説明

血管アクセスを強化するための方法および組成物

【課題】血管アクセス構造体に供給されたときに、一般的に機能性を促進することができる、生体適合性マトリクスと細胞とを含む移植材料の提供。
【解決手段】細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料からなり、天然動静脈瘻の成熟を高めるだけではなく、透析に適切な成熟した機能的な状態で瘻を長持ちさせることができる。更に、透析に適切な機能的な動静脈移植片の形成を促進するばかりではなく、機能的な末梢バイパス移植片の形成を促進することができる。移植材料は、吻合部または動静脈移植片にて、吻合部または動静脈移植片近傍に、または、吻合部または動静脈移植片付近にての移植に適切な形状保持特性を有する可撓性平面形態または流動性構成体として構成することができる。移植材料は血管の外面に供給する。可撓性平面形態の特定の実施形態は、スロットを画定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2005年12月6日に出願された、この本出願は、35U.S.C.Section119(e)の下、2004年12月8日に出願された仮特許出願U.S.S.N.60/634,155号;2005年3月21日に出願された仮特許出願U.S.S.N.60/663,859号;および2005年3月19日に出願された仮特許出願U.S.S.N.60/682,054号;_________に出願された仮特許出願U.S.S.N._______号の利益を主張し、同日付で出願された係属中の国際出願PCT/US____________号(代理人整理番号ELV−OO8PCとしても知られる)および同日付で出願された係属中の国際出願PCT/US____________号(代理人整理番号ELV−009PCとしても知られる)に対する優先権を、35U.S.C.Section120,363および/または365の下で主張する。上述の出願の各々の全内容が、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
血管アクセス不全は、末期腎疾患(ESRD)を処置するために血液透析で患者に治療を行う際の主な合併症である。米国における既存ESRDの事例の割合は、1980年以来毎年増加している。2001年には、罹患率は、患者数で人口100万人当たりおよそ1400人に達し、前年から2.4パーセントの増加であった。年齢、人種、民族性および糖尿病の状態の人口統計上の変化に基づいて、米国におけるESRD罹患人口は、2030年までに130万人になると予想される。現在、ESRD罹患人口の約65%が、血液透析で治療を受けている(患者数は約264,710人)。1997年から2001年まで、血液透析利用者人口は、年間4.5%増加した。医療保険データによる判断では、2001年までに、総ESRD経費は、155億ドルに達したが、これは、医療保険予算全体である2420億ドルの6.4%に当たる(総経費は、全体で228億ドルに達した)。実際は、米国における血管アクセス関連の病的状態の年間経費は、現在、年間10億ドルを超えている。
【0003】
血管アクセス不全は、血液透析利用者人口の病的状態の単一の最も重要な原因である。米国腎臓データシステム(USRDS)を分析した最近の報告書から、全体的な主要自力血管アクセス開存率は、1年でわずか53%であることが判明した。1年での主要自力血管アクセス開存率は、ePTFE(登録商標)プロテーゼブリッジを伴う動静脈移植片などの血管アクセス構造体の場合は49%であり、動静脈(AV)瘻の場合は62%であった。初回血管アクセスに関する1年、3年、5年での累積開存率は、それぞれ、前腕瘻については54%、46%、36%であり、AV移植片については54%、28%、0%であった。現在、ePTFEプロテーゼブリッジを伴う移植片の使用は、米国での血液透析による全血管アクセス治療処置の70%を占める。米国腎財団は現在、AV瘻が血管アクセスの好適な方法であると推奨している。今後、米国では新しいAV瘻の割合が増加することが予想される。
【0004】
自原性動静脈瘻は、血液透析患者の血管アクセスの最良な選択と歴史的にみなされている。AV瘻が外科的形成後に問題なく成熟したとき、合併症のリスクが低く、かつ、補正の発生率が低く、何年も機能することができる。しかしながら、報告されたAV瘻成熟なしの比率は大きく変るが、約20%から50%であることに変りはない。成熟なしは一般的に、透析に向けた瘻の反復的カニューレ挿入、または、外科的形成後12週以内に十分な透析血流を得ることができないことと定義されている。AV瘻の成熟なしが発生するか否かは、幾分、AV瘻を形成するのに使用された血管の品質およびサイズに左右される可能性がある。血管特性の手術前評価には、AV瘻形成に適切な血管の特定に有益な効果があることがこれまでわかっている。
【0005】
血管アクセス構造体の不良は、特に、吻合のいわゆる「先端」および下流側の周囲における様々な明確な急性および慢性の現象の累積的な影響に帰するものである。例えば、AV移植片では、移植片関連の狭窄および移植片関連の閉塞が静脈吻合側の吻合部にて発生する恐れがある。1つの発表された報告においては、移植片関連の吻合狭窄が発生した患者から除去したセグメントの組織学的な検査の結果、平滑細胞と細胞外マトリクスからなる血管内肥厚化がわかった。また、移植片血栓症は、ePTFE透析移植片内での血管アクセス機能障害に一因になる恐れがある。更に、一般的に、静脈と動脈の単離、その後に動脈血流および圧力に静脈セグメントを晒すのは、不可避的虚血および再潅流傷害の原因になる可能性がある。縫合などの外科的処置により、静脈および動脈の両方における培地の内皮および平滑筋細胞に対する直接的な創傷が結果的に発生する可能性がある。天然のまたは移植片の吻合を形成中の動脈および静脈内皮に対する損傷は、開存率および閉塞率に影響を与える可能性がある。血管アクセス構造体形成中の静脈および動脈切断および縫合に関連した肉体的な創傷に加えて、壁体応力および剪断力の増加も、内皮の肉体的および生化学的もしくは肉体的または生化学的損傷の原因になる可能性がある。動脈圧は、内皮成長規制複合物の正常な生成を変えると共に、静脈中膜の形態学的かつ生化学的変化を引き起こす恐れがあることがこれまで示唆されている。
【0006】
血管アクセス不全に対する現在の治療は、外科的な補正またはステント挿入ありまたはなしの血管形成である。外科的治療は、これらの一般的に複数の病気に罹患した患者ではリスクが高い可能性があり、血管形成およびステント挿入の長期的な結果は、固有の失敗率のために一般的に期待通りのものではない。したがって、血液透析ならびに末梢循環を目的とした血管アクセスの向上の目標は、元の移植片部位の解剖学的完全性を維持して、透析治療または末梢バイパス部位での十分な血流を支える血液流量に対応することである。
【0007】
新たに形成される血管アクセス構造体の成熟または既存の血管アクセス構造体の長期的な成長の成功に寄与する他の要素は、わかりにくいものであることには変りはない。更に、血管アクセス不全防止の分野でこれまで実施された無作為の臨床試験は相対的に少ない。血管アクセス不全の原因をこれまで評価した種々の研究では、到達した結論は一貫性を欠くものである。実際のところ、目下この問題が非常に深刻であるにもかかわらず、臨床医が利用することができる機能中の透析用血管アクセス瘻の長期的な存続に対する有効な外科的、治療的、または薬理学的対策はない。明らかに、患者治療というこの極めて重要な領域において進歩する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料は、局所的に血管アクセス構造体に供給されたとき、構造体の形成を促進させて成熟を高めるか、もしくは、構造体の形成を促進するか、または、成熟を高め、成熟した機能的状態で構造体を長持ちさせることができるという発見事項を利用するものである。本発明によれば、移植材料は、血管アクセス構造体にて、血管アクセス構造体近傍に、または、血管アクセス構造体付近に、血管の外面上に位置する。本発明は、効果的に、新たに形成された血管アクセス構造体の整合性を促進させて成熟を高めるか、もしくは、整合性を促進するかまたは成熟を高め、既存の機能している構造体の機能寿命を促進させかつ持続させることができ、かつ、不全となったかまたは不全中である構造体の救済を助長することができる。
【0009】
1つの態様においては、本発明は、患者内で血管アクセス構造体を処置する方法であって、血管アクセス構造体にて、血管アクセス構造体近傍に、または、血管アクセス構造体付近に、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を配置する工程を含み、移植材料が、構造体の機能性を促進するのに有効である方法である。以下で説明する特定の実施形態によれば、血管アクセス構造体は、透析用である。
【0010】
様々な実施形態によれば、血管アクセス構造体は、天然動静脈瘻、動静脈移植片、末梢移植片、静脈カテーテル、または留置ポートである。1つの実施形態においては、動静脈移植片は、プロテーゼブリッジを含む。他の実施形態においては、カテーテルは、留置二重内腔カテーテルであり、留置二重内腔カテーテルを処置することで、血液透析を可能にするのに十分な臨床的安定性を促進される。
【0011】
1つの実施形態においては、血管アクセス構造体を処置することは、構造体を通る、かつ構造体の下流側での正常または正常に近い血流を促進する。例えば、正常または正常に近い血流は、血液透析中に再循環を防止するのに十分な速度である血流である。更なる実施形態によれば、血管アクセス構造体を処置することは、正常または正常に近い血管直径を促進させ、かつ、血液透析中に血流再循環を低減する。
【0012】
天然動静脈瘻の場合、天然動静脈瘻を処置することは、血液透析を可能にするのに十分な臨床的成熟を高め、天然動静脈瘻の成熟の遅延を低減し、反復的なカニューレ挿入を促進する。動静脈移植片の場合、動静脈移植片を処置することは、正常なまたは正常に近い循環を回復するのに十分な臨床的安定性を促進する。様々な実施形態においては、移植材料は、患者内での補正発生を低減する。
【0013】
1つの実施形態においては、成長を高めることは、透析に向けて瘻に反復的にカニューレを挿入することができることで特徴づけられる。別の実施形態によれば、成熟を高めることは、透析中に十分な血流を得ることができることによって特徴づけられる。十分な血流は、約350ml/分の速度を含むことが好ましい。様々な実施形態によれば、動静脈瘻への生体適合性材料の適用は、治療薬投与、物理的拡張、またはステント挿入より先行されるか、または、治療薬投与、物理的拡張、またはステント挿入と一致する。動静脈瘻は、橈骨動脈―橈側皮静脈間、上腕動脈―橈側皮静脈間、または上腕動脈―尺側皮静脈間である。
【0014】
1つの好適な実施形態においては、本発明は、動静脈瘻がヒトにおいて成熟不全になるのを防止する方法であって、瘻にて、瘻近傍に、または瘻付近に、生体適合性マトリクスと、血管内皮細胞とを含む移植材料を設置することで、瘻が成熟不全になるのを防止する工程を含む方法である。1つの実施形態においては、成熟不全は、透析に向けて瘻に反復的にカニューレを挿入することができないこと、または、透析中に約350ml/分の速度を含む十分な血流を得ることはできないことによって特徴づけられる。他の実施形態においては、成熟不全は、形成後少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、または少なくとも4ヵ月、カニューレ挿入することができない動静脈瘻によって特徴づけられる。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、透析を可能にするのに十分な動静脈移植片の血液流量を維持する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、移植材料が、透析を可能にするのに十分な移植片の血液流量を維持するのに有効な量で、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジにて、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ近傍に、または、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ付近に、動静脈移植片の外面上に配置される方法である。1つの実施形態においては、動静脈移植片の静脈流出領域での血液流量は、流出領域の上流側の血液流量と実質的に類似のものである。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、末梢循環を維持するのに十分な末梢バイパス移植片の正常な血流を維持する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、移植材料が、末梢循環を維持するのに十分なバイパス移植片の血液流量を維持するのに有効な量で、プロテーゼブリッジにて、プロテーゼブリッジの近傍に、または、プロテーゼブリッジ付近に、バイパス移植片の外面上に配置される方法である。1つの実施形態においては、流入血液流量と流出血液流量は、実質的に類似のものである。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、透析を可能にするのに十分な動静脈移植片の血圧を維持する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、移植材料が、透析を可能にするのに十分な移植片の血圧を維持するのに有効な量で、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジにて、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ近傍に、または、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ付近に、動静脈移植片の外面上に配置される方法である。1つの実施形態においては、動静脈移植片の静脈流出領域での血圧は、流出領域の上流側の血圧と実質的に類似のものである。プロテーゼブリッジは、伏在静脈と、ウシ異種移植片と、臍静脈と、ダクロンと、PTFEと、ePTFEと、ポリウレタンと、ウシ腸間膜静脈と、凍結保存大腿静脈同種移植片とからなる群から選択される。好適な実施形態によれば、プロテーゼブリッジは、ePTFEである。
【0018】
別の実施形態によれば、本発明は、動静脈移植片または末梢バイパス移植片のプロテーゼブリッジの組織整合性を促進する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、移植材料が、プロテーゼブリッジにて、プロテーゼブリッジ近傍、またはプロテーゼブリッジ付近に、ブリッジの組織整合性を促進するのに有効な量で、動静脈移植片または末梢バイパス移植片の外面上に配置される方法である。特定の実施形態においては、移植材料は、プロテーゼブリッジの内腔内面内またはプロテーゼブリッジの内腔内面の付近での円滑な筋細胞増殖または移動を促進するか、または、プロテーゼブリッジの内腔内面内またはプロテーゼブリッジの内腔内面の付近での内皮細胞増殖または移動を促進する。特定の他の実施形態においては、移植材料は、移植片にて、移植片近傍に、または移植片付近での円滑な筋細胞および内皮細胞、もしくは筋細胞または内皮細胞の増殖を促進する。
【0019】
別の実施形態においては、本発明は、動静脈瘻または動静脈移植片の裂開の発生を防止または低減する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、移植材料が、裂開の発生を防止または低減するのに有効な量で、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジにて、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ近傍に、または、動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ付近に、瘻または動静脈移植片の外面上に配置される方法である。
【0020】
他の実施形態によれば、供給工程は、天然動静脈瘻の不全後、または、天然または伏在静脈末梢バイパス不全後の介入治療として実行される。
【0021】
別の態様においては、本発明は、血管アクセス構造体を処置するのに適切な、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料である。細胞は、内皮細胞または内皮様の表現型を有する細胞である。生体適合性マトリクスは、可撓性平面形態または流動性構成体である。特に好適な実施形態においては、細胞は、血管内皮細胞である。可撓性平面形態は、血管アクセス構造体にて、血管アクセス構造体近傍に、または、血管アクセス構造体付近での移植用に構成される。特定の実施形態においては、この形態は、スロットを画定する。流動性構成体の1つの実施形態によれば、流動性構成体は、形状保持構成体である。
【0022】
他の実施形態においては、本発明は、動静脈瘻が成熟不全になるのを防止することで動静脈瘻の成熟を高める方法での使用に適切な細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料である。細胞は、内皮細胞または内皮様の表現型を有する細胞であり、生体適合性マトリクスは、可撓性平面形態または流動性構成体である。1つの実施形態においては、可撓性平面形態は、天然瘻にて、天然瘻近傍に、または、天然瘻付近での移植用に構成される。特定の実施形態においては、この形態は、スロットまたは一連のスロットを画定するように構成される。流動性構成体については、形状保持構成体である。
【0023】
別の実施形態においては、本発明は、細胞と生体適合性マトリクスとを含み、移植材料がプロテーゼブリッジにて、プロテーゼブリッジ近傍に、または、プロテーゼブリッジ付近に、血管の外面上に配置される移植材料である。プロテーゼブリッジは、動静脈移植片の静脈流出領域にてまたは動静脈移植片の静脈流出領域の近くに位置するか、または、末梢バイパス移植片の流出部にてまた末梢バイパス移植片の流出部の近くに位置する。
図面においては、同様の参照番号は、全般的に、異なる図を通して、同じ部分を指す。また、図面は、必ず、原寸に比例しているわけではなく、全般的に、本発明の諸原理を説明するに当たって誇張されている。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
患者内で血管アクセス構造体を処置する方法であって、該患者内の該血管アクセス構造体に、該患者内の該血管アクセス構造体近傍に、または該患者内の該血管アクセス構造体付近に、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を配置する工程を含み、該移植材料が、該構造体の機能性を促進するのに有効である、方法。
(項目2)
前記血管アクセス構造体が、天然動静脈瘻、動静脈移植片、または静脈カテーテルである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記動静脈移植片が、プロテーゼブリッジを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記カテーテルが、留置二重内腔カテーテルである、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記血管アクセス構造体が、透析用のものである、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記動静脈瘻を処置することが、反復的カニューレ挿入を促進する、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記血管アクセス構造体を処置することは、前記構造体を通り、かつ該構造体の下流側の、正常または正常に近い血流を促進する、項目1に記載の方法。
(項目8)
血流が、血液透析中に再循環を防止するのに十分な速度である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記血管アクセス構造体を処置することが、正常または正常に近い血管直径を促進する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記血管アクセス構造体を処置することが、血液透析中に血流再循環を低減する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記天然動静脈瘻を処置することが、血液透析を可能にするのに十分な臨床的成熟を促進する、項目2に記載の方法。
(項目12)
前記移植材料が、前記天然動静脈瘻の成熟の遅延を低減する、項目2に記載の方法。
(項目13)
前記動静脈移植片を処置することが、正常または正常に近い末梢循環を回復するのに十分な臨床的安定性を促進する、項目2に記載の方法。
(項目14)
前記留置二重内腔カテーテルを処置することが、血液透析を可能にするのに十分な臨床的安定性を促進する、項目2に記載の方法。
(項目15)
前記移植材料は、前記患者内での補正発生を低減する、項目2に記載の方法。
(項目16)
項目1に記載の方法での使用に適切な細胞と生体適合性マトリクスとを含む、移植材料。(項目17)
前記細胞が、内皮細胞または内皮様の表現型を有する細胞である、項目16に記載の移植材料。
