流路における上記ノズル付近に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる血漿又は血清分離装置によれば、血液をノズルから噴流として第2流路に噴出させ、その噴流のうち血球成分を含む流れより第2流路の壁側となる位置に、第3流路の開口を設けたので、噴流のうちの血球成分は第2流路を流れ、血漿成分又は血清成分は第3流路を流れる。これにより、フィルタを用いることなく、血液から血漿成分又は血清成分を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0023】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかる血漿分離装置10の外観を示す斜視図である。図2は、血漿分離装置10の平面図である。図3は、図2における領域IIIの構成を示す拡大断面図である。図4は、血漿分離装置10を用いた血漿分離方法を示す模式図である。図5は、図4における領域Vを示す拡大図である。
【0024】
[血漿分離装置10の全体構成]
以下に、本発明の実施形態にかかる血漿分離装置10が説明される。血漿分離装置10は、血液から血漿成分を分離するものであるが、血液から血清成分を分離するために用いられてもよいことは言うまでもない。
【0025】
図1及び図2に示されるように、血漿分離装置10は、直方体形状の外形をなしている。血漿分離装置10は、厚み(矢印103)の薄い概ね直方体形状であり、その内部に噴流発生部11,12,13が3段に設けられている。この噴流発生部11,12,13の詳細な構成は後述される。
【0026】
血漿分離装置10の上面14には、円筒部15が設けられている。円筒部15は、その軸方向を延出方向(矢印103)として上面14から上側へ突出されている。血漿分離装置10の上面14における円筒部15の配置は、後述される第1血液流路21における最上流側の端に対応している。円筒部15は軸方向に貫通する内空を有する。血漿分離装置10の上面14には、円筒部15の内空に連続して上下方向(矢印103)に貫通孔が形成されており、貫通孔は第1血液流路21に到達している。この貫通孔及び円筒部15の内空により、第1血液流路21へ血液を流出入するためのポートが形成されている。
【0027】
血漿分離装置10の側面16には、3つの円筒部17,18,19が設けられている。この側面16は、血漿分離装置10の4つの側面のうち、円筒部15と長手方向(矢印102)に最も隔てられた位置にある。各円筒部17,18,19は、その軸方向を延出方向(矢印102)として側面16から側方へ突出されている。血漿分離装置10の側面16における各円筒部17,18,19の配置は、第4血液流路24又は血漿流路25,26に最下流側の端にそれぞれ対応している。円筒部17が、第4血液流路24の最下流側の端に対応し、円筒部18,19が血漿流路25,26の最下流側の端にそれぞれ対応している。各円筒部17,18,19は軸方向に貫通する内空を有する。血漿分離装置10の側面16には、各円筒部17,18,19の内空にそれぞれ連続して奥行き方向(矢印102)に貫通孔がそれぞれ形成されており、各貫通孔は第4血液流路24又は血漿流路25,26に到達している。これら各貫通孔及び各円筒部17,18,19の内空により、第4血液流路24及び血漿流路25,26から血液又は血漿成分を流出するためのポートが形成されている。
【0028】
図2に示されるように、血漿分離装置10の内部には、円筒部15に対応する位置から、円筒部17,18,19に対応する位置へ、血液又は血漿成分が流通するための複数の流路が形成されている。この各流路は、例えば、血漿分離装置10の外形をなす直方体形状のプレートが厚み方向(矢印103)に貼り合われた2枚からなり、その1枚のプレートに各流路となる溝が形成され、その溝を蓋するように別のプレートが貼り合わされることにより形成される。
【0029】
図2に破線で示されるように、円筒部15から円筒部17へ向かってほぼ直線形状に、第1血液流路21、第2血液流路22、第3血液流路23、及び第4血液流路24が直列に連続して形成されている。第1血液流路21、第2血液流路22、第3血液流路23、及び第4血液流路24は、噴流発生部11,12,13における各ノズル27を境界として区別される。
