説明

血管新生を調整するための組成物及び方法

【課題】新たな血管の形成を調整する方法を提供する。
【解決手段】一つの態様において、新たな血管を形成するのに十分な、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の有効量を哺乳動物に投与することを含む。さらに、好ましくはGM-CSFの有効量を哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物において重度の血管損傷を予防または軽減する方法及び哺乳動物における新たな血管の形成を誘導するための薬学的製品及びキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は1998年3月9日に出願された米国特許仮出願第60/077,262号の継続出願であり、その開示は本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
政府の利権申告
本発明の資金は一部、米国国立衛生局(National Institutes of Health)による助成金HL40518、HL02824及びHL57516により米国政府により提供された。従って、米国政府は本明細書で請求される発明内において、または本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は血管新生を調整するための、特に哺乳動物における方法に関する。一つの局面において、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のような、血管新生調整剤の有効量を哺乳動物へ投与することを含む血管新生を調整する方法を提供する。さらに、哺乳類において損傷血管を治療または検出する方法を提供する。本発明は、哺乳動物において新たな血管の形成を誘導することを含む幅広い範囲の有用な適用性を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
血管は生組織への酸素及び栄養の供給に役立つ。血管はまた老廃物の除去を促進する。血管は「血管形成」と呼ばれる過程により新生される。一般的にはFolkman and Shing、J. Biol. Chem.、267 (16)、10931-10934 (1992): 非特許文献1を参照されたい。
【0005】
血管形成は多くの哺乳動物の安寧において重要であると考えられている。例として血管形成は生殖、発生及び創傷修復の必須な過程であるとして開示されている。
【0006】
不適切な血管形成は深刻な結果を招くことが報告されている。例えば、血管新生は固体腫瘍増殖を促進する。哺乳動物は広範囲に渡って血管形成を調整しなければならないとする概念は広く支持されている。
【0007】
血管新生の調整方法の理解について、多くの興味が寄せられている。特に血管形成は、例えば血管内皮増殖因子(すなわちVEGF-1)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)及び/または、他の分裂誘発物質に活性化される内皮細胞(EC)から分泌されるプロテアーゼによる基底膜の分解と共に始まると考えられている。該細胞が移動、増殖し、基質空間における固体内皮細胞芽の形成へと至り、その後、血管ループが形成され、きっちりした接合の形成及び新たな基底膜の沈着により毛細管が発達する。
【0008】
成体では、体内の他の細胞のタイプと比べ、内皮細胞の増殖率は典型的には低いことが開示されている。これらの細胞のターンオーバーの期間は千日を超えることがある。血管形成が厳密な調節下で生じる迅速な増殖につながる生理学的な例外は、雌性生殖システム内及び創傷治癒間で見られる。微小血管の正及び負の増殖調節の間の局所平衡における変化に血管形成率が関係していることが報告されている。
【0009】
異常血管形成は、身体が血管形成の制御を失った際に起こり、血管増殖の過剰または不足につながると考えられている。例えば、潰瘍、卒中、および心臓発作のような状態は、自然治癒に通常必要な血管形成が無いことによるものである可能性がある。これとは対照的に、過剰な血管増殖は腫瘍増殖、盲目、乾癬、リウマチ様関節炎、及び別の医学的状態を促進しうる。
【0010】
血管増殖因子の治療的影響を、20年以上前にFolkmanとその同僚が最初に記載した(Folkman、N. Engl. J. Med.、85: 1182-1186、1971: 非特許文献2)。近年の研究で、繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー(Yanagisawa-Miwaら、Science 257: 1401-1403、1992: 非特許文献3 及び、Baffourら、J Vasc Surg、16: 181-91、1992: 非特許文献4)、内皮細胞増殖因子(ECGF)(Puら、J Surg Res、 54: 575-83、1993: 非特許文献5)、及び血管内皮増殖因子(VEGF-1)のような組換え血管形成増殖因子を用い、心筋及び後肢虚血の動物モデルにおいて、冠状動脈発達を促進及び/または増大させられることが確立された(Takeshitaら、Circulation 90: 228-234、1994: 非特許文献6 及びTakeshitaら、J Clin Invest、93: 662-70、1994: 非特許文献7)。
【0011】
血管形成促進のための遺伝子治療の使用の可能性が認識されてきている。例えば、ウサギモデル、及びヒト臨床試験において、血管形成は虚血の治療を促進できることが報告されている。バルーン遺伝子運搬システムとして投与されたVEGF-1を使用して特に成功している。運搬の成功及び血管壁でのVEGF-1遺伝子の発現維持は、その後、虚血四肢における新生血管形成を増大させた(Takeshitaら、Laboratory Investigation、75: 487-502、1996: 非特許文献8; Isnerら、Lancet、348: 370、1996: 非特許文献9)。さらにVEGF-1をコードするDNAの虚血組織への筋肉内への直接注入は血管形成を誘導し、虚血組織へ増加した血管を提供することが報告されている(Tsurumiら、Circulation、94 12: 3281-3290、1996: 非特許文献10)。
【0012】
血管形成促進の別の方法は多くの理由により望ましい。例えば、元来の内皮前駆細胞(EPC)数及び/または生存率は経時的に減少するものと考えれている。従って、例えば高齢者のような特定の患者集団内では、脈管形成タンパク質に反応できるEPCは限定される可能性がある。また、このような患者は従来の治療方法に十分に反応しない可能性もある。
【0013】
患者、特に虚血性疾患の治療中の患者に単離したEPCを投与して、少なくとも幾つかのこうした問題を軽減できるとする報告がある。しかしながらこの提案は、患者の細胞を単離、維持しなければならないため、費用が高くつきすぎると考えられる。さらには、患者の細胞を扱うことは、患者及び介護者の両方に重大な健康の危険性を与えることになる場合もある。
【0014】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、顆粒球委任前駆細胞(granulocyte-committed progenitor cells)に対して調節効果を及ぼし、循環血中の顆粒球のレベルを増加させることが示された(Gasson、J. C.、Blood 77: 1131、1991: 非特許文献11)。特にGM-CSFは、顆粒球、単球、及び好酸性前駆体の増殖因子として作用する。
【0015】
GM-CSFをヒト及び非ヒト霊長類に投与すると、循環血中の好中球、ならびに好酸球、単球、及びリンパ球の数が増加する。従って、GM-CSFは放射線もしくは化学治療を受けた患者、または骨髄移植後の患者の好中球減少からの回復の促進に特に有効であると考えられる。さらに、GM-CSFは、例えばFGFのような他のサイトカインに比べ、EC増殖促進の可能性は低いが、GM-CSFは十分に移動する表現型を活性化する(Bussolinoら、J. Clin. Invest.、87: 986、1991: 非特許文献12)。
【0016】
従って、哺乳動物、特にヒト患者での血管新生を調整する方法を有することが望ましい。EPC細胞の単離を必要としない、患者におけるEPCの可動化と新生血管形成(新たな血管の形成)を増進する方法を有することは特に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Folkman and Shing、J. Biol. Chem.、267 (16)、10931-10934 (1992)
【非特許文献2】Folkman、N. Engl. J. Med.、85: 1182-1186、1971
【非特許文献3】Yanagisawa-Miwaら、Science 257: 1401-1403、1992
【非特許文献4】Baffourら、J Vasc Surg、16: 181-91、1992
【非特許文献5】Puら、J Surg Res、 54: 575-83、1993
【非特許文献6】Takeshitaら、Circulation 90: 228-234、1994
【非特許文献7】Takeshitaら、J Clin Invest、93: 662-70、1994
【非特許文献8】Takeshitaら、Laboratory Investigation、75: 487-502、1996
【非特許文献9】Isnerら、Lancet、348: 370、1996
【非特許文献10】Tsurumiら、Circulation、94 12: 3281-3290、1996
【非特許文献11】Gasson、J. C.、Blood 77: 1131、1991
【非特許文献12】Bussolinoら、J. Clin. Invest.、87: 986、1991
【発明の概要】
【0018】
本発明は一般的に哺乳動物における血管新生を調整する方法に関する。一つの局面においては、本発明は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、VEGF、幹細胞因子(SCF)としても知られるSl因子(SLF)、基質細胞由来因子(SDF-1)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、HGF、アンジオポエチン-1(Angiopoietin-1)、アンジオポエチン-2(Angiopoietin-2)、M-CSF、b-FGF、及び FLT-3リガンドのような血管新生調整剤の有効量、及びそれらの有効な断片、または該血管新生調整剤をコードするDNAを哺乳動物に投与することを含む、血管新生を増加させる方法を提供する。このような材料はかつては、「造血因子」及び/または「造血タンパク質」と表現されることもあった。これら及び他の造血因子に関連する開示はKim、C. H.およびBroxmeyer,H. E.(1998)Blood、91: 1000; Turner,M. L.およびSweetenham,J. W.、Br. L. Haematol.(1996)94: 592; Aiuuti,A.ら(1997)J. Exp. Med. 185: 111; Bleul,C.ら(1996)J. Exp. Med. 184: 1101; Sudo,Y.ら(1997)Blood, 89: 3166、ならびに本明細書に記載される参考文献において見出すことができる。本発明以前には、本明細書に記載のようにGM-CSFまたは他の造血因子が内皮前駆細胞を強化、または新生血管形成を調整することは知られていなかった。
【0019】
あるいは、該タンパク質またはこれらの有効な断片の代わりに、血管新生調整剤をコードするDNAを、下記にさらに記載されるように、新生血管形成が望まれる部位に投与できる。本発明はまた哺乳動物内の損傷血管を治療または検出する方法に関する。本発明は虚血または関連する状態を伴った重度の血管損傷を予防または軽減することを含む多くの用途を有する。
【0020】
本発明者らは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のような造血因子が内皮前駆細胞(EPC)の可動化及び新生血管形成(血管の形成)を調整することを見出した。特に、GM-CSF及び他の造血因子がEPC可動化を増進し、新生血管形成を促進することを本発明者らは見出した。インビトロ及びインビボでのGM-CSFの活性を示す先行の報告に照らし合わせると、この観察は驚きであり予期しないものであった。従って、本発明は、特にEPCの可動化および/または新生血管形成の必要な組織で、EPCの可動化を促進し新生血管形成を促進するための、GM-CSFの使用方法を提供する。
【0021】
