説明

衛生洗浄装置

【課題】使用者の洗浄機能の使い勝手がよく、短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置を提供することである。
【解決手段】人体局部への洗浄水の噴出位置を所定範囲内で変更可能とし、前記洗浄水の噴出終了後に前記加圧空気の噴出位置を、前記洗浄水の噴出範囲よりも広い範囲で順次変更するようにしたことで、使い勝手がよく、短時間で水滴除去が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機能を備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置においては、使用者の好みに応じた洗浄を実現すべく各種の機能が案出されてきた。使用者は、各種機能を用いた衛生洗浄装置を用いて局部洗浄を行い、トイレットペーパー等の紙により局部に付着した水滴の除去を行っていた。しかし、近年、トイレットペーパー等の紙の代替として、乾燥装置が提案されている( 例えば、特許文献1参照)。図12は従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の一例を示す模式的斜視図。図13はこの従来の衛生洗浄装置のノズルの模式的平面図。図14このノズルの模式的側断面図である。
【0003】
図12から図14に示すように、衛生洗浄装置は、便器1上に配置された便座2、便蓋3、衛生洗浄装置の本体ケース4および水洗タンク5(ロータンク)を含んで構成されている。
【0004】
本体ケース4には、人体局部に向けて温風を吹出す温風吹出装置6と、人体局部に温水を噴射する洗浄水噴射ノズル8と、洗浄後の人体局部に向けて加圧空気を断続的に噴射する空気噴射ノズル9とを内蔵している。
【0005】
洗浄水噴射ノズル8と空気噴射ノズル9を一体化しノズル手段10を構成するとともに、ノズル手段10を進退動作させるノズル駆動手段A11と、ノズル手段10を左右方向に動作させるノズル駆動手段B12を設けている。
【0006】
使用者が便座2に着座し用便後、洗浄操作を行うと、ノズル駆動手段A11によりノズル手段10を突出し、洗浄水噴射ノズル8より温水が人体局部に向けて噴射される。この際、ノズル駆動手段A11とノズル駆動手段B12を操作することにより、使用者の所望する適宜な洗浄位置に調節することができる。
【0007】
洗浄後、乾燥操作すると、温風吹出装置6が駆動され、温風が吹出されるとともに、空気噴射ノズル9から人体局部に向けて加圧空気が噴射される。この際、ノズル駆動手段A11とノズル駆動手段B12を駆動して前後左右方向に噴射位置を可変して水滴を効果的に除去するとしている。
【特許文献1】特開2002−294835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の構成では、人体局部に噴射される洗浄水の洗浄位置を使用者の好みに応じて変更できるように構成されている。したがって、使用者が誤って便座2の中心から大きく外れて着座してしまったような場合でも、ノズル手段10を偏った位置まで駆動して洗浄する可能性がある。この場合、ノズル手段10の駆動範囲の限界近くまで調整駆動してしまうと、空気噴射ノズル9から加圧空気を噴射する場合に、洗浄位置を中心に前後左右に噴射位置を可変しようとしても、駆動範囲の限界方向には移動できなくなってしまう。そのため、人体局部周辺に広がって付着する水滴の内、加圧空気が移動できない方向の水滴が残ってしまう結果となる。
【0009】
人体皮膚表面に付着する水滴は、直に加圧空気が噴射されると皮膚から剥離して飛散す
るが、水滴から少し離れた位置に加圧空気が噴射された場合には、水滴の表面張力によって皮膚に付着したまま空気に押されて逃げてしまう。そのため、加圧空気が移動できない方向の水滴は広がるばかりで、飛散せずに残ってしまう。
【0010】
このように従来の構成では、洗浄位置の変更範囲と、加圧空気の噴射移動可能範囲が同じであるため、洗浄位置を変更すると加圧空気の移動範囲と洗浄位置の相対関係が変化して、水滴除去性能が悪化してしまい、大きく外れると水滴が除去できなくなる箇所が発生する課題があった。
【0011】
本発明の目的は、使用者の洗浄機能の使い勝手がよく、短時間で効率よく被乾燥面を乾燥できる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る衛生洗浄装置は、人体局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出口と、洗浄水の噴出終了後に人体局部の周辺に加圧空気を噴出する空気噴出口と、洗浄水噴出口および空気噴出口を移動する駆動手段とを含み、前記駆動手段は前記空気噴出口の移動による加圧空気噴出範囲が前記洗浄水噴出口の移動による洗浄水噴出範囲よりも広くなるように駆動されるようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄水の噴出範囲よりも広い範囲に、加圧空気を順次移動しながら噴出するので、短時間で効率よく被乾燥面の乾燥が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、人体局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出口と、人体局部の周辺に加圧空気を噴出する空気噴出口と、洗浄水噴出口および空気噴出口を移動する駆動手段とを含み、前記駆動手段は前記空気噴出口の移動による加圧空気噴出範囲が前記洗浄水噴出口の移動による洗浄水噴出範囲よりも広くなるように駆動されるものである。
【0015】
これは、洗浄水の噴出終了後に加圧空気の噴出範囲を、前記洗浄水の噴出範囲よりも広い範囲に順次移動しつつ噴出できるので、人体局部周辺に濡れ広がった洗浄水に対して全体に加圧空気を噴射する事ができるため、人体局部周辺に付着した水滴を効率よく除去することができる。
【0016】
第2の発明は、人体局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出口と、前記人体局部の周辺に加圧空気を噴出する空気噴出口とを有するノズルと、前記ノズルを含む機能部が内蔵された本体と、前記ノズルを前記本体の収納位置から使用位置まで進退駆動するとともに、前記進退駆動に左右駆動を加え、前記洗浄水および加圧空気を人体局部周辺の任意の位置に移動して噴出可能とする駆動手段とを備え、前記駆動手段は、前記洗浄水の噴出位置を所定範囲内で変更可能とし、前記洗浄水の噴出終了後に前記加圧空気の噴出位置を、前記洗浄水の所定範囲よりも広い範囲に順次変更するものである。
