説明

血管形成を促進するための腫瘍内皮マーカー1、9、および17の使用

本発明が提供する方法および組成物は、内皮細胞における腫瘍内皮マーカー(TEM)1、TEM9、もしくはTEM17タンパク質、またはその生物学的に活性な断片の外因性の発現を用いて、血管形成を促進する。TEM1、TEM9、またはTEM17タンパク質のトランスジェニックマウスにおける血管形成の阻害物質を同定する方法も提供する。したがって、これらの方法および組成物は、脊椎動物における創傷治癒の加速もしくは増強、無酸素性組織(例えば、心筋)、潰瘍、および移植組織、特に血管移植の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明が提供する方法および組成物は、血管形成を促進し、したがって、脊椎動物の創傷治癒、無酸素性組織(例えば、心筋)、潰瘍、および移植組織、特に人工血管の治療を、加速または増大させるのに有用である。より詳細には、この方法は、内皮細胞での腫瘍内皮マーカー(TEM)の外因性の発現による血管形成の促進と、これらの方法で有用な組成物とに関する。TEMタンパク質のトランスジェニックマウスにおける血管形成阻害物質を同定する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
血管形成は、組織または臓器における新規の血管の生成を包含する。血管形成は、正常な生理的条件下では、創傷治癒、胎児発生、ならびに、黄体、子宮内膜、および胎盤の形成などの極めて特殊な状況で起こる。血管形成の過程は、天然に存在する刺激物質、例えば、アンジオポエチン-1、IL-8、血小板由来性内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、ならびに阻害物質、例えば、トロンボスポンジン、インターフェロン、およびメタロプロテイナーゼ阻害物質によるシステムを介して強く調節されている。
【0003】
血管形成は、多くの疾病状態においても、重要な要因として出現する。事実、制御されない血管形成が、多数の疾患と関連する病理学的損傷に直接寄与している。この非制御または過度の血管形成は、血管形成因子と血管形成阻害物質との不均衡が生じた際、例えば、過剰量の血管形成因子が生成された場合に起こる。不十分な血管形成も、特定の疾病状態の一因である。例えば、不十分な血管成長は、冠動脈疾患、脳卒中、および創傷治癒の遅延と関連した病態に寄与する。
【0004】
正常な創傷治癒は、外傷、熱傷、および感染を含めた様々な侵襲の後の組織の完全性および機能の迅速な回復を行う。血管形成の誘導は、創傷治癒過程における極めて重要な構成要素である。血管形成は、増殖および分化している内皮細胞、周皮細胞、および線維芽細胞への栄養物および酸素の供給を確実にし、さらに、潜在的な感染を回避するため、体液性免疫および細胞性免疫の免疫エフェクターの創傷への送達を確実にする。したがって、創傷治癒の過程、特に、例えば、熱傷、床ずれ潰瘍、糖尿病、肥満、および悪性腫瘍など、創傷治癒を遅らせる傾向がある状態を有する患者の場合には、できるだけ早く新生血管形成(neoangiogenesis)を誘導することが望ましい。同様に、創傷治癒の加速は、手術後の患者にも有益である。
【0005】
虚血組織損傷に関連した別の疾患には、冠動脈疾患がある。冠動脈疾患は、通常、心臓に供給する大動脈および中動脈の封鎖から生じ、これが次に心筋虚血を引き起こす。心筋虚血では、冠動脈から心臓組織までの血流が、限定的かつ/または不規則に分配され、それによって組織無酸症がもたらされる。重度の場合には、そのような無酸素症によって、組織中での広範な細胞死がもたらされる場合があり、その場合、最終的には心筋梗塞(心臓発作)または急性心臓死が引き起こされる。心筋虚血に関連した別の疾患に狭心症があるが、これは、激しい運動の結果として起こる胸部不快感を特徴とする慢性的な状態である。これら、または他の同様の疾患状態では、血管形成を刺激することができると、虚血組織床への血流の回復を介して無酸素状態を逆転させることによって、長期の組織損傷を大幅に低減することができる。
【0006】
通常、成体の哺乳動物では、血管形成はまれにしか起こらない。しかし、血管形成は、上述した多くの多様な生理的刺激に応答して、迅速に誘導されうる。まず、基底膜によって囲まれた内皮細胞および周皮細胞が、毛細血管を形成する。疾患または傷害は、プロ血管形成因子の産生を誘導する。まず、これらの因子が内皮細胞および白血球を活性化し、既存の血管の基底膜を浸食または溶解する酵素を放出させる。血管の管腔を裏打ちしていた内皮細胞は、活性化されると、その後、基底膜を通って突出する。次に、プロ血管形成刺激物質は、損なわれた基底膜を通過する内皮細胞の遊走を誘導する。遊走している細胞は、親血管からの「芽」を形成し、そこで、内皮細胞が増殖を開始する。内皮芽は、接着因子を用いて、相互に合体して毛細血管ループを形成し、新規の血管を生成する。次に、追加の酵素(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ)が出芽血管の先端で組織を消化し、新生血管周辺における活発な組織改造を可能にする。新たに形成された血管は、周皮細胞(すなわち、特殊化した平滑筋細胞)によって安定化される。いったん安定化されると、新生血管によって血流が支持される。
【0007】
いくつかの成長因子が、血管形成の刺激に有用なものとして同定されている。これらには、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー(Yanagisawa-Miwaら、Science、第257巻、1401〜1403頁(1992年)、および、Baffourら、J Vasc Surg、第16巻、181〜91頁(1992年))、内皮細胞成長因子(ECGF)(Puら、J.Surg. Res.、第54巻、575〜83頁(1993年))、および、血管内皮成長因子(VEGF)(Takeshitaら、Circulation、第90巻、228〜234頁(1994年)、および、Takeshitaら、J Clin. Invest、第93巻、662〜70頁(1994年))が含まれる。しかし、これらプロ血管形成因子の多くは、幅広い種類の組織に作用するため、血管形成の促進に特異的なタンパク質の同定は、治療上の重要な利点を提供する。
【発明の開示】
【0008】
概要
一態様では、本発明が提供する方法および組成物は、内皮細胞増殖を刺激し、有効量の腫瘍内皮マーカー(TEM)9タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、増殖する。一実施形態では、上記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する。典型的には、上記ベクターは、ウイルスベクターである。特定の一実施形態では、実施形態が複製欠損アデノウイルスである。
【0009】
別の態様では、本発明が提供する方法および組成物は、内皮細胞増殖を刺激し、有効量の腫瘍内皮マーカー(TEM)17タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、増殖する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明の方法および組成物は、内皮細胞の遊走を刺激し、有効量の腫瘍内皮マーカー(TEM)9タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、遊走する。
【0011】
内皮細胞の細管形成を刺激する方法であって、有効量の腫瘍内皮マーカー(TEM)1タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を、内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、細管が形成される方法も、本発明でさらに提供される。
【0012】
別の態様では、本発明の方法および組成物は、内皮細胞の細管形成を刺激し、有効量の腫瘍内皮マーカー(TEM)17タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞の細管形成が刺激される。特定の一実施形態では、本発明が提供する方法は、大腸癌の馴らし培地を投与することをさらに含む。
【0013】
一態様では、本発明が提供する方法および組成物は、血管形成を刺激し、(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を発現するDNA配列を含有するベクターを、有効量、それを必要とする被験者に投与することを含み、その投与によって、被験者の内皮細胞が前記ベクターに感染し、かつ血管形成が刺激される。この方法の一実施形態では、TEM1発現ベクターによる内皮細胞の感染が、増殖の増大と、管形成の増大とをもたらす。
【0014】
別の態様では、本発明が提供する方法および組成物は、血管形成を刺激し、TEM9タンパク質または生物学的に活性なタンパク質断片を発現するDNA配列を含有するベクターを、有効量、それを必要とする被験者に投与することを含み、その投与によって、被験者の内皮細胞が前記ベクターに感染し、かつ血管形成が刺激される。一実施形態では、TEM9発現ベクターによる内皮細胞の感染が、増殖および遊走の増大とをもたらす。
【0015】
さらに別の態様では、本発明が提供する方法および組成物は、血管形成を刺激し、TEM17タンパク質または生物学的に活性なタンパク質断片を発現するDNA配列を含有するベクターを、有効量、それを必要とする被験者に投与することを含み、その投与によって、被験者の内皮細胞が前記ベクターに感染し、かつ血管形成が刺激される。一実施形態では、TEM17発現ベクターによる内皮細胞の感染が管形成の増大をもたらす。
【0016】
上記方法の一実施形態では、上記ベクターがウイルスベクターである。特定の一実施形態では、上記ベクターが複製欠損アデノウイルスである。
【0017】
一実施形態では、上記被験者が、無酸素性または虚血性組織損傷を有する。別の実施形態では、上記被験者が、慢性創傷治癒不全を有する。
【0018】
一態様では、腫瘍内皮マーカー(TEM)1またはその生物学的に活性な断片をコードするDNA配列を含む組換えウイルス構築物が、本発明で提供される。一実施形態では、上記ベクターが複製欠損アデノウイルスである。
【0019】
