説明

血糖値測定装置及び測定データ管理装置

【課題】複数の患者に対する血糖値計測を迅速、確実に実施することが可能でありながら、緊急事態にも速やかに対応できる新規な血糖値測定装置及び測定データ管理装置を提供する。
【解決手段】患者識別手段と、血糖値測定手段と、計時手段と、表示手段と、患者識別情報と患者データテーブルを照合し、患者識別情報を発見しなかった場合には、血糖測定を禁止する通常測定モードと、前記識別手段による前記患者識別情報の取得なしに前記血糖測定の実施を許す緊急測定モードとを有する制御手段とを備えることを特徴とする血糖測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値測定装置及び測定データ管理装置に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、病院内で複数の患者を対象として、血糖値の測定とインスリンの投与を、安全且つ確実に実行でき、緊急時にも速やかに対応できる、血糖測定装置および測定データ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、糖尿病は膵臓のインスリン分泌異常に起因する。そのため、糖尿病患者は食事前に血糖値を測定し、その値に応じてインスリンを投与する必要がある。
【0003】
従来、家庭内で患者或はその家族が血糖値を簡便に測定するために、出願人は、小型化した血糖値測定装置(以下「血糖計」)を開発し、製造販売している。出願人による血糖計の特許出願を、特許文献1及び2として示す。
【0004】
【特許文献1】特開平10−19888号公報
【特許文献2】特開平10−318928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの患者が入院している病院では、患者の取り違えやインスリン重複投与等の事故を未然に防止するための、安全面の工夫が必要であり、更に、多くの患者の血糖値測定処理とインスリン投与処置をそれぞれまとめて行うような、医療作業効率を考慮した機能が必要であり、現在検討が進められている。
今、医療現場向けに、安全面や作業効率等の観点から機能を洗練させた、新たな血糖計が求められ、 医療事故を防止することを目的として、血糖計を病院で使う場合、血糖値測定を行う看護師や、それぞれの患者を確認するため、個人識別情報を確認して、患者の血糖値を測定することが検討されている。
しかしながら、患者の急変時や、地震などの天災時など、看護師などの使用者の識別情報や患者の識別情報の入力がなければ測定できない装置では、迅速に対応することができない。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決し、複数の患者に対する血糖値計測を迅速、確実に実施することが可能でありながら、緊急事態にも速やかに対応できる新規な血糖値測定装置及び測定データ管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の血糖値測定装置及び測定データ管理装置は、以下(1)から(5)の構成を有する。
【0008】
(1) 患者を識別する患者識別情報を取得する識別手段と、
前記患者から採取した血液から血糖値を測定する血糖値測定手段と、
前記血糖値測定手段によって血糖値が得られた日時情報を得る計時手段と、
前記患者の患者識別情報および、該患者の血糖値および、該血糖値が得られた日時情報を表示する表示手段と、
前記患者識別情報を記憶する患者データテーブルと、
前記識別手段により取得した前記患者識別情報と前記患者データテーブルを照合し、前記患者データテーブルに前記患者識別情報を発見した場合には、前記血糖値測定手段による血糖値の測定を許通常測定モードと、前記識別手段による前記患者識別情報の取得なしに前記血糖測定の実施を許す緊急測定モードとを有する制御手段と、
前記通常測定モードから前記緊急測定モードへ移るための移行手段と
を備えることを特徴とする血糖測定装置。
これにより、迅速、確実な通常測定を行いながら、緊急時にも即座に対応することができる。
【0009】
(2) 前記緊急測定モードである場合に、緊急測定モードであること又は通常測定モードではないことを報知する報知手段を有することを特徴とする前記(1)に記載の血糖測定装置。
この構成により、測定時にモードを誤ることを防止することができる。
【0010】
(3) 前記測定データテーブルに記録されている一つの前記血糖値について、前記患者識別情報、前記血糖値、前記血糖値が得られた日時情報および前記モード情報を、記録されていない項目は空情報として一列の送信データとし、前記測定データテーブルに記録されている全ての前記血糖値についての送信データを外部機器に送信する通信手段を備えることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の血糖測定装置。
この構成により、緊急測定を行ったデータについても測定データ管理装置で管理することを可能とする。
【0011】
(4) 前記制御手段が、 前記通常測定モードにおいては、選択された前記患者識別情報に関連付けされた前記血糖値および前記血糖値が得られた日時情報を前記表示手段に表示し、 前記緊急測定モードにおいては、前記モード情報を有する前記血糖値および前記血糖値が得られた日時情報を前記表示手段に表示し、さらに前記患者識別情報を前記識別手段が取得した場合に、前記血糖値と前記血糖値が得られた日時情報を前記患者識別情報と関連付けて前記測定データテーブルに記録する履歴モードを有することを特徴とする前記(1)ないし(3)に記載の血糖測定装置。
この構成により、緊急測定後、時間に余裕ができたときなど、測定した血糖値を事後的に患者識別情報と関連付けすることができ、後のデータ管理や患者の生活指導などに容易に生かすことができる。
【0012】
(5) 前記通信手段と通信するホスト通信手段と、 前記患者識別情報に関連付けて前記血糖値および前記血糖値が得られた日時情報を記録する患者履歴テーブルと、 前記患者識別情報が空情報である前記一列の送信データを記録する患者測定一時ファイルと、
前記一列の送信データから前記患者識別情報を抽出し、抽出された前記患者識別情報と前記患者履歴テーブルを照合し、前記患者履歴テーブルに前記患者識別情報を発見した場合には、前記血糖値と前記血糖値が得られた日時情報を前記患者識別情報と関連付けて前記患者履歴テーブルに記録し、前記患者履歴テーブルに前記患者識別情報を発見しなかった場合には、患者測定一時ファイルへ記録するホスト制御手段を有することを特徴とする前記(3)また(4)に記載の血糖測定装置のデータを管理する測定データ管理装置。
この構成により、血糖測定装置で測定した血糖値をデータ管理することが容易となる。
(6) 患者を識別する患者識別情報を取得する識別手段と、 前記患者の血糖値を測定する血糖値測定手段と、 前記血糖値測定手段によって血糖値が得られた日時情報を得る計時手段と、 前記患者の患者識別情報および、該患者の血糖値および、該血糖値が得られた日時情報を表示する表示手段と、 前記患者識別情報を記憶する患者データテーブルと、 前記識別手段により取得した前記患者識別情報と前記患者データテーブルを照合し、前記患者データテーブルに前記患者識別情報を発見した場合には、前記血糖値測定手段による血糖値の測定を許し、前記患者データテーブルに前記患者識別情報を発見しなかった場合には、血糖測定を禁止する通常測定モードと、前記識別手段による前記患者識別
