説明

血管内皮成長因子に対するヒト化抗体類

ヒト抗原類に対するインシリコおよびインビボにおける高アフィニティと特異性を有する抗体類を設計し選択する方法類が提供される。ある特定の態様において、血管内皮増殖因子(VEGF)に対して高いアフィニティと特異性を有するヒト化または完全ヒト抗体類を設計し選択する方法類が提供される。特に、高いアフィニティでヒトVEGFに結合する能力を有するヒト化またはヒト抗VEGFモノクローナル抗体類が提供され、インビトロでVEGF誘発内皮細胞増殖を阻害しかつインビボでVEGF誘発新脈管形成を阻害する。これらの抗体類およびそれらの誘導体を、癌、AMD、糖尿病網膜症、および病理的新脈管形成に由来する他の疾患類のような疾患の診断、予防および治療のような広い範囲の適用で使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互引用)
本出願は、標題“Generation and Selection of Protein Library in Silico(タンパク質ライブラリのインシリコ産生と選択)”の2003年5月20日出願米国特許出願第10/443,134の係属出願であり、これは、標題“Structure−Based Selection And Affinity Maturation of Antibody Library(構造に基づく抗体ライブラリの選択およびアフィニティ成熟)”の2002年5月20日出願米国特許出願第10/153,159の係属出願でありかつ標題“Generation Affinity Maturation of Antibody Library in Silico(抗体ライブラリのインシリコ産生アフィニティ成熟)”の2002年5月20日出願米国特許出願第10/153,176の係属出願であり、それら両者ともに、標題“Structure−absed construction of human antibody library(構造に基づくヒト抗体ライブラリの構築)”の2002年4月17日出願米国特許出願第10/125,687号の係属出願であり、これは、標題“Structure−based construction of human antibody library(構造に基づくヒト抗体ライブラリの構築)”の2001年4月17日出願米国仮特許出願第60/284,407号の利点を請求している。これらの出願類は、本文で参考として引用している。
【0002】
本発明は、ヒト抗原類に対する抗体類およびこれらの標的類に対して高アフィニティの抗体類を産生する方法類を提供する。さらに詳細には、本発明は、血管内皮成長因子(VEGF)に対するヒト化またはヒト抗体類およびこのような抗VEGF抗体類を産生する方法類を提供している。さらに、本発明は、これらの抗体類およびその誘導体類を用いてインビトロで新脈管形成を阻害するため,および,癌、慢性関節リウマチ、虚血性再潅流関連脳浮腫および傷害、皮質虚血、卵巣過形成および血管過形成、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および他の眼科新脈管形成疾患類のような異常新脈管形成に関連した疾患の診断または治療のための組成物類、キット類および方法類を提供する。
【背景技術】
【0003】
新脈管形成は、多くの生理および病理過程に関与している。新脈管形成は多くの段階から構成され、それらは、最終的に内皮細胞の増殖と分化、および管および空洞の形成(新脈管形成)をもたらす。新脈管形成を促進する因子には、VEGF,aFGF,bFGF,TGF−α、TGF−β、HGF、TNF−α、アンギオゲニン、IL−8等が含まれ、一方、新脈管形成を阻害する因子には、トロンボスポンジン(Good et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6624−6628(1990))、プロラクチンのN末端断片(Clapp et al. Endocrinology,133:1292−1299(1993))、プラスミノーゲンのクリングル5ドメイン(Cao et al.,J.Biol.Chem.,271:29461−29467(1996))、アンギオスタチン(O‘Reilly et al.,Cell,79:315−328(1994))、およびエンドスタチン(O‘Reilly et al.Cell,88:277−285(1996))が含まれる。
【0004】
血管内皮細胞成長因子(VEGF)は、血管内皮細胞上においてそのレセプター類とともにそれらの新脈管形成を促進するように特異的に作用する成長因子である。新脈管形成は、既存の血管および/または循環内皮幹細胞からの新しい脈管構造発生に重要な役割を果たすことが、公知となっている(Asahara et al.,Science,275(5302):964−967,1997;Springer et al.,Mol.Cell,2(5):549−558、1998;Folkman and Shing,J.Biol.Chem.,267:10931−10934,1992)。新脈管形成はまた、胚形成、創傷治癒および月経のような多くの生理プロセスにおいて必須の役割を果たしている。さらに重要なことには、新脈管形成がさらに、腫瘍形成、転移、糖尿病性網膜症等の病理状態にも関係している。固形腫瘍の成長には、酸素および栄養物供給のために腫瘍血管新生が必要であり、腫瘍細胞の転移が、腫瘍血管新生の結果としての血管を介して起こることが公知である。VEGFは、腫瘍のためのこの血管新生において中枢的新脈管形成因子であると考えられている。したがって、腫瘍の成長と転移が、VEGFの血管新生活性を中和するある物質類によって阻害できると予測される。最近の研究(Burrows and Thorpe,Pharmacol.Ther.,64:155−174,1994;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:8996−9000,1994)では、固形腫瘍の血管新生を標的とするこのような戦略を用いている。腫瘍細胞自体よりもむしろ腫瘍血管を標的にすることには、耐性腫瘍細胞の出現につながる可能性がないことおよび標的細胞に容易にアクセスできるという点において、ある利点を有している。さらに、多くの腫瘍細胞が酸素と栄養を単一血管に頼っているので、血管の破壊により抗腫瘍効果が増幅されることになる。
【0005】
糖尿病のおよそ半分において、糖尿病性網膜症が糖尿病合併症のひとつとして出現する。毛細血管形成が、酸素不足により糖尿病性網膜症において促進されると考えられている。これらの毛細血管は、遅かれ早かれ、破裂出血し、瘢痕組織を形成し、網膜はく離につながる、加齢関連黄斑変性症は、網膜における病理的血管新生に関与することが明らかになったもうひとつの眼科疾患である。したがって、血管新生を阻害することで網膜症の発症を防止できることが予測される。Millerらは、サルを用いた実験に基づき、VEGFが栄養性網膜症の出現に非常に緊密に関連していると報告した(Miller et al.:Am.J.Pathol.145,574−584(1994))。この理由のため、VEGFの血管新生活性を中和する物質が糖尿病性網膜症およびAMDの予防または治療に有用であると考えられている(Lopez et al.Invest.Ophtalmo.Vis.Sci.37:855−868(1996))。
【0006】
病理状態における新脈管形成の一次刺激としてVEGFが認識されたことで、VEGF活性をブロックするためのさまざまな試みがなされることになった。阻害性抗VEGFレセプター抗体類、可溶性レセプター構築体類、アンチセンス戦略、VEGFに対するRNAアプタマー類および低分子量VEGFレセプターチロシンキナーゼ(RTK)阻害剤類は、すべて、VEGFシグナル伝達を妨害する用途で提案されている(Siemeister et al.,Cancer Metastasis Rev.,17(2):241−248.,1998)。実際、VEGFに対するモノクローナル抗体類は、マウスにおいてヒト腫瘍移植片増殖ならびに腹水形成を阻害することが明らかとなっている(Kim et al.,Growth Factors 7:53(1992);Nature 362:841−844(1993);Asano et al.,Hybridoma,17:185−90(1998);Mesiano et al.,Am.J.Pathol.,153(4):1249−1256,(1998);Luo et al.,Cancer Res.,58(12):2594−2600,(1998);Cancer Res.,58(12):2652−2660,(1998);Borgstrom et al.,Cancer Res.56:4032−4039(1996);Borgstrom et al.,Prostate,35(1):1−10,(1998))。さらに、抗新脈管形成分子類、抗VEGF抗体、およびVEGF拮抗剤類を用いた同様の戦略が、AMDおよび糖尿病性網膜症の実験的治療に利用されてきた(Adamis et al.Arch.Ophthalmol.114:66−71(1996))。治療適用のため、抗体類を通常工学的に作製し、もしそれらが元来マウス由来であるならばヒト化によって繰り返し投与して毒性を低下させ、さらに、アフィニティ成熟化により標的分子との結合アフィニティのような他の性質も改善させる(Winter and Milstein,Nature,349:293−299,(1991);Baca et al.,J.Biol.Chem.,272(16):10678−84,(1997);Presta,et al.,Cancer Res.,57:4593−4599,(1997);Chen et al.(1999)J.Mol.Biol.293:865−881;Ryan et al.(1999)Toxicologic Pathology,27(1):78−86)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの研究では固形腫瘍増殖におけるVEGFの重要性、腫瘍治療における標的としてのその可能性が過小評価されてきたが、VEGF誘発新脈管形成を阻害する他の物質類を同定識別することは、治療オプションの数を増やす点で有益であろう。VEGFがそのレセプターに結合するのを特異的に阻害する治療剤の開発は、より効果的に新脈管形成を標的にする重要な代替品となるであろうし、治療的に見て潜在的に改善された利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所望の構造と機能を有するタンパク質類を工学的に作製するため、特に治療的見地から標的抗原に対する高い結合アフィニティ、インビトロおよびインビボで異常細胞増殖を効果的に阻害する能力および最小の毒性または副作用を含む望ましい性質を有する抗体類を工学的に作製するための革新的方法を提供する。
【0009】
本発明は、第一に、インシリコおよびインビトロにおいてヒト抗原に対する高いアフィニティと特異性を有する抗体類を設計しかつ選択する方法類を提供する。いくつかの特別の態様において、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する高いアフィニティと特異性を有するヒト化または完全にヒトの抗体類を設計しかつ選択するための方法類が提供される。
【0010】
本発明は、さらに、VEGFに対するモノクローナル抗体類を提供する。特に、高いアフィニティでヒトVEGFに結合できるヒト化またはヒト抗VEGFモノクローナル抗体類が提供される。好適には、これらの抗体類は、インビトロで内皮細胞のVEGF誘発増殖を阻害しインビボでVEGF誘発新脈管形成を阻害できる。これらの抗体類およびそれらの誘導体は、癌、AMD、糖尿病性網膜症および病理的新脈管形成に由来する他の疾患のような疾患の診断、予防、および治療のようなさまざまな広い適用において使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1態様において、scFv,Fabまたは他の抗体形状で温度約4℃、25℃、37℃または42℃で測定した解離定数Kdが0.2nMに等しいかまたはそれよりも小さいか、適宜0.1nMよりも小さいか、適宜0.08nMよりも小さいか、適宜0.05nMよりも小さいか、0.01nMよりも小さいか、または0.005nMよりも小さいヒトVEGFに特異的に結合するモノクローナル抗体が提供される。
【0012】
好適には、前記抗VEGF抗体のKdは、もしscFvの形状でありかつ温度35−37℃で測定したならば、1nM未満で、適宜0.8nM未満で、適宜0.5nM未満で、適宜0.2nM未満で、適宜0.1nM未満で、適宜0.08nM未満で、適宜0.05nM未満で、適宜0.01nM未満で、または適宜0.005nM未満である。
【0013】
また好適には、前記抗VEGF抗体のKdは、もしFabの形状でありかつ温度35−37℃で測定したならば、0.5nM未満で、適宜0.2nM未満で、適宜0.1nM未満で、適宜0.08nM未満で、適宜0.05nM未満で、適宜0.01nM未満で、または適宜0.005nM未満である。
【0014】
インビトロにおけるVEGF誘発内皮細胞増殖阻害において、前記抗VEGF抗体は、scFv,Fabまたは他の抗体形状において、好適には、細胞増殖50%阻害の有効用量ED50が、10nMに等しいかそれよりも小さく、適宜5nM未満で、適宜1nM未満で、適宜0.5nM未満で、適宜0.1nM未満で、適宜0.05nM未満で、適宜0.01nM未満である。
【0015】
好適な態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化1】

を含むVLを有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、VL/CDR1、VL/CDR2およびVL/CDR3とそれぞれ称され、一方、残りの領域は、フレームワークと称し、ここで、X1はD,EまたはAであり;X2は、IまたはTであり;X3は、V,E,K,R,QまたはTであり;X4は、MまたはLであり;X5は、SまたはTであり、X6は、SまたはTであり;X7は、LまたはVであり;X8は、AまたはVであり;X9は、SまたはTであり;X10は、P,V,L,AまたはIであり;X11は、EまたはDであり;X12は、RまたはTであり;X13は,AまたはVIであり;X14は,TまたはAであり;X15は,T、SまたはAであり;X16は,S,R,N,K,HまたはQであり;X17は,AまたはSであり;X18は,QまたはRであり;X19は,S,D、AまたはPであり;X20は,S,G、R,TまたはYであり;X21は,T,N,S、DまたはKであり;X22は,YまたはDであり;X23は,LまたはIであり;X24は,A,NまたはTであり;X25は,KまたはIであり;X26は,Q,K,TまたはIであり;X27は,R,K,Q、N,H,SまたはEであり;X28は,VまたはLであり;X29は,IまたはVであり;X30は,F,A,G,DまたはSであり;X31は,AまたはTであり;X32は,SまたはTであり;X33は,N,S,RまたはTであり;X34は,A,HまたはQであり;X35は、SまたはGであり;X36は、P,Tであり;X37は、S,N,D、GまたはYであり;X38は、SまたはTであり;X39は、GまたはRであり;X40は、TまたはAであり;X41は、SまたはRであり;X42は、SまたはRであり;X43は、PまたはAであり;X44は、EまたはDであり;X45は、F,VまたはSであり;X46は、V,T,I、AまたはSであり;X47は、YまたはSであり;X48は、S,YまたはNであり;X49は、SまたはTであり;X50は、T,V,A、P,K,G,SまたはIであり;X51は、WまたはYであり;X52は、QまたはGであり;X53は、VまたはLであり;およびX54は、E,DまたはAである。
【0016】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVL配列類を、前記の好適なVH配列類または他の抗体のVHと組み合わせることもできる。
【0017】
さらに別の好適な態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化2】

を含むVLを有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、VL/CDR1、VL/CDR2およびVL/CDR3とそれぞれ称され、一方、残りの領域は、フレームワークと称し、ここで、X1はQLまたはNであり;X2は、P A FまたはSであり;X3は、VまたはMであり;X4は、AまたはTであり;X5は、GまたはAであり;X6は、RまたはSであり;X7は、SまたはTであり;X8は、S,T、YまたはNであり;X9は、IまたはVであり;X10は、SまたはRであり;X11は、S,P,N,AまたはTであり;X12は,N,TまたはYであり;X13は,LまたはFであり;X14は,TまたはAであり;X15は,V,LまたはFであり;X16は,MまたはIであり;X17は,G,TまたはSであり;X18は,NまたはDであり;X19は,QまたはEであり;X20は,DまたはEであり;X21は,FまたはLであり;X22は,KまたはRであり;X23は,GまたはAであり;X24は,Q,LまたはRであり;X25は,AまたはGであり;X26は,A,SまたはTであり;X27は,N,SまたはTであり;X28は,TまたはAであり;およびX29は,KまたはQである。
【0018】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVL配列類を、前記の好適なVH配列類または他の抗体のVHと組み合わせることもできる。
【0019】
さらに別の好適な態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化3】

(配列番号54)
を含むVLを有するモノクローナル抗体が提供される。このようにして産生した抗体を所望のアフィニティでヒトVEGFに結合させると、このVL配列類を、前記の好適なVH配列類または他の抗体のVHと組み合わせることもできる。
【0020】
さらに別の好適な態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化4】

を含むVHを有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、CDR1、CDR2およびCDR3とそれぞれ称され、一方、残りの領域は、Kabat命名法に従いフレームワークと称し、ここで、X1はEまたはQであり;X2は、VまたはGであり;X3は、QまたはEであり;X4は、VまたはLであり;X5は、SまたはTであり;X6は、STまたはRであり;X7は、AまたはVであり;X8は、YまたはFであり;X9は、T,D,N,SまたはAであり;X10は、FまたはLであり;X11は、T,D,Y,A,SまたはNであり;X12は,N,HまたはSであり;X13は,YまたはFであり;X14は,M,L、IまたはVであり;X15は,I,VまたはLであり;X16は,LまたはPであり;X17は,IまたはVであり;X18は,YまたはNであり;X19は,TまたはNであり;X20は,EまたはAであり;X21は,P、TまたはSであり;X22は,AまたはVであり;X23は,A,H,Q,P,DまたはEであり;X24は,DまたはEであり;X25は,KまたはTであり;X26は,V,FまたはLであり;X27は,FまたはIであり;X28は,LまたはRであり;X29は,DまたはNであり;X30は、TまたはNであり;X31は、SまたはNであり;X32は、T,Q,PまたはKであり;X33は、A,VまたはPであり;X34は、LまたはMであり;X35は、KまたはRであり;X36は、HまたはYであり;X37は、S,RまたはTであり;およびX38は、GまたはAである。
【0021】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVH配列類を、前記の好適なVL配列類または他の抗体のVLと組み合わせることもできる。
【0022】
さらに1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号2−54から構成される群から選択されたアミノ酸配列、好適には配列番号14、配列番号26、配列番号28、配列番号36、配列番号37、配列番号44、配列番号47および配列番号54から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVLを有するモノクローナル抗体が提供される。
【0023】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティでヒトVEGFに結合させると、この好適なVL配列類を、前記の好適なVH配列類または他の抗体のVHと組み合わせることもできる。
【0024】
1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号57−110および配列番号285−310から構成される群から選択されたアミノ酸配列、好適には配列番号61−64、配列番号67、68、70、75、83、88、89、90,91,92,93、94および96−110から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVHを有するモノクローナル抗体が提供される。
【0025】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティでヒトVEGFに結合させると、このVH配列類を、前記の好適なVL配列類または他の抗体のVLと組み合わせることもできる。
【0026】
さらに1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号164−194から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVL領域中CDR1(VL/CDR1)を有するモノクローナル抗体が提供される。
【0027】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティでヒトVEGFに結合させると、このような好適なVL/CDR1を、好適な軽鎖または他の軽鎖の他の領域および前記の好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列類と組み合わせることもできる。
【0028】
さらに別の態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号195−209から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVL領域中CDR2(VL/CDR2)を有するモノクローナル抗体が提供される。
【0029】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティでヒトVEGFに結合させると、このような好適なVL/CDR2を、好適な軽鎖または他の軽鎖の他の領域および前記の好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることもできる。
【0030】
さらに別の態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号210−228から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVL領域中CDR3(VL/CDR3)を有するモノクローナル抗体が提供される。
【0031】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティでヒトVEGFに結合させると、このような好適なVL/CDR3を、好適な軽鎖または他の軽鎖の他の領域および前記の好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることもできる。
【0032】
さらに別の態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号229−269から構成される群から選択されたアミノ酸配列、および好適には配列番号232、235、237、251、255、263および265から構成される群から選択したアミノ酸配列を含むVL領域中フレームワーク領域(FR)CDR3(VL/FR)を有するモノクローナル抗体が提供される。
【0033】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVL/FRを、好適な軽鎖または他の軽鎖のCDR領域および前記の好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることもできる。
【0034】
さらに1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化5】

を含むVH領域中CDR1(VH/CDR1)を有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、X1は、YまたはFであり;X2は、D,N,T,SまたはAであり;X3は、FまたはLであり;X4は、T,D,S、Y,AまたはNであり;X5は、H,NまたはSであり;X6は、YまたはFであり;X7は、M,L,IまたはVである。
【0035】
さらに好適には、前記モノクローナル抗体のVH/CDR1は配列番号111−135から構成される群から選択されたアミノ酸を含む。
【0036】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVH/CDR1を、好適な重鎖または他の重鎖の他の領域および前記の好適な軽鎖可変領域配列とまたは他の軽鎖可変領域と組み合わせることもできる。
【0037】
1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化6】

を含むVH領域中CDR2(VH/CDR2)を有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、X1はIまたはVであり;X2は、YまたはNであり;X3は、TまたはNであり;X4は、P,TまたはSであり;X5は、AまたはVであり;X6は、A,Q,P、H,DまたはEであり;X7は、DまたはEであり;およびX8は、KまたはTである。
【0038】
好適には、前記モノクローナル抗体のVH/CDR2は、配列番号136−156から構成される群から選択したアミノ酸配列を含む。
【0039】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVH/CDR2を、好適な重鎖または他の重鎖の他の領域および前記の好適な軽鎖可変領域配列とまたは他の軽鎖可変領域配列と組み合わせることもできる。
【0040】
1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化7】