別の態様では、腫瘍内皮マーカー(TEM)9またはその生物学的に活性な断片をコードするDNA配列を含む組換えウイルス構築物が、本発明で提供される。一実施形態では、上記ベクターが複製欠損アデノウイルスである。
【0020】
さらに別の態様では、腫瘍内皮マーカー(TEM)17またはその生物学的に活性な断片をコードするDNA配列を含む組換えウイルス構築物が、本発明で提供される。一実施形態では、上記ベクターが複製欠損アデノウイルスである。
【0021】
すなわち、本発明が提供する方法および組成物は、傷害、手術、または疾患によって組織が無酸素または虚血になっている場合、または創傷治癒の加速が推奨される場合に、内皮細胞におけるTEMの外因性の発現によって血管形成を刺激する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書に開示する方法および組成物は、in vitroおよびin vivoにおける内皮細胞の増殖および機能に関する。詳細には、これらの方法および組成物は、腫瘍内にある内皮細胞で選択的に発現される、内皮細胞上の表面分子のサブセットを使用する。この表面分子は、腫瘍内皮マーカーまたはTEMとして知られている。これらTEMの1つまたは複数の発現が増大すると血管形成が促進され、したがって、無酸素組織と関連した傷害および疾患の治療と、創傷治癒の促進とに有用な治療薬を提供する。
【0023】
腫瘍内皮マーカーは、本発明が提供する方法および組成物を用いて内皮細胞で発現することができる。本明細書で使用する「腫瘍内皮マーカー(TEM)」という用語は、腫瘍内皮細胞で選択的に発現される分子を指す。正常な(非腫瘍の)血管系では、TEM発現がないか、またはよりかなり低い程度である。例えば、St. Croixら、Science、第289巻、1197〜1202頁(2000年)、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)を参照。TEMが同様の発現プロファイルを共有している(すなわち、それらは主に腫瘍内皮細胞に限定される)ことは企図するが、TEMは、必ずしも、血管形成の促進において同じ機構を共有してはいないだろう。したがって、あるTEMのプロ血管形成特性は、別のTEMと、異なるか、重なるか、または同一でありうる。プロ血管形成特性には、内皮細胞によるin vitro増殖、遊走、および管形成の刺激が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
一実施形態では、標的分子がTEM1である。エンドシアリン(endosialin)は165kDaの糖タンパク質である。Rettig、ら、Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A.、第89巻、10832〜36頁(1992年)。2001年に、Christianおよび他がTEM1のDNA配列を、St. Croixらによって、Science、第289巻、1197〜1202頁(2000年)にエンドシアリンのタンパク質コード配列として報告されている配列と同定した。Christianら、J. Biol. Chem.、第276巻、7408〜14頁(2001年)。TEM1はC型レクチン様の、I型膜タンパク質であり、シグナルリーダーペプチドと、5つの球状細胞外ドメインと、それに続く、ムチン様領域、膜貫通セグメント、および短い細胞質尾部とを有する。N末端は、血液凝固の調節に関与する受容体であるトロンボモジュリン(thrombomdulin)と、補体受容体C1qRpとに相同性を示す。Websterら、J. Leuk Biol.、第67巻、109〜16頁(2000年)。マウスおよびヒトのTEM1は、77.5%のアミノ酸の同一性を共有し、膜貫通領域では100%の同一性がある。Opavskyら、J. Biol. Chem.、第276巻、38795〜807頁(2001年)。TEM1は、シグナル配列をアミノ酸1〜17に、そして、膜貫通ドメインをアミノ酸686〜708に有する。細胞外ドメインは、残基1〜685である。TEM1の発現は、細胞密度(または、細胞周期)に応じて異なる。Opavskyら、同上(2001年)。TEM1の発現は、集密状態(G0)の細胞で最も高いが、これはin vivoにおける細胞周期で最も重要な相である。TEM1のDNA配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)の配列番号196として開示されている。
【0025】
別の実施形態では、標的分子がTEM-17である。TEM17は、I型膜タンパク質であり、残基1〜18のシグナル配列と、ニドゲンのG1ドメインに類似したN末端領域と、プレキシンと相同性がある100アミノ酸領域と、残基427〜445の膜貫通ドメインと、短い細胞質尾部とを有する。細胞外領域は、残基1〜426を含む。プレキシンファミリーは細胞誘導キュー(cue)を媒介し、これは、TEM17がこの役割で機能しているかもしれないことを示唆する。マウスTEM17は、ヒトTEM17と81%の配列同一性を有する。TEM17のDNA配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)の配列番号230として開示されている。
【0026】
別の実施形態では、標的分子がTEM9である。TEM9は、セクレチンファミリーの7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体である。このGタンパク質共役型受容体ホモログは、残基1〜26のシグナル配列と、7つの膜貫通ドメインとの両方を有する。N末端細胞外ドメインは、ロイシンリッチ反復(LRR)領域と、それに続く、免疫グロブリンドメイン、ペプチドホルモン受容体ドメイン、およびGPCRタンパク分解部位ドメインとからなる。TEM9の細胞外領域残基はアミノ酸1〜769にあり、膜貫通ドメインは、残基817〜829(TM2およびTM3)、残基899〜929(TM4およびTM5)、および残基1034〜1040(TM6およびTM7)にある。膜貫通領域は、セクレチンファミリーの他のセルペンチン受容体の膜貫通領域に相同である。細胞質領域の始めには、GPCRパルミトイル化に典型的な2つの近接したシステインが含有されている。したがって、TEM9は、細胞接着タンパク質に特徴的な細胞外ドメインを有するGタンパク質共役型受容体である。マウスオーソログは、残基1〜29に推定シグナルペプチドを有し、また、ヒトTEM9と87%の相同性を有する。TEM9のDNA配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)の配列番号212として開示されている。
【0027】
生物学的に活性な、TEMのいかなる断片も、本発明の方法および組成物で用いることができる。本明細書で使用する「生物学的に活性な断片」という用語は、完全長タンパク質の生物学的活性のうちの1つまたは複数を保持する、TEMタンパク質のいかなる部分も、また、それに対応するコードDNA配列も指す。そのような断片は、完全長配列の一部のみを含むが、それでもなお、同一の機能を、場合によってはさらに高い程度、または低い程度で有することがある。そのような断片の生物学的活性は、本明細書が提供する血管形成を評価する方法を用いて評価することができる。プロ血管形成活性に関連した生物学的活性には、in vitroの内皮細胞による増殖、遊走、および管形成が含まれる。
【0028】
TEMタンパク質のいかなる類似体または誘導体も、本発明の方法で用いることができる。本明細書で使用する「類似体または誘導体」という用語は、指示された血管形成を促進する能力によって特徴付けられる置換タンパク質を指す。そのような突然変異および置換は、周知の実験室的方法で設計および発現され、また、当業者に公知の保存性突然変異および置換を含むことができる。例えば、TEMの欠失突然変異体は、周知の実験室的方法で設計および発現することができる。そのような類似体および誘導体の血管形成特性は、本明細者が提供するアッセイを用いて、生物学的活性の指標として慣行的に評価することができる。
【0029】
TEMタンパク質またはポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含めた周知の方法で、組換え体細胞培養から回収および精製することができる。通常、精製には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が使用される。本発明が提供する方法において有用なポリペプチドには、直接単離されたか、または培養された、体液、組織、および細胞を含めた天然源から精製された生成物;化学的合成操作の生成物;ならびに、限定されるものではないが、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞を含めた原核細胞または真核細胞の宿主から組換え技法で生成された生成物が含まれる。本発明の方法で有用なポリペプチドは、組換え体生成操作で使用した宿主に応じて、グリコシル化されている場合も、グリコシル化されていない場合もある。さらに、TEMポリペプチドは、改変開始メチオニン残基を、場合によっては宿主に媒介された過程の結果として含むことがある。すなわち、翻訳開始コドンによってコードされるN端末メチオニンは、全般的に、翻訳後、すべての真核細胞で、いかなるタンパク質からも高い効率で除去されることが、当技術分野で周知である。ほとんどのタンパク質のN末端メチオニンは、ほとんどの原核生物でも効率的に除去されるが、一部のタンパク質では、N末端メチオニンが共有結合によって連結されているアミノ酸の性質に応じて、この原核細胞による除去過程の効率が悪いことがある。
【0030】
タンパク質の機能または構造に有意な影響を与えることなく、TEMポリペプチドのアミノ酸配列の一部を改変できることも、当業者は認めるであろう。通常、保存的置換には、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中で1つを別のものにする置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの相互置換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基PheおよびTyrの間の置換が含まれる。
【0031】