【0017】
これは、洗浄水の噴出位置を所定範囲内で変更可能としたので、使用者の所望する適宜な洗浄位置に調節することができる。
【0018】
また、洗浄水の噴出位置を、予め設定した軌跡に沿って移動させることにより、人体局部を広い範囲で洗浄することができる。
【0019】
また、前記洗浄水の噴出終了後に前記加圧空気の噴出位置を、前記洗浄水の噴出範囲よりも広い範囲で順次変更するので、人体局部周辺に濡れ広がった洗浄水に対して全体に加
圧空気を噴射する事ができるため、短時間で効率よく人体局部周辺に付着した水滴を除去することができる。
【0020】
さらに、洗浄水の噴出と加圧空気の噴出をひとつのノズルおよび共通の駆動手段により行うため、コンパクトに構成できるだけでなく、洗浄水と加圧空気の噴出位置の相対位置関係の精度がよく制御しやすい。
【0021】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の加圧空気の噴出範囲を、前記洗浄水の平均的噴出位置が略中心となるように設定するものである。すなわち、洗浄水の洗浄位置を使用者が移動調整した場合に、この洗浄水の噴出された移動位置を中心として加圧空気の噴出範囲を設定するものである。したがって、洗浄位置が変わっても加圧空気による水滴除去効果を安定に高く維持できる。
【0022】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれかひとつの発明の加圧空気の噴出範囲の面積を、前記洗浄水の噴出範囲の面積に比例的に設定するものである。
【0023】
これは、洗浄水の噴出位置を、予め設定した軌跡に沿って移動させることにより、人体局部を広い範囲で洗浄したり、使用者が任意に噴出位置を移動して広い範囲を洗浄したりした場合に、この洗浄面積に対して比例的に加圧空気の噴出範囲を可変するもので、狭い範囲が濡れた場合は狭い範囲に、広い範囲が濡れた場合は広い範囲に加圧空気を噴射させることによって短時間に効率的に水滴を除去できる。
【0024】
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれかひとつの発明の加圧空気の噴出範囲の面積を、予め設定した複数の値から任意に選択して設定するものである。
【0025】
これは、使用者が自分に適した加圧空気の噴出範囲を選択するもので、例えば「広い」から「狭い」までの5段階の中から選択できる。
【0026】
洗浄水による人体局部周辺の濡れ状態、特に水滴の残る範囲は、性別や体格などの個人差や、洗浄水の水勢や洗浄時間などの洗浄条件などにより大きく影響を受ける。そのため、加圧空気の適正な噴出範囲を設定するのは個人差や運転状態によって異なってくる。そこで、使用者が自らの局部周辺の水滴除去状態から経験的に判断して加圧空気の噴出範囲を選択できるようにする。したがって、個人差や洗浄条件に応じた効率的な水滴除去ができる。
【0027】
第6の発明は、特に、第1から第5のいずれかひとつの発明の加圧空気の噴出位置の移動を、前記洗浄水の所定範囲の外側から開始するものである。
【0028】
これは、洗浄が終了して人体局部周辺に水滴が付着する濡れ範囲の中心近くに、加圧空気を噴射してしまうと、加圧空気が直に当たる箇所は水滴が飛散するが、その周辺の水滴は皮膚に付着したまま、加圧空気の噴流に対して放射状に移動する。
【0029】
したがって濡れ面積の外側から加圧空気の噴出位置の移動を開始することによって、水滴の移動が濡れ面積の中心方向になり、濡れ面積の拡散が防止できるだけでなく、水滴が集まって落下しやすい状態になるので、効率的に水滴除去ができる。
【0030】
第7の発明は、特に、第1から第6のいずれかひとつの発明の洗浄水の噴出位置の移動を、予め設定した2次元的移動軌跡に沿って行うもので、人体局部を広い範囲で洗浄することができる。また、移動軌跡によって洗浄範囲や移動パターンを自由に設定する事ができるので、使用者の好みに応じた洗浄が提供できる。
【0031】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。
【0033】
トイレ装置1000において、便器600には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0034】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、空気噴出手段であるノズル20を含む乾燥装置50と、洗浄水を噴出するための洗浄水噴出手段30と、加熱手段40とが設けられるとともに、制御部が内蔵されている。
【0035】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0036】
入室検知センサ700は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ700は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ700は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0037】
本体部200の制御部は、遠隔操作装置300、入室検知センサ700および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0038】
空気噴出手段50は、加圧空気を供給するエアポンプ51と、この加圧空気を噴射する空気噴出口21を備えたノズル20と、空気噴出口21から噴射される加圧空気の噴流を前後左右に移動するために、ノズル20を駆動する駆動手段52とにより構成されており、空気噴出手段50から噴射する加圧空気は被乾燥面に到達する風速が秒速20〜50mの能力を備えており、被乾燥面における噴流の当接範囲は直径約1cm程度の大きさとなっている。
【0039】
ノズル20には、洗浄水を噴出する洗浄水噴出口22を含む洗浄水噴出手段30の洗浄ノズル部33が一体で構成されている。
【0040】
洗浄水噴射手段30は、洗浄ノズル部33以外に水道水の供給を開閉する開閉弁と、水道水を加熱する温水加熱手段31と、温水加熱手段31からの温水を洗浄ノズル部33の方向と便器600の内部方向とに流路を切換える切換弁32とで構成されており、駆動手段52はノズル20と共用している。