情報の取得なしに前記血糖測定の実施を許す緊急測定モードとを有する制御手段と、前記通常測定モードから前記緊急測定モードへ移るための移行手段と、前記血糖値が得られた後、前記制御手段により、前記通常測定モードの場合には、前記血糖値と前記血糖値が得られた日時情報が前記患者識別情報と関連付けて記録され、前記緊急測定モードの場合には、前記血糖値と前記血糖値が得られた日時情報が前記緊急測定モードを示すモード情報と関連付けて記録される測定データテーブルと、を備えることを特徴とする血糖測定装置。
これにより、迅速、確実な通常測定を行いながら、緊急時にも即座に対応することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、複数の患者に対する血糖値計測を迅速、確実に実施することが可能でありながら、緊急事態にも速やかに対応できる新規な血糖値測定装置及び測定データ管理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図14を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態の例である、血糖測定装置および測定データ管理装置からなる血糖値計測システムの概略図である。
血糖値計測システム101は、血糖計102(血糖測定装置)と、測定データ管理装置104で構成される。
血糖計102は、リチウムイオンバッテリで動作する携帯型機器であり、概ね大人の手に収まる大きさである。
医師や看護師等が患者の血糖値を測定する場合には、通常、血糖計102を病院内の病室に持ち込み、患者の耳たぶや指、腕などからごく微量の採血を行い、血糖値を測定する。
血糖計102は、血糖値の測定を行った後、測定データ管理装置104へデータを送受信することができる。 パソコンよりなる測定データ管理装置104は、血糖計102とUSBケーブル105にて接続されている。
測定データ管理装置104には周知のOSが稼動している。更にOS上では、パソコンに測定データ管理装置104としての機能を実現するプログラムが稼動している。
尚、血糖計102は、例えば被験者の指を穿刺して血液を採取し、血糖値を測定するための測定装置であり、血糖値測定部202は、採取した患者の血液中の血糖値を測定するものである。なお、血糖値の測定方式は、血液を採取して試薬と反応させて測定する方式、非侵襲で体液から測定する方式などいずれでもよい。血液(体液)の採取には、専用の穿刺具を別に準備し、例えば指先、上腕部、腹部、大腿部、耳たぶのような生体表面に穿刺される。
【0016】
血糖計102をUSBケーブル105を介して接続し測定データ管理装置104との通信を実行する。その際、血糖計102内に測定データテーブル112が存在していれば、この測定データテーブル112に記憶されている測定データが測定データ管理装置104へ送信される。
また、測定データ管理装置104から所定のコマンドを送信することで、測定データ管理装置104は血糖計102から図示しない血糖計設定データをダウンロードすることができる。
更に、測定データ管理装置104は、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116を血糖計102へアップロードすることができる。
尚、血糖計102と外部との通信は、これに限らず、有線又は無線の通信システムを用いることができ、血糖計の記憶部に記憶された測定結果などを、インターネット等の情報通信ネットワークを介して、血糖値などを管理する病院内、健康管理支援施設等のサーバ等へ出力するものでもよい。
【0017】
[血糖計102]
図2は、血糖計102の外観図である。
なお、説明の便宜上、図2に示す、表示部(LCD)が設けられている面を本体表面、図2左側を先端方向、右側を後端方向と称する。
図2に示すように、血糖計102の先端には、グルコースに特異的に呈色する色素を含有する試験紙により血糖値を測定する血糖値測定部202が設けられている。血糖値測定部202は血糖測定チップ212(以下「測定チップ」)が着脱可能な形状になっている。
血糖計102は操作部と表示部を有する。表示部として血糖計102の本体表面に液晶表示画面であるLCD203が設けられており、操作部として、LCD203の下方に電源ボタン204、開始ボタン205が設けられ、LCD203の後端方向には、緊急ボタン206、履歴ボタン207が設けられている。
さらに、 血糖計102の後端側側面には、患者情報を識別する識別手段として、バーコードリーダ208が設けられている。前記識別手段として、バーコードリーダだけでなく、テンキーやICチップリーダなども用いることができる。また、図示されていない部分には、USB接続ポートが設けられている。血糖計102の裏面にはバッテリ入れ替え用のバッテリ蓋と赤外線通信窓が設けられている。
操作部は、押しボタン、テンキーなど、血糖計を操作するためのものであればいずれでもよい。また、表示部は、測定した血糖値や、操作者へのメッセージなどを表示するためのものであり、液晶ディスプレイが好適に使用される。
【0018】
電源スイッチ204は血糖計102の電源オン/オフのためのスイッチである。
開始ボタン205は、電源スイッチ204がオンとされた後、患者識別情報を確認して血糖値測定を行う通常モードを選択するボタンである。また、患者識別情報としてバーコードを使用する場合に、前記バーコードを読み込むためにバーコードリーダ208を稼動させるバーコードリーダ稼動ボタンを兼ねている。
緊急ボタン206は、電源スイッチ204がオンとされた後、患者識別情報を確認せずに血糖値測定を行う緊急モードを選択するボタンである。
履歴ボタン207は、血糖計102の測定データテーブルに記憶されている測定データを表示するボタンである。
バーコードリーダ208は、周知の赤色レーザダイオードと受光素子の組み合わせよりなるバーコード読取装置である。なお、受光素子に代えてCCD或はCMOS等のイメージセンサを用いることもできる。
【0019】
血糖計102の基本的な血糖測定の仕組みは、従来技術と同様である。以下、概略を簡単に説明する。
血糖値測定部202に測定チップ212を取り付け、測定対象者の血液を測定チップ212に吸引させる。この測定チップ212には、ポリエーテルサルホン等の多孔質膜等でできた試験紙が内蔵されている。そして、測定チップ212に吸引された血液は、試験紙に到達すると、試験紙に含まれている試薬と反応して、発色する。この発色反応には数秒から10数秒前後の時間を要するが、この反応は、周囲の気温によって影響を受ける。
所定の反応時間を経過した後に、発光素子により試験紙に光を当て、試験紙からの反射光を受光素子にて受光する。そして、受光素子から得られたアナログの受光強度信号をデジタル値に変換した後、このデジタル値を血糖値に変換してLCD203に表示する。
なお、血糖計102側の仕組みは、発色試薬を利用した前記光学測定方式に限らず、電気化学センサー方式など、従来から血糖測定に使用され得る仕組みを採用することができる。
血糖計102はUSBケーブル105を通じて、パソコンに接続される。また、裏面に設けられた赤外線通信窓を通じて赤外線通信により行うこともできる。
【0020】
[ハードウェア]
図3は血糖計102の内部ブロック図である。
血糖計102は、マイコンよりなるシステムであり、CPU602、ROM603及びRAM604と、それらを接続するバス605から構成されている。バス605には、上記の構成以外に、主にデータ入力機能を提供する部分と、データ出力機能を提供する部分も接続されている。
【0021】
血糖計102のデータ入力機能は、血糖計102にとって重要な血糖値測定データを得るための血糖値測定部202と、温度データを得るためのサーミスタ606、バーコードリーダ208、カレンダクロック607、そして操作部608がある。
