説明

衝撃エネルギーアブソーバー

衝撃エネルギーアブソーバーは、ある例では、閉塞端部および開放端部を有するシリンダーと、このシリンダーの開放端部の周囲に固定されたスリーブと、シリンダー内の超高分子量ポリエチレン物質の形態の減衰物質とを含む。プランジャは、スリーブを介して、減衰物質内へと押し込まれるよう配置される。プランジャが衝撃を受けて、減衰物質内へと押し込まれるとき、減衰物質は、固体から粘性流体状態へと変化し、これによって、かなりの大きさのエネルギーの吸収を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー吸収に関する。
【0002】
この出願は、35U.S.C.§§119,120,363,365および37C.F.R.§1.55および§1.78のもと2009年11月16日に提出された米国仮出願第61/281,314号の利益およびそれに対する優先権を主張する。
【0003】
本発明は、Federal Railroad Administrationによって与えられた契約番号DTFR53-07-D-00003-TO7のもと米国政府と共になされた。当該政府は本発明に関する一定の権利を持つ。
【背景技術】
【0004】
概して、ショックアブソーバーは、油圧タイプあるいは油圧/空気圧タイプであり、このものでは、オイルは、衝撃力によって引き起こされる増大する圧力のもと、シリンダーピストン機構の複数のオリフィスを強制的に通過させられ、これによって、伝達される力の大きさを弱めるだけでなく、シリンダーとピストンとの間の相対運動を減衰させる。代替的なショックアブソーバーは薄肉中空シリンダーを使用することがあり、これは、衝突状況下で潰れ、エネルギーを吸収する。そうしたショックアブソーバーの物理的寸法は衝撃力および/または吸収すべき運動エネルギーの大きさに比例して著しく増大する。車両の耐衝撃性および乗員安全性に関連した衝突エネルギーマネージメントシステムにおける使用に関して、こうした従来型ショックアブソーバーを収容するためには極めて小さなスペースしか利用できない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、衝撃軽減のために効果的に利用可能な、コンパクトな衝撃エネルギーアブソーバーシステムのために新規なコンセプトを提供する。本発明者によって実施された一連の研究所試験および試作品試験に基づいて、本発明によって、衝撃あるいは衝突事象において、著しく大きなエネルギーを吸収可能であると結論が下された。さらに、このクラスの衝撃吸収システムは、拡大あるいは縮小可能であり、しかも、代替エネルギー吸収システムに比べて格段に低いコストでかつ極めて僅かしかあるいは全くメンテナンス労力を要さずに達成可能な広範囲な衝撃エネルギーマネージメントシナリオを満たすように最適化可能である。
【0006】
本明細書で説明する衝撃エネルギーアブソーバーシステムは、幾何学的寸法の適切な適合によって、かつ、非常に限定されたスペース内で衝突体の利用可能な運動エネルギーを効果的に吸収することによって、ピーク動的力の大きさを制限するために最適化できる。この衝撃エネルギーアブソーバーは、潜在的に、車両がクラッシュあるいは衝突した場合に、財産に対するダメージの過酷さ、および乗員の負傷を軽減しあるいは最小限に抑えることができる。
【0007】
本発明の例は、新型のショックアブソーバーシステムを提供するが、これは、新規な設計、および圧縮衝撃力を受けた際の、密閉スペース内の、超高分子量(UHMW)ポリエチレンあるいは類似の物質の独特の弾性‐塑性変形挙動を利用する。それは、運動エネルギーの急速な吸収を可能とし、そしてエネルギー吸収プロセスを通して衝撃力の大きさを制限する。例は、超高分子量ポリエチレン(UHMW‐PE)として、さまざまなグレードで利用可能な固体状態減衰物質の革新的使用を伴う。
【0008】
従来、超高分子量ポリエチレン(UHMW‐PE)および高密度ポリエチレン(HDPE)物質は、低い摩擦係数および高い耐磨耗性が最も重要である用途において広く利用されていた。ある例では、UHMW‐PE押し出しセクションおよびビームはまた、横方向衝撃に対する、その高い曲げ剛性のために、水上輸送システムドックおよびロックにおけるようなバッファーとして使用されている。高分子量を備えるポリマー衝撃物質、高密度ポリエチレン(HMW‐HDPE)、この衝撃物質からなる物品は、弾道発射体を停止させるのに好適であることが判明している。この引用によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0013977号明細書も参照されたい。
【0009】
