血管の異常診断装置及び異常診断方法
【課題】血管の異常位置の誤判定の大きな原因であった頭蓋骨などの生体からの多重反射波を減衰させ、S/Nを向上させることで判定率を向上させる。
【解決手段】生体の複数の部位に付帯された生体振動検知手段から、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知工程(ステップS1)と、検知された波形信号を、前記特定空間内における異音の発生点を特定し、その異音発生点を血管の異常位置として推定する異常位置推定工程(ステップS5)とを備え、この異常発生推定工程は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を低減させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理工程(ステップS2)を備えた。
【解決手段】生体の複数の部位に付帯された生体振動検知手段から、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知工程(ステップS1)と、検知された波形信号を、前記特定空間内における異音の発生点を特定し、その異音発生点を血管の異常位置として推定する異常位置推定工程(ステップS5)とを備え、この異常発生推定工程は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を低減させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理工程(ステップS2)を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の生体において例えば脳の血管の異常を検出するための血管の異常診断装置に係り、特に、血管の血流音により生じる振動を検知して血管の異常位置を特定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、頭蓋などの生体内の血管に動脈瘤や狭窄部などの異常が発生して血液の正常な流れが妨げられると、その異常部位から微弱ながら乱流に伴う異音が発生することが知られている。そして、この可聴帯域音に着目して、脳内の血管異常を出血前に非侵襲の方法で発見するための種々の診断方法が提案されている。このような血管の異常診断方法は、一般的に、前額部に複数の高精度加速度センサを取り付け、このセンサで血管異常部から放射される音を検知し、この応答波形を所謂ビームフォーミングすることで脳内の血管異常位置を推定するように構成される。
【0003】
一方で、このような血管の異常診断方法においては、高精度加速度センサが被験者の呼吸音や体動、周囲の雑音なども検知してしまい、これらの雑音によって診断精度が低下するという問題がある。
【0004】
そのため本願発明者等は、下記の特許文献1において、センサが検知した波形信号から生体雑音成分や周囲の雑音成分を除去することで、血流音の波形成分を取り出してS/Nを向上させ血管の異常位置の推定精度を向上させる事が可能な血管の異常診断装置を提案した。
【0005】
【特許文献1】特開2000−83906号公報
【0006】
一方で、上記した雑音成分を除去した場合でも、依然として血管の異常位置を十分な精度で推定することは実現できていない。これは、上記した雑音成分以外に、異常位置の推定に影響を与える音が存在することが原因であると考えられる。本願発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、生体内の反射波形がその原因であることを発見し、この反射波形を減衰(除去・低減)させることで異常位置の推定精度が飛躍的に向上することを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、血管の異常位置の誤判定の大きな原因であった頭蓋骨などの生体からの多重反射波を減衰させ、S/Nを向上させることで判定率を飛躍的に向上させることができる血管の異常位置特定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を解決するための本発明の技術的手段は、生体の複数の部位に付帯され、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知手段と、検知された波形信号に基づいて生体振動検知手段から特定の音源までの距離を算出し、前記特定空間内におけるこの音源の位置を血管の異常位置として推定する異常位置推定手段とを備え、この異常位置推定手段は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を減衰させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理手段を備えたことを特徴とする血管の異常診断装置及びその装置を利用して好適に実行可能な異常診断方法を提供する。
【0009】
このような構成によれば、クロススペクトル法などを利用して、通常使用されるよりも極端に短い時間窓を用いることにより、音源(異常部位)から放射される音のうち、直接生体振動検知手段に到達する部分(直接波)を時間窓内に含め、生体(頭蓋骨等)からの反射波は時間窓に極力含まないように設定することにより、生体からの反射波を大きく減衰させ、S/Nを向上させることができる。これにより異常位置の判定率が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生体振動検知手段が検知した波形信号に含まれる人体からの反射波形を減衰させてS/Nを向上させることができ、血管の異常位置の推定精度を向上させることができる。即ち、本発明によれば、精度良く簡易に診断が可能になるので、多くの被験者に対して低コストで非侵襲的・非観血的かつ確実に診断を行なうことができる。特に、頭蓋内血管病変を早期かつ簡易に診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る血管の異常診断装置について説明する。以下においては、生体として人体(被験者)P、血管の異常診断の対象となる特定空間SPとして人体Pの脳を例示する。
【0012】
図1に示すように、この実施の形態に係る血管の異常診断装置1は、人体Pの脳(特定空間SP)内に存在する血管の血流音により生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する複数の生体振動検知センサ(生体振動検知手段)2、2と、この生体振動検知センサ2が検知した各波形信号を取得し、脳内の異常音の発生点を血管の異常位置として推定して出力する診断装置本体3とから構成される。また、本実施形態では、前記人体Pの脳(特定空間SP)の周囲若しくは人体Pや診断装置本体3の周囲に配置され、人体の血流音以外の雑音の振動を波形信号として検知する雑音振動検知センサ(雑音振動検知手段)4と、被験者Pの心臓部位に取付けた心電センサSDとを備えている。雑音振動検知センサ4は、人体Pの呼吸音などの生体雑音を検知する生体雑音検知センサ4aと、壁や床から伝達される周囲雑音を検知する周囲雑音検知センサ4bとから構成される。
【0013】
本実施形態の各センサ2、4a、4b、SDとしては、高精度加速度型振動ピックアップセンサが好ましい。生体振動検知センサ2は、図1に示すように、被験者Pの左右前額部と左右こめかみ部の計4箇所に取り付けられる。センサ2は2個以上であればよく、取付け位置も任意である。これら複数のセンサ2、2の間に存在する人体の頭部(頭蓋)内が特定空間SPとなる。また、生体雑音検知センサ4aは人体Pの頸部などの呼吸音を容易に検知できる場所に取り付けられる。さらに、周囲雑音検知センサ4bは、診断装置本体3と床や壁との間の、建物を伝達してくる外部音等を容易に検知できる場所に取り付けられる。