血糖値測定部202は、発光ダイオード609、そのドライバ610、ドライバ610に接続されるD/A変換器611よりなる発光部と、フォトトランジスタ612とA/D
変換器613よりなる受光部よりなる。発光ダイオード609は、適切な強度の光を測定チップ212内の試験紙に照射する必要があるので、予め後述する不揮発性ストレージ614に記憶してある強度データに基づいて発光するように制御される。つまり、発光強度データを不揮発性ストレージ614から読み出し、D/A変換器611でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ610で電力増幅して、発光ダイオード609を発光駆動する。また、フォトトランジスタ612が受光した光の強度信号電圧は、A/D変換器613によって数値データに変換される。そして、この変換された数値データがRAM604及び不揮発性ストレージ614の所定領域に記録される。
【0022】
また、血糖計102はサーミスタ606を備えており、このサーミスタ606の抵抗変化によって血糖計102が存在する環境の気温を測定できる。前述のフォトトランジスタ612と同様に、サーミスタ606の抵抗値はA/D変換器613によって数値化され、数値データはRAM604及び不揮発性ストレージ614の所定領域に記録される。なお、受光強度と気温を同時に測定する必要はないので、A/D変換器613はフォトトランジスタ612とサーミスタ606とで共用されている。
【0023】
カレンダクロック607は周知の日時データ出力機能を提供するICであり、多くのマイコンやパソコン等に標準搭載されているものである。
本発明の実施の形態の血糖計102では、血糖値を測定した時点の日時情報を得る必要があるため、日時情報は重要な情報である。つまり、収集するデータと日時情報は極めて深い関係を有する。そして、血糖値を測定した時点の日時情報は、血糖値と共に内部患者テーブル112に記録する必要がある。このため、図中で敢えてカレンダクロック607を明記している。
【0024】
血糖計102のデータ出力機能としては、LCD203よりなる表示部615と、ブザー616と、赤外線通信部617と、USBインターフェース624がある。
表示部615には、ROM603に格納され、CPU602によって実行されるプログラムによって、様々な画面が表示される。
ブザー616は、主にバーコードリーダ208がバーコードを正常に読み取ったことや、血糖値測定における測定完了、赤外線通信の完了、或はエラーメッセージを操作者に告知するために利用される。設定次第では、操作部608の操作の度毎に鳴らすこともできる。
赤外線通信部617は、 赤外線発光ダイオード619とフォトトランジスタ620が内蔵されている。これらは周知のIrDA(アイアールディーエー: Infrared Data Association)仕様に従う赤外線シリアル通信インターフェースを構成している。CPU60
2の制御によって赤外線通信部617の赤外線通信機能が起動され、不揮発性ストレージ614に格納されている各種データファイルの送受信が行われる。
【0025】
血糖計102内部のマイコンを構成する要素のうち、データ入出力機能の他に、データ記憶機能を提供する、EEPROMよりなる不揮発性ストレージ614がある。この不揮発性ストレージ614には、使用者基礎データ115、チップロットデータ116、患者データテーブル112、測定データテーブル118、血糖計設定データ等が格納される。これらはUSBケーブル105や前記赤外線通信窓を介した測定データ管理装置104との通信の際に更新される。なお、EEPROMの代わりにフラッシュメモリ等を用いてもよい。患者データテーブル112は、識別手段によって患者を識別するために、あらかじめ患者IDと、患者氏名、性別、生年月日等の患者を識別することが可能な情報が関連付けて記憶される。また、測定データテーブルは、測定した血糖値、血糖値を得た時間を、例えば患者IDなどの医療行為上有用な情報と関連付けて記憶するものである。
【0026】
[測定データ管理装置104]
図4は、測定データ管理装置104のブロック図である。
測定データ管理装置104の実体も、周知のパソコンであり、本実施形態で後述する種々の警告機能や、測定データを管理する機能等を実現するに際し、特別な機能を備えるハードウェアは設けられていない。
パソコンである測定データ管理装置104の内部にはバス902がある。このバス902には、CPU903、ROM904、RAM905、ハードディスク装置等の不揮発性ストレージ906、LCD等の表示部907及びUSBインターフェース908が接続されている。USBインターフェース908には、キーボード及びマウス等の入力部909が接続されている。また、赤外線通信部910を有する。前記血糖計102の赤外線通信窓と測定データ管理装置104の赤外線通信部910は、それぞれ赤外線発光ダイオード619及び911とフォトトランジスタ620及び912が内蔵されている。これらは周知のIrDA(アイアールディーエー: Infrared Data Association)仕様に従う赤外線
シリアル通信インターフェースを構成する。
【0027】
[血糖計102の血糖測定作業]
次に、血糖計102にて行う通常測定モードにおける血糖測定作業の流れを説明する。電源スイッチをオンとし、開始ボタン205を押下することにより通常測定モードを選択すると、図5のようにLCD203に「通常モード」と表示される。
(1)患者の名札等に付されている、バーコードよりなる患者ID(患者識別情報)を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取った患者IDは、先ず、患者データテーブル112の検索キーに用いられる。
予め測定データ管理装置104から送信された患者データ114は、血糖計102内部で患者データテーブル112に変換されて、不揮発性ストレージ614に記憶されている。この患者データテーブル112を、患者IDで検索する。検索にヒットしたレコードがあった場合には、この患者IDを測定データテーブル118の空白レコードに記録する。
【0028】
(2)次に、看護師の名札等に付されている、バーコードよりなる使用者IDを、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取った使用者IDは、使用者基礎データ115に含まれているか否かが検証される。使用者IDを検索キーとして使用者基礎データ115を検索して、当該使用者IDが存在すれば、測定データテーブル118の先に患者IDを記録した測定データテーブルの前記レコードの「使用者ID」フィールドに記録する。
【0029】
(3)次に、測定チップ212の箱等に印刷されている、バーコードよりなるチップロットナンバーを、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取ったチップロットナンバーは、チップロットデータ116(図1参照)に含まれているか否かが検証される。チップロットナンバーを検索キーとしてチップロットデータ116を検索して、当該チップロットナンバーが存在すれば、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「チップロットナンバー」フィールドに記録する。
【0030】