(項目18)
前記生体適合性マトリクスが、可撓性平面材料または流動性構成体である、項目16に記載の移植材料。
(項目19)
前記可撓性平面材料が、吻合部での移植用に構成される、項目18に記載の移植材料。
(項目20)
前記材料が、スロットを画定する、項目19に記載の移植材料。
(項目21)
前記材料が、図1または図2Aのように構成される、項目19に記載の移植材料。
(項目22)
前記流動性構成体が、形状保持構成体である、項目18に記載の移植材料。
(項目23)
ヒトにおいて動静脈瘻の成熟を高める方法であって、該瘻に、該瘻近傍に、または該瘻付近に、生体適合性マトリクスと細胞とを含む移植材料を配置する工程を含み、該移植材料が、該瘻の成熟を高めるのに有効である、方法。
(項目24)
成熟を高めることが、透析のために前記瘻に反復的にカニューレを挿入することができることで特徴づけられる、項目23に記載の方法。
(項目25)
成熟を高めることが、透析中に十分な血流を得ることができることによって特徴づけられる、項目23に記載の方法。
(項目26)
十分な血流が、約350ml/分の速度を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記動静脈瘻が、橈骨動脈―橈側皮静脈間、上腕動脈―橈側皮静脈間、または上腕動脈―尺側皮静脈間である、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記動静脈瘻への生体適合性材料の適用より、治療薬投与が先行するか、または治療薬投与と同時である、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記動静脈瘻への前記生体適合性材料の適用より、物理的拡張が先行する、項目23に記載の方法。
(項目30)
動静脈瘻がヒトにおいて成熟不全になるのを防止する方法であって、該ヒトにおいて、該瘻に、該瘻近傍に、または該瘻付近に、移植血管内皮細胞を含む生体適合性マトリクスを設置することによって、瘻が成熟不全になるのを防止する工程を含む、方法。
(項目31)
成熟不全が、透析のために該瘻に反復的にカニューレを挿入することができないことによって特徴づけられる、項目30に記載の方法。
(項目32)
成熟不全が、透析中に十分な血流を得ることができないことによって特徴づけられる、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記十分な血流が、約350ml/分の速度を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記動静脈瘻が、橈骨動脈―橈側皮静脈間、上腕動脈―橈側皮静脈間、または上腕動脈―尺側皮静脈間である、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記動静脈瘻に対する前記生体適合性材料の適用より、治療薬投与が先行するか、または治療薬投与と同時である、項目30に記載の方法。
(項目36)
前記動静脈瘻への前記生体適合性材料の適用より、物理的拡張が先行する、項目30に記載の方法。
(項目37)
前記動静脈瘻が、形成後少なくとも2ヵ月、カニューレ挿入することができない、項目31に記載の方法。
(項目38)
前記動静脈瘻が、形成後少なくとも3ヵ月、カニューレ挿入することができない、項目31に記載の方法。
(項目39)
前記動静脈瘻が、形成後少なくとも4ヵ月、カニューレ挿入することができない、項目31に記載の方法。
(項目40)
項目23に記載の方法での使用に適切な細胞と生体適合性マトリクスとを含む、移植材料。
(項目41)
前記細胞が、内皮細胞または内皮様の表現型を有する細胞である、項目40に記載の移植材料。
(項目42)
前記生体適合性マトリクスが、可撓性平面材料または流動性構成体である、項目40に記載の移植材料。
(項目43)
前記可撓性平面材料が、吻合部での移植用に構成される、項目42に記載の移植材料。
(項目44)
前記材料が、スロットを画定する、項目43に記載の移植材料。
(項目45)
前記材料が、図1または図2Aのように構成される、項目43に記載の移植材料。
(項目46)
前記流動性構成体が、形状保持構成体である、項目42に記載の移植材料。
(項目47)
動静脈移植片の血液流量を維持する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、該移植材料が、該移植片の血液流量を維持するのに有効な量で、該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジに、該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ近傍に、または該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ付近に、該動静脈移植片の外面上に配置される、方法。
(項目48)
前記動静脈移植片の前記静脈流出領域での前記血液流量が、前記流出領域の上流側の前記血液流量と実質的に類似であるか、または該血液流量が、透析を可能にするのに十分なものである、項目47に記載の方法。
(項目49)
末梢循環を維持するのに十分な末梢バイパス移植片の正常な血流を維持する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、該移植材料が、末梢循環を維持するのに十分な該バイパス移植片の血液流量を維持するのに有効な量で、プロテーゼブリッジに、プロテーゼブリッジの近傍に、またはプロテーゼブリッジ付近に、該バイパス移植片の外面上に配置される、方法。
(項目50)
流入血液流量と流出血液流量が実質的に類似のものである、項目49に記載の方法。
(項目51)
動静脈移植片または末梢バイパス移植片のプロテーゼブリッジの組織整合性を促進する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、該移植材料が、プロテーゼブリッジに、プロテーゼブリッジ近傍に、またはプロテーゼブリッジ付近に、該ブリッジの組織整合性を促進するのに有効な量で、該動静脈移植片または該末梢バイパス移植片の外面上に配置される、方法。
(項目52)
前記移植材料が、前記プロテーゼブリッジの内腔内面内または前記プロテーゼブリッジの内腔内面の付近での円滑な筋細胞増殖または移動を促進する、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記移植材料が、前記プロテーゼブリッジの内腔内面内または前記プロテーゼブリッジの内腔内面の付近での内皮細胞増殖または移動を促進する、項目51に記載の方法。
(項目54)
動静脈瘻または動静脈移植片の裂開の発生を防止または低減する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、該移植材料が、該裂開の発生を防止または低減するのに有効な量で、該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジに、該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ近傍に、または該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ付近に、該瘻または動静脈移植片の外面上に配置される、方法。
(項目55)
前記供給工程が、天然動静脈瘻の不全後の介入治療として実行される、項目47に記載の方法。
(項目56)
前記供給工程が、天然または伏在静脈末梢バイパス不全後の介入治療として実行される、項目49に記載の方法。
(項目57)
移植材料であって、
(a)細胞と、
(b)生体適合性マトリクスと
を含み、
該移植材料が、プロテーゼブリッジ付近に、プロテーゼブリッジ近傍に、またはプロテーゼブリッジに接触して配置され、
該プロテーゼブリッジが、動静脈移植片の静脈流出領域に、または動静脈移植片の静脈流出領域の近くに位置するか、または末梢バイパス移植片の流出部に、または末梢バイパス移植片の流出部の近くに位置する、移植材料。
(項目58)
透析を可能にするのに十分な動静脈移植片の血圧を維持する方法であって、細胞と生体適合性マトリクスとを含む移植材料を供給する工程を含み、該移植材料が、透析を可能にするのに十分な血圧を維持するのに有効な量で、該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジに、該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ近傍に、または該動静脈移植片の静脈流出領域のプロテーゼブリッジ付近に、前記動静脈移植片の外面上に配置される、方法。
(項目59)
前記動静脈移植片の前記静脈流出領域での前記血圧が、該流出領域の上流側の前記血圧と実質的に類似のものである、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記プロテーゼブリッジが、伏在静脈、ウシ異種移植片、臍静脈、ダクロン、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ウシ腸間膜静脈、および凍結保存大腿静脈同種移植片からなる群から選択される、項目58に記載の方法。
(項目61)
前記プロテーゼブリッジが、ePTFEである、項目60に記載の方法。
(項目62)
項目47または項目58に記載の方法での使用に適切な細胞と生体適合性マトリクスとを含む、移植材料。
(項目63)
前記細胞が、内皮細胞または内皮様の表現型を有する細胞である、項目62に記載の移植材料。
(項目64)
前記生体適合性マトリクスが、可撓性平面材料または流動性構成体である、項目62に記載の移植材料。
(項目65)
前記可撓性平面材料が、吻合部に、吻合部近傍に、または吻合部付近での移植用に構成される、項目64に記載の移植材料。
(項目66)
前記可撓性平面材料が、動静脈移植片に、動静脈移植片近傍に、または動静脈移植片付近での移植用に構成される、項目65または項目66に記載の移植材料。
(項目67)
前記材料が、スロットを画定する、項目65または項目66に記載の移植材料。
(項目68)
前記材料が、図1または図2のように構成される、項目65または項目66に記載の移植材料。
(項目69)
前記流動性構成体が、形状保持構成体である、項目64に記載の移植材料。
(項目70)
前記細胞が、細胞の融合集団、細胞の近融合集団、細胞の融合後の集団、および細胞の該集団のいずれか1つの表現型を有する細胞からなる群から選択される、項目16、項目17、項目40、または項目50に記載の移植材料。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の例示的な実施形態による管状解剖学的構造体の外面への投与を目的とした可撓性平面形態の移植材料の概略斜視図である。
【図2】図2Aは、本発明の例示的な実施形態による管状解剖学的構造体の外面への投与を目的とした成形可撓性平面形態の移植材料の概略斜視図である。図2B、図2C、図2D、図2E、図2F、図2Gは、本発明の様々な例示的な実施形態による、スロットを含む成形可撓性平面形態の移植材料の概略斜視図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、本発明の例示的な実施形態による代表的な細胞成長曲線を示す図である。
【図4】図4A、図4B、図4Cは、本発明の例示的な実施形態による、血管吻合の外面に複数の可撓性平面形態の移植材料を投与する一連の工程を示す平面斜視図である。
【図5】図5は、本発明の例示的な実施形態による、血管吻合の外面に投与された成形形態の移植材料の平面斜視図である。
【図6】図6は、本発明の例示的な実施形態による、管状解剖学的構造体に投与された可撓性平面形態の移植材料の平面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本明細書で説明するように、本発明は、細胞を基本とする治療を使用して、血管アクセス構造体を処置することができるという発見事項に基づくものである。以下に提示する教示内容は、本発明の種々の材料および方法を作りかつ使用するのに十分なガイドとなり、さらに、本発明の種々の材料および方法の性能の試験、測定およびモニタに適切な判定基準および主題を特定するのに十分なガイドとなる。
【0026】
したがって、血管アクセス上の種々の合併症および不全、もしくは合併症または不全を臨床的に管理する細胞を基本とする治療を開発した。本発明の例示的な実施形態は、本明細書で説明する治療上の模範との使用に適切な生体適合性マトリクスと細胞とを含む。具体的には、1つの好適な実施形態においては、移植材料は、生体適合性マトリクスと細胞または内皮上の細胞とを含む。1つの実施形態においては、移植材料は、可撓性平面形態であり、内皮細胞または内皮的細胞、好ましくは、ヒトの大動脈内皮細胞および生体適合性マトリクスGelfoam(登録商標)ゼラチンスポンジ(Pfizer、ニューヨーク州ニューヨーク、以下、「Gelfoamマトリクス」)を含む。別の好適な実施形態によれば、移植材料は、流動性の形態であり、内皮細胞または内皮的細胞、好ましくは、ヒトの大動脈内皮細胞と生体適合性マトリクスGelfoam(登録商標)ゼラチン粒子または粉体((Pfizer、ニューヨーク州ニューヨーク、以下、「Gelfoam粒子」)とを含む。
【0027】
本発明の移植材料は、生体適合性マトリクス上に、生体適合性マトリクス内に、および生体適合性マトリクスの範囲内に、もしくは、生体適合性マトリクス内に、または生体適合性マトリクスの範囲内に移植された細胞を含む。「移植された」とは、細胞が本明細書で開示する形成操作の厳しさに耐えるように細胞と細胞および細胞とマトリクスもしくは細胞と細胞または細胞とマトリクスのマトリクス相互作用部にしっかりと付着されることを意味する。本明細書の他の部分で説明するように、本移植材料の処置用実施形態は、好適な表現型を有する近融合、融合または融合後の細胞集団を含む。了解事項として、移植材料の種々の実施形態は、恐らくは、形成操作中に細胞を流してしまい、かつ、特定の細胞は、他の細胞ほどはしっかりと付着されないか、もしくは、移植材料の種々の実施形態は、恐らくは、形成操作中に細胞を流してしまうか、または、特定の細胞は、他の細胞ほどはしっかりと付着されない。必要なのは、移植材料は、本明細書で定める機能上または表現型上の判定基準を満たす細胞を含むということである。
【0028】
本発明の移植材料は、ヒト組織工学の各種重要事項に基づいて開発されたものであり、上述した臨床的なニーズに対応する新規なアプローチを表す。本発明の移植材料は、生体適合性マトリクス上に、生体適合性マトリクス内に、および生体適合性マトリクスの範囲内に、もしくは、生体適合性マトリクス内に、または生体適合性マトリクスの範囲内に移植された生存細胞は、生理学上のフィードバック制御で生理学上の割合で複数の細胞を基本とする製品を血管アクセス構造体および関連の脈管構造に供給することができるという点で類のないものである。本明細書の他の部分で説明するように、本移植材料との使用に適切な細胞は、内皮または内皮的細胞である。これらの細胞および生理学的に動的な投与による複数の化合物の局所的な供給によって、機能的血管アクセス構造体を維持し、かつ、血管アクセス上の合併症および不全、もしくは合併症または不全を減らすことを司るプロセスのより効果的調整が行われる。重要なこととして、例えば、本発明の移植材料の内皮細胞は、例えば、外膜での血管の非内腔面に設置されるために血管内腔内の侵食性血流、または、血管の外面への接触から保護されている。本発明の移植材料は、包まれるか、付着されるか、または他の方法で当該外部目標部位、即ち、吻合およびその周囲、もしくは吻合またはその周囲と接触したとき、ホメオスタシスを再確立する役目をする。即ち、本発明の移植材料は、支えになる生理機能を模倣する環境を実現することができ、かつ、血管アクセス構造体形成、成熟、整合性および安定化もしくは血管アクセス構造体形成、成熟、整合性または安定化に有益である。
【0029】
本発明の目的上、「接触する」とは、本明細書の他の部分で定義されるように、内腔外または非内腔面との直接的または間接的に相互作用することを意味する。特に好適な実施形態の場合、実際的な物理的接触は、効果的であることには必要なものではない。他の実施形態においては、実際的な物理的接触は、好適なものである。本発明を実践する上で必要なのは、損傷または病変部位を処置するのに有効な量で、損傷または病変部位にて、損傷または病変部位近傍、または損傷または病変部位付近にての移植材料の内腔外または非内腔の付着である。特定の病気または損傷の場合、病変または損傷部位は、臨床的に内腔内面に顕在する可能性がある。他の病気または損傷の場合、病変または損傷部位は、臨床的に内腔外または非内腔面上に顕在する可能性がある。一部の病気または損傷において、病変または損傷部位は、臨床的に内腔内面にも内腔外、または非内腔面にも顕在する可能性がある。本発明は、前出の臨床的顕在部のいずれも処置するのに有効である。
【0030】
例えば、内皮細胞は、組み合わせると血管アクセス構造体形成後の急性合併症に関連した生理学上の有害事象を抑制または移動させることができる様々な薬を放出することができる。本明細書で例示するように、正常な生理機能および投与を再現する構成体および使用法は、血管アクセス構造体形成、成熟、整合性および安定化もしくは血管アクセス構造体形成、成熟、整合性または安定化を高めるばかりでなく、当該血管アクセス構造体の長期的開存率を促進するのに有用である。一般的に、処置としては、例えば、処置に関与する動脈および静脈の内腔の外部の血管周囲腔内で、血管アクセス構造体部位にて、血管アクセス構造体部位近傍に、または、血管アクセス構造体部位付近に本発明の移植材料を設置することが含まれる。包まれるか、巻き付かれるか、付着されるか、または他の方法で損傷血管、外傷血管、または病変血管と接触したとき、本移植材料の細胞は、脈管構造に、例えば、血管内の下層の平滑筋細胞に成長調整化合物を供給することができる。内腔外部位に位置するとき、本移植材料の細胞は、血管組織を貫通して内腔に到達することができる複数の調整化合物の連続的な供給を行い、しかも、本移植材料の細胞は、血管内の血流の機械的悪影響から保護されることが企図されている。本明細書で説明するように、1つの好適な内腔外部位は、血管外面である。
【0031】
本発明の好適な実施形態での処置は、正常または正常に近い治癒および正常な生理機能を促すことができる。これに反して、本発明の好適な実施形態による処置がない場合、正常な生理学的な治癒が損なわれ、例えば、天然内皮細胞および平滑筋細胞は、血管アクセス構造体形成後に極端なまたは制御されない速度で異常成長する可能性があり、血管アクセス構造体不全を含む、有害な臨床結果となる。したがって、本明細書で企図されているように、本発明の移植材料での処置は、吻合部位での天然組織の治癒を向上させて血管アクセス構造体の開存率を維持することになる。
【0032】
本発明の目的上、血管アクセス構造体は、様々な構成で形成することができる。血管アクセス構造体としては、自然に発生するかまたは外科的に形成される動静脈瘻、動静脈移植片、末梢バイパス移植片、留置静脈カテーテル、留置き血管ポート、または、患者において血管アクセスを向上させるために形成される他の血管吻合構造体を挙げることができる。更に、血管アクセス構造体の様々な実施形態は、側面と側面の吻合、端部と側面の吻合、端部と端部の吻合、側面と端部の吻合を含む様々な構成で形成される。また、血管アクセス構造体は、様々な解剖学的部位に設置することができる。
【0033】
本発明の移植材料は、処置される血管アクセス構造体にて様々な構成で設置することができる。特定の実施形態によれば、本発明の移植材料は、吻合接合点にも設置することができ、また、吻合の遠位にある、近位静脈セグメント上にも設置することができる。他の実施形態においては、本発明の移植材料は、動脈セグメント上に、近位静脈セグメント上に、遠位静脈セグメント上に、および血管アクセス構造体の橋渡しをして、もしくは、動脈セグメント上に、近位静脈セグメント上に、遠位静脈セグメント上に、または、血管アクセス構造体の橋渡しをして設置することができる。別の実施形態においては、本移植材料は、吻合接合点にて移植片材上または移植片材の一部の上にも設置することができる。血管には全体的にまたは部分的に接触することができ、例えば、本発明の移植材料は、円周部にまたはアーク構成で血管に適用することができる。血管および血管アクセス構造体もしくは血管または血管アクセス構造体は、血管アクセス構造体の形成、成熟、整合性および安定化、もしくは血管アクセス構造体形成、成熟、整合性または安定化を向上させるのに十分な量の移植材料と接触しさえすればよい。
【0034】
(動静脈瘻) 特定の実施形態によれば、血管アクセス用に形成された動静脈瘻(「AV瘻」)は、本発明の移植材料で処置することができる。AV瘻は、例えば、首、手首、上腕および前腕での設置を含め、患者の様々な部位に設置することができる。臨床的AV瘻構成としては、橈骨動脈―橈側皮静脈間瘻(橈骨動脈と橈側皮静脈との間)、Brescia−Ci分o瘻(手首における橈骨動脈と橈側皮静脈の側面と側面の吻合)、上腕動脈―橈側皮静脈間瘻(上腕動脈と橈側皮静脈との間)、上腕動脈―前肘静脈間瘻(上腕動脈と前肘静脈との間)、上腕動脈―尺側皮静脈間瘻(転移尺側皮静脈)、尺骨動脈−橈側皮静脈間瘻(尺骨動脈と橈側皮静脈との間)、伏在ループ瘻(伏在静脈と大腿動脈の右側)がある。
【0035】
