血糖値予測装置
【課題】ユーザーに応じた血糖値の予測を行い、血糖値の予測精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】血糖値予測装置は、ユーザーの過去の血糖値の時系列データに対する摂取エネルギー及び消費エネルギーの情報を含むユーザー情報を記憶し、当該ユーザーの実測された血糖値データ、当該ユーザーが摂取した摂取エネルギー情報、当該ユーザーが消費した消費エネルギー情報を取得する。血糖値予測装置は、取得した血糖値データ、摂取エネルギー情報、消費エネルギー情報を用いて予測した血糖値の予測曲線を求めると共に、取得した摂取エネルギー情報や、取得した消費エネルギーに関する運動情報と対応するユーザー情報に基づいて過去の血糖値の変化傾向を解析し、解析結果に応じて予測曲線を変形した予測血糖値曲線を生成する。
【解決手段】血糖値予測装置は、ユーザーの過去の血糖値の時系列データに対する摂取エネルギー及び消費エネルギーの情報を含むユーザー情報を記憶し、当該ユーザーの実測された血糖値データ、当該ユーザーが摂取した摂取エネルギー情報、当該ユーザーが消費した消費エネルギー情報を取得する。血糖値予測装置は、取得した血糖値データ、摂取エネルギー情報、消費エネルギー情報を用いて予測した血糖値の予測曲線を求めると共に、取得した摂取エネルギー情報や、取得した消費エネルギーに関する運動情報と対応するユーザー情報に基づいて過去の血糖値の変化傾向を解析し、解析結果に応じて予測曲線を変形した予測血糖値曲線を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザーの摂取カロリーの履歴データおよびユーザーの消費カロリーの履歴データに基づいて、ユーザーの血糖値を予測する予測モデルを予め作成しておき、当該予測モデルを用いて、ユーザーの摂取カロリーおよびユーザーの消費カロリーから、ユーザーの血糖値を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血糖値の変化はユーザーの体質や病状等に応じて異なるため、ユーザーに応じた血糖値の予測を行う必要がある。
本発明は、ユーザーに応じた血糖値の予測を行い、血糖値の予測精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る血糖値予測装置は、血糖値を予測する対象のユーザーが摂取したエネルギーに関する摂取エネルギー情報を取得する第1取得手段と、前記ユーザーが消費したエネルギーに関する消費エネルギー情報を取得する第2取得手段と、前記ユーザーに関する過去の血糖値の時系列変化を示すデータをユーザー情報として記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記ユーザー情報に基づいて前記ユーザーの過去の血糖値変化を解析する解析手段と、前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギーと前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギーとに基づいて、予測した血糖値の時系列変化を示す予測曲線を算出する算出手段と、前記算出手段で算出された前記予測曲線を前記解析手段の解析結果に応じて変形した予測血糖値曲線を生成する生成手段とを備えることを特徴とする。この構成によれば、ユーザーに応じた血糖値の予測を行うことができ、血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0006】
請求項2に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記血糖値の時系列変化を示すデータと、前記摂取エネルギー情報のエネルギー摂取時期と前記消費エネルギー情報のエネルギー消費時期の少なくとも一方を示すデータとを含み、前記ユーザーの血糖値のデータを取得する第3取得手段を備え、前記解析手段は、前記第1取得手段が取得した摂取エネルギー情報、前記第2取得手段が取得した消費エネルギー情報、前記第3取得手段が取得した血糖値のデータの少なくとも一つに関して予め定められた抽出条件を満たす前記ユーザー情報を抽出し、抽出したユーザー情報に基づいて前記過去の血糖値変化を解析することを特徴とする。この構成によれば、血糖値の変化に影響するユーザー情報に基づいて血糖値を予測することができる。
【0007】
請求項3に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記ユーザーの生体情報を取得する第4取得手段を備え、前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、更に、前記ユーザーの過去の前記生体情報を時系列に記憶し、前記解析手段は、前記記憶手段に記憶されている前記過去の生体情報に基づいて、前記第4取得手段で取得される前記生体情報の変化を予測し、前記生成手段は、前記解析手段による前記生体情報の予測結果を用いて前記予測曲線を変形して前記予測血糖値曲線を生成することを特徴とする。この構成によれば、ユーザーの生体情報を用いることで更に血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0008】
請求項4に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記第1取得手段は、前記ユーザーの食事内容を示す食事情報を前記摂取エネルギー情報として取得し、
前記第2取得手段は、前記ユーザーの活動量を示す運動情報を前記消費エネルギー情報として取得し、前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギー情報、前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギー、前記第3取得手段で取得された前記血糖値のデータ、及び前記第4取得手段で取得された前記生体情報を時系列に順次記憶し、前記解析手段は、前記第1取得手段において取得された食事情報、前記第2取得手段において取得された運動情報、前記第3取得手段において取得された血糖値のデータ、前記第4取得手段において取得された前記生体情報のうちのいずれかの情報と少なくとも対応する前記ユーザー情報を抽出することを前記抽出条件とし、当該抽出条件により抽出された前記ユーザー情報に基づいて前記解析を行なうことを特徴とする。この構成によれば、取得した摂取エネルギー情報、消費エネルギー情報、生体情報、及び血糖値データなどの最近のユーザーに関するユーザー情報を用いて血糖値を予測することができるので、現在のユーザーの状態を考慮した血糖値を予測することができ、血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0009】
請求項5に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記生成手段において生成された前記予測血糖値曲線に基づく情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする。この構成によれば、予測した血糖値に関する情報を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る血糖値予測装置の構成例を示す図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る食事メニュー情報の例を示す図である。(b)は、実施形態に係る運動種別情報の例を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は、実施形態に係るユーザー情報の例を示す図である。
【図4】実施形態に係る血糖値予測装置の機能構成例を示す図である。
【図5】(a)は、実施形態に係る第1予測曲線を説明する図である。(b)は、実施形態に係る第2予測曲線を説明する図である。
【図6】実施形態に係る血糖値予測装置の動作フローを示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、実施形態に係る第1予測曲線を変形する例を説明する図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施形態に係る第2予測曲線を変形する例を説明する図である。
【図9】変形例(1)に係る血糖値予測装置の構成例を示す図である。
【図10】変形例(1)に係るユーザー情報の例を示す図である。
【図11】変形例(1)に係る血糖値予測装置の機能構成例を示す図である。
【図12】(a)及び(b)は、変形例(1)に係る第1予測曲線を変形する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る血糖値予測装置は、ユーザーの手首等に装着可能に構成されており、ユーザーの血糖値を予測し、予測した血糖値(以下、予測血糖値と言う)の変化を時系列に表す予測曲線を出力するものである。以下、本実施形態に係る血糖値予測装置の詳細について説明する。
【0012】
(全体構成)
図1は、実施形態に係る血糖値予測装置10において血糖値の予測を行うための構成を示す図である。
血糖値予測装置10は、制御部110、活動量測定部120、操作部130、記憶部140、表示部150、及び計時部160を備える。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のメモリーを含み、RAMをワーキングエリアとしてROMに予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、制御部110と接続されている各部を制御する。なお、制御部110の詳細については後述する。
【0013】
活動量測定部120は、ユーザーが消費した消費カロリーを求め、求めた消費カロリーを消費エネルギー情報として制御部110へ送出する。活動量測定部120は、例えば、ユーザーの運動状態を検出するための加速度センサーや速度センサー等のセンサーを有し、ユーザーの歩行や運動などの動作によって検出されたセンサーからの出力信号を予め定義された演算式を用いて消費カロリーに変換する。
また、消費カロリーを精度よく求めるため、脈波RR間隔・体温・血圧・睡眠などの生体データを、光学検出、電気信号検出、圧力検出などを用いて検出してもよい
【0014】
操作部130は、例えば、数字や文字等の入力キーを有する操作ボタン群を有し、ユーザーによって操作された入力キーに対応する操作信号を制御部110へ送出する。本実施形態では、特に、操作部130は、測定されたユーザーの血糖値データの入力を受付けると共に、ユーザーが摂取した食事内容を示す食事情報やユーザーが行った運動内容を示す運動情報のデータの入力を受付ける。
【0015】
記憶部140は、不揮発性の記憶媒体で構成され、ユーザーの過去の血糖値に関する情報を含むユーザー情報200や、食事メニュー情報211及び運動種別情報212等のテーブルを記憶している。ここで、食事メニュー情報211、運動種別情報212、ユーザー情報200について順に説明する。
図2(a)は、食事メニュー情報211の一例を示す図である。食事メニュー情報211には、単品の食品名や料理名等の食事メニューと食事メニューに対応する摂取カロリーが記憶されている。食事メニュー情報211は、ユーザーが食事情報を入力する際に参照される。
図2(b)は、運動種別情報212の一例を示す図である。運動種別情報212には、運動種別と運動内容とが記憶されている。運動種別情報212は、ユーザーが運動情報を入力する際に参照される。
【0016】
次に、ユーザー情報200について説明する。ユーザー情報200には、図3(a)に示す血糖値情報200aと、図3(b)に示す行動情報200bとが含まれている。
血糖値情報200aには、例えば、ユーザーが過去に糖尿病に関する教育入院を行ったとき等の、教育入院期間において測定された毎日の血糖値と行動履歴(食事と運動)とが記憶されている。