【0030】
前述された第1血液流路21、第2血液流路22、第3血液流路23、及び第4血液流路24が、本発明における第1流路及び第2流路に相当する。詳細には、第1血液流路21は、第1流路に相当する。第2血液流路22は、噴流発生部11側が第2流路に相当し、噴流発生部12側が第2流路に相当する。第3血液流路23は、噴流発生部11側が第1流路に相当し、噴流発生部13側が第2流路に相当する。第4血液流路24は、第2流路に相当する。第2血液流路22及び第3血液流路23は、本発明にかかる第1流路及び第2流路が直列に連続して一つの流路をなしているので、第1流路と第2流路との境界は明確でない。
【0031】
噴流発生部11から円筒部18,19に向かって、第1血液流路21、第2血液流路22、第3血液流路23、及び第4血液流路24の両側に沿って一対の血漿流路25,26が形成されている。各噴流発生部11,12,13において、第2血液流路22、第3血液流路23、又は第4血液流路24から血漿流路25,26に連続する回収流路28,29が形成されているが、この回収流路28,29については噴流発生部11を例に後述される。
【0032】
噴流発生部11,12,13は、円筒部15から円筒部17,18,19へ向かって直列に連続されて三段となっている。各噴流発生部11,12,13が、本発明における第1流路、ノズル、第2流路、及び第3流路を有する一組に相当する。各噴流発生部11,12,13は血漿分離装置10における配置が異なる他は同等の構成なので、以下には、噴流発生部11を例に詳細な構成が説明され、噴流発生部12,13の詳細な説明が省略される。
【0033】
[噴流発生部11]
噴流発生部11は、第1血液流路21と、ノズル27と、第2血液流路22と、回収流路28,29とを有する。
【0034】
第1血液流路21及び第2血液流路22は、第2血液流路22を第1血液流路21に対して下流側として、血液が流通可能な連続した空間である。したがって、第1血液流路21を流通した血液が、第2血液流路22に流入しうる。第1血液流路21及び第2血液流路22を血液が流動するための駆動力は、円筒部17からの吸引力として付与される。第1血液流路21及び第2血液流路22の流通方向(図3における上から下向き)に直交する断面積や断面形状は特に限定されないが、第2血液流路22の断面積は、ノズル27の先端30の断面積に対して、二次元噴流を生じさせるに十分な大きさに設定される。また、本実施形態において第1血液流路21及び第2血液流路22の断面形状は長方形であり、その長方形の各辺は矢印101,102,103にそれぞれ沿っている。
【0035】
ノズル27は第1血液流路21と第2血液流路22との間に設けられている。換言すれば、第1血液流路21と第2血液流路22とは、ノズル27を境界として区別される。ノズル27は、その上流側の幅(矢印101方向の距離)が第1血液流路21の幅と同等であり、下流側向かってテーパ形状に幅が狭くなっている。ノズル27の先端30は、第2血液流路22と連続しており、先端30は幅狭であって、高さ方向(矢印103)へ延びるスリット形状の空間となっている。この先端30は、第2血液流路22の幅方向における中央に配置されている。また、先端30の幅に対して、第2血液流路22の幅は十分に広い。したがって、先端30を通過する血球成分に対して第2血液流路22はいわば自由空間となる。このノズル27に所定以上の圧力で血液が流通されることにより、先端30から噴出した血液が第2血液流路22において噴流となる。
【0036】
第2血液流路22におけるノズル27の先端30に対して直下流側となる両側壁に、一対の回収流路28,29が形成されている。各回収流路28,29は、第2血液流路22に対してそれぞれ開口して、血漿流路25,26にそれぞれ連続している。各回収流路28,29を通じて、第2血液流路22から血漿流路25,26へ血漿成分が流通可能である。この回収流路28,29が、本発明における第3流路に相当する。
【0037】
前述されたように、第2血液流路22における各回収流路28,29の開口31,32は、第2血液流路22におけるノズル27の先端30に対して直下流側となる両側壁にそれぞれが配置されている。開口31,32の位置は、ノズル27による血液の噴流のうち血球成分を含む血球流113より拡散方向の外側である。この噴流の状態については後述される。また、開口31,32は、血液中の血漿成分又は血清成分を通過させ、かつ血球成分を通過させない幅である。このような開口31,32の幅として、0.5〜5.0μmが採用される。