【0014】
診断装置本体3は、汎用のコンピュータシステムであり、図示しないCPUに通信バスを介してRAM、ROMやHDDなどの記憶装置、及び入出力インタフェース(I/F)が接続され、この入出力I/Fに入力装置、出力装置、通信デバイス、各種のドライブが接続された周知の構成を有する。前記センサ2は、キーボードやポインティングデバイスと共に入力装置の一部を構成する。また、後述する本発明の特徴的な機能は、記憶装置に格納されるコンピュータプログラムによって実現される。すなわち、この診断装置本体3は、医療機関の医師等が入力装置から各種のコマンドを入力したり、センサ2から血流音の波形信号を取得すると、CPUが記憶装置から所定のプログラムを読み出してRAM上に展開して実行させ、各機能を実現するものである。
【0015】
次に、図2の機能ブロック図を参照して、上記診断装置本体3の記憶装置に格納されるコンピュータプログラムの機能について説明する。このプログラムは、主として、異常位置推定機能を実行する異常位置推定部5と、生体Pの血流音以外の雑音成分を除去する雑音成分除去部6と生体振動検知センサ2及び心電センサSDから入力された波形信号をA/D変換する従来周知のA/D変換部7とを備えている。各機能部は、実際には独立したコンピュータプログラムやそのサブルーチン等である。なお、各機能の一部又は全部を制御回路などのハードウェアで実行するようにしてもよい。
【0016】
異常位置推定部5は、検知された波形信号に基づいて生体振動検知センサ2から特定の音源までの距離を算出し、前記特定空間内におけるこの音源の位置を血管の異常位置として推定するものである。具体的には、この異常位置推定部5は、生体振動検知センサ2が検知した波形信号を短い矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FTT)することで、この生体振動検知センサ2と生体との間で発生する共振のパワースペクトルに落ち込む周波数を演算し、その周波数における位相の傾きに基づいて異常位置を推定するものである。
【0017】
そのため、この異常位置推定部5は、窓掛け処理部8、波形信号特性算出部9、距離計算部10、到達時間差計算部11、傾き計算部12、2乗和計算部13及び出力制御部14を備えている。
【0018】
窓掛け処理部8は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記生体振動検知センサ2に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、生体振動検知センサ2が検知した各波形信号について、特定のトリガ信号(心臓部位に取付けられた心電センサ(ECG)による心電波形信号等)を基準にしてこの反射波形信号を減衰させるように窓掛け処理を実行するものである。窓掛け処理部8の具体的な機能は後述する。
【0019】
波形信号特性算出部9は、前記窓掛け処理部8によって窓掛け処理された各波形信号からクロススペクトル及びコヒーレンスからなる波形信号の特性を算出するものである。
また、この波形信号特性算出部9は、クロススペクトルの波形信号を多数回(例えば30回)繰り返して算出し、この一次算出結果の平均値を演算する機能も備えている。
【0020】
距離計算部10は、前記特定空間内の予め定めた多数の点と各生体振動検知センサ2との距離を計算するものである。
【0021】
到達時間差計算部11は、計算された距離に基づいて音源から各生体振動検知センサまでの到達時間差を最小2乗法によって計算するものである。
【0022】
傾き計算部12は、計算された到達時間差に基づいて前記各点に対する夫々のクロススペクトルの位相の傾きを計算するものである。
【0023】
2乗和計算部13は、コヒーレンスの大きい周波数で各点に対する夫々のクロススペクトルの位相と実測の位相の差の2乗和を計算する機能を有する。
【0024】
出力制御部14は、この2乗和の最小点を異常位置として示す出力画面を生成してディスプレイ等の出力装置に表示させる機能を有する。
【0025】
また、前記雑音成分除去部6は、前記生体雑音検知センサ4a及び周囲雑音検知センサ4bが検知した雑音の波形信号に基づいて、前記生体振動検知センサ2が検知した波形信号から雑音成分を除去するものである。具体的には、この雑音成分除去部6は、検知された雑音波形信号を、特定のトリガ信号(心電波形信号等)を基準にして窓掛け処理し、この雑音波形信号に基づいて、前記生体振動検知センサ2が検知した波形信号から雑音成分を除去し、雑音振動検知センサ4(4a、4b)が検知し窓掛け処理された波形信号に基づいて、生体の雑音発生部位(頸部等)や被験者Pの周囲から発生した雑音が、生体振動検知センサ2が検知した波形信号に与える影響を雑音成分波形信号として推定し、推定された雑音成分波形信号を生体振動検知センサ2が検知した波形信号から除去するものである。この雑音成分除去の原理は、従来技術として挙げた本発明者らによる特開2000−83906号公報に詳述されている。
【0026】
次に、図3のフロー図を参照して、本実施形態に係る異常位置の推定処理工程について説明する。
【0027】
まず、被験者Pの頭部に複数の生体振動検知センサ2を付帯させ、このセンサ2から生体振動波形を取得する(ステップS1)。例えばサンプリング周波数を5kHz、測定時間を5分間に設定して、生体振動の検知を行なう。各センサからの信号は、A/D変換部7によってA/D変換され、図示しないメモリに記憶される。
【0028】
次に、各センサからの波形信号が処理される。この場合、生体振動検知センサ2及び雑音振動検知センサ4a、4bが検知した波形信号は、心電センサSDによって検知された心電波形信号をトリガ信号にして窓掛け処理部8によって窓掛け処理される(ステップS2)。この時、雑音成分除去部6によって、生体雑音検知センサ4aや周囲雑音検知センサ4bが検知した波形信号に基づいて生体振動検知センサ2が検知した波形信号から雑音成分が除去される(ステップS3)。この場合、生体の周囲の雑音発生部位から発生された雑音が、生体振動検知センサ2が検知した波形信号に与える影響を周囲雑音成分波形信号として推定する。
【0029】
また、雑音成分を除去した生体振動波形には、音源からセンサ2に直接到達した振動波形と、生体の頭蓋骨に反射して遅れて到達した振動波形とが含まれている。この反射波形を含んだ生体振動波形をそのまま利用すると、音源位置の推定に大きな誤差が生じてしまう。
【0030】
そこで、音源から発生した音が複数のセンサ2、2に到達した時間差を算出し(ステップS4)、この到達時間差と既知の音速と複数のセンサの位置とから音源の位置を推定する(ステップS5)。具体的には、雑音成分を除去した生体振動波形を8点程度の極端に短い矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FFT)を行うと共に、最小2乗法を用いて位相回転角(傾き)aを求めて到達時間差を算出する。頭蓋内に存在する音源(血管)から発生した音が複数の生体振動検知センサ2、2に到達するまでの時間差は非常に小さいが、クロススペクトルの位相の傾き(群遅延成分)を調べることで演算が可能である。
【0031】
ここで、本実施形態における矩形窓の長さについて説明する。
FFTにおいては、通常、1024点〜4096点の窓が用いられる。しかし、上記したように、到達時間差を算出して音源を推定するためには、反射波(残響)を含まないだけでなく、直接音(音源から直接センサに到達する音)に共通する信号が含まれる時間を設定しなければならない。