図3(a)には、その一例として、2010年2月1日と2月2日のユーザーの血糖値情報200aを示している。この図の波形41は、ユーザーの血糖値の時系列変化を表している。また、時間軸における「朝食」、「散歩」「昼食」・・・等は、ユーザーが摂った食事や運動のタイミング等の行動履歴を示している。
図3(b)は、図3(a)の各行動履歴に対応する行動情報200bを示しており、各行動履歴に対応する行動内容(食事内容、運動内容)と、行動内容に対応するカロリー(摂取カロリー、消費カロリー)とが対応づけられている。
例えば、図3(a)の2010年2月1日の朝食の食事内容は「和食A」であり、和食Aの摂取カロリーは「500kcal」であったことを示している。また、図3(a)の2010年2月1日の午前に行った「散歩」の消費カロリーは「50kcal」であったことを示している。
このように、本実施形態では、ユーザー情報200において、ユーザーの過去の血糖値の変化と合わせてユーザーの行動に対する摂取カロリーと消費カロリーが記憶されている。
【0017】
図1に戻り、構成の説明を続ける。表示部150は、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、制御部110の制御の下、食事情報や運動情報の入力画面や血糖値の予測曲線等の各種画像を表示する。計時部160は、所定のクロックをカウントして時刻を計時する。
【0018】
(制御部110の機能構成)
図4は、上述した制御部110の機能を中心とする機能構成図である。制御部110は、摂取エネルギー取得部111、消費エネルギー取得部112、算出部113、解析部114、及び生成部115を含む。
摂取エネルギー取得部111は、ユーザーが入力した血糖値データと、摂取エネルギー情報としてユーザーが入力した食事情報を操作部130から取得し、取得した食事情報と食事メニュー情報211に基づいて、食事情報に対する摂取カロリーを求める。
消費エネルギー取得部112は、ユーザーの消費エネルギー情報として消費カロリーを活動量測定部120から一定時間毎に取得する。算出部113は、摂取エネルギー取得部111で求めた摂取カロリーと予め定められた第1の予測アルゴリズムに基づいて、摂取カロリーに対する血糖値の変化を予測した予測曲線(以下、第1予測曲線と称する)を求める。また、算出部113は、消費エネルギー取得部112で取得された消費カロリーと予め定められた第2の予測アルゴリズムに基づいて、消費カロリーに対する血糖値の変化を予測した予測曲線(以下、第2予測曲線と称する)を求める。
【0019】
ここで、第1予測曲線と第2予測曲線の算出について説明する。図5(a)は、本実施形態における第1予測曲線の一例を示す図である。第1予測曲線は、摂取カロリーと第1の予測アルゴリズムとに基づいて求められる。第1予測曲線は、遅延期間d1、上昇期間d2、平衡期間d3、および下降期間d4を有する。以下、各期間における血糖値曲線を求める第1の予測アルゴリズムの一例を説明する。
【0020】
遅延期間d1は、食事を開始してから、食事開始時における血糖値(基準値)C0を超えるまでの期間を示している。遅延期間d1には、食事の開始時点から予め定められた時間(例えば、15分)が設定されおり、食事開始時の血糖値C0を維持する。なお、食事開始時の血糖値C0は、当該時刻においてユーザーが測定した血糖値を用いるが、測定できなかった場合には、例えば、予め設定されたユーザーの血糖値の標準値等を用いるようにしてもよい。
【0021】
上昇期間d2は、遅延期間d1の終期から始まり、血糖値が上昇を開始して血糖値がピークとなる値(ピーク値)に到達するまでの期間を示している。ピーク値は、傾きS1で血糖値が上昇し、食事開始時の血糖値C0に血糖値の上昇量h11を合算した値である。
血糖値の上昇量h11は、例えば、h11=(摂取カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数α)で求められる。本実施形態では、インスリン分泌量と係数α(>0)は、ユーザーに応じて予め設定された固定値である。なお、インスリン分泌量及び係数は、予め設定された固定値だけなく、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて定められた値や可変値であってもよい。
【0022】
平衡期間d3は、上昇期間d2の終期から血糖値のピーク値を維持する期間であり、本実施形態では、予め定義された固定値が設定されている。なお、例えば、摂取カロリーとユーザーに固有の係数とを乗算した値を、前回の摂取カロリーとの差に応じた係数で除算する等、摂取カロリーと予め定められた演算式とを用いて平衡期間d3を求めるようにしてもよい。
【0023】
下降期間d4は、平衡期間d3の終期から血糖値が傾きS2で下降を開始して基準値に到達するまでの期間を示している。つまり、下降期間d4は、血糖値がピーク値から基準値(食事開始時の血糖値C0)に戻るまでの期間である。
傾きS2は、例えば、S2=(摂取カロリー)×(係数β)で求められる。本実施形態では、係数βは、ユーザーに応じて予め定められた固定値(<0)であるが、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて予め定められた値や可変値であってもよい。
【0024】
次に、第2予測曲線について説明する。図5(b)は、本実施形態における第2予測曲線の一例を示す図である。第2予測曲線は、消費カロリーと第2の予測アルゴリズムとに基づいて求められる。第2予測曲線は、遅延期間e1と下降期間e2を含んで構成されている。以下、各期間における血糖値曲線を求める第2の予測アルゴリズムの一例を説明する。
【0025】
遅延期間e1は、運動を開始してから血糖値が下降し始めるまでの期間を示し、運動開始時の血糖値が維持される期間である。本実施形態では、遅延期間e1には、予め定められた期間(例えば、2分)が設定されている。下降期間e2は、遅延期間e1の終期から傾きS3(単位時間当たりの血糖値の低下量ΔC)で血糖値が下降する期間である。
低下量ΔCは、例えば、ΔC=(消費カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数γ)で求められる。消費カロリーは、活動量測定部120において計測されたユーザーの消費カロリーであり、本実施形態では、ユーザーが運動を意識していない通常の動作時においても活動量測定部120によりユーザーの消費カロリーが算出されて逐次入力される。
【0026】
インスリン分泌量はユーザーに応じて予め設定された固定値であり、係数γ(<0)は、血糖値に応じた可変値であってもよいし、ユーザーの属性に応じて定められた固定値であってもよい。
【0027】
図4に戻り、説明を続ける。解析部114は、摂取エネルギー情報として操作部130から入力された食事情報と対応するユーザー情報200を抽出する抽出条件を用いてユーザー情報200を抽出し、抽出したユーザー情報200を用いて当該食事情報に対するユーザーの血糖値の変化傾向を解析する。
【0028】
具体的には、例えば、入力された食事情報が和食Aの場合、和食Aを摂取したときの血糖値の変化を表す波形として、和食Aを摂取した時点から次の行動(食事又は運動)が行われるまでの期間の波形データが抽出される。図3(a)に示す血糖値情報200aの例では、2010年2月1日の朝食を摂取した時点から次の行動、つまりウォーキングが行われるまでの期間の波形データが抽出される。なお、ウォーキングが行われなければ、朝食を摂取した時点から昼食を摂取するまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、同じ食事内容を摂取したときの血糖値の変化を表す波形を第1モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部114は、抽出した複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該食事情報に対する血糖値の変化傾向を示す第1モデル波形を生成する。
【0029】
また、解析部114は、操作部130から入力された運動情報と対応するユーザー情報200を抽出する抽出条件を用いてユーザー情報200を抽出し、抽出したユーザー情報200を用いて当該運動情報に対するユーザーの血糖値の変化傾向を解析する。本実施形態では、活動量測定部120によりユーザーの消費カロリーが逐次算出されるように構成されているが、算出された消費カロリーがどのような動作を行ったときのものであるかを区別するために、通常の動作以外の運動については、ユーザーが運動を行う前に運動種別を入力する。
【0030】
具体的には、例えば、入力された運動情報がウォーキングである場合には、ウォーキングを行ったときの血糖値の変化を表す波形として、図3(a)に示す血糖値情報200aにおける2010年2月1日のウォーキング開始時から次の行動、つまり軽食を摂取するまでの波形データが抽出される。このようにして、同じ運動を行ったときの血糖値の変化を表す波形を第2モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部114は、抽出された複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該運動情報に対する血糖値の変化傾向を示す第2モデル波形を生成する。
【0031】
生成部115は、算出部113において算出された第1予測曲線及び第2予測曲線を、解析部114の解析結果に基づいて変形し、変形した第1予測曲線と第2予測曲線を統合して予測血糖値曲線を生成する。
具体的には、生成部115は、第1予測曲線の上昇期間d2における血糖値のピーク値までの上昇量h11と、第1モデル波形のピーク値までの上昇量とを比較し、上昇量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の上昇量h11が第1モデル波形の上昇量となるように係数αを調整する。また、生成部115は、第1予測曲線の平衡期間d3と、第1モデル波形において血糖値のピーク値が継続する継続期間とを比較し、平衡期間d3と継続期間との差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の平衡期間d3を継続期間と一致させるように平衡期間d3を設定する。なお、第1モデル波形において、血糖値のピーク値が予め定められた閾値ΔCthの範囲内で下降している期間はピーク値が継続しているものとし、閾値ΔCthの範囲を下回った時点を継続期間の終期と判断する。
【0032】
また、生成部115は、第1予測曲線の下降期間d4においてピーク値から血糖値が低下した低下量(h11)と、第1モデル波形のピーク値から血糖値が低下した低下量とを比較し、低下量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の下降期間d4におけ低下量(h11)が第1モデル波形における低下量となるように、傾きS2の係数βを調整する。
【0033】
生成部115は、第2予測曲線についても第1予測曲線と同様に変形する。具体的には、生成部115は、第2予測曲線の下降期間e2における血糖値の単位時間当たりの低下量ΔCと、第2モデル波形における血糖値の単位時間当たりの低下量とを比較し、低下量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第2予測曲線の低下量ΔCを第2モデル波形における低下量となるように係数γを調整する。
生成部115は、上記のようにして第1予測曲線と第2予測曲線を各々変形し、変形した第1予測曲線と第2予測曲線とを統合した予測血糖値曲線を生成し、生成した予測血糖値曲線を表示部150へ出力する。
なお、本実施形態において、解析結果に基づいて予測曲線を変形する処理とは、解析結果に基づく波形(モデル波形)からユーザーの血糖値変化の特徴量を示すパラメータを抽出し、予測曲線(第1予測曲線、第2予測曲線)においてこの特徴量に対応するパラメータを抽出し、予測曲線のパラメータを解析結果のパラメータとなるように近づける処理である。
