衛生洗浄装置
【課題】使用者へ冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置を提供することである。
【解決手段】温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、加圧空気だけを噴射する第2の乾燥と、温風だけを吹き出す第3の乾燥を有し、3者を組合せて運転するので、使用状況に応じた効率のよい乾燥が可能となる。
【解決手段】温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、加圧空気だけを噴射する第2の乾燥と、温風だけを吹き出す第3の乾燥を有し、3者を組合せて運転するので、使用状況に応じた効率のよい乾燥が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を噴出と温風により濡れた表面を乾燥させる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置においては、使用者の好みに応じた洗浄を実現すべく各種の機能が案出されてきた。使用者は、各種機能を用いた衛生洗浄装置を用いて局部洗浄を行い、トイレットペーパー等の紙により局部に付着した水滴の除去を行っていた。しかし、近年、トイレットペーパー等の紙の代替として、乾燥装置が提案されている( 例えば、特許文献1参照)。図12は従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の一例を示す模式的平面図。図13はこの従来の衛生洗浄装置の模式的側断面図である。
【0003】
図12および図13に示すように、衛生洗浄装置は、便器1上に配置された便座2、便蓋3、衛生洗浄装置の本体ケース4および9は水洗タンク(ロータンク)を含んで構成されている。
【0004】
本体ケース4には、温風吹出装置5からの温風を吹出す温風吹出口7と、人体局部に温水を噴射する洗浄水噴射ノズル8と、この洗浄水噴射ノズル8に温水を供給する洗浄水送水用ポンプ11および温水タンク12と、空気圧縮機13で圧縮した空気を溜める高圧空気溜め14と、高圧空気溜め14の出口を開閉する電磁弁15を内蔵している。
【0005】
便座2には、内部に設けた空洞16と、この空洞16内の空気を噴出する複数の孔よりなる空気噴出ノズル18を有し、電磁弁15と空洞16を高圧ホース17で接続している。
【0006】
人体10が便座2に着座し用便後、洗浄操作を行うと、洗浄水送水用ポンプ11が稼働し、温水タンク12を通して洗浄水噴射ノズル8より温水が被洗浄面に噴射され、これにより被洗浄面を洗浄する。洗浄後乾燥操作により空気圧縮機13が稼働し、高圧空気溜め14、電磁弁15、高圧ホース17、空洞16および空気噴出ノズル18を通して高圧空気が被洗浄面に噴出し、被洗浄面に付着した水滴を吹き飛ばして飛散または拡散させる。つぎに温風吹出装置5を稼働させ風路6を通して温風吹出口7より温風を被洗浄面に吹き出し被洗浄面の乾燥を行う。
【特許文献1】特開昭58−218531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の構成では、高圧空気溜め14の圧縮空気を空気噴出ノズル18から開放することで短時間に被洗浄面の水滴を吹き飛ばしていた。
【0008】
しかしながら、従来例のように空気圧縮機13から一旦高圧空気溜め14に空気を貯留すると、加圧時に加熱された空気は高圧空気溜め14からの放熱によって冷却されてしまい、圧縮空気を空気噴出ノズル18から開放する際に、空気が膨張により熱が奪われて、使用者に極度の冷風感を与えてしまう。さらに人体局部に付着する水滴が蒸発するため潜熱により更に冷たさを感じてしまう。
【0009】
このように濡れた人体局部に圧縮空気を噴射させると、特に冬場は使用者に耐え難い冷風感を与えてしまっていた。
【0010】
これら課題を解消する方法として、圧縮空気を被洗浄面に噴出しながら温風も吹き出す方法があるが、単純に両者を同時に運転するだけでは、気温によって温風が熱かったり、温度ムラが発生したり、温度感覚や冷風感覚の個人差に対応できなかったりした。
【0011】
本発明の目的は、使用者へ冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る衛生洗浄装置は、被乾燥面を加圧空気の噴流と温風によって乾燥する乾燥機能を備えたものであって、温風と加圧空気を混合した噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、加圧空気だけを被乾燥面に噴射する第2の乾燥と、温風だけを被乾燥面に吹き出す第3の乾燥を有し、使用状況や使用者の好み応じた乾燥が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾燥条件を選択できるので、使用者に冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、使用者が着座可能な便座部と、使用者の局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段と、使用者の局部周辺の被乾燥面に加圧空気を噴出する空気噴出手段と、前記被乾燥面に温風を送風する加熱手段を備えた衛生洗浄装置であって、前記空気噴出手段と加熱手段を同時に駆動し、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、前記空気噴出手段だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段だけを駆動する第3の乾燥を有すものである。
【0015】
これは、濡れた被乾燥面に加圧空気を噴射して水滴を吹き飛ばす際に、例えば冬場等の気温の低い状況では温風を前記加圧空気により誘引しながら混合して被乾燥面に噴射する第1の乾燥で使用者に冷風感を与えることなく水滴を除去する。また、夏場などの気温の高い状況では、加圧空気だけを被乾燥面に噴射する第2の乾燥を用いて快適に水滴を除去する。さらに加圧空気を当てたくない状況では、温風だけを被乾燥面に吹き出す第3の乾燥を用いる。
【0016】
このように使用者に冷風感を与えることなく、使用状況や使用者の好みに応じた乾燥が可能である。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の第1の乾燥に、被乾燥面へ加圧空気を噴射する前に予め温風を吹き出す予熱工程を有するものである。これにより、第1の乾燥運転を開始する際に加圧空気に誘引される温風温度が予め暖められているので、使い始めから使用者に冷風感を与えることなく、被乾燥面の水滴を効率よく除去できるものである。
【0018】
第3の発明は、特に、第1の発明の第1から第3の乾燥の組合せによって複数の乾燥運転モードを有するものである。
【0019】
これにより、例えば次のような運転モードが考えられる。
【0020】
「短時間乾燥モード」第1の乾燥のみ運転。
【0021】
「しっかり乾燥モード」第1の乾燥運転後第3の乾燥運転。
【0022】
「夏場乾燥モード」第2の乾燥のみ運転。
【0023】
「温風モード」第3の乾燥のみ運転。
【0024】
このように使用者の使い方や好みに応じた運転モードが設定可能となる。
【0025】
第4の発明は、特に、第3の発明の乾燥運転モードに前記第1の乾燥を所定時間行う工程1と、前記第3の乾燥を所定時間行う工程2を順次運転するモードを有することにより、使用者に冷風感を与えることなく、短時間で確実に乾燥をすることができる。
【0026】
また第1の乾燥運転は、加圧空気を使用するため、運転音が大きく、空気を加圧するためのポンプなどの加圧手段の寿命に限界があるため、できるだけ短時間運転としたい。本発明のように第1の乾燥と第3の乾燥を組み合わせることにより、第1の乾燥の運転時間を最小限にして水滴を除去し、第3の乾燥で被乾燥面をサラット仕上げることができる。
【0027】
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれかひとつの発明の第1の乾燥における温風吹き出し条件と、第3の乾燥における温風吹き出し条件を変更したものである。これは、第1の乾燥にける温風は圧縮空気の誘引により温風温度が下がるため、温風温度を上げるように変更するもので、その手段としては、発熱量を上げるか、風量を低下させるか、またはその両者が考えられる。さらに積極的に風量を上げつつ、それ以上に発熱量を上げる方法もある。
【0028】
これにより、使用者の冷風感を防止するだけでなく、より乾燥を促進することができる。
【0029】
第6の発明は、特に、第1から第5のいずれかひとつの発明の加圧空気の噴射運転に、被乾燥面に付着する水滴を噴流により被乾燥面の中心部に集める工程と、集めた水滴を吹き飛ばす工程を有するものである。これにより、加圧空気により付着水滴が飛散することなく、効率的に水滴を除去することができる。また、効率的水滴除去が可能となるので、乾燥装置を小型化することができる。
【0030】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。
【0032】
トイレ装置1000において、便器600には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0033】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、空気噴出手段である乾燥ノズル20を含む乾燥装置50と、洗浄水を噴出するための洗浄水噴出手段30と、加熱手段40とが設けられるとともに、制御部が内蔵されている。
【0034】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在す
ることを検知する。
【0035】
入室検知センサ700は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ700は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ700は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0036】
本体部200の制御部は、遠隔操作装置300、入室検知センサ700および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0037】
空気噴出手段50は、加圧空気を供給するエアポンプ51と、この加圧空気を噴射する乾燥ノズル20と、乾燥ノズル20から噴射される加圧空気の噴流を前後左右に移動するために、乾燥ノズル20を駆動する駆動手段52とにより構成されており、空気噴出手段50から噴射する加圧空気は被乾燥面に到達する風速が秒速20〜30mの能力を備えており、被乾燥面における噴流の当接範囲は直径約1cm程度の大きさとなっている。
【0038】
乾燥ノズル20には、洗浄水噴出手段30の洗浄ノズル部33が一体で構成されている。
【0039】
洗浄水噴射手段30は、洗浄ノズル部33以外に水道水の供給を開閉する開閉弁と、水道水を加熱する温水加熱手段31と、温水加熱手段31からの温水を洗浄ノズル部33の方向と便器600の内部方向とに流路を切換える切換弁32とで構成されており、駆動手段52は乾燥ノズル20と共用している。
【0040】
加熱手段40は、内臓のヒータに送風して温風を供給するエアファン41と、この温風を温風噴出口42に導くダクト43により構成されており、温風噴出口42より噴出する温風は前記空気噴出手段50から噴出する加圧空気の流速より遅く、秒速10m以下であり、被乾燥面に対する当接面積は広く被乾燥面の略全面に拡散する構成となっている。
【0041】
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
【0042】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥モード選択スイッチ320a,320b,320c、強さ調整スイッチ322,323および位置調整スイッチ325,326が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