を含むVH領域中CDR3(VH/CDR3)を有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、X1はYまたはHであり、および、X2はRである。
【0041】
好適には、抗VEGF抗体VH/CDR3は、配列番号311−337から構成される群から選択したアミノ酸配列を有する。
【0042】
このようにして産生した抗体を所望のアフィニティを有するヒトVEGFに結合させると、このような好適なVH/CDR3を、好適な重鎖または他の重鎖の他の領域および前記の好適な軽鎖可変領域配列類とまたは他の軽鎖可変領域配列類と組み合わせることもできる。
【0043】
1態様において、ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化8】

を含むVH領域中FR(VH/FR)を有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、X1はEまたはQであり;X2は、QまたはEであり;X3は、VまたはLであり;X4は、SまたはTであり;X5は、S、TまたはRであり;X6は、AまたはVであり;X7は、IまたはVであり;X8は、FまたはVであり;X9は、FまたはIであり;X10は、LまたはRであり;X11は、TまたはNであり;X12は、SまたはNであり;X13は,T,QまたはKであり;X14は、AまたはVであり;X15は、MまたはLであり;および、X16は、GまたはAである。
【0044】
1態様において、VEGFに特異的に結合しかつ配列番号1および70;配列番号1および67;配列番号1および75;配列番号1および83;配列番号14および55;配列番号1および101;配列番号1および100;配列番号14および102;配列番号1および103;配列番号1および104;配列番号1および105;配列番号36および100;配列番号26および100;配列番号28および100;配列番号37および100;配列番号44および100;配列番号54および100;配列番号47および100から構成される群から選択したVLおよびVH対、好適には配列番号28および61;配列番号28および62;配列番号28および63;配列番号28および64;配列番号28および68;配列番号28および85;配列番号28および86;配列番号28および87;配列番号28および88;配列番号28および89;配列番号28および90;配列番号28および91;配列番号28および92;配列番号28および93;配列番号28および94;配列番号28および95;配列番号28および96;配列番号28および97;配列番号28および98;配列番号28および99;配列番号28および106;配列番号28および107;配列番号28および108;配列番号28および109;配列番号28および110から構成される群から選択されるVLおよびVH対を有するモノクローナル抗体が提供される。
【0045】
ヒトVEGFに対する上記抗体の結合アフィニティは解離定数Kdにより表され、適宜100nM未満であり、適宜10nM未満であり、適宜8nM未満であり、適宜5nM未満であり、適宜1nM未満であり、適宜0.8nM未満であり、適宜0.5nM未満であり、適宜0.2nM未満であり、適宜0.1nM未満であり、適宜0.08nM未満であり、適宜0.05nM未満であり、適宜0.01nM未満であり、適宜0.005nM未満であり、scFv,Fabまたは抗体の他の形態で温度約4℃、25℃、37℃または42℃で測定する。
【0046】
本発明に開示した全長VHおよびVL、VH/CDR,VH/FR,VL/CDR、VL/FR(例 図1Aおよび1Bに示したヒット変異体および図1Cおよび1Dに示したアミノ酸配列類)の組み合わせの結果としての抗体類も、また、本発明の範囲に含まれ;このような組み合わせには、米国特許出願第09/056,160号、公報2002/0032315に開示した抗VEGF抗体類が含まない。
(発明の詳細な説明)
【0047】
本発明は、所望の構造と機能を有するたんぱく質類、特に抗体類を工学的に作製する革新的方法を提供する。第一に、ヒト抗原に対する高いアフィニティと特異性を有する抗体類を設計しかつ選択する方法類を提供する。いくつかの特別の態様において、血管内皮増殖因子(VEGF)に対するヒト化または完全にヒトの、高いアフィニティと特異性を有する抗体類を設計しかつ選択するための方法類が提供される。別の面において、インビトロで新脈管形成を阻害するためのこれらの抗体類およびそれらの誘導体類を使用するため、および癌、慢性関節リウマチ、虚血性再潅流関連脳浮腫および傷害、皮質虚血、卵巣過形成および血管過形成、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および他の眼科新脈管形成疾患類のような異常新脈管形成に関連した疾患の診断または治療のための組成物類、キット類および方法類を提供する。
【0048】
1.VEGFおよびVEGF抗体類
VEGFは、発生における重要な脈管新生因子であり、内皮細胞を刺激することによる固形腫瘍の増殖に関与している。マウスモノクローナル抗体が、VEGF依存性細胞増殖をブロックしインビボにおける腫瘍増殖を遅らせることがわかった(Kim KJ, Li B, Winer J, Armanini M,Gillett N,Phillips HS,Ferrara N(1993)Nature 362,841−844)。このマウス抗体をヒト化し(Presta LG,Chen H,O‘Connor SJ,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,Winkler M,Ferrara N(1997)Cancer Res.57,4593−4599;Baca M,Presta LG,O’Connor SJ,Wells JA(1997)J Biol Chem 272,10678−10684)およびファージディスプレイおよびオフ速度選択を用いてアフィニティ成熟させた(Chen Y,Wiesmann C,Fuh G,Li B,Christinger HW,McKay P, de Vos AM(1999)J Mol Biol 293,865−881)。VEGFとその親抗体の間で形成した複合体のX線構造が報告されており(Muller YA,Chen Y,Christinger HW,Li B,Cunningham, BC,Lowman HB, de Vos AM(1998)Structure 6,1153−1167)、さらにVEGFと成熟抗体との間に形成されたものについても報告されている(Chen Y,Wiesman C,Fuh G,Li B,Christinger HW,McKay P,de Vos AM,Lowman HB(1999)J.Mol Biol 293,865−881)。さらに、米国特許出願番号第09/056,160、公報2002/0032315は、ある抗VEGF抗体類を開示している。VEGFと抗VEGF抗体類に関するこれらの公報は、本文でその全文を参考として引用した。
【0049】
本発明は、ヒトVEGFに高いアフィニティと特異性で結合する新規抗VEGF抗体類を提供する。これらの抗VEGF抗体類はヒト化され最適化され、結合アフィニティ、安定性、発現効率において研究、診断および治療適用に望ましいいくつかの重要性質を有する。
【0050】
ヒトVEGFに対する本発明の選択された抗VEGF抗体類の結合アフィニティは解離定数Kdにより表され、適宜100nM未満であり、適宜10nM未満であり、適宜8nM未満であり、適宜8nM未満であり、適宜5nM未満であり、適宜1nM未満であり、適宜0.8nM未満であり、適宜0.5nM未満であり、適宜0.2nM未満であり、適宜0.1nM未満であり、適宜0.08nM未満であり、適宜0.05nM未満であり、適宜0.01nM未満であり、適宜0.005nM未満であり、scFv,Fabまたは抗体の他の形態で温度約4℃、25℃、37℃または42℃で測定する。
【0051】
好適には、本発明の選択した抗VEGF抗体類のKdは、もしscFvの形態でかつ35−37℃で測定したならば、適宜1nM未満であり、適宜0.08nM未満であり、適宜0.5nM未満であり、適宜0.2nM未満であり、適宜0.1nM未満であり、適宜0.08nM未満であり、適宜0.05nM未満であり、適宜0.01nM未満でありまたは適宜0.005nM未満である。
【0052】
また、好適には、本発明の選択した抗VEGF抗体類のKdは、もしFabの形態でかつ35−37℃で測定したならば、適宜0.5nM未満であり、適宜0.2nM未満であり、適宜0.1nM未満であり、適宜0.08nM未満であり、適宜0.05nM未満であり、適宜0.01nM未満でありまたは適宜0.005nM未満である。
【0053】
インビトロにおける内皮細胞のVEGF誘発増殖の阻害において、選択した本発明の抗VEGF抗体類は、scFv、Fabまたは他の抗体形態であるならば10nMに等しいかそれより未満であり、適宜5nM未満であり、適宜1nM未満であり、適宜0.5nM未満であり、適宜0.1nM未満であり、適宜0.05nM未満であり、または適宜0.01nM未満であるED50(50%細胞増殖阻害有効量)を有する。
【0054】
好適な態様において、アミノ酸配列:
【化9】

を含む軽鎖可変領域を有する抗VEGF抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、VL/CDR1,VL/CDR2およびVL/CDR3とそれぞれ称され、残りの領域は、フレームワークと称され、ここで、“X”と称された位置は、下記のアミノ酸類であることができる:
【化10】

【化11】

【0055】
このような好適な軽鎖可変領域配列類は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、前記の好適な重鎖可変領域配列類とまたは他の重鎖可変領域配列類と組み合わせることができる。
【0056】
別の好適な態様において、アミノ酸配列:
【化12】

を含む軽鎖可変領域を有する抗VEGF抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、VL/CDR1,VL/CDR2およびVL/CDR3とそれぞれ称され、残りの領域は、フレームワークと称され、ここで、“X”と称された位置は、下記のアミノ酸類であることができる:
【化13】

【0057】
このような好適な軽鎖可変領域配列類は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、前記の好適な重鎖可変領域配列類とまたは他の重鎖可変領域配列類と組み合わせることができる。
【0058】
さらに別の好適な態様において、アミノ酸配列:
【化14】

(配列番号54)
を含む軽鎖可変領域を有する抗VEGF抗体が提供され、このような好適な軽鎖可変領域配列類は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、前記重鎖可変領域配列類とまたは他の重鎖可変領域配列類と組み合わせることができる。
【0059】
さらに別の好適な態様において、アミノ酸配列:
【化15】

を含む軽鎖可変領域を有する抗VEGF抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、CDR1,CDR2およびCDR3とそれぞれ称され、残りの領域は、Kabat命名法によりフレームワークと称され、ここで、“X”と称された位置は、下記のアミノ酸類であることができる:
【化16】

【0060】
さらに別の好適な態様において、アミノ酸配列:
【化17】

を含む重鎖可変領域を有する抗VEGF抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、CDR1,CDR2およびCDR3とそれぞれ称され、残りの領域は、Kabat命名法によりフレームワークと称され、ここで、“X”と称された位置は、下記のアミノ酸類であることができる:
【化18】

【化19】

【0061】
このような好適な重鎖可変領域配列類は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、前記の好適な軽鎖可変領域配列類とまたは他の軽鎖可変領域配列類と組み合わせることができる。
【0062】
1態様において、本発明は、下記:配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号27,配列番号29,配列番号30,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,配列番号38,配列番号39,配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52および配列番号53のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域、さらに好適には配列番号14、配列番号26,配列番号28,配列番号36,配列番号37,配列番号44、配列番号47または配列番号54を含むアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗VEGF抗体が提供される。このような好適な軽鎖可変領域配列類は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、前記の好適な重鎖可変領域配列類とまたは他の重鎖可変領域配列類と組み合わせることができる。
【0063】
別の態様において、本発明は、下記:配列番号57,配列番号58,配列番号59,配列番号60,配列番号65,配列番号66,配列番号69,配列番号71,配列番号72,配列番号73,配列番号74,配列番号76,配列番号77,配列番号78,配列番号79,配列番号80,配列番号81,配列番号82,配列番号84,配列番号85,配列番号86,配列番号87のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域、さらに好適には配列番号61、または配列番号62,または配列番号63,または配列番号64,または配列番号67、または配列番号68、または配列番号70、または配列番号75、または配列番号83、配列番号88、または配列番号89、または配列番号90、または配列番号91、または配列番号92、または配列番号93、または配列番号94、または配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、または配列番号99、配列番号100、または配列番号101、または配列番号102、または配列番号103、または配列番号104、または配列番号105、または配列番号106、配列番号107または配列番号108、または配列番号109、配列番号110;または配列番号285−310のひとつを含むアミノ酸配列の重鎖可変領域を含む抗VEGF抗体が提供される。このような好適な重鎖可変領域配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、前記の好適な軽鎖可変領域配列とまたは他の軽鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0064】
さらに別の態様において、本発明は、下記:配列番号164,配列番号165,配列番号166,配列番号167,配列番号168,配列番号169,配列番号170,配列番号171,配列番号172,配列番号173,配列番号174,配列番号175,配列番号176、配列番号177,配列番号178,配列番号179,配列番号180,配列番号181,配列番号182,配列番号183、配列番号184,配列番号185,配列番号186,配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、および配列番号194のひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域のCDR1領域を含む抗VEGF抗体を提供する。軽鎖可変領域のこのように好適なCDR1配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な軽鎖または他の軽鎖の他の領域類および前記好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0065】
さらに別の態様において、本発明は、下記:配列番号195、配列番号196,配列番号197,配列番号198,配列番号199,配列番号200,配列番号201,配列番号202,配列番号203,配列番号204,配列番号205,配列番号206,配列番号207、配列番号208,および配列番号209のひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域のCDR2領域を含む抗VEGF抗体を提供する。軽鎖可変領域のこのような好適な配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な軽鎖または他の軽鎖の他の領域類および前記好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0066】
さらに別の態様において、下記:配列番号210,配列番号211,配列番号212,配列番号213,配列番号214,配列番号215,配列番号216,配列番号217,配列番号218,配列番号219,配列番号220,配列番号221,配列番号222,配列番号223,配列番号224,配列番号225,配列番号226,配列番号227および配列番号228のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域のCDR3領域を含む抗VEGF抗体が提供される。軽鎖可変領域のこのような好適なCDR3配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な軽鎖または他の軽鎖の他の領域類および前記好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0067】
さらに別の態様において、下記:配列番号229,配列番号230,配列番号231,配列番号233,配列番号234,配列番号236,配列番号238,配列番号239,配列番号240,配列番号241,配列番号242,配列番号243,配列番号244,配列番号245,配列番号246、配列番号247,配列番号248,配列番号249、配列番号250、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号260、配列番号261、配列番号262、配列番号264、配列番号266、配列番号267、配列番号268および配列番号269のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域を含む抗VEGF抗体、さらに好適には、下記:配列番号232、配列番号235、配列番号237、配列番号251、配列番号255、配列番号263、および配列番号265のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域を含む抗VEGF抗体が提供される。軽鎖可変領域のこのような好適なフレームワーク領域は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な軽鎖または他の軽鎖のCDR領域類および前記好適な重鎖可変領域配列とまたは他の重鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0068】
1態様において、本発明は、好適には下記:
【化20】

のうちのひとつのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1領域類を含む抗VEGF抗体を提供し、ここで、“X”と称した位置は、下記のアミノ酸類であることができるであろう:
【化21】

【0069】
さらに好適には、重鎖可変領域のCDR1領域は、下記:配列番号111、配列番号113,配列番号114,配列番号115,配列番号116,配列番号117,配列番号118,配列番号119,配列番号120,配列番号121,配列番号122,配列番号123,配列番号124,配列番号125,配列番号126,配列番号127,配列番号128,配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、および配列番号135のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む。重鎖可変領域のこのような好適なCDR1配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な重鎖または他の重鎖の他の領域類および前記の好適な軽鎖可変領域配列とまたは他の軽鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0070】
1態様において、本発明は、好適には下記:
【化22】

のうちのひとつのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2を含む抗VEGF抗体を提供し、ここで、“X”と称した位置は、下記のアミノ酸類であることができるであろう:
【化23】

【0071】
さらに好適には、重鎖可変領域のCDR2領域は、下記:配列番号136、配列番号137,配列番号138,配列番号139,配列番号140,配列番号141,配列番号142,配列番号143,配列番号144,配列番号145,配列番号146,配列番号147,配列番号148,配列番号149,配列番号150,配列番号151,配列番号152,配列番号153、配列番号154、配列番号155および配列番号156のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む。重鎖可変領域のこのような好適なCDR2配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な重鎖のまたは他の重鎖の他の領域類および前記の好適な軽鎖可変領域配列とまたは他の軽鎖可変領域配列と組み合わせることができる。
【0072】
1態様において、本発明は、アミノ酸配列:
【化24】

を含む重鎖可変領域のCDR3を含む抗VEGF抗体を提供し、ここで、“X”と称した位置は、下記のアミノ酸類であることができるであろう:X1:YまたはHでありX2:R。
【0073】
好適には、前記抗VEGF抗体は、配列番号311−337で下記の配列類のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む重鎖可変領域のCDR3を有している:
【化25】

【0074】
このような好適な重鎖可変領域のCDR3配列は、このようにした作製した抗体がヒトVEGFに所望のアフィニティで結合するならば、好適な重鎖のまたは他の重鎖の他の領域類および前記の好適な軽鎖可変領域配列類とまたは他の軽鎖可変領域配列類と組み合わせることができる。
【0075】
1態様において、本発明は、好適には下記:
【化26】

のうちのひとつのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域を含む抗VEGF抗体を提供し、ここで、“X”と称した位置は、下記のアミノ酸類であることができるであろう:
【化27】