本実施形態における制御部110の機能構成は以上の通りである。以下、本実施形態における血糖値予測装置10の動作について説明する。
【0034】
(動作)
図6は、本実施形態における血糖値予測装置10の動作フローを示している。本実施形態では、ユーザーによって毎日朝食前に血糖値が実測される。血糖値予測装置10は、その実測値を用いて、食事情報が入力される毎、ユーザーの消費カロリーが測定される毎に血糖値の予測を行い、予測血糖値曲線を出力する。
ユーザーは、実測した血糖値のデータを血糖値予測装置10の操作部130を介して入力する。制御部110は、操作部130を介して入力された血糖値データを入力時間と受付けると、入力された血糖値データを基準値C0として設定し、血糖値予測処理を開始する(ステップS11)。
【0035】
ユーザーが操作部130を介して食事情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、食事メニュー情報211の食事メニューを表示部150に表示し、ユーザーからの入力を受付ける(ステップS12)。
【0036】
制御部110は、操作部130を介して食事メニューがユーザーによって入力されると(ステップS12:YES)、摂取エネルギー情報として、入力された食事メニューに対応する摂取カロリーを食事メニュー情報211から選択し、選択した摂取カロリーに対する第1予測曲線を第1の予測アルゴリズムを用いて算出する(ステップS13)。制御部110は、ステップS12において入力された食事メニューに対応するユーザー情報200を抽出し、食事情報に対する過去の血糖値の変化傾向を解析して第1モデル波形を生成する(ステップS14)。
【0037】
制御部110は、ステップS13において算出された第1予測曲線における各期間(d1,d2,d3,d4)の血糖値変化と、ステップS14において生成された第1モデル波形の血糖値変化とを比較し、比較結果に応じて第1予測曲線を変形する(ステップS15)。
また、制御部110は、消費エネルギー情報として、活動量測定部120において一定時間毎に計測されるユーザーの消費カロリーを活動量測定部120から受付け(ステップS16)、受付けた消費カロリーに対する第2予測曲線を第2の予測アルゴリズムを用いて算出する(ステップS17)。
【0038】
ユーザーは、操作部130を介して運動情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、運動種別情報212を表示部150に表示し、ユーザーからの入力を受付ける(ステップS18)。制御部110は、運動情報として、操作部130を介して運動種別がユーザーによって入力されると(ステップS18:YES)、入力された運動情報に対応するユーザー情報200を抽出し、運動情報に対する過去の血糖値の変化傾向を解析して第2モデル波形を生成する(ステップS19)。制御部110は、ステップS17において算出された第2予測曲線における期間e2の血糖値変化と、ステップS19において生成された第2モデル波形の血糖値変化とを比較し、比較結果に応じて第2予測曲線を変形する(ステップS20)。
【0039】
制御部110は、第1予測曲線と第2予測曲線とを同一時間軸上で統合させた予測血糖値曲線を生成し、生成した予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示する(ステップS21)。なお、ステップS12において、ユーザーにより食事情報が入力されなかった場合には(ステップS12:NO)、制御部110は、ステップS16の処理を行う。また、ステップS18において、ユーザーにより運動情報が入力されなかった場合には(ステップS18:NO)、制御部110は、ステップS21の処理を行う。
【0040】
このように、本実施形態では、摂取エネルギー情報と消費エネルギー情報とが入力される毎に第1予測曲線、第2予測曲線が算出され、算出された第1予測曲線と第2予測曲線に基づいて予測血糖値曲線が生成される。なお、ユーザーによって入力された血糖値データと食事情報と運動情報は、ユーザーの過去の血糖値に関する情報として制御部110により記憶部140のユーザー情報200として記憶されるようにしてもよい。
【0041】
(動作具体例)
次に、上述した動作フローに従って血糖値予測装置10の動作例を説明する。ユーザーは、操作部130を介して、朝食摂取前に血糖値を測定した血糖値データ「130」を入力し(ステップS11)、食事情報入力画面を表示させる操作を行い、食事情報として「洋食C」を入力すると(ステップS12)、制御部110は、「洋食C」に対応する摂取カロリーとして、食事メニュー情報211から「500kcal」を選択する。制御部110は、入力された血糖値データ「130」を基準値C0として設定し、摂取カロリー「500(kcal)」と第1の予測アルゴリズムを用い、図7(a)に示す第1予測曲線を算出する(ステップS13)。
【0042】
続いて、制御部110は、図3(a)に示す血糖値情報200aから食事情報「洋食C」を含む波形を抽出する。図3(a)の血糖値情報200aの例では、洋食Cが摂取された2010年2月2日の朝食時点から次の行動「水中ウォーキング」が開始されるまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、制御部110により、食事情報「洋食C」が摂取されたときの波形データが血糖値情報200aから抽出され、抽出された波形データを平均化した図7(b)に示す第1モデル波形が生成される(ステップS14)。
【0043】
制御部110は、図7(a)に示す第1予測曲線の各期間の血糖値変化と図7(b)に示す第1モデル波形の血糖値変化とを比較し、第1予測曲線を変形して図7(c)に示す第1予測曲線を生成する(ステップS15)。
図7(a)(b)の例では、第1予測曲線の上昇期間d2における血糖値の上昇量h11と、第1モデル波形の血糖値の上昇量h21(C4−C1)とが比較される。上昇量の差分が閾値以上である場合には、制御部110により、第1予測曲線における上昇量h11がh21(C4−C1)となるように、第1の予測アルゴリズムにおける係数αが調整される。
【0044】
また、制御部110は、図7(b)の第1モデル波形の血糖値がピークとなるt2以降において、血糖値がピーク値から閾値ΔCth範囲内のt3までの継続期間d31(t3−t2)と、第1予測曲線における平衡期間d3とを比較する。継続期間d31と平衡期間d3との差分が閾値以上である場合には、制御部110により、平衡期間d3として継続期間d31が設定される。
【0045】
また、制御部110は、図7(a)の第1予測曲線の下降期間d4における血糖値の低下量(h12)と、図7(b)の第1モデル波形の血糖値の低下量h22(C4−C2)とを比較する。低下量の差分が閾値以上である場合には、制御部110により、低下量h12を第1モデル波形における低下量h22となるように、第1の予測アルゴリズムにおける係数βが調整される。
【0046】
また、制御部110は、ユーザーの消費エネルギー情報として、活動量測定部120から一定時間毎にユーザーの消費カロリーを受付けると(ステップS16)、受付けた消費カロリーと第2の予測アルゴリズムとを用いて図8(a)に示す第2予測曲線を算出する(ステップS17)。例えば、ユーザーは、運動「ウォーキング」を行う際には、当該運動開始時において、操作部130を介して、運動情報入力画面を表示部150に表示する操作を行い、運動種別「3」を入力する(ステップS18:YES)。
【0047】
制御部110は、入力された運動種別「3」の運動内容「ウォーキング」に対応するユーザー情報200を抽出する。図3(a)の血糖値情報200aの例では、「ウォーキング」が行われた2010年2月1日のウォーキング開始時点から次の行動である「軽食」が摂取されるまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、制御部110により、「ウォーキング」が行われたときの波形データが血糖値情報200aから抽出され、抽出された波形データを平均化した図8(b)に示す第2モデル波形が生成される(ステップS19)。
【0048】
制御部110は、図8(a)に示す第2予測曲線の期間e2の血糖値変化と図8(b)に示す第2モデル波形の血糖値変化とを比較し、第2予測曲線を変形して図8(c)に示す第2予測曲線を生成する(ステップS20)。
図8(a)(b)の例では、制御部110により、第2予測曲線の下降期間e2における血糖値の低下量ΔCと、第2モデル波形の血糖値の低下量ΔC1とが比較される。第2モデル波形の低下量ΔC1は、時間t1〜t2の間に運動開始時の血糖値からh31だけ血糖値が低下したときの単位時間当たりの低下量である。単位時間当たりの低下量の差分が閾値以上である場合には、制御部110により、第2予測曲線におけるΔCがΔC1となるように、第2の予測アルゴリズムにおける係数γが調整される。
【0049】
制御部110は、ユーザーによって食事情報が入力される毎に当該食事情報に応じて変形した第1予測曲線と、活動量測定部120において測定された消費エネルギー情報に基づいて生成された第2予測曲線、又は、ユーザーによって入力された運動情報に応じて変形した第2予測曲線を統合した予測血糖値曲線を逐次生成し、生成した予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示する(ステップS21)。
【0050】
このように、本実施形態では、過去のユーザーの血糖値と行動内容の時系列データを含むユーザー情報200を用いて、ユーザーが摂取した食事内容やユーザーが行った運動に対する血糖値の変化傾向を解析し、その解析結果を予め定義された血糖値の予測アルゴリズム(第1の予測アルゴリズム、第2の予測アルゴリズム)に反映させることができる。そのため、血糖値の実測回数を増やすことなく、ユーザーの体質等の特性に応じた血糖値の予測を行うことができ、血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0051】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0052】
(1)上述した血糖値予測装置10は、上述した実施形態の構成に限らず、図9に示すように構成してもよい。図9は、本変形例に係る血糖値予測装置11の構成を示す図である。血糖値予測装置11は、ユーザーの生体情報として脈拍を測定する脈拍測定部170を備えている点で実施形態に係る血糖値予測装置10の構成と異なり、また、図10に示すように、本変形例に係る血糖値情報201aには、血糖値と同様、ユーザーの過去に測定された脈拍の時系列データが記憶されている。
脈拍測定部170は、赤外線光を照射する赤外線光照射部を有し、赤外線光照射部によってユーザーの血管に赤外線光を照射し、血管で反射された赤外線光の強度、または血管を透過した赤外線光の強度を、CCDなどの撮像素子によって検出する。脈拍測定部170は、撮像素子からの出力信号を予め定義された脈拍を算出するための演算式を用いて脈拍に変換する。本変形例では、ユーザーの手首に脈拍測定部170の赤外線光照射部が接するように構成されている。本変形例では、脈拍測定部170は、血糖値予測装置11に内蔵されている例を説明するが、血糖値予測装置11の外部に設けられていてもよい。この場合には、血糖値予測装置11及び脈拍測定部170を有する脈拍測定装置との間で有線又は無線通信を行うように構成し、脈拍測定装置から血糖値予測装置11に対して脈拍データを送信するようにする。
【0053】
図11は、本変形例に係る血糖値予測装置11の制御部110を中心とする機能構成図を示している。本変形例では、解析部114において、食事内容に応じて食事を摂取した後の脈拍の変化傾向をユーザー情報200の脈拍データから解析し、解析結果に基づいて、脈拍測定部170において測定された脈拍データの変化を予測する。生成部115は、解析部114における脈拍データの予測結果に応じて第1予測曲線の上昇期間d2における傾きs1を調整する。