【0043】
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部150(図3、図4)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座部400(図1)の各構成部の動作を制御する。
【0044】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、後述するノズル部20(図3)から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
【0045】
使用者が乾燥スイッチ314を操作することにより、使用者の局部の被乾燥面に後述す
る空気噴出手段50(図4)から加圧空気が噴出されると同時に加熱手段40(図4)から温風が吹き出される。また、使用者が乾燥モードスイッチ320a,320b,320cを選択操作することにより、前述の使用者の局部に噴出される乾燥空気の噴出条件が変更され、使用状況や使用者の好みにより任意に選択することが可能となっている。乾燥モードスイッチ320aは短時間で乾燥を終了したい場合の「急速乾燥運転」、乾燥モードスイッチ320bは局部を確実に乾燥させてさらっと仕上げる「しっかり乾燥運転」、乾燥モードスイッチ320cは加圧空気を当てたくない場合に温風だけを吹き出す「温風乾燥運転」、をそれぞれ選択できるようになっている。
【0046】
また、使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
【0047】
さらに、使用者が位置調整スイッチ325,326を操作することにより、後述する洗浄ノズル33(図3)の位置が調整される。それにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0048】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331、温風温度調整スイッチ340、水温調整スイッチ332、便座温度調整スイッチ333、除菌スイッチ335および便器洗浄スイッチ336が設けられている。
【0049】
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0050】
自動開閉スイッチ331はつまみにより構成されている。使用者が自動開閉スイッチ331のつまみを操作することにより、蓋部500(図1)の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉スイッチ331のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。
【0051】
使用者が温風温度調整スイッチ340を操作することにより、加熱手段40から使用者の局部に吹き出される温風の温度が調整される。この温風温度調整スイッチ340は、一回押す毎に設定が、「高」、「中」、「低」、「切」と切り替わる。この「切」の設定で運転した場合は、ヒータ43(図4)がオフとなり送風だけとなる。
【0052】
また、使用者が水温調整スイッチ332を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
【0053】
次に、本体部200内に設けられた洗浄水噴出手段30について説明を行う。図3は洗浄水噴出手段30および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0054】
図3に示す洗浄水噴出手段30は、開閉弁34、温水加熱手段31、切換弁32、洗浄ノズル部33、駆動手段52、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54および制御部150を含む。
【0055】
洗浄水噴出手段30の制御部150は、開閉弁34、温水加熱手段31、切換弁32、
前後駆動モータ53および左右駆動モータ54の動作を制御する。
【0056】
続いて本体部200内に設けられた乾燥機能について説明を行う。図4は乾燥機能における空気噴出手段50、加熱手段40および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0057】
図4に示す空気噴出手段50は、乾燥ノズル20、エアポンプ51、駆動手段52、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54を含む。また、加熱手段40は、エアファン41、ヒータ43および温風噴出口42を含む。前記の駆動手段52、前後駆動モータ53
、左右駆動モータ54、制御部150は、前述する洗浄水噴出手段30と共用している。
【0058】
乾燥機能の制御部150は、エアポンプ51、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54、エアファン41およびヒータ43の動作を制御する。そして、この乾燥機能は、加熱手段40と空気噴射手段50を同時に駆動させて、加熱手段40により送風される温風を、空気噴射手段50により噴射される加圧空気により誘引しながら混合して被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転と、空気噴射手段50だけを駆動して加圧空気だけ被乾燥面に噴射する第2の乾燥運転と、加熱手段40だけを駆動して温風だけ被乾燥面に吹き出す第3の乾燥運転の3通りの運転パターンを有している。
【0059】
図2の遠隔操作装置300の乾燥モードスイッチ320a「急速乾燥運転」を選択した場合、第1の乾燥運転を所定時間運転することで乾燥を短時間に終了させる。また、乾燥モードスイッチ320b「しっかり乾燥運転」を選択した場合は、第1の乾燥運転を急速乾燥運転よりも長く運転して被乾燥面の水滴を確実に除去し、その後、第3の乾燥運転である温風に切換えて被乾燥面を乾燥させる。そして、乾燥モードスイッチ320c「温風乾燥運転」を選択した場合は、第3の乾燥運転を行う。
【0060】
また、図2の遠隔操作装置300の温風温度調節スイッチを「切」設定にして、「急速乾燥運転」を選択した場合は、第2乾燥運転により加圧空気だけを被乾燥面に噴射するようにしている。この場合は、特に夏場など気温が高い場合に選択できるようになっている。
【0061】
図5は空気噴出手段50における駆動手段52の構成を示す斜視図である。
【0062】
図5に示す駆動手段52は、乾燥ノズル20と、乾燥ノズル20からの空気噴流を左右方向に揺動する揺動手段70と、空気噴流を前後方向に往復動させる進退駆動手段71と、ベース55により構成しており、本駆動手段52は本願発明の移動手段として、乾燥ノズル20から噴射する加圧空気の被乾燥面に対する当接範囲を被乾燥面の全面に亘り任意に移動させることができる。
【0063】
乾燥ノズル20は、円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向にエアノズル孔21と洗浄水ノズル孔22が設けられ、内部に加圧空気をエアノズル孔21に導くエア空洞23と、洗浄水を洗浄水ノズル孔22に導く水用空洞24が設けられている。すなわちこの乾燥ノズル20は洗浄ノズル部33を兼ねて構成されている。
【0064】
エアポンプ51からの加圧空気は、エアチューブ25からエア空洞23に供給されるように接続され、切換弁32からの洗浄水は、水チューブ26から水用空洞24に供給されるように接続されている。エアチューブ25と水チューブ26は、乾燥ノズル20が回転や前後駆動する際に、ねじれや屈曲の力が働くためゴムなどの軟質素材で構成する。
【0065】
ベース55は上面に前傾して構成したレール部56に沿って乾燥ノズル20を傾斜させて配置し、ベース先端に開孔して配置したガイド部57に乾燥ノズル20を通して保持する。このガイド部57は摺動性のよい材質で構成し、乾燥ノズル20がスムーズに回転および摺動するように適度にクリアランスを設けている。また、ベース55上面にはレール部56に沿ってスライドするスライダ58を備え、乾燥ノズル20の終端を回転自在に保持する。そしてスライダ58の動作に合わせて乾燥ノズル20はレール部56に沿って駆動する。
【0066】
進退駆動手段71は、前後駆動モータ53と、スライダ58とネジ部59により構成され、前後駆動モータ53は、ベース55の後部に配置し、レール部56に平行に配置したネジ部59を正逆回転するよう接続されている。このネジ部59は、スライダ58のナット部60にセットされ、ネジ部59の回転に従ってスライダ58がレール部59上を駆動する。したがって、前後駆動モータ53の回転に合わせてスライダ58に保持された乾燥ノズル20が前後に進退駆動する。ここでの前方向とは図5のA方向を表し、後方向とはB方向を表しており、前方向は便座400に着座した用便者の前面方向に対応し、後方向は用便者の背面方向に対応する。
【0067】
揺動手段70は、スライダ58に配置した左右駆動モータ54、歯車A61、歯車B62および歯車C63より成り、左右駆動モータ54の回転を歯車A61、歯車B62および歯車C63を介して乾燥ノズル20に伝える。したがって、左右駆動モータ54の正逆回転に応じて乾燥ノズル20が回転し、エアノズル孔21から噴出する空気噴流は図5のCおよびDの右左方向に揺動する。
【0068】
以下に制御部150における制御動作について図6、図7、図8および図9を加えて説明する。図6は制御部150による「おしり洗浄」および「乾燥」運転における制御動作のタイムチャート、図7は「おしり洗浄」および「乾燥」の運転状態の模式的断面図である。図8および図9は「乾燥」運転状態の被乾燥面における噴流の当接範囲Eの移動パターンを示す模式図である。なお図6に示す「乾燥」の運転モードは図2の乾燥モードスイッチ320aが選択された状態の「急速乾燥運転」であり、温風温度調整スイッチ340は「中」設定とした状態のタイムチャートである。この「急速乾燥運転」は、乾燥機能における温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転で行う。
【0069】
図6に示すように、まだ操作がされていない状態のT0の時点では、乾燥ノズル20(洗浄ノズル部33)の前後方向は後端の収納位置に配置されている。乾燥ノズル20の左右方向は、揺動手段70に設けた中心部位置を検出する位置センサ(図示せず)の検出位置に角度設定されている。この角度は中心角度となりエアノズル孔21と洗浄水ノズル孔22の噴流角度が上方向に設定される。
【0070】
使用者が遠隔操作装置300のおしりスイッチ312を押下操作するT1において、開閉弁34が開き、水道水が温水加熱手段31に流れ込む、内蔵の流量センサ(図示せず)が水流を検出すると、温水加熱手段31への通電が開始され、加熱された温水が供給し始める。この時切換弁32は便器側の流路に設定されているので、充分に温まっていない温水は便器600内に排出される。
【0071】
温水加熱手段31からの出湯温度が所定の温度(例えば36℃)に達した時点T2において、前後駆動モータ53を運転させて洗浄ノズル部33を中心部位置(例えば前方100mm)まで前進させる。そしてT3において切換弁32により洗浄水を洗浄ノズル部33側に切換え、使用者の被洗浄面に洗浄水を噴出する。温水加熱手段31への電力制御は、出湯温度を検出する温度センサ(図示せず)の検出温度が設定温度(例えば40℃)になるように公知PIDやFF制御を用いて行う。また、洗浄水の流量は切換弁32の弁開
度を調整することにより使用者の好みの量に設定されている。このおしり洗浄における被洗浄面の濡れ状態は図7(a)に示すように洗浄水が直接当たる中心部だけでなく、水滴が流れて周辺部を濡らしてしまう。
【0072】
おしり洗浄が終了し、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作する図6のT4において、切換弁32により洗浄水を便器600側に切換え、洗浄ノズル部33からの洗浄水噴出を停止すると同時に、温水加熱手段31への通電を停止し、前後駆動モータ53を逆転させて洗浄ノズル部33を収納位置まで後退させる。そしてT5で開閉弁34を閉じて通水を遮断して、洗浄動作を終了する。