TEMポリペプチドの特性を改善または改変するために、タンパク質工学を使用することができる。新規の突然変異体タンパク質、すなわちムテインを生成するために、単一または複数のアミノ酸置換、欠失、付加、または融合タンパク質を含めた、当業者に公知の組換えDNA技術を用いることができる。そのような改変されたポリペプチドは、例えば、活性の増大、または安定性の増大を示す場合がある。さらに、それらはより高い収率で精製でき、そして、少なくともある特定の精製条件および貯蔵条件下では、対応する天然ポリペプチドより優れた溶解性を示す。
【0032】
本発明の方法および組成物で有用なDNA配列には、生物学的に活性な完全長TEM、その断片、類似体、または誘導体をコードするいかなる配列も含まれる。この配列はゲノム配列を含んでも、非ゲノム配列を含んでもよい。通常、この配列は、cDNA配列であろう。例示的配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)に見出される。
【0033】
TEMタンパク質の外因性の発現は、一過性発現でも、安定発現でも、またはこれらの何らかの組合せでもよい。外因性の発現は、血管形成活性を増強する1つまたは複数の追加のタンパク質と共発現することによって促進または最大化される場合がある。
【0034】
血管形成、増殖、遊走、および/または内皮細管形成を刺激する方法では、対象とするTEMを発現するか、誘導によって対象とするTEMを発現させることができるか、または、非ヒトTEMホモログ(例えば、マウス、ウシ、および同様のもの)を発現するいかなる細胞も用いることができる。一実施形態では、この細胞は、対象とするTEMを内在的に発現する細胞系である。特定の実施形態では、この細胞系がマウス2H11内皮細胞系(ATCC)である。別の実施形態では、この細胞は、誘導によって対象とするTEMを発現する。特定の実施形態では、この細胞は、内皮前駆細胞(EPC)を生成するために、塩基性FGF(bFGF)、VEGF、およびヘパリンの存在下で培養されたAC133+/CD34+ヒト骨髄細胞である。さらに別の実施形態では、この細胞は、対象とするTEMでトランスフェクトまたは形質導入された細胞である。特定の実施形態では、対象とするTEMをコードしているアデノウイルスベクターで、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮細胞に形質導入する。別の特定の実施形態では、対象とするTEMをコードしているプラスミドで、COSまたは293細胞にトランスフェクトする。一部の実施形態では、TEM発現細胞を、成長因子、または他の細胞による馴らし培地と接触させる場合がある。例えば、大腸癌馴らし培地は、無血清培地で3日間増殖させたヒトHCT116大腸癌細胞またはヒトHT29大腸癌細胞の集密的な培養を用いて調製することができる。培地を補足するのに有用な因子には、VEGFおよびbFGFが含まれる。
【0035】
一実施形態では、この細胞は、ヒト被験者または獣医学的被験者に由来するか、またはその中にある細胞である。上記の内皮細胞は、組織または被験者の中にあるものでよい。本発明が提供する方法が標的とする内皮細胞は、機能的な内皮細胞に誘導することができるか、または分化するであろう前駆体でもよい。上記の内皮細胞は、成熟した内皮細胞でもよい。内皮細胞の同定は、従来の方法を用いて、例えば、内皮マーカーに対する特異的な抗体で染色することによって実施できる。
【0036】
TEMとの内皮細胞の接触は、いかなる適当な方法で、適当な長さのいかなる時間で行うこともできる。TEMタンパク質またはDNA配列との接触時間は、通常、プロ血管形成応答を引き出すのに十分な時間である。そのような応答には、TEMを発現している内皮細胞による、増殖、遊走、および/または管形成の増大が含まれる。
【0037】
内皮細胞増殖を刺激する方法であって、有効量のTEMタンパク質またはその生物学的に活性な断片を投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、増殖する方法が、本発明によって提供される。このTEMタンパク質は、TEM1またはTEM9でありうる。一実施形態では、内皮細胞の増殖を刺激する方法は、ある特定の処置時間の間、TEMタンパク質またはその生物学的に活性な断片に、内皮細胞を接触させるステップ、および、その後、TEMを発現している内皮細胞の増殖を、TEMを発現していない内皮細胞と比較して測定するステップの1つまたは複数を含み、その際、外因性のTEM発現が内皮細胞の増殖を刺激することが、TEMを発現している細胞の増殖の量がより大きいことによって示される。TEMタンパク質が増殖に対して刺激性であるというのは、それが、TEMタンパク質を受容していないか、あるいは、不活性のTEMタンパク質または空の送達媒体(例えば、空のベクター、空のリポソーム)を受容した内皮細胞の増殖と比較して、増殖を刺激している場合である。細胞の、TEMタンパク質との接触は、適当な時間ならば、いかなる長さで行うこともできる。
【0038】
増殖は、いかなる適当な方法を用いて定量してもよい。通常、増殖の測定は、放射性標識されたヌクレオチド(例えば、3Hチミジン)のDNAへの取込みを評価することで行う。一実施形態では、増殖の測定をATPルミネッセンスで行う。特定の実施形態では、増殖の測定を、CellTiter-Glo(商標)発光細胞生存率アッセイ(Luminescent Cell Viability Assay)(Promega社)を用いて行う。内皮細胞の増殖は、TEMタンパク質またはコードDNA配列を、以下に記載する方法で組織または被験者に投与することによっても、刺激することができる。
【0039】
内皮細胞の遊走を刺激する方法であって、有効量のTEMタンパク質またはその生物学的に活性な断片を、内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、遊走する方法が、本発明によって提供される。一実施形態では、このTEMタンパク質がTEM9である。一実施形態では、内皮細胞の遊走を刺激する方法は、TEMタンパク質またはDNA配列に内皮細胞を、TEM発現を誘導するのに十分な時間で接触させるステップ、少なくとも1つの走化性物質で補足された培地を含む第2のチャンバーから多孔性膜で分離されている第1のチャンバー中で、TEMを発現している細胞をインキュベートするステップ、および、第2のチャンバーに進入する、TEMを発現している細胞の数を、第2のチャンバーに進入する、TEMを発現していない細胞の数と比較して測定するステップの少なくとも1つを含み、その際、外因性のTEM発現が内皮細胞の遊走を刺激することが、第2のチャンバーに進入する、TEMを発現している細胞の数がより多いことによって示される。TEMを発現していない細胞は、未処置の内皮細胞、または空の媒体で処置された内皮細胞でありうる。
【0040】
本発明の方法には、遊走を評価する、いかなる適当な方法を使用することもできる。通常、遊走の測定は、元のチャンバーに残っている細胞の数に対する、走化性物質を含むチャンバーの中の細胞の数を評価することによって行う。一実施形態では、メーカーの指示に従って、細胞をPKH67緑色色素で予め標識する。別の実施形態では、細胞を蛍光タグ、例えば、カルセインAM(Molecular Probes社)で標識する。インキュベーション後、細胞を、倒立蛍光位相差顕微鏡を用いて計数する。細胞の遊走は、TEMタンパク質またはコードDNA配列を、以下に記載する方法で組織または被験者に投与することによっても、刺激することができる。
【0041】
内皮細胞の細管形成を刺激する方法であって、有効量のTEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を、内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、細管が形成される方法も、本発明によって提供される。一実施形態では、このTEMタンパク質がTEM1である。別の実施形態では、このTEMがTEM17である。一実施形態では、内皮細胞の細管形成を刺激する方法は、TEMタンパク質またはDNA配列に内皮細胞を、TEM発現を誘導するのに十分な時間で接触させるステップ、適切なマトリックス中で内皮細胞をインキュベートするステップ、および、細管形成を測定するステップの少なくとも1つを含み、その際、外因性のTEM発現が内皮細胞の細管形成を刺激することが、TEMを発現している内皮細胞による細管形成が、TEMを発現していない細胞と比較して、より大規模であることによって示される。通常、細管形成が刺激されるというのは、内皮細胞によってTEMが発現された際に、形成された細管の数が増大しているか、または細管の性質が有意に改変されている場合である。TEMを発現していない細胞は、未処置の内皮細胞、または空の媒体で処置された内皮細胞でありうる。
【0042】
細管形成を評価するいかなる適当な方法も、本発明が提供する方法に有用である。通常、細管形成は、検出可能な標識で標識された細胞を用いて顕微鏡で評価する。一実施形態では、メーカーの指示に従って、細胞をPKH67緑色色素で予め標識する。別の実施形態では、細胞をカルセインAM(Molecular Probes社)で標識する。インキュベーションの後、内皮細胞細管を、倒立蛍光位相差顕微鏡を用いて検査する。本明細書で使用する「細管の性質」という用語は、マトリックス中で形成された細管網の丈夫さと、持続性とを意味する。細管形成は、いかなる適当な方法を用いて定量してもよい。一実施形態では、細管形成の定量を、MetaMorph画像解析システムを用いて、管面積を評価することによって行う。いかなる適当なマトリックスを使用してもよい。一実施形態では、このマトリックスが、再構成基底膜マトリゲル(商標)マトリックス(BD Sciences社)である。細胞による細管形成は、TEMを、以下に記載する方法で組織または被験者に投与することによっても、刺激することができる。
【0043】
特定の実施形態では、TEMがTEM17であり、かつ、内皮管形成を刺激する方法が、大腸癌馴らし培地で培地を補足することをさらに含む。通常、培地を馴化するのに用いられる大腸癌細胞系は、HCT116およびHT29である。
【0044】
血管形成は、血管形成の必要性が示されているいかなる状況でも、本発明の方法および組成物を用いて促進することができる。本明細書で使用する「血管形成」という用語は、刺激、特にTEMの外因性の発現に応答した、組織中または培養中の血管の成長を意味する。本明細書で使用する「新生血管形成」という用語は、組織中または培養中における血管の新規の成長を意味する。血管形成を刺激する方法では、対象とするTEMを発現できる細胞、または、対象とするTEMを、誘導によって発現できる細胞ならば、いかなる細胞も用いることができる。一実施形態では、この細胞が、ヒト被験者または獣医学的被験者の体内に見出される。