【0032】
仮に、被験者の頭の直径が15cm、音速が1500m/sとすると、直接音に共通する信号を含ませるためには、(15/100(m))/(1500m/s)=0.0001s以上の長さが必要になる。サンプリング周波数が5kHzなので、この0.0001sは0.5ポイント(点)に相当する。また、被験者の個体差なども考慮する必要がある。
【0033】
そこで本実施形態では、上記のように、矩形窓の長さを8ポイントに設定した。
【0034】
最後に、異常位置推定部5によって異常音の発生点がスキャンされ、特定空間SP内に血管の血流音の異常音の発生点があるときに、異常音の発生点を血管の異常位置として推定する(ステップS6)。その推定結果は、前記出力制御部14によって、脳の横断面において、上記のコヒーレンスの大きい周波数で各点に対する夫々のクロススペクトルの位相と実測の位相の差の2乗和の等高線がプロットされ、図示しない表示装置に表示される(ステップS7)。
【0035】
次に、上記ステップS4、S5の到達時間差の演算及びこれに基づく異常位置の推定処理について詳細に説明する。
【0036】
すなわち、複数の生体振動検知センサ2、2によって測定される応答波形は、これらの生体振動検知センサ2、2と音源との距離差に応じた音の到達時間差τが生じる。この到達時間差τを算出することで、既知の音速(1500m/sec)と複数の生体振動検知センサ2、2の位置とから、音源の位置を推定できる。なお、以下においては、複数の生体振動検知センサ2、2を、便宜上、第1のセンサと第2のセンサと表現する。
【0037】
第1のセンサの応答#1をχ1(t)とすると、第2のセンサの応答#2はχ1(t−τ)と表すことができる。第1のセンサの応答#1のスペクトルをΧ1(ω)とすると、第2のセンサの応答#2のスペクトルΧ2(ω)は次式の通りとなる。
【0038】
【数1】
【0039】
また、第1のセンサの応答#1と第2のセンサの応答#2のクロススペクトルは次式の通りとなる。
【0040】
【数2】
【0041】
したがって、クロススペクトルの位相は、「−ωτ」となる。これを利用して、音源から第1、第2のセンサまでの到達時間差を推定できる。ここで、周波数は既知であるため、位相の傾きが分かればその位相の変化から2つのセンサの応答の時間差τを推定できる。すなわち、到達時間差τは、次式によって算出できる。
【0042】
【数3】
【0043】
しかし、音場内で反射が多数発生する場合には、到達時間差を示す位相傾きが理想的な直線とはなりにくい。また、ランダム雑音やパワーの低い周波数での位相は不安定であるため、クロススペクトルの位相の傾きを精度良く求めることがより難しくなる。そのため、上記の手法によっても到達時間差τを算出することは困難である。
【0044】
そこで、本実施形態では、観測波形からクロススペクトルの位相の傾きを求める際にコヒーレンスで重みを付けた最小2乗法を用いて到達時間差τを求めることにした。推定する位相回転角(傾き)をaとすると、位相θは、「θ=aω」で求められる。
【0045】
また、離散角周波数ωiにおいて観測されるクロススペクトルの位相をθiとすると、重み付け最小2乗法による解は次式での値を最小とする傾きaとなる。
【0046】
【数4】
【0047】
ここで、位相θは周波数ωi毎にθiと観測されるが、回帰される角度はθi+2nπであるので、推定値aを計算することが困難となる。一方で、推定すべき群遅延は、離間して配置された複数の生体振動検知センサ2、2間の距離による伝播遅延よりも小さくなる。そのため、推定値aの範囲及びniは有限の範囲に限定できる。そのため、その範囲の中で誤差が最小となるniを用いてa、bを求めることができる。このようにして求めた位相の傾きの推定値aを上記式3に代入することで到達時間差τを算出できるため、上記したように、この到達時間差τと音速と第1、第2のセンサの位置とから、音源の位置を精度良く推定できる。
(実験例)
【0048】
次に、図4〜図13を参照して、本発明の実施形態に係る血管の異常診断装置を用いた実験例および比較例について説明する。
【0049】
まず、図4を参照して、この実験例に使用した実験装置の概要を説明する。
人体の頭部に適用して本発明の効果を確認するには、実際に脳内の血管に異常がある被験者を必要とするため、十分なデータのサンプルの入手が困難である。そこで今回の実験例では、図4に示すように、人体の頭部の代用として硬質ゴム製のタンクTを使用して実験を行った。図4は、このタンクTを底面から見た模式図である。硬質ゴム製のタンクTは、意図的に血流音に似た音を発生させることができ、生体振動による信号の反射特性が人体の頭蓋骨に類似しているので、正確なデータを効率よく得ることが可能である。
【0050】
具体的には、直径22.2cm、高さ(深さ)22.2cm、厚さ1.5cmの円筒状のタンクTの外周の任意の位置に各一対、合計4個のセンサ(生体振動検知センサに相当)SE1〜SE4を配置した。これらのセンサ(センサSE1とSE4、SE2とSE3)は、各側部において夫々6cmの間隔で配置した。
【0051】
タンクT内には、深さ方向の略中央の水平面上に、夫々3cmの間隔をおいて、3個×3個のマトリクス状に9個の音源S1〜S9を配置した。
【0052】
各センサが測定した応答信号は、プリアンプにて一度増幅し、狭帯域(100Hz〜2000Hz)のフィルタ(BFR)を通過させて不要な周波数成分を除去した後、A/D変換ボードの入力限界までプログラムによる自動制御によってそれぞれ増幅させる。各センサから得られた応答波形は、A/D変換器によってサンプリング周波数5kHzでA/D変換され、異常診断装置本体(コンピュータシステム)のディスプレイ上に表示される。
【0053】
このような実験装置において、測定したデータに基づいて音源位置を推定しようとすると、共振によって正確な推定が困難となる。すなわち、音源Sから発せられた音は、直接各センサSEまで届くと共に、タンクTの内壁に反射することによって共振が発生する。実際の人の頭蓋骨内でも共振が起こっており、その共振の影響で異常発生位置を正確に推定することが困難になっている。
【0054】
これを具体的に示したのが、図5〜図8の比較例の測定結果及び推定結果である。図5は、音源からセンサへのインパルスレスポンスを示す図であり、図中破線で囲んだ部分で共振が発生している。また、このデータに基づくシミュレーション結果が図6である。このような測定データに基づいて上記した手法によってクロススペクトルの位相を算出しても、図7に示すように、理想的な傾きは得られないため、図8に示すように、音源の位置推定にも大きな誤差が生じる。図8において、「○」が演算された音源の推定位置を、「×」が実際の音源の位置を夫々示している。
【0055】
これに対して、測定データを短い矩形窓で切り取ってFFT処理を行うことで、図9〜図13に示すように、音源の推定精度を向上させることができる。
【0056】
図9は、図5に示した測定データにFFTをかけた結果を示している。この図から、共振のパワースペクトルが落ち込む周波数が存在することが分かる。この共振パワースペクトルが落ち込むポイントの周波数における位相の傾きを算出することで、共振の影響を減衰させた音源位置の推定が可能になる。図10に、シミュレーション上での短い波形で切り取った場合のクロススペクトルとクロススペクトルの位相を示す。この図から、クロススペクトルの落ち込み部分の周波数において共振の影響が抑えられて、ほぼ理想のクロススペクトルの位相の値になっているのが分かる。すなわち、データを短い矩形窓で切り取ってFFT(高速フーリエ変換)をかけることによって共振のパワースペクトルに落ち込む周波数が存在し、そのような落ち込みポイントの周波数における位相の傾きを見ることによって共振の影響を抑えた音源位置推定が可能となる。