【0038】
なお、噴流発生部12,13については詳細な説明が省略されるが、噴流発生部11におけるノズル27及び回収流路28,29と同様の、ノズル及び回収流路がそれぞれ設けられている。
【0039】
[血漿分離方法]
以下に、血漿分離装置10を用いた血漿分離方法が説明される。
【0040】
先ず、ヒトの末梢血を採血する。ヒトは患者でも健常人でもよい。採血量は、目的とする臨床検査の種類により異なる。採血は、採血管や注射器などを用いて公知の手法により行う。また、採血に際して末梢血にヘパリンやEDTAなどの凝固防止剤が加えられる。
【0041】
つづいて、採血された血液111(図5参照)を円筒部15を通じて第1血液流路21に注入する。円筒部15への血液111の注入は、例えば、円筒部15に接続したチューブの一端を採血された血液111内へ挿入し、円筒部17から吸引圧を付与することにより行われる。円筒部17に付与された吸引圧は、第4血液流路24、第3血液流路23、第2血液流路22、第1血液流路21を通じて、円筒部15に接続されたチューブに伝達される。これにより、チューブを通じて円筒部15から第1血液流路21へ血液111が注入される。また、これと同時に、円筒部18,19へも吸引圧を付与する。なお、円筒部17に付与される吸引圧は、各噴流発生部11,12,13において、ノズル27等を通過する血液111が二次元噴流となりうる圧力に調整される。
【0042】
図4に示されるように、吸引圧によって血液111が第1血液流路21を流動する(矢印104)。そして、第1血液流路21を流動した血液111は、ノズル27に到達する。ノズル27の先端30から第2血液流路22に流出された血液111は二次元噴流112(以下、単に「噴流112」とも称される。)となる。
【0043】
図5に示されるように、ノズル27から噴出された血液111の噴流112は、血球流113と血漿流114とに大別される。血球流113は赤血球などの血球115を含む。血漿流114は主として液体成分である。血球流113に含まれる血球115は、血漿流114をなす液体より慣性が大きいので、ノズル27の先端30から噴出されても血球流113は血漿流114ほど拡散方向110に拡散されず、第2血液流路22における空気又は血液の抵抗による減速は、血漿流114より小さい。したがって、同図に示されるように、噴流112において、血球流113は中心側でいわば層流のごとくまとまった流れをなしてノズル27の先端30から比較的遠くまで噴出される。
【0044】
一方、血漿流114は慣性が血球流113より小さいので、噴流112の周縁側でいわば層流の如くまとまった流れをなして血球流113より大きく拡散され、かつ減速も大きい。このように噴流112は、中心側と周縁側とで、血球流113と血漿流114とが各々まとまった流れをなす。
【0045】
前述されたように、回収流路28,29の開口31,32は、噴流112における血球流113より第2血液流路22の側壁側となる位置、つまり噴流112において血球流113より拡散方向110の外側に配置されている。したがって、ノズル27から噴出された血球115は、開口31,32へ向かうことなく、第2血液流路22を二次元噴流として進む。一方、噴流112における血漿流114は、噴流112の外側で比較的早く減速し、第2血液流路22における平均的流速となって噴流が消失して更に拡散する。その後、血漿流114を構成していた血漿成分はノズル27付近において第2血液流路21の側壁に到達する。そして、血漿成分の一部が開口31,32を通じて回収流路28,29へ進入する。また、その血漿成分の一部は、回収流路28,29へ進入せずに第2血液流路22を流れて、血球流113を構成していた血球115と合流する(矢印105,106)。
【0046】
なお、仮に、血球流113をなしていた血球115が第2血液流路22を逆流して開口31,32へ到達したとしても、開口31,32は血球115を通過させない大きさなので、そのような血球115が回収流路28,29へ進入することはない。
【0047】
