説明

衛生紙用柔軟剤

【課題】衛生紙に、低湿度環境においては良好なしっとり感、なめらかさ、柔らかさを付与し、且つ高湿度環境においては良好なしっとり感、なめらかさ、柔らかさを付与する共に、紙力低下を抑制することができる衛生紙用柔軟剤の提供。
【解決手段】(a)グリセリン80〜97質量%、(b)ジグリセリン1〜10質量%、(c)ポリオキシアルキレンメチルグルコシド1〜10質量%および(d)重量平均分子量400〜2000のポリエチレングリコール0.5〜7質量%からなり、(c)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドのオキシアルキレン基の炭素数が2〜3、アルキレンオキシドの平均付加モル数が5〜30であって、(a)、(b)、(c)および(d)の各成分の合計が100質量である衛生紙用柔軟剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生紙用柔軟剤に関し、より詳細には、低湿度環境および高湿度環境のいずれにおいても衛生紙に良好なしっとり感、なめらかさ、柔らかさを付与し、且つ高湿度環境における紙力低下を抑制することができる衛生紙用柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生紙の中でもティシュペーパーは特に様々な用途にて使用されるものである。鼻をかんだり、肌を拭くために使用されることもあり、このような用途には肌触りが良好であることが求められている。従来、衛生紙に良好な肌触り、すなわちしっとり感や柔らかさを付与する方法として、多価アルコールや糖類などを塗布することが行われている。このようにして、しっとり感や柔らかさが付与されたティシュペーパーはローションティシューとして販売され、その市場は拡大している。市場が拡大するにつれ、ローションティシューは、しっとり感や柔らかさに加え、なめらかさが求められるようになってきた。
【0003】
紙に柔らかさとなめらかさを付与する方法として、多価アルコールと四級アンモニウム塩の配合物を衛生紙に塗布する方法などがある。しかし、このような方法では衛生紙に柔らかさとなめらかさは付与されるものの、紙力が低下してしまい、快適な使用感が得られない場合がある。
【0004】
そこで、紙力を低下させずに紙に柔らかさを付与する方法として、多価アルコールのアルキレンオキシド付加体を含む処理剤を塗布することが特許文献1に開示されている。しかし、この方法では紙力低下の抑制と柔らかさの付与はできるものの、しっとり感の付与については十分ではない。特許文献2に開示されるように紙力低下を抑制するために水溶性多糖類を含む処理剤を用いることもあるが、特に低湿度環境において柔らかさが損なわれてしまう場合がある。
【0005】
また、これらのような多価アルコールなどを含む処理剤が塗布された衛生紙は、環境の湿度に影響を受けやすい。例えば、低湿度環境では紙力は十分であるが、肌触り、特にしっとり感が損なわれ易く、高湿度環境ではしっとり感や柔らかさは良好であるが、紙力の低下が大きくなり快適な使用感が損なわれ易い。
【0006】
このように、衛生紙に、低湿度環境および高湿度環境のいずれにおいても良好な肌触りを付与し、且つ高湿度環境における紙力低下を抑制することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−84116号公報
【特許文献2】特開2009−263837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、衛生紙に、低湿度環境においては良好なしっとり感、なめらかさ、柔らかさを付与し、且つ高湿度環境においては良好なしっとり感、なめらかさ、柔らかさを付与する共に、紙力低下を抑制することができる衛生紙用柔軟剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、下記に示す特定の4成分を組み合わせることによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の衛生紙用柔軟剤は、(a)グリセリン80〜97質量%、(b)ジグリセリン1〜10質量%、(c)ポリオキシアルキレンメチルグルコシド1〜10質量%および(d)重量平均分子量400〜2000のポリエチレングリコール0.5〜7質量%からなり、(c)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドのオキシアルキレン基の炭素数が2〜3、アルキレンオキシドの平均付加モル数が5〜30であって、(a)、(b)、(c)および(d)の各成分の合計が100質量である