説明

血糖降下物質

【課題】新規な血糖降下物質を提供することにある。更には、インスリンが関与する機能以外の機能に基づく血糖降下作用をもつ新たな血糖降下物質を提供することにあり、またそれを用いた血糖降下剤を提供することにある。
【解決手段】以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な血糖降下物質及びそれを用いた血糖降下剤に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は慢性の高血糖状態の持続及び耐糖能の異常を示す疾患である。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、重篤な合併症である様々な臓器障害(腎症、末梢神経障害、網膜症等)に至ってしまうため、大幅な生活の質の低下をもたらし、治療にも多くの社会資源を必要とする等、多くの問題を発生させる疾患である。そして世界的にもその有病者が急激に増加していることから、国連でその撲滅が決議されるほどの大きな社会的問題となっている(非特許文献1)。
【0003】
糖尿病は、大きく1型と2型に分けられる。特に、2型糖尿病は、遺伝的な背景による場合と肥満による場合がその原因の大半を占めており、インスリン分泌量の低下やインスリンに対する感受性の低下(インスリン抵抗性)を基礎とする疾患で、日本では糖尿病患者の95%がこの2型とされている。
【0004】
糖尿病の治療としては、良好な血糖コントロールが達成できない場合は、経口血糖低下薬の服用やインスリン注射が行われる。経口血糖低下薬は、その作用機序により、インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬、α−グルコシダーゼ阻害薬等がある。
【0005】
しかし、これらは、過度の投与や長期の使用により、肥満やインスリン抵抗性の増悪、重篤な低血糖症等の血糖値コントロールの不全等をもたらす場合もあるとされている。そのため、新たな血糖降下物質、それを含んだ治療薬・予防薬、機能性食品等が強く求められ、その開発が進められている。それらの中には、アミノ酸やタンパク質について糖尿病と関連付けられた記載がいくつか知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、L−リジン塩酸塩、L−ロイシン、グリシン、L−シスチン塩酸塩、L−グルタミン酸からなる組成物を糖尿病モデルのラットに投与すると血糖値の上昇を抑制することが記載されている。
また、例えば、特許文献2には、アスパラギン酸、シスチン、セリン、アスパラギン、イソロイシン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、グルタミン酸、バリン及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有するインスリン分泌機能回復剤について記載されている。
また、特許文献3には、インスリン抵抗性改善剤の投与と糖代謝及び/又は脂質代謝に関連する遺伝子及び該遺伝子によってコードされているタンパク質等について記載されている。
【0007】
しかしながら、分子量の大小を問わず、特定の、アミノ酸、ペプチド又はタンパク質が、インスリン分泌促進機能、インスリン抵抗性改善機能等、インスリンが関与する機能以外の機能に基づく血糖降下作用を持つことについての記載は見当たらない。
【0008】
一方、本発明者は、哺乳類に代替し得る実験動物としてカイコに着目し、これまで、カイコが、ヒト等に感染する菌やウイルスに対する治療薬開発のための評価探索系に用いることができることを報告した(特許文献4、特許文献5)。この評価探索系は、従来の実験動物を用いる系に比較してコストや倫理面での問題が少なく、これまで実験動物を用いた評価探索系に載せることのできなかった広範な対象物を評価でき、また正確な評価ができる等、多くの利点を持つ方法である。
【0009】
また、本発明者は、ガラクトースが、カイコ、マウスにおいて血糖値を低下させることができることを報告した(特許文献6)。このガラクトース等を有効成分として含有することを特徴とする血糖低下剤は、高血糖状態の動物の血糖値を低下させる効果を有し、また、ガラクトースは、インスリン産生機能が低下した1型糖尿病モデルマウスにおいても血糖低下作用を持つことから、インスリン分泌促進以外の血糖降下作用を持ち、1型及び2型の糖尿病治療薬・予防薬、機能性食品用途に極めて効果的なものである。
【0010】
しかしながら、上記の評価探索系は、例えば、カイコ体液中の糖濃度、カイコの成長阻害、カイコの死等を観察測定することによって種々の物質を探索する評価系であり、また、カイコの体内に誘導される物質自体に着目し、そのような物質を同定し、それによって薬剤等を開発するということは行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2002/49636号公報
【特許文献2】WO 2005/110394号公報
【特許文献3】特開2009−072189号公報
【特許文献4】特開2007−327964号公報
【特許文献5】WO 2005/116269号公報