【0073】
なお本実施の形態では、おしり洗浄における動作を説明したが、遠隔操作装置300のビデスイッチ313押下操作するビデ洗浄を押下操作する場合においても、基本となるシーケースは同様である。ただ、ビデ洗浄の場合は、ビデに対応する洗浄ノズル位置と流量設定に変更される。
【0074】
次にT6において使用者が遠隔操作装置300の乾燥スイッチ314を押下操作すると、エアファン41とヒータ43が運転され温風噴出口42から温風を吹出すための制御を開始する。吹出される温風温度はヒータ43への通電量をフィードバック制御して、適温に制御される。そして温風噴出口42から使用者の洗浄面である被乾燥面の略全面に対して送風される。
【0075】
この時同時にエアポンプ51が短時間(たとえば1秒間)だけ運転され、加圧空気が乾燥ノズル20のエアノズル孔21より一瞬噴出される。この動作は、乾燥ノズル20が収納位置にある状態で、乾燥ノズル20表面に付着した水滴を吹き飛ばして、使用者に対して水滴の再付着を防止する。
【0076】
その後、前後駆動モータ53を運転させて乾燥ノズル20を最前進位置(例えば前方150mm)まで前進させながら、左右駆動モータ54を運転させて乾燥ノズル20の左右角度を右端角度(例えば+50°)まで角度変更する。
【0077】
T7において、エアポンプ51の運転を開始して、被乾燥面に対してエアノズル孔21から加圧空気の噴射を開始する。
【0078】
そしてT7からT8の第1のステップにおいて、駆動手段52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、乾燥ノズル20の前後駆動を所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から右側所定角度(例えば+50°から+20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第1のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の右側所定位置から前後方向に高速に移動しながら徐々に中心部に接近してくる。したがって、図8の動作パターンP1に示すように、空気噴流当接範囲Eは被乾燥面Fの右端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図7(b)に示すように、被乾燥面の右側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0079】
図6のT8では一旦エアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の左右角度を左端角度(例えば−50°)まで角度変更する。そしてT9において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0080】
そしてT9からT10の第2のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を第1の
ステップと同様に所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時に乾燥ノズル20の左右角度を左端角度から左側所定角度(例えば−50°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第2のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の左側所定距離から前後方向に高速に移動する周期移動しながら徐々に中心部に漸進移動して接近してくる。したがって、図8の動作パターンP2に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの左端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図7(C)に示すように、被乾燥面の左側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0081】
以上の第1のステップと第2のステップによって被洗浄面に付着して残る水滴は中心部を中心に前後残るのみとなる。
【0082】
人体の臀部は肛門や陰茎の洗浄中心部に対して左右両サイドに凸部が形成されているため、便座に座った場合に洗浄中心部より左右両サイドが低くなる。したがって、洗浄水が左右に濡れ広がりやすく、乾燥時に最初に中心部に空気噴流を当ててしまうと、付着した水滴が左右に大きく広がり、濡れ面積が拡大してしまう。上述のように第1のステップと第2のステップによって被洗浄面の水滴が左右に広がるのを防止しながら吹き飛ばすので、効率の良い乾燥ができる。
【0083】
第2のステップの終了時点T10では、乾燥ノズル20を最前進位置まで前進させる。そして、T10からT11の第3のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を最先進位置から中心部方向にゆっくり後退させながら、同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第3のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがて、図9の動作パターンP3に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの先端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に斬新移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより前方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0084】
T11では一旦エアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向位置を後部所定位置(例えば前方50mm)まで移動させる。そしてT12において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0085】
そしてT12からT13の第4のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を後部所定位置から中心部方向にゆっくり前進させながら、同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第4のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら後方の所定距離から前方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがって、図9の動作パターンP4に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの後端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより後方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0086】
以上の第1から第4のステップによって被乾燥面に付着して残る水滴は中心部のみとなる。
【0087】
前記の第1から第4のステップでの被乾燥面に付着する水滴への作用を説明する。各ステップの動作中の被乾燥面への空気噴流の駆動方向が、中心部に向けて移動する速度より
、中心部に対して略接線方向の移動速度の方を充分に速くしているので、被乾燥面に衝突して広がる空気流れ方向が、前記の略接線方向に対して垂直方向の流れ成分が多くなる。したがって、この略接線方向に駆動する空気噴流と中心部の間に付着する水滴は、略接線方向に対して垂直方向の空気流に押されて中心部方向に移動するように作用する。そして徐々に空気噴流を中心部に接近させるので、中心部方向に集まってくる。この動きを第1から第4のステップにおいて右、左、前、後の4方向から行うことによって、水滴は中心部に集まる。このように第1から第4のステップが被乾燥面に付着する水滴を被乾燥面の中心部に集める工程となる。
【0088】
T13では再びエアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向位置を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで移動させる。そしてT14において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0089】
そして、T14からT15の第5のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を前方の所定位置から後退を開始し、中心部を通過して、中心部より後方の所定距離(例えば前方50mm)までをゆっくりと後退する。同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第5のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動する周期移動をしながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に漸進移動をして中心部に接近し、さらに中心部を通過して後方の所定位置まで漸進移動する。したがって被乾燥面に対して空気噴流の当たる位置が前方から中心部を通って後方に徐々に移動するので、被乾燥面の中央部に残る水滴を、完全に吹き飛ばすことができる。すなわち、この第5のステップが集めた水滴を吹き飛ばす工程となる。
【0090】
T15でエアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向は後端の収納位置に移動させる。乾燥ノズル20の左右方向は、中心角度に戻す。さらに、エアファン41とヒータ43の運転を停止して、温風噴出口42から温風が吹出しを終了する。
【0091】
以上、本実施の形態においては、乾燥ノズル20からの加圧空気が被乾燥面に噴射される際に、温風噴出口42から温風が被乾燥面に吹付けられているので、温風は加圧空気に誘引されて加圧空気を暖めながら噴射され、より効率よく乾燥するとともに、空気噴流の冷風感を防止することができる。
【0092】
次に図2の乾燥モードスイッチ320bが選択された状態の「しっかり乾燥運転」での制御動作を図10のタイムチャートを用いて説明する。この「しっかり乾燥運転」は、乾燥機能における温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転と、温風のみを被乾燥面に吹き出す第3の乾燥運転の組合せにより行う。
【0093】
説明は図6のタイムチャートと異なる点を中心に行い、同一動作については同一の番号・記号を用いて説明は省略する。
【0094】
図10に示すように、T51において使用者が遠隔操作装置300の乾燥スイッチ314を押下操作すると、T51からT6の間はエアファン41とヒータ43が運転され温風噴出口42から温風運転のみを行う。すなわち、被乾燥面へ加圧空気を噴射する前に予め温風を吹き出す予熱工程となり、T7から被乾燥面に噴射される高圧空気に誘引される温風温度が充分に上昇するので、乾燥開始時に使用者に冷風感を与えることがない。この間約5秒程度は必要となる。またこの間は、エアファン41の風量を低下させてヒータ43の温度上昇を早くすることも有効である。
【0095】
T7からT13までは、図6と同様に第1から第4のステップで被乾燥面に付着する水
滴を被乾燥面の中心部に集める工程が運転される。そして、T14からT18までが集めた水滴を吹き飛ばす工程となる。ただし、図6と異なる点は、乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させながら、前後駆動を前方の所定位置から後方の所定位置までをゆっくりと後退、前進、後退と繰り返すことにある。すなわち、吹き飛ばし工程の時間を長くして、被乾燥面に残っている水滴を確実に除去している。この間、加圧空気の噴流が被乾燥面の中央部を3回通過するので、確実な水滴除去と乾燥促進が可能となる。