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生紙用柔軟剤は、衛生紙に塗布することにより、低湿度環境でもしっとり感やなめらかさ、柔らかさが良好であり、高湿度環境においては、良好な肌触りが付与されると共に、紙力の低下を抑制して、快適に使用できる衛生紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の衛生紙用柔軟剤は、(a)成分としてグリセリン、(b)成分としてジグリセリン、(c)成分としてポリオキシアルキレンメチルグルコシドおよび(d)成分として重量平均分子量400〜2000のポリエチレングリコールからなる。
【0013】
(a)成分はグリセリンであり、その含有量は80〜97質量%であり、好ましくは90〜95質量%である。また、(b)成分はジグリセリンであり、その含有量は1〜10質量%であり、好ましくは1〜7質量%である。
【0014】
(c)成分はポリオキシアルキレンメチルグルコシドである。本成分におけるオキシアルキレン基は、炭素数が2〜3であり、具体的にはオキシエチレン基、またはオキシプロピレン基である。好ましくはオキシエチレン基である。本成分におけるアルキレンオキシドの平均付加モル数は5〜30であり、好ましくは7〜20である。平均付加モル数が5未満の場合には良好ななめらかさが付与できない場合があり、30を超えると良好な柔らかさを付与できない場合がある。(c)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドは、オキシアルキレン基がオキシエチレン基であるものと、オキシプロピレン基であるものとを、質量比で7/3〜3/7で組み合わせて使用することにより、しっとり感となめらかさと柔らかさのいずれもバランス良く付与できるため好ましい。
【0015】
(c)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドの含有量は1〜10質量%であり、好ましくは2〜8質量%である。また、(a)成分と(b)成分の合計と(c)成分との質量比が91/9〜99/1であるとき、しっとり感となめらかさがいずれもバランス良く付与できるため好ましく、特に好ましい質量比は92/8〜95/5である。
【0016】
(d)成分はポリエチレングリコールであり、その重量平均分子量は400〜2000であり、好ましくは500〜1500である。ポリエチレングリコールの重量平均分子量が400未満であると、高湿度環境下において紙力の低下を抑制できない場合があり、2000を超えると低湿度環境下にて良好な柔らかさを付与できない場合がある。
【0017】
(d)成分のポリエチレングリコールの含有量は0.5〜7質量%であり、好ましくは1〜5質量%である。また、(a)成分と(b)成分の合計と(d)成分との質量比が93/7〜99.5/0.5であるとき、しっとり感と高湿度環境における紙力がいずれもバランス良く付与できるため好ましく、特に好ましい質量比は95/5〜99/1である。
【0018】
本発明の衛生紙用柔軟剤は、取扱いを良くするために、水などの溶媒で希釈し粘度を低減させて使用することができる。また、本衛生紙用柔軟剤には、油性成分、界面活性剤、防腐剤などの紙用添加剤として用いられる他の成分を配合してもよい。本発明の衛生紙用柔軟剤が塗布される衛生紙としては、ティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー等が挙げられる。
【0019】
本発明の衛生紙用柔軟剤を衛生紙に塗布する方法としては、コーターまたは印刷機による塗布法、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。衛生紙に塗布する量は、紙に対して、10〜30質量%が好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
【0021】
〔衛生紙用柔軟剤の調製例〕
グリセリンを92質量%、ジグリセリンを2質量%、ポリオキシエチレン(10モル)メチルグルコシドを5質量%、ポリエチレングリコール(Mw:1000)を1質量%混合して組成物1(実施例1)を得た。また、実施例1と同様に、表1,2の各成分を所定の割合で混合し、組成物2〜14(実施例2〜8、比較例1〜6)を調製した。
【0022】
〔衛生紙用柔軟剤塗布ティシュペーパーの調製例〕
調製した衛生紙用柔軟剤をイオン交換水で4倍に希釈し、ハンドスプレーを用いてティシュペーパー1枚(市販されている2枚1組を1枚とする)に噴霧した。表中の塗布量は、柔軟剤噴霧前後のティシュペーパーの重量差から、噴霧前のティシュペーパーに対する噴霧した有効分の質量%を求めた。