【特許文献6】WO 2010/004916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、新規な血糖降下物質を提供することにある。更には、インスリンが関与する機能以外の機能に基づく血糖降下作用をもつ新たな血糖降下物質を提供することにあり、またそれを用いた血糖降下剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、ガラクトースが、インスリン産生機能が低下した1型糖尿病モデルマウスにおいても血糖降下作用を持つことから、インスリンの作用とは関係のない独自の血糖降下作用を持つということだけではなく、更に、ガラクトースを投与することによってカイコ体液中のタンパク質の発現パターンが変動することから、ガラクトースによる血糖降下は、体液中に存在するタンパク質性、ペプチド性の生理活性物質が関与していることを見出した。
【0014】
本発明者は、これらの知見から、ガラクトースにより昆虫類の幼虫の体液中に誘導される生理活性物質が、血糖降下に有効であることを確信した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0015】
すなわち、本発明は、
<1> 以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質を提供するものである。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【0016】
<2> 上記(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドが、哺乳動物のキチナーゼ類である上記<1>記載の血糖降下物質を提供するものである。
<3> 上記哺乳動物のキチナーゼ類がヒトのキチナーゼ類である上記<2>記載の血糖降下物質を提供するものである。
【0017】
<4> 昆虫類の幼虫にガラクトースを投与することによって、該昆虫類の幼虫の体液中に誘導される上記<1>記載の血糖降下物質を提供するものである。
<5> 上記昆虫類の幼虫がカイコである上記<4>記載の血糖降下物質を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、
<6> 以下の(c)又は(d)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質を提供するものである。
(c)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列
(d)ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列
【0019】
<7> 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と、ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列とに共通する連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドである上記<6>記載の血糖降下物質を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、
<8> 上記<1>ないし上記<7>の何れかに記載の血糖降下物質の製造方法であって、下記の工程(1)ないし(5)、
(1)昆虫類の幼虫にガラクトースを投与する工程
(2)該昆虫類の幼虫の体液を採取する工程
(3)該体液中の成分を分画する工程
(4)分画されたそれぞれの画分を高血糖状態の昆虫類の幼虫に投与する工程
(5)該昆虫類の幼虫の体液中の糖濃度が低下する画分を選択する工程
を含むことを特徴とする血糖降下物質の製造方法を提供するものである。
【0021】
<9> 上記工程(5)の後に、更に、下記工程(6)、上記工程(4)、上記工程(5)の順に1回又は複数回の繰り返しを含む上記<8>記載の血糖降下物質の製造方法を提供するものである。
(6)工程(5)で選択された画分中の成分を分画する工程
【0022】
<10> 上記昆虫類の幼虫がカイコである上記<8>又は上記<9>記載の血糖降下物質の製造方法を提供するものである。
【0023】
<11> 上記<8>ないし上記<10>の何れかに記載の血糖降下物質の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする血糖降下物質を提供するものである。
【0024】
<12> 上記<1>ないし上記<7>の何れかに記載の血糖降下物質又は上記<11>記載の血糖降下物質を、製薬学的に許容し得る担体と共に含有してなることを特徴とする血糖降下剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記課題を解決し、新規な血糖降下物質を提供することができる。また、インスリンが関与する機能以外の機能に基づく血糖降下作用を持つ新たな血糖降下物質を提供することができる。投与後6時間以内で血糖値を下げる生理活性物質は、インスリンを除いて現在まで知られていない。従って、本発明の血糖降下物質の作用機序に基づけば、現在問題となっている糖尿病の治療法及び防止法の確立に極めて効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガラクトースによってカイコ体液中に血糖降下活性を有する物質が誘導されたことを示す図である。
【図2】血糖降下物質と血糖降下作用との間の容量依存性を示す図である。
【図3】血糖降下活性を有する物質(タンパク質)の分離・濃縮・精製方法を示す図である。
【図4】図3の各段階の評品のポリアクリルアミドゲル電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0028】
本発明の血糖降下物質は、以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【0029】