【0054】
具体的には、ある食事メニューが操作部130を介して入力された場合、解析部114は、当該食事メニューの摂取時から次の行動がなされるまでの期間における脈拍データを血糖値情報201aから抽出する。解析部114は、抽出した脈拍データを平均化する等して例えば図12(a)の実線51で示すような推移で脈拍が変化する波形を得た場合において、脈拍測定部170において当該食事メニューの摂取時に測定された脈拍がp1であるとき、破線52で示すように、測定された脈拍p1が実線51と同様の傾きで変化すると予測する。生成部115は、食事を摂取時の脈拍p1と解析部114において予測された脈拍p2との変化量が予め定めた閾値以上である場合には、図12(b)に示すように、第1予測曲線の上昇期間d2において、変化量と閾値との差分に応じて定められた傾きS12で血糖値が上昇するように第1の予測アルゴリズムにおける係数αを調整する。
【0055】
本変形例では、解析部114において、過去のユーザーの脈拍データに基づいて、実測された生体情報の変化を予測し、生成部115において、その予測結果に応じて第1の予測アルゴリズムの係数αを調整する例であるが、生成部115は、脈拍データの予測結果に応じて、係数α以外の第1の予測アルゴリズムにおけるパラメータを変形させてもよいし、第2の予測アルゴリズムにおけるパラメータを変形させてもよい。また、生成部115は、解析部114において解析されたユーザーの脈拍の変化傾向と血糖値の変化傾向とに応じて、第1の予測アルゴリズムや第2の予測アルゴリズムのパラメータを変形させてもよい。
【0056】
このように、ユーザーの過去の食事や運動に基づく血糖値の変化傾向だけでなく、過去の生体情報の変化傾向を解析した結果を血糖値の予測アルゴリズムに反映させることで、ユーザーの体質等の特性が考慮された血糖値が予測され、血糖値の予測精度を向上させることができる。なお、本変形例では、生体情報として脈拍を例に挙げたが、例えば、脈波、脈波R−R間隔心拍、体温、心電図、血圧、睡眠時間、生体インピーダンス等を検出又は外部から有線又は無線通信により取得するようにしてもよい。
【0057】
(2)また、上述した変形例(1)では、ユーザーの生体情報の変化を第1予測曲線の変形に用いる例を説明したが、ユーザーの上記生体情報をユーザー情報200の抽出条件に用いてもよい。例えば、解析部114は、血糖値予測装置10において測定又は外部より取得されたユーザーの生体情報の状態と同様の状態が含まれている期間のユーザー情報200を抽出するようにしてもよい。また、ユーザー情報200の抽出条件にユーザーが入力した血糖値データを用いてもよい。例えば、解析部114は、ユーザーが入力した朝食前の血糖値と同じ状態のときのユーザー情報200を抽出するようにしてもよいし、血糖値データと上記生体情報とが同じ状態のときのユーザー情報200を抽出するようにしてもよい。要するに、予測時のユーザーの状態(体調)と同様の状態における過去の血糖値や行動情報が抽出されるように抽出条件が設定されていればよい。
なお、ユーザーによって入力された血糖値データ、食事情報、運動情報、及び取得した生体情報は、ユーザーの血糖値の時系列変化に関するユーザー情報200として制御部110により記憶部140に記憶されるように構成してもよい。
【0058】
(3)また、上述した実施形態では、予め定義された血糖値の予測アルゴリズムを用いて血糖値の予測曲線を生成する例であったが、非線形回帰分析や時系列解析等の手法を用い、これらの手法により推定されたモデルにユーザーによって入力された食事情報や運動情報等のデータを当てはめて血糖値を予測するように構成してもよい。
【0059】
(4)また、上述した実施形態では、ユーザー情報200として、ユーザーの過去の教育入院期間において測定された血糖値と行動履歴が記憶される例であったが、ユーザーの血糖値に関する時系列データであればこれ以外のデータであってもよい。例えば、自宅で測定されたユーザーの血糖値と行動履歴の時系列データでもよいし、ユーザーと同様の特性(病状や体質等)を有する他の糖尿病患者の血糖値と行動履歴の時系列データであってもよい。
【0060】
(5)また、上述した実施形態では、活動量測定部120によってユーザーの消費カロリーを逐次測定する例であったが、変形例(1)のように脈拍測定部170を備える場合には、消費エネルギー取得部112は、脈拍データを消費カロリーに変換する予め定義された演算式を用いて脈拍測定部170の測定結果を消費カロリーに変換するようにしてもよい。
【0061】
(6)また、上述した実施形態では、ユーザーにより食事情報が逐次入力されることにより摂取エネルギー情報を取得する例を説明したが、摂取エネルギー情報を取得する方法はこれに限定されない。例えば、摂取エネルギー取得部111において、食事内容を撮影した画像データと撮影時刻を含む撮影データを外部から有線又は無線通信により取得し、取得した撮影データの画像データを画像解析して、予め定義された食事内容と対応する画像データが含まれている場合には、その食事内容に応じた摂取カロリーを摂取エネルギー情報として用いるようにしてもよい。
【0062】
(7)また、上述した実施形態では、摂取エネルギー情報はユーザーが食事を摂取する際に入力され、消費エネルギー情報は活動量測定部120において一定時間毎に計測される例であったが、摂取エネルギー取得部111と消費エネルギー取得部112が摂取エネルギー情報と消費エネルギー情報を各々取得するタイミングはこれに限定されない。例えば、現時点より過去に行った運動情報や摂取した食事情報を時間情報と合わせてユーザーから入力を受付けるようにしてもよいし、将来行う予定の運動情報や摂取予定の食事情報を時間情報と合わせてユーザーから入力を受付けるようにしてもよい。
【0063】
なお、摂取エネルギー取得部111や消費エネルギー取得部112において過去の運動情報や食事情報が取得された場合には、当該過去の時点に遡って、当該食事情報と運動情報に基づいて第1予測曲線及び第2予測曲線を再計算すると共に、当該食事情報と運動情報に基づいて血糖値の変化傾向を再解析して予測血糖値曲線を生成しなおすようにしてもよい。また、摂取エネルギー取得部111や消費エネルギー取得部112において将来の運動情報や食事情報が取得された場合には、実施形態と同様に、算出部113において当該将来の運動情報と食事情報に基づく第1予測曲線及び第2予測曲線を算出し、生成部115において予測血糖値曲線(A)を生成する。また、現時点と将来の時点の間の予測血糖値曲線(B)として、例えば、生成部115において、現時点より過去の予測血糖値曲線を平均化した予測血糖値曲線を生成し、現時点における予測血糖値曲線、予測血糖値曲線(B)、予測血糖値曲線(A)を順次結線するようにしてもよい。
【0064】
(8)また、上述した実施形態では、予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示する例であったが、予測血糖値曲線に基づく情報として、例えば、予測血糖値曲線に基づく現在の予測血糖値が予め定められた目標値を超えている場合には、摂取エネルギーが多い又は消費エネルギーが少ないことを報知してもよいし、予測血糖値が目標値に到達するために必要な運動量や食事制限等の情報を報知するようにしてもよい。また、予測血糖値曲線で示される予測血糖値に応じて予め設定された将来予想されるユーザーの状態を示す画像を表示部150に表示する等して報知してもよい。
【0065】
(9)また、上述した実施形態では、摂取カロリーを用いた第1の予測アルゴリズムの例を説明したが、食事内容に含まれる糖質量、GI値、脂質量等を用いた予測アルゴリズムを適用してもよい。この場合には、食事内容に対応する糖質量、GI値、脂質量等の成分を予め定義したテーブルを記憶部140に記憶するように構成してもよいし、ユーザーによって食事情報が入力された際に、摂取エネルギー取得部111において、当該食事情報に対応する成分データを有線又は無線通信により外部から取得するように構成してもよい。
【0066】
(10)また、上述した実施形態では、運動種別を患者が操作部130を介して入力する例を用いたが、例えば、活動量測定部単独、もしくは加速度センサーを用いることで、血糖値予測装置が運動種別を判定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10,11…血糖値予測装置、110…制御部、111…摂取エネルギー取得部、112…消費エネルギー取得部、113…算出部、114…解析部、115…生成部、120…活動量測定部、130…操作部、140…記憶部、150…表示部、160…計時部、170…脈拍測定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザーの摂取カロリーの履歴データおよびユーザーの消費カロリーの履歴データに基づいて、ユーザーの血糖値を予測する予測モデルを予め作成しておき、当該予測モデルを用いて、ユーザーの摂取カロリーおよびユーザーの消費カロリーから、ユーザーの血糖値を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血糖値の変化はユーザーの体質や病状等に応じて異なるため、ユーザーに応じた血糖値の予測を行う必要がある。
本発明は、ユーザーに応じた血糖値の予測を行い、血糖値の予測精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る血糖値予測装置は、血糖値を予測する対象のユーザーが摂取したエネルギーに関する摂取エネルギー情報を取得する第1取得手段と、前記ユーザーが消費したエネルギーに関する消費エネルギー情報を取得する第2取得手段と、前記ユーザーに関する過去の血糖値の時系列変化を示すデータをユーザー情報として記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記ユーザー情報に基づいて前記ユーザーの過去の血糖値変化を解析する解析手段と、前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギーと前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギーとに基づいて、予測した血糖値の時系列変化を示す予測曲線を算出する算出手段と、前記算出手段で算出された前記予測曲線を前記解析手段の解析結果に応じて変形した予測血糖値曲線を生成する生成手段とを備えることを特徴とする。この構成によれば、ユーザーに応じた血糖値の予測を行うことができ、血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0006】
請求項2に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記血糖値の時系列変化を示すデータと、前記摂取エネルギー情報のエネルギー摂取時期と前記消費エネルギー情報のエネルギー消費時期の少なくとも一方を示すデータとを含み、前記ユーザーの血糖値のデータを取得する第3取得手段を備え、前記解析手段は、前記第1取得手段が取得した摂取エネルギー情報、前記第2取得手段が取得した消費エネルギー情報、前記第3取得手段が取得した血糖値のデータの少なくとも一つに関して予め定められた抽出条件を満たす前記ユーザー情報を抽出し、抽出したユーザー情報に基づいて前記過去の血糖値変化を解析することを特徴とする。この構成によれば、血糖値の変化に影響するユーザー情報に基づいて血糖値を予測することができる。
【0007】