【0045】
本明細書で使用する「組織」という用語は、その中での血管形成が望まれることのあるいかなる組織も意味する。本発明の方法および組成物で処置される組織は、典型的には、血管に隣接しており、より典型的には、冠動脈および末梢動脈に隣接しているだろう。そのようなところでは、例えば、隣接している血管内での、血管形成因子の経壁送達が可能であって、それによって血管内の送達部位から周辺組織への血管形成が促進される。標的組織は、通常、虚血性組織であろうが、本発明の方法は、非虚血性の組織における血管形成を促進するのにも有用である。
【0046】
いかなる組織虚血も、本発明の方法および組成物を用いて治療することができる。本明細書で使用する「虚血」または「無酸素性」という用語は、疾患または傷害の結果として血流が不足している組織のことをいう。そのような組織には、筋、脳、腎臓、および肺が含まれるが、これらに限定されない。虚血性疾患には、脳血管虚血、腎虚血、肺虚血、四肢虚血、虚血性心筋症、および心筋虚血が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
新生血管形成の必要があるか、または、それが有益であるいかなる創傷および他の状態も、本発明の方法および組成物で治療することができる。本明細書で使用する「創傷」という用語は、曝露されている組織、赤むけの組織、または擦過組織に概して付随する開裂を含めた、皮膚、粘膜、または上皮内層におけるいかなる開裂も意味する。これらの方法および組成物に基づいて治療できる創傷または他の外傷のタイプに関しては制限がない。そのような創傷には、第1度、第2度、および第3度の熱傷;整形手術における切開も含めた外科的切開;裂創、切開、および貫通を含めた創傷;ならびに、褥創潰瘍(床ずれ)および潰瘍を含めた潰瘍、または、糖尿病、歯科、血友病、悪性、および肥満症の患者に関連した創傷が含まれるが、これらに限定されない。第一の関心は大きな創傷を新生血管形成によって治癒させることであるが、TEMの発現は、小さな創傷、血管および皮膚の移植、ならびに上皮細胞の整形再生にも有用でありうることも企図する。治療される創傷は、通常、ウイルス感染もしくは腫瘍に関連しているか、または関連していない、熱傷および外科的切開である。
【0048】
本明細書で使用する「血管形成を刺激する」および「血管形成を促進する」という用語は、TEMを発現している内皮細胞の増殖、遊走、管形成、またはこれらの何らかの組合せの増大を含む。in vivoでの血管形成には、少なくとも何らかの新生血管形成または創傷治癒を促進する、内皮細胞のいかなる刺激も含まれる。したがって、この用語は、虚血関連の疾患もしくは症候、または創傷を伴う脊椎動物被験者に与えられた有益な結果を意味する。TEMがTEM1である一実施形態では、プロ血管形成活性に、増殖の刺激と、管形成の刺激とが含まれる。TEMがTEM9である別の実施形態では、プロ血管形成活性に、増殖の刺激と、遊走の刺激とが含まれる。TEMがTEM17であるさらに別の実施形態では、プロ血管形成活性に、管形成の刺激が含まれる。
【0049】
いかなる被験者も、本発明が提供する方法および組成物で治療することができる。そのような被験者は、虚血に関連した疾患もしくは症候、または創傷を伴った哺乳動物、好ましくはヒトである。特定の一実施形態では、被験者が慢性の創傷治癒不全を有する。開示した方法および組成物の獣医学的使用も企図する。そのような使用には、家畜(domestic animals、livestock)および純血種の馬の虚血に関連した疾患および創傷の治療が含まれるであろう。
【0050】
生物学的に有効な量は、少なくとも何らかの創傷治癒または新生血管形成を促進する量であろう。これには、好ましい治癒過程でのかなりの改善をもたらす量も含まれる。本明細書で使用する「有効量」という用語は、適切なレベル、すなわち、内皮細胞増殖を誘導でき、かつ/または、プロ血管形成活性を誘導できるレベルのTEMタンパク質を生成するのに十分であるように送達される化合物(例えば、核酸、タンパク質)量を意味する。本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、細胞、組織、または被験者に、単独で、または追加の治療薬と併用して投与された場合に、血管形成によって利益を受ける細胞、組織、または被験者における血管形成を促進または刺激するのに有効なTEMタンパク質の量を意味する。治療に有効な用量とは、さらに、症候の改善、例えば、関連した病状の治療、治癒、予防、もしくは改善、または、そのような状態の治療、治癒、予防、もしくは改善の加速をもたらすのに十分な化合物の量のことも意味する。活性成分を単独で個体に投与する場合には、治療に有効な用量は、その成分単独の量のことをいう。併用投与する場合には、治療に有効な用量は、併用投与、逐次投与、または同時投与するかに関わりなく、治療効果をもたらす活性成分の合計した量のことをいう。
【0051】
すなわち、重要な一面は発現されるTEMのレベルである。したがって、多重転写産物を用いることも、高レベルの発現をもたらすであろうプロモーターの制御の下に遺伝子をおくこともできる。代替の一実施形態では、極端に高いレベルの発現をもたらす因子の制御下に遺伝子がおかれるであろう。有効な核酸用量は、発現される特定のタンパク質、標的組織、患者、およびその患者の臨床症状によって決定されるだろう。典型的には、DNAの有効量は、約1から4000μg、より典型的には約1000から2000、最も典型的には約2000から4000である。
【0052】
本発明の方法および組成物は、in vitroおよびin vivoの両方で血管形成を刺激する。刺激される内皮細胞が動物の体内、例えば、虚血組織または創傷にある場合、TEM遺伝子は、薬理学的に許容される形態で動物に投与されるだろう。本発明の医薬組成物は、通常、薬学的に許容される担体または水性溶媒中に分散された、有効量のTBMタンパク質またはコードDNA配列の組成物を含むだろう。本明細書で使用する「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、動物、または、適当な場合には、ヒトに投与された場合に、有害な反応、アレルギー反応、または、他の不都合な反応を生成しない分子的実体および組成物のことをいう。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」にはありとあらゆる溶剤、分散媒体、コート剤、抗細菌薬および抗真菌薬、等張剤、ならびに吸収遅延薬剤、ならびに同様のものが含まれる。薬学的活性物質用のそのような媒体および薬剤の使用は当技術分野で周知である。従来のいかなる媒体または薬剤も、活性成分と非適合でない限り、それらの治療用組成物における使用を企図する。
【0053】
この開示に照らして、様々な医薬組成物、ならびにそれらを調製および使用する技法は、当業者に公知であろう。適当な薬理組成物および関連した管理技法の詳細なリストに関しては、本明細書における詳細な教示を参照することができ、これは、さらに「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、最新版、Mack Publishing社などの教科書で補足することができる。
【0054】
製剤方法および送達方法は、通常、所望の血管形成の部位と、治療される疾患に応じて適合されるであろう。例示的製剤には、ミセル、リポソーム、または薬物放出カプセル剤(遅延放出用に設計された生体適合性コーティング剤中に組み込まれた活性薬)の中に封入された製剤を含めた、非経口投与、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、または、皮下投与に適したもの;摂取製剤;クリーム、軟膏剤、およびゲルなどの局所使用の製剤;ならびに、吸入剤、エアゾール、スプレーなどの他の製剤が含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物の用量は、治療の必要性の程度および重度、投与される組成物の活性、被験者の健康全般、および当業者には周知の他の要件に応じて異なるであろう。
【0055】
そのような化合物の毒性および治療効力の測定は、細胞培養または実験動物における標準的な製薬学手順、例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)およびED50 (集団の50%に対して治療効果ある用量)を測定する手順で行うことができる。毒性効果をもつ用量と、治療効果をもつ用量との比が治療指数であり、LD50およびED50の比率として表すことができる。高い治療指数を示す抗体が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトに使用するための用量の範囲を計画するのに使用できる。そのような化合物の用量は、毒性が全く伴わないかほとんど伴わないED50を含む範囲の循環濃度内であることが好ましい。この用量は、使用される剤形および投与経路に応じて、この範囲の中で変化しうる。正確な処方、投与経路、および用量は、患者の状態、年齢、体重、および治療に対する応答性から鑑みて、個々の医師が選択することができる。用量および投与間隔は、望ましい治療効果を維持するのに十分な血漿レベル、すなわち最小有効濃度(MEC)の活性部分が提供されるように個別に調整することができる。MECは、各化合物によって異なるが、in vitroデータ、例えば、本明細書に記載のアッセイを用いた遊走活性の50〜90%阻害を実現するのに必要な濃度から推計することができる。
【0056】
投与方法は特に重要でない。一実施形態では、投与方法が、I.V.ボーラスである。別の実施形態では、投与が局所投与である。別法では、全身投与ではなく、局所的方法で、例えば、創傷または虚血組織への抗体の直接注射によって、しばしばデポー剤または持続放出製剤で、抗体を投与することができる。
【0057】