【0096】
T18でエアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向は後端の収納位置に移動させる。乾燥ノズル20の左右方向は、中心角度に戻す。ここで第1の乾燥運転が終了する。
【0097】
T18からT19の間は、第3の乾燥運転に切替わり、エアファン41とヒータ43だけの運転となる。この間で被乾燥面全体に温風を送風することにより、表面に残る水分が蒸散して肌にサラット感を与えることができる。
【0098】
T19は使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作することにより、エアファン41とヒータ43の運転を停止して、温風噴出口42から温風が吹出しを終了する。
【0099】
ただし、乾燥終了は所定時間が経過して自動的に停止させてもよい。
【0100】
また、温風温度の設定は第1の乾燥運転と、第3の乾燥運転で同じ条件としていたが、第1の乾燥では、温風が加圧空気により誘引され冷却されるので、選定温度を上げて運転した方が、冷風感防止と乾燥促進効果がより得られる。また、被乾燥面の水分量が乾燥時間経過と共に減少するため、表面での蒸発潜熱による冷却作用も減少するので、第3の乾燥運転時の温風温度設定は下げることが望ましい。これら温風温度設定を自動で行ってもよい。
【0101】
以上のように、おしり洗浄とビデと乾燥を1本のノズルで構成し、駆動手段も共用したので、ノズルの設置面積を小さくでき、さらに部品点数が少なくできるため、省スペース化や低コスト化が実現できる。
【0102】
さらに、乾燥のための加圧空気を単一のノズル孔から噴射するように構成しているので、低流量でも空気噴流の流速が大きくでき、小容量のエアポンプでも高い乾燥性能が得られる。すなわち、噴流の流速が大きいので被乾燥面に付着した水滴に噴流が当たる際の水滴を引き剥がすエネルギーが大きくなるため、水滴を効率よく吹き飛ばすことができる。
【0103】
上記のように空気噴出手段50と加熱手段40を同時に駆動し、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、空気噴出手段50だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段40だけを駆動する第3の乾燥を有することで、季節や個人の好みに応じた乾燥条件を選択でき、使用者に冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できるだけでなく、被乾燥皮膚面に到達する風速が秒速20〜30mの加圧空気を直径約1cm程度の大きさのように狭く局部的に当てながら、蛇行するように順次移動させることで、一種のマッサージのような効果による心地良さを得ることができる。しかも、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、空気噴出手段50だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段40だけを駆動する第3の乾燥を有することで、組み合せにより個人の好みや状況に合った選択ができる。したがって、乾燥目的ではなく、マッサージ効果だけの目的で使用するモードスイッチをコントローラ300に設けてもよい。
【0104】
なお、本実施の形態においては、おしり洗浄とビデを同一のノズル孔で行ったが、1本の円筒にそれぞれ単独のノズル孔を配置して構成してもよいし、おしり洗浄とビデをそれぞれ独立したノズルと駆動手段を配置しても良い。
【0105】
また、本実施の形態では洗浄と乾燥を一本の円筒で構成して、駆動手段を共用したが、これをそれぞれ独立したノズルと駆動手段で構成してもよい。
【0106】
さらに、本実施の形態では乾燥ノズルを単一のノズル孔により構成したが、複数のノズル孔により加圧空気を噴射する構成でもよいし、乾燥ノズルおよび駆動手段を複数配置してもよい。そして、複数の空気噴流により被乾燥面の水滴を中心部に集めるように駆動する方が乾燥時間を短縮することができる。また、本実施の形態においては加圧空気の流速を秒速20〜30mとしたが、水滴を吹き飛ばす効果を得るためには秒速10m以上が最低必要であり、噴流の当接範囲の大きさの設定要素であるノズル孔の大きさやノズル孔の数はエアポンプの能力と加圧空気の流速を考慮して選択する必要がある。
【0107】
また、本実施の形態では移動手段として乾燥ノズル全体を駆動手段で駆動する構成としたが、これに限るものではなく、乾燥ノズルのエアノズル孔のみ、あるいはエアノズル孔を含む周辺の部材のみを移動あるいは角度を変更することにより噴流の噴射方向を変更することにより、噴流の当接範囲を移動する構成としても良く、あるいはエアノズルの前方に噴流の方向をかえる風向変更手段を設ける構成等が考えられる。
【0108】
また、本実施の形態では第1のステップから第5のステップを順次実行したが、各ステップは繰り返し実行してもよいし、各ステップの順番を入れ替えてもよい。また、第1と第2のステップを省略しても良いし、第3と第4のステップを省略しても良い。
【0109】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。
【0110】
第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置が、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置と異なるのは、以下の点である。
【0111】
図11は、第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における空気噴出手段の乾燥ノズルおよび揺動手段の部分斜視図を示すものである。
【0112】
図11に示す揺動手段80は、乾燥ノズル81の基部82に一体的接続する回転軸部83と、この回転軸部83の軸心84を中心に回動自在に支持するスライダ85と、回転軸部83を回転作用させる左右駆動モータ86と、左右駆動モータ86の回転力を回転軸部83に伝達する歯車A87および歯車B88を含む。
【0113】
スライダ85による前後駆動機能は第1の実施の形態と同様であり、ナット部60も同様に構成されている。
【0114】
乾燥ノズル81の内部構成は第1の実施の形態と同様に円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向にエアノズル孔21と洗浄水ノズル孔22が設けられ、内部に加圧空気エア用のエア空洞(図示せず)と、洗浄水用の水用空洞(図示せず)が設けられている。第1の実施の形態と異なる点は、乾燥ノズル81の基部82が回転軸部83に一体的に接続され、乾燥ノズル81がこの回転軸部83を中心に扇状に往復揺動することである。
【0115】
以上の構成において、空気噴流を左右に駆動させるのは、左右駆動モータ86を正逆回転制御させて、乾燥ノズル81を所定の角度まで回転させることにより、エアノズル孔2
1自身の位置が左右の所定位置にまで移動することによって行う。
【0116】
そして、エアノズル孔21からの空気噴流89は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保って噴出されるので、被乾燥面に付着する水滴に対しての剥離作用が高くなる。また、水滴が被乾燥面の外側に移動しようとする作用がより抑制できるので、中心部に水滴を集めやすくなる。さらに、左右に空気噴流を移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が離れないので、空気流速の高い噴流を被乾燥面に当てることができ、さらに水滴除去能力を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明に係る空気噴出手段およびそれを備えた衛生洗浄装置は、少ない空気量でも効率良く水滴を吹き飛ばし、乾燥するので、衛生洗浄装置だけでなく、シャワーや手洗い等で濡れた身体の乾燥にも応用できる。また、食器洗浄機や洗車機、部品洗浄機などの洗浄機における水滴除去や乾燥の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図
【図2】(a)は図1の衛生洗浄装置における遠隔操作装置の一例でコントローラ蓋を閉じた状態を示す模式図、(b)は同コントローラ蓋を開いた状態を示す模式図
【図3】図1の衛生洗浄装置における洗浄水噴出手段の構成を示すブロック図
【図4】図1の衛生洗浄装置における空気噴出手段および加熱手段の構成を示すブロック図
【図5】図1の衛生洗浄装置における駆動手段の構成を示す斜視図
【図6】図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」および「急速乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図7】(a)は図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」の運転状態の模式的断面図、(b)は同装置における「乾燥」の第1のステップの運転状態の模式的断面図、(c)は同装置における「乾燥」の第2のステップの運転状態の模式的断面図
【図8】図1の衛生洗浄装置における「乾燥」の第1および第2ステップの被乾燥面の空気噴流の移動パターンを示す模式図
【図9】図1の衛生洗浄装置における「乾燥」の第3および第4ステップの被乾燥面の空気噴流の移動パターンを示す模式図
【図10】図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」および「しっかり乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における空気噴出手段の乾燥ノズルおよび揺動手段の部分斜視図
【図12】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の模式的平面図
【図13】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の模式的側断面図
【符号の説明】
【0119】
30 洗浄水噴出手段
40 加熱手段
50 空気噴出手段
100 衛生洗浄装置
400 便座部
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を噴出と温風により濡れた表面を乾燥させる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置においては、使用者の好みに応じた洗浄を実現すべく各種の機能が案出されてきた。使用者は、各種機能を用いた衛生洗浄装置を用いて局部洗浄を行い、トイレットペーパー等の紙により局部に付着した水滴の除去を行っていた。しかし、近年、トイレットペーパー等の紙の代替として、乾燥装置が提案されている( 例えば、特許文献1参照)。図12は従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の一例を示す模式的平面図。図13はこの従来の衛生洗浄装置の模式的側断面図である。
【0003】
図12および図13に示すように、衛生洗浄装置は、便器1上に配置された便座2、便蓋3、衛生洗浄装置の本体ケース4および9は水洗タンク(ロータンク)を含んで構成されている。
【0004】
本体ケース4には、温風吹出装置5からの温風を吹出す温風吹出口7と、人体局部に温水を噴射する洗浄水噴射ノズル8と、この洗浄水噴射ノズル8に温水を供給する洗浄水送水用ポンプ11および温水タンク12と、空気圧縮機13で圧縮した空気を溜める高圧空気溜め14と、高圧空気溜め14の出口を開閉する電磁弁15を内蔵している。
【0005】
便座2には、内部に設けた空洞16と、この空洞16内の空気を噴出する複数の孔よりなる空気噴出ノズル18を有し、電磁弁15と空洞16を高圧ホース17で接続している。
【0006】