【0057】
このシミュレーション結果を検証するため、図4に示した実験装置で測定したデータを短い矩形窓で切り取って音源位置を推定した。図11は、タンク側面に配置した一側面の2つのセンサのクロススペクトルの位相、図12は、他側面の2つのセンサのクロススペクトルの位相を夫々示している。これらの図から明らかなように、夫々のクロススペクトルとコヒーレントが落ち込んだ周波数において位相がほぼ理想的となっている。その周波数における位相差を使用することで、図13に示すように、より正確な音源位置の推定が可能になる。
【0058】
このように、音源S(異常発生位置)から発せられた音の信号波形を短い矩形窓で切り取って解析することによって、クロススペクトルの位相に共振の影響がなく理論値に近い周波数が存在し、その周波数の位相において正確な音源位置推定が可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記の実施の形態には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態においては、人体の脳の血管異常診断に用いた例で説明したが、人体の別の部位(心臓など)の診断に用いたり、人体以外の別の生体に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る血管の異常診断装置の基本構成を示す図である。
【図2】同、血管の異常診断装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】同、異常位置の推定処理を説明するフローチャートである。
【図4】タンクを利用した実験装置の模式図である。
【図5】比較例における、音源からセンサへのインパルスレスポンスのグラフである。
【図6】比較例における、シミュレーションのグラフである。
【図7】比較例における、クロススペクトルの位相を示すグラフである。
【図8】比較例における、音源の推定結果を示す図である。
【図9】実験例における、共振部分のパワースペクトルを示すグラフである。
【図10】実験例における、シミュレーションのグラフである。
【図11】実験例における、クロススペクトルの位相を示すグラフである。
【図12】実験例における、クロススペクトルの位相を示すグラフである。
【図13】実験例における、音源の推定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…異常診断装置
2…生体振動検知センサ
3…診断装置本体
4…雑音振動検知センサ
4a…生体雑音検知センサ
4b…周囲雑音検知センサ
5…異常位置推定部
6…雑音成分除去部
7…A/D変換部
8…窓掛け処理部
9…波形信号特性算出部
10…距離計算部
11…到達時間差計算部
12…傾き計算部
13…2乗和計算部
14…出力制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の生体において例えば脳の血管の異常を検出するための血管の異常診断装置に係り、特に、血管の血流音により生じる振動を検知して血管の異常位置を特定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、頭蓋などの生体内の血管に動脈瘤や狭窄部などの異常が発生して血液の正常な流れが妨げられると、その異常部位から微弱ながら乱流に伴う異音が発生することが知られている。そして、この可聴帯域音に着目して、脳内の血管異常を出血前に非侵襲の方法で発見するための種々の診断方法が提案されている。このような血管の異常診断方法は、一般的に、前額部に複数の高精度加速度センサを取り付け、このセンサで血管異常部から放射される音を検知し、この応答波形を所謂ビームフォーミングすることで脳内の血管異常位置を推定するように構成される。
【0003】
一方で、このような血管の異常診断方法においては、高精度加速度センサが被験者の呼吸音や体動、周囲の雑音なども検知してしまい、これらの雑音によって診断精度が低下するという問題がある。
【0004】
そのため本願発明者等は、下記の特許文献1において、センサが検知した波形信号から生体雑音成分や周囲の雑音成分を除去することで、血流音の波形成分を取り出してS/Nを向上させ血管の異常位置の推定精度を向上させる事が可能な血管の異常診断装置を提案した。
【0005】
【特許文献1】特開2000−83906号公報
【0006】
一方で、上記した雑音成分を除去した場合でも、依然として血管の異常位置を十分な精度で推定することは実現できていない。これは、上記した雑音成分以外に、異常位置の推定に影響を与える音が存在することが原因であると考えられる。本願発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、生体内の反射波形がその原因であることを発見し、この反射波形を減衰(除去・低減)させることで異常位置の推定精度が飛躍的に向上することを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、血管の異常位置の誤判定の大きな原因であった頭蓋骨などの生体からの多重反射波を減衰させ、S/Nを向上させることで判定率を飛躍的に向上させることができる血管の異常位置特定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を解決するための本発明の技術的手段は、生体の複数の部位に付帯され、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知手段と、検知された波形信号に基づいて生体振動検知手段から特定の音源までの距離を算出し、前記特定空間内におけるこの音源の位置を血管の異常位置として推定する異常位置推定手段とを備え、この異常位置推定手段は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を減衰させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理手段を備えたことを特徴とする血管の異常診断装置及びその装置を利用して好適に実行可能な異常診断方法を提供する。
【0009】
このような構成によれば、クロススペクトル法などを利用して、通常使用されるよりも極端に短い時間窓を用いることにより、音源(異常部位)から放射される音のうち、直接生体振動検知手段に到達する部分(直接波)を時間窓内に含め、生体(頭蓋骨等)からの反射波は時間窓に極力含まないように設定することにより、生体からの反射波を大きく減衰させ、S/Nを向上させることができる。これにより異常位置の判定率が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生体振動検知手段が検知した波形信号に含まれる人体からの反射波形を減衰させてS/Nを向上させることができ、血管の異常位置の推定精度を向上させることができる。即ち、本発明によれば、精度良く簡易に診断が可能になるので、多くの被験者に対して低コストで非侵襲的・非観血的かつ確実に診断を行なうことができる。特に、頭蓋内血管病変を早期かつ簡易に診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る血管の異常診断装置について説明する。以下においては、生体として人体(被験者)P、血管の異常診断の対象となる特定空間SPとして人体Pの脳を例示する。
【0012】