「(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチド」は、実施例にも記載したが、以下のようにして見出された。また、実施例にも記載したが、以下の理由によって、それを血糖降下物質であると判断した。
【0030】
カイコ幼虫に、カイコ体液中の糖濃度を低下させ、マウスの血糖値を低下させることが明確に分かっているガラクトースを投与することによって、カイコの体液中に誘導される物質を含有する画分を硫安沈殿法によって得た。
この画分を、体液中の糖濃度を高くしたカイコ(以下、「高血糖カイコ」と略記する場合がある)に投与した結果、高血糖カイコの血糖値が有意に低下した(図1)。
更に、「ガラクトースによってカイコの体液中に誘導される物質」を含む画分と、血糖降下作用との間には容量依存性が見られることが分かった(図2)。
【0031】
上記画分から、「血糖降下活性を有する物質」の分離・濃縮・精製を、実施例に具体的に記したように(3)〜(5”)を行った。なお、下記の工程中、(1)と(2)は、既に上記したように行っている。
(1)カイコにガラクトースを投与する工程
(2)該カイコの体液を採取する工程
(3)該体液中の成分を分画する工程
(4)工程(3)で分画されたそれぞれの画分を高血糖状態のカイコに投与する工程
(5)該カイコの体液中の糖濃度が低下する画分を選択する工程
(6)工程(5)で選択された画分中の成分を分画する工程
(4’)工程(6)で分画されたそれぞれの画分を高血糖状態のカイコに投与する工程
(5’)該カイコの体液中の糖濃度が低下する画分を選択する工程
(6’)工程(5’)で選択された画分中の成分を分画する工程
(4”)工程(6’)で分画されたそれぞれの画分を高血糖状態のカイコに投与する工程
(5”)該カイコの体液中の糖濃度が低下する画分を選択する工程
【0032】
上記工程中、工程(5)で得られたものを「Fraction I」、工程(5’)で得られたものを「Fraction II」、工程(5”)で得られたものを「Fraction III」とした。それぞれの画分(フラクション)のポリアクリルアミドゲル電気泳動像を図4に示す。
【0033】
工程(5”)で得られた「Fraction III」の物質は、分子量が約46kDaのタンパク質であった。この物質は、分子量が異なるのでインスリンではない。また、実施例の表1に示すように、上記工程(4)、(5)、(6)を繰り返すことによって、「カイコの体液中の糖濃度を低下させる物質」を、順次分離・濃縮・精製していったので、「Fraction III」の物質は、血糖降下物質である。実際、表1に示すように、最終的に「Fraction III」において、比活性は約280倍に上昇した。
【0034】
「Fraction III」の物質、すなわち、分子量が約46kDaのタンパク質は、アミノ酸配列「LPAVTHSK」を含んでいることが分かった。そして、この8個のアミノ酸配列「LPAVTHSK」は、「カイコが有するタンパク質」としては、カイコのImaginal disk growth factor(以下、「IDGF」と省略する場合がある)に含まれていることが分かった。IDGFは、カイコの成虫原基の増殖を促進する活性を有するタンパク質である。
【0035】
<(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列>
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列は、カイコのIDGFのアミノ酸配列である。本発明者は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する物質、又は、後記するように、配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する物質(タンパク質若しくはペプチド)の中に血糖降下作用を有する物質があることを初めて明らかにした。本発明者による前記した特許文献6等によれば、カイコの体液中の糖濃度を降下させる物質は、ヒト、マウス等の哺乳類の血糖値も下げる可能性が大きいので、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する物質、又は、後記するように、配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する物質(タンパク質若しくはペプチド)の中に、ヒトの血糖降下作用を有する物質がある。
【0036】
従って、本発明は、以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質である。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【0037】
配列表の配列番号1に示されるIDGFのアミノ酸配列と相同性の高い、ヒト又はマウスのアミノ酸配列を検索した。公知の配列比較ソフトである「CLUSTAL W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)」を用い相同性の検索をした。
その結果、マウスのキチナーゼ類である
Chitinase3-like3・・・24%
Chitinase3-like4・・・24%
Chitinase3-like1・・・21%
Chitinase acidic precursor・・・19%
Chitinase like・・・17%
Chitinase1・・・16%
について、16%以上の相同性を示したので、これらのタンパク質は、IDGFなるタンパク質と関係がある。従って、これらのタンパク質は、マウスの血糖降下作用、またヒトの血糖降下作用を有すると考えられる。
【0038】