一つの局面において、本発明は哺乳動物において新生血管形成を誘導するための方法を提供する。「誘導」という用語は少なくともEPCの可動化を促進すること、好ましくは哺乳動物において新たな血管の形成を促進することをも意味する。EPCの可動化は本明細書に開示するアッセイ法により決定されるEPCの頻度及び分化の有意な増加を意味するものと理解される。一つの態様において、本方法は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のような血管新生調整因子の有効量、すなわち哺乳動物において新生血管形成を誘導するに十分な量を哺乳動物へ投与することを含む。好ましくは、該GM-CSF量は、哺乳動物でEPCの頻度を調整でき、特に増加させることもできる。新生血管形成、EPCの頻度、血管新生調整剤の有効性、及び他の血管増殖パラメーターを検出し定量化する様々な方法を下記及び実施例で論ずる。
【0022】
本方法の一つの特定の態様において、EPC可動化の促進、及び特にEPCの頻度の増加は、標準的EPC単離アッセイ法で測定し、少なくとも約20%、好ましくは50%から500%の間である。このアッセイ法は一般的にEPCの量を検出及び定量化するものであり、詳細を下記で論じる。
【0023】
本方法の別の特定の態様において、調整剤の投与量は哺乳動物内でEPC可動化を促進、及び特にEPCの分化を増加させるに十分である。EPC分化の検出及び定量方法は下記の特異的な方法を含む。好ましくは、EPC分化の増加は、下記の標準的EPC培養アッセイ法で測定される、少なくとも約20%、好ましくは約100%から1000%の間、より好ましくは約200%から800%の間である。より好ましくは、調整剤の投与量はさらに、組織虚血後、下記の標準的後肢虚血アッセイ法で測定し、ほぼ前記の百分率量でEPCの分化を増加させるに十分である。
【0024】
本方法の別の特定の態様においては、血管新生調整剤の哺乳動物への投与量は、哺乳動物内の血管の大きさを増大させるのに十分である。たとえば、長さや円周のような血管の大きさのパラメーターの測定方法は当技術分野では公知であり、後述する。好ましくは調整剤の投与量は、血管の長さを下記の標準的血管長アッセイ法で測定し、少なくとも約5%、好ましくは約10%から50%の間、より好ましくは約20%増加させるのに十分である。好ましくは調整剤の哺乳動物への投与量はまた、標準的血管直径アッセイ法で測定し、前記の百分率量で、血管の円周または直径を増加させるのに十分である。次に述べるように、必要があれば他の適切なアッセイ法を使用できるが、標準的角膜ミクロポケットアッセイ法を使用して血管の大きさの変化を検出及び定量することがしばしば好ましいと考えられる。
【0025】
本方法の別の特定の態様において、血管新生調整剤の投与量は、標準的角膜ミクロポケットアッセイ法で測定し、少なくとも約5%、好ましくは約50%から300%の間、より好ましくは約100%から200%の間で、新生血管形成を増加させるのに十分である。このアッセイ法を実施する方法は当技術分野では公知で、下記の特異的方法を含む。さらに、好ましいGM-CSF量は、所望の血管の血圧を測定するための標準的方法で測定し、少なくとも約5%、好ましくは約10%から50%の間で、虚血性後肢血圧を改善させるのに十分である。特に新たな血管または損傷血管の、血圧を測定するためのより具体的な方法は、下記のマウス後肢アッセイ法の血圧測定のために最適化した技術を含む。
【0026】
本方法の別の特定の態様においては、血管新生調整剤の投与量は、標準的ネズミBM移植モデルにより測定し、少なくとも約20%、病巣へのEPC骨髄(BM)由来EPCの取込みを増加させるのに十分である。該標準モデルで測定し、増加が好ましくは約50%から400%の間、より好ましくは約100%から300%の間である。病巣へのEPCの取込みの増加を測定するより具体的な方法は、下記の考察及び実施例で見つけることができる。
【0027】
本発明の方法は、哺乳動物を含む様々な動物において新生血管形成を調整する、特に誘導するのに適切である。「哺乳動物」という用語は本明細書では、齧歯類、ウサギ、または霊長類、特にヒトの患者のような温血動物を意味するために使用される。関心対象の特異的な齧歯類及び霊長類には、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを含むヒト疾患の適応モデルを代表する動物が含まれる。特に関心対象のヒト患者には虚血組織を有するか、有すると疑われるか、または有する可能性のある患者が含まれる。該虚血組織は、外科処置または医学的状態を含むほぼすべての方法により生じうる。虚血組織は、下記の特異的な状態及び疾患のような虚血性血管疾患をしばしば伴う。
【0028】
次の考察及び実施例でさらに明らかとなるように、本発明の方法は非常に適合しやすく、また新生血管形成を調整するための確立された方法または実験的方法と組み合わせて使用できる。一つの態様において、本発明は、血管新生調整剤の有効量を少なくとも一つの脈管由来タンパク質と共に投与する哺乳動物において新生血管形成を調整する、特に誘導する方法を含む。多くのセッティングにおいて、血管新生調整剤と脈管由来タンパク質の共投与は、例えば付加的効果または共役効果を与えることにより、哺乳動物の新生血管形成に正の影響を与えると考えられる。好ましい脈管由来タンパク質は、下記の特異的なタンパク質のような認識された内皮細胞分裂誘発物質である。血管新生調整剤と脈管由来タンパク質の共投与の方法は次に示され、一般的には目的とする用途に応じて様々である。
【0029】
本発明はまた、このような治療が必要なヒト患者のような哺乳動物における重度の血管損傷を予防または軽減する方法も提供する。一つの態様において、該方法はGS-CSFのような血管新生調整剤の有効量を哺乳動物に投与することを含む。該投与とほぼ同時に、または該投与に引き続き、血管損傷を促進する状態に哺乳動物を暴露する。または、血管への損傷を防ぐまたは軽減するための状態に暴露した後、血管新生調整剤の投与を行うこともできる。記載のように、例えば手術、移植、または血管形成術のような侵襲性操作、感染または虚血のような、血管への損傷につながりうる、哺乳動物において虚血組織を誘導する様々な状態が知られている。また別の血管新生調整剤を投与する状態及び方法を後述する。
【0030】
本方法で使用する血管新生調整剤の好ましい量は、哺乳動物での重度の血管損傷を予防または軽減するのに十分である。GM-CSFの特定の量はすでに上記にあり、また哺乳動物で新生血管形成を誘導するのに十分な、GM-CSFの有効量を投与することを含む。血管新生調整剤の有効量を定量化する例示的方法を、後述の考察及び実施例を含む本開示で論じる。
【0031】
本発明はまた虚血組織、特に該組織内の損傷血管の治療方法を提供する。好ましくは、本方法は哺乳動物、特にこのような治療を必要とするヒトの患者で実施される。一つの態様においては、該方法は次の段階の少なくとも一つ、好ましくは全てを含む:
a)哺乳動物から内皮前駆組織細胞(EPC)を単離する段階、
b)単離EPCを、EPCの増殖を誘導するに十分な少なくとも一つの因子の有効量と接触させる段階、
c)損傷血管を治療するのに十分な量の増殖EPCを哺乳動物へ投与する段階。
【0032】
本方法の一つの特定の態様においては、該因子は、特にインビトロでEPCの増殖を誘導することが知られているサイトカインを含む脈管由来タンパク質である。EPCの検出のための例示的因子及びマーカーを後述する。該方法の一つの態様において、血管(または複数の血管)に、外傷、またはバルーン血管形成の実施またはステントもしくはカテーテルの展開のような侵襲性操作を含むほぼすべての公知の方法で損傷を与えることができる。特定のステントは血管内ステントである。あるいは、血管損傷は器質性であり、かつて存在した、または現在生じている医学的状態に派生することもできる。
【0033】
本方法の別の特定の態様において、血管新生調整剤を、哺乳動物、特にヒトの患者に、単体でまたは下記のような少なくとも一つの脈管由来タンパク質(またはそれらの有効な断片)と組み合わせて(共投与)投与する。
【0034】
さらに、哺乳動物、特にヒトの患者における、組織損傷の存在を検出する方法も本発明により提供される。一つの態様において、該方法は、哺乳動物を検出可能な標識が施されたEPCの集団と接触させる段階、および該哺乳動物の損傷組織部位またはその近傍で検出可能標識細胞を検出する段階を含む。この例では、EPCを採集でき、選択的には、本明細書に記載の特異的な方法を含むほぼ全ての許容可能な経路によりインビトロで監視または拡張できる。大部分の施用に好ましい経路である静脈内注射により、一つの方法または異なる方法を組み合わせて、哺乳動物にEPCを投与できる。細胞に検出可能な標識を施す方法は当技術分野では公知であり、免疫学的または放射性標識、及び下記の特異的な組換え方法が含まれる。
【0035】
本方法の一つの特定の態様において、検出可能標識EPCは、血管損傷部位へ「誘導する(home-in)」ために使用でき、それにより、該部位が非常に小さい場合でも、該部位を視覚化するできる限り最小限の侵襲的な方法が提供される。検出可能標識EPCは断層撮影法や磁気共鳴画像または関連した手段を用いる方法を含む当技術分野でよく知られた様々な方法により視覚化できる。
【0036】
本方法の別の態様において、組織損傷は虚血、特に下記に具体的に示すような虚血性血管疾患により促進される。
【0037】
また、少なくとも一つの造血因子の有効量を哺乳動物へ投与することを含む、EPCの可動化を調整する方法も本発明により提供される。本明細書に開示される任意の適切なアッセイ法で測定される、EPC可動化を促進する方法が好ましい。例えば、該方法の一つの特定の態様において、EPC可動化の促進、特にEPC頻度の増加は、標準的EPC単離アッセイ法で測定して少なくとも約20%、好ましくは50%〜500%の間である。
【0038】
該方法の別の特定の態様において、造血因子の投与量は哺乳動物のEPC可動化を促進し、特にEPCの分化を増加させるに十分である。EPCの分化を検出し定量化する方法には下記の特異的方法が含まれる。好ましくは、EPC分化の増加は、下記の標準的EPC培養アッセイ法で測定して少なくとも約20%、好ましくは約100%〜1000%の間、より好ましくは約200%〜800%の間である。より好ましくは、造血因子の投与量はさらに、下記の標準的後肢虚血アッセイ法で測定して、組織虚血後にほぼ上記の百分率量でEPCの分化を増加させるのに十分である。
【0039】
記載したように、EPC可動化は哺乳動物で新生血管形成の有意な誘導を助長することが見出された。従って、EPC可動化を調整、特に促進する方法は、哺乳動物、特にこのような治療を必要とするヒトの患者において新生血管形成を誘導するために使用できる。単独でまたは他の方法と組み合わせて使用することのできる少なくとも一つの造血因子を使用することを含むEPC可動化を促進する本発明に係る方法が本明細書にて開示されるが、この方法には、有効量の管新生調整剤を単体または少なくとも一つの脈管由来蛋白質と組み合わせて(共投与)哺乳動物に投与することのできる方法が含まれる。
【0040】
特に本発明は、哺乳動物で、特に少なくとも一つの血管新生調整因子、その方法が一つの血管新生調整因子の有効量の哺乳動物への投与を含むこのような治療を必要とするヒトの患者で、新生血管形成を誘導する方法を提供し、その量は哺乳動物において新生血管形成を誘導するに十分である。この新生血管形成は、所望により、マウス角膜ミクロポケットアッセイ法及び血管サイズアッセイ法を含む本明細書に開示した標準的アッセイ法により検出及び定量化できる。好ましい方法は上記の百分率の範囲で哺乳動物での新生血管形成を促進する。
【0041】
該方法の一つの態様では、血管新生調整因子(因子ら)の有効量は、少なくとも一つの脈管由来タンパク質、好ましくは一つの脈管由来タンパク質との組み合わせて共投与できる。該血管新生調整剤は哺乳動物へ、特にこのような治療を必要とするヒトの患者へ、脈管由来または他のタンパク質の投与と共に、後に、またはその前に投与できる。
【0042】
本発明はまた、哺乳動物で新生血管形成を調整する、特に誘導するために好ましく調剤された薬学的製品を提供する。好ましい態様では、該製品は滅菌して提供され、任意にGM-CSFの有効量、及び任意に少なくとも一つの脈管由来タンパク質を含む。特殊な態様では、該製品は、哺乳動物、特に内皮前駆細胞(EPC)を必要とするヒトの患者に、生理学的に好ましく許容される製剤内に、単離されたEPCを含む。あるいは、該製品はGM-CSF及び/または脈管由来タンパク質をコードする核酸を含有できる。
【0043】
本発明はまた、インビボのために、及び特に単離されたEPCの全身導入のために好ましく調剤されたキットを提供する。一つの態様では、該キットは、単離されたEPC及び、任意に少なくとも一つの脈管由来タンパク質または脈管由来タンパク質をコードする核酸を含む。薬理学的に許容される担体溶液、核酸及び分裂誘発物質、EPCの運搬手段、及び該キットを用いる説明書を任意に含むキットが好ましい。EPCの運搬の許容できる手段は、当分野では周知で、ステント、カテーテル、注射器、または関連した手段による効果的な運搬を含む。
