説明

衛生薄葉紙収納製品

【課題】生分解性であり、且つ、経年劣化による伸びの少ない樹脂フィルムを備える衛生薄葉紙収納箱を提供すること。
【解決手段】上記課題は、取出口12と、取出口12を覆い且つ取出口12範囲内にスリット21を形成した樹脂製取出口フィルム2とを有する紙箱1内に、米坪が10〜16g/m2、2枚1組での厚みが120〜185μmの衛生薄葉紙3を多数積み重ねて収納してなり、取出口フィルム2のスリット21を通して、紙箱1内に収められた衛生薄葉紙3を取出すように構成するとともに、取出口フィルム2として、ポリエチレンを79〜92重量%及びポリ乳酸を5〜18重量%含有し、ポリエチレン:ポリ乳酸の比率が79:18〜92:5であり、且つ厚みが30〜50μmである樹脂フィルムを用いることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー、キッチンペーパー、拭き取り用ワイプなどの衛生薄葉紙を収納した衛生薄葉紙収納製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ティシュペーパー、キッチンペーパー、拭き取り用ワイプなどの衛生薄葉紙製品は、上面に取出口が形成された直方体状の紙製収納箱に収納された状態で販売され、使用される。そして、このような衛生薄葉紙収納箱の取出口には、内部に塵埃等の異物が侵入しないように、スリットを有する樹脂製取出口フィルムが貼り付けられている。中身の衛生薄葉紙を使い切って空箱となった衛生薄葉紙収納箱及び取出口フィルムは、普通ゴミとして廃棄される。
【0003】
従来、取出口フィルムとしては直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の石油由来の樹脂フィルムが汎用されているが、近年の環境保護に対する意識の高まりに伴って、廃棄される取出口フィルムがCO2排出量の点で環境に負荷を掛けないように、石油系樹脂フィルムの代替として植物由来の樹脂を配合した樹脂フィルムを用いることが望まれた。そして、そのような植物由来の樹脂としては、特に入手容易性等の観点からポリ乳酸が有望であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−162259号公報
【特許文献2】特開2004−83066号公報
【特許文献3】特開2008−273532号公報
【特許文献4】特開2008−247446号公報
【特許文献5】特開2007−217037号公報
【特許文献6】特開2007−217036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリエチレンにポリ乳酸を配合したコンパウンド樹脂フィルムは、ポリエチレン単独のフィルムと比べて柔軟性が乏しく、これを取出口フィルムに用いると、スリットを介して中身の衛生薄葉紙を取り出す際、強い取り出し抵抗により衛生薄葉紙が破れ易くなる、という知見を得た。
そこで、本発明の主たる課題は、取出口フィルムにポリ乳酸を配合したものでありながら、中身の衛生薄葉紙を取り出す際に破れにくい衛生薄葉紙収納製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究する過程で次のような知見を得た。すなわち、当初、ポリエチレン樹脂フィルムにポリ乳酸を混合していくと、単に柔軟性が損なわれていくだけかと思われたが、ある特定の量で、取出口フィルムとして好適な特性が得られることが判明した。
【0007】
より詳細に説明する。取出口フィルムは箱内の衛生薄葉紙を取り出す際に外力を受けて変形する。この際、取出口フィルムが塑性変形し易いものであると、スリットの縁部が伸びたたまま元に戻らず、スリットが僅かに開いたままとなり、塵埃等の異物侵入のおそれがあるだけでなく、次に取り出される衛生薄葉紙の始端部をスリットで挟持するポップアップ機能も低下するおそれがある。よって、取出口フィルムには、柔軟性は要求されるものの、塑性変形(伸び)し難い特性が要求される。また、樹脂フィルムは多かれ少なかれ経時劣化により伸縮(寸法変化)する性質があるが、このような経時伸縮が発生すると、取出口フィルムに皺が寄り、好ましくない外観となるだけでなく、取出口フィルムが張る又は弛むことによりスリットの開閉抵抗が変化し、取り出し難くなったり、ポップアップ機能が低下したりするおそれがある。よって、取出口フィルムには経時伸縮し難い特性も要求される。さらに、紙箱製造における取出口フィルムの糊付け工程では、特に冬場の乾燥時期においてフィルムと加工設備の間での摩擦から静電気が発生し、紙粉が付着するため掃除を行なう手間がかかる場合がある。よって、取出口フィルムには摩擦による静電気が発生し難い特性も要求されている。