AV瘻外科手術による合併症は一般的に、3つの段階中に発生する。これらの段階は、血栓症によって特徴づけられることが多い急性段階、臨床的症状が瘻成長不全である中間段階、最後に、例えば、進行性静脈狭窄による可能性がある既に確立された機能中の瘻のより慢性的な不全である。
【0036】
AV瘻成長の特徴としては、例えば、透析に向けて瘻に反復的にカニューレ挿入することができる点がある。AV瘻成熟の別の特徴は、血液透析に有用な十分な透析血流を得ることができる点である。適当な血流は、少なくとも、再循環が発生しないように透析機械を使用する透析を支持するのに適当な流量である。本発明の目的上の十分な透析血流は、瘻形成後の24週のみ、好ましくは20週を上回るか、更に好ましくは、16週、最も好ましくは12週の時点で、少なくとも約350mL/分の血液流量である。AV瘻の成熟不全のメカニズムとしては、現在、例えば、瘻血管の早期血栓症、吻合部位での、または吻合部位近くでの狭窄、側副または静脈側分岐を含む副静脈の存在、不適切な静脈内径を含む不適切な静脈サイズ、進行性狭窄による晩発瘻不全があることが理解されている。副静脈は、血流を偏向させることで、かつ、カニューレ挿入に対応する適切なサイズになる上で瘻に関連した静脈に対応しないことで瘻の発達を妨げる可能性がある。現在、副静脈は、例えば、瘻中の狭窄の存在に応答して発達する場合があると考えられている。AV瘻成熟のメカニズムは、多様であり、一般的に、複数の臨床的兆候の評価が必要である。狭窄がないということだけでは一般的に、成熟したAV瘻であることを示すには不十分である。
【0037】
更に、透析の諸目的に適当と考えられるAV瘻には、瘻の成熟、つまり、瘻に反復的にカニューレ挿入することを可能にする瘻の静脈セグメントに発生する変化と、透析を支持するのに十分な血流の両方が必要である。AV瘻は、血流がほとんどないときでさえも開存性であることには変りがない可能性があるが、開存性のAV瘻は、臨床的には透析に適当ではない場合がある。本発明の目的上、透析に臨床的に適当な血流は、約150mL/分から500mL/分、好ましくは約300mL/分から500mL/分、最も好ましくは約350mL/分から400mL/分であり、適切な血圧は、約50mmHgから180mmHg、好ましくは約50mmHgから120mmHgである。
【0038】
本発明の目的上、本発明の移植材料での処置は、瘻形成時、その後の段階を問わず、瘻近傍または瘻付近に設置されたときに、AV瘻成熟に一般的である合併症、例えば、血栓症、狭窄、凝固、および、副静脈の成長、もしくは、血栓症、狭窄、凝固、または、副静脈の成長が低減されるように、有益なホメオスタティック環境を実現すると考えられる。この種の有益な環境は、AV瘻が背成熟に進み、かつ、成熟状態のままであるか、もしくは、成熟に進むかまたは成熟状態のままであることを可能にするものである。例えば、成熟は、AV瘻静脈が肉厚化して高流量、高圧力の血液を導くことができるときに機能的に確立される。本明細書で規定する移植材料でのAV瘻の処置は、瘻の成熟を高め、かつ、瘻の成熟不全を防止するか、もしくは、瘻の成熟を高めるか、または、瘻の成熟不全を防止する。本発明の目的上、了解事項として、AV瘻成熟の増進には、その形成、機能状態に到達する所要時間、ならびに、成熟形態での瘻の維持を含む、瘻機能の一切の向上が含まれる。
【0039】
中間的な手術後の血栓症は、開存性のAV瘻の形成を妨げて、瘻の早期不全に至る可能性がある。本明細書で説明するように、外科手術時の本発明の移植材料での処置は、AV瘻の手術後の血栓症による当面の不全を防止することができる。例えば、本移植材料は、血栓症を低減する抗血栓症メディエータを放出し、かつ、瘻形成および成熟の段階を通じて開存性である瘻を維持することができる。
【0040】
外科手術時に行われるAV瘻部位にてまたはAV瘻部位付近の本移植材料の設置も、瘻吻合にてまたは瘻吻合近くの狭窄を低減し、瘻が透析を支持するのに十分な血流を供給するのに適当なサイズとなることを可能にし、静脈および動脈の拡張を助長し、寄生的副静脈の形成を低減し、天然副静脈を維持して瘻成熟を高め、静脈の大きさを向上させることで、成熟を高めることができる。
【0041】
更に、AV瘻には、成熟に到達するには、AV移植片よりも長い期間が必要である。瘻成熟の時期には、経皮的カテーテルまたは留置カテーテルを使用して、血液透析が一般的に行われ、感染の危険が増大し、かつ、中央静脈の開存率が損なわれる。瘻形成時に行われる、AV瘻部位での本移植材料の設置は、瘻成熟の所要時間を短縮することができ、その結果、感染および中央静脈の開存率が損なわれるという関連の危険が低減される。留置カテーテルの部位での本移植材料の設置は、血栓症、内膜過成形、留置カテーテルに関連した再狭窄の危険を低減することができ、その結果、感染および中央静脈の開存率が損なわれるという関連の危険が低減される。
【0042】
最後に、本明細書で説明する本移植材料の使用は、成熟AV瘻の晩発不全を低減することができる。成熟瘻には、晩発進行性狭窄による血流の低下および静脈狭窄の増大が発生する場合がある。透析に必要なレベルを下回るまで血流を低減させるのに十分な程度の瘻の狭窄または閉塞には、適当な血流レベルを回復する上での介入血管形成またはステント挿入が必要である場合がある。このような介入治療によって、静脈狭窄および閉塞の危険が増大し、更に、成熟瘻の形成が妨げられる。更に、ステント挿入が行われると、結果的に、周辺効果ということが多い、ステントの遠位および近位にある血管部分の処置済み血管の閉塞性血栓または再狭窄が発生する可能性がある。
【0043】
本移植材料が適用されると、結果的に、正のリモデリング(血管拡張と静脈新内膜過形成の同時抑制の組み合わせ)になる可能性があり、その結果、晩発進行性狭窄が防止され、成熟瘻の血流が増大し、リハビリを伴う血管形成または閉塞瘻のステント挿入の必要性が低減され、ステント関連の周辺効果が防止され、成熟瘻の長寿命化につながり、かつ、有用性が長期間化される。
【0044】
本発明の移植材料は、明確な段階の回数を問わず、瘻に供給することができる。例えば、外科手術時の処置は、AV瘻の成熟不全を防止することができ、かつ、瘻成熟を高めることができるか、もしくは、AV瘻の成熟不全を防止することができるか、または、瘻成熟を高めることができる。また、本移植材料は、初期外科手術後に供給して、治癒を早めるばかりでなく、一般的に、成熟AV瘻ができた後、成熟AV瘻を臨床的に安定した状態に維持することができる。また、本移植材料は、その後に不全となる成熟AV瘻を救済することができ、かつ、成熟瘻の寿命を延ばすことができるか、もしくは、その後に不全となる成熟AV瘻を救済することができるか、または、成熟瘻の寿命を延ばすことができる。これらの状況は、AV瘻成熟の増進の非制限的例である。したがって、本移植材料は、AV瘻を形成する初期外科手術時にばかりではなく、その後の時点(例えば、成熟瘻の維持または成熟瘻の不全からの救済)でも使用することができることが企図されている。その後の投与は、外科的にまたは非観血的に達成することができる。
【0045】
(動静脈移植片) 更なる実施形態によれば、血管アクセスに向けて形成された動静脈移植片(「AV移植片」)は、本発明の移植材料で処置することができる。AV移植片は、前腕直移植片、前腕ループ移植片、または上腕移植片の形とすることができる。動脈流入部位としては、総頚動脈、手首の橈骨動脈、前肘窩の上腕動脈、腕下部の上腕動脈、脇の下真下の上腕動脈、腋窩動脈、大腿動脈があるが、これらに限定されない。静脈流出部位としては、中央前肘静脈、近位橈側皮静脈、遠位橈側皮静脈、肘の高さの尺側皮静脈、上腕の高さの尺側皮静脈、副静脈、頚静脈、大腿静脈があるが、これらに限定されない。AV移植片形成に適切な更なる動脈および静脈の場所としては、胸壁(鎖骨下静脈に至る腋窩動脈)、下肢(大腿動脈/静脈、伏在静脈、または脛骨(前篩骨)動脈)、大静脈に至る大動脈、大腿静脈に至る腋窩動脈または腋窩静脈に至る大腿動脈がある。
【0046】
本発明の目的上、透析に適切なプロテーゼブリッジを伴う機能的AV移植片は、プロテーゼブリッジを介して高流量、高圧力の血液を導くことができる。当該AV移植片においては、移植片の静脈流出領域での血液流量は、移植片流出領域の上流側の血液流量と実質的に類似のものである。透析に適切な血液流量は、約150mL/分から500mL/分、好ましくは約300mL/分から500mL/分、最も好ましくは約350mL/分から400mL/分であり、適切な血圧は、約50mmHgから180mmHg、好ましくは約50mmHgから120mmHgである。
【0047】
AV移植片は一般的に、静脈移植片吻合、または、近位静脈セグメントでの移植片関連の内膜過形成、その後の移植片関連の血栓症により不全となる。また、AV移植片は、天然血管とプロテーゼブリッジ材との組織整合不良および血管からのブリッジ材の最終的な裂開により不全となりやすい。
【0048】
本発明の目的上、本発明の移植材料での治療は、AV移植片整合および成熟に関連した合併症、例えば、血栓症、狭窄、凝固および裂開、もしくは血栓症、狭窄、凝固または裂開が、移植片形成時、その後の時期を問わず低減されるように、有益なホメオスタティック環境を実現する。この種の有益な環境は、血管に関連したAV移植片が、プロテーゼブリッジ材と完全に接合することを可能にするものである。例えば、成熟は、AV移植片が整合して高流量、高圧力の血液を導くことができるときに機能的に確立される。本明細書で実証するように、移植材料でのAV移植片の処置は、移植片の整合および成熟を高めるものである。本発明の目的上、了解事項として、AV移植片整合および成熟、もしくはAV移植片整合または成熟の増進には、その形成、機能状態に到達する所要時間、ならびに、機能形態での移植片の維持を含む、移植片の機能の一切の向上が含まれる。
【0049】
中間的な手術後の移植片関連の血栓症は、開存性であるAV移植片の組織整合および最終的な形成を妨げて、移植片の早期不全に至る可能性がある。本明細書で説明するように、外科手術時の処置は、AV移植片の手術後の血栓症による当面の不全を防止することができる。例えば、本移植材料は、血栓症を低減する抗血栓症メディエータを放出し、かつ、移植片整合および成熟の段階を通じて開存性である移植片を維持する。
【0050】
また、外科手術時に行われる、AV移植片吻合にて、AV移植片吻合近傍に、または、AV移植片吻合付近に、静脈流出領域にて、静脈流出領域近傍に、または、静脈流出領域付近に、および、移植片にて、移植片近傍に、または、移植片付近に、もしくは、AV移植片吻合にて、AV移植片吻合近傍に、または、AV移植片吻合付近に、静脈流出領域にて、静脈流出領域近傍に、または、静脈流出領域付近に、または、移植片にて、移植片近傍に、または、移植片付近にての移植材料の設置は、移植片吻合にて、または移植片吻合近くでの当面の血栓症および進行性狭窄を低減することで、整合および成熟を高めることができる。この治療効果は、移植片に対してプロテーゼブリッジ材と適当に整合するのに十分な時間を許容し、血管血栓症および閉塞を最小限に抑えて、適当な血管内径を維持して透析に十分な血流を支持するものである。
【0051】
また、本移植材料の投与は、成熟AV移植片の晩発不全を最小限に抑えることができる。成熟移植片では、晩発進行性狭窄による血流の低下および静脈狭窄の増大が発生する場合がある。本移植材料が適用されると、結果的に、正の静脈リモデリング(血管拡張と静脈新内膜過形成の同時抑制の組み合わせ)になる可能性があり、その結果、晩発進行性狭窄が防止され、成熟移植片の血流が増大し、成熟移植片の長寿命化となり、かつ、有用性が長期間化される。
【0052】
本明細書で実証するように、本発明の移植材料でのAV移植片吻合の処置は、透析に適切な機能的AV移植片の形成を促進する。更なる了解事項として、本発明の目的上、機能的AV移植片の形成には、移植片の臨床的機能、または、裂開の発生の低減を含め、移植片吻合の形成またはプロテーゼブリッジの整合、および成熟形態での瘻吻合の維持、もしくは、移植片吻合の形成またはプロテーゼブリッジの整合、または成熟形態での瘻吻合の維持のプロセスの一切の向上が含まれる。
【0053】
臨床施術者によってよく認識されるように、AV移植片の妥当性には、移植片が適当な血流を支持してかつ維持することが必要とされる。血液透析に有用なAV移植片の場合、適当な血流とは、少なくとも、再循環が発生しないように透析機械を使用する透析を支持するのに適当な流量である。臨床的に不全となったAV移植片は、透析を支持するのに適当な血流を支持することはできないAV移植片である。本発明の好適な実施形態は、透析に適切な血流を支持することができる機能する移植片の形成を促進することで、AV移植片不全の始まりを遅延させるか、または、減らすことが予想される。
【0054】
(末梢バイパス移植片) 更なる実施形態によれば、不全中の末梢血管をバイパスするために形成された末梢移植片は、本発明の移植材料で処置することができる。末梢バイパス移植片は、膝より上または下の脚の領域などの四肢を含め、様々な解剖学的部位に設置することができる。末梢バイパス移植片を使用して、末梢動脈または末梢静脈内の閉塞を含め、閉塞末梢血管をバイパスすることができる。末梢バイパス移植片を使用して、四肢への正常な血流、例えば、正常または正常に近い末梢循環を維持するのに十分な血流の流量を回復および維持、もしくは回復または維持することができる。特定の実施形態によれば、末梢バイパス移植片は、閉塞領域より上から閉塞領域より下まで形成される。特定の実施形態においては、本発明を使用して、天然材を含むブリッジを有する末梢バイパス部の機能性、整合、成熟および安定化、もしくは機能性、整合、成熟または安定化を向上させることができ、特定の他の実施形態においては、移植片は、プロテーゼブリッジを有する。
【0055】
末梢バイパス移植片の場合、本移植材料は、移植片の一端または両端のある血管の外面上におよび移植片材料の外面上に、もしくは、移植片の一端または両端のある血管の外面上にまたは移植片材料の外面上に設置することができる。特定の実施形態においては、本移植材料は、一端または両端にて末梢バイパス移植片接合部に接触することができる。特定の他の実施形態においては、本移植部は、末梢バイパス移植片の上流側の血管の外面上に設置することができる。
【0056】
また、外科手術時に末梢バイパス移植片の流入領域または流出領域にてまたは流入領域または流出領域近くに移植材料の好適な実施形態の設置は、機能的移植片の形成を高め、整合を促進させ、かつ、裂開を防止するか、もしくは、機能的移植片の形成を高めるか、整合を促進するか、または、裂開を防止することができる。本発明の目的上、機能的末梢バイパス移植片は、正常な血流を正常な圧力で導くことができる。膝より下のバイパス移植片の正常な流量は、約50mL/分から150mL/分、好ましくは約80mL/分から100mL/分、膝より上では、約50mL/分から150mL/分、好ましくは約80mL/分から100mL/分、末梢移植片は、約25mL/分から30mL/分である。適切な血圧は、約50mmHgから180mmHg、好ましくは約50mmHgから120mmHgである。
【0057】
本明細書で説明するように処置される末梢バイパス移植片の場合、流出速度は、流入速度と実質的に類似のものである。本発明は、下肢への適当な血流を回復するとともに、下肢への不適当な血流に関連した症状を減らす。本発明の好適な実施形態は、末梢循環を維持するのに十分な血流で機能的末梢バイパス移植片の形成を促進することで、末梢バイパス移植片不全の始まりを遅延させるか、または、減らす。
【0058】
本発明の目的上、任意のプロテーゼブリッジ材は、AV移植片の場合には血液透析に必要とされる血液流量および圧力を支持し、かつ、末梢バイパス移植片の場合には末梢循環に必要とされる血液流量および圧力を支持することを条件として、血管アクセス構造体の形成に適切である。一般的に、プロテーゼブリッジは、可撓性であり、細胞整合に適合し、所要の血液流量を支持するのに妥当な寸法であることが好ましい。1つの好適な実施形態は、PTFE、またはePTFE、ポリテトラフルオロエチレンブリッジを利用し、別の実施形態は、Dacron(登録商標)(E.I.duPont de Nemours and Co.)を利用する。また、プロテーゼブリッジは、改変PTFE材料、ポリウレタン、炭素被覆PTFE、および複合移植片で構成することができる。PTFE移植片は、テーパ付き、ストレッチ、リブ付き、平滑なものを含め、かつ、複数のレベルのPTFEを含む様々な物理的構成で精巧に作ることができる。また、プロテーゼブリッジは、動脈と瘻との間に挿入される静脈継ぎ合わせ部、カラー部、ブーツ状部を含む遠位改変部を含むことができる。更なる実施形態は、ウシ頸動脈移植片およびウシ腸間膜静脈移植片を含め、伏在静脈移植片、臍静脈移植片、大腿静脈同種移植片、生体異種移植片などの天然材料を含む。また、前出の移植片のいずれかを含む複合移植片が、本明細書では企図されている。熟練施術者は、適切な均等物を認識するであろう。
【0059】
更に、かつ、重要なこととして、AV移植片または末梢バイパス移植片の場合、正常または正常に近い治癒率は、内皮細胞がプロテーゼブリッジの内腔面に常住するのを促し、その結果、移植片および関連の脈管構造の整合が助長される。整合を促すために、本移植材料の細胞によって供給される治療的因子が、血管壁内に拡散する。合成移植片材料の場合、合成材料の有孔率も、合成移植片の内腔面で増殖する細胞に治療的因子が到達することができるか否かに影響を与える可能性がある。
【0060】
(PTFE移植片) 特定の好適な実施形態においては、15cmから25cm長の6mm内径のPTFE管材が、移植片形成に使用される(Atrium Advanta VS 標準壁部PTFE移植片、0.6mm、Atrium Medical Corp.ニューハンプシャー州ハドソン)。PTFE、特に好適に移植片材料は、外科的処置において使用時に非血栓性であると既に示した可撓性ポリマーである。Dacron(登録商標)など、PTFEと類似の特性を有する代替ポリマー材料も移植片材料として使用することができることが企図されている。
【0061】
移植片は、所望の長さに切断して、特定の患者において正確な設置を助長することができる。移植片は、前腕ループ移植片または直移植片とすることができる。移植片の端部は、縫合に向けて移植片端部の表面積を増大させるか、または、特定の患者による移植片の対応を向上させるのに十分なフランジ部を付けて、または、別の構成で、角度を付けて切断することができる。また、移植片の端部は、粗面化するか、または、他の方法で改変して、細胞付着を助長することができる。更に、移植片材料は、ゼラチン、アルブミン、または、別の治療薬で被覆することができる。
【0062】
最後に、移植材料を不全中または不全となったAV移植片または末梢バイパス移植片に供給すると、結果的に、元の移植片の再建となり、その結果、移植片の機能性が回復される。関連の状況においては、介入治療として、本発明の移植材料と組み合わせて、不全となった天然AV瘻をAV移植片と置換することができる。
【0063】
(血管アクセスカテーテル) 特定の実施形態によれば、血管アクセスに向けて形成された留置静脈カテーテルは、本発明の移植材料で処置することができる。カテーテルは、例えば、首、胸部、鼠径部における設置を含め、患者内の様々な場所に設置することができる。血液透析の目的上、二重内腔カテーテルは、外科手術後に瘻が成熟中または移植片が整合中に暫定血管アクセス体として移植することができる。
【0064】
血管アクセスカテーテルは一般的に、静脈カテーテル吻合または近位静脈セグメントでのカテーテル関連の内膜過形成、その後のカテーテル関連の血栓症により早期不全となる。
【0065】
本発明の目的上、本発明の移植材料での処置は、血管アクセスカテーテル機能に関連した合併症、例えば、血栓症、狭窄、および凝固、もしくは血栓症、狭窄、または凝固がカテーテル部で、カテーテル設置時、その後の時期を問わず、低減されるように有益なホメオスタティック環境を実現する。本発明の目的上、了解事項として、血管アクセスカテーテル機能の増進には、カテーテルの機能、または機能的な形態でのカテーテル維持の一切の向上が含まれる。
【0066】
(血管アクセスポート) 特定の実施形態によれば、血管アクセスに向けて形成された留置ポートは、本発明の移植材料で処置することができる。ポートは、例えば、腕、胸部、鼠径部の静脈または動脈の部位での設置を含め、患者内の様々な場所に設置することができる。
【0067】
血管アクセスポートは一般的に、静脈ポート吻合または近位静脈セグメントでのポート関連の内膜過形成、その後のポート関連の血栓症により早期不全となる。
【0068】
本発明の目的上、本発明の移植材料での処置は、血管アクセスポート機能に関連した合併症、例えば、血栓症、狭窄、および凝固、もしくは血栓症、狭窄、または凝固がポート部で、ポート設置時、その後の時期を問わず、低減されるように有益なホメオスタティック環境を実現する。本発明の目的上、了解事項として、血管アクセスポート機能の増進には、ポートの機能、または機能的な形態でのポート維持の一切の向上が含まれる。
【0069】