本発明者は、円錐形先端を備えた衝撃プランジャの運動エネルギーの吸収のために金属製シリンダー(たとえばスチール)内に閉じ込められた円柱形UHMW‐PEバーを探求し、そして革新的に利用した。これは、機関車耐衝撃性用途のために提案されたクラッシュエネルギーマネージメント(CEM)システムの一部として適当に拡縮しかつ最適化された形態を伴って使用されることを意図されている。その他の潜在的な用途には、その他の地上車両が挙げられる。
【0010】
圧縮試験機械でのUHMW‐PE円柱形バーの準静的試験を含む予備的な研究は、有望な結果を、そして、圧縮荷重下での変形挙動の二つの明確に異なる状況の存在への洞察を提供した。高速衝突状況下でのその高い歪み速度応答挙動が同様に有望ならば、準静的試験の力対変位曲線からのエネルギー吸収の計算は、クラッシュエネルギーアブソーバーとしての、その応用に関する可能性を示した。これを評価するために、「振り子衝撃試験(Pendulum Impact test)」も実施され、そして毎秒約17フィートの衝撃速度で生じた試験データはUHMW‐PE物質の極めて僅かな軸方向変形による効果的な高エネルギー衝撃吸収のコンセプトを裏付けた。付加的な試験もまた実施された。
【0011】
本発明の一例に基づく衝撃エネルギーアブソーバーは、管と、固体状態の、管内の減衰物質であって、プランジャによって応力が加えられたとき固体から粘性流体状態へと変化する減衰物質とを含む。プランジャは、エネルギーを吸収するために、減衰物質内へと押し込まれるように配置される。
【0012】
管は、通常、閉塞端部および開放端部を有するシリンダーを含む。シリンダーを取り付けるために、シリンダーの閉塞端部にフランジが存在してもよい。プランジャを取り囲むシリンダーの開放端部の周囲に固定されたスリーブを、さらに含んでいてもよい。スリーブは、プランジャの周囲に受け部を含んでいてもよい。好ましくは、プランジャは、減衰物質に接する円錐形端部を有する。ある例では、減衰物質は、それ自身に、プランジャの円錐形端部を受けるシートを含む。
【0013】
好ましくは、減衰物質は、超高分子量ポリエチレン物質である。減衰物質はシリンダーを半径方向に(放射状に)満たしてもよい。ある例では、プランジャは中空部分を含む。
【0014】
本発明はまた、衝撃エネルギーアブソーバーを製造する方法を特徴とする。当該方法は、通常、固体状態の減衰物質を管内に充填することを備える。減衰物質は、応力が加えられたときに、固体から粘性流体状態へと変化するよう構成される。プランジャが、当該プランジャに対して力が加わった際に、減衰物質内に押し込まれるよう配置される。
【0015】
管は、閉塞端部および開放端部を有するシリンダーを含むよう製造されてもよい。シリンダーを取り付けるために、シリンダーの閉塞端部にフランジが付加されてもよい。本方法はさらに、シリンダーの開放端部の周囲でかつプランジャの周囲にスリーブを取り付けること、ならびにプランジャの周囲に受け部を付加することを含んでもよい。本方法はさらに、減衰物質に接するプランジャに円錐形端部を設けること、ならびに、その中でプランジャの円錐形端部を受ける減衰物質中にシートを形成することを含んでもよい。
【0016】
本発明はまた、応力が加えられたときに固体から粘性流体状態へと変化する固体状態の減衰物質を管内に充填することと、減衰物質内に押し込まれるプランジャを配置することと、構造体に対して管あるいはプランジャを固定することと、物体を打撃するするために構造体を運動させることによって、あるいは構造体を打撃するために物体を運動させることによって、減衰物質内にプランジャを押し込み、その結果、減衰物質を粘性流体状態へと変化させることとを備える。
【0017】
だが、本発明は、別な実施形態においては、これら全ての目的を達成する必要はなく、その権利範囲は、これらの目的を達成できる構造あるいは方法に限定されるものではない。
【0018】
その他の目的、特徴および利点は、好ましい実施形態に関する以下の説明ならびに図面から当業者にとっては明白である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に基づくエネルギーアブソーバーを示す正面側概略破断図である。
【図2】図1に示すエネルギーアブソーバーの概略分解斜視図である。
【図3】平先なネジ山付きスチールバーと共に試験されたUHMW‐PEの二つの半体を示す図である。
【図4】図3に示す試験デバイスに関して、バー変位と共に圧縮荷重および応力変化を示すグラフである。
【図5】毎秒17.14フィートでの衝突の間の振り子衝撃試験ユニットに関するプランジャ変位と瞬間圧縮力の変化を示すグラフである。
【図6A】図1および図2に示すようなプロトタイプ衝撃エネルギーアブソーバーを使用する試験において27kipハンマーの30"落下に関する力およびプランジャ変位対時間のグラフである。