【0041】
加熱手段40は、内蔵のヒータに送風して温風を供給する送風手段であるエアファン41と、この温風を温風噴出口42に導くダクト43により構成されており、温風噴出口42より噴出する温風は前記空気噴出手段50から噴出する加圧空気の流速より遅く、秒速10m以下であり、被乾燥面に対する当接面積は広く被乾燥面の略全面に拡散する構成となっている。
【0042】
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
【0043】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥モード選択スイッチ320a,320b,320c、洗浄の強さ調整スイッチ322,323および位置調整スイッチ325,326,327,328、洗浄ムーブ動作のパターン選択スイッチ330,331,332が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
【0044】
また、位置調整スイッチ325,326,327,328の横には、これらスイッチの操作によるノズル駆動によって変わる洗浄水噴出位置を表す表示部329が設けられている。これは液晶パネルより成り、前後左右位置を液晶のポイントで表す。
【0045】
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部150(図3、図4)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座部400(図1)の各構成部の動作を制御する。
【0046】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、後述するノズル部20(図3)から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
【0047】
使用者が乾燥スイッチ314を操作することにより、使用者の局部の被乾燥面に後述する空気噴出手段50(図4)から加圧空気が噴出されると同時に加熱手段40(図4)から温風が吹き出される。また、使用者が乾燥モードスイッチ320a,320b,320cを選択操作することにより、前述の使用者の局部に噴出される乾燥空気の噴出条件が変更され、使用状況や使用者の好みにより任意に選択することが可能となっている。乾燥モードスイッチ320aは短時間で乾燥を終了したい場合の「急速乾燥運転」、乾燥モードスイッチ320bは局部を確実に乾燥させてさらっと仕上げる「しっかり乾燥運転」、乾燥モードスイッチ320cは加圧空気を当てたくない場合に温風だけを吹き出す「温風乾燥運転」、をそれぞれ選択できるようになっている。
【0048】
また、使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
【0049】
さらに、使用者が位置調整スイッチ325,326,327,328を操作することにより、後述する洗浄ノズル33(図3)の位置が前後左右に調整される。この操作により、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。この時の洗浄ノズルの駆動量をXY座標に換算して表示部329に液晶表示することで、操作した結果が使用者に分かりやすくしている。
【0050】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉の入り切りスイッチ311、温風温度調整スイッチ340、水温調整スイッチ333、便座温度調整スイッチ3
34、除菌スイッチ335および便器洗浄スイッチ336が設けられている。
【0051】
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0052】
自動開閉の入り切りスイッチ311はつまみにより構成されている。使用者が自動開閉の入り切りスイッチ311のつまみを操作することにより、蓋部500(図1)の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉の入り切りスイッチ311のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。
【0053】
使用者が温風温度調整スイッチ340を操作することにより、加熱手段40から使用者の局部に吹き出される温風の温度が調整される。この温風温度調整スイッチ340は、一回押す毎に設定が、「高」、「中」、「低」、「切」と切り替わる。この「切」の設定で運転した場合は、ヒータ43(図4)がオフとなり送風だけとなる。
【0054】
また、使用者が水温調整スイッチ333を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
【0055】
次に、本体部200内に設けられた洗浄水噴出手段30について説明を行う。図3は洗浄水噴出手段30および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0056】
図3に示す洗浄水噴出手段30は、開閉弁34、温水加熱手段31、切換弁32、洗浄ノズル部33、駆動手段52、前後駆動モータ53、左右駆動モータ54および制御部150を含む。
【0057】
洗浄水噴出手段30の制御部150は、開閉弁34、温水加熱手段31、切換弁32、前後駆動モータ53および左右駆動モータ54の動作を制御する。洗浄動作中に遠隔操作装置300(図2)の位置調整スイッチ325,326,327,328(図2)の前後方向の位置調整スイッチ325,326の操作により前後駆動モータ53を所定量づつ駆動し、左右方向の位置調整スイッチ327,328の操作により左右駆動モータ54を所定量づつ駆動する。この前後左右の調整範囲は加圧空気の噴射可能範囲よりも充分に狭い範囲に限定している。例えば、加圧空気の噴射可能範囲が洗浄中心点より前後左右に50mmの範囲に設定した場合に、洗浄水の噴射位置調整範囲は前記の洗浄中心点より前後に20mm左右に10mmとする。このように制限を設けることにより、濡れ範囲の無用な広がりを抑えて、加圧空気のよる水滴除去効果を維持する。
【0058】
続いて本体部200内に設けられた乾燥機能について説明を行う。図4は乾燥機能における空気噴出手段50、加熱手段40および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0059】