さらに、標的指向性薬物送達システムで、例えば組織特異的抗体でコーティングされたリポソーム中で、例えば創傷または虚血組織を標的として、抗体を投与することもできる。リポソームは、血液中で運搬され、本発明の方法は特に血管形成作用に関するものなので、個々のリポソームの大きさはこの方法および組成物の重要な特徴であるとはみなされない。通常は、リポソーム調製物の静脈内注射が有用であるが、他の経路の投与も考えられる。上記の処方のリポソームは、標的に特異的なモノクローナル抗体または他のリガンドを組み込むことで、意図したそれら標的に対してさらに特異的にすることができる。例えば、特定の受容体に対するモノクローナル抗体を、Leserman,L.ら、Nature(1980年)、第288巻、602〜604頁の方法によって、リポソーム中に組み込まれたホスファチジルエタノールアミン(PE)に連結させてリポソームに組み入れることができる。リポソームは、病んだ組織に向けて送達され、それによって選択的に摂取されるであろう。
【0058】
リポソームは、従来の合成もしくは天然のリン脂質リポソーム物質のいずれかと組み合わせて、本発明の組成物から作製することができ、そのようなリン脂質リポソーム物質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、またはホスファチジルイノシトール、および同様のものなど、卵、植物、または動物などを供給源とした、天然源からのリン脂質が含まれる。同様に使用することのできる合成のリン脂質には、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、および対応する合成のホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルグリセロールが含まれるが、これらに限定されない。当業者に公知なように、コレステロールまたは他のステロール、ヘミコハク酸コレステロール、糖脂質、セレブロシド、脂肪酸、ガングリオシド、スフィンゴ脂質、1,2-ビス(オレオイロキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレオイル)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、および他の陽イオン性脂質をリポソームに組み入れることができる。リポソーム中で使用されるリン脂質および添加物の相対量は、所望に応じて変化させることができる。好ましい範囲は、リン脂質が約60から90モルパーセントまであり;コレステロール、ヘミコハク酸コレステロール、脂肪酸、または陽イオン性脂質は、0から50モルパーセントまでの範囲の量で用いることができる。リポソームの脂質層に組み入れられる本発明の化合物の量は、脂質の濃度に応じて、約0.01から約50モルパーセントまでの範囲で変化させることができる。
【0059】
治療される状態に応じて、他の製剤も使用することができる。例えば、局所製剤は、創傷などの病的状態を治療するのに適している。本明細書で使用する「局所的」という用語は、創傷に局所的であることを意味するが、表皮適用に限定されるものではない。局所的に適用される場合、通常、TEM組成物は、担体および/またはアジュバントなどの他の成分と併用される。そのような他の成分の性質に関しては、それらが薬学的に許容されなければならないこと、意図された投与で有効であること、および、TEM組成物を分解または不活性化することがないことを除けば、制限がない。TEM組成物は、洗浄薬(irrigant)または軟膏の形態で熱傷に適用することができ、その場合には、生理的食塩水またはD5Wなどの等張液中で用いることができる。TEM組成物は、熱傷に適用して、皮膚移植片の成長および生存を加速させるのに特に有用である。通常、TEM含有組成物は、移植片に浸透させるか、または、移植片の表面に粘着させて、コーティングする。移植片に粘着させるのは、移植片の、熱傷に適用される側でも、移植片の外側でもよい。TEM組成物は、デブリードマン酵素がこの組成物をタンパク質分解によって不活性化しない限り、プロテアーゼを含有する熱傷デブリードマン軟膏にも含まれる。
【0060】
TEM組成物の局所使用用の製剤には、またクリーム、軟膏剤、およびゲルを企図する。油性または水溶性の軟膏基剤の調製も、当業者に周知である。例えば、これらの組成物には、植物油、動物性脂肪、そして、より好ましくは、石油から得られる半固体炭化水素が含まれうる。使用される特定の成分には、白色軟膏、黄色軟膏、セチルエステルワックス、オレイン酸、オリーブ油、パラフィン、ペトロラタム、白色ワセリン、鯨蝋、グリセリン軟膏、白ロウ、黄ロウ、ラノリン、脱水ラノリン、およびモノステアリン酸グリセリンが含まれることがある。グリコールエーテルおよび誘導体、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシル40、およびポリソルベートを含めた、様々な水溶性軟膏基剤も用いることができる。望ましい場合には、例えば、経皮パッチ、イオン泳動、またはエレクトロトランスポートを用いた、皮膚を通した均一な送達を用いることもできる。
【0061】
したがって、本発明の方法に従う使用に供する医薬組成物は、活性のTEMタンパク質またはDNA配列を、薬学的に使用可能な調製物に加工する過程を促進する1つまたは複数の賦形剤および助剤を含む生理的に許容される担体を用いて、従来の方法で処方することができる。これらの医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖剤接合、研和、乳化、封入、包括、または凍結乾燥加工によって、公知の方法で製造できる。
【0062】
適切な処方は、選択される投与経路に依存している。液体形態で投与する場合には、水、石油、落花生油、鉱油、大豆油、もしくは胡麻油などの動物起源もしくは植物起源の油、または、合成油などの液体担体を添加することができる。液体形態の医薬組成物は、生理的食塩水、ブドウ糖もしくは他の糖溶液、または、エチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなどのグリコールをさらに含有することもある。液体形態で投与する場合、この医薬組成物は、約0.5から90重量%までの本発明のタンパク質、好ましくは、約1から50%の本発明の方法のタンパク質を含有する。
【0063】
本発明の医薬組成物は、安定化剤、保存剤、緩衝剤、酸化防止剤、または、当業者に公知の他の添加物を含有しうる。注射用には、本発明の薬剤を、水溶液中に、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理的に適合した緩衝液中に処方することができる。経粘膜投与用には、透過するべき障壁に適した浸透剤を製剤中に用いる。そのような浸透剤は、当技術分野で公知である。
【0064】
TEM DNA配列のウイルスベクターを含む医薬組成物は、薬理学的に許容される溶液中、または緩衝液中に分散させる。好ましい溶液には、ホスフェート、ラクテート、トリス、および同様のもので緩衝化された中性生理食塩水溶液が含まれる。ベクターは、ベクター構築物を受容する個体にいかなる不都合な反応も引き起こさないように、欠陥干渉ウイルス粒子、エンドトキシン、または他の発熱因子などの望ましくない夾雑物を本質的に含まない状態になるまで十分に精製する。一実施形態では、塩化セシウム勾配遠心分離などの浮遊密度勾配を用いてアデノウイルスを精製することが含まれる。補足的な活性成分を組成物に組み入れることもできる。
【0065】
TEMを発現するDNA配列を含有するベクターは、感染した細胞で、TEMタンパク質またはその生物学的に活性な断片の発現を可能にするいかなる構築物でもよい。本発明の方法で有用な構築物を設計する方法は、従来のものであり、「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 」(Ausubel, F.M.ら編集、2000年)に例示されている。通常、発現ベクターは、TEM DNA配列に作用可能に連結したプロモーターを含み、さらに、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列のうち必要ならばいずれのものも含む。外因性の発現は、構成的プロモーター、例えば、SV40、CMV、ポリオーマ、アデノウイルス2のプロモーターを用いて、伸長因子-1またはアクチンプロモーター、および同様のものなど、哺乳類細胞中で高レベルに発現される遺伝子に付随したプロモーターを用いて、そして、当技術分野で公知の誘導性プロモーターを用いて実現できる。さらに、内在性プロモーターまたは対照配列を用いることも、そのような対照配列が宿主細胞システムに適合する場合には可能であり、かつ、望ましいことが多い。対象とする細胞、すなわち、内皮細胞でTEM発現を可能にするものなら、いかなるものでも適当なプロモーターである。適当なプロモーターの選択は、従来の方法を用いて容易に実現することができる。
【0066】
本発明の方法および組成物に有用なベクターであると企図するウイルスには、レンチウイルス、レトロウイルス、コクサッキーウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、Geller, A.I.ら、Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第90巻、7603頁(1993年);Geller、A.I.ら、Proc Nat. Acad. Sci USA、第87巻、1149頁(1990年)参照)、アデノウイルス(例えば、LaSalleら、Science、第259巻、988頁(1993年);Davidsonら、Nat. Genet、第3巻、219頁(1993年);Yangら、J. Virol.、第69巻、2004頁(1995年)参照)、アデノ随伴ウイルス(例えば、Kaplitt,M.G.ら、Nat Genet.、第8巻、148頁(1994年)参照)、および同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
一実施形態では、上記ベクターが複製欠損アデノウイルスである。複製欠損アデノウイルスを調製する技法は、Quantinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、2581〜2584頁(1992年);Stratford-Perricadetら、J. Clin. Invest.、第90巻、626〜630頁(1992年);および、Rosenfeldら、Cell、第68巻、143〜155頁(1992年)に例示されるように、当技術分野で周知である。そのようなアデノウイルスでは、複製および/またはパッケージングに必須のウイルス遺伝子がアデノウイルスベクター構築物から欠失されており、TEM発現領域をその場に導入することが可能となっている。複製に必須である遺伝子(例えば、E1A、E1B、E2、およびE4)も、必須でない遺伝子(例えば、3E)も、いかなる遺伝子も欠失して、TEM DNA配列で置換することができる。アデノウイルスベクターのE1AおよびE1B領域が欠失されており、その場所にTEM DNA配列が導入されているベクターおよびビリオンが特に好ましい。