【0044】
本発明の他の局面を下記に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1A〜Dは、角膜ミクロポケットアッセイ法における対照(図1A、1C)及び処理マウス(図1B、1D)での、GM-CSF及びVEGF-1処理後の新生血管形成を示す顕微鏡写真を示す。
【図2】図2A〜Bは、角膜ミクロポケットアッセイ法で観察された血管長(2A)及び血管角(2B)の増加の定量化を示すグラフである。
【図3A】図3Aは、ウサギ後肢虚血アッセイ法におけるGM-CSF処理後の、EPCの頻度を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、ウサギ後肢虚血アッセイ法におけるGM-CSF処理後の、EPCの分化を示すグラフである。
【図3C】図3Cは、ウサギ後肢虚血アッセイ法におけるGM-CSF処理後の、血圧及び毛細管密度を示すグラフである。
【図4A−D】図4A〜4Jは、EPCが新生血管形成の病巣へ誘導され(戻され)、取り込まれることができることを示す顕微鏡写真を示す。(4A)培養ネズミ細胞、(4B〜D)該マウスに投与したSca-1細胞の誘導(homing)。
【図4E−J】図4A〜4Jは、EPCが新生血管形成の病巣へ誘導され(戻され)、取り込まれることができることを示す顕微鏡写真を示す。(4E〜G)EPCの集積及びコロニー化を示すウサギ後肢筋肉の免疫染色、(4H〜J)新血管を確立するコロニー化したTBM-細胞。
【図5A】図5Aは、後肢虚血の発達に関連したEPC動力学を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、後肢虚血の発達に関連したEPC動力学を示すグラフである。
【図5C−F】図5C〜Fは、後肢虚血を伴うマウス角膜ミクロポケットアッセイ法の結果を示す顕微鏡写真を示す。
【図5G】図5Gは、新生血管形成の血管長及び円周の分布の定量化を示すグラフである。
【図5H】図5Hは、新生血管形成の血管長及び円周の分布の定量化を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、ウサギ虚血後肢モデルでの新生血管形成へのGM-CSF誘発EPCの影響を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、ウサギ虚血後肢モデルでの新生血管形成へのGM-CSF誘発EPCの影響を示すグラフである。
【図6C】図6Cは、ウサギ虚血後肢モデルでの新生血管形成へのGM-CSF誘発EPCの影響を示すグラフである。
【図6D−G】図6D〜Gは、図6A〜Cに記載されたGM-CSF誘発効果を示す顕微鏡写真を示す。(6D、E)スリット-ランプ生体顕微鏡検査、(6F、G)蛍光顕微鏡写真。
【図6H】図6Hは、図6D〜Gに示された実験から取り出された血管長の測定を示すグラフである。
【図6I】図6Iは、図6D〜Gに示された実験から取り出された血管周の測定を示すグラフである。
【図7A】図7Aは、検出可能な標識骨髄由来EPCが角膜新生血管形成に貢献することを示すグラフである。後肢虚血を有するマウスでの角膜新生血管形成。
【図7B】図7Bは、検出可能な標識骨髄由来EPCが角膜新生血管形成に貢献することを示すグラフである。GM-CSFで前処理したウサギ。
【図7C】図7Cは、検出可能な標識骨髄由来EPCが角膜新生血管形成に貢献することを示すグラフである。GM-CSF対照郡でのベータガクトシダーゼ活性。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
上記のように、本発明は、一つの態様では、GM-CSFの有効量、またはその有効な断片の患者への投与を含む、ヒトの患者での新生血管形成を誘発する方法を提供する。また、上記のように、該GM-CSFは、単独で、または少なくとも一つの血管新生調整剤、好ましくはこのような因子の一つ、少なくとも一つの脈管由来タンパク質、好ましくは一つの脈管由来タンパク質のうちの、一つまたは複数と組み合わせて(共投与)、ヒトの患者に投与できる。少なくとも一つの血管新生調整剤、好ましくは一つのこのような因子の有効量の投与を含む、EPCの可動化を促進する方法をもまた提供される。さらに、ヒトの患者内の損傷血管を治療または検出する方法も提供される。本発明は患者内の重度の血管損傷の予防または軽減を含む広い範囲の使用を有する。
【0047】
本発明は特に、このような治療を必要とする患者の虚血組織内の血管形成を誘発する方法を提供する。この態様では、該方法は一般的に本明細書に開示するGM-CSFまたは、他の血管新生調整剤の有効量の患者への投与を含む。GM-CSFの投与(または他のタンパク質との共投与)は必要であればなされ、虚血組織の形成前、形成中、形成後に実行できる。さらに、GM-CSFは単独の活性物質として投与でき、または、少なくとも一つの、好ましくは一つの脈管由来タンパク質、または本明細書に提供する他の適切なタンパク質または断片と共投与できる。
【0048】
本明細書に開示する方法のいずれかに従い、本明細書に開示するGM-CSF、または血管新生調整剤の有効量の投与は、単独で、またはそれをコードするDNAの投与を含む異なった手段と組み合わせて実施できる。
【0049】
上記のように、本発明の方法は、例えば外傷、移植拒絶、脳血管虚血、腎臓虚血、糸球体虚血、感染に関連した虚血、四肢虚血、虚血性心筋症、脳血管虚血、及び心筋虚血の少なくとも一つの予防または治療における使用のような、ヒトの患者での幅広い範囲の使用を有する。影響を受ける組織は、例えば四肢、移植片(例えば筋肉または神経移植片)、器官(例えば心臓、脳、腎臓、及び肺)等の、循環系または中枢神経系を含む患者のほぼ全ての生理系に関連できる。虚血は、心血管疾患または卒中でしばしば起るために、虚血は特に心臓または脳組織にそれぞれ不利な影響を与える可能性がある。
【0050】
重度の血管状態、特に虚血を予防または軽減するために、哺乳動物及び特にヒトの患者に血管新生調整剤の有効量を投与する態様では、血管の損傷を促進する状態へ暴露する、少なくとも約12時間前、好ましくは、約24時間から1週間、最長約10日前に、血管新生調整剤が好ましいは投与される。所望により、さらに該方法は血管の損傷を促進する状態への暴露後の、哺乳動物への血管新生調整剤の投与を含むこともできる。先述のように、血管新生調整剤は単独で、または少なくとも一つの脈管由来タンパク質、好ましくはこのようなタンパク質の一つと組み合わせて投与できる。
【0051】
GM-CSF単体で、または少なくとも一つの造血因子、好ましくはこのような因子の一つ、または少なくとも一つの脈管由来タンパク質、好ましくはこのようなタンパク質の一つ、のうちの一つまたは複数と組み合わせての投与を含む、重度の血管状態の予防または軽減に関連する方法を実施できる。好ましい投与方法を本明細書に開示する。
【0052】
血管の損傷は異なった組織への損傷の一つまたはその組み合わせにより促進されることが知られている。例えば、血管損傷はしばしば、外傷、例えばバルーン血管形成、または関連装置(例えば方向性アテローマ切除、回転アテローマ切除、レーザー血管形成、経管的抽出、パルススプレイ血栓崩壊)の使用等の手術、及び血管内ステントまたは血管移植片の展開により起る。
【0053】
本発明に従う特異的EPCは好ましくは、従来の免疫学的または関連の方法で検出できる細胞マーカーに好ましくは関係している。次のCD34+、flk-1+またはtie-2+の内の少なくとも一つを有するEPCが好ましい。これらのマーカーでEPCを検出する方法を下記の実施例で述べる。
【0054】
上記及び実施例で述べられるように、哺乳動物内で血管形成を促進し、露出した血管を再内皮化するための方法を本発明者らは見出した。これらの方法は、内皮細胞(EC)前駆体の可動化のための血管新生調整剤の使用を含む。本発明に従えば、GM-CSF及び他の血管新生調整剤は、虚血組織、すなわち例えば脳血管虚血、腎臓虚血、糸球体虚血、四肢虚血、虚血性心筋症、及び心筋虚血のような虚血性疾患の結果として、血液の不足を有する組織を有する選択された患者で、血管形成を促進する方法において使用できる。
【0055】
また、別の態様では、血管新生調整剤は単独で、または本明細書に開示する他の因子の少なくとも一つと組み合わせて、損傷血管の再内皮化を誘発し、従って平滑筋細胞増殖の間接的な抑制により再発狭窄を軽減するために使用できる。
【0056】
好ましい一つの態様では、血管新生調整剤は単独で、または本明細書に開示する他の因子の少なくとも一つと組み合わせて、患者に血管形成を調整するために使用できる。幾つかの患者集団、特に高齢者の集団は、限定されたEC数、または限定された機能的EC数のいづれかを有する可能性がある。従って、例えば、VEGF-1のような可能性のある血管新生促進剤を使用して血管形成を刺激するような、血管形成の促進が望まれる場合、このような血管新生はEPCの不足でにより限定される。しかしながら、ECの可動化が可能となるに十分な血管形成促進剤の投与前に、例えばGM-CSFを投与して、これらに患者に血管形成を相乗作用できる。好ましくは、GM-CSFは血管形成促進剤処理の約1週間前に投与する。
【0057】
「GM-CSF」という用語は本明細書では、例えば発行された国際出願WO86/00639内の、本明細書に参考文献として組み込まれている、開示されたヒトGM-CSFのアミノ酸配列と実質的に同一な天然または組換えて調整されたタンパク質を意味すると理解される。
【0058】
ヒトGM-CSF(hGM-CSF)は単離、クローニングされており、1985年7月4日に出願の発行された国際出願第PCT/EP85/00326号(WO86/00639として発行)を参照されたい。
【0059】
大腸菌由来非グリコシル化rhGM-CSFは、国際出願第PCT/EP85/00326の出版物に記載の方法で得られ、そこには、単一のアミノ酸が異なる二つの天然GM-CSFが記載されている。
【0060】
本発明に使用される天然GM-CSFは、それらのアミノ酸配列を変化させて修飾することができる。例えば、それらの基本的な特徴を変化させずに、それらの配列内の1つから5つまでのアミノ酸を変化させることが可能で、またはこれらの配列を長くでき、元来のタンパク質に十分に機能的に同等な修飾タンパク質を供給できる。このような機能的同等物は本発明の実施の際に使用することもできる。元来の配列と一つのアミノ酸だけが異なる一般的なGM-CSFは、米国特許第5,229,496号に開示されており、酵母内でグリコシル化された形態で生産され、GM-CSFの生理的な同等物であることが臨床的に示され、このような修飾形態はGM-CSF (Leu-23)として知られている。
【0061】
GM-CSFはトレードマークLEUKINER(Immunex Corporation)の名で、アナログペプチドとして、商業的にまた臨床的に入手可能である。酵母内で発現する組換えヒトLeu23GM-CSFアナログペプチドの一般的名称はサルグラモスチンSargramostimである。天然配列ヒトGM-CSFのクローニング及び発現はCantrellら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 82: 6250(1985)に記載されている。
【0062】
本発明で使用される天然及び組換えて調整されるタンパク質、及び機能的な同等物は、好ましくは精製され、実質的に細胞を含まず、周知の方法で得ることが可能である。
【0063】
GM-CSFを含む本明細書に開示される因子に関連する別のタンパク質及び配列はNational Center for Biotechnology Information (NCBI)-Genetic Sequence Data Bank (Genbank)を通じて得ることができる。特に、配列表はthe National Library of Medicine、38A、8N05、Rockville Pike、Bethesda、MD20894のGenbankから得ることができる。Genbankはまた、インターネット上のhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov.でも入手できる。一般的に、Genbankの説明についてはBenson,D. A.ら (1997) Nucl. Acids. Res. 25: 1を参照されたい。具体的に参照していないタンパク質及び核酸配列はGenbankまたは本明細書に開示の他のソースで見つけることができる。
【0064】
本発明の方法に従い、GM-CSFを哺乳動物、特にこのような治療を必要とする患者に投与できる。例示されるように、GM-CSF及びGM-CSFを含む治療成分は好ましくは非経口投与される。非経口投与のさらに具体的な例には、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、及び腹腔内投与が含まれ、皮下投与が好ましい。