人体10が便座2に着座し用便後、洗浄操作を行うと、洗浄水送水用ポンプ11が稼働し、温水タンク12を通して洗浄水噴射ノズル8より温水が被洗浄面に噴射され、これにより被洗浄面を洗浄する。洗浄後乾燥操作により空気圧縮機13が稼働し、高圧空気溜め14、電磁弁15、高圧ホース17、空洞16および空気噴出ノズル18を通して高圧空気が被洗浄面に噴出し、被洗浄面に付着した水滴を吹き飛ばして飛散または拡散させる。つぎに温風吹出装置5を稼働させ風路6を通して温風吹出口7より温風を被洗浄面に吹き出し被洗浄面の乾燥を行う。
【特許文献1】特開昭58−218531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の構成では、高圧空気溜め14の圧縮空気を空気噴出ノズル18から開放することで短時間に被洗浄面の水滴を吹き飛ばしていた。
【0008】
しかしながら、従来例のように空気圧縮機13から一旦高圧空気溜め14に空気を貯留すると、加圧時に加熱された空気は高圧空気溜め14からの放熱によって冷却されてしまい、圧縮空気を空気噴出ノズル18から開放する際に、空気が膨張により熱が奪われて、使用者に極度の冷風感を与えてしまう。さらに人体局部に付着する水滴が蒸発するため潜熱により更に冷たさを感じてしまう。
【0009】
このように濡れた人体局部に圧縮空気を噴射させると、特に冬場は使用者に耐え難い冷風感を与えてしまっていた。
【0010】
これら課題を解消する方法として、圧縮空気を被洗浄面に噴出しながら温風も吹き出す方法があるが、単純に両者を同時に運転するだけでは、気温によって温風が熱かったり、温度ムラが発生したり、温度感覚や冷風感覚の個人差に対応できなかったりした。
【0011】
本発明の目的は、使用者へ冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る衛生洗浄装置は、被乾燥面を加圧空気の噴流と温風によって乾燥する乾燥機能を備えたものであって、温風と加圧空気を混合した噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、加圧空気だけを被乾燥面に噴射する第2の乾燥と、温風だけを被乾燥面に吹き出す第3の乾燥を有し、使用状況や使用者の好み応じた乾燥が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾燥条件を選択できるので、使用者に冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、使用者が着座可能な便座部と、使用者の局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段と、使用者の局部周辺の被乾燥面に加圧空気を噴出する空気噴出手段と、前記被乾燥面に温風を送風する加熱手段を備えた衛生洗浄装置であって、前記空気噴出手段と加熱手段を同時に駆動し、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、前記空気噴出手段だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段だけを駆動する第3の乾燥を有すものである。
【0015】
これは、濡れた被乾燥面に加圧空気を噴射して水滴を吹き飛ばす際に、例えば冬場等の気温の低い状況では温風を前記加圧空気により誘引しながら混合して被乾燥面に噴射する第1の乾燥で使用者に冷風感を与えることなく水滴を除去する。また、夏場などの気温の高い状況では、加圧空気だけを被乾燥面に噴射する第2の乾燥を用いて快適に水滴を除去する。さらに加圧空気を当てたくない状況では、温風だけを被乾燥面に吹き出す第3の乾燥を用いる。
【0016】
このように使用者に冷風感を与えることなく、使用状況や使用者の好みに応じた乾燥が可能である。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の第1の乾燥に、被乾燥面へ加圧空気を噴射する前に予め温風を吹き出す予熱工程を有するものである。これにより、第1の乾燥運転を開始する際に加圧空気に誘引される温風温度が予め暖められているので、使い始めから使用者に冷風感を与えることなく、被乾燥面の水滴を効率よく除去できるものである。
【0018】
第3の発明は、特に、第1の発明の第1から第3の乾燥の組合せによって複数の乾燥運転モードを有するものである。
【0019】
これにより、例えば次のような運転モードが考えられる。
【0020】
「短時間乾燥モード」第1の乾燥のみ運転。
【0021】
「しっかり乾燥モード」第1の乾燥運転後第3の乾燥運転。
【0022】
「夏場乾燥モード」第2の乾燥のみ運転。
【0023】
「温風モード」第3の乾燥のみ運転。
【0024】
このように使用者の使い方や好みに応じた運転モードが設定可能となる。
【0025】
第4の発明は、特に、第3の発明の乾燥運転モードに前記第1の乾燥を所定時間行う工程1と、前記第3の乾燥を所定時間行う工程2を順次運転するモードを有することにより、使用者に冷風感を与えることなく、短時間で確実に乾燥をすることができる。
【0026】
また第1の乾燥運転は、加圧空気を使用するため、運転音が大きく、空気を加圧するためのポンプなどの加圧手段の寿命に限界があるため、できるだけ短時間運転としたい。本発明のように第1の乾燥と第3の乾燥を組み合わせることにより、第1の乾燥の運転時間を最小限にして水滴を除去し、第3の乾燥で被乾燥面をサラット仕上げることができる。
【0027】
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれかひとつの発明の第1の乾燥における温風吹き出し条件と、第3の乾燥における温風吹き出し条件を変更したものである。これは、第1の乾燥にける温風は圧縮空気の誘引により温風温度が下がるため、温風温度を上げるように変更するもので、その手段としては、発熱量を上げるか、風量を低下させるか、またはその両者が考えられる。さらに積極的に風量を上げつつ、それ以上に発熱量を上げる方法もある。
【0028】
これにより、使用者の冷風感を防止するだけでなく、より乾燥を促進することができる。
【0029】
第6の発明は、特に、第1から第5のいずれかひとつの発明の加圧空気の噴射運転に、被乾燥面に付着する水滴を噴流により被乾燥面の中心部に集める工程と、集めた水滴を吹き飛ばす工程を有するものである。これにより、加圧空気により付着水滴が飛散することなく、効率的に水滴を除去することができる。また、効率的水滴除去が可能となるので、乾燥装置を小型化することができる。
【0030】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。
【0032】
トイレ装置1000において、便器600には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0033】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、空気噴出手段である乾燥ノズル20を含む乾燥装置50と、洗浄水を噴出するための洗浄水噴出手段30と、加熱手段40とが設けられるとともに、制御部が内蔵されている。
【0034】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在す
ることを検知する。
【0035】
入室検知センサ700は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ700は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ700は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0036】
本体部200の制御部は、遠隔操作装置300、入室検知センサ700および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0037】
空気噴出手段50は、加圧空気を供給するエアポンプ51と、この加圧空気を噴射する乾燥ノズル20と、乾燥ノズル20から噴射される加圧空気の噴流を前後左右に移動するために、乾燥ノズル20を駆動する駆動手段52とにより構成されており、空気噴出手段50から噴射する加圧空気は被乾燥面に到達する風速が秒速20〜30mの能力を備えており、被乾燥面における噴流の当接範囲は直径約1cm程度の大きさとなっている。
【0038】
乾燥ノズル20には、洗浄水噴出手段30の洗浄ノズル部33が一体で構成されている。
【0039】
洗浄水噴射手段30は、洗浄ノズル部33以外に水道水の供給を開閉する開閉弁と、水道水を加熱する温水加熱手段31と、温水加熱手段31からの温水を洗浄ノズル部33の方向と便器600の内部方向とに流路を切換える切換弁32とで構成されており、駆動手段52は乾燥ノズル20と共用している。
【0040】
加熱手段40は、内臓のヒータに送風して温風を供給するエアファン41と、この温風を温風噴出口42に導くダクト43により構成されており、温風噴出口42より噴出する温風は前記空気噴出手段50から噴出する加圧空気の流速より遅く、秒速10m以下であり、被乾燥面に対する当接面積は広く被乾燥面の略全面に拡散する構成となっている。
【0041】
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
【0042】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥モード選択スイッチ320a,320b,320c、強さ調整スイッチ322,323および位置調整スイッチ325,326が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
【0043】
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部150(図3、図4)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座部400(図1)の各構成部の動作を制御する。
【0044】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、後述するノズル部20(図3)から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
【0045】
使用者が乾燥スイッチ314を操作することにより、使用者の局部の被乾燥面に後述す
る空気噴出手段50(図4)から加圧空気が噴出されると同時に加熱手段40(図4)から温風が吹き出される。また、使用者が乾燥モードスイッチ320a,320b,320cを選択操作することにより、前述の使用者の局部に噴出される乾燥空気の噴出条件が変更され、使用状況や使用者の好みにより任意に選択することが可能となっている。乾燥モードスイッチ320aは短時間で乾燥を終了したい場合の「急速乾燥運転」、乾燥モードスイッチ320bは局部を確実に乾燥させてさらっと仕上げる「しっかり乾燥運転」、乾燥モードスイッチ320cは加圧空気を当てたくない場合に温風だけを吹き出す「温風乾燥運転」、をそれぞれ選択できるようになっている。
【0046】
また、使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
【0047】
さらに、使用者が位置調整スイッチ325,326を操作することにより、後述する洗浄ノズル33(図3)の位置が調整される。それにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0048】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331、温風温度調整スイッチ340、水温調整スイッチ332、便座温度調整スイッチ333、除菌スイッチ335および便器洗浄スイッチ336が設けられている。
【0049】
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0050】