図4に示されるように、回収流路28,29へ進入した血漿成分は、血漿流路25,26へ流れ込んで、円筒部18,19側へ流動する(矢印107,108)。第2血液流路22においては、噴流112が消失した後、血漿流路25,26へ進入しなかった血漿成分と血球流113をなしていた血球115が混合して、噴流発生部12へ流動する(矢印109)。
【0048】
噴流発生部12,13については詳細な説明が省略されるが、前述されたように、噴流発生部11において回収流路25,26へ進入しなかった血漿成分は、血球115と混ざって、いわば血漿成分が少ない血液111として第2血液流路22又は第3血液流路23を流れるが、噴流発生部11と同様にして、噴流発生部12,13における噴流によって、その血液111のうちの血漿成分が回収流路を通じて血漿流路25,26へ進入するので、血漿分離装置10全体としては、3回発生される各噴流において血液111から血漿成分が分離される。
【0049】
[実施形態の作用効果]
前述されたように、血漿分離装置10によれば、血液111をノズル27から噴流として第2血液流路22に噴出させ、その噴流112のうち血球成分を含む血球流113より拡散方向110の外側となる位置に、回収流路28,29の開口31,32を設けたので、噴流112のうちの血球115は第2血液流路22を流れ、血漿成分が回収流路28,29へ進入する。これにより、フィルタを用いることなく、血液111から血漿成分を分離することができる。
【0050】
また、血漿分離装置10においては、3つの噴流発生部11,12,13が直列に三段に連続されているので、噴流発生部11において回収流路28,29へ進入しなかった血漿成分が、噴流発生部12,13において血球115と分離されて血漿流路25,26へ進入するので、血液111からの血漿成分の回収率が向上される。
【0051】
また、回収流路28,29の開口31,32が、血液111の血漿成分を通過させ、かつ血球115を通過させない大きさなので、仮に血球115が逆流したとしても、血漿流路25,26へ進入することがない。これにより、血球115の混合がない血漿成分を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる血漿分離装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、血漿分離装置10の平面図である。
【図3】図3は、図2における領域IIIの構成を示す拡大断面図である。
【図4】図4は、血漿分離装置10を用いた血漿分離方法を示す模式図である。
【図5】図5は、図4における領域Vを示す拡大図である。
【符号の説明】
【0053】
10・・・血漿分離装置
21・・・第1血液流路(第1流路)
22・・・第2血液流路(第1流路、第2流路)
23・・・第3血液流路(第1流路、第2流路)
24・・・第4血液流路(第1流路、第2流路)
27・・・ノズル
28,29・・・回収流路(第3流路)
31,32・・・開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が流通しうる第1流路と、
上記第1流路より下流側に設けられて、上記第1流路を流通した血液が流通しうる第2流路と、
上記第1流路と上記第2流路との間に設けられて、第2流路において血液の噴流を生じさせうるノズルと、
上記第2流路において、上記ノズルによる血液の噴流のうち血球成分を含む流れより噴流の拡散方向の外側となる位置に開口して、上記第2流路と連続する第3流路と、を具備する血漿又は血清分離装置。
【請求項2】
上記第1流路、上記ノズル、上記第2流路、及び上記第3流路の一組を一段として、当該組が直列に多段に連続された請求項1に記載の血漿又は血清分離装置。
【請求項3】
上記第3流路の開口は、血液中の血漿成分又は血清成分を通過させ、かつ血球成分を通過させない大きさである請求項1又は2に記載の血漿又は血清分離装置。
【請求項4】
上記開口が、上記第2流路における上記ノズル付近に配置された請求項1から3のいずれかに記載の血漿又は血清分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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