【0065】
非経口投与が選択される本発明の態様では、GM-CSFは一般的に単位用量が注入可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で、好ましくは遺伝的に無毒で非治療的な薬学的に許容できる担体培地内で調剤される。このような媒介物の例には、非限定的に、生理食塩水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、マニトール、及び正常血清アルブミンが含まれる。中性緩衝生理食塩水または、血清アルブミン混合生理食塩水は典型的な適切な媒介物である。固定オイルやエチルオレエートのような非水性媒介物もまた使用できる。他の添加物には、例えば緩衝剤、保存料及びポリソルベート80のような界面活性剤のような、等張性及び化学的安定性を向上させるための物質を含む。適切なpH、等張性、安定性等からなる腹腔的に許容されるタンパク質溶液の調整は当分野の技術内である。
【0066】
好ましくは、製品は希釈剤として適切な賦形剤(例えばショ糖)を用いて、凍結乾燥物として周知の方法で調剤できる。
【0067】
好ましいインビボでの血管新生調整剤の用量は約1μg/kg/日から約100μg/kg/日までである。より特異的な用量の使用は治療の特異的状態や、被験者の一般的健康状態のような、当業者に周知のパラメーターにより導き出される。GM-CSFの他の投与方法として米国特許第5,578,301号を参照されたい。本明細書に開示されるインビボでの好ましい造血タンパク質及び脈管由来タンパク質の用量はGM-CSFと同様または類似の範囲内である。
【0068】
記載のように、幾つかの使用では、少なくとも一つの造血タンパク質、少なくとも一つの脈管由来タンパク質、またはそれらの有効な断片のうちの一つまたは複数との共投与により、血管新生調整剤の投与に添加することは効果的である。この方法は、特に血管形成の増加(ブースト)が必要な場合には望ましい。例えば、一つの態様では、少なくとも一つの脈管由来タンパク質、好ましくは脈管由来タンパク質の一つは、 GM-CSFの投与と同時に、その後に、またはその前に患者に投与される。脈管由来タンパク質は、例えば動脈内、筋肉内、または静脈内のように、直接投与できるか、あるいは、分裂誘発物質をコードするアミノ酸を使用するこも可能である。上記Baffourら(bFGF)、Puら、Circulation、88: 208-215(1993)(aFGF); Yanagisama-Miwaら、上記、(bFGF); Ferraraら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、161: 851-855(1989)(VEGF-1) (Takeshitaら、Circulation、90: 228-234、(1994); Takeshitaら、Laboratory、75: 487-502、(1996); Tsusumiら、Circulation、94 (12): 3281-3290(1996)を参照されたい。
【0069】
他の例として、少なくとも一つの造血タンパク質、好ましくはこのようなタンパク質の一つを、このような治療を必要とするヒトの患者に、GM-CSFの投与と同時に、その後に、またはその前に投与できる。記載のように、少なくとも一つの脈管由来タンパク質もまた、GM-CSFまたは造血タンパク質と共投与できる。他の投与形態がある目的のためには適切かもしれないが、造血タンパク質を投与する方法は一般的にGM-CSFの投与に記載された方法に従う。
【0070】
「共投与」という用語は本明細書に開示の少なくとも二つのタンパク質の哺乳動物への好ましい投与、すなわち、一つのタンパク質を、他のタンパク質の投与と同時に、その後に、またはその前に投与することを意味すると理解される。
【0071】
脈間由来タンパク質または造血タンパク質をコードするDNAとの共投与が望ましい態様では、それらをコードするアミノ酸は、参考文献として本明細書にその開示は組み込まれている、米国特許第5,652,225番に記載の、例えばヒドロゲルカテーテルのようなカテーテルを通じて虚血組織潅流血管に投与できる。アミノ酸はまたPCT WO 97/14307に記載の方法を用いて虚血組織に注入して運搬できる。
【0072】
本明細書で使用される「脈管由来タンパク質」または、「血管形成タンパク質」のような関連の用語は、直接的に、または間接的に血管増殖を誘発できる、あらゆるタンパク質、ポリペプチド、それらのムテイン、または部分を意味する。このようなタンパク質は例えば、酸性または塩基性繊維芽細胞増殖因子(aFGF及びbFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF-1)、VEGF165、表皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α及びβ(TGF-α及びTGF-β)、血小板由来内皮増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球/マクロファージCSF(GM-CSF)、アンジオポエチン-1(Ang1)及びNOシンターゼ(NOS)を含む。Klagsburnら、Annu. Rev. Physiol.、53: 217-239(1991); Folkmanら、J. Biol. Chem. 267: 10931-10934(1992)及びSymesら、Current Opinion in Lipidology 5: 305-312(1994)を参照されたい。血管増殖を誘発または促進する限り、分裂誘発物質のムテインまたは断片を利用できる。
【0073】
好ましい血管形成タンパク質は血管内皮増殖因子を含む。これらの最初の一つはVEGFと命名され、現在VEGF-1と呼ばれており、八つのエクソンを含む単一の遺伝子から交互スプライシングで産出される幾つかの異なったイソ型で存在する(Tischerら、J. Biol. Chem. 806、11947-11954(1991)Ferrara、Trends Cardio. Med.、3、244-250(1993)、Polterakら、J. Biol. Chem.、272、7151-7158(1997)。ヒトVGEFのイソ型は121(米国特許第5,219,739号)、145、165(米国特許第5,332,671号)、189(米国特許第5,240,848号)及び206のアミノ酸のモノマーから成り、それぞれは活性なホモダイマーを形成できる(Houckら、Mol. Endocrinol.、8、1806-1814、1991)。
【0074】
他の血管内皮増殖因子には、VEGF-B及びVEGF-C(Joukouら、J. of Cell. Phys.、173: 211-215、1997)、VEGF-2(WO96/39515)及びVEGF-3(WO96/39421)が含まれる。
【0075】
好ましくは脈管由来タンパク質は該タンパク質の分泌を促進する分泌シグナル配列を有する。例えばVEGF-1のような天然シグナル配列を有するタンパク質が好ましい。例えばbFGFのような天然シグナル配列を持たないタンパク質を、通上の遺伝操作技術で修飾し、このような配列を有することができる。Nabelら、Nature、362: 844 (1993)参照のこと。
【0076】
本明細書での「血管新生調整剤」、「造血因子」または例えば「造血タンパク質」のような関連した用語の言及は、造血前駆細胞(HPC)可動化を増加させる認識された因子を意味するために使用される。好ましい造血因子は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、VEGF、幹細胞因子(SCF)としても知られるSl因子(SLF)、基質細胞由来因子(SDF-1)、顆粒球コロニ-刺激因子(G-CSF)、HGF、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、M-CSF、b-FGF、及びFLT-3リガンドを含む。これら及び他の造血因子に関連した開示はKim、C. H. and Broxmeyer、H. E.(1998)、Blood 91: 100; Turner、M. L.、and Sweetenham、J. W.、Br. J. Haematol.(1996)94: 592; Aiuuti,A.ら(1997)J. Exp. Med.、185: 111: Bleul,C.ら(1996)J. Exp. Med.、184: 1101; Sudo,Y.ら、Blood、89: 3166; 及び個々に開示された参考文献で見つけることができる。
【0077】
多くの脈管由来タンパク質の塩基配列は、簡便に、例えばGenBank、EMBL及びSwiss-Prot等のコンピューターデータベースから入手可能である。この情報を用いて、所望をコードするDNA分節を化学的に合成でき、または、このようなDNA分節は、例えばPCR増幅のような当分野での日常的な方法で得ることも可能である。
【0078】
一定の状況では、治療結果を最適化するために二つ以上の異なったタンパク質をコードする核酸を使用することが望ましい。例えばVEGF-1及びbFGFのような二つのタンパク質をコードするDNAを使用でき、bFGFの単独使用を改良できる。脈管由来因子は他の遺伝子またはそれらのコードする遺伝子産物と組み合わせて、血管形成を誘発しながら、標的細胞の活性を促進でき、例えばNOシンターゼ、L-アルギニン、フィブロネクチン、ウロキナーゼ、プラスミノゲンアクチベーター及びヘパリンが含まれる。
【0079】
「有効量」という用語は、目的タンパク質(例えばGM-CSF、血管新生調整剤、造血タンパク質、脈管由来タンパク質)の適切なレベル、すなわち、本出願で開示される標準的アッセイ法で測定し、内皮細胞増殖を誘発、及び/または、血管形成を誘発できるレベルを産出するに十分な、運搬されるタンパク質または核酸のような化合物の量である。従って、重要な局面は発現タンパク質のレベルである。ゆえに、複数の転写産物が使用でき、あるいは、高い発現レベルを引き起こすプロモーターの制御下に遺伝子を置くこともできる。他の態様では、例えばtat及び対応するtar要素のような、非常に高い発現レベルを引き起こす因子の制御下に遺伝子を置くこともできる。
【0080】
タンパク質をコードする核酸の操作及び取り扱いを簡易化するため、該核酸は、操作してプロモーターに連結するカセットへ好ましくは挿入される。該プロモーターは所望の標的組織の細胞内の該タンパク質の発現を実行できる。適切なプロモーターの選択は簡便に達成できる。好ましくは、高発現プロモーターを使用できる。適切なプロモーターの例には、763-塩基対サイトメガロウイルス(CMV)がある。ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Davisら、Hum Gene Ther 4: 151、1993)及びMMTプロモーターも使用できる。一定のタンパク質はそれらの天然プロモーターで発現できる。発現を向上させる他の要素には、tat遺伝子またはtar要素のような、高いレベルの発現を起すエンハンサーまたはシステム等も含むことができる。このカセットはその後、pUC118、pBR322または、例えば大腸菌複製起点を含む他の周知のプラスミドベクターのようなベクターに挿入できる。Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory press(1989)を参照。該プラスミドベクターは、マーカーのポリペプチドが処理する生物の代謝に逆の作用を及ぼさないのであれば、アンピシリン耐性のベータラクタマーゼのような選抜可能なマーカーを含むこともできる。該カセットは、WO95/22618で開示のシステムのような合成運搬システムの核酸結合部分へ結合もできる。
【0081】
本発明の特殊な方法は血管壁の内皮の中身の露出を引き起こす血管損傷の治療に用いることができる。例えば、第一次血管形成は急性心筋梗塞の治療に広く利用されるようになってきている。さらに、血管内ステントは、バルーン血管形成の附随物として広く使用されるようにもなってきている。ステントは、ほぼ至適な初期の結果を救出する、また、再発狭窄症を軽減するのに有効である。しかし、現在のところ血管内プロテーゼ(人工器官)のマイナス面は3.3mm以上の動脈を有する約3%の患者で血栓性咬合に羅患しやすいことである。これよりも小さな動脈内で患者がステントを展開している場合は、亜急性血栓症の発症はさらに高くなる。亜急性血栓症は現在抗凝固の過剰使用によってのみ防止できる。血管介入と抗凝固の過剰使用の組み合わせは、ステント/血管形成の処置時に末梢血管外傷に関して、重大な危険性を生み出す。血管形成の実施、及び/またはステント展開前の、患者へのGM-CSFの単独投与、または本明細書に開示の因子と組み合わせての投与による再内皮化の促進は、不安定なプラークを安定化させ、再血栓を防止する。この例では、血管壁の露出の約1週間前にGM-CSFを投与することが望ましい。