また、ヒトのキチナーゼ類である
Chitinase3-like2 isoform a・・・21%
Chitinase3-like2 isoform b・・・21%
Chitotriosidase precursor・・・17%
について、16%以上の相同性を示したので、これらのタンパク質は、IDGFなるタンパク質と関係がある。従って、これらのタンパク質は、ヒトの血糖降下作用を有すると考えられる。
【0039】
従って、本発明は、(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質でもある。「配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチド」の中には、当然に、ヒトの血糖降下作用を有さないものも多数ある。しかしながら、本発明は、特定のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドである血糖降下物質であり、特定の効果、すなわち血糖降下効果を有するものに限定されているから、発明の外延は明確である。
【0040】
上記(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドとしては、ヒトに対して血糖降下作用を及ぼすものであれば特に限定されないが、例えば、上記したような、哺乳動物のキチナーゼ類であるChitinase3-like2 isoform b、Chitinase3-like2 isoform a、Chitotriosidase precursor、Chitinase3-like3、Chitinase3-like4、Chitinase like、Chitinase acidic precursor、Chitinase1、Chitinase3-like1等が挙げられる。
【0041】
ヒトに投与する場合の免疫機構や副作用の点から、ヒトのキチナーゼ類が好ましい。ヒトのキチナーゼ類としては、具体的には、Chitinase3-like2 isoform b、Chitinase3-like2 isoform a、Chitotriosidase precursor等が挙げられる。
【0042】
本発明において、ペプチドには、2〜10個のアミノ酸からなるオリゴペプチド、10〜100個のアミノ酸からなるポリペプチド、それ以上長いマクロペプチド等を全て含み、環状ペプチド、鎖状ペプチド等のペプチド鎖の種類にもよらないものとする。
【0043】
本発明は、更に、昆虫類の幼虫にガラクトースを投与することによって、昆虫類の幼虫の体液中に誘導されるタンパク質若しくはペプチドである血糖降下物質及びそれを用いた血糖降下剤に関する。配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列は、カイコのIDGFのアミノ酸配列であるが、カイコには限定されず、昆虫類の幼虫にガラクトースを投与することによって、該昆虫類の幼虫の体液中に誘導されるものであれば、(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列でありさえすれば、本発明の血糖降下物質に含まれる。
【0044】
<昆虫類の幼虫>
本発明における昆虫類としては、鱗翅目、甲虫目、双翅目、膜翅目、直翅目、網翅目等の昆虫綱に属するものが好ましい。昆虫綱に属するものとしては特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができる。取り扱いの便宜性から、昆虫綱に属するものの幼虫であることが特に好ましい。かかる幼虫としては特に限定はないが、具体的には、鱗翅目(ガ、チョウ等を含む)、甲虫目(カブトムシ等を含む)、双翅目(ハエを含む)、膜翅目(ゴキブリを含む)、直翅目(バッタを含む)、網翅目(ハチを含む)等に属するものの幼虫が好ましいものとして挙げられる。
【0045】
これらのうち、完全変態型昆虫の実質的に無毛の幼虫がより好ましい。完全変態型昆虫とは、卵、幼虫、蛹、成虫の成長過程を経る昆虫で、その多くが幼虫時は「いもむし」と呼ばれる栄養補給に特化した実質的に無毛で単純な形態をしており、その動きも緩慢であるため、完全変態型昆虫の幼虫は、薬剤等の注射が容易である点から特に適している。
【0046】
更に、かかる幼虫としては、以下の点から、カイコが特に好ましい。
(1)入手が容易である。
(2)飼育する方法が既に確立されており、更に飼育に利便性がある。
(3)ヒト等の哺乳類の内臓・器官と類似する性質が、これまでの研究である程度分かっている。
(4)遺伝系統が確立されており、遺伝的均一性の維持ができている。
(5)比較的大型で、動きが緩慢であり、実質上無毛なので、定量的に注射できる等、薬物の投与が容易である。
(6)脂肪体を有しており、脂肪体を取り出して、含有する物質の定量が可能である。
(7)マウス、ラット等に比べると安価で、狭いスペースで多数の個体を飼育でき、倫理的な問題も少ない為、スクリーニング的な評価を行うことが容易である。
(8)被検物質が少量しかない場合でも評価を行うことができる。
(9)齢を揃える等、同じ状態の個体を揃えることが容易である。
(10)体液を採取して、糖、脂質、酵素等の成分を解析することが可能である。
【0047】
以上のうち、(5)以降は完全変態型昆虫の幼虫全般にいえる特色となっており、完全変態型昆虫の実質的に無毛の幼虫が実験動物として優れた特徴を持っている。上記幼虫は、被検物質の投与のしやすさ、血液や脂肪体の採取のしやすさ等の観点から、大型の幼虫であることが好ましい。ここで「大型の幼虫」とは、体長が1cm以上である幼虫であり、好ましくは、1.5cm以上15cm以下であり、特に好ましくは、2cm以上5cm以下である。また、カイコ等の場合は、4齢〜5齢の幼虫が好ましく、5齢の幼虫が特に好ましい。