(一般的な検討事項) 本発明の特定の実施形態においては、更なる治療薬は、本移植材料の投与の前、本移植材料の投与に一致して、および本移植材料の投与後に、もしくは、本移植材料の投与の前、本移植材料の投与に一致して、または本移植材料の投与後に投与される。例えば、凝血形成、血小板凝集、または他の同様の閉塞を防止するかまたは減らす薬剤を投与することができる。例示的な薬剤としては、例えば、ヘパラン硫酸塩、TGF−βがある。また、再内皮化を促進するためのVEGF、移植片整合を促進するためのb−FGFを含め、インプラントを必要とする臨床的兆候によっては、他のサイトカインまたは成長因子を移植材料に組み込むことができる。他の種類の治療薬としては、増殖抑制剤、抗腫瘍薬があるが、これらに限定されない。例としては、ラパマイシン、パクリタキセル、E2F Decoy剤がある。前出の治療薬のいずれも、局所的または系統的に投与することができる。局所的である場合、特定の薬剤を本移植材料内に含めるか、または、細胞によって導くことができる。
【0070】
更に、正の組織リモデリングを仲介する薬剤も、本明細書で説明する移植材料実施形態と組み合わせて投与することができる。例えば、特定の薬剤は、外科手術部位を含め、血管損傷部位での正常またはほぼ正常な内腔再生または内腔組織のリモデリングを促進することができる。やはり、当該薬剤は、本移植材料内に含めるか、または、細胞によって導くことができる。
【0071】
臨床施術者によってよく認識されるように、血液透析に向けた血管アクセスの妥当性には、血管アクセス構造体成熟および十分な血流が必要とされる。本明細書の他の部分で説明するように、成熟は、透析中のカニューレ挿入の繰返しを可能にする静脈内で発生する解剖学的変化に関係するものである。上記の変化のうち、反復的カニューレ挿入を可能にする特定の変化は、血管サイズ、血管壁肉厚化、内腔直径、もしくは、血管サイズ、血管壁肉厚化、または、内腔直径に関係する。また、本明細書で説明されていることとして、これらの変化のうち、特定の変化は、透析を支持するのに適当な血液流量を可能にする。更に、本明細書の他の部分で説明するように、臨床的に不全となった血管アクセス構造体は、透析に向けて反復的カニューレ挿入を行うことができない血管アクセス構造体であり、かつ、透析を支持するのに適当な血流を支持することができない血管アクセス構造体である。これらの臨床的な不全は、先に説明した解剖学的パラメータの機能障害と直接的に相関関係がある可能性がある。
【0072】
したがって、本発明は、カニューレ挿入頻度の向上、血管アクセス構造体血流の向上、血管壁厚の促進、内腔直径の維持、および、前出事項の組み合わせ、もしくは、カニューレ挿入頻度の向上、血管アクセス構造体血流の向上、血管壁厚の促進、内腔直径の維持、または、前出事項の組み合わせを含む血管アクセス関係の臨床的な終点を達成する方法に対応するものであり、本方法は、前出終点の1つまたはそれ以上を達成するのに有効な量で、血管アクセス構造体にて、血管アクセス構造体近傍に、または、血管アクセス構造体付近に本移植材料を設置する工程を含む。
【0073】
更に、本発明は、問題なく成熟している血管アクセス構造体を特定する方法を提供するものであり、本方法は、以下の臨床的パラメータ、即ち、カニューレ挿入の繰返し、透析中の再循環を防止するのに適当な血流、血管壁肉厚化、透析中の血流を可能にするのに適当な内腔直径のいずれか1つをモニタする工程を含み、問題なく成熟している血管アクセス構造体は、前出パラメータの少なくとも1つを示す。
【0074】
本発明の移植材料は、ホメオスタシスを維持するために介入治療を必要とする一切の管状解剖学的構造体に適用することができる。管状解剖学的構造体として、血管系、生殖系、泌尿生殖系、胃腸系、肺系、呼吸系、脳脊髄の脳室系の構造体がある。本明細書で企図されているように、管状解剖学的構造体は、内腔内面と内腔外面とを有するものである。本発明の目的上、内腔外面として、管状構造体の外面を含めることができるがこれに限定されない。特定の構造体においては、内腔内面は、内皮細胞層であり、特定の他の構造体においては、内腔内面は、非内皮細胞層である。
【0075】
(細胞株) 本明細書で説明するように、本発明の移植材料は、細胞を含む。細胞は、同種異形細胞、異種細胞、または自己細胞とすることができる。特定の実施形態においては、生体細胞株は、適切なドナーから導出することができる。特定の他の実施形態においては、細胞株は、死体からまたは細胞バンクから導出することができる。
【0076】
1つの現在好適な実施形態においては、細胞は、内皮細胞である。特に好適な実施形態においては、当該内皮細胞は、血管組織、好ましくは、動脈組織(であるが、これに限定されない)から取得することができる。以下に例示するように、使用に適切な1つの種類の血管内皮細胞は、大動脈内皮細胞である。使用に適切な別の種類の血管内皮細胞は、臍帯静脈内皮細胞である。また、使用に適切な別の種類の血管内皮細胞は、冠動脈内皮細胞である。更に、本発明との使用に適切な別の種類の血管内皮細胞としては、肺動脈内皮細胞、腸骨動脈内皮細胞がある。
【0077】
別の現在好適な実施形態においては、適切な内皮細胞は、非血管組織から取得することができる。非血管組織は、本明細書の他の部分で説明するような任意の管状解剖学的構造体から導出することができるか、または、任意の非血管組織前駆細胞または器官から導出することができる。
【0078】
更に別の実施形態においては、内皮細胞は、血管内皮前駆細胞または幹細胞から導出することができ、尚も別の実施形態においては、内皮細胞は一般的に、前駆細胞または幹細胞から導出することができる。他の好適な実施形態においては、細胞は、血管組織または非血管組織または器官から導出される、非内皮の同種異形細胞、異種細胞、自己細胞とすることができる。また、本発明は、遺伝子学的に変更、改変、または加工される前出細胞のいずれも企図している。
【0079】
更なる実施形態においては、本発明の構成体を形成するために2つまたはそれ以上の種類の細胞が共培養される。例えば、第1の細胞を生体適合性移植材料に導入して、融合するまで培養することができる。第1の細胞型としては、平滑筋細胞、線維芽細胞、幹細胞、内皮前駆細胞、平滑筋細胞と線維芽細胞の組み合わせ、任意の他の所望の細胞型、または、内皮細胞成長を助長する環境の創出に適切な所望の細胞型の組み合わせを挙げることができる。第1の細胞型が融合に到達すると、第2の細胞型が、生体適合性マトリクス内、生体適合性マトリクス上、または生体適合性マトリクスの範囲内で第1の融合細胞型上に播種され、第1の細胞型と第2の細胞型が融合に到達するまで培養される。第2の細胞型としては、例えば、内皮細胞または任意の他の所望の細胞型または細胞型の組み合わせを挙げることができる。第1及び第2の細胞型を段階的に、または、単一の混合体として導入することができることが企図されている。また、平滑筋細胞と内皮細胞の比率を変えるために細胞密度を改変することができることが企図されている。
【0080】
平滑筋細胞または過度の増殖になりやすい別の細胞型の過剰増殖を防止するために、培養法を改変することができる。例えば、第1の細胞型の融合後、培養体に、第2の細胞型導入前に第2の細胞型に適切な付着因子を被覆することができる。例示的な付着因子としては、内皮細胞の付着を向上させるために行われるゼラチンでの培養体の被覆がある。別の実施形態によれば、第2の細胞型培養中にヘパリンを培地に添加して、第1の細胞型の増殖を低減し、かつ、所望の第1の細胞型と第2の細胞型の比率を最適化することができる。例えば、平滑筋細胞の初期成長後、ヘパリンを投与して、平滑筋細胞の成長を抑制して、より大きな内皮細胞と平滑筋細胞の比率を達成することができる。
【0081】
好適な実施形態においては、共培養体の形成は、まず、生体適合性移植材料に平滑筋細胞を播種して血管構造体を形成することによって行われる。平滑筋細胞が融合に到達すると、移植材料上の培養平滑筋細胞上に内皮細胞を播種して、擬似血管を形成する。本明細書で説明する方法に従ってこの実施形態を、例えば、AV移植片または末梢バイパス移植片に投与すると、プロテーゼ移植片材料の整合を促進することができる。
【0082】
本発明の構成体の細胞に必要なのは、1つまたはそれ以上の好適な表現型または機能特性を示すことである。本明細書で先述したように、本発明は、好適なマトリクス(本明細書の他の部分で説明)と関連づけられたときに容易に特定可能な表現型を有する細胞は、動静脈瘻または動静脈移植片などの血管アクセス構造体の処置に関連した血管内皮細胞の生理機能および内腔ホメオスタシス、もしくは血管内皮細胞の生理機能または内腔ホメオスタシスを助長し、回復し、かつ、他の方法で調節するか、もしくは、助長するか、回復するか、かつ、他の方法で調節することができるという発見事項に基づくものである。
【0083】
本発明の目的上、本発明の細胞の特色を示す1つの当該好適な、容易に特定可能な表現型は、以下で説明する体外分析で判断されるような平滑筋細胞の増殖を抑制するかまたは他の方法で妨げることができる点である。これは、本明細書では抑制性表現型という。
【0084】
本発明の構成体の細胞によって示される別の容易に特定可能な表現型は、抗血栓性であるか、または、血小板付着または凝集を抑制することができるという点である。抗血栓性作用は、以下で説明する体外ヘパラン硫酸分析および体外血小板凝集分析、もしくは体外ヘパラン硫酸分析または体外血小板凝集分析で判断することができる。
【0085】
本発明の一般的な具体実施形態においては、細胞は、前出の表現型のうち、2つ以上を示さなくてもよい。特定の実施形態においては、細胞は、前出の表現型のうち、2つ以上を示すことができる。
【0086】
前出の表現型は、各々、血管内皮細胞(であるがこれに限定されない)など、機能的内皮細胞の典型であるが、上記の表現型を示す非内皮細胞は、本発明の目的上、内皮的であり、したがって、本発明との使用に適切であると考えられる。内皮的である細胞は、本明細書では、内皮細胞の機能的類似体または内皮細胞の機能的模倣体ともいう。したがって、一例のみとして、本明細書で開示する材料および方法との使用に適切な細胞としては、内皮的細胞を生じる幹細胞または前駆細胞、元は非内皮細胞であるが本明細書で定めるパラメータを使用して機能的に内皮細胞的に機能する細胞、本明細書で定めるパラメータを使用して内皮的な機能性を有するように加工または他の方法で改変される任意の起源の細胞がある。
【0087】
一般的に、本発明の細胞は、融合、近融合、または融合後の集団内にあってかつ本明細書の別の部分で説明するものなどの好適な生体適合性マトリクスと関連づけられたときに前出の表現型の1つまたはそれ以上を示す。当業者によって認識されるように、細胞の融合、近融合、または融合後の集団は、様々な手法によって容易に特定可能であり、様々な手法のうち最も一般的でありかつ広く容認されているものは、直接鏡検である。その他には、血球計または自動血球計数装置など(であるがこれらの限定されない)の標準細胞数算定法を用いて細胞数/表面積の評価がある。
【0088】
更に、本発明の目的上、内皮的細胞としては、本明細書で定めるパラメータによって判断されるような融合、近融合、または融合後の内皮細胞を機能的および表現型的にエミュレートする、または模倣する細胞があるが、これらに限定されない。
【0089】
したがって、以下に定める詳細な説明および手引きを用いて、当業者である施術者は、本明細書で開示する移植材料の具体実施形態を形成、使用、試験、および特定する方法を認識するであろう。即ち、本明細書で提示する教示内容では、本発明の移植材料の形成および使用に必要な全てが開示されている。また、更に、本明細書で提示する教示内容では、動作面で均等な細胞含有構成体の特定、形成および使用に必要な全てが開示されている。根本的には、必要なのは、均等な細胞含有構成体が本明細書で開示する方法に従って血管アクセス構造体を処置するのに有効であることである。熟練施術者によって理解されるように、本発明の構成体の均等な実施形態は、本明細書で提示する教示内容と共に通常の実験のみを用いて特定することができる。
【0090】
特定の好適な実施形態においては、本発明の移植材料で使用される内皮細胞は、ヒトの死体ドナーの大動脈から単離される。細胞の各ロットは、内皮細胞清潔度、生物学的機能、細菌、カビ、公知のヒト病原体および他の偶発性物質の存在について広範囲に試験された単一のまたは複数のドナーから導出される。細胞は、生体適合性移植材料におけるその後の形成に備えて、培養におけるその後の伸長に向けて周知の手法を用いて凍結保存されて貯蔵される。
【0091】
(細胞形成) 上述したように、適切な細胞は、様々な組織型および細胞型から取得することができる。特定の好適な実施形態においては、本移植材料において使用されるヒト大動脈内皮細胞は、死体ドナーの大動脈から単離される。他の実施形態においては、ブタ大動脈内皮細胞(Cell Applications、カリフォルニア州サンディエゴ)は、ヒト大動脈内皮細胞の単離に使用されるのと類似の手順によって正常なブタ大動脈から単離される。細胞の各ロットは、内皮細胞生存力、清潔度、生物学的機能、マイコプラズマ、細菌、カビ、酵母、公知のヒト病原体および他の偶発性物質の存在について広範囲に試験された単一のまたは複数のドナーから導出される。細胞は更に、培養におけるその後の伸長に向けて、および、生体適合性移植材料におけるその後の形成に向けて、周知の手法を用いて、伸長され、特徴づけられて、3回から6回の通過で作業用細胞バンクを形成するために凍結保存される。
【0092】
ヒトまたはブタ大動脈内皮細胞の形成は、フラスコ当たり約15mlの内皮細胞成長培地の添加で予め準備されたT−75フラスコ内で行われる。ヒト大動脈内皮細胞は、Endothelial Growth Media(EGM−2、 Cambrex Biosciences、ニュージャージ州イーストラザーフォード)で形成される。EGM−2は、2%FBSを含むEGM−2 Singlequotsで補足されたEndothelial Cell Basal Media(EBM−2、Cambrex Biosciences)からなる。ブタ細胞は、5% FBSと50μg/mlゲンタミシンとで補足されたEBM−2で形成される。フラスコを、約37℃、5%CO/95%空気、90%湿度にて維持された培養器内に30分間設置する。細胞の1つまたは2つのバイアルを−160℃から−140℃の冷凍装置から取り出して、約37℃で解凍する。各バイアルの解凍した細胞を2つのT−75フラスコ内に約3x10細胞/cm、好ましくは1.0x10を上回るが7.0x10を下回る密度で播種して、細胞が入ったフラスコを培養器に戻す。約8時間から24時間後、使用済み培地を取り出して新しい培地と交換する。培地は、細胞が約85%から100%の融合、好ましくは、60%を上回るが100%を上回らない融合に到達するまで、2日から3日毎に変える。移植材料が臨床的用途を目的としたとしたものであるとき、抗生物質なしの培地のみが、ヒト大動脈内皮細胞の解凍後の培養体内で、かつ、本発明の移植材料の製造において使用される。
【0093】
その後、内皮細胞成長培地を取り出して、細胞の単層を10mlのHEPES緩衝食塩水(HEPES)で洗浄処理する。HEPESを取り除いて、2mlのトリプシンを加えて、細胞をT−75フラスコから脱離させる。脱離が行われたら、3mlのトリプシン中和液(TNS)を加えて酵素反応を停止させる。更に、5mlのHEPESを加えて、血球計を使用して細胞数を数える。細胞浮遊を遠心分離処理して、ヒト細胞の場合には、抗生物質なしでEGM−2を使用して約1.75x10個のセル、ブタ細胞の場合には、5%FBSと50μg/mlゲンタミシンで補足されたEBM−2を使用して約1.50x10個の細胞/mlの密度に調整する。
【0094】
(生体適合性マトリクス) 本発明によれば、本移植材料は、生体適合性マトリクスを含む。本マトリクスは、細胞の成長および本マトリクスへの、本マトリクス上で、または本マトリクス内での付着に対して許容状態である。本マトリクスは、可撓性でありかつ順応するものである。本マトリクスは、中実、半中実、または流動性多孔質構成体とすることができる。本発明の目的上、流動性構成体とは、針、注射器、またはカテーテルなど(であるがこれらの限定されない)の注入または注入タイプの供給装置を用いて投与しやすい構成体である。押出し、射出または放出を採用する他の供給装置も、本明細書で企図されている。多孔質マトリクスが好適である。好適な流動性構成体は、形状保持構成体である。また、本マトリクスは、可撓性平面形態の形とすることができる。また、本マトリクスは、ゲル、泡、懸濁液、粒子、マイクロキャリア、マイクロカプセル、または繊維構造体の形とすることができる。現在好適なマトリクスは、粒子性形態を有する。
【0095】
本マトリクスは、例えば、血管の外面上に移植されたとき、生体分解する前に、少なくとも約56日から84日間、好ましくは少なくとも約7日、更に好ましくは少なくとも約14日、最も好ましくは少なくとも約28日、移植部位に在することができる。
【0096】
1つの好適なマトリクスは、Gelfoam(登録商標)(Pfizer、ニューヨーク州ニューヨーク)、つまり、吸収可能なゼラチンスポンジ(以下、「Gelfoamマトリクス」)である。Gelfoamマトリクスは、特殊処理精製ブタ真皮ゼラチン溶液から形成された多孔質可撓性外科用スポンジである。
【0097】
別の実施形態によれば、本生体適合性マトリクス材料は、改質マトリクス材料である。本マトリクス材料の種々の改質事項を選択して、細胞が本マトリクスと関連づけられたときに、上述したような細胞の表現型(例えば、抑制表現型)を含め、細胞の機能を最適化および制御、もしくは最適化または制御することができる。1つの実施形態によれば、本マトリクス材料の改質事項には、平滑筋細胞増殖を抑制し、炎症を減らし、ヘパラン硫酸生成を増大し、プロスタサイクリン生成を増大し、および、TGF−β生成を増大するか、もしくは、平滑筋細胞増殖を抑制するか、炎症を減らすか、ヘパラン硫酸生成を増大するか、プロスタサイクリン生成を増大するか、または、TGF−β1生成を増大する細胞の能力を高める付着因子または接着ペプチドを本マトリクスに被覆することが含まれる。例示的な付着因子としては、例えば、フィブロネクチン、フィブリン・ゲル、標準的水性カルボジイミド化学反応を利用した共有付着細胞接着リガンド(例示的なRGDを含む)がある。更なる細胞接着リガンドとしては、RGDY、REDVY、GRGDF、GPDSGR、GRGDY、REDVを含むがこれらに限定されない細胞接着認識配列を有するペプチドがある。
【0098】
別の実施形態によれば、本マトリクスは、Gelfoam以外のマトリクスである。更なる例示的なマトリクス材料としては、例えば、フィブリン・ゲル、アルギン酸塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムマイクロキャリア、コラーゲン被覆デキストラン・マイクロキャリア、PLA/GPAおよびpHEMA/MMA共重合体(各共重合体について1%から100%の範囲のポリマー率にて)がある。好適な実施形態によれば、これらの更なるマトリクスは、上記記載しかつ説明するように、付着因子または接着ペプチドを含むように改質される。例示的な付着因子としては、例えば、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリン・ゲル、標準的水性カルボジイミド化学反応を利用した共有付着細胞接着リガンド(RGDを含む)がある。更なる細胞接着リガンドとしては、RGDY、REDVY、GRGDF、GPDSGR、GRGDY、REDVを含むがこれらに限定されない細胞接着認識配列を有するペプチドがある。
【0099】
別の実施形態によれば、本生体適合性マトリクス材料は、本マトリクスへの細胞付着を向上させるために物理的に改質される。1つの実施形態によれば、本マトリクスは、機械的特性を高めるために、かつ、細胞付着成長特性を向上させるために架橋結合される。好適な実施形態によれば、まず、硫酸カルシウムを用いて、次に、塩化カルシウムおよび通常の手順を用いた第2の架橋結合工程によってアルギン酸塩マトリクスを架橋結合する。
【0100】
更なる別の実施形態によれば、本生体適合性マトリクスの空孔サイズは改変される。好適なマトリクス空孔サイズは、約25μmから約100μm、好ましくは約25μmから50μm、更に好ましくは50μmから75μm、更に一層好ましくは約75μmから100μmである。他の好適な空孔サイズとしては、約25μmを下回るサイズおよび約100μmを上回るサイズがある。1つの実施形態によれば、空孔サイズは、塩分浸出法を用いて改変される。塩化ナトリウムを本マトリクスと溶剤の溶液中に混ぜて、溶液を型に流し込んで、溶剤を自然蒸発させる。その後、マトリクス/塩ブロックを水に浸漬すると、塩分が浸出して、多孔質構造体が残る。溶剤は、本マトリクスが溶液中にあるが塩分は溶液中にないように選ぶ。1つの例示的な溶液としては、PLAおよび塩化メチレンがある。
【0101】
代替実施形態によれば、二酸化炭素気泡を非中実形態の本マトリクスに加えて、妥当な界面活性剤で安定化させる。その後、真空によって気泡を除去すると、多孔質構造体が残る。
【0102】
別の実施形態によれば、凍結乾燥法を採用して、氷微粒子の冷凍速度を用いて異なるサイズの空孔を形成して本マトリクスの空孔サイズを制御する。例えば、約0.1%から2%のブタまたはウシ・ゼラチンのゼラチン溶液を型または皿に注入して様々な異なる温度で事前凍結して、その後、暫くの間、凍結乾燥することができる。本材料は、その後、好ましくは、紫外光(254nm)を用いて、またはグルタルアルデヒド(ホルムアルデヒド)を加えることで架橋結合することができる。事前凍結温度(例えば、−20℃、−80℃、または−180℃)、凍結乾燥温度(約−50℃で凍結乾燥)、ゼラチン濃度(0.1%から2.0%、空孔サイズは一般的に、溶液中のゼラチンの濃度に反比例)の変動は、全て、本マトリクス材料の結果的に得られる空孔サイズに影響を与える可能性があり、好適な材料を形成するために改変することができる。当業者は、適切な空孔サイズは、本明細書の他の部分で説明する表現型を有する最適な細胞集団を促進させ、かつ保持する空孔サイズであることを認識するであろう。