請求項3に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記ユーザーの生体情報を取得する第4取得手段を備え、前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、更に、前記ユーザーの過去の前記生体情報を時系列に記憶し、前記解析手段は、前記記憶手段に記憶されている前記過去の生体情報に基づいて、前記第4取得手段で取得される前記生体情報の変化を予測し、前記生成手段は、前記解析手段による前記生体情報の予測結果を用いて前記予測曲線を変形して前記予測血糖値曲線を生成することを特徴とする。この構成によれば、ユーザーの生体情報を用いることで更に血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0008】
請求項4に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記第1取得手段は、前記ユーザーの食事内容を示す食事情報を前記摂取エネルギー情報として取得し、
前記第2取得手段は、前記ユーザーの活動量を示す運動情報を前記消費エネルギー情報として取得し、前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギー情報、前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギー、前記第3取得手段で取得された前記血糖値のデータ、及び前記第4取得手段で取得された前記生体情報を時系列に順次記憶し、前記解析手段は、前記第1取得手段において取得された食事情報、前記第2取得手段において取得された運動情報、前記第3取得手段において取得された血糖値のデータ、前記第4取得手段において取得された前記生体情報のうちのいずれかの情報と少なくとも対応する前記ユーザー情報を抽出することを前記抽出条件とし、当該抽出条件により抽出された前記ユーザー情報に基づいて前記解析を行なうことを特徴とする。この構成によれば、取得した摂取エネルギー情報、消費エネルギー情報、生体情報、及び血糖値データなどの最近のユーザーに関するユーザー情報を用いて血糖値を予測することができるので、現在のユーザーの状態を考慮した血糖値を予測することができ、血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0009】
請求項5に係る血糖値予測システムは、上記血糖値予測装置において、前記生成手段において生成された前記予測血糖値曲線に基づく情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする。この構成によれば、予測した血糖値に関する情報を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る血糖値予測装置の構成例を示す図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る食事メニュー情報の例を示す図である。(b)は、実施形態に係る運動種別情報の例を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は、実施形態に係るユーザー情報の例を示す図である。
【図4】実施形態に係る血糖値予測装置の機能構成例を示す図である。
【図5】(a)は、実施形態に係る第1予測曲線を説明する図である。(b)は、実施形態に係る第2予測曲線を説明する図である。
【図6】実施形態に係る血糖値予測装置の動作フローを示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、実施形態に係る第1予測曲線を変形する例を説明する図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施形態に係る第2予測曲線を変形する例を説明する図である。
【図9】変形例(1)に係る血糖値予測装置の構成例を示す図である。
【図10】変形例(1)に係るユーザー情報の例を示す図である。
【図11】変形例(1)に係る血糖値予測装置の機能構成例を示す図である。
【図12】(a)及び(b)は、変形例(1)に係る第1予測曲線を変形する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る血糖値予測装置は、ユーザーの手首等に装着可能に構成されており、ユーザーの血糖値を予測し、予測した血糖値(以下、予測血糖値と言う)の変化を時系列に表す予測曲線を出力するものである。以下、本実施形態に係る血糖値予測装置の詳細について説明する。
【0012】
(全体構成)
図1は、実施形態に係る血糖値予測装置10において血糖値の予測を行うための構成を示す図である。
血糖値予測装置10は、制御部110、活動量測定部120、操作部130、記憶部140、表示部150、及び計時部160を備える。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のメモリーを含み、RAMをワーキングエリアとしてROMに予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、制御部110と接続されている各部を制御する。なお、制御部110の詳細については後述する。
【0013】
活動量測定部120は、ユーザーが消費した消費カロリーを求め、求めた消費カロリーを消費エネルギー情報として制御部110へ送出する。活動量測定部120は、例えば、ユーザーの運動状態を検出するための加速度センサーや速度センサー等のセンサーを有し、ユーザーの歩行や運動などの動作によって検出されたセンサーからの出力信号を予め定義された演算式を用いて消費カロリーに変換する。
また、消費カロリーを精度よく求めるため、脈波RR間隔・体温・血圧・睡眠などの生体データを、光学検出、電気信号検出、圧力検出などを用いて検出してもよい
【0014】
操作部130は、例えば、数字や文字等の入力キーを有する操作ボタン群を有し、ユーザーによって操作された入力キーに対応する操作信号を制御部110へ送出する。本実施形態では、特に、操作部130は、測定されたユーザーの血糖値データの入力を受付けると共に、ユーザーが摂取した食事内容を示す食事情報やユーザーが行った運動内容を示す運動情報のデータの入力を受付ける。
【0015】
記憶部140は、不揮発性の記憶媒体で構成され、ユーザーの過去の血糖値に関する情報を含むユーザー情報200や、食事メニュー情報211及び運動種別情報212等のテーブルを記憶している。ここで、食事メニュー情報211、運動種別情報212、ユーザー情報200について順に説明する。
図2(a)は、食事メニュー情報211の一例を示す図である。食事メニュー情報211には、単品の食品名や料理名等の食事メニューと食事メニューに対応する摂取カロリーが記憶されている。食事メニュー情報211は、ユーザーが食事情報を入力する際に参照される。
図2(b)は、運動種別情報212の一例を示す図である。運動種別情報212には、運動種別と運動内容とが記憶されている。運動種別情報212は、ユーザーが運動情報を入力する際に参照される。
【0016】
次に、ユーザー情報200について説明する。ユーザー情報200には、図3(a)に示す血糖値情報200aと、図3(b)に示す行動情報200bとが含まれている。
血糖値情報200aには、例えば、ユーザーが過去に糖尿病に関する教育入院を行ったとき等の、教育入院期間において測定された毎日の血糖値と行動履歴(食事と運動)とが記憶されている。
図3(a)には、その一例として、2010年2月1日と2月2日のユーザーの血糖値情報200aを示している。この図の波形41は、ユーザーの血糖値の時系列変化を表している。また、時間軸における「朝食」、「散歩」「昼食」・・・等は、ユーザーが摂った食事や運動のタイミング等の行動履歴を示している。
図3(b)は、図3(a)の各行動履歴に対応する行動情報200bを示しており、各行動履歴に対応する行動内容(食事内容、運動内容)と、行動内容に対応するカロリー(摂取カロリー、消費カロリー)とが対応づけられている。
例えば、図3(a)の2010年2月1日の朝食の食事内容は「和食A」であり、和食Aの摂取カロリーは「500kcal」であったことを示している。また、図3(a)の2010年2月1日の午前に行った「散歩」の消費カロリーは「50kcal」であったことを示している。
このように、本実施形態では、ユーザー情報200において、ユーザーの過去の血糖値の変化と合わせてユーザーの行動に対する摂取カロリーと消費カロリーが記憶されている。
【0017】
図1に戻り、構成の説明を続ける。表示部150は、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、制御部110の制御の下、食事情報や運動情報の入力画面や血糖値の予測曲線等の各種画像を表示する。計時部160は、所定のクロックをカウントして時刻を計時する。
【0018】
(制御部110の機能構成)
図4は、上述した制御部110の機能を中心とする機能構成図である。制御部110は、摂取エネルギー取得部111、消費エネルギー取得部112、算出部113、解析部114、及び生成部115を含む。
摂取エネルギー取得部111は、ユーザーが入力した血糖値データと、摂取エネルギー情報としてユーザーが入力した食事情報を操作部130から取得し、取得した食事情報と食事メニュー情報211に基づいて、食事情報に対する摂取カロリーを求める。
消費エネルギー取得部112は、ユーザーの消費エネルギー情報として消費カロリーを活動量測定部120から一定時間毎に取得する。算出部113は、摂取エネルギー取得部111で求めた摂取カロリーと予め定められた第1の予測アルゴリズムに基づいて、摂取カロリーに対する血糖値の変化を予測した予測曲線(以下、第1予測曲線と称する)を求める。また、算出部113は、消費エネルギー取得部112で取得された消費カロリーと予め定められた第2の予測アルゴリズムに基づいて、消費カロリーに対する血糖値の変化を予測した予測曲線(以下、第2予測曲線と称する)を求める。
【0019】
ここで、第1予測曲線と第2予測曲線の算出について説明する。図5(a)は、本実施形態における第1予測曲線の一例を示す図である。第1予測曲線は、摂取カロリーと第1の予測アルゴリズムとに基づいて求められる。第1予測曲線は、遅延期間d1、上昇期間d2、平衡期間d3、および下降期間d4を有する。以下、各期間における血糖値曲線を求める第1の予測アルゴリズムの一例を説明する。
【0020】
遅延期間d1は、食事を開始してから、食事開始時における血糖値(基準値)C0を超えるまでの期間を示している。遅延期間d1には、食事の開始時点から予め定められた時間(例えば、15分)が設定されおり、食事開始時の血糖値C0を維持する。なお、食事開始時の血糖値C0は、当該時刻においてユーザーが測定した血糖値を用いるが、測定できなかった場合には、例えば、予め設定されたユーザーの血糖値の標準値等を用いるようにしてもよい。
【0021】
上昇期間d2は、遅延期間d1の終期から始まり、血糖値が上昇を開始して血糖値がピークとなる値(ピーク値)に到達するまでの期間を示している。ピーク値は、傾きS1で血糖値が上昇し、食事開始時の血糖値C0に血糖値の上昇量h11を合算した値である。
血糖値の上昇量h11は、例えば、h11=(摂取カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数α)で求められる。本実施形態では、インスリン分泌量と係数α(>0)は、ユーザーに応じて予め設定された固定値である。なお、インスリン分泌量及び係数は、予め設定された固定値だけなく、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて定められた値や可変値であってもよい。
【0022】
平衡期間d3は、上昇期間d2の終期から血糖値のピーク値を維持する期間であり、本実施形態では、予め定義された固定値が設定されている。なお、例えば、摂取カロリーとユーザーに固有の係数とを乗算した値を、前回の摂取カロリーとの差に応じた係数で除算する等、摂取カロリーと予め定められた演算式とを用いて平衡期間d3を求めるようにしてもよい。
【0023】