【0076】
1態様において、本発明は、好適には、下記:配列番号1と配列番号70;配列番号1と配列番号67;配列番号1と配列番号75;配列番号1と配列番号83;配列番号14と配列番号55;配列番号1と配列番号101;配列番号1と配列番号100;配列番号14と配列番号102;配列番号1と配列番号103;配列番号1と配列番号104;配列番号1と配列番号105;配列番号36と配列番号100;配列番号26と配列番号100;配列番号28と配列番号100;配列番号37と配列番号100;配列番号44と配列番号100;配列番号54と配列番号100;配列番号47と配列番号100のVLおよびVH対のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗VEGF抗体を提供し、さらに好適には、配列番号28と配列番号61;配列番号28と配列番号62;配列番号28と配列番号63;配列番号28と配列番号64;配列番号28と配列番号68;配列番号28と配列番号85;配列番号28と配列番号86;配列番号28と配列番号87;配列番号28と配列番号88;配列番号28と配列番号89;配列番号28と配列番号90;配列番号28と配列番号91;配列番号28と配列番号92;配列番号28と配列番号93;配列番号28と配列番号94;配列番号28と配列番号95;配列番号28と配列番号96;配列番号28と配列番号97;配列番号28と配列番号98;配列番号28と配列番号99;配列番号28と配列番号106;配列番号28と配列番号107;配列番号28と配列番号108;配列番号28と配列番号109;および配列番号28と配列番号110のVLおよびVH対のうちのひとつのアミノ酸配列類を含む軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗VEGF抗体を提供する。
【0077】
本発明に開示した全長VHおよびVL、VH/CDR,VH/FR,VL/CDR、VL/FR(例 図1Aおよび1Bに示したヒット変異体および図1Cおよび1Dに示したアミノ酸配列類)の組み合わせの結果としての抗体類も、また、本発明の範囲に含まれ;このような組み合わせには、米国特許出願第09/056,160号、公報2002/0032315に開示した抗VEGF抗体類が含まない。
【0078】
2.ヒト化または全長ヒト抗VEGF抗体類の設計と構築方法論
本発明の抗体類は、たんぱく質ライブラリをインシリコおよびインビトロで構築選択することを必要とする革新的方法を用いて設計する。この方法論のさらに詳細な説明は、米国特許出願第10/443、134、10/153,159、10/153、176、10/125,687、および60/284,407に記されており、それらは、本文でその全文を参考として引用する。
【0079】
本発明によれば、生物学的にかつ治療上重要な標的分子に対する結合アフィニティ改善のような所望の生物機能を有する最適化たんぱく質類について効率的にたんぱく質ライブラリを作製しスクリーニングする革新的方法が提供される。この方法論を用いて、性質が向上したたんぱく質の新規変異体を作製することによって、たんぱく質類を最適化する。特に、この方法論を用いて、非ヒト抗体類のヒト化用ライブラリの設計と抗体類のアフィニティおよび他の性質を最適化する。抗体類のアミノ酸類および核酸類の新規変異体は、ヒトまたはヒト様配列類を用いて作製し、一方、それらの結合アフィニティ、安定性および発現効率を有意に改善する。
【0080】
本発明のプロセスは、全生物、特にますます増大するヒトたんぱく質配列データベースを検索し、それらの特異的配列または変異を結合アフィニティおよび安定性のような実験的に試験した機能増強と関連付け、高い処理量でコンピュータ計算により行う。本発明の方法論を用いることによって、抗体のようなたんぱく質の機能的にはバイアスをかけた拡大ライブラリが、極めて多くのさまざまなたんぱく質配列類および機能的に関連した構造をインシリコでコンピュータ評価し、その後、インビトロまたはインビボで実験的スクリーニングおよび選択により試験して、構築できる。
【0081】
本発明の1面において、所望の機能(類)を有するたんぱく質(類)を設計選択するための方法が提供される。この方法は、好適には、リードタンパク質中標的の構造的/機能的モチーフまたはドメインのアミノ酸配列に基づくたんぱく質配列類のインシリコ選択を介して、コンピュータで実施し、前記モチーフまたはドメインは、以下、“リード配列”と称する。前記リード配列を用いて、たんぱく質配列のデータベースを検索する。データベース選択は、設計したモチーフの具体的な機能的必要性に依存する。たとえば、もしリードたんぱく質が酵素でかつ前記標的モチーフが前記酵素の活性部位を含むならば、特定起源、生物、種またはそれらの組み合わせのたんぱく質類/ペプチド類のデータベースをさまざまな検索基準を用いて検索し、ヒット配列リストを得るが、そのそれぞれは、リードたんぱく質中の標的モチーフの代わりとなることができる。類似手法を用いて、リードたんぱく質の他のモチーフまたはドメインを設計することもできる。各モチーフ/ドメインの設計配列を組み合わせて、設計たんぱく質類のライブラリを作製できることもできる。さらに、治療または診断のようなヒト適用のため設計たんぱく質類の免疫原性を低下させるため、好適には、ヒト起源のたんぱく質類またはヒト化たんぱく質類のデータベースを検索し、抗体フレームワークのようなリードたんぱく質の足場として機能するリードたんぱく質部位由来のモチーフ用にヒットリストを得る。設計たんぱく質のライブラリを実験的に試験し、リードたんぱく質に対する改善された生物機能(類)を有するたんぱく質類を得ることができる。
【0082】
本発明の特定の面において、本発明の方法論は、配列がさまざまであるがそれでいて機能的には互いに関連している抗体類の設計において実施される。設計した抗体配列に基づき、抗体類ライブラリを高い処理様式で構築し、非ヒト抗体の相補性決定領域(CDRs)および/またはヒト化フレームワーク(FRs)にさまざまな配列類を含ませる。この抗体類ライブラリを、新規または改善機能について、さまざまな広い範囲の標的分子についてスクリーニングできる。
【0083】
さらに本発明において、以下、“リード配列”と称するリード抗体中ある領域のアミノ酸配列に基づく抗体配列類のインシリコ選択のための方法が提供される。このリード配列を用いて、たんぱく質配列のデータベースを検索する。データベース選択は、設計したモチーフの具体的な機能的要件に依存する。たとえば:
治療適用のため可変鎖のフレームワーク領域を設計するため、完全にヒトのイムノグロブリン配列類およびヒト生殖細胞系イムノグロブリン配列類のような進化上関連しているたんぱく質配列類を採取することを用いなければならないが、2−3の構造的に重要な部位については除く。これにより、この高度に保存された領域(フレームワーク領域について)中にできるだけ少ない外来変異を導入することにより前記配列の起源を保存することによって、免疫応答を低下させるであろう。一方、さまざまな種のイムノグロブリン配列類のような広範な配列データベース類またはgenbank中の関連のない配列類さえも用いて、この高度に可変の領域中において抗原に対する結合アフィニティを向上させるため、CDRsを設計できる。この方法を用いることによって、広範な抗体配列類ライブラリを構築しインビトロまたはインビボにおいて実験的に改良したかまたは所望の機能(類)を有する抗体変異体類をスクリーニングできる。
【0084】
1態様において、前記方法は、下記の段階を含む:リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階;前記リード抗体のCDRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてCDRsのひとつを選択する段階;選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列であり;前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数の試験たんぱく質配列類から、前記リード配列に対して少なくとも15%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成すること。
【0085】
前記方法はさらに、前記ヒットライブラリのアミノ酸配列類をコードするDNAセグメント類を含む核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0086】
適宜、前記方法はさらに、下記の段階を含むことができる:前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを、このアミノ酸位置変異体類をそれらの対応する遺伝子コドン類にバック翻訳することにより核酸位置変異プロフィールに変換する段階;および前記核酸位置変異体類を組み合わせ法により組み合わせることにより、DNAセグメント類の変性核酸ライブラリを構築する段階。
【0087】
適宜、前記遺伝子コドン類は、細菌中発現に好適なものとすることもできる。適宜、遺伝子コドン類は、DNAセグメント類の変性核酸ライブラリの多様性が不当な実験的努力を要することもなく実験的にカバーできる多様性の範囲内にあるように、選択した大きさを小さくすることもできるものであり、例えば、1×107未満、好適には1×106未満である。
【0088】
別の態様において、前記方法は、下記の段階を含む:リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階;前記リード抗体のCDRsおよびFRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてCDRsのひとつを選択する段階;選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含む第1アミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はCDRリード配列であり;前記CDRリード配列を複数のCDR試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数のCDR試験たんぱく質配列類から、前記CDRリード配列に対して少なくとも15%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、CDRヒットライブラリを形成し;前記リード抗体のVHまたはVL中においてFRsのひとつを選択する段階;選択したFR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含む第2アミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はFRリード配列であり;前記FRリード配列を複数のFR試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数のFR試験たんぱく質配列類から、前記FRリード配列に対して少なくとも15%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、FRヒットライブラリを形成し;および前記CDRヒットライブラリとFRヒットライブラリを組み合わせてヒットライブラリを形成する段階。
【0089】
本方法によれば、複数のCDR試験たんぱく質配列類は、ヒトまたは非ヒト抗体類のアミノ酸配列類を含むことができる。
【0090】
また本方法によれば、複数のFR試験たんぱく質配列類は、ヒト起源の、好適にはヒトまたはヒト化抗体類(例 VHまたはVL中少なくとも50%のヒト配列類、好適には少なくとも70%のヒト配列類、さらに好適には少なくとも90%のヒト配列類、および最も好適には少なくとも95%のヒト配列類)、さらに好適には完全にヒトの抗体類、および最も好適にはヒト生殖細胞系抗体類のアミノ酸配列類を含むことができる。
【0091】
また本方法によれば、複数のCDR試験たんぱく質配列類の少なくともひとつが、複数のFR試験たんぱく質配列類と異なる。
【0092】
さらに本方法によれば、複数のCDR試験たんぱく質配列類は、ヒトまたは非ヒト抗体配列類であり、複数のFR試験たんぱく質配列類が、ヒト抗体配列類、好適にはヒト生殖細胞系抗体配列類である。
【0093】
本方法はさらに、前記ヒットライブラリのアミノ酸配列類をコードするDNAセグメント類を含む核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0094】
適宜、前記方法はさらに、下記の段階を含むことができる:前記CDRヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;前記CDRヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを、このアミノ酸位置変異体類をそれらの対応する遺伝子コドン類にバック翻訳することにより第1核酸位置変異プロフィールに変換する段階;および前記核酸位置変異体類を組み合わせ法により組み合わせることにより、DNAセグメント類の変性CDR核酸ライブラリを構築する段階。
【0095】
適宜、前記遺伝子コドン類は、細菌中発現に好適なものとすることもできる。適宜、遺伝子コドン類は、DNAセグメント類の変性核酸ライブラリの多様性が合理的でない実験的努力もなく実験的にカバーできる多様性の範囲内にあるように選択した大きさを小さくすることもできるものであり、例えば、1×107未満、好適には1×106未満である。
【0096】
さらに別の態様において、前記方法は、下記の段階を含む:リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階;前記リード抗体のFRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてFRsのひとつを選択する段階;選択したFR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含む第1アミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列は第1FRリード配列であり;前記FRリード配列を複数のFR試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数のFR試験たんぱく質配列類から、前記FRリード配列に対して少なくとも15%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、第1FRヒットライブラリを形成する。
【0097】
前記方法は、さらに、下記の段階を含むことができる:前記選択したFRと異なるFR中において少なくとも3個の連続したアミノ酸残基を含む第2アミノ酸配列を提供する段階で、前記選択したアミノ酸配列は、第2FRリード配列であり;前記第2FRリード配列を複数のFR試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数のFR試験たんぱく質配列類から、前記第2FRリード配列に対して少なくとも15%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、第2FRヒットライブラリを形成し;および前記第1FRヒットライブラリと前記第2FRヒットライブラリを組み合わせヒットライブラリを形成する段階。
【0098】
本方法によれば、前記リードCDR配列は、選択したCDR中において少なくとも5個の連続したアミノ酸残基を含むことができる。前記選択したCDRは、前記リード抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3から構成される群から選択することもできる。
【0099】
また本方法によれば、前記リードFR配列は、選択したFR中において少なくとも5個の連続したアミノ酸残基を含むことができる。前記選択したFRは、前記リード抗体のVHFR1、VHFR2、VHFR3、VHFR4、VLFR1、VLFR2、VLFR3およびVLFR4から構成される群から選択することもできる。
【0100】
本方法は、さらに、前記ヒットライブラリのアミノ酸配列類をコードするDNAセグメント類を含む核酸または変性核酸ライブラリを構築する段階を含むこともできる。
【0101】
さらに本発明の別の面において、リード抗体中ある領域のアミノ酸配列すなわち“リード配列”とその3D構造に基づき、抗体配列類のインシリコ選択のための方法が提供される。前記リード配列の構造を用いて類似の3D構造類を有するセグメント類についてたんぱく質構造類のデータベース類をサーチする。これらのセグメント類を並べ、配列プロフィールを得るが、本文では以下、“リード配列プロフィール”と称する。このリード配列プロフィールを用いて、配列同一性が小さいがそれでいて構造的には類似のリード配列の系統発生的に遠いホモログ類についてたんぱく質配列類のデータベースをサーチする。本方法を用いることによって、多様な抗体配列類ライブラリを構築し、向上したかまたは所望の機能(類)を有する抗体変異体についてインビトロまたはインビボで実験的にスクリーニングできる。
【0102】
1態様において、本方法は、下記の段階を含む:リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階;前記リード抗体のCDRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてCDRsのひとつを選択する段階;選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含む第1アミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列であり;前記リード配列の3次元構造を提供する段階;前記リード配列の構造に基づきリード配列プロフィールを作製する段階;前記リード配列プロフィールを複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数の試験たんぱく質配列類から、リード配列に対して少なくとも10%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成する。
【0103】
本方法によれば、前記リード配列の3次元構造は、X線結晶学、核磁気共鳴(NMR)分光分析、および理論的構造モデル化による構造であることができる。
【0104】
本方法によれば、リード配列プロフィール作製段階には、下記を含むことができる:リード配列構造を複数の試験たんぱく質セグメント類の構造類と比較すること;前記リード配列と前記試験たんぱく質セグメント類の主鎖立体構造の平均平方根差を求めること;主鎖立体構造の平均平方根差が5オングストローム未満、好適には4オングストローム未満、さらに好適には3オングストローム未満、最も好適には2オングストローム未満である試験たんぱく質セグメント類を選択すること;および選択した試験たんぱく質セグメント類のアミノ酸配列とリード配列と並べて、リード配列プロフィールを作製すること。
【0105】
適宜、複数の試験たんぱく質セグメント類の構造は、たんぱく質データバンクから検索し得られる。
【0106】
適宜、リード配列プロフィール作製段階には、下記を含むことができる:リード配列構造を複数の試験たんぱく質セグメント類の構造類と比較すること;前記リード配列と前記試験たんぱく質セグメント類の主鎖立体構造のZスコアを求めること;主鎖立体構造のZスコアが2より大きいか、好適には3より大きいか、さらに好適には4より大きいか、最も好適には5より大きい試験たんぱく質セグメント類を選択すること;および選択した試験たんぱく質セグメント類のアミノ酸配列とリード配列と並べて、リード配列プロフィールを作製すること。
【0107】
適宜、リード配列プロフィール作製段階は、CE,MAPS,モンテカルロおよび3Dクラスタリングアルゴリズムから構成される群から選択したアルゴリズムによって実施できる。
【0108】
本方法は、さらに、前記ヒットライブラリのアミノ酸配列類をコードするDNAセグメント類を含む核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0109】
適宜、前記方法はさらに、下記の段階を含むことができる:前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを、このアミノ酸位置変異体類をそれらの対応する遺伝子コドン類にバック翻訳することにより核酸位置変異プロフィールに変換する段階;および前記核酸位置変異体類を組み合わせ法により組み合わせることによりDNAセグメント類の変性核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0110】
さらに本発明の別の面において、リード抗体の3D構造に基づく抗体配列類のインシリコ選択のための方法が提供される。配列同一性が小さいがそれでいて構造的には類似のリード配列の系統発生的に遠いホモログ類についてたんぱく質配列類のデータベースをサーチするために用いる前記リード抗体の特定領域由来のリード配列または配列プロフィール。これらの系統発生的に遠いホモログ類はヒットライブラリを形成する。前記ヒットライブラリ中の配列類は、前記リード抗体の3D構造との構造的適合性評価に供するが、以下、“リード構造テンプレート”と称する。前記リード構造テンプレートと構造的に適合するヒットライブラリ中配列類を選択し、改良したかまたは所望の機能(類)を有する抗体変異体についてインビトロまたはインビボで実験的にスクリーニングする。
【0111】
1態様において、前記方法は、下記の段階を含む:リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階で、前記リード抗体は、リード構造テンプレートと規定される公知の3次元構造を有し;前記リード抗体のCDRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてCDRsのひとつを選択する段階;選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列であり;前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類を比較する段階;および前記の複数の試験たんぱく質配列類から、前記リード配列に対して少なくとも10%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成し;前記ヒットライブラリのメンバーが構造的にリード構造テンプレートと構造的に適合するかどうかをスコア関数を用いて決定する段階;および前記リード配列に等しいかそれよりも優れているかまたは等しいスコアのヒットライブラリメンバー類を選択する段階。
【0112】
前記方法によれば、前記スコア関数は、静電気的相互作用、ファンデアワールス相互作用、静電気的溶媒和エネルギー、溶媒アクセス可能な表面溶媒和エネルギーおよび立体構造エントロピーから構成される群から選択されるエネルギースコア関数である。
【0113】
適宜、前記スコア関数は、アンバー(Amber)フォースフィールド、チャーム(Charmm)フォースフィールド、ディスカバー(Discover) cvffフォースフィールド類、ECEPPフォースフィールド類、グロモス(GROMOS)フォースフィールド類、OPLSフォースフィールド類、MMFF94フォースフィールド、トリポス(Tripos)フォースフィールド、MM3フォースフィールド、ドライディング(Dreiding)フォースフィールド、UNRESフォースフィールド、および他の知識に基づく統計的フォースフィールド(平均フィールド)および構造に基づく熱力学ポテンシャル関数類から構成される群から選択されるフォースフィールドを取り込むものである。
【0114】
また本発明によれば、ヒットライブラリメンバー類選択段階には、式
△Etotal=Evdw+Ebond+Eangle+Eelectrostatics+Esolvation
に基づき計算したリード配列のそれよりも低いかまたはそれと同等の総エネルギーを有するヒットライブラリメンバー類を選択することを含む。
【0115】
また本方法によれば、ヒットライブラリメンバー類選択段階には、より精密なスコア関数
△Gb= △GMM + △Gsol ― T△Sss
(式中、
△GMM = △Gele + △Gvdw (1)
△Gsol = △Gele-sol + △GASA (2)
を用いて、結合および非結合状態の差として計算したリード配列のそれよりも低いかまたはそれと同等の結合遊離エネルギーを有するヒットライブラリメンバー類を選択することを含む。
【0116】
前記方法はさらに、前記ヒットライブラリのアミノ酸配列類をコードするDNAセグメント類を含む核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0117】
適宜、前記方法は、下記の段階を含むことができる:前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを、このアミノ酸位置変異体類をそれらの対応する遺伝子コドン類にバック翻訳することにより核酸位置変異プロフィールに変換する段階;および前記核酸位置変異体類を組み合わせ法により組み合わせることによりDNAセグメント類の変性核酸ライブラリを構築する段階。
【0118】
さらに本発明の別の面において、リード抗体の3D構造または構造エンゼンブル、または複数抗体類の構造エンゼンブルに基づき、抗体配列類のインシリコ選択のための方法が提供され、以下ではまとめて、リード構造テンプレートと称する。配列同一性が小さいがそれでいて構造的には類似のリード配列の系統発生的に遠いホモログ類についてたんぱく質配列類のデータベースをサーチするために用いる前記リード抗体の特定領域由来のリード配列または配列プロフィール。これらの系統発生的に遠いホモログ類はヒットライブラリを形成する。前記ヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィール(AA−PVP)は、前記リード配列の各位置におけるアミノ酸変異体の出現頻度に基づき作製する。AA−PVPに基づき、ヒット変異ライブラリを、低頻度変異体のカットオフがある場合とない場合においてリード配列の各位置におけるアミノ酸変異体を組み合わせ法で組み合わせることによって、構築する。前記ヒットライブラリ中の配列類を、前記リード構造テンプレートとの構造的適合性を評価する。前記リード構造テンプレートと構造的に適合するヒットライブラリ中配列類を選択し、向上したかまたは所望の機能(類)を有する抗体変異体についてインビトロまたはインビボで実験的にスクリーニングする。
【0119】
1態様において、本方法は、下記の段階を含む:リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階で、前記リード抗体は、リード構造テンプレートと規定される公知の3次元構造を有し;前記リード抗体のCDRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてCDRsのひとつを選択する段階;選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列であり;前記リード配列の3次元構造を提供する段階;前記リード配列の構造に基づきリード配列プロフィールを作製する段階;前記リード配列プロフィールを複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階;および前記の複数の試験たんぱく質配列類から、リード配列に対して少なくとも10%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成し;リード配列の各位置におけるアミノ酸変異体の出現頻度に基づきヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;前記ヒットライブラリ中のアミノ酸変異体類を組み合わせてヒット変異ライブラリを形成するヒット変異体類組み合わせを作製する段階;スコア関数を用いて、前記ヒット変異ライブラリのメンバーが前記リード構造テンプレートと構造的に適合するかどうかを決定する段階;および前記リード配列に等しいかまたはそれよりも優れたスコアのヒット変異ライブラリのメンバー類を選択する段階。
【0120】
本方法によれば、前記ヒットライブラリ中のアミノ酸変異体を組み合わせる段階には、カットオフのためのアミノ酸頻度の2%、好適には5%、さらに好適には8%、最も好適には10%よりも高い出現頻度を有するアミノ酸変異体を選択すること、次にリード配列由来のアミノ酸類の一部をもしそれらがカットオフ後になくなったとしたらそれらを含め;ヒットライブラリ中の選択したアミノ酸変異体類を組み合わせてヒット変異ライブラリを形成するヒット変異体類の組み合わせを作製することを含む。
【0121】
本方法によれば、前記スコア関数は、静電気的相互作用、ファンデアワールス相互作用、静電気的溶媒和エネルギー、溶媒アクセス可能な表面溶媒和エネルギーおよび立体構造エントロピーから構成される群から選択されるエネルギースコア関数である。
【0122】
適宜、前記スコア関数は、アンバー(Amber)フォースフィールド、チャーム(Charmm)フォースフィールド、ディスカバー(Discover) cvffフォースフィールド類、ECEPPフォースフィールド類、グロモス(GROMOS)フォースフィールド類、OPLSフォースフィールド類、MMFF94フォースフィールド、トリポス(Tripos)フォースフィールド、MM3フォースフィールド、ドライディング(Dreiding)フォースフィールド、UNRESフォースフィールド、および他の知識に基づく統計的フォースフィールド(平均フィールド)および構造に基づく熱力学ポテンシャル関数類から構成される群から選択されるフォースフィールドを取り込むものである。
【0123】
前記方法はさらに、前記ヒットライブラリのアミノ酸配列類をコードするDNAセグメント類を含む核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0124】
適宜、前記方法はさらに、下記の段階を含むことができる:ヒット変異ライブラリの選択したメンバー類を少なくとも2個のサブヒット変異ライブラリに分割する段階;1個のサブヒット変異ライブラリを選択する段階;前記選択したサブヒット変異ライブラリのアミノ酸位置プロフィールを、それらの対応する遺伝子コドン類にバック翻訳することにより核酸位置変異プロフィールに変換する段階;および前記核酸位置変異体類を組み合わせ法により組み合わせることによりDNAセグメント類の変性核酸ライブラリを構築する段階を含むことができる。
【0125】
前記ヒット変異ライブラリを分割する段階には、前記リード配列と等しいかまたはそれより優れたスコアのヒット変異ライブラリメンバー10−30個を無作為に選択することを含むことができ、前記の選択したメンバー類は、サブ変異ライブラリを形成する。
【0126】
適宜、ヒット変異ライブラリを分割する段階には、ヒット変異ライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作製し、ヒト変異プロフィールを結果として生成し;前記ヒト変異プロフィールを、ある距離限界(8A乃至4.5A)内のリード配列の構造または構造エンゼンブルのCα、またはCβまたは重原子のコンタクトマップに基づくサブ変異プロフィールのセグメント類に分割する段階を含むことができる。8オングストロームの距離内部、好適には6オングストローム内、さらに好適には5オングストローム内、および最も好適には4.5オングストローム内部の構造モデルまたはリード構造テンプレート。
【0127】
別の態様において、前記方法は、リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階で、前記リード抗体は、公知の3次元構造を有し;前記リード抗体のそれとは異なるVHまたはVL中配列類を有する1個以上の抗体類の3D構造を提供する段階;前記リード抗体と前記1個以上の抗体類の構造を組み合わせて構造エンゼンブルを形成する段階;前記構造エンゼンブルは、リード構造テンプレートと称され;前記リード抗体のCDRsにおいて前記アミノ酸配列類を同定する段階;前記リード抗体のVHまたはVL中においてCDRsのひとつを選択する段階;選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列であり;前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階;前記複数の試験たんぱく質配列類から、リード配列に対して少なくとも10%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成し;リード配列の各位置におけるアミノ酸変異体の出現頻度に基づきヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;前記ヒットライブラリ中のアミノ酸変異体類を組み合わせてヒット変異ライブラリを形成するヒット変異体類組み合わせを作製する段階;スコア関数を用いて、前記ヒット変異ライブラリのメンバーが前記リード構造テンプレートと構造的に適合するかどうかを決定する段階;および前記リード配列に等しいかまたはそれよりも優れたスコアのヒット変異ライブラリメンバー類を選択する段階を含む。
【0128】
特定の態様において、前記方法は、下記の段階を含む:a)リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階で、前記リード抗体は、公知の3次元構造を有し;b)前記リード抗体のCDRs中アミノ酸配列を同定する段階;c)前記リード抗体のVHまたはVL領域中においてCDRsのひとつを選択する段階;d)選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列であり;e)前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階;f)前記複数の試験たんぱく質配列類から、リード配列に対して少なくとも10%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成し;g)リード配列の各位置におけるアミノ酸変異体の出現頻度に基づきヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;h)前記ヒットライブラリ中のアミノ酸変異体類を組み合わせてヒット変異ライブラリを形成するヒット変異体類組み合わせを作製する段階;I)スコア関数を用いて、前記ヒット変異ライブラリのメンバーが前記リード構造テンプレートと構造的に適合するかどうかを決定する段階;j)前記リード配列に等しいかまたはそれよりも優れたスコアのヒット変異ライブラリメンバー類を選択する段階;k)ヒット変異ライブラリの選択したメンバー類のアミノ酸配列をコードするDNAセグメント類を含む変性核酸ライブラリを構築する段階;l)核酸ライブラリの多様性を決定しもし多様性が1×106よりも大きいならば、核酸ライブラリの多様性が1×106に等しいかそれよりも小さくなるまでj)からl)の段階を繰り返すこと;m)前記変性核酸ライブラリのDNAセグメント類を宿主生物の細胞中に導入する段階;n)ヒットライブラリのアミノ酸配列を含む組み換え抗体類が宿主生物細胞中で産生されるように前記DNAセグメント類を前記宿主細胞中で発現させる段階;o)106-1を超えるアフィニティを有する標的抗原に結合する組み換え抗体を選択する段階;およびp)106-1を超えるアフィニティを有する標的抗原に結合する組み換え抗体がまったく見出せないならば、段階e)乃至o)を繰り返すこと。
【0129】
別の特定の態様において、前記方法は、下記の段階を含む:a)リード抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域のアミノ酸配列を提供する段階で、前記リード抗体は、リード構造テンプレートと規定される公知の3次元構造を有し;b)前記リード抗体のCDRs中アミノ酸配列を同定する段階;c)前記リード抗体のVHまたはVL領域中においてCDRsのひとつを選択する段階;d)選択したCDR中において少なくとも3個の連続的アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を提供する段階で、ここで、前記選択したアミノ酸配列はリード配列と規定され;e)前記リード配列を、1個以上の異なるアミノ酸残基により前記リード配列のアミノ酸残基の1個以上を置換することによって変異させ、リード配列変異ライブラリを作製し;f)第1スコア関数を用いて前記リード配列変異ライブラリの1メンバーが前記のリード構造テンプレートと構造的に適合できるか決定する段階;g)前記リード配列と等しいかまたはそれよりも優れたリード配列変異体類を選択する段階;h)前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階;I)前記複数の試験たんぱく質配列類から、リード配列に対して少なくとも10%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択する段階で、ここで、前記選択したペプチドセグメントは、ヒットライブラリを形成し;j)リード配列の各位置におけるアミノ酸変異体の出現頻度に基づきヒットライブラリのアミノ酸位置変異プロフィールを作成する段階;k)前記ヒットライブラリ中のアミノ酸変異体類を組み合わせて、ヒット変異ライブラリを形成するヒット変異体類組み合わせを作製する段階;l)選択したリード配列変異体類をヒット変異体類の組み合わせと組み合わせて、ヒット変異体ライブラリを作製すること;m)スコア関数を用いて、前記ヒット変異ライブラリのメンバーが前記リード構造テンプレートと構造的に適合するかどうかを決定する段階;n)前記リード配列に等しいかまたはそれよりも優れたスコアのヒット変異ライブラリメンバー類を選択する段階;o)ヒット変異ライブラリの選択したメンバー類のアミノ酸配列をコードするDNAセグメント類を含む変性核酸ライブラリを構築する段階;p)核酸ライブラリの多様性を決定しもし多様性が1×106よりも大きいならば、核酸ライブラリの多様性が1×106に等しいかそれよりも小さくなるまでn)からp)の段階を繰り返すこと;q)前記変性核酸ライブラリのDNAセグメント類を宿主生物の細胞中に導入する段階;r)ヒットライブラリのアミノ酸配列を含む組み換え抗体類が宿主生物細胞中で産生されるように前記DNAセグメント類を前記宿主細胞中で発現させる段階;s)106-1を超えるアフィニティを有する標的抗原に結合する組み換え抗体を選択する段階;およびt)106-1を超えるアフィニティを有する標的抗原に結合する組み換え抗体がまったく見出せないならば段階e)乃至s)を繰り返すこと。