【0068】
存在しうるいかなる複製欠損も補完する限り、様々な細胞系が、組換えアデノウイルスの増殖に使用できることも周知である。例示的な細胞系の1つは、ヒト293細胞系であるが、複製を許容する他のいかなる細胞系も、例えば、E1AおよびE1Bを発現して、好ましい場合での複製を許容する細胞系も使用できる。さらに、細胞は、そのウイルスストックを得るために、プラスチック培養皿上でも、浮遊培養中でも増殖させることができる。このアデノウイルスベクターが複製欠損であるという要件を除けば、アデノウイルスベクターの性質が、本発明を成功裏に実施するのに重要であるとは考えられていない。このアデノウイルスは、知られている42の異なったセロタイプまたはサブグループA〜Fのいずれのものであってもよい。本発明の一実施形態では、ヒトサイトメガロウイルスプロモータの制御下でTEMタンパク質を発現する、ヘルパー非依存性複製欠損アデノウイルスを生成する。
【0069】
in vivoでのDNA送達には、例えば、ウイルス媒介性およびリポソーム媒介性の感染を含めた、いかなる適当な遺伝子送達システムを用いてもよい。本明細書で使用する「感染」または「感染細胞」という用語は、アデノウイルス性、AAV、レトロウイルス性、またはプラスミド送達遺伝子移入法などの送達システムを用いた、真核細胞を標的とする指向性のDNA送達を記述するのに用いる。いかなる適当な方法も、その方法によって結果として細胞内での機能的なTEMタンパク質のレベルが増大される限り、TEMをコードするDNA配列に細胞を接触させる方法として使用することができる。ウイルス遺伝子送達では、特定の細胞型を感染させることのできるウイルスを用いることなどによって、特定の標的細胞に向けて選択的に遺伝子を送達するような特異性を有するものを選択することができる。導入は、標準的な技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入、または形質転換によって行うことができる。遺伝子導入方法の例には、例えば、裸のDNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合法、プロテオリポソーム、リポソーム、細胞マイクロインジェクション法、ウイルスベクター、および、例えば、Fynanら、Proc. Natl. Acad Sci. U.S.A.、第90巻、11478〜82頁(1993年)に記載の「遺伝子銃」の使用が含まれる。
【0070】
本発明の方法および組成物での使用に供するTEM DNA配列組成物は、多くの場合、非経口投与用、特に、創傷または虚血疾患部位への直接の点滴を含めた、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または他の同様の経路での注入用に処方されるであろう。この開示に照らして、TEM DNA配列を活性成分として含有する水性組成物の調製は、当業者に公知であろう。通常、そのような組成物は、注射剤として、液体溶液または懸濁液として調製することができ;注射の前に液体を添加することによって、溶液または懸濁液を調製するための使用に適した固体形態で調製することもでき;さらに、この調製物は乳化することもできる。
【0071】
注射可能な用途に適した製剤形態には、無菌水溶液または分散剤;胡麻油、落花生油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および、無菌注射可能溶液または分散剤を即席に調製するための無菌粉末薬が含まれる。すべての場合で、製剤形態は、無菌でなければならず、注射器注入(syringability)が容易となる程度に液性でなければならない。それは、製造条件および貯蔵条件下で安定でなければならず、また、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対抗して保存されなければならない。
【0072】
組換えアデノウイルスは、多くの場合、約5×109から5×1012ウイルス粒子の量で投与する。これは、1回のボーラス注入として投与することも、数時間の静脈注入として投与することも、または虚血または創傷部位に注入することもできる。使用するアデノウイルスベクターは、複製欠陥であるため、最終的に感染する細胞では、複製できないであろうということも指摘しておくべきである。さらに、アデノウイルスのゲノム挿入頻度は、通常、かなり低く、典型的には、約1%程度であることが判明している。したがって、特定の個体で継続的な治療が必要な場合には、6カ月ごとから1年ごとにウイルスに再導入する必要があろう。
【0073】
TEMタンパク質をコードする核酸は、虚血組織の潅流を行っている血管に投与することも、または、カテーテル、例えば、米国特許第5,652,225号に記載のヒドロゲルカテーテルを通して血管損傷部位に投与することもできる。核酸は、米国特許第6,121,246に記載の方法を用いて虚血組織の中に直接注入送達することもできる。
【0074】
静脈内または筋肉内注射などの非経口投与用に処方された化合物に加えて、薬学的に許容される他の形態、例えば、経口適用のための錠剤または他の固形剤、時間放出カプセル剤、リポソーム形態、および同様のものも企図する。生物学的製剤のリポソーム送達は、米国特許第4,485,054号;第4,089,801号;第4,234,871号;および第4,016,100号に例示されている。
【0075】
上述の医薬組成物には、任意選択で、本発明の方法のTEM組成物以外の、治療に有用な薬剤を含めることができ、代わりにまたは追加にすることも、本発明の方法で、上記組成物と同時にまたは逐次的に投与することもできる。TEM組成物は、単独で投与することも、タンパク質または核酸の形態にある他のプロ血管形成薬と併用投与することもできる。そのようなタンパク質には、例えば、酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子(aFGFおよびbFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子-αおよびβ(TGF-αとTGF-β)、血小板由来内皮成長因子(PD-ECGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、エリスロポイエチン、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージCSF(M-CSF)、顆粒球/マクロファージCSF(GM-CSF)、一酸化窒素シンターゼ(NOS)、L-アルギニン、フィブロネクチン、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、およびヘパリンが含まれる。例えば、Klagsbrunら、Annu Rev. Physiol.、第53巻、217〜239頁(1991年);Folkmanら、J. Biol. Chem.、第267巻、10931〜10934頁(1992年);および、Symesら、Curr. Opin. Lipidology、第5巻、305〜312頁(1994年)を参照のこと。
【0076】
そのようなプロ血管形成薬のヌクレオチド配列は、多くのコンピュータのデータベース、例えば、GenBank、EMBL、およびSwiss-Protを介して容易に使用できる。この情報を用いて、所望のものをコードするDNAセグメントを化学的に合成して、あるいは、別法として、そのようなDNAセグメントを、当技術分野で通常の操作法、例えば、PCR増幅を用いて取得して、TEM組成物と同時投与することができる。
【0077】
以下の実施例は、本発明の限定ではなく、例示を意図するものである。
【実施例】
【0078】
実施例1
TEM1
アデノ-TEM1ウイルス: TEM発現細胞は、完全長のTEM1をコードする遺伝子を含有するアデノウイルスベクター(AD2CMV-TEM1)を用いて生成した。このベクターは、Souzaら、Biotechniques、第26巻、502〜08頁(1999年)に記載のpAD(Vantage社)システムを用いて構築した。TEM1のDNA配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)の配列番号196として開示されている。AD2CMV-TEM1は、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を感染させるのに用いた。HMVECにおけるアデノ-TEM1ウイルスの最適感染多重度は、300:1(300MOI)であり、タンパク質発現のための最適時間は、67〜72時間であった。感染の72時間後に、HMVECの増殖アッセイを行った。空のベクター(EV)に感染したHMVECまたは非感染の(NON)HMVECを、アッセイの陰性対照として用いた。
【0079】
増殖アッセイ: 増殖は、Crouchら、J. Immunol. Meth.、第160巻、81頁(1993年)、および、Kangasら、Med. Biol.、第62巻、338頁(1984年)に記載の方法でアッセイした。簡潔には、増殖は、96ウェルプレートシステムにおいて、補足された培地中、1ウェルあたり2×103の細胞を用いて評価した。その後、ATPルミネセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)発光細胞生存率キット、Promega社)を用いて、指示された様々な培地中における、48時間後の、トランスフェクト細胞および非トランスフェクト細胞の増殖を測定した。
【0080】
基本培地で増殖させた細胞では、空のベクター(EV)に感染したHMVECおよび非感染(NON)の細胞における48時間後の発光が25,000ルミネッセンス単位未満であった。他方、アデノ-TEMに感染したHMVECの発光は、190,000ルミネッセンス単位であった。同様に、5%ウシ胎仔血清(FBS)の存在下でも、アデノ-TEMに感染したHMVECは、EVに感染したHMVECまたはNON HMVECを上回る程度で増殖した。アデノ-TEM感染細胞の発光は350,000ルミネッセンス単位であり、それと比較して、EV感染HMVECおよびNON-HMVECの発光は、それぞれ225,000単位および230,000ルミネッセンス単位であった。成長因子で補足された培地の存在下では、アデノ-TEMに感染したHMVECの発光が490,000ルミネッセンス単位であり、一方、EV感染HMVECおよびNON-HMVECの発光が、それぞれ350,000ルミネッセンス単位および450,000ルミネッセンス単位であった。したがって、すべての培地で、TEM1の発現がHMVECの増殖を刺激した。