下降期間d4は、平衡期間d3の終期から血糖値が傾きS2で下降を開始して基準値に到達するまでの期間を示している。つまり、下降期間d4は、血糖値がピーク値から基準値(食事開始時の血糖値C0)に戻るまでの期間である。
傾きS2は、例えば、S2=(摂取カロリー)×(係数β)で求められる。本実施形態では、係数βは、ユーザーに応じて予め定められた固定値(<0)であるが、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて予め定められた値や可変値であってもよい。
【0024】
次に、第2予測曲線について説明する。図5(b)は、本実施形態における第2予測曲線の一例を示す図である。第2予測曲線は、消費カロリーと第2の予測アルゴリズムとに基づいて求められる。第2予測曲線は、遅延期間e1と下降期間e2を含んで構成されている。以下、各期間における血糖値曲線を求める第2の予測アルゴリズムの一例を説明する。
【0025】
遅延期間e1は、運動を開始してから血糖値が下降し始めるまでの期間を示し、運動開始時の血糖値が維持される期間である。本実施形態では、遅延期間e1には、予め定められた期間(例えば、2分)が設定されている。下降期間e2は、遅延期間e1の終期から傾きS3(単位時間当たりの血糖値の低下量ΔC)で血糖値が下降する期間である。
低下量ΔCは、例えば、ΔC=(消費カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数γ)で求められる。消費カロリーは、活動量測定部120において計測されたユーザーの消費カロリーであり、本実施形態では、ユーザーが運動を意識していない通常の動作時においても活動量測定部120によりユーザーの消費カロリーが算出されて逐次入力される。
【0026】
インスリン分泌量はユーザーに応じて予め設定された固定値であり、係数γ(<0)は、血糖値に応じた可変値であってもよいし、ユーザーの属性に応じて定められた固定値であってもよい。
【0027】
図4に戻り、説明を続ける。解析部114は、摂取エネルギー情報として操作部130から入力された食事情報と対応するユーザー情報200を抽出する抽出条件を用いてユーザー情報200を抽出し、抽出したユーザー情報200を用いて当該食事情報に対するユーザーの血糖値の変化傾向を解析する。
【0028】
具体的には、例えば、入力された食事情報が和食Aの場合、和食Aを摂取したときの血糖値の変化を表す波形として、和食Aを摂取した時点から次の行動(食事又は運動)が行われるまでの期間の波形データが抽出される。図3(a)に示す血糖値情報200aの例では、2010年2月1日の朝食を摂取した時点から次の行動、つまりウォーキングが行われるまでの期間の波形データが抽出される。なお、ウォーキングが行われなければ、朝食を摂取した時点から昼食を摂取するまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、同じ食事内容を摂取したときの血糖値の変化を表す波形を第1モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部114は、抽出した複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該食事情報に対する血糖値の変化傾向を示す第1モデル波形を生成する。
【0029】
また、解析部114は、操作部130から入力された運動情報と対応するユーザー情報200を抽出する抽出条件を用いてユーザー情報200を抽出し、抽出したユーザー情報200を用いて当該運動情報に対するユーザーの血糖値の変化傾向を解析する。本実施形態では、活動量測定部120によりユーザーの消費カロリーが逐次算出されるように構成されているが、算出された消費カロリーがどのような動作を行ったときのものであるかを区別するために、通常の動作以外の運動については、ユーザーが運動を行う前に運動種別を入力する。
【0030】
具体的には、例えば、入力された運動情報がウォーキングである場合には、ウォーキングを行ったときの血糖値の変化を表す波形として、図3(a)に示す血糖値情報200aにおける2010年2月1日のウォーキング開始時から次の行動、つまり軽食を摂取するまでの波形データが抽出される。このようにして、同じ運動を行ったときの血糖値の変化を表す波形を第2モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部114は、抽出された複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該運動情報に対する血糖値の変化傾向を示す第2モデル波形を生成する。
【0031】
生成部115は、算出部113において算出された第1予測曲線及び第2予測曲線を、解析部114の解析結果に基づいて変形し、変形した第1予測曲線と第2予測曲線を統合して予測血糖値曲線を生成する。
具体的には、生成部115は、第1予測曲線の上昇期間d2における血糖値のピーク値までの上昇量h11と、第1モデル波形のピーク値までの上昇量とを比較し、上昇量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の上昇量h11が第1モデル波形の上昇量となるように係数αを調整する。また、生成部115は、第1予測曲線の平衡期間d3と、第1モデル波形において血糖値のピーク値が継続する継続期間とを比較し、平衡期間d3と継続期間との差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の平衡期間d3を継続期間と一致させるように平衡期間d3を設定する。なお、第1モデル波形において、血糖値のピーク値が予め定められた閾値ΔCthの範囲内で下降している期間はピーク値が継続しているものとし、閾値ΔCthの範囲を下回った時点を継続期間の終期と判断する。
【0032】
また、生成部115は、第1予測曲線の下降期間d4においてピーク値から血糖値が低下した低下量(h11)と、第1モデル波形のピーク値から血糖値が低下した低下量とを比較し、低下量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の下降期間d4におけ低下量(h11)が第1モデル波形における低下量となるように、傾きS2の係数βを調整する。
【0033】
生成部115は、第2予測曲線についても第1予測曲線と同様に変形する。具体的には、生成部115は、第2予測曲線の下降期間e2における血糖値の単位時間当たりの低下量ΔCと、第2モデル波形における血糖値の単位時間当たりの低下量とを比較し、低下量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第2予測曲線の低下量ΔCを第2モデル波形における低下量となるように係数γを調整する。
生成部115は、上記のようにして第1予測曲線と第2予測曲線を各々変形し、変形した第1予測曲線と第2予測曲線とを統合した予測血糖値曲線を生成し、生成した予測血糖値曲線を表示部150へ出力する。
なお、本実施形態において、解析結果に基づいて予測曲線を変形する処理とは、解析結果に基づく波形(モデル波形)からユーザーの血糖値変化の特徴量を示すパラメータを抽出し、予測曲線(第1予測曲線、第2予測曲線)においてこの特徴量に対応するパラメータを抽出し、予測曲線のパラメータを解析結果のパラメータとなるように近づける処理である。
本実施形態における制御部110の機能構成は以上の通りである。以下、本実施形態における血糖値予測装置10の動作について説明する。
【0034】
(動作)
図6は、本実施形態における血糖値予測装置10の動作フローを示している。本実施形態では、ユーザーによって毎日朝食前に血糖値が実測される。血糖値予測装置10は、その実測値を用いて、食事情報が入力される毎、ユーザーの消費カロリーが測定される毎に血糖値の予測を行い、予測血糖値曲線を出力する。
ユーザーは、実測した血糖値のデータを血糖値予測装置10の操作部130を介して入力する。制御部110は、操作部130を介して入力された血糖値データを入力時間と受付けると、入力された血糖値データを基準値C0として設定し、血糖値予測処理を開始する(ステップS11)。
【0035】
ユーザーが操作部130を介して食事情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、食事メニュー情報211の食事メニューを表示部150に表示し、ユーザーからの入力を受付ける(ステップS12)。
【0036】
制御部110は、操作部130を介して食事メニューがユーザーによって入力されると(ステップS12:YES)、摂取エネルギー情報として、入力された食事メニューに対応する摂取カロリーを食事メニュー情報211から選択し、選択した摂取カロリーに対する第1予測曲線を第1の予測アルゴリズムを用いて算出する(ステップS13)。制御部110は、ステップS12において入力された食事メニューに対応するユーザー情報200を抽出し、食事情報に対する過去の血糖値の変化傾向を解析して第1モデル波形を生成する(ステップS14)。
【0037】
制御部110は、ステップS13において算出された第1予測曲線における各期間(d1,d2,d3,d4)の血糖値変化と、ステップS14において生成された第1モデル波形の血糖値変化とを比較し、比較結果に応じて第1予測曲線を変形する(ステップS15)。
また、制御部110は、消費エネルギー情報として、活動量測定部120において一定時間毎に計測されるユーザーの消費カロリーを活動量測定部120から受付け(ステップS16)、受付けた消費カロリーに対する第2予測曲線を第2の予測アルゴリズムを用いて算出する(ステップS17)。
【0038】
ユーザーは、操作部130を介して運動情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、運動種別情報212を表示部150に表示し、ユーザーからの入力を受付ける(ステップS18)。制御部110は、運動情報として、操作部130を介して運動種別がユーザーによって入力されると(ステップS18:YES)、入力された運動情報に対応するユーザー情報200を抽出し、運動情報に対する過去の血糖値の変化傾向を解析して第2モデル波形を生成する(ステップS19)。制御部110は、ステップS17において算出された第2予測曲線における期間e2の血糖値変化と、ステップS19において生成された第2モデル波形の血糖値変化とを比較し、比較結果に応じて第2予測曲線を変形する(ステップS20)。
【0039】
制御部110は、第1予測曲線と第2予測曲線とを同一時間軸上で統合させた予測血糖値曲線を生成し、生成した予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示する(ステップS21)。なお、ステップS12において、ユーザーにより食事情報が入力されなかった場合には(ステップS12:NO)、制御部110は、ステップS16の処理を行う。また、ステップS18において、ユーザーにより運動情報が入力されなかった場合には(ステップS18:NO)、制御部110は、ステップS21の処理を行う。
【0040】
このように、本実施形態では、摂取エネルギー情報と消費エネルギー情報とが入力される毎に第1予測曲線、第2予測曲線が算出され、算出された第1予測曲線と第2予測曲線に基づいて予測血糖値曲線が生成される。なお、ユーザーによって入力された血糖値データと食事情報と運動情報は、ユーザーの過去の血糖値に関する情報として制御部110により記憶部140のユーザー情報200として記憶されるようにしてもよい。
【0041】
(動作具体例)
次に、上述した動作フローに従って血糖値予測装置10の動作例を説明する。ユーザーは、操作部130を介して、朝食摂取前に血糖値を測定した血糖値データ「130」を入力し(ステップS11)、食事情報入力画面を表示させる操作を行い、食事情報として「洋食C」を入力すると(ステップS12)、制御部110は、「洋食C」に対応する摂取カロリーとして、食事メニュー情報211から「500kcal」を選択する。制御部110は、入力された血糖値データ「130」を基準値C0として設定し、摂取カロリー「500(kcal)」と第1の予測アルゴリズムを用い、図7(a)に示す第1予測曲線を算出する(ステップS13)。