【0103】
(可撓性平面形態) 本明細書で教示するように、生体適合性マトリクスの平面形態は、様々な形状およびサイズ、好ましくは、瘻、移植片、末梢移植片、または他の血管アクセス構造体および周囲にて、瘻、移植片、末梢移植片、または他の血管アクセス構造体および周囲近傍に、または、瘻、移植片、末梢移植片、または他の血管アクセス構造体付近および周囲付近の移植に適合され、かつ、アクセス構造体および関連の血管の成形表面に合致することができる形状およびサイズで構成することができる。好適な実施形態によれば、単一のマトリクス部片は、処置される特定の血管アクセス構造体への適用に向けてサイズ処理されかつ構成される。
【0104】
1つの実施形態によれば、本生体適合性マトリクスは、可撓性平面形態として構成される。血管などであるがこれに限定されない管状構造体への投与に向けて、または、血管吻合などであるがこれに限定されない血管アクセス構造体への投与に向けて構成された例示的な実施形態を図1に示す。長さ、幅、厚みおよび表面積の特長は、図1では縮尺通りまたは比例して示すものではなく、図1は、非制限的かつ例示的な実施形態である。
【0105】
図1を参照すると、可撓性平面形態20は、一片の適切な生体適合性マトリクスから形成される。必要なのは、可撓性平面形態20は、血管などの管状構造体の成形外面に合わせて可撓性可能、合致可能、および、適合可能、もしくは、可撓性可能、合致可能、または、適合可能であることである。可撓性平面形態20は、血管の外面に接触することができるか、外面を包むことができるか、または外面に巻き付くことができる。
【0106】
図2Aに示す1つの例示的な実施形態によれば、成形可撓性平面形態20’は、本体部30などの画定可能な領域を含むように構成し、ブリッジ部50に結合し、タブ部40に結合することができる。タブ部40は、ブリッジ部50によって本体部30から分離可能であるが、幾つかの領域は、連続的な全体を形成する。1つの例示的な実施形態によれば、これら幾つかの領域の内縁部は、成形可撓性平面形態20’内の内側スロット60を画定するように配置される。好適な実施形態によれば、内側スロット60を画定するこれら幾つかの領域は、更に、成形可撓性平面形態20’の内部における第1の終了点62、成形可撓性平面形態20’の外縁部上の第2の終了点64、および幅部66を画定する。この特定の例示的な実施形態においては、第1の終了点62は、タブ部40とブリッジ部50の境界にあり、第2の終了点64は、タブ部40と本体部30の境界にある。
【0107】
特定の実施形態においては、上述したタブ部40と、本体部30と、ブリッジ部50とによって画定されたスロット60の幅部66は、好ましくは約0.01インチから約0.04インチ、更に好ましくは約0.05インチから0.08インチ、最も好ましくは約0.06インチであることが企図されている。可撓性平面形態20’のスロット60の幅部66は、移植細胞が連続した融合層または細胞ブリッジをスロット60の幅部66に沿って形成するのを阻止するのに十分な寸法であることが好ましい。しかしながら、細胞がこのような細胞層または細胞ブリッジを単に切断するかまたは他の方法で妨げるだけで細胞が幅部66の橋渡しをするとしても、スロット60およびスロット幅部66を画定する実施形態を本明細書で説明するように使用することができることが企図されている。
【0108】
本発明は、更に、図1の可撓性平面形態20’は、外科用メスまたは他の切断工具を使用して平面形態を部分的に切断することによってスロットを画定するように熟練施術者に単に指示するだけで、使用直前にスロット60を画定するようにすることができることを企図している。
【0109】
ある程度、本明細書で開示する本発明は、成形および合致可能な、もしくは成形または合致可能な可撓性平面形態は、インプラントおよびインプラントに移植される細胞の完全性を損なうことなく移植材料を最適に管状構造体に適用することを可能にするという発見事項に基づくものである。1つの好適な実施形態は、外科的に処理された血管の生体組織との接触を最適化して、外科的に処理された血管の生体組織に合致して、移植材料の重なりの程度を制御する。外膜腔内での移植材料の過度の重なりは、処置された血管上の止血点を引き起こす可能性があり、潜在的に、血管内の血流が制限されるか、または、ホメオスタシスおよび正常な治癒を遅延および抑制もしくは遅延または抑制し兼ねない他の断絶部が発生する。熟練施術者は、移植時の過度の重なりを認識するであろうし、かつ、移植材料を位置換するか、変更する(例えば、調整する)必要性を認識するであろう。更に、他の実施形態においては、移植材料が重なると、結果的に、治療薬の過剰投与を本移植材料内に分散させることができる。本明細書の他の部分で説明するように、薬剤および他の外生的に供給される治療薬を随意的にインプラントに加えることができる。特定の他の実施形態においては、当該薬剤を生体適合性マトリクスに添加して、細胞がない場合に投与することができ、このようにして使用される生体適合性マトリクスは、随意的にスロットを画定する。
【0110】
これとは対照的に、目標管状構造体に適当に接触しない移植材料は、移植細胞または移植材料に添加された治療薬の過小投与によって得られる臨床的便益が十分に受けられない可能性がある。熟練施術者は、移植時の接触が最適というものではないと、位置決め直しおよび更なる移植材料、もしくは位置決めし直しまたは更なる移植材料が必要であることを認識するであろう。
【0111】
(流動性構成体) 本明細書で企図されている特定の実施形態においては、本発明の移植材料は、微粒子生体適合性マトリクスを含む流動性構成体である。血管の内部長のナビゲーションによるか、または、経皮的な局所的投与による腔内(脈管間)投与が可能な注入可能なタイプの供給装置との使用に向けた一切の非中実流動性構成体が、本明細書で企図されている。本流動性構成体は、形状保持構成体であることが好ましい。したがって、本明細書で企図されているような流動性タイプの微粒子マトリクス内、流動性タイプの微粒子マトリクス上、または流動性タイプの微粒子マトリクスの範囲内に細胞を含む移植材料は、内径が約22ゲージから約26ゲージの範囲であるとともに、約1mlから約3mlで好ましくは約100万個の細胞を含む微粒子材料を含む約50mgの流動性構成体を供給することができる任意の注入可能な供給装置での使用に向けて形成することができる。
【0112】
現在好適な実施形態によれば、本流動性構成体は、Gelfoam(登録商標)粒子、Gelfoam(登録商標)粉体、微粉砕Gelfoam(登録商標)((Pfizer Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク)(以下、「Gelfoam粒子」)、ブタ真皮ゼラチンから導出された製品などの生体適合微粒子マトリクスを含む。別の実施形態によれば、微粒子マトリクスは、架橋結合デキストランのマトリクスに結合された変性コラーゲンで構成された、Cytodex−3(Amersham Biosciences、ニュージャージ州Piscataway)マイクロキャリアである。
【0113】
代替実施形態によれば、生体適合移植微粒子マトリクスは、改質生体適合性マトリクスである。改質事項としては、移植マトリクス材料に関して先述したものがある。
【0114】
このような使用に適切な流動性構成体の例は、内容全体が引用により本明細書に組み入れられる、本明細書と共に同日付けで出願された同時係属出願PCT出願/米国特許第 号(代理人整理番号第ELV−008PC号としても知られている)および、内容全体が引用により本明細書に組み入れられる同日付けで出願されたPCT出願/米国特許第 号(代理人整理番号第ELV−009PC号としても知られている)で開示されている。
【0115】
(生体適合性マトリクスの細胞播種) 適切な生体適合性マトリクスの予め選択された部片または一定分量の適切な生体適合流動性マトリクスが、約37℃、5%CO/95%空気にて、12時間から24時間、抗生物質なしでEGM−2の添加によって再水和する。その後、移植材料を再水和容器から取り出して、個々の組織培養皿に入れる。約1.5から2.0x10個の細胞(1.25から1.66x10個の細胞/cmのマトリクス)の好適な密度にて生体適合性マトリクスを播種して、約37℃、5%CO/95%空気、90%湿度に維持された培養器内に3時間から4時間入れて、細胞付着を助長する。その後、各々にEGM−2と共に0.2μmフィルタを含むキャップが取り付けられ、かつ、約37℃、5%CO/95%空気にて培養された個々の容器(American Master Tech、カリフォルニア州ロディ)チューブに播種マトリクスを入れる。その後、細胞が融合に到達するまで、培地を2日から3日毎に変える。1つの実施形態における細胞は、6回の通過が好ましいが、それより少ないまたは多い通過回数の細胞を使用することができる。本発明の更なる実施形態による更なる移植材料形成手順は、 年 月 日に出願された、同時係属出願PCT出願/米国特許第 号(代理人整理番号第ELV−009PC号としても知られている)に開示されており、この特許の内容全体は、引用により本明細書に組み入れられる。
【0116】
(細胞成長曲線および融合) 移植材料の試料を3日または4日、6日または7日、9日または10日、12日または13日前後に取り出して、成長特性を評価し、かつ、融合、近融合、または融合後に到達したか否か判断するために、細胞数を数えて、生存可能であるか査定し、成長曲線を作成して評価する。ブタ大動脈内皮細胞移植ロットを含む移植材料の2つの形成例からの代表的な成長曲線を図3Aおよび図3Bに示す。これらの例においては、移植材料は、可撓性平面形態である。一般的に、当業者は、初期時点(図3Aを参照すると、約2日から6日の間)、次いで、近融合段階(図3Aを参照すると、約6日から8日の間)、次いで、細胞が融合に到達した後の細胞数の平坦域(図3Aを参照すると、約8日から10日の間)での細胞数の増加の観察および細胞が融合後であるとき(図3Aを参照すると、約10日から14日の間)の細胞数の維持など、初期、中期、後期時点での問題のない細胞成長の兆候を認識するであろう。本発明の目的上、少なくとも72時間平坦域にある細胞集団が好ましい。
【0117】
細胞計数は、トリプシン−EDTA溶液中での0.8mg/mlコラゲナーゼ溶液での一定分量の移植材料の完全な分離によって達成される。分離移植材料の容積を測定後、公知の容積の細胞浮遊を0.4%トリパンブルー(4:1の細胞とトリパンブルーの比率)で希釈して、生存率をトリパンブルー排除によって査定する。血球計を使用して生存可能細胞、生存不可能細胞、総細胞数を数え上げる。生存可能細胞数と培養日数をプロットして成長曲線を作成する。細胞は、送出されて融合に到達した後に移植される。
【0118】
本発明の目的上、融合とは、移植材料の可撓性平面形態(1.0x4.0x0.3cm)時にて少なくとも約4x10個の細胞/cm、好ましくは約7x10から1x10個の総細胞数、好ましくは、生体適合内時にて約7x10から1x10個の総細胞数/一定分量(50mgから70mg)の存在と定義されている。その両方について、細胞生存率は、少なくとも約90%、好ましくは80%を下回らないほどである。細胞が12日または13日までに融合しなかった場合、培地を変えて、培養を更に1日続行する。このプロセスを融合に到達するまで、または、播種後14日まで続行する。14日目に、細胞が融合しなかった場合、ロットを破棄する。細胞がプロセス内チェックを行ってから細胞が融合していると判断された場合、最終培地交換を行う。この最終培地交換は、フェノールレッドなしかつ抗生物質なしでEGM−2を使用して行う。培地交換直後に、チューブには、送出用無菌プラグシールキャップが取り付けられる。
【0119】
(機能性の評価) 本明細書で説明する本発明の目的上、移植材料は、更に、移植前に機能性の兆候がないか試験される。例えば、ならし培地を培養期間中に回収して、培養内皮細胞によって生成される成長因子−β(TGF−β)、基本線維芽細胞増殖因子(b−FGF)、窒素酸化物を変換してヘパラン硫酸のレベルを確かめる。特定の好適な実施形態においては、移植材料が本明細書で説明する目的に使用することができるのは、総細胞数が少なくとも約2x10個の細胞/cm、好ましくは、可撓性平面形態の少なくとも約4x10個の細胞/cm、生存可能細胞の割合が少なくとも約80%から90%、好ましくは≧90%、最も好ましくは少なくとも約90%、ならし培地中のヘパラン硫酸が少なくとも約0.5microg/10個の細胞/日から1.0microg/10個の細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0microg/10個の細胞/日のときである。ならし培地中のTGF−βは、少なくとも約200picog/ml/日から300picog/ml/日、好ましくは少なくとも約300picog/ml/日、ならし培地中のb−FGFは、約200picog/ml未満、好ましくはわずか約400picog/mlである。
【0120】
ヘパラン硫酸レベルは、通常のジメチルメチレン・ブルーコンドロイチナーゼABC分離分光光度計検定を用いて計ることができる。全硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)レベルの判断は、回収培地中で希釈した公知の量の精製コンドロイチン硫酸を使用して生成した標準的曲線と未知の試料を比較するジメチルメチレンブルー(DMB)色素結合検定を用いて行う。DMB発色試薬の添加前にコンドロイチンおよびデルマタン硫酸を分離するようにならし培地の更なる試料をコンドロイチナーゼABCと混合させる。一般的に515nmから525nmであるGAG標準と混合させたDMB色素の最大波長吸収度にて全ての吸収度を判断する。ヘパラン硫酸/10個の細胞/日の濃度の計算は、方法としては、ならし培地試料中の全硫酸化グリコサミノグリカン濃度からコンドロイチンおよびデルマタン硫酸の濃度を差し引く。コンドロイチナーゼABC活性は、精製コンドロイチン硫酸の試料を分離することとで確認する。ならし培地試料は、分離量が精製コンドロイチン硫酸の100%未満であった場合は妥当に補正する。また、ヘパラン硫酸レベルは、単クローン抗体を採用するELISA検定を用いて計ることができる。
【0121】
TGF−βレベルおよびb−FGFレベルは、単クローン抗体または多クローン抗体、好ましくは多クローンを採用するELISA検定を用いて計ることができる。また、調製回収培地は、ELISA検定を用いて計ることができ、試料は、調製培地に存在するTGF−βレベルおよびb−FGFレベルについて妥当に補正することができる。
【0122】
窒素酸化物(NO)レベルは、標準的なGries反応検定を用いて計ることができる。窒素酸化物の性質が過渡的かつ揮発性であるために、大半の検出方法には不適切なものとなっている。しかしながら、窒素酸化物の2つの安定した分解生成物、硝酸塩(NO)および亜硝酸塩(NO)は、通常の分光法を用いて検出することができる。Gries反応検定では、硝酸還元酵素がある場合には亜硝酸塩が硝酸塩に酵素によって変換される。亜硝酸塩は、約540nmの範囲の可視光を吸収する着色アゾ染料生成物として比色分析で検出される。システム中に存在する窒素酸化物のレベルの判断は、全ての亜硝酸塩を硝酸塩に変換し、未知の試料中の亜硝酸塩の総濃度を判断し、その後、亜硝酸塩に変換された硝酸塩の公知の量を用いて生成された標準的な曲線と結果的に得られる亜硝酸塩濃度を標準的な曲線と比較することで行う。
【0123】
先述した好適な抑制表現型の評価は、上述した定量的ヘパラン硫酸検定、TGF−β検定、NOおよびb−FGF検定、もしくはヘパラン硫酸検定、TGF−β検定、NOまたはb−FGF検定、ならびに、以下のような平滑筋細胞成長および血栓症抑制の定量的体外検定を用いて行う。本発明の目的上、移植材料は、これらの代替体外検定の1つまたはそれ以上によって移植材料が好適な抑制表現型を示していると確認されたときに移植準備完了状態である。
【0124】
体外で平滑筋細胞成長の抑制を評価するために、培養内皮細胞に関連した抑制の大きさを判断する。平滑筋細胞成長培地(SmGM−2、Cambrex Bioscience)中で24穴組織培養プレート内にブタ大動脈平滑筋細胞またはヒト大動脈平滑筋細胞をまばらに播種する。細胞を24時間かけて自然付着させる。その後、48時間から72時間かけて、培地を、0.2%FBSを含む平滑筋細胞基本培地(SmBM)と入れ換えて細胞の成長を抑止する。ならし培地を融合後の内皮細胞培養液から形成し、2X SMC成長培地と1:1で希釈して、培養液に加える。平滑筋細胞成長抑制の正の制御が、各検定において含まれる。3日から4日後、コールターカウンタを使用して各試料内の細胞数を数え上げる。平滑筋細胞増殖に対するならし培地の効果の判断は、ならし培地の添加直前のウェル当たりの平滑筋細胞数を、3日から4日間ならし培地と調製培地(成長因子の有無を問わず標準的な成長培地)とに晒した後のウェル当たりの平滑筋細胞数を比較することで行う。ならし培地試料に関連した抑制の大きさを正の制御に関連した抑制の大きさと比較する。好適な実施形態によれば、移植材料は、ヘパラン制御が可能である抑制の約20%をならし培地が示した場合には抑制力があるみなされる。
【0125】
体外で血栓症を評価するために、培養内皮細胞にかけたヘパラン硫酸のレベルを判断する。ヘパラン硫酸は、抗増殖性特性も抗血栓性特性も有する。通常のジメチルメチレン・ブルーコンドロイチナーゼABC分離分光光度計検定またはELISA検定を用いて(両検定は、詳細に先に説明)、10個の細胞当たりのヘパラン硫酸の濃度を計算する。ならし培地中のヘパラン硫酸が少なくとも約0.5microg/10個の細胞/日から1.0microg/10個の細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0microg/10個の細胞/日であるとき、本明細書で説明する目的に向けて移植材料を使用することができる。
【0126】
血栓症の抑制を評価する別の方法では、多血小板血漿に関連した体外にて血小板凝集能の抑制の大きさを判断する。室温でクエン酸ナトリウムをブタ血液試料に添加してブタ血漿を取得する。緩やかな速度で、遠心分離機でクエン酸塩添加血漿を分離させて、赤血球および白血球を小球状にすると、血漿中に浮遊する血小板が残る。融合後の内皮細胞培養液からならし培地を形成して、一定分量の多血小板血漿に添加する。血小板凝集剤(作用薬)を対照として血漿に添加する。血小板作用薬としては、一般に、アラキドン酸、ADP、コラーゲン、エピネフリン、リストセチン(ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich Co.より販売)がある。更なる一定分量の血漿では、基線自然血小板凝集について評価するために血小板作用薬またはならし培地は添加されない。また、血小板凝集の正の制御は、各検体に含められる。血小板凝集抑制の例示的な正の制御としては、アスピリン、ヘパリン、アブシキマブ(ReoPro(登録商標)、Eli Lilly、インディアナ州インディアナポリス)、チロフィバン(Aggrastat(登録商標)、Merck & Co.、Inc.、ニュージャージ州ホワイトハウスステーション)、またはエプチフィバチド(Integrilin(登録商標)、Millennium Pharmaceuticals, Inc.、マサチューセッツ州ケンブリッジ)がある。その後、全ての試験条件の結果的に得られる血小板凝集を、血小板凝集計を使用して測定する。血小板凝集計は、光学的密度をモニタすることで血小板凝集を測定するものである。血小板が凝集するにつれて、試料を通過することができる光が増える。血小板凝集計は、「血小板凝集単位」、つまり、血小板が凝集する速度の関数での結果を知らせる。凝集能の判断は、作用薬添加後6分にて最大凝集能と評価される。血小板凝集に対するならし培地の効果は、ならし培地添加前の基線血小板凝集をならし培地を正の制御と多血小板血漿が晒された後の基線血小板凝集と比較することで行う。結果は、基線の百分率で表される。ならし培地試料に関連した抑制の大きさを正の制御に関連した抑制の大きさと比較する。好適な実施形態によれば、移植材料は、ならし培地が正の制御が可能である制御の約20%を示した場合には抑制力があるとみなされる。
【0127】
移植に対して準備完了状態であるとき、可撓性平面形態を含む本移植材料は、各々が、好ましくは、cm当たり、約45mlから60ml、好ましくは約50mlで、好ましくは約5x10個の細胞/cmから8x10個の細胞/cm、好ましくは少なくとも約4x10個の細胞/cm、少なくとも90%生存可能細胞、例えば、単一の死体ドナー株から導出されたヒト大動脈内皮細胞、内皮成長培地(例えば、フェノールレッドおよび抗体を含まない内皮成長培地(EGM−2))を有する1x4x0.3cm(1.2cm)無菌部片を含む最終製品容器で供給される。また、ブタ大動脈内皮細胞が使用されるとき、成長培地は、フェノールレッドを含まないが5%FBSおよび50μg/mlゲンタミシンで補足されるEBM−2である。
【0128】
他の好適な実施形態においては、流動的な特定の形態を含む移植材料は、例えば、各々が、好ましくは、約45mlから60ml、好ましくは一定分量当たり約50mlの内皮成長培地中に約7x10から約1x10個の総内皮細胞数が移植された約50mgから60mgの微粒子材料を含む、フィルタキャップまたは予め装荷された注射器で改変された密封組織培養容器を含む、最終製品容器で供給される。