【0130】
さらに本発明の別の面において、リード抗体に基づき変異抗体類ライブラリを構築するためのコンピュータ実施方法が提供される。
【0131】
1態様において、本方法は、前記リード抗体のCDR領域中少なくとも3個の保存アミノ酸残基を含むアミノ酸配列をインプットとして採用し、前記アミノ酸配列はリード配列であり;前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類と比較するコンピュータ実行ロジックを用いること;前記複数の試験たんぱく質配列類から、リード配列に対して少なくとも15%の配列同一性を有する少なくとも2個のペプチドセグメント類を選択すること;およびヒットライブラリを形成する選択したペプチドセグメント類をアウトプットとして作成することを含む。
【0132】
上記方法類のいずれかによれば、リード配列の長さは、好適には5−100aa、さらに好適には6−80aa,および最も好適には8−50aaである。
【0133】
また上記方法類のいずれかによれば、CDRs中アミノ酸配列を同定する段階は、Kabat基準またはChothia基準を用いることによって、実施される。
【0134】
前記方法類のいずれかによれば、また、前記リード配列は、前記リード抗体のVHまたはVL内部の特定領域、CDR1,CDR2またはCDR3由来のアミノ酸またはCDR1−FR2、FR2−CDR2−FR3のような前記CDRとFRsとの組み合わせ由来のアミノ酸と全長VHまたはVL配列を含むことができる。前記リード配列は、好適には、選択したCDR中において少なくとも6個の保存アミノ酸残基類、好適には少なくとも7個の保存アミノ酸残基類、および最も好適には選択したCDR中アミノ酸残基全てを含む。
【0135】
上記方法類のいずれかによれば、また、前記リード配列は、選択したCDRに最も隣接しているアミノ酸残基類の少なくとも1個を含むことができる。
【0136】
上記方法類のいずれかによれば、また、前記リード配列は、選択したCDRに隣接しているFRsの少なくとも1個を含むことができる。
【0137】
上記方法類のいずれかによれば、また、前記リード配列は、選択したCDRのC末端またはN末端に隣接している1個以上のCDRsまたはFRsを含むことができる。
【0138】
上記方法類のいずれかによれば、また、前記リード構造テンプレートは、完全に組み立てられたリード抗体、または前記リード抗体の重鎖または軽鎖可変領域(例 CDR,FRおよびその組み合わせ)の3D構造であることができる。
【0139】
また上記方法類のいずれかによれば、複数の試験たんぱく質配列類には、特にフレームワーク領域類のための好適には抗体配列類、さらに好適にはヒト抗体配列類、最も好適にはヒト生殖細胞系抗体配列類(V−データベース)を含む。
【0140】
また上記方法類のいずれかによれば、複数の試験たんぱく質配列類は、抗体類のCDRsについてのNIHのgenbank、またはSwiss−ProtデータベースまたはKabatデータベースから検索して得ることができる。
【0141】
また上記方法類のいずれかによれば、前記リード配列を複数の試験たんぱく質配列類と比較する段階は、BLAST,PSI−BLAST,プロフィールHMM、およびCOBLATHから構成される群から選択されたアルゴリズムによって実施される。
【0142】
また上記方法類のいずれかによれば、ヒットライブラリ中の選択したペプチドセグメント類のリード配列との配列同一性は、好適には少なくとも25%、好適には少なくとも35%および最も好適には少なくとも45%である。
【0143】
また上記方法類のいずれかによれば、前記方法はさらに、下記の段階を含む:前記核酸または変性核酸ライブラリ中のDNAセグメント類を宿主生物の細胞中に導入する段階;ヒットライブラリのアミノ酸配列を含む組み換え抗体類が宿主生物細胞中で産生されるように前記DNAセグメント類を前記宿主細胞中で発現させる段階;および106-1を超えるアフィニティ、適宜107-1を超えるアフィニティ、適宜108-1を超えるアフィニティ、適宜109-1を超えるアフィニティ、適宜2×109-1を超えるアフィニティ、適宜5×109-1を超えるアフィニティ、適宜1×1010-1を超えるアフィニティ、適宜5×1010-1を超えるアフィニティ、適宜1×1011-1を超えるアフィニティにより標的抗原に結合する組み換え抗体を選択する段階。
【0144】
前記組み換え抗体類は、完全に組み立てられた抗体類、Fab断片類、Fv断片類または一重鎖抗体類であることができる。
【0145】
前記宿主生物には、細菌類、酵母、植物、昆虫および哺乳類を含むいかなる生物またはその細胞株を含むが、それらは移入された外来遺伝子配列を発現可能であるものであるが、ただしそれらに限定されない。
【0146】
前記組み換え抗体類は、完全に組み立てられた抗体類、Fab断片類、Fv断片類または一重鎖抗体類であることができる。たとえば、前記組み換え抗体類は、細菌細胞中で発現されファージ粒子表面上でディスプレイされる。ファージ粒子上でディスプレイされた組み換え抗体類は、VHとVLの間で形成されたニ重鎖ヘテロダイマーであることができる。VHとVL鎖のヘテロダイマー化は、それぞれVHとVLに融合した2個の非抗体ポリペプチド鎖の間に形成されたヘテロダイマーにより促進することができる。たとえば、これらの2個の非抗体ポリペプチドは、ヘテロダイマー性のレセプター類GABAB R1(GR1)およびR2(GR2)からそれぞれ由来することができる。
【0147】
これとは別に、ファージ粒子上にディスプレイされた組み換え抗体類は、ペプチドリンカーにより連結されたVHとVLを含む一重鎖抗体であることができる。ファージ粒子表面上の一重鎖抗体のディスプレイは、GR1と一重鎖抗体の融合物およびGR2とファージpIIIカプシドたんぱく質の融合物の間に形成されたヘテロダイマーによって促進することができる。
【0148】
スクリーニングするための標的抗原には、小分子類およびたんぱく質類、ペプチド類、核酸類およびポリカーボハイドレート類のような大分子類が含まれる。
【0149】
上記方法のいずれもさらに下記の段階を含むことができる:前記核酸または変性核酸ライブラリ中のDNAセグメント類を宿主生物の細胞中に導入する段階;ヒットライブラリのアミノ酸配列を含む組み換え抗体類が宿主生物細胞中で産生されるように、前記DNAセグメント類を前記宿主細胞中で発現させる段階;および106-1を超えるアフィニティにより標的抗原に結合する組み換え抗体を選択する段階。
【0150】
前記選択した組み換え抗体の標的抗原に対する結合アフィニティは、適宜107-1を超え、適宜108-1を超え、適宜1×109-1を超え、適宜2×109-1を超え、適宜5×109-1を超え、適宜8×109-1を超え、適宜1×1010-1を超え、適宜2×1010-1を超え、適宜5×1010-1を超え、適宜8×1010-1を超えまたは適宜1×1011-1を超える。
【0151】
選択した抗体のその抗原に対する結合アフィニティは、試験する抗体形態に応じて変動することがある。選択した試験抗体は、本発明の方法を用いることによって設計したVHおよびVLを含む一重鎖抗体(scFv)の形態であることもできる。選択した試験抗体は、適宜、本発明の方法を用いることによって設計したVHおよびVLを含むFabの形態であることもできる。おそらく立体構造が高度に可撓性であり不安定であるがゆえに、scFv形態の選択抗体の結合アフィニティは、Fab形態のそれよりも1−2桁小さいであろう。したがって、scFv形態の選択抗体について、解離定数は、好適には106-1より小さく、適宜107-1を超え、適宜1×108-1を超え、適宜2×108-1を超え、適宜5×108-1を超え、適宜8×108-1を超え、適宜1×109-1を超え、適宜2×109-1を超え、適宜5×109-1を超え、適宜8×109-1を超え、適宜1×1010-1を超え、適宜5×1010-1を超えまたは適宜1×1011-1を超える。
【0152】
選択した組み換え抗体の標的高原に対する結合アフィニティは、また、ある温度(例 4℃、25℃、35℃、37℃または42℃)で、例えばBIAcoreバイオセンサー(実施例参照)のような機器を用いることによって、抗体と標的抗原との結合相互作用の動態研究で測定した解離定数Kdによって、表すこともできる。一般的に、測定したKdが小さいほど、抗体のアフィニティは高くなり、測定温度が高くなるほど、同一抗体について測定したKdは大きくなる。
【0153】
選択した抗体のKdは、scFv、Fabの形態でまたは他の抗体形態で測定した温度約4℃、25℃、35℃、37℃または42℃において、適宜100nMよりも小さく、適宜10nMよりも小さく、適宜8nMよりも小さく、適宜8nMよりも小さく、適宜5nMよりも小さく、適宜1nMよりも小さく、適宜0.8nMよりも小さく、適宜0.5nMよりも小さく、適宜0.2nMよりも小さく、適宜0.1nMよりも小さく、適宜0.08nMよりも小さく、適宜0.05nMよりも小さく、適宜0.01nMよりも小さく、適宜0.005nMよりも小さい。
【0154】
上記態様のいずれかによれば、設計したたんぱく質類(例 抗体類)は合成でき、いかなる生物の細胞中でも発現でき、菌類、酵母、植物、昆虫および哺乳類を含むがこれらに限定されない。特定細胞タイプには、ドロソフィラスメラノガsター(Drosophila melanogaster)細胞、サッカロマイセスセレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)および他の酵母類、大腸菌、バシラスサブチラス(Bacillus subtilis)、SF9細胞、C129細胞、293細胞、ニューロスポラ(Neurospora)、BHK,CHO,COSおよびHeLa細胞、線維芽細胞、シュワノーマ(Schawanoma)細胞株、不死化哺乳類骨髄およびリンパ節細胞株、ジュルカット(Jurkat)細胞、肥満細胞および他の内分泌および外分泌細胞およびニューロン細胞が含まれるが、これらに限定されない。哺乳類細胞の例には、全タイプ(特に、メラノーマ、骨髄性白血病、肺、胸部、卵巣、結腸、腎臓、前立腺、すい臓および精巣のカルシノーマ)、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞およびB細胞)、肥満細胞、抗酸球、血管内膜細胞、肝細胞、単核球白血球、造血、ニューロン、皮膚、肺、腎、および筋細胞幹細胞類のような幹細胞類、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞類、ケラチノサイト、メラノサイト、肝細胞、腎細胞および脂肪細胞の腫瘍細胞類を含むが、それらに限定されない。
【0155】
好適には、設計したたんぱく質を、当業者に公知の方法により発現させた後、精製または単離する。精製方法の例には、電気泳動、分子、免疫およびイオン交換、疎水性、アフィニティ、および逆相HPLCクロマトグラフィを含むクロマトグラフィ技術、およびクロマトフォーカシングが含まれる。必要な精製度は、設計したたんぱく質の用途に応じて変動するであろう。いくつかの場合、精製が全く必要ないであろう。
【0156】
上記態様のいずれかによれば、また、設計したたんぱく質類について、所望の機能、好適には公知の結合パートナーに対するそれらの結合、生理活性、安定性プロフィール(pH、温度、緩衝液条件)、基質特異性、免疫原性、毒性等のような生物機能についてスクリーニングできる。
【0157】
細胞に基づくアッセイを用いたスクリーニングにおいて、設計したたんぱく質は、好適には検出可能でおよび/または測定可能な方法で、改変細胞表現型に基づいて、選択することができる。表現型変化の例には、細胞形態、細胞増殖、細胞生存性、基質または他の細胞への接着、および細胞濃度における変化のような全体としての生理的変化;1個以上のRNA,たんぱく質類、脂質類、ホルモン類、サイトカイン類、または他の分子類の発現変化;1個以上のRNA、たんぱく質類、脂質類、ホルモン類、サイトカイン類、または他の分子類の平衡状態(すなわち、半減期)変化;1個以上のRNA、たんぱく質類、脂質類、ホルモン類、サイトカイン類、または他の分子類の局在変化;1個以上のRNA,たんぱく質類、脂質類、ホルモン類、サイトカイン類、レセプター類、または他の分子類の生物活性または特異的活性の変化;イオン類、サイトカイン類、ホルモン類、成長因子類、または他の分子類の分泌変化;細胞膜電位、分極、一体性または移送の変化;ウイルス類および細菌性病原体の感染性、感受性、潜伏性、接着、および取り込み変化のような全体としての物理的変化が含まれるが、それらに限定されない。
【0158】
上記態様のいずれかによれば、設計したたんぱく質類(例 抗体類)は、合成できまたはタグたんぱく質またはペプチドとの融合たんぱく質として発現させることもできる。前記タグたんぱく質またはペプチドは、設計したたんぱく質類の同定、単離、シグナル伝達、安定化、可とう性増加、分解増加、分泌、転座または細胞内保持の増加またはその発現の増強のために使用することができる。
【0159】
本発明は、さらに、下記を提供する:前記抗体をコードする単離核酸;ベクターで形質転換した宿主細胞により認識される配列を制御するように適宜機能できるように連結させたその核酸を含むベクター;このベクターを含む宿主細胞;核酸が発現されるように宿主細胞を培養すること、前記抗体を宿主細胞培養物から回収することを含む前記抗体産生プロセス。
【0160】
3.本発明の抗体類を使用する方法
本発明の方法類を用いることによって設計した抗体類は、癌、多発性硬化、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病および重症筋無力症のような自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、心脈管系疾患、HIV,肝炎ウイルス類、および単純ヘルペスウイルスのようなウイルス感染、菌感染、アレルギー、II型糖尿病、貧血のような造血障害のようなさまざまな疾患類の診断または治療に使用できるが、それらに限定されない。
【0161】
前記抗体類は、また、診断または治療上の機能基と連結した結合物としてまたは化学療法または生物剤と併用して使用できる。
【0162】
本発明の抗体類は、アフィニティ精製物質類として使用することもできる。このプロセスにおいて、前記抗体類を、当該技術で周知の方法類を用いてセファデックスレジンまたはろ紙のような固相上に固定化する。前記固定抗体を、精製するVEGFたんぱく質(またはその断片)を含む試料に接触させ、その後、前記支持体をVEGFたんぱく質以外の試料中全物質を実質的に除去するであろう適切な溶媒で洗浄するが、前記VEGFたんぱく質は、前記固体化抗体に結合している。最後に、前記支持体を、グリシン緩衝液pH5.0のような別の適切な溶媒で洗浄し、それは、VEGFたんぱく質を前記抗体から放出するであろう。
【0163】
また、抗VEGF抗体類は、VEGFたんぱく質の診断アッセイに有用で、例えば、その発現を特異的細胞類、組織類または血清中で検出する。このような診断方法類は、癌の診断において有用であることができる。
【0164】
診断適用のため、前記抗体は、検出可能な機能基で標識することもできる。たとえば、前記抗体は、例えばCurrent Protocols in Immunology,Volumes 1および2、Coligenら編著、Wiley−Interscience,New York、New York,Pubs.(1991)に記載の技術を用いて35S,14C,125I,3Hおよび131Iのような放射性同位元素により標識でき、放射能は、シンチレーション計測により測定できる。
【0165】
前記抗体は、また、希土類キレート類(例 ユーロピウムキレート類)、フルオロセイン、ローダミンおよびその誘導体類、ダンシル、リサミン、フィコエリスリンおよびテキサスレッドのような蛍光標識を結合させることができる。前記蛍光標識は、例えばCurrent Protocols in Immunology、同上に開示の技術を用いて、前記抗体に結合させることができる。蛍光は、蛍光計測計を用いて、定量できる。
【0166】
前記抗体は、米国特許4,275,149に開示のもののようなさまざまな酵素基質標識類により標識できる。前記酵素は、一般的に、発色性基質の化学的変化を触媒し、それは、さまざまな技術を用いて測定できる。たとえば、前記酵素は、基質の色変化を触媒でき、それは、分光分析により測定できる。これとは別に、前記酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させることがある。
【0167】
診断の1適用において、本発明は、VEGFたんぱく質存在を決定する方法を提供し、前記方法は、VEGFたんぱく質含有の疑いのある試料を抗VEGF抗体に暴露させることおよび前記抗体の試料への結合を決定することを含む。この用途のため、本発明は、前記抗体とこの抗体を用いてVEGFたんぱく質を検出するための指示書を含むキットを提供する。
【0168】
本発明の抗体類は、また、広範のさまざまな投与経路による運搬のために製剤化することができる。所望の純度を有する前記抗体を適宜生理的に許容でき凍結製剤または水溶液の形状の担体類、賦形剤類または安定化剤類(Remington‘s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、前記抗体の治療製剤を保存用に調製する。たとえば、前記抗体類は、経口、局所、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮的、舌下、筋肉内、直腸内、経頬肉で、鼻腔内に、膣内に、眼内に、局所運搬により(例えば、カテーテルによりまたはステントにより)、皮下、肥満細胞内に、関節内または髄腔内に投与することもできるしまたは共投与することもできる。
【0169】
疾患の種類および重篤度に応じて、抗体約1μg/kg乃至50mg/kg(例 0.1−20mg/kg、0.5−15mg/Kg、および1−10mg/kg)が患者に投与するための初期候補投与量であり、例えば、1回以上の分離投与によるかまたは連続点滴により投与する。一般的な一日または毎週投与量は、約1μg/kgから約20mg/kg以上の範囲であることができ、それは、上記因子類に依存している。状態に応じて数日間以上にわたり繰り返し投与する場合には、疾患症状が所望したように抑制されるまで治療を繰り返す。しかし、他の投与処方も有用であることができる。この治療の経過は、例えばラジオグラフィ腫瘍イメージングを含む従来の技術やアッセイによって容易にモニタリングする。
【0170】
本発明の抗VEGF抗体類を用いて、抗VEGF抗体が治療活性を有する広範のさまざまな適応症を治療するために使用することができる。このような適応症には、再梗塞(例 冠、総頸動脈および脳病巣類)、良性腫瘍、原発性腫瘍および腫瘍転移を含むさまざまなタイプの癌類、内皮細胞の異常刺激(動脈硬化)、手術、異常創傷治癒、異常新脈管形成、組織線維化をもたらす疾患類、筋肉変性、反復性運動障害、高度には血管化されていない組織の障害、および臓器移植に関連した増殖性応答を含むがこれらに限定されない。
【0171】
良性腫瘍の例には、ヘマンギオーマ、肝細胞性アデノーマ、海綿状へマンギオーマ、病巣結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管シスタノーマ、線維腫、脂肪腫類、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、肉腫類、結節性再生性過形成、トラコーマ類および発熱性肉芽腫類が含まれる。
【0172】
癌の具体的タイプには、白血病、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、咽頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌、基底細胞カルシノーマ、潰瘍化および乳頭状の両タイプの扁平細胞カルシノーマ、転移性皮膚カルシノーマ、骨肉腫、アーウィング肉腫、ベティキュラム細胞肉腫、骨髄腫、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性リンパ球性および顆粒球性腫瘍、毛細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、骨髄カルシノーマ、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸管神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫様腫瘍、頚部異形成およびインサイチュカルシノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、柔組織肉腫、悪性カルチノイド、局所皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性赤血球増加症、アデノカルシノーマ、多形成グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性メラノーマ、類表皮腫、および他のカルシノーマ類および肉種類を含むが、それらに限定されない。
【0173】
異常新脈管形成に関連した疾患には、慢性関節リウマチ、虚血性再潅流関連脳浮腫および傷害、皮質虚血、卵巣過形成および過血管、(多膿胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症(水晶体後方の線維形成性)、黄斑変性症、角膜移植拒絶、ニューロスキューラー緑内障およびオスターウェッバー症候群を含むが、これらに限定されない。ある特定の態様において、本発明の坑VEGF抗体類を、加齢関連黄斑変性症(AMD)を治療するために使用することができる。
【0174】
網膜/脈絡膜の新血管形成の例には、ベストス(Bests)疾患、近視、眼の小窩、スターガルツ疾患類、ページェット疾患、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状細胞貧血、類肉腫、梅毒、弾性線維仮性黄色腫総頚動脈アボストラクティブ疾患類、慢性ブドウ膜炎/ガラス体炎、マイコバクテリア感染、ライム疾患、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、エールズ疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎を起こす感染、仮性眼ヒストプラスマ症、パーズプラニティス、慢性網膜はく離、超粘性症候群、トキソプラズマ症、外傷およびレーザー後合併症、ルベーシス(足根関節の新血管形成)関連疾患類および増殖性ガラス体網膜症のあらゆる形態を含む線維脈管性または線維組織の異常増殖が原因の疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
角膜新血管形成の例には、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過剰装着、異所性角膜炎、上輪部角膜炎、肥大した眼球結膜下組織の三角形班角膜炎複合、シェーグレン、酒さ性ざそう、ファイレクテニュローシス、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、ムーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角膜溶解、多発性動脈炎、ウェーグナー肉腫、強膜炎、ペリフェゴイド放射状角膜石灰化、新血管形成性緑内障および水晶体後方の線維増殖、梅毒、マイコバクテリア感染症、脂質変性、化学物質火傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、ヘルペスゾスター感染症、プロトゾアン感染症およびカポジ肉腫が挙げられるが、それらに限定されない。
【0176】
本発明の抗VEGF抗体類は、異常新血管形成に関連した疾患の治療のため、抗新血管形成剤と併用して使用できる。
【0177】
坑新血管形成剤の例には、レチノール酸およびその誘導体類、2−メトキシエストラジオール、ANGIOSTATINTMたんぱく質、ENDOSTATINTMたんぱく質、スラミン、スクラミン、メタロプロテイネース−1の組織阻害剤、メタロプロテイネース−2の組織阻害剤、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤−2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板因子4、プロタミンスルフェート(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体類(クイーンクラブ殻から調製)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、マトリックス代謝の調節剤類で例えばプロリンアナログ類((1−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シスハイドロキシプロリン、d,l−3、4−デハイドロプロリン、チオプロリン〕、α、α−ジピリジル、β−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3h)−オキサゾリン;メソトレキセート、ミトキサトロン、ヘパリン、インタフェロン類、2マクログロブリン−血清、チンプ−3、カイモスタチン、ベータ.−シクロデキストリンテトラデカサルフェート、エポネマイシン;フマギリン、金ナトリウムチオマレート、d−ペニシラミン(CDPT)、ベータ.−1−抗コラゲナーゼ−血清、□2−アンチプラスミン、ビスアントレン、ロベンザリット2ナトリウム、n−(2−カルボキシフェニル−4−クロロアンスロニン酸2ナトリウムすなわち“CCA”、サリドマイド;アンゴスタチックステロイド、カルゴボキシナミノルミダゾール;BB94のようなメタロプロテイナーゼ阻害剤類が含まれるが、それらに限定されない。他の抗新血管形成剤には、これらの新血管形成成長因子類bFGF,aFGF、FGF−5、VEGFイソフォーム類、VEGF−C,HGF/SFおよびAng−1/Ang−2に対するモノクローナル抗体類のような抗体類が含まれる。
【0178】
本発明の抗VEGF抗体類、好適には抗VEGF抗体類と治療上相乗効果を有するものは、抗VEGF抗体類と併用使用でき、これらの2種の薬物の治療効果をさらに増強する。前記治療剤の例には、アルキル化剤類、抗生物質類、抗代謝剤類、ホルモン剤類、植物由来物質類、および生物製剤類が含まれるが、それらに限定されない。
【0179】
アルキル化剤類の例には、ビスクロロエチルアミン類(ナイトロゲンマスタード類、例 クロラムブシル、シクロホスファマイド、イフォスファミド、メクロロエタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン類(例 チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート類(例 ブスルファン)、ニトロソウレア類(例 カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、従来にないアルキル化剤類(アルトレタミン、デカルバジン、およびプロカルバジン)、白金化合物類(カルボプラチンおよびシスプラチン)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0180】
抗生物質類の例には、アンスラサイクリン類(例 ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアンスラセンエジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンが含まれるが、それらに限定されない。
【0181】
抗代謝剤類の例には、フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(5−FUdR)、メソトレキセート、ロイコボリン、ハイドロキシウレア、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、フルダラビンホスフェート、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼ、イマチニブメシレート(すなわちGLEEVAC(登録商標))、およびゲンシタビンが含まれるが、これらに限定されない。
【0182】
上記ホルモン剤類の例には、合成エストロゲン類(例 ジエチルスチベストロール)、抗エストロゲン剤類(例 タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロールおよびラロキシフェン)、抗アンドロゲン類(ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼ阻害剤類(例 アミノグルテチイミド、アナストロゾールおよびテトラゾール)、ケトコナゾール、ゴセレリンアセテート、ロイプロリド、メゲストロールアセテートおよびミフェプリストンが含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
植物由来物質類の例には、ビンカアルカロイド類(例 ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジンおよびビノレルビン)、ポドフィロトキシン類(例 エトポシド(VP−16)およびテニポシド(VM−26))、カンプトテシン化合物類(例 20(S)カンプトテシン、トポテカン、ルビテカンおよびイリノテカン)、タキサン類(例 パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれるが、それらに限定されない。
【0184】
生物製剤類の例には、サイトカイン類のような免疫調節たんぱく質類、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体類、腫瘍抑制剤遺伝子類、および癌ワクチン類が含まれるが、それらに限定されない。本発明の抗体と関連させて使用することもできるインタロイキン類の例には、インタロイキン2(IL−2)、およびインタロイキン4(IL−4)、インタロイキン12(IL−12)が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の抗体と関連させて使用することもできるインタフェロン類の例には、インタフェロンa、インタフェロンb(線維芽細胞インタフェロン)およびインタフェロンg(線維芽細胞インタフェロン)が挙げられるが、それらに限定されない。上記サイトカイン類の例には、エリスロポエイチン(エポイエチンa)、顆粒球−CSF(フィルグラスチン)、および顆粒球、マクロファージ−CSF(サルグラモスチム)が含まれるが、それらに限定されない。サイトカイン以外の他の免疫調節剤類には、バシラス属カルメッテ−グエリン(Calmette−Guerin)、レバミゾール、およびオクトレオチドが含まれるが、それらに限定されない。
【0185】
本発明の抗VEGF抗体類は、また、上記疾患類または状態類の治療において、腫瘍壊死因子(TNF)またはそのムテインと併用できる。抗VEGF抗体とTNFの投与は、所望の臨床的効果が得られるまで繰り返す。全身循環から分離されやすい四肢または他の部位に固形腫瘍が見出された場合には、前記抗体および/またはTNFを分離した腫瘍または臓器に投与することもできる。他の態様において、抗FGFまたは抗PDGF中和抗体のようなFGFまたは血小板由来成長因子(PDGF)アンタゴニストを、患者に対して前記抗VEGF抗体と関連投与する。抗VEGF抗体類による治療は、創傷治癒または望ましい新血管形成の間持続するのが最適である。
【0186】
腫瘍抗原類に対するモノクローナル抗体類で本発明の抗VEGF抗体類と関連使用できるモノクローナル抗体類の例には、HERCEPTIN(登録商標)(トラストルズマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン)、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブイウキセタン)、PANOREX(登録商標)(エドレコロマブ)、BEXXAR(登録商標)(トシツモマブ)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)、およびAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)が含まれるが、それらに限定されない。
【0187】
腫瘍抑制剤遺伝子類の例には、DPC−4,NF−1,NF−2,RB、p53、WT1,BRCA1およびBRCA2が挙げられるが、それらに限定されない。
【0188】
腫瘍ワクチン類の例には、ガングリオシド類(GM2)、前立腺特異的抗原(PSA)、□−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(結腸癌および乳癌、肺癌、消化管および膵臓癌のような他のアデノカルシノーマ類によって産生)、メラノーマ関連抗原類(MART−1、gp100、MAGE1,3チロシナーゼ)、パピローマウイルスE6およびE7断片類、アントロガウス腫瘍細胞類および同種異系間腫瘍細胞類の全細胞または部分/融解物を含むが、それらに限定されない。
【0189】
アジュバントを用いて、TAAsに対する免疫応答を促進することもできる。アジュバント類の例には、バシラス属カルメッテ−グエリン(BCG)、エンドトキシンリポポリサッカライド類、カブトガニヘモシアニン(GKLH)、インタロイキン−2(IL−2)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびサイトキサン、低用量で投与すると腫瘍誘発抑制を低下させると考えられている化学療法剤を含むが、それらに限定されない。
(実施例)
【0190】
1.ヒト化およびアフィニティ成熟のための抗VEGF抗体類のインシリコ設計
本発明が提供した方法論を用いて、非ヒト抗体類のヒト化のためのライブラリを設計しかつ抗体類のアフィニティおよび他の属性を最適化した。抗体類の新しいアミノ酸類および核酸類変異体を、ヒトまたはヒト様配列類により産生させ、それらの結合アフィニティ、安定性、発現を有意に改善する。
【0191】
本発明のプロセスは、全生物類、特にヒトのたんぱく質配列類のますます増えるデータベースを検索することおよびそれらの特異的配列類またはそれらの変異体を実験的に試験する結合アフィニティおよび安定性のような機能的増強と関連付けることによって、高処理量でコンピュータ計算により実施した。本発明の方法論を用いることによってインシリコで非常に多様なたんぱく質配列類と機能的に関連する構造類をコンピュータ計算により評価したことに基づいて、機能的にはバイアスを含む抗体類拡大ライブラリを構築し、その後、インビトロまたはインビボで実験的スクリーニングと選択により試験した。
【0192】
通常、前記方法は、リードたんぱく質中の標的構造/機能的モチーフまたはドメインの以下“リード配列”と称するアミノ酸配列に基づき、たんぱく質配列類をインシリコで選択することにより、コンピュータで実行した。前記リード配列を用いて、たんぱく質配列類のデータベースを検索した。データベースの選択は、設計したモチーフの具体的機能的要件に依存する。たとえば、もし前記リードたんぱく質が酵素で前記標的モチーフが前記酵素の活性部位を含むならば、特定起源、生物、種またはその組み合わせのたんぱく質類/ペプチド類のデータベース類を、さまざまな検索基準を用いて検討し、それぞれが前記リードたんぱく質中の標的モチーフの代わりとなることができる配列類のヒットリストを得る。同様の手法を用いて、リードたんぱく質の他のモチーフ類またはドメイン類を設計する。それぞれの各モチーフ/ドメインについての設計配列を組み合わせて、設計たんぱく質類のライブラリを作成する。さらに、治療または診断のようなヒト適用のための設計たんぱく質類の免疫性を低下させるため、好適にはヒト起源のたんぱく質類またはヒト化たんぱく質類のデータベースを検索して、特に抗体フレームワーク類のようなリードたんぱく質類の骨格として作用するリードたんぱく質の部位に由来するモチーフ用に、配列類のヒットリストを得る。設計したたんぱく質類のライブラリを実験的に試験して、リードたんぱく質に勝る改善された生物機能(類)を有するたんぱく質類を得る。
【0193】
この実施例において、本発明の方法論は、配列が多様であるがそれでいて機能的には互いに関連している抗VEGF抗体類の設計において、実施した。設計した抗体配列類に基づき、非ヒト抗体の相補性決定領域類(CDRs)および/またはヒト化フレームワーク類(FRs)の多様な配列類を含む抗体類ライブラリを高処理量で構築した。この抗体ライブラリを、結合アフィニティおよび薬物動態性質のような機能改善についてヒトVEGFに対してスクリーニングした。
【0194】
坑VEGF抗体類設計において、以下“リード配列”と称するリードVEGF抗体中ある領域またはモチーフのアミノ酸配列に基づき、抗体配列類のインシリコ選択を行った。前記リード配列を用いてたんぱく質配列類のデータベース類を検索した。データベースの選択は、設計したモチーフ類の具体的機能的用件に依存する。たとえば:治療適用のため可変鎖のフレームワーク領域類を設計するため、2−3の構造上重要な部位を除いて完全ヒトイムノグロブリン配列類およびヒト生殖細胞イムノグロブリン配列類のような進化上関連するたんぱく質配列類のコレクションを用いるであろう。これにより、この高度に保存された領域(フレームワーク領域類用)中に可能な限りわずかの外来変異を導入することにより前記配列類の元来の姿を維持することにより、免疫応答を低下させるであろう。一方、genbank中のさまざまな種のイムノグロブリン配列類または関連のない配列類のような多様な配列データベース類を用いて、この高度に保存された領域中における抗原類に対する結合アフィニティを向上させるため、CDRsを設計できる。この方法を用いて、多様な抗体配列類のライブラリを構築して、改良されたかまたは所望の機能(類)を有する抗体変異体類をインビトロおよび/またはインビボで実験的にスクリーニングした。
【0195】
1)アフィニティ成熟のためにインシリコで設計した抗VEGF抗体ライブラリ類
マウス抗VEGF抗体の可変重鎖領域類およびフレームワーク類およびCDRs(下線を付しかつ注解をつけた)のセグメント類のアミノ酸配列は:
【化28】