【0082】
本発明の方法は、PTC/US96/15813に開示の血管損傷の治療方法に従い、内皮分裂誘発物質をコードするDNAと共に用いいることが可能である。
【0083】
本明細書で使用されるように、「内皮細胞分裂誘発物質」という用語は内皮細胞増殖を誘発できるあらゆるタンパク質、ポリペプチド、ムテイン、または部分を意味する。このようなタンパク質は、例えば血管内皮増殖因子(VEGF-1)、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、肝細胞増殖因子(分散因子)、及びコロニー刺激因子(CSF)を含む。VEGF-1が好ましい。
【0084】
さらに、本発明の方法は血管新生を可能にして、例えば血管移植片などの移植細胞の治癒を促進するために使用できる。
【0085】
「標準的EPC単離アッセイ法」または他の類似の句への本明細書での言及は次の段階の少なくとも一つ、好ましくは全てを含むアッセイ法を意味する。
a)目的の哺乳動物、好ましくは齧歯類とくにマウスからの末梢血液検体の獲得
b)血液検体からの低密度単核細胞の分離
c)分離された単核細胞と、特異的にSca-1+に結合でき、また単核細胞からSca-1+を分離できるビーズとの接触
d)例えば手でのSca-1+細胞数の測定によるSca-1+細胞の定量化
【0086】
標準的EPC単離アッセイ法に関連した、より具体的な開示については次の考察及び実施例を参照されたい。
【0087】
「標準的EPC単離アッセイ法」という用語、または関連の用語は次の段階の少なくとも一つ、好ましくは全てを含むアッセイ法を意味する。
a)マウス末梢血液からのSca-1+及びSca-1-の単離、またはウサギ末梢血液からのTBM+及びTBM-の単離、及び、例えば本明細書で提供されるようなDi-Iによる、該細胞(Sca-1+及びTBM-)の検出可能な標識
b)数日間、通常は約4日間の適切なデッシュまたはプレート内の培地内での該細胞の培養
c)Di-I標識Sca-1+またはTBM-、またはDi-I非標識Sca-1-またはTBM+である、デッシュまたはプレート内の全ての付着した分散細胞のカウント
d)EPCであることを示す特異的な正の細胞の定量化
【0088】
標準的EPC培養アッセイ法に関連のより具体的な開示は後述の考察及び実施例で見つけることができる。
【0089】
「標準的ネズミ後肢虚血アッセイ法」または関連の用語の本明細書での言及は許容される動物モデル、特にマウスまたはウサギにおける後肢虚血を誘発させるための従来のアッセイ法を表示することを意味する。該アッセイ法の実施に関連する開示は後述の実施例及び材料及び方法の節で見つけることができる。また、該アッセイ法に関するさらなる開示については下記Couffinhal、T. et al (1998)Am. J. Pathol.、;及びTakeshita,S.ら(1994)J. Clinical. Invest. 93: 662を参照されたい。
【0090】
「標準的血管長アッセイ法」または「標準的血管直径アッセイ法」の本明細書での言及は一般的に目的の哺乳動物(例えばマウスまたはウサギ)の興味の血管を露出し、該脈管の視察後に従来の方法で該脈管長または直径を測定することを意味する。測定可能な一定の動脈または静脈のような血管の例を後に示す。
【0091】
「標準的角膜ミクロポケットアッセイ法」という句、または関連の用語は本明細書ではマウス角膜ミクロポケットアッセイ法を特に言及して用いられる。該アッセイ法は一般的に次の段階少なくとも一つ、好ましくは全てを含む。
a)マウスの少なくとも片目に角膜ミクロポケットを作成する
b)許容できるポリマー及び少なくとも一つの脈間由来タンパク質を含むペレットを該ポケットへ加える
c)例えばスリット-ランプ生体顕微鏡検査方で、特徴的に段階b)の数日後、例えば5〜6日後、マウスの目の血管新生を調べる
d)例えばBS-1で、目のEC細胞に印をつける
e)目の血管新生、及びの任意にEC細胞の総数を定量化する。
【0092】
標準的角膜ミクロポケットアッセイ法に関するより具体的な開示については、後述の考察及び実施例を参照されたい。所望により、該アッセイ法は、その対照が、段階b)が脈間由来タンパク質を含まないペレットを有する点以外は、上記のa)〜e)の段階の実施を含む参考としての、対照を含むことができる。
【0093】
「標準的ネズミ骨髄(BM)移植モデル」または類似の用語の本明細書での言及は次の段階の少なくとも一つ、好ましくは全ての段階を意味する。
a)ドナー哺乳類及び特徴的にはマウスからの検出可能な標識BM細胞の獲得
b)該マウスからの低密度BM単核細胞の単離。
c)例えば照射による、適切なレシピエントマウスからのBM細胞の除去。
d)該レシピエントマウスへの単離し検出可能に標識したBM細胞の投与。
e)例えば後肢虚血などの、マウスの血管損傷を促進する状態への該レシピエントマウスの暴露。
f)該レシピエントマウスへのGM-CSFの有効量の投与。
g)該レシピエントマウスからの少なくとも一つの角膜の獲得、及び
h)角膜内の標識BM細胞の検出及び定量化。
【0094】
例示の検出可能な標識はベータガラクトシダーゼ酵素活性である。該アッセイ法に関するより具体的な情報は下記の考察及び実施例で見つけることができる。
【0095】
本明細書でのGM-CSF、造血タンパク質、または脈間派生タンパク質のような血管形成新生剤の「有効量」の言及は、本明細書に開示の少なくとも一つの標準的アッセイ法で測定して、対応する全長タンパク質の血管促進活性の少なくとも70%、好ましくは約75%から95%を示すアミノ酸配列を意味する。他の標準的アッセイ法も使用できるが、EPC可動化を検出し、好ましくは測定するアッセイ法が好ましい。例示のように、GM-CSFの好ましい有効な断片は、標準的角膜ミニポケットアッセイ法、特に標準的血管長または直径アッセイ法で測定し、全長ヒトGM-CSF(発行された国際出願第PCT/EP/85/00376(WO86/00639)を参照。)の血管促進活性の少なくとも70%、好ましくは約75%から95%を有する。
【0096】
本明細書に記載のすべての文書は、その全体が本明細書に参考文献として組み入れられる。
【0097】
本発明はさらに次の実施例により説明される。これらの実施例は本発明の理解の助けるために提供されるのであり、これらに限定するものとは理解されない。
【実施例】
【0098】
実施例1 サイトカインの投与によるEPC動力学の調整
循環EPCは損傷に対し回復反応を構築する可能性がある。サイトカインの投与はEPCを可動化し、それにより治療的新生血管形成を増進するとする仮説は次のようにして研究された。
【0099】
GM-CSFは、造血前駆細胞(Socinskiら、Lancet、1988; 1: 1194-1198、Gianniら、Lancet、1989; 2: 580-584)、及び骨髄性系統細胞(Clarkら、Science 1987; 236: 1229-1237、Sieff、C.、J. Clin. Invest. 1987; 79: 1549-1557)、及びBM基質細胞(Dedharら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1988;85: 9253-9257)、及びEC(Bussoliniら、J. Clin. Invest.、1991; 87: 986-995)を含む非造血細胞の増殖及び分化を誘発し、サイトカイン誘発EPC可動化を促進するために使用される。ECへの直接的な分裂誘発の影響を避けるために、GM-CSFは新生血管形成の刺激作出の7日前に投与された。新たな血管形成は最初、上記のマウス角膜ポケットアッセイ法で試験した。GM-CSFの前処理(腹腔内、(i. p.)、rmGM-CSF[R&Dシステム]500ng/日)は、0日目で、即ち、角膜ミクロポケットの作出及びVEGFペレットの挿入の前に循環EPCを増加させ(非処理の対照の221%)、同様に、6日目で新生血管形成は(図1A〜C)対照のマウスと比べ増大した(長さ=0.67±0.04対0.53±0.04、p<0.05;角度(新生血管分布により占められた周辺の程度)=155±13対117±12、p<0.05)(図1B〜1D)。図2A及び2B参照。
【0100】
実施例2 サイトカイン誘発EPC可動化は虚血組織の新生血管形成を促進する
サイトカイン誘発EPC可動化が虚血組織の新生血管形成を促進するかどうかを決定するため、ウサギ後肢虚血モデルを使用した(Takeshitaら、J. Clin. Invest. 1994; 93: 662-670)。GM-CSFで前処理したウサギ(皮下、(s. c.)、rhGM-CSF; 50μg/日s. c.)では、EPCが豊富な細胞集団が増加し(対照動物に比べ189%)、また、手術0日目(即ち前)でEPC分化が促進された(対照動物に比べ421%)(図3)。毛細管密度の形態計測分析は、対照群(虚血、非GM-CSF)に比べ、GM-CSFでの前処理で誘発された大きな新生血管形成を示した(249対146/mm2、p<0.01)。GM-CSFでの前処理はまた虚血四肢/正常四肢の血圧比を非常に向上させた(0.71対0.49、p<0.01)(図3A〜3C)。
【0101】
実施例3 虚血組織中のEPCの動力学
虚血組織中のEPCの動力学を調べるため、末梢血液からEPC単離及びEPC培養アッセイ法で、EPCの頻度と分化を調べた。EPCの豊富な画分を、マウスからはSca-1抗原-陽性(Sca-1+)細胞として、ウサギからは、抗原レパートリーCD5-/Igμ-/CD11b-と称されるT-リンパ細胞、B-リンパ細胞及び単球(TBM-)枯渇細胞集団として単離した。
【0102】
循環内のSca-1でマークされるEPCの豊富な集団の頻度は、C57/6JBL正常マウスで10.7±1.0%であった。ラットビトロネクチン上にプレートしたSca-1+細胞の副集合は付着し、5日以内に紡錘体となった。 Sca-1+及びSca-1陰性(Sca-1-)細胞の共培養を、DiI蛍光でSca-1-細胞をマークした後で試験した。Sca-1+では紡錘体形態が発達していた。共培養中のマウス粘着細胞は主にDiIでマークしたSca-1+細胞であることが判明し(65〜84%)、BS-1レクチンとの反応及びacLDLの取込みによりEC系統と証明された(図4A)。Sca-1+細胞がインビボでECに分化できるかどうかを決定するため、同様の遺伝背景をもつ末梢血液から単離した、DiIでマークしたSca-1+細胞の均一な集団を、虚血手術後に後肢虚血のマウスの静脈内に投与した(Couffinhal,T.ら、Am.J. Pathol.、1998)。DiI-標識EPC由来細胞は、インサイチューでECに分化することがCD31(PECAM)の共染色で示され、コロニー、芽、及び毛細管へ組み込まれることが見出された(図4A〜4D)。
【0103】
ウサギモデルでは、T及びBリンパ球及び単球への抗原を用いて、成熟HCを枯渇させ、EPCが豊富な(TBM-)画分を産出した。ウサギ末梢血液内のTBM- EPCが豊富な集団の頻度は22.0±1.4%であった。EPCの分化は、粘着培養単核血液細胞を数えて調べた。EPC培養内の粘着細胞はDiIでマークしたTBM-細胞に主に由来することが再び判明し(71〜92%)、またBS-1レクチンとの反応及びacLDLの取り込みによりEC系統であることを証明した。
【0104】
TBM-細胞は、インビボで手術後0、3、7日後に、40mlの末梢血液から単離したDiIでマークした自己TBM-細胞を、片側後肢虚血を有するウサギへ投与し、ECへ分化することが示された(Takeshita,S.ら、 J. Clin. Invest. 1994)。DiI標識EPC由来細胞は、インサイチューでECへ分化することが、CD31との共染色及びコロニー、芽、及び毛細管への取り込みで示された(図4E〜4J)。
【0105】
図4A〜4Dを下記に具体的に説明する。該図でマウスのSca-1+細胞集団及びウサギのTBM-細胞集団由来のEPCは新生血管形成の病巣に送られ、組み込まれることが可能であるという蛍光顕微鏡の証明が得られた。特に、図4Aでは、EPC培養アッセイ法4日後のacLDL-DiI(赤)及びBS-1レクチン(緑)の二重染色された培養ネズミ細胞が示された。(図4B〜D)手術2週間後に、後肢虚血を有するマウスへ投与したSca-1+細胞は、マウス虚血後肢内の新生血管形成の病巣へ送られ、分化し、組み込まれた。図4B及び4Cは、DiI-標識Sca-1+細胞(赤)がCD31(緑)と共に局在することを実証し、これらEPCがCD31-陽性の脈間構造へ組み込まれたことを示す。矢印はDiI及びCD31に陽性の細胞を、一方、くさび形はCD31に陽性、DiIに陰性(自己EC)の細胞を示す。図1dの非蛍光相位対比写真はEPCの血管病巣(矢印)が骨格筋細胞に隣接した腸部位内であることを示す。