【0129】
(移植材料の保存期間) 融合、近融合、または融合後の細胞集団を含む本移植材料は、室温で安定した生存可能な状態で少なくとも2週間維持することができる。当該移植材料は、更なるFBSの有無を問わず、約45mlから60mlで、更に好ましくは50ml、輸送培地内で維持されることが好ましい。輸送培地は、フェノールレッドなしでEGM−2を含む。FBSは、最大約10%または総濃度約12FBSまで、輸送培地の容積に添加することができる。しかしながら、FBSは移植前に本移植材料から取り出さなければならないために、輸送培地内で使用されるFBSの量を制限して移植前に必要とされる洗浄処理長を短縮することが好適である。
【0130】
(移植材料の凍結保存) 融合細胞集団を含む融合移植材料は、完全解凍時に臨床的潜在性または完全性を減じることなく、保存および診療所への輸送、もしくは保存または診療所への輸送に向けて凍結保存することができる。本移植材料は、15mlのクライオバイアル(Nalgene(登録商標)、Nalge Nunc Int’l、ニューヨーク州ロチェスター)内に、約10%のDMSO、約2%から8%のDextranおよび約50%から75%のFBSを含む約5mlのCryoStor CS−10溶液(BioLife Solutions、ニューヨーク州オズウィーゴ)で凍結保存することが好ましい。クライオバイアルは、低温イソプロパノール水槽内に入れ、80℃冷凍装置に移送して4時間、その後に、液体窒素(−150℃から−165℃)に移送する。
【0131】
冷凍保存した一定分量単位の本移植材料は、その後、室温で約15分間、次いで、更に約15分間、室温水槽内でゆっくりと解凍する。本移植材料は、その後、約15mlの洗浄液で約3回洗浄する。洗浄液は、フェノールレッドはなく、50μg/mlのゲンタミシンを有するEBMを含む。最初の2回の洗浄工程は、室温で約5分間行う。最後回の洗浄工程は、5%CO中で37℃にて約30分間行う。
【0132】
解凍および洗浄処置後に、解凍保存材料を約10mlの回復液中で約48時間自然放置する。ブタ内皮細胞の場合、回復液は、5%COで37℃にて5%FBSおよび50μg/mlのゲンタミシンで補足されたEBM−2である。ヒト内皮細胞の場合、回復液は、抗生物質がないEGM−2である。保存または輸送に向けて使用および梱包前、もしくは使用または梱包前に、更なる解凍後の状態調整を少なくとも更に24時間実行することができる。
【0133】
移植直前に、培地を別の容器に移し、移植材料を約250mlから500mlの殺菌生理食塩水(USP)で洗浄する。最終製品容器内の培地は、必要であれば臨床現場に輸送中に細胞生存率を維持するために少量のFBSを含む。FBSは、表題9CFR:動物および動物製品、に従って細菌、カビ、他のウィルス性因子の存在について広範囲にわたって試験済みである。洗浄処置は、移植直前に採用し、これによって、移送されたFBSの量が好ましくはインプラント当たり0ngから60ng/に減じられる。
【0134】
ヒト患者の総細胞負荷は、好ましくは約1.6x10個の細胞/kg体重から2.6x10個の細胞/kg体重であるが、約2x10個の細胞/kg体重を上回り、また、わずか2x10個の細胞/kg体重であると考えられる。
【0135】
本明細書で企図されているように、本発明の移植材料は、好ましくは約4x10個の細胞/cmの可撓性平面形態の密度にて約90%生存可能であり、融合時には、少なくとも約0.5個の細胞/日から1.0個の細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0、microg/10個の細胞/日にてヘパラン硫酸を、TGF−βを少なくとも約200picog/ml/日から300picog/ml/日、好ましくは少なくとも約300picog/ml/日にて、b−FGFを少なくとも約210picog/ml、好ましくはわずか約400picog/ml/日を下回って含むならし培地を生成する細胞、好ましくは血管内皮細胞を含む。
【0136】
(可撓性平面形態での移植材料の供給)
(一般的な検討事項) 本移植材料は、様々な形態で血管アクセス構造体に投与することができる。1つの好適な実施形態によれば、本移植材料は、瘻、移植片、末梢移植片、または、他の血管アクセス構造体およびその周囲に隣接する移植に向けて適合され、かつ、アクセス構造体およびその関連血管の形にあった表面に合致することができる形状およびサイズで切断された可撓性平面形態である。
【0137】
好適な実施形態によれば、単一の部片の移植材料は、処理される血管アクセス構造体への適用に向けてサイズ処理される。別の実施形態によれば、可撓性平面形態の2つ以上の部片の移植材料、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上の部片のマトリクス材料を単一の血管アクセス場所に適用することができる。更に、血管アクセス構造体の長さに沿った2つ以上の場所を1つまたはそれ以上の部片の移植材料で処置することができる。例えば、動静脈移植片の場合、近位血管吻合部、遠位血管吻合部、遠位静脈セグメントの各々は、1つまたはそれ以上の部片の移植マトリクス材料で処置することができる。
【0138】
1つの非制限的な実施形態によれば、本移植材料は、血管の外面に合致するように構成される。例示的な非制限的平面形態を図1に示す。図1を参照すると、例示的な可撓性平面形態20は、長さ12と、幅14と、高さ16とを有する。1つの好適な実施形態によれば、可撓性平面形態20の長さ12は、約2cmから約6cm、可撓性平面形態20の幅14は、約0.5cmから約2cm、可撓性平面形態20の高さ16は、約0.1cmから約0.5cmである。
【0139】
別の実施形態によれば、可撓性平面形態20は、血管または血管アクセス構造体の外面に合致する解剖学的に形に合った形態として構成することができる。血管アクセス構造体への投与に向けて構成された例示的な解剖学的な成形可撓性平面形態20’を、図2Aに示すとともに、以下により詳細に説明する。
【0140】
本明細書の他の部分で説明するように、図2Aの成形可撓性平面形態20’は、様々な幾何学的な形態で構成することができる。例えば、1つの実施形態によれば、成形可撓性平面形態20’は、内部スロット60を画定する幾つかの領域を含む。更なる実施形態によれば、成形可撓性平面形態20’の縁部および内部スロット60の縁部、もしくは成形可撓性平面形態20の縁部または内部スロット60の縁部は、角を成すかまたは湾曲している。別の実施形態によれば、成形可撓性平面形態20’の高さ16’は、長さ12’および幅14’、もしくは長さ12’および幅14’にわたって変動する。更に、成形可撓性平面形態20’の構成および所期の目的によっては、1つ、または2つ以上のタブ部40、ブリッジ部50、およびスロット60もしくはタブ部40、ブリッジ部50、およびスロット60があるとすることができる。スロットの特長に関しては、スロットは、成形可撓性平面形態20’内、成形可撓性平面形態20’上、または成形可撓性平面形態20’の範囲内でどこにでも画定することができる。スロットは、幅が均一であるかまたは幅が変動するように画定することができる。スロットは、線形、非線形、または曲線と画定することができる。
【0141】
少なくとも1つのスロット60を含む本発明の成形可撓性平面形態20’の複数の実施形態を示す図2B、図2C、図2D、図2Eに関しては、成形可撓性平面形態20’は、特定の実施形態においては1つまたは2つ以上のスロットを画定することができ、かつ、本明細書で開示する種々の方法に従って使用することができる。成形可撓性平面形態20’上または成形可撓性平面形態20’の範囲内に画定されたスロット60は、成形可撓性平面形態20’の任意の縁部に沿って整合させることができるか、または、成形可撓性平面形態20’の内部を貫通することができる。ここで図2Eを参照すると、成形可撓性平面形態20’内または成形可撓性平面形態20’の範囲内のスロット60の幅66または全体的な形状は、幅が均一であるかまたは幅が変動するように画定することができ、かつ、線形、非線形、または曲線と画定することができる。
【0142】
図2Fおよび図2Gを参照すると、成形可撓性平面形態20’は、それぞれ、異なる幅66、66’を有するスロット60または60’を画定することができる。
【0143】
図示するように、図2Gのスロット60’および幅66’は、施術者が、移植時に、本明細書の他の部分で提示するように、可撓性平面形態20’を切断することによって、図2Gに示す成形可撓性平面形態20’に変える実施形態を示す。
【0144】
1つの実施形態によれば、動静脈瘻など、端側血管吻合結合部は、本発明の移植材料を使用して処置することができる。可撓性平面形態の本移植材料を端側血管吻合部に供給する例示的な方法の種々の工程を図4A、図4B、図4Cに示す。
【0145】
図4Aを参照すると、移植材料22の第1の部片の中央部32が血管100、110が交わる接合部112に来るまで移植材料22の第1の部片の一端34または第2の端部36を吻合セグメント110の下に通すことによって移植材料22の第1の部片を血管アクセス構造体に供給する。その後、縫合線114の真上に中心があるように移植材料を維持して端部34、36を接合部112にて縫合線114に巻き付ける。1つの実施形態によれば、移植材料22の第1の部片の端部34、36は、移植材料22の第1の部片を所定の位置に固定できる程度に互いに重なり合うことができる。別の実施形態によれば、移植材料22の第1の部片の端部34、36は、互いに重なり合わない。移植材料22の第1の部片または移植マトリクス材料の任意の他の部片の端部34、36は、互いに交わったり、互いに重なり合ったり、またはいずれかの血管100、110の円周部全体に巻き付けられる必要はない。1つの好適な実施形態によれば、移植材料22の第1の部片の端部34、36は、伸長したりまたは裂けたりすることなくできるだけ吻合接合部112に巻きつけられる。必要なのは、血管を適当に覆うことが達成されることである。当業者は、いつ本移植材料の投与が適正に達成されるか認識するであろう。
【0146】
図4Bを参照すると、別の実施形態によれば、移植材料24の第2の部片は、随意的に適用され、移植材料24の第2の部片の中央部42は、吻合接合部112に、または吻合接合部112の近傍または吻合接合部112の付近に中心点がある。移植材料24の第2の部片の端部44、46は、血管100に巻き付けられる。図4の移植材料22の第1の部片に関して説明したように、移植マトリクス材料24の第2の部片の端部44、46は、いずれかの血管100、110の円周部全体に接触するか、重なり合うか、または巻き付くことができるが、その必要はない。
【0147】
図4Cを参照すると、更なる別の実施形態によれば、移植材料26の第3の部片は、随意的に、吻合接合部112の遠位にある、処置された血管100の近位静脈セグメント116に設置される。移植材料26の第3の部片は、1つの実施形態によれば、血管100の長さに沿って長手方向に設置され、移植材料26の第3の部片の第1の端部54は、吻合接合部112に、吻合接合部112近傍に、または、吻合接合部112付近にあり、移植材料26の第3の部片の第2の端部56は、吻合接合部112の遠位にある。移植材料22の第1の部片に関して説明したように、移植マトリクス材料26の第3の部片の端部54、56は、血管100の円周部全体に接触するか、重なり合うか、または巻き付くことができるが、その必要はない。
【0148】
代替実施形態によれば、スロット60を画定する成形可撓性平面形態20’の単一の部片、例えば、図2Aに示す例示的な成形形態は、血管アクセス構造体、例えば、端側吻合部に供給される。端側吻合部にて、端側吻合部近傍に、または、端側吻合部付近にスロット60を画定する移植材料の成形可撓性平面形態20’の移植を図5に示す。移植材料が巻き付けて使用されるとき、移植マトリクス材料の単一の部片は、吻合部も隣接する脈間構造も処置するのに適当であることが企図されている。各成形可撓性平面形態20’は、特定の血管アクセス構造体への適用に向けてサイズ処理されかつ成形され、したがって、処置部を覆う適当な範囲および十分なレベルの内皮細胞因子および治療薬、もしくは内皮細胞因子または治療薬が得られるようにしてその特定の血管アクセス構造体および隣接する脈管構造に向けたホメオスタティック環境を創出するように予め形成される。
【0149】
図5を参照すると、1つの実施形態によれば、タブ部40から本体部30を分離することによってスロットを画定する単一の成形平面形態20’を吻合部に供給する。本体部30を第1の血管100の表面に沿って設置する。第1の血管100の表面上にかつ第2の血管110の分岐部の下にブリッジ部50を設置する。その後、タブ部40を分岐血管110の周りにもってきて分岐血管110の頂面に沿って設置する。
【0150】
図5によれば、成形可撓性平面形態20’の単一の部片は、2つの基準点70、80(図2Aも参照されたい)を含む。図5に示すように、端側吻合部の部位に投与されたとき、2つの基準点70、80が整合する。第1の基準点70は、タブ部40上に位置し、第2の基準点80は、ブリッジ部50上に位置する(図2Aも参照されたい)。成形可撓性平面形態20’の1つの実施形態においては、移植前の基準点70、80は、約0.5インチ、好ましくは約1インチ未満、更に好ましくは約1インチ、最も好ましくは1.5インチを上回らない距離で分離される。成形可撓性平面形態20’が吻合部位に投与されたとき、スロットの特長によって可能にされる分岐血管110周りの成形可撓性平面形態20’の回転によって、基準点70、80が整合する。
【0151】
1つの実施形態によれば(かつ図4A、図4B、図4Cを再度参照すると)、例えば、動静脈移植片を処置するとき、移植材料22の第1の部片および移植材料24の第2の部片を近位血管吻合部および遠位血管吻合部の各々に適用する。更に、移植材料26の第3の部片を遠位血管吻合部の上流側で遠位血管上に設置することができる。
【0152】
図6に示す更なる別の例示的な代替実施形態によれば、可撓性平面形態20の移植材料の単一の部片は、血管100などの管状構造体に適用される。移植材料は、血管アクセス構造体を含まない血管などの管状構造体に適用することができることが企図されている。例えば、血管アクセス構造体から下流側にある血管部分では、処置血管部分の上流側での、血管アクセス構造体形成および血管アクセス構造体での針の突き刺しから生じる、炎症増大、血栓症、再狭窄または閉塞が発生する可能性がある。このような例においては、本発明の移植材料は、血管アクセス構造体から離れた場所で生じるこれらの状態を処置、管理、および改善もしくは処置、管理、または改善することができる。
【0153】
(流動性構成体での移植材料の供給)
(一般的な検討事項) 流動性構成体であるときの本発明の移植材料は、約0.8x10個の細胞/mgの好適な密度、約1.5x10個の細胞/mgの更に好適な密度、約2x10個の細胞/mgの最も好適な密度で約90%生存可能であり、かつ、少なくとも約0.5microg/10個の細胞/日から1.0microg/10個の細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0microg/10個の細胞/日でヘパラン硫酸を、少なくとも約200picog/ml/日から300picog/ml/日、好ましくは少なくとも約300picog/ml/日でTGF−βを、約200picog/ml未満、好ましくはわずか約400picog/mlでb−FGFを含むならし培地を生成して先述した抑制性表現型を示す微粒子生体適合性マトリクスおよび細胞、好ましくは内皮細胞、更に好ましくは、血管内皮細胞を含む。
【0154】
一般的に、本発明の目的上、流動性微粒子材料の投与は、血管アクセス構造体にて、血管アクセス構造体近傍に、または、血管アクセス構造体付近にある部位に局在化される。本移植材料の沈着部位は、内腔外である。本明細書で企図されているように、局在化された内腔外沈着は、以下のように達成することができる。
【0155】
特定の好適な実施形態においては、本流動性構成体をまず経皮的に投与すると、血管周囲腔に入り、その後、適切な針、カテーテルまたは他の適切な経皮的な注入タイプの供給装置を使用して内腔外部位上に沈着させる。あるいは、所望の内腔外部位への供給を助長するために、特定工程と共に、針、カテーテルまたは他の適切な供給装置を使用して本流動性構成体を経皮的に供給する。特定工程は、経皮的供給の前に、または経皮的供給と同時に行われる可能性がある。特定工程は、幾つか方法を挙げると、血管内超音波法、他の通常の超音波法、X線透視法、および内視鏡検査、もしくは血管内超音波法、他の通常の超音波法、X線透視法、または内視鏡検査を用いて達成することができる。特定工程は、随意的に行われるものであり、本発明の方法を実践する上で必要なものではない。
【0156】
また、本流動性構成体は、内腔内に、即ち、血管内に投与することができる。例えば、本構成体は、血管内に挿入することができる任意の装置によって供給することができる。この例においては、当該腔内供給装置は、血管の内腔壁を貫通して血管の非内腔面に到達する横行または貫通装置が装備されている。その後、血管アクセス構造体部位にて、血管アクセス構造体部位近傍に、または、血管アクセス構造体部位付近にて血管の非内腔面上に本流動性構成体を沈着させる。
【0157】
非内腔の、内腔外の、ともいう表面としては、血管の外部、または血管周囲面を挙げることができるか、または、血管の外膜、中膜、内膜内とすることができることが本明細書で企図されている。本発明の目的上、非内腔または内腔外とは、内腔内面以外の任意の表面である。
【0158】
本明細書で企図されている貫通装置は、例えば、血管アクセス構造体に支障をきたすことなく、血管の非内腔面への流動性構成体の供給を達成するために所望の幾何学的構成で配置された単一の供給点または複数の供給点を可能にすることができる。複数の供給点は、幾つかの配置のみを挙げると、例えば、円配置、中心配置、または線形配列で配置することができる。また、貫通装置は、複数の供給点を含むバルーンステントなどであるがこれに限定されないステント穿頭器の形態とすることができる。
【0159】
本発明の好適な実施形態によれば、貫通装置は、血管アクセス構造体の部位に近位または遠位にある血管の内腔内面を介して挿入される。一部の臨床的被験者においては、血管アクセス構造体の部位に貫通装置が挿入されると、血管アクセス構造体に支障をきたし、かつ、結果的に、動静脈移植片または末梢移植片の裂開となるか、もしくは、血管アクセス構造体に支障をきたすか、または、結果的に、動静脈移植片または末梢移植片の裂開となることがあり得る。したがって、このような被験者においては、血管アクセス構造体から距離、好ましくは目前にある特定の状況によって支配される臨床医によって判断された距離を隔てた場所に貫通装置を挿入するように配慮するべきである。
【0160】
流動性構成体は、処置される血管アクセス構造体の部位に、または、血管アクセス構造体の部位近傍に、または、血管アクセス構造体の部位付近にて血管の血管周囲面上に沈着されることが好ましい。構成体は、血管アクセス構造体に対して様々な場所に、例えば、近位吻合部にて、遠位吻合部にて、いずれかの吻合部近傍に、例えば、吻合部の上流側に、吻合部から対向する血管外面上に沈着させることができる。好適な実施形態によれば、近傍部位は、血管アクセス構造体の部位から約2mmから20mm以内にあるものである。別の好適な実施形態においては、部位は、約21mmから40mm以内であり、更なる別の好適な実施形態においては、部位は、約41mmから60mm以内にある。別の好適な実施形態においては、部位は、約61mmから100mm以内にある。あるいは、近傍部位とは、沈着構成体が血管アクセス構造体の近位にて血管に対する所望の効果を示すことができる臨床医が判断する任意の他の近傍場所である。
【0161】
別の実施形態においては、本流動性構成体は、血管アクセス構造体にて、血管アクセス構造体近傍に、または、血管アクセス構造体付近にある外科的に露出された内腔外部位に直に供給される。この場合、供給は、部位の直接的な観察によって案内されかつ方向づけられる。また、この場合、供給は、上述したような特定工程を同時に用いることによって助長することができる。やはり、特定工程は、随意的なものである。
【0162】
(内腔外投与) 本発明の目的上、流動性構成体の投与は、処置が必要な部位にて、処置が必要な部位近傍に、または、処置が必要な部位付近に局在化される。本明細書で企図されているように、局在化された内腔外沈着は、以下のように達成することができる。
【0163】
流動性構成体は、針、カテーテルまたは他の適切な供給装置を使用して経皮的に供給する。あるいは、流動性構成体は、処置が必要な部位への供給を助長するために、誘導方法の使用と同時に経皮的に供給する。血管周囲腔に入ると、臨床医は、処置が必要な部位にて、処置が必要な部位近傍に、または、処置が必要な部位付近にて流動性構成体を内腔外部位上に沈着させる。経皮的供給は、随意的に、幾つかの方法のみを挙げると、通常の超音波法、X線透視法、内視鏡検査によって案内し、かつ導くことができる。
【0164】
別の実施形態においては、本流動性構成体は、処置が必要な部位近傍に、処置が必要な部位にて、または、処置が必要な部位付近にある外科的に露出された内腔外部位に局所的に供給される。この場合、供給は、処置が必要な部位の直接的な観察によって案内されかつ方向づけられる。また、この場合、供給は、上述したような他の案内方法を同時に用いることによって助長することができる。