図4に示す空気噴出手段50は、ノズル20、エアポンプ51、駆動手段52、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54を含む。また、加熱手段40は、エアファン41、ヒータ43および温風噴出口42を含む。
また前述の洗浄ノズル部33とノズル20は一体に構成し、前記の駆動手段52、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54、制御部150は、前述する洗浄水噴出手段30と共用している。
【0060】
乾燥機能の制御部150は、室温検出手段151の検出信号を入力し、エアポンプ51、前後駆動モータ53 、左右駆動モータ54、エアファン41およびヒータ43の動作を制御する。室温検出手段151は、衛生洗浄装置の雰囲気温度が検出できるように本体部200(図1)に内蔵されたサーミスタにより室温を検出する。
【0061】
そして、この乾燥機能は、加熱手段40と空気噴射手段50を同時に駆動させて、加熱手段40により送風される温風を、空気噴射手段50により噴射される加圧空気により誘引しながら混合して被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転と、空気噴射手段50だけを駆動して加圧空気だけ被乾燥面に噴射する第2の乾燥運転と、加熱手段40だけを駆動して温風だけ被乾燥面に吹き出す第3の乾燥運転の3通りの運転パターンを有している。図5は空気噴出手段50における駆動手段52の構成を示す斜視図である。
【0062】
図5に示す駆動手段52は、ノズル20と、ノズル20からの空気噴流を左右方向に揺動する揺動手段70と、空気噴流を前後方向に往復動させる進退駆動手段71と、ベース55により構成しており、本駆動手段52は本願発明の移動手段として、ノズル20から噴射する加圧空気の被乾燥面に対する当接範囲を被乾燥面の全面に亘り任意に移動させることができる。
【0063】
ノズル20は、円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向に空気噴出口21と洗浄水噴出口22が設けられ、内部に加圧空気を空気噴出口21に導くエア空洞23と、洗浄水を洗浄水噴出口22に導く水用空洞24が設けられている。すなわちこのノズル20は洗浄ノズル部33を兼ねて構成されている。したがって、この駆動手段52により洗浄水の噴射位置も人体局部周辺の全面に亘り任意に移動させることができる。
【0064】
エアポンプ51からの加圧空気は、エアチューブ25からエア空洞23に供給されるように接続され、切換弁32からの洗浄水は、水チューブ26から水用空洞24に供給されるように接続されている。エアチューブ25と水チューブ26は、ノズル20が回転や前後駆動する際に、ねじれや屈曲の力が働くためゴムなどの軟質素材で構成する。
【0065】
ベース55は上面に前傾して構成したレール部56に沿ってノズル20を傾斜させて配置し、ベース先端に開孔して配置したガイド部57にノズル20を通して保持する。このガイド部57は摺動性のよい材質で構成し、ノズル20がスムーズに回転および摺動するように適度にクリアランスを設けている。また、ベース55上面にはレール部56に沿ってスライドするスライダ58を備え、ノズル20の終端を回転自在に保持する。そしてスライダ58の動作に合わせてノズル20はレール部56に沿って駆動する。
【0066】
進退駆動手段71は、前後駆動モータ53と、スライダ58とネジ部59により構成され、前後駆動モータ53は、ベース55の後部に配置し、レール部56に平行に配置したネジ部59を正逆回転するよう接続されている。このネジ部59は、スライダ58のナット部60にセットされ、ネジ部59の回転に従ってスライダ58がレール部59上を駆動する。したがって、前後駆動モータ53の回転に合わせてスライダ58に保持されたノズル20が前後に進退駆動する。ここでの前方向とは図5のA方向を表し、後方向とはB方向を表しており、前方向は便座400に着座した用便者の前面方向に対応し、後方向は用便者の背面方向に対応する。
【0067】
揺動手段70は、スライダ58に配置した左右駆動モータ54、歯車A61、歯車B62および歯車C63より成り、左右駆動モータ54の回転を歯車A61、歯車B62および歯車C63を介してノズル20に伝える。したがって、左右駆動モータ54の正逆回転に応じてノズル20が回転し、空気噴出口21から噴出する空気噴流は図5のCおよびDの右左方向に揺動する。
【0068】
以下に制御部150における制御動作について図6、図7、図8、図9および図10を加えて説明する。図6は制御部150による「おしり洗浄」および「乾燥」運転における制御動作のタイムチャート、図7は制御部150による「おしり洗浄」の「洗浄ムーブ」運転の制御動作のタイムチャート、図8は「おしり洗浄」および「乾燥」の運転状態の模式的断面図である。図9および図10は「乾燥」運転状態の被乾燥面における噴流の当接範囲Eの移動パターンを示す模式図である。なお図6に示す「乾燥」の運転モードは図2の乾燥モードスイッチ320aが選択された状態の「急速乾燥運転」であり、温風温度調整スイッチ340は「中」設定とした状態のタイムチャートである。この「急速乾燥運転」は、乾燥機能における温風を加圧空気により誘引しながら被乾燥面に噴射する第1の乾燥運転で行う。
【0069】
図6に示すように、まだ操作がされていない状態のT0の時点では、ノズル20(洗浄ノズル部33)の前後方向は後端の収納位置に配置されている。ノズル20の左右方向は、揺動手段70に設けた中心部位置を検出する位置センサ(図示せず)の検出位置に角度設定されている。この角度は中心角度となり空気噴出口21と洗浄水噴出口22の噴流角度が上方向に設定される。
【0070】
使用者が遠隔操作装置300のおしりスイッチ312を押下操作するT1において、開閉弁34が開き、水道水が温水加熱手段31に流れ込む、内蔵の流量センサ(図示せず)が水流を検出すると、温水加熱手段31への通電が開始され、加熱された温水が供給し始める。この時切換弁32は便器側の流路に設定されているので、充分に温まっていない温水は便器600内に排出される。
【0071】