【0048】
本発明に用いられる昆虫類の幼虫としては、一般に、血糖値の恒常性を維持する機構を有しているもの、血液中又は脂肪体中に糖を貯蔵する機能を有しているもの、又は、インスリン様ペプチドホルモンを有しているものが、ヒトの臨床との対応付けが可能であるという点で好ましい。また、インスリンシグナル伝達経路、MAPKシグナル伝達経路等の糖濃度制御機構を体内に有しているものが好ましい。また、注射器を用いて容易に被検薬物の水溶液の血液内投与が可能である幼虫が、探索を容易にするという点で好ましい。一般に「いもむし」と呼ばれるチョウ、ガ、ハチ等の幼虫;カブトムシ、クワガタムシ等の幼虫等は、注射器を用いて容易に被検薬物の水溶液の血液内投与が可能であるという点で特に好ましい。
【0049】
<ガラクトース>
本発明における「ガラクトース」とは、D−ガラクトースであり、α型とβ型を含む。すなわち、[α]20=+144°のα型、[α]20=+52°のβ型を含む。
【0050】
また、本発明の血糖降下物質は、以下の(c)又は(d)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることが好ましい。
(c)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列
(d)ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列
【0051】
<(c)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列>
上記配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の一部であっても、血糖降下作用を有すれば、本発明の血糖降下物質として好ましい。血糖降下作用を示す可能性の点から、20個以上のアミノ酸からなるものであることが好ましく、50個以上のアミノ酸からなるものであることが特に好ましい。また、医薬品として使用する都合上は、500個以下のアミノ酸からなるものであることが好ましく、100個以下のアミノ酸からなるものであることが特に好ましい。
【0052】
<(d)ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列>
上記ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列の一部であっても、血糖降下作用を有すれば、本発明の血糖降下物質として好ましい。血糖降下作用を示す可能性の点から、20個以上のアミノ酸からなるものであることが好ましく、50個以上のアミノ酸からなるものであることが特に好ましい。また、医薬品として使用する都合上は、500個以下のアミノ酸からなるものであることが好ましく、100個以下のアミノ酸からなるものであることが特に好ましい。
【0053】
キチナーゼ類のアミノ酸配列と共通する連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドである血糖降下物質が好ましい。
【0054】
また、本発明は、下記の工程(1)ないし(5)、
(1)昆虫類の幼虫にガラクトースを投与する工程
(2)該昆虫類の幼虫の体液を採取する工程
(3)該体液中の成分を分画する工程
(4)分画されたそれぞれの画分を高血糖状態の昆虫類の幼虫に投与する工程
(5)該昆虫類の幼虫の体液中の糖濃度が低下する画分を選択する工程
を含むことを特徴とする上記血糖降下物質の製造方法である。
【0055】
<工程(1)>
ガラクトースを投与する方法としては、特に限定はなく目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、血液中への注射、飼料(餌)への添加等による経口摂取、腸内への注入等が挙げられる。簡便である点、ヒトの臨床との対応という点で、腸管内部への注射、経口摂取が好ましい。
【0056】
ガラクトースの投与量としては特に限定はなく、昆虫類の幼虫の種類、投与方法等に応じて適宜選択することができる。また、被検物質は、生理食塩水、水等で希釈して投与させることも好ましい。
【0057】
<工程(2)>
体液の採取方法としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、脂肪体に関しては、解剖して採取することが好ましく、血液に関しては、切り傷を付けてそこから採取する方法が好ましい。
【0058】
<工程(3)>
「分画」とは、複数(n)の物質成分を含有する組成物を、1つの物質成分を含有する画分、又は、nより小さい複数の物質成分を含有する画分に分けることをいう。分画の方法としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、溶解度による分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
【0059】
<工程(4)>
分画されたそれぞれの画分を高血糖状態の昆虫類の幼虫に投与する時期は特に限定はなく、昆虫類の幼虫に糖を摂取させ終えた直後、該昆虫類の幼虫の脂肪体中又は血液中の糖の濃度がほぼ最大値に達した時点、血液中の糖の濃度が正常値にまで回復してゆく時点等が挙げられるが、該昆虫類の幼虫の脂肪体中又は血液中の糖の濃度がほぼ最大値に達した時点が、実験結果の再現性を得るという点で好ましい。具体的には、例えば、「糖を摂取させ終えた直後」から「糖を摂取させ終えてから24時間経過後」の間が好ましく、「糖を摂取させ終えた直後」から「糖を摂取させ終えてから6時間経過後」までの間がより好ましく、「糖を摂取させ終えた直後」が特に好ましい。