【0042】
続いて、制御部110は、図3(a)に示す血糖値情報200aから食事情報「洋食C」を含む波形を抽出する。図3(a)の血糖値情報200aの例では、洋食Cが摂取された2010年2月2日の朝食時点から次の行動「水中ウォーキング」が開始されるまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、制御部110により、食事情報「洋食C」が摂取されたときの波形データが血糖値情報200aから抽出され、抽出された波形データを平均化した図7(b)に示す第1モデル波形が生成される(ステップS14)。
【0043】
制御部110は、図7(a)に示す第1予測曲線の各期間の血糖値変化と図7(b)に示す第1モデル波形の血糖値変化とを比較し、第1予測曲線を変形して図7(c)に示す第1予測曲線を生成する(ステップS15)。
図7(a)(b)の例では、第1予測曲線の上昇期間d2における血糖値の上昇量h11と、第1モデル波形の血糖値の上昇量h21(C4−C1)とが比較される。上昇量の差分が閾値以上である場合には、制御部110により、第1予測曲線における上昇量h11がh21(C4−C1)となるように、第1の予測アルゴリズムにおける係数αが調整される。
【0044】
また、制御部110は、図7(b)の第1モデル波形の血糖値がピークとなるt2以降において、血糖値がピーク値から閾値ΔCth範囲内のt3までの継続期間d31(t3−t2)と、第1予測曲線における平衡期間d3とを比較する。継続期間d31と平衡期間d3との差分が閾値以上である場合には、制御部110により、平衡期間d3として継続期間d31が設定される。
【0045】
また、制御部110は、図7(a)の第1予測曲線の下降期間d4における血糖値の低下量(h12)と、図7(b)の第1モデル波形の血糖値の低下量h22(C4−C2)とを比較する。低下量の差分が閾値以上である場合には、制御部110により、低下量h12を第1モデル波形における低下量h22となるように、第1の予測アルゴリズムにおける係数βが調整される。
【0046】
また、制御部110は、ユーザーの消費エネルギー情報として、活動量測定部120から一定時間毎にユーザーの消費カロリーを受付けると(ステップS16)、受付けた消費カロリーと第2の予測アルゴリズムとを用いて図8(a)に示す第2予測曲線を算出する(ステップS17)。例えば、ユーザーは、運動「ウォーキング」を行う際には、当該運動開始時において、操作部130を介して、運動情報入力画面を表示部150に表示する操作を行い、運動種別「3」を入力する(ステップS18:YES)。
【0047】
制御部110は、入力された運動種別「3」の運動内容「ウォーキング」に対応するユーザー情報200を抽出する。図3(a)の血糖値情報200aの例では、「ウォーキング」が行われた2010年2月1日のウォーキング開始時点から次の行動である「軽食」が摂取されるまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、制御部110により、「ウォーキング」が行われたときの波形データが血糖値情報200aから抽出され、抽出された波形データを平均化した図8(b)に示す第2モデル波形が生成される(ステップS19)。
【0048】
制御部110は、図8(a)に示す第2予測曲線の期間e2の血糖値変化と図8(b)に示す第2モデル波形の血糖値変化とを比較し、第2予測曲線を変形して図8(c)に示す第2予測曲線を生成する(ステップS20)。
図8(a)(b)の例では、制御部110により、第2予測曲線の下降期間e2における血糖値の低下量ΔCと、第2モデル波形の血糖値の低下量ΔC1とが比較される。第2モデル波形の低下量ΔC1は、時間t1〜t2の間に運動開始時の血糖値からh31だけ血糖値が低下したときの単位時間当たりの低下量である。単位時間当たりの低下量の差分が閾値以上である場合には、制御部110により、第2予測曲線におけるΔCがΔC1となるように、第2の予測アルゴリズムにおける係数γが調整される。
【0049】
制御部110は、ユーザーによって食事情報が入力される毎に当該食事情報に応じて変形した第1予測曲線と、活動量測定部120において測定された消費エネルギー情報に基づいて生成された第2予測曲線、又は、ユーザーによって入力された運動情報に応じて変形した第2予測曲線を統合した予測血糖値曲線を逐次生成し、生成した予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示する(ステップS21)。
【0050】
このように、本実施形態では、過去のユーザーの血糖値と行動内容の時系列データを含むユーザー情報200を用いて、ユーザーが摂取した食事内容やユーザーが行った運動に対する血糖値の変化傾向を解析し、その解析結果を予め定義された血糖値の予測アルゴリズム(第1の予測アルゴリズム、第2の予測アルゴリズム)に反映させることができる。そのため、血糖値の実測回数を増やすことなく、ユーザーの体質等の特性に応じた血糖値の予測を行うことができ、血糖値の予測精度を向上させることができる。
【0051】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0052】
(1)上述した血糖値予測装置10は、上述した実施形態の構成に限らず、図9に示すように構成してもよい。図9は、本変形例に係る血糖値予測装置11の構成を示す図である。血糖値予測装置11は、ユーザーの生体情報として脈拍を測定する脈拍測定部170を備えている点で実施形態に係る血糖値予測装置10の構成と異なり、また、図10に示すように、本変形例に係る血糖値情報201aには、血糖値と同様、ユーザーの過去に測定された脈拍の時系列データが記憶されている。
脈拍測定部170は、赤外線光を照射する赤外線光照射部を有し、赤外線光照射部によってユーザーの血管に赤外線光を照射し、血管で反射された赤外線光の強度、または血管を透過した赤外線光の強度を、CCDなどの撮像素子によって検出する。脈拍測定部170は、撮像素子からの出力信号を予め定義された脈拍を算出するための演算式を用いて脈拍に変換する。本変形例では、ユーザーの手首に脈拍測定部170の赤外線光照射部が接するように構成されている。本変形例では、脈拍測定部170は、血糖値予測装置11に内蔵されている例を説明するが、血糖値予測装置11の外部に設けられていてもよい。この場合には、血糖値予測装置11及び脈拍測定部170を有する脈拍測定装置との間で有線又は無線通信を行うように構成し、脈拍測定装置から血糖値予測装置11に対して脈拍データを送信するようにする。
【0053】
図11は、本変形例に係る血糖値予測装置11の制御部110を中心とする機能構成図を示している。本変形例では、解析部114において、食事内容に応じて食事を摂取した後の脈拍の変化傾向をユーザー情報200の脈拍データから解析し、解析結果に基づいて、脈拍測定部170において測定された脈拍データの変化を予測する。生成部115は、解析部114における脈拍データの予測結果に応じて第1予測曲線の上昇期間d2における傾きs1を調整する。
【0054】
具体的には、ある食事メニューが操作部130を介して入力された場合、解析部114は、当該食事メニューの摂取時から次の行動がなされるまでの期間における脈拍データを血糖値情報201aから抽出する。解析部114は、抽出した脈拍データを平均化する等して例えば図12(a)の実線51で示すような推移で脈拍が変化する波形を得た場合において、脈拍測定部170において当該食事メニューの摂取時に測定された脈拍がp1であるとき、破線52で示すように、測定された脈拍p1が実線51と同様の傾きで変化すると予測する。生成部115は、食事を摂取時の脈拍p1と解析部114において予測された脈拍p2との変化量が予め定めた閾値以上である場合には、図12(b)に示すように、第1予測曲線の上昇期間d2において、変化量と閾値との差分に応じて定められた傾きS12で血糖値が上昇するように第1の予測アルゴリズムにおける係数αを調整する。
【0055】
本変形例では、解析部114において、過去のユーザーの脈拍データに基づいて、実測された生体情報の変化を予測し、生成部115において、その予測結果に応じて第1の予測アルゴリズムの係数αを調整する例であるが、生成部115は、脈拍データの予測結果に応じて、係数α以外の第1の予測アルゴリズムにおけるパラメータを変形させてもよいし、第2の予測アルゴリズムにおけるパラメータを変形させてもよい。また、生成部115は、解析部114において解析されたユーザーの脈拍の変化傾向と血糖値の変化傾向とに応じて、第1の予測アルゴリズムや第2の予測アルゴリズムのパラメータを変形させてもよい。
【0056】
このように、ユーザーの過去の食事や運動に基づく血糖値の変化傾向だけでなく、過去の生体情報の変化傾向を解析した結果を血糖値の予測アルゴリズムに反映させることで、ユーザーの体質等の特性が考慮された血糖値が予測され、血糖値の予測精度を向上させることができる。なお、本変形例では、生体情報として脈拍を例に挙げたが、例えば、脈波、脈波R−R間隔心拍、体温、心電図、血圧、睡眠時間、生体インピーダンス等を検出又は外部から有線又は無線通信により取得するようにしてもよい。
【0057】
(2)また、上述した変形例(1)では、ユーザーの生体情報の変化を第1予測曲線の変形に用いる例を説明したが、ユーザーの上記生体情報をユーザー情報200の抽出条件に用いてもよい。例えば、解析部114は、血糖値予測装置10において測定又は外部より取得されたユーザーの生体情報の状態と同様の状態が含まれている期間のユーザー情報200を抽出するようにしてもよい。また、ユーザー情報200の抽出条件にユーザーが入力した血糖値データを用いてもよい。例えば、解析部114は、ユーザーが入力した朝食前の血糖値と同じ状態のときのユーザー情報200を抽出するようにしてもよいし、血糖値データと上記生体情報とが同じ状態のときのユーザー情報200を抽出するようにしてもよい。要するに、予測時のユーザーの状態(体調)と同様の状態における過去の血糖値や行動情報が抽出されるように抽出条件が設定されていればよい。
なお、ユーザーによって入力された血糖値データ、食事情報、運動情報、及び取得した生体情報は、ユーザーの血糖値の時系列変化に関するユーザー情報200として制御部110により記憶部140に記憶されるように構成してもよい。
【0058】
(3)また、上述した実施形態では、予め定義された血糖値の予測アルゴリズムを用いて血糖値の予測曲線を生成する例であったが、非線形回帰分析や時系列解析等の手法を用い、これらの手法により推定されたモデルにユーザーによって入力された食事情報や運動情報等のデータを当てはめて血糖値を予測するように構成してもよい。
【0059】
(4)また、上述した実施形態では、ユーザー情報200として、ユーザーの過去の教育入院期間において測定された血糖値と行動履歴が記憶される例であったが、ユーザーの血糖値に関する時系列データであればこれ以外のデータであってもよい。例えば、自宅で測定されたユーザーの血糖値と行動履歴の時系列データでもよいし、ユーザーと同様の特性(病状や体質等)を有する他の糖尿病患者の血糖値と行動履歴の時系列データであってもよい。
【0060】
(5)また、上述した実施形態では、活動量測定部120によってユーザーの消費カロリーを逐次測定する例であったが、変形例(1)のように脈拍測定部170を備える場合には、消費エネルギー取得部112は、脈拍データを消費カロリーに変換する予め定義された演算式を用いて脈拍測定部170の測定結果を消費カロリーに変換するようにしてもよい。
【0061】