【0081】
遊走アッセイ: 遊走アッセイは、感染72時間後のHMVECを用いて、Glaserら、Nature、第288巻、483〜84頁(1983年)、および、Alessandriaら、Cancer Res.、第43巻、1790〜97頁(1983年)の記載の通りに行った。簡潔には、HMVECを、8ミクロン細孔膜の上側チャンバーに入った無血清培地中に4×104細胞/チャンバーとなるように蒔いた。走化性物質である0.5%ウシ胎仔血清で補足された培地を、下側チャンバーに入れた。48時間を超える時間の間、HMVECが膜を通って、その下側に遊走できるようにしておいた。膜を通って遊走した細胞は、その後、カルセインAM(Molecular Probes社)で染色し、蛍光強度によって定量した。
【0082】
アデノ-TEM1による感染は、HMVECの遊走に影響を与えなかった。
【0083】
内皮管形成アッセイ: ウイルス感染の72時間後に、HMVECをトリプシン処理し、管形成アッセイのためにマトリゲル(商標)上に蒔いた。このアッセイでは、1ウェルあたり250μlのマトリゲル(商標)を含む48ウェルプレートに、3x104細胞/ウェルの密度でHMVECを蒔いた。24時間後に、HMVECを、37℃で30〜60分間、カルセインAM(Molecular Probes社)で染色し、蛍光顕微鏡を用いて、管の蛍光画像を補足した。管が占める面積領域を、MetaMorph画像解析を用いて定量した。
【0084】
これらの実験において、TEM1ウイルスに感染したHMVECは、管形成を促進および/または安定化したが、対照ウイルスはそのように作用しなかった。アデノ-TEM1感染細胞における明らかな形態変化は、感染したHMVECをマトリゲル(商標)上に蒔いた2時間後には検出可能であった。TEM1ウイルスに感染した後では、空ウイルスに感染したHMVECまたは非感染のHMVECと比較して、管形成の増大および複雑性が観測された。
【0085】
実施例2
TEM9
アデノ-TEM9ウイルス: TEM9発現細胞は、完全長のTEM9をコードする遺伝子を含有するアデノウイルスベクター(AD2CMV-TEM1)を用いて生成した。このベクターは、Souzaら、Biotechniques、第26巻、502〜08頁(1999年)に記載のpAD(Vantage社)システムを用いて構築した。TEM9のDNA配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)の配列番号212として開示されている。AD2CMV-TEM9は、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を感染させるのに用いた。HMVECにおけるアデノ-TEM9ウイルスの最適感染多重度は、300:1(300MOI)であり、タンパク質発現のための最適時間は、67〜72時間であった。感染の72時間後に、HMVECの増殖アッセイを行った。空のベクター(EV)に感染したHMVECまたは非感染の(NON)HMVECを、アッセイの陰性対照として用いた。
【0086】
増殖アッセイ: 増殖は、Crouchら、J. Immunol. Meth、第160巻、81頁(1993年)、および、Kangasら、Med. Biol.、第62巻、338頁(1984年)に記載の方法でアッセイした。簡潔には、増殖は、96ウェルプレートシステムにおいて、補足された培地中、1ウェルあたり2×103の細胞を用いて評価した。その後、ATPルミネセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)発光細胞生存率キット、Promega社)を用いて、指示された様々な培地中における、48時間後の、トランスフェクト細胞および非トランスフェクト細胞の増殖を測定した。
【0087】
TEM9の外因性の発現はHMVECの増殖を刺激した。基本培地でインキュベートした場合、アデノ-TEM9に感染したHMVECの発光は、175,000ルミネッセンス単位であり、それと比較して、EV感染HMVECおよびNON-HMVECの発光は、それぞれ50,000および60,000ルミネッセンス単位であった。5% FBSで補足した培地中では、アデノ-TEMに感染したHMVECの発光が325,000ルミネッセンス単位であった。EV-HMVECおよびNON-HMVECの発光は、FBS補足培地中でそれぞれ150,000および170,000ルミネッセンス単位であった。成長因子で補足した培地(GM培地)中でも、アデノ-TEM9に感染したHMVECの増殖は、再度、外因性のTEM9発現のないHMVECの増殖を上回るものであった。GM培地中では、アデノ-TEM9に感染したHMVECの発光が365,000ルミネッセンス単位であり、それと比較して、EV感染HMVECおよびNON-HMVECの発光は、それぞれ275,000単位および280,000ルミネッセンス単位であった。
【0088】
遊走アッセイ: 遊走アッセイは、Glaserら、Nature、第288巻、483〜84頁(1983年)、および、Alessandriaら、Cancer Res.、第43巻、1790〜97頁(1983年)の記載の通りに行った。簡潔には、HMVECを、8ミクロン細孔膜の上側チャンバーに入った無血清培地中に4×104細胞/チャンバーとなるように蒔いた。走化性物質である0.5%ウシ胎仔血清で補足された培地を、下側チャンバーに入れた。48時間を超える時間の間、HMVECが膜を通って、その下側に遊走できるようにしておいた。膜を通って遊走した細胞は、その後、カルセインAM(Molecular Probes社)で染色し、蛍光強度によって定量した。
【0089】
外因性のTEM9発現は、内皮細胞の遊走を増大させた。すなわち、外因性のTEM9を発現しているときに、ウシ胎仔血清に向かったHMVECの遊走が増大していた。詳細には、アデノ-TEMに感染したHMVECの蛍光は、2,393蛍光単位であり、これと比較して、EV感染HMVECまたはNON-HMVECの蛍光は、1,105および1,239蛍光単位であった。走化性物質の非存在下では、遊走したNON-HMVEC細胞の蛍光が135蛍光単位でしかなかった。
【0090】
内皮管形成アッセイ: ウイルス感染の72時間後に、HMVECをトリプシン処理し、管形成アッセイのためにマトリゲル(商標)上に蒔いた。このアッセイでは、1ウェルあたり250μlのマトリゲル(商標)を含む48ウェルプレートに、3x104細胞/ウェルの密度でHMVECを蒔いた。24時間後に、HMVECを、37℃で30〜60分間、カルセインAM(Molecular Probes社)で染色し、蛍光顕微鏡を用いて、管の蛍光画像を補足した。管が占める面積領域を、MetaMorph画像解析を用いて定量した。
【0091】
外因性のTEM9は、実施した分析では、感染したHMVEC細胞の管形成に影響を与えなかった。
【0092】
実施例3
TEM17
アデノ-TEM17ウイルス: TEM17を発現するHMVECは、完全長のTEM17をコードする遺伝子を含有するアデノウイルスベクター(AD2CMV-TEM1)を用いて生成した。このベクターは、Souzaら、Biotechniques、第26巻、502〜08頁(1999年)に記載のpAD(Vantage社)システムを用いて構築した。TEM17のDNA配列は、米国特許出願第09/918715号(公開第20030017157号)の配列番号230として開示されている。AD2CMV-TEM1は、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を感染させるのに用いた。HMVECにおけるアデノ-TEM9ウイルスの最適感染多重度は、300:1(300MOI)であり、タンパク質発現のための最適時間は、67〜72時間であった。感染の72時間後に、HMVECの増殖アッセイを行った。空のベクター(EV)に感染したHMVECまたは非感染の(NON)HMVECを、アッセイの陰性対照として用いた。
【0093】
増殖アッセイ: 増殖は、Crouchら、J. Immunol. Meth.、第160巻、81頁(1993年)、および、Kangasら、Med. Biol.、第62巻、338頁(1984年)に記載の方法でアッセイした。簡潔には、増殖は、96ウェルプレートシステムにおいて、補足された培地中、1ウェルあたり2×103の細胞を用いて評価した。その後、ATPルミネセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)発光細胞生存率キット、Promega社)を用いて、指示された様々な培地中における、48時間後の、トランスフェクト細胞および非トランスフェクト細胞の増殖を測定した。
【0094】
外因性のTEM17発現は、このアッセイにおいてHMVECの増殖を刺激しなかった。
【0095】
遊走アッセイ: 遊走アッセイは、Glaserら、Nature、第288巻、483〜84頁(1983年)、および、Alessandriaら、Cancer Res.、第43巻、1790〜97頁(1983年)の記載の通りに行った。簡潔には、HMVECを、8ミクロン細孔膜の上側チャンバーに入った無血清培地中に4×104細胞/チャンバーとなるように蒔いた。走化性物質である0.5%ウシ胎仔血清で補足された培地を、下側チャンバーに入れた。48時間を超える時間の間、HMVECが膜を通って、その下側に遊走できるようにしておいた。膜を通って遊走した細胞は、その後、カルセインAM(Molecular Probes社)で染色し、蛍光強度によって定量した。
【0096】
アデノ-TEM17によるHMVECの感染は、HMVECの増殖の遊走を増大させなかった。
【0097】
内皮管形成アッセイ: ウイルス感染の72時間後に、HMVECをトリプシン処理し、管形成アッセイのためにマトリゲル(商標)上に蒔いた。このアッセイでは、1ウェルあたり250μlのマトリゲル(商標)を含む48ウェルプレートに、3x104細胞/ウェルの密度でHMVECを蒔いた。24時間後に、HMVECを、37℃で30〜60分間、カルセインAM(Molecular Probes社)で染色し、蛍光顕微鏡を用いて、管の蛍光画像を補足した。管が占める面積領域を、MetaMorph画像解析を用いて定量した。