【0008】
これら特性の兼備が困難であることはいうまでもない。しかし、ポリエチレン樹脂フィルムにポリ乳酸をある特定量混合した樹脂フィルムは、十分な柔軟性(弾性変形)を有するものでありながら、塑性変形し難く、しかも経時伸縮し難く、更に静電気も発生し難いものとなることが判明したのである。以下に述べる本発明は、このような知見に基づくものである。
【0009】
〔請求項1に係る発明〕
取出口と、取出口を覆い且つ取出口範囲内にスリットを形成した樹脂製取出口フィルムとを有する紙箱内に、米坪が10〜16g/m2、2枚1組での厚みが120〜185μmの衛生薄葉紙を多数積み重ねて収納してなり、
前記取出口フィルムのスリットを通して、前記紙箱内に収められた衛生薄葉紙を取出すように構成した衛生薄葉紙収納製品であって、
前記取出口フィルムは、ポリエチレンを79〜95重量%及びポリ乳酸を5〜18重量%含有し、ポリエチレン:ポリ乳酸の比率が79:18〜95:5であり、且つ厚みが30〜50μmである、
ことを特徴とする衛生薄葉紙収納製品。
【0010】
(作用効果)
本発明の取出口フィルムは、ポリエチレンにポリ乳酸を配合したフィルムでありながら、十分な柔軟性(弾性変形)を有する。しかも、本発明の取出口フィルムは単にそれだけではなく、塑性変形し難いため、取り出しの際にフィルムに加わる力によりフィルムが伸び、スリットが僅かに開いたままとなり、塵埃等の異物侵入が発生したり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態が発生し難い。また、本発明の取出口フィルムは経時劣化による伸縮(寸法変化)が少ないため、取出口フィルムに皺が寄り外観が悪化したり、取出口フィルムが張る又は弛むことによりスリットの開閉抵抗が変化し、取り出し難くなったり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態も発生し難い。さらに、本発明の取出口フィルムは摩擦による静電気が発生し難いため、取出口フィルムに紙粉が付着し難い。
【0011】
〔請求項2に係る発明〕
前記取出口フィルムにおける前記ポリオレフィン及びポリ乳酸は、それぞれは直鎖状低密度ポリエチレン及び植物由来のポリ乳酸である、請求項1記載の衛生薄葉紙収納製品。
【0012】
(作用効果)
本発明の取出口フィルムはこのような組成であると特に好ましい。
【0013】
〔請求項3に係る発明〕
前記紙箱は、米坪300〜450g/m2、厚み400〜500μmのコートボール紙からなるものである、請求項2記載の衛生薄葉紙収納製品。
【0014】
(作用効果)
本発明の取出口フィルムは従来のLLDPE単独のものと比べれば柔軟性は低下するが、紙箱が上述のようなコートボール紙であれば、紙箱の可撓性により取出口フィルムの柔軟性が補われるため、従来と同様に円滑な衛生薄葉紙の引き出しが可能となり、取り出し時の破れ防止効果がより一層のものとなる。
【0015】
〔請求項4に係る発明〕
前記取出口フィルムは、スリットと平行な方向における5N/25mm荷重時の伸び率と、スリットと直交する方向における5N/25mm荷重時の伸び率との平均値が2.8〜4.2%であり、且つ加熱劣化試験による、スリットと平行な方向における寸法変化率及びスリットと直交する方向における寸法変化率の合計が−1.6〜−0.2%である、請求項3記載の衛生薄葉紙収納製品。
【0016】
(作用効果)
本発明の取出口フィルムは、この程度塑性変形し難く、しかもこの程度経時伸縮し難いものであるのが好ましい。なお、伸び率とは、幅25mm×長さ60mmの試験片を採取して、JIS P 8113に準拠し、チャッキング間隔を50mmとして、100mm/分の速度で引っ張り、5N/25mm荷重時に測定される伸び率(%)を意味する。また、加熱劣化試験は、JIS P 8111の状態から60℃90%RHの状態で120時間保持し、その前後の寸法の変化を計測する試験である。さらに、寸法変化率とは、JIS P 8111の状態における寸法をa、温度60℃、湿度90%RHの試験室に120時間保持した後の寸法をbとしたとき、(b−a)/a×100を意味する。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、取出口フィルムにポリ乳酸を配合したものでありながら、