自動開閉スイッチ331はつまみにより構成されている。使用者が自動開閉スイッチ331のつまみを操作することにより、蓋部500(図1)の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉スイッチ331のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。
【0051】
使用者が温風温度調整スイッチ340を操作することにより、加熱手段40から使用者の局部に吹き出される温風の温度が調整される。この温風温度調整スイッチ340は、一回押す毎に設定が、「高」、「中」、「低」、「切」と切り替わる。この「切」の設定で運転した場合は、ヒータ43(図4)がオフとなり送風だけとなる。
【0052】
また、使用者が水温調整スイッチ332を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
【0053】
次に、本体部200内に設けられた洗浄水噴出手段30について説明を行う。図3は洗浄水噴出手段30および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0054】
図3に示す洗浄水噴出手段30は、開閉弁34、温水加熱手段31、切換弁32、洗浄ノズル部33、駆動手段52、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54および制御部150を含む。
【0055】
洗浄水噴出手段30の制御部150は、開閉弁34、温水加熱手段31、切換弁32、
前後駆動モータ53および左右駆動モータ54の動作を制御する。
【0056】
続いて本体部200内に設けられた乾燥機能について説明を行う。図4は乾燥機能における空気噴出手段50、加熱手段40および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0057】
図4に示す空気噴出手段50は、乾燥ノズル20、エアポンプ51、駆動手段52、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54を含む。また、加熱手段40は、エアファン41、ヒータ43および温風噴出口42を含む。前記の駆動手段52、前後駆動モータ53
、左右駆動モータ54、制御部150は、前述する洗浄水噴出手段30と共用している。
【0058】
乾燥機能の制御部150は、エアポンプ51、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54、エアファン41およびヒータ43の動作を制御する。そして、この乾燥機能は、加熱手段40と空気噴射手段50を同時に駆動させて、加熱手段40により送風される温風を、空気噴射手段50により噴射される加圧空気により誘引しながら混合して被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転と、空気噴射手段50だけを駆動して加圧空気だけ被乾燥面に噴射する第2の乾燥運転と、加熱手段40だけを駆動して温風だけ被乾燥面に吹き出す第3の乾燥運転の3通りの運転パターンを有している。
【0059】
図2の遠隔操作装置300の乾燥モードスイッチ320a「急速乾燥運転」を選択した場合、第1の乾燥運転を所定時間運転することで乾燥を短時間に終了させる。また、乾燥モードスイッチ320b「しっかり乾燥運転」を選択した場合は、第1の乾燥運転を急速乾燥運転よりも長く運転して被乾燥面の水滴を確実に除去し、その後、第3の乾燥運転である温風に切換えて被乾燥面を乾燥させる。そして、乾燥モードスイッチ320c「温風乾燥運転」を選択した場合は、第3の乾燥運転を行う。
【0060】
また、図2の遠隔操作装置300の温風温度調節スイッチを「切」設定にして、「急速乾燥運転」を選択した場合は、第2乾燥運転により加圧空気だけを被乾燥面に噴射するようにしている。この場合は、特に夏場など気温が高い場合に選択できるようになっている。
【0061】
図5は空気噴出手段50における駆動手段52の構成を示す斜視図である。
【0062】
図5に示す駆動手段52は、乾燥ノズル20と、乾燥ノズル20からの空気噴流を左右方向に揺動する揺動手段70と、空気噴流を前後方向に往復動させる進退駆動手段71と、ベース55により構成しており、本駆動手段52は本願発明の移動手段として、乾燥ノズル20から噴射する加圧空気の被乾燥面に対する当接範囲を被乾燥面の全面に亘り任意に移動させることができる。
【0063】
乾燥ノズル20は、円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向にエアノズル孔21と洗浄水ノズル孔22が設けられ、内部に加圧空気をエアノズル孔21に導くエア空洞23と、洗浄水を洗浄水ノズル孔22に導く水用空洞24が設けられている。すなわちこの乾燥ノズル20は洗浄ノズル部33を兼ねて構成されている。
【0064】
エアポンプ51からの加圧空気は、エアチューブ25からエア空洞23に供給されるように接続され、切換弁32からの洗浄水は、水チューブ26から水用空洞24に供給されるように接続されている。エアチューブ25と水チューブ26は、乾燥ノズル20が回転や前後駆動する際に、ねじれや屈曲の力が働くためゴムなどの軟質素材で構成する。
【0065】
ベース55は上面に前傾して構成したレール部56に沿って乾燥ノズル20を傾斜させて配置し、ベース先端に開孔して配置したガイド部57に乾燥ノズル20を通して保持する。このガイド部57は摺動性のよい材質で構成し、乾燥ノズル20がスムーズに回転および摺動するように適度にクリアランスを設けている。また、ベース55上面にはレール部56に沿ってスライドするスライダ58を備え、乾燥ノズル20の終端を回転自在に保持する。そしてスライダ58の動作に合わせて乾燥ノズル20はレール部56に沿って駆動する。
【0066】
進退駆動手段71は、前後駆動モータ53と、スライダ58とネジ部59により構成され、前後駆動モータ53は、ベース55の後部に配置し、レール部56に平行に配置したネジ部59を正逆回転するよう接続されている。このネジ部59は、スライダ58のナット部60にセットされ、ネジ部59の回転に従ってスライダ58がレール部59上を駆動する。したがって、前後駆動モータ53の回転に合わせてスライダ58に保持された乾燥ノズル20が前後に進退駆動する。ここでの前方向とは図5のA方向を表し、後方向とはB方向を表しており、前方向は便座400に着座した用便者の前面方向に対応し、後方向は用便者の背面方向に対応する。
【0067】
揺動手段70は、スライダ58に配置した左右駆動モータ54、歯車A61、歯車B62および歯車C63より成り、左右駆動モータ54の回転を歯車A61、歯車B62および歯車C63を介して乾燥ノズル20に伝える。したがって、左右駆動モータ54の正逆回転に応じて乾燥ノズル20が回転し、エアノズル孔21から噴出する空気噴流は図5のCおよびDの右左方向に揺動する。
【0068】
以下に制御部150における制御動作について図6、図7、図8および図9を加えて説明する。図6は制御部150による「おしり洗浄」および「乾燥」運転における制御動作のタイムチャート、図7は「おしり洗浄」および「乾燥」の運転状態の模式的断面図である。図8および図9は「乾燥」運転状態の被乾燥面における噴流の当接範囲Eの移動パターンを示す模式図である。なお図6に示す「乾燥」の運転モードは図2の乾燥モードスイッチ320aが選択された状態の「急速乾燥運転」であり、温風温度調整スイッチ340は「中」設定とした状態のタイムチャートである。この「急速乾燥運転」は、乾燥機能における温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転で行う。
【0069】
図6に示すように、まだ操作がされていない状態のT0の時点では、乾燥ノズル20(洗浄ノズル部33)の前後方向は後端の収納位置に配置されている。乾燥ノズル20の左右方向は、揺動手段70に設けた中心部位置を検出する位置センサ(図示せず)の検出位置に角度設定されている。この角度は中心角度となりエアノズル孔21と洗浄水ノズル孔22の噴流角度が上方向に設定される。
【0070】
使用者が遠隔操作装置300のおしりスイッチ312を押下操作するT1において、開閉弁34が開き、水道水が温水加熱手段31に流れ込む、内蔵の流量センサ(図示せず)が水流を検出すると、温水加熱手段31への通電が開始され、加熱された温水が供給し始める。この時切換弁32は便器側の流路に設定されているので、充分に温まっていない温水は便器600内に排出される。
【0071】
温水加熱手段31からの出湯温度が所定の温度(例えば36℃)に達した時点T2において、前後駆動モータ53を運転させて洗浄ノズル部33を中心部位置(例えば前方100mm)まで前進させる。そしてT3において切換弁32により洗浄水を洗浄ノズル部33側に切換え、使用者の被洗浄面に洗浄水を噴出する。温水加熱手段31への電力制御は、出湯温度を検出する温度センサ(図示せず)の検出温度が設定温度(例えば40℃)になるように公知PIDやFF制御を用いて行う。また、洗浄水の流量は切換弁32の弁開
度を調整することにより使用者の好みの量に設定されている。このおしり洗浄における被洗浄面の濡れ状態は図7(a)に示すように洗浄水が直接当たる中心部だけでなく、水滴が流れて周辺部を濡らしてしまう。
【0072】
おしり洗浄が終了し、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作する図6のT4において、切換弁32により洗浄水を便器600側に切換え、洗浄ノズル部33からの洗浄水噴出を停止すると同時に、温水加熱手段31への通電を停止し、前後駆動モータ53を逆転させて洗浄ノズル部33を収納位置まで後退させる。そしてT5で開閉弁34を閉じて通水を遮断して、洗浄動作を終了する。
【0073】
なお本実施の形態では、おしり洗浄における動作を説明したが、遠隔操作装置300のビデスイッチ313押下操作するビデ洗浄を押下操作する場合においても、基本となるシーケースは同様である。ただ、ビデ洗浄の場合は、ビデに対応する洗浄ノズル位置と流量設定に変更される。
【0074】
次にT6において使用者が遠隔操作装置300の乾燥スイッチ314を押下操作すると、エアファン41とヒータ43が運転され温風噴出口42から温風を吹出すための制御を開始する。吹出される温風温度はヒータ43への通電量をフィードバック制御して、適温に制御される。そして温風噴出口42から使用者の洗浄面である被乾燥面の略全面に対して送風される。
【0075】
この時同時にエアポンプ51が短時間(たとえば1秒間)だけ運転され、加圧空気が乾燥ノズル20のエアノズル孔21より一瞬噴出される。この動作は、乾燥ノズル20が収納位置にある状態で、乾燥ノズル20表面に付着した水滴を吹き飛ばして、使用者に対して水滴の再付着を防止する。
【0076】
その後、前後駆動モータ53を運転させて乾燥ノズル20を最前進位置(例えば前方150mm)まで前進させながら、左右駆動モータ54を運転させて乾燥ノズル20の左右角度を右端角度(例えば+50°)まで角度変更する。
【0077】
T7において、エアポンプ51の運転を開始して、被乾燥面に対してエアノズル孔21から加圧空気の噴射を開始する。
【0078】
そしてT7からT8の第1のステップにおいて、駆動手段52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、乾燥ノズル20の前後駆動を所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から右側所定角度(例えば+50°から+20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第1のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の右側所定位置から前後方向に高速に移動しながら徐々に中心部に接近してくる。したがって、図8の動作パターンP1に示すように、空気噴流当接範囲Eは被乾燥面Fの右端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図7(b)に示すように、被乾燥面の右側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0079】