図1に示すように、この実施の形態に係る血管の異常診断装置1は、人体Pの脳(特定空間SP)内に存在する血管の血流音により生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する複数の生体振動検知センサ(生体振動検知手段)2、2と、この生体振動検知センサ2が検知した各波形信号を取得し、脳内の異常音の発生点を血管の異常位置として推定して出力する診断装置本体3とから構成される。また、本実施形態では、前記人体Pの脳(特定空間SP)の周囲若しくは人体Pや診断装置本体3の周囲に配置され、人体の血流音以外の雑音の振動を波形信号として検知する雑音振動検知センサ(雑音振動検知手段)4と、被験者Pの心臓部位に取付けた心電センサSDとを備えている。雑音振動検知センサ4は、人体Pの呼吸音などの生体雑音を検知する生体雑音検知センサ4aと、壁や床から伝達される周囲雑音を検知する周囲雑音検知センサ4bとから構成される。
【0013】
本実施形態の各センサ2、4a、4b、SDとしては、高精度加速度型振動ピックアップセンサが好ましい。生体振動検知センサ2は、図1に示すように、被験者Pの左右前額部と左右こめかみ部の計4箇所に取り付けられる。センサ2は2個以上であればよく、取付け位置も任意である。これら複数のセンサ2、2の間に存在する人体の頭部(頭蓋)内が特定空間SPとなる。また、生体雑音検知センサ4aは人体Pの頸部などの呼吸音を容易に検知できる場所に取り付けられる。さらに、周囲雑音検知センサ4bは、診断装置本体3と床や壁との間の、建物を伝達してくる外部音等を容易に検知できる場所に取り付けられる。
【0014】
診断装置本体3は、汎用のコンピュータシステムであり、図示しないCPUに通信バスを介してRAM、ROMやHDDなどの記憶装置、及び入出力インタフェース(I/F)が接続され、この入出力I/Fに入力装置、出力装置、通信デバイス、各種のドライブが接続された周知の構成を有する。前記センサ2は、キーボードやポインティングデバイスと共に入力装置の一部を構成する。また、後述する本発明の特徴的な機能は、記憶装置に格納されるコンピュータプログラムによって実現される。すなわち、この診断装置本体3は、医療機関の医師等が入力装置から各種のコマンドを入力したり、センサ2から血流音の波形信号を取得すると、CPUが記憶装置から所定のプログラムを読み出してRAM上に展開して実行させ、各機能を実現するものである。
【0015】
次に、図2の機能ブロック図を参照して、上記診断装置本体3の記憶装置に格納されるコンピュータプログラムの機能について説明する。このプログラムは、主として、異常位置推定機能を実行する異常位置推定部5と、生体Pの血流音以外の雑音成分を除去する雑音成分除去部6と生体振動検知センサ2及び心電センサSDから入力された波形信号をA/D変換する従来周知のA/D変換部7とを備えている。各機能部は、実際には独立したコンピュータプログラムやそのサブルーチン等である。なお、各機能の一部又は全部を制御回路などのハードウェアで実行するようにしてもよい。
【0016】
異常位置推定部5は、検知された波形信号に基づいて生体振動検知センサ2から特定の音源までの距離を算出し、前記特定空間内におけるこの音源の位置を血管の異常位置として推定するものである。具体的には、この異常位置推定部5は、生体振動検知センサ2が検知した波形信号を短い矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FTT)することで、この生体振動検知センサ2と生体との間で発生する共振のパワースペクトルに落ち込む周波数を演算し、その周波数における位相の傾きに基づいて異常位置を推定するものである。
【0017】
そのため、この異常位置推定部5は、窓掛け処理部8、波形信号特性算出部9、距離計算部10、到達時間差計算部11、傾き計算部12、2乗和計算部13及び出力制御部14を備えている。
【0018】
窓掛け処理部8は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記生体振動検知センサ2に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、生体振動検知センサ2が検知した各波形信号について、特定のトリガ信号(心臓部位に取付けられた心電センサ(ECG)による心電波形信号等)を基準にしてこの反射波形信号を減衰させるように窓掛け処理を実行するものである。窓掛け処理部8の具体的な機能は後述する。
【0019】
波形信号特性算出部9は、前記窓掛け処理部8によって窓掛け処理された各波形信号からクロススペクトル及びコヒーレンスからなる波形信号の特性を算出するものである。
また、この波形信号特性算出部9は、クロススペクトルの波形信号を多数回(例えば30回)繰り返して算出し、この一次算出結果の平均値を演算する機能も備えている。
【0020】
距離計算部10は、前記特定空間内の予め定めた多数の点と各生体振動検知センサ2との距離を計算するものである。
【0021】
到達時間差計算部11は、計算された距離に基づいて音源から各生体振動検知センサまでの到達時間差を最小2乗法によって計算するものである。
【0022】
傾き計算部12は、計算された到達時間差に基づいて前記各点に対する夫々のクロススペクトルの位相の傾きを計算するものである。
【0023】
2乗和計算部13は、コヒーレンスの大きい周波数で各点に対する夫々のクロススペクトルの位相と実測の位相の差の2乗和を計算する機能を有する。
【0024】
出力制御部14は、この2乗和の最小点を異常位置として示す出力画面を生成してディスプレイ等の出力装置に表示させる機能を有する。
【0025】
また、前記雑音成分除去部6は、前記生体雑音検知センサ4a及び周囲雑音検知センサ4bが検知した雑音の波形信号に基づいて、前記生体振動検知センサ2が検知した波形信号から雑音成分を除去するものである。具体的には、この雑音成分除去部6は、検知された雑音波形信号を、特定のトリガ信号(心電波形信号等)を基準にして窓掛け処理し、この雑音波形信号に基づいて、前記生体振動検知センサ2が検知した波形信号から雑音成分を除去し、雑音振動検知センサ4(4a、4b)が検知し窓掛け処理された波形信号に基づいて、生体の雑音発生部位(頸部等)や被験者Pの周囲から発生した雑音が、生体振動検知センサ2が検知した波形信号に与える影響を雑音成分波形信号として推定し、推定された雑音成分波形信号を生体振動検知センサ2が検知した波形信号から除去するものである。この雑音成分除去の原理は、従来技術として挙げた本発明者らによる特開2000−83906号公報に詳述されている。
【0026】
次に、図3のフロー図を参照して、本実施形態に係る異常位置の推定処理工程について説明する。
【0027】
まず、被験者Pの頭部に複数の生体振動検知センサ2を付帯させ、このセンサ2から生体振動波形を取得する(ステップS1)。例えばサンプリング周波数を5kHz、測定時間を5分間に設定して、生体振動の検知を行なう。各センサからの信号は、A/D変換部7によってA/D変換され、図示しないメモリに記憶される。
【0028】
次に、各センサからの波形信号が処理される。この場合、生体振動検知センサ2及び雑音振動検知センサ4a、4bが検知した波形信号は、心電センサSDによって検知された心電波形信号をトリガ信号にして窓掛け処理部8によって窓掛け処理される(ステップS2)。この時、雑音成分除去部6によって、生体雑音検知センサ4aや周囲雑音検知センサ4bが検知した波形信号に基づいて生体振動検知センサ2が検知した波形信号から雑音成分が除去される(ステップS3)。この場合、生体の周囲の雑音発生部位から発生された雑音が、生体振動検知センサ2が検知した波形信号に与える影響を周囲雑音成分波形信号として推定する。