【0098】
HMVECをHCT116馴らし培地中で増殖させた場合、外因性のTEM17発現は、HMVECの管形成を促進および/または安定化する。細管形成の複雑性がより大きいことは、目視検査に基づいて明らかであった。細管形成の複雑性の増大を、MetaMorph画像解析を用いて確認した。基本培地では、アデノ-TEM17に感染したHMVECの管面積が18,000であり、一方、EV感染HMVECの管面積は、11,000でしかなかった。NON-HMVECも、基本培地の存在下で、管面積が18,000であった。HCT116大腸癌馴らし培地の存在下では、アデノ-TEM17に感染したHMVECの管面積が27,500であり、一方、EV感染HMVECの管面積が、約11,000であった。NON-HMVECも、アデノ-TEM17に感染したHMVECと比較して管面積が小さく、24,000であった。アデノ-TEM17に感染したHMVECの管面積がより大きいことは、HT29大腸癌馴らし培地でも観測された。この培地の存在下では、アデノ-TEM17に感染したHMVECの管面積は25,000であった。EV感染HMVECの管面積は10,000であり、NON-HMVECの管面積は21,000であった。GM培地では、アデノ-TEM17に感染したHMVECの管面積が27,500であり、一方、EV感染HMVECの管面積は20,000、また、NON-HMVECの管面積は28,500であった。これらの実験は、馴らし培地の存在下で、外因性のTEM17発現がHMVECの内皮管形成を刺激できることを実証する。
【0099】
上記のものには、本発明の基本的態様から逸脱することなく、改変を加えることができる。本発明を1つまたは複数の特定の実施形態に関してかなり詳細に記述したが、この出願で明確に開示した実施形態を改変できることは、当業者ならば認めることであろう。それでもなお、これらの改変および改良は、添付した特許請求の範囲に記載した、本発明の範囲および趣旨に包含される。
【0100】
上記の刊行物または文書の引用は、上記のいずれかが関連の先行技術であることを容認するものでもなく、また、これらの刊行物または文書の内容または日付に関するいかなる容認も構成しない。本明細書で参照した米国特許および他の刊行物は、これによって参照により本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内皮細胞増殖を刺激する方法であって、有効量の(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、増殖する方法。
【請求項2】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
内皮細胞増殖を刺激する方法であって、有効量の(腫瘍内皮マーカー)TEM9タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、増殖する方法。
【請求項6】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
内皮細胞の遊走を刺激する方法であって、有効量の(腫瘍内皮マーカー)TEM9タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、遊走する方法。
【請求項10】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
内皮細胞の細管形成を刺激する方法であって、有効量の(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、細管が形成される方法。
【請求項14】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
内皮細胞の細管形成を刺激する方法であって、有効量の(腫瘍内皮マーカー)TEM17タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を内皮細胞に投与することを含み、その投与によって内皮細胞が刺激され、細管が形成される方法。
【請求項18】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
大腸癌馴らし培地を投与することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍内皮マーカー(TEM)1、またはその生物学的に活性な断片をコードするDNA配列を含む組換えウイルス構築物。
【請求項23】
前記ウイルスが複製欠損アデノウイルスである、請求項22に記載のウイルス。
【請求項24】
腫瘍内皮マーカー(TEM)9、またはその生物学的に活性な断片をコードするDNA配列を含む組換えウイルス構築物。
【請求項25】
前記ウイルスが複製欠損アデノウイルスである、請求項24に記載のウイルス。
【請求項26】
腫瘍内皮マーカー(TEM)17、またはその生物学的に活性な断片をコードするDNA配列を含む組換えウイルス構築物。
【請求項27】
前記ウイルスが複製欠損アデノウイルスである、請求項26に記載のウイルス。
【請求項28】
血管形成を刺激する方法であって、有効量の(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片を、それを必要とする被験者に投与することを含み、かつ血管形成が刺激される方法。
【請求項29】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記被験者が、無酸素性組織損傷を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記被験者が、慢性創傷治癒不全を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記ベクターによる内皮細胞の感染が、増殖の増大と、管形成の増大とをもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
血管形成を刺激する方法であって、有効量のTEM9タンパク質または生物学的に活性なタンパク質断片を、それを必要とする被験者に投与することを含み、かつ血管形成が刺激される方法。
【請求項36】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記被験者が、無酸素性組織損傷を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記被験者が、慢性創傷治癒不全を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記ベクターによる内皮細胞の感染が、増殖および遊走の増大をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
血管形成を刺激する方法であって、有効量のTEM17タンパク質または生物学的に活性なタンパク質断片を、それを必要とする被験者に投与することを含み、かつ血管形成が刺激される方法。
【請求項43】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質またはその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記被験者が、無酸素性組織損傷を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記被験者が、慢性創傷治癒不全を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記ベクターによる内皮細胞の感染が、管形成の増大をもたらす、請求項42に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内皮細胞増殖を刺激するための医薬の製造における、(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質、(腫瘍内皮マーカー)TEM9タンパク質又はそれらの生物学的に活性なタンパク質断片の使用。
【請求項2】
内皮細胞の遊走を刺激するための医薬の製造における、(腫瘍内皮マーカー)TEM9タンパク質又はその生物学的に活性なタンパク質断片の使用。
【請求項3】
内皮細胞の細管形成を刺激するための医薬の製造における、(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質、(腫瘍内皮マーカー)TEM17タンパク質又はそれらの生物学的に活性なタンパク質断片の使用。
【請求項4】
被験者において血管形成を刺激するための医薬の製造における、(腫瘍内皮マーカー)TEM1タンパク質、TEM9タンパク質、TEM17タンパク質又はそれらの生物学的に活性なタンパク質断片の使用。
【請求項5】
前記TEMタンパク質を、TEMタンパク質又はその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を含むベクターとして投与する、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記ベクターが複製欠損アデノウイルスである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記被験者が、無酸素性組織損傷を有する、請求項4に記載の使用。
【請求項9】
前記被験者が、慢性創傷治癒不全を有する、請求項4に記載の使用。
【請求項10】
前記ベクターによる内皮細胞の感染が、増殖の増大と、管形成の増大とをもたらす、請求項5に記載の使用。

【公表番号】特表2006−519873(P2006−519873A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509160(P2006−509160)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006731
【国際公開番号】WO2004/078192
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505087621)ゲンザイム コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】