温水加熱手段31からの出湯温度が所定の温度(例えば36℃)に達した時点T2において、前後駆動モータ53を運転させて洗浄ノズル部33を中心部位置(例えば前方100mm)まで前進させる。そしてT3において切換弁32により洗浄水を洗浄ノズル部33側に切換え、使用者の被洗浄面に洗浄水を噴出する。温水加熱手段31への電力制御は、出湯温度を検出する温度センサ(図示せず)の検出温度が設定温度(例えば40℃)になるように公知PIDやFF制御を用いて行う。また、洗浄水の流量は切換弁32の弁開度を調整することにより使用者の好みの量に設定されている。このおしり洗浄における被洗浄面の濡れ状態は図8(a)に示すように洗浄水が直接当たる中心部だけでなく、水滴が流れて周辺部を濡らしてしまう。
【0072】
おしり洗浄が終了し、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作する図6のT4において、切換弁32により洗浄水を便器600側に切換え、洗浄ノズル部33からの洗浄水噴出を停止すると同時に、温水加熱手段31への通電を停止し、前後駆動モータ53を逆転させて洗浄ノズル部33を収納位置まで後退させる。そしてT5で開閉弁34を閉じて通水を遮断して、洗浄動作を終了する。
【0073】
なお本実施の形態では、おしり洗浄における動作を説明したが、遠隔操作装置300のビデスイッチ313押下操作するビデ洗浄を押下操作する場合においても、基本となるシーケースは同様である。ただ、ビデ洗浄の場合は、ビデに対応する洗浄ノズル位置と流量設定に変更される。
【0074】
次にT6において使用者が遠隔操作装置300の乾燥スイッチ314を押下操作すると、ヒータ43が通電されヒータ自身の温度上昇が開始される。このようにエアファン41運転する前にヒータ43に通電することにより、放熱が少ない状態でヒータが加熱されるので高速にヒータ温度を上昇させることができる。
【0075】
この時同時にエアポンプ51が短時間(たとえば1秒間)だけ運転され、加圧空気がノズル20の空気噴出口21より一瞬噴出される。この動作は、ノズル20が収納位置にある状態で、ノズル20表面に付着した水滴を吹き飛ばして、使用者に対して水滴の再付着を防止する。
【0076】
T7でエアファン41の運転を開始して、温風噴出口42から温風を吹出す。吹出される温風温度は加熱されたヒータ43を通過するため、始めから高温の温風温度となる。そして、前述のヒータ加熱量に制御されて高温(例えば60℃)の温風が吹き出されるように設定される。そして温風噴出口42から使用者の洗浄面である被乾燥面の略全面に対して送風される。
【0077】
その後、前後駆動モータ53を運転させてノズル20を最前進位置(例えば前方150mm)まで前進させながら、左右駆動モータ54を運転させてノズル20の左右角度を右端角度(例えば+50°)まで角度変更する。
【0078】
T8において、エアポンプ51の運転を開始して、被乾燥面に対して空気噴出口21から加圧空気の噴射を開始する。
【0079】
そしてT8からT9の第1のステップにおいて、駆動手段52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、ノズル20の前後駆動を所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時にノズル20の左右角度を右端角度から右側所定角度(例えば+50°から+20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第1のステップの動作は、ノズル20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の右側所定位置から前後方向に高速に移動しながら徐々に中心部に接近してくる。したがて、図9の動作パターンP1に示すように、空気噴流当接範囲Eは被乾燥面Fの右端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図8(b)に示すように、洗浄水の噴出範囲よりも充分に外側から加圧空気の噴出を開始するので、被乾燥面の右側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0080】
図6のT9では一旦エアポンプ51を停止して、ノズル20の左右角度を左端角度(例えば−50°)まで角度変更する。そしてT10において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0081】
そしてT10からT11の第2のステップにおいて、ノズル20の前後駆動を第1のステップと同様に所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時にノズル20の左右角度を左端角度から左側所定角度(例えば−50°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第2のステップの動作は、ノズル20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の左側所定距離から前後方向に高速に移動する周期移動しながら徐々に中心部に漸進移動して接近してくる。したがって、図9の動作パターンP2に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの左端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図8(C)に示すように、被乾燥面の左側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0082】
以上の第1のステップと第2のステップによって被洗浄面に付着して残る水滴は中心部を中心に前後残るのみとなる。
【0083】
人体の臀部は肛門や陰茎の洗浄中心部に対して左右両サイドに凸部が形成されているた
め、便座に座った場合に洗浄中心部より左右両サイドが低くなる。したがって、洗浄水が左右に濡れ広がりやすく、乾燥時に最初に中心部に空気噴流を当ててしまうと、付着した水滴が左右に大きく広がり、濡れ面積が拡大してしまう。上述のように第1のステップと第2のステップによって被洗浄面の水滴が左右に広がるのを防止しながら吹き飛ばすので、効率の良い乾燥ができる。
【0084】