【0029】
また、雑音成分を除去した生体振動波形には、音源からセンサ2に直接到達した振動波形と、生体の頭蓋骨に反射して遅れて到達した振動波形とが含まれている。この反射波形を含んだ生体振動波形をそのまま利用すると、音源位置の推定に大きな誤差が生じてしまう。
【0030】
そこで、音源から発生した音が複数のセンサ2、2に到達した時間差を算出し(ステップS4)、この到達時間差と既知の音速と複数のセンサの位置とから音源の位置を推定する(ステップS5)。具体的には、雑音成分を除去した生体振動波形を8点程度の極端に短い矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FFT)を行うと共に、最小2乗法を用いて位相回転角(傾き)aを求めて到達時間差を算出する。頭蓋内に存在する音源(血管)から発生した音が複数の生体振動検知センサ2、2に到達するまでの時間差は非常に小さいが、クロススペクトルの位相の傾き(群遅延成分)を調べることで演算が可能である。
【0031】
ここで、本実施形態における矩形窓の長さについて説明する。
FFTにおいては、通常、1024点〜4096点の窓が用いられる。しかし、上記したように、到達時間差を算出して音源を推定するためには、反射波(残響)を含まないだけでなく、直接音(音源から直接センサに到達する音)に共通する信号が含まれる時間を設定しなければならない。
【0032】
仮に、被験者の頭の直径が15cm、音速が1500m/sとすると、直接音に共通する信号を含ませるためには、(15/100(m))/(1500m/s)=0.0001s以上の長さが必要になる。サンプリング周波数が5kHzなので、この0.0001sは0.5ポイント(点)に相当する。また、被験者の個体差なども考慮する必要がある。
【0033】
そこで本実施形態では、上記のように、矩形窓の長さを8ポイントに設定した。
【0034】
最後に、異常位置推定部5によって異常音の発生点がスキャンされ、特定空間SP内に血管の血流音の異常音の発生点があるときに、異常音の発生点を血管の異常位置として推定する(ステップS6)。その推定結果は、前記出力制御部14によって、脳の横断面において、上記のコヒーレンスの大きい周波数で各点に対する夫々のクロススペクトルの位相と実測の位相の差の2乗和の等高線がプロットされ、図示しない表示装置に表示される(ステップS7)。
【0035】
次に、上記ステップS4、S5の到達時間差の演算及びこれに基づく異常位置の推定処理について詳細に説明する。
【0036】
すなわち、複数の生体振動検知センサ2、2によって測定される応答波形は、これらの生体振動検知センサ2、2と音源との距離差に応じた音の到達時間差τが生じる。この到達時間差τを算出することで、既知の音速(1500m/sec)と複数の生体振動検知センサ2、2の位置とから、音源の位置を推定できる。なお、以下においては、複数の生体振動検知センサ2、2を、便宜上、第1のセンサと第2のセンサと表現する。
【0037】
第1のセンサの応答#1をχ1(t)とすると、第2のセンサの応答#2はχ1(t−τ)と表すことができる。第1のセンサの応答#1のスペクトルをΧ1(ω)とすると、第2のセンサの応答#2のスペクトルΧ2(ω)は次式の通りとなる。
【0038】
【数1】
【0039】
また、第1のセンサの応答#1と第2のセンサの応答#2のクロススペクトルは次式の通りとなる。
【0040】
【数2】
【0041】
したがって、クロススペクトルの位相は、「−ωτ」となる。これを利用して、音源から第1、第2のセンサまでの到達時間差を推定できる。ここで、周波数は既知であるため、位相の傾きが分かればその位相の変化から2つのセンサの応答の時間差τを推定できる。すなわち、到達時間差τは、次式によって算出できる。
【0042】
【数3】
【0043】
しかし、音場内で反射が多数発生する場合には、到達時間差を示す位相傾きが理想的な直線とはなりにくい。また、ランダム雑音やパワーの低い周波数での位相は不安定であるため、クロススペクトルの位相の傾きを精度良く求めることがより難しくなる。そのため、上記の手法によっても到達時間差τを算出することは困難である。
【0044】
そこで、本実施形態では、観測波形からクロススペクトルの位相の傾きを求める際にコヒーレンスで重みを付けた最小2乗法を用いて到達時間差τを求めることにした。推定する位相回転角(傾き)をaとすると、位相θは、「θ=aω」で求められる。
【0045】
また、離散角周波数ωiにおいて観測されるクロススペクトルの位相をθiとすると、重み付け最小2乗法による解は次式での値を最小とする傾きaとなる。
【0046】
【数4】
【0047】
ここで、位相θは周波数ωi毎にθiと観測されるが、回帰される角度はθi+2nπであるので、推定値aを計算することが困難となる。一方で、推定すべき群遅延は、離間して配置された複数の生体振動検知センサ2、2間の距離による伝播遅延よりも小さくなる。そのため、推定値aの範囲及びniは有限の範囲に限定できる。そのため、その範囲の中で誤差が最小となるniを用いてa、bを求めることができる。このようにして求めた位相の傾きの推定値aを上記式3に代入することで到達時間差τを算出できるため、上記したように、この到達時間差τと音速と第1、第2のセンサの位置とから、音源の位置を精度良く推定できる。
(実験例)
【0048】
次に、図4〜図13を参照して、本発明の実施形態に係る血管の異常診断装置を用いた実験例および比較例について説明する。
【0049】
まず、図4を参照して、この実験例に使用した実験装置の概要を説明する。
人体の頭部に適用して本発明の効果を確認するには、実際に脳内の血管に異常がある被験者を必要とするため、十分なデータのサンプルの入手が困難である。そこで今回の実験例では、図4に示すように、人体の頭部の代用として硬質ゴム製のタンクTを使用して実験を行った。図4は、このタンクTを底面から見た模式図である。硬質ゴム製のタンクTは、意図的に血流音に似た音を発生させることができ、生体振動による信号の反射特性が人体の頭蓋骨に類似しているので、正確なデータを効率よく得ることが可能である。
【0050】
具体的には、直径22.2cm、高さ(深さ)22.2cm、厚さ1.5cmの円筒状のタンクTの外周の任意の位置に各一対、合計4個のセンサ(生体振動検知センサに相当)SE1〜SE4を配置した。これらのセンサ(センサSE1とSE4、SE2とSE3)は、各側部において夫々6cmの間隔で配置した。
【0051】
タンクT内には、深さ方向の略中央の水平面上に、夫々3cmの間隔をおいて、3個×3個のマトリクス状に9個の音源S1〜S9を配置した。
【0052】
各センサが測定した応答信号は、プリアンプにて一度増幅し、狭帯域(100Hz〜2000Hz)のフィルタ(BFR)を通過させて不要な周波数成分を除去した後、A/D変換ボードの入力限界までプログラムによる自動制御によってそれぞれ増幅させる。各センサから得られた応答波形は、A/D変換器によってサンプリング周波数5kHzでA/D変換され、異常診断装置本体(コンピュータシステム)のディスプレイ上に表示される。
【0053】
このような実験装置において、測定したデータに基づいて音源位置を推定しようとすると、共振によって正確な推定が困難となる。すなわち、音源Sから発せられた音は、直接各センサSEまで届くと共に、タンクTの内壁に反射することによって共振が発生する。実際の人の頭蓋骨内でも共振が起こっており、その共振の影響で異常発生位置を正確に推定することが困難になっている。
【0054】