(配列番号283)
である。
【0196】
このVH配列は以下、“親抗VEGF抗体”と称する。前記フレームワーク類とCDRsは、Kabat基準に基づき命名する(Kabat EA,Redi−Miller M.,Perry HM,Gottesman KS(1987)Sequences of Proteins of Immunological Interest 第4版、National Institute of Health、Bethesda,MD)。
【0197】
抗体のCDRとフレームワーク領域類は、さらに詳細には米国特許出願第10/443,134、10/153,159、10/153,176、10/125,687、および60/284,407に記載されたモジュラーインシリコ進化設計アプローチを用いて、標的とした。これらの出願は、本文でその全文を参考として引用した。マウス抗VEGF抗体をリードたんぱく質として用いリード配列としてそのVH CDR3を用いて、前記操作に従い、VH CDR3のデジタルライブラリ類を構築した。
【0198】
前記リード配列は、親抗VEGF抗体のVH CDR3と隣接するフレームワーク領域類
【化29】

由来の2−3個のアミノ酸残基類を含む。ヒットライブラリは、配列データベースからVH CDR3に対するヒットアミノ酸配列類を検索し選択することによって、構築した。変異体プロフィールは、ヒットライブラリに基づき各位置における全ての変異体類をリストして作成し、あるカットオフ値でフィルタリングしコンピュータ計算によるかまたは実験的な限界に留まるように、精製したヒット変異体ライブラリの大きさを小さくした。変異体プロフィールはまた、i)フィットネスという観点から好適な領域をカバーする配列空間のサンプリング;ii)好適なペプチドエンゼンブル配列類を標的とする変性核酸ライブラリ類の分配および合成;iii)所望の機能について抗体ライブラリの実験的スクリーニング;およびiv)さらに設計と最適化のため実験結果をフィードバック分析することを促進するため、作成した。
【0199】
リード構造テンプレート類は、VEGFと抗VEGF抗体類との間に形成された複合体類の利用可能なX線構造類から得られた。VEGFと親抗VEGF抗体の複合体構造を、1BJ1と命名し、VEGFと成熟抗VEGF抗体の間に形成されたそれを、1CZ8と命名した。1CZ8構造テンプレートによる結果は、相対的なスキャン配列類の相対的ランクオーダーは1BJ1のそれらと同様であった。抗VEGF抗体類の構造モデル類も、また、使用できる。
【0200】
H CDR3に対するリード配列は、それぞれN末端およびC末端においてVH CDR3配列に隣接する隣接フレームワーク領域類由来のアミノ酸残基CAKおよびWGにより、Kabat分類に従って、親抗VEGF抗体から得る。親抗体のVH CDR3配列のみを用いて、たんぱく質データベース類検索のためのHMMを作成した。
【0201】
単一リード配列または構造的エンゼンブル類の配列類を用いて作成したHMMを校正し、Kabatデータベース検索に用いた(Johnson、GおよびWu,TT(2001)Nucleic Acids Research、29、205−206)。期待値すなわちE値を超える全ての配列ヒット類を列挙し、HAMMER2.1.1パッケージを用いて並べる。前記ヒットリストから重複配列を除いて、リードHMMのための残りのヒット配列類でヒットライブラリを形成する。
【0202】
各位置における変異体プロフィールを用いて、AA−PVP表を作成し(アミノ酸位置変異体プロフィール)、それは、各位置における各アミノ酸残基の出現回数を示す。
【0203】
この変異体プロフィールをフィルタリングし、あるカットオフ頻度で出現するかまたはそれ未満で出現する変異体類を取り除き、および/または構造に基づくスコアリングを用いて変異体リプロフィーリングと併用できる。配列プールからのこの変異体プロフィールは、変化可能であるかまたは固定されることができるリード配列中における位置類を同定するための情報データを提供する。前記部位は、3種のカテゴリーに分けられる:i)構造上保存された部位は、進化を超えて保存されたままである。高頻度の残基類を用いてこれらの位置における標的モチーフの骨格を維持する;ii)可変の機能的ホットスポット類は、注目する変異誘発により標的とすべきである;iii) i)とii)の両者の併用により標的骨格を安定させ、一方、同時に、前記の機能的ホットスポット類中において可変性を付与する。
【0204】
機能的変異体類からのアミノ酸類セットを、それらの頻度に従って機能的ホットスポット類で変異体プロフィール中に含めるべきであり、その理由は、それらが進化的に選択されるかまたは最適化されるからである。さらに、各位置における変異体類は、フィルタリングするかまたは優先順位をつけることができ、コンピュータ計算および実験的制約に適合するように他の潜在的に有益な変異体類を取り込みまたは潜在的に望ましくない変異体類を排除することができる。
【0205】
変異体プロフィールは、各位置における好適なアミノ酸残基類および好適な改変されていない好適なオーダーの特異的変異体類について情報を与えるが、それは、極めて多くの組み換え体を包含する。頻度カットオフを用いたあるフィルタリングでは、コンピュータスクリーニングによって評価するかまたは直接実験的ライブラリにより標的化する必要のある組み合わせ配列類を減少させることができる。
【0206】
構造に基づくスコアリングを適用して、ヒットライブラリとヒット変異体ライブラリを形成するその組み合わせ配列類をスクリーニングした。親抗VEGF抗体のVH CDR3の側鎖は、各残基位置において、ヒット変異体ライブラリからの対応するアミノ酸変異体類の回転異性体類によって置換した。回転異性体類の立体構造を、骨格依存性回転異性体ライブラリ(Bower MJ,Cohen FE、Dunbrack RL(1997)JMB 267,1268−82)を用いるプログラムSCWRL(登録商標)(2.1バージョン)を用いることによって、構築し最適化した。
【0207】
スコアリングは、最適回転異性体類を検索し抗原VEGF存在下および非存在下においてCONGEN中Amber94フォースフィールド〔Bruccoleri and Karplus(1987) Biopolymers 26:137−168〕を用いて、100−200段階によりエネルギーを最小化することによって、行った。VEGFの有無により計算したスコアに基づく抗VEGF変異体ライブラリのエネルギースコアは、親配列類よりも大きなスコアを有するさまざまな変異体ライブラリ類について多くの配列類があることを示唆している。
【0208】
側鎖エントロピー、非極性溶媒和エネルギーおよび静電気的溶媒和エネルギーを含むより精密なカスタムスコアリング関数を用いて、スコアリングに用いた単純関数類を評価する。3個のエネルギー項を計算した:側鎖エントロピー、非極性溶媒和エネルギーおよび静電気的溶媒和エネルギー、およびループに対する骨格エントロピーも計算した。
【0209】
非静電気的溶媒和エネルギーは、CONGENで実施するGEPOL(Pascual−Ahuir JL、Silla E(1993)J Comput Chem 11,1047−1060)コマンドを用いるスケールコンスタント 70cal/mol/A2(Tunon I、Silla E、Pascual−Ahuir JL(1992)Prot Eng 5、715−716)によりGEPOL93アルゴリズムにより計算し、分子表面に対して比例するようにする。
【0210】
静電気的溶媒和エネルギーは、UHBDプログラム(Davis ME,Madura JD,Luty BA、McCammon JA(1991)Comput Phys Commun 62、187−197)において実施する有限差PB(FDPB)を用いて計算する。この集束方法を、変異を取り巻く領域について用いる。自動化プロトコールは、3つのグリッド類を産生する:粗、細および収束グリッド類。前記グリッドユニット類は、それぞれ、1.5、0.5および0.25オングストロームである。収束グリッドは、変異残基類が占めるデカルト容積をカバーする立方体グリッドである。細かいグリッドは、前記たんぱく質または複合体の全容積をカバーする立方体グリッドである。粗グリッドは、各軸において細かいグリッドの大きさのおよそ2倍に設定された立方体グリッドであり、細かいグリッドの容積のおよそ8倍をカバーする。粗グリッドは、ロングレンジの溶媒効果を説明するように作用し、細かいグリッドの境界条件を設定する。同様に、細かいグリッドは、たんぱく質内部の静電気的寄与を説明するように作用し、収束グリッドの境界条件を設定する。収束グリッドは、変異による局所効果の細部詳細を説明する。たんぱく質内部および外部の誘電定数は、それぞれ、4および78に設定する。温度は、300ケルビンに設定し、イオン強度は、150mMに設定する。最大イテレーションは、200に設定する。計算は、均一な誘電率により繰り返し、内部および外部の誘電率を両者ともに4に設定し、前記2個のエネルギー差は、コンピュータ計算する。後者の計算は、グリッドに電荷をもたらしたことによるエネルギーを示す。
【0211】
カスタムスコアリング関数またはCONGEN中Amber94フォースフィールド+本文で使用したUHBD中PB由来溶媒和項を用いた分子力学エネルギーは、MM−PBSAまたはMM−GBSAに類似している。前記エネルギー関数は、特に分子動態計算による構造エンゼンブルを用いて配列およびその変異体類のスコアリングのためのより正確な方法を、エネルギー関数類のエンゼンブル平均に基づき(Kollman PA,Massova I、Reyes C,Kuhn B,Huo SH,Chong LT,Lee M,Lee TS,Duan Y,Wang W,Donini O,Cieplak P,Srinivasan P,Case DAおよびCheatham TE (2000)Acc.Chem Res.33、889−897)提供する時、実験データと良好な一致を示す(Sharp KA.(1998)Proteins 33、39−48;Novotny J,Bruccoleri RE、Davis M,Sharp KA(1997)J Mol Biol 268、401−411)。
【0212】
上記のようなヒット変異体ライブラリ由来の変異体プロフィールを、好適な残基類のほとんどを維持しつつ、潜在的ライブラリサイズを小さくするためにフィルタリングした。望ましいスコアに基づくトップ配列類を選択する戦略および/または望ましい相互作用に関与するような残基類の存在を用いて、核酸ライブラリ設計のためのアミノ酸配列クラスターまたはクラスター類を同定した。上記にも述べたように、VH CDR3、CDR2およびCDR1のぞれぞれのコンピュータ計算した検索配列類クラスターを選択して、さらにインビトロで実験し試験した。
【0213】
上記で構築したヒット変異体ライブラリを、1個の変性核酸ライブラリにより標的にした。前記核酸配列ライブラリプロフィールを、具体的生物についての最小サイズと組み合わせた最適コドン類を用いて作成した。変性核酸ライブラリは、各変性位置に塩基類混合物を取り込ませることによって、合成した。合成の組み合わせ効果の結果、この変性核酸ライブラリは、拡大アミノ酸ライブラリをコードする。
【0214】
HおよびVLに対する各位置における変性体を、それぞれ、VHおよびVLアミノ酸位置変異体プロフィールで示した。VHおよび/またはVL CDR3,CDR2およびCDR1についての詳細な結果とFR123を、抗VEGF VHおよびVL表に要約した。これらの実験は、本発明の方法類を用いることによって、多様な配列類と系統発生的距離ばかりでなく標的VEGF抗原に結合する改善結合アフィニティにより、抗体類を選択できた。
【0215】
図1Aは、上記方法論を用いて設計した抗VEGF抗体類のVLについてアミノ酸位置変異体プロフィール(AA−PVP)である。VL鎖のAA−PVPは、参考文献としてのBacaら(1997)J Biol Chem 272:10678−10684によるヒト化VL(配列番号1)を用いている。ドットは、参考として同一アミノ酸を示している。CDRsは下線付き太字で示した。
【0216】
図1Bは、上記方法論を用いて設計した抗VEGF抗体類のVHについてアミノ酸位置変異体プロフィール(AA−PVP)である。VH鎖のAA−PVPは、参考文献としてのBacaら(1997)同上によるヒト化VH(配列番号55)を用いている。ドットは、参考として同一アミノ酸を示している。CDRsは下線付き太字で示した。
【0217】
上記方法類を用いることによって親抗VEGF抗体のリード配列に基づくインシリコ設計抗体ライブラリについて、新規ファージディスプレイシステムを用いることによって、抗原VEGFに結合するそれらの能力を試験した。
【0218】
2)フレームワーク最適化のための抗VEGF抗体ライブラリの産生
マウスモノクローナル抗体は、VEGF依存性細胞増殖をブロックしかつインビボにおける腫瘍増殖を遅らせることがわかった(Kim KJ,Li B,Winer J,Armanini M,Gillett N,Phillips HS,Ferrara N(1993) Nature 362、841−844)。このマウス抗体を、抗原結合ループ移植後一部の重要フレームワーク位置において無作為変異を用いて、ヒト化した(Presta LG,Chen H,O‘Connor SJ,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,Winkler M,Ferrara N(1997) Cancer Res.57、4593−4599;Baca M,Presta LG,O’Connor SJ、Wells JA(1997)J Biol Chem 272、10678−10684)。通常、何回かの部位特異的変異誘発と選択後、ヒトまたはコンセンサスヒトフレームワークをある事前に決めた重要位置において親非ヒト抗体由来の非ヒトアミノ酸類で置換することによって、ヒト化抗体を産生する。これらのヒト化抗体類は通常、その親抗体の同系抗原に対して親抗体に比べて低いアフィニティで結合するであろう(その親マウス抗体に比べてヒト化抗VEGFについて約6倍弱い、Baca M,Presta LG,O‘Connor SJ,Wells JA(1997)J Biol Chem 272、10678−10684、およびヒト化抗VEGFの別のバージョンについて約2倍弱い、Presta LG,Chen H,O‘Connor SJ,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,Winkler M,Ferrara N(1997)Cancer Res.57、4593−4599;Baca M,Presta LG,O’Connor SJ、Wells JA(1997)J Biol Chem 272、10678−10684)参照)。この結合アフェニィティロスが、CDRsにおけるアフィニティ成熟を用いることによって回復されるであろう(Chen Y,Wiesman C,Fuh G,Li B、Chrinstinger HW,McKay P,de Vos AM、Lowman HB(1999)J.Mol Biol.293、865−881)。
【0219】
本発明の前記方法を用いて、我々は、フレームワーク最適化により、報告されたヒト化抗VEGF抗体配列よりも数倍(hAB2について3.3倍、hAB3について4倍およびhAB4について2倍)結合アフィテニィが高い数種のヒト化フレームワークを発見した(文献(Presta LG,Chen H、O‘Connor SJ,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,Winkler M,Ferrara N(1997)Cancer Res.57、4593−4599)に報告されているヒト化抗VEGF抗体フレームワークについて、図2中のhAB1を参照)。報告されたヒト化抗VEGF抗体は、その対応するマウス抗体よりもおよそ2倍弱いので、我々のヒト化抗体類(hAB2およびhAB3)は、対応するマウス抗体よりも、ヒト化によりおよそ2倍高い結合アフィニティを有するはずである。また、我々は、報告ヒト化抗体(hAB1)に比べてヒト化抗体類のオン速度(Kon)を増加させるかまたはオフ速度(Koff)を低下させるかまたはその両者により、上記の改善を達成できる(図2参照)。
【0220】
マウスVEGF抗体のフレームワークfr123領域のアミノ酸配列は:
【化30】