(4)(3)で測定データテーブル118の「チップロットナンバー」フィールドにチップロットナンバーを記録した直後、サーミスタ606で外気温を測定する。そして、外気温が所定範囲内に収まっていると判断したら、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「測定時温度」フィールドに記録する。
【0031】
(5)血糖計102の血糖値測定部に測定チップ212を装着し、血糖値を測定する。そして、測定した時点の日時データをカレンダクロック607から得る。
測定した血糖値を、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「血糖値」フィールドに記録する。日時データを、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「測定日時」フィールドに記録する。
また、「血糖値を測定した」という「事実」を示すフラグが、「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
その後、LCD203(表示部615)に測定した血糖値、患者ID、患者氏名、測定日時を表示する。
【0032】
(6)測定した血糖値で、当該患者のスライディングスケールを検索し、当該患者に処方する、インスリン等の薬剤の種類とその投与量を、LCD203に表示する。スライディングスケールは患者データテーブル112内に、患者ID毎に格納されている。
(7)看護師がLCD203に表示された処方に従って、インスリン等の投与を行った後、その事実を開始ボタン205を押下することで入力する。すると、「処方した」という「事実」を示すフラグが、測定データテーブル118の「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
【0033】
以上に示した測定作業によって、
・どの患者の、
・測定予定時刻に対し、
・どの測定者が、
・どのチップロットナンバーのチップを用いて、
・どんな外気温の環境下において、
・血糖値を測定したか否か、
・(血糖値を測定したなら)血糖値はどんな値か、
・(血糖値を測定したなら)そのときの日時はいつなのか、
・インスリン等の処方をしたか否か
が、測定データテーブル118に記録される。
【0034】
血糖値測定作業とインスリン処方作業は、概ね患者の食後の決まった時間帯に行われる。また、食前の決まった時間帯に行うこともある。測定作業及び処方作業は、複数名の患者に対し、決まった時間帯にまとめて行われる。
この、複数名の患者に対し、所定の時間帯にまとめて行われる、血糖値測定及び/またはインスリン処方の作業単位を、「ラウンド」と呼ぶ。例えば、「朝食後30分の1ラウンド」等と呼び、取り扱われる。
血糖計102は、血糖値測定作業及びインスリン等処方作業の間違いを起こさないために、1ラウンドに必要なデータのみが、測定データ管理装置104から送信される。これが、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116である。
そして、ラウンド終了後は、必ず血糖計102を測定データ管理装置104にUSBケーブル105あるいは赤外線通信窓により接続し、測定データテーブル118が、血糖計102から測定データ管理装置104に送信される。測定データ管理装置104はこれを受信して、内部の患者履歴テーブル1212に記録する。
【0035】
[緊急測定モードにおける血糖測定作業]
次に、血糖計102にて行う緊急測定モードにおける血糖測定作業の流れを説明する。緊急測定モードにおいては、患者IDの照合を必要としないが、使用者ID、チップロットナンバーの照合およびインスリン処方の事実の記録についても必要としない構成としてもよい。本実施例においては、使用者ID、チップロットナンバーについて照合およびインスリン投与の事実の記録を行う場合の血糖測定作業の流れを説明する。確認電源スイッチをオンとし、緊急ボタン206を押下することにより緊急測定モード」を選択すると、図6のように、LCD203に「緊急モード」と表示される。
(1)緊急ボタン206が押下されると、患者IDなしに測定データテーブル118の空白レコードを特定する。
(2)次に、看護師の名札等に付されている、バーコードよりなる使用者IDを、バー
コードリーダ208で読み取る。
読み取った使用者IDは、使用者基礎データ115に含まれているか否かが検証される。使用者IDを検索キーとして使用者基礎データ115を検索して、当該使用者IDが存在すれば、測定データテーブル118の先に患者IDを記録した測定データテーブルの前記レコードの「使用者ID」フィールドに記録する。
【0036】
(3)次に、測定チップ212の箱等に印刷されている、バーコードよりなるチップロットナンバーを、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取ったチップロットナンバーは、チップロットデータ116(図1参照)に含まれているか否かが検証される。チップロットナンバーを検索キーとしてチップロットデータ116を検索して、当該チップロットナンバーが存在すれば、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「チップロットナンバー」フィールドに記録する。
【0037】
(4)(3)で測定データテーブル118の「チップロットナンバー」フィールドにチップロットナンバーを記録した直後、サーミスタ606で外気温を測定する。そして、外気温が所定範囲内に収まっていると判断したら、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「測定時温度」フィールドに記録する。
【0038】
(5)血糖計102の血糖値測定部に測定チップ212を装着し、血糖値を測定する。そして、測定した時点の日時データをカレンダクロック607から得る。
測定した血糖値を、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「血糖値」フィールドに記録する。日時データを、測定データテーブル118の先に特定したレコードの「測定日時」フィールドに記録する。
また、「血糖値を測定した」という「事実」を示すフラグが、「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
その後、LCD203(表示部615)に測定した血糖値、測定日時、「緊急モード」を表示する。
【0039】
(6)看護師が、インスリン等の投与を行った後、その事実を緊急ボタン205を押下することで、インスリンを「処方した」という「事実」を示すフラグが、測定データテーブル118の「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
【0040】
以上に示した測定作業によって、
・どの測定者が、
・どのチップロットナンバーのチップを用いて、
・どんな外気温の環境下において、
・血糖値を測定したか否か、
・(血糖値を測定したなら)血糖値はどんな値か、
・(血糖値を測定したなら)そのときの日時はいつなのか、
・インスリン等の処方をしたか否か
が、測定データテーブル118に記録される。
【0041】
以上、緊急測定モードにおける測定作業を説明したが、前記のとおり、「使用者ID」「チップロットナンバー」「インスリン処方の事実」などを省略してもよいが、「血糖値」「測定日時」については必ず記録する必要がある。ここで、「使用者ID」「チップロットナンバー」「インスリン処方の事実」などについて、後述の患者IDの追加記録と同様に事後において追加記録する設定としてもよい。
【0042】
[履歴の表示]
次に、血糖計102に記録されているデータの履歴を表示する作業について説明する。