【0165】
このような使用に適切な流動性構成体の例は、内容全体が引用により本明細書に組み入れられる、本明細書と共に同日付けで出願された同時係属出願PCT出願/米国特許第
号(代理人整理番号第ELV−008PC号としても知られている)および本明細書と、内容全体が引用により本明細書に組み入れられる同日付けで出願された同時係属出願PCT出願/米国特許第 号(代理人整理番号第ELV−009PC号としても知られている)で開示されている。
【0166】
(吻合封止剤) 特定の他の実施形態においては、本発明の流動性構成体は、更に、具体的には吻合封止剤または一般的には外科用封止剤の役目をすることができる。また、このような二重目的の実施形態においては、本構成体は、管状構造体の外面と接触したか、または、円弧でまたは外面上に適用されたか、または、円周部に適用されたときに2つまたはそれ以上の管状構造体の接合部を封止するか、または管状構造体内の空隙を封止するのに有効である。このような封止剤は、例えば、さらに血管組織を損傷して内腔内皮創傷の一因となる可能性がある縫合を不要とすることができる。また、このような封止剤は、吻合部付近での更なる安定性を実現することができ、その結果、一切の縫合修復が補強される。必要なのは、この二重目的構成体の封止剤タイプの特性は、細胞の所望の表現型および構成体の細胞を基本とする機能性を妨げたり、または、損ねたりしないということである。
【0167】
特定の封止剤の実施形態の目的上、本流動性構成体は、フィブリン網などであるがこれに限定されない、封止剤特性を有し、また、同時に、内皮または内皮的細胞集団を支持する必須特性を有する構成体をそれ自体が含む生体適合性マトリクスを含む。また、生体適合性マトリクス自体は、封止剤特性、ならびに、細胞集団の支持に必要とされる特性を有することができる。他の実施形態の場合、封止剤機能性は、少なくとも部分的に、細胞によって与えることができる。例えば、構成体に関連した細胞は、基質が封止剤特性を取得すると同時に、また、必須細胞機能性を示す/維持するように、基質を改質することができる物質を生成することが企図されている。特定の細胞は、この物質を自然に生成することができ、一方、他の細胞は、この物質を自然に生成するように加工することができる。
【実施例】
【0168】
(実施例1:ヒトAV瘻の研究)
この例は、瘻の成熟を高めかつ瘻成熟不全を防止するか、もしくは、瘻の成熟を高めるか、または、瘻成熟不全を防止するために血管内皮細胞を含む移植材料の好適な実施形態を試験および使用する実験用手順となる。標準的な外科的処置を用いて、動静脈瘻を所望の解剖学的部位に形成する。その後、可撓性平面形態の本移植材料を外科的に形成した瘻近傍の血管周囲腔内に配置するが、1つの例示的な処置の詳細を以下に定める。先に説明したように、本移植材料の設置および構成は、臨床的状況に合うように変えることができる。この研究においては、好適な例示的な可撓性平面形態を少なくとも図1もしくは図2Aに示す。
【0169】
以下に定める種々の実験および手順によって、十分な手引きが得られる。
【0170】
1.3ヵ月目に動静脈瘻成熟不全を評価する。
【0171】
この研究に関して、成熟不全とは、透析に向けた瘻の反復的カニューレ挿入を可能にし、かつ、瘻形成後12週以内に35mL/分から500mL/分の範囲内で、少なくとも350mL/分の好適な血流で十分な透析を得ることはできないことと定義する。標準的な臨床的実施法を採用することとする。
【0172】
2.5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目、その後の時点で超音波カラー血流ドップラー法によってアクセス流量および生体組織(%区域の狭窄)を評価する。
【0173】
超音波カラー血流ドップラー法によって測定された基線測定結果(外科手術後5日目)と外科手術後6ヵ月目との間の絶対アクセス流量の減少。基線(外科手術後5日目)と比較されたときの、6ヵ月目に超音波ドップラー法によって判断された狭窄の大きさ。標準的臨床的実施法を採用することとする。
【0174】
3.同種細胞生成物の使用に関連したHLA抗体反応を評価する。
【0175】
外科手術前のレベルと比較した、外科手術後5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目でのドナーHLA抗体の存在の定量免疫学的評価。標準的な臨床的実施法を採用することとする。
【0176】
具体的には、この研究には、動静脈瘻外科手術を受ける10名の尿毒症患者が含まれる。AV瘻外科手術を受けた患者は、一方(i)は吻合接合点に設置され、他方は吻合部の遠位にある近位静脈セグメント上に長手方向に設置される、2つの可撓性平面形態の1x4x0.3cm(1.2cm)実施形態の適用を受ける(外科手術直後)こととする。更に、5名の患者が、登録されることとするが、移植は受けないこととする。これらの5名の患者は、診断の基準との比較に使用されることとする。
【0177】
臨床的追跡検査を5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に行うこととする。超音波カラー血流ドップラー法を用いたアクセス流量測定は、外科手術後5日目に行って基線レベルを確立し、次いで、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に行うこととする。約350mL/分未満の絶対流量を示すか、または、前回測定結果から25%を上回る流量の減少を示すか、または、50%を上回る区域狭窄(ドップラー超音波法によって測定時)を示す患者は、血管撮影に回されることとする。血管形成などの矯正的臨床介入は、血管撮影によって判断される50%を上回る狭窄障害について許容されることとする。12週以内に成熟不全となる瘻を有する患者は、画像診断に回されることとする。血管形成および側面分岐部の血管を縛って血行を止めるかまたは瘻を補正する外科手術を含め、標準的な矯正的臨床介入は、12週以内に成熟不全となった瘻の機能的成熟を助長するために許容されることとする。各患者の研究参加期間は、6ヵ月であることとする。
【0178】
したがって、合計15名の患者がこの試験に登録されることとする。10名の患者は2つのインプラントを受け、標準的な診断の基準を受ける5名の患者は、比較に使用されることとする。血液透析用アクセスに向けてAV瘻が設置される患者も登録されることとする。
【0179】
本発明の移植材料で処置された10名の処置患者は、各々、以下の研究デザインに従って、標準的なAV瘻設置、投薬、処置、および移植を経験することとする。これらの患者のうち、初めの5名は、可撓性平面形態の2つのインプラント、吻合部位にある1つ、吻合部の遠位にある近位静脈セグメント上に長手方向に設置される1つを経験することとする。この第1のグループ内における最後の患者の処置後、1ヵ月の観察期間が、次のグループの前に発生することとする。初めの5名の患者からの1ヵ月間のデータの満足な検討後、最後の5名の患者が処置されることとする。
【0180】
5名の患者が、臨床試験に登録されることとし、かつ、標準的なAV瘻設置、投薬、処置を経験するが移植材料は経験しないこととする。これらの患者は、診断の基準との比較に使用されることとし、インプラント処置患者として類似の画像によるかつ免疫学的追跡検査を受けることとする。
【0181】
従来のAV瘻の外科的処置は、標準的な手術法に従って行われるものとする。瘻完了時に、ただし、移植前に、血液流出系静脈直径の測定が行われることとする。
【0182】
歯なし鉗子を使用して、平面形態の本移植材料を洗浄ボウルからそっと持ち上げることとする。本移植材料は、アクセス外科手術が完了し、全ての基線測定が行われた状態で瘻内の血流が確立された後に適用することとする。全ての出血は制御され、かつ、処置区域は、本移植材料設置前はできるだけ乾燥状態にあるようにすることとする。その区域は、インプラント設置後に潅注しないこととする。1つまたは2つのインプラントを使用して吻合部位を処置することとする。他方のインプラントを使用して、吻合部の遠位にある近位静脈セグメントを処置することとする。特定の実施形態においては、端側血管結合部の処置は、インプラント中央部が血管の交わる地点に来るまでインプラントの端部を吻合セグメントの下に通すことで行うことになる。その後、中心点が縫合線の真上にあるようにインプラントを維持しながら両端部を縫合線に巻き付ける。近位静脈セグメント(静脈動脈吻合部の遠位)は、吻合部位で始まる静脈の長さに沿って長手方向に本移植材料を設置することで処置することとする。本移植材料は、静脈円周部に完全に巻き付かなくてもよい。
【0183】
患者は、AV瘻外科手術後の病院での回復中に標準的な看護処置で追跡されることとする。生体反応は、綿密にモニタされることとする。併用薬を記録することとする。患者は、5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目の追跡来院の諸要件について指示を受けることとする。
【0184】
アクセス流量は、外科手術後5日目(基線)、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に記録することとする。また、狭窄の程度は、基線レベルを確立するために5日目に、やはり、比較のために2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に超音波ドップラー法によって判断することとする。外科手術後5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に抗HLA抗体レベルの判断に向けて血清が得られるように5ccの全血試料を取得することとする。
【0185】
アクセス流量は、外科手術後5日目に(±24時間)基線測定結果を確立するために、また、2週間目(±2日)、1ヵ月目(±4日)、3ヵ月目、6ヵ月目(±7日)に超音波カラー血流ドップラー法を用いて判断することとする。約350mL/分未満の絶対流量を示すか、または、前回測定結果から25%を上回る流量の減少を示すか、または、50%を上回る区域狭窄(ドップラー超音波法によって測定時)を示す患者は、血管撮影に回されることとする。血管形成などの矯正的臨床介入は、血管撮影によって判断される50%を上回る狭窄障害について許容されることとする。12週以内に成熟不全となる瘻を有する患者は、画像診断に回されることとする。血管形成および側面分岐部の血管を縛って血行を止めるかまたは瘻を補正する外科手術を含め、標準的な矯正的臨床介入は、12週以内に成熟不全となった瘻の機能的成熟を助長するために許容されることとする。当該介入は、次いで、本移植材料の移植を行って、補正瘻の成熟を高めてかつ補正瘻の機能性を維持するか、もしくは、補正瘻の成熟を高めるか、または、補正瘻の機能性を維持し、不全または不全となった瘻を救済することができる。
【0186】
(AV瘻研究の予想結果) 上述したように本発明の移植材料で処置された患者は、瘻成熟の増進および瘻の成熟不全の防止、もしくは瘻成熟の増進または瘻の成熟不全の防止の1つまたはそれ以上の兆候を示すことが予想される。具体的には、処置された患者は、個別に、例えば、透析に十分な流量までの、血流の向上(例えば、35mL/分から500mL/分の範囲内で、好ましくは少なくとも350mL/分の血流)および透析に向けて瘻に反復的にカニューレ挿入する能力の向上、もしくは、血流の向上(例えば、35mL/分から500mL/分の範囲内で、少なくとも350mL/分の血流)、または、透析に向けて瘻に反復的にカニューレ挿入する能力の向上を示すであろう。別の瘻成熟の兆候は、血管壁の厚みである。問題なく、成熟または成熟中の瘻は、血管壁の肉厚化を示す。これは、標準的臨床実行法に従った血管内超音波法(IVUS)を用いて判断することとする。簡単に言うと、IVUSは、血管壁の厚みを判断し、かつ、内部厚みと中間部厚みの線引きをするために使用されることとする。処置されたつまり対照瘻は、カニューレ挿入され、超音波探触子が、目標静脈および動脈の内側に設置されることとする。機能中の瘻の別の兆候は、適当な内腔直径である。本発明の移植材料は、適当な内腔直径の維持を可能にし、その結果、効果的な透析に適当な割合での妨げられない血流、即ち、透析装置の供給速度よりも少し大きい血流、または、少なくとも、透析中の再循環を防止するのに適当な血流が可能となることが予想される。内腔直径は、瘻形成後5日目に始まる瘻血管撮影を用いて、その後は外科手術後少なくともに3ヵ月目に連続的にモニタされることとする。外科手術後の内腔の狭窄は、標準的な超音波ドップラー法による手順を用いて血液流量と相関づけることとする。本移植材料は、本明細書で説明するように、透析に適切な割合より下に血流を妨げる狭窄を防止するかまたは遅延させることが予想される。不全となった瘻を特徴づける内腔のこの狭窄は、脈管内膜の狭窄および関連の肉厚化により生じる可能性があるか、または、一切の関連の肉厚化がなくても血管の収縮および縮小、もしくは収縮または縮小によって生じる可能性がある。実際の肉厚化の場合、血管形成による介入は現在、標準的な臨床手段であり、例えば、負の組織のリモデリングによる収縮および縮小もしくは収縮または縮小の場合、拡張が現在標準的な臨床的介入である。インプラントで処置された瘻には、血管形成または拡張が不要になることが予想される。
【0187】
グループとして、処置された患者は、対照と比較して、少なくとも、これらの前述した成熟の兆候の差の少なくとも1つの差の増加を示すと予想される。
【0188】
(実施例2:AV移植片の動物研究)
この例は、動物被験体における機能的AV移植片の形成を促進するために本発明の好適な実施形態を試験および使用する実験的手順となる。標準的な外科的処置を用いて、AV移植片を頚動脈と頚静脈との間に形成した。その後、移植材料を各外科的に形成したAV移植片吻合部近傍の血管周囲腔に配置したが、1つの例示的な処置の詳細を以下に定める。先述したように、移植材料の配置と校正を変更することができる。この研究においては、移植材料は、図4A、図4B、図4Cに示すように可撓性平面形態である。
【0189】
具体的には、この研究には、AV移植片外科手術を受ける26個のブタ被験体が含まれた。標準的な手術法に従って、従来のAV移植片の外科的処置を行った。移植片外科手術が完了して移植片内の血流が確立された後に、以下で説明するように、移植材料をAV移植片吻合部および周囲に適用した。
【0190】
AV移植片外科手術を受ける各被験体については、6mm内径のPTFE移植片を1つ、被験体の左総頚動脈と右外頚静脈との間に設置した。6−0prolene縫合糸を使用して移植片の各端部に斜端側吻合部を形成した。全ての被験体は、手術中に行うヘパランと外科手術後のアスピリンの毎日投与を受けた。
【0191】
被験体のうち10個は、外科手術当日に大動脈内皮細胞を含む移植材料を経験した。5個のこのようなインプラントを各被験体に適用した。2個のインプラントを2つの吻合部位の各々に巻き付けた。このような状況で、移植材料の中央部が血管と移植片が交わる地点に来るまで吻合セグメントの下に移植材料の端部を通した。その後、中心点が縫合線の真上にあるようにインプラント維持しながら両端を縫合線に巻き付けた。端部は、最小限の重なりで、移植材料を所定の位置に固定した。更に、単一のインプラントを各被験体の吻合部で始まる近位静脈セグメントの長さに沿って長手方向に設置した。インプラントは、血管の円周部に完全には巻き付かなかった。
【0192】
吻合部位には、移植材料を、例えば、図4Aおよび図4Bに示すように巻いた。更に、例えば、図4Cに示すように、吻合部位で始まる静脈の長さに沿って長手方向に移植材料を設置することで、近位静脈セグメント(静脈動脈吻合部の遠位)を処置した。
【0193】
10個の被験体は、例えば、図4A、図4B、図4Cに示すように、吻合部位に巻き付けられ、かつ、外科手術当日に移植片の近位静脈セグメント上に設置された、細胞なしの対照インプラントを経験した。更に、6個の被験体は、いずれのタイプのインプラントも経験しなかった。これらの6個の被験体を診断の基準との比較に使用した。体重に基づく総細胞負荷は、約2.5x10個の細胞/kgであった。この細胞負荷は、以下で説明するようなヒトの臨床的研究で使用されることになる推定細胞負荷の少なくとも約6倍から10倍であることが予想される。
【0194】
(外科的処置)15cmの中線の長手方向の頚部切り込みを行い、左総頚動脈が単離され、次いで、右外頚静脈が単離された。静脈の8cmセグメントを周囲の組織から除去して、静脈からの全ての支流を3−0絹縫合糸で結紮した。左頚動脈をクランプ留めして7mm直径の円周動脈切開を行った。6−0prolene縫合糸を使用して動脈と6mm内径PTFE移植片との間に斜めの端側吻合部を形成した。形成後、動脈クランプ部を除去して、移植片をヘパラン−生理食塩水からなる溶液で洗浄した。動脈から移植片に流れを記録した。その後、胸鎖乳突筋より下にトンネルを掘って移植片を進めて右外頚静脈内に入れた。
【0195】
7mm直径の円周静脈切開術を外頚静脈内に直に行った。その後、6−0prolene縫合糸を使用してPTFE移植片と右外頚静脈との間に斜めの端側吻合部を形成して動静脈移植片を完了した(移植片の長さは、15cmから25cmであり、設置時に記録した)。全てのクランプ部を除去して、移植片を通る血流を確認した。PTFE吻合部の遠位にある左頚動脈を3−0絹縫合糸で二重に縛った。
【0196】
吻合完了後、もつれ発生を防止するようにPTFE動静脈移植片を位置決めした。PTFE動静脈移植片を、頚動脈移植片吻合部のちょうど遠位にある23ゲージ蝶型針で経皮的にカニューレ挿入を行った。設置を確認するために、10cc注射器で血液を吸引してシステム内に入れた。その後、システムを10ccの生理食塩水で洗浄した。その後、CアームX線透視装置を静脈移植片吻合部および静脈血液流出路を視覚化することができるように研究対象動物の頚部の真上に設置した。連続X線透視法では、10ccから15ccのヨウ化造影剤(Renograffin、全強)を注入した。被験体使用前の血管撮影との比較のために、血管映画撮影を記録して保管した。
【0197】
血管撮影完了後、吻合部位を湿潤4インチx4インチのガーゼスポンジで包んだ。圧力を吻合部位上にて約5分間維持した後、ガーゼスポンジを取り除いて吻合部位を検査した。血液の浸出によって証明されるように、ホメオスタシスがまだ達成されていなかった場合、部位をもう5分間包んだ。部位からの出血が激しかった場合には外科医の裁量で更なる縫合を施した。ホメオスタシスが達成されると、頚部創傷部を無菌生理食塩水で満たして、血流探触子による分析を遠位静脈血液流出路にて6mmTransonic血流探触子を使用して行った。必要な場合には生理食塩水を除去し、吻合部をできるだけ乾燥状態にして大動脈内皮細胞を含む移植材料または対照インプラントで処置した。種々の部位は、全ての出血が制御され、移植片内の血流が確認されてその区域ができるだけ乾燥状態にされるまでいずれのタイプの移植材料でも処置しなかった。完全であったとき、創傷部を層状に閉じて、動物を麻酔から自然回復させた。
【0198】
外科手術前に、100U/kg急速静注および35U/kg/hr持続静注としてヘパリンを投与し、外科手術終了まで維持した。ACT≧200秒を維持するために、必要に応じて、更なる単回投与(100U/kg)を行った。
【0199】
(移植片開存率) AV移植片開存率は、外科手術直後、外科手術後3日から7日、その後は週1回、超音波カラー血流ドップラー法およびTrasonic血流探触子(Trasonic Systems, Inc.ニューヨーク州イサカ)を用いてアクセス流量測定によって確認した。移植片を血流について綿密にモニタした。
【0200】
(病理処置) 動物被験体をペントバルビタールナトリウム(65mg/kg、IV)を使用して麻酔した。PTFE移植片を露出させて、PTFE移植片および血管吻合部のデジタル写真撮影を行った。その後、動脈移植片吻合部のちょうど遠位にて、23ゲージ蝶型針でPTFE動静脈移植片に経皮的にカニューレ挿入した。設置を確認するために、10cc注射器で血液を吸引してシステム内に入れた。その後、システムを10ccの生理食塩水で洗浄した。その後、CアームX線透視装置を静脈移植片吻合部および静脈血液流出路を視覚化することができるように研究対象動物の頚部の真上に設置した。連続X線透視法では、10ccから15ccのヨウ化造影剤(Renograffin、全強)を注入した。PTFE移植片に対して0°および90°の角度で血管映画撮影を記録した。移植片開存率および静脈血液流出路の狭窄の程度は、設置後の血管撮影との対比較で検死血管撮影の読み取り盲検化によって判断した。血管撮影内で観察された狭窄の程度によって0から5の尺度で血管撮影を格づけした。採用した格づけ法は、以下の通りであった。0=0%狭窄、1=20%狭窄、2=40%狭窄、3=60%狭窄、4=80%狭窄、5=100%狭窄であった。本発明の移植材料で処置された移植片は、血管撮影の検査で、対照と比較して狭窄の割合減少を示すことが予想された。
【0201】
(組織学) 動物被験体(5個の細胞移植インプラント被験体、5個の対照移植被験体、3個のインプラントなし被験体)の半分は、外科手術の3日後に安楽死させた。動物被験体(5個の細胞移植インプラント被験体、5個の対照移植被験体、3個のインプラントなし被験体)の残りは、外科手術の1ヵ月後に安楽死させた。
【0202】