【0106】
図4E〜Gは、虚血手術2週間後に、ウサギ虚血後肢筋肉の免疫染色は、この場合TBM-細胞(赤)として単離されて(図4E)、EPCの蓄積とコロニー化を示すことを示す。これらの細胞はDiIでマークされ、0、3、7日目に再注入された。図4Fは、これらの細胞が新生血管病巣内で、CD31で共標識されることを示す。DAPIは細胞核を染色する(青)(図1G)。(図4H〜J)。コロニー化したTBM-細胞は、発達中の芽に組み込まれ、骨格筋細胞間に新たな毛細血管を形成する。
【0107】
実施例4 虚血組織中のEPC動力学の確認
虚血が重度の組織間のEPC動力学を、頻度及び分化について調べた。循環血液内のEPCが豊富な集団は、虚血開始後に増加し、手術7日目にピークを迎えた(7日目対0日目:マウスで17.5±2.4対3.8±0.6x10/ml [p<0.05]、ウサギで11.4±0.6対6.7±0.3x10/ml [p<0.05]、)(図5A、6A)。EPC培養アッセイ法は、虚血後のEPC分化の劇的な向上を示し、7日目にピークを迎えた(7日目対0日目:マウスで263±39対67±14/ mm2 [p<0.05]、ウサギで539±73対100±19 [p<0.05]、)(図5B、6B)。EPCが豊富な集団の頻度もEPC培養アッセイ法も、術後7日目の疑手術動物モデルのいずれに於いても有意なEPC動力学の増加を示さなかった。
【0108】
次に図5A及び5Bを具体的に説明する。該図は後肢虚血の発達に関連するEPCの動力学を示す。(図5A)虚血後肢作成の手術後、循環血液内のマウスのEPCが豊富な集団(Sca-1+)は増加し、7日目に最大となった(それぞれの時期でn=5のマウス)。(図5B) EPC培養内の粘着細胞は、主にDiIでマークされたSca-1+細胞に由来する。培養アッセイ法は手術で誘発した虚血後EPCの分化が促進され、7日目にピークをむかえることを示す(それぞれの時期でn=5)。
【0109】
図5C〜Hは、術後7日目に後肢虚血マウスに適用したマウス角膜ミクロポケットアッセイ法の結果を示す。スリット-ランプ生体顕微鏡検査法(図5C及び5D)及び蛍光顕微鏡写真(図5E及び5F)は、マウス角膜の非血管領域の新生血管形成が、虚血により誘発されたEPC可動化により向上したことを示しており、同倍率で示されている。(図5G及び5H)新生血管形成の血管長及び血管周の分布の二つのパラメーターの定量分析は、非虚血の擬手術対照マウス(n=9)よりも後肢虚血動物内で角膜新生血管形成が顕著であることを示している(*=p<0.05)
【0110】
実施例5 EPC可動化向上の新生血管形成への影響の分析
虚血に誘発されるEPC可動化向上の新生血管形成への影響を調べるために、3日早く手術を施して後肢虚血を作出した動物に、マウス角膜ミクロポケットを適用した。スリット-ランプ(図5C及び6D)及び蛍光(図5E及び6F)顕微鏡写真は、非虚血擬手術の対照と比べ、後肢虚血動物で非血管マウス角膜の新生血管形成が向上したことを示す。血管長及び血管周の測定で、非虚血擬手術の対照と比べ、虚血動物内の新生血管形成へのEPC可動化の有意な効果が示された(長さ=0.67±0.04対0.53±0.04mm、p<0.05、円周=43.3±3.5対32.4±3.4%、p<0.05)(図5G及び5H)。
【0111】
実施例6 サイトカイン誘発EPC可動化での新生血管形成促進の確認
サイトカイン誘発EPC可動化が虚血組織の新生血管形成を促進させるかを決定するために、後肢虚血ウサギモデル(Takeshita,S.ら、J. Clin. Invest. 1994)を用いた。ECへの直接的な作用を避けながら、GM-CSF誘発EPC可動化を起させるために、後肢虚血の発達前の7日間、組換えヒトGM-CSFを毎日投与した。このようなGM-CSF前処理(50μg/日s. c.)はEPCが豊富な集団を増加させ(12.5±0.8対6.7±0.3x105 /ml、p<0.01)、0日目(手術前の前処理の7日目)でEPCの分化を促進させた(423±90対100±19 /mm2、p<0.01)。術後7日目までに、GM-CSF前処理群での循環EPCの頻度及びEPCの分化は対照値を上回った(それぞれ、20.9±1.0対11.3±2.5x105 /ml [p<0.05]、813±54対539±73 /mm2 [p<0.01])(図6A及び6B)。毛細管密度の分析は、GM-CSF前処理に誘発された大きな新生血管形成(249±18対非処理群の146±218 mm2 p<0.01)及び虚血/正常後肢血圧比の上昇を示す(0.71±0.03対0.49±0.03、p<0.01)(図6C)。
【0112】
次に図6A〜Iをより詳細に説明する。該図はウサギ虚血後肢モデルにおけるGM-CSF誘発EPC可動化の新生血管形成への効果を示す。(図6A、B)GM-CSF前処理後、0日目(手術前)から7日目まで、対照動物(虚血、非処理)と比較し、循環するEPCが豊富な集団数(TBM-)は増加し(図6A)、同様に培養内のEPC分化も増加した(図5B)(それぞれの時点でn=5のマウス)。(図6C)ウサギ虚血の開始二週間後には、健全な四肢の血圧に対する虚血四肢の血圧比を用いた生理学的測定で、対照群に比べGM-CSFを投与されたウサギにおいて有意な改善が示された。さらに、塩基性フォスファターゼ染色を用いた組織学的試験は、対照群に比べ、GM-CSF処理したウサギで毛細管密度が増加したことを示した(それぞれの群でn=9のマウス)(*=p<0.01、**=p<0.05)。
【0113】
スリット-ランプ生体顕微鏡検査法(図6D及び6E)及び蛍光顕微鏡写真(図6F及び6G、同倍率)は、GM-CSFでの前処理で誘発したEPC可動化がマウス角膜の非血管領域での新生血管形成を促進することを示すものである。(図6H及び6I)血管長及び血管周の測定で、対照マウス(n=10)に比べ、GM-CSF前処理マウス(n=6)での、EPC可動化の新生血管形成への有意な効果が示された(*=p<0.05)。
【0114】
実施例7 マウス角膜ミクロポケットアッセイ法を用いた新生血管形成促進の確認
上記の結果は、マウス角膜ミクロポケットアッセイ法での新たな血管新生の測定により確証された。GM-CSF前処理マウス(rmGM-CSF、500ng/日、i. p. )では、対照マウスよりもより大きな角膜新生血管形成が発達した(長さ=0.65±0.05対0.53±0.04、p<0.05、mm; 円周=38.0±3.5対28.3±2.7%、p<0.05)(図6D〜6I)。
【0115】
実施例8 BM移植モデルにおけるBM由来EPCの取り込みの促進
虚血及びGM-CSFへの反応における、BM由来EPCの角膜新生血管形成の病巣への取り込み促進の直接的な証拠を確立するため、ネズミBM移植モデル(BMT)を適用した。ミクロポケット移植の6日後に角膜を切除し、光学顕微鏡で調べたところ、擬手術群に比べ虚血四肢ではベータガラクトシダーゼ発現細胞の有意な増加が示された(3.5±0.6対10.5±1.7、p<0.01)。対照群と比べ、GM-CSFで処理したBMTレシピエントについても同様であった(3.2±0.3対12.4±1.7、p<0.01)(図7A、7B)。対照マウス(BMT後)の角膜では、ベータガラクトシダーゼ発現細胞は見られなかった。定量化学検出では、対照と比べ、GM-CSF投与マウスでのベータガラクトシダーゼ活性の統計学的に有意な増加が確認された(2.90±0.30対2.11±0.09X103、p<0.05)(図7C)。
【0116】
次に図7A〜Cの詳細を説明する。該図は、骨髄由来EPCが角膜新生血管形成に貢献することを示す。挿入して示された顕微鏡写真は、後肢虚血マウス(図7A)及びGM-CSF前処理ウサギ(図7B)の両方で、内皮特異的Tie-2/LacZ発現BM由来EPC(青色細胞)の角膜新生血管形成病巣への取り込みを示す。X-galで染色したEPC取り込みの頻度を光学顕微鏡下で目で数えた。(図7A)組み込まれたEPCは、擬手術マウスよりも、後肢虚血マウスで有意に多かった;(図7B)対照ウサギと比較したGM-CSF前処理ウサギにおいても同様であった(それぞれの状況で*=p<0.01)。(図7C)GM-CSF群では、対照群よりもベータガラクトシダーゼ活性が有意に高かった(**p=<0.05)。
【0117】
四肢虚血の発達はEPC可動化を促進することが観察され、これらのEPCは従って「脈管形成」新生血管形成に貢献する。Ledneyらは(Ledney,G. D.ら、J. Surg. Res.、1985)創傷外傷は、脾臓、BM、及び末梢血液内の多能性幹細胞または前駆細胞を含むHCの可動化を引き起こすことを報告した。EPCはBMに由来し、またEPCの可動化は虚血組織間に促進されることから、サイトカイン及び可溶性レセプター及び/又は粘着分子の循環を通じて、BMで制御され、循環EPCは虚血損傷への修復反応を構築する可能性がある。
【0118】
該結果はEPC動力学へのGM-CSFの刺激的効果の可能性を示し、またこのようなサイトカイン誘発EPC可動化は、重度の虚血の組織及び、以前の非血管部位の新生血管形成を促進することを示す。特に実施例は、外因性及び内因性刺激への反応におけるEPCの可動化を示す。
【0119】
上記の考察及び実施例は、本発明者らが研究した、EPCの可動化及び虚血組織の新生血管形成誘導における内因性刺激、すなわち組織虚血、及び外因性サイトカイン治療、特に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の重要性を示す。マウス及びウサギにおける局所虚血の発達は循環EPCの頻度を増加させることが判明した。マウスにおいては虚血誘導EPC可動化の影響は、非虚血の対照と比較して、後肢虚血動物での、角膜ミクロポケット手術後の眼球新生血管形成の促進により示された。後肢虚血ウサギでは、GM-CSF前処理後、後肢血管形成の促進と呼応して、循環EPCがさらに増進した。内皮細胞(EC)特異的Tie-2プロモターに転写調整されるベータガラクトシダーゼ発現組換えドナーからのBMを移植したマウスにより、角膜新生血管形成の促進に貢献したEPCは、虚血及びGM-CSFに反応して、骨髄(BM)から特異的に可動化する直接の証拠が示された。これらの所見は、循環EPCが組織虚血に反応して内因的に、またはサイトカイン治療により外因的に可動化され、それにより虚血組織の新生血管形成を増進させることを示す。
【0120】
特に、本明細書に、及び共に未決のままである米国仮出願第60/077,262で開示されるEPC可動化及びその後の新生血管形成の概念は、本明細書で特異的に記載する虚血性脈間疾患を含む様々な虚血性脈間疾患の予防及び治療方法として可能性があると考えられる。
【0121】
一般的コメント-次の材料及び方法はを、必要に応じて上記の実施例で使用する。
【0122】
1.末梢血液からのマウスのEPC濃厚画分の単離
マウスの末梢血検体を、屠殺直前の心臓から得、ヒストパーク-1083(Sigma、St. Louis、MO)密度勾配遠心を400gで20分間行い分離した。低密度単核細胞を収穫し、2mMのEDTA(DPBS-E)を補ったダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で二度洗浄し、目で数えた。個々の動物の血液単核細胞を、50μlのSca-1ミクロビーズ(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)及び0.5%ウシ血清アルブミン(Sigma)を補った500μlのDPBS-Eバッファーに4℃で15分間懸濁した。バッファーで細胞を洗浄し、Sca-1抗原陽性(Sca-1+)細胞を、磁気ステンレススチールウールカラム(Miltenyi Biotec)で分離し、数を数えた。Sca-1の抗体に結合しなかった細胞は該カラムを通過し、一方Sca-1+細胞は残留した。該Sca-1+細胞をカラムから溶出し、両方の細胞画分を目で数えた。
【0123】
2.末梢血液からのウサギのEPC濃厚画分の単離
ウサギの末梢血液検体を、20G灌流カテーテルで一方の耳静脈から得、ヒストパーク-1077(Sigma)密度勾配遠心を400gで20分間行い分離した。低密度単核細胞を収穫し、DPBS-Eで二度洗浄し、目で数えた。ウサギ造血幹/前駆細胞の適切な抗体が入手不可能なため、成熟HCsの喪失により未熟HCsを単離した。該細胞をマウス-ウサギCD5、抗-ウサギIgM(μチェイン)及びCD11の混合一次抗体とインキュベートし、成熟T及びBリンパ球及び単球をそれぞれ識別した。抗体を洗浄後、該細胞をニ次ラット-マウスIgGミクロビーズ(Miltenyi Biotec)とインキュベートし、磁気分離カラムに置いた(Miltenyi Biotec)。成熟T及びBリンパ球及び単球の抗体と結合しない、造血幹/前駆細胞に同一な細胞は、該カラムを通過し、一方抗体の混合液への陽性細胞は残留した。該陽性細胞(TBM+)、成熟HCsをカラムから溶出し、両方の細胞画分を目で数えた。