履歴表示モードへは、通常測定モードにおいて、履歴ボタン206を押下することにより移行する。
(1)履歴ボタン206を押下し、通常測定モードにおいて測定した血糖値の履歴を表示画面に移行し、どの患者の履歴を表示するのかを決めるため、患者IDを入力する。患者IDの入力は、患者の名札等に付されているバーコードからなる患者IDを、バーコードリーダ208で読み取る。また、患者データテーブルに記録されている患者IDおよび患者氏名のリストをLCD203に表示し選択する方式でもよい。また、LCD203にキーバッドを表示し、LCD203に表示されたキーパッドにより患者IDや患者氏名を入力してもよい。
(2)患者IDが入力されると、測定データテーブル118または患者データテーブル112に記録されている当該患者IDに関連付けされたデータのうち、最新のデータの血糖値、該血糖値が得られた日時情報が、LCD203に表示される。さらに患者ID、患者氏名、
使用者氏名などの他の情報を追加して表示してもよい。さらに、測定データテーブルに記録されている当該患者IDに関連付けされた血糖値の平均値や、時系列的に遡った複数の血糖値などを表示するようにしてもよい。
(3)次に、履歴ボタン207を押下することにより、当該患者IDに関連付けされた時系列的に次に新しいデータが表示される。
(4)一方、開始ボタン205を押下した場合には、新たな患者の履歴を表示させることができる。
(5)電源ボタン204を押下し、電源をオフとすることにより、終了する。
【0043】
[緊急測定モードで測定されたデータの履歴の表示および患者IDの追加記録]
次に、血糖計102に記録されている緊急測定モードで測定されているデータの履歴の表示および患者IDの事後的な入力作業について説明する。緊急測定モードにおいて、履歴ボタン206を押下することにより移行する。(図7)
(1)履歴ボタン207を押下し、緊急測定モードにおいて測定した血糖値の履歴を表示画面に移行し、測定データテーブル118に記録されている緊急測定フラグが“ON”である、患者IDデータが空のデータのうち、最新のデータの血糖値、該血糖値が得られた日時情報が、LCD203に表示される。さらに、使用者氏名などの他の情報を追加して表示
してもよい。
(2)次に、履歴ボタン207を押下することにより、測定データテーブル118に記録されている緊急測定フラグが“ON”である、患者IDデータが空のデータのうち、時系列的に次に新しいデータが表示される。
(3)一方、緊急ボタン206を押下した場合には、表示されているデータについて事後的に患者IDと関連付けするために、患者IDの入力が求められる。患者IDの入力は、患者の名札等に付されているバーコードからなる患者IDを、バーコードリーダ208で読み取る。また、LCD203にキーバッドを表示し、LCD203に表示されたキーパッドにより患者IDや患者氏名を入力してもよい。
(4)患者ID入力の後、入力データの確認画面などを経て、入力された患者IDが、当該表示されたデータとして、測定データテーブル118へ上書きされる
(5)電源ボタン204を押し、電源をオフとすることにより、終了する。
【0044】
図8は、各テーブルの内部構成と関係を記す図である。なお、この図8は、図1に示す、測定データ管理装置104と血糖計102との間で送受信されるテーブルの関係に基づいて描かれている。
測定データ管理装置104から送信される患者データ114は、「インスリン療法区分」フィールド以外の全てのフィールドがそのまま患者データテーブル112に記録される。患者データテーブル112は、血糖計102内部の不揮発性ストレージ614の中に設けられている。
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドは、所定の変換処理を経て、患者データテーブル112の「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」
フィールドに記録される。
測定データ管理装置104から送信されるチップロットデータ116及び使用者基礎データ115は、血糖計102内部の不揮発性ストレージ614にそのまま記憶される。そして、測定作業中にバーコードリーダ208から読み取ったもの(チップロットナンバー及び使用者ID)が、患者IDとともに、その都度測定データテーブル118に記録される。
【0045】
[患者データ114]
これより、患者データ114の各フィールドを説明する。
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドには、
0:血糖値測定のみ
1:血糖値測定+スライディングスケールを使用したインスリン投与
2:血糖値測定+スライディングスケールを使用しない(以下「固定打ち」)インスリン投与
5:スライディングスケールを使用したインスリン投与のみ(血糖値測定せず)
6:固定打ちのインスリン投与のみ(血糖値測定せず)
の、いずれか一つが記録される。
【0046】
スライディングスケールとは、処方箋データを意味する。これは、計測した血糖値の範囲に対して、投与するインスリン等の薬剤の量を列挙したテーブルである。
「固定打ち」とは、血糖値の計測結果の如何にかかわらず、一定量のインスリン等の薬剤を投与することを意味する。
患者データ114の「スライディングスケール情報」フィールドには、このスライディングスケールが格納される。
【0047】
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値は、血糖計102に対し、患者毎に行うべき作業を指示するフラグ情報である。例えば:
・「0」であれば、当該患者には血糖値の測定だけを行う。
・「1」であれば、当該患者には血糖値の測定と、スライディングスケールを用いたインスリン投与を行う。
以下、「2」「5」「6」も同様である。
【0048】
「患者ID」フィールドは、患者を識別する番号であり、患者の着衣等に付されているバーコードに記録されている。「患者フリガナ」フィールドは、患者の氏名のカタカナによるフリガナである。これは患者IDと共に血糖計102のLCD203に表示し、血糖計102を操作する測定者が目の前の患者を正しく識別するために用いられる。
「血糖測定予定時刻」フィールドは、ラウンドを実施する予定の時刻であると共に、測定データ管理装置104側でデータを特定する際の検索キーとしても使われる。
「患者測定履歴データ」フィールドは、当該患者の直近の血糖値測定履歴情報が複数格納されるフィールドである。また、「インスリン療法区分」フィールドの値が「5」の時に、直近に測定した血糖値を格納しておき、この値を基にスライディングスケールを用いたインスリン投与を実施する。
以上が、患者データ114の各フィールドの説明である。
【0049】
[患者データテーブル112]
これより、患者データテーブル112の各フィールドを説明する。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」の、三つのフラグが格納されているフィールドである。
「測定有無フラグ」フィールドには、
・患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドが「0」、「1」または「2」の時は論理の「真」を示す「1」が、