【0060】
<工程(5)>
昆虫類の幼虫の体液中の糖濃度が低下する画分を選択するために、上記工程(4)において、複数の条件の異なる画分を高血糖状態の昆虫類の幼虫に投与することが好ましい。例えば、陽イオン交換カラムで分画する場合、溶出させる塩の濃度を変えて溶出させたり、疎水性カラムに吸着させて分画する場合、塩の濃度を変えて溶出させたりして、複数の条件の異なる画分を得ることができる。
【0061】
また、本発明は、上記工程(5)の後に、更に、下記工程(6)、上記工程(4)、上記工程(5)の順に、1回又は複数回の繰り返しを、工程として含んでいることが好ましい。なお、上記製造方法は、工程(5)で終わる。
(6)工程(5)で選択された画分中の成分を分画する工程
【0062】
<工程(6)>
画分の更なる分画の方法としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、上記した方法が挙げられる。
【0063】
上記製造方法の好ましい態様としては、例えば、以下の(A)ないし(E)が挙げられる。
(A):(1)→(2)→(3)→(4)→(5)
(B):(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)
(C):(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)
(D):(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)
(E):(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)→(6)→(4)→(5)
【0064】
上記血糖降下物質の製造方法における昆虫類の幼虫としては、特に限定されないが、上記理由と同様の理由により、カイコであることが好ましい。
【0065】
上記の血糖降下物質の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする上記の血糖降下物質は、広く「16%以上の相同性を有するアミノ酸配列」よりは、血糖降下作用を有する可能性が格段に上がる。
【0066】
また、本発明の血糖降下剤は、上記血糖降下物質を、製薬学的に許容し得る担体と共に含有してなることを特徴とする。
【0067】
<血糖降下剤>
本発明の血糖降下剤は、原末のまま用いる場合;液剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、丸剤等の各種の剤形に製剤化する場合;飲食品に添加する場合;等を問わず、あらゆる形態で用いることができる。
【0068】
賦形剤としては特に限定はないが、無機塩類、ステアリン酸マグネシウム等の有機酸塩類、タルク等のフィラー類、クエン酸等の有機酸類等を挙げることができる。上記血糖降下物質は、液剤を除き、100質量%までの任意の含量を選択することができる。各製剤中の上記血糖降下物質の含量は、その製剤の適用対象;治療、改善、予防等の適用目的;他の剤との併用等の適用方法;等によって適宜調整すればよい。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
カイコ幼虫にガラクトースを投与し、3時間後体液を採取、その後、硫安沈殿法によって体液画分を得た。この画分を高血糖状態にしたカイコ幼虫に投与し、6時間後の血糖値の変化を測定した。
【0071】
その結果、カイコにガラクトースを投与することによって、カイコの体液中に誘導される物質(群)(以下、「ガラクトースを投与したカイコ体液画分」と略記する)によって、高血糖カイコの血糖値が有意に低下した。結果を図1に示す。
【0072】
実施例2
次に、高血糖カイコの血糖値を低下させたものが、カイコにガラクトースを投与することによって、カイコの体液中に誘導される物質(群)によるものであることを明確にするために、血糖降下作用と、ガラクトースを投与したカイコ体液画分の関係に容量依存性が見られるか否かを検討した。
【0073】
その結果、ガラクトースを投与したカイコ体液画分の量と、血糖降下作用には、容量依存性が見られることが分かった。結果を図2に示す。
【0074】
実施例3
「ガラクトースを投与したカイコ体液画分」中に含有される、血糖降下物質の分離・濃縮・精製方法は以下の手順で行った。手順を図3に示す。すなわち、カイコ体液1mL中の糖1mgを下げる活性を「Total activity」=1[Unit]と定義し、各工程を行なうごとに、Unit数(activity)を上げて行くように、各工程の画分を選択していった。
【0075】
具体的には、最初に、ガラクトースを投与したカイコ体液の75%硫安沈殿画分を得た(Fraction I)。
次に、この画分を、陽イオン交換カラム(Phospho cellulose)に吸着させ、0.25MのNaClにて溶出させたものを、Unit数の大きさから選択した(Fraction II)。
そして、疎水性カラム(Phenyl sepharose)にタンパク質を濃度1Mの硫酸アンモニウムにて吸着させた後、0.6Mの濃度において溶出してくる画分を、Unit数の大きさから選択した(Fraction III)。
【0076】
【表1】

【0077】
上記表1に示すように、最終的に比活性は約280倍上昇した。また、Fraction IIIをゲルろ過クロマトグラフィーによって分画した際に46kDaのバンドの挙動と血糖降下活性が一致したため、Fraction IIIのタンパク質は血糖降下物質であると判断した。