第2のステップの終了時点T11では、ノズル20を最前進位置まで前進させる。そして、T11からT12の第3のステップにおいて、ノズル20の前後駆動を最先進位置から中心部方向にゆっくり後退させながら、同時にノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第3のステップの動作は、ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがって、図10の動作パターンP3に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの先端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に斬新移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより前方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0085】
T12では一旦エアポンプ51を停止して、ノズル20の前後方向位置を後部所定位置(例えば前方50mm)まで移動させる。そしてT13において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0086】
そしてT13からT14の第4のステップにおいて、ノズル20の前後駆動を後部所定位置から中心部方向にゆっくり前進させながら、同時にノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第4のステップの動作は、ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら後方の所定距離から前方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがって、図10の動作パターンP4に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面Fの後端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより後方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0087】
以上の第1から第4のステップによって被乾燥面に付着して残る水滴は中心部のみとなる。
【0088】
前記の第1から第4のステップでの被乾燥面に付着する水滴への作用を説明する。各ステップの動作中の被乾燥面への空気噴流の駆動方向が、中心部に向けて移動する速度より、中心部に対して略接線方向の移動速度の方を充分に速くしているので、被乾燥面に衝突して広がる空気流れ方向が、前記の略接線方向に対して垂直方向の流れ成分が多くなる。したがって、この略接線方向に駆動する空気噴流と中心部の間に付着する水滴は、略接線方向に対して垂直方向の空気流に押されて中心部方向に移動するように作用する。そして徐々に空気噴流を中心部に接近させるので、中心部方向に集まってくる。この動きを第1から第4のステップにおいて右、左、前、後の4方向から行うことによって、水滴は中心部に集まる。このように第1から第4のステップが被乾燥面に付着する水滴を被乾燥面の中心部に集める工程となる。
【0089】
T14では再びエアポンプ51を停止して、ノズル20の前後方向位置を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで移動させる。そしてT15において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴射を開始する。
【0090】
そして、T15からT16の第5のステップにおいて、ノズル20の前後駆動を前方の
所定位置から後退を開始し、中心部を通過して、中心部より後方の所定距離(例えば前方50mm)までをゆっくりと後退する。同時にノズル20の左右角度を右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる。この第5のステップの動作は、ノズル20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動する周期移動をしながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に漸進移動をして中心部に接近し、さらに中心部を通過して後方の所定位置まで漸進移動する。したがって被乾燥面に対して空気噴流の当たる位置が前方から中心部を通って後方に徐々に移動するので、被乾燥面の中央部に残る水滴を、完全に吹き飛ばすことができる。すなわち、この第5のステップが集めた水滴を吹き飛ばす工程となる。
【0091】
T16でエアポンプ51を停止して、ノズル20の前後方向は後端の収納位置に移動させる。ノズル20の左右方向は、中心角度に戻す。
【0092】
乾燥が終了し、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作するT17でヒータ43の運転を停止する。
【0093】
そしてT18でエアファン41を停止することによって、ヒータ43の余熱を減少させて乾燥運転が終了する。
【0094】
次に図7に示す「おしり洗浄」の「洗浄ムーブ」運転の制御動作を説明する。
【0095】
図7に示すT0時点からT3までは図6と同様の動作となるので説明を省略する。T3においておしり洗浄が開始され、T20時点で使用者が洗浄位置を前方向に調整するため遠隔操作装置300の位置調整スイッチ325(図2)を押下操作する。この操作に従って、前後駆動モータ53が駆動し、ノズル20を所定量(例えば前方3mm)前進させ、洗浄位置が移動調整される。また、T21時点で使用者が洗浄位置を左方向に調整するため位置調整スイッチ327(図2)を押下操作する。この操作に従って、左右駆動モータ54が駆動し、ノズル20を所定量(例えば左3°)左回転させ、洗浄位置が移動調整される。このように、位置調整スイッチを押下操作するたびに所定量づつノズルを駆動することによって、使用者の所望する洗浄位置に移動調整することができる。
【0096】
そしてT22時点とT23時点で使用者が遠隔操作装置300の洗浄ムーブの「狭」スイッチ332(図2)を押下操作する。T22からT23において、駆動手段52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、ノズル20の前後駆動を所定距離(例えば設定位置から前後方向に8mm)で中速(例えは1Hz)に往復運転し、同時にノズル20の左右角度を所定角度(例えば設定角度±3°)で高速(例えば5Hz)で往復駆動させる。したがって、洗浄水は予め設定した2次元的移動軌跡に沿って人体局部を左右に細かく揺れながら前後に往復駆動する。