全ての吻合静脈部位および近位静脈部位の全ておよび所属リンパ節を含む周囲組織を含め、投与部位のマクロ組織検査と定義される、有限の検死を全ての被験体に行った。外科手術の1ヵ月後に安楽死させた全ての被験体について、脳、肺、腎臓、肝臓、心臓、脾臓を含め、主要器官からの組織を回収して保存した。器官は、体外面のマクロ組織検査または投与部位および周囲組織のミクロ組織検査から異常な発見事項が生じた場合に限って分析を行うことにした。本研究に登録された動物のいずれにおいても、更なる主要器官の検査の正当な理由となる異常な発見事項は生じなかった。
【0203】
5cmセグメント、静脈動脈吻合部の各々を含め、全てのAV移植片吻合部位および周囲組織をトリム処理して、10%ホルマリン(または相当品)で固定し、グリコールメタクリレート(または相当品)に包埋する。C字形ステンレス鋼製ナイフ(または相当品)で切った約3μm厚切片を使用して、少なくとも3つの場所、即ち、静脈移植片吻合部、移植片動脈吻合部、静脈血液流出路から切片を形成した。静脈移植片吻合部から横方向に3つの切片を作った。静脈血液流出路から(したがって、1.5cmの血液流出系静脈を覆う)5つの切片を作った。1mm間隔で移植片動脈吻合部から3つの切片を作った。これらの切片をゼラチン被覆(または相当品)ガラススライド上に載置して、ヘマトキシリンおよびエオシンまたはVerhoeffのエラスチン着色剤で着色した。
【0204】
末梢静脈および内腔の炎症は、急性的に(3日目の被験体)および慢性的に(1ヵ月目の被験体)に判断することとする。急性炎症は、顆粒球、主として好中球が目立ち、一方、慢性炎症は、マクロファージおよびリンパ球が目立つ。更に、切片は、以下の特定のマーカー、即ち、白血球の特定に抗CD45、T細胞の特定に抗CD3、B細胞の特定にCD79a、単球/マクロファージの特定にMAC387で着色することができる。
【0205】
着色スライドは、平滑筋細胞および内皮細胞の存在について、かつ、動脈吻合または静脈吻合と人口移植片材料との間の整合の徴候について検査しかつ記録することとする。移植片材料、内膜/仮性内膜、内腔近くの培地の内部分、外膜近くの培地の外部分、静脈移植片吻合部、移植片動脈吻合部、静脈血液流出路の各々の外膜を含め、単離組織の全ての切片を評価して記録することとする。組織区画、例えば、内膜、中膜、外膜の各々のサイズをミクロン単位で測定することとする。各切片を以下の判定基準の各々の存在および程度、もしくは存在または程度について評価するものとする。好中球、リンパ球、マクロファージ、好酸球、巨細胞、形質細胞の存在および程度を含め(ただしこれらに限定されない)、炎症の徴候を評価することとする。移植片切片は、線維芽細胞、新血管形成、石灰沈着、出血、鬱血、フィブリン、移植片繊維症、および移植片湿潤の存在について評価することとする。更に、組織切片は、組織部分の変性、エラスチン損失および欠如、もしくは変性、エラスチン損失または欠如、組織の平滑筋筋線維空胞形成および石灰沈着、もしくは平滑筋筋線維空胞形成または石灰沈着を含め(ただしこれらに限定されない)、変性の徴候について評価することとする。また、組織切片は、新血管形成、平滑筋筋線維、線維芽細胞、繊維症の存在を含め(ただしこれらに限定されない)、内皮細胞増殖、内膜下細胞増殖について評価することとする。また、測定された組織切片の各々は、組織壊死および異物の存在について評価することとする。0から4(0=重大な変化なし、1=最小、2=軽、3=中、4=重)の尺度で各変数について得点を割り当てることとする。
【0206】
1ヵ月目の動物被験体のみからの動静脈移植片吻合部位の更なる切片をガラススライド上に載置して着色して(Verhoeffエラスチン)形態測定学的分析を行うこととする。ビデオ顕微鏡、特注ソフトウェアでコンピュータによるデジタル面積測定を用いて、各切片について内腔体積、内側体積、内膜体積、血管総体積の測定を行うこととする。各切片について内膜過形成の程度を判断することとする。内膜過形成を定量化する1つの方法は、血管壁総面積[(内膜、mm)/(内膜+中膜、mm)]によって内膜面積を正規化することによるか、または、残留内腔[(内腔、mm)/(内腔+内膜、mm)]を判断することによるものである。
【0207】
(AV移植片動物被験体の結果) 上述したような本発明の移植材料で処置された被験体は、臨床的に機能的なAV移植片の形成の1つまたはそれ以上の徴候を示した。本明細書で開示する材料および方法に従って処置されたAV移植片は、透析を可能にするのに十分な血液流量を支持した。効果的な透析には、透析装置の供給流量よりも少し大きい血流、または、少なくとも透析中の再循環を防止するのに適当な血液流量が必要である。また、処置された被験体は、個別に、PTFE移植片からの吻合静脈または動脈の分離として定義される裂開の発生の低減、および、プロテーゼブリッジの内腔へ、またはプロテーゼブリッジの内腔内での平滑筋細胞または内皮細胞の増殖および移動、もしくは増殖または移動と定義されるプロテーゼブリッジの整合の向上を示した。静脈血液流出部位のAV移植片からの血流は、移植片部位内に入る血流に匹敵するものであった。本明細書で使用されるとき、「匹敵する」とは、臨床的目的上実質的に類似であることを意味する。例えば、所望の血液流量は、約150mL/分から500mL/分、好ましくは約300mL/分から500mL/分、更に好ましくは約350mL/分から400mL/分である。
【0208】
更に、プロテーゼブリッジ内へまたはプロテーゼブリッジ内での平滑筋細胞および内皮細胞、もしくは平滑筋細胞または内皮細胞の移動は、整合の徴候として測定されることとする。本発明の移植材料は、平滑筋細胞増殖および内皮細胞増殖、ならびに、プロテーゼブリッジ内へのその両方の移動を促進することが企図されている。PTFE移植片からの3つの5マイクロメートル切片を取得してSMCアクチンに着色することができ、かつ、SMCおよび第VIII因子(フォン・ヴィレブランド因子)およびPECAM−1、もしくはSMCおよび第VIII因子(フォン・ヴィレブランド因子)またはPECAM−1を特定して内皮細胞を特定するために評価することとする。内皮細胞は、顕微鏡法/形態計測および特注ソフトウェアを用いて定量化することとする。
【0209】
機能しているAV移植片の更なる別の徴候は、適当な内腔直径である。本発明のインプラントは、血管狭窄を低減することによって効果的な透析に適切な妨げられない血流を可能にすることで適当な内腔直径の維持を可能にするものであった、即ち、効果的な透析には、透析装置の供給量よりも少し大きい血流、または、透析中の再循環を防止するのに適当な血流が少なくとも必要である。動静脈移植片形成日におよび30日間の被験体使用の直前に、動静脈移植片吻合部の血管撮影を用いて内腔直径および%による狭窄をモニタした。標準的な超音波ドップラー法による手順を用いて外科手術後の内腔の狭窄を血液流量と相関づけた。
【0210】
本発明の移植材料によって、対照インプラントと比較すると、処置された吻合部の狭窄の存在および程度が低減された。本研究で処置された各被験体について血管撮影によって判断した%による狭窄を表1で以下に示す。平均して、本移植材料によって、狭窄は、95%、つまり、細胞を含むインプラントを経験した動物について対照動物における46%から2.5%に低減された([46−2.5]/46x100)。結果は、組織学的に確認することとする。これらの研究から、本発明によって、血流を透析に適切な割合未満に低減する狭窄が防止または遅延され、その結果、AV移植片吻合部の機能性が促進されたことがわかっている。
【0211】
【表1】

(実施例3:ヒトAV移植片の臨床研究)
この例は、本発明を試験かつ使用してヒト臨床試験被験体における機能的AV移植片の成形を促進する実験的な手順となる。標準的な外科的処置を用いて、AV移植片吻合部を所望の解剖学的部位に形成し、かつ、ePTFEプロテーゼブリッジを動脈吻合部と静脈吻合部との間に設置する。その後、各外科的に形成されたAV移植片吻合部近傍の血管周囲腔内に移植材料を配置する。1つの例示的な処置の詳細を以下に定める。先に説明したように、移植材料の設置および構成は、通常の方法で熟練施術者が変更することができる。
【0212】
具体的には、本研究には、AV移植片外科手術を受けるヒト被験体が含まれる。従来のAV移植片の外科的処置を標準的手術法に従って行うこととする。移植片外科手術が完了し、かつ、移植片内の血流が確立された後に、以下で説明するようにAV移植片吻合部および周囲に本発明の移植材料を適用することとする。
【0213】
ヒト臨床被験体は、外科手術日に本移植材料の1つまたはそれ以上の部分を経験することとする。2つまたは3つの当該部分を各被験体に適用することとする。移植材料の一部を各吻合部位に巻き付ける。その後、巻き付け部の中央部が血管と移植片が交わる地点に来るまで吻合セグメントの下に一端を通す。その後、インプラントの中心部が縫合線の真上にあるように維持しながら、両端部を縫合線に巻き付ける。端部は、重なり合うと材料を所定の位置に固定することができる。各試験体の吻合部に始まる静脈の長さに沿って長手方向に、動静脈移植片の近位静脈セグメント上に移植材料の更なる一部を設置することとする。本移植材料は、静脈円周部に完全に巻き付かなくてもよい。
【0214】
例えば、図4A、図4B、図4Cに示すように、または図5に示すように、吻合部位を好適なインプラントで処置することとする。更に、特定の患者においては、吻合部位で始まる静脈の長さに沿って長手方向に好適なインプラントを設置することで近位静脈セグメント(静脈動脈吻合部の遠位)を処置する。体重に基づく総細胞負荷は、約2.0x10個の細胞/kg体重から約6.0x10個の細胞/kg体重となることが予想される。
【0215】
臨床的追跡検査を5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に行うこととする。超音波カラー血流ドップラー法を用いたアクセス流量測定は、基線レベルを確立するために外科手術後5日目に行って、次いで、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に必要であることとする。約350mL/分未満の絶対流量か、または、前回測定結果から25%を上回る流量の減少か、または、50%を上回る区域狭窄(ドップラー超音波法によって測定時)を示す患者は、血管撮影に回されることとする。血管形成などの矯正的臨床介入は、血管撮影によって判断される50%を上回る狭窄障害について許容されることとする。
【0216】
移植片、ならびに、動脈吻合部位および静脈吻合部位の血管造影検査を基線にてかつ3ヵ月目に行うこととする。各領域について内腔直径を計算することとし、ピーク心臓収縮速度を測定することとする。
【0217】
(ヒトAV移植片臨床研究の予想結果)上述したように本発明の移植材料で処置された患者は、臨床的に機能的なAV移植片の形成の1つまたはそれ以上の徴候を示すことが予想される。具体的には、処置された被験体は、個別に、例えば、透析に十分な流量までの、血流の向上(例えば、35mL/分から500mL/分の範囲内で、好ましくは少なくとも350mL/分の血流)、PTFE移植片からの吻合静脈または動脈の分離として定義される裂開の発生の低減、漿液性移植片周囲の貯留および仮性静脈瘤の発生の低減およびプロテーゼブリッジの内腔へまたはプロテーゼブリッジの内腔内での平滑筋細胞または内皮細胞の増殖および移動、もしくは増殖または移動と定義されるプロテーゼブリッジの整合の向上、もしくは、例えば、透析に十分な流量までの、血流の向上(例えば、35mL/分から500mL/分の範囲内で、好ましくは少なくとも350mL/分の血流)、PTFE移植片からの吻合静脈または動脈の分離として定義される裂開の発生の低減、漿液性移植片周囲の貯留および仮性静脈瘤の発生の低減、または、プロテーゼブリッジの内腔へまたはプロテーゼブリッジの内腔内での平滑筋細胞または内皮細胞の増殖および移動、もしくは増殖または移動と定義されるプロテーゼブリッジの整合の向上を示すであろう。静脈血液流出部位のAV移植片からの血流は、移植片部位内に入る血流に匹敵するものであろう。「匹敵する」とは、臨床的目的上実質的に類似であることを意味する。例えば、所望の血液流量は、約150mL/分から500mL/分、好ましくは約300mL/分から500mL/分、更に好ましくは約350mL/分から400mL/分である。
【0218】
更に、プロテーゼブリッジ内へまたはプロテーゼブリッジ内での平滑筋細胞および内皮細胞、もしくは平滑筋細胞または内皮細胞の移動は、整合の徴候として血管内超音波法によって測定されることとする。本明細書で説明するように使用されたときの本発明の移植材料は、平滑筋増殖および内皮細胞増殖、もしくは平滑筋増殖または内皮細胞増殖、ならびに、プロテーゼブリッジ内へのその両方の移動を促進することが予想される。
【0219】
機能しているAV移植片の更なる別の徴候は、適当な内腔直径である。本発明のインプラントは、適当な内腔直径の維持を可能し、その結果、効果的な透析に適切な割合での妨げられない血流が可能になることが予想される。即ち、効果的な透析には、透析装置の供給量よりも少し大きい血流、または、透析中の再循環を防止するのに適当な血流が少なくとも必要である。内腔直径は、基線(動静脈移植片形成の約5日後)、その後は、外科手術後の少なくとも3ヵ月後に、動静脈移植片吻合部の血管撮影を用いてモニタすることとする。外科手術後の内腔の狭窄は、標準的な超音波ドップラー法による手順を用いて血液流量と相関づけることとする。本明細書で説明するように使用されたときの本発明によって、本明細書で説明するような透析に適切な割合の血流を妨げる狭窄が防止または遅延されることが予想される。
【0220】
AV移植片の場合、本発明の移植材料によって、裂開の発生が防止または低減されることが予想される。
【0221】
グループとして、処置された被験体は、対照と比較すると、少なくとも、これらの上述した機能性の徴候の少なくとも1つにおける差の増加を示すことが予想される。
(実施例4:末梢移植片の研究)
この例は、本発明の好適な実施形態を試験および使用して被験体内の機能的な末梢移植片の形成を促進する実験的な手順となる。標準的な外科的処置を用いて、末梢移植片吻合部を所望の解剖学的部位に形成し、かつ、ePTFEプロテーゼブリッジを吻合部間に設置する。その後、移植材料を各外科的に形成した末梢移植片吻合部近傍の血管周囲腔内に配置するが、1つの例示的な処置の詳細を以下に定める。先に説明したように、移植材料の設置および構成は、変更することができる。
【0222】
具体的には、本研究には、末梢移植片外科手術を受ける被験体が含まれる。従来の末梢移植片の外科的処置を標準的手術法に従って行うこととする。移植片外科手術が完了し、かつ、移植片内の血流が確立された後に、以下で説明するように末梢移植片吻合部および周囲に移植材料を適用することとする。
【0223】
被験体は、外科手術日に1つまたはそれ以上の好適な移植材料を経験することとする。2つまたは3つの当該インプラントを各被験体に適用することとする。1つの当該インプラントを各吻合部位に巻き付ける。その後、巻き付け部の中央部が血管と移植片が交わる地点に来るまで吻合セグメントの下に移植材料の一端を通す。その後、インプラントの中心部が縫合線の真上にあるように維持しながら、端部を縫合線に巻き付ける。端部は、互いに重なり合うと、材料を所定の位置に固定することができる。各試験体の吻合部に始まる静脈の長さに沿って長手方向に、末梢移植片の近位静脈セグメント上に更なる単一のインプラントを設置することとする。移植材料は、静脈円周部に完全に巻き付かなくてもよい。
【0224】
例えば、図4A、図4B、図4Cに示すように、または図5に示すように、吻合部位を好適なインプラントで巻くこととする。更に、吻合部位で始まる静脈の長さに沿って長手方向に移植材料を設置することで近位静脈セグメント(吻合部の遠位)を処置する。体重に基づく総細胞負荷は、約2.0x10個の細胞/kg体重から約6.0x10個の細胞/kg体重であることとする。
【0225】
臨床的追跡検査を5日目、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に行うこととする。超音波カラー血流ドップラー法を用いた流量測定は、基線レベルを確立するために外科手術後5日目に行って、次いで、2週間目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に必要であることとする。約350mL/分未満の絶対流量か、または、前回測定結果から25%を上回る流量の減少か、または、50%を上回る区域狭窄(ドップラー超音波法によって測定時)を示す患者は、血管撮影に回されることとする。血管形成などの矯正的臨床介入は、血管撮影によって判断される50%を上回る狭窄障害について許容されることとする。
【0226】
移植片、ならびに、吻合部位の血管造影検査を行うこととする。各領域について内腔直径を計算することとし、ピーク心臓貯留速度を測定することとする。
【0227】
(末梢移植片被験体の予想結果) 上述したような本発明の移植材料で処置された被験体は、臨床的に機能的な末梢移植片の形成の1つまたはそれ以上の徴候を示すことが予想される。本明細書で開示する材料および方法に従って処置された末梢移植片は、臨床的に問題のない血液循環を回復または維持するのに十分な血流を支持することが予想される。また、処置された被験体は例えば、PTFE移植片からの吻合静脈の分離として定義される裂開の発生の低減、および、プロテーゼブリッジの内腔へまたはプロテーゼブリッジの内腔内での平滑筋細胞または内皮細胞の増殖および移動、もしくは増殖または移動と定義されるプロテーゼブリッジの整合の向上、もしくは、PTFE移植片からの吻合静脈の分離として定義される裂開の発生の低減、または、プロテーゼブリッジの内腔へまたはプロテーゼブリッジの内腔内での平滑筋細胞または内皮細胞の増殖および移動、もしくは増殖または移動と定義されるプロテーゼブリッジの整合の向上を個別に示すであろう。流出部位の末梢移植片からの血流は、移植片部位内に入る血流に匹敵するであろう。本明細書で使用されるとき、「匹敵する」とは、臨床的目的上、実質的に類似であることを意味する。例えば、所望の血液流量は、約150mL/分から500mL/分、好ましくは約300mL/分から500mL/分、更に好ましくは約350mL/分から400mL/分である。
【0228】
更に、プロテーゼブリッジ内へまたはプロテーゼブリッジ内での平滑筋細胞および内皮細胞、もしくは平滑筋細胞または内皮細胞の移動は、整合の徴候として測定されることとする。本発明の移植材料は、平滑筋細胞増殖および内皮細胞増殖、もしくは平滑筋細胞増殖または内皮細胞増殖、ならびに、プロテーゼブリッジ内へのその両方の移動を促進することが予想される。
【0229】
機能している末梢移植片の更なる別の徴候は、適当な内腔直径である。本発明のインプラントは、適当な内腔直径の維持を可能し、その結果、末梢循環を維持するのに十分な割合での妨げられない血流が可能になることが予想される。内腔直径は、基線にて、および、移植片形成後の少なくとも3ヵ月後に、末梢移植片の血管撮影を用いてモニタすることとする。外科手術後の内腔の狭窄は、標準的な超音波ドップラー法による手順を用いて血液流量と相関づけることとする。本発明の移植材料によって、本明細書で説明するような末梢循環に適切な割合未満に血流を妨げる狭窄が防止または遅延されることが予想される。
【0230】
末梢バイパス移植片の場合、本発明の移植材料で処置されれば、結果的に、臨床的に問題のない循環を可能にするか、または、正常な割合に近似する血液流量となることが予想される。移植片を出入りする血流は、匹敵するものであろう。匹敵するとは、臨床的目的上、実質的に類似であることを意味する。例えば、所望の血液流量は、約150mL/分から500mL/分、好ましくは約300mL/分から500mL/分、更に好ましくは約350mL/分から400mL/分である。更に、処置は、平滑筋細胞および内皮細胞、もしくは平滑筋細胞または内皮細胞の増殖およびプロテーゼ移植片または天然移植片内への移動を促進することが予想される。
【0231】
末梢バイパス移植片の場合、本発明の移植材料は、裂開の発生を防止または低減することが予想される。
【0232】
グループとして、処置された被験体は、対照と比較して、少なくとも、これらの前述した機能性の兆候の差の少なくとも1つの増加を示すと予想される。
【0233】
本発明は、その主旨または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。したがって、本発明の種々の実施形態は、例示的なものであり、かつ、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の範囲は、先の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲の意味および均等性の範囲に該当する全ての変更は、その中に包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56202(P2013−56202A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−256574(P2012−256574)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2007−545545(P2007−545545)の分割
【原出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(507188913)パーバシス セラピューティクス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】