【0078】
実施例4
精製した物質を、N末端シークエンスやマススペクトロメトリーを用いて同定した。この物質は、分子量が45kDa付近であることからインスリンではないと考えられる。このタンパク質は、アミノ酸配列「LPAVTHSK」を含んでいることが分かった。そして、この「LPAVTHSK」は、カイコのIDGFに含まれていることが分かった。IDGFは、カイコの成虫原基の増殖を促進する活性を有するタンパク質である。
【0079】
実施例5
IDGFは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。これと相同性の高い、ヒト又はマウスのアミノ酸配列を、配列比較ソフトである「CLUSTAL W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)」を用い検索をしたところ、キチナーゼ類であることが分かった。
【0080】
キチナーゼ類又はそのアミノ酸配列のなかから選ばれたアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはペプチドは、ヒトに対して血糖降下物質として作用すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の血糖降下物質は、インスリンではないことはもちろん、インスリンとは血糖降下の作用機序が異なる血糖降下物質であると考えられる。インスリンを除いて投与後6時間以内で血糖値を下げる生理活性物質は現在まで知られていないため、現在大きな問題となっている糖尿病の治療及び防止に対して、広く利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【請求項2】
上記(b)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と16%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドが、哺乳動物のキチナーゼ類である請求項1記載の血糖降下物質。
【請求項3】
上記哺乳動物のキチナーゼ類がヒトのキチナーゼ類である請求項2記載の血糖降下物質。
【請求項4】
昆虫類の幼虫にガラクトースを投与することによって、該昆虫類の幼虫の体液中に誘導される請求項1記載の血糖降下物質。
【請求項5】
上記昆虫類の幼虫がカイコである請求項4記載の血糖降下物質。
【請求項6】
以下の(c)又は(d)のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドであることを特徴とする血糖降下物質。
(c)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列
(d)ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列中の連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列
【請求項7】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と、ヒトのキチナーゼ類のアミノ酸配列とに共通する連続する20個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはペプチドである請求項6記載の血糖降下物質。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の血糖降下物質の製造方法であって、下記の工程(1)ないし(5)、
(1)昆虫類の幼虫にガラクトースを投与する工程
(2)該昆虫類の幼虫の体液を採取する工程
(3)該体液中の成分を分画する工程
(4)分画されたそれぞれの画分を高血糖状態の昆虫類の幼虫に投与する工程
(5)該昆虫類の幼虫の体液中の糖濃度が低下する画分を選択する工程
を含むことを特徴とする血糖降下物質の製造方法。
【請求項9】
上記工程(5)の後に、更に、下記工程(6)、上記工程(4)、上記工程(5)の順に1回又は複数回の繰り返しを含む請求項8記載の血糖降下物質の製造方法。
(6)工程(5)で選択された画分中の成分を分画する工程
【請求項10】
上記昆虫類の幼虫がカイコである請求項8又は請求項9記載の血糖降下物質の製造方法。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10の何れかの請求項記載の血糖降下物質の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする血糖降下物質。
【請求項12】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の血糖降下物質又は請求項11記載の血糖降下物質を、製薬学的に許容し得る担体と共に含有してなることを特徴とする血糖降下剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251952(P2011−251952A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128203(P2010−128203)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 東京大学大学院薬学研究科修士論文発表要旨集 第145〜146ページ (発行日:平成22年2月22日)
【出願人】(501481492)株式会社ゲノム創薬研究所 (25)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】