図6のT8では一旦エアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の左右角度を左端角度(例えば−50°)まで角度変更する。そしてT9において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0080】
そしてT9からT10の第2のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を第1の
ステップと同様に所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時に乾燥ノズル20の左右角度を左端角度から左側所定角度(例えば−50°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第2のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の左側所定距離から前後方向に高速に移動する周期移動しながら徐々に中心部に漸進移動して接近してくる。したがって、図8の動作パターンP2に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの左端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図7(C)に示すように、被乾燥面の左側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0081】
以上の第1のステップと第2のステップによって被洗浄面に付着して残る水滴は中心部を中心に前後残るのみとなる。
【0082】
人体の臀部は肛門や陰茎の洗浄中心部に対して左右両サイドに凸部が形成されているため、便座に座った場合に洗浄中心部より左右両サイドが低くなる。したがって、洗浄水が左右に濡れ広がりやすく、乾燥時に最初に中心部に空気噴流を当ててしまうと、付着した水滴が左右に大きく広がり、濡れ面積が拡大してしまう。上述のように第1のステップと第2のステップによって被洗浄面の水滴が左右に広がるのを防止しながら吹き飛ばすので、効率の良い乾燥ができる。
【0083】
第2のステップの終了時点T10では、乾燥ノズル20を最前進位置まで前進させる。そして、T10からT11の第3のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を最先進位置から中心部方向にゆっくり後退させながら、同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第3のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがて、図9の動作パターンP3に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの先端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に斬新移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより前方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0084】
T11では一旦エアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向位置を後部所定位置(例えば前方50mm)まで移動させる。そしてT12において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0085】
そしてT12からT13の第4のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を後部所定位置から中心部方向にゆっくり前進させながら、同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第4のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら後方の所定距離から前方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがって、図9の動作パターンP4に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの後端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより後方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0086】
以上の第1から第4のステップによって被乾燥面に付着して残る水滴は中心部のみとなる。
【0087】
前記の第1から第4のステップでの被乾燥面に付着する水滴への作用を説明する。各ステップの動作中の被乾燥面への空気噴流の駆動方向が、中心部に向けて移動する速度より
、中心部に対して略接線方向の移動速度の方を充分に速くしているので、被乾燥面に衝突して広がる空気流れ方向が、前記の略接線方向に対して垂直方向の流れ成分が多くなる。したがって、この略接線方向に駆動する空気噴流と中心部の間に付着する水滴は、略接線方向に対して垂直方向の空気流に押されて中心部方向に移動するように作用する。そして徐々に空気噴流を中心部に接近させるので、中心部方向に集まってくる。この動きを第1から第4のステップにおいて右、左、前、後の4方向から行うことによって、水滴は中心部に集まる。このように第1から第4のステップが被乾燥面に付着する水滴を被乾燥面の中心部に集める工程となる。
【0088】
T13では再びエアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向位置を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで移動させる。そしてT14において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0089】
そして、T14からT15の第5のステップにおいて、乾燥ノズル20の前後駆動を前方の所定位置から後退を開始し、中心部を通過して、中心部より後方の所定距離(例えば前方50mm)までをゆっくりと後退する。同時に乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第5のステップの動作は、乾燥ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動する周期移動をしながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に漸進移動をして中心部に接近し、さらに中心部を通過して後方の所定位置まで漸進移動する。したがって被乾燥面に対して空気噴流の当たる位置が前方から中心部を通って後方に徐々に移動するので、被乾燥面の中央部に残る水滴を、完全に吹き飛ばすことができる。すなわち、この第5のステップが集めた水滴を吹き飛ばす工程となる。
【0090】
T15でエアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向は後端の収納位置に移動させる。乾燥ノズル20の左右方向は、中心角度に戻す。さらに、エアファン41とヒータ43の運転を停止して、温風噴出口42から温風が吹出しを終了する。
【0091】
以上、本実施の形態においては、乾燥ノズル20からの加圧空気が被乾燥面に噴射される際に、温風噴出口42から温風が被乾燥面に吹付けられているので、温風は加圧空気に誘引されて加圧空気を暖めながら噴射され、より効率よく乾燥するとともに、空気噴流の冷風感を防止することができる。
【0092】
次に図2の乾燥モードスイッチ320bが選択された状態の「しっかり乾燥運転」での制御動作を図10のタイムチャートを用いて説明する。この「しっかり乾燥運転」は、乾燥機能における温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転と、温風のみを被乾燥面に吹き出す第3の乾燥運転の組合せにより行う。
【0093】
説明は図6のタイムチャートと異なる点を中心に行い、同一動作については同一の番号・記号を用いて説明は省略する。
【0094】
図10に示すように、T51において使用者が遠隔操作装置300の乾燥スイッチ314を押下操作すると、T51からT6の間はエアファン41とヒータ43が運転され温風噴出口42から温風運転のみを行う。すなわち、被乾燥面へ加圧空気を噴射する前に予め温風を吹き出す予熱工程となり、T7から被乾燥面に噴射される高圧空気に誘引される温風温度が充分に上昇するので、乾燥開始時に使用者に冷風感を与えることがない。この間約5秒程度は必要となる。またこの間は、エアファン41の風量を低下させてヒータ43の温度上昇を早くすることも有効である。
【0095】
T7からT13までは、図6と同様に第1から第4のステップで被乾燥面に付着する水
滴を被乾燥面の中心部に集める工程が運転される。そして、T14からT18までが集めた水滴を吹き飛ばす工程となる。ただし、図6と異なる点は、乾燥ノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させながら、前後駆動を前方の所定位置から後方の所定位置までをゆっくりと後退、前進、後退と繰り返すことにある。すなわち、吹き飛ばし工程の時間を長くして、被乾燥面に残っている水滴を確実に除去している。この間、加圧空気の噴流が被乾燥面の中央部を3回通過するので、確実な水滴除去と乾燥促進が可能となる。
【0096】
T18でエアポンプ51を停止して、乾燥ノズル20の前後方向は後端の収納位置に移動させる。乾燥ノズル20の左右方向は、中心角度に戻す。ここで第1の乾燥運転が終了する。
【0097】
T18からT19の間は、第3の乾燥運転に切替わり、エアファン41とヒータ43だけの運転となる。この間で被乾燥面全体に温風を送風することにより、表面に残る水分が蒸散して肌にサラット感を与えることができる。
【0098】
T19は使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作することにより、エアファン41とヒータ43の運転を停止して、温風噴出口42から温風が吹出しを終了する。
【0099】
ただし、乾燥終了は所定時間が経過して自動的に停止させてもよい。
【0100】
また、温風温度の設定は第1の乾燥運転と、第3の乾燥運転で同じ条件としていたが、第1の乾燥では、温風が加圧空気により誘引され冷却されるので、選定温度を上げて運転した方が、冷風感防止と乾燥促進効果がより得られる。また、被乾燥面の水分量が乾燥時間経過と共に減少するため、表面での蒸発潜熱による冷却作用も減少するので、第3の乾燥運転時の温風温度設定は下げることが望ましい。これら温風温度設定を自動で行ってもよい。
【0101】
以上のように、おしり洗浄とビデと乾燥を1本のノズルで構成し、駆動手段も共用したので、ノズルの設置面積を小さくでき、さらに部品点数が少なくできるため、省スペース化や低コスト化が実現できる。
【0102】
さらに、乾燥のための加圧空気を単一のノズル孔から噴射するように構成しているので、低流量でも空気噴流の流速が大きくでき、小容量のエアポンプでも高い乾燥性能が得られる。すなわち、噴流の流速が大きいので被乾燥面に付着した水滴に噴流が当たる際の水滴を引き剥がすエネルギーが大きくなるため、水滴を効率よく吹き飛ばすことができる。
【0103】