・患者データ114のインスリン療法区分フィールドが「5」または「6」の時は論理の「偽」を示す「0」が、記録される。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、(1)血糖値測定作業を完遂した直後、(2)インスリン投与量を表示したとき、(3)インスリン投与を実施した旨の入力をしたときに、それぞれ変化する。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドの内容は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドに反映される。
「患者ID」フィールド、「患者フリガナ」フィールド、「血糖測定予定時刻」フィールド、「スライディングスケール情報」フィールド及び「患者測定履歴データ」フィールドは、患者データ114からコピーされる。
【0050】
[測定データフィールド118]
「患者ID」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られた患者IDが記録される。緊急測定モードの場合、空フィールドとなる。
「使用者ID」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られた使用者IDが、使用者基礎データ115による照合を経て、記録される。
「チップロットナンバー」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られたチップロットナンバーが、チップロットデータ116による照合を経て、記録される。
「測定日時」フィールド、「血糖値」フィールド及び「測定時温度」フィールドの各フィールドの値は、血糖計102の血糖値測定作業の際に記録される。
「緊急測定フラグ」は、緊急測定モードにおいて測定された血糖値データについてフラグONとして「1」、通常測定モードで測定された血糖値データについてフラグOFFとして「0」が記録される。
上記の通り、血糖計102は、測定データテーブル118に通常測定モードでは、血糖値、血糖値を得た時間、患者IDを記録し、緊急測定モードでは患者IDは記録しない。そして通常測定モードで測定したデータと緊急測定モードで測定したデータを区別するために、緊急測定モードであるかどうかのフラグを通常測定モードはOFF、緊急測定モードではONとして記録する。通常測定モード時と緊急測定モード時での血糖値および血糖値を得た時間の記録が混在する。
【0051】
[患者測定データ117]
患者データテーブルの「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドの内容は、所定の変換処理を経て、「血糖測定フラグ」フィールドのデータとして出力される。
また、測定データテーブル118データが、そのまま、測定データ管理装置104に出力される。
【0052】
[血糖値測定装置から測定データ管理装置へのデータ転送]
血糖測定装置102と測定データ管理装置104とは、USBケーブル105あるいは赤
外線通信窓を介してデータ通信を行う。測定データ管理装置104は受信した患者測定データ117の内容を患者履歴テーブル1212に記録する。(図9) その際、患者測定データ117は、患者測定一時ファイル1806に記録され、患者IDが空で無い場合には、患者測定データファイルの一つの測定データ列にの患者IDにを検索キーとして各患者毎のファイルからなる患者履歴テーブル1212に記録した内容と、先に患者情報テーブル1205に記録していた内容との照合を行う。また、患者IDが空の場合には、その一つの測定データ列は、一時ファイルにそのまま残される。
この照合作業の結果、患者IDが空で無い全ての患者について指示内容と実行結果との間の不整合がなければ、測定データ管理装置104はその表示部907に「OK」を表示す
る。
【0053】
一方、血糖計102は、患者測定データ117を測定データ管理装置104へ転送した後、患者データテーブル112のデータを削除する。この動作により、血糖計102は常に最新のデータでのみ血糖値測定或はインスリン投与を行うことを担保できる。
【0054】
血糖計102は、1回のラウンドを行う対象となる患者のデータ、およびそのラウンドの間に発生した緊急時対応の緊急測定モードにおける測定データだけが記憶される。
仮に、一部の患者の血糖値計測やインスリン投与をし忘れてしまった場合、測定データ管理装置104は、受信した患者計測データを検証して、血糖値計測やインスリン投与が行われなかった患者を特定する。そして、その特定された患者に対して、行うべき必要な処置のためのデータだけを再度作成する。つまり「再ラウンド」を行う。
血糖計102の、「一回分のラウンドだけを実行する」という設計は、血糖値計測やインスリン投与の間違いを絶対に起こさせないとする思想に基づく。
また、緊急測定を行った場合においても、緊急測定データを長期間血糖測定装置に蓄積することがないので、緊急測定モードでのデータと測定した患者との関連付けが困難になることがない。
【0055】
図10及び図11は、血糖計102の処理の流れを示すフローチャートである。
電源スイッチ204を投入する等で処理を開始する(S1601)。通常測定モードを選択するには、、先ず、血糖計102の開始ボタン205を押下する(S1602)。ここで電源スイッチ204をオフ操作すると、処理を終了する(S1603)。
開始ボタン205押下(S1602)を終えると、血糖計102はバーコードリーダ208で患者IDを読み取る、患者IDスキャン処理を行う(S1604)。
患者IDスキャン処理(S1604)で患者IDを読み取ると、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の当該患者IDのレコードにある、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグを見る(S1605)。ここで、血糖値測定フラグが真で、且つインスリン投与量表示フラグが偽である場合には(S1605のN)、血糖計102は血糖値表示(3)処理を行う(S1606)。そうでない場合、つまり血糖値測定フラグが偽か、或はインスリン投与量表示フラグが真のいずれかである場合には(S1605のY)、血糖計102は血糖値測定処理を行う(S1607)。
【0056】
血糖値測定処理(S1607)で血糖値の測定を行うと、入出力制御部1402は次にインスリン投与量表示フラグの確認を行う(S1608)。インスリン投与量表示フラグが偽であれば(S1608のY)、血糖計102は血糖値表示(1)処理を行う(S1611)。そうでない場合、つまりインスリン投与量表示フラグが真である場合には(S1608のN)、血糖計102は血糖値表示(2)処理を行う(S1609)。
【0057】
図11を参照して説明を続ける。
血糖計102は、血糖値表示(1)処理(S1611)を終えると、使用者の操作によって次の状態に移行する。
血糖値計測をもう一度やり直す場合には(S1712のN及びS1713のN)、当該患者の血糖値測定フラグを偽のままにして(S1715)、患者IDスキャン処理(S1604)に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行わず、次の患者の血糖値計測に移行する場合には(S1712のN及びS1713のY)、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で(S1714)、患者IDスキャン処理(S1604)に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行う場合には(S1712のY)、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で(S1716)、インスリン投与量表示処理を行う(S1717)。