【図6B】図1および図2のプロトタイプ衝撃エネルギーアブソーバーに関して衝撃力の大きさの関数としてプランジャ変位を示すグラフである。
【図7】機関車に対して取り付けられた二つの衝撃エネルギーアブソーバーの例を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の一例に基づく衝撃エネルギーアブソーバーシステムの別な例を示す分解斜視図である。
【図9】図8のプランジャアセンブリの内部を示す概略斜視図である。
【図10】その組み立て状態で図8の衝撃アブソーバーを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下で説明する好ましい実施形態あるいは実施形態群に加えて、本発明は別な実施形態が可能であり、かつ、さまざまな様式で実施あるいは実現することができる。したがって、本発明は、その適用に関して、以下の説明において言及するか図面に示した構造の細部およびコンポーネントの配置に限定されない。ただ一つの実施形態が本明細書中で説明されている場合、その権利範囲は当該実施形態には限定されない。さらに、その権利範囲は、確かな除外、制限、あるいは放棄を明示する明確かつもっともな証拠が存在しない限り、制限的に解釈すべきではない。
【0021】
新規でコンパクトな高エネルギーショックアブソーバーは、好ましくは、非常に僅かな機械加工された部品から構成できる。一例における主要なコンポーネントを図1および図2に示す。衝撃エネルギーアブソーバー10は、管12を、この特定の実施例では、閉塞端部14aおよび開放端部14bを備えたシリンダーを含む。この例では、機関車あるいはその他の車両、あるいはエレベーターシャフトの底面などの構造体に対してシリンダー12を取り付けるために、閉塞端部14aにフランジ16が設けられている。
【0022】
減衰物質18(たとえば、UHMW‐PE物質)がその固体状態で、シリンダー12内に配置され、かつ、その中に閉じ込められている。通常、減衰物質は、シリンダーの長さのほとんどに関して半径方向にシリンダーを満たす。プランジャ20は、減衰物質18内へと押し込まれるように配置されている。この特定の例では、スリーブ22が設けられ、かつ、ファスナー24を介して、シリンダー12の開放端部の周囲に固定されている。スリーブ22は、プランジャ20の周囲の受け部26を含む。プランジャ20は、この例では、円錐形端部28と、(重量低減のための)中空シャフト部分30と、フランジ部分32とを含む。減衰物質18は、プランジャ20の円錐形端部28を受けるシート34を含む。
【0023】
シリンダーは、好ましくは、大きな周方向応力に安全に耐えるために、高力合金スチールから、そして、より大きな壁厚を備えたシームレスな構造からなる。UHMW‐PE円柱状試験体は、シリンダーの内径と滑り嵌め可能に形成される。UHMW‐PE試験体の中心に、衝撃の間、円錐形先端プランジャの頭頂部をガイドするために、小さな直径の貫通孔を設けることが可能である。プランジャはまた、高力合金スチールからなり、その直径は、シリンダーの内径とプランジャの外径との間に適切なクリアランスが残るように選択される。プランジャは、中実長尺スチールバーから、あるいは大きな壁厚を有する中空バーからなっていてもよい。その長さは、衝撃力の作用のもとで望まれる最大ストロークあるいは移動距離を実現するのに適切であるべきである。受け部が取り付けられたスチールスリーブは、横方向サポートを提供すると共に、衝突時にプランジャをUHMW‐PE物質の中心線に沿って同軸状に移動するようにガイドすることを目的としている。スリーブは、適切な支持、およびUHMW‐PE円柱体のそれとのプランジャの軸線の適当な整列のために、シリンダーの外面に対してネジ止めされる。シリンダーおよびプランジャはいずれも、その基部に円形フランジを備えることができ、基部は、多数のファスナーを用いた、対応する係合面あるいはプレートに対する取り付けのための装備を有する。必要ならば、プランジャの後方(打撃)端部は、車両あるいは構造体の形態次第では、あるいは、プランジャが衝突体と直接接触することが求められる場合には、いかなる面に対しても取り付けられないままであってもよい。
【0024】
通常の用途において、衝撃エネルギーアブソーバーの幾何学的寸法は、それに対してシリンダーブロックが搭載される反作用表面の強度、および所要の運動エネルギー吸収に対応するプランジャの最大移動距離依存して、所望の最も大きな衝撃力の度合いを制限するように適合される。当該システムのコンポーネントは、その適切なアライメントを保証しながら、必要とされるポジションに対して取り付けられる。
【0025】