これを具体的に示したのが、図5〜図8の比較例の測定結果及び推定結果である。図5は、音源からセンサへのインパルスレスポンスを示す図であり、図中破線で囲んだ部分で共振が発生している。また、このデータに基づくシミュレーション結果が図6である。このような測定データに基づいて上記した手法によってクロススペクトルの位相を算出しても、図7に示すように、理想的な傾きは得られないため、図8に示すように、音源の位置推定にも大きな誤差が生じる。図8において、「○」が演算された音源の推定位置を、「×」が実際の音源の位置を夫々示している。
【0055】
これに対して、測定データを短い矩形窓で切り取ってFFT処理を行うことで、図9〜図13に示すように、音源の推定精度を向上させることができる。
【0056】
図9は、図5に示した測定データにFFTをかけた結果を示している。この図から、共振のパワースペクトルが落ち込む周波数が存在することが分かる。この共振パワースペクトルが落ち込むポイントの周波数における位相の傾きを算出することで、共振の影響を減衰させた音源位置の推定が可能になる。図10に、シミュレーション上での短い波形で切り取った場合のクロススペクトルとクロススペクトルの位相を示す。この図から、クロススペクトルの落ち込み部分の周波数において共振の影響が抑えられて、ほぼ理想のクロススペクトルの位相の値になっているのが分かる。すなわち、データを短い矩形窓で切り取ってFFT(高速フーリエ変換)をかけることによって共振のパワースペクトルに落ち込む周波数が存在し、そのような落ち込みポイントの周波数における位相の傾きを見ることによって共振の影響を抑えた音源位置推定が可能となる。
【0057】
このシミュレーション結果を検証するため、図4に示した実験装置で測定したデータを短い矩形窓で切り取って音源位置を推定した。図11は、タンク側面に配置した一側面の2つのセンサのクロススペクトルの位相、図12は、他側面の2つのセンサのクロススペクトルの位相を夫々示している。これらの図から明らかなように、夫々のクロススペクトルとコヒーレントが落ち込んだ周波数において位相がほぼ理想的となっている。その周波数における位相差を使用することで、図13に示すように、より正確な音源位置の推定が可能になる。
【0058】
このように、音源S(異常発生位置)から発せられた音の信号波形を短い矩形窓で切り取って解析することによって、クロススペクトルの位相に共振の影響がなく理論値に近い周波数が存在し、その周波数の位相において正確な音源位置推定が可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記の実施の形態には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態においては、人体の脳の血管異常診断に用いた例で説明したが、人体の別の部位(心臓など)の診断に用いたり、人体以外の別の生体に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る血管の異常診断装置の基本構成を示す図である。
【図2】同、血管の異常診断装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】同、異常位置の推定処理を説明するフローチャートである。
【図4】タンクを利用した実験装置の模式図である。
【図5】比較例における、音源からセンサへのインパルスレスポンスのグラフである。
【図6】比較例における、シミュレーションのグラフである。
【図7】比較例における、クロススペクトルの位相を示すグラフである。
【図8】比較例における、音源の推定結果を示す図である。
【図9】実験例における、共振部分のパワースペクトルを示すグラフである。
【図10】実験例における、シミュレーションのグラフである。
【図11】実験例における、クロススペクトルの位相を示すグラフである。
【図12】実験例における、クロススペクトルの位相を示すグラフである。
【図13】実験例における、音源の推定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…異常診断装置
2…生体振動検知センサ
3…診断装置本体
4…雑音振動検知センサ
4a…生体雑音検知センサ
4b…周囲雑音検知センサ
5…異常位置推定部
6…雑音成分除去部
7…A/D変換部
8…窓掛け処理部
9…波形信号特性算出部
10…距離計算部
11…到達時間差計算部
12…傾き計算部
13…2乗和計算部
14…出力制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の複数の部位に付帯され、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知手段と、
検知された波形信号に基づいて生体振動検知手段から特定の音源までの距離を算出し、前記特定空間内におけるこの音源の位置を血管の異常位置として推定する異常位置推定手段とを備え、
この異常位置推定手段は、特定の音源から放射された音の波形信号のうち、音源から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を減衰させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理手段を備えた
ことを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項2】
請求項1の異常診断装置において、
前記異常位置推定手段は、
前記窓掛け処理手段によって窓掛け処理された各波形信号からクロススペクトル及びコヒーレンスからなる波形信号の特性を算出する波形信号特性算出手段と、
前記特定空間内の予め定めた多数の点と各生体振動検知手段との距離を計算する距離計算手段と、
計算された距離に基づいて音源から各生体振動検知手段までの到達時間差を最小2乗法によって計算する到達時間差計算手段と、
計算された到達時間差に基づいて前記各点に対する夫々のクロススペクトルの位相の傾きを計算する傾き計算手段とを備える
ことを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項3】
請求項1の異常診断装置において、
前記異常位置推定手段は、生体振動検知手段が検知した波形信号を所定長の矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FTT)することで、この生体振動検知手段と生体との間で発生する共振のパワースペクトルに落ち込む周波数を演算し、その周波数における位相の傾きに基づいて異常位置を推定するものであることを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項4】
請求項1の異常診断装置において、
さらに、
前記特定空間の周囲若しくは生体の周囲に配置され、血流音以外の雑音の振動を波形信号として検知する雑音振動検知手段と、
この雑音振動検知手段が検知した波形信号に基づいて、前記生体振動検知手段が検知した波形信号から雑音成分を除去する雑音成分除去手段と
を備えたことを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項5】
生体の複数の部位に付帯された生体振動検知手段から、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知工程と、
検知された波形信号を、前記特定空間内における異音の発生点を特定し、その異音発生点を血管の異常位置として推定する異常位置推定工程と、を備え、