【0058】
血糖値表示(3)処理(S1606)を終えると、血糖計102は当該患者の血糖値を表示する。その後、血糖計102はインスリン投与量表示処理を行う(S1717)。
【0059】
インスリン投与量表示処理(S1717)では、血糖計102は内部患者テーブル112の内容に従って、当該患者に対するインスリン投与量を表示する。この表示処理を行った後、入出力制御部1402はインスリン投与量表示フラグを真に設定して(S1718)、インスリン投与確認処理を行う(S1719)。
【0060】
インスリン投与確認処理(S1719)では、血糖計102はインスリン投与を行ったか否かを使用者に問い合わせる入力を待つ。
使用者が操作部608を操作した結果、使用者がインスリン投与を行ったと入力したのであれば(S1720のY)、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを真に設定し(S1721)、「投与しました」表示を行う(S1722)。そして、入力のやり直しを可能にするために、確認入力を受け付け(S1723)、「戻る」(S1723のN)以外の選択肢が選ばれると(S1723のY)、選択結果に従って(S1727)、開始へ戻るか(S1727のY)、或は患者IDスキャン処理から始める(S1727のN)。
使用者が操作部608を操作した結果、使用者がインスリン投与を行わなかったと入力したのであれば(S1720のN)、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを偽に設定し(S1724)、「投与しませんでした」表示を行う(S1725)。そして、入力のやり直しを可能にするために、確認入力を受け付け(S1726)、「戻る」(S1726のN)以外の選択肢が選ばれると(S1726のY)、選択結果に従って(S1727)、開始に戻るか(S1727のY)、或は患者IDスキャン処理から始める(S1727のN)。
【0061】
図9は測定データ管理装置104の機能ブロック図である。
測定データ管理装置104には、本実施形態で開示する以外にも多種多様な機能が備わっているが、本実施形態ではあくまでも患者情報テーブル1205と患者履歴テーブル1212との照合に関係する機能に限って説明する。
【0062】
血糖計操作部1803は、測定データ管理装置104が血糖計102から患者測定データ117等を回収する作業と、測定データ管理装置104が血糖計102に患者データ114等を送信する作業を行う。
入力部909はキーボード及びマウス等である。表示部907はLCDディスプレイ等である。入力部909及び表示部907はユーザインターフェース制御部1804に接続されている。
ユーザインターフェース制御部1804は、表示部907に所定の操作画面を表示する。また、入力部909からユーザの操作を受けて、表示部907に表示される操作画面を変更したり、テーブル入出力部1805から必要なデータの入出力を行ったりする。
テーブル入出力部1805は、測定データ管理装置104の不揮発性ストレージ906内に格納されている、患者履歴テーブル1212、患者情報テーブル1205、患者測定一時ファイル1806等の、多くのテーブルと、ユーザインターフェース制御部1804と血糖計操作部1803との、データの入出力を行うインターフェースである。具体的には、ミドルウェアと呼ばれるデータベースマネージャである。
【0063】
測定データ管理装置104は、大量のデータを保持する必要がある。特に、ラウンド終了の度に血糖計102から測定データテーブル118をダウンロードし、不揮発性ストレージ906に保持するので、データ量は日々膨れ上がる。このような大量のデータに対して、迅速なデータ入出力機能を実現するには、ミドルウェアが存在することが好ましい。
また、プログラムを構築する上でも、ミドルウェアが存在すると、作成効率が向上する。
なお、図9では、患者履歴テーブル1212と患者情報テーブル1205だけが表示されているが、実際にはもっと多くのテーブルが存在する。図8では、本実施形態で説明する際に不要なテーブルの存在を省略している。
【0064】
患者履歴テーブル1212は、患者毎に作成される。このため、患者履歴テーブル1212のテーブル名には夫々患者IDが含まれている。これはデータ格納の効率を考慮した結果である。なお、患者IDのフィールドを設けた単一のテーブルに構成することもできる。
【0065】
本発明の血糖計102の動作をまとめてみると、以下の通りである。図12は、血糖計102の概略的な操作のフローチャートである。血糖計102は電源ボタン204が押下されると(S1201)、開始ボタン205か緊急ボタン206の押下を待つ状態(S1202)となる。この状態でLCD203に開始ボタンと救急ボタンの選択を促す表示を行うメニュー画面とすることもできる。また、何もしなければ通常測定モードへ移行し、緊急ボタン206をCPU602への割り込みキーとしてもよい。
電源ボタン204が押下されて血糖計102の電源がON(S1201)になった後、開始ボタン205が押下される(S1202)と、緊急測定フラグをoffとし(S1204)、通常時の血糖測定システムの処理が行われ、血糖値を測定する患者の識別を行う。前述のように、患者に付与された患者IDを例えばバーコード読取装置で入力し(S1205)、記憶部に記憶されている患者を識別するための情報と照合(S1206)を行う。入力した患者IDが患者リストに存在する場合、血糖値測定部により該患者の血糖値を測定する(S1207)。入力した患者IDが患者リストに存在しない場合、警告を表示部に表示し、新たな患者IDの入力を待つ。
血糖値が測定されると、その測定結果が表示部に表示(S1208)され、血糖値および血糖値を得た時間が、患者ID、緊急測定フラグなどの情報と関連付けて記憶部に記憶される(S1209)。さらに開始ボタンが押下されると、次の患者について血糖測定システムの処理が実施され、繰り返し血糖測定をすることも可能である。
【0066】
次に、緊急測定モードの動作を説明する。電源ボタン203が押下されて血糖計102の電源がON(S1201)になった後、S1202で緊急測定ボタンを押下するといった緊急測定を開始するための操作を行うことで、緊急測定モードの動作を開始する。緊急測定モードにおいては、緊急測定フラグをON(S1210)とした後、通常時に行われる患者の識別は行わずに、ただちに血糖値測定部により血糖値を測定する(S1207)。血糖値が測定されると、その測定結果が表示部に表示(S1208)され、血糖値および血糖値を得た時間、緊急測定フラグなどが記憶部に記憶(S1209)される。ここで開始ボタンが押下されると、血糖測定システムの通常時の処理を実施することも可能である。S1202で電源ボタン204が押下されると電源がOFFとなる(S1203)。
【0067】
次に、図13を参照し、通常測定モードにおける履歴の閲覧の動作を説明する。電源ボタン204が押下されて血糖計102の電源がON(S1201)になった後、開始ボタン205が押下されると、緊急測定フラグをoffとし(S1204)、通常時の血糖測定システムの処理が行われる。この通常測定モード(S1301)において、履歴ボタン207を押下(S1302)すると、履歴を表示する患者の識別を行う。前述のように、患者に付与された患者IDを例えばバーコード読取装置で入力し(S1304)、患者データテーブル112に記録されている患者を識別するための情報と照合(S1305)を行う。入力された患者IDが患者リストに存在する場合、測定データテーブル118を参照し、前記入力された患者IDの血糖値を得た時間の最も新しいデータをLCD203に表示する(S1306)。入力された患者IDが患者リストに存在しない場合、警告を表