衝撃体あるいは物体が適当な運動量を伴ってプランジャの後端(32、図1および図2)を打撃したとき、その円錐形前端はUHMW‐PE円柱体に対して強く押し付けられ、それに貫入するが、これが、今度は、プランジャの動きを減速させるための反力を提供する。プランジャがUHMW‐PEに対して圧接し続けて、臨界応力値に達したとき、UHMW物質は固体から流体状態へと相転位を生じる。この相転位は、密閉されたスペース内で、そしてプランジャ断面積に基づく臨界圧縮流動応力値以上で生じる。ある研究機関の試験で、高い応力値を解放したとき粘性UHMW‐PE物質レジンはその固体状態に戻るので、これは可逆プロセスであることが観察されている。衝撃の際、円錐形前部を備えたプランジャはUHMW‐PE円柱体の前端部内へと貫入する。増大する衝撃力の大きさによって、UHMW‐PE物質は臨界流動応力以上で相転位を生じる。プランジャの前方のUHMW‐PE物質が粘性流体状態へと変化するとき、プランジャへの抵抗力は低い値へと急激に低下する。プランジャは、続いて、プランジャの移動の終点に達するまであるいは衝撃エネルギーが吸収されるまで、力の大きさの漸進的なさらなる上昇を伴って移動し続ける。シリンダーを支持する構造体が受ける最大衝撃力は、使用されるUHMW‐PE物質の臨界応力に対応するプランジャによって発生させられるそれよりも僅かに大きなものであってもよい。衝突の間に、衝撃エネルギーアブソーバーによって吸収される全エネルギーは、UHMW‐PE円柱体に対してプランジャによってなされる仕事と、ほとんど等しい。
【0026】
この衝撃エネルギー吸収システムは新規なコンセプトを具現化し、目下のところ、いかなる産業分野における利用も知られていない。このコンパクトなシステムはそれを収容するために僅かなスペースしか必要とせず、しかも、大きな衝撃エネルギーを吸収するためにプランジャの僅かな移動距離しか必要としない。それは、所望のピーク衝撃力の大きさを制限するために寸法的な最適化に関する範囲を提供する。それは、衝撃吸収のために、低コストの、耐UV固体UHMW‐PEあるいは類似の物質を利用する。現実の用途において、組み込まれたユニットは、ある代替的衝撃吸収システムにおけるようなハイドロリック流体の漏れ出しのリスクを伴わず、長期間にわたって、ほとんどあるいは全くメンテナンスを必要としない。
【0027】
本発明者は、INSTRON Model 8502サーボ油圧試験機械を用いて圧縮試験を行った。試験試料は、INSTRON試験機械のアクチュエータ上に搭載されたシームレスなスチールシリンダー内に装填された直径2.5インチのUHMW‐PE中実バーであった。当初のプランジャは円錐形先端の直径2.0インチのスチールプランジャであったが、これは、試験体表面にディンプル窪みを設けたにもかかわらず、50キロポンド(kip)の安全機械許容荷重でさえ、UHMW‐PE試験体に貫入することができなかった。本発明者は、円錐形前部プランジャを、容易に入手可能な、完全ネジ付きの直径1.0インチで長さ3.0インチの長尺な平先スチールバーに交換し、そして同じ試験機械で圧縮試験を実施した。試験の間、当初、力の大きさが約20kipであったとき、約1.0インチまでの、UHMW‐PE円柱体内へのネジ付きバーの変位と共に圧縮力は徐々に増大した。このポイントを超えると、ネジ付きバーの変位が増えても、力の大きさはほとんど一定のままであった。試験は、約1.7インチの最大変位で停止され、そして試験体が取り出された。その後、本発明者はUHMW‐PE試験体からネジ付きバーを取り出そうと試みたが、失敗に終わった。UHMW‐PE円柱体は、続いて、ネジ付きバーを取り出すために、その背面において直径面に沿って切り開かれた。UHMW‐PE円柱体を二つの半体へと切断した後、ネジ付きバーは溝から飛び出し、UHMW‐PE円柱体の両半体における溝内のネジ窪みが現れた。
【0028】
図3は、上記試験において使用された、溝内のネジ窪みを含むUHMW‐PE円柱体の二つの半体40aおよび40bならびに平先ネジ山付きスチールバー42を示している。
【0029】
図3から、平先スチールバーの終端ポジションの直前に隆起した三角形塊の形状の凝固したUHMW‐PE物質堆積物が存在することが分かる。この隆起した三角形UHMW‐PE物質は切断した円柱体の両方の半体においても見られるが、これは、円柱体が切り開かれた後の、粘性状態UHMW‐PE物質のより遅い局所的滲出、固化、そして体積増大の明白な証拠を示している。両半体におけるネジ窪みはまた、「適所でロック(locked-in-place)」された、そして試験機械内で荷重の除去に続いて固化した、ネジ付きスチールバーに隣接する、コア物質のより柔らかい粘性状態を示唆している。
【0030】