である。
【0221】
この配列を以下、“マウス抗VEGF抗体”のfr123と称する、Presta LG,Chen H,O‘Connor SJ,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,Winkler M,Ferrara N(1997)Cancer Res.57,4593−4599参照)。相対的に一定のフレームワーク4を、もし望むならば同一手法を用いて、設計できる。前記フレームワークおよびCDRsをKabat基準(Kabat EA,Redi−Miller M,Perry HM,Gottesman KS(1987)Sequences of Proteins of Immunological Interest 第4版、National Institute of Health,Bethesda,MD)により命名するが、ただし、他の分類も同様に使用できる。また、もし望むならばフレームワークFR1またはFR2またはFR3およびFR4の別々のセグメントをそれぞれ設計して、継ぎ合わせることもできる。CDRsとFRsの組み合わせを、同時に、各セグメントを設計するかまたはセグメント組み合わせを設計することによって、本文に記載の手法を用いて設計できる。CDRsは、マウス抗VEGF由来の配列番号283中または本文に記載の手法を用いて設計したそれらにおけるものと同一である。しかし、異なるCDRsを同様に設計して、設計したFR123ライブラリ類と組み合わせて用いることもできる。ヒットライブラリについての変異体プロフィール類を、マウス坑VEGF抗体のVH FR123のリード配列に基づくヒトVH生殖細胞配列類を用いて作製し、あるカットオフ値を用いてフィルタリングする。各位置における変異体を、総エネルギーまたは他のスコアリング項を用いて、抗体構造との構造的適合性に基づき、並べることができる。いくつかの参考アミノ酸類が、その総エネルギーまたは特異的パッキングに基づきある位置で望ましいことがわかる。ただし、それらの出現頻度は極めて低い。ヒットライブラリについての変異体プロフィールを作成し、マウス坑VEGF抗体のVH FR123のリード配列に基づくKabat由来ヒトVH配列を用いて、さらに正確にすることができる。フィルタリングした変異体プロフィールをさらにコンピュータによりスクリーニングして、もし抗体構造を用いるならば構造的適合性のランクオーダーを反映させる。ヒト対非ヒト配列類はVH全鎖にわたって多くの位置で異なるが、他のヒト化アプローチで用いたアミノ酸ライブラリは、移植CDRsに隣接する2−3の位置で無作為となることに注目しており、一方、好適な態様において、ヒト化ライブラリは、VHおよびVL両鎖全体のさまざまな位置を標的にし、出発抗VEGF抗体についてそれらの位置で2−3の変異体類がある。
【0222】
好適な態様において、フレームワーク類FR1,FR2,FR3およびFR4のような各モチーフまたは抗体のFR123のようなその組み合わせは、モジュラーインシリコ進化設計手法を用いて、標的とすることができる。各モチーフまたはその組み合わせについて限られた数の立体構造(規範的構造と命名)があることがわかっている。抗体のこれらの構造的特長は、抗体構造を広く分析したものに基づく抗体のさまざまな領域における構造モチーフ類を用いることによって、進化的配列設計を試験するための優れたシステムを提供する。これらの構造および配列保存は、異なる種間でも見られる。実際、抗体類の足場すなわちイムノグロビンおりたたみ構造は、天然でもっともよく見られる構造のひとつであり、さまざまな抗体類および関連分子類でよく保存されている。
【0223】
好適な態様において、前記方法を用いて、また、配列に基づく手法またはCDRsにおける誘発構造変化を含む構造エンゼンブル類により抗体フレームワークを設計できる。マウス抗VEGF抗体フレームワークをリードたんぱく質として用いておよびそのVH FR123をリード配列として用いて、VH FR123のデジタルライブラリを構築した。
【0224】
好適な態様において、ヒットライブラリを、VH FR123をリード配列として用いてヒットアミノ酸配列類を検索しかつ選択することによって、構築した。変異体プロフィールは、ヒットライブラリに基づいて各位置で全変異体類を列挙し作成し、あるカットオフ値でフィルタリングして、作成したヒット変異体ライブラリの大きさをコンピュータによるかまたは実験的な限界内に留まるように小さくした。また、i)フィットネスという観点から好適な領域をカバーする配列空間のサンプリング;ii)好適なペプチドエンゼンブル配列類を標的とする変性核酸ライブラリ類の分配および合成;iii)所望の機能について抗体ライブラリの実験的スクリーニング;およびiv)さらに設計と最適化のため実験結果をフィードバック分析することを促進するため、作成した。
【0225】
リード構造テンプレート類は、VEGFおよび抗VEGF抗体類との間に形成された複合体類の利用可能なX線構造類から入手した。VEGFおよび親抗VEGF抗体の複合体構造は、1BJ1と命名し、VEGFと成熟抗VEGF抗体の間に形成されたものを、1CZ8と命名した。1CZ8構造テンプレートによる結果は、スキャンした配列類の相対的ランクオーダーにおいて1BJ1による結果と同様であった。モデル化した構造または構造エンゼンブルまたはエンゼンブル平均を同様に用いて、配列をスクリーニングできる。VH FR123のためのリード配列(配列番号283)を、マウス抗VEGF抗体からKabat分類に従い得る。単一リード配列を用いて作成したHMMを校正し、ヒト重鎖生殖細胞配列データベースおよび/またはKabatデータベース由来のヒト配列データベース(ヒト生殖細胞類およびヒト化配列類を含む)を検索した(Johnson、GおよびWu,TT(2001) Nucleic Acids Research、29、205−206)。期待値すなわちE値を超える全配列ヒット類を列挙し、HAMMER2.1.1パッケージを用いて並べた。ヒットリストからあいまいな配列類を除去した後、リードHMMのための残りのヒット配列類でヒットライブラリを形成する。ヒトVH生殖細胞由来のヒット配列類の配列同一性は、リード配列の40乃至68%にわたっており、一方、Kabatデータベース(このデータベースは、検索感度とそれらの相対的ランク付け感度を高めるため、fr123断片に対して分析する)(もしヒト起源のイムノグロビン配列類を含むならば他のデータベースも用いるであろう)由来のヒトイムノグロビン配列類からのヒット配列類の対応する配列同一性は、約30乃至75%の範囲にわたっている。前記ヒット類の間の進化的距離は、プログラムTreeView1.6.5(http://taxonomy.zoology.gla.ac.uk/rod/rod.html)を用いることによって、分析できる。
【0226】
前記AA−PVP表類は、各位置における各アミノ酸残基の出現回数を示している。ヒトVH生殖細胞類由来のヒット配列類とKabat由来ヒトVH配列類のそれとの間には、なんらかの差異がある:標的抗体類等の足場を安定化させるために構造的に重要なアミノ酸類からの非ヒト起源アミノ酸類。このフィルタリングした変異体プロフィールをさらにコンピュータで検索し、もし唯一の抗体構造を用いるならば構造的適合性のランクオーダーを反映させる。簡単に述べると、フレームワーク最適化のためのヒト起源の異なるデータベースを用いることで、アミノ酸類をフレームワーク最適化のために多様ではあるが強力に選択でき、それには、結合アフィニティおよび安定性を改善するためのヒト化を含む。治療用抗体類開発における我々の知識が増えたことで、より多くの抗体配列データが集積し、本発明を用いての我々の設計の指針となるであろう。重要位置およびこうした位置に関連したアミノ酸類を想定するための事前想定は、必要ではないであろう。この情報は本発明の方法を用いて自動的に明らかになるので、より多くのデータが蓄積されるに伴い、データベース中におけるその出現が多くなり、情報はさらに明確になるであろう。構造に基づく基準を用いて他の潜在的に有益な変異体類を含めるために変異体類を再度プロフィーリングしまたは優先順位をつけることができる。構造に基づくエネルギースコアリングにより、たんぱく質データベースから選択した配列のプロフィーリングに基づいて当初作成したヒット変異体ライブラリについて、各位置における変異体類出現頻度を再度プロフィーリングするための別の方法が提供される。頻度カットオフを用いたフィルタリングにより、コンピュータスクリーニングにより評価するかまたは直接実験的ライブラリ類によって標的化する必要のある組み合わせ配列類を少なくすることができる。変異体プロフィールに適用するカットオフによってさえも、実験的スクリーニングのための最終配列類中でスコアリングしかつ評価する必要のある組み合わせ配列類が、まだ、多数ある。
【0227】
構造に基づくスコアリングは、ヒットライブラリとヒット変異体ライブラリを形成する組み合わせ配列類をスクリーニングするために適用される。1CZ8または1BJ1中の抗VEGF抗体のVH FR123の側鎖を、骨格依存性回転異性体ライブラリ(Bower MJ,Cohen FE,Dunbrack RL(1997)JMB 267,1268−82)を用いるプログラムSCWRL(登録商標)(バージョン2.1)を用いることによって、各残基位置におけるヒット変異体ライブラリからの対応するアミノ酸変異体回転異性体によって、置換した。スコアリングは、エネルギーに関する項または最適回転異性体類およびCONGEN中Amber94フォースフィールドを用いたエネルギー最小化を用いて構造を最適化した後、各項についてのスケール関数とのそれらの組み合わせを用いて、抗原VEGFの存在下または非存在下において行った〔BruccoleriおよびKarplus(1987) Biopolymers 26:137−168〕。
【0228】
設計したフレームワークVH fr123は、マウス参考に関してその構造との良好な構造的適合性を有している。そのデータベースによって一部は規定されるフレームワーク最適化のヒト様特徴もまた、設計した配列類とヒト生殖細胞系またはヒト化フレームワーク類のそれとの系統発生的距離を分析することにより、測定した。
【0229】
上記のようなヒット変異体ライブラリ由来の変異体プロフィールは、カットオフ値よりも小さい出現頻度のアミノ酸類を取り除きおよび/または構造的足場とのそれらの適合性に基づく配列類をスクリーニングすることによって、ヒット変異体ライブラリから得た好適な残基類のほとんどを維持しつつ、潜在的ライブラリサイズを小さくするために、フィルタリングした。
【0230】
上記で構築したヒット変異体ライブラリを、変性オリゴヌクレオチド類により標的とした。上記で構築した変性核酸ライブラリは、ファージディスプレイシステム中にクローニングし、ファージディスプレイ抗体類(ccFv)を96ウェルプレート上に塗布した固定VEGFに対する結合に基づき、選択した。ライブラリを、ファージディスプレイベクターpABMD12中に取り込み、このベクター中では、抗VEGFのVHをライブラリにより置き換えておいた。結果として、VLおよびライブラリから作成したさまざまなVHを対にして抗VEGFの機能的ccFvを形成した。次にファージディスプレイライブラリを用いて、固定VEGFたんぱく質抗原に対してさらに選別した。
【0231】
変性位置のスキャン分布がこのように広く、それをカバーできるライブラリを作成するため、ライブラリを設計した部位における変性位置を有する複数の重複変性DNAオリゴヌクレオチド類を、合成した。前記のアセンブリプロセスは2個のPCR反応で構成されており、アセンブリPCRと増幅PCRである。アセンブリオリゴは35−40量体により設計し、平均約60℃の融点を有する15−20個の塩基類によって重複させた。増幅オリゴプライマー類(Amp93およびAmp94)の1個の付加的ペアは、設計産物類の最終増幅のために新しく作成した。したがって、前記アセンブリPCRには:等量の最終濃度8μMのアセンブリオリゴプライマー類、0.8μMのdNTP,1×pfu緩衝液(Strategene)、およびpfuターボ(Strategene)2.5単位を含んでいる。熱サイクルは、下記のように行った:94℃で45分、58℃で45分、72℃で45分を30サイクル、および最終伸長は72℃で10分間行った。PCR産物混合物を10倍希釈し、増幅PCR用テンプレートとして使用したが、ここでは、最終濃度1μMで増幅プライマー類を添加したことを除いて、全試薬類は同じであった。熱サイクルは、下記のように行った:94℃で45分、60℃で45分、72℃で45分を30サイクル、および最終伸長は72℃で20分間行った。最終産物(VHライブラリ)を精製し、HindIIIおよびStyIで消化し、最終的にベクターpABMD12中にサブクローニングし、当初のマウスVHを置き換えた。このライブラリを用いて、TG1コンピタント細胞類を電気的に形質転換し、次に増幅し、ヘルパーファージKO7(Amersham)によりレスキューし、その後、標準的操作により30℃で一晩、前記ライブラリにファージを産生させた。
【0232】
上記実施例で構築し説明したライブラリをスクリーニングするため、精製したホモダイマーVEGFたんぱく質(Calbiochem)をコーティング緩衝液(0.05M NaHCO3,pH9.6)で指定濃度に希釈し、マキシソルブ(Maxisorb)ウェル(Nunc)に一晩、4℃で固定した。塗布したウェルを次に、5%ミルクで1時間、37℃でブロックし、その後、PBS希釈ファージライブラリをウェルに適用し、37℃で2時間インキュベーションした。このインキュベーション混合物はまた2%ミルクも含んでおり、非特異的結合を最小にした。インキュベーション終了時点で、ウェルを洗浄し、結合したファージをその後、1.4%トリエチルアミンで溶出させ、その後、TG1細胞感染次にKO7ヘルパーファージレスキューにより増幅した。前記ファージ類を増幅するため、感染させかつレスキューしたTG1細胞を次にカルベニシリンおよびカナマイシン存在下で一晩、30℃で増殖させ、ファージライブラリを採取した。増幅させたファージ類をインプットライブラリとして用いて、次回のパニンクを行った。その間、5回目のパニング以降によるそれぞれのクローンをファージELISA用に無作為にサンプリングして、固定VEGFに対する特異的結合を確認し、第5回目から第7回目のパニングで陽性率100%であることが明らかになった。最終的に、プレート2×YT/カルベニシリン(100μg/ml)/カナマイシン(70μg/ml)プレート上に増殖した単離クローン類を、第5回目パニング(P5)からの配列決定開始用にサンプリングし、ヒット位置を明らかにし前記設計に対するヒット配列類を明らかにした。
【0233】
図1Cは、(Bacaら(1997)J Biol Chem272:10678−10684におけるようなヒト化VLのそれ(配列番号1)およびKimら(1993)Nature 362:841−844におけるマウス抗VEGFモノクローナル抗体(配列番号284)と比較して)選択した抗VEGF抗体類の全長VL、VL/CDRおよびVL/FRのアミノ酸配列類を示している。
【0234】
図1Dは、(Bacaら(1997)J Biol Chem272:10678−10684におけるようなヒト化VHのそれ(配列番号55)、Chenら(1999)J.Mol.Biol.293:865−881におけるようなアフィニティ成熟VHのそれ(配列番号56)、Kimら(1993)Nature362:841−844におけるようなマウス抗VEGFモノクローナル抗体(配列番号283)のそれと比較しての)選択した抗VEGF抗体類の全長VH、VL/CDR、VH/CDRおよびVH/FRのアミノ酸配列類を示している。
【0235】
他者によって作成された抗VEGF抗体類との直接比較目的のため,本発明に開示のヒト化VL(配列番号1)は、Chenら(1999)J.Mol.Biol.293:865−881に記載の抗体Y0317のVLと同じで;および本発明に開示したVH(配列番号55)は、Chenら(1999)同上に説明されている抗体Y0192のVLと同一である。本発明に開示した前記ヒト化およびアフィニティ成熟VH(配列番号56)は、Chenら(1999)同上に記載の抗体Y0317のVHと同一である。
【0236】
選択した最適化後のVHフレームワーク類はまた、ヒト生殖細胞VH3族と系統発生的距離の点で非常に近いヒト化VH配列とともにクラスターを作り、一方、マウスVHフレームワークは、最適化VHフレームワーク類およびヒト生殖細胞から遠く離れている。VHの全ヒトイムノグルビンレパートリに対してヒット配列類を系統発生分析して、それらは実際、ヒト生殖細胞族IIIに極めて関連していることが示唆された。
【0237】
このことは、最適抗体類の完全にヒトのまたはヒト様配列類による最適フレームワーク設計における本発明の方法が、ヒト様およびエンゼンブル構造または構造平均からの構造テンプレートまたはテンプレート類との適合性のバランスが良好であることに依存しているという結論を支持する。
【0238】
記載の我々の発明方法類を用いて、我々は、フレームワーク最適化により、親または参考抗VEGF抗体配列(配列番号55)よりも高い結合アフィニティを有する多数の重鎖(例 配列番号70、配列番号67および配列番号75)ヒト化フレームワーク類を発見した。こうした改良は、主に、フレームワークヒト化のみによるオン速度(Kon)の大幅な増加とオフ速度(Koff)のわずかの低下に由来している。図2Aは、抗体類5個、親抗体(hAB1)およびBIAcoreバイオセンサーを用いたデザイナーライブラリから選択した抗VEGF抗体の最適化フレームワーク類(hAB2,hAB3,hAB5)のアフィニティデータを示している。測定は、精製抗体がCM5バイオチップ上に固定化した抗原(VEGF)に25℃で結合するときの時間(x軸)に対するSPR単位変化(y軸)を測定することによって、行った。2個のヒト化フレームワーク類hAB2およびhAB3は、フレームワーク最適化により、親/文献(Presta LG,Chen H,O‘Connor SJ,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,Winkler M,Ferrara N(1997)Cancer Res.57、4593−4599)に報告されている参考抗VEGF抗体配列よりも結合アフィニティがおよそ4倍高く(一重鎖フォーマットで)、これらの2個のヒト化抗体類は、ヒト化により対応するマウス抗体よりもおよそ2倍高い結合アフィニティを有するはずである。
【0239】
2.候補抗体類の選択
1)ccFv−ヘテロダイマー性コイル状コイル安定化抗体
本発明は、VHおよびVLへテロダイマー安定化のための新しい戦略を提供する。独自のヘテロダイマー化配列ペアを設計し、それを用いてFab様、機能的人工Fv断片ccFv(US200030027247A1)を作成した。この配列ペアは、特異的にコイル状コイル構造を形成し、GABAB−R1およびGABAB−R2レセプター類の機能的へテロダイマー化を媒介する。ヘテロダイマー配列ペアのそれぞれは、ヘテロダイマーGABABR1およびR2のそれぞれのコイル状コイルドメインに由来した。ある抗体のVHおよびVLへテロダイマーを工学的に作成する目的で、配列類GR1およびGR2のペアをそれぞれVHおよびVL断片のカルボキシ末端に融合させる。したがって、VHおよびVLの機能的ペア形成ccFV(コイル状コイルFv)は、GR1とGR2の特異的へテロダイマー化により媒介される。組み換えccFv抗体断片類を分子量35kDaで発現させた。
【0240】
抗VEGF抗体のVHおよびVL配列類を、2個の融合たんぱく質類:VH−GR1およびVL−GR2−pIII融合物を発現するベクターにクローニングした。発現したVH−GR1およびVL−GR2−pIII融合物はペリプラズム空間に分泌され、そこで、それらは二量体化し、コイル状コイルドメインで安定ccFv抗体を形成する。フィラメント状バクテリオファージの表面上でccFv抗体類をディスプレイするため、上記ベクターを細菌性TG1細胞に形質転換し、それをさらにKO7ヘルパーファージで重複感染させた。
【0241】
2)アダプター媒介ファージディスプレイシステム
従来のファージディスプレイシステムにおいて、ファージ表面でディスプレイさせるため問題のたんぱく質をpIIIのようなファージカプシドたんぱく質に融合させる。この融合たんぱく質を、KO7のようなヘルパーファージが付与する野生型ファージたんぱく質類によりファージ粒子類に組み立てるであろう。US20030104355A1に記載のような新しいアダプター特異的ディスプレイシステムを用いて、ファージ表面上でさまざまな抗体断片類をディスプレイさせた。一般に、一重鎖可変断片のような抗体断片は、ヘテロダイマーを特異的に形成するアダプターペアによってファージ粒子表面に運搬され、ひとつは、発現ベクター中のディスプレイたんぱく質と融合し、他者は、ヘルパーベクター中のファージカプシドたんぱく質に融合させる。特に、ヘテロダイマー配列ペアであるGR1およびGR2のそれぞれは、それぞれ、ヘテロダイマーレセプター類GABAB R1およびR2のコイル状コイルドメインに由来していた。抗体断片ディスプレイ目的のため、配列類GR1を原核生物発現ベクター中の抗体断片のカルボキシ末端に融合させ、一方、GR2はバクテリオファージゲノムのカプシドたんぱく質IIIのアミノ末端に融合させた。前記へテロダイマーは、コイル状コイルを特異的に形成する配列ペアにより形成され、ヘルパーファージにより発現ベクターを有する大腸菌をレスキューすると、抗体断片の機能的ディスプレイを媒介する。
【0242】
3)候補抗体ライブラリの作製
候補抗体類ライブラリのDNAは、標準的PCR操作を用いたPCRアセンブリに基づき作製した。次に、このDNAを制限酵素で消化し、精製し、上述のような適当なベクターに連結させた。連結後、DNAをTG1細胞に形質転換した。ファージ類は、ヘルパーファージ感染によりTG1細胞から調製した。感染TG1細胞を2×YT/Amp/Kan中で一晩、30℃で増殖させた。ファージミッド粒子を、培養上清からPEG/NaClにより沈殿させ、PBS中に再度懸濁させた。
【0243】
4)候補抗体ライブラリの選択
候補抗体類のファージライブラリを、固定VEGFに対するライブラリ選択のために使用した。精製した組み換えヒトVEGF165をCalbiochem(カタログ番号80054−994)から購入した。ヒトVEGFの165番目アミノ酸残基変異体であるグリコシル化、ジスルフィド結合ホモダイマーは、見かけの分子量42kDを有している(Burkeら、Biochem.Biophys.Res.Commun.207:348(1995);Neufeldら.Prog.Growth Factor Res.5:89(1994);Leungら,Science 246:1306(1989))。一般に、結合インキュベーション時間後、未結合ファージ類を洗浄して除去し、結合ファージ類を溶出し次回のパニング用に増幅させた。ファージディスプレイ用に通常用いられる同様の操作は、過去において例示されている(Barbasら、Phage display:a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)。
【0244】
たとえば、2μg/mlの精製ヒト組み換えVEGF165 100μlのアリコットを、最初に、96ウェルプレートの各ウェルに固定化した。PBS中5%ミルクでブロックした後、2%ミルク/PBS中ライブラリファージ類アリコットを前記ウェルに添加し、インキュベーションした。ファージ含有溶液をその後除去し、前記ウェルを洗浄した。結合ファージ類を最終的に100mMトリエチルアミンで溶出し、TG1培養物に添加し感染させた。感染TG1細胞から調製したファージ類を、結果的に次回のパニングに用いた。次に、陽性クローンをVEGF抗原たんぱく質に対してELISAにより確認し、ここで、固定化抗原に結合したファージ類は、ファージコートたんぱく質pVIIIに対するHRP結合抗M13抗体とのインキュベーションにより検出した。基質ABTS〔2,2‘アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)〕を用いて、HRP活性を測定した。陽性確認したそれらのクローン類のDNA類の配列を決定した。サンプリングしたDNA配列類を、次にアミノ酸配列類に翻訳した。選択した配列類を組み合わせ、新しい変異体類を作製した。選択した変異体類を発現させ、可溶性抗体断片類を産生させ、アフィニティを評価した。
【0245】
3.ヒトPBLs由来VkおよびVlの増幅
総RNAをヒト末梢血リンパ球(PBLs)から抽出し、標準的操作でオリゴ−dTプライマーと逆転写酵素を用いることによって、第1ストランドcDNA合成のためのテンプレートとして用いた(第一cDNA合成キットは、Roche Applied Scienceから購入した)。抗体軽鎖可変遺伝子類を、PCRによって一重鎖cDNAから増幅した。PCRプライマー類を設計し、Kaba V−遺伝子データベースに基づき合成した(表1)。Vk遺伝子類の全サブファミリ6個を増幅するため、40個の生殖細胞ヒトVk遺伝子類の5´末端を標的にした変性プライマー類6個および5個のヒトJkセグメント遺伝子類の3´末端を標的にした変性プライマー類3個を用いた。Vl遺伝子類の全サブファミリ10個をPCR増幅するため、31個の生殖細胞ヒトVl遺伝子類の5´末端を標的にした変性プライマー類8個および4J1セグメント遺伝子類の3´末端を標的にした変性プライマー類2個を用いた。PCR増幅VkおよびVl遺伝子類をさらに、ヒト抗VEGF抗体VHを有するファージミッドベクター中にクローニングし、ファージディスプレイライブラリを作製した。
【0246】
表1:VkおよびVl増幅用プライマー類
【表1】