示部に表示し、新たな患者IDの入力を待つ。S1307において、履歴ボタン207が押下されると、同じ患者の次に新しいデータを同様に表示する(S1308)。S1307において開始ボタン205が押下されると、新たな患者IDの入力を待つ状態となる。S1307で電源ボタン204が押下されると電源がOFFとなる(S1309)。
【0068】
次に、図14を参照して、緊急測定モードで測定した結果の閲覧、および、後から患者IDなどの情報を関連付ける処理について説明する。電源ボタン203が押下されて血糖計102の電源がON(S1201)になった後、S1202で緊急測定ボタンを押下するといった緊急測定を開始するための操作を行うことで、緊急測定モードの動作を開始する。この緊急測定モード(S1401)において、履歴ボタン207が押下される(S1402)と、測定データテーブル118を検索して、患者IDの無いデータのうち、血糖値を得た時間の最も新しいデータをLCD203に表示する(S1403)。 S1405において、履歴ボタン207が押下されると、患者IDの無い次に新しいデータを同様に表示する(S1406)。S1405において緊急ボタン206が押下されると、表示されている血糖値を関連付ける患者の識別を行う。前述のように、患者に付与された患者IDを例えばバーコード読取装置で入力し(S1407)、表示している血糖値データについての測定データテーブル118に入力された患者IDおよび緊急測定フラグoffとし上書きする(S1408)。S1405で電源ボタン204が押下されると電源がOFFとなる(S1409)。
【0069】
本実施形態において、血糖値測定装置と測定データ管理装置からなる血糖値計測システムを開示した。 患者を識別する患者識別情報を取得する識別手段と、 前記患者の血糖値を測定する血糖値測定手段と、 前記血糖値測定手段によって血糖値が得られた日時情報を得る計時手段と、 前記患者の患者識別情報および、該患者の血糖値および、該血糖値が得られた日時情報を表示する表示手段と、 前記患者識別情報を記憶する患者データテーブルと、 前記識別手段により取得した前記患者識別情報と前記患者データテーブルを照合し、前記患者データテーブルに前記患者識別情報を発見した場合には、前記血糖値測定手段による血糖値の測定を許し、前記患者データテーブルに前記患者識別情報を発見しなかった場合には、血糖測定を禁止する通常測定モードと、前記識別手段による前記患者識別情報の取得なしに前記血糖測定の実施を許す緊急測定モードとを有する制御手段と、前記通常測定モードから前記緊急測定モードへ移るための移行手段と、前記血糖値が得られた後、前記制御手段により、前記通常測定モードの場合には、前記血糖値と前記血糖値が得られた日時情報が前記患者識別情報と関連付けて記録され、前記緊急測定モードの場合には、前記血糖値と前記血糖値が得られた日時情報が前記緊急測定モードを示すモード情報と関連付けて記録される測定データテーブルと、を備えることを特徴とする血糖測定装置。
これにより、迅速、確実な通常測定を行いながら、緊急時にも即座に対応することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態の例である、血糖値計測システムの全体概略図である。
【図2】血糖計の外観図である。
【図3】血糖計の内部ブロック図である
【図4】測定データ管理装置のブロック図である。
【図5】血糖計の通常測定モードにおける表示例である。
【図6】血糖計の緊急測定モードにおける表示例である。
【図7】血糖計の緊急測定モードにおける患者IDとの関連付けの一例を示すフロー図である。
【図8】各テーブルの内部構成と関係を記す図である。
【図9】測定データ管理装置の機能ブロック図である。
【図10】血糖計の処理の流れを示すフロー図である。
【図11】血糖計の処理の流れを示すフロー図である。
【図12】血糖計の血糖測定時の通常測定と緊急測定の流れを対比した概略を示すフロー図である。
【図13】血糖計の通常測定モードにおける履歴を閲覧する流れを示すフロー図である。
【図14】血糖計の緊急測定モードにおける履歴の閲覧と患者IDとの関連付けの流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0072】
101…血糖値計測システム、102…血糖計、104…測定データ管理装置、105…USBケーブル、112…患者データテーブル、114…患者データ、115…使用者基礎データ、116…チップロットデータ、117…患者測定データ、118測定データテーブル、202…血糖値測定部、203…LCD(表示部)、204…電源ボタン、205…開始ボタン、206…緊急ボタン、207…履歴ボタン、208…バーコードリーダ(識別部)、212・・・チップ、602…CPU、603…ROM、604…RAM、605…バス、606…サーミスタ、607…カレンダクロック、608…操作部、609…発光ダイオード、610…ドライバ、611…D/A変換器、612…フォトトランジスタ、613…A/D変換器、614…不揮発性ストレージ、615…表示部、616…ブザー、617…赤外線通信部、618…電源回路、624・・・USBインターフェース、902…バス、903…CPU、904…ROM、905…RAM、906…不揮発性ストレージ、907…表示部、908…USBインターフェース、909…入力部、910・・・赤外線通信部、911・・・赤外線発光ダイオード、912・・・フォトトランジスタ、1002…患者、1003…患者ID、1004…看護師、1005…使用者ID、1006…箱、1007…チップロットナンバー、1008…注射器、1009…スライディングスケール、1205…患者情報テーブル、1212…患者履歴テーブル、1803…血糖計操作部、1804…ユーザインターフェース制御部、1805…テーブル入出力部、1806…患者測定一時ファイル、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を識別する患者識別情報を取得する識別手段と、
前記患者から採取した血液から血糖値を測定する血糖値測定手段と、
前記血糖値測定手段によって血糖値が得られた日時情報を得る計時手段と、
前記患者の患者識別情報および、該患者の血糖値および、該血糖値が得られた日時情報を表示する表示手段と、
前記患者識別情報を記憶する患者データテーブルと、
前記識別手段により取得した前記患者識別情報と前記患者データテーブルを照合し、前記患者データテーブルに前記患者識別情報を発見した場合には、前記血糖値測定手段による血糖値の測定を許す通常測定モードと、前記識別手段による前記患者識別情報の取得なしに前記血糖測定の実施を許す緊急測定モードとを有する制御手段と、
前記通常測定モードから前記緊急測定モードへ移るための移行手段と、
を備えることを特徴とする血糖測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−185183(P2012−185183A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148171(P2012−148171)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2008−254830(P2008−254830)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】