図4は、圧縮荷重および圧縮応力対UHMW‐PE円柱体内へのネジ付きバーの変位としてプロットされた上記試験結果のグラフを示している。このグラフは、約20kip荷重あるいは約25ksi応力を超えると、コアUHMW‐PE物質は、高い応力を加えられたUHMW‐PEコア物質の相転位に関連して、さらに増大する抵抗を示さず、そしてネジ付きバーのその後の変位は、ほとんど同じ圧縮荷重/応力で生じたことを示している。ここで言う圧縮応力の大きさは、プランジャの断面積に基づいている。
【0031】
図5は、17.14フィート毎秒の衝撃速度で実施された典型的な衝撃試験から得られた、動的力対プランジャ変位のグラフを示している。
【0032】
図1および図2に類似のプロトタイプユニットもまた製造され、試験された。減衰物質18の直径は9.5"であり、かつ、プランジャ30は3"の直径を有していた。
【0033】
図6Aは、プランジャ20のフランジ端部32に衝撃を与える27kipハンマー試験デバイスの30"落下に関して、時間の関数として、力およびプランジャ変位を示している。減衰物質の可逆相転位が明確に観察された。力のピークは約180kipsであり、そして吸収された運動エネルギーは約82,260ft-lbであった。図6Bに示すように、UHMW‐PE物質の相転位は約2インチのプランジャ変位で生じた。衝撃エネルギーアブソーバーを拡縮することによって、ピーク衝突エネルギー吸収を所望の値へと適合させることが可能である。シリンダーはUHMW‐PE物質のための圧縮管として機能する。重要な設計基準は、衝撃速度、減衰物質の断面積、そしてプランジャ直径を含む。
【0034】
図7は、機関車50に取りつけられた、図1および図2に示すタイプの二つの大型ショックアブソーバー10aおよび10bを示している。ショックアブソーバーのための、その他の用途としては、線路緩衝器の端部、エレベーターシャフトの底における衝突エネルギーアブソーバー、衝突および/または脱線の場合にタンクの破壊を阻止するためのタンク車における使用、タンク自動車および危険物輸送トラックに関連して使用されるショックアブソーバー、ならびに自動車および輸送バスのシャーシ前端ショックアブソーバーが挙げられる。全ての例において、固体から粘性流体への減衰物質の転位によって、かなりの量のエネルギーが吸収される。
【0035】
概して、管12および/またはプランジャ32は、ある構造体に対して固定される。プランジャは、物体を打撃するためにプランジャおよびショックアブソーバーを動作させることによって、あるいは当該構造体およびショックアブソーバーを打撃するために物体を動作させることによって、減衰物質内へと押し込まれる。これが起こったとき、減衰物質は固体状態から粘性流体状態へと変化し、そして衝撃に関連するエネルギーを吸収する。これに代えて、ショックアブソーバーは二つの物体あるいは構造体間に設けることができる。
【0036】
図8は、スプリング62を収容するシリンダー60と、バッファープレート64と、その中の減衰物質68とを含む別な構造を示している。プランジャアセンブリ70(図9にも示す)は、受けスリーブアセンブリ74(図8)を介して、減衰物質68内へと押し込まれるように配置されたプランジャ72を含む。繰り返すが、減衰物質68はシート76を含んでいてもよい。図10は、組み立てられた衝撃エネルギーアブソーバーユニットを示しているが、ここで、プランジャアセンブリ70はシリンダー60およびプランジャ72(図9)に対して結合され、減衰物質68(図8)に当接している。
【0037】
本発明の特定の特徴をある図面には示し、別のものには示していないが、これは便宜的なものである。なぜなら、各特徴は、本発明に基づくその他の特徴のいずれか、あるいは全てと組み合わせることが可能であるからである。本明細書中で使用している「含む」、「備える」、「有する」および「と共に」といった用語は、広範にかつ包括的に解釈すべきであり、いかなる物理的相互連結にも限定されない。さらに、本明細書に開示した実施形態は、唯一可能な実施形態と解釈すべきではない。
【0038】
さらに、本件に関する特許出願手続の間になされた補正は出願当初に示された特許請求の範囲に記載の要素を否認するものではなく、当業者が全ての可能な等価物を文字どおり包含するであろう請求の範囲を想起することは合理的には期待できず、さまざまな等価物は補正の時点では予測できないであろうし、しかもそれは(どちらかと言えば)譲渡されるものの適正な解釈を超え、補正の根拠はさまざまな等価物とほとんど無関係であってもよく、かつ/または補正された請求の範囲に記載の要素に関する、ある想像上の代替物を出願人が開示することを期待できない、数多くのそれ以外の理由が存在する。
【0039】
その他の実施形態は当業者には自明であり、特許請求の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0040】
10 衝撃エネルギーアブソーバー
10a,10b 大型ショックアブソーバー