【0097】
この洗浄ムーブ動作によって、洗浄の広がり感が向上し、洗浄性能も上がる。T24時点とT25時点で使用者が遠隔操作装置300の洗浄ムーブの「中」スイッチ331(図2)を押下操作する。T24からT25において、前記の洗浄ムーブ「狭」の場合と同様の動作を行う。前記「狭」と異なる点は、ノズル20の左右の往復角度の設定値を広くしている点にある。例えば左右の角度を設定角度±5°として、洗浄範囲を広くすることができる。
【0098】
T26時点とT27時点で使用者が遠隔操作装置300の洗浄ムーブの「広」スイッチ331(図2)を押下操作する。T26からT27においても、前記の洗浄ムーブ「狭」の場合と同様の動作を行う。前記「中」と異なる点は、ノズル20の左右の往復角度の設定値を更に広くしている点にある。例えば左右の角度を設定角度±7°として、洗浄範囲
を更に広くすることができる。
【0099】
おしり洗浄が終了し、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作するT28において、図6での説明と同様の終了動作を行う。なお、洗浄位置調整した設定値はこの終了動作まで記憶されており、前記の洗浄ムーブ動作が途中に操作されても、洗浄ムーブ動作を終えた段階で設定位置に復帰させる。
【0100】
以上のように、おしり洗浄とビデと乾燥を1本のノズルで構成し、駆動手段も共用したので、ノズルの設置面積を小さくでき、さらに部品点数が少なくできるため、省スペース化や低コスト化が実現できる。
【0101】
さらに、乾燥のための加圧空気を単一のノズル孔から噴射するように構成しているので、低流量でも空気噴流の流速が大きくでき、小容量のエアポンプでも高い乾燥性能が得られる。すなわち、噴流の流速が大きいので被乾燥面に付着した水滴に噴流が当たる際の水滴を引き剥がすエネルギーが大きくなるため、水滴を効率よく吹き飛ばすことができる。
【0102】
なお、本実施の形態においては、おしり洗浄とビデを同一のノズル孔で行ったが、1本の円筒にそれぞれ単独のノズル孔を配置して構成してもよいし、おしり洗浄とビデをそれぞれ独立したノズルと駆動手段を配置しても良い。
【0103】
また、本実施の形態では洗浄と乾燥を一本の円筒で構成して、駆動手段を共用したが、これをそれぞれ独立したノズルと駆動手段で構成してもよい。
【0104】
さらに、本実施の形態ではノズルを単一のノズル孔により構成したが、複数のノズル孔により加圧空気を噴射する構成でもよいし、ノズルおよび駆動手段を複数配置してもよい。そして、複数の空気噴流により被乾燥面の水滴を中心部に集めるように駆動する方が乾燥時間を短縮することができる。また、本実施の形態においては加圧空気の流速を秒速20〜50mとしたが、水滴を吹き飛ばす効果を得るためには秒速10m以上が最低必要であり、噴流の当接範囲の大きさの設定要素であるノズル孔の大きさやノズル孔の数はエアポンプの能力と加圧空気の流速を考慮して選択する必要がある。
【0105】
また、本実施の形態では移動手段としてノズル全体を駆動手段で駆動する構成としたが、これに限るものではなく、ノズルの空気噴出口のみ、あるいは空気噴出口を含む周辺の部材のみを移動あるいは角度を変更することにより噴流の噴射方向を変更することにより、噴流の当接範囲を移動する構成としても良く、あるいはエアノズルの前方に噴流の方向をかえる風向変更手段を設ける構成等が考えられる。
【0106】
また、本実施の形態では第1のステップから第5のステップを順次実行したが、各ステップは繰り返し実行してもよいし、各ステップの順番を入れ替えてもよい。また、第1と第2のステップを省略しても良いし、第3と第4のステップを省略しても良い。
【0107】
また、本実施の形態では乾燥運転開始時にエアファンを運転する前にヒータを通電してヒータ温度上昇を高速化したが、エアファンとヒータを同時に起動して、そのときエアファンの起動時に送風量を徐々に上げるソフトスタート機能を持たせることによりヒータ温度上昇の高速化してもよい。
【0108】
また、本実施の形態では加圧空気の噴出範囲は一律であったが、洗浄水の位置調整の設定値を中心として、加圧空気の噴出範囲を移動してもよい。実際の洗浄位置を中心にすることによって、洗浄位置が変わっても加圧空気による水滴除去効果を安定に高く維持できる。
【0109】
また、洗浄ムーブや洗浄水の位置調整によって洗浄範囲の面積が変わる。この洗浄面積に比例的に加圧空気の噴出範囲の面積を変更してもよい。これは狭い範囲が濡れた場合は狭い範囲に、広い範囲が濡れた場合は広い範囲に加圧空気を噴射させることによって短時間に効率的に水滴を除去できる。
【0110】
また、加圧空気の噴出範囲の面積を、予め設定した複数の値から任意に選択するようにしてもよい。これは、使用者が自分に適した加圧空気の噴出範囲を選択するもので、例えば「広い」から「狭い」までの5段階の中から選択できるようにするもので、使用者が自らの局部周辺の水滴除去状態から経験的に判断して加圧空気の噴出範囲を選択することによって、個人差や洗浄条件に応じた効率的な水滴除去ができる。
【0111】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。
【0112】
第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置が、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置と異なるのは、以下の点である。
【0113】
図11は、第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における空気噴出手段のノズルおよび揺動手段の部分斜視図を示すものである。
【0114】
図11に示す揺動手段80は、ノズル81の基部82に一体的接続する回転軸部83と、この回転軸部83の軸心84を中心に回動自在に支持するスライダ85と、回転軸部83を回転作用させる左右駆動モータ86と、左右駆動モータ86の回転力を回転軸部83に伝達する歯車A87および歯車B88を含む。
【0115】
スライダ85による前後駆動機能は第1の実施の形態と同様であり、ナット部60も同様に構成されている。
【0116】
