説明

衛生用紙製品

【課題】 シートの柔軟性を向上させても、強度が低下しないローションティシュ、ローショントイレットペーパーを提供することを目的とする。更に加えてローション処理されたティッシュペーパー類は、薬液の使用や加工工程の煩雑さからコストアップは避けられなかったが、このローション処理のコスト面での改善も計ったものである。
【解決手段】 ソルビトール20〜80wt%およびグリセリン80〜20wt%からなる薬液を用いたことを特徴とする衛生用紙製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柔らかさと強さを併せ持った衛生紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フェイシャルティシュやトイレットペーパー等の衛生用紙製品は、より柔軟性を高めたローションティシュやローショントイレットペーパーが多数販売されている。
これらローションティシュ類には、グリセリン等の保湿剤を主成分としたものや、四級アンモニウム等の柔軟剤を主成分としたもの、更にシリコン等の油類を主成分としたもの、又これら薬剤を併用したものがある。
日本においては、グリセリン等の保湿剤を主成分にした薬剤をシートに塗工、含浸又はスプレー塗布した製品が主流になっている。
保湿剤を使った製品は、そのシートの水分含有率が高くなり、その分しっとりした感触となり、柔軟性向上につながる。しかし反面、シートの水分含有率が上がると、紙の強度発現因子であるパルプ繊維間の水素結合が減少し、シート強度は低下する。
従来のローションティシュやローショントイレットペーパーは、シート強度の低下から製造工程での紙切れ等による生産効率低下や製品使用上のポップアップ不良等の不具合が生じていた。
【0003】
【特許文献1】特開平5−156596号公報
【特許文献2】特開平7−216786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートの柔軟性を向上させても、強度が低下しないローションティシュ、ローショントイレットペーパーを提供することを目的とする。更に加えてローション処理されたティシュペーパー類は、薬液の使用や加工工程の煩雑さからコストアップは避けられなかったが、このローション処理のコスト面での改善も計ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はソルビトール20〜80wt%およびグリセリン80〜20wt%からなる薬液を用いたことを特徴とする衛生用紙製品に係わる。また本発明はソルビトール40〜75wt%およびグリセリン25〜60wt%からなる薬液を用いたものに係わる。
【0006】
更に本発明は柔らかさと強さを併せ持つローションティシュ類であるものおよび保湿剤をシートに塗工、含浸又はスプレー塗布したものに係わる。
【0007】
現行のローションティシュ類の保湿剤としては、多価アルコール類のグリセリンが主流であるが、本発明では同じ保湿性を有する糖アルコールのソルビトールに着目し、グリセリンとソルビトールの配合割合をかえてテストを行なった。
ソルビトールの配合率を上げていくと、グリセリン単独に比べて、柔軟性(ハンドフィール=HF)は、多少低下するが、強度の上昇率が大きい。即ち、HFは3〜8%低下するが強度は20〜50%向上する。特に併用で特徴的なことは、HFがソルビトール50%配合までは低下するが、更に増やすと80%位までは向上する。強度はソルビトールの配合率上昇に比例して向上している。
上記結果から、保湿剤系のローションティシュ類にはソルビトールとグリセリンを併用し、その場合のソルビトールの配合割合は20〜80%、好ましくは40〜75%である。
【発明の効果】
【0008】
ローションティシュ類の保湿剤として、グリセリンとソルビトールを併用することにより、柔軟性を高いレベルに維持しつつ大幅に強度が向上し、ローションティシュ類の問題であった、強度不足による生産効率の低下やポップアップ不良等の品質面の問題が、解決された。ソルビトールの配合率20〜80%特に40〜75%でグリセリンとソルビトールの相乗効果が顕著に認められた。
コスト面ではグリセリンの単価に比べて、ソルビトールの単価が35%位安いため、併用することにより、10〜20%薬液コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれのみに制約されるものではない。
【実施例1】
【0010】
当社のフェイシャルティシュ、商品名「スコッティカシミヤ」をベース原紙(坪量=15g/m)として、グリセリンとソルビトール(日研化成(株)液状の化粧品グレードでD−ソルビトール含量63%以上)を75:25、50:50、25:75、10:90の配合割合で混合した薬液を、それぞれ上記原紙に塗工量30%で塗工し、恒温恒湿室(温度20±2℃、湿度65±5%)にて8時間以上調湿し、実施例1〜4のサンプルとした。このサンプルに対して、紙質試験(坪量、強度、HF)を行なった。その結果を表1及び図1、2に示す。
また薬液をグリセリン100%にした以外は全て実施例と同条件でサンプルを作成し、これを比較例として実施例と同様の紙質試験を行なった。
【0011】
【表1】

【0012】
またこれらの結果を強度については図1に、HFについては図2に夫々示した。
ソルビトールの配合率の増加に伴って強度は比例的に向上し、HFは低下して行くが、ソルビトール配合率50%〜80%位までは逆に向上しグリセリンとソルビトールの相乗効果が顕著に認められた。
これによりソルビトールの配合率20〜80%、特に40〜75%においてローションティシュとして柔らかさと強さを併せ持つ効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ソルビトールの配合率と強度(GMT)との関係を示した図表
【図2】ソルビトールの配合率とHFとの関係を示した図表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルビトール20〜80wt%およびグリセリン80〜20wt%からなる薬液を用いたことを特徴とする衛生用紙製品。
【請求項2】
ソルビトール40〜75wt%およびグリセリン25〜60wt%からなる薬液を用いた請求項1記載の衛生用紙製品。
【請求項3】
柔らかさと強さを併せ持つローションティシュ類である請求項1または2記載の衛生用紙製品。
【請求項4】
保湿剤をシートに塗工、含浸又はスプレー塗布した請求項1から3までのいずれか1項記載の衛生用紙製品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169689(P2006−169689A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366057(P2004−366057)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000183462)株式会社クレシア (112)
【Fターム(参考)】