12 管(シリンダー)
14a 閉塞端部
14b 開放端部
16 フランジ
18 減衰物質(UHMW‐PE物質)
20 プランジャ
22 スリーブ
24 ファスナー
26 受け部
28 円錐形端部
30 中空シャフト部分
32 フランジ部分
34 シート
40a,40b 半体
42 平先ネジ山付きスチールバー
50 機関車
60 シリンダー
62 スプリング
64 バッファープレート
68 減衰物質
70 プランジャアセンブリ
72 プランジャ
74 受けスリーブアセンブリ
76 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃エネルギーアブソーバーであって、
管と、
固体状態の、前記管内の減衰物質であって、応力が加えられたとき固体から粘性流体状態へと変化する減衰物質と、
前記減衰物質内へと押し込まれるように配置されたプランジャと、を具備してなることを特徴とする衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項2】
前記管は、閉塞端部および開放端部を有するシリンダーを含むことを特徴とする請求項1に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項3】
前記シリンダーを取り付けるために、前記シリンダーの前記閉塞端部にフランジをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項4】
前記シリンダーの前記開放端部の周囲に固定され、かつ、前記プランジャを取り囲むスリーブをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項5】
前記スリーブは、前記プランジャの周囲に受け部を含むことを特徴とする請求項4に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項6】
前記プランジャは、前記減衰物質に接する円錐形端部を有することを特徴とする請求項1に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項7】
前記減衰物質は、それ自身に、前記プランジャの前記円錐形端部を受けるシートを含むことを特徴とする請求項6に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項8】
前記減衰物質は、超高分子量ポリエチレン物質であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項9】
前記減衰物質は前記シリンダーを半径方向に満たすことを特徴とする請求項2に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項10】
前記プランジャは中空部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項11】
衝撃エネルギーアブソーバーであって、
閉塞端部および開放端部を有するシリンダーと、
前記シリンダーの前記開放端部の周囲に固定されたスリーブと、
前記シリンダーを満たす超高分子量ポリエチレン物質と、
前記スリーブを経て延在すると共に、末端が前記超高分子量ポリエチレン物質に接する円錐形状となっているプランジャと、
を具備してなることを特徴とする衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項12】
前記シリンダーを取り付けるために、前記シリンダーの前記閉塞端部にフランジをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項13】
前記スリーブは、前記プランジャの周囲に受け部を含むことを特徴とする請求項11に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項14】
前記減衰物質は、それ自身に、前記プランジャの前記円錐形端部を受けるシートを含むことを特徴とする請求項11に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項15】
前記プランジャは中空部分を含むことを特徴とする請求項11に記載の衝撃エネルギーアブソーバー。
【請求項16】
衝撃エネルギーアブソーバーを製造する方法であって、
固体状態の減衰物質を管内に充填することと、
前記プランジャに対して力が加わった際に前記減衰物質内に押し込まれるようプランジャを配置することと、を備え、