【0023】
〔ティシュペーパーの官能評価〕
パネラー10人により、組成物1〜14をそれぞれ約17質量%塗布したティシュペーパーを室温23℃、湿度30%RHの低湿度環境下および温度23℃、湿度75%RHの高湿度環境下にそれぞれ48時間保管して調湿した後に、「しっとり感」、「なめらかさ」および「柔らかさ」について評価し、下記評価基準に基づいて3段階評価を行なった。各項目においてパネラー10人の評価の合計点が25点以上であり、かつ1点の評価をしたパネラーが全くいない場合を非常に優れている(◎)、合計点が25点以上であり、かつ1点の評価をしたパネラーが1人の場合、または合計点が20点以上25点未満であり、かつ1点の評価をしたパネラーが1人以下の場合を優れている(○)、平均点が20点未満、または1点の評価をしたパネラーが2人以上の場合を(×)と判断した。結果を表1,2に示す。
【0024】
〔しっとり感の評価基準〕
3点:非常にしっとりしている。
2点:しっとりしている。
1点:しっとり感が弱い。
【0025】
〔なめらかさの評価基準〕
3点:非常になめらかである。
2点:なめらかである。
1点:なめらかさが弱い。
【0026】
〔柔らかさの評価基準〕
3点:非常に柔らかである。
2点:柔らかである。
1点:柔らかさが弱い。
【0027】
〔ティシュペーパーの紙力評価〕
組成物1〜14をそれぞれ約17質量%塗布したティシュペーパーを室温23℃、湿度75%RHの高湿度環境下に48時間保管して調湿した後、120×15mmに切り、引張圧縮試験機(株式会社今田製作所製、SV-201-0-SH)を用いて紙の引張強度を測定し、紙力の評価とした。引張強度が1.2N以上の場合を紙力が十分である(○)と評価し、1.2N未満の場合を紙力が不充分である(×)と評価した。結果を表1,2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1〜8では、湿度30%RHおよび湿度75%RHのいずれの環境下で保管して調湿したティシュペーパーについて、しっとり感、なめらかさ、柔らかさのいずれも良好なティシュペーパーを得ることができた。また、湿度75%RHの高湿度環境下で保管して調湿したティシュペーパーの紙力は良好であった。特に、実施例8では、(c)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドが、オキシエチレン基であるものと、オキシプロピレン基のものとを、質量比で3/2で組み合わせて使用されているので、低湿度、高湿度いずれの環境下で保管して調湿した場合においても、しっとり感となめらかさと柔らかさのいずれもバランスが良い。
【0030】
【表2】

【0031】
一方、比較例1では(c)成分および(d)成分が配合されておらず、低湿度、高湿度いずれの環境下で保管して調湿した場合もなめらかさが不十分であり、紙力が不良であった。比較例2では(d)成分の重量平均分子量が本発明の規定の範囲を外れており、紙力が不十分であった。比較例3においても(d)成分の重量平均分子量が本発明の規定の範囲を外れており、低湿度、高湿度いずれの環境下で保管して調湿した場合も柔らかさが不十分であった。比較例4では(d)成分が配合されておらず、湿度30%RHで保管、調湿した場合におけるしっとり感および紙力が不十分であった。比較例5では(c)成分が配合されておらず、低湿度、高湿度いずれの環境下で保管して調湿した場合もなめらかさが不十分であった。比較例6では(b)成分が配合されておらず、湿度30%RHで保管、調湿した場合でのしっとり感が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グリセリン80〜97質量%、(b)ジグリセリン1〜10質量%、(c)ポリオキシアルキレンメチルグルコシド1〜10質量%および(d)重量平均分子量400〜2000のポリエチレングリコール0.5〜7質量%からなり、(c)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドのオキシアルキレン基の炭素数が2〜3、アルキレンオキシドの平均付加モル数が5〜30であって、(a)、(b)、(c)および(d)の各成分の合計が100質量である衛生紙用柔軟剤。

【公開番号】特開2012−172275(P2012−172275A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34029(P2011−34029)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】