(い)中身の衛生薄葉紙を取り出す際に破れにくくなる、
(ろ)取り出しの際に取出口フィルムに加わる力によりフィルムが伸び、スリットが僅かに開いたままとなり、塵埃等の異物侵入が発生したり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態が発生し難い、
(は)取出口フィルムは経時劣化による伸縮(寸法変化)が少ないため、取出口フィルムに皺が寄り外観が悪化したり、取出口フィルムが張る又は弛むことによりスリットの開閉抵抗が変化し、取り出し難くなったり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態も発生し難い、
(に)取出口フィルムに摩擦による静電気が発生し難いため、取出口フィルムに紙粉が付着し難い、
等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】衛生薄葉紙収納箱の斜視図である。
【図2】衛生薄葉紙収納箱の斜視図であり、取出口を露出させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る衛生薄葉紙収納箱の実施形態を、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る衛生薄葉紙収納箱X1の斜視図であり、図2はその取出口12を露出させた状態を示す斜視図である。なお、図2において符号3で示される二点鎖線は、使用状態における衛生薄葉紙の態様を示している。
【0020】
本実施形態に係る衛生薄葉紙収納箱X1は、直方体の外形を成す紙製の箱であり、その大きさ及び展開形状は、既知の衛生薄葉紙収納箱の構成が採用される。本実施形態に係る衛生薄葉紙収納箱X1は、上面1Uに環状のミシン目線11を有する紙製の箱本体1(以下、紙箱ともいう)と、ミシン目線11により囲まれる範囲11aを紙箱内側から覆う取出口フィルム2とを有する。
【0021】
衛生薄葉紙収納箱X1の形状としては、図示例の一対の平行な長手縁1L,1Lとこれらよりも短い一対の平行な短手縁1S,1Sとで構成される長方形の上面を有する直六面体形状が例示でき、その構造としては、上面、底面及びこれらを連接する側面と、各面の長手方向両側縁に連接された底面側端面片、側面端面片、上面側端面片とを有し、前記側面端面片を箱内面側に折り返した後、これに重ねて上面側端面片と底面側端面片とを折り曲げ、各片の当接部分をホットメルト接着材等により接着して構成される構造が例示できる。
【0022】
紙箱1の素材(以下、紙素材ともいう)としては、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする紙層が積層された既知のボール紙を用いることができ、特に米坪300〜450g/m2、厚み400〜500μmのコートボール紙が好適である。
【0023】
紙箱1の上面1Uに形成される環状のミシン目線11は、既知の方法により形成することができ、これにより囲まれる範囲11aの具体的形状についても限定されない。
【0024】
ただし、衛生薄葉紙収納箱においては、図示例の如く、紙箱上面1Uの長手方向に沿う方向を長辺とする略楕円形状又は矩形が取り出し性に優れ、代表的であることから、本実施形態においても多くの既存の製造ラインで製造可能なこの形状が好適である。
【0025】
他方、前記取出口フィルム2は、前記環状ミシン目線11により囲まれる範囲11aのサイズより大きく、例えば、矩形や楕円形であり、紙箱1上面の内面側において、特に環状ミシン目線11の切り剥がしに影響がないように、環状ミシン目線11の外側で接着されている。
【0026】
この取出口フィルム2には、スリット21が形成されており、このスリット21はミシン目線により囲まれる範囲11aに位置されている。従って、前記環状ミシン目線11に沿ってそのミシン目線により囲まれる範囲11aを切り剥がすことにより、紙箱上面1Uに取出口12が形成されるとともに、前記取出口フィルム2及びそれに形成されたスリット21が取出口12を介して露出され、収納箱内に納めた衛生薄葉紙が、このスリット21を介して取り出し可能となる。