この異常発生推定工程は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を低減させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理工程を備えた
ことを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項6】
請求項5の異常診断方法において、
前記異常位置推定工程は、
前記窓掛け処理工程で窓掛け処理された各波形信号からクロススペクトル及びコヒーレンスからなる波形信号の特性を算出する波形信号特性算出工程と、
前記特定空間内の予め定めた多数の点と各生体振動検知手段との距離を計算する距離計算工程と、
計算された距離に基づいて音源から各生体振動検知手段までの到達時間差を最小2乗法によって計算する到達時間差計算工程と、
計算された到達時間差に基づいて前記各点に対する夫々のクロススペクトルの位相の傾きを計算する傾き計算工程とを備える
ことを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項7】
請求項5の異常診断方法において、
前記異常位置推定工程は、生体振動検知手段が検知した波形信号を短い矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FTT)することで、この生体振動検知手段と生体との間で発生する共振のパワースペクトルに落ち込む周波数を演算し、その周波数における位相の傾きに基づいて異常位置を推定するものであることを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項8】
請求項5の異常診断方法において、
さらに、
前記特定空間の周囲若しくは生体の周囲に配置され、血流音以外の雑音の振動を波形信号として検知する雑音振動検知工程と、
この雑音振動検知手段が検知した波形信号に基づいて、前記生体振動検知手段が検知した波形信号から雑音成分を除去する雑音成分除去工程と
を備えたことを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項1】
生体の複数の部位に付帯され、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知手段と、
検知された波形信号に基づいて生体振動検知手段から特定の音源までの距離を算出し、前記特定空間内におけるこの音源の位置を血管の異常位置として推定する異常位置推定手段とを備え、
この異常位置推定手段は、特定の音源から放射された音の波形信号のうち、音源から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を減衰させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理手段を備えた
ことを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項2】
請求項1の異常診断装置において、
前記異常位置推定手段は、
前記窓掛け処理手段によって窓掛け処理された各波形信号からクロススペクトル及びコヒーレンスからなる波形信号の特性を算出する波形信号特性算出手段と、
前記特定空間内の予め定めた多数の点と各生体振動検知手段との距離を計算する距離計算手段と、
計算された距離に基づいて音源から各生体振動検知手段までの到達時間差を最小2乗法によって計算する到達時間差計算手段と、
計算された到達時間差に基づいて前記各点に対する夫々のクロススペクトルの位相の傾きを計算する傾き計算手段とを備える
ことを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項3】
請求項1の異常診断装置において、
前記異常位置推定手段は、生体振動検知手段が検知した波形信号を所定長の矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FTT)することで、この生体振動検知手段と生体との間で発生する共振のパワースペクトルに落ち込む周波数を演算し、その周波数における位相の傾きに基づいて異常位置を推定するものであることを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項4】
請求項1の異常診断装置において、
さらに、
前記特定空間の周囲若しくは生体の周囲に配置され、血流音以外の雑音の振動を波形信号として検知する雑音振動検知手段と、
この雑音振動検知手段が検知した波形信号に基づいて、前記生体振動検知手段が検知した波形信号から雑音成分を除去する雑音成分除去手段と
を備えたことを特徴とする血管の異常診断装置。
【請求項5】
生体の複数の部位に付帯された生体振動検知手段から、この生体の内部の特定空間内に存在する血管の血流音によって生じる振動を含む音の振動を波形信号として検知する生体振動検知工程と、
検知された波形信号を、前記特定空間内における異音の発生点を特定し、その異音発生点を血管の異常位置として推定する異常位置推定工程と、を備え、
この異常発生推定工程は、推定された異常位置から放射された音の波形信号のうち、異常位置から前記検知手段に直接到達した音の波形信号と、生体から反射されて遅れて到達した波形信号とを識別し、特定のトリガ信号を基準にしてこの反射波形信号を低減させるように窓掛け処理を実行する窓掛け処理工程を備えた
ことを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項6】
請求項5の異常診断方法において、
前記異常位置推定工程は、
前記窓掛け処理工程で窓掛け処理された各波形信号からクロススペクトル及びコヒーレンスからなる波形信号の特性を算出する波形信号特性算出工程と、
前記特定空間内の予め定めた多数の点と各生体振動検知手段との距離を計算する距離計算工程と、
計算された距離に基づいて音源から各生体振動検知手段までの到達時間差を最小2乗法によって計算する到達時間差計算工程と、
計算された到達時間差に基づいて前記各点に対する夫々のクロススペクトルの位相の傾きを計算する傾き計算工程とを備える
ことを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項7】
請求項5の異常診断方法において、
前記異常位置推定工程は、生体振動検知手段が検知した波形信号を短い矩形窓で切り取って高速フーリエ変換(FTT)することで、この生体振動検知手段と生体との間で発生する共振のパワースペクトルに落ち込む周波数を演算し、その周波数における位相の傾きに基づいて異常位置を推定するものであることを特徴とする血管の異常診断方法。
【請求項8】
請求項5の異常診断方法において、
さらに、
前記特定空間の周囲若しくは生体の周囲に配置され、血流音以外の雑音の振動を波形信号として検知する雑音振動検知工程と、
この雑音振動検知手段が検知した波形信号に基づいて、前記生体振動検知手段が検知した波形信号から雑音成分を除去する雑音成分除去工程と
を備えたことを特徴とする血管の異常診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−244412(P2007−244412A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67697(P2006−67697)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
【Fターム(参考)】
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