上記のように空気噴出手段50と加熱手段40を同時に駆動し、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、空気噴出手段50だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段40だけを駆動する第3の乾燥を有することで、季節や個人の好みに応じた乾燥条件を選択でき、使用者に冷風感を与えることなく短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できるだけでなく、被乾燥皮膚面に到達する風速が秒速20〜30mの加圧空気を直径約1cm程度の大きさのように狭く局部的に当てながら、蛇行するように順次移動させることで、一種のマッサージのような効果による心地良さを得ることができる。しかも、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、空気噴出手段50だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段40だけを駆動する第3の乾燥を有することで、組み合せにより個人の好みや状況に合った選択ができる。したがって、乾燥目的ではなく、マッサージ効果だけの目的で使用するモードスイッチをコントローラ300に設けてもよい。
【0104】
なお、本実施の形態においては、おしり洗浄とビデを同一のノズル孔で行ったが、1本の円筒にそれぞれ単独のノズル孔を配置して構成してもよいし、おしり洗浄とビデをそれぞれ独立したノズルと駆動手段を配置しても良い。
【0105】
また、本実施の形態では洗浄と乾燥を一本の円筒で構成して、駆動手段を共用したが、これをそれぞれ独立したノズルと駆動手段で構成してもよい。
【0106】
さらに、本実施の形態では乾燥ノズルを単一のノズル孔により構成したが、複数のノズル孔により加圧空気を噴射する構成でもよいし、乾燥ノズルおよび駆動手段を複数配置してもよい。そして、複数の空気噴流により被乾燥面の水滴を中心部に集めるように駆動する方が乾燥時間を短縮することができる。また、本実施の形態においては加圧空気の流速を秒速20〜30mとしたが、水滴を吹き飛ばす効果を得るためには秒速10m以上が最低必要であり、噴流の当接範囲の大きさの設定要素であるノズル孔の大きさやノズル孔の数はエアポンプの能力と加圧空気の流速を考慮して選択する必要がある。
【0107】
また、本実施の形態では移動手段として乾燥ノズル全体を駆動手段で駆動する構成としたが、これに限るものではなく、乾燥ノズルのエアノズル孔のみ、あるいはエアノズル孔を含む周辺の部材のみを移動あるいは角度を変更することにより噴流の噴射方向を変更することにより、噴流の当接範囲を移動する構成としても良く、あるいはエアノズルの前方に噴流の方向をかえる風向変更手段を設ける構成等が考えられる。
【0108】
また、本実施の形態では第1のステップから第5のステップを順次実行したが、各ステップは繰り返し実行してもよいし、各ステップの順番を入れ替えてもよい。また、第1と第2のステップを省略しても良いし、第3と第4のステップを省略しても良い。
【0109】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。
【0110】
第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置が、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置と異なるのは、以下の点である。
【0111】
図11は、第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における空気噴出手段の乾燥ノズルおよび揺動手段の部分斜視図を示すものである。
【0112】
図11に示す揺動手段80は、乾燥ノズル81の基部82に一体的接続する回転軸部83と、この回転軸部83の軸心84を中心に回動自在に支持するスライダ85と、回転軸部83を回転作用させる左右駆動モータ86と、左右駆動モータ86の回転力を回転軸部83に伝達する歯車A87および歯車B88を含む。
【0113】
スライダ85による前後駆動機能は第1の実施の形態と同様であり、ナット部60も同様に構成されている。
【0114】
乾燥ノズル81の内部構成は第1の実施の形態と同様に円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向にエアノズル孔21と洗浄水ノズル孔22が設けられ、内部に加圧空気エア用のエア空洞(図示せず)と、洗浄水用の水用空洞(図示せず)が設けられている。第1の実施の形態と異なる点は、乾燥ノズル81の基部82が回転軸部83に一体的に接続され、乾燥ノズル81がこの回転軸部83を中心に扇状に往復揺動することである。
【0115】
以上の構成において、空気噴流を左右に駆動させるのは、左右駆動モータ86を正逆回転制御させて、乾燥ノズル81を所定の角度まで回転させることにより、エアノズル孔2
1自身の位置が左右の所定位置にまで移動することによって行う。
【0116】
そして、エアノズル孔21からの空気噴流89は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保って噴出されるので、被乾燥面に付着する水滴に対しての剥離作用が高くなる。また、水滴が被乾燥面の外側に移動しようとする作用がより抑制できるので、中心部に水滴を集めやすくなる。さらに、左右に空気噴流を移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が離れないので、空気流速の高い噴流を被乾燥面に当てることができ、さらに水滴除去能力を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明に係る空気噴出手段およびそれを備えた衛生洗浄装置は、少ない空気量でも効率良く水滴を吹き飛ばし、乾燥するので、衛生洗浄装置だけでなく、シャワーや手洗い等で濡れた身体の乾燥にも応用できる。また、食器洗浄機や洗車機、部品洗浄機などの洗浄機における水滴除去や乾燥の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図
【図2】(a)は図1の衛生洗浄装置における遠隔操作装置の一例でコントローラ蓋を閉じた状態を示す模式図、(b)は同コントローラ蓋を開いた状態を示す模式図
【図3】図1の衛生洗浄装置における洗浄水噴出手段の構成を示すブロック図
【図4】図1の衛生洗浄装置における空気噴出手段および加熱手段の構成を示すブロック図
【図5】図1の衛生洗浄装置における駆動手段の構成を示す斜視図
【図6】図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」および「急速乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図7】(a)は図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」の運転状態の模式的断面図、(b)は同装置における「乾燥」の第1のステップの運転状態の模式的断面図、(c)は同装置における「乾燥」の第2のステップの運転状態の模式的断面図
【図8】図1の衛生洗浄装置における「乾燥」の第1および第2ステップの被乾燥面の空気噴流の移動パターンを示す模式図
【図9】図1の衛生洗浄装置における「乾燥」の第3および第4ステップの被乾燥面の空気噴流の移動パターンを示す模式図
【図10】図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」および「しっかり乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における空気噴出手段の乾燥ノズルおよび揺動手段の部分斜視図
【図12】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の模式的平面図
【図13】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の模式的側断面図
【符号の説明】
【0119】
30 洗浄水噴出手段
40 加熱手段
50 空気噴出手段
100 衛生洗浄装置
400 便座部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座可能な便座部と、使用者の局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段と、使用者の局部周辺の被乾燥面に加圧空気を噴出する空気噴出手段と、前記被乾燥面に温風を送風する加熱手段を備えた衛生洗浄装置であって、前記空気噴出手段と加熱手段を同時に駆動し、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、前記空気噴出手段だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段だけを駆動する第3の乾燥を有する衛生洗浄装置。
【請求項2】
第1の乾燥は、被乾燥面へ加圧空気を噴射する前に予め温風を吹き出す予熱工程を有する請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
第1から第3の乾燥の組合せによって複数の乾燥運転モードを有する請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
乾燥運転モードは、前記第1の乾燥を所定時間行う工程1と、前記第3の乾燥を所定時間行う工程2を順次運転するモードを有した請求項3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
第1の乾燥における温風吹き出し条件と、第3の乾燥における温風吹き出し条件を変更した請求項1から4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
加圧空気の噴射運転は、被乾燥面に付着する水滴を噴流により被乾燥面の中心部に集める工程と、集めた水滴を吹き飛ばす工程を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項1】
使用者が着座可能な便座部と、使用者の局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段と、使用者の局部周辺の被乾燥面に加圧空気を噴出する空気噴出手段と、前記被乾燥面に温風を送風する加熱手段を備えた衛生洗浄装置であって、前記空気噴出手段と加熱手段を同時に駆動し、加圧空気と温風との混合噴流を被乾燥面に噴射する第1の乾燥と、前記空気噴出手段だけを駆動する第2の乾燥と、加熱手段だけを駆動する第3の乾燥を有する衛生洗浄装置。
【請求項2】
第1の乾燥は、被乾燥面へ加圧空気を噴射する前に予め温風を吹き出す予熱工程を有する請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
第1から第3の乾燥の組合せによって複数の乾燥運転モードを有する請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
乾燥運転モードは、前記第1の乾燥を所定時間行う工程1と、前記第3の乾燥を所定時間行う工程2を順次運転するモードを有した請求項3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
第1の乾燥における温風吹き出し条件と、第3の乾燥における温風吹き出し条件を変更した請求項1から4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
加圧空気の噴射運転は、被乾燥面に付着する水滴を噴流により被乾燥面の中心部に集める工程と、集めた水滴を吹き飛ばす工程を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図7】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図7】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−228359(P2009−228359A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77345(P2008−77345)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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