【0247】
4.可溶性抗体断片類の発現
生物物理分析目的のため、一重鎖可変断片(scFv)フォーマットの可溶性抗体断片類を、原核生物(大腸菌)および真核生物(酵母)発現システム中で作製できる。scFv構築物には、先の研究で記載されているように(G4S)3のリンカーで連結されたVH断片およびVL断片を含む(Barbasら、Phage display:a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)。原核生物発現のために用いた発現ベクターは、図7に示した。例えばBL21のようなコンピタント細菌細胞類を調製し、当該技術で公知の方法に従い抗体断片を有するベクターで形質転換した(Sambrook、Fritsch and Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989);Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。形質転換細胞を、たんぱく質発現に適した条件下で培養する。このような条件は当業者に周知で、従って、本文では詳細に説明しない。発現した抗体類を当該技術で公知の従来法で採取し、それを用いてさらに分析する。酵母における発現は、Invitrogenから購入したPichia発現キットを用いて製造業者の指示に従い実施した。全抗体類は、C末端でHA−His6タグによりタグを付け、NTAおよびSuperdex75カラム類により精製した。抗体断片類の純度および発現収率を求めるため、精製たんぱく質類20μlをSDS−PAGEゲルにより分析し、クーマシーブルーR−250による染色で見えるようにした。
【0248】
5.選択した抗体断片類のアフィニティ分析
BIAcoreバイオセンサーアッセイを用いて、抗体アフィニティを求めた。VEGF抗体(Calbiochemから購入)をアミンカップリングによりCM−5バイオセンサーシップにカップリングさせた。固定化後、VEGF応答ユニット類200乃至1000を有するCM−5チップを、使用に先立ち、4℃に保持した。実験は全て、25℃または35℃で実施した。PBS緩衝液中各サンプルを、流速20μl/minでBiacore1000(Biacore AB、Sweden)を用いてVEGF表面上に注入し、各サイクル終点で結合抗体類をグリシン−HCl、pH1.5 10μlによりチップから除去した。各センサーグラムを記録し、PBSベースラインに標準化した。結合および解離速度定数を含む抗体アフィニティを求めるため、センサーグラムを、BIA評価バージョン3ソフトウェアを用いて1:1ラングミュア結合モデルに適合する結合曲線によって、分析した。
【0249】
6.抗体断片類の安定性評価
明らかになった抗体断片類の安定性評価のため、PBS中可溶性抗体類をそれぞれ、4℃、37℃および42℃でインキュベーションした。抗体濃度は、0.5μMまたは1μMであった。定めたインキュベーション時間の後、抗体溶液を25℃で1時間置き、次にBiacore1000中のVEGF表面上に注いだ。抗体結合RUを記録し、安定性分析に使用した。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1A】本発明のインシリコ方法論を用いることによって設計したVLヒット変異体類のAA−PVPプロフィールを示す。
【図1B】本発明のインシリコ方法論を用いることによって設計したVHヒット変異体類のAA−PVPプロフィールを示す。
【図1C−1】本発明による抗体類のある態様の全長VL、VL/CDRおよびVL/FRのアミノ酸配列類を示す。
【図1C−2】図1C−1のつづき。
【図1C−3】図1C−2のつづき。
【図1C−4】図1C−3のつづき。
【図1C−5】図1C−4のつづき。
【図1C−6】図1C−5のつづき。
【図1C−7】図1C−6のつづき。
【図1C−8】図1C−7のつづき。
【図1C−9】図1C−8のつづき。
【図1C−10】図1C−9のつづき。
【図1C−11】図1C−10のつづき。
【図1C−12】図1C−11のつづき。
【図1D−1】本発明による抗体類のある態様の全長VH、VH/CDRおよびVH/FRのアミノ酸配列類を示す。
【図1D−2】図1D−1のつづき。
【図1D−3】図1D−2のつづき。
【図1D−4】図1D−3のつづき。
【図1D−5】図1D−4のつづき。
【図1D−6】図1D−5のつづき。
【図1D−7】図1D−6のつづき。
【図1D−8】図1D−7のつづき。
【図1D−9】図1D−8のつづき。
【図1D−10】図1D−9のつづき。
【図1D−11】図1D−10のつづき。
【図1D−12】図1D−11のつづき。
【図1D−13】図1D−12のつづき。
【図1D−14】図1D−13のつづき。
【図2A】BioCoreバイオセンサーを25℃で用いたヒト化抗VEGF抗体の変異体類パネルのアフィニティ分析を示す。一重鎖フォーマットの抗体断片類は、下記のように発現させ、精製した。測定は、精製抗体がCM5バイオチップに固定化したその抗原(VEGF)に結合した時に、時間(x軸)に対してSPR単位(y軸)の変化を25℃で測定することによって行った。Kd値は、Koffに対するKonの比により計算した。各変異体抗体についてhAB1のそれに対する変異体Kdの割合も同様に計算した。Konは、抗体断片(モル)濃度の複数の逆数と時間(秒)として表される会合速度定数として規定され;一方、Koffは、時間(秒)の逆数として表される解離速度定数として規定され;Kdは解離定数であり、それは、モル濃度で表したKonに対するKoffの比率である。それぞれVLおよびVHとして、hAB1は、配列番号1と配列番号55(これは、もしFabの形態であるならば、Chenら(1999)J.Mol.Biol.293:865−881)に記載のように必然的にFab−12を含むであろう)を含む;hAB2は配列番号1と配列番号70を含む;hAB3は、配列番号1と配列番号67を含む;hAB4は、配列番号1と配列番号83を含む;hAB5は、配列番号1と配列番号75を含む;hAB9は、配列番号14と配列番号102を含む;hAB10は、配列番号1と配列番号103を含む;hAB11は、配列番号1と配列番号104を含む;hAB12は、配列番号1と配列番号105を含む。
【図2B】図2Aの説明に記載の通りである。
【図2C】BioCoreバイオセンサーを35℃で用いたヒト化抗VEGF抗体の変異体類パネルのアフィニティ分析を示す。一重鎖フォーマットの抗体断片類は、下記のように発現させ、精製した。測定は、精製抗体がCM5バイオチップに固定化したその抗原(VEGF)に結合したときに、時間(x軸)に対してSPR単位(y軸)の変化を35℃で測定することによって行った。Kd値は、Koffに対するKonの比により計算した。各変異体抗体についてhAB1のそれに対する変異体Kdの割合も同様に計算した。それぞれVLおよびVHとして、hAB1は、配列番号1と配列番号55(これは、もしFabの形態であるならば、Chenら(1999)J.Mol.Biol.293:865−881)に記載のように必然的にFab−12を含むであろう)を含む;hAB7は、配列番号1と配列番号101を含む;hAB8は、配列番号1と配列番号100を含む;hAB13は、配列番号1と配列番号56(これは、もしFabの形態であるならば、Chenら(1999)J.Mol.Biol.293:865−881)に記載のように必然的にY0317であろう)を含む;hAB14は、配列番号36と配列番号100を含む;hAB15は、配列番号26と配列番号100を含む;hAB16は、配列番号28と配列番号100を含む;hAB35は、配列番号28と配列番号106を含む;hAB36は、配列番号28と配列番号107を含む;hAB37は、配列番号28と配列番号108を含む;hAB38は、配列番号28と配列番号109を含む;hAB39は、配列番号28と配列番号110を含む。
【図3】BIAcoreバイオセンサーを用いて、6個のヒト化抗VEGF抗体類のアフィニティ分析を示す。アッセイの前に、前記抗体類を1×PBS中で4℃、37℃、または42℃で16時間インキュベーションした。測定は、精製抗体がCM5バイオチップ上に固定化した抗原(VEGF)に25℃で結合するときの時間(x軸)に対するSPR単位変化(y軸)を測定することによって、行った。オン速度およびオフ速度変化は、1:1ラングミュア結合モデルを用いたデータ適合により求め、一方、Kdsは、Konに対するKoffの比率により求めた。それぞれVLおよびVHの組成を、下記のように示した:それぞれVLおよびVHとして、hAB1は、配列番号1と配列番号55を含む;hAB2は、配列番号1と配列番号70を含む;hAB3は、配列番号1と配列番号67を含む;hAB7は、配列番号1と配列番号101を含む;hAB8は、配列番号1と配列番号100を含む;hAB13は、配列番号1と配列番号56を含む。
【図4】図3に示したヒト化抗VEGF抗体類の安定性データを要約した。y軸は、精製抗体を4℃、37℃および42℃で16時間、図3に示したようにインキュベーションした後、BIAcoreを用いて25℃で固定化VEGF抗原への結合において活性のままの抗体の百分率を示している。異なる条件における各抗体の最大結合は、4℃におけるそれに対する百分率として表した。
【図5】下記に述べたような大腸菌発現システムを用いて、ヒト化抗VEGF抗体類の発現を示した。各抗体断片の発現レベルは、同一分画由来の精製物質と同一溶液を適用することによって、評価したが、これは、SDS−PAGE/クーマシーブルー染色によって検出される。それぞれVLおよびVHの組成を、下記のように示した:それぞれVLおよびVHとして、hAB1は、配列番号1と配列番号55を含む;hAB35は、配列番号28と配列番号106を含む;hAB36は、配列番号28と配列番号107を含む;hAB37は、配列番号28と配列番号108を含む;hAB38は、配列番号28と配列番号109を含む;hAB39は、配列番号28と配列番号110を含む。
【図6】下記に述べたような真核生物システムを用いたヒト化抗VEGF抗体の発現を示す。各抗体断片の発現レベルは、同一分画由来の精製物質と同一溶液を適用することによって、評価したが、これは、SDS−PAGE/クーマシーブルー染色によって検出される。それぞれVLおよびVHの組成を、下記のように示した:それぞれVLおよびVHとして、hAB1は、配列番号1と配列番号55を含む;hAB2は、配列番号1と配列番号70を含む;hAB3は、配列番号1と配列番号67を含む;hAB5は、配列番号1と配列番号75を含む;hAB7は、配列番号1と配列番号101を含む;hAB8は、配列番号1と配列番号100を含む;hAB13は、配列番号1と配列番号56を含む。
【図7】大腸菌における可溶性抗体断片類の発現に用いたベクターマップを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.2nMに等しいかそれよりも小さい解離定数KdでヒトVEGFに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項2】
解離定数Kdが0.1nMに等しいかそれよりも小さい請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
解離定数Kdが0.08nMに等しいかそれよりも小さい請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
解離定数Kdが0.05nMに等しいかそれよりも小さい請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
解離定数Kdが0.01nMに等しいかそれよりも小さい請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
解離定数Kdが0.005nMに等しいかそれよりも小さい請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記抗体がscFvの形態である請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記抗体がFabの形態である請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記抗体が完全アセンブリ抗体の形態である請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記抗体がscFvの形態でありかつ解離定数Kdが約4℃、25℃、37℃または42℃で測定される請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
前記抗体がFabの形態でありかつ解離定数Kdが約4℃、25℃、37℃または42℃で測定される請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
前記抗体がFabの形態でありかつ解離定数Kdが約37℃で測定される請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項14】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化1】