【0027】
取出口フィルム2の紙箱1への接着部分は、従来製品に従って、例えば、環状ミシン目線11に沿って線状にベタ接着すると防湿性の点で好ましい。
【0028】
紙箱1と取出口フィルム2の接着方法は、特に限定されない。例えば、接着剤による接着が好適であるが、超音波融着等の融着処理も採用しうる。これらの双方を用いてもよい。接着剤を使用するのであれば、この種の衛生薄葉紙収納箱に用いられる既知の接着剤が利用できる。例えば、ホットメルト接着剤が使用できる。リサイクルの点でポリビニルエマルジョン樹脂などの水溶性接着剤が好適である。
【0029】
紙箱1と取出口フィルム2との接着力(剥離強度)は特に限定されない。ポップアップ時に取出口フィルムが引き剥がされない程度に、従来製品における紙箱1と取出口フィルム2との接着力と同程度でよい。
【0030】
なお、スリット21の長さは、折返し縁部2eの存在に関係なく、取出口12の長手方向全長より短くすることが望ましいが、取出口12の長手方向全長と同じ長さにすることもでき、さらに、取出口フィルム2の長手方向長さより短い条件の下で、取出口12の長手方向全長より長くすることもできる。
【0031】
特徴的には、取出口フィルム2として、ポリエチレンを81〜92重量%及びポリ乳酸を5〜16重量%含有し、ポリエチレン:ポリ乳酸の比率が81:16〜92:5である樹脂フィルムが用いられる。このような配合の樹脂フィルムは、塑性変形し難いものでありながら、十分な柔軟性を有するものである。ポリ乳酸が多過ぎると伸び率及び柔軟性が低下し過ぎ、強い取り出し抵抗により衛生薄葉紙が破れ易くなる。一方、ポリ乳酸が少な過ぎると、柔軟にはなるが塑性変形し易くなり、箱内の衛生薄葉紙を取り出す際に取出口フィルムが外力を受けて変形し(特にスリットの両端部に強い力が加わり易いため、この部分が伸び)易くなる。
【0032】
ポリエチレンとしては、LLDPE、LDPE、HDPEが挙げられ、その中でも特に、耐久性とティシュペーパーの保持力に優れる理由からLLDPEを主原料に選択することが好ましい。
【0033】
ポリ乳酸としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、乳酸またはラクチドと他のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、環状ラクトンとの共重合体、またはこれらの混合体が挙げられ、植物由来のものが好適に用いられる。ポリ乳酸の数平均分子量は、5万から30万の範囲であることが好ましく、8万から15万であることがより好ましい。数平均分子量が5万未満の場合は、得られるフィルムの機械的強度が不十分となり、また、延伸や巻取の工程中での切断も頻繁に起こり、操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を超えると、加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0034】
取出口フィルムには、この他に、フィルム同士が意図せず接着するのを防止するためのアンチブロッキング剤、およびフィルムの滑りを適度に調整するためのスリップ剤を配合することができ、その配合量は合計で3重量%以下とするのが望ましい。
【0035】
フィルムを製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、Tダイ法やインフレーション法といったエキストルージョン(溶融押出)法、キャスティング(溶液流延)法、カレンダー法など任意の方法を採用することができる。特に、フィルムの製造法としては、Tダイ法やインフレーション法が好ましい。
【0036】
取出口フィルム2の厚みは、30〜50μmが適する。30μm未満では、強度的に不足し、衛生薄葉紙の取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなる。逆に、50μmを超えると、強度の問題はないものの、取り出しの抵抗力が大きくなり、またコスト高となる。
【0037】