(6)また、上述した実施形態では、ユーザーにより食事情報が逐次入力されることにより摂取エネルギー情報を取得する例を説明したが、摂取エネルギー情報を取得する方法はこれに限定されない。例えば、摂取エネルギー取得部111において、食事内容を撮影した画像データと撮影時刻を含む撮影データを外部から有線又は無線通信により取得し、取得した撮影データの画像データを画像解析して、予め定義された食事内容と対応する画像データが含まれている場合には、その食事内容に応じた摂取カロリーを摂取エネルギー情報として用いるようにしてもよい。
【0062】
(7)また、上述した実施形態では、摂取エネルギー情報はユーザーが食事を摂取する際に入力され、消費エネルギー情報は活動量測定部120において一定時間毎に計測される例であったが、摂取エネルギー取得部111と消費エネルギー取得部112が摂取エネルギー情報と消費エネルギー情報を各々取得するタイミングはこれに限定されない。例えば、現時点より過去に行った運動情報や摂取した食事情報を時間情報と合わせてユーザーから入力を受付けるようにしてもよいし、将来行う予定の運動情報や摂取予定の食事情報を時間情報と合わせてユーザーから入力を受付けるようにしてもよい。
【0063】
なお、摂取エネルギー取得部111や消費エネルギー取得部112において過去の運動情報や食事情報が取得された場合には、当該過去の時点に遡って、当該食事情報と運動情報に基づいて第1予測曲線及び第2予測曲線を再計算すると共に、当該食事情報と運動情報に基づいて血糖値の変化傾向を再解析して予測血糖値曲線を生成しなおすようにしてもよい。また、摂取エネルギー取得部111や消費エネルギー取得部112において将来の運動情報や食事情報が取得された場合には、実施形態と同様に、算出部113において当該将来の運動情報と食事情報に基づく第1予測曲線及び第2予測曲線を算出し、生成部115において予測血糖値曲線(A)を生成する。また、現時点と将来の時点の間の予測血糖値曲線(B)として、例えば、生成部115において、現時点より過去の予測血糖値曲線を平均化した予測血糖値曲線を生成し、現時点における予測血糖値曲線、予測血糖値曲線(B)、予測血糖値曲線(A)を順次結線するようにしてもよい。
【0064】
(8)また、上述した実施形態では、予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示する例であったが、予測血糖値曲線に基づく情報として、例えば、予測血糖値曲線に基づく現在の予測血糖値が予め定められた目標値を超えている場合には、摂取エネルギーが多い又は消費エネルギーが少ないことを報知してもよいし、予測血糖値が目標値に到達するために必要な運動量や食事制限等の情報を報知するようにしてもよい。また、予測血糖値曲線で示される予測血糖値に応じて予め設定された将来予想されるユーザーの状態を示す画像を表示部150に表示する等して報知してもよい。
【0065】
(9)また、上述した実施形態では、摂取カロリーを用いた第1の予測アルゴリズムの例を説明したが、食事内容に含まれる糖質量、GI値、脂質量等を用いた予測アルゴリズムを適用してもよい。この場合には、食事内容に対応する糖質量、GI値、脂質量等の成分を予め定義したテーブルを記憶部140に記憶するように構成してもよいし、ユーザーによって食事情報が入力された際に、摂取エネルギー取得部111において、当該食事情報に対応する成分データを有線又は無線通信により外部から取得するように構成してもよい。
【0066】
(10)また、上述した実施形態では、運動種別を患者が操作部130を介して入力する例を用いたが、例えば、活動量測定部単独、もしくは加速度センサーを用いることで、血糖値予測装置が運動種別を判定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10,11…血糖値予測装置、110…制御部、111…摂取エネルギー取得部、112…消費エネルギー取得部、113…算出部、114…解析部、115…生成部、120…活動量測定部、130…操作部、140…記憶部、150…表示部、160…計時部、170…脈拍測定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖値を予測する対象のユーザーが摂取したエネルギーに関する摂取エネルギー情報を取得する第1取得手段と、
前記ユーザーが消費したエネルギーに関する消費エネルギー情報を取得する第2取得手段と、
前記ユーザーに関する過去の血糖値の時系列変化を示すデータをユーザー情報として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記ユーザー情報に基づいて前記ユーザーの過去の血糖値変化を解析する解析手段と、
前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギーと前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギーとに基づいて、予測した血糖値の時系列変化を示す予測曲線を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された前記予測曲線を前記解析手段の解析結果に応じて変形した予測血糖値曲線を生成する生成手段と
を備えることを特徴とする血糖値予測装置。
【請求項2】
前記ユーザー情報は、前記血糖値の時系列変化を示すデータと、前記摂取エネルギー情報のエネルギー摂取時期と前記消費エネルギー情報のエネルギー消費時期の少なくとも一方を示すデータとを含み、
前記ユーザーの血糖値のデータを取得する第3取得手段を備え、
前記解析手段は、前記第1取得手段が取得した摂取エネルギー情報、前記第2取得手段が取得した消費エネルギー情報、前記第3取得手段が取得した血糖値のデータの少なくとも一つに関して予め定められた抽出条件を満たす前記ユーザー情報を抽出し、抽出したユーザー情報に基づいて前記過去の血糖値変化を解析することを特徴とする請求項1に記載の血糖値予測装置。
【請求項3】
前記ユーザーの生体情報を取得する第4取得手段を備え、
前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、更に、前記ユーザーの過去の前記生体情報を時系列に記憶し、
前記解析手段は、前記記憶手段に記憶されている前記過去の生体情報に基づいて、前記第4取得手段で取得される前記生体情報の変化を予測し、
前記生成手段は、前記解析手段による前記生体情報の予測結果を用いて前記予測曲線を変形して前記予測血糖値曲線を生成することを特徴とする請求項2に記載の血糖値予測装置。
【請求項4】
前記第1取得手段は、前記ユーザーの食事内容を示す食事情報を前記摂取エネルギー情報として取得し、
前記第2取得手段は、前記ユーザーの活動量を示す運動情報を前記消費エネルギー情報として取得し、
前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギー情報、前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギー、前記第3取得手段で取得された前記血糖値のデータ、及び前記第4取得手段で取得された前記生体情報を時系列に順次記憶し、
前記解析手段は、前記第1取得手段において取得された食事情報、前記第2取得手段において取得された運動情報、前記第3取得手段において取得された血糖値のデータ、前記第4取得手段において取得された前記生体情報のうちのいずれかの情報と少なくとも対応する前記ユーザー情報を抽出することを前記抽出条件とし、当該抽出条件により抽出された前記ユーザー情報に基づいて前記解析を行なうことを特徴とする請求項3に記載の血糖値予測装置。
【請求項5】
前記生成手段において生成された前記予測血糖値曲線に基づく情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の血糖値予測装置。
【請求項1】
血糖値を予測する対象のユーザーが摂取したエネルギーに関する摂取エネルギー情報を取得する第1取得手段と、
前記ユーザーが消費したエネルギーに関する消費エネルギー情報を取得する第2取得手段と、
前記ユーザーに関する過去の血糖値の時系列変化を示すデータをユーザー情報として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記ユーザー情報に基づいて前記ユーザーの過去の血糖値変化を解析する解析手段と、
前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギーと前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギーとに基づいて、予測した血糖値の時系列変化を示す予測曲線を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された前記予測曲線を前記解析手段の解析結果に応じて変形した予測血糖値曲線を生成する生成手段と
を備えることを特徴とする血糖値予測装置。
【請求項2】
前記ユーザー情報は、前記血糖値の時系列変化を示すデータと、前記摂取エネルギー情報のエネルギー摂取時期と前記消費エネルギー情報のエネルギー消費時期の少なくとも一方を示すデータとを含み、
前記ユーザーの血糖値のデータを取得する第3取得手段を備え、
前記解析手段は、前記第1取得手段が取得した摂取エネルギー情報、前記第2取得手段が取得した消費エネルギー情報、前記第3取得手段が取得した血糖値のデータの少なくとも一つに関して予め定められた抽出条件を満たす前記ユーザー情報を抽出し、抽出したユーザー情報に基づいて前記過去の血糖値変化を解析することを特徴とする請求項1に記載の血糖値予測装置。
【請求項3】
前記ユーザーの生体情報を取得する第4取得手段を備え、
前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、更に、前記ユーザーの過去の前記生体情報を時系列に記憶し、
前記解析手段は、前記記憶手段に記憶されている前記過去の生体情報に基づいて、前記第4取得手段で取得される前記生体情報の変化を予測し、
前記生成手段は、前記解析手段による前記生体情報の予測結果を用いて前記予測曲線を変形して前記予測血糖値曲線を生成することを特徴とする請求項2に記載の血糖値予測装置。
【請求項4】
前記第1取得手段は、前記ユーザーの食事内容を示す食事情報を前記摂取エネルギー情報として取得し、
前記第2取得手段は、前記ユーザーの活動量を示す運動情報を前記消費エネルギー情報として取得し、
前記記憶手段は、前記ユーザー情報として、前記第1取得手段で取得された前記摂取エネルギー情報、前記第2取得手段で取得された前記消費エネルギー、前記第3取得手段で取得された前記血糖値のデータ、及び前記第4取得手段で取得された前記生体情報を時系列に順次記憶し、
前記解析手段は、前記第1取得手段において取得された食事情報、前記第2取得手段において取得された運動情報、前記第3取得手段において取得された血糖値のデータ、前記第4取得手段において取得された前記生体情報のうちのいずれかの情報と少なくとも対応する前記ユーザー情報を抽出することを前記抽出条件とし、当該抽出条件により抽出された前記ユーザー情報に基づいて前記解析を行なうことを特徴とする請求項3に記載の血糖値予測装置。
【請求項5】
前記生成手段において生成された前記予測血糖値曲線に基づく情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の血糖値予測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−24476(P2012−24476A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168432(P2010−168432)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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