ノズル81の内部構成は第1の実施の形態と同様に円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向に空気噴出口21と洗浄水噴出口22が設けられ、内部に加圧空気エア用のエア空洞(図示せず)と、洗浄水用の水用空洞(図示せず)が設けられている。第1の実施の形態と異なる点は、ノズル81の基部82が回転軸部83に一体的に接続され、ノズル81がこの回転軸部83を中心に扇状に往復揺動することである。
【0117】
以上の構成において、空気噴流を左右に駆動させるのは、左右駆動モータ86を正逆回転制御させて、ノズル81を所定の角度まで回転させることにより、空気噴出口21自身の位置が左右の所定位置にまで移動することによって行う。
【0118】
そして、空気噴出口21からの空気噴流89は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保って噴出されるので、被乾燥面に付着する水滴に対しての剥離作用が高くなる。また、水滴が被乾燥面の外側に移動しようとする作用がより抑制できるので、中心部に水滴を集めやすくなる。さらに、左右に空気噴流を移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が離れないので、空気流速の高い噴流を被乾燥面に当てることができ、さらに水滴除去能力を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上のように、本発明に係る空気噴出手段およびそれを備えた衛生洗浄装置は、少ない空気量でも効率良く水滴を吹き飛ばし、乾燥するので、衛生洗浄装置だけでなく、シャワーや手洗い等で濡れた身体の乾燥にも応用できる。また、食器洗浄機や洗車機、部品洗浄
機などの洗浄機における水滴除去や乾燥の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図
【図2】図1の衛生洗浄装置における遠隔操作装置の一例を示す模式図
【図3】図1の衛生洗浄装置における洗浄水噴出手段の構成を示すブロック図
【図4】図1の衛生洗浄装置における空気噴出手段および加熱手段の構成を示すブロック図
【図5】図1の衛生洗浄装置における駆動手段の構成を示す斜視図
【図6】図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」および「乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図7】図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」の「ムーブ」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図8】(a)図1の衛生洗浄装置における「おしり洗浄」の運転状態の模式的断面図(b)同装置における「乾燥」の第1のステップの運転状態の模式的断面図(c)同装置における「乾燥」の第2のステップの運転状態の模式的断面図
【図9】図1の衛生洗浄装置における「乾燥」の第1および第2ステップの被乾燥面の空気噴流の移動パターンを示す模式図
【図10】図1の衛生洗浄装置における「乾燥」の第3および第4ステップの被乾燥面の空気噴流の移動パターンを示す模式図
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における空気噴出手段のノズルおよび揺動手段の部分斜視図
【図12】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の模式的斜視図
【図13】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置のノズルの模式的平面図
【図14】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置のノズルの模式的断面図
【符号の説明】
【0121】
20 ノズル
21 空気噴出口
22 洗浄水噴出口
52 駆動手段
100 衛生洗浄装置
200 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出口と、
前記人体局部の周辺に加圧空気を噴出する空気噴出口と、
前記洗浄水噴出口および前記空気噴出口を移動する駆動手段とを含み、
前記駆動手段は前記空気噴出口の移動による加圧空気噴出範囲が前記洗浄水噴出口の移動による洗浄水噴出範囲よりも広くなるように駆動されることを特徴とした衛生洗浄装置。
【請求項2】
人体局部に洗浄水を噴出する洗浄水噴出口と、前記人体局部の周辺に加圧空気を噴出する空気噴出口とを有するノズルと、
前記ノズルを含む機能部が内蔵された本体と、
前記ノズルを前記本体の収納位置から使用位置まで進退駆動するとともに、前記進退駆動に左右駆動を加え、前記洗浄水および加圧空気を人体局部周辺の任意の位置に移動して噴出可能とする駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、前記洗浄水の噴出位置を所定範囲内で変更可能とし、前記洗浄水の噴出終了後に前記加圧空気の噴出位置を、前記洗浄水の所定範囲よりも広い範囲に順次変更する
衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記加圧空気の噴出範囲は、前記洗浄水の平均的噴出位置が略中心となるように設定する請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記加圧空気の噴出範囲の面積は、前記洗浄水の噴出範囲の面積に比例的に設定する
請求項1から3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記加圧空気の噴出範囲の面積は、予め設定した複数の値から任意に選択して設定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記加圧空気の噴出位置の移動は、前記洗浄水の所定範囲の外側から開始する
請求項1から5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄水の噴出位置の移動は、予め設定した2次元的移動軌跡に沿って行う
請求項1から6のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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