取出口フィルム2の5N/25mm荷重時におけるスリットと平行な方向(取出口フィルム製造時のMD方向)の伸び率は2.7〜3.8%、スリットと直交する方向(取出口フィルム製造時のCD方向)の伸び率が3.0〜4.7%、より好ましくは、スリットと平行な方向の伸び率は2.8〜3.3%、スリットと直交する方向の伸び率が3.1〜4.0%とされる。スリットと平行な方向の伸び率が2.7%未満、もしくはスリットと直交する方向の伸び率が3.0未満であると、取り出しの抵抗が大きくなるという問題が生じ、スリットと平行な方向の伸び率が3.8%超、もしくはスリットと直交する方向の伸び率が4.7%超であると、取り出しの際に取出口フィルムに加わる力によりフィルムが伸び、スリットが僅かに開いたままとなり、塵埃等の異物侵入が発生したり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態が発生し易くなるため好ましくない。なお、伸び率は、ポリ乳酸の配合量の他、原料物質の種類(樹脂配合含む)や分子量、フィルム厚、製造時の延伸等により適宜調整することができる。
【0038】
さらに、加熱劣化試験後の取出口フィルム2の寸法変化率は、スリットと平行な方向で−0.5〜−1.4%、スリットと直交する方向で−0.2〜0.6%、より好ましくは、スリットと平行な方向で−0.7〜−1.2%、スリットと直交する方向で−0.1〜0.2%とされる。スリットと平行な方向の寸法変化率が−1.4%未満、もしくはスリットと直交する方向の寸法変化率が−0.2%未満であると取り出し抵抗が強くなるという問題が生じ、スリットと平行な方向の寸法変化率が−0.5%超、もしくはスリットと直交する方向の寸法変化率が0.6%超であると、経時劣化により伸縮(自然長の変化)し、取出口フィルムに皺が寄り、好ましくない外観となるだけでなく、取出口フィルムが張る又は弛むことによりスリットの開閉抵抗が変化し、取り出し難くなったり、ポップアップ機能が低下したりするおそれがあるため好ましくない。なお、寸法変化率は、ポリ乳酸の配合量の他、原料物質の種類(樹脂配合含む)や分子量、フィルム厚、製造時の延伸等により適宜調整することができる。
【0039】
他方、衛生薄葉紙収納箱X1の収納される衛生薄葉紙は、米坪が10〜16g/m2、2枚1組での厚みが120〜185μmのものであれば、特に限定されるものではなく、ティシュペーパー、キッチンペーパー、拭き取り用ワイプ等が例示される。衛生薄葉紙は、所謂ポップアップ形式に折り畳み重ねて衛生薄葉紙束として、内部に収納される。これにより、図3に示すように、スリット21から衛生薄葉紙3を一枚一枚順次取り出して使用することができるようになる。
【0040】
衛生薄葉紙自体の大きさ、紙厚、プライ数及び組成は特に限定されないが、本発明は、薄葉紙の収納状態における長さ3L(箱長手方向寸法)3Lからスリット長さ21Lを差し引いた値が38〜54mmである場合に特に好適である。
【0041】
ポップアップ形式の衛生薄葉紙束の製造は、既知のインターホルダーにより衛生薄葉紙原紙を折り畳んだ後に、所定の大きさに切断する方法を採用できる。
【0042】
なお、本発明においては、衛生薄葉紙束の高さや大きさ等は特に限定されるものではなく、収容する衛生薄葉紙収納箱の大きさに併せて適宜変更することができる。
【実施例】
【0043】
本発明の効果を明らかにするため、本発明の実施例を比較例と共に示す。
表1及び表2に示されるように、二枚一組でティッシュペーパーが収納された各種の衛生薄葉紙収納製品を用意し、同表に示される各種の試験、評価を行った。なお、ポリ乳酸としては植物由来のポリDL−乳酸を使用し、ポリエチレンとしてはLLDPEを使用した。
また、伸び率、加熱劣化(試験)、及び寸法変化率については前述のとおりである。
【0044】
一方、取り出しの評価、フィルムの見栄えの評価については、社員20名に実施してもらい評価を点数化して平均したものである。取出し評価は4段階評価とし、すべてのティシュペーパーの取出しにおいてポップアップ性に問題がなかったものを◎、最初の取り出しに抵抗を感じるものを○、最初の取出し時の抵抗が強くすばやくポップアップするとティシュペーパーが破れるものを△、最初の取出し時にティシュペーパーが破れてしまったものを×とした。
【0045】
また、見栄えの評価は、200枚ポップアップした後の取出口フィルムの状態を目視で判断してもらい、最初の何も使用しない状態と差異がないものを◎、取出口フィルムのスリット端部の間隔が1〜2mmほど開いているが取出口フィルム自身に緩みがないものを○、ポップアップに問題はないが、取出口フィルムに緩みが見られるものを△、取出口フィルムが緩みティシュペーパーが取り出しの途中において落ち込みが起きたものを×とした。