【0124】
3.EPC分化アッセイ法
循環血液細胞からのEPC分化を評価するために、5%FBS(Clontecs、San Diego、CA)を補ったEBM-II培地のSca-1+またはTBM-をDi-I標識した後、個々のマウスの700μlの末梢血から単離したSca-1+及びSca-1-、及び個々のウサギの2mlの末梢血液から単離したTBM-及びTBM+を、ラット血漿ビトロネクチン(Sigma)でコーティングした24穴プレートの1つの穴で共培養した。培養4日後、細胞を培地でニ度洗浄し、Di-I標識Sca-1+またはTBM-細胞由来細胞、及び非標識Sca-1-またはTBM+細胞由来細胞の頻度に従い、付着した拡散細胞を数えた。
【0125】
上記のアッセイ法で付着した紡錘体細胞の細胞タイプを決めるために、同一の細胞をasLDL-DiI取込み及びBS-1レクチン反応性により測定した。二重陽性細胞をEPCと判断し数えた(マウスで96.2±1.8%、ウサギで95.5±2.4%)
【0126】
4.虚血後循環EPC動力学評価のための研究設定
後肢虚血C57BL/6Jマウス(n=40)を手術後0(手術前)、3、7及び14日目に屠殺した(それぞれの時点で10匹ずつ)。擬手術マウスを同様に手術後7日目に屠殺した(n=4)。末梢血単核細胞をSca-1+細胞測定のために調整し、また、EPC濃厚画分を磁気ビーズ選抜(n=5)及びEPC培養アッセイ法(n=5)で調整した。
【0127】
磁気ビーズ選抜及びEPC培養アッセイ法でTBM-の測定準備のために、手術後0、3、7及び14日目に後肢虚血ニュージーランド白ウサギの末梢血単核細胞を単離した。擬手術ウサギは手術後7日目に同様にして調べた(n=4)。
【0128】
虚血誘導循環EPCの新生血管形成への効果を評価するため、角膜新生血管形成アッセイ法(Kenyon,B. M.ら、Invest Ophthalmol Vis Sci、1996及びAsahara,T.ら Circ Res、1998)を後肢虚血マウスで行った。虚血手術または擬手術の3日後に、C57BL/6Jマウス(それぞれn=5)に角膜アッセイ顕微鏡手術を実施し、これには角膜手術の6日後(虚血の9日後)の新血管長及び血管周の測定が含まれる。インサイチューBS-1レクチン染色を、屠殺前に実施した。
【0129】
5.GM-CSFの循環EPC動力学及び新生血管形成への効果ための研究設定
これらの実験はEPC動力学へのGM-CSFの効果、及びその後の新生血管形成への血管形成の貢献を示すことを意図する。
【0130】
a. ウサギモデル 後肢虚血動物を二つの群に分けた。8匹のウサギに投与し、手術7日前から1週間毎日の皮下注射する組換えヒトGM-CSF(70μg/日)から成るGM-CSF処理(GM-CSF群)。手術前1週間毎日、生理食塩水を皮下注射により与えられた8匹のウサギから成る虚血対照群(対照群)。
【0131】
一回目の注射の直前日([-]7日目)、虚血手術日(0日目)、及び手術後の3、7、14日後(3、7、14日目)にウサギを調べ、それぞれの時点で末梢血を中央耳動脈から単離した。それぞれの時点で5mlの血液を細胞数測定、及び細胞培養アッセイ法のために単離した。それぞれの群の全ての動物で、虚血及び正常四肢間の血圧比を測定し、同様に14日目(屠殺時)に虚血筋の毛細管密度を測定した(下記参照)。
【0132】
b. マウスモデル [-]7日目から[-]1日目の1週間毎日、組換えネズミGM-CSF(0.5μg/日)または対照の生理食塩水を腹腔内注射し、0日目にC57BL/6Jマウス(それぞれn=5)に角膜ミクロポケット手術を行い、結果として生ずる新脈間構造の長さ及び円周を6日目に測定した。インサイチューでのBS-1レクチン染色を屠殺前に行った。
【0133】
6.ネズミ骨髄移植モデル
EC-特異的プロモーターのTie-2の転写制御下でLacZによりコードされるベータガラクトシダーゼの構築により発現する組換えマウスからの、BMTをFVB/Nマウスに実施した(Schlaeger,T. M.ら、Development、1995)。移植BMの再構築で、LacZの発現がTie-2発現BM由来細胞に限定され、他の体細胞ではLacZの発現が観察されない、Tie-2/LZ/BMTマウスを産出した。その後、虚血または擬手術の三日前、またはGM-CSFまたは対照媒介物での7日間の処理が完結した1日後に、Tie-2/LZ/BMTマウスに角膜アッセイ顕微鏡手術(Kenyon,B. M.ら、Invest Ophthalmol Vis Sci、1996及びAsahara,T.ら、Circ. Res. 1998)を行った。
【0134】
週齢(4週)の一致するドナーTie-2組換えマウス(FVB/N-TgN[TIE2LacZ]182Sato、Jackson Lab)の頚骨及び大腿骨を洗い流しBM細胞を得た。低密度BM単核細胞をヒストパーク-1083(Sigma)での密度遠心分離で単離した。12.0 Gyで致死量を照射し、それぞれ約2X106個のドナーBM単核細胞を灌流させたFVB/Nマウス(Jackson Lab)にBM移植を行った。それまでにレシピエントマウスのBMが再構築される、BMT後4週間目に、該マウスに後肢虚血(下記参照)作成の手術または擬手術を実施し、3日後、角膜新生血管形成のアッセイ法のための顕微手術を行った。同様に、BMT後4週間目にGM-CSF、または対照媒介物を7日間投与し、GM-CSFまたは対照での前処理完了の1日後に角膜新生血管形成アッセイ法の手術を行った。角膜顕微手術6日後にベータガラクトシダーゼ発現の光学顕微鏡での証明、及びベータガラクトシダーゼ活性の化学検出のためにBMT動物の角膜を回収した。
【0135】
7.角膜組織のベータガラクトシダーゼ発現の検出
ベータガラクトシダーゼ発現細胞を組織学的に検出するため、マウスの目全体を摘出し、4%パラフォルムアルデヒド中で4℃で2時間固定し、37℃で一晩X-gal溶液にインキュベートした。検体をその後、PBS内に置き、角膜半球(kemisphered cornea)を解剖顕微鏡化で切除し、組織学的プロセシングのために包埋した。組織検体は光学(light)ヘマトキシリン-及び-エオシンで対比染色し、光学顕微鏡で調べて、断面あたりのX-gal陽性細胞の数を目で数えた。それぞれの組織の3つの断面を調べ、X-gal染色細胞頻度の評価のために平均した。
【0136】
ベータガラクトシダーゼ活性の化学検出のために、摘出した目を液体窒素に入れ、-80℃で保存した。化学発光レポーター遺伝子アッセイシステム(Chemiluminescence Reporter Gene Asay System)、ガラクトライトプラスTM(Galacto-Light Plus TM)(Tropix Inc.、Bedford MA)を用い、改変プロトコールに従い、該アッセイ法を実施した。簡潔には、目を1mlの補充した溶解バッファー中に置き、0.5mMのDTTを加えた後、Tissuemizer Mark II(Tekmar Co.、Cincinatti、OH)で均一化した。均一化した溶解溶液を遠心分離し、破片を除去した。均一化した溶解バッファーの上澄みのアリコートを用いてBCA Protein Assay Kit(PIERCE、Rockford、IN)でタンパク質を定量した。この上澄みをイオン交換樹脂Chelex100で処理した後、定量し、ベータガラクトシダーゼ活性をケミルミノメーター(Lumat LB9501、Berthold、Nashua、NH)で測定した。タンパク質濃度により、ベータガラクトシダーゼを標準化した。
【0137】
8.マウス後肢虚血モデル
同週齢(8週)のC57BL/6J雄マウス(Jackson Lab、Bar Harbor、ME)を用い、マウス後肢虚血モデルを作成した(Couffinhal,T.ら、Am. J. Pathol、1998)。全ての動物をその後の手術処置のために腹腔内ペントバルビタール注射(160 mg/kg)して痲酔した。大腿動脈上に横たわる左後肢の中央部で皮膚を切除した。その後大腿動脈を徐々に単離し、大腿動脈の基部を3-0絹結紮糸で結紮した。伏在動脈の末端部分を結紮し、他の動脈分枝び静脈を解剖して離し切除した。上に横たわる皮膚は二つの手術ホッチキスで閉じた。術後、37℃のヒーティングプレートにマウスをのせ、痲酔から完全に醒めるまで特別な注意を払って動物を監視した。
【0138】
9.ウサギ後肢虚血モデル
上記のウサギ後肢虚血モデルを用いた(Takeshita,S.ら、J. Clin. Invest. 1994)。ジラジンでの前投薬後、ケタミン(50 mg/kg)及びアセプロマジン(0.8 mg/kg)の混合物で全部で20匹のニュージーランド白ウサギ(3.8〜7.2kg)(Pine Acre Rabbitry、Norton、MA)を痲酔した。その後、鼡径靭帯から膝蓋とのちょうど隣接点まで下から縦切開を行った。手術時に手術者が無作為に切開を行った四肢を決定した。手術用ルーペを用いたこの切開で、全長の渡って大腿動脈を解剖して離し、下腹壁動脈、深大腿動脈、外側大腿回旋動脈、浅腹壁動脈を含む全ての大腿動脈分枝もまた解剖して離した。膝窩動脈及び伏在動脈を解剖して離した後、外腸骨動脈及び上記の全ての動脈を4.0絹結紮糸(Ethicon、Sommerville、NJ)で結紮した。最後に、大腿動脈を、外腸骨動脈の分枝としての基部の起点から、分岐して伏在及び外腸骨動脈を形成する末端の地点まで完全に切開した。大腿動脈の切開後、血栓の逆行性伝播により外腸骨動脈の咬合が引き起こされた。血流はその結果として外腸骨動脈から排出する側枝に依存性となった。
【0139】
10.マウス角膜新生血管形成アッセイ法
同週齢(8週)のC57BL/6J雄マウス(Jackson Lab)を用いて、マウス角膜新生血管形成を評価した。その後の手術処置のために、全ての動物を腹腔内ペントバルビタール注射(160 mg/kg)して痲酔した。改変バングレーフェ白内障刀でそれぞれのマウスの目に角膜ミクロポケットを作出した。それぞれのポケットに、150 ngの血管内皮増殖因子(VEGF)を含むヒドロンポリマータイプNCC(IFN Science、New Brunswick、NJ)でコーティングした0.34 x 0.34 mmのショ糖硫酸アルミニウム(Buck Meditec、Denmark)ぺレットを移植した。ぺレットは角膜の縁から1.0 mmに位置し、エリスロマイシン眼用軟膏(E. Foufera、Melville、NY)をそれぞれの手術した目に加えた。全てのマウスの角膜をペレット移植5日から6日後にかけてスリット-ランプ生体顕微鏡検査法で毎日調べた。新生血管形成の血管長及び血管周を術後6日目に測定し、全ての角膜を写真撮影した。これらの測定後、EC特異的マーカである、FITC(Vector Lab、Burlingame,CA)と接合した500 ngのBandeiraea Simplicifoliaレクチン(BS-1)を静脈内投与し、30分後に屠殺した。目を摘出し、1%パラフォルムアルデヒド溶液内で固定した。固定後、角膜をガラススライド上に乗せ、蛍光顕微鏡検査で調べた。
【0140】
11.低四肢血圧比
痲酔したウサギで、これらのインビボでの生体研究を行った。両後肢の血圧を測定した。それぞれに際して、後肢を剃り清浄して、後けい骨動脈の脈拍を、ドップラー消息子で同定し、それぞれの四肢の収縮血圧を標準的方法で測定した。血圧比は正常四肢の収縮血圧に対する虚血四肢の収縮血圧の比として、それぞれのウサギで決定した。
【0141】
12.毛細管密度
新生血管形成の範囲を、正常及び虚血後肢からとった光学顕微鏡的切片の毛細管の頻度を測定して調べた。組織標本は屠殺時に、両肢の筋肉からの横断面として得た。筋肉検体をO. C. T. 化合物(Miles、Elkhart、Ind.)内に包埋し、液体窒素で急凍結した。その後5μmの厚さの複数の凍結切片を、筋肉繊維が横方向になるようにそれぞれの標本から切り出した。組織切片をインドキシルテトラゾリウム法を用いて、塩基性フォスファターゼ染色し、上記のように毛細管ECsを検出し、またエオシンで対比染色した。毛細管を20倍の倍率で数え、毛細管密度を決定した(mm2あたりの平均毛細管数)。無作為に10の異なった領域を、毛細管算定のために選抜した。毛細管/筋肉繊維比を計算するために使用した算定方法は、他の点では毛細管の計算のために使用した方法と同一である。Prokop、D. J. (1997) Science、276:71; Perkins、S. and Fleischman、R. A. (1998) J. Clinical Invest. 81: 1072; Perkins、S. and Fleischman、R. A. (1990) Blood 75: 620を参照されたい。
【0142】
13.統計解析
全ての結果を平均±標準誤差として表わす。統計学的な有意差を、二つの平均の比較のための非対スチューデントT-検定で評価した。3群以上の多重比較はANOVAで行った。p<0.05の値は統計学的な有意差を示すものと解釈された。