前記減衰物質は、応力が加えられたときに、固体から粘性流体状態へと変化するよう構成されていることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記管は、閉塞端部および開放端部を有するシリンダーを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シリンダーを取り付けるために、前記シリンダーの前記閉塞端部にフランジをさらに設けることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プランジャをガイドするために、前記シリンダーの前記開放端部の周囲にスリーブを取り付けることをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記スリーブ内で、かつ、プランジャの周囲に受け部をさらに付加することをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記減衰物質に接する前記プランジャに円錐形端部を設けることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
その中で前記プランジャの前記円錐形端部を受ける前記減衰物質中にシートを形成することをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記減衰物質は、超高分子量ポリエチレン物質であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記減衰物質は前記シリンダーを半径方向に満たすことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記プランジャは中空部分を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項26】
エネルギーを吸収する方法であって、
応力が加えられたときに固体から粘性流体状態へと変化する固体状態の減衰物質を管内に充填することと、
前記減衰物質内に押し込まれるプランジャを配置することと、
構造体に対して前記管あるいは前記プランジャを固定することと、
物体を打撃するするために前記構造体を運動させることによって、あるいは前記構造体を打撃するために物体を運動させることによって、前記減衰物質内に前記プランジャを押し込み、その結果、前記減衰物質を粘性流体状態へと変化させることと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項27】
前記管は、閉塞端部および開放端部を有するシリンダーを含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記シリンダーを取り付けるために、前記シリンダーの前記閉塞端部にフランジを付加することをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記プランジャをガイドするために、前記シリンダーの前記開放端部の周囲に固定されるスリーブを付加することをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記プランジャと前記スリーブとの間に受け部を配置することをさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記減衰物質に接する円錐形端部を備えた前記プランジャを製造することをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項32】
その中で前記プランジャの前記円錐形端部を受ける前記減衰物質中にシートを形成することをさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記減衰物質は、超高分子量ポリエチレン物質であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記減衰物質は前記シリンダーを半径方向に満たすことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記プランジャ内に中空部分を設けることをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−511005(P2013−511005A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538804(P2012−538804)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/002793
【国際公開番号】WO2011/059471
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(599138308)フォスター−ミラー・インク (6)
【Fターム(参考)】