【0046】
さらに、カートン製造時のフィルムへの紙粉付着については、気温20℃、湿度50%の空調された製造環境内において、従来フィルムを加工する場合と同じ通常の加工速度で1時間加工し、オペレーター3名が目視でフィルムに付着した紙粉量を確認した際の評価である。通常のポリエチレンフィルムでの紙粉付着量を○とし、これより明らかに少ない場合に◎、多い場合に△、非常に多い場合に×とし、これを点数化し平均した結果を評価とした。なお、実際の操業においては、紙粉の付着状況を確認して多い場合にはフィルムと接触する設備を拭き取るなどの処置をしている。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1に示す結果から、実施例1〜実施例9では、比較例1〜比較例11に比べて、
(い)中身の衛生薄葉紙を取り出す際に破れにくくなる、
(ろ)取り出しの際に取出口フィルムに加わる力によりフィルムが伸び、スリットが僅かに開いたままとなり、塵埃等の異物侵入が発生したり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態が発生し難い、
(は)取出口フィルムは経時劣化による伸縮(寸法変化)が少ないため、取出口フィルムに皺が寄り外観が悪化したり、取出口フィルムが張る又は弛むことによりスリットの開閉抵抗が変化し、取り出し難くなったり、ポップアップ機能が低下したりするといった事態も発生し難い、
(に)取出口フィルムに摩擦による静電気が発生し難いため、取出口フィルムに紙粉が付着し難い、
ことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ティシュペーパー、キッチンペーパー、拭き取り用ワイプなどの衛生薄葉紙を収納する衛生薄葉紙収納箱として利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・箱本体(紙箱)
2・・・フィルムシート
3・・・衛生薄葉紙
12・・・取出口
21・・・スリット
X1・・・衛生薄葉紙収納箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取出口と、取出口を覆い且つ取出口範囲内にスリットを形成した樹脂製取出口フィルムとを有する紙箱内に、米坪が10〜16g/m2、2枚1組での厚みが120〜185μmの衛生薄葉紙を多数積み重ねて収納してなり、
前記取出口フィルムのスリットを通して、前記紙箱内に収められた衛生薄葉紙を取出すように構成した衛生薄葉紙収納製品であって、
前記取出口フィルムは、ポリエチレンを81〜92重量%及びポリ乳酸を5〜16重量%含有し、ポリエチレン:ポリ乳酸の比率が81:16〜92:5であり、且つ厚みが30〜50μmである、
ことを特徴とする衛生薄葉紙収納製品。
【請求項2】
前記取出口フィルムにおける前記ポリオレフィン及びポリ乳酸は、それぞれは直鎖状低密度ポリエチレン及び植物由来のポリ乳酸である、請求項1記載の衛生薄葉紙収納製品。
(作用効果)
本発明の取出口フィルムは、このような組成であると特に好ましい。
【請求項3】
前記紙箱は、米坪300〜450g/m2、厚み400〜500μmのコートボール紙からなるものである、請求項2記載の衛生薄葉紙収納製品。
【請求項4】
前記取出口フィルムは、スリットと平行な方向における5N/25mm荷重時の伸び率と、スリットと直交する方向における5N/25mm荷重時の伸び率との平均値が2.8〜4.2%であり、且つ加熱劣化試験による、スリットと平行な方向における寸法変化率及びスリットと直交する方向における寸法変化率の合計が−1.6〜−0.2%である、請求項3記載の衛生薄葉紙収納製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−275010(P2010−275010A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132600(P2009−132600)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】