【0143】
以下の参考文献は本明細書に特異的に組み入れられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において新たな血管を形成するのに十分な血管新生調整剤の有効量を哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物における新たな血管の形成を誘導する方法。
【請求項2】
血管新生調整剤がGM-CSF、M-CSF、b-FGF、SCF、SDF-1、G-CSF、HGF、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、FTL-3リガンド、またはこれらの有効な断片である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
血管新生調整剤がGM-CSFであり、哺乳動物へのGM-CSFの投与量が哺乳動物において内皮前駆細胞(EPC)の頻度を増加させるのに十分である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
標準的EPC単離アッセイ法で測定してEPC頻度の増加が少なくとも約20%である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物に投与する血管新生調整剤の量が哺乳動物においてEPCの分化を増加させるに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
標準的EPC培養アッセイ法で測定してEPC分化の増加が少なくとも約20%である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物への血管新生調整剤の投与量が哺乳動物において血管長を増加させるのに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
標準的血管長アッセイ法で測定して血管長の増加が少なくとも約5%である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物に投与する血管新生調整剤の量がさらに、哺乳動物において血管径を増加させるのに十分である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
標準的血管径アッセイ法で測定して血管径の増加が少なくとも約5%である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物に投与する血管新生調整剤の量が組織虚血後にEPC分化を増加させるのに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
標準的後肢虚血アッセイ法で測定してEPC分化の増加が少なくとも約20%である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
標準的角膜ミクロポケットアッセイ法で測定して、血管新生調整剤の投与量が新生血管形成を少なくとも約5%を増加させるのに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
血管新生調整剤の投与量が病巣へのEPC骨髄由来EPCの取り込みを増加させるのに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標準的齧歯類骨髄(BM)移植モデルで測定して、EPC骨髄由来EPCの病巣への取り込みの増加が少なくとも約20%である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物が虚血組織を有する、有する疑いのある、または将来的に有すると考えられる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
虚血組織が虚血性脈管疾患と関係する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
虚血組織が四肢、移植片、または器官からの組織を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記組織が循環系または中枢神経系と関係する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記組織が心臓または脳組織である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
血管新生調整剤が少なくとも一つの脈管由来タンパク質と共投与される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
脈管由来タンパク質が内皮細胞分裂誘発物質である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
脈管由来タンパク質が、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF-1)、表皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α及びβ(TGF-α及びTGF-β)、血小板由来内皮増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、アンジオポエチン-1(Ang1)もしくはNOシンターゼ(NOS)、またはそれらの断片である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
タンパク質がVEGF-B、VEGF-C、VEGF-2、VEGF-3、またはそれらの有効な断片である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の有効量を哺乳動物へ投与する段階、及び血管損傷を促進する状態に該哺乳動物を暴露する段階を含み、GM-CSFの量が哺乳動物において重度の血管損傷を予防または軽減するのに十分である、哺乳動物において重度の血管損傷を予防または軽減する方法。
【請求項26】
血管損傷を促進する状態が侵襲性操作または虚血である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
侵襲性操作が手術である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
虚血が、感染、外傷、移植片拒絶、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、四肢虚血、虚血性心筋症または心筋虚血のうちの少なくとも一つに関係する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
血管損傷を促進する状態へ哺乳動物を暴露する少なくとも約12時間前に、GM-CSFを哺乳動物へ投与する、請求項25記載の方法。
【請求項30】
血管損傷を促進する状態へ哺乳動物を暴露する約1日から10日前の間にGM-CSFを哺乳動物へ投与する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
血管損傷を促進する状態への暴露後、GM-CSFを哺乳動物へ投与することをさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
下記の段階を含む、治療が必要な哺乳動物において虚血組織を治療する方法:
a) 哺乳動物から内皮前駆細胞(EPC)を単離する段階、
b) 単離したEPCを、EPCの増殖を誘導するのに十分な量の脈管由来タンパク質と接触させる段階、及び
c) 虚血組織を治療するのに十分な量の増殖したEPCを哺乳動物へ投与する段階。
【請求項33】
EPCが次のマーカー、CD34+、flk-1+、またはtie-2+の少なくとも一つを有する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
虚血組織が損傷血管を有する、請求項32記載の方法。
【請求項35】
血管が侵襲性操作により損傷を受ける、請求項34記載の方法。
【請求項36】
侵襲性操作がバルーン血管形成、またはステントもしくはカテーテルの配置である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
ステントが血管内ステントである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
少なくとも一つの脈管由来タンパク質の共投与をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項39】
脈管由来タンパク質が内皮細胞分裂誘発物質または内皮細胞分裂誘発物質をコードする核酸である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
脈管由来タンパク質が、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF-1)、表皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α及びβ(TGF-α及びTGF-β)、血小板由来内皮増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、アンジオポエチン-1(Ang1)もしくはNOシンターゼ(NOS)、またはそれらの断片である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
タンパク質がVEGF-B、VEGF-C、VEGF-2、VEGF-3、またはそれらの有効な断片である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
内皮前駆細胞(EPC)の検出可能な標識を施された集団と哺乳動物を接触させる段階、及び哺乳動物の組織損傷部位でまたはその近傍で該標識細胞を検出する段階を含む、哺乳動物において組織損傷の存在を検出する方法。
【請求項43】
組織損傷が虚血または虚血性脈管疾患である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
単離された内皮前駆細胞(EPC)を含み、哺乳動物に生理学的に許容されるよう調剤される、哺乳動物において新生血管形成を誘導するための薬学的製品。
【請求項45】
滅菌されており、少なくとも一つの脈管由来タンパク質または該タンパク質をコードする核酸をさらに含む、請求項44記載の薬学的製品。
【請求項46】
単離されたEPC及び選択的に脈管由来タンパク質または該タンパク質をコ−ドする核酸の少なくとも一つを有し、選択的に、薬学的に許容される担体溶液、核酸または分裂誘発物質、EPCの運搬手段、及びキット使用のための説明書をさらに含む、単離された内皮前駆細胞(EPC)の全身性導入のためのキット。
【請求項47】
EPCの運搬手段がステント、カテーテル、またはシリンジである、請求項46記載のキット。
【請求項48】
哺乳動物での内皮前駆細胞(EPC)可動化を促進するのに十分な、少なくとも一つの造血因子の有効量を投与する段階を含む、哺乳動物においてEPC可動化を増強する方法。
【請求項49】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、少なくとも一つの脈管由来タンパク質、またはそれらの有効な断片のうちの一つまたは複数の有効量を哺乳動物へ共投与することをさらに含む、請求項48記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A−D】
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【図4E−J】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C−F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D−G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2010−265301(P2010−265301A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157554(P2010−157554)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2000−535201(P2000−535201)の分割
【原出願日】平成11年3月9日(1999.3.9)
【出願人】(500426113)カリタス セント エリザベス メディカル センター オブ ボストン インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】