を含むVLを有するモノクローナル抗体で、ここで、下線を付した領域は、それぞれ、VL/CDR1,VL/CDR2およびVL/CDR3と称され、一方、前記領域の残りはフレームワークと称され、ここで、X1はD,EまたはAであり;X2は、IまたはTであり;X3は、V,E,K,R,QまたはTであり;X4は、MまたはLであり;X5は、SまたはTであり、X6は、SまたはTであり;X7は、LまたはVであり;X8は、AまたはVであり;X9は、SまたはTであり;X10は、P,V,L,AまたはIであり;X11は、EまたはDであり;X12は、RまたはTであり;X13は,AまたはVIであり;X14は,TまたはAであり;X15は,T、SまたはAであり;X16は,S,R,N,K,HまたはQであり;X17は,AまたはSであり;X18は,QまたはRであり;X19は,S,D、AまたはPであり;X20は,S,G、R,TまたはYであり;X21は,T,N,S、DまたはKであり;X22は,YまたはDであり;X23は,LまたはIであり;X24は,A,NまたはTであり;X25は,KまたはIであり;X26は,Q,K,TまたはIであり;X27は,R,K,Q、N,H,SまたはEであり;X28は,VまたはLであり;X29は,IまたはVであり;X30は,F,A,G,DまたはSであり;X31は,AまたはTであり;X32は,SまたはTであり;X33は,N,S,RまたはTであり;X34は,A,HまたはQであり;X35は、SまたはGであり;X36は、P,Tであり;X37は、S,N,D、GまたはYであり;X38は、SまたはTであり;X39は、GまたはRであり;X40は、TまたはAであり;X41は、SまたはRであり;X42は、SまたはRであり;X43は、PまたはAであり;X44は、EまたはDであり;X45は、F,VまたはSであり;X46は、V,T,I、AまたはSであり;X47は、YまたはSであり;X48は、S,YまたはNであり;X49は、SまたはTであり;X50は、T,V,A、P,K,G,SまたはIであり;X51は、WまたはYであり;X52は、QまたはGであり;X53は、VまたはLであり;およびX54は、E,DまたはAである。
【請求項15】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化2】

を含むVLを有するモノクローナル抗体で、ここで、下線を付した領域は、VL/CDR1、VL/CDR2およびVL/CDR3とそれぞれ称され、一方、残りの領域は、フレームワークと称し、ここで、X1はQLまたはNであり;X2は、P A FまたはSであり;X3は、VまたはMであり;X4は、AまたはTであり;X5は、GまたはAであり;X6は、RまたはSであり;X7は、SまたはTであり;X8は、S,T、YまたはNであり;X9は、IまたはVであり;X10は、SまたはRであり;X11は、S,P,N,AまたはTであり;X12は,N,TまたはYであり;X13は,LまたはFであり;X14は,TまたはAであり;X15は,V,LまたはFであり;X16は,MまたはIであり;X17は,G,TまたはSであり;X18は,NまたはDであり;X19は,QまたはEであり;X20は,DまたはEであり;X21は,FまたはLであり;X22は,KまたはRであり;X23は,GまたはAであり;X24は,Q,LまたはRであり;X25は,AまたはGであり;X26は,A,SまたはTであり;X27は,N,SまたはTであり;X28は,TまたはAであり;およびX29は,KまたはQである。
【請求項16】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化3】

(配列番号54)
を含むVLを有するモノクローナル抗体。
【請求項17】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化4】

を含むVHを有するモノクローナル抗体が提供され、ここで、下線を付した領域は、CDR1、CDR2およびCDR3とそれぞれ称され、一方、残りの領域は、Kabat命名法に従いフレームワークと称し、ここで、X1はEまたはQであり;X2は、VまたはGであり;X3は、QまたはEであり;X4は、VまたはLであり;X5は、SまたはTであり;X6は、STまたはRであり;X7は、AまたはVであり;X8は、YまたはFであり;X9は、T,D,N,SまたはAであり;X10は、FまたはLであり;X11は、T,D,Y,A,SまたはNであり;X12は,N,HまたはSであり;X13は,YまたはFであり;X14は,M,L、IまたはVであり;X15は,I,VまたはLであり;X16は,LまたはPであり;X17は,IまたはVであり;X18は,YまたはNであり;X19は,TまたはNであり;X20は,EまたはAであり;X21は,P、TまたはSであり;X22は,AまたはVであり;X23は,A,H,Q,P,DまたはEであり;X24は,DまたはEであり;X25は,KまたはTであり;X26は,V,FまたはLであり;X27は,FまたはIであり;X28は,LまたはRであり;X29は,DまたはNであり;X30は、TまたはNであり;X31は、SまたはNであり;X32は、T,Q,PまたはKであり;X33は、A,VまたはPであり;X34は、LまたはMであり;X35は、KまたはRであり;X36は、HまたはYであり;X37は、S,RまたはTであり;およびX38は、GまたはAである。
【請求項18】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号2−54から構成される群から選択されたアミノ酸配列、さらに好適には配列番号14、配列番号26、配列番号28、配列番号36、配列番号37、配列番号44、配列番号47および配列番号54から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVLを有するモノクローナル抗体が提供される。
【請求項19】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号57−110および配列番号285−310から構成される群から選択されたアミノ酸配列、好適には配列番号61−64、配列番号67、68、70、75、83、88、89、90,91,92,93、94および96−110から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVHを有するモノクローナル抗体。
【請求項20】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号195−209から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVL領域中CDR2を有する(VL/CDR2)モノクローナル抗体が提供される。
【請求項21】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号210−228から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むVL領域中CDR3を有する(VL/CDR3)モノクローナル抗体。
【請求項22】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号229−269から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含み、好適には配列番号232、235、237、251、255、263および265から構成される群から選択したアミノ酸配列を含むVL領域中フレームワーク領域(FR)CDR3を有する(VL/FR)モノクローナル抗体。
【請求項23】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化5】

を含むVH領域中CDR1を有する(VH/CDR1)モノクローナル抗体で、ここで、X1はYまたはFであり;X2は、D,N,T,SまたはAであり;X3は、FまたはLであり;X4は、T、D,S,Y,AまたはNであり;X5は、H,NまたはSであり;X6は、YまたはFであり;X7は、M、L、IまたはVであるモノクローナル抗体。
【請求項24】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化6】

を含むVH領域中CDR2を有する(VH/CDR2)モノクローナル抗体で、ここで、X1はIまたはVであり;X2は、YまたはNであり;X3は、TまたはNであり;X4は、P、TまたはSであり;X5は、AまたはVであり;X6は、A,Q、P,H,DまたはEであり;X7は、DまたはEであり;およびX8は、KまたはTであるモノクローナル抗体。
【請求項25】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号136−156から構成される群から選択したアミノ酸配列を含むVH領域中CDR2を有する(VH/CDR2)モノクローナル抗体。
【請求項26】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化7】

を含むVH領域中CDR3を有する(VH/CDR3)モノクローナル抗体で、ここで、X1はYまたはHでありおよびX2はRであるモノクローナル抗体。
【請求項27】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつ配列番号311−337から構成される群から選択したアミノ酸配列を含むVH領域中CDR3を有する(VH/CDR3)モノクローナル抗体。
【請求項28】
ヒトVEGFに特異的に結合しかつアミノ酸配列
【化8】

を含むVH領域中FRを有する(VH/FR)モノクローナル抗体で、ここで、X1は、EまたはQであり;X2は、QまたはEであり;X3は、VまたはLであり;X4は、SまたはTであり;X5は、S、TまたはRであり;X6は、AまたはVであり;X7は、IまたはVであり;X8は、FまたはVであり;X9は、FまたはIであり;X10は、LまたはRであり、X11は、TまたはNであり;X12は,SまたはNであり;X13は,T,Q、またはKであり;X14は,AまたはVであり;X15は,MまたはLであり;およびX16は、GまたはAであるモノクローナル抗体。
【請求項29】
ヒトVEGFに特異的に結合し配列番号1と配列番号70;配列番号1と配列番号67;配列番号1と配列番号75;配列番号1と配列番号83;配列番号14と配列番号55;配列番号1と配列番号101;配列番号1と配列番号100;配列番号14と配列番号102;配列番号1と配列番号103;配列番号1と配列番号104;配列番号1と配列番号105;配列番号36と配列番号100;配列番号26と配列番号100;配列番号28と配列番号100;配列番号37と配列番号100;配列番号44と配列番号100;配列番号54と配列番号100;配列番号47と配列番号100から構成された群から選択したVLおよびVH対、好適には配列番号28および61;配列番号28および62;配列番号28および63;配列番号28および64;配列番号28および68;配列番号28および85;配列番号28および86;配列番号28および87;配列番号28および88;配列番号28および89;配列番号28および90;配列番号28および91;配列番号28および92;配列番号28および93;配列番号28および94;配列番号28および95;配列番号28および96;配列番号28および97;配列番号28および98;配列番号28および99;配列番号28および106;配列番号28および107;配列番号28および108;配列番号28および109;配列番号28および110から構成される群から選択されるVLおよびVH対を有するモノクローナル抗体。
【請求項30】
前記抗体が、10nMに等しいかまたはそれより小さい解離定数Kdを有する請求項14〜29のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項31】
前記抗体が、1nMに等しいかまたはそれより小さい解離定数Kdを有する請求項14〜29のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項32】
前記抗体が、0.1nMに等しいかまたはそれより小さい解離定数Kdを有する請求項14〜29のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項33】
前記抗体が、0.01nMに等しいかまたはそれより小さい解離定数Kdを有する請求項14〜29のいずれかに記載のモノクローナル抗体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C−1】
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【図1C−2】
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【図1C−3】
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【図1C−4】
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【図1C−5】
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【図1C−6】
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【図1C−7】
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【図1C−8】
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【図1C−9】
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【図1C−10】
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【図1C−11】
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【図1C−12】
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【図1D−1】
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【図1D−2】
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【図1D−3】
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【図1D−4】
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【図1D−5】
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【図1D−6】
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【図1D−7】
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【図1D−8】
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【図1D−9】
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【図1D−10】
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【図1D−11】
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【図1D−12】
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【図1D−13】
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【図1D−14】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−504215(P2008−504215A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541694(P2006−541694)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/039501
【国際公開番号】WO2005/054273
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506175817)アブマクシス,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】